心臓ハーネス
鬱血性心不全を治療しあるいは防止する心臓ハーネスは、緩やかな圧縮力を心臓上に負荷するために、患者の心臓の少なくとも一部の周りに配置されるように構成されている。一つの実施形態において、この心臓ハーネスは、選択された伸張範囲における伸張の関数としての荷重変化が概ねy=ax+bの形で表され、かつ伸張パーセントの値が増加しても「a」の値が増加しないように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年1月7日出願の米国特許出願第10/338,934号の一部継続出願であり、2002年1月7日出願の米国仮出願第60/346,788号を基礎として優先権を主張する。これら両出願の全内容は、この参照によって本願明細書に組み込れる。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、心臓病を治療する装置に関する。より詳しくは、本発明は、患者の心臓の少なくとも一部の周りにフィットするように構成された心臓ハーネスに関する。
【0003】
関連技術の説明
鬱血性心不全(「CHF」)は、組織の代謝要求、特に酸素の要求を満たす充分な流量で血液をポンプ送りする心臓の不全によって特徴付けられる。CHFの1つの特徴は、患者の心臓の少なくとも一部のリモデリングである。リモデリングには心臓壁の寸法、形状および厚みの物理的な変化が含まれる。例えば損傷を受けた左心室は、心筋の一部の限局性の菲薄化および伸長を伴うことがある。心筋が薄くなった部分は多くの場合に機能が損なわれ、心筋の他の部分がそれを補償しようとする。その結果、心筋の障害領域があるにも関わらず心室の拍出量を維持するために、心筋の他の部分が膨張することがある。そのような膨張は、左心室が幾分球形の形状を呈するようにする。
【0004】
心臓リモデリングは多くの場合心臓壁を増加する壁張力あるいは、応力にさらす。そして、それはさらに心臓の機能的な性能を損なう。多くの場合、心臓壁は、そのような増加した応力によって生じる障害を補償するためにさらに膨張する。したがって、膨張がさらに膨張してより重い機能障害に至るという悪循環が生じる。
【0005】
歴史的に、鬱血性心不全は様々な薬物によって治療されてきた。心送血量を改良するための装置もまた用いられてきた。例えば、左心室補助ポンプは、心臓による血液のポンプ送りを補助する。心室の鼓動を最適に同期させて心送血量を改良するマルチチャンバペーシングもまた利用されてきた。広背筋のような様々な骨格筋が、心室のポンプ送りを補助するために用いられてきた。研究者および心臓外科医はまた、心臓の周りに配設される人工「ガードル」を試験してきた。そのような設計の1つが、心臓に巻きつけられる人工「ソックス」あるいは「ジャケット」である。
【0006】
先に議論したいくつかの装置には将来性があるが、リモデリングした心臓がさらにリモデリングすることを防止し、および/または病んでいる心臓の逆リモデリングを促進する、CHFを治療するための改良された装置の必要性がなお存在している。
【0007】
発明の要旨
本発明の一実施形態によると、心臓ハーネスは、患者の心臓の周りにフィットするとともに、心臓に対して圧縮力を負荷することによって心臓の膨張に抵抗するように構成される。ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現されるハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させる。ハーネスは、少なくとも20パーセントの最小値を有した伸張動作範囲を有している。動作範囲内における円周方向の伸張の20パーセントの変化は、約0.066ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化を生じさせる。
【0008】
さらなる実施形態によると、伸張動作範囲を超えるハーネスの円周方向の伸張は、ハーネスの長手方向の伸張より大きい。
【0009】
本発明の他の実施形態によると、心臓ハーネスは、患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成される。ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現される前記ハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させる。選択された伸張範囲における伸張の関数としての荷重変化はy=ax+bの形であり、aおよびbは直線回帰によって決定される。「a」の第1の値は少なくとも5パーセントである第1の選択された伸張範囲に対応し、「a」の第2の値は少なくとも5パーセントである第2の選択された伸張範囲に対応する。第2の伸張範囲は、第1の伸張範囲と重なり合わないように第1の伸張範囲より大きい値から成り、第2の値「a」は第1の値「a」以下である。
【0010】
他の実施形態によると、本発明は、患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成された心臓ハーネスを提供する。ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現されるハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させる。20パーセント伸張と30パーセント伸張との間における伸張の関数としての荷重変化は、概ねy=ax+bの形であり、「a」および「b」は直線回帰によって決定される。伸張の関数としての荷重変化における直線回帰は、少なくとも約0.8の決定係数を与える。「a」の値は約0.0033以下である。
【0011】
他の実施形態において、「a」の値は約0.002以下である。
【0012】
本発明のさらなる実施形態によると、心臓ハーネスは、患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成される。ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現されるハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させる。選択された伸張範囲における伸張の関数としての荷重変化は概ねy=cx2+ax+b形であり、c、a、およびbは直線回帰によって決定され、かつcは負の値である。
【0013】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面および請求の範囲と共に考慮したときに、以下に続く好適な実施形態の詳細な説明に鑑みて当業者に明らかなものとなる。
【0014】
好適な実施形態の詳細な説明
本出願は、心臓病を治療するための方法および装置に関する。本願出願人の係属中の出願(発明の名称「鬱血性心不全を治療するための膨張可能な心臓ハーネス」、出願番号09/634043、2000年8月8日出願。この参照によってその全体を本願明細書に明白に引用したものとする。)において議論したように、病んでいる心臓における壁応力を緩和することによりそのような心臓のリモデリングを阻止しあるいは後退させることが期待されている。本出願は、心臓壁を支持するための実施形態および方法について議論する。追加の実施形態および態様はまた、本願出願人の係属中の出願、2003年9月5日に出願した出願番号第10/656,733号「心臓ハーネス」、2002年9月10日に出願した出願番号第10/242,016号「心臓病を治療するための装置」、および(2002年10月31日に出願した出願番号第10/287,723号「心臓病治療装置および方法」において議論されているが、それらの全てがこの参照によって明白に引用されたものとする。
【0015】
図1は、それに取り付けられたハーネス32の形態の心臓壁応力減少装置を有する、哺乳類の心臓30を示している。この心臓ハーネス32は、心臓30に外接するとともに、壁応力を緩和するために集合して軽度の圧縮力を心臓上の負荷する一連のヒンジあるいはばね要素34を備えている。
【0016】
本願明細書において用いる「心臓ハーネス」という用語は、患者の心臓上にフィットして心臓周期の少なくとも一部の間に心臓上に圧縮力を負荷する装置を指す、幅の広い用語である。心臓上へのフィットが意図されるとともに従来技術において「ガードル」、「ソックス」、「ジャケット」と呼ばれている他の装置は、「心臓ハーネス」の意味に含まれる。
【0017】
図1に示されている心臓ハーネス32は、充填の間に心臓30が膨張するに連れて変形するように構成されたヒンジあるいはばねヒンジと呼ばれる一連のばね要素34を含む、少なくとも一つの波形の素線36を備えている。各ヒンジ34は、実質的に一方向性の弾性を提供する。すなわち、一方向において作動するが、その方向に対して垂直な方向には多くの弾性を提供しない。例えば、図2Aは弛緩している一実施形態のヒンジ部材34を示している。このヒンジ部材34は中央部分40および一組のアーム42を有している。図2Bに示したようにアームが引っ張られると、中央部分40に曲げモーメント44が負荷される。この曲げモーメント44は、その弛緩した状態へとヒンジ部材34を付勢する。典型的な素線が一連のそのようなヒンジから成ること、およびこのヒンジ34が素線36の方向に弾性的に伸張しかつ収縮するように適合していることに注目されたい。
【0018】
図1に示した実施形態においては、ばね要素34の素線36が、変形してばね要素を形成する、伸線加工されたワイヤーから作られている。図1は、次から次へと織り交ぜられて隣接する素線36を示しているが、追加の実施形態においては隣接する素線36が互いに重なり合わず、あるいは接触しないということは理解されるべきである。
【0019】
図3および図4は、心臓ハーネス50の他の好ましい実施形態を、そのようなハーネスを製造する2つの時点において示している。図示の実施形態では、ハーネス50は最初に、比較的薄くて平坦なシートの材料から形成される。平坦なシートからハーネスを形成するために、任意の方法を用いることができる。例えば、1つの実施形態においてはハーネスが材料から光化学的にエッチングされ、他の実施形態においてはハーネスが材料の薄いシートからレーザーカットされる。図3および図4に示した実施形態は、形状記憶特性を呈する超弾性材料であるニチノールの薄いシートからエッチングされたものである。平坦なシートの材料はひな型、金型等においてひだを付けられ、少なくとも心臓の一部の形を取るように成形される。
【0020】
図1および図4を参照すると、図示した実施形態の心臓ハーネス32、50は、患者の心臓の底部領域上に概ねフィットするように寸法決めされかつ構成された底部52、患者の心臓の頂端領域に概ねフィットするように寸法決めされかつ形作られた頂点部分56、およびこれらの底部と頂点部分との間にある中間部分58を備えている。
【0021】
図3および図4に示した実施形態においては、ハーネス50が波形のワイヤーの素線あるいは列36から成っている。上述したように、この波形は、所望の方向に弾性的に屈曲可能であるヒンジ/ばね要素34を備えている。いくつかの素線36は、相互接続要素60によって互いに接続されている。相互接続要素60は、素線36の互いの位置への保持を助けている。好ましくは、この相互接続要素60は、隣接する素線36間におけるいくらかの相対運動を可能としている。
【0022】
心臓は弛緩期と収縮期の間で膨張しかつ収縮するに連れて、心筋の収縮細胞が膨張し収縮する。病んでいる心臓において、心筋は、細胞が弱って少なくともいくらか収縮性を失うように膨張し得る。弱った細胞は、膨張および収縮の応力を処理する能力が小さい。このようにして、心臓のポンピングの効率が減少する。
【0023】
上述したように、また本願明細書に引用した出願においてより詳しく議論したように、波形のばね要素34は心臓30の膨張に対して抵抗する力を発揮する。集合的にばね要素が発揮する力は心臓を圧縮する役に立ち、心臓が膨張するときに心臓壁の応力を緩和する。ばねヒンジの各素線は、心臓が弛緩期の間に膨張するときにばねヒンジが対応して膨張するように構成され、膨張力を曲げエネルギーとしてばねに保存している。このように、心筋上の応力負荷はハーネスによって部分的に取り除かれる。応力のこの減少は心臓の作業負荷の減少を助け、心臓がより効果的に血液をポンプ送りできるようにし、かつ心筋細胞が健康なまま残り、あるいはまた健康状態の回復を助ける。
【0024】
心臓ハーネスのいくつかの実施形態を作ることができること、およびそのような実施形態の構造、寸法、柔軟性等を変化させながらも、壁体応力を減少させるために依然として心臓上に穏やかな圧縮力を作り出すことができることは、理解されるべきである。上述した出願において議論したように、そのような心臓ハーネスは、様々な金属、織物、樹脂、および撚り合わせ、織られ、あるいはまた編まれた繊維を含む、多くの適切な材料から作ることができる。適切な材料にはまた、超弾性材料および形状記憶を呈する材料が含まれる。例えば、ハーネスの好ましい実施形態はニチノールから作られる。形状記憶ポリマーもまた利用することができる。そのような形状記憶ポリマーには、形状記憶ポリウレタン、あるいはmnemoScienceから入手可能なオリゴ(e−カプロラクトン)ジメタクリレートおよび/またはポリ(e−カプロラクトン)を含む他のポリマーが含まれる。さらに、心臓ハーネスの実施形態のいくつかは心臓を実質的に取り囲むが、その他は心臓あるいはハーネスの外周の一部にわたって配設されるばね部材を用いることができる。
【0025】
まさに議論したように、曲げ応力は弛緩期の間にばね部材34によって吸収され、曲げエネルギーとしてこの部材に保存される。収縮期の間に心臓がポンプ送りすると、心筋が収縮し、心臓はより小さくなる。同時に、ばね部材34に保存されている曲げエネルギーが少なくとも部分的に放出され、それによって収縮期の間の心臓に援助を与える。好ましい実施形態において、ハーネスのばね部材によって心臓上に負荷される圧縮力は、収縮期の間に心臓が収縮するときになされる機械仕事の約10%〜15%から成る。ハーネスが心室のポンピングに取って代わることは意図されていないが、収縮期の間にハーネスは実質的に心臓を助ける。
【0026】
次に図5および図6を参照すると、ハーネス50の他の実施形態は、波形ワイヤの素線36あるいは条片を備えている。上述したように、この波形は、所望の方向に弾性的に屈曲可能であるヒンジ/ばね要素34を備えている。ばね要素の素線は、異なる方向に方向付けられているとともに、ハーネスの様々な部分において異なって構成されている。例えば、図5および図6に示したように、ハーネスの底部部52においては、心臓の長手方向軸線に対して概ね横断する方向にばね要素34が伸張しかつ収縮するように、素線が方向付けられている。頂部領域56においては、「アルキメデス螺旋」62の構造が複数の方向における膨張および変形を可能にするが、長手方向において最も伸張性がある。中間部分58においては、概ね長手方向において膨張しかつ収縮するように、素線36aが方向付けられている。加えて、いくつかの素線は、隣接する素線が横断方向において互い移動できるようにする相互接続ばね要素60aにより、互いに接続されている。しかしながら、中間部分58のいくつかの素線36aは、他の素線とは接続されておらず、横断方向において互いに自由に移動することができる。したがって、中間部分においては、素線は、長手方向および横断方向の間で集合的に拡張することができる。
【0027】
哺乳類の心臓においては、底部領域の心筋細胞は、心臓がポンピングする間に略横断方向に膨張しかつ収縮する傾向がある。頂部領域においては、心筋は、長手方向に膨張しかつ収縮する傾向がある。心臓の頂部領域と底部領域との間では、心筋は、長手方向および横断方向の間の方向において膨張しかつ収縮する。図5および図6に示した実施形態においては、ばね要素34は、膨張に対してより均一に抵抗して筋肉の応力を緩和するべく、概ね心筋が膨張する方向に方向付けられている。このように、ハーネスの底部領域、中間領域、および頂部領域52、58、56の構造は、心筋組織の本来の伸縮に対応するために特別に構成されている。このように、このハーネスは、心筋に特有な方向収縮を模倣している。
【0028】
次に図7を参照すると、模式的に示した心臓30上に配設された、心臓ハーネス70の他の実施形態が図示されている。図示のように、この心臓ハーネス70は、心臓を円周方向に取り囲むとともに心臓の底部72から頂部74まで長手方向に延びるように構成されている。このハーネス70は、長手方向に互いに隣接して配設された、円周方向に延びる複数のリング80を備えている。各リング80は、相互に連結された複数のばね部材34を有している。図7に示されているばね部材34は、図2Aおよび図2Bを参照して上述したばね部材34と実質的に同じである。
【0029】
複数のコネクタ82が、隣接するリング80を相互に接続している。コネクタ82は、隣接するリングの間にスペースを作り出すために、リングに対して長手方向に方向付けられた全長を有している。さらに、これらのコネクタは、それらの間にいくつらかの相対運動を許容しつつ、隣接するリングの間における適切な配列の維持を助けている。図示されているハーネスは、ばね部材34が互いに重なり合わないように構成されている。このようにして、ばね部材34の曲げの繰り返しおよび相対運動によるハーネスの摩耗が回避される。好ましくは、コネクタ82は、シリコンあるいは他の類似する材料のような準適合性の材料から形成される。コネクタ82がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、PTFEおよびePTFEといった任意の医療用グレードのポリマーから構成できることは予想できるが、それらには限定されない。
【0030】
図7に示した実施形態においては、各リング80は、最初は、一連のばね部材34を有した細長い素線から構成されている。ばね部材34の各素線は、好ましくはニチノール、あるいは形状記憶特性を有した他の金属である、引き抜き加工されたメタリックワイヤから形成される。好ましくは、ニチノールワイヤは、ばね部材の列に形付けられるとともに、所望するばね部材の構造の形状記憶を呈するように処理が施される。そのような処理の後、それぞれの細長い素線は、細長い素線の反対側の端部が接続されたときに、この細長い素線が図7に示した環状の構造を呈するように、それぞれある長さに切断される。
【0031】
結果として得られるリング80が患者の心臓30の全体的な解剖学的組織に一致して寸法決めされるように、細長い素線36の全長が選択されることは理解される。より詳しくは、ハーネスの頂部部分に用いられる素線は、底部部分を形成するために用いられる素線ほど長くはない。このように、このハーネスは、患者の心臓の形状に追従するために底部52から頂部54へと略テーパ状である。他の実施形態においては、ハーネスの底部におけるリング80bの直径が、隣接するリング80cの直径よりも小さい。この実施形態においては、ハーネスは、底部と頂部との間の場所において最も大きい直径を有し、かつその場所から底部および頂部へとテーパ状である。好ましくは、最も直径が大きい場所は、頂端部56よりも底端部52に近い。素線の長さが、ばね部材の寸法と同様に、心臓ハーネス70の意図する寸法および/またはハーネスが患者の心臓に負荷することが意図されている圧縮力の大きさに基づいて選択できることは、考えられることである。
【0032】
引き続いて図7を参照すると、ハーネス70の底部52の右側84は、リングには形成されずにハーネス70の円周方向の一部においてのみ延びる、相互に連結されたばね部材の素線86を有している。好ましくは、部分的な素線86は、この部分的な素線が引き伸ばされるようにして、隣接している完全なリングに接続される。このように、部分的な素線86は、図7において模擬されているように、右心房の上側部分を「カップ状にする」ために内側に曲がる。
【0033】
図示の実施形態では、リング80は誘電材料で被覆されており、かつコネクタ82は非導電材料から形成されている。このように、各リングは、ハーネスの他のリングから電気的に絶縁されている。好ましくは、素線をリングに形成する前に、ばね部材の素線の上でシリコンチューブを前進させる。他の実施形態においては、リングに形成される前および後において、ニチノール製のワイヤが絶縁材料によって浸漬被覆される。
【0034】
ハーネスを誘電材料で被覆するために、様々な材料および方法を用いることができる。図示の実施形態では、リングがシリコンゴムで被覆される。他の許容できる材料には、Union Carbide社から入手可能な誘電性ポリマーであるパリレン含む同様なポリマーばかりでなく、ウレタンおよびセラミックが含まれる。この材料は、浸漬被覆および噴霧あるいは他の適切な方法といった、様々な方法によってハーネスに付加することができる。
【0035】
上述したように、隣接するリング80はコネクタ82によって互いに接続される。図7に示した実施形態においては、コネクタ82は、隣接するリング80の間で互い違いにされている。ここで理解されるべきことは、他の実施形態において、コネクタ82の異なる構造を利用できることである。例えば、隣接するリング間のコネクタは、実質的に一列に並べることができる。
【0036】
図7に示した実施形態においては、コネクタ82がシリコンゴムから成っている。このように、コネクタはいくらか弾性的であり、かつハーネス70は長手方向に伸張性がある。しかしながら、ハーネスの長手方向の伸張性は、コネクタの弾性によって制限される。リングの幾何学的形状およびリングの材料の弾性的な特性により、ハーネス70の円周方向の伸張性は、長手方向の伸張性よりもはるかに大きい。隣接するリング間のコネクタが実質的に一列に並べられている実施形態においては、コネクタの弾力的な特性によって、ハーネスの長手方向の伸展性がより厳密に制限され、そのような実施形態においては図7の実施形態よりも長手方向の伸張性が低い。
【0037】
他の実施形態においては、ハーネスは、国際公開WO01/95830A2号公報において議論されているような、周知の「Atlas knit」構造のポリエステル繊維編物から作られる。なお、この公報の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。このようにして、織物が伸長するときにポリエステル繊維が必ずしも弾性的に変形しなくとも、ハーネスは柔軟であり、かつかつ織物は伸長することができる。そのような織物の伸長は、主として繊維の直線化、繊維の折れ曲り、および編まれたパターンの幾何学的な歪みによる。これらの伸縮要因が使い果たされると、ハーネスは非弾性的となり、もはや患者の心臓の寸法の増加に伴って弾性的には伸張しない。
【0038】
心臓ハーネスのような異物あるいは物質が、心臓の上にあるいは隣接して導入されると、人体はその異物の上あるいはその周りに組織を堆積させる傾向がある。例えば、フィブリンおよびコラーゲン堆積物は、心臓ハーネスがその上に配設された後に心臓およびその周辺に蓄積する傾向がある。この瘢痕組織は、柔軟ではあるが堅くなる傾向があり、患者の心臓の膨張に対してさらに抵抗しようとする。
【0039】
好ましい実施形態においては、心臓壁の張力を低減する装置は生体吸収性の材料から製作される。このように、この装置は所定の期間の後に溶解する。しかしながら、この装置は所定位置において心臓壁の張力を軽減する。この装置が心臓上に取り付けられると、患者の人体は、瘢痕組織を装置の上および心臓の周りに堆積させることによって反応する。好ましくは、この組織が少なくとも部分的に心臓を内部に閉じ込める。装置が溶解した後、瘢痕組織はそのまま残る。したがって、移植された装置はもはや更なる心臓の膨張を制限しあるいは抵抗しないが、瘢痕組織はそのような膨張に抵抗する。このように、永久的な移植組織を必要とすることなく、更なる心臓膨張に抵抗するための長期の治療が確立される。
【0040】
生体吸収性の心臓壁張力低減装置は、任意の生体吸収性材料から形成することができる。ここで理解されるべきことは、典型的に縫合糸、ステント等に用いられる生体吸収性材料を含む多くの種類の材料を用いることができることである。この開示を目的として、生体吸収性材料は、人体の内部に配置されたときに時間を経ると分解しあるいは溶解する材料、および生体分解性の材料を含む。好ましい実施形態においては、ポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA)のような、FDA認可の材料を用いることができる。合成されたあるいは天然由来のポリマーを含む、他の材料を適切に用いることができる。
【0041】
生体吸収性の心臓ハーネスは、許容できる任意の方法および仕方によって形成することができる。例えば、PGAあるいはPLAのシートは、心臓の周りにフィットする形状にモールド成形することができる。同様に、シートは、柔軟性の増加に力を貸す開口あるいは隙間を有するように形成することができる。さらに、上述した実施形態におけるように、波形のばね部材の列を有するように装置をモールド成形しあるいは切断することができる。さらにまた、弾力性をもたらすとともに、所望の状態および方向へと瘢痕の成長を促進しあるいはまた導くために、格子構造を用いることができる。さらにまた、生体吸収性材料は、心臓の周りにフィットしてその膨張を抑制するために織り上げ、撚り合わせ、編むことができるといった、押出加工されたファイバあるいは繊維として提供することができる。
【0042】
上述した出願において議論したように、心臓壁応力を軽減するために力が負荷されると、心臓における動作負荷が減少する。動作負荷を減少させることは、心臓が少なくとも部分的に休めるようにし、少なくとも部分的にそれ自身を回復させる機会を心臓に与えるように見える。例えば、心臓壁の応力が減少すると、リモデリングした病んでいる心臓が、より健康になるように逆方向にリモデリングすることが期待される。壁体応力を減少させる効果は、有益かつ有利な回復効果へと実際に導くことができる。
【0043】
他の好ましい実施形態においては、心臓壁張力低減装置は、生体吸収性材料が溶解するにつれて有利な薬物が放出されるように、医学的に有利な薬物と組み合わせられた生体吸収性材料から少なくとも部分的に製作される。例えば、心筋の再生を促進するために、骨髄あるいは幹細胞を設けることができる。この種の治療は、梗塞の回復を助けるとともに心臓の治癒を促進する。もちろん、心臓を助けることが期待される任意のタイプの薬物を、生体吸収性装置に組み合わせることができることは、理解されるべきである。
【0044】
他の実施形態においては、生体吸収性の心臓ハーネスは、取り付けられたハーネスの周りにおける身体組織の堆積あるいは成長に抵抗する、抗フィブリン剤薬物あるいはまた他の薬物と組み合わることができる。このように、このハーネスは、心臓の壁体応力を減少させ、回復し始める機会を心臓に与えるが、大量の瘢痕組織は形成させない。この実施形態においては、このハーネスは、疾患症状の悪化を進展させることなくその動作を持続させることができるようにするべく、心臓を休ませるのに十分な期間の後に溶解するように構成される。ハーネスが溶解した後においては、瘢痕組織がほとんどあるいは全く残らないので、休むことができた心臓はそのような組織による制限を受けない。上述したように、瘢痕組織は時には有利な目的の役に立つことができるが、いくつかの状況においては瘢痕組織の回避から利益を受ける。
【0045】
上述したように、ハーネスが心臓壁の応力を減少させるときに、心臓が逆方向にリモデリングすることが期待される。このように、心臓は、生体吸収性ハーネスが溶解すると、ハーネスを取り付けたときよりも小さくなる。一つの実施形態によると、新しい、より小さなハーネスが心臓上に配置され、更なる逆方向のリモデリングを促進する。このプロセスは、心臓が所望のサイズおよび健康水準に到達するまで、所望の通りに反復することができる。所望のサイズが達成されると、心臓はそのサイズを維持するのに十分に健康であるので、更なるハーネスを必要としない。あるいは、所望のサイズに心臓を維持するために、恒久的なハーネスを取り付けることができる。さらに他の実施形態においては、組織の成長に抵抗する薬物なしの、他の生体吸収性ハーネスが取り付けられる。このように、心臓は、心臓が所望のサイズを越えて拡大することに抵抗する身体組織の内側に、少なくとも部分的に閉じ込められることになる。このことは、所望の健康なサイズを心臓が維持することを助ける。
【0046】
さらに別の好ましい実施形態においては、少なくとも部分的に心臓を閉じ込める組織の成長を促進する異物が、心臓の周りに導入される。これらの異物は心臓ハーネスの形態である必要はなく、かつ心臓上に何らかの圧縮力を与える必要もない。しかしながら、これらの異物は、フィブリン/コラーゲンあるいは他の組織が心臓の周りに成長することを促進し、少なくとも部分的に心臓をその組織内に閉じ込める。この組織は、ソックスあるいはジャケットとして作用し、心臓の更なる膨張に抵抗する。
【0047】
ここで理解されるべきことは、そのような異物を生体吸収性とすることもできるが、必ずしもそうである必要はないということである。例えば、この異物は、フィブリンあるいはコラーゲンの成長を促進するために特別に調整された、液体あるいは粉末の刺激物から構成することができる。そのような刺激物は、細かく刻まれあるいは粉末化された、ポリエステルあるいは他のプラスチックを含むことができる。
【0048】
他の実施形態においては、特定の場所および所望の方向への組織の成長を促進するために、異物あるいは心臓ハーネスを心臓の周りに配設することができる。例えば、心筋の方向的な膨張および収縮に追従するように組織の成長を促進させるべく、物質を配置することができる。例えば図8において、異物は、心筋の方向的な膨張および収縮に対応するように配設された一連の条片90として、心臓30の上あるいはその周りに配設されている。このことは、条片90の領域および方向的な配置における組織の成長を促進する。このように、組織は、心筋の方向的な膨張および収縮に対応して成長する。そのような組織は、心臓が充填の間に膨張しかつポンプ送りの間に収縮するときに、心筋の負荷の減少を助ける。好ましくは、組織を成長を促進する異物は生体吸収性材料から成る。他の実施形態においては、異物は生体吸収性ではなく、患者の人体の内部に永久に維持される。
【0049】
患者の心臓の周りへの異物の導入および配置は、最小限に侵襲性の方法によって実施することができる。最小限に侵襲性の方法はまた、ニチノール、織り上げられあるいはまた生体吸収可能なハーネスを心臓の周りに取り付けるために、用いることができる。緩いあるいは分離した異物を心臓の周りに配設するために、さらに非侵襲的な方法を用いることができる。
【0050】
患者の心臓は鬱血性心不全の間に拡大するので、壁のような弁といったある種の弁の環状部は、心臓と共に成長する傾向がある。最終的には、完全に弁を閉じるためには弁リーフレットが十分に大きくない状態まで、弁の環状部のサイズが増加する。弁機能不全の一因となる他の要因は、心臓が拡大するに連れて、心臓の幾何学的形状がいくらか変化することにある。乳頭筋のような心臓の一部は、心臓の腱索を介して乳頭筋が取り付けられている弁リーフレットから外側に移動する。これらの乳頭筋は、一杯に引き延ばされるので、弁閉鎖の間に弁リーフレットが互いに十分に係合することを妨げる。このように、弁リーフレットは完全に閉じることができず、弁に漏れが生じる。そのような弁の漏れは、簡単に患者の心臓疾患をより悪化させる。
【0051】
「心臓病治療装置および方法」と名付けられた上述の出願において議論したように、ハーネスあるいはカラーは、心臓の特定部位に圧縮力を作用させて弁機能不全の防止あるいは減少を助けるように構成することができる。例えば、カラー型の装置は、心臓30の房室溝領域92の周りにフィットするように、特別に構成することができる。図9が示している房室溝カラー94は、弁環状部のサイズを減少させあるいはまた所望のサイズを越えて弁環状部が拡大することを防止する傾向がある圧縮力を作用させるために、準備されかつ構成されている。
【0052】
引き続いて図9を参照すると、乳頭筋バンド96は、乳頭筋の領域において心臓30の外周に配置されるように構成することができる。周知のように、乳頭筋は、房室溝と心臓の頂部との間の概ね中間点にある。したがって、乳頭筋バンド96は、乳頭筋の高さにおいて心臓の直径を減少させるべく圧縮力を作用させることができる。このことは、それらが弁リーフレットの閉鎖を可能にしかつ容易にするように、乳頭筋がより引き延ばされないようにすることを助ける。図示の実施形態においては、乳頭筋バンド96は、織り上げられあるいは編まれた織物から製作されている。ここで理解されるべきことは、乳頭筋バンド96はまた、図1〜図7に示されている実施形態に関連して図示しかつ議論した構造のような、波形のばねヒンジ構造を有することができることである。さらに、房室溝カラー94および/または乳頭筋バンド96は、シリコーンゴムのような実質的に弾性的な材料から製作することができる。
【0053】
上述したように、心臓ハーネスは、患者の心臓上に緩やかな圧縮力を負荷する。房室溝カラー94および乳頭筋バンド96の実施形態が、典型的な心臓ハーネスよりも積極的な圧縮力を作用させることが期待される。他の実施形態においては、恒久的な心臓ハーネスの移植片のうち、心臓の房室溝92あるいはまた心臓の乳頭筋領域と係合するように構成された部分が、それらの部分における組織の成長のために目ざましい刺激をもたらすために、刺激物で覆われる。したがって、心臓の房室溝および乳頭筋の領域における組織の成長が増大し、これらの領域における膨張に対してさらなる抵抗を与える。
【0054】
他の実施形態においては、生体吸収性の織り上げられあるいは編まれた房室溝カラー94が、房室溝の内側およびその周りにおける組織の成長を促進し、恒久的な移植片なしに同様な利益をもたらす。生体吸収性の乳頭筋バンド96が同じように設けられる。ここで理解されるべきことは、房室溝カラー94および乳頭筋バンド96を、互いに独立してあるいは互いに連携して、かつ恒久的なあるいは生体吸収性の心臓ハーネスとは無関係に若しくは連携して、用いることができることである。例えば、心臓ハーネスを取り付ける前あるいはその後に、乳頭筋バンドを心臓上に配置することができる。
【0055】
さらに他の実施例においては、心臓の特定部分に特別に導かれた力を負荷するとともに、組織成長を増大させた特定の領域を作り出すために、房室溝カラー94および乳頭筋バンド96を心臓ハーネスに組み込むことができる。
【0056】
さらに他の実施形態においては、房室溝カラーあるいはまた乳頭筋バンドは、生体吸収性の材料から製作されるとともに、第1の力の範囲内において患者の心臓上に力を作用させるように構成される。心臓ハーネスは、第2の力の範囲内で患者の心臓上に力を作用させるように、設けられかつ構成される。第1の力の範囲は、乳頭筋バンドあるいは房室溝カラーが作用すべきであるが、第2の範囲よりも大きい力のレベルを誘起する。このように、患者の心臓上に組み合わせて取り付けると、心臓の房室溝あるいは乳頭筋バンドの領域には、他の場所よりも大きな力が作用する。時間が経過してカラーあるいはバンドが吸収されると、心臓上に負荷される力はより均一化する。この構造は、心臓の残りの部分が必要とするよりも大きい度合いの力を心臓の一つの領域に負荷することにより、急性弁膜性機能不全の治療を可能とする。時間とともに、心臓の残りの部分がリモデリングするので、弁膜性機能不全を治療するための追加の力は必要ではなく、本実施形態においてはもはや作用することがない。
【0057】
上述した実施形態の変形例においては、房室溝カラーあるいはまた乳頭筋バンドは、生体吸収性材料から形成されるとともに、それを越えてカラー/バンドが変形しない最大寸法を有するように構成される。このように、心臓の選択された部分を特定の寸法に拘束しつつ、心臓の残りの部分を拘束しないようにすることができる。このことは、深刻な問題に取り組みつつ、全体としての心臓の受動的な治療を可能とする。ここで理解されるべきことは、他の実施形態においては、生体吸収性部材が患者の心臓の所望する部分に目標とする増大させた力を一時的に負荷しつつ、付随する心臓ハーネスが心臓のより大きな部分の上により均一で緩やかかつ恒久的な圧縮力を与えることができることである。
【0058】
上述した実施形態においては、治療上の利益を達成するために、好ましくは、心臓ハーネスが心臓上に緩やかな圧縮力を負荷する。治療の範囲内で負荷される力あるいは圧力は、本願明細書においては、心臓のような臓器に負荷されたときにその臓器に対して利益となる、充分な量の圧力として定められる。一つの実施形態においては、心臓ハーネスのための治療範囲は約2〜20mmHgの間にある。より好ましくは、治療上の圧力は約2〜10mmHgであり、最も好ましくは約2〜5mmHgである。
【0059】
次に図10を参照すると、引き抜き加工ニチノールワイヤから波形のばねヒンジへと構成された心臓ハーネスの一実施形態における実際の試験データを反映した、圧力とパーセント引張ひずみとのカーブ100が示されている。図示したように、この実施形態のハーネスは大きく変形することができる。この実施形態において、ハーネスは、患者の心臓にフィットさせるために、その最初の休息状態から引き延ばされる。心臓の上にあるときに、それは緩やかな圧縮力を負荷して、心臓の逆方向のリモデリングを助けるのに役立つ。心臓が逆方向にリモデリングしてより小さくなると、このハーネスはそれに対応してより小さくなる。もちろん、心臓のサイズは、弛緩期の始まりと弛緩期の終わりとの間で変化する。図示した実施形態においては、弛緩期の初めDSおよび終わりDFに対応する引張歪のレベルにおいて、ハーネスによって負荷される圧力を特定するために、DSおよびDFというラベルが曲線に付加されている。これと同様に、ラベルD’SおよびD’Fは、心臓が逆方向にリモデリングしてより小さくなったときの、弛緩期の始めおよび終わりにおいてハーネスにより負荷される相対的な圧力を図示している。図示した実施形態においては、心臓ハーネスは、心臓の寸法が変化したときにも心臓に対して連続的に順応し、心臓が甚だしく逆リモデリングしたときにも心臓に対して治療上の圧力を負荷する。
【0060】
図示した実施形態においては、心臓ハーネスは、ハーネスの歪に応答して圧力を作用させる。例えば、ハーネスに約100%の歪みが与えられると、それは心臓上に約10mmHgを作用させる。逆リモデリングの結果として心臓がより小さくなると、ハーネスのパーセント歪みが減少し、ハーネスが作用させる対応の圧力もまた減少する。好ましい実施形態においては、ハーネスは、広範囲の変形に対して、負荷される圧力の変化が比較的小さくなるように構成される。このように、心臓が甚だしく逆リモデリングした後においても、このハーネスは治療的な圧力を与える。
【0061】
例えば、引き続いて図10を参照すると、ハーネスが100%から60%へと歪みが減少するときの40%の歪みの変化に対応する寸法の減少は、約3mmHg未満の圧力の負荷の減少を伴う。80%から40%への歪の40%の変化は、約4mmHg未満の圧力の減少を伴う。さらにまた、20%の寸法の縮小は、約3mmHg未満、あるいはハーネスの歪みの程度に応じて、約2mmHg未満の圧力の減少を伴う。ハーネスの寸法/歪の変化に対応する圧力の変化を示す追加の関係は、図10に示した圧力/歪み曲線から得ることができる。
【0062】
他の実施形態においては、図10の試験データによって示されるハーネスは、異物の導入に応じて組織の成長を妨げる薬物を含む生体吸収性のコーティングで覆われている。このように、心臓およびハーネスの周りにおける瘢痕組織の成長は最小化され、かつハーネスは、患者の心臓に対してその形状を適合させかつ変化させることを防止する瘢痕組織なしに、心臓の逆リモデリングに連れてその大きさを劇的に減少させることができる。
【0063】
次に図11および図12を参照すると、本願の出願人は、心臓ハーネスの弾性的な挙動を検査するための方法および装置を開発した。図11は、心臓ハーネスから取った細長い測定試料110を示している。図示した実施形態においては、この測定試料110は、図7のハーネス70から線11−11に沿って取り出された。しかしながら、ここで理解されるべきことは、測定試料は、材料試験の間にハーネスを適切に表すように、測定試料がハーネスの実質的に十分な部分から構成される限りにおいて、ハーネスの任意の部分から取ることができることである。引き続いて図11を参照すると、測定試料110は、好ましくは全長Lおよび幅Wを有する。全長Lは、ハーネスの外周に概ね沿った方向に定められる。言い換えると、 全長Lは、心臓およびハーネスの長手方向軸に対して略横断方向において取られる。最も好ましくは、全長Lは、長手方向軸に対して略垂直な方向において取られる。幅Wは、長手方向軸に概ね沿った方向に延びている。
【0064】
次に図12を参照すると、測定試料110は、Instron(登録商標)から入手可能な材料特性試験機112に取り付けられる。ハーネスの測定試料110は材料試験機112のマウント114に取り付けられ、この機械はその全長Lに沿って測定試料110を引っ張る。この材料試験機112は、負荷を詳述するポンド力(lbF)のデータ、および全長Lに沿った測定試料110の対応パーセント引張歪を収集する。次いで、負荷は、図示した実施形態においては長手方向である、測定試料の幅Wに関して正規化される。したがって、図示した実施形態においては、荷重データはポンド/インチの単位で取得される。
【0065】
上述した試験の手順は、そのような実施形態を比較することができるように、心臓ハーネスの様々な実施形態における弾性/変形挙動の測定を可能にする。一貫性のために、検査は室温で、好ましくは約37℃において実施される。上述したように、荷重は測定試料110の、対応するハーネスの外周に沿った方向において取られた全長Lに沿って負荷される。したがって、負荷される荷重は、ハーネスの円周方向における荷重を表しかつそれに対応している。パーセント引張歪もまた、全長Lに沿って取られる。このように、パーセント引張歪は、荷重ゼロ状態より上方において、ハーネスの円周方向の膨張のパーセントを表しかつ対応している。
【0066】
次に図13を参照すると、心臓ハーネスの一実施形態の伸張性を示す、予測される伸張性カーブが示されている。図示のグラフは、上述した「atlas knit」を用いて製作されたハーネスのような、編まれた材料から製作された心臓ハーネスの挙動を表している。図面に示したように、テストした実施形態は、その形状が略放物線状に見える。すなわち、パーセント引張歪が増加すると、対応する荷重は指数関数的に増加する。図示した実施形態においては、40%〜50%の間のパーセント歪みにおいて漸近線が定められることが予測される。その時点においては、測定試料はその膨張限界に到達する。
【0067】
次に図14を参照すると、図7のハーネス70のような、ハーネスの例示的なばね要素34が示されている。図14のばね要素34は、そのようなばね要素の素線からの一つの要素を表している。この図は、試験データが得られたいくつかの特定の実施形態の寸法を定めるために用いられる。
【0068】
図15も参照すると、プロットされた試験データは心臓ハーネスの測定試料のために示されている。図15の試験データによって例示される心臓ハーネスは、好ましくは、約0.008インチの直径を有する引き抜き加工されたニチノールワイヤから形成されたばね要素の素線から構成されている。このばね要素は、図14に示したばね要素34に似ており、約0.165インチの幅w、約0.163インチの高さh、および約0.126インチの直径φを有している。ワイヤがばね要素の素線へと形成された後、それは約30分間にわたって約485℃で熱処理される。約0.010インチの内径および約0.025インチの外径を有するシリコンチューブが素線の上に配設される。
【0069】
前述した心臓ハーネスの測定試料を、上述した手順に従って、材料試験機においてテストした。荷重およびパーセント引張歪を含む試験データが、ゼロ荷重、0パーセント歪み状態と100%歪み状態との間で収集された。代表的な試験データポイントが図15のプロット線に提示されているが、そこにおいて パーセント引張歪はX軸に沿って表示され、かつ測定試料の幅Wに関して正規化された荷重はy軸に沿って表示されている。
【0070】
引き続いて図15を参照すると、心臓ハーネスの挙動をy=ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセル(登録商標)ソフトウェアを用いて実施され、関数y=0.001x+0.005がもたらされた。この直線回帰関数は、約0.969の決定係数R2を有している。直線回帰において、決定係数R2が、直線回帰関数が収集されたデータをどれだけ良好に表しているかを示すことは理解される。図示した実施形態においては、R2の値がきわめて1に近く、したがって直線回帰線がデータを密接に表していることを示している。
【0071】
次に図16を参照すると、プロットされた試験データは、心臓ハーネスの他の実施形態の測定試料を示している。図16の試験データによって例示される心臓ハーネスは、好ましくは、約0.012インチの直径を有する引き抜き加工されたニチノールワイヤから形成されたばね要素の素線から構成されている。このばね要素は、図14に示したばね要素34に似ており、約0.300インチの幅w、約0.275インチの高さh、および約0.250インチの直径φを有している。ワイヤーがばね要素の素線に形成された後、約30分間、約485℃で熱処理される。約0.014インチの内径および約0.029インチの外径を有するシリコンチューブが素線の上に配設される。
【0072】
前述の心臓ハーネスの測定試料は、上述した手順に従って、材料試験機においてテストされた。荷重およびパーセント引張歪を含む試験データは、ゼロ荷重、0パーセント歪み状態と100%歪み状態との間で収集された。代表的な試験データポイントが図16のプロット線に提示されているが、そこにおいて、パーセント歪はX軸に沿って表示され、かつ測定試料の幅Wに関して正規化された荷重はy軸に沿って表示されている。
【0073】
引き続き図16を参照すると、心臓ハーネスの挙動をy=ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセルソフトウェアを用いて実施され、関数y=0.0009x+0.0083がもたらされた。この直線回帰関数は、約0.9864の決定係数R2を有している。
【0074】
次に図17を参照すると、プロットされた試験データは、心臓ハーネスの他の実施形態の測定試料を示している。図17の試験データによって例示される心臓ハーネスは、好ましくは、約0.012インチの直径を有する引き抜き加工されたニチノールワイヤから形成されたばね要素の素線から構成されている。このばね要素は、図14に示したばね要素34に似ており、約0.300インチの幅w、約0.275インチの高さh、および約0.250インチの直径φを有している。ワイヤーがばね要素の素線に形成された後、約30分間、約485℃で熱処理される。約0.014インチの内径および約0.029インチの外径を有するシリコンチューブが素線の上に配設される。明らかなように、図17に表されている心臓ハーネスは、図16に表されている心臓ハーネスと構造的にきわめて類似している。実際、ハーネスとの間の最も重大な差は、隣接する素線の間のコネクタの構造に見い出される。上述したように、コネクタ配置の違いによって、これらの実施形態における長手方向の伸張性はいくらか異なっている。しかしながら、以下に述べるように、これらの実施形態における円周方向の伸張性は極めて類似している。
【0075】
前述の心臓ハーネスの測定試料は、上述した手順に従って、材料試験機においてテストされた。荷重およびパーセント引張歪を含む試験データは、ゼロ荷重、0パーセント歪み状態と100%歪み状態との間で収集された。代表的な試験データポイントが図17のプロット線に提示されているが、そこにおいて、パーセント歪はX軸に沿って表示され、かつ測定試料の幅Wに関して正規化された荷重はy軸に沿って表示されている。
【0076】
引き続き図17を参照すると、心臓ハーネスの挙動をy=ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセルソフトウェアを用いて実施され、関数y=0.0009x+0.0073がもたらされた。この直線回帰関数は、約0.9933の決定係数R2を有している。
【0077】
次に図18を参照すると、プロットされた試験データは、心臓ハーネスの他の実施形態の測定試料を示している。図18の試験データによって例示される心臓ハーネスは、好ましくは、約0.011インチの直径を有する引き抜き加工されたニチノールワイヤから形成されたばね要素の素線から構成されている。このばね要素は、図14に示したばね要素34に似ており、約0.165インチの幅w、約0.163インチの高さh、および約0.126インチの直径φを有している。ワイヤーがばね要素の素線に形成された後、約30分間、約485℃で熱処理される。シリコンチューブが、素線の上に配設される。
【0078】
前述の心臓ハーネスの測定試料は、上述した手順に従って、材料試験機においてテストされた。荷重およびパーセント引張歪を含む試験データは、ゼロ荷重、0パーセント歪み状態と100%歪み状態との間で収集された。代表的な試験データポイントが図18のプロット線に提示されているが、そこにおいて、パーセント歪はX軸に沿って表示され、かつ測定試料の幅Wに関して正規化された荷重はy軸に沿って表示されている。
【0079】
引き続いて図18を参照すると、心臓ハーネスの挙動をy=ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセルソフトウェアを用いて実施され、関数y=0.0033x+0.0238がもたらされた。この直線回帰関数は、約0.9749の決定係数R2を有している。
【0080】
引き続き図18を参照すると、測定点によって表される曲線の勾配が、パーセント歪みが増大するに連れて小さくなることが認められる。心臓ハーネスの挙動をy=cX2+ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセル(登録商標)ソフトウェアを用いて実施され、関数y=−0.00005x2+0.0054x−0.0129がもたらされた。この直線回帰関数は、約0.9989の決定係数R2を有している。
【0081】
心臓ハーネスのさらに他の実施形態は、約0.016インチの直径を有する引き抜き加工されたニチノールワイヤーから形成されたばね要素の素線から構成されている。このばね要素は、図14に示したばね要素34に似ており、約0.289インチの幅w、約0.275インチの高さh、および約0.250インチの直径φを有している。ワイヤーがばね要素の素線に形成された後、約25分間、約515℃で熱処理される。シリコンチューブが、素線の上に配設される。
【0082】
前述の心臓ハーネスの測定試料は、上述した手順に従って、材料試験機においてテストされた。荷重およびパーセント引張歪を含む試験データは、ゼロ荷重、0パーセント歪み状態と100%歪み状態との間で収集された。心臓ハーネスの挙動をy=ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセルソフトウェアを用いて実施され、関数y=0.003x+0.0073がもたらされた。直線回帰関数は、約0.9945の決定係数R2を有している。
【0083】
上述した各実施形態においては、約0パーセント歪みと100%の歪みとの間の試験データに基づいて、伸張関数y=ax+bが決定された。100%歪みをはるかに越えてテストする場合には、ハーネスのテスト部分の挙動が変化することが予測される。しかしながら、ここで理解されるべきことは、約0〜100%のテスト範囲が、各ハーネスにおいて計画されている伸張動作範囲を代表していることである。この動作範囲において、ハーネスの実施形態の伸張挙動は公知であり、かつ予測可能である。
【0084】
一つの実施形態によると、心臓ハーネスは、ハーネスの動作範囲が最高で約75%の伸張となるように、患者の心臓に対して寸法決めされかつ構成されている。他の実施形態においては、ハーネスの動作範囲は最高で約50%の伸張である。テストした実施形態については約100%の伸張までしかテストしていないが、ここで理解されるべきことは、さらなるテストが、100%をかなり上回る範囲における許容できる挙動を明らかにし得ることである。このように、ハーネスの動作範囲とは、それを超えては心臓は膨張できないという限界を定めることなしに、患者の心臓に緩やかな圧縮力を与えるという意図された目的においてハーネスの伸張挙動が許容できる範囲、を意味するものと理解されるべきである。
【0085】
さらに、ここで理解されるべきことは、直線回帰によって試験データから導き出された伸張関数を利用することにより、膨張あるいは荷重の任意の範囲において、関連するハーネスの伸張挙動を予測できることである。例えば、図18の実施形態を参照すると、少なくとも20パーセントの最小値を有する伸張動作範囲内における、円周方向の伸張の約20パーセントの変化が、約0.066ポンド/インチの円周方向の荷重の変化を生じさせることを確認できる。
【0086】
図15の実施形態を参照すると、約0〜100パーセントの間の伸張動作範囲内における、円周方向の伸張の約20パーセントの変化が、約0.02ポンド/インチの円周方向の荷重の変化を生じさせることを確認できる。
【0087】
実験的研究は、図15の実施形態におけるような伸張特性を有した心臓ハーネスが、病んでいる心臓に有利な治療効果に与えることを示している。研究はまた、図18の実施形態におけるような伸張特性を有した心臓ハーネスが、有利な治療効果を与えることを示している。しかしながら、ハーネスは、図18の実施形態における、あるいはそれより高い伸張性を有することが好ましい。したがって、円周方向の伸張における約20パーセントの変化が、約0.066 ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化をもたらすことが好ましい。
【0088】
テストしたいくつかの実施形態によって実証しかつ上述したように、ワイヤ直径、熱処理、およびばね要素の寸法といった構造特性を変化させることにより、計算された伸張関数においてかなりの変化を達成することができる。円周方向の伸張における約20パーセントの変化が、約0.066ポンド/インチ、0.02ポンド/インチ、0.018ポンド/インチ、あるいはこれらの値の間またはそれ以下の任意の範囲の円周方向の荷重の変化を生じさせる、他の心臓ハーネスの実施形態を製作できることは予想される。
【0089】
上述したようなハーネスの実施形態をテストすることは、その動作範囲におけるハーネスの挙動の分析を可能にする。例えば、伸張関数y=ax+bは、上述した実施形態と同様に試験データの全範囲にわたって計算することができるし、あるいは試験データの選択された範囲において計算することもできる。標準的な数学的性質によると、定数「a」は関数の勾配を表している。
【0090】
図18の実施形態を参照すると、パーセント伸張が増大するに連れて、試験データの勾配は減少する。このように、第1の選択された伸張範囲において第1の勾配「a」を直線回帰によって算出するとともに、第2の選択された伸張範囲において第2の勾配「a」を算出するときに、第2の範囲が第1の範囲におけるよりも大きい伸張値から構成されていると、第2の勾配「a」は第1の勾配「a」よりも小さい。図16におけるような他の実施形態においては、第2の勾配「a」は、試験データの少なくとも各部分における第1の勾配「a」とほとんど同じか、それ以下である。第1および第2の範囲は、それぞれ、少なくとも5パーセント伸張を上回るような有意な範囲のデータから成ることが好ましい。
【0091】
今まさに議論した分析は、心臓ハーネスが所望する挙動を示すかどうかを確認するために心臓ハーネスの伸張挙動を分析する際に有用である。例えば、好ましい実施形態において、第2の勾配「a」は第1の勾配「a」以下である。ハーネスが作動する間に用いられることがを予想される伸張範囲の部分について、そのような挙動を分析することは、さらに有用である。例えば、約0〜100パーセント伸張のハーネスの伸張作動範囲では、他の好ましい実施形態において、第2の勾配「a」は第1の勾配「a」以下である。さらに好ましい実施形態において、第1の選択された伸張範囲は約20〜30パーセント伸張の範囲内であり、かつ第2選択された伸張範囲は約25〜100パーセント伸張の範囲内である。さらに他の実施形態においては、第2の選択された伸張範囲は約25〜50パーセントの伸張範囲内である。
【0092】
上述した実施形態においては、約0〜100%の伸張において取られた試験データの直線回帰によって伸張関数が定められた。ここで理解されるべきことは、パーセント伸張のより限定された範囲においてなされた場合にも、そのような分析が有用であり得ることである。例えば、いくつかの実施形態においては、ハーネスの動作範囲はそのような伸張範囲に限定されることがあり得る。一つの実施形態によると、約20〜30パーセント伸張における伸張の関数としての荷重の変化は伸張関数y=ax+bによって表され、ここにおいて「a」および「b」は直線回帰によって決定され、かつ「a」の値は約0.0033以下である。
【0093】
例示の実施形態においては、決定係数がきわめて1に近かった。より詳しくは、決定係数は約0.9を上回り、いくつかの実施形態においては約0.98を上回る。好ましくは、直線回帰によって決定される伸張関数は、本願明細書において議論したように分析のために有用であるためには、少なくとも約0.8の決定係数を有する。
【0094】
上述した分析のそれぞれにおいては、ある例示的な伸張範囲における特性について具体的に議論した。ここで理解されるべきことは、少なくとも本願明細書に開示した試験データおよび対応する伸張性関数について、円周方向の伸張あるいは荷重の任意の範囲において対応するハーネスの特性を分析できることである。そのよう分析範囲の変化は、試験データおよび伸張関数によって予測される。そのような分析は、対応するハーネス実施形態の挙動を明確にするために有利である。
【0095】
いくつかの好ましい実施形態および実例との関連において本発明を開示してきたが、本発明が具体的に開示された実施形態を越えて他の実施形態へと広がり、および/または本発明および明らかな変更およびその均等物を用いることは当業者がよく理解するところである。さらに、本発明の数多くの変形例を詳細に図示しし記載したが、本発明の範囲内にある他の変更は、この開示に基づいて当業者には直ちに明らかとなる。実施形態の具体的な特徴および態様の様々な組合せあるいはサブコンビネーションをなすことも考えられるが、それもまた本発明の範囲に含まれる。したがって、開示された発明の異なる態様を形成するために、開示された実施形態の様々な特徴および態様を互いに組み合わせあるいは置換することができることは言うまでもない。このように、本願明細書に開示された本発明の範囲が上述した特定の実施形態によっては限定されず、以下の請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】その上に配置された心臓ハーネスを有する心臓の模式図。
【図2】図2A〜図2Bは、弛緩した状態のばねヒンジおよび張力下にあるばねヒンジを示す図。
【図3】平坦な材料シートから切断された心臓ハーネスの実施形態を示す図。
【図4】心臓の周りにフィットする形状に形成された図3の心臓ハーネスを示す図。
【図5】平坦な材料シートから切断された心臓ハーネスの他の実施形態を示す図。
【図6】心臓の周りにフィットする形状に形成された図5の心臓ハーネスを示す図。
【図7】模式的に示す心臓上に配設された、さらに他の実施形態の心臓ハーネスを模式的に示す図。
【図8】患者の心臓上に配設された複数の材料条片を示す図。
【図9】患者の心臓上に配設された房室溝カラーおよび乳頭筋の帯の実施形態を示す図。
【図10】心臓ハーネスの一実施形態において曲線をなす試験データを示す図。
【図11】図7の心臓ハーネスから概ね破断線線11−11に沿って切り出された測定試料を示す図。
【図12】材料試験機における図11の測定試料を示す図。
【図13】心臓ハーネスの一実施形態において曲線をなす試験データを示す図。
【図14】図11に示した測定試料における典型的なばね要素を模式的に示す図。
【図15】心臓ハーネスの一実施形態における試験データおよびそこから生み出された線形回帰線を示す図。
【図16】心臓ハーネスの他の実施形態に関連する試験データおよびそこから得られた線形回帰線を示す図。
【図17】心臓ハーネスのさらに他の実施形態における試験データおよびそこから得られた線形回帰線を示す図。
【図18】心臓ハーネスのさらに他の実施形態における試験データおよびそこから得られた線形回帰線を示す図。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年1月7日出願の米国特許出願第10/338,934号の一部継続出願であり、2002年1月7日出願の米国仮出願第60/346,788号を基礎として優先権を主張する。これら両出願の全内容は、この参照によって本願明細書に組み込れる。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、心臓病を治療する装置に関する。より詳しくは、本発明は、患者の心臓の少なくとも一部の周りにフィットするように構成された心臓ハーネスに関する。
【0003】
関連技術の説明
鬱血性心不全(「CHF」)は、組織の代謝要求、特に酸素の要求を満たす充分な流量で血液をポンプ送りする心臓の不全によって特徴付けられる。CHFの1つの特徴は、患者の心臓の少なくとも一部のリモデリングである。リモデリングには心臓壁の寸法、形状および厚みの物理的な変化が含まれる。例えば損傷を受けた左心室は、心筋の一部の限局性の菲薄化および伸長を伴うことがある。心筋が薄くなった部分は多くの場合に機能が損なわれ、心筋の他の部分がそれを補償しようとする。その結果、心筋の障害領域があるにも関わらず心室の拍出量を維持するために、心筋の他の部分が膨張することがある。そのような膨張は、左心室が幾分球形の形状を呈するようにする。
【0004】
心臓リモデリングは多くの場合心臓壁を増加する壁張力あるいは、応力にさらす。そして、それはさらに心臓の機能的な性能を損なう。多くの場合、心臓壁は、そのような増加した応力によって生じる障害を補償するためにさらに膨張する。したがって、膨張がさらに膨張してより重い機能障害に至るという悪循環が生じる。
【0005】
歴史的に、鬱血性心不全は様々な薬物によって治療されてきた。心送血量を改良するための装置もまた用いられてきた。例えば、左心室補助ポンプは、心臓による血液のポンプ送りを補助する。心室の鼓動を最適に同期させて心送血量を改良するマルチチャンバペーシングもまた利用されてきた。広背筋のような様々な骨格筋が、心室のポンプ送りを補助するために用いられてきた。研究者および心臓外科医はまた、心臓の周りに配設される人工「ガードル」を試験してきた。そのような設計の1つが、心臓に巻きつけられる人工「ソックス」あるいは「ジャケット」である。
【0006】
先に議論したいくつかの装置には将来性があるが、リモデリングした心臓がさらにリモデリングすることを防止し、および/または病んでいる心臓の逆リモデリングを促進する、CHFを治療するための改良された装置の必要性がなお存在している。
【0007】
発明の要旨
本発明の一実施形態によると、心臓ハーネスは、患者の心臓の周りにフィットするとともに、心臓に対して圧縮力を負荷することによって心臓の膨張に抵抗するように構成される。ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現されるハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させる。ハーネスは、少なくとも20パーセントの最小値を有した伸張動作範囲を有している。動作範囲内における円周方向の伸張の20パーセントの変化は、約0.066ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化を生じさせる。
【0008】
さらなる実施形態によると、伸張動作範囲を超えるハーネスの円周方向の伸張は、ハーネスの長手方向の伸張より大きい。
【0009】
本発明の他の実施形態によると、心臓ハーネスは、患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成される。ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現される前記ハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させる。選択された伸張範囲における伸張の関数としての荷重変化はy=ax+bの形であり、aおよびbは直線回帰によって決定される。「a」の第1の値は少なくとも5パーセントである第1の選択された伸張範囲に対応し、「a」の第2の値は少なくとも5パーセントである第2の選択された伸張範囲に対応する。第2の伸張範囲は、第1の伸張範囲と重なり合わないように第1の伸張範囲より大きい値から成り、第2の値「a」は第1の値「a」以下である。
【0010】
他の実施形態によると、本発明は、患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成された心臓ハーネスを提供する。ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現されるハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させる。20パーセント伸張と30パーセント伸張との間における伸張の関数としての荷重変化は、概ねy=ax+bの形であり、「a」および「b」は直線回帰によって決定される。伸張の関数としての荷重変化における直線回帰は、少なくとも約0.8の決定係数を与える。「a」の値は約0.0033以下である。
【0011】
他の実施形態において、「a」の値は約0.002以下である。
【0012】
本発明のさらなる実施形態によると、心臓ハーネスは、患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成される。ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現されるハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させる。選択された伸張範囲における伸張の関数としての荷重変化は概ねy=cx2+ax+b形であり、c、a、およびbは直線回帰によって決定され、かつcは負の値である。
【0013】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面および請求の範囲と共に考慮したときに、以下に続く好適な実施形態の詳細な説明に鑑みて当業者に明らかなものとなる。
【0014】
好適な実施形態の詳細な説明
本出願は、心臓病を治療するための方法および装置に関する。本願出願人の係属中の出願(発明の名称「鬱血性心不全を治療するための膨張可能な心臓ハーネス」、出願番号09/634043、2000年8月8日出願。この参照によってその全体を本願明細書に明白に引用したものとする。)において議論したように、病んでいる心臓における壁応力を緩和することによりそのような心臓のリモデリングを阻止しあるいは後退させることが期待されている。本出願は、心臓壁を支持するための実施形態および方法について議論する。追加の実施形態および態様はまた、本願出願人の係属中の出願、2003年9月5日に出願した出願番号第10/656,733号「心臓ハーネス」、2002年9月10日に出願した出願番号第10/242,016号「心臓病を治療するための装置」、および(2002年10月31日に出願した出願番号第10/287,723号「心臓病治療装置および方法」において議論されているが、それらの全てがこの参照によって明白に引用されたものとする。
【0015】
図1は、それに取り付けられたハーネス32の形態の心臓壁応力減少装置を有する、哺乳類の心臓30を示している。この心臓ハーネス32は、心臓30に外接するとともに、壁応力を緩和するために集合して軽度の圧縮力を心臓上の負荷する一連のヒンジあるいはばね要素34を備えている。
【0016】
本願明細書において用いる「心臓ハーネス」という用語は、患者の心臓上にフィットして心臓周期の少なくとも一部の間に心臓上に圧縮力を負荷する装置を指す、幅の広い用語である。心臓上へのフィットが意図されるとともに従来技術において「ガードル」、「ソックス」、「ジャケット」と呼ばれている他の装置は、「心臓ハーネス」の意味に含まれる。
【0017】
図1に示されている心臓ハーネス32は、充填の間に心臓30が膨張するに連れて変形するように構成されたヒンジあるいはばねヒンジと呼ばれる一連のばね要素34を含む、少なくとも一つの波形の素線36を備えている。各ヒンジ34は、実質的に一方向性の弾性を提供する。すなわち、一方向において作動するが、その方向に対して垂直な方向には多くの弾性を提供しない。例えば、図2Aは弛緩している一実施形態のヒンジ部材34を示している。このヒンジ部材34は中央部分40および一組のアーム42を有している。図2Bに示したようにアームが引っ張られると、中央部分40に曲げモーメント44が負荷される。この曲げモーメント44は、その弛緩した状態へとヒンジ部材34を付勢する。典型的な素線が一連のそのようなヒンジから成ること、およびこのヒンジ34が素線36の方向に弾性的に伸張しかつ収縮するように適合していることに注目されたい。
【0018】
図1に示した実施形態においては、ばね要素34の素線36が、変形してばね要素を形成する、伸線加工されたワイヤーから作られている。図1は、次から次へと織り交ぜられて隣接する素線36を示しているが、追加の実施形態においては隣接する素線36が互いに重なり合わず、あるいは接触しないということは理解されるべきである。
【0019】
図3および図4は、心臓ハーネス50の他の好ましい実施形態を、そのようなハーネスを製造する2つの時点において示している。図示の実施形態では、ハーネス50は最初に、比較的薄くて平坦なシートの材料から形成される。平坦なシートからハーネスを形成するために、任意の方法を用いることができる。例えば、1つの実施形態においてはハーネスが材料から光化学的にエッチングされ、他の実施形態においてはハーネスが材料の薄いシートからレーザーカットされる。図3および図4に示した実施形態は、形状記憶特性を呈する超弾性材料であるニチノールの薄いシートからエッチングされたものである。平坦なシートの材料はひな型、金型等においてひだを付けられ、少なくとも心臓の一部の形を取るように成形される。
【0020】
図1および図4を参照すると、図示した実施形態の心臓ハーネス32、50は、患者の心臓の底部領域上に概ねフィットするように寸法決めされかつ構成された底部52、患者の心臓の頂端領域に概ねフィットするように寸法決めされかつ形作られた頂点部分56、およびこれらの底部と頂点部分との間にある中間部分58を備えている。
【0021】
図3および図4に示した実施形態においては、ハーネス50が波形のワイヤーの素線あるいは列36から成っている。上述したように、この波形は、所望の方向に弾性的に屈曲可能であるヒンジ/ばね要素34を備えている。いくつかの素線36は、相互接続要素60によって互いに接続されている。相互接続要素60は、素線36の互いの位置への保持を助けている。好ましくは、この相互接続要素60は、隣接する素線36間におけるいくらかの相対運動を可能としている。
【0022】
心臓は弛緩期と収縮期の間で膨張しかつ収縮するに連れて、心筋の収縮細胞が膨張し収縮する。病んでいる心臓において、心筋は、細胞が弱って少なくともいくらか収縮性を失うように膨張し得る。弱った細胞は、膨張および収縮の応力を処理する能力が小さい。このようにして、心臓のポンピングの効率が減少する。
【0023】
上述したように、また本願明細書に引用した出願においてより詳しく議論したように、波形のばね要素34は心臓30の膨張に対して抵抗する力を発揮する。集合的にばね要素が発揮する力は心臓を圧縮する役に立ち、心臓が膨張するときに心臓壁の応力を緩和する。ばねヒンジの各素線は、心臓が弛緩期の間に膨張するときにばねヒンジが対応して膨張するように構成され、膨張力を曲げエネルギーとしてばねに保存している。このように、心筋上の応力負荷はハーネスによって部分的に取り除かれる。応力のこの減少は心臓の作業負荷の減少を助け、心臓がより効果的に血液をポンプ送りできるようにし、かつ心筋細胞が健康なまま残り、あるいはまた健康状態の回復を助ける。
【0024】
心臓ハーネスのいくつかの実施形態を作ることができること、およびそのような実施形態の構造、寸法、柔軟性等を変化させながらも、壁体応力を減少させるために依然として心臓上に穏やかな圧縮力を作り出すことができることは、理解されるべきである。上述した出願において議論したように、そのような心臓ハーネスは、様々な金属、織物、樹脂、および撚り合わせ、織られ、あるいはまた編まれた繊維を含む、多くの適切な材料から作ることができる。適切な材料にはまた、超弾性材料および形状記憶を呈する材料が含まれる。例えば、ハーネスの好ましい実施形態はニチノールから作られる。形状記憶ポリマーもまた利用することができる。そのような形状記憶ポリマーには、形状記憶ポリウレタン、あるいはmnemoScienceから入手可能なオリゴ(e−カプロラクトン)ジメタクリレートおよび/またはポリ(e−カプロラクトン)を含む他のポリマーが含まれる。さらに、心臓ハーネスの実施形態のいくつかは心臓を実質的に取り囲むが、その他は心臓あるいはハーネスの外周の一部にわたって配設されるばね部材を用いることができる。
【0025】
まさに議論したように、曲げ応力は弛緩期の間にばね部材34によって吸収され、曲げエネルギーとしてこの部材に保存される。収縮期の間に心臓がポンプ送りすると、心筋が収縮し、心臓はより小さくなる。同時に、ばね部材34に保存されている曲げエネルギーが少なくとも部分的に放出され、それによって収縮期の間の心臓に援助を与える。好ましい実施形態において、ハーネスのばね部材によって心臓上に負荷される圧縮力は、収縮期の間に心臓が収縮するときになされる機械仕事の約10%〜15%から成る。ハーネスが心室のポンピングに取って代わることは意図されていないが、収縮期の間にハーネスは実質的に心臓を助ける。
【0026】
次に図5および図6を参照すると、ハーネス50の他の実施形態は、波形ワイヤの素線36あるいは条片を備えている。上述したように、この波形は、所望の方向に弾性的に屈曲可能であるヒンジ/ばね要素34を備えている。ばね要素の素線は、異なる方向に方向付けられているとともに、ハーネスの様々な部分において異なって構成されている。例えば、図5および図6に示したように、ハーネスの底部部52においては、心臓の長手方向軸線に対して概ね横断する方向にばね要素34が伸張しかつ収縮するように、素線が方向付けられている。頂部領域56においては、「アルキメデス螺旋」62の構造が複数の方向における膨張および変形を可能にするが、長手方向において最も伸張性がある。中間部分58においては、概ね長手方向において膨張しかつ収縮するように、素線36aが方向付けられている。加えて、いくつかの素線は、隣接する素線が横断方向において互い移動できるようにする相互接続ばね要素60aにより、互いに接続されている。しかしながら、中間部分58のいくつかの素線36aは、他の素線とは接続されておらず、横断方向において互いに自由に移動することができる。したがって、中間部分においては、素線は、長手方向および横断方向の間で集合的に拡張することができる。
【0027】
哺乳類の心臓においては、底部領域の心筋細胞は、心臓がポンピングする間に略横断方向に膨張しかつ収縮する傾向がある。頂部領域においては、心筋は、長手方向に膨張しかつ収縮する傾向がある。心臓の頂部領域と底部領域との間では、心筋は、長手方向および横断方向の間の方向において膨張しかつ収縮する。図5および図6に示した実施形態においては、ばね要素34は、膨張に対してより均一に抵抗して筋肉の応力を緩和するべく、概ね心筋が膨張する方向に方向付けられている。このように、ハーネスの底部領域、中間領域、および頂部領域52、58、56の構造は、心筋組織の本来の伸縮に対応するために特別に構成されている。このように、このハーネスは、心筋に特有な方向収縮を模倣している。
【0028】
次に図7を参照すると、模式的に示した心臓30上に配設された、心臓ハーネス70の他の実施形態が図示されている。図示のように、この心臓ハーネス70は、心臓を円周方向に取り囲むとともに心臓の底部72から頂部74まで長手方向に延びるように構成されている。このハーネス70は、長手方向に互いに隣接して配設された、円周方向に延びる複数のリング80を備えている。各リング80は、相互に連結された複数のばね部材34を有している。図7に示されているばね部材34は、図2Aおよび図2Bを参照して上述したばね部材34と実質的に同じである。
【0029】
複数のコネクタ82が、隣接するリング80を相互に接続している。コネクタ82は、隣接するリングの間にスペースを作り出すために、リングに対して長手方向に方向付けられた全長を有している。さらに、これらのコネクタは、それらの間にいくつらかの相対運動を許容しつつ、隣接するリングの間における適切な配列の維持を助けている。図示されているハーネスは、ばね部材34が互いに重なり合わないように構成されている。このようにして、ばね部材34の曲げの繰り返しおよび相対運動によるハーネスの摩耗が回避される。好ましくは、コネクタ82は、シリコンあるいは他の類似する材料のような準適合性の材料から形成される。コネクタ82がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、PTFEおよびePTFEといった任意の医療用グレードのポリマーから構成できることは予想できるが、それらには限定されない。
【0030】
図7に示した実施形態においては、各リング80は、最初は、一連のばね部材34を有した細長い素線から構成されている。ばね部材34の各素線は、好ましくはニチノール、あるいは形状記憶特性を有した他の金属である、引き抜き加工されたメタリックワイヤから形成される。好ましくは、ニチノールワイヤは、ばね部材の列に形付けられるとともに、所望するばね部材の構造の形状記憶を呈するように処理が施される。そのような処理の後、それぞれの細長い素線は、細長い素線の反対側の端部が接続されたときに、この細長い素線が図7に示した環状の構造を呈するように、それぞれある長さに切断される。
【0031】
結果として得られるリング80が患者の心臓30の全体的な解剖学的組織に一致して寸法決めされるように、細長い素線36の全長が選択されることは理解される。より詳しくは、ハーネスの頂部部分に用いられる素線は、底部部分を形成するために用いられる素線ほど長くはない。このように、このハーネスは、患者の心臓の形状に追従するために底部52から頂部54へと略テーパ状である。他の実施形態においては、ハーネスの底部におけるリング80bの直径が、隣接するリング80cの直径よりも小さい。この実施形態においては、ハーネスは、底部と頂部との間の場所において最も大きい直径を有し、かつその場所から底部および頂部へとテーパ状である。好ましくは、最も直径が大きい場所は、頂端部56よりも底端部52に近い。素線の長さが、ばね部材の寸法と同様に、心臓ハーネス70の意図する寸法および/またはハーネスが患者の心臓に負荷することが意図されている圧縮力の大きさに基づいて選択できることは、考えられることである。
【0032】
引き続いて図7を参照すると、ハーネス70の底部52の右側84は、リングには形成されずにハーネス70の円周方向の一部においてのみ延びる、相互に連結されたばね部材の素線86を有している。好ましくは、部分的な素線86は、この部分的な素線が引き伸ばされるようにして、隣接している完全なリングに接続される。このように、部分的な素線86は、図7において模擬されているように、右心房の上側部分を「カップ状にする」ために内側に曲がる。
【0033】
図示の実施形態では、リング80は誘電材料で被覆されており、かつコネクタ82は非導電材料から形成されている。このように、各リングは、ハーネスの他のリングから電気的に絶縁されている。好ましくは、素線をリングに形成する前に、ばね部材の素線の上でシリコンチューブを前進させる。他の実施形態においては、リングに形成される前および後において、ニチノール製のワイヤが絶縁材料によって浸漬被覆される。
【0034】
ハーネスを誘電材料で被覆するために、様々な材料および方法を用いることができる。図示の実施形態では、リングがシリコンゴムで被覆される。他の許容できる材料には、Union Carbide社から入手可能な誘電性ポリマーであるパリレン含む同様なポリマーばかりでなく、ウレタンおよびセラミックが含まれる。この材料は、浸漬被覆および噴霧あるいは他の適切な方法といった、様々な方法によってハーネスに付加することができる。
【0035】
上述したように、隣接するリング80はコネクタ82によって互いに接続される。図7に示した実施形態においては、コネクタ82は、隣接するリング80の間で互い違いにされている。ここで理解されるべきことは、他の実施形態において、コネクタ82の異なる構造を利用できることである。例えば、隣接するリング間のコネクタは、実質的に一列に並べることができる。
【0036】
図7に示した実施形態においては、コネクタ82がシリコンゴムから成っている。このように、コネクタはいくらか弾性的であり、かつハーネス70は長手方向に伸張性がある。しかしながら、ハーネスの長手方向の伸張性は、コネクタの弾性によって制限される。リングの幾何学的形状およびリングの材料の弾性的な特性により、ハーネス70の円周方向の伸張性は、長手方向の伸張性よりもはるかに大きい。隣接するリング間のコネクタが実質的に一列に並べられている実施形態においては、コネクタの弾力的な特性によって、ハーネスの長手方向の伸展性がより厳密に制限され、そのような実施形態においては図7の実施形態よりも長手方向の伸張性が低い。
【0037】
他の実施形態においては、ハーネスは、国際公開WO01/95830A2号公報において議論されているような、周知の「Atlas knit」構造のポリエステル繊維編物から作られる。なお、この公報の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。このようにして、織物が伸長するときにポリエステル繊維が必ずしも弾性的に変形しなくとも、ハーネスは柔軟であり、かつかつ織物は伸長することができる。そのような織物の伸長は、主として繊維の直線化、繊維の折れ曲り、および編まれたパターンの幾何学的な歪みによる。これらの伸縮要因が使い果たされると、ハーネスは非弾性的となり、もはや患者の心臓の寸法の増加に伴って弾性的には伸張しない。
【0038】
心臓ハーネスのような異物あるいは物質が、心臓の上にあるいは隣接して導入されると、人体はその異物の上あるいはその周りに組織を堆積させる傾向がある。例えば、フィブリンおよびコラーゲン堆積物は、心臓ハーネスがその上に配設された後に心臓およびその周辺に蓄積する傾向がある。この瘢痕組織は、柔軟ではあるが堅くなる傾向があり、患者の心臓の膨張に対してさらに抵抗しようとする。
【0039】
好ましい実施形態においては、心臓壁の張力を低減する装置は生体吸収性の材料から製作される。このように、この装置は所定の期間の後に溶解する。しかしながら、この装置は所定位置において心臓壁の張力を軽減する。この装置が心臓上に取り付けられると、患者の人体は、瘢痕組織を装置の上および心臓の周りに堆積させることによって反応する。好ましくは、この組織が少なくとも部分的に心臓を内部に閉じ込める。装置が溶解した後、瘢痕組織はそのまま残る。したがって、移植された装置はもはや更なる心臓の膨張を制限しあるいは抵抗しないが、瘢痕組織はそのような膨張に抵抗する。このように、永久的な移植組織を必要とすることなく、更なる心臓膨張に抵抗するための長期の治療が確立される。
【0040】
生体吸収性の心臓壁張力低減装置は、任意の生体吸収性材料から形成することができる。ここで理解されるべきことは、典型的に縫合糸、ステント等に用いられる生体吸収性材料を含む多くの種類の材料を用いることができることである。この開示を目的として、生体吸収性材料は、人体の内部に配置されたときに時間を経ると分解しあるいは溶解する材料、および生体分解性の材料を含む。好ましい実施形態においては、ポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA)のような、FDA認可の材料を用いることができる。合成されたあるいは天然由来のポリマーを含む、他の材料を適切に用いることができる。
【0041】
生体吸収性の心臓ハーネスは、許容できる任意の方法および仕方によって形成することができる。例えば、PGAあるいはPLAのシートは、心臓の周りにフィットする形状にモールド成形することができる。同様に、シートは、柔軟性の増加に力を貸す開口あるいは隙間を有するように形成することができる。さらに、上述した実施形態におけるように、波形のばね部材の列を有するように装置をモールド成形しあるいは切断することができる。さらにまた、弾力性をもたらすとともに、所望の状態および方向へと瘢痕の成長を促進しあるいはまた導くために、格子構造を用いることができる。さらにまた、生体吸収性材料は、心臓の周りにフィットしてその膨張を抑制するために織り上げ、撚り合わせ、編むことができるといった、押出加工されたファイバあるいは繊維として提供することができる。
【0042】
上述した出願において議論したように、心臓壁応力を軽減するために力が負荷されると、心臓における動作負荷が減少する。動作負荷を減少させることは、心臓が少なくとも部分的に休めるようにし、少なくとも部分的にそれ自身を回復させる機会を心臓に与えるように見える。例えば、心臓壁の応力が減少すると、リモデリングした病んでいる心臓が、より健康になるように逆方向にリモデリングすることが期待される。壁体応力を減少させる効果は、有益かつ有利な回復効果へと実際に導くことができる。
【0043】
他の好ましい実施形態においては、心臓壁張力低減装置は、生体吸収性材料が溶解するにつれて有利な薬物が放出されるように、医学的に有利な薬物と組み合わせられた生体吸収性材料から少なくとも部分的に製作される。例えば、心筋の再生を促進するために、骨髄あるいは幹細胞を設けることができる。この種の治療は、梗塞の回復を助けるとともに心臓の治癒を促進する。もちろん、心臓を助けることが期待される任意のタイプの薬物を、生体吸収性装置に組み合わせることができることは、理解されるべきである。
【0044】
他の実施形態においては、生体吸収性の心臓ハーネスは、取り付けられたハーネスの周りにおける身体組織の堆積あるいは成長に抵抗する、抗フィブリン剤薬物あるいはまた他の薬物と組み合わることができる。このように、このハーネスは、心臓の壁体応力を減少させ、回復し始める機会を心臓に与えるが、大量の瘢痕組織は形成させない。この実施形態においては、このハーネスは、疾患症状の悪化を進展させることなくその動作を持続させることができるようにするべく、心臓を休ませるのに十分な期間の後に溶解するように構成される。ハーネスが溶解した後においては、瘢痕組織がほとんどあるいは全く残らないので、休むことができた心臓はそのような組織による制限を受けない。上述したように、瘢痕組織は時には有利な目的の役に立つことができるが、いくつかの状況においては瘢痕組織の回避から利益を受ける。
【0045】
上述したように、ハーネスが心臓壁の応力を減少させるときに、心臓が逆方向にリモデリングすることが期待される。このように、心臓は、生体吸収性ハーネスが溶解すると、ハーネスを取り付けたときよりも小さくなる。一つの実施形態によると、新しい、より小さなハーネスが心臓上に配置され、更なる逆方向のリモデリングを促進する。このプロセスは、心臓が所望のサイズおよび健康水準に到達するまで、所望の通りに反復することができる。所望のサイズが達成されると、心臓はそのサイズを維持するのに十分に健康であるので、更なるハーネスを必要としない。あるいは、所望のサイズに心臓を維持するために、恒久的なハーネスを取り付けることができる。さらに他の実施形態においては、組織の成長に抵抗する薬物なしの、他の生体吸収性ハーネスが取り付けられる。このように、心臓は、心臓が所望のサイズを越えて拡大することに抵抗する身体組織の内側に、少なくとも部分的に閉じ込められることになる。このことは、所望の健康なサイズを心臓が維持することを助ける。
【0046】
さらに別の好ましい実施形態においては、少なくとも部分的に心臓を閉じ込める組織の成長を促進する異物が、心臓の周りに導入される。これらの異物は心臓ハーネスの形態である必要はなく、かつ心臓上に何らかの圧縮力を与える必要もない。しかしながら、これらの異物は、フィブリン/コラーゲンあるいは他の組織が心臓の周りに成長することを促進し、少なくとも部分的に心臓をその組織内に閉じ込める。この組織は、ソックスあるいはジャケットとして作用し、心臓の更なる膨張に抵抗する。
【0047】
ここで理解されるべきことは、そのような異物を生体吸収性とすることもできるが、必ずしもそうである必要はないということである。例えば、この異物は、フィブリンあるいはコラーゲンの成長を促進するために特別に調整された、液体あるいは粉末の刺激物から構成することができる。そのような刺激物は、細かく刻まれあるいは粉末化された、ポリエステルあるいは他のプラスチックを含むことができる。
【0048】
他の実施形態においては、特定の場所および所望の方向への組織の成長を促進するために、異物あるいは心臓ハーネスを心臓の周りに配設することができる。例えば、心筋の方向的な膨張および収縮に追従するように組織の成長を促進させるべく、物質を配置することができる。例えば図8において、異物は、心筋の方向的な膨張および収縮に対応するように配設された一連の条片90として、心臓30の上あるいはその周りに配設されている。このことは、条片90の領域および方向的な配置における組織の成長を促進する。このように、組織は、心筋の方向的な膨張および収縮に対応して成長する。そのような組織は、心臓が充填の間に膨張しかつポンプ送りの間に収縮するときに、心筋の負荷の減少を助ける。好ましくは、組織を成長を促進する異物は生体吸収性材料から成る。他の実施形態においては、異物は生体吸収性ではなく、患者の人体の内部に永久に維持される。
【0049】
患者の心臓の周りへの異物の導入および配置は、最小限に侵襲性の方法によって実施することができる。最小限に侵襲性の方法はまた、ニチノール、織り上げられあるいはまた生体吸収可能なハーネスを心臓の周りに取り付けるために、用いることができる。緩いあるいは分離した異物を心臓の周りに配設するために、さらに非侵襲的な方法を用いることができる。
【0050】
患者の心臓は鬱血性心不全の間に拡大するので、壁のような弁といったある種の弁の環状部は、心臓と共に成長する傾向がある。最終的には、完全に弁を閉じるためには弁リーフレットが十分に大きくない状態まで、弁の環状部のサイズが増加する。弁機能不全の一因となる他の要因は、心臓が拡大するに連れて、心臓の幾何学的形状がいくらか変化することにある。乳頭筋のような心臓の一部は、心臓の腱索を介して乳頭筋が取り付けられている弁リーフレットから外側に移動する。これらの乳頭筋は、一杯に引き延ばされるので、弁閉鎖の間に弁リーフレットが互いに十分に係合することを妨げる。このように、弁リーフレットは完全に閉じることができず、弁に漏れが生じる。そのような弁の漏れは、簡単に患者の心臓疾患をより悪化させる。
【0051】
「心臓病治療装置および方法」と名付けられた上述の出願において議論したように、ハーネスあるいはカラーは、心臓の特定部位に圧縮力を作用させて弁機能不全の防止あるいは減少を助けるように構成することができる。例えば、カラー型の装置は、心臓30の房室溝領域92の周りにフィットするように、特別に構成することができる。図9が示している房室溝カラー94は、弁環状部のサイズを減少させあるいはまた所望のサイズを越えて弁環状部が拡大することを防止する傾向がある圧縮力を作用させるために、準備されかつ構成されている。
【0052】
引き続いて図9を参照すると、乳頭筋バンド96は、乳頭筋の領域において心臓30の外周に配置されるように構成することができる。周知のように、乳頭筋は、房室溝と心臓の頂部との間の概ね中間点にある。したがって、乳頭筋バンド96は、乳頭筋の高さにおいて心臓の直径を減少させるべく圧縮力を作用させることができる。このことは、それらが弁リーフレットの閉鎖を可能にしかつ容易にするように、乳頭筋がより引き延ばされないようにすることを助ける。図示の実施形態においては、乳頭筋バンド96は、織り上げられあるいは編まれた織物から製作されている。ここで理解されるべきことは、乳頭筋バンド96はまた、図1〜図7に示されている実施形態に関連して図示しかつ議論した構造のような、波形のばねヒンジ構造を有することができることである。さらに、房室溝カラー94および/または乳頭筋バンド96は、シリコーンゴムのような実質的に弾性的な材料から製作することができる。
【0053】
上述したように、心臓ハーネスは、患者の心臓上に緩やかな圧縮力を負荷する。房室溝カラー94および乳頭筋バンド96の実施形態が、典型的な心臓ハーネスよりも積極的な圧縮力を作用させることが期待される。他の実施形態においては、恒久的な心臓ハーネスの移植片のうち、心臓の房室溝92あるいはまた心臓の乳頭筋領域と係合するように構成された部分が、それらの部分における組織の成長のために目ざましい刺激をもたらすために、刺激物で覆われる。したがって、心臓の房室溝および乳頭筋の領域における組織の成長が増大し、これらの領域における膨張に対してさらなる抵抗を与える。
【0054】
他の実施形態においては、生体吸収性の織り上げられあるいは編まれた房室溝カラー94が、房室溝の内側およびその周りにおける組織の成長を促進し、恒久的な移植片なしに同様な利益をもたらす。生体吸収性の乳頭筋バンド96が同じように設けられる。ここで理解されるべきことは、房室溝カラー94および乳頭筋バンド96を、互いに独立してあるいは互いに連携して、かつ恒久的なあるいは生体吸収性の心臓ハーネスとは無関係に若しくは連携して、用いることができることである。例えば、心臓ハーネスを取り付ける前あるいはその後に、乳頭筋バンドを心臓上に配置することができる。
【0055】
さらに他の実施例においては、心臓の特定部分に特別に導かれた力を負荷するとともに、組織成長を増大させた特定の領域を作り出すために、房室溝カラー94および乳頭筋バンド96を心臓ハーネスに組み込むことができる。
【0056】
さらに他の実施形態においては、房室溝カラーあるいはまた乳頭筋バンドは、生体吸収性の材料から製作されるとともに、第1の力の範囲内において患者の心臓上に力を作用させるように構成される。心臓ハーネスは、第2の力の範囲内で患者の心臓上に力を作用させるように、設けられかつ構成される。第1の力の範囲は、乳頭筋バンドあるいは房室溝カラーが作用すべきであるが、第2の範囲よりも大きい力のレベルを誘起する。このように、患者の心臓上に組み合わせて取り付けると、心臓の房室溝あるいは乳頭筋バンドの領域には、他の場所よりも大きな力が作用する。時間が経過してカラーあるいはバンドが吸収されると、心臓上に負荷される力はより均一化する。この構造は、心臓の残りの部分が必要とするよりも大きい度合いの力を心臓の一つの領域に負荷することにより、急性弁膜性機能不全の治療を可能とする。時間とともに、心臓の残りの部分がリモデリングするので、弁膜性機能不全を治療するための追加の力は必要ではなく、本実施形態においてはもはや作用することがない。
【0057】
上述した実施形態の変形例においては、房室溝カラーあるいはまた乳頭筋バンドは、生体吸収性材料から形成されるとともに、それを越えてカラー/バンドが変形しない最大寸法を有するように構成される。このように、心臓の選択された部分を特定の寸法に拘束しつつ、心臓の残りの部分を拘束しないようにすることができる。このことは、深刻な問題に取り組みつつ、全体としての心臓の受動的な治療を可能とする。ここで理解されるべきことは、他の実施形態においては、生体吸収性部材が患者の心臓の所望する部分に目標とする増大させた力を一時的に負荷しつつ、付随する心臓ハーネスが心臓のより大きな部分の上により均一で緩やかかつ恒久的な圧縮力を与えることができることである。
【0058】
上述した実施形態においては、治療上の利益を達成するために、好ましくは、心臓ハーネスが心臓上に緩やかな圧縮力を負荷する。治療の範囲内で負荷される力あるいは圧力は、本願明細書においては、心臓のような臓器に負荷されたときにその臓器に対して利益となる、充分な量の圧力として定められる。一つの実施形態においては、心臓ハーネスのための治療範囲は約2〜20mmHgの間にある。より好ましくは、治療上の圧力は約2〜10mmHgであり、最も好ましくは約2〜5mmHgである。
【0059】
次に図10を参照すると、引き抜き加工ニチノールワイヤから波形のばねヒンジへと構成された心臓ハーネスの一実施形態における実際の試験データを反映した、圧力とパーセント引張ひずみとのカーブ100が示されている。図示したように、この実施形態のハーネスは大きく変形することができる。この実施形態において、ハーネスは、患者の心臓にフィットさせるために、その最初の休息状態から引き延ばされる。心臓の上にあるときに、それは緩やかな圧縮力を負荷して、心臓の逆方向のリモデリングを助けるのに役立つ。心臓が逆方向にリモデリングしてより小さくなると、このハーネスはそれに対応してより小さくなる。もちろん、心臓のサイズは、弛緩期の始まりと弛緩期の終わりとの間で変化する。図示した実施形態においては、弛緩期の初めDSおよび終わりDFに対応する引張歪のレベルにおいて、ハーネスによって負荷される圧力を特定するために、DSおよびDFというラベルが曲線に付加されている。これと同様に、ラベルD’SおよびD’Fは、心臓が逆方向にリモデリングしてより小さくなったときの、弛緩期の始めおよび終わりにおいてハーネスにより負荷される相対的な圧力を図示している。図示した実施形態においては、心臓ハーネスは、心臓の寸法が変化したときにも心臓に対して連続的に順応し、心臓が甚だしく逆リモデリングしたときにも心臓に対して治療上の圧力を負荷する。
【0060】
図示した実施形態においては、心臓ハーネスは、ハーネスの歪に応答して圧力を作用させる。例えば、ハーネスに約100%の歪みが与えられると、それは心臓上に約10mmHgを作用させる。逆リモデリングの結果として心臓がより小さくなると、ハーネスのパーセント歪みが減少し、ハーネスが作用させる対応の圧力もまた減少する。好ましい実施形態においては、ハーネスは、広範囲の変形に対して、負荷される圧力の変化が比較的小さくなるように構成される。このように、心臓が甚だしく逆リモデリングした後においても、このハーネスは治療的な圧力を与える。
【0061】
例えば、引き続いて図10を参照すると、ハーネスが100%から60%へと歪みが減少するときの40%の歪みの変化に対応する寸法の減少は、約3mmHg未満の圧力の負荷の減少を伴う。80%から40%への歪の40%の変化は、約4mmHg未満の圧力の減少を伴う。さらにまた、20%の寸法の縮小は、約3mmHg未満、あるいはハーネスの歪みの程度に応じて、約2mmHg未満の圧力の減少を伴う。ハーネスの寸法/歪の変化に対応する圧力の変化を示す追加の関係は、図10に示した圧力/歪み曲線から得ることができる。
【0062】
他の実施形態においては、図10の試験データによって示されるハーネスは、異物の導入に応じて組織の成長を妨げる薬物を含む生体吸収性のコーティングで覆われている。このように、心臓およびハーネスの周りにおける瘢痕組織の成長は最小化され、かつハーネスは、患者の心臓に対してその形状を適合させかつ変化させることを防止する瘢痕組織なしに、心臓の逆リモデリングに連れてその大きさを劇的に減少させることができる。
【0063】
次に図11および図12を参照すると、本願の出願人は、心臓ハーネスの弾性的な挙動を検査するための方法および装置を開発した。図11は、心臓ハーネスから取った細長い測定試料110を示している。図示した実施形態においては、この測定試料110は、図7のハーネス70から線11−11に沿って取り出された。しかしながら、ここで理解されるべきことは、測定試料は、材料試験の間にハーネスを適切に表すように、測定試料がハーネスの実質的に十分な部分から構成される限りにおいて、ハーネスの任意の部分から取ることができることである。引き続いて図11を参照すると、測定試料110は、好ましくは全長Lおよび幅Wを有する。全長Lは、ハーネスの外周に概ね沿った方向に定められる。言い換えると、 全長Lは、心臓およびハーネスの長手方向軸に対して略横断方向において取られる。最も好ましくは、全長Lは、長手方向軸に対して略垂直な方向において取られる。幅Wは、長手方向軸に概ね沿った方向に延びている。
【0064】
次に図12を参照すると、測定試料110は、Instron(登録商標)から入手可能な材料特性試験機112に取り付けられる。ハーネスの測定試料110は材料試験機112のマウント114に取り付けられ、この機械はその全長Lに沿って測定試料110を引っ張る。この材料試験機112は、負荷を詳述するポンド力(lbF)のデータ、および全長Lに沿った測定試料110の対応パーセント引張歪を収集する。次いで、負荷は、図示した実施形態においては長手方向である、測定試料の幅Wに関して正規化される。したがって、図示した実施形態においては、荷重データはポンド/インチの単位で取得される。
【0065】
上述した試験の手順は、そのような実施形態を比較することができるように、心臓ハーネスの様々な実施形態における弾性/変形挙動の測定を可能にする。一貫性のために、検査は室温で、好ましくは約37℃において実施される。上述したように、荷重は測定試料110の、対応するハーネスの外周に沿った方向において取られた全長Lに沿って負荷される。したがって、負荷される荷重は、ハーネスの円周方向における荷重を表しかつそれに対応している。パーセント引張歪もまた、全長Lに沿って取られる。このように、パーセント引張歪は、荷重ゼロ状態より上方において、ハーネスの円周方向の膨張のパーセントを表しかつ対応している。
【0066】
次に図13を参照すると、心臓ハーネスの一実施形態の伸張性を示す、予測される伸張性カーブが示されている。図示のグラフは、上述した「atlas knit」を用いて製作されたハーネスのような、編まれた材料から製作された心臓ハーネスの挙動を表している。図面に示したように、テストした実施形態は、その形状が略放物線状に見える。すなわち、パーセント引張歪が増加すると、対応する荷重は指数関数的に増加する。図示した実施形態においては、40%〜50%の間のパーセント歪みにおいて漸近線が定められることが予測される。その時点においては、測定試料はその膨張限界に到達する。
【0067】
次に図14を参照すると、図7のハーネス70のような、ハーネスの例示的なばね要素34が示されている。図14のばね要素34は、そのようなばね要素の素線からの一つの要素を表している。この図は、試験データが得られたいくつかの特定の実施形態の寸法を定めるために用いられる。
【0068】
図15も参照すると、プロットされた試験データは心臓ハーネスの測定試料のために示されている。図15の試験データによって例示される心臓ハーネスは、好ましくは、約0.008インチの直径を有する引き抜き加工されたニチノールワイヤから形成されたばね要素の素線から構成されている。このばね要素は、図14に示したばね要素34に似ており、約0.165インチの幅w、約0.163インチの高さh、および約0.126インチの直径φを有している。ワイヤがばね要素の素線へと形成された後、それは約30分間にわたって約485℃で熱処理される。約0.010インチの内径および約0.025インチの外径を有するシリコンチューブが素線の上に配設される。
【0069】
前述した心臓ハーネスの測定試料を、上述した手順に従って、材料試験機においてテストした。荷重およびパーセント引張歪を含む試験データが、ゼロ荷重、0パーセント歪み状態と100%歪み状態との間で収集された。代表的な試験データポイントが図15のプロット線に提示されているが、そこにおいて パーセント引張歪はX軸に沿って表示され、かつ測定試料の幅Wに関して正規化された荷重はy軸に沿って表示されている。
【0070】
引き続いて図15を参照すると、心臓ハーネスの挙動をy=ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセル(登録商標)ソフトウェアを用いて実施され、関数y=0.001x+0.005がもたらされた。この直線回帰関数は、約0.969の決定係数R2を有している。直線回帰において、決定係数R2が、直線回帰関数が収集されたデータをどれだけ良好に表しているかを示すことは理解される。図示した実施形態においては、R2の値がきわめて1に近く、したがって直線回帰線がデータを密接に表していることを示している。
【0071】
次に図16を参照すると、プロットされた試験データは、心臓ハーネスの他の実施形態の測定試料を示している。図16の試験データによって例示される心臓ハーネスは、好ましくは、約0.012インチの直径を有する引き抜き加工されたニチノールワイヤから形成されたばね要素の素線から構成されている。このばね要素は、図14に示したばね要素34に似ており、約0.300インチの幅w、約0.275インチの高さh、および約0.250インチの直径φを有している。ワイヤーがばね要素の素線に形成された後、約30分間、約485℃で熱処理される。約0.014インチの内径および約0.029インチの外径を有するシリコンチューブが素線の上に配設される。
【0072】
前述の心臓ハーネスの測定試料は、上述した手順に従って、材料試験機においてテストされた。荷重およびパーセント引張歪を含む試験データは、ゼロ荷重、0パーセント歪み状態と100%歪み状態との間で収集された。代表的な試験データポイントが図16のプロット線に提示されているが、そこにおいて、パーセント歪はX軸に沿って表示され、かつ測定試料の幅Wに関して正規化された荷重はy軸に沿って表示されている。
【0073】
引き続き図16を参照すると、心臓ハーネスの挙動をy=ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセルソフトウェアを用いて実施され、関数y=0.0009x+0.0083がもたらされた。この直線回帰関数は、約0.9864の決定係数R2を有している。
【0074】
次に図17を参照すると、プロットされた試験データは、心臓ハーネスの他の実施形態の測定試料を示している。図17の試験データによって例示される心臓ハーネスは、好ましくは、約0.012インチの直径を有する引き抜き加工されたニチノールワイヤから形成されたばね要素の素線から構成されている。このばね要素は、図14に示したばね要素34に似ており、約0.300インチの幅w、約0.275インチの高さh、および約0.250インチの直径φを有している。ワイヤーがばね要素の素線に形成された後、約30分間、約485℃で熱処理される。約0.014インチの内径および約0.029インチの外径を有するシリコンチューブが素線の上に配設される。明らかなように、図17に表されている心臓ハーネスは、図16に表されている心臓ハーネスと構造的にきわめて類似している。実際、ハーネスとの間の最も重大な差は、隣接する素線の間のコネクタの構造に見い出される。上述したように、コネクタ配置の違いによって、これらの実施形態における長手方向の伸張性はいくらか異なっている。しかしながら、以下に述べるように、これらの実施形態における円周方向の伸張性は極めて類似している。
【0075】
前述の心臓ハーネスの測定試料は、上述した手順に従って、材料試験機においてテストされた。荷重およびパーセント引張歪を含む試験データは、ゼロ荷重、0パーセント歪み状態と100%歪み状態との間で収集された。代表的な試験データポイントが図17のプロット線に提示されているが、そこにおいて、パーセント歪はX軸に沿って表示され、かつ測定試料の幅Wに関して正規化された荷重はy軸に沿って表示されている。
【0076】
引き続き図17を参照すると、心臓ハーネスの挙動をy=ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセルソフトウェアを用いて実施され、関数y=0.0009x+0.0073がもたらされた。この直線回帰関数は、約0.9933の決定係数R2を有している。
【0077】
次に図18を参照すると、プロットされた試験データは、心臓ハーネスの他の実施形態の測定試料を示している。図18の試験データによって例示される心臓ハーネスは、好ましくは、約0.011インチの直径を有する引き抜き加工されたニチノールワイヤから形成されたばね要素の素線から構成されている。このばね要素は、図14に示したばね要素34に似ており、約0.165インチの幅w、約0.163インチの高さh、および約0.126インチの直径φを有している。ワイヤーがばね要素の素線に形成された後、約30分間、約485℃で熱処理される。シリコンチューブが、素線の上に配設される。
【0078】
前述の心臓ハーネスの測定試料は、上述した手順に従って、材料試験機においてテストされた。荷重およびパーセント引張歪を含む試験データは、ゼロ荷重、0パーセント歪み状態と100%歪み状態との間で収集された。代表的な試験データポイントが図18のプロット線に提示されているが、そこにおいて、パーセント歪はX軸に沿って表示され、かつ測定試料の幅Wに関して正規化された荷重はy軸に沿って表示されている。
【0079】
引き続いて図18を参照すると、心臓ハーネスの挙動をy=ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセルソフトウェアを用いて実施され、関数y=0.0033x+0.0238がもたらされた。この直線回帰関数は、約0.9749の決定係数R2を有している。
【0080】
引き続き図18を参照すると、測定点によって表される曲線の勾配が、パーセント歪みが増大するに連れて小さくなることが認められる。心臓ハーネスの挙動をy=cX2+ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセル(登録商標)ソフトウェアを用いて実施され、関数y=−0.00005x2+0.0054x−0.0129がもたらされた。この直線回帰関数は、約0.9989の決定係数R2を有している。
【0081】
心臓ハーネスのさらに他の実施形態は、約0.016インチの直径を有する引き抜き加工されたニチノールワイヤーから形成されたばね要素の素線から構成されている。このばね要素は、図14に示したばね要素34に似ており、約0.289インチの幅w、約0.275インチの高さh、および約0.250インチの直径φを有している。ワイヤーがばね要素の素線に形成された後、約25分間、約515℃で熱処理される。シリコンチューブが、素線の上に配設される。
【0082】
前述の心臓ハーネスの測定試料は、上述した手順に従って、材料試験機においてテストされた。荷重およびパーセント引張歪を含む試験データは、ゼロ荷重、0パーセント歪み状態と100%歪み状態との間で収集された。心臓ハーネスの挙動をy=ax+bの形で記載する関数を導き出すために、試験データの直線回帰が実施された。直線回帰は、マイクロソフト・エクセルソフトウェアを用いて実施され、関数y=0.003x+0.0073がもたらされた。直線回帰関数は、約0.9945の決定係数R2を有している。
【0083】
上述した各実施形態においては、約0パーセント歪みと100%の歪みとの間の試験データに基づいて、伸張関数y=ax+bが決定された。100%歪みをはるかに越えてテストする場合には、ハーネスのテスト部分の挙動が変化することが予測される。しかしながら、ここで理解されるべきことは、約0〜100%のテスト範囲が、各ハーネスにおいて計画されている伸張動作範囲を代表していることである。この動作範囲において、ハーネスの実施形態の伸張挙動は公知であり、かつ予測可能である。
【0084】
一つの実施形態によると、心臓ハーネスは、ハーネスの動作範囲が最高で約75%の伸張となるように、患者の心臓に対して寸法決めされかつ構成されている。他の実施形態においては、ハーネスの動作範囲は最高で約50%の伸張である。テストした実施形態については約100%の伸張までしかテストしていないが、ここで理解されるべきことは、さらなるテストが、100%をかなり上回る範囲における許容できる挙動を明らかにし得ることである。このように、ハーネスの動作範囲とは、それを超えては心臓は膨張できないという限界を定めることなしに、患者の心臓に緩やかな圧縮力を与えるという意図された目的においてハーネスの伸張挙動が許容できる範囲、を意味するものと理解されるべきである。
【0085】
さらに、ここで理解されるべきことは、直線回帰によって試験データから導き出された伸張関数を利用することにより、膨張あるいは荷重の任意の範囲において、関連するハーネスの伸張挙動を予測できることである。例えば、図18の実施形態を参照すると、少なくとも20パーセントの最小値を有する伸張動作範囲内における、円周方向の伸張の約20パーセントの変化が、約0.066ポンド/インチの円周方向の荷重の変化を生じさせることを確認できる。
【0086】
図15の実施形態を参照すると、約0〜100パーセントの間の伸張動作範囲内における、円周方向の伸張の約20パーセントの変化が、約0.02ポンド/インチの円周方向の荷重の変化を生じさせることを確認できる。
【0087】
実験的研究は、図15の実施形態におけるような伸張特性を有した心臓ハーネスが、病んでいる心臓に有利な治療効果に与えることを示している。研究はまた、図18の実施形態におけるような伸張特性を有した心臓ハーネスが、有利な治療効果を与えることを示している。しかしながら、ハーネスは、図18の実施形態における、あるいはそれより高い伸張性を有することが好ましい。したがって、円周方向の伸張における約20パーセントの変化が、約0.066 ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化をもたらすことが好ましい。
【0088】
テストしたいくつかの実施形態によって実証しかつ上述したように、ワイヤ直径、熱処理、およびばね要素の寸法といった構造特性を変化させることにより、計算された伸張関数においてかなりの変化を達成することができる。円周方向の伸張における約20パーセントの変化が、約0.066ポンド/インチ、0.02ポンド/インチ、0.018ポンド/インチ、あるいはこれらの値の間またはそれ以下の任意の範囲の円周方向の荷重の変化を生じさせる、他の心臓ハーネスの実施形態を製作できることは予想される。
【0089】
上述したようなハーネスの実施形態をテストすることは、その動作範囲におけるハーネスの挙動の分析を可能にする。例えば、伸張関数y=ax+bは、上述した実施形態と同様に試験データの全範囲にわたって計算することができるし、あるいは試験データの選択された範囲において計算することもできる。標準的な数学的性質によると、定数「a」は関数の勾配を表している。
【0090】
図18の実施形態を参照すると、パーセント伸張が増大するに連れて、試験データの勾配は減少する。このように、第1の選択された伸張範囲において第1の勾配「a」を直線回帰によって算出するとともに、第2の選択された伸張範囲において第2の勾配「a」を算出するときに、第2の範囲が第1の範囲におけるよりも大きい伸張値から構成されていると、第2の勾配「a」は第1の勾配「a」よりも小さい。図16におけるような他の実施形態においては、第2の勾配「a」は、試験データの少なくとも各部分における第1の勾配「a」とほとんど同じか、それ以下である。第1および第2の範囲は、それぞれ、少なくとも5パーセント伸張を上回るような有意な範囲のデータから成ることが好ましい。
【0091】
今まさに議論した分析は、心臓ハーネスが所望する挙動を示すかどうかを確認するために心臓ハーネスの伸張挙動を分析する際に有用である。例えば、好ましい実施形態において、第2の勾配「a」は第1の勾配「a」以下である。ハーネスが作動する間に用いられることがを予想される伸張範囲の部分について、そのような挙動を分析することは、さらに有用である。例えば、約0〜100パーセント伸張のハーネスの伸張作動範囲では、他の好ましい実施形態において、第2の勾配「a」は第1の勾配「a」以下である。さらに好ましい実施形態において、第1の選択された伸張範囲は約20〜30パーセント伸張の範囲内であり、かつ第2選択された伸張範囲は約25〜100パーセント伸張の範囲内である。さらに他の実施形態においては、第2の選択された伸張範囲は約25〜50パーセントの伸張範囲内である。
【0092】
上述した実施形態においては、約0〜100%の伸張において取られた試験データの直線回帰によって伸張関数が定められた。ここで理解されるべきことは、パーセント伸張のより限定された範囲においてなされた場合にも、そのような分析が有用であり得ることである。例えば、いくつかの実施形態においては、ハーネスの動作範囲はそのような伸張範囲に限定されることがあり得る。一つの実施形態によると、約20〜30パーセント伸張における伸張の関数としての荷重の変化は伸張関数y=ax+bによって表され、ここにおいて「a」および「b」は直線回帰によって決定され、かつ「a」の値は約0.0033以下である。
【0093】
例示の実施形態においては、決定係数がきわめて1に近かった。より詳しくは、決定係数は約0.9を上回り、いくつかの実施形態においては約0.98を上回る。好ましくは、直線回帰によって決定される伸張関数は、本願明細書において議論したように分析のために有用であるためには、少なくとも約0.8の決定係数を有する。
【0094】
上述した分析のそれぞれにおいては、ある例示的な伸張範囲における特性について具体的に議論した。ここで理解されるべきことは、少なくとも本願明細書に開示した試験データおよび対応する伸張性関数について、円周方向の伸張あるいは荷重の任意の範囲において対応するハーネスの特性を分析できることである。そのよう分析範囲の変化は、試験データおよび伸張関数によって予測される。そのような分析は、対応するハーネス実施形態の挙動を明確にするために有利である。
【0095】
いくつかの好ましい実施形態および実例との関連において本発明を開示してきたが、本発明が具体的に開示された実施形態を越えて他の実施形態へと広がり、および/または本発明および明らかな変更およびその均等物を用いることは当業者がよく理解するところである。さらに、本発明の数多くの変形例を詳細に図示しし記載したが、本発明の範囲内にある他の変更は、この開示に基づいて当業者には直ちに明らかとなる。実施形態の具体的な特徴および態様の様々な組合せあるいはサブコンビネーションをなすことも考えられるが、それもまた本発明の範囲に含まれる。したがって、開示された発明の異なる態様を形成するために、開示された実施形態の様々な特徴および態様を互いに組み合わせあるいは置換することができることは言うまでもない。このように、本願明細書に開示された本発明の範囲が上述した特定の実施形態によっては限定されず、以下の請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】その上に配置された心臓ハーネスを有する心臓の模式図。
【図2】図2A〜図2Bは、弛緩した状態のばねヒンジおよび張力下にあるばねヒンジを示す図。
【図3】平坦な材料シートから切断された心臓ハーネスの実施形態を示す図。
【図4】心臓の周りにフィットする形状に形成された図3の心臓ハーネスを示す図。
【図5】平坦な材料シートから切断された心臓ハーネスの他の実施形態を示す図。
【図6】心臓の周りにフィットする形状に形成された図5の心臓ハーネスを示す図。
【図7】模式的に示す心臓上に配設された、さらに他の実施形態の心臓ハーネスを模式的に示す図。
【図8】患者の心臓上に配設された複数の材料条片を示す図。
【図9】患者の心臓上に配設された房室溝カラーおよび乳頭筋の帯の実施形態を示す図。
【図10】心臓ハーネスの一実施形態において曲線をなす試験データを示す図。
【図11】図7の心臓ハーネスから概ね破断線線11−11に沿って切り出された測定試料を示す図。
【図12】材料試験機における図11の測定試料を示す図。
【図13】心臓ハーネスの一実施形態において曲線をなす試験データを示す図。
【図14】図11に示した測定試料における典型的なばね要素を模式的に示す図。
【図15】心臓ハーネスの一実施形態における試験データおよびそこから生み出された線形回帰線を示す図。
【図16】心臓ハーネスの他の実施形態に関連する試験データおよびそこから得られた線形回帰線を示す図。
【図17】心臓ハーネスのさらに他の実施形態における試験データおよびそこから得られた線形回帰線を示す図。
【図18】心臓ハーネスのさらに他の実施形態における試験データおよびそこから得られた線形回帰線を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成された心臓ハーネスであって、
前記ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現される前記ハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させ、
前記ハーネスは、少なくとも20パーセントの最小値を有した伸張動作範囲を有しており、
前記動作範囲内における前記円周方向の伸張の20パーセントの変化が、約0.066ポンド/インチ以下の円周方向荷重の変化をもたらすことを特徴とする心臓ハーネス。
【請求項2】
前記一部が、少なくともハーネスの実質的な部分を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項3】
前記動作範囲内における前記円周方向の伸張の20パーセントの変化が、約0.064ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項4】
前記動作範囲内における前記円周方向の伸張の20パーセントの変化が、約0.05ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項5】
前記動作範囲内における前記円周方向の伸張の20パーセントの変化が、約0.02ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項6】
前記動作範囲内における前記円周方向の伸張の20パーセントの変化が、約0.018ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項7】
前記伸張動作範囲が、少なくとも約25パーセントの最小値を有していることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項8】
前記伸張動作範囲を超える前記ハーネスの円周方向の伸張が、前記ハーネスの長手方向の伸張より大きいことを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項9】
患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成された心臓ハーネスであって、
前記ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現される前記ハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させ、
選択された伸張範囲における伸張の関数としての荷重変化が概ねy=ax+bの形であり、
aおよびbは直線回帰によって決定され、
「a」の第1の値は少なくとも5パーセントである第1の選択された伸張範囲に対応し、「a」の第2の値は少なくとも5パーセントである第2の選択された伸張範囲に対応し、
前記第2の伸張範囲は、前記第1の伸張範囲と重なり合わないように前記第1の伸張範囲より大きい値から成り、
「a」の前記第2の値が「a」の前記第1の値より大きくないことを特徴とする心臓ハーネス。
【請求項10】
前記第1および第2の範囲が互いに実質的に連続していることを特徴とする請求項9に記載の心臓ハーネス。
【請求項11】
前記第1および第2の選択された伸張範囲が、約0〜100パーセント伸張である前記ハーネスの伸張作動範囲内にあることを特徴とする請求項9に記載の心臓ハーネス。
【請求項12】
前記第1の選択された伸張範囲が、約20〜30パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項11に記載の心臓ハーネス。
【請求項13】
前記第2の選択された伸張範囲が、約25〜100パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項12に記載の心臓ハーネス。
【請求項14】
前記第2の選択された伸張範囲が、約25〜70パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項12に記載の心臓ハーネス。
【請求項15】
前記第2の選択された伸張範囲が、約25〜50パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項12に記載の心臓ハーネス。
【請求項16】
前記第2の選択された伸張範囲が、約25〜35パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項15に記載の心臓ハーネス。
【請求項17】
前記第2の選択された伸張範囲が、約30〜40パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項15に記載の心臓ハーネス。
【請求項18】
前記第2の選択された伸張範囲が、約35〜45パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項15に記載の心臓ハーネス。
【請求項19】
前記第2の選択された伸張範囲が、約40〜50パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項15に記載の心臓ハーネス。
【請求項20】
「a」の前記第1の値が「a」の前記第2の値より大きいことを特徴とする請求項9に記載の心臓ハーネス。
【請求項21】
患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成された心臓ハーネスであって、
前記ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現される前記ハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させ、
20パーセント伸張と30パーセント伸張との間における伸張の関数としての荷重変化が概ねy=ax+bの形であり、
「a」および「b」は直線回帰によって決定され、
伸張の関数としての前記荷重変化における前記直線回帰が少なくとも約0.8の決定係数を与え、
前記「a」の値が約0.0033以下であることを特徴とする心臓ハーネス。
【請求項22】
前記「a」の値が約0.0032以下であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項23】
前記「a」の値が約0.0025以下であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項24】
前記「a」の値が約0.002以下であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項25】
前記「a」の値が約0.001以下であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項26】
前記「a」の値が約0.0009以下であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項27】
前記決定係数が少なくとも約0.9であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項28】
前記決定係数が少なくとも約0.95であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項29】
患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成された心臓ハーネスであって、
前記ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現される前記ハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させ、
選択された伸張範囲における伸張の関数としての荷重変化が概ねy=cx2+ax+bの形であり、
c、a、およびbは直線回帰によって決定され、かつcが負の値であることを特徴とする心臓ハーネス。
【請求項30】
前記直線回帰の関数が、少なくとも約0.9の決定係数を有していることを特徴とする請求項29に記載の心臓ハーネス。
【請求項31】
前記直線回帰の関数が、少なくとも約0.99の決定係数を有していることを特徴とする請求項29に記載の心臓ハーネス。
【請求項32】
前記円周方向の伸張の選択された範囲が、約0〜100パーセントであることを特徴とする請求項29に記載の心臓ハーネス。
【請求項33】
前記円周方向の伸張の選択された範囲が、約20〜50パーセントであることを特徴とする請求項32に記載の心臓ハーネス。
【請求項1】
患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成された心臓ハーネスであって、
前記ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現される前記ハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させ、
前記ハーネスは、少なくとも20パーセントの最小値を有した伸張動作範囲を有しており、
前記動作範囲内における前記円周方向の伸張の20パーセントの変化が、約0.066ポンド/インチ以下の円周方向荷重の変化をもたらすことを特徴とする心臓ハーネス。
【請求項2】
前記一部が、少なくともハーネスの実質的な部分を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項3】
前記動作範囲内における前記円周方向の伸張の20パーセントの変化が、約0.064ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項4】
前記動作範囲内における前記円周方向の伸張の20パーセントの変化が、約0.05ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項5】
前記動作範囲内における前記円周方向の伸張の20パーセントの変化が、約0.02ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項6】
前記動作範囲内における前記円周方向の伸張の20パーセントの変化が、約0.018ポンド/インチ以下の円周方向の荷重の変化を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項7】
前記伸張動作範囲が、少なくとも約25パーセントの最小値を有していることを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項8】
前記伸張動作範囲を超える前記ハーネスの円周方向の伸張が、前記ハーネスの長手方向の伸張より大きいことを特徴とする請求項1に記載の心臓ハーネス。
【請求項9】
患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成された心臓ハーネスであって、
前記ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現される前記ハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させ、
選択された伸張範囲における伸張の関数としての荷重変化が概ねy=ax+bの形であり、
aおよびbは直線回帰によって決定され、
「a」の第1の値は少なくとも5パーセントである第1の選択された伸張範囲に対応し、「a」の第2の値は少なくとも5パーセントである第2の選択された伸張範囲に対応し、
前記第2の伸張範囲は、前記第1の伸張範囲と重なり合わないように前記第1の伸張範囲より大きい値から成り、
「a」の前記第2の値が「a」の前記第1の値より大きくないことを特徴とする心臓ハーネス。
【請求項10】
前記第1および第2の範囲が互いに実質的に連続していることを特徴とする請求項9に記載の心臓ハーネス。
【請求項11】
前記第1および第2の選択された伸張範囲が、約0〜100パーセント伸張である前記ハーネスの伸張作動範囲内にあることを特徴とする請求項9に記載の心臓ハーネス。
【請求項12】
前記第1の選択された伸張範囲が、約20〜30パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項11に記載の心臓ハーネス。
【請求項13】
前記第2の選択された伸張範囲が、約25〜100パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項12に記載の心臓ハーネス。
【請求項14】
前記第2の選択された伸張範囲が、約25〜70パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項12に記載の心臓ハーネス。
【請求項15】
前記第2の選択された伸張範囲が、約25〜50パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項12に記載の心臓ハーネス。
【請求項16】
前記第2の選択された伸張範囲が、約25〜35パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項15に記載の心臓ハーネス。
【請求項17】
前記第2の選択された伸張範囲が、約30〜40パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項15に記載の心臓ハーネス。
【請求項18】
前記第2の選択された伸張範囲が、約35〜45パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項15に記載の心臓ハーネス。
【請求項19】
前記第2の選択された伸張範囲が、約40〜50パーセントの伸張範囲内にあることを特徴とする請求項15に記載の心臓ハーネス。
【請求項20】
「a」の前記第1の値が「a」の前記第2の値より大きいことを特徴とする請求項9に記載の心臓ハーネス。
【請求項21】
患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成された心臓ハーネスであって、
前記ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現される前記ハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させ、
20パーセント伸張と30パーセント伸張との間における伸張の関数としての荷重変化が概ねy=ax+bの形であり、
「a」および「b」は直線回帰によって決定され、
伸張の関数としての前記荷重変化における前記直線回帰が少なくとも約0.8の決定係数を与え、
前記「a」の値が約0.0033以下であることを特徴とする心臓ハーネス。
【請求項22】
前記「a」の値が約0.0032以下であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項23】
前記「a」の値が約0.0025以下であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項24】
前記「a」の値が約0.002以下であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項25】
前記「a」の値が約0.001以下であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項26】
前記「a」の値が約0.0009以下であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項27】
前記決定係数が少なくとも約0.9であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項28】
前記決定係数が少なくとも約0.95であることを特徴とする請求項21に記載の心臓ハーネス。
【請求項29】
患者の心臓の周りにフィットして圧縮力を負荷することにより前記心臓の膨張に抵抗するように構成された心臓ハーネスであって、
前記ハーネスの少なくとも一部は、ゼロ荷重状態より上のパーセント伸張として表現される前記ハーネスの一部の円周方向の伸張の関数として、長手方向に関して正規化されるとともにポンド/インチで表される円周方向の荷重を作用させ、
選択された伸張範囲における伸張の関数としての荷重変化が概ねy=cx2+ax+bの形であり、
c、a、およびbは直線回帰によって決定され、かつcが負の値であることを特徴とする心臓ハーネス。
【請求項30】
前記直線回帰の関数が、少なくとも約0.9の決定係数を有していることを特徴とする請求項29に記載の心臓ハーネス。
【請求項31】
前記直線回帰の関数が、少なくとも約0.99の決定係数を有していることを特徴とする請求項29に記載の心臓ハーネス。
【請求項32】
前記円周方向の伸張の選択された範囲が、約0〜100パーセントであることを特徴とする請求項29に記載の心臓ハーネス。
【請求項33】
前記円周方向の伸張の選択された範囲が、約20〜50パーセントであることを特徴とする請求項32に記載の心臓ハーネス。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−512040(P2007−512040A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538143(P2006−538143)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/035256
【国際公開番号】WO2005/046517
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(502329636)パラコー メディカル インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/035256
【国際公開番号】WO2005/046517
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(502329636)パラコー メディカル インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]