心臓内欠損閉塞のための生物学的組織足場を有するデバイス
【課題】心臓内欠損を閉塞するためのデバイスを提供すること。
【解決手段】本発明は、心臓内欠損の経皮経管処置のための、閉塞シェルとして生物学的組織足場を有する心臓内閉塞器(10)を提供する。この心臓内閉塞器は、近位閉塞シェル(18)を支持する近位支持構造体(24)および遠位閉塞シェル(20)を支持する遠位支持構造体(34)を備える。1つの実施形態において、ブタ小腸の粘膜下組織層から得られた生物学的組織が、閉塞シェルを形成する。近位支持構造体および遠位支持構造体は、複数の外側に伸びる近位アームを備え得る。
【解決手段】本発明は、心臓内欠損の経皮経管処置のための、閉塞シェルとして生物学的組織足場を有する心臓内閉塞器(10)を提供する。この心臓内閉塞器は、近位閉塞シェル(18)を支持する近位支持構造体(24)および遠位閉塞シェル(20)を支持する遠位支持構造体(34)を備える。1つの実施形態において、ブタ小腸の粘膜下組織層から得られた生物学的組織が、閉塞シェルを形成する。近位支持構造体および遠位支持構造体は、複数の外側に伸びる近位アームを備え得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2002年6月3日に出願された米国仮出願番号60/385,274を参考として援用し、かつその優先権および利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、心臓内欠損を処置するためのデバイスおよび関連方法に関する。より詳細には、本発明は、心臓内欠損の経皮的閉塞のための生物学的組織足場を有する心臓内閉塞器、およびその関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
人間の心臓は、4つの区画またはチャンバに分割されている。左心房および右心房は心臓の上部分に位置し、左心室および右心室は心臓の下部分に位置する。左心房および右心房は、筋肉の壁(心房内中隔)によって互いに隔離されており、心室は、心室内中隔によって隔離されている。
【0004】
先天的にまたは後天的に、心臓のチャンバまたは大血管の間で異常な開口、穴、または短絡が生じ、それを通って血液が流出し得る。このような変形は、通常、先天的なものであり、心臓が折り畳まれた管から4つの区画化された2単位系へと形成される胎児サイクルの間に生じる。この変形は、心臓のチャンバの間の中隔すなわち筋肉壁の不完全な形成に起因し、重大な問題を引き起こし得る。最終的には、この変形は、心臓に負荷を与え、それらが矯正されない場合に心臓不全を引き起こし得る。
【0005】
このような変形または欠損の1つである、卵円孔開存は、心臓の右心房と左心房との間の壁に存在する永続的な、一方向の、通常はフラップ状の開口である。通常、左心房圧は右心房圧よりも高いので、このフラップは代表的に、閉鎖されたままである。しかし、特定の状況下では、右心房圧は左心房圧を超え、血餅の全身循環への侵入を可能にし得る右から左への短絡の可能性を生じる。このことは特に、静脈血栓がちの患者(例えば、深い静脈血栓または血餅異常のある患者)にとっと問題事である。
【0006】
卵円孔開存および類似の心臓内欠損(例えば、心房中隔欠損、心室中隔欠損、および左心耳)の非外科的(すなわち、経皮的)閉塞は、種々の医療用閉塞デバイスを用いることで可能である。患者が潜在的な副作用を回避することを可能とするこれらのデバイスは、しばしば、標準的な抗凝血療法を組み合わされ、代表的に、合成足場材料と組み合わされた金属製構造フレームワークで構成される。合成足場材料はデバイスの内成長および包含化を引き起こす。代表的に、現在のデバイスは、ポリエステル繊維、伸長ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、Ivalon(登録商標)、または金属メッシュを合成足場材料として利用する。しかし、このようなデバイスは、いくつかの欠点(血栓形成、慢性炎症、および残留物の漏出を含む)に悩まされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、心臓内欠損を閉塞するためのデバイスを提供する。このデバイスは、当該分野で公知のデバイスに現在使用されている合成足場(例えば、ポリエステル繊維、ePTFE、Ivalon(登録商標)、または金属メッシュ)とは対照的に、生物学的組織足場を含む。好ましい実施形態において、生物学的組織足場は、コラーゲンから構成される。1つの実施形態において、ブタ小腸の粘膜下組織層から得られた特定タイプの生物学的組織が、組織足場を形成する。この構造の結果として、当該分野で公知のデバイスに付随する上述の欠点が最小限に抑えられるかまたは排除される。
【0008】
1つの局面において、本発明は、心臓欠損の経皮経管処置のための心臓内閉塞器を提供する。この心臓内閉塞器は、近位閉塞シェルを支持する近位支持構造体および遠位閉塞シェルを支持する遠位支持構造体を備える。この遠位支持構造体は、近位支持構造体に連結されており、閉塞シェルのうちの少なくとも1つは生物学的組織足場を含む。
【0009】
本発明のこの局面の種々の実施形態は、以下の特徴を有する。生物学的組織足場は、ブタ腸の粘膜下組織層から得られ得る、精製され、生物工学的処理がなされた1型コラーゲンであり得る。さらに1つの実施形態において、支持構造体のうちの少なくとも1つが、耐食金属を含む。あるいは、支持構造体のうちの少なくとも1つが、生物吸収ポリマーまたは生物分解ポリマーを含む。さらに別の実施形態において、近位支持構造体は、複数の外側に伸びる近位アームを含み、遠位支持構造体が複数の外側に伸びる遠位アームを含む。
【0010】
別の局面において、本発明は、患者における心臓内欠損の経皮経管処置法を提供する。この方法は、上記のような心臓内閉塞器を提供する工程、心臓内閉塞器を心臓内欠損付近に配置する工程、および心臓内欠損と心臓内閉塞器とを係合して、心臓内欠損を実質的に閉塞する工程、を包含する。
【0011】
本発明のこの局面の1つの実施形態において、心臓内欠損は、近位閉塞シェルおよび遠位閉塞シェルを、心臓内欠損の異なる側に配置することによって係合される。例えば、心臓内欠損は、卵円孔開存である、心房中隔欠損、心室中隔欠損、または左心耳であり得る。
【0012】
なお別の局面において、本発明は、心臓内欠損の経皮経管処置のための心臓内閉塞器の製造法を提供する。この方法は、総合支持構造体ならびに第1および第2の生物学的足場を提供する工程を包含する。総合支持構造体は、近位支持構造体および遠位支持構造体を備える。この方法はさらに、第1の生物学的組織足場を近位支持構造体に連結する工程、および第2の生物学的組織足場を近位支持構造体に連結する工程、を包含する。本発明のこの局面の種々の実施形態において、生物学的組織足場は、支持構造体に縫い付けられるか、積層されるか、または貼り付けられる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
心臓内欠損の経皮経管処置のための心臓内閉塞器であって:
近位閉塞シェルを支持する近位支持構造体;および
遠位閉塞シェルを支持する、該近位支持構造体に連結された遠位支持構造体、
を備え、該閉塞シェルのうちの少なくとも1つが、生物学的組織足場を含む、閉塞器。
(項目2)
前記生物学的組織足場が、精製され、生物工学的処理された1型コラーゲンを含む、項目1に記載の閉塞器。
(項目3)
前記精製され、生物工学的処理された1型コラーゲンが、ブタ小腸の粘膜下組織層由来である、項目2に記載の閉塞器。
(項目4)
前記支持構造体のうちの少なくとも1つが、耐食金属を含む、項目1に記載の閉塞器。
(項目5)
前記支持構造体のうちの少なくとも1つが、生物吸収ポリマーを含む、項目1に記載の閉塞器。
(項目6)
前記支持構造体のうちの少なくとも1つが、生物分解ポリマーを含む、項目1に記載の閉塞器。
(項目7)
前記近位支持構造体が複数の外側に伸びる近位アームを含み、前記遠位支持構造体が複数の外側に伸びる遠位アームを含む、項目1に記載の閉塞器。
(項目8)
患者における心臓内欠損の経皮経管処置法であって:
心臓内閉塞器を提供する工程であって、該閉塞器は以下:
近位閉塞シェルを支持する近位支持構造体;および
遠位閉塞シェルを支持する、該近位支持構造体に連結された遠位支持構造体、
を備え、該閉塞シェルのうちの少なくとも1つが、生物学的組織足場を含む、工程;
該心臓内閉塞器を該心臓内欠損付近に配置する工程;および
該心臓内欠損と該心臓内閉塞器とを係合して、該心臓内欠損を実質的に閉塞する工程、を包含する、方法。
(項目9)
前記心臓内欠損と係合させる工程が、前記近位閉塞シェルおよび前記遠位閉塞シェルを、該心臓内欠損の異なる側に配置することを包含する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記心臓内欠損が卵円孔開存である、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記心臓内欠損が患者の心房中隔欠損である、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記心臓内欠損が患者の心室中隔欠損である、項目8に記載の方法。
(項目13)
前記心臓内欠損が患者の左心耳である、項目8に記載の方法。
(項目14)
心臓内欠損の経皮経管処置のための心臓内閉塞器の製造法であって:
近位支持構造体および遠位支持構造体を含む総合支持構造体を提供する工程;
第1および第2の生物学的組織足場を提供する工程;
該第1の生物学的組織足場を該近位支持構造体に連結する工程;および
該第2の生物学的組織足場を該近位支持構造体に連結する工程、
を包含する、方法。
(項目15)
前記生物学的組織足場を連結する工程が、前記支持構造体に前記生物学的組織足場を縫い付けることを包含する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記生物学的組織足場を連結する工程が、前記支持構造体に前記生物学的組織足場を積層することを包含する、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記生物学的組織足場を連結する工程が、前記支持構造体に前記生物学的組織足場を貼り付けることを包含する、項目14に記載の方法。
本発明の上述およびその他の目的、局面、特徴、および利点は、以下の説明および特許請求の範囲からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、心臓内欠損を示す心臓の切り取り図である。
【図2A】図2Aは、本発明の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器の上平面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの例示の心臓内閉塞器の断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の別の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器の上平面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの例示の心臓内閉塞器の側面図である。
【図4】図4は、本発明の別の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器の概略図である。
【図5】図5A〜Eは、本発明の例示の実施形態に従う、患者の身体における解剖部位へと心臓内閉塞器を送達するための段階を示す。
【図6A】図6Aは、心臓内閉塞器の送達の30日後に、当該分野で公知の心臓内閉塞器で心臓内欠損を閉塞した結果を示す。
【図6B】図6Bは、心臓内閉塞器の送達の30日後に、本発明の心臓内閉塞器で心臓内欠損を閉塞した結果を示す。
【図7A】図7Aは、心臓内閉塞器の送達の90日後に、当該分野で公知の心臓内閉塞器で心臓内欠損を閉塞した結果を示す。
【図7B】図7Bは、心臓内閉塞器の送達の30日後に、本発明の心臓内閉塞器で心臓内欠損を閉塞した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、心臓内欠損(例えば、卵円孔開存、心房中隔欠損、心室中隔欠損、および左心耳)の修復のための、心臓内閉塞器を提供する。この心臓内閉塞器は、構造フレームワークおよびそれに接着した生物学的組織足場を備える。
【0015】
図1は、心臓100の切り取り図を示す。心臓100は、右心房108と左心房112を隔てる中隔104を有する。中隔104は、一次中隔116、二次中隔120、および、一次中隔116と二次中隔120との間に心臓内欠損124を有し、これが、本発明の心臓内閉塞器により矯正されるはずである。詳細には、卵円孔開存124が、中隔104と通じた開口部として示される。卵円孔開存124は、右心房108と左心房112との間で望ましくない流体連通を提供する。特定の状況下では、中隔104における大きな卵円孔開存124が、右心房108から左心房112への血液の短絡を可能にする。卵円孔開存124が、何らかの様式で閉鎖または遮断されない場合、患者は、高い塞栓性発作の危険にさらされる。
【0016】
図2Aは、本発明の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器10を示す。示されるように、心臓内閉塞器10は、近位閉塞シェル18(すなわち、心臓内閉塞器10の操作者(例えば、医師)に最も近い閉塞シェル)、反対側の遠位閉塞シェル20、および総合支持構造体16を備える。総合支持構造体16は、近位閉塞シェル18を支持するための近位支持構造体24
、および遠位閉塞シェル20を支持するための遠位支持構造体34を備える。1つの実施形態において、近位支持構造体24および遠位支持構造体34の両方は、それぞれの閉塞シェル18、20を各々支持するための、外側に延びるアームを供える。例えば、図2Aに示されるように、近位支持構造体24は、4つの外側に延びるアーム26を備え、遠位支持構造体34も同様に、4つの外側に延びるアーム36を備える。1つの実施形態において、各々の外側に延びるアームは、中心点45から放射状に間隔を空けて配置された3つ以上の弾力コイル43を有する結果として、弾力により偏っている。あるいは、他の弾力性支持構造が使用され得る。1つの実施形態において、8つのアーム26、36は、ワイヤ52により機械的に一緒に固定されている。あるいは、他の手段(例えば、レーザー溶接)が、8つのアーム26、36を一緒に固定するのに使用され得る。4つのアーム26、36を示す図2Aに示される心臓内閉塞器10の断面図を、図2Bに示す。
【0017】
図3Aおよび3Bは、本発明の別の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器10’を示す。総合支持構造体16’はクリップを形成し、そして近位閉塞シェル18’を支持するための近位支持構造体24’、および遠位閉塞シェル20’を支持するための遠位支持構造体34’を備える。
【0018】
本発明の別の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器10’’を図4に示す。ここでも、総合支持構造体16’’はクリップを形成し、そして近位閉塞シェル18’’を支持するための近位支持構造体24’’、および遠位閉塞シェル20’’を支持するための遠位支持構造体34’’を備える。
【0019】
あるいは、総合支持構造体16は、近位支持構造体24および遠位支持構造体34を形成する任意の形状または構造を想定し得る。
【0020】
1つの実施形態において、総合支持構造体16は、耐食金属(例えば、ステンレス鋼、ニチノール、またはニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、MP35N)で構成される。あるいは、他の実施形態において、総合支持構造体16は、生物吸収ポリマーまたは生物分解ポリマーで構成される。
【0021】
本発明に従って、以下に記載されるように、近位支持構造体24および遠位支持構造体34に結合された閉塞シェル18、20は、生物学的組織足場から構成される。好ましい実施形態において、組織足場は、コラーゲンから構成される。1つの実施形態において、ブタ小腸の粘膜下組織層から得られた、精製された(無細胞の)生物工学処理された1型コラーゲンが、組織足場を形成する。より詳細には、粘膜下組織層(本明細書中以降では、腸コラーゲン層(「ICL」)と称する)は、当該分野で公知の任意の方法により、ブタ小腸の他の層(すなわち、筋層および粘膜)から分離または脱積層化(delaminate)される。例えば、Bitterlingソーセージケーシングが、この分離を実施するのに使用される。一旦他の層から機械的に分離されると、ICLは、1つの実施形態において、残骸およびコラーゲン以外の他の物質を除去するために化学的に洗浄される。例えば、ICLは、いかなる界面活性剤も使用せずに、4℃で緩衝溶液中に浸漬されるか、あるいは、第2の実施形態において、NaOHまたはトリプシンと共に浸漬される。当該分野で公知の他の洗浄技術もまた使用され得る。洗浄後、ICLは除洗される。当該分野で公知のような、コラーゲンと共に使用するための任意の滅菌系が使用され得る。例えば、希釈過酢酸溶液、ガンマ線滅菌、または電子ビーム滅菌が、ICLを除洗するのに使用される。
【0022】
あるいは、ブタまたは他の哺乳動物源(例えば、ウシまたはヒツジ)の大腿筋膜、心膜、または硬膜からのコラーゲン組織が、組織足場を形成し得る。さらに、閉塞シェル18、20を製造するのに、2つ以上のコラーゲン層が、ひとつに接着され得、次いで、宿主細胞により再モデル化され得る生体適合性物質を生成するために架橋される。
【0023】
1つの実施形態において、生物学的組織足場は非多孔性であり、心臓内閉塞器10の移植により保持されることが意図される流体の通過を防止する。別の実施形態において、ヘパリンが、生物学的組織足場にイオン結合または共有結合されており、非血栓性を与える。さらに他の実施形態において、タンパク質または細胞が、生物学的組織足場に適用されて、非血栓性を与え、かつ/または治癒プロセスを加速させる。成長因子もまた、治癒プロセスを加速させるために生物学的組織足場に適用され得る。
【0024】
図2Aを参照すると、1つの実施形態において、閉塞シェル18、20はほぼ正方形である。あるいは、閉塞シェル18、20は、他の形状であることも想定され得る。閉塞シェル18、20を形成する生物学的組織足場は、強くて可撓性である。従って、閉塞シェル18、20は、総合支持構造体16に容易に結合し、そして以下に示されるように、患者の身体の解剖部位へのシースの送達に耐えうる。1つの実施形態において、閉塞シェル18、20は、22A、22Bで、近位支持構造体24および遠位支持構造体34のそれぞれのアーム26、36の遠位端54を通して貫く任意の一般的に使用されている縫合材料(例えば、ポリエステル縫合糸)で縫い付けられる。あるいは、閉塞シェル18、20は、近位支持構造体24および遠位支持構造体34に積層されるか、貼り付けられるか、または例えば、フックもしくは熱溶接により結合される。さらに別の実施形態において、閉塞シェル18、20は、総合支持構造体16に、さらに互いに積層され、その結果、総合支持構造体16が閉塞シェル18、20内に完全に覆い尽くされる。
【0025】
図5A〜5Eは、本発明の例示の実施形態に従う、患者の身体における解剖部位に経皮的に心臓閉塞器10を送達するための段階を示す。図5Aを参照すると、シース190が、代表的に当業者により実施されるように心臓内欠損186に最初に挿入される。次いで、心臓内閉塞器10がシース190の管腔188に充填され、そしてシース190の遠位端192に達するまで管腔188を通って進められる。図5Bを参照すると、心臓内閉塞器10の遠位閉塞シェル20は、シース190の遠位端192を通って遠位心臓チャンバ191に放出される。遠位閉塞シェル20は、自動的かつ弾性的に展開する。次いで、シース190は、図5Cに示されるように近位心臓チャンバ193に引き戻され、心臓内欠損186の遠位壁表面194に対して遠位閉塞シェル20を設置する。心臓内閉塞器186は、それによって遠位側から閉塞する。図5Dに示されるように、次いで、シース190はさらに、十分な距離引き下げられて、近位閉塞シェル18がシース190の遠位端192から放出される。近位閉塞シェル18は、自動的かつ弾性的に開口し、心臓内欠損186の近位表面196に対して横たわり、近位側から心臓内欠損186を閉塞する。次いで、シース190は、患者の身体から引き戻され、開口した心臓内閉塞器10の後ろに退却させる。図5Eに示されるように、閉塞シェル18、20が心臓内欠損186のいずれかの側面に配置され、そして心臓内閉塞器10が患者の身体内に永続的に移植される。
【0026】
図6A〜6Bおよび7A〜7Bは、ヒツジにおいて介入により形成した心臓内欠損の経皮的閉塞のための、それぞれ、30日および90日の比較結果を示す。詳細には、図6Aおよび7Aは、当該分野で公知の例示的な心臓内閉塞器(その閉塞シェルはポリエステル繊維(すなわち、合成足場材料)で構成される)を使用して心臓内欠損を閉塞した場合の、それぞれ、30日結果および90日結果を示す。図6Bおよび7Bは、本発明の心臓内閉塞器10(その閉塞シェル18、20はICLから構成した)を使用して心臓内欠損を閉塞した場合のそれぞれ、30日結果および90日結果を示す。
【0027】
示されるように、本発明の心臓内閉塞器10の生物学的組織足場は、組織内成長速度を増加させ、結果として、心臓内欠損が完全に閉じるのに時間を必要とされる減少させる。詳細には、ここで図7Bを参照すると、本発明の心臓内閉塞器10は、90日後にほとんど見えなくなっている。周囲の組織の内成長は、ほぼ完全に心臓内閉塞器10を取り囲んでいる。比較して、ここで図7Aを参照すると、当該分野で公知の例示的な心臓内閉塞器は、同じ時間経過後もなおはっきりと見えている。
【0028】
また、示されるように、本発明の心臓内閉塞器10は、当該分野で公知の例示的な心臓内閉塞器からずっと改善された様式で、心臓内欠損の縁に自然に付着し、かつそれに沿って完全に封鎖する。さらに、1つの実施形態において、本発明の心臓内閉塞器10の生物学的組織足場は非多孔性である。結果として、心臓内閉塞器10は、開口部と通じた流体(例えば、血液)の漏出の可能性を減少させる。
【0029】
本発明の心臓内閉塞器10の、当該分野で公知のものと比較してのさらなる利点としては、減少した血栓形成性、より迅速な内皮形成性、より優れた生体適合性、最小限の異物反応性、減少した免疫学的応答および炎症応答、ならびに線維形成性のなさ、が挙げられる。
【0030】
本明細書中に記載されるものの変形、改良、および他の実施が、特許請求の範囲に記載される本発明の意図および範囲から逸脱することなく当業者に想到され得る。従って、本発明は、前述の例示の記載によってだけでなく、添付の特許請求の範囲の意図および範囲によっても規定されるべきである。
【0031】
図面において、類似の参照文字は、全般的に、異なる図を通じて同じ部分をさしている。また、図面は、縮尺する必要は必ずしもなく、その代わり、本発明の原理を説明するのに強調がなされている。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2002年6月3日に出願された米国仮出願番号60/385,274を参考として援用し、かつその優先権および利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、心臓内欠損を処置するためのデバイスおよび関連方法に関する。より詳細には、本発明は、心臓内欠損の経皮的閉塞のための生物学的組織足場を有する心臓内閉塞器、およびその関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
人間の心臓は、4つの区画またはチャンバに分割されている。左心房および右心房は心臓の上部分に位置し、左心室および右心室は心臓の下部分に位置する。左心房および右心房は、筋肉の壁(心房内中隔)によって互いに隔離されており、心室は、心室内中隔によって隔離されている。
【0004】
先天的にまたは後天的に、心臓のチャンバまたは大血管の間で異常な開口、穴、または短絡が生じ、それを通って血液が流出し得る。このような変形は、通常、先天的なものであり、心臓が折り畳まれた管から4つの区画化された2単位系へと形成される胎児サイクルの間に生じる。この変形は、心臓のチャンバの間の中隔すなわち筋肉壁の不完全な形成に起因し、重大な問題を引き起こし得る。最終的には、この変形は、心臓に負荷を与え、それらが矯正されない場合に心臓不全を引き起こし得る。
【0005】
このような変形または欠損の1つである、卵円孔開存は、心臓の右心房と左心房との間の壁に存在する永続的な、一方向の、通常はフラップ状の開口である。通常、左心房圧は右心房圧よりも高いので、このフラップは代表的に、閉鎖されたままである。しかし、特定の状況下では、右心房圧は左心房圧を超え、血餅の全身循環への侵入を可能にし得る右から左への短絡の可能性を生じる。このことは特に、静脈血栓がちの患者(例えば、深い静脈血栓または血餅異常のある患者)にとっと問題事である。
【0006】
卵円孔開存および類似の心臓内欠損(例えば、心房中隔欠損、心室中隔欠損、および左心耳)の非外科的(すなわち、経皮的)閉塞は、種々の医療用閉塞デバイスを用いることで可能である。患者が潜在的な副作用を回避することを可能とするこれらのデバイスは、しばしば、標準的な抗凝血療法を組み合わされ、代表的に、合成足場材料と組み合わされた金属製構造フレームワークで構成される。合成足場材料はデバイスの内成長および包含化を引き起こす。代表的に、現在のデバイスは、ポリエステル繊維、伸長ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、Ivalon(登録商標)、または金属メッシュを合成足場材料として利用する。しかし、このようなデバイスは、いくつかの欠点(血栓形成、慢性炎症、および残留物の漏出を含む)に悩まされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、心臓内欠損を閉塞するためのデバイスを提供する。このデバイスは、当該分野で公知のデバイスに現在使用されている合成足場(例えば、ポリエステル繊維、ePTFE、Ivalon(登録商標)、または金属メッシュ)とは対照的に、生物学的組織足場を含む。好ましい実施形態において、生物学的組織足場は、コラーゲンから構成される。1つの実施形態において、ブタ小腸の粘膜下組織層から得られた特定タイプの生物学的組織が、組織足場を形成する。この構造の結果として、当該分野で公知のデバイスに付随する上述の欠点が最小限に抑えられるかまたは排除される。
【0008】
1つの局面において、本発明は、心臓欠損の経皮経管処置のための心臓内閉塞器を提供する。この心臓内閉塞器は、近位閉塞シェルを支持する近位支持構造体および遠位閉塞シェルを支持する遠位支持構造体を備える。この遠位支持構造体は、近位支持構造体に連結されており、閉塞シェルのうちの少なくとも1つは生物学的組織足場を含む。
【0009】
本発明のこの局面の種々の実施形態は、以下の特徴を有する。生物学的組織足場は、ブタ腸の粘膜下組織層から得られ得る、精製され、生物工学的処理がなされた1型コラーゲンであり得る。さらに1つの実施形態において、支持構造体のうちの少なくとも1つが、耐食金属を含む。あるいは、支持構造体のうちの少なくとも1つが、生物吸収ポリマーまたは生物分解ポリマーを含む。さらに別の実施形態において、近位支持構造体は、複数の外側に伸びる近位アームを含み、遠位支持構造体が複数の外側に伸びる遠位アームを含む。
【0010】
別の局面において、本発明は、患者における心臓内欠損の経皮経管処置法を提供する。この方法は、上記のような心臓内閉塞器を提供する工程、心臓内閉塞器を心臓内欠損付近に配置する工程、および心臓内欠損と心臓内閉塞器とを係合して、心臓内欠損を実質的に閉塞する工程、を包含する。
【0011】
本発明のこの局面の1つの実施形態において、心臓内欠損は、近位閉塞シェルおよび遠位閉塞シェルを、心臓内欠損の異なる側に配置することによって係合される。例えば、心臓内欠損は、卵円孔開存である、心房中隔欠損、心室中隔欠損、または左心耳であり得る。
【0012】
なお別の局面において、本発明は、心臓内欠損の経皮経管処置のための心臓内閉塞器の製造法を提供する。この方法は、総合支持構造体ならびに第1および第2の生物学的足場を提供する工程を包含する。総合支持構造体は、近位支持構造体および遠位支持構造体を備える。この方法はさらに、第1の生物学的組織足場を近位支持構造体に連結する工程、および第2の生物学的組織足場を近位支持構造体に連結する工程、を包含する。本発明のこの局面の種々の実施形態において、生物学的組織足場は、支持構造体に縫い付けられるか、積層されるか、または貼り付けられる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
心臓内欠損の経皮経管処置のための心臓内閉塞器であって:
近位閉塞シェルを支持する近位支持構造体;および
遠位閉塞シェルを支持する、該近位支持構造体に連結された遠位支持構造体、
を備え、該閉塞シェルのうちの少なくとも1つが、生物学的組織足場を含む、閉塞器。
(項目2)
前記生物学的組織足場が、精製され、生物工学的処理された1型コラーゲンを含む、項目1に記載の閉塞器。
(項目3)
前記精製され、生物工学的処理された1型コラーゲンが、ブタ小腸の粘膜下組織層由来である、項目2に記載の閉塞器。
(項目4)
前記支持構造体のうちの少なくとも1つが、耐食金属を含む、項目1に記載の閉塞器。
(項目5)
前記支持構造体のうちの少なくとも1つが、生物吸収ポリマーを含む、項目1に記載の閉塞器。
(項目6)
前記支持構造体のうちの少なくとも1つが、生物分解ポリマーを含む、項目1に記載の閉塞器。
(項目7)
前記近位支持構造体が複数の外側に伸びる近位アームを含み、前記遠位支持構造体が複数の外側に伸びる遠位アームを含む、項目1に記載の閉塞器。
(項目8)
患者における心臓内欠損の経皮経管処置法であって:
心臓内閉塞器を提供する工程であって、該閉塞器は以下:
近位閉塞シェルを支持する近位支持構造体;および
遠位閉塞シェルを支持する、該近位支持構造体に連結された遠位支持構造体、
を備え、該閉塞シェルのうちの少なくとも1つが、生物学的組織足場を含む、工程;
該心臓内閉塞器を該心臓内欠損付近に配置する工程;および
該心臓内欠損と該心臓内閉塞器とを係合して、該心臓内欠損を実質的に閉塞する工程、を包含する、方法。
(項目9)
前記心臓内欠損と係合させる工程が、前記近位閉塞シェルおよび前記遠位閉塞シェルを、該心臓内欠損の異なる側に配置することを包含する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記心臓内欠損が卵円孔開存である、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記心臓内欠損が患者の心房中隔欠損である、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記心臓内欠損が患者の心室中隔欠損である、項目8に記載の方法。
(項目13)
前記心臓内欠損が患者の左心耳である、項目8に記載の方法。
(項目14)
心臓内欠損の経皮経管処置のための心臓内閉塞器の製造法であって:
近位支持構造体および遠位支持構造体を含む総合支持構造体を提供する工程;
第1および第2の生物学的組織足場を提供する工程;
該第1の生物学的組織足場を該近位支持構造体に連結する工程;および
該第2の生物学的組織足場を該近位支持構造体に連結する工程、
を包含する、方法。
(項目15)
前記生物学的組織足場を連結する工程が、前記支持構造体に前記生物学的組織足場を縫い付けることを包含する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記生物学的組織足場を連結する工程が、前記支持構造体に前記生物学的組織足場を積層することを包含する、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記生物学的組織足場を連結する工程が、前記支持構造体に前記生物学的組織足場を貼り付けることを包含する、項目14に記載の方法。
本発明の上述およびその他の目的、局面、特徴、および利点は、以下の説明および特許請求の範囲からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、心臓内欠損を示す心臓の切り取り図である。
【図2A】図2Aは、本発明の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器の上平面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの例示の心臓内閉塞器の断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の別の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器の上平面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの例示の心臓内閉塞器の側面図である。
【図4】図4は、本発明の別の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器の概略図である。
【図5】図5A〜Eは、本発明の例示の実施形態に従う、患者の身体における解剖部位へと心臓内閉塞器を送達するための段階を示す。
【図6A】図6Aは、心臓内閉塞器の送達の30日後に、当該分野で公知の心臓内閉塞器で心臓内欠損を閉塞した結果を示す。
【図6B】図6Bは、心臓内閉塞器の送達の30日後に、本発明の心臓内閉塞器で心臓内欠損を閉塞した結果を示す。
【図7A】図7Aは、心臓内閉塞器の送達の90日後に、当該分野で公知の心臓内閉塞器で心臓内欠損を閉塞した結果を示す。
【図7B】図7Bは、心臓内閉塞器の送達の30日後に、本発明の心臓内閉塞器で心臓内欠損を閉塞した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、心臓内欠損(例えば、卵円孔開存、心房中隔欠損、心室中隔欠損、および左心耳)の修復のための、心臓内閉塞器を提供する。この心臓内閉塞器は、構造フレームワークおよびそれに接着した生物学的組織足場を備える。
【0015】
図1は、心臓100の切り取り図を示す。心臓100は、右心房108と左心房112を隔てる中隔104を有する。中隔104は、一次中隔116、二次中隔120、および、一次中隔116と二次中隔120との間に心臓内欠損124を有し、これが、本発明の心臓内閉塞器により矯正されるはずである。詳細には、卵円孔開存124が、中隔104と通じた開口部として示される。卵円孔開存124は、右心房108と左心房112との間で望ましくない流体連通を提供する。特定の状況下では、中隔104における大きな卵円孔開存124が、右心房108から左心房112への血液の短絡を可能にする。卵円孔開存124が、何らかの様式で閉鎖または遮断されない場合、患者は、高い塞栓性発作の危険にさらされる。
【0016】
図2Aは、本発明の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器10を示す。示されるように、心臓内閉塞器10は、近位閉塞シェル18(すなわち、心臓内閉塞器10の操作者(例えば、医師)に最も近い閉塞シェル)、反対側の遠位閉塞シェル20、および総合支持構造体16を備える。総合支持構造体16は、近位閉塞シェル18を支持するための近位支持構造体24
、および遠位閉塞シェル20を支持するための遠位支持構造体34を備える。1つの実施形態において、近位支持構造体24および遠位支持構造体34の両方は、それぞれの閉塞シェル18、20を各々支持するための、外側に延びるアームを供える。例えば、図2Aに示されるように、近位支持構造体24は、4つの外側に延びるアーム26を備え、遠位支持構造体34も同様に、4つの外側に延びるアーム36を備える。1つの実施形態において、各々の外側に延びるアームは、中心点45から放射状に間隔を空けて配置された3つ以上の弾力コイル43を有する結果として、弾力により偏っている。あるいは、他の弾力性支持構造が使用され得る。1つの実施形態において、8つのアーム26、36は、ワイヤ52により機械的に一緒に固定されている。あるいは、他の手段(例えば、レーザー溶接)が、8つのアーム26、36を一緒に固定するのに使用され得る。4つのアーム26、36を示す図2Aに示される心臓内閉塞器10の断面図を、図2Bに示す。
【0017】
図3Aおよび3Bは、本発明の別の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器10’を示す。総合支持構造体16’はクリップを形成し、そして近位閉塞シェル18’を支持するための近位支持構造体24’、および遠位閉塞シェル20’を支持するための遠位支持構造体34’を備える。
【0018】
本発明の別の例示の実施形態に従う心臓内閉塞器10’’を図4に示す。ここでも、総合支持構造体16’’はクリップを形成し、そして近位閉塞シェル18’’を支持するための近位支持構造体24’’、および遠位閉塞シェル20’’を支持するための遠位支持構造体34’’を備える。
【0019】
あるいは、総合支持構造体16は、近位支持構造体24および遠位支持構造体34を形成する任意の形状または構造を想定し得る。
【0020】
1つの実施形態において、総合支持構造体16は、耐食金属(例えば、ステンレス鋼、ニチノール、またはニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、MP35N)で構成される。あるいは、他の実施形態において、総合支持構造体16は、生物吸収ポリマーまたは生物分解ポリマーで構成される。
【0021】
本発明に従って、以下に記載されるように、近位支持構造体24および遠位支持構造体34に結合された閉塞シェル18、20は、生物学的組織足場から構成される。好ましい実施形態において、組織足場は、コラーゲンから構成される。1つの実施形態において、ブタ小腸の粘膜下組織層から得られた、精製された(無細胞の)生物工学処理された1型コラーゲンが、組織足場を形成する。より詳細には、粘膜下組織層(本明細書中以降では、腸コラーゲン層(「ICL」)と称する)は、当該分野で公知の任意の方法により、ブタ小腸の他の層(すなわち、筋層および粘膜)から分離または脱積層化(delaminate)される。例えば、Bitterlingソーセージケーシングが、この分離を実施するのに使用される。一旦他の層から機械的に分離されると、ICLは、1つの実施形態において、残骸およびコラーゲン以外の他の物質を除去するために化学的に洗浄される。例えば、ICLは、いかなる界面活性剤も使用せずに、4℃で緩衝溶液中に浸漬されるか、あるいは、第2の実施形態において、NaOHまたはトリプシンと共に浸漬される。当該分野で公知の他の洗浄技術もまた使用され得る。洗浄後、ICLは除洗される。当該分野で公知のような、コラーゲンと共に使用するための任意の滅菌系が使用され得る。例えば、希釈過酢酸溶液、ガンマ線滅菌、または電子ビーム滅菌が、ICLを除洗するのに使用される。
【0022】
あるいは、ブタまたは他の哺乳動物源(例えば、ウシまたはヒツジ)の大腿筋膜、心膜、または硬膜からのコラーゲン組織が、組織足場を形成し得る。さらに、閉塞シェル18、20を製造するのに、2つ以上のコラーゲン層が、ひとつに接着され得、次いで、宿主細胞により再モデル化され得る生体適合性物質を生成するために架橋される。
【0023】
1つの実施形態において、生物学的組織足場は非多孔性であり、心臓内閉塞器10の移植により保持されることが意図される流体の通過を防止する。別の実施形態において、ヘパリンが、生物学的組織足場にイオン結合または共有結合されており、非血栓性を与える。さらに他の実施形態において、タンパク質または細胞が、生物学的組織足場に適用されて、非血栓性を与え、かつ/または治癒プロセスを加速させる。成長因子もまた、治癒プロセスを加速させるために生物学的組織足場に適用され得る。
【0024】
図2Aを参照すると、1つの実施形態において、閉塞シェル18、20はほぼ正方形である。あるいは、閉塞シェル18、20は、他の形状であることも想定され得る。閉塞シェル18、20を形成する生物学的組織足場は、強くて可撓性である。従って、閉塞シェル18、20は、総合支持構造体16に容易に結合し、そして以下に示されるように、患者の身体の解剖部位へのシースの送達に耐えうる。1つの実施形態において、閉塞シェル18、20は、22A、22Bで、近位支持構造体24および遠位支持構造体34のそれぞれのアーム26、36の遠位端54を通して貫く任意の一般的に使用されている縫合材料(例えば、ポリエステル縫合糸)で縫い付けられる。あるいは、閉塞シェル18、20は、近位支持構造体24および遠位支持構造体34に積層されるか、貼り付けられるか、または例えば、フックもしくは熱溶接により結合される。さらに別の実施形態において、閉塞シェル18、20は、総合支持構造体16に、さらに互いに積層され、その結果、総合支持構造体16が閉塞シェル18、20内に完全に覆い尽くされる。
【0025】
図5A〜5Eは、本発明の例示の実施形態に従う、患者の身体における解剖部位に経皮的に心臓閉塞器10を送達するための段階を示す。図5Aを参照すると、シース190が、代表的に当業者により実施されるように心臓内欠損186に最初に挿入される。次いで、心臓内閉塞器10がシース190の管腔188に充填され、そしてシース190の遠位端192に達するまで管腔188を通って進められる。図5Bを参照すると、心臓内閉塞器10の遠位閉塞シェル20は、シース190の遠位端192を通って遠位心臓チャンバ191に放出される。遠位閉塞シェル20は、自動的かつ弾性的に展開する。次いで、シース190は、図5Cに示されるように近位心臓チャンバ193に引き戻され、心臓内欠損186の遠位壁表面194に対して遠位閉塞シェル20を設置する。心臓内閉塞器186は、それによって遠位側から閉塞する。図5Dに示されるように、次いで、シース190はさらに、十分な距離引き下げられて、近位閉塞シェル18がシース190の遠位端192から放出される。近位閉塞シェル18は、自動的かつ弾性的に開口し、心臓内欠損186の近位表面196に対して横たわり、近位側から心臓内欠損186を閉塞する。次いで、シース190は、患者の身体から引き戻され、開口した心臓内閉塞器10の後ろに退却させる。図5Eに示されるように、閉塞シェル18、20が心臓内欠損186のいずれかの側面に配置され、そして心臓内閉塞器10が患者の身体内に永続的に移植される。
【0026】
図6A〜6Bおよび7A〜7Bは、ヒツジにおいて介入により形成した心臓内欠損の経皮的閉塞のための、それぞれ、30日および90日の比較結果を示す。詳細には、図6Aおよび7Aは、当該分野で公知の例示的な心臓内閉塞器(その閉塞シェルはポリエステル繊維(すなわち、合成足場材料)で構成される)を使用して心臓内欠損を閉塞した場合の、それぞれ、30日結果および90日結果を示す。図6Bおよび7Bは、本発明の心臓内閉塞器10(その閉塞シェル18、20はICLから構成した)を使用して心臓内欠損を閉塞した場合のそれぞれ、30日結果および90日結果を示す。
【0027】
示されるように、本発明の心臓内閉塞器10の生物学的組織足場は、組織内成長速度を増加させ、結果として、心臓内欠損が完全に閉じるのに時間を必要とされる減少させる。詳細には、ここで図7Bを参照すると、本発明の心臓内閉塞器10は、90日後にほとんど見えなくなっている。周囲の組織の内成長は、ほぼ完全に心臓内閉塞器10を取り囲んでいる。比較して、ここで図7Aを参照すると、当該分野で公知の例示的な心臓内閉塞器は、同じ時間経過後もなおはっきりと見えている。
【0028】
また、示されるように、本発明の心臓内閉塞器10は、当該分野で公知の例示的な心臓内閉塞器からずっと改善された様式で、心臓内欠損の縁に自然に付着し、かつそれに沿って完全に封鎖する。さらに、1つの実施形態において、本発明の心臓内閉塞器10の生物学的組織足場は非多孔性である。結果として、心臓内閉塞器10は、開口部と通じた流体(例えば、血液)の漏出の可能性を減少させる。
【0029】
本発明の心臓内閉塞器10の、当該分野で公知のものと比較してのさらなる利点としては、減少した血栓形成性、より迅速な内皮形成性、より優れた生体適合性、最小限の異物反応性、減少した免疫学的応答および炎症応答、ならびに線維形成性のなさ、が挙げられる。
【0030】
本明細書中に記載されるものの変形、改良、および他の実施が、特許請求の範囲に記載される本発明の意図および範囲から逸脱することなく当業者に想到され得る。従って、本発明は、前述の例示の記載によってだけでなく、添付の特許請求の範囲の意図および範囲によっても規定されるべきである。
【0031】
図面において、類似の参照文字は、全般的に、異なる図を通じて同じ部分をさしている。また、図面は、縮尺する必要は必ずしもなく、その代わり、本発明の原理を説明するのに強調がなされている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【公開番号】特開2010−22849(P2010−22849A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230025(P2009−230025)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【分割の表示】特願2004−508675(P2004−508675)の分割
【原出願日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願人】(506079766)エヌエムティー メディカル, インコーポレイティッド (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【分割の表示】特願2004−508675(P2004−508675)の分割
【原出願日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願人】(506079766)エヌエムティー メディカル, インコーポレイティッド (22)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]