心臓病性疾患におけるマーカーとしての好アズール性顆粒
本発明は、心臓病学的疾患又は情況を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリングのために多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを検出し、そして/又は決定するためのアッセイに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリングのために多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを検出し、そして/又は決定するためのアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム硬化症は、マクロファージ及びリンパ球浸潤を包含する、血管壁の炎症性変化に関連する(Libby et al. Circulation 2005, 111, 3481-3488)。好中球計数と未来の急性冠状大動脈症候群の危険性との間に関連性が存在する(Friedman et al., N. Engl. J. Med. 1974; 290, 1275-8)。最近の証拠は、急性冠状大動脈症候群における高められた好中球活性を記録している(Naruko et al., Circulation 2002, 106, 2894-900; Buffon et al., N. Engl. J. Med. 2002, 347, 5-12)。
【0003】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、すなわち好中球の好アズール性顆粒内に存在する酵素は、金属プロテイナーゼの活性化によりプラーク不安定化を刺激する(Fu et al., J Biol Chem 2001, 276, 41279-87)。MPOの血漿レベルは、冠状動脈疾患において高められ(Zhang et al., JAMA 2001, 286, 2136-42)、そして胸の痛み(Brennan et al., N Engl J Med 2003, 349, 1595-604)及び急性冠状大動脈症候群(Baldus et al., Circulation 2003, 108, 1440-5)を提供する患者の結果を予測する。プロテイナーゼ3(PR3)は、他のセリンプロテアーゼ、例えばエラスターゼ及びカタプシンGと共に、好中球好アズール性顆粒のもう1つの主要成分である(Pham et al., Nat Rev Immunol 2006, 6, 541-50)。
【0004】
好アズール性顆粒は、好中球に対する強力を刺激に応答して開放され、ところが分泌顆粒(また、PR3(Witko-Sarsat et al., Blood 1999, 94, 2487-96)も含む)はより弱い刺激により開放される。PR3はまた、内皮細胞上に発現され得る(Mayet et al., Blood 1993, 82, 1221- 9)。好中球セリンプロテアーゼは細胞外マトリックスを分解することができ;さらに、PR3はWegener’s肉芽腫における脈管炎の病因論における役割に関連しているかも知れない他の有害効果を有する。
【0005】
それらは、その初期の膜結合された前駆体形から活性化されたTNFαを開放する(Robache-Gall ea et al., J Biol Chem. 1995, 270, 23688-92; Coeshott et al., PNAS 1999, 96, 6261-6)、内皮細胞に対するカスパーゼ様活性を通してのアポプトーシスの誘発(Pendergraft et al., Kidney Int. 2004, Jan, 65(1), 75-84)、前炎症性メディエーターインターロイキン−1β(Coeshott et al, PNAS 1999, 96, 6261-6)及びインターロイキン−18(Sugawara et al,, J Immunol. 2001 Dec 1, 167(11), 6568-75)の活性化、及びアンギオテンシンノーゲンからのアンギオテンシンI及びIIの生成(Ramaha et al., Arch Biochem Biophys. 2002, 397, 77-83)を包含する。
【0006】
PR3は、α−1−抗トリプシン(SERPIN A1)への不可逆的結合により急速に不活性化され(Baslund et al., J Immunol Methods 1994, 175, 215-25; Duranton et al., Am J Respir Cell MoI Biol. 2003, 29, 57-61)、ここでセリンプロテアーゼがカルピンの反応性中心ループと反応し、プロテアーゼの変形及び不活性化をもたらす共有結合された中間体を生成する(Stratikos et al., PNAS, 1997, 94, 453-8)。従って、遊離PR3は血漿においてはほとんど存在せず、そしてそれは主に、PR3-SERPIN Al複合体として存在する(Baslund et al., J Immunol Methods 1994, 175, 215-25)。
【0007】
循環PR3の源は一部、脱顆粒化する、活性化された好中球からであり得、これは、好アズール性及び分泌顆粒の両者に存在する。好中球は、梗塞の後、心筋層を浸潤することが知られている。他方では、又はさらに、PR3は、内皮細胞(Mayet et al., Blood 1993, 82, 1221-9)又は肺の実質細胞(Brockmann et al., Arthritis Res. 2002, 4, 220-5)から分泌され得る。正常な肺における肺細胞は、PR3を発現することが示されているが(Brockmann et al., Arthritis Res. 2002, 4, 220-5)、但し発現はウェゲナーの肉芽腫症において高くアップレギュレートされる。活性PR3は、SERPIN A1及びα2−マクログロブリンにより血漿において急速に不活性化される(Pham et al., Nat Rev Immunol 2006, 6, 541-50)。
【0008】
後AMI設定における細胞に対するPR3の損傷役割、例えば活性形のINFα、インターロイキン−1β、インターロイキン−18(Robache-Gallea et al., J Biol Chem. 1995, 270, 23688-92; Coeshott et al., PNAS 1999, 96, 6261-6; Sugawara et al, J Immunol. 2001 Dec 1, 167(11), 6568-75)及びアンギオテンシン(Ramaha et al., Arch Biochem Biophys. 2002, 397, 77-83)を開放することによる、そのプロ−アプトーシス活性(Pendergraft et al., 2004 Jan, 65(1), 75-84)及びその前炎症性効果は示されている。それらのサイトカインは、レニン−アンギオテンシンシステムのインヒビターによる治療にもかかわらずまだ存在する、AMI後の心不全の進行に特に関連する。心不全の進行におけるようなセリンプロテアーゼの関与が論議されている。例えば、エラフィン、すなわちセリンプロテアーゼインヒビターが、心臓移植の実験モデルにおいて、血管及び心筋損傷を低める予備的な証拠が存在する(Cowan et al., J Clin Invest. 1996, 97, 2452-68)。
【0009】
本発明によれば、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体が、心臓病学的疾患又は状態においてバイオマーカーとして使用され得ることが、驚くべきことには見出された。
【0010】
従って、本発明は、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを、心臓病的患者におけるマーカーとして、検出し、そして/又は決定するためのアッセイに関する。アッセイにより測定される分析レベルの評価は、確立された従来の危険因子及び/又は他のバイオマーカーに関係なく行われ得る。しかしながら、そのような従来の危険因子及び/又は他のバイオマーカーは、本発明のアッセイ又は方法又は使用と組合して使用され得る。マーカーは、相補的な独立した予測を提供し、そしてそのような高い危険性の患者の同定は、彼らの続く管理を改善することができる。
【0011】
このアッセイは、有益でない結果、例えば死亡及び心不全の予測のための情報を提供し、これは確立された従来の危険因子、例えば腎機能及び臨床学的人口統計学的情報とは関係なく、又はそれと組合して適用され得る。
【0012】
多形核好中球の好アズール性顆粒からのそのようなプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体の測定は、単独で使用されるか、又は予後の認識されるマーカー、例えばB−タイプナトリウム利尿性ペプチド又はその前駆体(N−末端プロB−タイプナトリウム利尿性ペプチド又はNTプロBNP)、アミノ末端プロANP、プロアドレノメジュリン又はそのフラグメント、プロエンドセリン又はそのフラグメント、プロバソプレッシン又はそのフラグメントと共に使用される、心不全及び死亡率後−AMIに対する予後微候性情報を提供する。
【発明の概要】
【0013】
本発明の態様は、
a)心臓病学的疾患又は状態を有する患者からのサンプルを供給し、
b)多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを決定し、そして
c)多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを、前記疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に帰することを含んで成る、心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリング方法である。
【0014】
本発明の方法の好ましい態様においては、エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3(Pr3)から選択されたプロテナーゼ又は内因性インヒビターとの複合体のレベルが、段階b)において決定され、そして段階c)における疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に起因する。
【0015】
本発明の方法のより好ましい態様においては、プロテアーゼ又はプロテアーゼ3/Serpin A1複合体が段階b)において決定され、そして段階c)における疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に起因する。
本発明の方法においては、さらにより好ましくは、プロテイナーゼ3/セルピンA1複合体のレベルは、段階b)において決定され、そして疾患又は状態の予後又は重症度、又は段階c)における前記患者についての有益でない結果の危険性に帰する。
【0016】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様においては、前記心臓病的疾患又は状態が、急性冠状大動脈症候群、例えば不安定狭心症(UA)、非STセグメント上昇心筋梗塞(NSTEMI)又はSTセグメント上昇心筋梗塞(STEMI)を含んで成る群から選択される。
本発明においては、心臓病的疾患又は状態は好ましくは、急性冠状動脈症候群である。より好ましくは、心臓病的疾患又は状態は、急性心筋梗塞である。
【0017】
本発明に使用される診断アッセイは、診断分野において適用されるいずれかのタイプのもの、例えば酵素反応、発光、特に蛍光又は放射性化学物質に基づくアッセイ方法であり得るが、但しそれらだけには限定されない。好ましい検出方法は、ポイント−オブ−ケアー試験(point-of-care-tests)、ラジオイムノアッセイ、化学発光−及び蛍光イムノアッセイ、イムノブロットアッセイ、酵素結合されたイムノアッセイ(ELISA)、ルミネックスに基づくビーズアレイ、及びタンパク質マイクロアレイアッセイであるが、但しそれらだけには限定されない。アッセイタイプはさらに、マイクロタイター、チップ、ビーズに基づかれ、ここでバイオマーカータンパク質が表面に結合されるか、又は溶液に存在することができる。アッセイは均質又は不均質アッセイ、サンドイッチアッセイ、競争又は非競争アッセイであり得る(The Immunoassay Handbook, Ed. David Wild, Elsevier LTD, Oxford; 3rd ed. (May 2005), ISBN-13: 978-0080445267; Hultschig C et al., Curr Opin Chem Biol 2006 Feb;10(l):4-10. PMID: 16376134)。
【0018】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様においては、段階b)において、前記プロテアーゼ、又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルが、診断アッセイにより決定される。
本発明の方法のもう1つの好ましい態様においては、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体が2種の捕獲分子の使用により検出され、ここで前記2種の捕獲分子はサンプルに連続的に又は同時に添加され得る。
【0019】
本発明の方法の非制限的例は、段階b)において、b1)前記プロテアーゼ、又は前記内因性インヒビター、又は内因性インヒビターと前記プロテアーゼとの複合体に対して指図される1又は複数の第1捕獲分子を含んで成るアッセイに前記サンプルを添加し、そしてさらにb2)前記プロテアーゼ、又は前記内因性インヒビター、又は内因性インヒビターと前記プロテアーゼとの複合体に対して指図される1又は複数の第2捕獲分子を、前記アッセイに添加する追加の段階を含んで成り、それにより、前記第1捕獲分子及び第2捕獲分子は両者ともインヒビターに対して指図されず、ここで前記段階b1)及びb2)は連続的に又は同時に実行され得る。
【0020】
特に好ましい態様においては、アッセイは、2種の捕獲分子、さらにより好ましくは、液体反応混合物において分散体として両者とも存在する抗体を含んで成り、ここで前記第1のマーキング成分は、蛍光−又は化学発光−消光又は増幅に基づいてのマーキングシステムの一部であり、そして前記マーキングシステム中の第2マーキング成分は第2捕獲分子に供給され、その結果、前記プロテアーゼ、又は前記内因性インヒビター、又は内因性インヒビターとプロテアーゼとの前記複合体への両捕獲分子の結合に基づいて、サンプルを含んで成る溶液における形成されるサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定できるシグナルが生成される。
【0021】
さらにより好ましくは、前記マーキングシステムは、蛍光色素又は化学発酵色素、特にシアニンタイプの色素と組合して、希土類クリプタート又は希土類キレートを含んで成る。最も好ましくは、前記マーキングシステムは、BRAHMS AGによりKryptor(商標)技法に適用されるシステムである。
【0022】
本発明の方法のもう1つのさらにより好ましい態様においては、段階c)は、
c1)結合されたプロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその結合された複合体の量に対応するシグナルを測定し、そして
c2)前記段階c1)のシグナルの強度と予備記録されたデータとを比較し、ここで前記予備記録されたデータがプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルと、前記疾患又は状態の予後又は有益でない結果の危険性とを相互関係せしめることを含んで成る。
【0023】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様においては、前記プロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを、前記疾患又は状態の予後又は重症度又は有益でない結果の危険性と、プロテアーゼ、又は予備決定されたサンプル集団における内因性インヒビターとのその複合体のレベルのメジアンに関しての相互関係;前記プロテアーゼ、又は予備決定されたサンプルの集団における内因性インヒビターとのその複合体のレベルの変位値(例えば、四分値又は%)に関しての相互関係;又は前記プロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを包含する数学モデル、好ましくはCox回帰との相互関係を含んで成る群から選択された方法により相互関係する。
【0024】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様においては、前記サンプルは、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル又はその画分、リンパ液サンプル、尿サンプル、又は前記サンプルのいずれかの抽出物である。
本発明の1つの特定の態様においては、前記シグナルは、前記第2捕獲分子に結合されるラベルにより生成される。
【0025】
本発明のもう1つの特定の態様においては、前記シグナルは、第3捕獲分子に結合されるラベルにより生成され、ここで前記第3捕獲分子は、前記第2捕獲分子に対して特異的であり、そして前記第3捕獲分子は、段階c1)の前、前記アッセイに添加される。本発明の方法においては、第3捕獲分子は、第2捕獲分子の後、第2捕獲分子の後、第2捕獲分子と同時に添加され得る。
【0026】
本発明のもう1つの特定の態様においては、さらに、心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリングと関係するか、又はそれらのために有用である、1又は複数の追加のマーカー又は臨床パラメーターのレベルが決定される。
【0027】
本発明のもう1つのより特定の態様においては、前記臨床パラメーターは、年齢、これまでの病歴、特に心筋梗塞、狭心症、高血圧、糖尿病、高コレステロール血漿、ST−上昇AMI、体質重指数、遺伝的素質/家族歴、民族的背景、前記性向に影響を及ぼす習慣、例えば喫煙、アルコール摂取、ダイエット又は入院でのパラメーター、例えばKillipクラス>1、又は入院での血栓溶解薬物投与を含んで成る群から選択されるパラメーターである。
【0028】
本発明のもう1つのより特定の態様においては、前記追加のマーカーは、proBNP又は少なくとも12回のアミノ酸のそのフラグメント、例えばBNP及びNT−proBNP、proANP又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばNT−proANP及びMR−proANP、プロアドレノメジュリン又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばアドレノメジュリン、PAMP及びMR−proADM、プロエンドセリン又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばエンドセリン−1、大きなエンドエリン−1、CT−proET−1及びNT−proET-1, プロバソプレッシン又は少なくとも8個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばバソプレッシン、コペプチン及びニューロフィシン2、ミエロペルオキシダーゼ、トロポニン、FABP、C−反応性タンパク質、プロカルシトニン、インターロイエン−6、ST−2、GDF−15、虚血改質アルブミン、又はそれらのフラグメントを含んで成る群から選択される。
【0029】
本発明のもう1つのさらにより特定の態様においては、前記追加のマーカーは、NT−proBNP又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメントである。
【0030】
本発明のもう1つの態様は、心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は治療調節及び/又はモニターリング及び/又は予後のために、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ及び/又はサンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを検出し、そして/又は決定するためへの、多形核好中球のアズール性顆粒からのプロテアーゼ及び/又は内因性インヒビターとのその複合体に対して指図された少なくとも1つの捕獲分子を含んで成るキットの使用である。
【0031】
好ましくは、本発明のキットは、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は前記プロテアーゼの内因性インヒビター、又は前記プロテアーゼと前記内因性インヒビターとの複合体に対して指図される1又は複数の第1捕獲分子を含んで成り、そして多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は前記プロテアーゼの内因性インヒビター、又は前記プロテアーゼと前記内因性インヒビターとの複合体に対して指図される1又は複数の第2捕獲分子を含んで成る。
【0032】
より好ましくは、前記第1捕獲分子及び前記第2捕獲分子は両者とも、前記内因性インヒビターに対して指図され得ない。
より好ましくは、本発明のキットは、エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3(Pr3)から選択されたプロテアーゼ、及び前記プロテアーゼの内因性インヒビターに対して指図された第1及び第2捕獲分子をそれぞれ含んで成る。
【0033】
さらにより好ましくは、本発明のキットは、それぞれプロテイナーゼ3及びSerpin A1に対して指図された捕獲分子を含んで成る。
最も好ましくは、本発明のキットは、プロテイナーゼ3及びSerpin A1の複合体に対して指図された捕獲分子を含んで成る。
本発明のキットの使用のもう1つの特に好ましい態様においては、前記疾患又は状態の予後又は重症度又は有益でない結果の危険性が決定される。
【0034】
本発明の方法又はキットの使用の特に好ましい態様においては、前記有益でない結果は、死又は心疾患である。
好ましくは、本発明のキットの使用は、上記本発明の方法の態様に記載のようにして行われる。
【0035】
本発明においては、捕獲分子は、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、抗体、ペプチド又は糖タンパク質を含んで成る群から選択され得る。好ましくは、捕獲分子は、抗体、例えば標的物に対しての十分な特異性を有するそのフラグメント、及び組換え抗体、及び前記抗体の化学的に及び/又は生化学的に変性された誘導体、又は少なくとも12個のアミノ酸を有するその変異体鎖に由来するフラグメントを含んで成る群から選択される。
【0036】
本発明においては、シアニン色素とも称するシアニン型の色素は、一般化学構造R2N+=CH(CH=CH)n-NR2の開環鎖シアニンとも呼ばれるストレプトシアニン、一般化学構造アリール=N+=CH(CH=CH)n- NR2のヘミシアニン、又は一般化学構造アリール=N+=CH(CH=CH)n-N=アリールの閉環鎖シアニンであり得、ここでRは1又は複数の置換基により置換され得るアルキル基を独立して特定し、そしてそれにより、アリールは1又は複数の置換基により置換され得るアリール又はヘテロアリール基を独立して特定する。
【0037】
そのようなシアニン色素自体は良く知られており、そして多くの誘導体が市販されているので、当業者は所定の目的のために選択する良く知られている色素を知るであろう。従って、それらの色素の詳細な説明は本明細書においては与えられず;より詳細な説明、例えばシアニン色素の例は、http://en.wikipedia.org/wiki/Cyanine 及び: Kirk-Othmer, Encyclopedia of chemical technology, 4th ed., executive editor, J. I. Kroschwitz; editor, M. Howe-Grant, John Wiley & Sons, 1993, vol. 7, p. 782-809に見出され得る。本発明に使用されるシアニン色素の特定の例は、Cy3及びDy5である。
【0038】
本発明においては、シグナルは検出できる応答の存在又は不在であり、従って、1つのシグナルは、分析物と捕獲プローブ又はプローブとの間の複合体の存在に起因する、前記応答を検出するために使用される装置の感受性範囲内にある。前記シグナルは、分析物の検出のための方法において通常開発される種々のタイプの効果、例えば電磁放射線の吸収、発光又は消光に起因し、ここで電磁放射線は、蛍光、発光、可視光、UV及びIR、又は放射線、磁気又は核又は電子回転であり得る。本発明においては、上記分析物は、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体である。
【0039】
本発明においては、用語、危険性層別化とは、個人への一定の有益でない事象を経験する確率の割り当てを示す。
本発明においては、用語、予後とは、対象(例えば、患者)の医学的情報がいかに進行するかの予測を示す。これは、前記対照についての有益でない結果の回復の可能性又は可能性の評価を包含することができる。
【0040】
本発明においては、用語、モニターリングとは、種々の時点で医学的状態についての一定の診断マーカー又は複数マーカーのレベルを測定することにより、対象の医学的状態の状態又は進行の観察を示す。
【0041】
本発明においては、用語、治療調節とは、一定型の処理、例えば種々の時点で、好ましくは処理の前及び後、医学的状態についての一定の診断マーカー又は複数マーカーのレベルを測定するこちにより、一定形の処理、例えば医薬の投与の、対象の医学的状態の状態又は進行への帰属を示す。この場合、前記処理が前記医学的状態を処理するために適切であるかどうか、又は治療が、例えば医薬の投与量を変えることにより調節されるべきであるか、又はもう1つの形の処理、例えばもう1つの医薬又はもう1つのタイプの治療作用により置換されるべきであろうかどうかが決定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、PR3−SERPIN A1により層別化された患者における有益でない事象(死亡又は心不全)に対する時間を示すkaplan-Meier分析を示す。
【図2】図2は、PR3−SERPIN A1及びNTproBNPの両者がそれらのそれぞれのメジアン値以下であり、いずれかのマーカーが高められ、又は両マーカーがメジアン以上に高められるかどうかに従って層別化される患者における有益でない事象(死亡又は心不全)に対する時間を示すKaplan-Meier分析を示す。
【0043】
図3〜7は、患者のデータのロジスティック回帰分析の結果を示す。
【図3a】図3aは、4日目でのNTproBNP及びPR3についての死亡の予測値を示す。
【図3b】図3bは、4日目でのNTproBNP及びPR3についての死亡及び心不全の予測値を示す。
【0044】
【図4a】図4aは、PR3と共にMRproANPについての死亡エンドポイントを示す。
【図4b】図4bは、PR3と共にMRproANPについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0045】
【図5a】図5aは、PR3と共にMRproADMについての死亡エンドポイントを示す。
【図5b】図5bは、PR3と共にMRproADMについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0046】
【図6a】図6aは、PR3と共にC-末端 proETについての死亡エンドポイントを示す。
【図6b】図6bは、PR3と共にC-末端 proETについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0047】
【図7a】図7aは、PR3と共にCopeptinについての死亡エンドポイントを示す。
【図7b】図7bは、PR3と共にCopeptinについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0048】
図8〜12は、患者データのCox比例ハザード分析の結果を示す。
【図8a】図8aは、4日目でのNTproBNP及びPR3についての死亡の予測値を示す。
【図8b】図8bは、4日目でのNTproBNP及びPR3についての死亡及び心不全の予測値を示す。
【0049】
【図9a】図9aは、PR3と共にMRproANPについての死亡エンドポイントを示す。
【図9b】図9bは、PR3と共にMRproANPについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0050】
【図10a】図10aは、PR3と共にMRproADMについての死亡エンドポイントを示す。
【図10b】図10bは、PR3と共にMRproADMについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0051】
【図11a】図11aは、PR3と共にC-末端 proETについての死亡エンドポイントを示す。
【図11b】図11bは、PR3と共にC-末端 proETについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0052】
【図12a】図12aは、PR3と共にCopeptinについての死亡エンドポイントを示す。
【図12b】図12bは、PR3と共にCopeptinについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【実施例】
【0053】
急性心筋梗塞を有する900人の患者を採用した。書面によるインフォームド・コンセントを患者から入手し、そして研究はヘルシンキ宣言に従い、そして地元の論理委員会により承認された。AMIは、プレゼンテーションでの3種の標準基準の少なくとも2種の基準、すなわち適切な症状、梗塞の急性ECG変化(ST上昇又は低下、新しい左脚ブロック)及び我々の人口についての99%以上へのトポロニンTの上昇により定義された。排除基準は、悪性又は最近の手術(1ヶ月以内)を包含した。
【0054】
【表1】
【0055】
血栓サンプル:
血液サンプルを、血漿PR3-SERPIN Al 及び NTproBNPの決定のための胸の痛みの開始の2〜5日後で採取した。4日目でのサンプルを用いて、MR- proANP、 MR-proADM、 CT-proET-1及び Copeptinを測定した。ベッドでの15分間の休息の後、血液20mlを、EDTA及びアプロチニンを含む管に集めた。すべての血漿は、単一のバッチにおいて、臨床の詳細についてはブラインド下でアッセイされるまで、-80℃で保存された。
【0056】
超音波心臓検査法:
経胸壁超音波心臓検査法を、Sonos 5500 器具(Philips Medical Systems, Reigate, UK)を用いて、患者において実施した。超音波心臓検査法モードのアメリカ社会に基づいての16−セグメントの左心室壁運動指数(LVWMI)を、個々のLVセグメント(1−正常、2=低運動性、3=無動性、及び4=運動異常(奇異性運動))を得点し、そしてその合計を、評点されたセグメントの数により割算することにより誘導した。左心室駆室率(LVEF)を、ディスク処方の二方向法(Schiller et al., J Am Soc Echocardiogr 1989, 2, 358-67)を用いて計算した。欠陥LV収縮機能を、EF<40%又はLVWMI>1.8として定義した。
【0057】
NTproBNPアッセイ:
血漿NTproBNPアッセイを、前に公開されたようにして、非競争イムノルミノメトリックアッセイ(Omland et al. Circulation 2002, 106, 2913-8)を用いて決定した。サンプル又はNTproBNP標準(10μl)を、NTproBNPのC−末端に対して指図されたマウスモノクローナルIgGにより被覆されたELISAプレートウェルにおいてインキュベートした。検出は、MLXプレートルミノメーター(Dynex Technologies Ltd., Worthing, UK)上でのビオチニル化されたウサギN−末端抗体、続くメチル−アクリジニウムエステル(MAE)−ラベルされたストレプタビジンによる。検出の下限は0.3pモル/lであった。この高い特異的アッセイは、心房性利尿ペプチド、BNP又はC−タイプ利尿ペプチドとの交差反応を示さない。
【0058】
PR3−SERPIN A1アッセイ:
血漿PR3-SERPIN A1を、以前に公開された方法から変性された非競争イムノルミノメトリックスアッセイ(Bashind et al., J Immunol Methods 1994, 175, 215-25)を用いて測定した。ELISAプレートウェルを、PR3に対する200ngのマウスモノクローナル抗体(クローン IBlO, IgG2a, HyTest Ltd., Turku, Finland)により被覆した。標準を、PR3を20倍モル過剰のSERPIN A1(両者とも、Sigma Aldrich Co. Ltd., Gillingham, UKからである)と共にインキュベートすることにより生成した。サンプル又は標準(10μl)を、被覆されたウェルにおいて、アッセイ緩衝液(100μl)と共に4℃で24時間インキュベートした。
【0059】
洗浄に続いて、特異的SERPIN A1ウサギ抗体(Dako UK Ltd., Ely, UK)を、ウェル中にピペットにより添加し(20ng/100μl)、そして250Hzで振盪下で3時間、室温でインキュベートした。洗浄に続いて、1:100000の希釈比でのヤギビオチニル化された抗−ウサギIgG(Rockland Immunochemicals Inc., Gilbertsville, PA, USA, ヒト、ウサギ、マウス血清タンパク質により前もって−吸着された)を、ウェル内で1時間、続いてMAE−ラベルされたストレプタビジンと共にさらに1.5時間インキュベートした。化学発光を、記載のようにして(Omland et al. Circulation 2002, 106, 2913-8)、硝酸中、H2O2の連続的注入、続く水酸化ナトリウム含有臭化セチルトリメチルアンモニウムの注入により誘発した。変動のアッセイ内及びアッセイ間計数は、10%以下であることが見出された。
【0060】
比較ミエロペルオキシダーゼ(MPO)アッセイ:
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)アッセイは、前に記載されるように(Ng et al., Am Heart J. 2006, 152, 94-101)、2部位非競争イムノルミノメトリックスアッセイに基づかれ、そしてELISAプレート固定されたモノクローナルMPO抗体(100 ng/100 μL, Research Diagnostics Inc., New Jersey, USA)及びウサギポリクローナル抗体(50 ng/ 100 μL, Merck BioSciences, Nottingham, UK)を使用した。標準及び10μlの血漿を、PR3−SERPIN A1アッセイについて記載のようにして、洗浄、及びヤギビオチニル化された抗−ウサギIgG及びストレプタビジン−MAEを用いての検出の前、プレートにおいて一晩インキュベートした。MPOアッセイは、10%以下の変動性のアッセイ内及びアッセイ間係数を有し、そして検出の下限は0.3ng/mlであった。
【0061】
MR-proANPアッセイ:
MR-proANPを、記載のようにして(Morgenthaler et al., Clin. Chem. 2004 Jan, 50(1), 234-6)、化学発光/被覆された管−形式(BRAHMS AG)で、新規の市販のサントイッチイムノアッセイを用いて検出した。手短には、患者サンプル(インキュベーション緩衝液中、5μlの血漿の1:40希釈溶液)又は標準を、抗体−被覆された管(プロANPペプチド 73-90に対して向けられた親和性精製された羊ポリクローナル抗体)に二重反復して添加し、そして室温で30分間インキュベートした。
【0062】
1mlの洗浄緩衝液による5回の洗浄の後、アクリジニウムエステル−ラベルされた抗−プロANP抗体(プロANPペプチド 53-72に対して向けられた親和性精製された羊ポリクローナル抗体)を含むトレーサー200μlを添加し、続いて室温で30分間インキュベートした。管を1mlの洗浄緩衝液により3度、洗浄し、そして検出を、LB952Tルミノメーター(Berthold, Germany; サンプル当たり最初の検出時間)により実施した。化学発光アッセイの相対的光単位は、あらゆる分析実験に包含される校生曲線(4−1800pモル/l)から計算されるようにして、pモル/lのMR−proANP下で表された。アッセイの下限検出は4.3pモル/lであり、そしてアッセイの機能的感度(20%以下の変動のアッセイ間係数)は、11pモル/lのMR-proANPである。
【0063】
MR-proADMアッセイ:
MR-proADMを、記載のようにして(Morgenthaler et al., Clin Chem. 2005 Oct, 51(10), 1823-9)、化学発光/被覆された管−形式(BRAHMS AG)で、新規の市販のアッセイを用いて検出した。手短には、管を、プレ−プロ−ADMのアミノ酸83−94を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体により被覆した。プレ−プロ−ADMのアミノ酸68−86を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体を、MACN−アクリジニウム−NHS−エステル(InVent GmbH, Germany)によりラベルし、そしてトレーサーとして使用した。
【0064】
正常ウマ血清中、プレ−プロ−ADMのアミノ酸45−92を表すペプチドの希釈溶液が標準として作用した。イムノアッセイを、被覆された管において10μlのサンプル/標準及び200μlのトレーサーを室温で2時間インキュベートすることにより実施した。管を1mlのLIA洗浄溶液(BRAHMS AG)により4度、洗浄し、そして結合された化学発光を、LB952T ルミノメーター (Berthold, Germany)を用いて測定した。
【0065】
GT-proET-1アッセイ:
CT-proET-1を、記載のようにして(Papassotiriou et al., Clin. Chem. 2006 Jun, 52(6), 1144-51)、化学発光/被覆された管−形式(BRAHMS AG)で、新規の市販のアッセイを用いて検出した。手短には、管を、プレ−プロ−ET-1のアミノ酸168-181を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体により被覆した。プレ−プロ−ET-1のアミノ酸200-212を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体を、MACN−アクリジニウム−NHS−エステル(InVent GmbH, Germany)によりラベルし、そしてトレーサーとして使用した。
【0066】
正常ウマ血清中、プレ−プロ−ET-1のアミノ酸169-212を表すペプチドの希釈溶液が標準として作用した。イムノアッセイを、被覆された管において50μlのサンプル/標準及び200μlのトレーサーを室温で2時間インキュベートすることにより実施した。管を1mlのLIA洗浄溶液(BRAHMS AG)により4度、洗浄し、そして結合された化学発光を、LB952T ルミノメーター (Berthold, Germany)を用いて測定した。
【0067】
Copeptinアッセイ:
化学発光/被覆された管形式でのCopeptin(C−末端プロバリプレッシン)の決定を、記載のようにして実施した(Morgenthaler et al., Clin Chem. 2006 Jan, 52(1), 112-9)。手短には、管を、プレ−プロ−Vasopressinの位置132-147を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体により被覆した。プレ−プロ−Vasopressinのアミノ酸149-164を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体を、MACN−アクリジニウム−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルによりラベルし、そしてトレーサーとして使用した。
【0068】
正常ウマ血清中、プレ−プロ−AVPの位置132-164を表すペプチドの希釈溶液が標準として作用した。イムノアッセイを、被覆された管において50μlのサンプル/標準及び200μlのトレーサーを室温で2時間インキュベートすることにより実施した。管を1mlのLUMItest洗浄溶液(BRAHMS AG, Hennigsdorf Germany)により4度、洗浄し、そして結合された化学発光を、LB952T ルミノメーター (Berthold, Germany)を用いて測定した。
【0069】
エントポイント:
一次エンドポイントは、心不全についてのすべての原因死亡率及び入院の組合せであった。二次エンドポイントは、追加の心筋梗塞の発生を包含した。心不全についての入院は、心不全が腫瘍理由である入院として定義された。すべての生存患者の最少60日のフォローアップが存在した。
【0070】
統計学的分析:
統計学的分析を、SPSS Version 14.0 (SPSS Inc, Chicago, Illinois)上で実施した。連続変数を、Mann Whitney U試験を用いて比較した。複数の比較についてのBonferronic相互関係を伴ってのANOVAを、2以上のグループが比較される場合、使用した。相互関係分析はSpearmansρを使用し、そして二元ロジスティック回帰及びCox比例ハザード分析を、因子及び変数についての独立したそれぞれの力を試験するためのモデルを開発するために使用した。NTproBNP、 MPO 及びPR3-SERPIN Alの血漿レベルを、対数転換により標準化した。従って、可能性比及びハザード比は、それらのマーカーのレベルでの10倍の上昇を言及する。Kaplan-Meier生存分析を、NTproBNP及びPR3-SERPIN Alの二分値を評価するために使用した。受動態−操作特徴(ROC)曲線を生成し、そして曲線下の面積(AUC)を計算し、予測値の精度を評価した。0.05以下のp値は統計学的に有意であると思われた。
【0071】
患者の特徴:
患者集団の人口統計学的特徴が表1に示される。フォーローアップのメジアン長は、0〜764日の範囲を伴って、347日であった。患者はフォローアップを失われなかった。指数AMIを、777人の患者においてST−上昇MI(STEMI)として分類し、前記患者の529人(68.1%)は血栓溶解療法を受けた。超音波心臓検査データを、指数適用の間、622人(69.1%)の患者に利用できた。フォローアップの間、900人の患者のうち92人(10.2%)の患者が死亡し、66人(7.3%)の患者が、心不全を伴って再入院を経験し、143人(15.9%)の患者がいずれかのエンドポイントを経験し、そして62人(6.9%)の患者の再発生AMIを伴って入院を経験した。
【0072】
血漿PR3-SERPIN Al 、NTproBNP及びMPOレベル:
AMIを有する患者におけるPR3−SERPIN A1の血漿レベルは、504.6ng/mlのメジアンを伴って、29.3〜4035.5ng/mlの範囲であり、そして確立された正常範囲(メジアン[範囲]350[110-580]ng/ml)に比較して高められた。PR3−SERPIN A1は、通常の生存者(486.9 [29.3-3118.2] ng/ml)に比較して、死亡した(666.2 [226.8-4035.5] ng/ml、Bonferroni相互関係を用いてP<0.001)又は心不全により再入院した(598 [231.6-1803.9] ng/ml, P<O.004)患者においては有意に高かった。
【0073】
対照的に、再発性AMIにより再入院した患者におけるPR3-SERPIN A1のレベル(482.5 [168.9-1753,9] ng/ml)は、通常の生存者におけるレベルに類似した。PR3-SERPIN A1レベルは、男性及び女性において類似し、そして高血圧、狭心症、AMI又は心不全のこれまでの病歴を有するか又は有さない患者において類似するが、しかし糖尿病を有する患者(547.0 [76.9-4035.5] ng/ml)対非糖尿病患者(495.1 [29.3-3118.2] ng/ml、 P<0.018)においてはわずかに高かった。
【0074】
血漿PR3−SERPIN A1レベルは、血漿グルコース(rs= 0.08, p< 0.03)、対数クレアチニン(rs = 0.13, p< 0.001)、Killipクラス(rs=0.10, p< 0.002)、NTproBNP(rs =0.25, p< 0.001)、及びクレアチンキナーゼ(rs =0.13, p< 0.001)と適度に相互関係するが、しかし年齢、梗塞の部位、ST上昇の存在又は不在、及び血栓溶解剤が投与されているかいないかに、関係は存在しなかった。
【0075】
これまでの研究の確認にいおいては、血漿NTproBNPは、疾病を有さない生存者(806.8 [0.3-28886] pモル/L; 両者に関してp<0.001)に比較して、死亡し(5955.4 [9.02-14057.2] pモル/L)又は心不全により再入院した(3106.6 [2.4 - 12282.9] pモル/L)患者においては高かった。NTproBNPレベルは、男性(871.6 [0.3-28886] pモル/ml; p<0.001)に比較して、女性(1951.7 [22.9-15732] pモル/L)において高く、そして年齢(rs= 0.46, p< 0.001)、血漿グルコース(rs= 0.15, p< 0.001)、対数クレアチニン(rs = 0.27, p< 0.001)、Killipクラス(rs = 0.29, p< 0.001)及びクレアチンキナーゼ(rs =0.13, p< 0.001)と相互関係した。
【0076】
血漿MPOは、疾病を有さない生存者(24.6 [0.3-405.2] ng/ml)に比較して、死亡した(36.7 [6.44-132.1] ng/ml,相互関係を用いてP<0.035)患者においては有意に高かった。対照的に、心不全(27.6 [6.5-210.8] ng/ml)又は再発性AMI(23.9 [5.3-189.9] ng/ml)により再入院した患者は、疾病を有さない生存者に類似するMPOレベルを有した。MPOレベルは、男性(23.9 [3.6- 215.1] ng/ml; p<0.001)に比較して、女性(30.3 [0.3-405.2] ng/ml)においては高く、そして非糖尿病患者(24.0 [0.3-405.2] ng/ml; p<O.OOl)に比較して、糖尿病患者(30.4 [5.1-238.7] ng/ml)においては高く、そして年齢(rs= 0.12, p< 0.001)、血漿グルコース(rs = 0.10 、p< 0.009)、対数クレアチニン(rs = 0.11, p< 0.001)及びKillipクラス(rs = 0.11, p< 0.002)と相互関係した。
【0077】
NTproBNP(rs= 0.35, p= 0.001)について示される強い関係を伴って、入院指数(超音波心臓検査に基づいてEF<40%又はLVWMI>1.8)に基づく欠陥性LV収縮機能と血漿PR3−SERPIN A1との適度な相互関係が存在した。血漿MPOは、PR3-SERPIN Al 及びNTproBNP (それぞれrs= 0.11 及び 0.12, p= 0.002)に対して弱く相互関係するが、しかしLV収縮機能とは相互関係しなかった。
【0078】
一次エンドポイント:死亡及び心不全二元ロジスチックモデルの予測値としてのPR3-SERPIN Al及び NTproBNPを、次の臨床学的及び人口統計学的変数を用いて、死亡又は心不全の予測のために開発した:年齢、性別、AMIの過去の歴史、高血圧又は糖尿病、Killip クラス>1、血栓溶解使用、対数クレアチニン、NTproBNP、 MPO及びPR3-SERPIN A1。独立した予測値が表2に報告され、そして有意な予測値変数としてNTproBNP 及びPR3- SERPIN Alを包含する。Nagelkerker2は0.35であり、これは前記モデルの良好な適合性を示唆する。
【0079】
一次エンドポイントについてのPR3−SERIN A1の予測値についての受容体−操作特徴曲線が、0.65の曲線(AUC)下の面積を生成し(95%CT:0.60−0.70、p<0.001);NTproBNPについては、AUCは0.78(95%CI:0.74−0.83、p<0.001)。2種のマーカーを組合すロジスティックモデルは、0.84のAUCを生成し(95%CI:0.80−0.88、p<0.001)、これは、いずれかのペプチドのみのAUCを越えた(Hanley and McNeil; Radiology 1983, 148, 839-43の方法によれば、p<0.003)。
【0080】
Cox比例ハザードモデルは、それらの発見を、確認し、性別とは別に死亡又は心不全の同じ独立した予測値を同定する(表3)。ロジスチック及びCoxモデルにおいては、血漿MPOは、死亡及び心不全の独立した予測値ではなかった。
【0081】
Kaplan-Meier生存分析は、メジアン以上のPR3-SERPIN A1(対数ランク28.15, p<0.0001、図1)を有する患者に比較して、メジアン(504.6ng/ml)以下のPR3-SERPIN A1を有する患者において有意に良好な臨床学的結果を示した。疾病を有さない生存者曲線は初期に分岐し、そして2年後でさえ、分岐し続ける。これはまた、NTproBNPについても真であった(対数ランク64.72, p<0.001)。
【0082】
患者が血漿NTproBNP(メジアン1023pモル/l)により層別化される場合、PR3-SERPIN A1は、NTproBNPレベルがメジアン以上であり(傾向についての対数ランク12.54、p<0.0004)、そしてNTproBNPレベルがメジアン以下である(傾向についての対数ランク3.83, p<0.05)両患者において、死亡及び心不全についての追加の予測値を与えた。それらのそれぞれのメジアン以上に高められた両マーカーを有するそれらの患者は、メジアン以上に高められたいずれかのマーカーを有するそれらの患者よりも高い疾病率を有し、そして次に、それらのそれぞれのメジアン以下の両マーカーを有する患者よりも高い疾病率を有した(すべての比較についてp<0.001、図2)。
【0083】
二次エンドポイント:心筋梗塞の予測値としてのPR3-SERPIN Al 及びNTproBNP。
エンドポイントを有さない生存者に比較して、フォローアップの間、さらなるAMIにより再入院された患者は、類似するNTproBNP (メジアン [範囲] 1480.7[2.6-10645.9] 対 806.8[0.3- 28886] pモル/L; p=NS)、 PR3-SERPIN Al レベル(メジアン[範囲] 482.5[168.9-1753.9] 対 486.9[29.3-3118.2] ng/ml; p=NS) 及びMPO レベル(23.9 [5.3-189.9] 対 24.6 [0.3-405.2] ng/ml; P=NS)を有した。
【0084】
追加のマーカー:
ロジスティック回帰モデル及びCox比例ハザードモデルを、他のマーカー(MR-proANP、 CT-proET-1、 MR-proADM、 Copeptin、 NT-proBNP)がPR3-SERPIN A1複合体のマーカーに予後情報を与えるかどうかを(4日目に採取された血液を評価した)、評価するために、死亡の、又は組合されたエンドポイント死亡又は心不全の予測のために構成した。すべての分析においては、評価されるすべてのマーカー(MR-proANP、CT-proET-1、MR-proADM、Copeptin、NT- proBNP)は、PR3-SERPIN A1のマーカーに統計学的に有意な予後情報を付加した。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリングのために多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを検出し、そして/又は決定するためのアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム硬化症は、マクロファージ及びリンパ球浸潤を包含する、血管壁の炎症性変化に関連する(Libby et al. Circulation 2005, 111, 3481-3488)。好中球計数と未来の急性冠状大動脈症候群の危険性との間に関連性が存在する(Friedman et al., N. Engl. J. Med. 1974; 290, 1275-8)。最近の証拠は、急性冠状大動脈症候群における高められた好中球活性を記録している(Naruko et al., Circulation 2002, 106, 2894-900; Buffon et al., N. Engl. J. Med. 2002, 347, 5-12)。
【0003】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、すなわち好中球の好アズール性顆粒内に存在する酵素は、金属プロテイナーゼの活性化によりプラーク不安定化を刺激する(Fu et al., J Biol Chem 2001, 276, 41279-87)。MPOの血漿レベルは、冠状動脈疾患において高められ(Zhang et al., JAMA 2001, 286, 2136-42)、そして胸の痛み(Brennan et al., N Engl J Med 2003, 349, 1595-604)及び急性冠状大動脈症候群(Baldus et al., Circulation 2003, 108, 1440-5)を提供する患者の結果を予測する。プロテイナーゼ3(PR3)は、他のセリンプロテアーゼ、例えばエラスターゼ及びカタプシンGと共に、好中球好アズール性顆粒のもう1つの主要成分である(Pham et al., Nat Rev Immunol 2006, 6, 541-50)。
【0004】
好アズール性顆粒は、好中球に対する強力を刺激に応答して開放され、ところが分泌顆粒(また、PR3(Witko-Sarsat et al., Blood 1999, 94, 2487-96)も含む)はより弱い刺激により開放される。PR3はまた、内皮細胞上に発現され得る(Mayet et al., Blood 1993, 82, 1221- 9)。好中球セリンプロテアーゼは細胞外マトリックスを分解することができ;さらに、PR3はWegener’s肉芽腫における脈管炎の病因論における役割に関連しているかも知れない他の有害効果を有する。
【0005】
それらは、その初期の膜結合された前駆体形から活性化されたTNFαを開放する(Robache-Gall ea et al., J Biol Chem. 1995, 270, 23688-92; Coeshott et al., PNAS 1999, 96, 6261-6)、内皮細胞に対するカスパーゼ様活性を通してのアポプトーシスの誘発(Pendergraft et al., Kidney Int. 2004, Jan, 65(1), 75-84)、前炎症性メディエーターインターロイキン−1β(Coeshott et al, PNAS 1999, 96, 6261-6)及びインターロイキン−18(Sugawara et al,, J Immunol. 2001 Dec 1, 167(11), 6568-75)の活性化、及びアンギオテンシンノーゲンからのアンギオテンシンI及びIIの生成(Ramaha et al., Arch Biochem Biophys. 2002, 397, 77-83)を包含する。
【0006】
PR3は、α−1−抗トリプシン(SERPIN A1)への不可逆的結合により急速に不活性化され(Baslund et al., J Immunol Methods 1994, 175, 215-25; Duranton et al., Am J Respir Cell MoI Biol. 2003, 29, 57-61)、ここでセリンプロテアーゼがカルピンの反応性中心ループと反応し、プロテアーゼの変形及び不活性化をもたらす共有結合された中間体を生成する(Stratikos et al., PNAS, 1997, 94, 453-8)。従って、遊離PR3は血漿においてはほとんど存在せず、そしてそれは主に、PR3-SERPIN Al複合体として存在する(Baslund et al., J Immunol Methods 1994, 175, 215-25)。
【0007】
循環PR3の源は一部、脱顆粒化する、活性化された好中球からであり得、これは、好アズール性及び分泌顆粒の両者に存在する。好中球は、梗塞の後、心筋層を浸潤することが知られている。他方では、又はさらに、PR3は、内皮細胞(Mayet et al., Blood 1993, 82, 1221-9)又は肺の実質細胞(Brockmann et al., Arthritis Res. 2002, 4, 220-5)から分泌され得る。正常な肺における肺細胞は、PR3を発現することが示されているが(Brockmann et al., Arthritis Res. 2002, 4, 220-5)、但し発現はウェゲナーの肉芽腫症において高くアップレギュレートされる。活性PR3は、SERPIN A1及びα2−マクログロブリンにより血漿において急速に不活性化される(Pham et al., Nat Rev Immunol 2006, 6, 541-50)。
【0008】
後AMI設定における細胞に対するPR3の損傷役割、例えば活性形のINFα、インターロイキン−1β、インターロイキン−18(Robache-Gallea et al., J Biol Chem. 1995, 270, 23688-92; Coeshott et al., PNAS 1999, 96, 6261-6; Sugawara et al, J Immunol. 2001 Dec 1, 167(11), 6568-75)及びアンギオテンシン(Ramaha et al., Arch Biochem Biophys. 2002, 397, 77-83)を開放することによる、そのプロ−アプトーシス活性(Pendergraft et al., 2004 Jan, 65(1), 75-84)及びその前炎症性効果は示されている。それらのサイトカインは、レニン−アンギオテンシンシステムのインヒビターによる治療にもかかわらずまだ存在する、AMI後の心不全の進行に特に関連する。心不全の進行におけるようなセリンプロテアーゼの関与が論議されている。例えば、エラフィン、すなわちセリンプロテアーゼインヒビターが、心臓移植の実験モデルにおいて、血管及び心筋損傷を低める予備的な証拠が存在する(Cowan et al., J Clin Invest. 1996, 97, 2452-68)。
【0009】
本発明によれば、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体が、心臓病学的疾患又は状態においてバイオマーカーとして使用され得ることが、驚くべきことには見出された。
【0010】
従って、本発明は、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを、心臓病的患者におけるマーカーとして、検出し、そして/又は決定するためのアッセイに関する。アッセイにより測定される分析レベルの評価は、確立された従来の危険因子及び/又は他のバイオマーカーに関係なく行われ得る。しかしながら、そのような従来の危険因子及び/又は他のバイオマーカーは、本発明のアッセイ又は方法又は使用と組合して使用され得る。マーカーは、相補的な独立した予測を提供し、そしてそのような高い危険性の患者の同定は、彼らの続く管理を改善することができる。
【0011】
このアッセイは、有益でない結果、例えば死亡及び心不全の予測のための情報を提供し、これは確立された従来の危険因子、例えば腎機能及び臨床学的人口統計学的情報とは関係なく、又はそれと組合して適用され得る。
【0012】
多形核好中球の好アズール性顆粒からのそのようなプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体の測定は、単独で使用されるか、又は予後の認識されるマーカー、例えばB−タイプナトリウム利尿性ペプチド又はその前駆体(N−末端プロB−タイプナトリウム利尿性ペプチド又はNTプロBNP)、アミノ末端プロANP、プロアドレノメジュリン又はそのフラグメント、プロエンドセリン又はそのフラグメント、プロバソプレッシン又はそのフラグメントと共に使用される、心不全及び死亡率後−AMIに対する予後微候性情報を提供する。
【発明の概要】
【0013】
本発明の態様は、
a)心臓病学的疾患又は状態を有する患者からのサンプルを供給し、
b)多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを決定し、そして
c)多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを、前記疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に帰することを含んで成る、心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリング方法である。
【0014】
本発明の方法の好ましい態様においては、エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3(Pr3)から選択されたプロテナーゼ又は内因性インヒビターとの複合体のレベルが、段階b)において決定され、そして段階c)における疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に起因する。
【0015】
本発明の方法のより好ましい態様においては、プロテアーゼ又はプロテアーゼ3/Serpin A1複合体が段階b)において決定され、そして段階c)における疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に起因する。
本発明の方法においては、さらにより好ましくは、プロテイナーゼ3/セルピンA1複合体のレベルは、段階b)において決定され、そして疾患又は状態の予後又は重症度、又は段階c)における前記患者についての有益でない結果の危険性に帰する。
【0016】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様においては、前記心臓病的疾患又は状態が、急性冠状大動脈症候群、例えば不安定狭心症(UA)、非STセグメント上昇心筋梗塞(NSTEMI)又はSTセグメント上昇心筋梗塞(STEMI)を含んで成る群から選択される。
本発明においては、心臓病的疾患又は状態は好ましくは、急性冠状動脈症候群である。より好ましくは、心臓病的疾患又は状態は、急性心筋梗塞である。
【0017】
本発明に使用される診断アッセイは、診断分野において適用されるいずれかのタイプのもの、例えば酵素反応、発光、特に蛍光又は放射性化学物質に基づくアッセイ方法であり得るが、但しそれらだけには限定されない。好ましい検出方法は、ポイント−オブ−ケアー試験(point-of-care-tests)、ラジオイムノアッセイ、化学発光−及び蛍光イムノアッセイ、イムノブロットアッセイ、酵素結合されたイムノアッセイ(ELISA)、ルミネックスに基づくビーズアレイ、及びタンパク質マイクロアレイアッセイであるが、但しそれらだけには限定されない。アッセイタイプはさらに、マイクロタイター、チップ、ビーズに基づかれ、ここでバイオマーカータンパク質が表面に結合されるか、又は溶液に存在することができる。アッセイは均質又は不均質アッセイ、サンドイッチアッセイ、競争又は非競争アッセイであり得る(The Immunoassay Handbook, Ed. David Wild, Elsevier LTD, Oxford; 3rd ed. (May 2005), ISBN-13: 978-0080445267; Hultschig C et al., Curr Opin Chem Biol 2006 Feb;10(l):4-10. PMID: 16376134)。
【0018】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様においては、段階b)において、前記プロテアーゼ、又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルが、診断アッセイにより決定される。
本発明の方法のもう1つの好ましい態様においては、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体が2種の捕獲分子の使用により検出され、ここで前記2種の捕獲分子はサンプルに連続的に又は同時に添加され得る。
【0019】
本発明の方法の非制限的例は、段階b)において、b1)前記プロテアーゼ、又は前記内因性インヒビター、又は内因性インヒビターと前記プロテアーゼとの複合体に対して指図される1又は複数の第1捕獲分子を含んで成るアッセイに前記サンプルを添加し、そしてさらにb2)前記プロテアーゼ、又は前記内因性インヒビター、又は内因性インヒビターと前記プロテアーゼとの複合体に対して指図される1又は複数の第2捕獲分子を、前記アッセイに添加する追加の段階を含んで成り、それにより、前記第1捕獲分子及び第2捕獲分子は両者ともインヒビターに対して指図されず、ここで前記段階b1)及びb2)は連続的に又は同時に実行され得る。
【0020】
特に好ましい態様においては、アッセイは、2種の捕獲分子、さらにより好ましくは、液体反応混合物において分散体として両者とも存在する抗体を含んで成り、ここで前記第1のマーキング成分は、蛍光−又は化学発光−消光又は増幅に基づいてのマーキングシステムの一部であり、そして前記マーキングシステム中の第2マーキング成分は第2捕獲分子に供給され、その結果、前記プロテアーゼ、又は前記内因性インヒビター、又は内因性インヒビターとプロテアーゼとの前記複合体への両捕獲分子の結合に基づいて、サンプルを含んで成る溶液における形成されるサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定できるシグナルが生成される。
【0021】
さらにより好ましくは、前記マーキングシステムは、蛍光色素又は化学発酵色素、特にシアニンタイプの色素と組合して、希土類クリプタート又は希土類キレートを含んで成る。最も好ましくは、前記マーキングシステムは、BRAHMS AGによりKryptor(商標)技法に適用されるシステムである。
【0022】
本発明の方法のもう1つのさらにより好ましい態様においては、段階c)は、
c1)結合されたプロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその結合された複合体の量に対応するシグナルを測定し、そして
c2)前記段階c1)のシグナルの強度と予備記録されたデータとを比較し、ここで前記予備記録されたデータがプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルと、前記疾患又は状態の予後又は有益でない結果の危険性とを相互関係せしめることを含んで成る。
【0023】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様においては、前記プロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを、前記疾患又は状態の予後又は重症度又は有益でない結果の危険性と、プロテアーゼ、又は予備決定されたサンプル集団における内因性インヒビターとのその複合体のレベルのメジアンに関しての相互関係;前記プロテアーゼ、又は予備決定されたサンプルの集団における内因性インヒビターとのその複合体のレベルの変位値(例えば、四分値又は%)に関しての相互関係;又は前記プロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを包含する数学モデル、好ましくはCox回帰との相互関係を含んで成る群から選択された方法により相互関係する。
【0024】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様においては、前記サンプルは、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル又はその画分、リンパ液サンプル、尿サンプル、又は前記サンプルのいずれかの抽出物である。
本発明の1つの特定の態様においては、前記シグナルは、前記第2捕獲分子に結合されるラベルにより生成される。
【0025】
本発明のもう1つの特定の態様においては、前記シグナルは、第3捕獲分子に結合されるラベルにより生成され、ここで前記第3捕獲分子は、前記第2捕獲分子に対して特異的であり、そして前記第3捕獲分子は、段階c1)の前、前記アッセイに添加される。本発明の方法においては、第3捕獲分子は、第2捕獲分子の後、第2捕獲分子の後、第2捕獲分子と同時に添加され得る。
【0026】
本発明のもう1つの特定の態様においては、さらに、心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリングと関係するか、又はそれらのために有用である、1又は複数の追加のマーカー又は臨床パラメーターのレベルが決定される。
【0027】
本発明のもう1つのより特定の態様においては、前記臨床パラメーターは、年齢、これまでの病歴、特に心筋梗塞、狭心症、高血圧、糖尿病、高コレステロール血漿、ST−上昇AMI、体質重指数、遺伝的素質/家族歴、民族的背景、前記性向に影響を及ぼす習慣、例えば喫煙、アルコール摂取、ダイエット又は入院でのパラメーター、例えばKillipクラス>1、又は入院での血栓溶解薬物投与を含んで成る群から選択されるパラメーターである。
【0028】
本発明のもう1つのより特定の態様においては、前記追加のマーカーは、proBNP又は少なくとも12回のアミノ酸のそのフラグメント、例えばBNP及びNT−proBNP、proANP又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばNT−proANP及びMR−proANP、プロアドレノメジュリン又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばアドレノメジュリン、PAMP及びMR−proADM、プロエンドセリン又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばエンドセリン−1、大きなエンドエリン−1、CT−proET−1及びNT−proET-1, プロバソプレッシン又は少なくとも8個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばバソプレッシン、コペプチン及びニューロフィシン2、ミエロペルオキシダーゼ、トロポニン、FABP、C−反応性タンパク質、プロカルシトニン、インターロイエン−6、ST−2、GDF−15、虚血改質アルブミン、又はそれらのフラグメントを含んで成る群から選択される。
【0029】
本発明のもう1つのさらにより特定の態様においては、前記追加のマーカーは、NT−proBNP又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメントである。
【0030】
本発明のもう1つの態様は、心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は治療調節及び/又はモニターリング及び/又は予後のために、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ及び/又はサンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを検出し、そして/又は決定するためへの、多形核好中球のアズール性顆粒からのプロテアーゼ及び/又は内因性インヒビターとのその複合体に対して指図された少なくとも1つの捕獲分子を含んで成るキットの使用である。
【0031】
好ましくは、本発明のキットは、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は前記プロテアーゼの内因性インヒビター、又は前記プロテアーゼと前記内因性インヒビターとの複合体に対して指図される1又は複数の第1捕獲分子を含んで成り、そして多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は前記プロテアーゼの内因性インヒビター、又は前記プロテアーゼと前記内因性インヒビターとの複合体に対して指図される1又は複数の第2捕獲分子を含んで成る。
【0032】
より好ましくは、前記第1捕獲分子及び前記第2捕獲分子は両者とも、前記内因性インヒビターに対して指図され得ない。
より好ましくは、本発明のキットは、エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3(Pr3)から選択されたプロテアーゼ、及び前記プロテアーゼの内因性インヒビターに対して指図された第1及び第2捕獲分子をそれぞれ含んで成る。
【0033】
さらにより好ましくは、本発明のキットは、それぞれプロテイナーゼ3及びSerpin A1に対して指図された捕獲分子を含んで成る。
最も好ましくは、本発明のキットは、プロテイナーゼ3及びSerpin A1の複合体に対して指図された捕獲分子を含んで成る。
本発明のキットの使用のもう1つの特に好ましい態様においては、前記疾患又は状態の予後又は重症度又は有益でない結果の危険性が決定される。
【0034】
本発明の方法又はキットの使用の特に好ましい態様においては、前記有益でない結果は、死又は心疾患である。
好ましくは、本発明のキットの使用は、上記本発明の方法の態様に記載のようにして行われる。
【0035】
本発明においては、捕獲分子は、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、抗体、ペプチド又は糖タンパク質を含んで成る群から選択され得る。好ましくは、捕獲分子は、抗体、例えば標的物に対しての十分な特異性を有するそのフラグメント、及び組換え抗体、及び前記抗体の化学的に及び/又は生化学的に変性された誘導体、又は少なくとも12個のアミノ酸を有するその変異体鎖に由来するフラグメントを含んで成る群から選択される。
【0036】
本発明においては、シアニン色素とも称するシアニン型の色素は、一般化学構造R2N+=CH(CH=CH)n-NR2の開環鎖シアニンとも呼ばれるストレプトシアニン、一般化学構造アリール=N+=CH(CH=CH)n- NR2のヘミシアニン、又は一般化学構造アリール=N+=CH(CH=CH)n-N=アリールの閉環鎖シアニンであり得、ここでRは1又は複数の置換基により置換され得るアルキル基を独立して特定し、そしてそれにより、アリールは1又は複数の置換基により置換され得るアリール又はヘテロアリール基を独立して特定する。
【0037】
そのようなシアニン色素自体は良く知られており、そして多くの誘導体が市販されているので、当業者は所定の目的のために選択する良く知られている色素を知るであろう。従って、それらの色素の詳細な説明は本明細書においては与えられず;より詳細な説明、例えばシアニン色素の例は、http://en.wikipedia.org/wiki/Cyanine 及び: Kirk-Othmer, Encyclopedia of chemical technology, 4th ed., executive editor, J. I. Kroschwitz; editor, M. Howe-Grant, John Wiley & Sons, 1993, vol. 7, p. 782-809に見出され得る。本発明に使用されるシアニン色素の特定の例は、Cy3及びDy5である。
【0038】
本発明においては、シグナルは検出できる応答の存在又は不在であり、従って、1つのシグナルは、分析物と捕獲プローブ又はプローブとの間の複合体の存在に起因する、前記応答を検出するために使用される装置の感受性範囲内にある。前記シグナルは、分析物の検出のための方法において通常開発される種々のタイプの効果、例えば電磁放射線の吸収、発光又は消光に起因し、ここで電磁放射線は、蛍光、発光、可視光、UV及びIR、又は放射線、磁気又は核又は電子回転であり得る。本発明においては、上記分析物は、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体である。
【0039】
本発明においては、用語、危険性層別化とは、個人への一定の有益でない事象を経験する確率の割り当てを示す。
本発明においては、用語、予後とは、対象(例えば、患者)の医学的情報がいかに進行するかの予測を示す。これは、前記対照についての有益でない結果の回復の可能性又は可能性の評価を包含することができる。
【0040】
本発明においては、用語、モニターリングとは、種々の時点で医学的状態についての一定の診断マーカー又は複数マーカーのレベルを測定することにより、対象の医学的状態の状態又は進行の観察を示す。
【0041】
本発明においては、用語、治療調節とは、一定型の処理、例えば種々の時点で、好ましくは処理の前及び後、医学的状態についての一定の診断マーカー又は複数マーカーのレベルを測定するこちにより、一定形の処理、例えば医薬の投与の、対象の医学的状態の状態又は進行への帰属を示す。この場合、前記処理が前記医学的状態を処理するために適切であるかどうか、又は治療が、例えば医薬の投与量を変えることにより調節されるべきであるか、又はもう1つの形の処理、例えばもう1つの医薬又はもう1つのタイプの治療作用により置換されるべきであろうかどうかが決定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、PR3−SERPIN A1により層別化された患者における有益でない事象(死亡又は心不全)に対する時間を示すkaplan-Meier分析を示す。
【図2】図2は、PR3−SERPIN A1及びNTproBNPの両者がそれらのそれぞれのメジアン値以下であり、いずれかのマーカーが高められ、又は両マーカーがメジアン以上に高められるかどうかに従って層別化される患者における有益でない事象(死亡又は心不全)に対する時間を示すKaplan-Meier分析を示す。
【0043】
図3〜7は、患者のデータのロジスティック回帰分析の結果を示す。
【図3a】図3aは、4日目でのNTproBNP及びPR3についての死亡の予測値を示す。
【図3b】図3bは、4日目でのNTproBNP及びPR3についての死亡及び心不全の予測値を示す。
【0044】
【図4a】図4aは、PR3と共にMRproANPについての死亡エンドポイントを示す。
【図4b】図4bは、PR3と共にMRproANPについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0045】
【図5a】図5aは、PR3と共にMRproADMについての死亡エンドポイントを示す。
【図5b】図5bは、PR3と共にMRproADMについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0046】
【図6a】図6aは、PR3と共にC-末端 proETについての死亡エンドポイントを示す。
【図6b】図6bは、PR3と共にC-末端 proETについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0047】
【図7a】図7aは、PR3と共にCopeptinについての死亡エンドポイントを示す。
【図7b】図7bは、PR3と共にCopeptinについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0048】
図8〜12は、患者データのCox比例ハザード分析の結果を示す。
【図8a】図8aは、4日目でのNTproBNP及びPR3についての死亡の予測値を示す。
【図8b】図8bは、4日目でのNTproBNP及びPR3についての死亡及び心不全の予測値を示す。
【0049】
【図9a】図9aは、PR3と共にMRproANPについての死亡エンドポイントを示す。
【図9b】図9bは、PR3と共にMRproANPについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0050】
【図10a】図10aは、PR3と共にMRproADMについての死亡エンドポイントを示す。
【図10b】図10bは、PR3と共にMRproADMについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0051】
【図11a】図11aは、PR3と共にC-末端 proETについての死亡エンドポイントを示す。
【図11b】図11bは、PR3と共にC-末端 proETについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【0052】
【図12a】図12aは、PR3と共にCopeptinについての死亡エンドポイントを示す。
【図12b】図12bは、PR3と共にCopeptinについての死亡及び心不全エンドポイントを示す。
【実施例】
【0053】
急性心筋梗塞を有する900人の患者を採用した。書面によるインフォームド・コンセントを患者から入手し、そして研究はヘルシンキ宣言に従い、そして地元の論理委員会により承認された。AMIは、プレゼンテーションでの3種の標準基準の少なくとも2種の基準、すなわち適切な症状、梗塞の急性ECG変化(ST上昇又は低下、新しい左脚ブロック)及び我々の人口についての99%以上へのトポロニンTの上昇により定義された。排除基準は、悪性又は最近の手術(1ヶ月以内)を包含した。
【0054】
【表1】
【0055】
血栓サンプル:
血液サンプルを、血漿PR3-SERPIN Al 及び NTproBNPの決定のための胸の痛みの開始の2〜5日後で採取した。4日目でのサンプルを用いて、MR- proANP、 MR-proADM、 CT-proET-1及び Copeptinを測定した。ベッドでの15分間の休息の後、血液20mlを、EDTA及びアプロチニンを含む管に集めた。すべての血漿は、単一のバッチにおいて、臨床の詳細についてはブラインド下でアッセイされるまで、-80℃で保存された。
【0056】
超音波心臓検査法:
経胸壁超音波心臓検査法を、Sonos 5500 器具(Philips Medical Systems, Reigate, UK)を用いて、患者において実施した。超音波心臓検査法モードのアメリカ社会に基づいての16−セグメントの左心室壁運動指数(LVWMI)を、個々のLVセグメント(1−正常、2=低運動性、3=無動性、及び4=運動異常(奇異性運動))を得点し、そしてその合計を、評点されたセグメントの数により割算することにより誘導した。左心室駆室率(LVEF)を、ディスク処方の二方向法(Schiller et al., J Am Soc Echocardiogr 1989, 2, 358-67)を用いて計算した。欠陥LV収縮機能を、EF<40%又はLVWMI>1.8として定義した。
【0057】
NTproBNPアッセイ:
血漿NTproBNPアッセイを、前に公開されたようにして、非競争イムノルミノメトリックアッセイ(Omland et al. Circulation 2002, 106, 2913-8)を用いて決定した。サンプル又はNTproBNP標準(10μl)を、NTproBNPのC−末端に対して指図されたマウスモノクローナルIgGにより被覆されたELISAプレートウェルにおいてインキュベートした。検出は、MLXプレートルミノメーター(Dynex Technologies Ltd., Worthing, UK)上でのビオチニル化されたウサギN−末端抗体、続くメチル−アクリジニウムエステル(MAE)−ラベルされたストレプタビジンによる。検出の下限は0.3pモル/lであった。この高い特異的アッセイは、心房性利尿ペプチド、BNP又はC−タイプ利尿ペプチドとの交差反応を示さない。
【0058】
PR3−SERPIN A1アッセイ:
血漿PR3-SERPIN A1を、以前に公開された方法から変性された非競争イムノルミノメトリックスアッセイ(Bashind et al., J Immunol Methods 1994, 175, 215-25)を用いて測定した。ELISAプレートウェルを、PR3に対する200ngのマウスモノクローナル抗体(クローン IBlO, IgG2a, HyTest Ltd., Turku, Finland)により被覆した。標準を、PR3を20倍モル過剰のSERPIN A1(両者とも、Sigma Aldrich Co. Ltd., Gillingham, UKからである)と共にインキュベートすることにより生成した。サンプル又は標準(10μl)を、被覆されたウェルにおいて、アッセイ緩衝液(100μl)と共に4℃で24時間インキュベートした。
【0059】
洗浄に続いて、特異的SERPIN A1ウサギ抗体(Dako UK Ltd., Ely, UK)を、ウェル中にピペットにより添加し(20ng/100μl)、そして250Hzで振盪下で3時間、室温でインキュベートした。洗浄に続いて、1:100000の希釈比でのヤギビオチニル化された抗−ウサギIgG(Rockland Immunochemicals Inc., Gilbertsville, PA, USA, ヒト、ウサギ、マウス血清タンパク質により前もって−吸着された)を、ウェル内で1時間、続いてMAE−ラベルされたストレプタビジンと共にさらに1.5時間インキュベートした。化学発光を、記載のようにして(Omland et al. Circulation 2002, 106, 2913-8)、硝酸中、H2O2の連続的注入、続く水酸化ナトリウム含有臭化セチルトリメチルアンモニウムの注入により誘発した。変動のアッセイ内及びアッセイ間計数は、10%以下であることが見出された。
【0060】
比較ミエロペルオキシダーゼ(MPO)アッセイ:
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)アッセイは、前に記載されるように(Ng et al., Am Heart J. 2006, 152, 94-101)、2部位非競争イムノルミノメトリックスアッセイに基づかれ、そしてELISAプレート固定されたモノクローナルMPO抗体(100 ng/100 μL, Research Diagnostics Inc., New Jersey, USA)及びウサギポリクローナル抗体(50 ng/ 100 μL, Merck BioSciences, Nottingham, UK)を使用した。標準及び10μlの血漿を、PR3−SERPIN A1アッセイについて記載のようにして、洗浄、及びヤギビオチニル化された抗−ウサギIgG及びストレプタビジン−MAEを用いての検出の前、プレートにおいて一晩インキュベートした。MPOアッセイは、10%以下の変動性のアッセイ内及びアッセイ間係数を有し、そして検出の下限は0.3ng/mlであった。
【0061】
MR-proANPアッセイ:
MR-proANPを、記載のようにして(Morgenthaler et al., Clin. Chem. 2004 Jan, 50(1), 234-6)、化学発光/被覆された管−形式(BRAHMS AG)で、新規の市販のサントイッチイムノアッセイを用いて検出した。手短には、患者サンプル(インキュベーション緩衝液中、5μlの血漿の1:40希釈溶液)又は標準を、抗体−被覆された管(プロANPペプチド 73-90に対して向けられた親和性精製された羊ポリクローナル抗体)に二重反復して添加し、そして室温で30分間インキュベートした。
【0062】
1mlの洗浄緩衝液による5回の洗浄の後、アクリジニウムエステル−ラベルされた抗−プロANP抗体(プロANPペプチド 53-72に対して向けられた親和性精製された羊ポリクローナル抗体)を含むトレーサー200μlを添加し、続いて室温で30分間インキュベートした。管を1mlの洗浄緩衝液により3度、洗浄し、そして検出を、LB952Tルミノメーター(Berthold, Germany; サンプル当たり最初の検出時間)により実施した。化学発光アッセイの相対的光単位は、あらゆる分析実験に包含される校生曲線(4−1800pモル/l)から計算されるようにして、pモル/lのMR−proANP下で表された。アッセイの下限検出は4.3pモル/lであり、そしてアッセイの機能的感度(20%以下の変動のアッセイ間係数)は、11pモル/lのMR-proANPである。
【0063】
MR-proADMアッセイ:
MR-proADMを、記載のようにして(Morgenthaler et al., Clin Chem. 2005 Oct, 51(10), 1823-9)、化学発光/被覆された管−形式(BRAHMS AG)で、新規の市販のアッセイを用いて検出した。手短には、管を、プレ−プロ−ADMのアミノ酸83−94を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体により被覆した。プレ−プロ−ADMのアミノ酸68−86を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体を、MACN−アクリジニウム−NHS−エステル(InVent GmbH, Germany)によりラベルし、そしてトレーサーとして使用した。
【0064】
正常ウマ血清中、プレ−プロ−ADMのアミノ酸45−92を表すペプチドの希釈溶液が標準として作用した。イムノアッセイを、被覆された管において10μlのサンプル/標準及び200μlのトレーサーを室温で2時間インキュベートすることにより実施した。管を1mlのLIA洗浄溶液(BRAHMS AG)により4度、洗浄し、そして結合された化学発光を、LB952T ルミノメーター (Berthold, Germany)を用いて測定した。
【0065】
GT-proET-1アッセイ:
CT-proET-1を、記載のようにして(Papassotiriou et al., Clin. Chem. 2006 Jun, 52(6), 1144-51)、化学発光/被覆された管−形式(BRAHMS AG)で、新規の市販のアッセイを用いて検出した。手短には、管を、プレ−プロ−ET-1のアミノ酸168-181を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体により被覆した。プレ−プロ−ET-1のアミノ酸200-212を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体を、MACN−アクリジニウム−NHS−エステル(InVent GmbH, Germany)によりラベルし、そしてトレーサーとして使用した。
【0066】
正常ウマ血清中、プレ−プロ−ET-1のアミノ酸169-212を表すペプチドの希釈溶液が標準として作用した。イムノアッセイを、被覆された管において50μlのサンプル/標準及び200μlのトレーサーを室温で2時間インキュベートすることにより実施した。管を1mlのLIA洗浄溶液(BRAHMS AG)により4度、洗浄し、そして結合された化学発光を、LB952T ルミノメーター (Berthold, Germany)を用いて測定した。
【0067】
Copeptinアッセイ:
化学発光/被覆された管形式でのCopeptin(C−末端プロバリプレッシン)の決定を、記載のようにして実施した(Morgenthaler et al., Clin Chem. 2006 Jan, 52(1), 112-9)。手短には、管を、プレ−プロ−Vasopressinの位置132-147を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体により被覆した。プレ−プロ−Vasopressinのアミノ酸149-164を表すペプチドに対して生ぜしめられた、精製された羊ポリクローナル抗体を、MACN−アクリジニウム−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルによりラベルし、そしてトレーサーとして使用した。
【0068】
正常ウマ血清中、プレ−プロ−AVPの位置132-164を表すペプチドの希釈溶液が標準として作用した。イムノアッセイを、被覆された管において50μlのサンプル/標準及び200μlのトレーサーを室温で2時間インキュベートすることにより実施した。管を1mlのLUMItest洗浄溶液(BRAHMS AG, Hennigsdorf Germany)により4度、洗浄し、そして結合された化学発光を、LB952T ルミノメーター (Berthold, Germany)を用いて測定した。
【0069】
エントポイント:
一次エンドポイントは、心不全についてのすべての原因死亡率及び入院の組合せであった。二次エンドポイントは、追加の心筋梗塞の発生を包含した。心不全についての入院は、心不全が腫瘍理由である入院として定義された。すべての生存患者の最少60日のフォローアップが存在した。
【0070】
統計学的分析:
統計学的分析を、SPSS Version 14.0 (SPSS Inc, Chicago, Illinois)上で実施した。連続変数を、Mann Whitney U試験を用いて比較した。複数の比較についてのBonferronic相互関係を伴ってのANOVAを、2以上のグループが比較される場合、使用した。相互関係分析はSpearmansρを使用し、そして二元ロジスティック回帰及びCox比例ハザード分析を、因子及び変数についての独立したそれぞれの力を試験するためのモデルを開発するために使用した。NTproBNP、 MPO 及びPR3-SERPIN Alの血漿レベルを、対数転換により標準化した。従って、可能性比及びハザード比は、それらのマーカーのレベルでの10倍の上昇を言及する。Kaplan-Meier生存分析を、NTproBNP及びPR3-SERPIN Alの二分値を評価するために使用した。受動態−操作特徴(ROC)曲線を生成し、そして曲線下の面積(AUC)を計算し、予測値の精度を評価した。0.05以下のp値は統計学的に有意であると思われた。
【0071】
患者の特徴:
患者集団の人口統計学的特徴が表1に示される。フォーローアップのメジアン長は、0〜764日の範囲を伴って、347日であった。患者はフォローアップを失われなかった。指数AMIを、777人の患者においてST−上昇MI(STEMI)として分類し、前記患者の529人(68.1%)は血栓溶解療法を受けた。超音波心臓検査データを、指数適用の間、622人(69.1%)の患者に利用できた。フォローアップの間、900人の患者のうち92人(10.2%)の患者が死亡し、66人(7.3%)の患者が、心不全を伴って再入院を経験し、143人(15.9%)の患者がいずれかのエンドポイントを経験し、そして62人(6.9%)の患者の再発生AMIを伴って入院を経験した。
【0072】
血漿PR3-SERPIN Al 、NTproBNP及びMPOレベル:
AMIを有する患者におけるPR3−SERPIN A1の血漿レベルは、504.6ng/mlのメジアンを伴って、29.3〜4035.5ng/mlの範囲であり、そして確立された正常範囲(メジアン[範囲]350[110-580]ng/ml)に比較して高められた。PR3−SERPIN A1は、通常の生存者(486.9 [29.3-3118.2] ng/ml)に比較して、死亡した(666.2 [226.8-4035.5] ng/ml、Bonferroni相互関係を用いてP<0.001)又は心不全により再入院した(598 [231.6-1803.9] ng/ml, P<O.004)患者においては有意に高かった。
【0073】
対照的に、再発性AMIにより再入院した患者におけるPR3-SERPIN A1のレベル(482.5 [168.9-1753,9] ng/ml)は、通常の生存者におけるレベルに類似した。PR3-SERPIN A1レベルは、男性及び女性において類似し、そして高血圧、狭心症、AMI又は心不全のこれまでの病歴を有するか又は有さない患者において類似するが、しかし糖尿病を有する患者(547.0 [76.9-4035.5] ng/ml)対非糖尿病患者(495.1 [29.3-3118.2] ng/ml、 P<0.018)においてはわずかに高かった。
【0074】
血漿PR3−SERPIN A1レベルは、血漿グルコース(rs= 0.08, p< 0.03)、対数クレアチニン(rs = 0.13, p< 0.001)、Killipクラス(rs=0.10, p< 0.002)、NTproBNP(rs =0.25, p< 0.001)、及びクレアチンキナーゼ(rs =0.13, p< 0.001)と適度に相互関係するが、しかし年齢、梗塞の部位、ST上昇の存在又は不在、及び血栓溶解剤が投与されているかいないかに、関係は存在しなかった。
【0075】
これまでの研究の確認にいおいては、血漿NTproBNPは、疾病を有さない生存者(806.8 [0.3-28886] pモル/L; 両者に関してp<0.001)に比較して、死亡し(5955.4 [9.02-14057.2] pモル/L)又は心不全により再入院した(3106.6 [2.4 - 12282.9] pモル/L)患者においては高かった。NTproBNPレベルは、男性(871.6 [0.3-28886] pモル/ml; p<0.001)に比較して、女性(1951.7 [22.9-15732] pモル/L)において高く、そして年齢(rs= 0.46, p< 0.001)、血漿グルコース(rs= 0.15, p< 0.001)、対数クレアチニン(rs = 0.27, p< 0.001)、Killipクラス(rs = 0.29, p< 0.001)及びクレアチンキナーゼ(rs =0.13, p< 0.001)と相互関係した。
【0076】
血漿MPOは、疾病を有さない生存者(24.6 [0.3-405.2] ng/ml)に比較して、死亡した(36.7 [6.44-132.1] ng/ml,相互関係を用いてP<0.035)患者においては有意に高かった。対照的に、心不全(27.6 [6.5-210.8] ng/ml)又は再発性AMI(23.9 [5.3-189.9] ng/ml)により再入院した患者は、疾病を有さない生存者に類似するMPOレベルを有した。MPOレベルは、男性(23.9 [3.6- 215.1] ng/ml; p<0.001)に比較して、女性(30.3 [0.3-405.2] ng/ml)においては高く、そして非糖尿病患者(24.0 [0.3-405.2] ng/ml; p<O.OOl)に比較して、糖尿病患者(30.4 [5.1-238.7] ng/ml)においては高く、そして年齢(rs= 0.12, p< 0.001)、血漿グルコース(rs = 0.10 、p< 0.009)、対数クレアチニン(rs = 0.11, p< 0.001)及びKillipクラス(rs = 0.11, p< 0.002)と相互関係した。
【0077】
NTproBNP(rs= 0.35, p= 0.001)について示される強い関係を伴って、入院指数(超音波心臓検査に基づいてEF<40%又はLVWMI>1.8)に基づく欠陥性LV収縮機能と血漿PR3−SERPIN A1との適度な相互関係が存在した。血漿MPOは、PR3-SERPIN Al 及びNTproBNP (それぞれrs= 0.11 及び 0.12, p= 0.002)に対して弱く相互関係するが、しかしLV収縮機能とは相互関係しなかった。
【0078】
一次エンドポイント:死亡及び心不全二元ロジスチックモデルの予測値としてのPR3-SERPIN Al及び NTproBNPを、次の臨床学的及び人口統計学的変数を用いて、死亡又は心不全の予測のために開発した:年齢、性別、AMIの過去の歴史、高血圧又は糖尿病、Killip クラス>1、血栓溶解使用、対数クレアチニン、NTproBNP、 MPO及びPR3-SERPIN A1。独立した予測値が表2に報告され、そして有意な予測値変数としてNTproBNP 及びPR3- SERPIN Alを包含する。Nagelkerker2は0.35であり、これは前記モデルの良好な適合性を示唆する。
【0079】
一次エンドポイントについてのPR3−SERIN A1の予測値についての受容体−操作特徴曲線が、0.65の曲線(AUC)下の面積を生成し(95%CT:0.60−0.70、p<0.001);NTproBNPについては、AUCは0.78(95%CI:0.74−0.83、p<0.001)。2種のマーカーを組合すロジスティックモデルは、0.84のAUCを生成し(95%CI:0.80−0.88、p<0.001)、これは、いずれかのペプチドのみのAUCを越えた(Hanley and McNeil; Radiology 1983, 148, 839-43の方法によれば、p<0.003)。
【0080】
Cox比例ハザードモデルは、それらの発見を、確認し、性別とは別に死亡又は心不全の同じ独立した予測値を同定する(表3)。ロジスチック及びCoxモデルにおいては、血漿MPOは、死亡及び心不全の独立した予測値ではなかった。
【0081】
Kaplan-Meier生存分析は、メジアン以上のPR3-SERPIN A1(対数ランク28.15, p<0.0001、図1)を有する患者に比較して、メジアン(504.6ng/ml)以下のPR3-SERPIN A1を有する患者において有意に良好な臨床学的結果を示した。疾病を有さない生存者曲線は初期に分岐し、そして2年後でさえ、分岐し続ける。これはまた、NTproBNPについても真であった(対数ランク64.72, p<0.001)。
【0082】
患者が血漿NTproBNP(メジアン1023pモル/l)により層別化される場合、PR3-SERPIN A1は、NTproBNPレベルがメジアン以上であり(傾向についての対数ランク12.54、p<0.0004)、そしてNTproBNPレベルがメジアン以下である(傾向についての対数ランク3.83, p<0.05)両患者において、死亡及び心不全についての追加の予測値を与えた。それらのそれぞれのメジアン以上に高められた両マーカーを有するそれらの患者は、メジアン以上に高められたいずれかのマーカーを有するそれらの患者よりも高い疾病率を有し、そして次に、それらのそれぞれのメジアン以下の両マーカーを有する患者よりも高い疾病率を有した(すべての比較についてp<0.001、図2)。
【0083】
二次エンドポイント:心筋梗塞の予測値としてのPR3-SERPIN Al 及びNTproBNP。
エンドポイントを有さない生存者に比較して、フォローアップの間、さらなるAMIにより再入院された患者は、類似するNTproBNP (メジアン [範囲] 1480.7[2.6-10645.9] 対 806.8[0.3- 28886] pモル/L; p=NS)、 PR3-SERPIN Al レベル(メジアン[範囲] 482.5[168.9-1753.9] 対 486.9[29.3-3118.2] ng/ml; p=NS) 及びMPO レベル(23.9 [5.3-189.9] 対 24.6 [0.3-405.2] ng/ml; P=NS)を有した。
【0084】
追加のマーカー:
ロジスティック回帰モデル及びCox比例ハザードモデルを、他のマーカー(MR-proANP、 CT-proET-1、 MR-proADM、 Copeptin、 NT-proBNP)がPR3-SERPIN A1複合体のマーカーに予後情報を与えるかどうかを(4日目に採取された血液を評価した)、評価するために、死亡の、又は組合されたエンドポイント死亡又は心不全の予測のために構成した。すべての分析においては、評価されるすべてのマーカー(MR-proANP、CT-proET-1、MR-proADM、Copeptin、NT- proBNP)は、PR3-SERPIN A1のマーカーに統計学的に有意な予後情報を付加した。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリング方法であって、
a)心臓病学的疾患又は状態を有する前記患者からのサンプルを供給し、
b)多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを決定し、そして
c)多形核好中球の好アズール性顆粒からの前記プロテアーゼ又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを、前記疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に帰することを含んで成る方法。
【請求項2】
エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3(Pr3)から選択されたプロテナーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルが、段階b)において決定され、そして段階c)における疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
プロテアーゼ3又はプロテアーゼ3/Serpin A1複合体が段階b)において決定され、そして段階c)における疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記心臓病的疾患又は状態が、急性冠状大動脈症候群、例えば不安定狭心症(UA)、非STセグメント上昇心筋梗塞(NSTEMI)又はSTセグメント上昇心筋梗塞(STEMI)を含んで成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
段階b)において、前記プロテアーゼ、又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルが、診断アッセイにより決定される、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体が2種の捕獲分子の使用により検出され、ここで前記2種の捕獲分子はサンプルに連続的に又は同時に添加され得る、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
段階c)が
c1)結合されたプロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその結合された複合体の量に対応するシグナルを測定し、そして
c2)前記段階c1)の前記シグナルの強度と予備記録されたデータとを比較し、ここで前記予備記録されたデータがプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルと、前記疾患又は状態の予後又は有益でない結果の危険性とを相互関係せしめることを含んで成る、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記プロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを、前記疾患又は状態の予後又は重症度又は有益でない結果の危険性と、プロテアーゼ、又は予備決定されたサンプル集団における内因性インヒビターとのその複合体のレベルのメジアンに関しての相互関係;前記プロテアーゼ、又は予備決定されたサンプルの集団における内因性インヒビターとのその複合体のレベルの変位値(例えば、四分値又は%)に関しての相互関係;又は前記プロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを包含する数学モデル、好ましくはCox回帰との相互関係を含んで成る群から選択された方法により相互関係する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル又はその画分、リンパ液サンプル、尿サンプル、又は前記サンプルのいずれかの抽出物である、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
さらに、心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリングと関係するか、又はそれらのために有用である、1又は複数の追加のマーカー又は臨床パラメーターのレベルが決定される、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記臨床パラメーターが、年齢、性別、これまでの病歴、特に心筋梗塞、狭心症、高血圧、糖尿病、高コレステロール血漿、ST−上昇AMI、体質重指数、遺伝的素質/家族歴、民族的背景、前記性向に影響を及ぼす習慣、例えば喫煙、アルコール摂取、ダイエット又は入院でのパラメーター、例えばKillipクラス>1、又は入院での血栓溶解薬物投与を含んで成る群から選択されるパラメーターである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記追加のマーカーが、proBNP又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばBNP及びNT−proBNP、proANP又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばNT−proANP及びMR−proANP、プロアドレノメジュリン又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばアドレノメジュリン、PAMP及びMR−proADM、プロエンドセリン又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばエンドセリン−1、大きなエンドセリン−1、CT−proET−1及びNT−proET-1, プロバソプレッシン又は少なくとも8個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばバソプレッシン、コペプチン及びニューロフィシン2、ミエロペルオキシダーゼ、トロポニン、FABP、C−反応性タンパク質、プロカルシトニン、インターロイキン−6、ST−2、GDF−15、虚血改質アルブミン、又はそれらのフラグメントを含んで成る群から選択される、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記追加のマーカーが、NT−proBNP又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメントである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は治療調節及び/又はモニターリング及び/又は予後のために、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ及び/又はサンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを検出し、そして/又は決定するためへの、多形核好中球のアズール性顆粒からのプロテアーゼ及び/又は内因性インヒビターとのその複合体に対して指図された少なくとも1つの捕獲分子を含んで成るキットの使用。
【請求項15】
前記疾患又は状態の予後又は重症度又は有益でない結果の危険性が決定される、請求項14記載のキットの使用。
【請求項16】
前記有益でない結果が、死又は心疾患である、請求項15記載のキットの使用又は請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
多形核好中球のアズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体の、心臓病学的疾患又は状態のためのバイオマーカーとしての使用。
【請求項1】
心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリング方法であって、
a)心臓病学的疾患又は状態を有する前記患者からのサンプルを供給し、
b)多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを決定し、そして
c)多形核好中球の好アズール性顆粒からの前記プロテアーゼ又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを、前記疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に帰することを含んで成る方法。
【請求項2】
エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3(Pr3)から選択されたプロテナーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルが、段階b)において決定され、そして段階c)における疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
プロテアーゼ3又はプロテアーゼ3/Serpin A1複合体が段階b)において決定され、そして段階c)における疾患又は状態の予後又は重症度、又は前記患者において有益でない結果の危険性に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記心臓病的疾患又は状態が、急性冠状大動脈症候群、例えば不安定狭心症(UA)、非STセグメント上昇心筋梗塞(NSTEMI)又はSTセグメント上昇心筋梗塞(STEMI)を含んで成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
段階b)において、前記プロテアーゼ、又は前記サンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルが、診断アッセイにより決定される、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体が2種の捕獲分子の使用により検出され、ここで前記2種の捕獲分子はサンプルに連続的に又は同時に添加され得る、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
段階c)が
c1)結合されたプロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその結合された複合体の量に対応するシグナルを測定し、そして
c2)前記段階c1)の前記シグナルの強度と予備記録されたデータとを比較し、ここで前記予備記録されたデータがプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルと、前記疾患又は状態の予後又は有益でない結果の危険性とを相互関係せしめることを含んで成る、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記プロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを、前記疾患又は状態の予後又は重症度又は有益でない結果の危険性と、プロテアーゼ、又は予備決定されたサンプル集団における内因性インヒビターとのその複合体のレベルのメジアンに関しての相互関係;前記プロテアーゼ、又は予備決定されたサンプルの集団における内因性インヒビターとのその複合体のレベルの変位値(例えば、四分値又は%)に関しての相互関係;又は前記プロテアーゼ、又は内因性インヒビターとのその複合体のレベルを包含する数学モデル、好ましくはCox回帰との相互関係を含んで成る群から選択された方法により相互関係する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル又はその画分、リンパ液サンプル、尿サンプル、又は前記サンプルのいずれかの抽出物である、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
さらに、心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は予後及び/又は治療調節及び/又はモニターリングと関係するか、又はそれらのために有用である、1又は複数の追加のマーカー又は臨床パラメーターのレベルが決定される、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記臨床パラメーターが、年齢、性別、これまでの病歴、特に心筋梗塞、狭心症、高血圧、糖尿病、高コレステロール血漿、ST−上昇AMI、体質重指数、遺伝的素質/家族歴、民族的背景、前記性向に影響を及ぼす習慣、例えば喫煙、アルコール摂取、ダイエット又は入院でのパラメーター、例えばKillipクラス>1、又は入院での血栓溶解薬物投与を含んで成る群から選択されるパラメーターである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記追加のマーカーが、proBNP又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばBNP及びNT−proBNP、proANP又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばNT−proANP及びMR−proANP、プロアドレノメジュリン又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばアドレノメジュリン、PAMP及びMR−proADM、プロエンドセリン又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばエンドセリン−1、大きなエンドセリン−1、CT−proET−1及びNT−proET-1, プロバソプレッシン又は少なくとも8個のアミノ酸のそのフラグメント、例えばバソプレッシン、コペプチン及びニューロフィシン2、ミエロペルオキシダーゼ、トロポニン、FABP、C−反応性タンパク質、プロカルシトニン、インターロイキン−6、ST−2、GDF−15、虚血改質アルブミン、又はそれらのフラグメントを含んで成る群から選択される、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記追加のマーカーが、NT−proBNP又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメントである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
心臓病学的疾患又は状態を有する患者の危険性層別化及び/又は治療調節及び/又はモニターリング及び/又は予後のために、多形核好中球の好アズール性顆粒からのプロテアーゼ及び/又はサンプルにおける内因性インヒビターとのその複合体のレベルを検出し、そして/又は決定するためへの、多形核好中球のアズール性顆粒からのプロテアーゼ及び/又は内因性インヒビターとのその複合体に対して指図された少なくとも1つの捕獲分子を含んで成るキットの使用。
【請求項15】
前記疾患又は状態の予後又は重症度又は有益でない結果の危険性が決定される、請求項14記載のキットの使用。
【請求項16】
前記有益でない結果が、死又は心疾患である、請求項15記載のキットの使用又は請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
多形核好中球のアズール性顆粒からのプロテアーゼ又は内因性インヒビターとのその複合体の、心臓病学的疾患又は状態のためのバイオマーカーとしての使用。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【公表番号】特表2011−528792(P2011−528792A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519102(P2011−519102)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058397
【国際公開番号】WO2010/009965
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(508093584)ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (27)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058397
【国際公開番号】WO2010/009965
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(508093584)ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (27)
【Fターム(参考)】
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