説明

心臓組織の治療

【課題】心臓組織を治療するように構成されたシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】一実施例は、ユーザが(心臓手術又は経皮的冠状動脈インターベンションの前、その間、及びその後に)心臓治療処置を実施できるようにするカテーテル装置を含むことができる。一実施例では、そのカテーテル装置を、(i)心臓を循環器系から切り離す前に心筋細胞を予め調整し、(ii)心臓手術中に心臓を循環器系から切り離すときに心筋保護液を冠状静脈洞に搬送し、(iii)心臓が循環器系と再接続された後で心臓を通る血流を制御するために使用することができる。一実施例では、そのカテーテル装置は、(i)冠状静脈洞を間欠的に閉塞すること、(ii)治療用流体を冠状静脈洞に搬送すること、及び(iii)冠状静脈洞から右心房に通る血液の流量をモニタリングすることのうちの一部又は全てを実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば開心外科手術中又は経皮的冠状動脈形成術(インターベンション)中に、心臓組織を治療するように構成されたシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心臓手術中に、患者が人工心肺(潅流装置としても知られている)に接続されている間は、心臓を循環器系から切り離すことができる。人工心肺は、患者の循環器系を通る血液を酸素化及びポンプ輸送する体外回路を提供する。典型的には、右心房に静脈カテーテルが挿入され、その静脈カテーテルは、体内から人工心肺の体外回路に戻るように血液を排出する。また、大動脈には動脈カニューレが挿入され、そのため、人工心肺によって酸素化された血液をポンプ輸送して患者の循環器系に戻すことができる。これらのカテーテルが適位置に配置された後で、大動脈を動脈カニューレと心臓との間でクランプ遮断することができ、それにより血液が心臓に戻ることが防止される。こうした処置手法により、心臓を除く全ての体内領域に酸素を付与した血液が供給される。手術中に心筋細胞が劣化することを防止するために、心臓に低温の心筋保護流体を注入して、心臓を冷却すると共に心臓の拍動を停止させることができる。最初の注入の後に、心臓を周期的に再潅流して、心臓を低温停止状態に維持することができる。
【0003】
心筋保護液は、順行に(動脈を通して通常の血流の方向に)、逆行に(静脈を通して通常の血流の方向とは逆に)、又は逆行投与と順行投与の組み合わせで投与することができる。心筋保護液は、心拍動を引き起こす心臓の自然の電気信号の伝達を妨害することによって心臓を一時的に停止させることができる。
【0004】
従来は、バルーン・カテーテルを冠状静脈洞に挿入し、バルーンを拡張させ、冠状静脈を通して逆方向に心筋保護液を潅流することによって、心筋保護液を逆行に投与している。逆行性冠状静脈洞潅流(RCSP)用のカテーテルの一部は、拡張する内腔を通して充填される、手動拡張バルーンを用いることができる。バルーンを拡張する間は、冠状静脈洞から右心房への血液又は保護液の流れが封鎖される。
【0005】
心臓から通常の血流が奪われている間には、心筋細胞の一部が損傷する(虚血性心筋細胞などの)リスクがある。さらに、心臓手術が完了し大動脈がクランプ解除されて心臓への通常の血流が回復した後で、すぐに心筋細胞を通って血液が急に流れることにより、心筋細胞にさらに損傷を引き起こし、通常の血流が心筋細胞の虚血性部分を通って戻ることがなくなる虞がある。
【0006】
さらに、場合によっては、人工心肺の外部血液ポンプを必要としないで心臓を治療することができる。例えば、経皮的冠状動脈インターベンション中に、経皮的に搬送されたステント又は血管形成術用のバルーンによって、冠状動脈の閉鎖を修復又は除去することができる。冠状動脈の閉鎖により、心筋細胞の一部分を通る血流が減少し、それにより、損傷した心筋細胞又は虚血性心筋細胞の領域が作られることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
心臓組織を治療するシステム又は方法のいくつかの実例は、(人工心肺と組み合わせた)開心術、オフ・ポンプ心臓手術、又は経皮的冠状動脈インターベンション処置中に心筋細胞を損傷から保護するか又は回復させるように働く多機能カテーテル装置を含むことができる。そのカテーテル装置は、例えば、冠状静脈洞を間欠的に閉塞させ、心筋保護液若しくは血液又はそれらの組み合わせを冠状静脈洞に搬送するプロセスにおいて使用することができる。
【0008】
本明細書で説明する特定の具体例は、冠状静脈洞中でバルーン装置を拡張したままで、外科医又は他のユーザが(心臓手術の前、その間、及びその後に)いくつかの心臓治療処置を実行できるようにするシステム又は方法を含む。具体的には、心臓を循環器系から切り離す(又はクランプ締めする)前に心筋細胞を(局所的に)予め調整するために、そのカテーテル装置を容易に使用することができる。例えば、静脈血流を再分配することで心筋細胞を予め調整するように圧力制御式間欠的冠状静脈洞閉塞(PICSO)治療を心臓に施すために、そのカテーテル装置を備えることができる。また、心臓手術中に心臓が循環器系から切り離されているときに、そのカテーテル装置を用いて、心筋保護液(例えば、特定の実施例では、脈動式に且つ逆行して心筋保護液)を冠状静脈洞に搬送することができる。心筋保護液の脈動式の搬送を利用して、冠状静脈洞圧の測定値に少なくとも部分的に基づいた量だけ心筋保護液を冠状静脈洞に投与することができる。さらに、そのカテーテル装置を用いて、心臓を循環器系と再接続(クランプ解除)した後で心臓を通る血流を制御することができる。したがって、通常の血流をすぐに回復させた場合に普通なら起きることがある再潅流による心筋細胞の損傷の可能性を低減するように制御した形で、心筋細胞を通る最初の血流を制限することができる。バルーンが冠状静脈洞中で拡張している間にカテーテルによって施されるこうした治療処置により、心臓手術が完了し動脈血流が心筋細胞に戻った後の心筋細胞の回復を改善できる。
【0009】
他の具体例では、本明細書で説明するカテーテル・システムを、(例えば、人工心肺の血液ポンプではなく)心臓自体が血液循環を行うオフ・ポンプ心臓手術で用いることができる。こうした状況では、PICSO治療を心臓に施すためにカテーテル装置を冠状静脈洞に配置することができる。さらに、カテーテル装置は、(例えば、冠状静脈洞圧が急に下がる場合に)逆行潅流血液を冠状静脈洞に選択的に搬送する管腔を含むことができる。冠状静脈洞に搬送された血液は、主要動脈又は酸素化した血液の外部供給源からサンプリングした動脈血を含むことができる。こうしたプロセスは、例えば、心臓手術で(例えば、オフ・ポンプ心臓手術の冠状動脈バイパス中など)心臓を心膜クレードルで持ち上げて心臓の後面に外科的にアクセスできるようにするときに有用な場合がある。
【0010】
代替の具体例では、本明細書で説明するカテーテル・システムは経皮的冠状動脈インターベンション(PCI)処置で使用することができる。こうした状況では、そのカテーテル装置を、静脈系を通して冠状静脈洞に経皮的に搬送することができる。そのカテーテル装置は、心臓の異なる領域で行われるPCI処置中にPICSO治療を心臓に施すことができる。また、カテーテル装置は、潅流血液を逆行して冠状静脈洞に(例えば、長期間にわたって潅流が不足する場合があるPCI処置中に)選択的に搬送する管腔を含むことができる。上記で説明したように、冠状静脈洞に搬送された血液は、主要動脈又は酸素化した血液の外部供給源からサンプリングした動脈血を含むことができる。
【0011】
いくつかの具体例では、冠状静脈洞閉塞カテーテルが遠位端部分を含むことができ、その遠位端部分は、拡張時に冠状静脈洞の内壁に係合するように構成された拡張式バルーン装置を含む。そのカテーテルは遠位ポートを含むこともでき、その遠位ポートは、拡張式バルーン装置が冠状静脈洞中で拡張しているときに、冠状静脈洞に延在するように拡張式バルーン装置の遠位に配置されている。そのカテーテルはさらに流出ポートを含むことができ、その流出ポートは、拡張式バルーン装置が冠状静脈洞中で拡張しているときに、右心房と流体連絡するように拡張式バルーン装置の近位に配置されている。遠位端部分は、遠位ポートから流出ポートまでの流体流路を少なくとも部分的に画定することができる。カテーテルは、流路の遠位ポートから流出ポートに配置された可動式内側部材を含むこともできる。流路の遠位ポートから流出ポートが閉塞している第1の位置と、流路の遠位ポートから流出ポートが開いている第2の位置との間で可動式内側部材を調節することができる。
【0012】
本明細書で説明する特定のいくつかの具体例は、心臓手術中に心臓組織を治療する方法を含むことができる。その方法は、心臓を体内の循環器系から切り離す前に、冠状静脈洞閉塞カテーテルの安定化バルーン装置が冠状静脈洞の内壁と係合するように冠状静脈洞閉塞カテーテルの遠位端部分を冠状静脈洞に前進させるステップを含むことができる。その方法は、安定化バルーン装置が継続的に冠状静脈洞中で拡張した状態のままで、静脈血流を心筋細胞に再分配するように、冠状静脈洞閉塞カテーテルを使用して冠状静脈洞を間欠的に閉塞することによって、心筋細胞を予め調整するステップを含むこともできる。その方法はさらに、安定化バルーン装置が継続的に冠状静脈洞中で拡張した状態のままで、心臓を体内の循環器系から切り離した後に、冠状静脈洞閉塞カテーテルの管腔を通して冠状静脈洞に心筋保護液を搬送するステップを含むことができる。その方法は、心臓を体内の循環器系に再接続した後で、安定化バルーン装置が継続的に冠状静脈洞中で拡張した状態のままで、静脈血流を心筋細胞に再分配するように、冠状静脈洞閉塞カテーテルを使用して冠状静脈洞を間欠的に閉塞するステップを含むこともできる。
【0013】
いくつかの具体例では、心臓手術のためのシステムが、冠状静脈洞閉塞カテーテル及び人工心肺を含むことができる。カテーテルは、遠位端部分と、近位のハブ部分と、遠位端部分に沿って配置され、拡張状態のときに冠状静脈洞の内壁に係合するように構成された安定化バルーン装置と、圧力制御式間欠的冠状静脈洞閉塞の場合に第1の位置と第2の位置との間で調節可能な可動式内側部材とを含むことができる。人工心肺は、冠状静脈洞閉塞カテーテルの近位のハブ部分に接続された複数のラインと、冠状静脈洞閉塞カテーテルの可動式内側部材の動きを制御する制御システムとを含むことができる。人工心肺の制御システムを使用して、冠状静脈洞から右心房への流路が閉塞している第1の位置と、冠状静脈洞から右心房への流路が開いている第2の位置との間で可動式内側部材を調節することができる。
【0014】
特定の具体例では、冠状静脈洞閉塞カテーテルが遠位端部分を含むことができ、その遠位端部分は、拡張状態のときに冠状静脈洞の内壁に係合するように構成された拡張式バルーン装置を含む。そのカテーテルは、拡張式バルーン装置の遠位にある遠位位置まで延在する、第1の圧力を検出する第1の圧力センサ管腔を含むこともできる。そのカテーテルはさらに、拡張式バルーン装置の近位にある近位位置まで延在する、第2の圧力を検出する第2の圧力センサ管腔を含むことができる。第1の圧力センサ管腔及び第2の圧力センサ管腔は、第1の圧力と第2の圧力との差が遠位端部分に沿ってバルーン装置の遠位の領域からバルーン装置の近位の領域まで通る血液の流量を示すように互いに関連して配置されてよい。
【0015】
本発明の1つ又は複数の実施例の詳細が添付の図面及び以下の説明に記載されている。明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から本発明の他の特性、目的、及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】いくつかの実施例による心臓組織を治療するシステムの斜視図。
【図2】図1のシステムの一部分の斜視図。
【図3】血管を間欠的に閉塞するときの、図1のシステムのカテーテル装置の遠位部分の側面図。
【図4】血管を間欠的に閉塞するときの、図1のシステムのカテーテル装置の遠位部分の側面図。
【図5】図4のカテーテル装置のシャフト部分の断面図。
【図6】図4のカテーテル装置の先端部分の遠位端面図。
【図7】心筋保護液を搬送するときの、図1のシステムのカテーテル装置の遠位部分の側面図。
【図8】心筋保護液を搬送するときの、図1のシステムのカテーテル装置の遠位部分の側面図。
【図9】図1のシステムと共に使用する代替のカテーテル装置の遠位部分の側面図。
【図10】図1のシステムと共に使用する代替のカテーテル装置の遠位部分の側面図。
【図11】いくつかのインプリメンテーションによる心臓手術中に心臓組織を治療するプロセスのチャート。
【図12】オフ・ポンプ心臓手術中又はPCI処置中に使用する代替のシステムの、図1〜図8のカテーテル装置の斜視図。
【図13】いくつかの実施例による、カテーテル装置と組み合わせて使用する制御回路の図。
【図14】いくつかの実施例による、血管を間欠的に閉塞し血流量を判定するために使用される図4のカテーテル装置の遠位部分の側面図。
【図15】特定の実施例による、血管を間欠的に閉塞し血流量を判定するために使用される代替のカテーテル装置の遠位部分の側面図。
【図16】特定の実施例による、血管を間欠的に閉塞し血流量を判定するために使用される代替のカテーテル装置の遠位部分の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な図面中で同じ符号は同じ部材を指す。
【0018】
図1〜図2を参照すると、心臓組織を治療するシステム100のいくつかの実施例が、冠状静脈洞閉塞カテーテル120及び人工心肺102(図1)を含むことができる。その人工心肺102は、血液が心臓手術中に体外回路を経由して酸素を付与される潅流システムとして動作することができる。以下により詳細に説明するように、人工心肺102はカテーテル制御システム160を収容することができ、そのカテーテル制御システム160はカテーテル120の動作を制御するように構成されており、カテーテル120の遠位部分121は心臓10の血管(例えば、図示の実施例の冠状静脈洞20)中に配置されている。冠状静脈洞閉塞カテーテル120は、(図2に示す遠位端につながる)遠位部分121と、近位部分131とを含む。その近位部分131は近位のハブ132を含み、その近位のハブ132はいくつかの流体ライン又はセンサ・ライン150、153、154、155、156、及び159を介して人工心肺102に接続されている。したがって、心臓の特徴(例えば、流体の流れの冠状静脈洞圧、右心房圧など)を示すデータを供給する1つ又は複数のセンサ信号を受信しながら、さらに、人工心肺102(その中に収容したカテーテル制御システム160を含む)を用いて、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位端部分121で1つ又は複数の構成要素を動作させることができる。
【0019】
簡単に言うと、使用の際に、心臓10が循環器系から(例えば、クランプ締めされて)切り離される心臓手術の一部として、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位端部分121を心臓10の冠状静脈洞20中に配置することができる。カテーテル120を用いて、首尾よく、主要な心臓手術(例えば、心臓弁置換術、冠状動脈パイパス術など)の前、その間、及び/又はその後にいくつかの機能を実行することができ、カテーテル120のバルーン装置122が冠状静脈洞20中で拡張している間に、その手術の一部又は全てを実行することができる。例えば、カテーテル120は、心臓を循環器系から切り離す(又はクランプ締めされる)前に静脈血流を再分配することで心筋細胞を予め調整するようにPICSO治療を心臓10に施すことによって、心筋細胞を予め調整するために容易に使用することができる。カテーテル120が作動して、冠状静脈洞20から右心房11中に出る血流を間欠的に閉塞すると、通常は冠状静脈洞20から出る静脈血流を心筋細胞30の一部分に再分配して、後で逆行性の心筋保護液を受け取る心筋細胞を予め調整するか又は前処理することができる。したがって、心筋細胞30のその部分は通常は冠状動脈40及びその部位の動脈41から血流を受け取っているが、心筋細胞30は、冠状静脈洞20がカテーテル120で間欠的に閉塞されている間は、静脈側から(例えば、その部位の静脈21又は他の分枝血管22から)再分配された血液を受け取る。それに続いて心臓10が循環器系から切り離される期間中には、カテーテル120を用いて、心筋保護液(例えば、特定の実施例では、脈動式に且つ逆行して心筋保護液)を冠状静脈洞20中に搬送することができる。人工心肺102に収容された制御システム160は、冠状静脈洞20の圧力を検出し、その後、冠状静脈洞20の圧力の測定値に少なくとも部分的に基づいて、カテーテル120を通して冠状静脈洞20中に搬送すべき心筋保護液の量を決定するように構成することができる。それに続いて心臓10が循環器系に再接続される(例えば、クランプを取り外して、通常の血流を回復させる)さらに別の期間中に、カテーテル120は、心筋細胞を通る通常の血流の最初の再潅流中に普通なら生じることがある損傷を制限するために、心臓10を通る血流を制御することができる。
【0020】
やはり図1〜図2を参照すると、人工心肺102に収容された制御システム160(図1)は、(冠状静脈洞20中で安定化バルーンとして働く)拡張式バルーン装置122及び閉塞構成要素(例えば、カテーテル120の可動式内側部材140(図3))の両方を自動制御するように構成することができる。以下により詳細に説明するように、制御システム160は、コンピュータ・プロセッサ(図13参照)を有する制御回路162を含み、そのコンピュータ・プロセッサ(図13参照)は、特定のパターンに従って冠状静脈洞20の閉塞を作動又は作動停止させるように、少なくとも1つのコンピュータ記憶装置(図13参照)に格納されたコンピュータ読み取り可能な命令を実行する。例えば、制御システム160の構成は、冠状静脈洞圧とは関係のない閉塞期間及び解放期間の所定のパターンの一部として、又は処置中の冠状静脈洞圧の読み取り値によって定義される圧力に少なくとも部分的に依存したパターンの一部として、冠状静脈洞20中でカテーテル120の閉塞構成要素を作動させるようにできる。さらに、人工心肺102は、図表によるユーザ・インターフェース(例えば、タッチ・スクリーン式表示装置)を有する表示装置119を備え、そのユーザ・インターフェースは、外科医又は他のユーザに、冠状静脈洞閉塞処置の進捗、心筋保護液搬送処置、及び心臓10の状態を示す、時間に関する関連データを提供する。したがって、ユーザは、図表によるユーザ・インターフェース装置119を見て、心臓の状態、及び(i)冠状静脈洞20を間欠的に閉塞する影響、又は(ii)心筋保護液を冠状静脈洞20に搬送する影響を容易にモニタリングすることができる。
【0021】
冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位端部分121を、心臓壁を通して搬送し、安定化バルーン122を冠状静脈洞20中で拡張できるように冠状静脈洞20中に配置することができる。遠位端ポート129が冠状静脈洞に配置され、流出ポート123が右心房11中に配置される(又は右心房11と流体連絡する)ように、安定化バルーン122を冠状静脈洞20の口部の近位に配置することができる。以下により詳細に説明するように、冠状静脈洞20を閉塞し、それにより心筋細胞30に静脈血を再分配するように、カテーテル120の可動式内側部材140を流出ポート123に対して調節することができる(図3)。また、冠状静脈洞20から右心房11への血流通路を開放するように、可動式内側部材140を流出ポート123に対して配置することができる(図4)。したがって、人工心肺102に収容された制御システム160は、心臓手術の様々な期間に冠状静脈洞20を間欠的に閉塞するために可動式内側部材140の位置を調節するように構成することができる。こうした状況では、安定化バルーン装置122は、冠状静脈洞が閉塞されているか、閉塞されていないかに関わらず、心臓手術中に冠状静脈洞閉塞カテーテル120中で拡張したままにすることができる。
【0022】
次に図1を参照すると、人工心肺102はいくつかの構成要素を含むことができ、それらの構成要素は、酸素化した血液を患者の循環器系に搬送する体外回路を提供する。例えば、人工心肺102は複数のローラ・ポンプ109、110、111、及び112を含むことができ、心筋保護液又は血液などの流体を制御した流れを搬送するようにそれらのポンプを別々に作動させ、制御することができる。人工心肺は、血液貯蔵タンク、遠心血液ポンプ、気泡除去装置、及びいくつかのセンサを有する酸素化回路115を含むこともできる。酸素を付与された血液を搬送するための第1の血流ライン116が、人工心肺102から延在することができ、その血流ライン116を大動脈16に連結することができる。静脈血を人工心肺102に戻す第2の血流ライン117を上大静脈17、下大静脈、又はその両方に連結することができる。人工心肺の内部制御システム(制御システム160とは別個のものでもよく、制御システム160に組み込まれてもよい)を使用して、心臓10が循環器系からクランプ締めされているときに酸素化した血液を患者の循環器系に十分に供給するように、血液センサ及び患者の状態をモニタリングすることができる。
【0023】
冠状静脈洞閉塞カテーテルの近位部分131は患者の外部に配置されており、遠位端部分121は冠状静脈洞20中に前進する。近位部分131は近位のハブ132を含み、その近位のハブ132は、1組の流体ライン又はセンサ・ライン150、153、154、155、156、及び159を介して人工心肺102に接続されている。したがって、人工心肺102に収容された制御システム160は、安定化バルーン122を拡張又は収縮させることができ、可動式内側部材140の位置を調節することもでき、同時に、心臓の特徴(例えば、流体の流れの冠状静脈洞圧、右心房圧など)を示すデータを提供する複数のセンサ信号を受け取る。
【0024】
一実例では、制御システム160と近位のハブ132との間を延在する第1のライン150は、カテーテル120の遠位部分121において可動式内側部材140の位置を調節する作動ラインを備える。第1のライン150は、人工心肺102中に収容された制御システム160と接続されるように、人工心肺102の対応するポート101に接続されている。いくつかの実施例では、可動式内側部材140は、人工心肺102に収容されたアクチュエータ165(例えば、ポンプ、モータ、磁気アクチュエータ、空気圧式アクチュエータなど)が可動式内側部材140の位置を直接調節することができるように、近位方向に遠位部分121から近位のハブ132及び作動ライン150を通って延在する。或いは、近位のハブ132は、人工心肺102に収容されたアクチュエータ165が可動式内側部材140を移動させるために(例えば、流体の圧力、プッシュ・プル式ケーブル、遠位部分に沿ってコイルに磁気力を生成する電気信号などによる)作動力を搬送することができるように、作動ライン150をカテーテル120の作動管腔139(図5)と接続することができる。
【0025】
別の実例では、制御システム160と近位のハブ132との間を延在する第2のライン153が拡張/収縮ラインを備え、その拡張/収縮ラインを通して加圧流体(例えば、ヘリウムガス、別のガス、又は安定した液体)を搬送して、安定化バルーン装置122を拡張することができる(さらに、排出してバルーン装置122を収縮させることができる)。拡張/収縮ライン153は、人工心肺102に収容された制御システム160の空圧式サブシステムに流体連絡するように、対応する拡張/収縮ポート103に接続されている。近位のハブ132は、冠状静脈洞閉塞カテーテル120を通ってバルーン装置122の内部にある1組のポートまで延在するバルーン制御管腔133(図5)と、拡張/収縮ライン153を接続している。
【0026】
別の実例では、人工心肺102と近位のハブ132との間を延在する第3のライン154がバルーン・センサ・ラインを備え、そのバルーン・センサ・ラインは、バルーン装置122内の流体の圧力を測定するようにバルーン装置122の内部と流体連絡している。近位のハブ132は、冠状静脈洞閉塞カテーテル120を通ってバルーン装置122の内部にある第2の組のポートまで延在するバルーン圧力モニタリング管腔134(図5)と、第3のライン154を接続している。過度に加圧されたバルーン装置から冠状静脈洞20を保護するために用いられる安全機能の一部として、バルーン装置122の圧力を制御システム160の制御回路162(図1)によってモニタリングすることができる。バルーン・センサ・ライン154は、制御システム160内に配置された圧力センサがバルーン装置122中の流体の圧力を検出できるように、人工心肺102の対応するポート104に接続されている。或いは、センサ・ワイヤのみが人工心肺102の対応するポート104に接続されるように、圧力センサを遠位端部分121又は近位のハブ132に配置することができる。
【0027】
近位のハブ132は、人工心肺102から延在する第4のライン155とも接続している。第4のライン155は冠状静脈洞圧ラインを備え、その冠状静脈洞圧ラインを使用して、閉塞しているときも閉塞していないときも冠状静脈洞20中の流体の圧力を測定する。近位のハブ132は、冠状静脈洞閉塞カテーテル120を通ってバルーン装置122の遠位前方にある遠位ポート129まで延在する冠状静脈洞圧管腔135(図5〜図6)と、第4のライン155を接続している。したがって、冠状静脈洞圧管腔135及び第4のライン155の少なくとも一部分が、冠状静脈洞20中の血圧を第4のライン155の近位部分に沿って圧力センサ装置107に伝達する、流体で満たされた圧力伝達通路(例えば、生理食塩水、別の生体適合性の液体、又はそれらの組み合わせ)として動作することができる。圧力センサ装置107は、(冠状静脈洞圧を示す)圧力測定値をサンプリングし、冠状静脈洞圧を示すセンサ信号を人工心肺102の対応するポート105に出力して、制御システム160に入力する。冠状静脈洞圧データを、図表によるユーザ・インターフェース119によってグラフの形態で表示することができ、そのため、外科医又は他のユーザは、冠状静脈洞20が閉塞した状態でも閉塞していない状態でも冠状静脈洞圧の傾向を容易にモニタリングすることができる。任意選択で、人工心肺102の図表によるユーザ・インターフェース119は、圧力測定数値をスクリーンに出力することもでき、そのため、外科医が最大冠状静脈洞圧、最小冠状静脈洞圧、又はそれらの両方を容易に見ることができる。代替の実施例では、圧力センサ装置107を人工心肺102の筐体に組み込むことができ、そのため、第4のライン155が、対応するポート105に通じる流体で満たされた通路になり、その際、その内部の圧力センサ装置(装置107とよく似ている)が圧力測定値をサンプリングし、冠状静脈洞圧を示す信号を出力する。或いは、管腔135は、管腔135の遠位開口部に配置された圧力感知要素に接続された光ファイバ又はワイヤを担持することができる。したがって、その圧力感知要素を管腔135の遠位端において流体の圧力にさらすことができ、光ファイバ又はワイヤは、圧力センサ信号を制御システム160に連絡することができる。
【0028】
さらに別の実例では、人工心肺102と近位のハブ132との間を延在する第5のライン156は、右心房11で流体の圧力又は流量を測定するために用いられるセンサ・ラインを備える。近位のハブ132は、冠状静脈洞閉塞カテーテル120を通ってバルーン装置122の近位の流出ポート123に露出したポートまで延在する心房センサ管腔136(図5)と、第5のライン156を接続している。一実例では、右心房(例えば、流出ポート123を出て右心房中に入る流体)の圧力を制御システム160の制御回路162(図1)によってモニタリングして、冠状静脈洞20から右心房11に入る血流量を判定することができる。すなわち、冠状静脈洞圧管腔135(図5〜図6)のうちのバルーン装置122の遠位にある部分で測定した圧力を、心房センサ管腔136(図5)の圧力と比較して、可動式内側部材140が閉塞していない位置にあるとき(図4)に流路を通る血流量を判定することができる。第5のライン156は、制御システム160内に配置された圧力センサが右心房11に配置された流出ポート123の流体の圧力を検出できるように、人工心肺102の対応するポート106に接続されている。或いは、センサ・ワイヤのみが人工心肺102の対応するポート106に接続されるように、圧力センサを心房センサ管腔136(図5)の遠位端又は近位のハブ132に配置することができる。例えば、管腔136は、管腔136の遠位開口部(図5)に配置された圧力感知要素に接続された光ファイバ又はワイヤを担持することができる。したがって、圧力感知要素を流出ポート123で流体の圧力にさらすことができ、光ファイバ又はワイヤは、圧力センサ信号を制御システム160に連絡することができる。
【0029】
図1に示すように、いくつかの実施例では、カテーテル120を通って遠位ポート129から出るように(図7〜図8)心筋保護液、血液、又は別の流体を搬送するように、第6のライン159が人工心肺102から近位のハブまで延在することができる。流体ライン159は、人工心肺102のポンプ109、110、111、及び112のうちの1つから延在することができ、流体に気泡があればそれを減らすか又はなくす気泡除去タンク118を含むことができる。近位のハブ132は、バルーン装置122の遠位に配置された遠位ポート129まで延在する中心管腔130(図5)と、第6のライン159を接続している。したがって、人工心肺102は、心臓10が循環器系から切り離されているときに、逆行性心筋保護液治療又は血液の逆行潅流(以下で説明する)のために、中心管腔130(図5)を通って遠位ポート129から出るように心筋保護液、血液、又は別の流体をポンプ輸送するように動作させることができる。
【0030】
任意選択で、システム100は、ECG信号を人工心肺102に収容された制御システム160に出力する1つ又は複数のECGセンサを含むことができる。例えば、対応するポートと対合する、人工心肺102の筐体に沿ったケーブルを介して、ECGセンサを制御システム160に接続することができる。以下により詳細に説明するように、心臓手術期間中に、心筋保護液が心臓に搬送される前及び後の両方で(例えば、心臓が自発的に鼓動している間に)、ECG信号をモニタリングすることができる。ECGデータを、図表によるユーザ・インターフェース119によってグラフの形態で表示することができ、そのため、外科医又は他のユーザは、冠状静脈洞が閉塞した状態でも閉塞していない状態でも患者の心拍数及び他の特徴(例えば、動脈圧、大動脈圧など)を容易にモニタリングすることができる。任意選択で、人工心肺102の図表によるユーザ・インターフェース119は、ECGセンサのデータに基づいた心拍数データの数値をスクリーンに出力することもでき、そのため、外科医が(例えば、分当たりの拍動数の単位で)心拍数を容易に見ることができる。やはり制御システム160によって受信されるECGセンサ信号を制御回路162(図1)によって用いて、閉塞期間の開始(例えば、可動式内側部材140がそのときに閉塞位置(図3)にある開始時間)、及び閉塞していない期間の開始(例えば、可動式内側部材140がそのときに閉塞していない位置にある開始時間(図4))を適切に時間合わせする。
【0031】
上記で説明したように、人工心肺102に収容された制御システム160のいくつかの実施例は、空気圧サブシステムを有する制御回路162を含むことができる。その制御回路162は、1つ又は複数のプロセッサを含むことができ、それらのプロセッサは、少なくとも1つの記憶装置(例えば、図13参照)に格納された様々なソフトウェア・モジュールを実行するように構成されている。プロセッサは、例えば、マイクロプロセッサを含むことができ、そのマイクロプロセッサは、制御システム160の制御命令を実行するようにマザーボード上に配置されている。記憶装置は、例えば、1つ又は複数のディスクを有するコンピュータのハード・ドライブ・デバイスや、様々なソフトウェア・モジュールを格納するRAM記憶装置を含むことができる(例えば、図13参照)。いくつかの実施例では、制御回路162は、制御システム160のアクチュエータ・ユニット165を作動させるように構成することができる。したがって、制御回路162により、(バルーン装置122の遠位の第1のセンサ管腔135からの)冠状静脈洞圧及び(バルーン装置122の近位の第2のセンサ管腔136からの)右心房圧を示すセンサ信号に少なくとも部分的に基づいたパターンで、アクチュエータ・ユニット165が可動式内側部材140を移動させることができる。
【0032】
次に図3〜図4を参照すると、冠状静脈洞閉塞カテーテル120は、拡張式バルーン装置122が冠状静脈洞20中で拡張したままで、冠状静脈洞20を間欠的に閉塞するように構成することができる。冠状静脈洞閉塞カテーテル120の拡張式バルーン装置122は、拡張状態のときに所定の形状を有することができる。この実施例では、拡張式バルーン装置122は、近位方向に向かって細くなる第1の円錐部分122aと、遠位方向に向かって細くなる第2の円錐部分122cと、それらの円錐部分同士の間に配置された概ね円筒形の細いリム部分122bとを含む。円錐部分122a及び122cそれぞれの細くなった端部は、バルーン装置122からのガスの漏出を防止するシールが設けられるように、カテーテル・シャフトにつながっている。拡張状態では、バルーン装置122の直径は、円筒形のリム部分122bの領域では、例えば、約12mm〜約22mm、好ましくは約15mmである。いくつかの実施例では、冠状静脈洞閉塞カテーテル120は、バルーン装置122の内側に配置された位置指標バンドと、遠位ポート129の近くの第2の位置指標バンドとを備えることができ、それらの各位置指標バンドは、適切な撮像プロセスによって手術中に目に見えるようにX線適合性材料を含む。
【0033】
図3に示すように、カテーテル120の可動式内側部材140を、遠位ポート129と流出ポート123との間で流体流路が封鎖されている第1の位置に配置することができる。したがって、可動式内側部材140が第1の位置にあるときは、冠状静脈洞20は閉塞した状態である。可動式内側部材140は、周囲の壁に沿って開口部143を含み、その開口部143は、流出ポート123と位置合わせしないこともでき(図3参照)、流出ポート123と位置合わせすることもできる(図4参照)。可動式内側部材140の開口部143がカテーテル120のシャフトに沿った流出ポート123からずれているときは、流路は遠位ポート129と流出ポート123との間で封鎖され、それにより、冠状静脈洞20の静脈血流が妨げられる。したがって、冠状静脈洞20中の血液が冠状静脈洞20から右心房11に通ることが妨げられる。上記で説明したように、こうした冠状静脈洞20中の静脈血流の再分配を用いて、カテーテル120を介して冠状静脈洞に逆行性に心筋保護液を搬送する前に心筋細胞を予め調整することができる。さらに、心臓10が循環器系に再接続された後(心臓がクランプ解除された後)の最初の期間中に、カテーテル装置120を使用して、(冠状静脈洞20から右心房11中に排出することによって)心筋細胞を通る血流を制限することができる。これらの処置による利益は以下でより詳細に説明する。
【0034】
図4に示すように、可動式内側部材140の位置を運動145によって調節することができ、そのため、開口部143は、カテーテル120の壁の流出ポート123と概ね位置合わせされる。こうした状況では、流路は遠位ポート129と流出ポート123との間で開いており、血液が冠状静脈洞20から右心房11に流れることが可能になる。上記で説明したように、カテーテル本体の可動式内側部材140の動きを人工心肺102に収容された制御システム160(図1)によって制御することができる。例えば、制御システム160のアクチュエータ・ユニット165は、可動式内側部材140上に作用する駆動力を与えて、可動式内側部材を第1の位置(図3)と第2の位置(図4)との間で往復運動させることができる。可動式内側部材140は、カテーテル120の中心管腔130(図5)の内側に配置された2つ以上のシール142に沿って摺動することができる。(シール142の縮尺は図3〜図4では正確でなく、図示のために拡大していることに留意されたい。)
【0035】
したがって、可動式内側部材140は、安定化バルーン122の近位に配置された弁として働くことができ、冠状静脈洞20を間欠的に閉塞するように制御することができる。したがって、安定化バルーン122が冠状静脈洞20中で継続的に拡張している間に、やはり冠状静脈洞圧が安全でないレベルに達することを防止しながら前に説明した静脈血流の再分配を行うように、可動式内側部材140を制御して第1の位置(図3)と第2の位置(図4)との間で間欠的に移動させることができる。特定の実施例では、人工心肺102に収容された制御システム160(図1)は、2つのタイプの動作、(i)間欠的冠状静脈洞閉塞の所定のパターン(期間は冠状静脈洞圧測定値に応じて変わる)、又は(ii)圧力制御式間欠的冠状静脈洞閉塞(期間は冠状静脈洞圧測定値に応じて変わる)のうちの一方に従って可動式内側部材140を動作させることができる。例えば、まずカテーテル120が冠状静脈洞20中に搬送され、心筋保護液を受け取る前に心臓組織を予め調整する最初に作動する初期の段階では、制御システム160により、閉塞時間及び非閉塞時間の所定のパターンに従って可動式内側部材140が第1の位置と第2の位置との間を往復運動することができる。初期段階のこうした期間中には、冠状静脈洞圧の測定値は、制御システム160によって記録され(任意選択で、ユーザ・インターフェース表示装置119に表示され)るが、閉塞状態及び非閉塞状態の期間は、予め定められており、冠状静脈洞圧測定値に基づいて変更されることはない。この初期の段階の後に、制御システム160は、閉塞状態及び非閉塞状態の期間が前に記録した冠状静脈洞圧測定値の関数である第2のタイプの動作に自動的に切り換えることができる。例えば、制御システム160により、可動式内側部材140はPICSOアルゴリズムに従って第1の位置と第2の位置との間で往復運動することができ、そのPICSOアルゴリズムは、前の組の冠状静脈洞圧測定値を評価し、それにより次の閉塞状態又は非閉塞状態に関する新規の期間を決定する。
【0036】
図5及び図6は、図4に示すカテーテル120の遠位部分121の異なる図である。流出ポート123及び可動式内側部材140の断面図(図5)に示すように、カテーテル120のシャフトは、複数の管腔130、133、134、135、136、及び任意選択で139を含むことができる。この実施例では、中心管腔130は、近位のハブ132(図1)から遠位ポート129(図3〜図4)までそこを通る流体連絡を提供するように延在する。可動式内側部材140は中心管腔130中に配置される。例えば、可動式内側部材140は、カテーテル120の遠位部分121に摺動可能に配置されたチューブ状のピストン装置とすることができる。こうした状況では、カテーテル120は、近位のハブ132(図1)から延在するアクチュエータ管腔139を任意選択で含むことができ、その近位のハブ132は、制御システム160が(例えば、可動式内側部材140に作用する、拡張式内部バルーンなどの流体圧力、可動式内側部材140に作用する、管腔139中のプッシュ・プル式ケーブル、可動式内側部材140に磁気力を供給する管腔139を経由して搬送される電気信号などによって)作動力を可動式内側部材に搬送することができるようにアクチュエータ・ライン150(図1)と連絡している。代替の実例では、可動式内側部材140は、遠位部分(図3〜図4参照)から人工心肺102の制御システム160までの全長にわたって延在することができる。したがって、アクチュエータ管腔139を必要としなくてよく、制御システム160のアクチュエータ・ユニット165(図1)が可動式内側部材140の近位端に作用することができる。上記の各実施例では、可動式内側部材140は、中空のチューブ形状を有することができ、そのため、内側管腔149により、流体が流体ライン159(図1)から中心管腔130を通り(例えば、図7〜図8に示す心筋保護液)、可動式内側部材140中を通って遠位ポート129に向かって流れることが可能になる。しかし、(図3〜図4に関連して上記で説明したように)カテーテル120を使用して遠位ポート129から流出ポート123への血流を間欠的に妨げる期間には、血液が近位に中心管腔130を通って流体ライン159に進むのではなく流出ポート123から流出するように、流体ライン159(図1)を近位の位置でクランプ締めすることができる。
【0037】
やはり図5を参照すると、カテーテル120の拡張/収縮管腔133は、中心管腔130の径方向外側に配置された、リングの一部の形状をした管腔でよい。拡張/収縮管腔133は、バルーン装置122を拡張及び排気するように流体(例えば、この実施例では、ヘリウム・ガス)を供給及び排出するように働くことができる。したがって、拡張/収縮管腔133は、近位のハブ132(図1)からバルーン装置122の内部に配置された第1の組のポートまで延在することができる。バルーン圧力モニタリング管腔134も、中心管腔130の径方向外側に配置された、リングの一部の形状をした管腔でよい。バルーン圧力モニタリング管腔134は、リングの一部の形状をした管腔133及び134が異なるサイズになるように拡張/収縮管腔133よりも小さくすることができる。バルーン圧力モニタリング管腔134は、近位のハブ132からバルーン装置122の内部に配置された第2の組のポートまで延在し、バルーン装置122内の流体の圧力を測定するように働く。
【0038】
図5〜図6に示すように、この実施例の冠状静脈洞圧管腔135は、リングの一部の形状をした管腔であり、カテーテル120の遠位端まで完全に延在する。管腔135を、冠状静脈洞20中の流体と流体連絡する生体適合性流体で充填することができる。したがって、冠状静脈洞20中の血圧は、管腔135を通って圧力センサ装置107まで延在する流体で満たされた通路(図1)に伝達される。或いは、センサ・ワイヤ(例えば、電気ワイヤ又は光ワイヤ)が制御システム160(図1)と連絡するように管腔135を通って延在するように、小型の圧力センサを管腔135の遠位端(図6)に配置することができる。
【0039】
やはり図5を参照すると、冠状静脈洞閉塞カテーテル120のシャフトは心房センサ管腔136を含み、その心房センサ管腔136は、流出ポート123における圧力又は流量を測定するために用いられ、近位のハブ132から流出ポート123に隣接する位置まで延在する。流出ポート123を通って右心房11中への流量を、例えば、流出ポート123で流体の圧力を検出することによって測定することができる。次いで、冠状静脈洞圧管腔135(のうちのバルーン装置122の遠位の部分)で測定した圧力を、(バルーン装置122の近位の)心房センサ管腔136で測定した圧力と比較して、可動式内側部材140が非閉塞位置にあるとき(図4)の流路を通る血流量を判定することができる。心房センサ管腔136は、患者の体外に配置された(例えば、人工心肺102に組み込まれた)圧力センサによって検出するように、血圧が管腔136中の流体に作用し、管腔136中の流体によって伝達されるような、流体で満たされた管腔として動作することができる。或いは、センサ・ワイヤのみがセンサ管腔136を通して人工心肺102の対応するポート106に接続されるように、圧力センサ・トランスデューサを心房センサ管腔136の遠位端(図5)に配置することができる。
【0040】
次に図7〜図8を参照すると、冠状静脈洞閉塞カテーテル120は、拡張式バルーン装置122が冠状静脈洞20中で拡張したままで、心筋保護液又は加温血液などの治療用流体を冠状静脈洞20に搬送するように構成することができる。図7に示すように、カテーテル120の可動式内側部材140は、可動式内側部材140が流出ポート123を封鎖する第1の位置に調節することができる。こうした状況では、流体ライン159から近位のハブ132を通って、中心管腔130及び可動式内側部材140の内側管腔149を通り遠位ポート129を出て冠状静脈洞20に至る搬送通路が存在するように、流体ライン159(図1)を確立するか、又はクランプ解除することができる。いくつかの実施例では、治療用流体がカテーテルの管腔130を通り可動式内側部材140を遠位方向に動かすことによって、可動式内側部材140を(流出ポート123が封鎖された)第1の位置まで押しやって、流出ポート123を封鎖することができる。こうした場合には、人工心肺102が一時的にカテーテル120の管腔130から血液又は他の流体を逃がし、それにより可動式内側部材140を近位方向に押しやるときに、可動式内側部材140を第2の位置まで調整する(流出ポート123を再度開く)ことができる。さらに、又はその代わりに、治療用流体が管腔130を通って遠位ポート129から出るように搬送される前に、可動式内側部材140の位置を制御システム160によって制御することができる。
【0041】
上記で説明したように、冠状静脈洞20中に供給される流体は、心筋保護液、(心筋保護液の搬送後に)逆行潅流のために使用される補給加温血液、又は心筋細胞を治療するのに用いられる薬剤でよい。こうした治療用流体を、人工心肺の1つ又は複数のローラ・ポンプ109、110、111、及び112によってカテーテル120を通して動かすことができる。例えば、人工心肺102は、約180ml/分〜約220ml/分、好ましくは約200ml/分の流量で心筋保護液を冠状静脈洞に搬送するように構成することができる。心筋保護液の供給期間(したがって心筋保護液の量)は、カテーテル120の管腔135によって検出される冠状静脈洞圧測定値に少なくとも部分的に基づくことができる。別の実例では、人工心肺102は、補給加温血液(例えば、逆行潅流血液)を冠状静脈洞に約60ml/分〜約470ml/分、好ましくは約450ml/分の流量で搬送するように構成することができる。制御システム160の制御下で手動又は自動で、人工心肺102の気泡除去タンク118にある圧力センサからの圧力センサ測定値に少なくとも部分的に基づいて、逆行潅流血液の流量を好ましい流量である450ml/分に向けて調節することができる。
【0042】
いくつかの実施例では、制御システム160は、冠状静脈洞圧のデータ(例えば、管腔135からの圧力センサのデータ)に応答して冠状静脈洞20中に搬送される治療用流体の量を自動的に調節するように構成することができる。例えば、人工心肺102は、冠状静脈洞20中の圧力測定値に応答して脈動式且つ逆行に心筋保護液を冠状静脈洞20中に供給することができる。こうした圧力依存のプロセスを用いて、逆注入の量が少なすぎることも多すぎることもなくなるように、冠状静脈洞20中に導入される治療用流体の量を制御することができる。逆注入の量が少なすぎる場合は、静脈圧が過度に低くなって、普通なら虚血性領域に発達することがある心筋細胞部分30に、十分な補給量の治療用流体が確実に進まないことになる。逆注入の量が多すぎる場合は、冠状静脈圧が大幅に上昇することになり、過剰な潅流のリスクを伴い、元に戻せない損傷を血管壁に生じる。
【0043】
図7〜図8に、心筋保護液の流体搬送量の自動制御の一実例を示す。この実例では、制御システム160は、管腔135によって測定された冠状静脈洞圧の値から導かれた少なくとも1つのパラメータの関数として、カテーテル120を通って冠状静脈洞20中に搬送される心筋保護液の量を自動的に制御するように構成される。例えば、冠状静脈洞圧20が低圧状態未満の場合(図7)は、(一定の200ml/分で流れる)心筋保護液を搬送する期間は比較的長くてよく、そのため、多くの量の心筋保護液が冠状静脈洞20中に流れる。冠状静脈洞圧が高圧状態の場合は、(一定の200ml/分で流れる)心筋保護液を搬送する期間は、比較的短くてよく、そのため、より少ない量の心筋保護液が冠状静脈洞20中に流れる。いくつかの実施例では、圧力の条件は必ずしも圧力測定の絶対値ではないが、冠状静脈洞圧測定値の時間微分(例えば、圧力曲線の勾配)でよい。このような場合には、圧力測定曲線の時間微分が、圧力曲線が速く上昇する(例えば、圧力曲線はまだプラト・レベルに達していない)ことを示す場合は、(一定の200ml/分で流れる)心筋保護液の搬送期間は、多量の心筋保護液が冠状静脈洞20中に流れるように比較的長くてよい。圧力測定曲線の時間微分が、圧力曲線が遅く上昇する(例えば、圧力曲線がプラト・レベルに近づいている)ことを示す場合は、(一定の200ml/分で流れる)心筋保護液の搬送期間は、より少ない量の心筋保護液が冠状静脈洞20中に流れるように比較的遅くてよい。
【0044】
したがって、安定化バルーン装置122を冠状静脈洞20中で拡張した後で、カテーテル120はいくつかの心臓治療機構として働くことができる。図3〜図4に関連して説明したように、カテーテル120を使用して、心臓が循環器系から切り離される(又はクランプ締めする)前に心筋細胞を予め調整することができる。例えば、カテーテル120は、静脈血流を再分配することで心筋細胞を予め調整するようにPICSO治療を心臓に施すことができる。図7〜図8に関連して説明したように、心臓手術中に心臓を循環器系から切り離すときに、カテーテル120を用いて、心筋保護液及び/又は補給加温血液を冠状静脈洞に搬送することができる。心筋保護液又は補給加温血液がカテーテル120から冠状静脈洞20に搬送される流量を、人工心肺102によって冠状静脈洞20中の流体の圧力測定値に少なくとも部分的に基づいて制御することができる。さらに、心臓10が循環器系と再接続(クランプ解除)された後でカテーテル120を用いて、心臓10を通る血流を制御することができる。図3〜図4に関連して説明したように冠状静脈洞20の間欠的閉塞を利用して、通常の全血流をすぐに回復させた後で普通なら起きることがある心筋細胞の損傷の可能性を低減するように制御した形で、心筋細胞を通る最初の血流を制限することができる(例えば、再潅流による損傷を低減し、場合によっては、回復させる)。
【0045】
次に図9〜図10を参照すると、冠状静脈洞閉塞カテーテルのいくつかの代替の実施例は、図3〜図4に関連して上記で説明したものとは異なる可動式内側部材240を含むことができる。例えば、代替のカテーテル120’は、図1〜図2に示すような人工心肺102と共に使用できるが、可動式内側部材240は、カテーテル120’内で(長手方向の往復運動ではなく)部分的に回転するように構成することができる。図9に示すように、カテーテル120’の可動式内側部材240を、(可動式内側部材240がポート123を封鎖するので)流体流路が遠位ポート129と流出ポート123との間が封鎖されている第1の位置に調節することができる。したがって、可動式内側部材240が第1の位置にあるときは、冠状静脈洞20は閉塞状態である。可動式内側部材240は、周囲の壁に沿って開口部243(図10)を含み、その開口部243は、流出ポート123と位置合わせしないこともでき(図9参照)、流出ポート123と位置合わせすることもできる(図10参照)。可動式内側部材240の開口部243が流出ポート123からずれているときは、流路は遠位ポート129と流出ポート123との間が封鎖され、それにより、冠状静脈洞20の静脈血流が再分配される。上記で説明したように、こうした冠状静脈洞20の静脈血流の再分配を用いて、カテーテル120’を経由して冠状静脈洞に逆行性に心筋保護液を搬送する前に心筋細胞を予め調整することができる。さらに、心臓10が循環器系に再接続された後(心臓がクランプ解除された後)の最初の期間中に、カテーテル装置120’を使用して、(冠状静脈洞20から右心房11中に排出することによって)心筋細胞を通る血流を制限することができる。
【0046】
図10に示すように、可動式内側部材240を回転運動245によって長手方向軸の周りで回転させることができ、そのため、開口部243は、カテーテル120’の壁の流出ポート123と概して位置合わせされる。こうした状況では、流路の遠位ポート129と流出ポート123との間は開いており、血液が冠状静脈洞20から右心房11に流れることが可能になる。上記で説明したように、カテーテル本体の可動式内側部材240の動きを人工心肺102に収容された制御システム160(図1)によって制御することができる。例えば、制御システム160のアクチュエータ・ユニット165は、可動式内側部材240上に作用する駆動力を与えて、可動式内側部材を第1の位置(図9)と第2の位置(図10)との間で回転させることができる。可動式内側部材240は、カテーテル120’の中心管腔の内側に配置された2つ以上のシール242に沿って摺動可能に回転することができる。(シール242の縮尺は図9〜図10では正確でなく、図示のために拡大していることに留意されたい。)
【0047】
したがって、可動式内側部材240は、安定化バルーン122の近位に配置された弁として働くことができ、冠状静脈洞20を間欠的に閉塞するように制御することができる。したがって、安定化バルーン122が冠状静脈洞20中で継続的に拡張している間に、やはり冠状静脈洞圧が安全でないレベルに達するのを防止しながら前に説明した静脈血流の再分配を行うように、可動式内側部材240を制御して第1の位置(図9)と第2の位置(図10)との間で間欠的に回転させることができる。
【0048】
次に図11を参照すると、心臓手術中に心臓組織を治療するプロセス300が、前に説明したカテーテル120(又は120’)を人工心肺102と組み合わせて用いることができる。具体的には、カテーテル120(又は120’)を、心臓10が循環器系から切り離される前に(例えば、大動脈のクランプ遮断が用いられる前に)、プロセス300の予め調整する段階中に用いることができる。2番目に、カテーテル120(又は120’)を使用して、心臓を循環器系から切り離す、プロセス300の第2の段階中に、心筋保護液、補給加温血液、又はそれらの両方を搬送することができる。3番目に、心臓10が循環器系に再接続して、通常の血流を回復させた後(例えば、大動脈のクランプ遮断が開いた後)に、プロセス300の第3の段階でやはりカテーテル120(又は120’)を使用することができる。
【0049】
図11に示すように、そのプロセスは、PICSO治療で心筋細胞を予め調整するステップ305を含む。例えば、カテーテル120(又は120’)を使用して、可動式内側部材140(又は240)の動きによって冠状静脈洞20が間欠的に(例えば、閉塞状態、次いで非閉塞状態、次いで閉塞状態、次いで非閉塞状態など)閉塞されるPICSO治療を施すことができる。図3〜図4(又は図9〜図10)に関連して説明したように、人工心肺102に収容された制御システム160は、管腔135によって検出された冠状静脈洞圧測定値に少なくとも部分的に基づいて、可動式内側部材140(又は240)の調節を制御することができる。PICSO治療によって心筋細胞を予め調整するこうしたステップ305は、麻酔の開始後であるが体外回路(図1参照)が開始する前に、始めることができる。さらに、こうしたステップ305は、大動脈のクランプ遮断が行われ、それにより心臓が循環器系から切り離されるまでの期間中は継続することができる。
【0050】
心臓10が循環器系から切り離された後に、プロセス300は一系列の心筋保護液搬送ステップ310、315、320、及び325まで継続することができる。この実施例では、低温心筋保護液が、ステップ310及び320でカテーテル120(又は120’)を通してある期間にわたって搬送される。図7〜図8に関連して上記で説明したように、心筋保護液の搬送は、冠状静脈洞20への心筋保護液の流量が管腔135によって検出された冠状静脈洞圧測定値に少なくとも部分的に基づいている脈動式且つ逆行性の心筋保護液の搬送でよい。低温心筋保護液搬送310及び320の各期間の後には、心筋保護液が冠状静脈洞に搬送されない、対応するオフ期間315及び325が続く。これらのステップ310、315、320、及び325中には、低温心筋保護液は低温(例えば、摂氏約4度)でよく、そのため、心臓10の血液の温度を低くすることができる。その結果、心臓10は、自発的に鼓動を止める(例えば、心停止)ことができ、そのため、外科医が、引き続き、心臓弁置換術又は冠状動脈パイパス術処置などの一次的外科的処置を行うことができる。本明細書の説明から、プロセス300がその系列の2つの低温心筋保護液搬送ステップ310及び320に限定されないが、そうではなく、より大きい系列により多くの低温心筋保護液搬送ステップを含むことができると理解されたい。さらに、いくつかの実施例では、プロセス300は、心筋保護液搬送ステップ310及び320がそれぞれ完了した後で心臓10から血液サンプルを採取するステップを含むことができる。その血液サンプルを使用して、さらに繰り返すことが必要か、又は心筋保護液若しくは他の保護が必要かどうかを示すいくつかの特徴の存在を判定することができる。
【0051】
図11に示すように、プロセス300は、そのプロセスを開始して心筋細胞を加温するように、カテーテル120(又は120’)を通して冠状静脈洞20中に加温心筋保護液を搬送するステップ330(例えば、本明細書では心筋保護液の「ホット・ショット」と称する)を含むことができる。加温心筋保護液は、比較的高い温度(例えば、摂氏約37度)でよく、そのため、心臓10の血液の温度を上昇させることができる。図7〜図8に関連して上記で説明したように、加温心筋保護液の搬送は、冠状静脈洞20への加温心筋保護液の流量が管腔135によって検出された冠状静脈洞圧測定値に少なくとも部分的に基づいている、脈動式且つ逆行性の心筋保護液搬送でよい。
【0052】
ステップ335では、プロセス300は、心筋細胞を加温するこのプロセスを進めるように、カテーテル120(又は120’)を通して冠状静脈洞20中に補給加温血液を搬送するステップを含む。加温血液は、比較的高い温度(例えば、摂氏約37〜38度)でよく、そのため、心臓10の血液の温度は、通常の体温に向かってさらに上昇させることができる。図7〜図8に関連して上記で説明したように、加温血液は、冠状静脈洞20への加温心筋保護液の流量が、管腔135によって検出された冠状静脈洞圧測定値に少なくとも部分的に基づいている、脈動式且つ逆行性の心筋保護液搬送でよい。
【0053】
心臓10が循環器系に再接続された後で(例えば、大動脈のクランプ遮断が開いた後で)、カテーテル装置120(又は120’)を、心臓10をさらに治療するために冠状静脈洞20中に残すことができる。例えば、プロセス300は、PICSO治療又は(他の間欠的閉塞)を使用してカテーテル120(又は120’)からの血流量を限定又は制御しながら、循環器系からの血流によって心臓を再潅流するステップ340を含むことができる。図3〜図4(又は図9〜図10)に関連して説明したように、人工心肺102に収容された制御システム160は、管腔135によって検出された冠状静脈洞圧測定値に少なくとも部分的に基づいて、可動式内側部材140(又は240)の調節を制御することができる。したがって、心臓10が循環器系と再接続されるときに、通常の血液供給の全量を心筋細胞に与えるのではない。そうではなく、動脈側からの急な血流によって心筋細胞を損傷させる可能性を低減するように、心筋細胞を通る血流量を着実に増加させるか又は別法で制御することができる。心臓10が循環器系に再接続された後でPICSO治療を施すこうしたステップ340は、体外の血液循環を止めた後でも(例えば、人工心肺102がもはや人体のための血液の酸素化をしていなくても)ある期間にわたって継続することができる。
【0054】
心臓組織を治療するシステム又は方法のいくつかの実施例は、多機能のカテーテル装置を含むことができ、その多機能のカテーテル装置により、外科医又は他のユーザが(心臓手術の前、その間、及びその後に)、バルーン装置を冠状静脈洞中で拡張させたままでいくつかの心臓治療処置を実行できるようになる。具体的には、心臓を循環器系から切り離す(又はクランプ締めする)前に心筋細胞を予め調整するために、そのカテーテル装置を容易に使用することができる。例えば、静脈血流を再分配することで心筋細胞を予め調整するように圧力制御式間欠的冠状静脈洞閉塞(PICSO)治療を心臓に施すために、そのカテーテル装置を備えることができる。また、心臓手術中に心臓が循環器系から切り離されているときに、そのカテーテル装置を用いて、心筋保護液(例えば、特定の実施例では、脈動式に且つ逆行して心筋保護液)を冠状静脈洞に搬送することができる。心筋保護液の脈動式の搬送を利用して、冠状静脈洞圧の測定値に少なくとも部分的に基づいた量だけ心筋保護液を冠状静脈洞に投与することができる。さらに、そのカテーテル装置を用いて、心臓を循環器系と再接続(クランプ解除)した後で心臓を通る血流を制御することができる。したがって、通常の全血流をすぐに回復させた場合に普通なら起きることがある心筋細胞の損傷の可能性を低減するように制御した形で、心筋細胞を通る最初の血流を制限することができる。バルーンが冠状静脈洞中で拡張している間にカテーテルによって施されるこうした治療処置により、心臓手術が完了し動脈血流が心筋細胞のうちの以前に血液が奪われた部分に戻った後の心筋細胞の回復を改善することができる。
【0055】
したがって、図11に示すプロセス300は、カテーテル120(又は120’)のバルーン装置122を冠状静脈洞20中で継続的に拡張したままで、外科医又は他のユーザが(心臓手術の前、その間、及びその後に)いくつかの心臓治療処置を実行できるようにする。心臓手術の開始前(例えば、心臓を循環器系から切り離す前)に、カテーテル120(又は120’)を利用して、心臓に対するPICSO治療によって心筋細胞を予め調整する(静脈血流を再分配することで心筋細胞を予め調整する)。心臓手術中に心臓を循環器系から切り離すときに、カテーテル120(又は120’)を使用して、心筋保護液(例えば、特定の実施例では、脈動式且つ逆行性に心筋保護液)及び(任意選択で)補給加温血液を冠状静脈洞20中に搬送する。心臓手術後に心臓を循環器系と再接続する(クランプ解除)するときに、カテーテル120(又は120’)を用いて、心筋細胞を通る血流を制御することができる(起こり得る損傷から心筋細胞を保護することができる)。バルーン装置122が冠状静脈洞20中で拡張している間にカテーテル120(又は120’)によって施されるこうした治療ステップにより、心臓手術が完了し通常の血流が心筋細胞に戻った後の心筋細胞の回復を改善することができる。
【0056】
次に図12を参照すると、冠状静脈洞閉塞カテーテル120のいくつかの実施例は、(例えば、人工心肺の血液ポンプではなく)心臓自体が血液循環を行うPCI処置又はオフ・ポンプ心臓手術で利用することができる。これらの実施例では、カテーテルを使用して、(例えば、図3〜図4又は図9〜図10に示す可動式内側部材140又は240を制御することによって)冠状静脈洞20を間欠的に閉塞することができる。さらに、カテーテル120を使用して、安定化バルーン装置122が(図7〜図8に示す実施例と同様の)拡張状態のままで、逆行潅流血液を冠状静脈洞20中に搬送することができる。
【0057】
例えば、PCI処置でカテーテル120が使用されるときには、カテーテル120を、静脈系を通って(例えば、案内部材108によって)冠状静脈洞20中に経皮的に搬送することができる。カテーテル120は、心臓の異なる領域で行われるPCI処置中に心臓にPICSO治療を(図3〜図4又は図9〜図10に示すように可動式内側部材140又は240の制御された動きによって)施すことができる。また、PCI処置中に、遠位ポート129に通じるカテーテル120の管腔130を用いて、逆行潅流血液を冠状静脈洞20中に選択的に搬送することができる。例えば、長期間にわたって潅流が不足する場合があるPCI処置中に(例えば、経皮的弁処置中、主要な管へのステント留置中など)こうした特性は有用な場合がある。カテーテル120の管腔130を通して冠状静脈洞20中に搬送された血液は、主要動脈又は酸素化した血液の外部供給源(例えば、血液貯蔵装置、潅流装置からの酸素化した血液のタンクなど)からサンプリングした動脈血を含むことができる。いくつかの実施例では、逆行潅流血液がカテーテル120の管腔130を通り、流出ポート123を封鎖するように可動式内側部材140を遠位方向に動かすので、カテーテル120の可動式内側部材140を(図3に示すように流出ポート123が封鎖されている)第1の位置に押しやることができる。このような場合には、いくらかの血液をカテーテル120の管腔130から逃がし、それにより、可動式内側部材140を近位方向に押しやるときに、可動式内側部材140を第2の位置まで調節する(流出ポート123を再度開く)ことができる。さらに、又はその代わりに、逆行潅流血液が管腔130を通って遠位ポート129から出るように搬送される前に、可動式内側部材140の位置を(以下で説明する)制御システムによって制御することができる。
【0058】
図12に示すように、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位端部分121を、心臓10の冠状静脈洞20中に配置し、その後、冠状静脈洞20を出て右心房11に入る血流を間欠的に閉塞するように作動させることができる。こうした冠状静脈洞20の閉塞中に、心筋細胞30のうちの血液が奪われるか又は心筋層の機能が失われるために損傷した部分に、通常は冠状静脈洞20から出る静脈血流を再分配することができる。例えば、心筋細胞30のその部分は、冠状動脈40の閉鎖35のために血流が不足していることがある。その結果、その部位の動脈41を介した、罹患した心筋細胞30への動脈血流が大幅に減少して、心筋細胞30が虚血するか又はその他の方法で損傷することがある。いくつかの実施例では、冠状静脈洞閉塞カテーテル120を冠状静脈洞20中に搬送し、その後、閉鎖35を治療する前、その間、又はその後に冠状静脈洞20を間欠的に閉塞するように作動させることができる。こうした閉塞により、その部位の静脈21に、次いで、心筋細胞30のうち、冠状動脈40の閉鎖35のために血流不足の虞がある部分に静脈血流を再分配することができる。虚血性の又はその他の方法で損傷した心筋細胞30は、通常の冠状動脈の血流が回復するように閉鎖35を修復又は除去する前、その間、又はその後に、影響の供給を改善するために、再分配される静脈血流を受け取ることができる。
【0059】
別の実例では、オフ・ポンプ心臓手術でカテーテル120を使用するときに、PICSO治療を心臓に施すために、(例えば、好ましくは、経心房アプローチで、或いは、案内部材108による経皮的搬送で)カテーテル120を冠状静脈洞20中に配置することができる。具体的には、カテーテル120は、図3〜図4又は図9〜図10に示すような可動式内側部材140又は240の制御された動きによってPICSO治療を施すことができる。さらに、遠位ポート129に通じるカテーテル120の管腔130を用いて、(例えば、冠状静脈洞圧が急に降下する場合に、)逆行潅流血液を冠状静脈洞に選択的に搬送することができる。冠状静脈洞に搬送された血液は、主要動脈又は酸素化した血液の外部供給源からサンプリングした動脈血を含むことができる。こうしたプロセスは、例えば、心臓手術で(例えば、オフ・ポンプ心臓手術の冠状動脈バイパス中など)心臓を心膜クレードルで持ち上げて心臓の後面に外科的にアクセスできるようにするときに有用な場合がある。上記で説明したように、逆行潅流血液がカテーテル120の管腔130を通り可動式内側部材140を遠位方向に動かすことによって、カテーテル120の可動式内側部材140を(図3に示すように流出ポート123が封鎖された)第1の位置まで押しやって、流出ポート123を封鎖することができる。このような場合には、いくらかの血液をカテーテル120の管腔130から逃がし、それにより、可動式内側部材140を近位方向に押しやるときに、可動式内側部材140を第2の位置まで調整する(流出ポート123を再度開く)ことができる。さらに、又はその代わりに、逆行潅流血液が管腔130を通って遠位ポート129から出るように搬送される前に、可動式内側部材140の位置を(以下で説明する)制御システムによって制御することができる。
【0060】
オフ・ポンプ心臓手術又はPCI処置でカテーテル120が用いられるこれらの実施例では、カテーテル120を、図1に関連して説明した制御システム160と同様に動作する制御システムによって制御することができる。例えば、その制御システムは、圧力管理管腔135及び136からの入力を受信し、可動式内側部材140の位置を制御することができる。その制御システムを、カテーテルの近位のラインからの接続を受けるワークステーション・コンピュータ又はラップトップ・コンピュータの形態の別個の制御モジュールに収容することができ、又は(たとえ、必ずしも人工心肺のポンプを用いていなくても)図1に関連して説明したように人工心肺102に収容することができる。図13に関連して以下により詳細に説明するように、制御システムはコンピュータ・プロセッサ163を含み、そのコンピュータ・プロセッサ163は、管腔135によって得られた冠状静脈洞圧測定値に少なくとも部分的に基づくことができる特定のパターンに従って冠状静脈洞20の閉塞を作動又は作動停止させるように、コンピュータ記憶装置166又は格納装置167に格納されたコンピュータ読み取り可能な命令を実行することができる。
【0061】
次に図13を参照すると、上記で説明したように、冠状静脈洞閉塞カテーテルを制御する制御システム(図1で説明する制御システム160など)は、制御回路162を含むことができ、その制御回路162は、1つ又は複数の記憶装置に格納されたソフトウェア・モジュールを実行する1つ又は複数のプロセッサを有する。制御システム160(又は少なくとも制御回路162)を図1で説明した人工心肺102に収容することもでき、或いは、ワークステーション・コンピュータ又はラップトップ・コンピュータの形態を有する別個の制御モジュールに収容できることを本明細書の説明から理解されたい。図13は、この文書で説明するシステム及び方法を実装できる制御回路162の一実例のブロック図である。例えば、制御回路162は、人工心肺102(図1)で使用することもでき、カテーテル120の制御専用の命令を有するワークステーション・コンピュータ又はラップトップ・コンピュータの形態の別個の制御モジュールで使用することもできる。制御回路162は、プロセッサ163、記憶装置166、格納装置167、データ入力装置と図表によるディスプレイとを接続する入力/出力装置168、及びこれらの構成要素間の連絡を行うバス・システム169を含む。プロセッサ163は、メモリ166又は格納装置167に格納された命令を含む、制御回路162内で実行する命令を処理して、この文書で前に説明した様々な動作を実行することができる。さらに、この明細書で説明する構成要素を、ファームウェア又は特定用途向け集積回路(ASIC)に実装することもでき、その場合は、この図13の線図は装置の動作を単に例示するものである。デジタル電子回路に、又はコンピュータ・ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、若しくはそれらの組み合わせに、本明細書で説明する制御機構を実装することができる。また、説明する制御機構を1つ又は複数のコンピュータ・プログラムに有利に実装することができ、そのコンピュータ・プログラムは、データ及び命令形式を受信し、データ及び命令をデータ格納システム、少なくとも1つの入力装置、及び少なくとも1つの出力装置に伝達するように接続される少なくとも1つのプログラム可能なプロセッサを含むプログラム可能なシステムで実行可能である。
【0062】
次に図14〜図16を参照すると、本明細書で説明するカテーテル装置のいくつかの実施例は、冠状静脈洞20を間欠的に閉塞できる(例えば、PICSO治療)か、又は治療用流体(例えば、心筋保護液又は逆行潅流血液)を冠状静脈洞20中に搬送できるようにすることに加えて、冠状静脈洞20から右心房11に通る血液の流量をモニタリングするように構成することができる。図14に、図3〜図4に関連して上記で説明したようなカテーテル装置120の実施例を示す。その実施例では、拡張式バルーン装置122が継続的に拡張したままで(例えば、安定化バルーン)、可動式内側部材140により、カテーテル装置120が(例えば、PICSO治療を施すために)冠状静脈洞20を間欠的に閉塞できる。図15〜図16に、冠状静脈洞20を(例えば、PICSO治療を施すために)間欠的に閉塞するように冠状静脈洞20中に配置されているときに、拡張式バルーン装置122が収縮状態(図16)と拡張状態(図15)との間で間欠的に調節するように構成される代替のカテーテル装置120’’を示す。両方の実施例で、カテーテル装置120又は120’’は、拡張式バルーン装置122又は122’’の遠位にある遠位位置(例えば、冠状静脈洞20中)まで延在する第1の圧力センサ管腔135又は135’’と、拡張式バルーン装置122又は122’’の近位にある近位位置(例えば、右心房11中)まで延在する第2の圧力センサ管腔136又は136’’とを備えることができる。以下により詳細に説明するように、第1の圧力センサ管腔135又は135’’及び第2の圧力センサ管腔136又は136’’は、(135又は135’’の)第1の圧力と(136又は136’’の)第2の圧力との差が、遠位端部分121又は121’’に沿ってバルーン装置122又は122’’の遠位の領域からバルーン装置122又は122’’の近位の領域まで流れる血液の流量を示すように互いに対して配置される。
【0063】
図14に示すように、カテーテル装置120は遠位端部分121を含むことができ、その遠位端部分121は、拡張状態のときに冠状静脈洞20の内壁に係合するように構成された拡張式バルーン装置122を含む。図1〜図4及び図12に関連して上記で説明したように、拡張式バルーン装置122は、血液が遠位端部分121に沿ってバルーン装置122の遠位の領域から(例えば、冠状静脈洞20の遠位ポート129から)バルーン装置122の近位の領域に(例えば、右心房11の流出ポート123に)流れるときに、継続的に拡張したままになるように構成された安定化バルーンとして動作する。遠位ポート129は、拡張式バルーン装置122が冠状静脈洞20中で拡張しているときに、冠状静脈洞20中に延在するように拡張式バルーン装置122の遠位に配置される。流出ポート123は、拡張式バルーン装置122が冠状静脈洞中で拡張しているときに、右心房11と流体連絡するように拡張式バルーン装置122の近位に配置される。やはり図1〜図4及び図12に関連して説明したように、この実施例の遠位端部分121は、流体流路を遠位ポート129から流出ポート123まで少なくとも部分的に画定し、可動式内側部材140は、流路が遠位ポート129から流出ポート123で閉塞している第1の位置と流路との間で開いている(図14に示す)第2の位置において可動式内側部材140が調節可能になるように流路中に配置することができる。
【0064】
カテーテル装置120は、冠状静脈洞20から右心房11への血流を示す圧力データを提供する第1及び第2の圧力感知手段を備えることができる。例えば、カテーテル装置120は、第1の圧力(例えば、冠状静脈洞20中の血圧)を検出するための、拡張式バルーン装置122の遠位の位置まで延在する圧力センサ管腔135(やはり図5〜図6参照)を含むことができる。カテーテル装置120は、第2の圧力(例えば、右心房11への流出ポート123の血圧)を検出するための、拡張式バルーン装置122の近位の位置まで延在する第2の圧力センサ管腔136(やはり図5参照)を含むこともできる。図14に示すように、第1の圧力センサ管腔135及び第2の圧力センサ管腔136は、第1の圧力と第2の圧力との差(例えば、ΔP)を遠位端部分121に沿って冠状静脈洞20から右心房11まで通る血液の流量を示すパラメータとして使用できるように互いに対して配置される。
【0065】
例えば、図14に示すように、血液の流路の断面積を、バルーン装置122の内部を貫通する流体管腔130の直径(D1)から推定することができる。この断面積は、カテーテル装置120に関する制御システムへの入力である所定の値とすることができる。カテーテル装置120が非閉塞状態であり、血液が流体管腔の遠位部分を通って流出ポート123から外側に流れているときは、血液の流量を(上記で説明した)制御回路162によって容易に判定することができる。例えば、第1の圧力センサ管腔における第1の圧力(圧力1)及び第2の圧力センサ管腔136における第2の圧力(圧力2)を示す信号を、制御回路162によって受信することができる。そこから、制御回路162は、(D1測定値から分かる)断面積及び圧力差(ΔP=圧力1−圧力2)に基づいて血流量を判定することができる。流量の値を、例えば図表によるユーザ・インターフェースのディスプレイ・スクリーン上でユーザに連絡することができる。体積流量に関するこの値は、心筋潅流の指標又は予後パラメータとして機能できるので、心臓手術中又はPCI処置中に有用な場合がある。具体的には、体積流量に関するより高い値は、心筋潅流がより良好である(例えば、患者の生存可能性が改善される)ことを示すことができる。
【0066】
図15〜図16に示すように、代替のカテーテル装置120’’のいくつかの代替の実施例は、拡張式バルーン装置122を含むことができ、その拡張式バルーン装置122は、冠状静脈洞20を間欠的に閉塞する(例えば、PICSO治療を施す)ように冠状静脈洞20中に配置されるときに、収縮状態(図16)と拡張状態(図15)との間で間欠的に調節するように構成される。前に説明した実施例と同様に、冠状静脈洞20から右心房11に通る血液の流量を判定しユーザに連絡できるように、(冠状静脈洞20中でバルーン装置122’’の遠位の)第1の圧力及び(右心房11中でバルーン装置122’’の近位の)第2の圧力を測定するためにカテーテル装置120’’を備えることができる。
【0067】
前に説明した実施例と同様に、カテーテル装置120’’は遠位端部分121’’を含むことができ、その遠位端部分121’’は、拡張状態のときに冠状静脈洞20の内壁に係合するように構成された拡張式バルーン装置122’’を含む。カテーテル装置120’’は、冠状静脈洞20から右心房11中への血流を示す圧力データを提供するための第1及び第2の圧力感知手段を備えることもできる。例えば、カテーテル装置120’’は、第1の圧力(例えば、冠状静脈洞20の血圧)を検出するための、拡張式バルーン装置122’’の遠位の位置まで延在する第1の圧力センサ管腔135’’(例えば、遠位端に複数の遠位ポートを有する中心管腔)を含むことができる。カテーテル装置120’’は、第2の圧力(例えば、バルーン122’’近傍で右心房11に隣接する部分の血圧)を検出するための拡張式バルーン装置122’’の近位の位置まで延在する第2の圧力センサ管腔136’’(例えば、カテーテル・シャフトの周囲の壁に沿って1つ又は複数のポートを有する非中心管腔)を含むこともできる。
【0068】
図15に示すように、バルーン装置122’’が拡張した状態であり、冠状静脈洞20に係合するときは、冠状静脈洞20から右心房11への血流は妨げられる。前に説明した実施例と同様に、(例えば、センサ管腔135’’によって測定された)冠状静脈洞圧に少なくとも部分的に基づいて冠状静脈洞20を間欠的に閉塞するようにバルーン装置122’’を間欠的に調節するために、カテーテル装置120’’を(制御回路162を有する)制御システムに接続することができる。したがって、バルーンが収縮状態(図16)から拡張状態(図15)に繰り返しシフトするときは、カテーテル装置120’’はPICSO治療を心臓に施すように構成される。
【0069】
図16に示すように、第1の圧力センサ管腔135’’及び第2の圧力センサ管腔136’’は、第1の圧力と第2の圧力との差(例えば、ΔP)を遠位端部分121’’に沿って冠状静脈洞20から右心房11まで通る血液の流量を示すパラメータとして使用できるように互いに配置される。例えば、(バルーン装置122’’が収縮しているときの)血液の流路の断面積を、バルーン装置122’’の外側の冠状静脈洞20の直径(D2)から推定することができる。こうした測定値D2を、例えば、X線画像、超音波撮像システム、又は他の撮像システムを使用して測定し、次いで、カテーテル装置120’’の制御システムに入力することができる。カテーテル装置120’’が非閉塞状態(図16)であり、血液が遠位部分121’’に沿って流れるときは、血液の流量を制御回路162によって容易に判定することができる。上記で説明したように、第1の圧力センサ管腔における第1の圧力(圧力1)及び第2の圧力センサ管腔136における第2の圧力(圧力2)を示す信号を、制御回路162によって受信することができる。そこから、制御回路162は、(D1測定値から分かる)断面積及び圧力差(ΔP=圧力1−圧力2)に基づいて血流量を判定することができる。流量の値を、例えば図表によるユーザ・インターフェースのディスプレイ・スクリーン上でユーザに連絡することができる。上記で説明したように、体積流量に関するこの値は、心筋潅流の指標又は予後パラメータとして機能できるので、心臓手術中又はPCI処置中に有用な場合がある。具体的には、体積流量に関するより高い値は、心筋潅流がより良好である(例えば、患者の生存可能性が改善される)ことを示すことができる。
【0070】
したがって、本明細書で説明する実施例では、第1の圧力センサ管腔135又は135’’は、拡張式バルーン装置122又は122’’の遠位に配置された開口部に延在する冠状静脈洞圧管腔として働くことができ、第2の圧力センサ管腔136又は136’’は、拡張式バルーン装置122又は122’’の近位に配置された開口部に延在する心房圧センサ管腔として働くことができる。
【0071】
さらに、本明細書の説明から、第1の圧力センサ管腔135又は135’’及び第2の圧力センサ管腔136又は136’’のうちの一方又は両方が、血圧を圧力センサ・トランスデューサ(例えば、近位のハブ132に配置された圧力トランスデューサ又は制御回路162に組み込まれた圧力トランスデューサ)に伝達する流体で満たされた圧力伝達通路になるように構成されることを理解されたい。或いは、第1の圧力センサ管腔135又は135’’及び第2の圧力センサ管腔136又は136’’のうちの一方又は両方が、(例えば、制御回路162に接続するために)管腔を通って戻るように延在する光ファイバ又は電気リード線を備えた、それぞれの管腔の遠位端に配置された小型の圧力センサ・トランスデューサを含むことができる。
【0072】
本発明のいくつかの実施例を説明してきた。しかし、本発明の範囲から逸脱することなしに様々な改変を実施できることが理解されよう。したがって、他の実施例は以下の特許請求の範囲内に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張時に冠状静脈洞の内壁に係合するように構成された拡張式バルーン装置を含む遠位端部分と、
前記拡張式バルーン装置が前記冠状静脈洞中で拡張しているときに前記冠状静脈洞中に延在するように、前記拡張式バルーン装置の遠位に配置された遠位ポートと、
前記拡張式バルーン装置が前記冠状静脈洞中で拡張しているときに右心房と流体連絡するように前記拡張式バルーン装置の近位に配置された流出ポートであって、前記遠位端部分が前記遠位ポートから前記流出ポートまでの流体流路を少なくとも部分的に画定する、流出ポートと、
前記遠位ポートから前記流出ポートまでの前記流路に配置された可動式内側部材であって、前記遠位ポートから前記流出ポートまでの前記流路が閉塞している第1の位置と、前記遠位ポートから前記流出ポートまでの前記流路が開いている第2の位置との間で調節される、可動式内側部材と
を備える冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項2】
近位のハブ部分と、前記近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の遠位に配置された開口部まで延在する冠状静脈洞圧管腔と、前記近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の近位に配置された開口部まで延在する心房センサ管腔と、前記近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の内部に配置された1つ又は複数の開口部まで延在するバルーン流体管腔とをさらに備える、請求項1に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項3】
前記近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の内部に配置された1つ又は複数の開口部まで延在するバルーン圧力モニタリング管腔をさらに備える、請求項2に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項4】
前記近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の遠位に配置された前記遠位ポートまで延在する流体搬送管腔であって、前記拡張式バルーン装置が前記冠状静脈洞中で拡張しているときに、心筋保護液又は血液を前記冠状静脈洞に搬送するように構成される流体搬送管腔をさらに備える、請求項2に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項5】
前記近位のハブ部分が、人工心肺から延在する複数の流体ライン又はセンサ・ラインに接続可能である、請求項4に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項6】
前記可動式内側部材が中空のチューブ状部材を備え、前記中空のチューブ状部材が、前記可動式内側部材が前記第1の位置にあるときは前記流出ポートと位置合わせされておらず、前記可動式内側部材が前記第2の位置にあるときは前記流出ポートと位置合わせされている開口部を周囲の壁に画定する、請求項1に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項7】
前記拡張式バルーン装置が前記冠状静脈洞の内壁に接して継続的に拡張したままで、前記冠状静脈洞から前記心房まで血流を間欠的に開放するように、前記可動式内側部材が前記第1の位置と前記第2の位置との間で繰り返し移動可能である、請求項6に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項8】
前記可動式内側部材が、前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動するときに前記流出ポートに対して長手方向に摺動可能である、請求項6に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項9】
前記可動式内側部材が、前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動するときに前記流出ポートに対して回転可能である、請求項6に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項10】
前記可動式内側部材が、(i)磁気力、(ii)機械式プッシャ、及び(iii)前記カテーテルの管腔を通り前記可動式内側部材上に作用する逆行潅流流体による流体の力のうちの1つによって、前記第1の位置と前記第2の位置との間で調節される、請求項6に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項11】
前記可動式内側部材が、前記拡張式バルーン装置がオフ・ポンプ心臓手術中に前記冠状静脈洞中で拡張しているときに前記冠状静脈洞を間欠的に閉塞するように、前記第1の位置と前記第2の位置との間で間欠的に調節するように構成される、請求項1に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項12】
近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の遠位に配置された前記遠位ポートまで延在する流体搬送管腔をさらに備え、前記流体搬送管腔が、前記拡張式バルーン装置が前記オフ・ポンプ心臓手術中に前記冠状静脈洞中で拡張しているときに逆行潅流血液を前記冠状静脈洞に搬送するように構成される、請求項11に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項13】
前記拡張式バルーン装置が経皮的冠状動脈インターベンション処置中に冠状静脈洞中で拡張しているときに前記冠状静脈洞を間欠的に閉塞するように、前記可動式内側部材が、前記第1の位置と前記第2の位置との間で間欠的に調節するように構成される、請求項1に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項14】
近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の遠位に配置された前記遠位ポートまで延在する流体搬送管腔をさらに備え、前記拡張式バルーン装置が前記経皮的冠状動脈インターベンション処置中に前記冠状静脈洞中で拡張しているときに、前記流体搬送管腔が逆行潅流血液を前記冠状静脈洞に搬送するように構成される、請求項11に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項15】
遠位端部分、近位のハブ部分、前記遠位端部分に沿って配置され、拡張状態のときに冠状静脈洞の内壁に係合するように構成された安定化バルーン装置、及び圧力制御式間欠的冠状静脈洞閉塞のために第1の位置と第2の位置との間で調節可能である可動式内側部材を含む冠状静脈洞閉塞カテーテルと、
心臓が循環器系から切り離されているときに体外回路で血液に酸素を付与する人工心肺であって、前記冠状静脈洞閉塞カテーテルの前記近位のハブ部分に接続された複数のライン、及び前記冠状静脈洞閉塞カテーテルの前記可動式内側部材の動きを制御する制御システムを備える、人工心肺と
を備え、
前記人工心肺の前記制御システムが、前記可動式内側部材を、流路の前記冠状静脈洞から右心房が閉塞している前記第1の位置と、前記流路の前記冠状静脈洞から前記右心房が開いている前記第2の位置との間で調節する、心臓手術用システム。
【請求項16】
前記可動式内側部材が、前記人工心肺の前記制御システムによって決定される期間にわたって前記冠状静脈洞を閉塞するように前記第1の位置に調節され、前記冠状静脈洞を閉塞する前記期間が、前記冠状静脈洞閉塞カテーテルの冠状静脈洞圧管腔を介して前記人工心肺の前記制御システムによって受信された、冠状静脈洞圧測定値に少なくとも部分的に基づいている、請求項15に記載された心臓手術用システム。
【請求項17】
前記冠状静脈洞閉塞カテーテルがさらに、前記近位のハブ部分から前記安定化バルーン装置の近位に配置された開口部まで延在する心房センサ管腔を備え、前記人工心肺の前記制御システムが、前記冠状静脈洞から前記右心房までの流路における圧力又は流量を示すセンサ信号を受信する、請求項16に記載された心臓手術用システム。
【請求項18】
拡張状態のときに冠状静脈洞の内壁に係合するように構成された拡張式バルーン装置を含む遠位端部分と、
前記拡張式バルーン装置の遠位にある遠位位置まで延在する、第1の圧力を検出する第1の圧力センサ管腔と、
前記拡張式バルーン装置の近位にある近位位置まで延在する、第2の圧力を検出する第2の圧力センサ管腔とを備え、
前記第1の圧力センサ管腔及び前記第2の圧力センサ管腔が、前記第1の圧力と前記第2の圧力との差が前記遠位端部分に沿って前記バルーン装置の遠位の領域から前記バルーン装置の近位の領域まで通る血液の流量を示すように互いに配置される、冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項19】
前記拡張式バルーン装置が、圧力制御式冠状静脈洞閉塞を行うように前記冠状静脈洞に配置されたときに収縮状態と前記拡張状態との間で間欠的に調節するように構成される、請求項18に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項20】
前記拡張式バルーン装置が、血液が前記遠位端部分に沿って前記バルーン装置の遠位の前記領域から前記バルーン装置の近位の前記領域まで通るときに、継続的に拡張したままになるように構成された安定化バルーンを備える、請求項18に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項21】
前記拡張式バルーン装置が前記冠状静脈洞中で拡張しているときに前記冠状静脈洞中に延在するように前記拡張式バルーン装置の遠位に配置された遠位ポートと、
前記拡張式バルーン装置が前記冠状静脈洞中で拡張しているときに前記右心房と流体連絡するように前記拡張式バルーン装置の近位に配置された流出ポートであって、前記遠位端部分が、前記遠位ポートから前記流出ポートまでの流体流路を少なくとも部分的に画定する、流出ポートと、
前記遠位ポートから前記流出ポートまでの前記流路に配置された可動式内側部材であって、前記遠位ポートから前記流出ポートまでの前記流路が閉塞される第1の位置と、前記遠位ポートから前記流出ポートまでの前記流路が開いている第2の位置との間で調節される可動式内側部材と
をさらに備える、請求項20に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項22】
近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の遠位に配置された前記遠位ポートまで延在する流体搬送管腔をさらに備え、前記流体搬送管腔が、前記拡張式バルーン装置が前記冠状静脈洞中で拡張しているときに心筋保護液又は血液を前記冠状静脈洞に搬送するように構成される、請求項21に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項23】
前記近位のハブ部分が、人工心肺から延在する複数の流体ライン又はセンサ・ラインに接続可能である、請求項21に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項24】
前記可動式内側部材が、前記拡張式バルーン装置が前記冠状静脈洞の内壁に接して継続的に拡張したままで、前記冠状静脈洞から前記心房までの血流を間欠的に開放するように、前記第1の位置と前記第2の位置との間で繰り返し移動可能である、請求項21に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項25】
近位のハブ部分と、前記近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の内部に配置された1つ又は複数の開口部まで延在するバルーン流体管腔と、前記近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の内部に配置された1つ又は複数の開口部まで延在するバルーン圧力モニタリング管腔とをさらに備える、請求項18に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項26】
前記第1の圧力センサ管腔が、前記近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の遠位に配置された開口部まで延在する冠状静脈洞圧管腔であり、前記第2の圧力センサ管腔が、前記近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の近位に配置された開口部まで延在する心房圧センサ管腔である、請求項18に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項27】
前記第1の圧力センサ管腔及び前記第2の圧力センサ管腔のうちの少なくとも一方が、血圧を圧力センサ・トランスデューサに伝達する、流体で満たされた圧力伝達通路になるように構成される、請求項18に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項28】
前記第1の圧力センサ管腔及び前記第2の圧力センサ管腔のうちの少なくとも一方が、前記第1の圧力センサ管腔及び前記第2の圧力センサ管腔のうちの少なくとも一方の遠位端に配置された圧力センサ・トランスデューサを含む、請求項18に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項29】
前記拡張式バルーン装置がオフ・ポンプ心臓手術中に前記冠状静脈洞中で拡張しているときに前記冠状静脈洞を間欠的に閉塞するように構成される、請求項18に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項30】
近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の遠位に配置された前記遠位ポートまで延在する流体搬送管腔をさらに備え、前記流体搬送管腔が、前記拡張式バルーン装置が前記オフ・ポンプ心臓手術中に前記冠状静脈洞中で拡張しているときに逆行潅流血液を前記冠状静脈洞に搬送するように構成される、請求項29に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項31】
前記拡張式バルーン装置が経皮的冠状動脈インターベンション処置中に前記冠状静脈洞中で拡張しているときに前記冠状静脈洞を間欠的に閉塞するように構成される、請求項18に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。
【請求項32】
近位のハブ部分から前記拡張式バルーン装置の遠位に配置された前記遠位ポートまで延在する流体搬送管腔をさらに備え、前記流体搬送管腔が、前記拡張式バルーン装置が前記経皮的冠状動脈インターベンション処置中に前記冠状静脈洞中で拡張しているときに逆行潅流血液を前記冠状静脈洞に搬送するように構成される、請求項31に記載された冠状静脈洞閉塞カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−245302(P2011−245302A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−115383(P2011−115383)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(510049746)ミラコー メディカル システムズ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】