説明

心臓肥大の処置

【課題】根底にある原因にかかわらず、インターフェロンガンマ(IFN−γ)の治療に有効な用量を投与することによる、心臓肥大の処置の方法を提供すること。心臓肥大は、しばしば、高血圧、大動脈弁狭窄症、心筋梗塞、心筋症、弁逆流、心臓吻合、うっ血性心不全などのような、種々個別の病理学的症状に関連する。
【解決手段】心臓肥大を有する患者に、治療に有効な量のインターフェロンガンマ(IFN−γ)を投与する工程を包含する、心臓肥大を治療する方法。IFN−γは、心臓肥大、または、心臓肥大の進行における生理学的症状(例えば、血圧上昇、大動脈狭窄、または心筋梗塞)に使用される、一種以上のさらなる治療剤と組み合わせて、投与され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して心臓肥大に対するIFN−γの効果に関する。さらに詳細には、本発明は、心臓肥大および関連の病理学的症状の予防および処置のためのIFN−γの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(インターフェロンガンマ(IFN−γ))
インターフェロンは、ウイルスまたはある種その他の物質により侵入された細胞によって放出される、比較的小さな一本鎖糖タンパク質である。現在、インターフェロンは、白血球型インターフェロン(インターフェロンーアルファ、α−インターフェロン、IFN−α)、線維芽細胞型インターフェロン(インターフェロンーベータ、β−インターフェロン、IFN−β)および、免疫インターフェロン(インターフェロンーガンマ、γ−インターフェロン、IFN−γ)呼ばれる3つの主要クラスに分類される。ウイルス感染に応答して、リンパ球は、主として、α−インターフェロン(一般にオメガインターフェロンと呼ばれるより少量の異なるインターフェロン種に加えて)を合成するが、線維芽細胞の感染は、通常β−インターフェロンを誘導する。α−およびβ−インターフェロンは、約20〜30パーセントのアミノ酸配列相同性を共有する。ヒトIFN−β遺伝子は、イントロンを欠如し、ヒトIFN−αIと29%アミノ酸配列相同性を有するタンパク質をコードし、このことは、IFN−αおよびIFN−β遺伝子が、共通の祖先から進化したことを示唆する(非特許文献1)。反対に、IFN−γは、ウイルス感染によって誘導されず、むしろマイトジェン応答でのリンパ球によって合成され、アミノ酸配列において他の2つの型のインターフェロンとほとんど関連しない。インターフェロン−αおよび−βは、MHCクラスI型抗原を誘導することが公知であり、一方、IFN−γは、MHCクラスII抗原発現を誘導し、また標的細胞が、細胞障害性T細胞による認識のために、MHCクラスI分子に関連してウイルスペプチドを提供する効率を増大する。
【0003】
IFN−γは、インターフェロンファミリーのメンバーであり、インターフェロン−αおよび−β(IFN−αおよびIFN−β)を特徴づける抗ウイルス特性および抗増殖特性示すが、これらのインターフェロンとは対照的に、PH2不安定性である。IFN−γはもともと、リンパ球のマイトジェン誘導の際に産生された。ヒトIFN−γの組み換え産生は、最初、Gray,Goeddelならびに共同研究者(非特許文献2])によって報告され、特許文献1特許文献2特許文献3特許文献4特許文献5特許文献6特許文献7特許文献8、および特許文献9の主題である。E.coliで産生された、GrayおよびGoeddelの組み換えヒトIFN−γは、配列CysTyrCysで開始する分子のN−末端位置の、146アミノ酸からなった。後に、ネイティブヒトIFN−γ(すなわち、ヒト末梢血リンパ球のマイトジェン誘導および引き続く精製からの産生)は、Garyら(非特許文献2)によって示されたCysTyrCys N−末端を欠如するポリペプチドであることが見出された。より最近では、E.coli由来の組み換えヒトIFN−γ(rhIFN−γ)の結晶構造が決定され(非特許文献3)が決定され、これにより、そのタンパク質が強く結合された、2つの同じポリペプチド鎖が、逆平行様式で配置する非共有結合ホモダイマートとして存在することを示す。
【0004】
IFN−γは、抗腫瘍、抗菌、および免疫調節活性を含む、広範囲の生物学的活性を示すことは公知である。組み換えヒトIFN−γの特定の型(rhIFN−γ−lb、Actimmune(登録商標)、Genetech,Inc. South San Francisco,California)は、食細胞機能不全による、皮膚、リンパ節、肝臓、肺、および骨の重篤な再発感染によって特徴づけられる慢性肉芽腫症の処置のための免疫調節剤として商業的に入手可能である(非特許文献4)。IFN−γはまた、重篤なそう痒症、再燃が頻繁に起こる期間を伴う慢性的に再発する経過、際立った臨床学的形態学、および皮膚病変の分布によって特徴づけられる、一般的な炎症皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎(1991年6月13日に公開された特許文献10を参照のこと)、血管形成術および/または血管手術後の血管狭窄治療を含む血管狭窄(1990年4月5日に公開された特許文献11)、成体呼吸窮迫症候群(ARDS)および突発性RDSまたは硝子膜疾患としてさまざまに呼ばれる新生児型のような呼吸窮迫症症候群(RDS)を含む様々な肺症状(1989年2月23日公開の特許文献12)の治療のために提唱された。さらに、IFN−γは、種々のアレルギー(例えば、喘息)、およびHIV−感染関連症状(例えば、日和見感染症(例えば、Pneumocystis carinii肺炎))、および外傷関連敗血症の処置における使用のために提唱されている。減少したIFN−γ産生が、多発性硬化症(MS)患者で認められ、IFN−γの産生が、AIDS患者由来のマイトジェン刺激単核細胞の懸濁液中で非常に抑制されることが報告されている。総説については、例えば、非特許文献5を参照のこと。
【0005】
その他のサイトカインとならんで、インターフェロン−γは、誘導窒素酸化物(iNOS)の誘導物質に関与し、次に、心不全に内在する炎症機構、敗血症または同種移植片拒絶反応に対する心臓応答、ならびに種々の病因学の拡張型心筋症の進行の重要な媒介物質として記載されている。非特許文献6非特許文献7非特許文献8非特許文献9非特許文献10。実際、IFN−γは、筋細胞iNOS誘導に関して最も強力な単一のサイトカインであることが報告された(非特許文献11)。
【0006】
(心臓肥大)
肥大は、概して、腫瘍形成を含まない、天然増殖に依存しない、器官または構造のサイズの増加として定義される。器官または組織の肥大は、個々の細胞の質量の増加(真の肥大)、または組織を形成する細胞数の増加(過形成)、あるいはその両方のいずかれに起因する。
【0007】
心臓肥大は、機械な刺激またはホルモン刺激の両方によって活性化され、そして増大した心臓の出力または損傷に対する要求に心臓を適応させる心臓の巨大化である。非特許文献12。この応答は、しばしば、高血圧、大動脈弁狭窄症、心筋梗塞、心筋症、弁逆流、心臓吻合、うっ血性心不全などのような、種々個別の病理学的症状に関連する。
【0008】
細胞レベルでは、心臓は、筋細胞と、非筋細胞と呼ばれる周辺の支持細胞とのシンシチウムとして機能する。非心筋は、主として線維芽細胞/間充織細胞であるが、それらはまた、内皮細胞および平滑筋細胞を包含する。実際、筋細胞は、成体心筋質量のほとんどをしめるが、それらは、心臓に存在する総細胞数の約30%のみを示す。
【0009】
胚性心臓の巨大化は、大部分、筋細胞数の増加に依存し、心筋細胞は増殖能力を失う誕生直後まで継続する。さらなる増殖が、個々の細胞の肥大を通じて生じる。成体心臓心室筋細胞の肥大は、慢性的な血液動力学的過負荷を導く様々な症状に対する応答である。従って、ホルモン的、生理学的、血液動力学的、および病理学的刺激に応答して、成体心室筋細胞は、肥大プロセスの活性化を通して、増大された負荷に適応し得る。この応答は、同時発生的な細胞分裂および胚性遺伝子(心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)に対する遺伝子を含む)の活性化の非存在下での、筋細胞のサイズおよび個々の心筋細胞の収縮性タンパク質含有量の増加によって、特徴付けられる。非特許文献13非特許文献14。細胞外マトリックス内および心筋内冠状動脈周辺での、間質コラーゲンの蓄積に関連する筋細胞サイズの増加の結果としての心筋質量の増加が、ヒトにおける血圧過負荷に対して二次的な、左心室肥大において記載されている(非特許文献15非特許文献16非特許文献17非特許文献18)。慢性血液動力学的過負荷に起因する心臓肥大は、ほとんどの心臓障害の一般的な終末的結果であり、心不全の一貫した特徴である。
【0010】
非筋細胞の支持細胞によって産生されるパラ分泌因子が、心臓肥大の進行に関与し得ることもまた示唆され、そして白血病抑制因子(LIF)およびエンドセリンのような種々の非筋細胞誘導肥大因子が同定されている。非特許文献19非特許文献20非特許文献21非特許文献22特許文献13(1996年11月12日に発行された)。心臓肥大の潜在的な媒介物質として同定されたさらなる例示的な因子は、カルジオトロフィン−1(CT−1)(非特許文献23)、カテコラミン、アドレノコルチコステロイド、アンギオテンシン、およびプロスタグランジンを、包含する。
【0011】
成体の筋細胞肥大は、個々の筋線維に対する負荷を減少させることによって、減少した心機能に対する短期間応答として最初は有益である。しかし、重大な長期間の過負荷によって、肥大された細胞は、悪化し死亡する。非特許文献24。心臓肥大は、心不全の臨床的経過における死亡率および罹患率の両方についての有意な危険因子である。
【0012】
心臓肥大の原因および病理学のさらなる詳細は、例えば非特許文献25を参照のこと。
【0013】
(心臓肥大の処置)
現在では、心臓肥大の処置は、基礎をなす心臓病に依存して変化する。カテコラミン、アドレノコルチコステロイド、アンギオテンシン、プロスタグランジン、白血病抑制因子(LIF)、エンドセリン(エンドセリン−1、−2、および−3、および巨大エンドセリンを含む)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、および心臓肥大因子(CHF)が、肥大の潜在的な媒介物質として同定された因子に包含される。例えば、β−アドレナリンレセプターブロック剤(β−ブロッカー、例えば、プロプラノロール、チモロール、テルタトロール(tertalolol)、カルテオロール、ナドロール、ベタキソロール(betaxolol)、ペンブトロール、アセトブトロール、アテノロール、メトプロロール、カルベジロール(carvedilol)など)、およびベラパミルが、肥大性心筋症の処置に広範に使用されてきた。β−ブロッカーの症状(例えば、胸の痛み)および運動耐性(exercise tolerance)に対する有利な効果は、心拍数の減少ならびに心臓拡張期の延長および受動的な心室充満の増大に大部分起因する。非特許文献26非特許文献27。ベラパミルは心室充満を改善し、そしておそらく心筋虚血を減少することが記載されている。非特許文献28。ニフェジピンおよびジルチアゼムもまた、肥大性心筋症の処置にときとして使用されてきた。非特許文献29非特許文献30。しかし、その潜在的な血管拡張特性のために、ニフェジピンは、拍出閉塞症の患者において特に有害であり得る。ジソピラミドは、その陰性変力特性によって、症状を軽減するために使用された。非特許文献31。しかし、多数の患者において、初期の有用性は、時間とともに減少する。非特許文献32
【0014】
降圧剤治療は、血圧上昇にともなう心臓肥大に有益な効果を有することが、報告されている。単独または組み合わせで、降圧治療に使用される薬物の例は、カルシウムアンタゴニスト(例えば、ニトレンジピン);β−アドレナリン作動性レセプターブロック剤(例えば、上記に記載のもの);アンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤(例えば、クイナプリル(quinapril)、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル(ramipril)、ベナゼプリル(benazepril)、フォシノプリル(fosinopril)、リジノプリル;利尿剤(例えば、クロロチアジド(chorothiazide)、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethazide)、メチルクロロチアジド(methylchlothiazide)、ベンズチアジド(benzthiazide)、ジクロルフェンアミド(dichlorphenamide)、アセタゾルアミン(acetazolamide)、インダパミド(indapamide);カルシウムチャンネルブロッカー(例えば、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、ニカルジピン)である。例えば、ジルチアゼムおよびカプトプリルによる肥大の治療は、左心室筋質量の減少を示したが、心臓拡張機能のドップラー指数は、標準化されなかった。非特許文献33非特許文献34。これらの知見は、間質コラーゲンの過剰量が、左心室肥大の後退後に残存し得ることを示していると説明された。非特許文献35。前出のRossiらは、実験ラットにおいて、血圧過負荷心臓肥大における、心筋細胞肥大および間質線維症の予防および後退に対する、カプトプリルの効果を研究した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4,762,791号明細書
【特許文献2】米国特許第4,929,544号明細書
【特許文献3】米国第4,727,138号明細書
【特許文献4】米国第4,925,793号明細書
【特許文献5】米国第4,855,238号明細書
【特許文献6】米国第5,582,824号明細書
【特許文献7】米国第5,096,705号明細書
【特許文献8】米国第5,574,137号明細書
【特許文献9】米国第5,595,888号明細書
【特許文献10】国際公開第91/07984号パンフレット
【特許文献11】国際公開第90/03189号パンフレット
【特許文献12】国際公開第89/01341号パンフレット
【特許文献13】米国特許第5,573,762号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Taniguchiら、Nature 285,547−549[1980]
【非特許文献2】Grayら、Nature 295,503−508[1982
【非特許文献3】Ealickら、Science 252,698−702[1991]
【非特許文献4】Baehner,R.L.,Pediatric Pathol.10,143−153[1990]
【非特許文献5】Interferons and other Regulatory Cytokines,Edward de Maeyer(1988, John Wilet and Sons Publishers)中の「The Presence of Possible Pathogenic Role of Interferons in Disease」、16章
【非特許文献6】Ungureanu−Longroisら、Circ.Res.77,494−502(1995)
【非特許文献7】Pinskyら、J.Clin.Invest.95,677−685(1995)
【非特許文献8】Singhら、J.Biol.Chem.270,28471−8(1995)
【非特許文献9】BirksおよびYacoub,Coronary Artery Disease 8.389−402(1997)
【非特許文献10】Hattoriら、J.Mol.Cell.Cardiol.29,1585−92(1997)
【非特許文献11】Watkinsら、J.Mol.&Cell.Cardiol.27,2015−29[1995]
【非特許文献12】MorganおよびBaker,Circulation 83,13−25(1991)
【非特許文献13】Chienら、FASEB J.5,3037−3046(1991)
【非特許文献14】Chienら、Annu.Rev.Physiol.55,77−95(1993)
【非特許文献15】Caspariら、Cardiovasc.Res.11,554−8[1977]
【非特許文献16】Schwarzら、Am.J.Cardiol,42,895−903[1978]
【非特許文献17】Hessら、Circulation 63,360−371[1981]
【非特許文献18】Pearlmanら、Lab.Invest 46,158−164[1982]
【非特許文献19】Metcalf, Growth Factors 7,169−173(1992)
【非特許文献20】Kurzrockら、Endocrine Reviews 12,208−217(1991)
【非特許文献21】Inoueら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2863−2867(1989)
【非特許文献22】YanagisawaおよびMasaki,Trends Pharm.Sci.10.374−378(1989)
【非特許文献23】Pennicaら、Proc.Nat,Acad.Sci.USA 92:1142−1146[1995]
【非特許文献24】Katz,「Heart Failure」、Katz A.M.編、Physiology of the Heart(New York,Raven Press,1992)638−668頁
【非特許文献25】Heart Disease, A Textbook of Cardiovascular Medicine,Braunwald,E.編、W.B.Saunders Co.,1988,14章、Pathophysiology of Heart Failure
【非特許文献26】Thompsonら、Br.Heart J.44,488−98(1980)
【非特許文献27】Harrisonら、Circulation 29,84−98(1964)
【非特許文献28】Bonowら、Circulation 72,853−64(1985)
【非特許文献29】Lorellら、Circulation 65,499−507(1982)
【非特許文献30】Betocchiら、Am.J.Cardiol.78,451−7(1996)
【非特許文献31】Pollick,N.Engl.J.Med.307,997−9(1982)
【非特許文献32】Wigleら、Circulation 92,1680−92(1995)
【非特許文献33】Szlachcicら、Am.J.Cardiol.63,198−201(1989)
【非特許文献34】Shahiら、Lancet 336,458−61(1990)
【非特許文献35】Rossiら、Am.Heart J.124,700−709(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
心臓肥大の処置のための一般的に適用可能な治療が存在しないので、心筋細胞肥大を予防または軽減し得る因子を同定することが、病理生理学的心臓成長を阻害するための新たな治療ストラテジーの開発において、最も重要なことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要旨)
本発明者らは、IFN−γが、成体ラットから単離された心筋細胞の、プロスタグランジンF2α(PGF2α)−誘導型拡延およびフェニレフリン−誘導型拡延を阻害することを、予期せずに発見した。さらに、本発明者らは、IFN−γが、PGF2αのアゴニストアナログであるフルプロステノール(fluprostenol)によって誘導される心臓肥大、および血圧過負荷によって誘導される肥大の両方をインビボで阻害することを、ラットモデルにおいて見出した。
【0019】
従って、本発明は、根底にある原因にかかわらず、IFN−γの治療に有効な用量を投与することによる、心臓肥大の処置に関する。目的が、ヒト患者の処置である場合、IFN−γは、好ましくは、組み換えヒトIFN−γ(rhIFN−γ)であり、最も好ましくは、rhIFN−γ−1bであり、これは下記に定義される。治療の概念は、広義に使用されるが、特に、任意の段階の心臓肥大の防止(予防)、緩和、軽減、および治癒を包含する。
【0020】
IFN−γは、好ましくは液体薬学的処方剤の形態で投与され、これは、延長された貯蔵安定性を達成するように保存され得る。保存された液体薬学的処方物は、IFN−γの複数回用量を含有し得、従って、反復使用に適し得る。
【0021】
IFN−γは、心臓肥大、または、心臓肥大の進行における生理学的症状(例えば、血圧上昇、大動脈狭窄、または心筋梗塞)に使用される、一種以上のさらなる治療剤と組み合わせて、投与され得る。
【0022】
さらに、本発明は、心臓肥大の治療のための薬学的組成物の調製方法に関し、これは、活性成分としてIFN−γを含有する。
【0023】
本発明は、さらに以下:
(a)少なくとも一種の治療に有効な投薬量のIFN−γを含有する、薬学的組成物;
(b)該薬学的組成物を含有する、容器;および、
(c)心臓肥大の処置における該IFN−γの使用に言及する、該薬学的製品に含まれる該容器に添付されたラベルまたはパッケージビラ、
を包含する薬学的製品に関する。
本発明の好ましい実施形態によれば、以下の化合物などが提供される:
(項目1) 心臓肥大を有する患者に、治療に有効な量のインターフェロンガンマ(IFN−γ)を投与する工程を包含する、心臓肥大を治療する方法。
(項目2) 前記患者が、ヒトである、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記IFN−γが、組み換えヒトIFN−γ(rh−IFN−γ)である、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記IFN−γが、rhIFN−γ−1bである、項目3に記載の方法。
(項目5) 前記心臓肥大が、上昇されたレベルのPGF2αの存在によって特徴付けられる、項目3に記載の方法。
(項目6) 前記心臓肥大が、心筋梗塞によって誘導された、項目2に記載の方法。
(項目7) 前記IFN−γ投与が、心筋梗塞後48時間以内に開始される、項目6に記載の方法。
(項目8) 前記IFN−γ投与が、心筋梗塞後24時間以内に開始される、項目7に記載の方法。
(項目9) 前記患者が、心臓肥大を発症する危険性がある、項目2に記載の方法。
(項目10) 前記患者が、心筋梗塞に罹患した、項目9に記載の方法。
(項目11) 前記IFN−γ投与が、心筋梗塞後48時間以内に開始される、項目10に記載の方法。
(項目12) 前記IFN−γ投与が、心筋梗塞後24時間以内に開始される、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記IFN−γが、心臓肥大の処置または心臓肥大をもたらす心臓疾患の処置に使用される、少なくとも一種のさらなる治療剤と組み合わせて投与される、項目2に記載の方法。
(項目14) 前記さらなる治療剤が、β−アドレナリンブロック剤、ベラパミル、ジフェジピン、およびジルチアゼムからなる群より選択される、項目13に記載の方法。
(項目15) 前記β−アドレナリンブロック剤が、カルベジロール、プロパラノロール、メトプロロール、チモロール、オキシプレノロール、またはタータロロールである、項目14に記載の方法。
(項目16) 前記IFN−γが、抗高血圧剤と組み合わせて投与される、項目13に記載の方法。
(項目17) 前記IFN−γが、ACE阻害剤ともに投与される、項目13に記載の方法。
(項目18) 前記IFN−γが、エンドセリンレセプターアンタゴニストとともに投与される、項目13に記載の方法。
(項目19) 前記IFN−γが、血栓溶解剤の投与後に投与にされる、項目13に記載の方法。
(項目20) 前記血栓溶解剤が、組み換えヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(rht−PA)である、項目18に記載の方法。
(項目21) 前記IFN−γが、急性心筋梗塞の処置のために、最初の血管形成術後に投与される、項目13に記載の方法。
(項目22) 薬学的に受容可能なキャリアと、治療に有効な量のインターフェロンガンマ(IFN−γ)を混合する工程を包含する、心臓肥大の処置のための薬学的組成物を調製する、方法。
(項目23) 前記薬学的組成物が、液体である、項目22に記載の方法。
(項目24) 前記薬学的組成物が、保存剤を含有する、項目22に記載の方法。
(項目25) 前記薬学的組成物が、注射可能な処方物である、項目23に記載の方法。
(項目26) 薬学的製品であって、該薬学的製品が、以下:
(a)少なくとも一種の治療に有効な用量のIFN−γを含有する、薬学的組成物;
(b)該薬学的組成物を含有する、容器;および、
(c)心臓肥大の処置における該IFN−γの使用に言及している、該薬学的製品に含まれる該容器に添付されたラベルまたはパッケージビラ、
を包含する、薬学的製品。
(項目27) 前記容器が、無菌連結口を有する、項目26に記載の薬学的製品。
(項目28) 前記容器が、皮下注射針によって刺し通せる栓を有する、静脈溶液バッグまたはバイアルである、項目26に記載の薬学的製品。
【0024】
図面においておよび実施例を通して、「IFN」または「IFN−γ」とは、組み換えマウスIFN−γ(Genentech.Inc.,South San Francisco,CA,またはGenzyme,Cambrige,MA)をいう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】IFN−γによるプロスタグランジンF2α(PGF2α)誘導型拡延応答。筋細胞は、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルあるはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PGF2α、およびPGF2α+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生出現率のパーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図1B】IFN−γによるプロスタグランジンF2α(PGF2α)誘導型拡延応答。筋細胞は、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルあるはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PGF2α、およびPGF2α+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生出現率のパーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図1C】IFN−γによるプロスタグランジンF2α(PGF2α)誘導型拡延応答。筋細胞は、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルあるはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PGF2α、およびPGF2α+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生出現率のパーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図1D】IFN−γによるプロスタグランジンF2α(PGF2α)誘導型拡延応答。筋細胞は、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルあるはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PGF2α、およびPGF2α+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生出現率のパーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図1E】IFN−γによるプロスタグランジンF2α(PGF2α)誘導型拡延応答。筋細胞は、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルあるはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PGF2α、およびPGF2α+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生出現率のパーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図1F】IFN−γによるプロスタグランジンF2α(PGF2α)誘導型拡延応答。筋細胞は、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルあるはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PGF2α、およびPGF2α+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生出現率のパーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図2A】IFN−γ(500−25 U/ml)によるPGF2α誘導応答の投与量応答性阻害。心筋を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γでプレインキュベートした。IFN−γの2回目の量を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に添加した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光下で観察した。心筋細胞形態学の定量:A コントロール、B PGF2α、C PGF2α+IFN−γ(25U/ml)、D PGF2α+IFN−γ(100U/ml)、E PGF2α+IFN−γ(500U/ml)である。ヒストグラムは、幅発生出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図2B】IFN−γ(500−25 U/ml)によるPGF2α誘導応答の投与量応答性阻害。心筋を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γでプレインキュベートした。IFN−γの2回目の量を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に添加した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光下で観察した。心筋細胞形態学の定量:A コントロール、B PGF2α、C PGF2α+IFN−γ(25U/ml)、D PGF2α+IFN−γ(100U/ml)、E PGF2α+IFN−γ(500U/ml)である。ヒストグラムは、幅発生出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図2C】IFN−γ(500−25 U/ml)によるPGF2α誘導応答の投与量応答性阻害。心筋を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γでプレインキュベートした。IFN−γの2回目の量を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に添加した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光下で観察した。心筋細胞形態学の定量:A コントロール、B PGF2α、C PGF2α+IFN−γ(25U/ml)、D PGF2α+IFN−γ(100U/ml)、E PGF2α+IFN−γ(500U/ml)である。ヒストグラムは、幅発生出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図2D】IFN−γ(500−25 U/ml)によるPGF2α誘導応答の投与量応答性阻害。心筋を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γでプレインキュベートした。IFN−γの2回目の量を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に添加した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光下で観察した。心筋細胞形態学の定量:A コントロール、B PGF2α、C PGF2α+IFN−γ(25U/ml)、D PGF2α+IFN−γ(100U/ml)、E PGF2α+IFN−γ(500U/ml)である。ヒストグラムは、幅発生出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図2E】IFN−γ(500−25 U/ml)によるPGF2α誘導応答の投与量応答性阻害。心筋を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γでプレインキュベートした。IFN−γの2回目の量を、ビヒクルまたはPGF2α(10-7M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に添加した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光下で観察した。心筋細胞形態学の定量:A コントロール、B PGF2α、C PGF2α+IFN−γ(25U/ml)、D PGF2α+IFN−γ(100U/ml)、E PGF2α+IFN−γ(500U/ml)である。ヒストグラムは、幅発生出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図3A】IFN−γによるフェニルエフェドリン(PE)誘導拡延応答の阻害。筋細胞を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルまたはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPE(10-5M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PE、およびPE+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生の出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図3B】IFN−γによるフェニルエフェドリン(PE)誘導拡延応答の阻害。筋細胞を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルまたはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPE(10-5M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PE、およびPE+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生の出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図3C】IFN−γによるフェニルエフェドリン(PE)誘導拡延応答の阻害。筋細胞を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルまたはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPE(10-5M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PE、およびPE+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生の出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図3D】IFN−γによるフェニルエフェドリン(PE)誘導拡延応答の阻害。筋細胞を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルまたはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPE(10-5M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PE、およびPE+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生の出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図3E】IFN−γによるフェニルエフェドリン(PE)誘導拡延応答の阻害。筋細胞を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルまたはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPE(10-5M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PE、およびPE+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生の出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図3F】IFN−γによるフェニルエフェドリン(PE)誘導拡延応答の阻害。筋細胞を、単離した日に、生理食塩水ビヒクルまたはIFN−γ(500U/ml)でプレインキュベートした。ビヒクルまたはIFN−γの2回目の添加を、ビヒクルまたはPE(10-5M)のいずれかの添加とともに、単離の24時間後に実施した。さらに72時間インキュベートした後に、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、エオシンYで染色し、そして蛍光顕微鏡で観察した。A、B、C 培養4日後の心筋細胞:それぞれ、コントロール、PE、およびPE+IFN−γである。ヒストグラムは、幅発生の出現率パーセントに対するロッド型心筋細胞の最大幅を示す。ロッド型細胞の最大幅は、蛍光顕微鏡および画像化ソフトウェアによって決定された。1回の実験からの少なくとも200のロッド型細胞を、群ごとに試験した。IFN−γだけは、細胞の形態学に対する観察可能な効果は、認められなかった。全群比較についてP<0.001であった。
【図4】ラットでのフルプロステノールによって誘導される心臓肥大に対するIFN−γの効果。データは、平均値±SEMで示されている。括弧内の数は、各群の動物数である。*P<0.05、*P<0.01、ビヒクル群との比較。#P<0.05、##P<0.01、Flup群との比較。Flup:フルプロステノール;IFN=IFN−γ;HW:心臓重量;BW:体重;VW:心室重量;LVW:左心室重量である。
【図5】MAPおよびHRに対するFlupおよび/またはIFNの効果。データは、平均値±SEMで示されている。括弧内の数は、各群の動物数である。*P<0.05、ビヒクル群との比較。#P<0.05、Flup群との比較。+P<0.05、Flup+IFN群との比較。Flup:フルプロステノール;IFN:IFN−γ;MAP:平均動脈血圧;HR:心拍数である。
【図6】棒グラフはフルプロステノール(FLUP)およびIFN−γの下記のものに対する効果を示す:A、骨格アクチン(SKA);B、筋小胞体カルシウムATPase(SRCA);C、コラーゲンI(COLI);D、心房性ナトリウム利尿因子(ANF)発現。発現レベルは、グリセルアルデヒド−3−フォスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)メッセージに対して標準化される。VEHは、ビヒクルである。群あたり7動物が存在し、データは、平均値±SEMで示されている。P<0.05対VEH群である。
【図7】血圧過負荷を有するラットの心臓重量、心室重量、および左心室重量に対するIFN−γの効果。データは、平均値±SEMで示されている。括弧内の数は、各群の動物数である。**P<0.01、シャム(sham)群との比較る。##P<0.01、結紮+ビヒクル群との比較。シャム:シャム操作ラット;結紮:大動脈結紮ラット;IFN = IFN−γ;HW:心臓重量;VW:心室重量;LVW:左心室重量である。
【図8】血圧過負荷を有するラットの体重に対する心臓重量、心室重量、および左心室重量の比率に対するIFN−γの効果。データは、平均値±SEMで示されている。括弧内の数は、各群の動物数である。**P<0.01、シャム群との比較。##P<0.01、結紮+ビヒクル群との比較。シャム:シャム操作ラット;結紮:大動脈結紮ラット;IFN:IFN−γ;HW:心臓重量;BW:体重;VW:心室重量;LVW:左心室重量である。
【図9】血圧過負荷を有するラットの収縮期動脈血圧、平均動脈血圧、および拡張期動脈血圧に対するIFN−γの効果。括弧内の数は、各群の動物数である。**P<0.01、シャム群との比較。シャム:シャム操作ラット;結紮:大動脈結紮ラット;IFN:IFN−γ;SAP:収縮期動脈血圧;MAP:平均動脈血圧;DAP:拡張期動脈血圧である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
(A.定義)
「ガンマインターフェロン」、「インターフェロン−ガンマ」、または「IFN−γ」は、心臓肥大の任意アッセイ、例えば、本明細書に記載の肥大アッセイで、生物学的活性であることが示されている(ヒトおよび非ヒト動物)ガンマインターフェロンの全てのタイプをいい、天然供給源から得られたもの、化学合成されたもの、また組み換えDNA法で産生されたものを問わず、腫瘍、pro、met、および/またはdes(1−3)(desCysTyrCysIFN−γともいう)形態を含むが、これらに限定されない。cDNAおよびアミノ酸配列を含む、組み換えIFN−γ(rhuIFN−γ)の調製の完全な記載は、例えば、米国特許第4,727,138号、第4,762,791号、第4,924,793号、第4,929,554号、第5,582,824号、第5,096,705号、第4,855,238号、第5,574,137号、および第5,595,888号に開示されている。種々の切断型誘導体含む、CysTryCys−欠損組み換えヒトIFN−γは、例えば、欧州特許第146,354号に開示されている。IFN−γを含む非ヒト動物インターフェロンは、たとえば、欧州特許第88,622号に開示されている。その用語には、グリコシル化形態およびその他の改変体(例えば、アミノ酸配列改変体)、およびこのような天然(野生型)インターフェロンの誘導体を包含し、当該分野で公知であるか、または将来入手可能となる。このような改変体の例は、対立遺伝子、および残基が欠失、挿入、および/または置換された部位特異変異誘発の産物である(先に言及された欧州特許第146,354号を参照のこと)。IFN−γは、狭い宿主範囲を有することが公知であり、従って、処置される動物と相同なIFN−γが、使用されるべきである。ヒトの治療では、米国特許第4,717,138号およびその対応欧州特許第77,670号に示された配列、desCysTyrCys変異体が好ましくは使用され、必要に応じて、最後の4アミノ酸残基が翻訳後プロセッシングにおいて欠失した、C−末端変異体が使用される。ヒトの治療的使用には、本発明のIFN−γは、好ましくは、N−末端にアミノ酸CysTyrCysをともなうかまたはともなわない、組み換えヒトIFN−γ(rhIFN−γ)である。さらに好ましくは、IFN−γは、組み換えヒトIFN−γ種(140アミノ酸を含有する、組み換えヒトインターフェロンガンマ−1b、rhIFN−γ−1b)であり、これは、市販処方物であるActimmune(登録商標)(Genentech,Inc.,South San Francisco,California)の活性成分である。IFN−γは、動物実験で、または獣医学的用途のために、高度に種特異的であることが公知であり、処置されるべき動物種のIFN−γが、好ましくは、使用される。従って、ラットアニマルモデルを使用するインビボ実験で、ネズミ(マウス)組み換えIFN−γ(Genentech,Inc.)が、使用された。ラットおよびマウスは、ラットモデルでのマウスIFN−γの使用を可能にするのに、十分密接に関連している。
【0027】
薬学的な意味において、本発明の状況では、IFN−γの「治療に有効な量」は、肥大、特に心臓肥大の処置に有効な量をいう。
【0028】
本明細書に使用されているように、「肥大」は、腫瘍形成を含まない、天然増殖に依存しない、器官または構造の質量の増加として定義される。器官または構造の肥大は、個々の細胞の質量増加(真の肥大)、または組織を構成する細胞数の増加(過形成)、あるいはその両方に起因する。特定の器官(例えば、心臓)は、誕生後ただちに分裂能力を失う。従って、「心臓肥大」は、心臓質量の増加として定義され、成体では、筋細胞の大きさの増加、および同時に起こる細胞分裂を伴わない収縮性タンパク質含有量の増加によって特徴付けられる。肥大を誘導するストレスの特徴(例えば、心筋梗塞での予備負荷の増大、後負荷の増大、筋細胞の損失、または収縮性の一次抑制)は、応答の性質決定に重要な役割を果たすようである。心臓肥大の初期段階は、通常、筋原線維(mycrofibril)およびミトコンドリアの大きさ、ならびに、ミトコンドリアおよび核の巨大化によって特徴付けられる。この段階では、筋細胞が通常より大きいが、細胞組織は、大部分保存される。心臓肥大のさらに進行した段階で、特定のオルガネラ(例えば、ミトコンドリア)の大きさまたは数の、優先的な増加が存在し、新たな収縮要素が、細胞の局所領域に不規則な様式で添加される。長期肥大にさらされた細胞は、高度に分葉化した膜を有する、顕著に巨大化した核を含む、細胞組織でのより明らかな崩壊を示し、これは、隣接する筋原線維を移動させ、正常なZバンド位置(registration)の崩壊を引き起こす。用語「心臓肥大」は、基礎をなす心臓疾患にかかわらず、心筋の種々の程度の構造損傷によって特徴付けられる、この症状の進行の全段階を包含するように使用される。
【0029】
「心不全」とは、心臓が代謝組織の要求に必要な速度で血液を送らない、心臓機能の異常をいう。心不全は、虚血性、先天性、リウマチ性、または突発性形態を含む、多数の因子によって引き起こされ得る。
【0030】
「うっ血性心不全」は、心臓が、漸増的に十分な心臓拍出(経時的に心臓によって送られる血液体積)を、酸素負荷血液を抹消組織に供給し得なくなる、進行する病理学的状態である。うっ血性心不全が進行するにつれて、構造および血液動力学的損傷が生じる。これらの損傷は、様々な徴候を有するが、1つの特徴的な症状は、心室肥大である。うっ血性心不全は、多数の種々の心臓疾患の一般的な結末である。
【0031】
「心筋梗塞」は、一般的に、環状動脈のアテローム性動脈硬化症に原因し、しばしば、環状血栓症が重なる。それは、2つの主要型に分類される:経壁梗塞(心筋壊死は、血管壁の全厚みを含む)、および心内膜下(非経壁)梗塞(その壊死は、心室壁から心外膜にわたって広がらない、心内膜下、心筋壁内、またはその両方を含む)。心筋梗塞は、血液動力学効果における変化、ならびに心臓の損傷ゾーンおよび健常ゾーンでの構造変化の両方を生じることが知られている。従って、例えば、心筋梗塞は、最大心臓拍出および心臓の一回拍出量を減少する。さらに、心筋梗塞に関連するのは、間に生じるDNA合成の刺激、および影響されない心臓領域でのコラーゲン形成の増加である。
【0032】
例えば、全末梢耐性の増大に起因する長時間の高血圧の心臓にかけられるストレスまたは緊張の増加の結果として、心臓肥大は、「高血圧」に長い間関係付けられてきた。慢性血圧過負荷の結果として肥大になる心室の特徴は、減少された心臓拡張の能力である。Fouadら、J.Am.Coll.Cardiol.4,1500−6(1984);Smithら、J.Am.Coll.Cardiol.5,869−74(1985)。延長された左心室緩和は、正常あるいは正常を超える収縮性機能にもかかわらず、初期の本態性高血圧症で検出された。Hartfordら、6,329−338(1984)。しかし、血圧レベルと心臓肥大との間に密接な対応性ない。抗高血圧治療に応答する左心室機能の改善は、ヒトにおいて報告されたが、利尿剤(ヒドロクロロチアジド)、β−遮断剤(プロプラノロール)、またはカルシウムチャンネルブロッカー(ジルチアゼム)によって種々に処置された患者は、心臓拡張機能における改善をともなわずに、左心室質量の逆戻りを示した。Inouyeら、Am.J.Cardiol.53,1583−7(1984)。
【0033】
心臓肥大に関連するその他の複合心臓疾患は、「肥大性心筋症」である。この症状は、多種多様な形態学的、機能的、および臨床的特徴によって特徴付けられ(Maronら、N.Engl.J.Med.316,780−9[1987];Spiritoら、N.Engl.J.Med.320,749−55[1989];LouieおよびEdwards,Prog.Cardivasc.Dis.36,275−308[1994];Wigleら、Circulation 92,1680−92[1995])、その異質性は、全ての年齢の患者を苦しめる事実によって強調される(Spiritoら、N.Engl.J.Med.336,775−785[1997])。肥大性心筋症原因因子もまた多様であり、ほとんど理解されていない。最近のデータは、β−ミオシン重鎖変異が、家族性の肥大性心筋症の症例の約30から40パーセントを占め得ることを示唆する(Watkinsら、N.Engl.J.Med.326,1108−14[1992] Schwartzら、Circulation 91,532−40[1995];MarianおよびRoberts、Circulation 92,1336−47[1995];Thierfelderら、Cell 77,701−12[1994];Watkinsら、Nat.Gen.11,434−7[1995])。
【0034】
弁上「大動脈弁狭窄症」は、遺伝的に受け継がれる血管疾患であり、上行大動脈の狭窄によって特徴付けられるが、肺動脈を含むその他の動脈もまた、影響され得る。非処置大動脈弁狭窄症は、心内血圧の増大を導き得、心筋肥大症をもたらし、ついには心不全、そして死をもたらす。この疾患の病原論は、完全には理解されておらず、肥大症および、おそらく内側平滑筋の過形成が、この疾患の際立った特徴である。エラスチン遺伝子の分子改変体が、大動脈弁狭窄症の進行および病原論に関与することが、報告されている(米国特許第5,650,282号1997年7月22発行)。
【0035】
「弁逆流」は、心臓疾患の結果として生じ、心臓弁の障害をもたらす。リウマチ熱のような種々の疾患が、弁開口部の収縮または引きちぎれを引き起こし得るが、その他の疾患は、心内膜炎、心内膜または房室開口部の内膜の炎症、そして心臓手術をもたらし得る。弁狭窄症の狭窄化または弁の欠陥的な閉鎖のような欠陥は、心腔内の血液の蓄積、または弁を通した血液の逆流をもたらす。矯正されずに長期化された弁狭窄症、または不十分さは、心臓肥大および心筋に対する関連する損傷をもたらし、これは、ついには弁交換を必要とし得る。
【0036】
心臓肥大にともなうこれらおよびその他の心臓疾患の処置は、本発明の主題である。
【0037】
「処置」は、治療処置、および予防または防止的手段の両方のことをいい、ここで、その目的は、肥大を予防または軽減(低)することである。処置の必要な被検体は、すでに障害を有する被検体、ならびに疾患を有する傾向の被検体、またはその疾患が予防されるべき被検体を、包含する。肥大は、突発的、心臓栄養的、または筋栄養的原因、あるいは虚血症または心筋梗塞のような虚血性損傷を包含する、任意の原因から生じ得る。
【0038】
「慢性」投与は、長期間にわたり、初期の抗肥大効果を持続するために、薬剤の急性様式に対する連続様式での投与のことである。
【0039】
処置目的のための「哺乳動物」とは、ヒト、家畜および農場動物、および動物園動物、スポーツ動物、またはペット動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタなど)として分類される任意の動物のことをいう。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0040】
一種以上のさらなる治療剤と「組み合わせた」投与は、同時(併用)投与、および任意順序での連続投与を包含する。
【0041】
(B.発明の実施の態様)
(1.心臓肥大アッセイ)
(インビトロアッセイ)
(a.成体ラット心筋細胞拡延の誘導)
このアッセイでは、心室筋細胞は、単一(雄Sprague−Dawley)ラットから単離され、基本的には、Cell Culture Techniques in Heart and Vessel Research, H.M. Piper編、Berlin: Spinger−Verlag, 1990, pp.36−60中の「成体ラット心臓心室筋細胞(Adult ventricular rat heart muscle cell)」に、Piperらによる詳細な記載の手順の変法に従う。この手順は、成体心室筋細胞の単離、およびこれらの細胞のロッド型表現型の長期培養を可能にする。フェニレフリンおよびプロスタグランジンF2α(PGF2α)は、これらの成体細胞での拡延応答を誘導することが示されている。Piperら、前出、Laiら、Am.J.Physiol.1996;271(Heart Circ.Physiol.40):H2197−H2208。次いで、PGF2α'、またはPGF2αアナログ(例えば、フルプロステノール)およびフェニルエフィリンによって誘導された筋細胞拡延の、心臓肥大の種々様々な潜在的阻害剤による阻害が、テストされる。詳細なプロトコールは、以下の実施例に記載される。
【0042】
(インビボアッセイ)
(a.インビボでのフルプロステノールによって誘導される心臓肥大の阻害)
この薬理学的モデルは、ラット(例えば、雄のWistarまたはSprague−Dawley)において、フルプロステノール(PGF2αのアゴニストアナログ)を皮下注入して誘導された心臓肥大を、IFN−γが阻害する能力を試験するものである。心筋梗塞によって誘導された病理学的心臓肥大を有するラットが、それらの心筋層に慢性的に上昇されたレベルの抽出可能なPGF2αを有することは、公知である。Laiら、Am. J. Physiol, (Heart Circ. Physiol.) 271:H2197−H2208(1996)。従って、インビボで心筋増殖に対するフルプロステノール効果を阻害し得る因子は、心臓肥大を治療するために潜在的に有用である。IFN−γの心臓肥大に対する効果は、心臓、心室、および左心室の重量(体重によって標準化された)を、IFN−γを受けていないフルプロステノール処置されたラットに比較して、測定することによって決定される。このアッセイの詳細な記述は、実施例に提供されている。
【0043】
(b.血圧負担心臓肥大アッセイ)
インビボテストには、テスト動物の腹大動脈狭窄によって、血圧負担心臓肥大を誘導することが一般的である。典型的なプロトコールでは、ラット(例えば、雄のWistarまたはSprague−Dawley)は、麻酔下で処置され、各ラットの腹大動脈を、横隔膜の真下で狭窄する。Beznak M., Can. J. Biochem. Physiol. 33, 985−94(1955)。大動脈は、手術切開して露出され、尖っていない針が血管脇に配置される。この大動脈は、この針の周りで羊毛糸結紮によって狭窄され、これは直ちに取り除かれ、針の直径まで大動脈内腔を減少する。この試みは、例えば、Rossiら、Am. Heart J. 124, 700−709(1992)、およびO’RourkeおよびReibel, P.S.E.M.B. 200, 95−100(1992)に記載されている。本発明に使用されるプロトコールの詳細な記載は、下記の実施例で開示されている。
【0044】
(b.実験的に誘導された心筋梗塞(MI)後の心臓肥大に対する効果)
急性MIは、左冠状動脈結紮によってラットに誘導され、心電図実験によって確認される。動物の偽操作グループもまた、コントロール動物として調製される。初期データは、心臓肥大は、体重に対する心臓重量比の18%増加で示されるような、MIを有する動物グループに存在することを示した。Laiら、前出。心臓肥大の候補ブロッカー(例えば、IFN−γ)でのこれらの動物の処置は、テストされる候補物の治療可能性についての貴重な情報を提供する。
【0045】
(2.IFN−γの使用、治療組成物、および投与)
本発明に従って、IFN−γは、病因学および病因論にかかわらず、心臓肥大、すなわち心臓巨大化の治療に使用され得る。過大血圧または体積負担が心臓(心室)に課されるときに、心臓(心筋)肥大が発症し、心室が負担に耐えることを可能にする生来の代償的メカニズムを提供する。Krayenbuehlら、Eur. Heart J.4.(Suppl. A), 29(1983)。肥大症の進行に応答するストレスの特徴(心筋梗塞でのような、増加される前負荷、増加される後負荷、筋細胞の喪失、または収縮性の一次低下)は、肥大応答の特性の決定に重要な役割をなす。ScheuerおよびButtrick, Circulation 75(Suppl. I), 63(1987)。本発明は、限定されないが、心筋梗塞後、高血圧、大動脈狭窄、心筋症、弁逆流、心臓吻合、およびうっ血性心不全を含む、任意の潜在的な病理学的症状に関連する、心臓肥大の治療に関する。これらの症状の主要特性は、上記に考察されている。
【0046】
心筋梗塞後の心不全の予防のためのIFN−γの使用が、特に重要である。毎年約750,000人の患者が、急性心筋梗塞(AMI)に罹患し、米国での全死亡者の約四分の一が、AMIによる。近年では、血栓溶解剤、例えば、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、そして特定組織でのプラスミノーゲン活性化因子(t−PA)が、心筋梗塞患者の生存を有意に増大させた。1.5から4時間の継続静脈内注入で投与される場合には、t−PAは、90分で、処置された患者の69%から90%で、冠状開出を引き起こした。Topolら、Am. J. Cardiol.61, 723−8(1988); Neuhausら、J. Am. Coll. Cardiol. 12, 581−7 (1988); Neuhausら、J. Am. Col. Cardiol. 14, 1566−9(1989)。最高開出速度は、高投与量、および加速投与レジメンで報告された。Topol, J. Am. Coll. Cardiol. 15, 922−4(1990)。t−PAはまた、単回ボーラス投与で投与され得、それは比較的半減期が短いことに起因するが、注入治療により適している。Tebbeら、Am. J. Cardiol. 64,448−53(1989)。特に、より長い半減期を有し、非常に高度のフィブリン特異性を有すように設計されたt−PA変異体である、TNK t−PA(T103N, N117Q, KHRR(296−299)AAAA t−PA変異体、Keytら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 3670−3674(1994))は、特にボーラス投与が適している。しかし、すべてのこれらの改良にもかかわらず、患者生存の長期予後は、患者の梗塞後のモニターおよび治療に大きく依存し、心臓肥大のモニターおよび治療を包含するべきである。
【0047】
その他の重要な治療指標は、高血圧に関連する心臓肥大の治療である。以前に記載されたように、持続高血圧症は、心臓肥大をもたらすことが公知である。ある種の血圧降下剤は、左心室質量を減少させることが示されているが、治療は、常には拡張機能の改善をもたらさない。従って、IFN−γは、β−アドレナリン作用性レセプター遮断薬、例えば、プロプラノロール、チモロール、テルタトロール(tertalolo)、カルテオロール、ナドロール、ベタキソロール、ペンブトロール、アセトブトロール、アテノロール、メトプロロール、カルベジロール;アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、例えば、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル、ベナゼプリル、ホシノプリル、リジノプリル;利尿剤、例えば、クロロチアジド(chorothiazide)、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethazide)、メチルクロロチアジド(methylchlothiazide)、ベンズチアジド、ジクロルフェナミド(dichlorphenamide)、アセタゾラミド、インダパミド;および/またはカルシウムチャネルブロッカー、例えば、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、ニカルジピンと組み合わせて、投与され得る。その一般名によって本明細書中で同定される治療剤を含有する、薬学的組成物は、商業的に入手可能であり、投与量、投与方法、副作用、禁忌などについての、製造者の指示に従って投与されるべきである(例えば、Physicians'Desk Reference, Medical Economics Data Production Co., Montvale, N.J., 第51版, 1997を参照のこと。)。
【0048】
IFN−γはまた、症状の進行をはばむために、および無症候性患者の死亡を含む突然死を避けるために、心臓肥大を有する患者に予防的に投与され得る。このような予防的治療は、巨大左心室心臓肥大(成体において、最大壁厚が35 mm以上、または子供において相当する値)と診断された患者の場合に、または、心臓への血流力学的負荷が特に強いときの例において、特に正当化される。
【0049】
IFN−γはまた、肥大性心筋症と診断された患者の実質的な部分に発症する、心房性細動の治療に有用であり得る。
【0050】
IFN−γは、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、活性成分としてIFN−γを含有する、薬学的組成物の形態で投与される。心臓肥大を治療するためのIFN−γの治療処方剤は、所望の程度の純度を有するIFN−γと、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences, 前出)と混合し、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で、貯蔵用に調製される。受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度で、受容体に対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、およびその他の有機酸のような、緩衝液;アスコルビン酸を含む、抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのような、タンパク質;ポリビニルピロリドンのような、親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリシンのような、アミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、およびその他の炭水化物;EDTAのような、キレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような、糖アルコール;ナトリウムのような、塩形成対イオン;および/または、Tween、プルロニック、またはポリエチレングリコール(PEG)のような、非イオン界面活性剤を包含する。
【0051】
インビボ投与に使用されるIFN−γは、無菌でなければならない。これは、凍結乾燥および再構成の前または後での、滅菌濾過膜を通しての濾過によって容易に達成される。IFN−γは、通常、凍結乾燥形態または溶液で貯蔵される。
【0052】
IFN−γは、使用時に適した希釈剤によって再構成するために、その他の成分と組み合わせて、凍結乾燥形態で使用され得る。IFN−γは、酸不安定性であることが公知であるので、従来から中性または弱アルカリpHで操作されてきた。例えば、pH6〜9に対する凍結乾燥された酸性IFN−γ溶液の再活性化が開示されている、米国特許第4,499,014号を参照のこと。IFN−γのより高濃度の中性または弱アルカリ溶液は、可視的沈殿の迅速な形成の理由によって、注入用処方剤として、一般的に不適切である。このような沈殿は、投与に際して血栓症をひきおこし得るか、またはその能力を減少し得る。欧州特許公開第0196,203号は、pH4〜6.0に対する凍結乾燥されたIFN−γの再構成を開示する。
【0053】
PH4.0−6.0を維持し得る緩衝液、安定剤、および非イオン界面活性剤とともに、非凍結乾燥IFN−γの有効量を含有する、安定な液体薬学的組成物は、1992年9月29日に発行された米国特許第5,151,265号に開示されている。安定剤は、典型的に、マンニトールのような、多価糖アルコールであり、非イオン界面活性剤は、例えば、ポリソルベート80またはポリソルベート20のような界面活性剤であり得る。非イオン界面活性剤は、好ましくは約0.07から0.2 mg/mlの範囲であり、最も好ましくは約0.1 mg/mlの濃度で存在する。適切な緩衝液は、硝酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合液、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合液、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合液など)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合液、コハク酸−水酸化ナトリウム混合液、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合液など)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合液、酒石酸−酒石酸カリウム混合液、酒石酸−水酸化ナトリウム混合液など)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合液、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合液、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合液など)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸−グルコン酸ナトリウム混合液、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合液、グルコン酸−グルコン酸カリウム混合液など)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合液、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合液、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合液など)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸−乳酸ナトリウム混合液、乳酸−水酸化ナトリウム混合液、乳酸−水酸化カリウム混合液など)、および酢酸緩衝液(例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合液、酢酸−水酸化ナトリウム混合液など)のような、有機酸およびその塩の従来からの緩衝液である。
【0054】
IFN−γの公知の市販液体処方物(Actimmune(登録商標) rhuIFN−γ−1b,Genentech,Inc.)は、皮下注射用の単回投与バイアルに充填された、無菌、透明、無色、非保存溶液である。Actimmuneの各0.5mlバイアルは、20mgマンニトール、0.36mgコハク酸ナトリウム、0.05mgポリソルベート20、および注射用滅菌水中に処方された、IFN−γ−1b 100μg(300万U、比活性3千万U/mg)を含有する。
【0055】
反復使用に適した、本発明に従って使用される保存薬学的組成物は、好ましくは、以下を含有する:
a)前に凍結乾燥に供されていない、IFN−γ;
b)pHを約4から約6の間に維持し得る、酢酸緩衝液(溶液中のタンパク質の最大安定性のpH範囲);
c)攪拌誘導凝集に対してタンパク質を最初に安定させる、非イオン界面活性剤;
d)等張剤;
e)フェノール、ベンジルアルコール、およびベンズエトニウムハライド(例えば、クロライド)からなる群から選択される、保存剤;および、
f)水。
【0056】
非イオン洗浄剤(界面活性剤)は、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート[Tween]20,80など)、またはポロキサマー(poloxamer)(例えば、ポロキサマー188)であり得る。非イオン界面活性剤の使用は、処方物がタンパク質の変性を生じることなく、剪断表面応力にさらされることを可能にする。さらに、このような界面活性剤を含有する処方物は、肺投与および針のないジェットインジェクターガンで使用されるもののような、エアロゾルデバイスで使用され得る(例えば、EP257,956)。
【0057】
等張剤は、本発明の液体組成物の等張を確実にするために存在し、多価糖アルコール、好ましくは、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールのような、三価またはより高い価の糖アルコールを包含する。これらの糖アルコールは、単独あるいは組み合わせで使用され得る。あるいは、塩化ナトリウムまたはその他の適切な無機塩が、溶液を等張にするために使用され得る。
【0058】
酢酸緩衝液は、例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウムなどであり得る。本発明の液体処方物のpHは、約4.0から6.0の範囲、好ましくは4.5から5.5の範囲、そして最も好ましくは約5に緩衝される。
【0059】
保存剤フェノール、ベンジルアルコール、およびベンズエトニウムハライド(例えば、クロライド)は、公知の抗菌剤である。
【0060】
好ましい実施態様では、IFN−γは、以下の成分を含有する、液体薬学的組成物の形態で、投与される:
IFN−γ 0.1〜2.0mg/ml
酢酸ナトリウム(pH5.0) 5〜100mM
Tween20 0.1〜0.01重量%
フェノール 0.05〜0.4重量%
マンニトール 5重量%
注射のための水、USP 100%まで
ここで、パーセント量は、組成物の重量に基づく。フェノールは、0.5から1.0重量%のベンジルアルコールと、そしてマンニトールは、0.9重量%の塩化ナトリウムと置換され得る。
最も好ましくは、下記を含有する組成物である。
【0061】
IFN−γ 0.1〜1.0mg/ml
酢酸ナトリウム(pH5.0) 10mM
Tween20 0.01重量%
フェノール 0.2%
マンニトール 5%
フェノールは、0.75重量%のベンジルアルコールと、そしてマンニトールは、0.9重量%の塩化ナトリウムと置換され得る。
【0062】
保存液体処方物は、好ましくは、IFN−γの治療に有効な量の多用量を含有する。このポリペプチドの狭い宿主範囲を考慮すれば、ヒト患者の治療のためには、ヒトIFN−γ、より好ましくは天然配列ヒトIFN−γを含有する、液体処方物が好ましい。生物学的応答改変因子として、IFN−γは、種々のヒトおよび非ヒト哺乳類種において、広範囲の細胞型に対して広範な種々の活性を示す。治療に有効な用量は、無論のこと、治療(予防を含む)されるべき病理学的状態、患者の年齢、体重、全身医療状態、病歴などのような因子に依存して変化し、その決定は、十分に開業医の技術範囲内である。有効な用量は、一般的に、約0.001から約1.0mg/kg、より好ましくは約0.01−1mg/kg、最も好ましくは約0.01−0.1mg/kgの範囲内である。このような処方物では、huIFN−γは、好ましくは、脳心筋炎ウイルスに対してA549細胞でテストされたとき、約2×107U/mgタンパク質以上の大きさの比活性を示す。エンドトキシン夾雑が、最少限に安全レベルで、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満に維持されるべきであることが、理解されるべきである。さらに、ヒト投与には、液体処方物は、FDA Office and Biologics基準に要求されるような、無菌性、発熱性、全般的な安全性、および純度を満たすべきである。
【0063】
IFN−γの投与経路は、公知の方法(例えば、静脈内、腹腔内、小脳内、筋肉内、眼内、動脈内、または病巣内経路による注射または注入、または下記に記載されているような持続放出システムによる)に従う。治療IFN−γ組成物は、一般的に、無菌連結口を有する容器(例えば、皮下注射針によって突き刺し可能な栓を有する、静脈溶液バックまたはバイアル)中に配置される。処方物は、好ましくは、反復の静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)または筋肉内(i.m.)注射として、または鼻内または肺内送達に適したエアゾル処方物として、投与される(肺内送達は、例えば、EP 257,956を参照のこと)。
【0064】
IFN−γの安定な水性組成物は、好ましくは、バイアルに含有され、これはIFN−γの約30までの治療に有効な用量を有する。IFN−γの生物活性は、最初の投与後、好ましくは、少なくとも約14日間、より好ましくは少なくとも約200日間、最初の投与の時に示された生物活性から約20%以内に維持される。
【0065】
IFN−γはまた、持続放出調製物の形態で投与され得る。持続放出調製物の適切な例は、タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを包含し、このマトリックスは、成形物品の形態(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル)である。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langerら、J. Biomed. Mater. Res.,
15:167−277[1981]、および、Langer, Chem. Tech., 12:98−105[1982]に記載されているような、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidman Biopolymers,22:547−556[1983])、非分解性エチレン−酢酸ビニル(Langerら、前出)、Lupron DepotTMのような分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロイドから構成される注射可能なミクロスフィア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)を包含する。
【0066】
エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーは、100日間を超えて分子の放出を可能するが、ある種のヒドロゲルは、より短い期間の間、タンパク質を放出する。カプセル化タンパク質は、長期間体内に残存するとき、37℃で湿度にさらされる結果として、変性または凝集し得、生物学的活性の喪失、および免疫性のありうる変化をもたらす。合理的戦略は、関与するメカニズムに依存して、タンパク質の安定化に対して考案され得る。例えば、凝集メカニズムが、チオジスルフィド交換による分子間S−S結合形成であることが分かれば、安定化は、スルフヒドリル残基の改変、酸性溶液からの凍結乾燥、湿気含有量の調整、適切な添加剤の使用、および特異ポリマーマトリックス組成物の開発によって、達成され得る。
【0067】
持続放出IFN−γ組成物はまた、リポソームに取り込まれたIFN−γを包含する。IFN−γを含有するリポソームは、それ自体の方法によって調製される:DP 3,218,121; Epsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688−3692(1985); Hwangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030−4034(1980); EP 52,322; EP 36,676;EP 88,046; EP 143,949; EP 142,641;日本特許出願83−118008;米国特許第4,485,045号および第4,544,545号;およびEP 102,324。通常リポソームは、脂質含有量が約30mol%コレステロールを超える、小さな(約200−800オングストローム)単ラメラ型であり、選択された比率は、最適な治療のために調節される。
【0068】
治療に使用されるIFNγの有効量は、例えば、治療目的、投与経路、および患者の状態に依存する。従って、最適な治療効果を得るために要求されるように投与量の評価、および投与経路の改変が、治療専門家に必要とされる。慢性肉芽腫症患者を処置するためのIFN−γ(Actimmune(登録商標), Genentech, Inc.)の推奨される投与のための投与量は、体表面積が、0.5m2を超える患者に対して50mcg/m2(150万U/m2)であり、体表面積が0.5m2に等しいかまたはそれを超える患者に対して1.5mcg/kg/用量であり、これは一週間3回、皮下注射として投与される。これは、医師にとって、心臓肥大の処置のために最適有効用量を決定するために、価値のある指針である。医者は、心臓機能障害の処置のために所望の効果を達成する投与量に達するまで、IFN−γを投与する。例えば、目的が、うっ血性心不全の処置であるとき、その量は、この状態と関連した進行性心臓肥大を阻害する量である。この治療の進行は、心エコー図法によって容易にモニターされ得る。同様に、肥大性心筋症の患者では、IFN−γは、患者の利益の自覚的認識に依存して、経験に基づいて投与され得る。
【0069】
IFN−γは、心臓肥大の処置(予防を含む)に使用されるその他の治療剤と組み合わせて投与され得る。例えば、IFN−γ治療は、既知の心筋細胞肥大因子(例えば、α−アドレナリン作用性アゴニスト阻害剤(例えば、フェニレフリン;エドセリン−1;CT−1;LIF;アンギオテンシン転換酵素、およびアンギオテンシンII))の投与と組み合わせられ得る。心臓肥大因子の阻害剤(CHF、カルジオトロフィンまたはカルジオトロフィン−1、例えば、US 5,679,545を参照のこと)は、組み合わせ治療に特に好ましい。
【0070】
肥大性心筋症の処置において組み合わせ治療に好ましい候補物は、β−アドレナリン作用性遮断薬(例えば、プロプラノロール、チモロール、テルタトロール、カルテオロール、ナドロール、ベタキソロール、ペンブトロール、アセトブトロール、アテノロール、メトプロロール、カルベジロール)、ベラパミル、ジフェジピン、ジルチアゼムである。高血圧と関連した肥大の処置は、カルシウムチャンネル遮断薬(例えば、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、ニカルジピン);β−アドレナリン作用性遮断薬;利尿薬(例えば、コロチアジド(chorothiazide)、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethazide)、メチルクロチアジド(methylchlothiazide)、ベンズチアジド、ジクロルフェナミド、アセタゾルアミド、インダパミド;および/またはACE阻害剤(例えば、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル、ベナゼプリル、ホシノプリル、リジノプリルを使用する、降圧剤治療の使用が要求され得る。
【0071】
IFN−γと組み合わせて投与される治療剤の有効量は、医師または獣医師の判断に基づく。投与量の投与および調整は、処置される状態の最適管理を達成するようになされ、利尿薬またはジギタリスの使用、および高血圧症または低血圧症、腎障害などの状態を、理想的に考慮に入れる。さらに、この用量は、使用される治療薬剤の型、および処置される特定の患者のような因子に依存する。代表的には、用いられる量は、所定の治療薬剤が、IFN−γなしで使用投与されるときと同じ量である。
【実施例】
【0072】
(実施例)
(実施例1)
(IFN−γによる成体筋細胞のPGF2α誘導拡延応答の阻害)
(材料および方法)
(成体筋細胞培養物) 成体ラットからの心室筋細胞の単離のために使用される手順は、Piperら(前出)に記載され、そしてLaiら(前出)によって詳述された手順の改変であった。各筋細胞調製には、体重約250gの1匹の雄のSprague−Dawleyラットを、ペントバルビタールナトリウムで麻酔し、心臓を取り出した。外側組織を心臓から切り取り、それを、温度を37℃に調節したランゲンドルフ(Langendorff)システムにのせた。心臓を約40mlのクレブス緩衝液(110mM NaCl、2.6mM KCl、1.2mM KH2PO4、1.2mM MgSO4.7H2O、25mM NaHCO3、および11mM グルコース)にて還流した。次いで、クレブス緩衝液50ml中に30mgコラゲナーゼ、および12.5μlの100mM CaCl2を含有する溶液を、30分間心臓を通して再循環させた。その心臓をランゲンドルフ装置から取り出し、心房およひ結合組織を除去した。心室を、解剖ハサミで2mm立方体に切断し、そしてさらに新鮮なコラゲナーゼ溶液(12.5μlの100mM CaCl2を含むクレブス緩衝液に溶解した30mgコラゲナーゼおよび400mg BSA)中、37℃で5分間消化した。消化の間、その組織懸濁液を、1分間に一度緩やかに手で振とうした。消化後に、上清を取り出して保存し、そして残りの組織をさらに5分間、新鮮コラゲナーゼ溶液中でさらに消化した。
【0073】
単離された成体ラット筋細胞を、ラミニン被覆プレートに、密度3×103細胞/mlでプレートした。72時間適切に刺激した後に、その細胞をグルタールアルデヒドで固定し、そしてEosin Yで染色した。ロッド型細胞の画像を、蛍光顕微鏡下に捕捉し、その最大幅を、画像化ソフトウェア(Simple32、Compix Imaging,Mars,PA)を用いて決定した。
【0074】
(結果)
(IFN−γは、肥大因子PGF2αおよびフェニレフリンによって誘導される成体心筋細胞肥大の拡延を阻害する)
PGF2αおよびα−アドレナリン作動性アゴニストフェニレフリンは、培養新生仔ラット心筋細胞の肥大を誘導するこが示されている(Adamsら、J.Biol.Chem.271;1179−1186[1996];Laiら、Am.J.Physiol,(Heart Cric.Physiol.)271:H2197−H2208[1996];Meidellら、Am.J.Physiol.251:H1076−H1084[1986];Simpson,J.Clin.Invest.72:732−738[1983];Simpson,Cri.Res.56:884−894[1985])。培養においてこれらの因子にさらされたとき、成体ラット心室筋細胞は拡延した(Laiら、前出;Piperら、「Adult ventricular rat heart muscle cell」、Cell Culture Techniques in Heart and Vessel Research,H.M.Piper編、1990,Springer−Verlag:Berlin,36−60頁)。成体筋細胞は、ロッド型形態を有する。これらの細胞が、0.1μM PGF2αにさらされるときに、ロッド型細胞は平らになり、拡延する(図1)。拡延応答は、少なくとも200ロッド型細胞の最大細胞幅を測定し、集団中で細胞幅の出現率パーセントに対してこの値をプロットして定量された。PGF2αは、コントロール細胞に比較して、このパラメーターに対して、集団分布中のシフトにより明白になるような、最大細胞幅での有意な変化を導いた(P<0.001)。IFN−γによる細胞処理は、PGF2αに対する応答を、有意に阻害した(P<0.001 PGF2α+IFN−γ、PGF2αとの比較)。PGF2α誘導筋細胞拡延に対するIFN−γの阻害剤効果は、心筋細胞およびその他の細胞系での、IFN−γに対する生物学的応答に一致する濃度範囲にわたって用量依存的であった(図2)(Singhら、J.Biol.Chem.271:1111−1117[1996];Pinskyら、J.Clin.Invest.95:766−685[1995];Ungureanu−Longroisら、Circ.Res.77:494−502[1995];Soderberg−Naucleretら、J.Clin.Invest.100:3154−3163[1997];Gouら、J.Clin.Invest.100:829−838[1997];Marraら、Can.J.Cardiol.12:1259−1267[1996])。PGF2α誘導筋細胞拡延を阻害する能力は、IL−α、IL−1β、IL−2、IL−6、TNF−α、IFN−α、およびIFN−βを含む数種のその他のサイトカインは、拡延応答を阻害できなかったので、IFN−γに対して特異的であるようである。IFN−γの阻害効果は、PGF2αに対して特異的ではない。IFN−γはまた、フェニレフリンに誘導される拡延を阻害し得る(図3)。
【0075】
(実施例2)
(インビボにおける心臓肥大の阻害)
(材料および方法)
(動物) 全ての実験手順は、American Physiology Societyの指針基準に一致し、Genentch’s Institutional Animal Care and Use Committeeに認められた。研究に使用した動物は、雄Sprague/Dawley(SD)ラット(8週齢、Charles River Breeding Laboratories, Inc.)であった。動物は、実験の前、少なくとも一週間設備に順応させられ、自由にペレット化ラット食および水を与えられ、光および温度を調節された部屋に収容された。
【0076】
(フルプロステノールおよび/またはIFN−γの投与) ラットは、0.15mg/kgでフルプロステノール(Cayman Chemical,Ann Arbor,MI)、0.08mg/kgで組換えマウスIFN−γ(Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)、フルプロステノールおよびIFN−γの組み合わせ、または生理食塩水ビヒクルを、14日間、1日に2回皮下注射を受けた。IFN−γおよびフルプロステノール+IFN−γ群では、動物を、IFN−γで一日間、前処理した。処置の前および後に、体重を測定した。以前の研究は、ここで使用されたフルプロステノールの用量が、ラットで有意な心臓肥大を産生する、最も少ない用量であることを示した。Laiら、前出。予備研究は、上記の用量でのIFN−γが、ラットにおいて、体重にほとんど影響せずに、フルプロステノール誘導心臓肥大を阻害したことを実証した。
【0077】
(血液動力学評価) 処置の13日後に、ラットをケタミン80mg/kg(Aveco Co.,Inc.,Fort Dodge,lowa)、およびキシラジン10mg/kg(Rugby Laboratories,Inc., Rockville Center,NY.)の腹腔内注射により麻酔した。ヘパリン−生理食塩水溶液(50U/ml)を充填したカテーテル(PE 50融合PE−10)を、平均動脈血圧(MAP)および心拍数(HR)を測定するために、右大腿骨動脈を介して腹部大動脈へ移植した。カテーテルを取り出し、首の後ろに固定した。
【0078】
カテーテル挿入の一日後に、動脈カテーテルを、Grass Model 7ポリグラフ(Grass Instrumennts,Quincy,MA,USA)に連結された、Model CP10血圧変換機(Century Technology Company,Inglewood,CA,USA)に接続した。MAPおよびHRを、意識のある抑制されていないラットで同時に測定した。
【0079】
(器官重量の測定) ケタミン/キシラジン麻酔下で、心臓、腎臓、および脾臓を取り出し、解剖して重量を測定した。左心室を、遺伝子発現の評価のために、80℃で保存した。
【0080】
(血圧過負荷の動物モデル) ラットにおける腹部大動脈の部分結紮による血圧過負荷の誘導は、以前に記載されたようであった。Kimuraら、Am.J.Physiol.1989:256(Heart Circ.Physiol.25):H1006−H1−11;Batraら、J.Cardiovasc.Pharmacol.17(付録2)、S151−S153(1991)。簡単には、上記のように、ラットをケタミン/キシラジンで麻酔した。腹部壁に3cm中央線切開した。横隔膜と腎臓動脈との間の腹部大動脈を露出し、5−0絹縫合糸をループした。その縫合糸を、ゲージ23針の周りに結び、次いで、針を引き抜いた。シャム(sham)動物を、縫合糸を結びつけずに手術した。
【0081】
(血圧過負荷によるラットでの実験プロトコール) 大動脈結紮をなされたラットに、手術前一日、および手術後14日間、1日に二回IFN−γを0.08
mg/kg、無作為に皮下注射した。シャム動物は、処置しなかった。処置の13日後に、上記に示されているように麻酔して、カテーテルを右頚動脈に移植した。移植一日後に、動脈血圧およびHRを、意識のあるラットで測定した。心臓、および、肝臓、腎臓、および脾臓を含むその他の器官を取り出し、重量を測定し、病理学的研究用の10%緩衝化ホルマリンで固定した。何匹かの動物で、左心室を直ちに切り裂き、液体窒素で凍結し、遺伝子発現評価のために−80℃で保存した。
【0082】
(統計学的分析) 結果は、平均値±SEMで示されている。一次元分散分析(ANOVA)を、群間のパラメーターの差を評価するたに実施した。次に、有意差を、Newman−Keuls法を用いたpost hoc分析に供した;P<0.05は、有意であると考えられた。
【0083】
(RNA調製) 全RNAを、RNeasy Maxi Columns(Qiagen)を用いて、製造者の指示に従って単離した。
【0084】
(RT−PCR) リアルタイムRT−PCR(TaqMan)技術を、種々の処置群間での遺伝子発現を比較するために、使用した。蛍光レポーター染料、6−カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)を、3’末端に有するオリゴヌクレオチドプローブを、消化して、2つのPCRプライマーによって規定されたアンプリコン(amplicon)にハイブリダイズした。3’−ブロッキングリン酸は、プローブの伸長を阻む。レポーター染料は、PCR反応の伸長期に、Taqポリメラーゼの5’エクソヌクレアーゼ活性によって、プローブから放出される。得られた蛍光は、配列検出機によって反応チューブ中でモニターされ、さらなる操作なしに定量され、よって用語の「リアルタイム」である。レポーター蛍光が、ベースラインの標準偏差値の十倍を超える値に達するポイントとして定義される閾サイクル数(Ct)は、サンプルから産生されたアンプリコン量に比例する。蛍光は、増幅の対数期に検出されるので、反応成分のいずれも制限的ではない。各実験において、夾雑をモニターするために、RNA鋳型を欠くコントロールを分析し、そしてシグナル供給源としての可能な夾雑DNAの増幅を除くために、RT工程が削除された別のコントロールが包含される。反応は、最も強い蛍光シグナルおよび最も小さいCtを得るために、マグネシウムおよびプライマー濃度の滴定によって最適にされ、そして産物を、推定分子量での単一バンドの存在を確認するために、アガロースゲルで泳動する。さらに、アンプリコンの配列を、Genbankでスクリーニングして、密接に関連する遺伝子との重複可能性を排除した。
【0085】
各サンプルについて、各標的遺伝子に対するmRNAを、下記の標準曲線を用いて決定し、次いで、サンプル中のグリセルアルデヒド−3−フォスフェート−デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の量に標準化する(この計算の詳細は下記を参照のこと)。次に、GAPDHに対する各標的遺伝子の相対的豊富さは、処置群の間で比較され得る。
【0086】
RT−PCRを、TaqMan Model 7700 Sequence Detector(ABI−Perkin Elmer)を用いて、一反応あたり1ngの全RNAで実施した(Gibsonら、Genome Res.6,995−1001[1996])。増幅反応条件(50μl)は、1×TaqMan 緩衝液A、200μM dATP、dCTP、dGTP、および400μM dUTP、10%グリセロール、6.5mM MgCl2、50U MuLV逆転写酵素、20U RNase阻害剤、1.25U AmpliTaq Gold、100nMの順方向および逆方向プライマー、ならびに100nM蛍光性プローブである。RT−PCR試薬およびグリセロールを、それぞれPerkin ElmerおよびSigmaから購入した。反応は、MicoAmp Optical Tubes and Caps(ABI−Perkin Elmer)中で実施した。TaqManプライマーおよびプローブを、Perkin Elmerによって決定された指針に従って設計し、そしてPerkin Elmerから贈呈されたげっ歯類GAPDH以外は、Genentech,Inc.で合成した。逆転写を、48℃で30分間、その後95℃で10分間のAmpliTaq Goldの熱活性化を実施した。熱サイクルは、95℃で30秒間および60℃で1.5分間を40サイクルであった。
【0087】
TaqManの定量を、Heidら、Genome Res.6:986−994(1996)に記載されているように、それを改変して実施した。要するに、目的の各標的遺伝子についての標準曲線(1:5連続希釈)を2連で実施した。Ctを、全RNA濃度のlog(X軸)に対してY軸にプロットし、その線を表す式を決定する。各標的遺伝子のmRNAを、Ct(Y値)を取り入れて適切な標準曲線から決定し、そして入力mRNA(X)について解明する。次に、標的遺伝子の値を、以下の等式を解いてGAPDHに対して標準化した:10X1/10X2、ここで、X1は標的遺伝子であり、X2はGAPDHである。
【0088】
(結果)
(IFN−γはインビボにおいて心臓肥大を阻害する)
PGF2αのアゴニストアナログであるフルプロステノールの慢性投与は、インビボにおいて心臓肥大を誘導することが示され、心筋梗塞によって誘導された病理学的心臓肥大を有するラットは、その心筋に、慢性的に上昇されたレベルの抽出可能なPGF2αを有する(Laiら、前出)。従って、インビボにおいて心筋増殖に対するPGF2αの効果を阻害し得る因子は、心臓肥大を処置するのに有用であり得る。ラットに、IFN−γの存在または非存在下で、フルプロステノールを二週間投与し、心臓肥大に対する効果を決定した。心臓、心室、および左心室の絶対重量は、ビヒクルコントロールに比較して、フルプロステノール処置ラットにおいて増加する傾向があり、フルプロステノール処置ラットに比較して、フルプロステノール+IFN−γで処置されたラットで、これらのパラメーターに有意な減少が存在した(表1)。フルプロステノールによる処置は、心臓、心室、および左心室重量、の体重(BW)に対する比率の有意な増加をもたらし、このことは、フルプロステノールが、心臓肥大を誘導することを示した(図4)。IFN−γは、フルプロステノール誘導肥大症を阻害した。フルプロステノール+IFN−γを受けたラットは、BWにより標準化して、心臓、心室、および左心室の重量を、フルプロステノール群の動物に比較して有意に減少した(図4)。IFN−γとビヒクル処置群間との比較は、IFN−γ単独の投与は、絶対重量、およびBW標準化心臓、心室、または左心室重量を有意に変化しなかったことを示した(表1、図4)。
【0089】
フルプロステノールの慢性投与は、ビヒクル処置コントロールに比較して、平均動脈血圧(MAP)の有意な減少に関連していた(図5)。IFN−γは、ビヒクルに比較して、MAPに対する効果を有さず、フルプロステノール処置された動物のMAPに影響しなかった。4つの処置群において、心拍数での有意な変化が存在した(図5)。これらの結果は、IFN−γが、処置の血液動力学的効果を相殺ずることによって、フルプロステノールに誘導される肥大症を阻害しなかったことを示す。
【0090】
IFN−γは、フルプロステノール投与に関連する心臓質量の増加を阻害するばかりか、フルプロステノールにより誘導された肥大症に関連する心臓遺伝子発現の変化を阻害した(図6)。ビヒクルに比較して、フルプロステノール処置ラットの心臓での、α−骨格アクチン、コラーゲン1、およびナトリウム利尿因子に対するmRNAの豊富さの増加があった。筋小胞体カルシウムATPaseに対するmRNAは、これらのラットで有意に減少した。IFN−γは、動脈ナトリウム利尿因子応答以外のすべてを阻害した。
【0091】
IFN−γはまた、腹部大動脈結紮によって生じた血圧過負荷によって誘導される心臓肥大のげっ歯類モデルでもまた、テストされた。大動脈狭窄は、心臓、動脈、心室、および左心室の絶対重量、およびこれらの重量のBWに対する比率の実質的な増加によって証明されるように、心臓肥大をもたらした。IFN−γでの処置は、このモデルにおいて、心臓肥大を有意に弱めた(表2および図7および8)。
【0092】
その他の器官におけるIFN−γの効果もまた試験された(表2)。大動脈結紮もIFN−γ処置も、腎臓重量およびBWに対する腎臓重量の比率を変化させなかった。シャム操作動物に比較して、肝臓重量およびBWの比率は、ビヒクル処置の大動脈結紮ラットで減少する傾向があったが、IFN−γ処置ラットでは減少する傾向はなかった。大動脈狭窄は、絶対およびBW標準化脾臓重量を有意に上昇させ、これは、IFN−γ処置によって強調された。従って、心臓質量に対するIFN−γの効果は、器官重量に対する一般化された効果に起因しなかった。
【0093】
平均動脈血圧、収縮期血圧、および拡張期血圧は、シャム操作コントロールに比較して、大動脈狭窄を有するラットで顕著に高く、動脈血圧の漸増的な増加は、IFN−γまたはビヒクルで処置された結紮ラット間で差はなかった(図9)。この結果は、IFN−γを受けた結紮ラットで認められた心臓肥大の弱化は、後負担の変化に関連しなかったことを示す。
【0094】
大動脈狭窄は、心臓遺伝子発現に数種の変化をもたらした。β−ミオシン重鎖、α−平滑筋およびα−骨格アクチン、心房性ナトリウム利尿因子、コラーゲンIおよびIII、およびフィブロネクチンについてのmRNAの相対的豊富さは、シャム操作コントロールに比較して、結紮ラットにおいてすべて増加した。これらの遺伝子の2つ、α−平滑筋アクチンおよびコラーゲンIに対する効果は、IFN−γによって阻害された(表3)。
【0095】
まとめて、実施例1および2の結果は、IFN−γが、心臓肥大を阻害し得ることを示す。IFN−の効果は、肥大性刺激によって誘導される、心臓質量の増加の阻害に限定されず、IFN−γはまた、遺伝子発現のレベルで肥大心臓で生じる特定の分子の変化を阻害し得る。特に注目すべきは、IFN−γが、フルプロステノールによる慢性刺激に応答して、および血圧過負荷により誘導された肥大症モデルにおいての両方で、コラーゲンI遺伝子発現の誘導をインビボで阻害したことである。コラーゲンIは、心筋コラーゲンの約75%を占める(Juら、Can.J.Cardiol.12:1259−1267[1996])。心臓肥大をともなう、増加された細胞外マトリック蓄積および間質性線維症は、心不全の病理生理学に寄与し得る。コラーゲンI産生を阻害することによって、IFN−γは、心不全の状況で間質性線維症を減少し得る。
【0096】
【表1】

データは、平均値±SEMで表されている。動物数は、ビヒクル、Flup、Flup+IFN、およびIFNの群で、それぞれ、14、14、14、および9である。ビヒクル、生理食塩水;Flup、フルプロステノール;IFN、インターフェロンγ;BWO、体重の基底レベル;BW、処置後の体重;ΔBW、BW−BWO;HW、心臓重量;VW、心室重量;LVW、左心室重量;KW、腎臓重量;SW、脾臓重量である。*p<0.05、**p<0.01、ビヒクル群との比較、#p<0.05、##p<0.01、Flup群との比較である。
【0097】
【表2】

データは、平均値±SEMで表されている。動物数は、シャム、PO+ビヒクル、およびPO+IFNの群で、全てのパラメータについて、それぞれ、16、22、および21であり、但し、HRについては、動物数は、それぞれ、7、8、および7である。PO、血圧過負荷;IFN、インターフェロンγ;BWO、体重の基底レベル;BW、処置後の体重;ΔBW、BW−BWO;AW、動脈重量;KW、腎臓重量;LW、肝臓重量;SW、脾臓重量、HR、心拍数である。*p<0.05、**p<0.01、シャム群との比較、#p<0.05、##p<0.01、PO+ビヒクル群との比較である。
【0098】
【表3】

POは、血圧過負荷を示す;IFN、インターフェロイン−γ;ANF、心房性ナトリウム利尿因子;βMHC、β−ミオシン重鎖;SKA、α−骨格アクチン;SMA、α−平滑筋アクチン;COLI、コラーゲンI;COLIII、コラーゲンIII;FIB、フィブロネクチンである。発現レベルは、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼに対する比率として計算する。1群あたりn=6である。値は、平均値±SEMである。†P<0.05対シャム+ビヒクル群である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。

【図6】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−256375(P2009−256375A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181954(P2009−181954)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【分割の表示】特願2000−542031(P2000−542031)の分割
【原出願日】平成11年3月19日(1999.3.19)
【出願人】(500210947)ジェネンテック, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】