説明

志賀毒素のBフラグメント及び治療向けペプチドを含むキメラポリペプチド

【課題】細胞内移送の欠損に起因する疾病を処置するため、又は分子、ポリペプチド又は有利なエピトープの膜提示を増大又は誘発するための組成物の提供。
【解決手段】式B−X(式中、Bは、志賀毒素のBフラグメント又はその機能的等価物を表し、Xは、単数又は複数のポリペプチドを表し、該ポリペプチドは、Bによって媒介される逆行性輸送と適合性であり、Xのプロセッシング又は正しいアドレッシングを確実にし、該細胞が、該細胞上に該エピトープを抗原性提示する)のキメラポリペプチドを用いる免疫系の細胞上でのエピトープの抗原性提示のための組成物。エピトープとしては、ウイルス抗原、寄生虫抗原、細菌抗原、ガン細胞タンパク質、発ガン遺伝子又は発ガン性ウイルスタンパク質に由来するものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質又はポリペプチドの細胞内輸送、及びある種のエピトープの膜提示のための手段とその利用を目的としている。
【0002】
逆行性輸送は、場合によってゴルジ体を通り、小胞体(RE)に向かって細胞膜の分子を導くこととして定義づけることができる。このメカニズムは、そのカルボキシ末端にテトラペプチドKDEL(又は酵母においてはHDEL)を保持する小胞体の一定クラスのタンパク質について、実証されてきた。生化学的証拠と同時に形態学的証拠も、これらのタンパク質が、小胞体から退出しゴルジ体に到達し、そこでその炭水化物連鎖内で修飾を受け、その後再び小胞体に向かって導かれるということを表している。テトラペプチドKDELは、ペプチド又はそれが付着しているタンパク質を小胞体内で捕捉することを可能にする保持シグナルであり、この捕捉は、Lewis M. J. et alがNature, 348 (6297): 162: 3,1990年11月8日号の中で記述したこのモチーフKDELのレセプタであるタンパク質に対する相互作用によって行われる。
【0003】
細胞内逆行性輸送の存在についてのその他の証拠が、小胞体内を通過した後真核細胞の細胞質ゾルの中に入るある種の細菌毒素の研究からもたらされている(Pelham et al. (1992) Trends cell. Biol., 2: 183-185)。特に研究された一例は、志賀赤痢菌の志賀毒素ならびに、E. coliの志賀タイプの毒素のものである。これらの毒素は、2つのポリペプチド鎖からなり、そのうちの1つ(Aフラグメント)は、毒性フラグメントでリボソームRNA 28Sに対する作用によってタンパク質合成を阻害するデアデニラーゼ活性を有し、一方もう1つのサブユニット(Bフラグメント)は、その標的上への毒素の結合を可能にする(O’Brian et al (1992), Curr. Top. Microbiol. Immunol. 180: 65-94)。電子顕微鏡での研究は、細胞A431,Vero, 特に Daudi細胞のRE内で志賀毒素を検出できることを示した(Sandvig et al. 1992及び1994: KHINE, 1994)。そのうえ、ゴルジ体構造の消失を誘発する真菌代謝物(ブレフェルジンA)による細胞の処理は、細胞を志賀毒素から防御し、かくしてそれらがREに達する前にゴルジ体を通過することを示唆する。Kim et al (1996)は、ついに、毒素のBフラグメントがゴルジ体内に局在化していることを確認した。
【0004】
逆行性輸送、特にRE内での志賀毒素のBフラグメントの輸送に関する知識の現状は、以下の参考文献中に示されている:Sandvig et al (1992) Nature 358: 510-512; Sandvig et al (1994) J. Cell. Biol 126: 53-64; Kim et al, (1996)J. Cell. Biol 134: 1387-1399。
【0005】
細胞内輸送は、異なる細胞区画間の交換全体として定義される。
【0006】
本出願の著者は、BフラグメントがREに向かってのみならず、造血系統の細胞の核、特に樹状細胞及びマクロファージ内にもルーティングされていることを観察した。
【0007】
著者らは、以下で記すようなフラグメントB−gly−KDELの2マイクロモルが存在する中で3時間インキュベートし次に固定したこれらの細胞が、核内でも又更にはこれらの細胞の核小体内でも、毒素に対する特異的抗体との反応性を呈することを示した(結果は非公表)。このことは前記フラグメントの細胞内輸送の存在を充分に表している。
【0008】
本発明は、志賀毒素のBフラグメント(Bフラグメント)の細胞内輸送についての観察の結果もたらされたものであり、
− このフラグメント又はそのあらゆる機能的等価物に結合された治療向けのペプチド又はポリペプチド、又は
− その発現が求められている配列を有するポリヌクレオチド配列、
を含むキメラポリペプチド配列を構築するためそのルーティング特性を利用する。Bフラグメントとポリヌクレオチド配列の間の結合は、当業者にとって既知のあらゆる技術によって、特にAllinquant B et alがJournal of Cell Biology, 1288 (5): 919-27, (1995)で記述した技術により実現される。
【0009】
DNA分子又はその他の分子のBフラグメントに対する共有結合以外に、結合は強い非共有相互作用を介しても実現され得る。そのため、一例を挙げると、BフラグメントのcDNAは、記述された方法に従って、ストレプトアビジンのもの又はアビジンの他のあらゆる誘導体と融合される。(Johannes et al.(1987)J. Biol. Chem., 272: 19554-19561)。
【0010】
融合の結果得られたタンパク質(B−ストレプトアビジン)は、ビオチニル化プライマを用いてPCRにより得られたビオチニル化DNA又はその他のあらゆるビオチニル化物質との反応に付すことができる。結果として得た複合体は、標的細胞に結合され、細胞内Bフラグメントとして輸送されなくてはならない。
【0011】
もう1つのカップリング方法に従うと、Bフラグメントの部位特異的ビオチニル化段階が利用される。このためには、BフラグメントのcDNAを、酵素BirAの認識部位についてコードするcDNAと融合させる(Boer et al. (1995) J. Bacterial. 177: 2572-2575: Saou et al. (1996) Gene, 169: 59-64)。In vitroでのビオチニル化の後、Bフラグメントは、ストレプトアビジン又はアビジンのその他のあらゆる4価誘導体を介して、ビオチニル化されたその他の分子(例えばcDNA、上記参照)に結合させられる。
【0012】
機能的等価物というのは、突然変異、欠失又は付加によりBフラグメントから誘導され、Bフラグメントと同じルーチング特性を呈するあらゆる配列のことである。
【0013】
広義には、機能的等価物は、Bフラグメントについて記述されたものと同じ逆行性輸送更には、核に至るまでの細胞内輸送の特性を呈するあらゆるフラグメントで構成されていてよい。一例としては、Proceeings of the National Academy of Science of the United States of America, 84 (13): 4364-8, 1987年7月に記述されているベロ毒素のBフラグメント、又はEuropean Journal of Biochemistry, 148 (2): 265-70 (1995)中で Lamb F. I. et alが記述したリシンのBフラグメントを挙げることができる。これらのフラグメントの特殊な輸送特性の記述の後、当事者は、任意の細胞区画内の任意の配列のルーティングベクターとして最高の候補となるはずのフラグメントを選択することができるだろう。
【0014】
かくして、本出願は、志賀毒素のBフラグメント又は、志賀毒素のBフラグメントを模倣するポリペプチドを含めたBフラグメントのものと比較可能な活性、特にこれに類似した輸送経路特性をもつ細菌毒素の他のあらゆるサブユニットを網羅している。これらのポリペプチドそして一般的にはこれらの機能的等価物は、ランダム(random)ペプチド配列及びレセプタGb3又はこのレセプタの可溶性類似体の間の相互作用の検出の原理を共通して有するスクリーニング方法(Screening methods)によって同定することができる。一例としては、Gb3を有する又はGBb3の可溶性放射性類似体へのハイブリダイゼーション後のアフィニティカラム上での選択のためのランダムペプチド配列を発現するファージライブラリ(phagelibrary)の利用を実施することができる。糖脂質Gb3は、志賀毒素の細胞レセプタとして同定された(Lingwood (1993), Adv. Lipid Res., 25: 189-211)。Gb3は、毒素に対し感受性をもつ細胞により発現され、毒素の吸蔵は、Gb3との相互作用を介して可能となるだろう。本出願の発明人は、レセプタGb3の発現が阻害されたHeLa細胞の中では(図1)A)、内在化されたBフラグメントはゴルジ体内で輸送されず細胞質内の胞状構造のレベルに蓄積されるということを示した。対照細胞内では、Bフラグメントはゴルジ体レベルに輸送される(図1)B)。
【0015】
レセプタGb3の不在下ではBフラグメントが生合成系又は分泌系に向かってもはや搬送されないとするこの仮定は、生化学実験によって確認されている(図2)。
【0016】
発明人は、レセプタGb3の合成阻害物質の存在下で、内在化されたBフラグメントの最高50%までのPPNP(+PPNP)がTCA可溶性物質の形で分解され、このことはエンドソーム又はリソソーム区画といった後の分解区画に向かっての輸送活性と合致しているということを示した。レセプタGb3の合成が阻害されない場合(−PPNP)、はるかに低い割合の内在化Bフラグメントが可溶性TCAとなる。したがって、特定の区画内のBフラグメントのアドレッシングにはレセプタGb3の存在が必要であり、このことは、Bフラグメントの活性の優勢面がそのレセプタGb3に対する結合であろうという事実を弁護することになるという結論を下すことができる。
【0017】
本発明は、
− Bが N. G. Seidah et al (1986) J. Biol. Chem. 261: 13928-31及びStrockbine et al (1988) J. Bact. 170: 1116-22にその配列が記述されている志賀毒素又はその機能的等価物又はベロ毒素又はリシン(ricin)(上記参考文献)といった毒素のBフラグメントを表し、
− Xが、逆行性又は細胞内輸送との相容性の限界を上限とする合計長をもつ単数又は複数のポリペプチドを表すものとして、
B−X
という構造式を満たす、単数又は複数のポリペプチドXが、カルボキシ末端に結合されている志賀毒素のBフラグメント又はその機能的等価物を少なくとも含む、キメラポリペプチドを目的とする。
【0018】
本発明は同様に、Bが上述のものと同じ意味をもちX’は、その発現が求められているペプチド配列X、特に抗原エピトープをコードするヌクレオチド配列を表すものとして、B−X’という構造をもつキメラ分子にも関する。
【0019】
本発明のキメラ分子は更に以下のものを有する可能性がある。
a) 約20個のアミノ酸で構成されたNグリコシル化部位、リン酸化部位又は場合によって分子の成熟に必要なあらゆる配列といったような修飾部位。
b) REの常在性タンパク質のカルボキシ末端に結合された時点でゴルジ体内の通過によりタンパク質の成熟後の保持をひき起こすKDELテトラペプチドタイプの保持シグナル(Lys−Asp−Glu−Leu)。タンパク質成熟における保持シグナルの役目についての総括が、M. J. Lewis et al, (1992) Cell, 68: 353-64内で提案されている。
【0020】
より一般的には、キメラポリペプチド配列は以下のものを含む可能性がある:
− 適合された細胞系内でのタンパク質の成熟に必要なすべての配列:
− キメラ分子による一定の与えられた細胞型の認識に必要で、かくしてその細胞の細胞質内での作用及び浸透の選択性を可能にするあらゆる配列。
【0021】
キメラB−X又はB−X’構造配列すべての共通点は、それらがBフラグメント又はその機能的等価物を含有するという点である。
【0022】
本発明のキメラ分子は、RE内の配列X又はX’の発現産物のルーティングを可能にする。XがBフラグメントに結合している場合、逆行性輸送は同様にゴルジ体、そして恐らくはエンドソームを通過する。そのうえ、ある種の条件下では、本発明の分子は、キメラポリペプチド配列内に含まれているある種のエピトープの膜提示をもたらす成熟を受けることができる。
【0023】
成熟というのは、一定の与えられたポリペプチドから、それ自体細胞質を含めた細胞区画内で提示され得るペプチドの出現をもたらすあらゆるプロセスのことである。成熟は、小胞体内の酵素切断によってか又は、ポリペプチドが分割を受けその後かくして得られたペプチドが改めて小胞体内に輸送される細胞質内の輸送によって実施され得る。
【0024】
クラスIの主要組織適合複合体(CMHcl1)の分子は、このような分割の後有利なポリペプチドX又はX’の負荷を受け細胞膜上に提示され得る。
【0025】
本発明のキメラ分子が、その等価物のBフラグメントと、発現が求められている配列を含む発現ベクター又はポリヌクレオチド分子とのカップリングで構成されている場合、かくして合成されたポリペプチドは、核内での転写及びその後の細胞質内での翻訳の後、ポリペプチドキメラ配列について上述したものと同じ分割、成熟及び細胞内輸送の段階を受けることができるだろう。
【0026】
本発明に従ったキメラポリペプチド分子は、免疫反応の発達に適した抗原提示に関して生物学的プロセスに近いメカニズムにより免疫療法向けの治療用組成物内の有効成分を構成することができる。フラグメントXは、このとき、細胞の表面でその膜提示が求められている単数又は複数のエピトープを表す。フラグメントXのサイズは、関係するキメラ分子の細胞内移送能力によってのみ制限される。
【0027】
このアプローチは、抗感染又は抗ガン免疫療法のためと同様、ある種の自己免疫疾患における抗原様物質を構成するためにも考慮することができる。
【0028】
CMHcl1により提示されるあらゆるタイプの抗原が、本発明の構築物の一部をなす単純又はキメラエピトープを選択するための1つの優れた候補である。一例として以下のものを挙げることができる:
a) 黒色腫細胞タンパク質から誘導されたヒトエピトープ:
− チロシナーゼ由来のBAGE(Boel, P. et al (1995),Immunity 2, 167-75);
− gp75由来のGAGE(Van den Eynde, B et al (1995), J. Exp. Med. 182. 689-98);
− チロシナーゼ(Brichard V. et al (1993), J. Exp. Med. 178, 489-95);
− Melan A/MART−1由来のp15(Coulie P.G. et al (1994). J. Exp. Med. 180, 35-42; Kawakami Y. et al. (1994), J. Exp. Med. 180, 347-52);
− βカテニン由来のMAGE−1及び−3(De Plaen E. et al (1994). Immunogenetics 40. 369-9; Traversan C et al (1992). J. Exp. Med. 176, 1453-7)。
b) ガンの発生に関与するウイルスタンパク質から誘導されたヒトエピトープ
− HPV16のタンパク質E6及びE7から誘導されたペプチド(Feltkamp M.C, et al (1993), Eur. J. lmmunol. 23, 2242-9; Davis H.L. et al (1995), Hum Gene Ther 6, 1447-56);
− HBVのタンパク質から誘導されたペプチド(Rehermann B. et al (1995). J. Exp. Med. 181, 1047-58);
− EBVのタンパク質から誘導されたペプチド(Murray R.J. et al (1992), J. Exp. Med. 176. 157-68);
− サイトメガロウイルスから誘導されたペプチド
c) 発ガン遺伝子から誘導されたヒトエピトープ;
− p21 ras (Peace D. J. (1993), J. Immumnother 14, 110-4; Ciernik, I.F. et al (1995) Hybridoma 14, 139-42);
− p53(Gnjatic S.(1995), Eur. J. Immunol. 25, 1638-42)。
d) 自己免疫疾患のための利点を呈するエピトープ
これらのエピトープは、Immunol. Today 15,155-60内にChiez R.M. et al (1994)により記述されているものの中から選ぶことができる。
e) 感染症の状態下で利点を呈するエピトープ
かかるエピトープの一例としては、Furukawa K. et al (1994)により、J. Clin. Invest, 94, 1830-9の中で記述されているものを挙げることができる。
【0029】
本発明の構成体においては、X又はX’の発現産物は同様に、いかなる原因によってであれ混乱を受けた細胞内輸送の機能を正常に戻すことを可能にするポリペプチド配列を表すこともできる。一例を挙げると、生物学的分子は、この分子の成熟又は移送を遮断する作用をもつ1つの配列の突然変異、欠失又は付加による修飾の結果RE内に捕捉され得る。これは例えば、カルネキシンといった分子シャペロンへのその結合がその塩析を妨げるか又は遅延させ、かくして、細胞内移送を妨げるような形で修飾される突然変異体CFTR(△F508)の場合に言えることである。この突然変異は、膵腺維症の原因である、突然変異を受けていない複製を小胞体の中に導入することにより、カルネキシンとの相互作用部位から糖タンパク質CFTR(△F508)のNグリコシル化鎖を移動させることができ、その結果として、原形質膜に至るまでのタンパク質の輸送及び肺の上皮細胞の正常な機能が新たに可能となると思われる。
【0030】
本発明は同様に、核酸特にその構造及び異なる変形形態が以上で定義されているキメラタンパク質についてコードするヌクレオチド配列を含むDNA又はcDNAの構成体にも関する。より特定的に言うと、本発明は、上述の構成体の担体でありそれらを細菌培養内で発現する可能性のあるプラスミド又は発現ベクターにも関する。一例を挙げると、発現ベクターは、G. F. Su et al, (1992) Infect, Immun., 60: 3345-59内に記述されているプラスミドpSU108であり得る。
【0031】
より特定的に言うと、本発明は、以下のものを含む構成体に関する:
− Bフラグメントについてコードする配列、
− その発現が求められている単数又は複数のポリペプチドについてコードする配列。
これは、細胞表面でのその膜発現が求められているエピトープであり得る。同様にこれは、ゴルジ体内でのタンパク質の保持を可能にするポリペプチドであってもよい。最後にこれは、混乱を受けた細胞内輸送機能を正常に戻すことを可能にするポリペプチドであってもよい。
【0032】
該構成体は更に、その存在が本発明の分子により処理される予定の細胞における正しい細胞内輸送を可能にするポリペプチドについてコードするあらゆる核酸配列を含んでいてよい。すなわち特に以下のものが考えられる:
− Nグリコシル化シグナルについてコードする配列、
− 保持シグナルKDELについてコードする配列。
【0033】
本発明のポリヌクレオチド構成体は、1つのプロモータ、好ましくは、それがトランスフェクションを受けた細菌の中で正確な発現の割合を可能にする強いプロモータの制御下にある。
【0034】
本発明は同様に、これらの構成体を含み、本発明のキメラポリペプチド又はタンパク質を産生することのできる細菌をもその目的としている。
【0035】
本発明の分子によって処置された宿主細胞も同様に本発明の一部をなす。これらはあらゆる細胞型、特に以下のものであり得る:
− 樹状細胞、マイクロファージ又はBリンパ球といった細胞免疫の触発において活性な免疫系の細胞のように、ex vivoで処置され得る細胞;
− 遺伝子欠損又は代謝混乱によって変化を受けた機能の正常化において利用可能である上皮細胞のような、in situで処置され得る細胞:
− ガン細胞。
【0036】
一般的に言って、本発明のキメラ分子は、動物の細胞内で外因性分子を組込み発現させるために通常用いられるウイルス又はレトロウイルスベクターに関連する問題から解放された新しい治療方法にアプローチすることを可能にする。本発明の分子からもたらされる治療方法は、ex vivoで、又はキメラポリペプチド配列の定位型の直接利用によってか、あるいは又エアゾルのような従来の粘膜処置方法によって、患者の細胞を直接処置することからなる。
【0037】
本発明は、特定のポリペプチドが標的細胞の膜のレベルで発現されている治療用組成物の製造における、本発明のポリペプチドについてコードするポリヌクレオチド配列又はキメラポリペプチドの利用に関する。これらのポリペプチドは有利にも、免疫系の細胞、特に樹状細胞、マイクロファージ又はBリンパ球の表面でその時提示される、求められている免疫反応の発生の対象であるエピトープである。志賀毒素のBフラグメントは、抗原提示細胞のプログラミングを可能にするエピトープベクターとして作用する。
【0038】
本発明は、生体内での望ましくない抗原の存在により細胞免疫を増大させることからなる免疫療法に関するものであり、この方法は、樹状細胞及びマクロファージのような細胞免疫のキー細胞により特定のエピトープを発現させることからなる。本発明に従った処置方法は、標的細胞内での制限の後、有利なエピトープでCMHclI又はclIIの分子を負荷することにより細胞性及び体液性免疫を触発することを目的としている。こうして、その除去が求められている抗原に対抗した細胞毒性T細胞の活性化がもたらされる。
【0039】
本発明の構成体のおかげで提示されるエピトープは、ウイルス、寄生虫又は細菌性抗原又は、ガン細胞又は感染細胞がそうであり得るように、その除去が求められているあらゆる細胞、細胞小器官又は微生物に由来する。エピトープは同様に、自己免疫疾患において外来性抗原として認識される「自己」の分子が本発明のエピトープにより置換され、かくして免疫反応の緩和又は低減をもたらすことを可能にするデコイでもあり得る。
【0040】
これらのエピトープの例は、キメラポリペプチド配列の記述に際し上記で引用している。
【0041】
本発明は同様に、治療用組成物の製造における本発明のキメラ分子の利用において、発現が望まれている特定のポリペプチドが、RE内でのその捕捉及び発現欠損をもたらすような変性された構造をもつタンパク質の細胞内移行の正常化を可能にする利用にも関する。これは、グリコシル化、硫酸化、折畳み(folding)などを含む細胞内成熟を受ける膜発現タンパク質の場合に言えることである。
【0042】
特別な例は、カルネキシンといった分子シャペロンに対するその付着がタンパク質の修飾によって修正されている突然変異体CFTR(△F508)の例である。これは、膵腺維症の原因である分子の捕捉をもたらし、これは特に膵臓及び肺のレベルでの外分泌の全体的不足といった形で現われる。
【0043】
本発明は、タンパク質の分泌障害を原因とする病気の治療処置方法に関する。本発明は、キメラポリペプチドを直接投与するか又は、欠損した細胞機能の正常化を可能にすることになるペプチド又はポリペプチドについてコードする外因性配列を支持するプラスミドの形で遺伝子情報を患者の細胞内に投与することからなる。
【0044】
この正常化は、ポリペプチドXによる欠損機能の補足、又は細胞機構に特異的なレセプタ又は分子との結合のための、突然変異を受けたタンパク質と外因性配列から合成されたポリペプチドの間の競争の結果としてもたらされ得る。特定の一例としては、膵腺維症の原因である上述の突然変異体を、その分子シャペロンを用いたタンパク質CFTRの付着部位についてコードする配列の担体であるベクターの投与、又はキメラポリペプチドの直接的投与によって処置することがある。
【0045】
本発明の構成は、健康な人間又は動物の共同体に対し、細胞内移送の欠損に起因する疾病を処置するため、又は分子、ポリペプチド又は有利なエピトープの膜提示を増大又は誘発するための新しい治療方法を提供している。
【0046】
本発明のその他の特性は、以下の例及び図と照らし合わせて明らかになることだろう。
【0047】
1.− 組換え型キメラポリヌクレオチドの構築及び対応するポリペプチドの産生
【0048】
I−1) プラスミドの構築
選択されたエピトープXは、黒色腫を患う患者のガン細胞内に存在するエピトープMAGEであった。利用されたプラスミドは、Su et al., 1992, Infeet. Immun. 60: 33-45, 3359の中で記述されているプラスミドpSU108であった。
【0049】
利用されるPCRプライマーは以下のとおりであった:
5’−ACTAGCTCTGAAAAGGATGAACTTTGAGAATTCTGACTCAGAATAGCTC−3’
5’−CTTTTCAGAGCTAGTAGAATTAGGATGATAGCGGCCGCTACGAAAAATAACTTCGC−3’
【0050】
これらのプライマーは、プラスミドSU108の制限部位SphI及びSalIのレベルでクローニングされたフラグメントを産生するべく、ベクターShiga Atp E(5’)の特異的プライマー、
5’−CACTACTACGTTTTAAC−3’
5’−CGGCGCAACTATCGG−3’
と共に利用した。
【0051】
硫酸塩1:((5’リン酸化;5’−GGCCGCCATCCTAATTCTACTTCT−3’)及び硫酸塩2(5’−CTCAGAAGTAGAATTAGGATGGC−3’)又は硫酸塩3(5’−GAGTCTGAAAAAGATGAACTTTGATGAG−3’)オリゴヌクレオチドで構成された、配列KDEL及びグリコシル化部位を含むアダプターフラグメントを、16℃で一晩結合させた。
【0052】
結果として得られたフラグメントを、B−Glyc−KDELをコードするcDNAを含むpSU108 Notl及びEcoRIの制限部位においてクローニングした。
【0053】
I−2) タンパク質の精製
組換え型フラグメントの精製は同様に、先に引用したSu et al. 1991の中で記述された技術に従って行った。簡単に言うと、pSU108から得られた組換え型発現プラスミドを含むE. coliの細胞を一晩30℃で培養させた。次に培養を、50℃でアンピシリン50mg/mlを追加したLBで5倍に希釈した。42℃で4時間インキュベートした後、細胞を10mMのトリス/HCl中で徹底的に洗浄し、10分間、10mMのトリス/HCl,pH8;25%のスクロース、1mMのEDTA中でインキュベートし、最後に、PMSF1mMを含む水と氷の混合物及びプロテアーゼ阻害物質混合物(ロイペプチン、キモスタチン、ペプスタチン、アンテパイン及びアプロチニン)の中で急速に再懸濁させた。最後の段階は、周辺質の破断をもたらす。清澄の後、上清をQFF(Pharmacia)カラム上に投入し、pH7.5のトリス/HCl 20mlの中でNaClの線形勾配により溶離させた。構成に応じて、Bフラグメントを120mM〜400mMの間で溶出した。Bフラグメントを含有する分画を次に20mMのトリス/HCl,pH7.5に対し透析させ、monoQ(Pharmacia)カラム上に再投入し、前述の場合と同じ要領で溶出した。ポリアクリルアミド−SDSでの電気泳動ゲルにより純度95%と見積られた、結果として得られたタンパク質を、その後利用するまで−80℃で貯蔵した。
【0054】
I−3) in vitroでのCTL応答の誘発
予め立証されたプロトコル(Romani et al., (1994)に従って、樹状細胞(CD)を培養に付した。簡単に言うと、PBMCをIscove培地中で再懸濁し、6ウエル付きのケース内で37℃で2時間インキュベートした。付着しなかった細胞をとり出し、残った細胞をGM−CSF(800U/ml)及びIL−4(500U/ml)の存在下で37℃でインキュベートした。5日間の培養の後、それぞれ50U/ml及び150U/mlの濃度のIL−1α及びIFN−γを添加し、24時間30℃でインキュベーションを続行した。樹状細胞はその後、膜エピトープの提示に対する細胞の能力を改善するべく、3μg/mlのヒトβ2ミクログロブリンの存在下でかつMAGEエピトープにカップリングされた増大する濃度のBフラグメントの存在下で、Iscove培地内で再懸濁した。この混合物を4時間30℃でインキュベートした。このエピトープに結合したBフラグメントを内在化させたCDに5000radの放射線を照射し、遠心分離によりまとめ、再懸濁し、リンパ球CD8+(PBMCから調製したもの)と混合した。抗原でパルス処理したこれらのCD及びCD8+を次に5ng/mlのIL−7の存在下で同時培養する。
【0055】
10日後、応答性あるリンパ球CD8-を、それ自体同様にこの同じエピトープに結合した増大する濃度のBフラグメントの存在下でインキュベートした、調製したばかりの照射済みCDにより再度刺激した。CD及び応答性リンパ球CD8+の同時培養を、それぞれ10U/ml及び5ng/mlのIL−2及びIL−7の存在下で続行する。この再刺激プロトコルを3回くり返す。
【0056】
CTL応答の誘発を測定するため、上述のように予備刺激した応答性リンパ球CD8+をガン細胞又はウイルス感染細胞の存在下でインキュベートした。選択されたエピトープを発現するこれらの細胞をNa251CrO4で標識し、応答性CD8-と5時間接触させた(Bakker et al. 1994)。その後、培地中に遊離した放射能を測定し、これにより予備刺激された応答性リンパ球CD8+の細胞毒性活性を数量化することができた。
【0057】
結果
II−MAGEI抗原の担体である志賀毒素のBフラグメントによりパルス処理された樹状及びPena−EBV細胞によるこの抗原の提示
II−1) エピトープMAGE−1の担体であるBフラグメントの細胞内輸送の形態学的研究
我々は、小胞体(RE)への該タンパク質の細胞内経路指定を保存しながら、志賀毒素のフラグメントのカルボキシ末端においてペプチド配列を融合させることが可能であることを示した。この実証は、Bフラグメント、N−グリコシル化部位及び保持シグナルKDELを含むキメラポリペプチドを構築することによって実施された。対照として、ペプチドKDELの不活性バージョンである保持シグナルKDELGLを利用した。Misendock et Rothman, 1995, J. Cell. Biol.129: 309-319。形態学及び生化学研究により、修飾されたBフラグメントが、プラスミド膜からエンドソーム及びゴルジ体を介して小胞体に向かって輸送されることが示された。この輸送は、BFA(真菌代謝物ブレフェルジンA)により阻害され、ノコダゾル(微小管脱重合剤)により減少させられた。
【0058】
これらの実験は、明らかに、小胞体への融合タンパク質の細胞内経路指定が保存されていることを示している。in vitroでの抗腫瘍ワクチン接腫のためのエピトープベクターとしてのBフラグメントの潜在性を評価するため、上述の実験条件下でB−Glyc−KDELに対しエピトープMAGE−1を再度添加した。新しいタンパク質は、B−MAGE−Glyc−KDELと命名された。共焦顕微鏡によりその細胞内輸送を追従できるように、タンパク質B−MAGE−Glyc−KDELは、蛍光体DTAFと結合させた。このタンパク質は、その内在化の後、ゴルジ体のレベルならびにHeLa細胞、Pena−EBV細胞(エプスタイン−バ−ウイルスを用いて不死身化されたBリンパ球の系統)のREのレベルで検出可能である。これらの結果は、そのカルボキシ末端(前述)で修飾されたBフラグメントの細胞内輸送に関する当初の観察を確認し、造血細胞系統のある種の提示細胞がBフラグメントを内在化させREに至るまでタンパク質を輸送する能力をもつことを明言できるようにしている。
【0059】
我々はここで、タンパク質 B−MAGE−Glyc−KDELのNグリコシル化を測定することによりこれらの研究を明確に示そうと思う。Nグリコシル化は、REのレベルで特異的に行われる修飾であり、我々は先に、Nグリコシル化のための認識部位をもつBフラグメントは、それがREまで輸送された場合に実際にグリコシル化される、ということを示した。
【0060】
II−2) タンパク質 B−MAGE−Glyc−KDELによりパルス処理された樹状及びPena−EBV細胞による、MAGE−1抗原の提示の研究
エピトープベクタとして作用するフラグメントの能力を評価するため、我々は、ハプロタイプHLA−A1の提示細胞のクラスIのCMHに結合したエピトープMAGE−1を特異的に認識する細胞毒性Tリンパ球(CTL82/30)のクローンを用いた。これらのCTLは、タンパク質B−MAGE−Glyc−KDELでパルス処理した樹状又はPena−EBV細胞の存在下に保たれた。エピトープMAGE−1が提示細胞により提示される場合、CTLは活性化され、インタフェロンγ(IFNγ)を分泌することになり、その後これを定量した。
【0061】
分泌されたINFγの量は、提示細胞によるCTLの刺激の大きさに比例した。
【0062】
提示細胞(Pena−EBV及び樹状細胞)のうち、丸底マイクロウエル1つあたり2万個の細胞を、PBS−パラグロムアルデヒド4%で1時間固定するか又は固定しなかった。これらを次にOpti MEMで2回洗浄してから、タンパク質B−MAGE−Glyc−KDELの希釈液と15時間インキュベートした。タンパク質を、まず最終濃度10μMから始めて、Opti MEM培地(無血清培地)の中で5倍ずつ希釈した、4つの希釈液でテストした。15時間後、平板を低速の遠心分離により2回洗浄した。CTL(CTL82/30)を100μlの培地(ID−HS−AAG+25U/mlのIL2)の中で、1ウエルあたり5000CTLの割合でCTL(CTL82/30)を再度添加した。陽性対照として、系統G43(MAGE−1の発現プラスミドによるトランスフェクションを受けたBリンパ球系統)の存在下にCTL82/30を保った。24時間のインキュベーションの後、上清を回収して、産生されたIFNγの量を定量した。
【0063】
得られた結果は、表1に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
結果は、各々の条件下で産生されたIFNγ単位(平均±標準偏差;n=3)により表されている。
【0066】
タンパク質B−MAGE−Glyc−KDELでパルス処理されたPena−EBV細胞及び樹状細胞が、たとえ低いタンパク質濃度であってもCTLにより充分に認識されるということが確認できた。これに対して予め固定されたPena−EBV細胞及び樹状細胞は認識されなかった。したがって、タンパク質B−MAGE−Glyc−KDELのエンドサイト−シス及びプロセシングがあったと思われる。これらの心強い結果は、ここでin vitroワクチン接腫実験により裏打ちされた。
【0067】
III−マウスにおけるin vivo抗腫瘍及び/又は抗ウイルス活性試験
マウスの樹状細胞を調製し、抗腫瘍活性をテストするためにはタンパク質P21 RAS、P53又はEP2/NER、又抗ウイルス活性をテストするためにはHBV、EBV又はHPVから誘導された抗原を用いて標識づけした。樹状細胞のこの調製は、上記1−4)に示したプロトコルに従って行った。
【0068】
これらの樹状細胞はその後マウスに導入された。
【0069】
抗ウイルス又は抗腫瘍効果は、このように移植されたこれらのマウスをその後この抗原を発現する腫瘍細胞又はウイルスにより処置することによって観察された。
【0070】
結論
かくして、本発明のポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列は、有利にも、前記ウイルス又は前記ガン細胞の特定のウイルスが組換えヌクレオチド配列内に組込まれかくしてクラス1のCMHにより制限され免疫系の細胞の膜表面で発現され得るキメラポリペプチドの合成をもたらすことになった時点で、ある種のガン又はある種のウイルス性の、又は細菌性の感染を処置することを目的とする薬学組成物の有効成分を構成することができる。
【0071】
IV−志賀毒素のBフラグメントを用いる、突然変異を受けたタンパク質CFTR(△F508)の細胞内輸送の正常化
CFTR(嚢胞性腺維症膜貫通レギュレータ)タンパク質は、原形質膜の塩素チャネルである。膵腺維症を患う患者の大部分において、CFTR遺伝子は突然変異を有している。最も頻繁に観られる突然変異(△F508)は、CFTRタンパク質の細胞内経路設定に影響を与える。実際、そのイオンチャネル活性に関して機能的である突然変異タンパク質CFTR(△F508)は、原形質膜に至るまで搬送される代わりに、小胞体レベルで遮断された状態でとどまっている。我々は、志賀毒素のBフラグメントを用いて小胞体の中に、カルネキシンタンパク質(RE内「シャペロン」)との相互作用ドメインとなるものとして知られているCFTRタンパク質の1ドメインを導入した。このドメインは、Bフラグメントのカルボキシ末端に融合されることになる。我々は、このキメラタンパク質が、カルネキシンとの相互作用部位から糖タンパク質CFTR(△F508)のN−グリコシル化連鎖を移動させることを可能にし、その結果タンパク質CFTR(△F508)がもはや小胞体内に保持されず原形質膜まで輸送されそのとき正常に機能し得るようになるということをテストした。
【0072】
最初、我々は、BフラグメントとCFTRタンパク質から誘導された相互作用ドメインからなるキメラタンパク質を構築した。小胞体内でのその保持力を増大させるべく、このタンパク質のカルボキシ末端に再循環シグナル(ペプチドKDEL)を添加した。まず第1に、新しいタンパク質が同様に標的細胞の小胞体の中に輸送されていることを確認した。CFTR(△F508)の可動化について、CFTR(△508)のcDNAによるトランスフェクションを受けた細胞LLCPK1の安定した系統の細胞の中で研究した。この系統はM. A. Costa de Beauregard女史とM. D. Louvard (Institut Curie Paris, CNRS UMR144)によって樹立された。これらの細胞内で発現されたタンパク質CFTR(△F508)には更にエピトープ標識が具備された。したがって、原形質膜内部にタンパク質CFTR(△F508)が到着したことを免疫螢光法により検出することが可能である。処置が無い場合、この系統の細胞LLCPK1の原形質膜には、その内部にCFTR(△F508)に特異的な標識付けが備わっていない。これらのパイロット実験の結果が有望なものであるならば、我々は、膵腺維症の治療という観点でこのアプローチを発展させることに尽力するであろう。
【0073】
結論
上述の実験は、XがCFTRタンパク質とカルネキシンの間の相互作用ドメインで構成されている合成ポリペプチドが、有利にも、膵腺維症を処置することを目的とする治療用組成物の有効成分を構成し得るということを示している。実際、突然変異体に存在する突然変異を受けた相互作用ドメインとカルネキシンとの相互作用のための合成ポリペプチドのフラグメントの間の競合は、突然変異を受けたタンパク質の気管支レベルでの分泌を正常に戻すことを可能にする。
【0074】
抗原提示試験
抗原提示細胞(CMSP、B−EBV細胞、T細胞、樹状細胞)を、ウエルあたりの細胞数を105個にした、96ウエルのマイクロプレート内でインキュベートして、Iscove培地100μlの中に溶解させた抗原を用いて、4時間又は15時間37℃で初回免疫(pulsed)した。インキュベーションの終りで、培地を除去し、IL2を25U/ml含有するCTLの培地100μl中で各ウエルに20000個のCTL細胞を添加した。24時間後、50μlの上清を収集し、ELISA試験(Diaclone)によりγインターフェロンを測定した。いくつかの実験においては、細胞を大気温で10分間1%のパラホルムアルデヒドで固定し、マイクロプレート内への移送の前に徹底的に洗浄した。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】レセプターGb3の発現が阻害された Hela細胞。内在化されたBフラグメントはゴルジ体に向かって輸送されず、小胞構造内に蓄積される。
【図1B】Bフラグメントがゴルジ体に向かって輸送されている、対照のHela細胞。
【図2】Bフラグメントの輸送障害を示す生化学試験
【図3】末梢血の単球細胞(CMSP又はPBMC)に対する志賀融合タンパク質B−Mage1の制限されたクラスのCMHの提示:KDEL配列の役割。CMSP(5×104)は、夜の間にペプチドMage1(1μM)か又はMart1(1μM)又は、活性(B−Mage1−Glyc−KDEL)又は不活性(B−Mage1−Glyc−KDELGL)の小胞体に向かう再循環配列を伴う志賀融合タンパク質B−Mage1(1μM)を用いて初回免疫された。洗浄の後、エピトープMageI(クローン82/30)に対し特異的な2×104の細胞毒性T細胞を、24時間初回免疫されたCMSP細胞を用いてインキュベートした。その後、上清を収集し、γインターフェロンの産生についてこれをテストした。
【図4】異なる型の抗原提示細胞による志賀融合タンパク質B−Mage1の制限されたクラスIのCMHの提示。図3の場合と同様に、志賀可溶性融合タンパク質B−Mage1を用いて、Bリンパ芽球細胞
【表2】


、樹状細胞(+)又はクローナルT細胞(□)を初回免疫した。ペプチドMage1の提示を82/30CTL系統でテストした。
【図5】Bリンパ芽球細胞系統による志賀融合タンパク質B−Mage1の制限されたクラスIのCMH提示の特異性分析。リンパ芽球B系統の細胞BM21(HLA−A1)又はBV1(HLA−A2)を、夜の間、培地単独か、又は合成ペプチドMage1又はMart1(1μM)、又は志賀融合タンパク質B−Mage1(1μM)、又は融合タンパク質Antp-Mage1又は野生型志賀毒素のBフラグメントで初回免疫した。洗浄後、Mage1CTL82/30(A)又はMart1CTL LB373(B)の特異的細胞を、初回免疫されたB−EBV細胞を用いて24時間インキュベートした。次に上清を収集し、γインタフェロンの産生についてこれをテストした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式B−X(式中、Bは、志賀毒素のBフラグメント又はその機能的等価物を表し、Xは、単数又は複数のポリペプチドを表し、該ポリペプチドは、Bによって媒介される逆行性輸送と適合性であり、Xのプロセッシング又は正しいアドレッシングを確実にし、該細胞が、該細胞上に該エピトープを抗原性提示することを特徴とする)のキメラポリペプチドを用いる免疫系の細胞上でのエピトープの抗原性提示のための組成物。
【請求項2】
該細胞が、樹状細胞又はマクロファージである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
エピトープが、ウイルス抗原、寄生虫抗原、細菌抗原、ガン細胞タンパク質、発ガン遺伝子又は発ガン性ウイルスタンパク質に由来する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
式B−X(式中、Bは、志賀毒素のBフラグメント又はその機能的等価物を表し、Xは、細胞内輸送を正常に戻すことができる、単数又は複数のポリペプチドを表し、該単数又は複数のポリペプチドが、Bによって媒介される逆行性輸送と適合性でありXのプロセッシング又は正しいアドレッシングを確実にすることを特徴とする)のキメラポリペプチドを用いるそのシャペロン分子への付着の部位で突然変異したタンパク質の細胞内輸送を正常に戻すための組成物。
【請求項5】
突然変異タンパク質が、嚢胞性腺維症に関与するCFTRタンパク質である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
式B−X(式中、Bは、志賀毒素のBフラグメント又はその機能的等価物を表し、Xは、単数又は複数のポリペプチドを表し、該ポリペプチドは、Bによって媒介される逆行性輸送と適合性であり、Xのプロセッシング又は正しいアドレッシングを確実にし、該細胞が、該細胞上に該エピトープを抗原性提示する)のキメラポリペプチドを含む免疫系の細胞上でのエピトープの抗原性提示のための医薬組成物。
【請求項7】
式B−X(式中、Bは、志賀毒素のBフラグメント又はその機能的等価物を表し、Xは、細胞内輸送を正常に戻すことができる、単数又は複数のポリペプチドを表し、該単数又は複数のポリペプチドは、Bによって媒介される逆行性輸送と適合性であり、Xのプロセッシング又は正しいアドレッシングを確実にすることを特徴とする)のキメラポリペプチドを含む、そのシャペロン分子への付着の部位で突然変異したタンパク質の細胞内輸送を正常に戻すための医薬組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−180216(P2010−180216A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41730(P2010−41730)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【分割の表示】特願2000−503103(P2000−503103)の分割
【原出願日】平成10年7月17日(1998.7.17)
【出願人】(500026533)アンスティテュ・キュリ (20)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT CURIE
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】