説明

応答スイッチ及び該応答スイッチを保持する機器

【課題】長時間、手で保持し易い構造でありながら、眼科機器本体などの機器への保持が、機器本体に何ら突起物を形成すること無く行うことが可能な、応答スイッチ及び該応答スイッチを保持する機器を提供する。
【解決手段】被支持体に設けられたローラキャッチ機構11に片持ち梁状に形成された支持ブラケット1cを挿入係合させることで、自身を被支持体に保持させることが出来るように構成された応答スイッチ1であって、該応答スイッチ1は、先端に押下自在な押しボタンスイッチ1bが設けられた筒状の本体1aを有し、本体1aの外周部は、本体1aを手指にて把持可能な指把持部1eを形成しており、指把持部1eの中間位置には、支持ブラケット1cが、外方に突出する形で形成されており、支持ブラケット1cの先端部には、支持ブラケットの厚さが厚くなったストッパ部1dが、支持ブラケットの幅方向に膨出形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科機器などに使用され、被検者の応答を検知するための応答スイッチに係わり、機器の本体から着脱自在に設けられた応答スイッチ及び、該応答スイッチを保持する機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視野計などの眼科機器においては、特許文献1及び2に示すように、被検者の応答を検知するための応答スイッチが設けられている。しかし、検査時間が長くなると、応答スイッチを手で保持しているのがつらくなり、誤って落としてしまうことも多い。こうした問題を解決するために、特許文献3及び4に示すように、応答スイッチに指を引っかけるようなフックや指を通す保持部などを設けて、長時間、手で保持し易くする提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−54804
【特許文献2】特開2000−300516
【特許文献3】特開2000−325412
【特許文献4】特開2004−303728
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、こうした構成では、例えば、図5に示すように、未使用時にこの応答スイッチをどのようにしておくかが考慮されていなかった。一般的に、特許文献3にあるようなフック付き応答スイッチの場合には、眼科機器のどこかに、フックを引っかかるようなものを備えておくことが考えられる。また、逆に特許文献4の場合には、眼科機器本体にフックを設けて、応答スイッチの指を通す部分をそのフックに引っかけて保持する構造が考えられる。しかし、いずれの場合にも、本体に何らかの構造体が必要となり、それが突起物となって、被検者が誤って手や、顔面をその突起物に引っかけたりする危険性が懸念される。
【0005】
そこで、本発明は、長時間、手で保持し易い構造でありながら、眼科機器本体などの機器への保持が、機器本体に何ら突起物を形成すること無く行うことが可能な、応答スイッチ及び該応答スイッチを保持する機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述する課題を解決するための最初の観点は、被支持体(2)に設けられたローラキャッチ機構(11)に片持ち梁状に形成された支持ブラケット(1c)を挿入係合させることで、自身を前記被支持体(2)に保持させることが出来るように構成された応答スイッチ(1)であって、該応答スイッチ(1)は、
先端に押下自在な押しボタンスイッチ(1b)が設けられた筒状の本体(1a)を有し、
該本体(1a)の外周部は、該本体(1a)を手指にて把持可能な指把持部(1e)を形成しており、
前記指把持部(1e)の中間位置には、前記支持ブラケット(1c)が、外方に突出する形で形成されており、
前記支持ブラケット(1c)の先端部には、該支持ブラケットの厚さ(T)が厚くなったストッパ部(1d)が、該支持ブラケットの幅(W)方向に膨出形成されている、
点である。
【0007】
また、上述する課題を解決するための二つ目の観点は、応答スイッチ(1)を保持する機器(2)であって、
前記機器(2)は、全体が箱状に形成された本体(3)を有しており、
該本体(3)の表面にスリット(10)を、前記支持ブラケット(1c)を挿抜自在に設け、
前記スリット(10)の前記本体(3)内部に、前記ローラキャッチ機構(11)を前記支持ブラケット(1c)を該ブラケットの厚さ(T)方向両側から狭圧保持自在に設けて、
構成した点である。
【0008】
また、上述する課題を解決するための三つ目の観点は、前記機器(2)は、眼科機器である点である。
【0009】
また、上述する課題を解決するための四つ目の観点は、前記機器は、視野計(2)であり、
該視野計(2)は、本体(3)を有し、
該本体(3)の前面(3a)に、被検者の顔面が配置されるあご載せ(5)及びひたい当て(6)を設け、
前記あご載せ(5)及びひたい当て(6)前方の前記本体(3)の内部に、視野測定用の視野ドーム(7)を設け、
前記前面(3a)の側方部に、前記スリット(10)が形成されている、
点である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、手指にて把持可能な指把持部(1e)の中間位置に、支持ブラケット(1c)が、外方に突出する形で形成されているので、応答スイッチ(1)を被支持体(2)に支持するための支持ブラケット(1c)を、被検者が該応答スイッチ(1)を保持する際には、隣接する被検者の指の間に挟み込まれる形で保持させることができる。
【0011】
すると、応答スイッチ(1)は、本体(1a)が被検者の手のひらの中で、本体(1a)の軸心(CT)方向に平行な矢印E,F方向に滑り動くことがないように保持されるばかりか、ストッパ部(1d)がストッパ部(1d)上下に配置された被検者の指の外周部と当接して手中で応答スイッチ(1)が回転することを阻止するように作用する。これにより、長時間の測定動作で応答スイッチ(1)を保持する手が汗ばんだり、また疲労などで応答スイッチ(1)を保持する保持力が多少小さくなったとしても、応答スイッチ(1)は、被検者の手の中に確実に保持され、測定中に応答スイッチ(1)を誤って落としたり、押しボタンスイッチ(1b)を押し損なってしまう等の不測の事態を効果的に回避することが出来る。
【0012】
また、視野計(2)のように、本体(3)の前面(3a)に、被検者の顔面が配置されるあご載せ(5)及びひたい当て(6)が配置される構造の眼科機器において、機器前面(3a)の側方部に、スリット(10)を介して応答スイッチ(1)を保持するようにすると、応答スイッチ(1)を保持するためのローラキャッチ機構(11)を本体内部に配置することが出来、応答スイッチ(1)を保持ための突起物が機器前面(3a)に配置されることが無くなり、安全性が向上する。
【0013】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の応答スイッチの一例が適用される、視野計の一例を示す斜視図。
【図2】図2は、図1の視野計において、応答スイッチを取り外した状態を示す斜視図。
【図3】図3は、本発明の応答スイッチの一例を示す斜視図。
【図4】図4は、図3の応答スイッチを視野計本体に保持させた状態を示す部分断面図。
【図5】図5は、従来の視野計において、応答スイッチが取り外された状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0016】
視野計2は、図1に示すように、全体が箱状に形成された本体3を有しており、本体3の前面3aには、あご載せ5及びひたい当て6が設けられている。本体3の、図1右側には、応答スイッチ1が着脱自在に設けられており、更に、あご載せ5及びひたい当て6の前方、即ち図1紙面の奥方の本体3の内部には、視標が提示される半球状の視野ドーム7が設けられている。視野ドーム7は、本体3に内蔵された公知の視標提示装置により視野測定用の視標(図示せず)が視野ドーム7内の任意の位置に視標を投影自在に構成されている。
【0017】
本体3には、応答スイッチ1が、接続コード9を介して接続されており、応答スイッチ1は、図3に示すように、ほぼ円筒状に形成された本体1aを有している。本体1aの筒状に形成された外周部は、手の親指以外の、人差し指、中指、薬指、小指等の手指により把持可能に形成された指把持部1eを形成している。本体1aの図3上端部には、押しボタンスイッチ1bが設けられており、押しボタンスイッチ1bを被検者の親指が押下することで、応答スイッチ1から所定の信号が接続コード9を介して本体3へ出力される。本体1aの指把持部1eの中間部よりやや押しボタンスイッチ1b側には、幅Wで片持ち梁状に形成された支持ブラケット1cが指把持部1eから外方向に突出する形で設けられており、支持ブラケット1cの先端部には、支持ブラケット1cの厚さTがやや厚くなって全体が支持ブラケット1cの幅方向に円柱状に膨出形成されたストッパ部1dが形成されている。支持ブラケット1cの本体1aから外方への突出長さは、大人の指の平均的な太さよりもやや大きく形成されており、大人の被検者が応答スイッチ1を把持した場合、例えば人差し指と中指が、先端のストッパ部1dをそれらの指の間から僅かに外方に突出させるような形で挟むことが出来るように形成されている。
【0018】
なお、この支持ブラケット1cの指把持部1eにおける位置は、必ずしも、指把持部1eの中央部よりやや押しボタンスイッチ1b側にある必要はなく、指把持部1eの中央部、又は中央部よりやや接続コード9側に配置し、中指と薬指との間又は、薬指と小指の間で支持ブラケット1cを挟む形としても良い。即ち、筒状の指把持部1eの図3上下両端部以外の、中間部に、親指以外の手指でそのブラケット1c部分を両側から挟みうる位置に形成されていればよい。
【0019】
一方、視野計2の本体3の表面である前面3aの図2右側の部分には、長方形状のスリット10が設けられており、スリット10は、図4に示すように、応答スイッチ1の支持ブラケット1cが挿抜自在な形で形成されている。本体3のスリット10の図4右方の本体3内部には、ローラキャッチ機構11が設けられており、ローラキャッチ機構11は、全体がC字形に形成された板バネ11aを有している。板バネ11aの両先端には1対のローラ11b、11bが互いに対向する形で回転自在に装着されており、1対のローラ11b、11bは、板バネ11aの弾性により所定の接触圧力で互いに当接する形で設けられている。
【0020】
視野計2は、以上のような構成を有するので、視野計2で被検者の被検眼の視野を測定する場合には、被検者に対して、図1に示すあご載せ5にあごを載せ、更に、ひたい部分をひたい当て6に押圧接触させて、被検者の前眼部の被検眼を、所定の視野測定位置、即ち、視野ドーム7のほぼ中心に配置させるようにする。この状態で、図示しないキーボードなどの操作部を介して視野計2に対して被検眼の視野測定を公知の手法で開始するが、この際、被検者は、視野計2の本体3の前面3aの図1右側のスリット10に保持された応答スイッチ1を右手で保持するようにする。
【0021】
応答スイッチ1は、図4に示すように、本体1aの支持ブラケット1cが、ローラキャッチ機構11の、1対のローラ11b、11b間にその厚さ方向両側からバネ11aの弾性により狭圧保持される形で係合している。また、応答スイッチ1の未使用状態では、支持ブラケット1cの先端の膨出したストッパ部1dが、1対のローラ11b、11bよりも図4右方に突出した状態となっており、これにより、応答スイッチ1は、多少矢印A方向、即ち引き抜き方向に引っ張られたとしても、ストッパ部1dが1対のローラ11b、11bを板バネ11aの弾性に抗して矢印D方向に移動させる程の力が作用しない限り、ローラキャッチ機構11により保持されるので、確実に支持される。
【0022】
応答スイッチ1を、被検者が保持する際には、被検者は自分の手で応答スイッチ1の本体1aを掴んで、その本体1aを矢印A方向に、所定の力以上の力で引っ張る。すると、当該引っ張り力により本体1aのストッパ部1dが矢印A方向に、1対のローラ11b、11bを板バネ11aの弾性に抗して矢印D方向に移動させつつ移動し、その結果ストッパ部1dがスリット10から抜け出して、被検者の手の中に保持される。その状態で、検査者は、被検者に対して応答スイッチ1の本体1aを、例えば人差し指と中指、又は中指と薬指との間に支持ブラケット1cが、先端のストッパ部1dをそれらの指の間から僅かに外方に突出させるような形で挟み込む形で保持するように指示する。
【0023】
すると、応答スイッチ1の本体1aは、被検者の指の間で支持ブラケット1cが隣接する被検者の指の間に挟み込まれる形で保持され、本体1aが被検者の手のひらの中で、本体1aの軸心CT方向に平行な矢印E,F方向に滑り動くことがないように確実に保持される。また、支持ブラケット1c先端の膨出したストッパ部1dが、被検者の指の間から僅かに外方に突出するような形で保持されるので、応答スイッチ1の本体1aが本体軸心CTを中心に矢印G,H方向に回転しようとしても、ストッパ部1dがストッパ部1d上下に配置された被検者の指の外周部と当接してそれ以上の矢印G,H方向の回動を阻止するように作用するので、応答スイッチ1の本体1aは、軸心CT周りの回動も適切に阻止される。
【0024】
このように、被検眼19が応答スイッチ1の本体1aを握るだけで、ストッパ部1dが設けられた支持ブラケット1cの、軸心CT方向の移動や、軸心CT周りの回転が適切に阻止されるので、長時間の測定動作で応答スイッチ1を保持する手が汗ばんだり、また疲労などで応答スイッチ1を保持する保持力が多少小さくなったとしても、応答スイッチ1は、被検者の手の中に確実に保持され、測定中に応答スイッチ1を誤って落としたり、押しボタンスイッチ1bを押し損なってしまう等の不測の事態を効果的に回避することが出来る。
【0025】
こうして、被検者に応答スイッチ1を保持させた状態で、視野ドーム7中に適宜な視標を表示させ、被検者が当該視標を認識した場合には、被検者に応答スイッチ1の押しボタンスイッチ1bを押下させ、認識しなかった場合には、被検者に応答スイッチ1の押しボタンスイッチ1bを押下させないようにして、被検者の被検眼の視野の測定を行ってゆく。なお、この測定中は、被検者は顔面をあご載せ5にのせ、ひたいをひたい当て6に押しつけた状態、即ち、視野計2の本体3の前面3aに顔面を極めて近接させた状態となっている。従って、被検者が不用意に応答スイッチ1を保持した手を移動させたり、顔面を左右に移動させたりした場合には、本体3の前面3aに何らかの突起物が有った場合には、手や顔面を当該突起物に引っかけたりする危険性があるので、本体3の前面3aには何らの突起物も配置しないよう構成する必要がある。
【0026】
この点、応答スイッチ1を本体3の前面3aで保持するローラキャッチ機構11は、スリット10を介して前面3aの図2後方の本体内部に収納されているので、ローラキャッチ機構11が、本体3の前面3a上に突出して突起物となることはなく、安全である。
【0027】
こうして、測定を行って、測定が終了すると、検査者は被検者に対して、顔面を本体3から離すと共に、応答スイッチ1を前面3aのローラキャッチ機構11に戻すように促す。応答スイッチ1をローラキャッチ機構11に戻す場合には、図4に示すように、応答スイッチ1の本体1aの支持ブラケット1cを、前面3aのスリット10に、矢印B方向に挿入する。すると、支持ブラケット1cの先端の膨出したストッパ部1dが、1対のローラ11b、11b間に入り込み、ローラ11b、11bを矢印D方向に板バネ11aの弾性に抗する形で移動させる。ストッパ部1dが1対のローラ11b、11bの間を、図4矢印B方向に移動し、ローラ11b、11bの図中右方に突き出ると、1対のローラ11b、11bは、支持ブラケット1cのストッパ部1dより厚さが薄い中間部分を図中上下方向から狭圧保持する形となり、応答スイッチ1の本体1aは、ローラキャッチ機構11により本体3の前面3aに保持される。
【0028】
なお、既に述べたが、応答スイッチ1の本体1aを矢印A方向に引き出すには、1対のローラ11b、11bを板バネ11aの弾性に抗して矢印D方向に移動させるだけの引き抜き力を本体1aに作用させる必要があるので、通常の場合、応答スイッチ1は本体3の前面に確実に保持される。
【符号の説明】
【0029】
1……応答スイッチ
1a……本体
1b……押しボタンスイッチ
1c……支持ブラケット
1d……ストッパ部
1e……指把持部
2……被支持体、機器(視野計)
3……本体
10……スリット
11……ローラキャッチ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持体に設けられたローラキャッチ機構に片持ち梁状に形成された支持ブラケットを挿入係合させることで、自身を前記被支持体に保持させることが出来るように構成された応答スイッチであって、該応答スイッチは、
先端に押下自在な押しボタンスイッチが設けられた筒状の本体を有し、
該本体の外周部は、該本体を手指にて把持可能な指把持部を形成しており、
前記指把持部の中間位置には、前記支持ブラケットが、外方に突出する形で形成されており、
前記支持ブラケットの先端部には、該支持ブラケットの厚さが厚くなったストッパ部が、該支持ブラケットの幅方向に膨出形成されている、
ことを特徴とする応答スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の応答スイッチを保持する機器であって、
前記機器は、全体が箱状に形成された本体を有しており、
該本体の表面にスリットを、前記支持ブラケットを挿抜自在に設け、
前記スリットの前記本体内部に、前記ローラキャッチ機構を前記支持ブラケットを該ブラケットの厚さ方向両側から強圧保持自在に設けて、
構成した前記応答スイッチを保持する機器。
【請求項3】
前記機器は、眼科機器である、請求項2記載の機器。
【請求項4】
前記機器は、視野計であり、
該視野計は、本体を有し、
該本体の前面に、被検者の顔面が配置されるあご載せ及びひたい当てを設け、
前記あご載せ及びひたい当て前方の前記本体の内部に、視野測定用の視野ドームを設け、
前記前面の側方部に、前記スリットが形成されている、
ことを特徴とする、請求項3記載の機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179277(P2012−179277A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44818(P2011−44818)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】