説明

応答業務取次システム

【課題】 企業等では、顧客からの電話を、オペレータを配したコールセンターで一括して受け付け、担当の支社、営業所等に転送して取り次ぐことが一般的である。しかし、転送後において、顧客は会員番号や氏名、問い合わせの内容等を繰り返し説明しなければならず、顧客に不快感を与えていた。また、企業等においても業務が重複することで、無駄が生じていた。
【解決手段】 あらかじめ問い合わせや契約申し込みが継続している顧客のデータに属性を持たせ、自動音声受付において応答する間に属性を判定し、顧客の担当者に電話着信および顧客情報を通知することで、顧客の担当者が取り次いだ時点で、対応に十分な情報を取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
企業のコールセンター等において、自動音声応答により受け付けた顧客からの電話着信を解析して、担当者への電話着信情報の通知と電話の転送を行うことで、適切に応答業務を取り次ぐ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
企業のコールセンター等では、自動音声応答装置(IVR)の導入を図り、顧客からの電話による問合せに対し、あらかじめ登録した自動応答音声の案内で問合せ事項に該当する番号の入力を受け付け、その入力結果に基づいてオペレータを選択して転送を行う電話応答の取次方法が用いられている。
【0003】
また、多くの支店・営業所を有する企業等では、顧客からの電話による問合せをコールセンターで一括して受け付け、その後、適切な支店・営業所に電話転送を行う電話応答の取次方法が用いられている。
【0004】
そのため、顧客からの電話による問合せを自動音声応答で受け付けて、問合せの内容を判別して担当する支店の電話に転送を行うと共に、顧客のデータを担当する支店の端末に送信する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平11−155020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、企業のコールセンター等においては、顧客からの電話による問合せを自動音声応答により受け付けて、内容に応じたオペレータを選択して顧客に応答することとしている。また、支店・営業所への電話の取り次ぎは、コールセンターで受け付けた後に行われている。
【0006】
しかし、適切な支店・営業所へ電話を転送したとしても、顧客は音声自動応答の際に入力した内容や、すでにオペレータに説明した内容についても、再度、説明をする必要があり、煩わしさを感じるだけでなく、企業側の業務も重複することとなり、無駄が生じていた。
【0007】
また、支店・営業所を全国に展開しているような場合には、一つのコールセンターの管理下には納まらないという現状がある。
【0008】
なお、特開平11−155020号公報では、自動音声応答により適切な支店を判定して電話転送を行うが、自動音声応答で顧客が入力した内容、または、オペレータの音声による応答で顧客が説明した内容の、すべてを転送先の支店に取り次ぐものではないので、課題の解決とはならない。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、自動音声応答により受け付けた顧客からの電話着信を、顧客の属性から担当者に応答業務を取り次ぐと判定した場合に、顧客の情報と自動音声応答により受け付けた内容を支店・営業所の顧客担当端末に通知し、その後に電話の転送を行うことで、迅速で確実な応答業務の取り次ぎを可能とするとともに、コールセンターの機能の一部を支店・営業所に分散させることで、一時的に逼迫するコールセンターの対応能力を補完することを可能とする応答業務取次システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の応答業務取次システムは、顧客が備える通信機器からの電話着信を、通信制御機能を備えるサーバ装置を用いて自動音声で応答する応答業務取次システムであって、あらかじめ保持する自動音声データによる応答で、顧客の通信機器から顧客識別情報を取得する識別情報取得手段と、前記顧客識別情報と関連付けて、顧客の担当のデータを保存する顧客担当データ保存手段と、前記顧客識別情報に基づき、前記顧客担当データ保存手段により保存されたデータから、顧客の担当を特定する顧客担当特定手段と、顧客からの電話着信の履歴と、前記顧客識別情報と、あらかじめ保持する顧客のデータに基づき、顧客からの着信を通知するための着信通知データを生成して、専用ネットワークを介して、前記顧客の担当が備える端末に送信する着信通知手段と、顧客からの電話を、公衆ネットワークを介して、前記顧客の担当が備える通信機器に転送する電話転送手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、「電話」とは一般の通信回線を用いた通信方式に限らず、IP電話、インターネット電話等の通話機能を有する各種の方式を包含するものである。また、「通信制御機能を有するサーバ装置」とは、企業のコールセンター等で採用されるCTIシステム等を利用したシステムを意味し、「自動音声で応答」についてはIVRシステム装置等の自動音声応答装置を設置することで実現される。
【0012】
なお、「顧客識別情報」とは、会員番号やパスワード、電話番号等の顧客を識別可能な情報のことである。「顧客の担当」とは、顧客からの問い合わせや契約申し込み等を受け付ける担当であって、支店・営業所等の事業所である場合と、個人の担当者である場合がある。
【0013】
また、顧客識別情報と関連付けて顧客の担当のデータを保存するとは、顧客識別情報で特定される顧客のデータに、顧客の担当である事業所または担当者のデータを含み、事業所または担当者のデータからは、事業所または担当者の電話番号や端末のIPアドレス、後述の休業日、営業時間等の情報を容易に参照できるよう、体系的に保存が行われることを意味する。
【0014】
さらに、「顧客の担当が備える端末」は、通信制御機能を備える必要はなく、専用ネットワークにより接続されたコンピュータ等の端末であればよい。「顧客の担当が備える通信機器」は、公衆通信回線等の公衆ネットワーク(企業等における内線も含む)に繋がる一般の電話機であればよい。
【0015】
また、本発明の応答業務取次システムは、前記生成される着信通知データの一部または全部は、前記サーバ装置が備える音声合成機能により生成された音声データであることを特徴とする。
【0016】
すなわち、本システムのCTIサーバと自動音声応答装置16との連携により、顧客から電話着信があった旨と、顧客の会員番号や氏名等と、自動音声応答で取得した問合せ内容等を、合成音声機能を用いて音声データとして生成し、顧客の担当が備える端末に送信する。
【0017】
さらに、本発明の応答業務取次システムは、前記識別情報取得手段により取得した顧客識別情報に基づき、あらかじめ保持する顧客のデータから、顧客が所定の属性データを備えるか否かを判定する属性判定手段を備え、所定の属性データを備える顧客であると判定された場合に、前記電話転送手段が実行されることを特徴とする。
【0018】
ここで、「所定の属性データを備える顧客」とは、顧客の担当が、過去に顧客からの問い合わせや契約申し込み等を受け付けていて、内容が具体的になっている場合等に、あらためて顧客の担当ではないオペレータが応答することは適切ではない。このような顧客のデータに対して、顧客の担当等により、または、所定の条件を判定して自動により、フラグ等の属性データが設定される。
【0019】
また、本発明の応答業務取次システムは、顧客からの電話着信に応答するオペレータを配し、オペレータの電話応答状況に基づき、顧客からの電話着信に応答可能か否かを判定する応答可否判定手段を備え、所定の属性データを備える顧客であると判定された場合に、前記電話転送手段が実行されることを特徴とする。
【0020】
ここで、「オペレータ」は、顧客からの電話着信に応答するために配され、自動音声応答において顧客がオペレータの音声による応答を希望する場合に、転送を受けて応答を行う。「オペレータの電話応答状況」は、サーバ装置が備える通信制御機能により、回線の使用状況等に基づいて可否を判定する。
【0021】
さらに、本発明の応答業務取次システムは、前記顧客担当データ保存手段により保存されたデータから、前記顧客の担当が応答可能な時間を抽出して、現在の時刻が応答可能な時間内か否かを判定する応答時間判定手段を備え、顧客の担当が応答可能な時間であると判定された場合に前記電話転送手段が実行されることを特徴とする。
【0022】
すなわち、顧客の担当の営業時間、休業日等を、前記顧客担当データ保存手段により保存されたデータから抽出して、現在が応答可能な時間内であると判定した場合に応答業務の取り次ぎを行う。
【0023】
なお、前記着信通知データを受信した前記顧客の担当が備える端末から、受信を確認したときに入力されるデータを、専用ネットワークを介して取得する受信確認手段を備え、前記電話転送手段は、前記受信確認データの取得を待って前記顧客の担当が備える通信機器への電話の転送を行うことを特徴とする。
【0024】
すなわち、顧客の担当が着信通知データを受信したことを確認できた後に電話転送を行うこととする。これにより、顧客の担当が、顧客からの電話の転送を確実に予期できた上で転送を行うことができる。
【0025】
具体的な一例として、送信された着信通知データの表示画面に受信確認の入力領域を設置し、顧客の担当による入力を取得する。または、顧客の担当が着信通知データのファイルを起動したときに自動的に受信データが送信されるように設定する。これにより受信の確認を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、顧客からの電話を受け付けるコールセンターから、支店・営業所等に転送を行った場合であっても、顧客の情報や自動音声応答による入力の内容が、合成音声等により支店・営業所等に通知された後に電話が切り替えられる。
【0027】
そのため、顧客による会員番号や氏名等の本人確認の繰り返しや、電話の目的の説明を重複して行う必要がなくなる。これにより、顧客の担当は直ちに具体的な業務手続に移行でき、顧客の不満を取り除くことが可能となる。また、支店・営業所等の業務担当者の業務時間を減縮することもできる。
【0028】
また、顧客から音声により聴取した情報や、電話操作により入力された情報についても、自動的に支店・営業所等へ通知されるため、応答業務の取り次ぎの正確を期すことができる。一方で、オペレータの負担も生じない。
【0029】
さらに、顧客とオペレータとの会話により得られた、顧客の目的や顧客の複雑な状況等の特記事項を、漏れなく支店・営業所等に通知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、応答業務取次システムの本実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態にかかる応答業務取次システム1と、専用ネットワーク2を介して接続するコールセンターオペレータ端末4、顧客担当端末5、公衆ネットワーク3を介して接続する顧客担当の通信機器6、顧客の通信機器7の機能ブロック図である。
【0031】
第1の実施形態におけるシステムサーバは通信制御機能を備えるCTIサーバを用い、自動音声応答(IVR)装置16との連携により、自動音声応答とオペレータの音声による応答を切り替える。
【0032】
なお、本発明の応答業務取次システム1を、一定の規模のコールセンター等において導入する場合には、それぞれの機能をサーバ装置により、機能を分散して管理することが効果的である(図2)。
【0033】
図2の例では、コールセンター8のシステム内に、通信を制御して自動音声応答を行うCTI−IVR18と、主に自動音声応答に用いられる合成音声データを生成する音声合成サーバ20、システム全体の管理を行う管理サーバ19に機能を分散して配置し、顧客情報DB131と入力履歴DB132は、コールセンター8のシステムの外部に配置することで、支店9の顧客担当端末5からも専用ネットワーク2を介して、アクセスを行うことができる。
【0034】
図1で示す応答業務取次システム1は、専用ネットワーク2、公衆ネットワーク3等と通信を行う送受信部11、顧客に関する演算処理等を行う中央演算処理部12、顧客に関する情報や入力履歴データ等を保持する記憶部13、データを入力するキーボード等の入力部14、データを出力する表示装置あるいはプリンタ等の出力部15、顧客からの着信に自動音声で応答を行う自動音声応答装置16、公衆ネットワーク3との回線の管理を行う交換機17から構成されている。
【0035】
送受信部11は、LAN等の専用ネットワーク2を介して、コールセンターオペレータ端末4、支店・営業所等の事業所で執務する顧客担当端末5等に接続されている。また、交換機17を経由して一般の公衆回線等の公衆ネットワーク3に繋がり、支店・営業所等の事業所で執務する顧客担当の通信機器6、顧客の通信機器7等に接続されている。
【0036】
なお、コールセンターオペレータ端末4は、通信機能を備えるコンピュータ端末であり、通信機器部46にヘッドセット等を備えて、一般の公衆回線を利用する顧客の通信機器7等と通話を行うことができる。
【0037】
また、通信制御機能を備える送受信部11は、自動音声応答装置16との連携により、顧客の通信機器7等からの着信に対して自動音声で応答し、顧客の通信機器7が備えるダイヤルボタン等から入力されたデータを受信することができる。自動音声応答に用いられる音声データは、あらかじめメニューとして保持するほか、合成音声により音声データを作成する機能も有する。
【0038】
自動音声による応答においては、顧客の通信機器7からオペレータの音声による応答方法を選択する入力がなされた場合に、コールセンターオペレータ端末4が備えるヘッドセット(通信機器部46)でのオペレータの音声による応答に切り替わるほか、応答業務取次システム1の送受信部11から送信される所定の信号によっても、応答方法を相互に切り替えることができる。
【0039】
さらに、公衆ネットワーク3に繋がる交換機17は、送受信部11が備える通信制御機能に基づく指示により、顧客の通信機器7等からの着信を、顧客担当の通信機器6等に転送を行うことができる。
【0040】
記憶部13には、顧客に関するデータ等を保持する顧客情報DB131(図3)、自動音声応答等により得られた顧客の入力履歴のデータ等を保持する入力履歴DB132(図4)等により構成されている。
【0041】
中央演算処理部12には、送受信部11との間でデータの受け渡しを行う送受信処理手段501、入力部14または出力部15とデータの受け渡しを行う入出力処理手段502、顧客の会員番号等の識別可能なデータの入力を受け付けて取得する識別情報取得手段503、顧客識別情報に基づき、あらかじめ保持する顧客のデータから、顧客が所定の属性データを備えるか否かを判定する属性判定手段504、オペレータの空き状況から応答の可否を判定する応答可否判定手段505、顧客の識別情報から顧客担当を特定する顧客担当特定手段506、現在の時刻が顧客担当の応答可能な時間内であるか否かを判定する応答時間判定手段507、顧客担当に取り次ぐ顧客の着信に関するデータを生成して顧客担当に送信する着信通知手段508、顧客担当が着信通知データの受信を確認するデータを取得する受信確認手段509、顧客からの電話を顧客担当に転送する電話転送手段510、顧客担当のデータを顧客と関連付けて保存する顧客担当データ保存手段511を備える。
【0042】
図3は、第1の実施形態における顧客情報DB131のデータ構成例である。
顧客情報DB131は、顧客テーブル、担当者テーブル、担当事業所テーブル等で構成される。
【0043】
顧客テーブルでは、顧客の会員番号を主キーに氏名、電話番号、住所、メールアドレス等の顧客を特定する情報のほか、顧客との契約の内容や、顧客からの問い合わせおよび契約申し込みの担当者や担当事業所についてのデータを管理する。
【0044】
また、特定の属性を備える顧客のデータには、以下の理由により「担当転送フラグ」が設定されている。すなわち、顧客の担当が、過去に顧客からの問い合わせや契約申し込み等を受け付けていて、内容が具体的になっている場合等には、あらためて顧客の担当ではないオペレータが応答することは適切ではない。そのため、属性判定手段504により、担当転送フラグを検知して、かかる顧客から電話着信があった場合に、その応答を顧客担当により行わせることとしている。
【0045】
フラグの設定は、一般に顧客担当または管理者により行われる。また、たとえば顧客情報DB131の顧客テーブルにおいて、一定の契約金額の顧客や契約日に基づく一定の契約期間の顧客に対して、自動的に設定されるようにすることもできる。
【0046】
また、担当事業所テーブルでは、担当事業所の休業日、始業時間、終業時間、代表電話番号、事業所の端末のIPアドレス等を管理する。担当者テーブルでは、担当者の直通電話番号、担当者の端末のIPアドレス等を管理する。さらに、担当事業所テーブルおよび担当者テーブルには、受信確認待ちフラグが備えられる。
【0047】
図4は、第1の実施形態における入力履歴DB132のデータ構成例である。
入力履歴DB132では、自動音声応答において顧客の通信機器から入力された情報等を応答ログとして保存する。自動音声応答により受け付けた所定の事項は、応答ログに基づいて、リアルタイムに入力履歴テーブルが更新される。
【0048】
なお、自動音声応答ではないオペレータの音声による応答についても、コールセンターオペレータ端末4への入力により入力履歴テーブル等に保存することができる。また、顧客担当の通信機器6により受け付けた応答についても、顧客担当端末5への入力により入力履歴テーブル等に保存することができる。
【0049】
図5は、応答業務取次システム1の動作を示すフローチャートである。
顧客の通信機器7から発信された電話は、公衆ネットワーク3、交換機17を介して送受信部11に着信する(S101)。自動音声応答により顧客の会員番号の入力を案内して(S102)、顧客の通信機器7が備えるダイヤルボタン等の操作による入力を受け付ける(識別情報取得手段503、S103)。
【0050】
取得した顧客の会員番号データに基づき、顧客情報DB131が保持するデータから顧客を特定して、顧客担当に転送すべき顧客であるとする担当転送フラグが立てられているか否かの判定を行う(属性判定手段504、S104)。
【0051】
担当転送フラグが立てられている場合には、顧客情報DB131の顧客テーブルから、顧客担当を抽出して特定する(顧客担当特定手段506、S105)。ここで顧客担当は、支社、営業所、事業部等の担当事業所であってもよいし、個人の担当者であってもよい。第1の実施形態においては、個人の担当者を顧客担当とする。
【0052】
次に、顧客情報DB131の担当事業所テーブルから、顧客担当が所属する支店の休業日、営業時間等を抽出して、現在の時刻が抽出した支店の営業時間内であるか否かの判定を行う(応答時間判定手段507、S106)。
【0053】
なお、個人の担当者であって、休暇、勤務時間等の情報に基づき判定を行うこともできる。さらに、スケジュールソフト等と連動して、外出や会議予定の時間帯を把握して行うこともできる。
【0054】
これらの顧客担当である担当者あるいは担当事業所の、応答可能時間、後述の電話番号、IPアドレス等の情報は、顧客の情報と関連付けて保存される(顧客担当データ保存手段511)。
【0055】
判定結果が営業時間内であるとする場合には、顧客との応答業務を顧客担当に取り次ぐ準備が進められ、電話着信のあった顧客の情報が顧客担当端末5に送信される。具体的には、顧客の会員番号、氏名、契約内容、自動音声応答により取得した情報等について、あらかじめ必要な項目の設定を行い、抽出した情報(S116)を着信通知データとして作成する。図6は、着信通知データの送信から電話転送までのデータの流れの一例を示したフローチャート図である。図7は、着信通知データの作成例である。着信通知データは、顧客情報DB131および入力履歴DB132の情報から必要なデータを抽出して作成される。
【0056】
作成された着信通知データは、専用ネットワーク2を介して接続する顧客担当端末5に送信される(図6・S301)。送信する端末のIPアドレスは、顧客情報DB131の担当者テーブルが保持するデータに基づく。IPアドレスを参照して着信通知データを送信すると、担当者テーブルが備える受信確認待ちフラグが「有」に反転される(着信通知手段508、S118、図6・S302)。一方、顧客の通信機器7には、電話転送が行われている旨を、自動音声応答で通知する(図6・S303)。
【0057】
第1の実施形態では、ここで作成される着信通知データは自動音声応答(IVR)装置16の合成音声作成機能を用いた音声データであって(S117)、顧客担当端末5において自動的に再生を行うように設定されている。これにより、顧客担当端末5から物理的に離れている顧客担当に、音声で注意を呼びかけることができる。
【0058】
出力部55のスピーカからの音声を確認した顧客担当は、モニタ(出力部55)に表示された受信確認のボタンをクリックすることで、応答業務取次システム1の送受信部11に、受信確認のデータが送信される(受信確認手段509)。
【0059】
なお、たとえば自動的に再生されるのではなく、顧客担当がクリックすることで再生がなされ、再生を開始したことを受信確認データとして送信するように設定することもできる。また、音声データと共に、または、音声データに替えて、文字等により作成された着信通知データとすることもできる。
【0060】
これにより、音声データでは最小限の情報を伝達することとし、詳細な情報については文字情報により伝達することもできる。さらには、入力履歴DB132の応答ログや入力履歴テーブルおよび顧客DB131の顧客テーブルの顧客に関するデータを抽出して、着信通知データに含めるか、もしくは、リンクを表示することで、詳細な情報をリアルタイムに引用できるように設定することもできる。
【0061】
なお、受信確認データの取得を受けて、顧客情報DB131の担当者テーブルが備える受信確認待ちフラグは撤去される(図6・S307)。
【0062】
電話転送手段510は、受信確認データの取得が確認できたときに(S119)、顧客担当の通信機器6への電話の転送を開始する。転送する電話番号は、顧客情報DB131の担当者テーブルが保持するデータに基づく。電話番号の参照に際しては、担当者テーブルが備える受信確認待ちフラグの確認を行う(図6・S305)。受信確認待ちフラグが「有」の場合には、電話の転送は行われない。受信確認待ちフラグが「無」の場合に、電話の転送が行われる(S120、図6・S306)。
【0063】
これにより、顧客との応答業務の取り次ぎを受けた顧客担当は、十分な情報を準備したうえで、顧客に応答することができる。また、電話の転送先については、顧客担当端末5から専用ネットワーク2を介して、顧客情報DB131の担当者テーブルまたは担当事業所テーブルのデータを更新することで、容易に変更を行うことができる。
【0064】
他にも、顧客担当端末5から、自動音声応答の応答コードの入力を行い、折り返し顧客担当から連絡を入れるように、自動音声応答による案内文を選択することができる。
【0065】
受信確認データの取得が確認できない場合には、自動音声による応答を継続し、オペレータへの転送要求を待ってオペレータに転送される(S107)。
【0066】
なお、図6の例では、着信通知データの送信後(S301)、最初の電話転送の試行で受信確認待ちフラグが「有」のために、電話転送が行われなかった場合には、所定時間の経過後に(S308)、再度、電話転送を試行することとしている(S308〜S310)。
【0067】
再度の電話転送の試行において、受信確認待ちフラグが未だ「有」の場合には、コールセンターオペレータ端末4に電話の転送を行うこととしている(図6・S311)。顧客担当またはオペレータへの電話転送が開始すると、担当者テーブルの受信確認待ちフラグは撤去される(図6・S307)。
【0068】
また、受信確認データの取得では、着信通知データの送信後、一定時間内に受信確認データの確認ができない場合に、所定の回数を繰り返して、着信通知データの送信を行うように設定することもできる。さらには、最初の着信通知データを顧客担当者の端末5に直接送信を行った後、再度の着信通知データについては、顧客担当者の執務する事業所の端末に向けて送信するように設定を行うこともできる。
【0069】
一方、属性判定手段504において、顧客担当に転送すべき顧客であるとする担当転送フラグが立てられていない顧客については(S104)、自動音声応答により顧客との応答を継続する。その後、顧客からオペレータの音声による応答に切り替えるメニューが選択された場合には、コールセンターオペレータ端末4への応答業務の取り次ぎが準備される(S107)。
【0070】
しかし、オペレータの応答能力にも制限があるため、まず、オペレータの応答状況を取得して顧客の通信機器7からの電話着信への応答が可能であるか否かの判定が行われる(応答可否判定手段505、S108)。
【0071】
具体的には、サーバ装置が備える通信制御機能に基づき、回線の使用状況等から、新たなオペレータの応答の可否を判定する。可能とする判定の場合には、顧客の通信機器7からの電話着信は、コールセンターオペレータ端末4の通信機器部46に転送される(S111)。
【0072】
また、オペレータによる顧客からの電話着信の応答を開始した後において、顧客担当の通信機器6への転送を行う場合には、本実施形態では、はじめに応答時間判定手段507により、顧客担当が所属する支店の営業日、営業時間等を抽出して、現在の時刻が抽出した支店の営業時間内であるか否かの判定を行う(S112)。
【0073】
判定結果が営業時間内であるとする場合には、顧客担当に電話を切り替え(S113)、顧客の通信機器7に電話転送を行っている旨を合成音声で通知する(S114)。なお、着信通知データの作成においては、顧客とオペレータとの応答において取得した情報をオペレータの入力により付加して(S115)、着信通知手段508に送られる(S116)。作成された着信通知データは(S117)、音声データとして顧客担当端末5に送信される(着信通知手段508、S118)。
【0074】
その間、顧客の通信機器7には、顧客へ電話の切り替えを行っている旨を自動音声で通知し(S114)、受信確認データを取得した後(受信確認手段509)、電話転送が完了する(電話転送手段510、S120)。
【0075】
なお、顧客担当の営業時間内ではないとする判定の場合には(S112)、オペレータによる応答を継続する(S121)。
【0076】
一方、応答可否判定手段505(S108)において、オペレータの応答が可能ではないとする判定の場合には、顧客との応答業務を顧客担当に取り次ぎを行う準備が進められる。
【0077】
具体的には、応答時間判定手段507により、顧客担当が所属する支店の営業日、営業時間等を抽出して、現在の時刻が抽出した支店の営業時間内であるか否かの判定を行う(S109)。
【0078】
判定結果が営業時間内であるとする場合には、S116からS120の手順に従い、応答業務の取り次ぎが行われる。
【0079】
一方、営業時間内ではないとする判定結果の場合には、顧客の通信機器7に待ち時間がかかる旨の自動音声による応答がなされ(S110)、オペレータの応答が可能となったときに、コールセンターオペレータ端末4の通信機器部46に転送される(S111)。
【0080】
なお、図5のフローチャートにおいては、S106とS109とS112において、顧客担当の営業時間内か否かの判定が行われるが、設定により、いずれかの判定が行われた場合には、後の判定を行わないように設定することもできる。これにより、顧客への応答において切り替えに要する時間を短縮することができる。
【0081】
図8は、コールセンターにおいて本発明の応答業務取次システムを採用した場合の、基本となる処理の流れを示した図である。上述の実施形態においては、図中のCTI−IVRと管理サーバと音声合成サーバは、同じシステム内に包含して説明している。
【0082】
なお、図8に示す実施形態では、顧客からオペレータへの転送要求を待って(S204)、顧客担当等に応答業務の取り次ぎを行う点で上述の実施形態と異なる。
【0083】
図9は、コールセンターにおいて本発明の応答業務取次システムを採用した場合の、顧客担当へ直接転送される処理の流れを示した図である。
【0084】
図9の実施形態では、自動音声応答によるサービスの案内を行うことなく、会員番号を取得した後、直ちに顧客担当に応答業務の取り次ぎが行われる。
【0085】
たとえば、顧客担当から顧客に対して、特段の連絡事項があるような場合に、有効な設定である。
【0086】
その効果として、シンプルな構成であることから、会員番号の入力から電話の転送までを、迅速に行うことができる。
【0087】
図10は、コールセンターにおいて本発明の応答業務取次システムを採用した場合の、オペレータの応答状況に空きがないときの処理の流れを示した図である。
【0088】
図10の実施形態では、顧客の属性にかかわらず、顧客からオペレータへの転送要求に対し、オペレータの応答状況により応答可能ではないとの判定を受けて(S212)、顧客担当に応答業務の取り次ぎが行われる。
【0089】
これにより、コールセンター等でオペレータに空きがないような場合であっても、顧客担当が対応することで、顧客を待たせるような事態を回避することができる。
【0090】
その効果として、オペレータを必要以上に配置するようなロスを免れることができる。また、顧客を待たせることなく迅速な応答が可能となる。さらに、顧客にとっても、担当者による応答であるから、より高いサービスを受けることができる。
【0091】
次に第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態では、先述の属性判定手段504において、顧客の属性を判定して顧客担当端末5への転送を行う際に、あらかじめ備える担当転送フラグの検知に加えて、顧客からの問合せ内容についても判定を行うこととしている。
【0092】
具体的には、顧客情報DB131に転送判定テーブルを備え、顧客が重要な問い合わせや申し込みを行う場合にのみ、顧客担当への転送を行うこととする(図11)。たとえば、契約の申し込みや変更については、顧客担当が直接応答することとし、単なる契約内容の確認等の問い合わせであった場合には、自動音声応答またはオペレータの音声による応答とする。
【0093】
これにより、顧客担当は顧客から重要な問い合わせや申し込みの場合にのみ応答を行い、通常は自動音声応答等で顧客からの電話着信を受け付けることで、業務の効率化を図ることができる。
【0094】
なお、態様によっては、担当転送フラグの有無にかかわらず、転送判定テーブルのみを用いて判定を行うこともできる。これにより、きめ細やかな顧客サービスを実現することができる。
【0095】
また、たとえば顧客からのオペレータによる応答への転送要求を待って、顧客担当に転送を行うとする設定の場合には、顧客担当は、顧客からの電話着信を直ちに知ることはできないが、設定により、顧客担当への転送が必要な顧客からの着信があった場合に、直ちに着信の事実のみのデータを、事前通知として顧客担当端末5に送信を行うようにすることができる。
【0096】
これにより、顧客担当はオペレータによる応答の転送要求を待つことなく、応答への準備を開始することができる。
【0097】
なお、データには、顧客の氏名および着信時間等の最小限のデータとし、たとえば入力履歴DB132の応答ログへのリンクを含めることで、必要に応じて顧客の問合せ内容をモニタリングすることができる。これにより、顧客担当は詳細な情報についても知ることができる。
【0098】
設定によっては、顧客による自動音声応答のモニタリングを行う過程において、顧客担当が応答を行うべきと判断したときに、顧客担当からの転送要求を行うボタン等を表示画面に設置することで、より柔軟な顧客との応答を実現することができる。
【0099】
これらの設定は、担当転送フラグにおいて、必要度を数値化して保持することで、特定の条件の顧客について、実行されるように設定することもできる。さらに、転送判定フラグと組み合わせて、特定の組み合わせの場合にのみ実行されるように設定することもできる。
【0100】
ほかにも、担当転送フラグにおいては、顧客担当への転送以外の処理を各種規定することで、顧客により、または顧客からの問い合わせ内容により、異なる処理を設定することもできる。
【0101】
たとえば、顧客担当の通信機器5ではなく、確実に連絡が可能な携帯電話への転送を指定したり、上司や副担当に再度の転送を行うようにしたり、折り返し電話をする旨の自動音声応答を行ったりと、個別に設定を切り替えることも可能である。
【0102】
これにより、細分化する顧客のニーズに応えることが可能となる。また、業務の効率化にも有効である。
【0103】
以上の通り、本発明の応答業務取次システムによれば、処理の組み合わせにより、各種の実施形態が可能である。
【0104】
特に、顧客担当による応答業務が必要な場合に確実に取り次ぐ目的と、一時的に逼迫するコールセンターの機能を支店、営業所が補完する目的を、業態により、または、時期により適切に組み合わせることで、相乗的な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第1の実施形態に係る応答業務取次システム1、および、コールセンターオペレータ端末4、顧客担当端末5、顧客担当の通信機器6、顧客の通信端末7の機能ブロック図である。
【図2】応答業務取次システムをコールセンターに採用した場合の構成例である。
【図3】応答業務取次システム1の記憶部13が保持する顧客情報DB131のデータ構成例である。
【図4】応答業務取次システム1の記憶部13が保持する入力履歴DB132のデータ構成例である。
【図5】第1の実施形態に係る応答業務取次システム1におけるデータの流れを示したフローチャート図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る応答業務取次システム1の受信確認手段509におけるデータの流れを示したフローチャートである。
【図7】第1の実施形態に係る応答業務取次システム1の着信通知手段508により作成された着信通知データの一例である。
【図8】第1の実施形態に係る応答業務取次システム1において、基本となる処理の流れを示した図である。
【図9】第1の実施形態に係る応答業務取次システム1において、顧客担当へ直接転送される場合の処理の流れを示した図である。
【図10】第1の実施形態に係る応答業務取次システム1において、オペレータの応答状況に空きがない場合の処理の流れを示した図である。
【図11】第2の実施形態に係る応答業務取次システム1における、顧客情報DB131の転送判定テーブルの構成例である。
【符号の説明】
【0106】
1 応答業務取次システム
2 専用ネットワーク
3 公衆ネットワーク
4 コールセンターオペレータ端末
5 顧客担当端末
6 顧客担当(通信機器)
7 顧客(通信機器)
8 コールセンター
9 支店
11、41、51 送受信部
12、42、52 中央演算処理部
13、43、53 記憶部
14、44、54 入力部
15、45、55 出力部
16 自動音声応答装置
17 交換機
18 CTI−IVR
19 管理サーバ
20 音声合成サーバ
21 交換機(支店)
46 通信機器部
131 顧客情報DB
132 入力履歴DB
501 送受信処理手段
502 入出力処理手段
503 識別情報取得手段
504 属性判定手段
505 応答可否判定手段
506 顧客担当特定手段
507 応答時間判定手段
508 着信通知手段
509 受信確認手段
510 電話転送手段
511 顧客担当データ保存手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客が備える通信機器からの電話着信を、通信制御機能を備えるサーバ装置を用いて自動音声で応答する応答業務取次システムであって、
あらかじめ保持する自動音声データによる応答で、顧客の通信機器から顧客識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記顧客識別情報と関連付けて、顧客の担当のデータを保存する顧客担当データ保存手段と、
前記顧客識別情報に基づき、前記顧客担当データ保存手段により保存されたデータから、顧客の担当を特定する顧客担当特定手段と、
顧客からの電話着信の履歴と、前記顧客識別情報と、あらかじめ保持する顧客のデータに基づき、顧客からの着信を通知するための着信通知データを生成して、専用ネットワークを介して、前記顧客の担当が備える端末に送信する着信通知手段と、
顧客からの電話を、公衆ネットワークを介して、前記顧客の担当が備える通信機器に転送する電話転送手段と、
を備えることを特徴とする応答業務取次システム。
【請求項2】
前記生成される着信通知データの一部または全部は、前記サーバ装置が備える音声合成機能により生成された音声データであることを特徴とする請求項1記載の応答業務取次システム。
【請求項3】
前記識別情報取得手段により取得した顧客識別情報に基づき、あらかじめ保持する顧客のデータから、顧客が所定の属性データを備えるか否かを判定する属性判定手段を備え、
所定の属性データを備える顧客であると判定された場合に、前記電話転送手段が実行されることを特徴とする請求項1または2記載の応答業務取次システム。
【請求項4】
顧客からの電話着信に応答するオペレータを配し、オペレータの電話応答状況に基づき、顧客からの電話着信に応答可能か否かを判定する応答可否判定手段を備え、
所定の属性データを備える顧客であると判定された場合に、前記電話転送手段が実行されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の応答業務取次システム。
【請求項5】
前記顧客担当データ保存手段により保存されたデータから、前記顧客の担当が応答可能な時間を抽出して、現在の時刻が応答可能な時間内か否かを判定する応答時間判定手段を備え、
顧客の担当が応答可能な時間であると判定された場合に、前記電話転送手段が実行されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載の応答業務取次システム。
【請求項6】
前記着信通知データを受信した前記顧客の担当が備える端末から、受信を確認したときに入力されるデータを、専用ネットワークを介して取得する受信確認手段を備え、
前記電話転送手段は、前記受信確認データの取得を待って前記顧客の担当が備える通信機器への電話の転送を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一に記載の応答業務取次システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−153889(P2008−153889A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338991(P2006−338991)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(595078415)プロミス株式会社 (99)
【Fターム(参考)】