急性腎損傷の診断および/または予後方法
本発明は、miR-127、miR-126、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNA発現のレベルを分析することによる、急性腎損傷の診断/予後のための方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生体臨床医学の分野の範囲に含まれ、さらに詳しくは、急性腎損傷の診断および/または予後方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腎移植において、急性尿細管壊死(ATN)は、移植後の移植片機能における遅延の主な原因である。さらに、ATNは、急性拒絶反応の発生率の増加、慢性拒絶反応の進行および移植片生着率の低下の一因となる(Pannuら、2008)。近年の臓器に対する需要の増加は、移植後ATNの進行、移植片の死亡率およびその機能回復の遅延のパーセンテージを有意に増加させる、心停止ドナーおよび高齢ドナーのなどの最適状態に及ばないドナーからの臓器の使用を含む。これは、公衆衛生上の腎移植の総合的経済的損失を増加させる。国立移植機構(National Transplant Organization)(NTO)の最新の統計が、スペインで年間約2,200例の腎移植の実現を示し、4,000人以上の患者が順番待ちリストに載っていることに留意すべきである(Dominguez-GilおよびPascual、2008)。一方、ATNは、虚血起源などの急性腎不全(ARF)の最も一般的な形態学的兆候である(Kellumら、2008)。ARFは、約50%という、その高い死亡率により、先進国における腎臓病のうちで最も深刻な問題の1つである。ARFのすべてのイベントのうち約30%が、多臓器不全の結果として、ICUに運ばれる患者に起こる。後者との関連で、死亡率は80%まで上昇する(Chertowら、2005)。ARFの進行もまた、スペインで年間約30,000例が行われ、それらの1%以上が我々の病院で行われる心インターベンション後の最も一般的な合併症の1つである。手術を受けた患者の実質的にすべてが、ある程度のARFを発症する(YatesおよびStafford-Schmit、2006)。この手術後ARFの重篤度は、患者の長期的な進展に従属し、心臓手術後に透析を必要とするような場合、60%に近い死亡率をもたらす(Takarら、2005;Candela-Tohaら、2008)。虚血刺激の瞬間および持続時間が知られており、モニターすることもできるので、腎移植と心臓手術の両者は、ヒトATNのための2つの「疑似」実験研究状況である。罹患率―死亡率のこれらの統計のすべてが、ここ数十年の間に有意に変化しておらず、今のところ、すべてのこれらの状況におけるATNの予防および/または減少のための有効な療法は、存在しない。このことは、現在まで用いられている血清クレアチニンおよび尿素の決定よりも正確な腎存障害のマーカーの欠如に大きく関与している。これらの古典的なマーカーは、細胞損傷または同様に生産されている腎臓組織のその区画(尿細管または内皮)を直接反映しない;それらは、損傷の結果としての変化した腎機能の指標となるパラメーターにすぎない(Vaidyaら、2008)。事実、血清クレアチニンおよび尿素レベルにおける有意な変化が生じないので、無症候性腎損傷の患者は同定されない。このように、近年では、成人集団ではなくて、有意な付加的病理を示さない小児集団において良好なマーカーとして働くと思われる、NGAL、IL18、KIM、シスタチンC、VEGFまたはCXCL10のようなARFの新しいマーカーを同定し、有効にしようとする非常に多くの研究が開発中である。
【0003】
腎虚血、血液量減少および有害物質は、ATNの進行の最多現任である。血流の減少およびその結果としての組織低酸素は、近位尿細管上皮のレベルにおける損傷をもたらし、糸球体濾過液の急速な減少を引き起こし、血管透過性を変化させ、組織損傷を増幅させる炎症反応を引き起こす(Thurmanら、2007)。虚血性損傷の程度および範囲は、虚血の重篤度および期間に従属する。亜致死的虚血において、尿細管内腔への近位上皮細胞(その多くは生存細胞である)の剥離が見られる。長期間の虚血では、とりわけ、持続性の組織低酸素および炎症反応が、腎臓の皮質−髄質領域における細胞死を伴う上皮および尿細管損傷を増加させる。一方、血管区画もまた虚血後に損傷を受ける。事実、内皮損傷は、急性腎損傷に大きく関与し、また、その時間内にそれを維持することにも大きく関与する。虚血および早期再灌流中の尿細管周囲流における早期変化は、障壁、炎症および凝固促進活性の機能に関与する内皮の形態および機能の損失を伴う。中期−長期において、初期虚血の直接的結果としての慢性腎損傷の進行を促す微小血管密度の損失が記載されている(Basile 2007)。ATNを解消するために、組織修復を促進するメカニズムが開始される:細胞分裂および損傷を受けていない上皮尿細管細胞からの分化。近年では、幾つかの研究が、虚血後の尿細管損傷の修復が、脱分化および増殖する上皮の損傷を受けていない細胞自体のみならず、腎多能性細胞および骨髄由来お腎外多能精細胞にも関与しうることを実証している(Lin 2008)。しかし、幹細胞が損傷を受けていない近位尿細管細胞および実質血管再生に寄与することは受け入れられているが、虚血損傷を修復することへの幹細胞の寄与は、疑問視されている。この後者のプロセスにおいて、虚血後に動員される内皮親もまた参加することが提案されている(Becherucciら、2009)。
【0004】
miRNAは、メッセンジャーRNAを認識することができ、したがって、その標的mRNAとの完全または部分相補性によるRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)内で、タンパク質の発現を負に調節する、小さい(22-25ヌクレオチド)内因的にコードされたRNAである(Chang and Mendell、2007)。ヒトでは、700以上がすでにクローニングされており、生物情報的予測は、それらのすべてが30%以上の総タンパク質の発現をコントロールすることができることを示している(Filipowiczら、2008)。大部分が、RNA Pol IIによって、個々の遺伝子から、またはそれらの幾つかに対して同時に転写されたポリシストロニックスから転写される。それらは、リボヌクレアーゼIII(Drosha)によってコアにおいて処理されたより長いプレ-miRsとして産生され、エクスポーチン-5-およびRan-GTP-依存性メカニズムを介して細胞質になり、そこで、それらは、もう1つのリボヌクレアーゼIII(Dicer)によって最終的に処理されて、その成熟体になる(Rana 2007)。その機能は、胚発生、生理的プロセスのストレスまたは厳密な制御に対する応答、およびそれによる生命体におけるホメオスタシスの維持などの多種多様なプロセスにおいて必須である。miRNA発現プロフィールが、細胞型に対して特異的であり、同じmiRNAの特定の細胞背景が特定の細胞型におけるその機能を決定するように刺激に応じて変化することができることにハイライトを当てることが重要である(Bartel 2009)。この理由のために、がん(BartelsおよびTsongalis、2009)、自己免疫(SonkolyおよびPivarcsi 2008)、糖尿病(Zhouら、2008)または血管病変(Urbichら、2008)などの病変の進行に関与するメカニズムのうち、あるmiRNAの脱制御が指摘されており、それらは、病変のうちの多くの進行の正確なバイオマーカーとして作成されている。ごく最近では、さらに、miRNAが、栄養素の欠如または低酸素などの刺激のタイプの前の、迅速で正確な細胞応答における主要調節因子であることが実証されている(Ivanら、2008)。一方、mRNAに加えて、これらのmiRNAが、細胞によって、微粒子(血小板のマイクロベシクル;がん細胞のエキソソーム;好中球のエクトソーム)の形態で分泌または交換されうることも実証されている(Valadiら、2007)。したがって、それらは、血液、尿または胸膜液などの体液中で検出されえた。事実、健康な個体の末梢血は、5-50 mg/mlの濃度の微粒子を含みうると推定され、それらは、様々な病変の患者のイベントにおいて増加する(Hunterら、2008)。このことは、最小侵襲的な方法(血液抽出及び尿採取)によって得られたサンプルを用いて、これらの病変の進行の非常に信頼性のあるモニタリングを行うことを可能にする(Gilad 2008)。尿において、検出されたmiRNA(miR-127を含む)が、非常に攻撃的な状態においてさえも、非常に安定であることが示されている(Melkonyanら、2008)。もし、miRNAの脱制御が様々な病変を引き起こしうるならば、それらは、治療の新たな標的と見なされ始める。事実、その発現を調節するためのツールが開発されている;その有効性は依然としてヒトにおける治療法策として決定されなければならないが、インビトロおよびインビボでの様々な実験モデルにおいて非常に有望な結果を有する過剰発現のためのプレmiRおよび阻害のためのアンタゴmiR(抗-miR)(Krutzfeldら、2006;Careら、2007;Van Rooijら、2008)。
【0005】
虚血に応答するmiRNAの役割に関して、miR-145の発現と脳損傷に確立されている関連である、ラットの局所的脳虚血におけるその発現が決定されている(Dharapら、2009)。ヒトの心虚血において、miR-100およびmiR-133は、心臓障害のメカニズムに関与すると思われる(Sucharov Cら、2008)。ヒトの肝虚血においても、miR-223は、損傷のメディエーターとして立証されている(Yuら、2008)。それに対して、miR-126およびmiR-210は、低酸素などの様々な刺激に応答する、血管新生、新血管形成および組織修復の重要なプロモーターとして記載されている(Suarez and Sessa、2009;Fasanaroら、2008;van Solingenら、2008)。今までのところ、腎R/I(耐性指数)において調節されたmiRNAは、文献に記載されていないが、確かに、その潜在能力が、血圧の調節における障害に関与するといったような腎臓病変におけるバイオマーカーであると推測することが開始されている(Liang Mら、2009)。もう1つの状況においては、腎臓移植における免疫拒絶に関連する幾つかのmiRNAが、同定されている(Suiら、2008)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したすべては、どの組織区域および範囲が損傷を受けているか、および/または修復しているか、だれの決定がよりはやく、容易で患者に生検を行う必要性を伴わないか、をより正確に、かつ指標となる腎損傷の発生の新たなバイオマーカーを同定し、有効にする必要性を正当化する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の説明
したがって、第1の態様において、本発明は、患者のサンプルを分析して、miR-127、miR-126、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAの発現レベルを決定し、コントロール値と該発現レベルを比較することを含む、該レベルの変化が腎損傷を示す急性腎損傷の診断および/または予後方法を提供する。
【0008】
本発明のさらに詳しい1つの態様において、患者のサンプルは血液である。本発明のもう1つの詳しい態様において、サンプルは血清である。本発明のもう1つの態様において、サンプルは尿である。
【0009】
さらに詳しくは1つの態様において、急性腎損傷の診断および/または予後は、miR-127単独の発現レベル、またはmiR-126、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAと組み合わせての発現レベルの決定によって行われる。
【0010】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する血清miR-127の発現レベルの減少は、急性腎損傷を示す。
【0011】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する尿miR-127の発現レベルの増加は、急性腎損傷を示す。
【0012】
さらに詳しくは1つの態様において、急性腎損傷の診断および/または予後は、miR-126単独の発現レベル、またはmiR-127、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAと組み合わせての発現レベルの決定によって行われる。
【0013】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する血清miR-126の発現レベルの減少は、急性腎損傷を示す。
【0014】
さらに詳しくは1つの態様において、急性腎損傷の診断および/または予後は、miR-210単独の発現レベル、またはmiR-127、miR-126およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAと組み合わせての発現レベルの決定によって行われる。
【0015】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する血清miR-210の発現レベルの増加は、急性腎損傷を示す。
【0016】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する尿miR-210の発現レベルの減少は、急性腎損傷を示す。
【0017】
さらに詳しくは1つの態様において、急性腎損傷の診断および/または予後は、miR-101単独の発現レベル、またはmiR-127、miR-126およびmiR-210から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAと組み合わせての発現レベルの決定によって行われる。
【0018】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する血清miR-101の発現レベルの増加は、急性腎損傷を示す。
【0019】
本発明において、急性腎損傷は、有害物質または放射線造影手段による腎臓損傷の症例なので、虚血性の病因による原発性または続発性の腎臓の損傷を意味し、いずれにしても、慢性腎臓損傷は除外される。
【0020】
本発明のさらに詳しい1つの態様において、マイクロRNAの発現は、PCRによって決定される。さらに詳しくは1つの態様において、マイクロRNAの発現は、定量的PCRによって決定される。さらに詳しくは1つの態様において、マイクロRNAの発現は、多重PCRによって決定される。
【0021】
本発明のもう1つの詳しい態様において、マイクロRNAの発現は、全RNAマイクロアレイによって決定される。
【0022】
第2の態様において、本発明は、本発明方法を行うのに必要なプローブおよびプライマーを含む、急性腎損傷の診断および/または予後のためのキットを提供する。
【0023】
本発明の1つの詳しい態様において、キットは、miR-127、miR-126、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAの発現レベルを決定するのに必要なプローブおよびプライマーを含む。
【0024】
本発明のさらに詳しいもう1つの態様において、キットは、RNAマイクロアレイを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHK-2ヒト近位尿細管細胞におけるmiR-126の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:6時間の栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-3、R-6、R-24時間:6時間の低酸素後、再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図2】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHK-2ヒト近位尿細管細胞におけるmiR-210の発現を示す。NX:酸素率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-3、R-6、R-24時間:6時間の低酸素後、再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図3】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHK-2ヒト近位尿細管細胞におけるmiR-101の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-3、R-6、R-24時間:6時間の低酸素後、再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図4】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHK-2ヒト近位尿細管細胞におけるmiR-127の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-3、R-6、R-24時間:6時間の低酸素後、再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図5】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたNRK-52Eラット近位尿細管細胞におけるmiR-101の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-6時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図6】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたNRK-52Eラット近位尿細管細胞におけるmiR-127の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-6時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図7】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHMECヒト内皮細胞におけるmiR-101の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図8】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHMECヒト内皮細胞におけるmiR-127の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図9】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHMECヒト内皮細胞におけるmiR-210の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図10】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHMECヒト内皮細胞におけるmiR-126の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図11】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の血清miR-127の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0時間および3日:患者のサンプルを採取した時間、ARFによるアドミッタンス(0時間)およびその後の進行時(3日)。
【図12】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の尿miR-127の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0時間および3日:患者のサンプルを採取した時間、ARFによるアドミッタンス(0時間)およびその後の進行時(3日)。
【図13】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の血清miR-126の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0時間および3日:患者のサンプルを採取した時間、ARFによるアドミッタンス(0時間)およびその後の進行時(3日)。
【図14】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の血清miR-210の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0日、1日、2日、3日、7日:患者のサンプルを採取した時間、ARFによるアドミッタンス(0時間)およびその後の進行時。
【図15】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の尿miR-210の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0日、1日、2日、3日、7日:患者のサンプルを採取した時間、ARFによるアドミッタンス(0時間)およびその後の進行時。
【図16】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の血清miR-101の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0日、1日、2日、3日、7日:患者のサンプルを採取した時間、ARFの開始(0時間)およびその後の進行時。
【図17】血清サンプル中のmiR-101の発現を示す;a:グループIAに属する患者;b:グループIBに属する患者;およびc:グループIIに属する患者。
【図18】血清サンプル中のmiR-127の発現を示す;a:グループIAに属する患者;b:グループIBに属する患者;およびc:グループIIに属する患者。
【図19】血清サンプル中のmiR-126の発現を示す;a:グループIAに属する患者;b:グループIBに属する患者;およびc:グループIIに属する患者。
【図20】血清サンプル中のmiR-210の発現を示す;a:グループIAに属する患者;b:グループIBに属する患者;およびc:グループIIに属する患者。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な記載
R/Iを偽装しているHRモデルにおいて、マイクロRNA:miR-127、miR-126、miR-210およびmiR-101のそれぞれが、単独あるいは組み合わせで腎損傷のバイオマーカーとして機能するようにディファレンシャル方式で(in a differential way)発現されるこれらのマイクロRNAを、アレイの使用によって同定した。
【実施例1】
【0027】
低酸素/再酸素化を受けた細胞株におけるmiRNAの発現
特異的血清、抗生物質および成長因子を含む適切な手段で、以下の細胞(HK2:ヒト近位尿細管細胞、NRK-52E:ラット近位尿細管細胞およびHMEC:ヒト微小血管内皮細胞)の培養を行った。細胞は、湿潤雰囲気およびCO2 5%下で37℃に維持した。
【0028】
上述の細胞株は、低酸素/再酸素化プロトコルを受けた。すなわち、細胞株は、酸素圧および栄養素利用率において変化を受けた。そのために、2つの異なるインキュベーターを用いた:CO2 5%、O2 1%、N2 94%の混合物で灌流している37℃の密封インキュベーター内での低酸素;CO2 5%で灌流している37℃の標準インキュベーター内での再酸素化。細胞を集密になるまで培養し、低酸素の24時間前に血清を奪った。低酸素の間、低濃度のグルコースまたはその誘導体とともに、細胞を無血清最少培地(HBSS)中に保持した。再酸素化の間、完全培地を用いた(Saenz-Moralesら、2006)。すべてのサンプルの低酸素時間は、6時間であり、再酸素化時間は変動した(15分〜72時間)。すべてのインビトロ実験を、少なくとも3回繰り返した。
【0029】
次に、細胞株におけるマイクロRNAのはっきりした発現をPCRによって決定したが、このために、および液体サンプル(血清または尿)から全RNAを抽出し、滴定した後、それらの各50ナノグラムを15マイクロリットル中のレトロ転写(RT)の反応に用いた。このステップのために、特別の市販のプライマー(ステムループプライマー)を用いた。これらのプライマーは、各miRNAに対して特異的であった。RT後、それは、定量的様式で増幅反応に取り込まれた(qPCR)。この反応は、総量10マイクロリットルで行われ、RT総反応1マイクロリットルおよび各miRNAに対する特異的プライマーおよび蛍光キャッチャーを有するTaqmanプローブを用いた。RTおよびPCRのためのすべての試薬、両プライマーおよび反応混合物、酵素およびヌクレオチドは、Applied Biosystemsから購入した。結果を以下に示した。
【0030】
図1に示すように、栄養素および酸素の制限は、正常な状況と比べて、miR-126の発現を非常に有意に減少させたので、その発現レベルは、両方の利用可能性に大きく依存した。miRNAの発現は、細胞が、酸素および栄養素を処理するようになる再酸素化に際し、回復した。したがって、miR-126の発現レベルの減少は、腎虚血の兆候である近位尿細管細胞における栄養素および酸素の欠乏を示した。一方、3時間の再酸素化がインビトロにおける上皮への重要な損傷を記録したことを考えれば、このmiRNAの発現が低いことは、虚血後の近位尿細管上皮の損傷を示した。
【0031】
図2に示すように、栄養素および酸素の利用率の制限は正常状態と比べてmiR-210の発現を非常に有意に減少させたので、miR-126と同様に、miR-210の発現レベルは、両者に大きく依存した。miRNAの発現は、酸素および栄養素を処理することに細胞が戻る再酸素化に際して回復した。miR-210の減少は、miR-126の場合のように腎虚血を示すものである、近位尿細管細胞における栄養素および酸素の欠乏を示した。一方、3時間の再酸素化が、インビトロでの上皮への損傷を記録したならば、miR-210の低い発現は、虚血後の近位尿細管内皮の損傷を示した。
【0032】
図3に示すように、miR-101は、正常酸素条件下と比べて、低酸素条件下でその発現を増加させた。このmiRNAの発現は、酸素および栄養素の利用率が再び正常化される再酸素化において、再び正常化されていた。低酸素中の近位細胞におけるこのmiRNAの発現は、腎虚血を示した。
【0033】
図4において、miR-127は、正常酸素条件下と比べて、低酸素条件下でその発現を増加させた。このmiRNAの発現は、再酸素化下で有意に減少し、上皮単層が回復すると、24時間の再酸素化で再び増加した。したがって、低酸素条件中の近位細胞におけるmiR-127発現の増加は、腎虚血を示した。再酸素化下でのその早期の発現の減少は、虚血性損傷を示し、その後の増加は、内皮回復を示した。
【0034】
図5に示すように、miR-101の発現は、このラット細胞における正常酸素条件下と比べて高レベルの発現を伴ったが、再酸素化下で迅速に正常化され、酸素および栄養素の利用率は、再び正常化された。低酸素条件中の近位細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。24時間の再酸素化における新たな増加は、上皮細胞の回復を示した。
【0035】
図6に示すように、そして、Hk-2 (ヒト尿細管)細胞と同様に、miR-127は、正常条件と比べて、栄養素および酸素の利用率が制限される低酸素条件下でその発現を増加させた。このmiRNAの発現は、酸素および栄養素が再び利用可能である再酸素化下で迅速に正常化された。低酸素条件中の近位細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。
【0036】
図7に示すように、そして、近位尿細管細胞と同様に、miR-101は、正常酸素条件と比べて、低酸素条件下でその発現を増加させた。このmiRNAの発現は、酸素および栄養素の利用率が再び正常化される再酸素化下で高いままで維持され、24時間の再酸素化で正常化を開始した。低酸素条件中の内皮細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。再酸素化下におけるその高い発現は、内皮活性化(炎症促進)状態を伴い、24時間で正常化が開始した。
【0037】
図8に示すように、そして、近位尿細管細胞と同様に、miR-127は、正常酸素条件と比べて、栄養素および酸素の利用率が制限される低酸素条件下でその発現を増加させた。このmiRNAの発現は、酸素および栄養素の利用率が再び正常化される再酸素化下で高いままで維持され、24時間の再酸素化で正常化を開始した。低酸素条件中の内皮細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。再酸素化下におけるその高い発現は、内皮活性化(炎症促進)状態を伴い、24時間で正常化が開始した。
【0038】
図9に示すように、そして、近位尿細管細胞におけるこのmiRNAとは異なって、miR-210は、正常酸素条件と比べて、低酸素条件下で、その発現を控えめに増加させた。このmiRNAの発現は、下で高く維持され、そして24時間の再酸素化でその発現を突然に減少させた。低酸素条件中の内皮細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。miR-127およびmiR-101と同様に、再酸素化下でのその発現は、内皮活性化(炎症促進)状態を伴い、24時間で正常化が開始した。
【0039】
図10に示すように、miR-126は、正常酸素条件と比べて、栄養素および酸素の利用率が制限される低酸素条件下でその発現を控えめに増加させた。酸素および栄養素が利用可能である1時間の再酸素化で、それは非常に有意に増加した。その後、このmiRNAの発現は正常化された。低酸素条件中の内皮細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。1時間の再酸素化で非常に有意な増加は、最大内皮活性化(炎症促進)状態と、明白に関連した。
【実施例2】
【0040】
急性腎不全と診断された患者におけるmiRNAの発現
患者のサンプルを用いる研究を予想的方法で行った。適切なインフォームド・コンセントを通して患者または患者の法定代理人による承諾を得た後、そして、我々の病院の臨床研究倫理委員会による研究の承認前に、下記の患者のグループにおける移植の場合、血液および尿ならびに腎生検のサンプルを採取した。
【0041】
腎移植の患者のサンプル
50名の移植を受けた人々(新たに腎移植および異なる免疫抑制処方を受けた患者)からのサンプルを分析し、2つのグループに組織した:
1.即時型移植片機能を得た25名の患者
2.遅延型移植片機能を得た25名の患者
血液および尿のサンプルを、腎移植後の第1日、第7日、第15日、第30日に採取し、これらの日々において、研究対象のmiRNAの発現をqRT-PCRによって決定した。
【0042】
移植片非機能の場合、第7日に生検を行い、ATNの相が解消されるまで、7−10日毎に繰り返した。拒絶反応の疑いがある場合、生検による確認後、これらの患者を除外した。
移植された患者の場合、以下の情報を集め、決定した:
−レシピエントの特徴:年齢、性別および透析時間
−ドナーの特徴:ドナーのタイプ(脳死、心停止)、年齢、性別、血管作用薬要
−移植片の特徴:熱、冷虚血の回数および吻合の回数;HLA適合性および免疫抑制
−第2、4および12週における移植片の機能
【0043】
血液サンプルを8 mlのVACUETTEチューブ(z serum sep clot activator)に採取し、2500 rpmで10分間遠心分離した。
分離した血清を遠心分離によって集め、分注し、Ramon and Cajal HospitalのBioBankの基準にしたがって保管した(固有コードを付けた匿名チューブ中、-80℃で)。
【0044】
尿サンプルを尿の標準バイアルに集めるか、またはプローブのデポジットから取り出し、2500 rpmで10分間遠心分離して沈殿物およびその他の残渣を除去し、分注し、Ramon and Cajal HospitalのBioBankの基準にしたがって保管した(固有コードを付けた匿名チューブ中、-80℃で)。
【0045】
それらのすべては、利権協定を用いるBioBankによるその利権を必要とした。我々は、この目的のために、定量的PCRによる、両方の液体の100-200マイクロリットルのサンプル中でmiRNAを増幅するための技術を最適化したので、最大500マイクロリットルを必要であり、液体のサンプル(血清または尿)からの全RNAの抽出を行った後、滴定した後、それらの各50ナノグラムを15マイクロリットル中のレトロ転写(RT)の反応に用いた。特別の市販のプライマー(ステムループプライマー)を用いた。これらのプライマーは、各miRNAに対して特異的であった。RT後、それは、定量的様式で増幅反応に取り込まれた(qPCR)。この反応は、総量10マイクロリットルで行われ、RT総反応1マイクロリットルおよび各miRNAに対する特異的プライマーおよび蛍光キャッチャーを有するTaqmanプローブを用いた。RTおよびPCRのためのすべての試薬、両プライマーおよび反応混合物、酵素およびヌクレオチドは、Applied Biosystemsから購入した。結果を以下に示した。
【0046】
全RNAの抽出の前の患者の血清および尿サンプルの処理は、以下の通りである:血清または尿の100-200マイクロリットルのアリコートを56℃にて1時間インキュベートして、プロテイナーゼK(65ミリグラム/ミリリットル)で消化した。その後、フェノール/クロロホルム(5:1)で最初の抽出を行い、使用説明書に従い、High Pure miRNA 単離キット(Roche)を用いて水相を処理した。
【0047】
心臓手術後の患者のサンプル:
50名の患者のサンプルを分析し、以下のグループに組織した:
−IA:体外循環(ECC)を伴う計画的手術を受けた、ARF発生のリスクが低い10名の成人患者、すなわち、Thakar5システムにおいてスコアが0〜2であるか、または簡易SRI6において0〜1である患者
−IB:ECCを伴う最初の手術を受けた先天性心疾患の10名の小児患者
−II:変化した基礎腎機能を有し、Thakar5システムにおいてスコアが>5であるか、またはSRI6において≧3である、ECCを伴う計画的手術を受けた15名の成人患者
−III:正常な腎機能を有し、先のセクションと同じスコアである、ECCを伴う計画的手術を受けた15名の成人患者
【0048】
各患者について、以下の時点において、miRNAの測定を行った:
−基礎となる手術前
−ICUにて開始、2時間
−手術の24時間、48時間および72時間後
−第7日(グループIAおよびIBについて任意)
【0049】
図11に示すように、miR-127の発現は、健康なコントロールにおいて大きく減少した。患者の血清中の、このmiRNAの発現の減少は、腎虚血性損傷またはARFを示した。これらのデータは、図18に示すデータと相関する。
【0050】
図12に示すように、そして、血清における減少と相関して、miR-127の発現は、健康なコントロールにおいて有意に増加した。患者の血清中の、このmiRNAの発現の減少および対応する尿の増加は、腎虚血性損傷またはARFの早期診断を示した。
【0051】
図13に示すように、miR-126の発現の血清レベルは、虚血性腎損傷の兆候の時点で、有意に減少し、24時間の時点で大きく増加し、続いて正常化された。このことは、患者の血清中の、このmiRNAの発現の減少は、腎虚血性損傷またはARFの早期診断を示した。インビトロモデルで議論したように、24時間の時点でのその増加は、続いての炎症反応を伴う虚血後の内皮活性化を示した。これらのデータは、図19に示すデータと相関する。
【0052】
図14に示すように、血清miR-210は、虚血性腎損傷の兆候の時点で、発現を有意に増加させた;その増加は、最初の24時間中維持され、後に正常化された。これらのデータは、患者の血清中の、このmiRNAの発現の増加が、腎虚血性損傷またはARFの早期診断マーカーであることを示した。
【0053】
図15に示すように、尿miR-210は、48時間の時点で、発現を有意に増加させ、後に、正常化された。このmiRNAが、実験モデルにおける上皮回復が観察され始める時点で、HK-2細胞において発現を増加させたことを考慮すると、このことは、患者の尿における48時間の時点での、このmiRNAの発現の増加が、腎虚血後の回復の兆候であることを示した。これらのデータは、図20に示すデータと相関する。
【0054】
図16に示すように、miR-101の発現は、開始の時点で、健康なコントロールにおいて早期に有意に増加し、進行中の健康な被験者において有意な増加は、もはや検出されなかった。このことは、患者の血清中の、このmiRNAの発現の増加が、腎虚血性損傷の早期診断マーカーであることを示した。これらのデータは、図17に示すデータと相関する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生体臨床医学の分野の範囲に含まれ、さらに詳しくは、急性腎損傷の診断および/または予後方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腎移植において、急性尿細管壊死(ATN)は、移植後の移植片機能における遅延の主な原因である。さらに、ATNは、急性拒絶反応の発生率の増加、慢性拒絶反応の進行および移植片生着率の低下の一因となる(Pannuら、2008)。近年の臓器に対する需要の増加は、移植後ATNの進行、移植片の死亡率およびその機能回復の遅延のパーセンテージを有意に増加させる、心停止ドナーおよび高齢ドナーのなどの最適状態に及ばないドナーからの臓器の使用を含む。これは、公衆衛生上の腎移植の総合的経済的損失を増加させる。国立移植機構(National Transplant Organization)(NTO)の最新の統計が、スペインで年間約2,200例の腎移植の実現を示し、4,000人以上の患者が順番待ちリストに載っていることに留意すべきである(Dominguez-GilおよびPascual、2008)。一方、ATNは、虚血起源などの急性腎不全(ARF)の最も一般的な形態学的兆候である(Kellumら、2008)。ARFは、約50%という、その高い死亡率により、先進国における腎臓病のうちで最も深刻な問題の1つである。ARFのすべてのイベントのうち約30%が、多臓器不全の結果として、ICUに運ばれる患者に起こる。後者との関連で、死亡率は80%まで上昇する(Chertowら、2005)。ARFの進行もまた、スペインで年間約30,000例が行われ、それらの1%以上が我々の病院で行われる心インターベンション後の最も一般的な合併症の1つである。手術を受けた患者の実質的にすべてが、ある程度のARFを発症する(YatesおよびStafford-Schmit、2006)。この手術後ARFの重篤度は、患者の長期的な進展に従属し、心臓手術後に透析を必要とするような場合、60%に近い死亡率をもたらす(Takarら、2005;Candela-Tohaら、2008)。虚血刺激の瞬間および持続時間が知られており、モニターすることもできるので、腎移植と心臓手術の両者は、ヒトATNのための2つの「疑似」実験研究状況である。罹患率―死亡率のこれらの統計のすべてが、ここ数十年の間に有意に変化しておらず、今のところ、すべてのこれらの状況におけるATNの予防および/または減少のための有効な療法は、存在しない。このことは、現在まで用いられている血清クレアチニンおよび尿素の決定よりも正確な腎存障害のマーカーの欠如に大きく関与している。これらの古典的なマーカーは、細胞損傷または同様に生産されている腎臓組織のその区画(尿細管または内皮)を直接反映しない;それらは、損傷の結果としての変化した腎機能の指標となるパラメーターにすぎない(Vaidyaら、2008)。事実、血清クレアチニンおよび尿素レベルにおける有意な変化が生じないので、無症候性腎損傷の患者は同定されない。このように、近年では、成人集団ではなくて、有意な付加的病理を示さない小児集団において良好なマーカーとして働くと思われる、NGAL、IL18、KIM、シスタチンC、VEGFまたはCXCL10のようなARFの新しいマーカーを同定し、有効にしようとする非常に多くの研究が開発中である。
【0003】
腎虚血、血液量減少および有害物質は、ATNの進行の最多現任である。血流の減少およびその結果としての組織低酸素は、近位尿細管上皮のレベルにおける損傷をもたらし、糸球体濾過液の急速な減少を引き起こし、血管透過性を変化させ、組織損傷を増幅させる炎症反応を引き起こす(Thurmanら、2007)。虚血性損傷の程度および範囲は、虚血の重篤度および期間に従属する。亜致死的虚血において、尿細管内腔への近位上皮細胞(その多くは生存細胞である)の剥離が見られる。長期間の虚血では、とりわけ、持続性の組織低酸素および炎症反応が、腎臓の皮質−髄質領域における細胞死を伴う上皮および尿細管損傷を増加させる。一方、血管区画もまた虚血後に損傷を受ける。事実、内皮損傷は、急性腎損傷に大きく関与し、また、その時間内にそれを維持することにも大きく関与する。虚血および早期再灌流中の尿細管周囲流における早期変化は、障壁、炎症および凝固促進活性の機能に関与する内皮の形態および機能の損失を伴う。中期−長期において、初期虚血の直接的結果としての慢性腎損傷の進行を促す微小血管密度の損失が記載されている(Basile 2007)。ATNを解消するために、組織修復を促進するメカニズムが開始される:細胞分裂および損傷を受けていない上皮尿細管細胞からの分化。近年では、幾つかの研究が、虚血後の尿細管損傷の修復が、脱分化および増殖する上皮の損傷を受けていない細胞自体のみならず、腎多能性細胞および骨髄由来お腎外多能精細胞にも関与しうることを実証している(Lin 2008)。しかし、幹細胞が損傷を受けていない近位尿細管細胞および実質血管再生に寄与することは受け入れられているが、虚血損傷を修復することへの幹細胞の寄与は、疑問視されている。この後者のプロセスにおいて、虚血後に動員される内皮親もまた参加することが提案されている(Becherucciら、2009)。
【0004】
miRNAは、メッセンジャーRNAを認識することができ、したがって、その標的mRNAとの完全または部分相補性によるRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)内で、タンパク質の発現を負に調節する、小さい(22-25ヌクレオチド)内因的にコードされたRNAである(Chang and Mendell、2007)。ヒトでは、700以上がすでにクローニングされており、生物情報的予測は、それらのすべてが30%以上の総タンパク質の発現をコントロールすることができることを示している(Filipowiczら、2008)。大部分が、RNA Pol IIによって、個々の遺伝子から、またはそれらの幾つかに対して同時に転写されたポリシストロニックスから転写される。それらは、リボヌクレアーゼIII(Drosha)によってコアにおいて処理されたより長いプレ-miRsとして産生され、エクスポーチン-5-およびRan-GTP-依存性メカニズムを介して細胞質になり、そこで、それらは、もう1つのリボヌクレアーゼIII(Dicer)によって最終的に処理されて、その成熟体になる(Rana 2007)。その機能は、胚発生、生理的プロセスのストレスまたは厳密な制御に対する応答、およびそれによる生命体におけるホメオスタシスの維持などの多種多様なプロセスにおいて必須である。miRNA発現プロフィールが、細胞型に対して特異的であり、同じmiRNAの特定の細胞背景が特定の細胞型におけるその機能を決定するように刺激に応じて変化することができることにハイライトを当てることが重要である(Bartel 2009)。この理由のために、がん(BartelsおよびTsongalis、2009)、自己免疫(SonkolyおよびPivarcsi 2008)、糖尿病(Zhouら、2008)または血管病変(Urbichら、2008)などの病変の進行に関与するメカニズムのうち、あるmiRNAの脱制御が指摘されており、それらは、病変のうちの多くの進行の正確なバイオマーカーとして作成されている。ごく最近では、さらに、miRNAが、栄養素の欠如または低酸素などの刺激のタイプの前の、迅速で正確な細胞応答における主要調節因子であることが実証されている(Ivanら、2008)。一方、mRNAに加えて、これらのmiRNAが、細胞によって、微粒子(血小板のマイクロベシクル;がん細胞のエキソソーム;好中球のエクトソーム)の形態で分泌または交換されうることも実証されている(Valadiら、2007)。したがって、それらは、血液、尿または胸膜液などの体液中で検出されえた。事実、健康な個体の末梢血は、5-50 mg/mlの濃度の微粒子を含みうると推定され、それらは、様々な病変の患者のイベントにおいて増加する(Hunterら、2008)。このことは、最小侵襲的な方法(血液抽出及び尿採取)によって得られたサンプルを用いて、これらの病変の進行の非常に信頼性のあるモニタリングを行うことを可能にする(Gilad 2008)。尿において、検出されたmiRNA(miR-127を含む)が、非常に攻撃的な状態においてさえも、非常に安定であることが示されている(Melkonyanら、2008)。もし、miRNAの脱制御が様々な病変を引き起こしうるならば、それらは、治療の新たな標的と見なされ始める。事実、その発現を調節するためのツールが開発されている;その有効性は依然としてヒトにおける治療法策として決定されなければならないが、インビトロおよびインビボでの様々な実験モデルにおいて非常に有望な結果を有する過剰発現のためのプレmiRおよび阻害のためのアンタゴmiR(抗-miR)(Krutzfeldら、2006;Careら、2007;Van Rooijら、2008)。
【0005】
虚血に応答するmiRNAの役割に関して、miR-145の発現と脳損傷に確立されている関連である、ラットの局所的脳虚血におけるその発現が決定されている(Dharapら、2009)。ヒトの心虚血において、miR-100およびmiR-133は、心臓障害のメカニズムに関与すると思われる(Sucharov Cら、2008)。ヒトの肝虚血においても、miR-223は、損傷のメディエーターとして立証されている(Yuら、2008)。それに対して、miR-126およびmiR-210は、低酸素などの様々な刺激に応答する、血管新生、新血管形成および組織修復の重要なプロモーターとして記載されている(Suarez and Sessa、2009;Fasanaroら、2008;van Solingenら、2008)。今までのところ、腎R/I(耐性指数)において調節されたmiRNAは、文献に記載されていないが、確かに、その潜在能力が、血圧の調節における障害に関与するといったような腎臓病変におけるバイオマーカーであると推測することが開始されている(Liang Mら、2009)。もう1つの状況においては、腎臓移植における免疫拒絶に関連する幾つかのmiRNAが、同定されている(Suiら、2008)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したすべては、どの組織区域および範囲が損傷を受けているか、および/または修復しているか、だれの決定がよりはやく、容易で患者に生検を行う必要性を伴わないか、をより正確に、かつ指標となる腎損傷の発生の新たなバイオマーカーを同定し、有効にする必要性を正当化する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の説明
したがって、第1の態様において、本発明は、患者のサンプルを分析して、miR-127、miR-126、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAの発現レベルを決定し、コントロール値と該発現レベルを比較することを含む、該レベルの変化が腎損傷を示す急性腎損傷の診断および/または予後方法を提供する。
【0008】
本発明のさらに詳しい1つの態様において、患者のサンプルは血液である。本発明のもう1つの詳しい態様において、サンプルは血清である。本発明のもう1つの態様において、サンプルは尿である。
【0009】
さらに詳しくは1つの態様において、急性腎損傷の診断および/または予後は、miR-127単独の発現レベル、またはmiR-126、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAと組み合わせての発現レベルの決定によって行われる。
【0010】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する血清miR-127の発現レベルの減少は、急性腎損傷を示す。
【0011】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する尿miR-127の発現レベルの増加は、急性腎損傷を示す。
【0012】
さらに詳しくは1つの態様において、急性腎損傷の診断および/または予後は、miR-126単独の発現レベル、またはmiR-127、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAと組み合わせての発現レベルの決定によって行われる。
【0013】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する血清miR-126の発現レベルの減少は、急性腎損傷を示す。
【0014】
さらに詳しくは1つの態様において、急性腎損傷の診断および/または予後は、miR-210単独の発現レベル、またはmiR-127、miR-126およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAと組み合わせての発現レベルの決定によって行われる。
【0015】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する血清miR-210の発現レベルの増加は、急性腎損傷を示す。
【0016】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する尿miR-210の発現レベルの減少は、急性腎損傷を示す。
【0017】
さらに詳しくは1つの態様において、急性腎損傷の診断および/または予後は、miR-101単独の発現レベル、またはmiR-127、miR-126およびmiR-210から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAと組み合わせての発現レベルの決定によって行われる。
【0018】
さらに詳しくは1つの態様において、コントロール値に対する血清miR-101の発現レベルの増加は、急性腎損傷を示す。
【0019】
本発明において、急性腎損傷は、有害物質または放射線造影手段による腎臓損傷の症例なので、虚血性の病因による原発性または続発性の腎臓の損傷を意味し、いずれにしても、慢性腎臓損傷は除外される。
【0020】
本発明のさらに詳しい1つの態様において、マイクロRNAの発現は、PCRによって決定される。さらに詳しくは1つの態様において、マイクロRNAの発現は、定量的PCRによって決定される。さらに詳しくは1つの態様において、マイクロRNAの発現は、多重PCRによって決定される。
【0021】
本発明のもう1つの詳しい態様において、マイクロRNAの発現は、全RNAマイクロアレイによって決定される。
【0022】
第2の態様において、本発明は、本発明方法を行うのに必要なプローブおよびプライマーを含む、急性腎損傷の診断および/または予後のためのキットを提供する。
【0023】
本発明の1つの詳しい態様において、キットは、miR-127、miR-126、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAの発現レベルを決定するのに必要なプローブおよびプライマーを含む。
【0024】
本発明のさらに詳しいもう1つの態様において、キットは、RNAマイクロアレイを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHK-2ヒト近位尿細管細胞におけるmiR-126の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:6時間の栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-3、R-6、R-24時間:6時間の低酸素後、再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図2】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHK-2ヒト近位尿細管細胞におけるmiR-210の発現を示す。NX:酸素率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-3、R-6、R-24時間:6時間の低酸素後、再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図3】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHK-2ヒト近位尿細管細胞におけるmiR-101の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-3、R-6、R-24時間:6時間の低酸素後、再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図4】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHK-2ヒト近位尿細管細胞におけるmiR-127の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-3、R-6、R-24時間:6時間の低酸素後、再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図5】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたNRK-52Eラット近位尿細管細胞におけるmiR-101の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-6時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図6】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたNRK-52Eラット近位尿細管細胞におけるmiR-127の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-6時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図7】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHMECヒト内皮細胞におけるmiR-101の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図8】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHMECヒト内皮細胞におけるmiR-127の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図9】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHMECヒト内皮細胞におけるmiR-210の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図10】低酸素/再酸素化プロトコルを受けたHMECヒト内皮細胞におけるmiR-126の発現を示す。NX:酸素利用率(酸素正常状態、21%)および栄養素利用率(10% FBSを含む完全培地);CC:栄養制限を受けたコントロール細胞(無栄養培地中にある);Hyp:栄養および酸素制限を受けた細胞(無栄養培地中、酸素1%);R-15分、R-30分、R-1時間、R-3時間、R-24時間:再び酸素および栄養素利用率の正常状態下にあった細胞。
【図11】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の血清miR-127の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0時間および3日:患者のサンプルを採取した時間、ARFによるアドミッタンス(0時間)およびその後の進行時(3日)。
【図12】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の尿miR-127の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0時間および3日:患者のサンプルを採取した時間、ARFによるアドミッタンス(0時間)およびその後の進行時(3日)。
【図13】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の血清miR-126の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0時間および3日:患者のサンプルを採取した時間、ARFによるアドミッタンス(0時間)およびその後の進行時(3日)。
【図14】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の血清miR-210の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0日、1日、2日、3日、7日:患者のサンプルを採取した時間、ARFによるアドミッタンス(0時間)およびその後の進行時。
【図15】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の尿miR-210の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0日、1日、2日、3日、7日:患者のサンプルを採取した時間、ARFによるアドミッタンス(0時間)およびその後の進行時。
【図16】虚血性病因による急性腎不全(ARF)であると診断された患者の血清miR-101の発現を示す。コントロール:健康なコントロールにおける1に等しいmiRNAの発現。患者の発現データは、このデータに相対化される。0日、1日、2日、3日、7日:患者のサンプルを採取した時間、ARFの開始(0時間)およびその後の進行時。
【図17】血清サンプル中のmiR-101の発現を示す;a:グループIAに属する患者;b:グループIBに属する患者;およびc:グループIIに属する患者。
【図18】血清サンプル中のmiR-127の発現を示す;a:グループIAに属する患者;b:グループIBに属する患者;およびc:グループIIに属する患者。
【図19】血清サンプル中のmiR-126の発現を示す;a:グループIAに属する患者;b:グループIBに属する患者;およびc:グループIIに属する患者。
【図20】血清サンプル中のmiR-210の発現を示す;a:グループIAに属する患者;b:グループIBに属する患者;およびc:グループIIに属する患者。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な記載
R/Iを偽装しているHRモデルにおいて、マイクロRNA:miR-127、miR-126、miR-210およびmiR-101のそれぞれが、単独あるいは組み合わせで腎損傷のバイオマーカーとして機能するようにディファレンシャル方式で(in a differential way)発現されるこれらのマイクロRNAを、アレイの使用によって同定した。
【実施例1】
【0027】
低酸素/再酸素化を受けた細胞株におけるmiRNAの発現
特異的血清、抗生物質および成長因子を含む適切な手段で、以下の細胞(HK2:ヒト近位尿細管細胞、NRK-52E:ラット近位尿細管細胞およびHMEC:ヒト微小血管内皮細胞)の培養を行った。細胞は、湿潤雰囲気およびCO2 5%下で37℃に維持した。
【0028】
上述の細胞株は、低酸素/再酸素化プロトコルを受けた。すなわち、細胞株は、酸素圧および栄養素利用率において変化を受けた。そのために、2つの異なるインキュベーターを用いた:CO2 5%、O2 1%、N2 94%の混合物で灌流している37℃の密封インキュベーター内での低酸素;CO2 5%で灌流している37℃の標準インキュベーター内での再酸素化。細胞を集密になるまで培養し、低酸素の24時間前に血清を奪った。低酸素の間、低濃度のグルコースまたはその誘導体とともに、細胞を無血清最少培地(HBSS)中に保持した。再酸素化の間、完全培地を用いた(Saenz-Moralesら、2006)。すべてのサンプルの低酸素時間は、6時間であり、再酸素化時間は変動した(15分〜72時間)。すべてのインビトロ実験を、少なくとも3回繰り返した。
【0029】
次に、細胞株におけるマイクロRNAのはっきりした発現をPCRによって決定したが、このために、および液体サンプル(血清または尿)から全RNAを抽出し、滴定した後、それらの各50ナノグラムを15マイクロリットル中のレトロ転写(RT)の反応に用いた。このステップのために、特別の市販のプライマー(ステムループプライマー)を用いた。これらのプライマーは、各miRNAに対して特異的であった。RT後、それは、定量的様式で増幅反応に取り込まれた(qPCR)。この反応は、総量10マイクロリットルで行われ、RT総反応1マイクロリットルおよび各miRNAに対する特異的プライマーおよび蛍光キャッチャーを有するTaqmanプローブを用いた。RTおよびPCRのためのすべての試薬、両プライマーおよび反応混合物、酵素およびヌクレオチドは、Applied Biosystemsから購入した。結果を以下に示した。
【0030】
図1に示すように、栄養素および酸素の制限は、正常な状況と比べて、miR-126の発現を非常に有意に減少させたので、その発現レベルは、両方の利用可能性に大きく依存した。miRNAの発現は、細胞が、酸素および栄養素を処理するようになる再酸素化に際し、回復した。したがって、miR-126の発現レベルの減少は、腎虚血の兆候である近位尿細管細胞における栄養素および酸素の欠乏を示した。一方、3時間の再酸素化がインビトロにおける上皮への重要な損傷を記録したことを考えれば、このmiRNAの発現が低いことは、虚血後の近位尿細管上皮の損傷を示した。
【0031】
図2に示すように、栄養素および酸素の利用率の制限は正常状態と比べてmiR-210の発現を非常に有意に減少させたので、miR-126と同様に、miR-210の発現レベルは、両者に大きく依存した。miRNAの発現は、酸素および栄養素を処理することに細胞が戻る再酸素化に際して回復した。miR-210の減少は、miR-126の場合のように腎虚血を示すものである、近位尿細管細胞における栄養素および酸素の欠乏を示した。一方、3時間の再酸素化が、インビトロでの上皮への損傷を記録したならば、miR-210の低い発現は、虚血後の近位尿細管内皮の損傷を示した。
【0032】
図3に示すように、miR-101は、正常酸素条件下と比べて、低酸素条件下でその発現を増加させた。このmiRNAの発現は、酸素および栄養素の利用率が再び正常化される再酸素化において、再び正常化されていた。低酸素中の近位細胞におけるこのmiRNAの発現は、腎虚血を示した。
【0033】
図4において、miR-127は、正常酸素条件下と比べて、低酸素条件下でその発現を増加させた。このmiRNAの発現は、再酸素化下で有意に減少し、上皮単層が回復すると、24時間の再酸素化で再び増加した。したがって、低酸素条件中の近位細胞におけるmiR-127発現の増加は、腎虚血を示した。再酸素化下でのその早期の発現の減少は、虚血性損傷を示し、その後の増加は、内皮回復を示した。
【0034】
図5に示すように、miR-101の発現は、このラット細胞における正常酸素条件下と比べて高レベルの発現を伴ったが、再酸素化下で迅速に正常化され、酸素および栄養素の利用率は、再び正常化された。低酸素条件中の近位細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。24時間の再酸素化における新たな増加は、上皮細胞の回復を示した。
【0035】
図6に示すように、そして、Hk-2 (ヒト尿細管)細胞と同様に、miR-127は、正常条件と比べて、栄養素および酸素の利用率が制限される低酸素条件下でその発現を増加させた。このmiRNAの発現は、酸素および栄養素が再び利用可能である再酸素化下で迅速に正常化された。低酸素条件中の近位細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。
【0036】
図7に示すように、そして、近位尿細管細胞と同様に、miR-101は、正常酸素条件と比べて、低酸素条件下でその発現を増加させた。このmiRNAの発現は、酸素および栄養素の利用率が再び正常化される再酸素化下で高いままで維持され、24時間の再酸素化で正常化を開始した。低酸素条件中の内皮細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。再酸素化下におけるその高い発現は、内皮活性化(炎症促進)状態を伴い、24時間で正常化が開始した。
【0037】
図8に示すように、そして、近位尿細管細胞と同様に、miR-127は、正常酸素条件と比べて、栄養素および酸素の利用率が制限される低酸素条件下でその発現を増加させた。このmiRNAの発現は、酸素および栄養素の利用率が再び正常化される再酸素化下で高いままで維持され、24時間の再酸素化で正常化を開始した。低酸素条件中の内皮細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。再酸素化下におけるその高い発現は、内皮活性化(炎症促進)状態を伴い、24時間で正常化が開始した。
【0038】
図9に示すように、そして、近位尿細管細胞におけるこのmiRNAとは異なって、miR-210は、正常酸素条件と比べて、低酸素条件下で、その発現を控えめに増加させた。このmiRNAの発現は、下で高く維持され、そして24時間の再酸素化でその発現を突然に減少させた。低酸素条件中の内皮細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。miR-127およびmiR-101と同様に、再酸素化下でのその発現は、内皮活性化(炎症促進)状態を伴い、24時間で正常化が開始した。
【0039】
図10に示すように、miR-126は、正常酸素条件と比べて、栄養素および酸素の利用率が制限される低酸素条件下でその発現を控えめに増加させた。酸素および栄養素が利用可能である1時間の再酸素化で、それは非常に有意に増加した。その後、このmiRNAの発現は正常化された。低酸素条件中の内皮細胞におけるこのmiRNAの発現の増加は、腎虚血を示した。1時間の再酸素化で非常に有意な増加は、最大内皮活性化(炎症促進)状態と、明白に関連した。
【実施例2】
【0040】
急性腎不全と診断された患者におけるmiRNAの発現
患者のサンプルを用いる研究を予想的方法で行った。適切なインフォームド・コンセントを通して患者または患者の法定代理人による承諾を得た後、そして、我々の病院の臨床研究倫理委員会による研究の承認前に、下記の患者のグループにおける移植の場合、血液および尿ならびに腎生検のサンプルを採取した。
【0041】
腎移植の患者のサンプル
50名の移植を受けた人々(新たに腎移植および異なる免疫抑制処方を受けた患者)からのサンプルを分析し、2つのグループに組織した:
1.即時型移植片機能を得た25名の患者
2.遅延型移植片機能を得た25名の患者
血液および尿のサンプルを、腎移植後の第1日、第7日、第15日、第30日に採取し、これらの日々において、研究対象のmiRNAの発現をqRT-PCRによって決定した。
【0042】
移植片非機能の場合、第7日に生検を行い、ATNの相が解消されるまで、7−10日毎に繰り返した。拒絶反応の疑いがある場合、生検による確認後、これらの患者を除外した。
移植された患者の場合、以下の情報を集め、決定した:
−レシピエントの特徴:年齢、性別および透析時間
−ドナーの特徴:ドナーのタイプ(脳死、心停止)、年齢、性別、血管作用薬要
−移植片の特徴:熱、冷虚血の回数および吻合の回数;HLA適合性および免疫抑制
−第2、4および12週における移植片の機能
【0043】
血液サンプルを8 mlのVACUETTEチューブ(z serum sep clot activator)に採取し、2500 rpmで10分間遠心分離した。
分離した血清を遠心分離によって集め、分注し、Ramon and Cajal HospitalのBioBankの基準にしたがって保管した(固有コードを付けた匿名チューブ中、-80℃で)。
【0044】
尿サンプルを尿の標準バイアルに集めるか、またはプローブのデポジットから取り出し、2500 rpmで10分間遠心分離して沈殿物およびその他の残渣を除去し、分注し、Ramon and Cajal HospitalのBioBankの基準にしたがって保管した(固有コードを付けた匿名チューブ中、-80℃で)。
【0045】
それらのすべては、利権協定を用いるBioBankによるその利権を必要とした。我々は、この目的のために、定量的PCRによる、両方の液体の100-200マイクロリットルのサンプル中でmiRNAを増幅するための技術を最適化したので、最大500マイクロリットルを必要であり、液体のサンプル(血清または尿)からの全RNAの抽出を行った後、滴定した後、それらの各50ナノグラムを15マイクロリットル中のレトロ転写(RT)の反応に用いた。特別の市販のプライマー(ステムループプライマー)を用いた。これらのプライマーは、各miRNAに対して特異的であった。RT後、それは、定量的様式で増幅反応に取り込まれた(qPCR)。この反応は、総量10マイクロリットルで行われ、RT総反応1マイクロリットルおよび各miRNAに対する特異的プライマーおよび蛍光キャッチャーを有するTaqmanプローブを用いた。RTおよびPCRのためのすべての試薬、両プライマーおよび反応混合物、酵素およびヌクレオチドは、Applied Biosystemsから購入した。結果を以下に示した。
【0046】
全RNAの抽出の前の患者の血清および尿サンプルの処理は、以下の通りである:血清または尿の100-200マイクロリットルのアリコートを56℃にて1時間インキュベートして、プロテイナーゼK(65ミリグラム/ミリリットル)で消化した。その後、フェノール/クロロホルム(5:1)で最初の抽出を行い、使用説明書に従い、High Pure miRNA 単離キット(Roche)を用いて水相を処理した。
【0047】
心臓手術後の患者のサンプル:
50名の患者のサンプルを分析し、以下のグループに組織した:
−IA:体外循環(ECC)を伴う計画的手術を受けた、ARF発生のリスクが低い10名の成人患者、すなわち、Thakar5システムにおいてスコアが0〜2であるか、または簡易SRI6において0〜1である患者
−IB:ECCを伴う最初の手術を受けた先天性心疾患の10名の小児患者
−II:変化した基礎腎機能を有し、Thakar5システムにおいてスコアが>5であるか、またはSRI6において≧3である、ECCを伴う計画的手術を受けた15名の成人患者
−III:正常な腎機能を有し、先のセクションと同じスコアである、ECCを伴う計画的手術を受けた15名の成人患者
【0048】
各患者について、以下の時点において、miRNAの測定を行った:
−基礎となる手術前
−ICUにて開始、2時間
−手術の24時間、48時間および72時間後
−第7日(グループIAおよびIBについて任意)
【0049】
図11に示すように、miR-127の発現は、健康なコントロールにおいて大きく減少した。患者の血清中の、このmiRNAの発現の減少は、腎虚血性損傷またはARFを示した。これらのデータは、図18に示すデータと相関する。
【0050】
図12に示すように、そして、血清における減少と相関して、miR-127の発現は、健康なコントロールにおいて有意に増加した。患者の血清中の、このmiRNAの発現の減少および対応する尿の増加は、腎虚血性損傷またはARFの早期診断を示した。
【0051】
図13に示すように、miR-126の発現の血清レベルは、虚血性腎損傷の兆候の時点で、有意に減少し、24時間の時点で大きく増加し、続いて正常化された。このことは、患者の血清中の、このmiRNAの発現の減少は、腎虚血性損傷またはARFの早期診断を示した。インビトロモデルで議論したように、24時間の時点でのその増加は、続いての炎症反応を伴う虚血後の内皮活性化を示した。これらのデータは、図19に示すデータと相関する。
【0052】
図14に示すように、血清miR-210は、虚血性腎損傷の兆候の時点で、発現を有意に増加させた;その増加は、最初の24時間中維持され、後に正常化された。これらのデータは、患者の血清中の、このmiRNAの発現の増加が、腎虚血性損傷またはARFの早期診断マーカーであることを示した。
【0053】
図15に示すように、尿miR-210は、48時間の時点で、発現を有意に増加させ、後に、正常化された。このmiRNAが、実験モデルにおける上皮回復が観察され始める時点で、HK-2細胞において発現を増加させたことを考慮すると、このことは、患者の尿における48時間の時点での、このmiRNAの発現の増加が、腎虚血後の回復の兆候であることを示した。これらのデータは、図20に示すデータと相関する。
【0054】
図16に示すように、miR-101の発現は、開始の時点で、健康なコントロールにおいて早期に有意に増加し、進行中の健康な被験者において有意な増加は、もはや検出されなかった。このことは、患者の血清中の、このmiRNAの発現の増加が、腎虚血性損傷の早期診断マーカーであることを示した。これらのデータは、図17に示すデータと相関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のサンプルを分析して、miR-127、miR-126、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAの発現レベルを決定し、コントロール値と該発現レベルを比較することを含む、該レベルの変化が腎損傷を示す、急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項2】
分析されるサンプルが、血液、血清または尿から選ばれる、請求項1に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項3】
コントロール値に対する血清miR-127の発現レベルの減少が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項4】
コントロール値に対する尿miR-127の発現レベルの増加が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項5】
コントロール値に対する血清miR-126の発現レベルの減少が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項6】
コントロール値に対する血清miR-210の発現レベルの増加が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項7】
コントロール値に対する尿miR-210の発現レベルの増加が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項8】
コントロール値に対する血清miR-101の発現レベルの増加が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項9】
マイクロRNAの発現が、PCRによって決定される、前記請求項のいずれかに記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項10】
マイクロRNAの発現が、定量的PCRによって決定される、前記請求項のいずれかに記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項11】
マイクロRNAの発現が、ARNマイクロアレイによって決定される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記請求項1〜11に記載の方法を行うのに必要なプローブおよびプライマーを含む、急性腎損傷の診断および/または予後のためのキット。
【請求項1】
患者のサンプルを分析して、miR-127、miR-126、miR-210およびmiR-101から選ばれる少なくとも1つのマイクロRNAの発現レベルを決定し、コントロール値と該発現レベルを比較することを含む、該レベルの変化が腎損傷を示す、急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項2】
分析されるサンプルが、血液、血清または尿から選ばれる、請求項1に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項3】
コントロール値に対する血清miR-127の発現レベルの減少が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項4】
コントロール値に対する尿miR-127の発現レベルの増加が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項5】
コントロール値に対する血清miR-126の発現レベルの減少が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項6】
コントロール値に対する血清miR-210の発現レベルの増加が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項7】
コントロール値に対する尿miR-210の発現レベルの増加が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項8】
コントロール値に対する血清miR-101の発現レベルの増加が、急性腎損傷を示す、請求項1または2に記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項9】
マイクロRNAの発現が、PCRによって決定される、前記請求項のいずれかに記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項10】
マイクロRNAの発現が、定量的PCRによって決定される、前記請求項のいずれかに記載の急性腎損傷の診断および/または予後方法。
【請求項11】
マイクロRNAの発現が、ARNマイクロアレイによって決定される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記請求項1〜11に記載の方法を行うのに必要なプローブおよびプライマーを含む、急性腎損傷の診断および/または予後のためのキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2013−503617(P2013−503617A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527360(P2012−527360)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070579
【国際公開番号】WO2011/027019
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512054492)フンダシオン・パラ・ラ・インベスティガシオン・ビオメディカ・デル・オスピタル・ウニベルシタリオ・ラモン・イ・カハル (1)
【氏名又は名称原語表記】FUNDACION PARA LA INVESTIGACION BIOMEDICA DEL HOSPITAL UNIVERSITARIO RAMON Y CAJAL
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070579
【国際公開番号】WO2011/027019
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512054492)フンダシオン・パラ・ラ・インベスティガシオン・ビオメディカ・デル・オスピタル・ウニベルシタリオ・ラモン・イ・カハル (1)
【氏名又は名称原語表記】FUNDACION PARA LA INVESTIGACION BIOMEDICA DEL HOSPITAL UNIVERSITARIO RAMON Y CAJAL
【Fターム(参考)】
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