患者の努力に比例した換気のためのシステムおよび方法
本開示のさまざまな実施形態が、呼吸の支援のためのシステム、方法、および装置を提供する。一例として、コンピュータ可読媒体を含み、そのような媒体が、測定された圧力値および正味の流量値を受信するようにプロセッサによって実行できるインストラクションを含んでいる換気システム(1)が開示される。患者の努力の値(55)が、患者の努力と、測定された圧力値と、正味の流量値との間の関係にもとづいて計算される。さらにインストラクションを、患者の努力の値の関数として変化する気体の送出の基準を計算すべく実行することができる。次いで、気体の送出の基準に一致して気体が送出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸器に関し、さらに詳しくは、動的な換気システムにおいて時間依存性の信号および/または呼吸パラメータを特定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器は、患者の肺を気体で換気することで、患者の自発的な呼吸の能力が何らかの形で損なわれた場合に患者を補助する。換気は、所定の気体混合物を定められた換気の態様に従って患者へと供給することによって達成される。各々の患者が異なる換気の方法を必要とする可能性があるため、最近の人工呼吸器は、個々の患者の特定のニーズに合わせてカスタマイズが可能である。
【0003】
最近の人工呼吸器は、動的な挙動および出力(患者へともたらされる圧力および流れなど)が入力信号(気体の流れなど)によって駆動される動的なシステムである。そのような人工呼吸器の適切な動作は、患者の気道の抵抗および肺のコンプライアンスなどといったさまざまな呼吸パラメータのある程度の理解に依存する。これらのパラメータは、ある換気システムと他の換気システムとで大きく異なる可能性があり、ある患者と他の患者とで大きく異なる可能性がある。多くの場合、換気システムの適切な動作は、そのようなパラメータの規定または推定の精度によって制限される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lennart Ljung、「System Identification、Theory for the User」、Second Edition、Prentice Hall、1999(ISBN 0−13−656695−2)
【非特許文献2】Petros IoannouおよびJing Sun、Robust Adaptive Control、Prentice Hall、1995(ISBN 9780134391007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定の個人または特定の換気の状況についての換気パラメータを特定するための方法が、開発されている。そのような方法を、静的な方法および動的な方法という2つの別々の分類へと分けることが可能である。静的な方法においては、呼吸パラメータは、典型的には、システムに短時間の平衡状態が作り出されている間(すなわち、操作)に、推定されるパラメータに関連する量の少数の測定を使用して推定される。対照的に、動的な方法は、換気下の患者の動的な挙動を示すように働き、典型的には、換気の状況の連続測定または部分的な連続測定にもとづく。歴史的に、呼吸パラメータの特定は、未知の入力信号によって駆動される換気システムの場合に難題をもたらしてきた。これは、能動的な呼吸のある患者に関係する換気システムおよび漏れのある換気システムの場合に当てはまり、多くの既存の手法は、システムを駆動するこれらの信号を典型的には測定不可能であるにもかかわらず特定アルゴリズムにおいて考慮しなければならないため、充分に正確な結果をもたらすことができない。例えば、患者の呼吸の努力を推定するための種々の手法は、不正確であり、したがって推定による患者の努力に依存する動的な方法は、多くの場合に不適切である。
【0006】
いくつかの場合には、患者の呼吸の努力が、運動方程式を使用し、患者の肺へと出入りする気体の流れの測定および圧力の測定のみに依存して推定されている。そのような手法の信頼性は、患者の肺へと出入りする気体の流れをどの程度の精度で測定できるかによって制限される。しかしながら、そのような測定は、患者の気管へと挿入されたチューブまたはその付近に位置する流量センサに依存するため、本質的に不正確である。流量センサの精度が、肺から吐き出される気体の湿気ゆえに大きく低下する。さらに、患者の気道の近くのそのような流量センサは、既存の換気システムにおいては利用できないことが多い。
【0007】
したがって、先進の換気システムおよびそのような換気システムの使用方法についてのニーズが、当該技術分野に存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、人工呼吸器に関し、さらに詳しくは、患者の呼吸の努力に少なくとも部分的にもとづいて気体の送出を制御するためのシステムおよび方法に関する。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態は、患者が充分自身での呼吸のために発揮することができる努力に比例して患者を換気することができる換気システムを提供する。そのようなシステムのいくつかは、コンピュータ可読媒体から入手できるインストラクションを実行することができるプロセッサを含んでいる。インストラクションが、測定された圧力の値の受信および正味の流量の値の受信をもたらす。患者の努力の値が、測定された圧力の値と、正味の流量の値と、患者の努力との間の関係にもとづいて計算される。患者の努力の値の関数として変化する気体の送出の基準が計算される。さらにインストラクションを、気体の送出の基準に一致した気体の送出を生じさせるために実行することができる。いくつかの場合においては、気体の送出の基準が、圧力および流量から選択され、流量は、患者の肺の流量、入口気体流量、または他の測定可能な流量もしくは推定される流量であってもよく、圧力は、肺の圧力、Y字接続部における圧力、または他の測定可能な圧力もしくは推定される圧力であってもよい。
【0010】
上述の実施形態のいくつかの場合においては、インストラクションを、患者の努力の値にもとづいて吸気段階を判断するためにさらに実行することができる。いくつかのそのような場合には、気体の送出が、吸気段階の最中に生じさせられる。特定の場合には、吸気段階は、計算された患者の努力の値がゼロよりも大きい場合に示される。
【0011】
上述の実施形態の種々の場合においては、患者の努力の値の第1の関数が、一定の乗数である。他の場合には、患者の努力の値の第1の関数が、非線形関数である。さらに他の場合には、患者の努力の値の第1の関数が、時間変化する関数である。
【0012】
いくつかの場合には、患者の努力の値が、推定による正規化された予測誤差、フィルタ処理された圧力の値、回帰ベクトル、およびパラメータベクトルの現在の推定値から選択される1つ以上の中間値の組み合わせによってさらに計算される。
【0013】
上述の実施形態のいくつかの場合には、患者の努力の値を計算するために使用される関係が、パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係である。いくつかの場合には、パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係が、回帰の形態z=ΘTφ+φdである。
パラメータ化された入力−出力の関係を、伝達関数から導出することができ、いくつかの場合には、伝達関数が、モデル
【数1】
から導出される。
【0014】
本開示の他の実施形態は、呼吸の支援をもたらすための方法を含む。そのような方法は、圧力を測定し、測定された圧力をもたらすステップ、ならびに入口流量および出口流量を測定し、測定された正味の流量をもたらすステップを含む。測定された圧力に関係する第1の値と、測定された正味の流量に関係する第2の値と、患者の努力に関係する第3の値との間の関係が、患者の努力の推定を計算するために使用される。次いで、気体が、患者の努力の推定に比例して供給される。いくつかの場合には、患者の努力の推定に比例して気体を供給することが、患者の努力の推定に比例した圧力および患者の努力の推定に比例した流量の何らかの組み合わせで気体を供給することを含んでいる。いくつかの場合には、患者の努力の推定が、測定された圧力および測定された正味の流量から導出される1つ以上の中間値の組み合わせにもとづき、1つ以上の中間値は、推定による正規化された予測誤差(ε)、フィルタ処理された圧力の値(z)、回帰ベクトル(φT)、およびパラメータベクトル(Θ)の現在の推定された値から選択される。
【0015】
上述の実施形態の1つ以上の場合においては、第2の値が、測定された正味の流量のフィルタ処理されたバージョンまたは測定された正味の流量であってもよい。上述の実施形態のいくつかの場合においては、第1の値が、測定された圧力のフィルタ処理されたバージョンまたは測定された圧力であってもよい。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、気体の入口と、気体の出口と、気体の入口および気体の出口を接続する管と、圧力センサと、少なくとも2つの流量センサとを備える換気システムを提供する。圧力センサが、管内の圧力を示す測定された圧力値をもたらすように機能することができる。流量センサのうちの1つが、気体の入口に関する流量を示す入口流量値をもたらすように機能することができ、別の流量センサが、気体の出口に関する流量を示す出口流量値をもたらすように機能することができる。コンピュータ可読媒体へと通信可能に接続されたプロセッサが含まれる。コンピュータ可読媒体が、測定された圧力の値を受信し、正味の流量の値を受信し、患者の努力と、測定された圧力の値と、正味の流量の値との間の関係にもとづいて、患者の努力の値を計算し、患者の努力の値の第1の関数として変化する気体の送出の基準を計算し、患者の努力の値にもとづいて吸気段階を判断し、気体の送出の基準に一致した気体の送出を生じさせるようにプロセッサによって実行することができるインストラクションを含んでいる。いくつかの実施形態においては、気体の送出の基準が、圧力および/または流量である。
【0017】
この概要は、本発明のいくつかの実施形態の全体的な概要を提示するにすぎない。本発明の多数の他の目的、特徴、利点、および実施形態が、以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面から、さらに充分に明らかになる。
【0018】
本開示の種々の実施形態のさらなる理解を、本明細書の残りの部分において説明される図面を参照することによって、実現することが可能である。図面においては、いくつかの図を通して、同様の参照番号が類似の構成要素を指し示すために使用される可能性がある。いくつかの場合には、小文字で構成される下位ラベルが、複数の類似の構成要素のうちの1つを指すために参照番号に組み合わせられる。存在する下位ラベルを指定することなく参照番号について参照される場合、それは、そのような複数の類似の構成要素のすべてを指している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】適応的に推定された呼吸パラメータおよび患者の努力をもたらすことができる適応計算モジュールを特に含んでいる本発明の種々の実施形態による換気システムを示している。
【図2】本発明のいくつかの実施形態に従って患者の努力を割り出すために使用することができる患者人工呼吸器システムおよび関連のパラメータ化モデルを示している。
【図3】本発明の特定の実施形態の実現を通じて達成することができる患者の努力の他の信号への相関について、図式的な例を提示している。
【図4】本発明の種々の実施形態に従って患者の努力を割り出すために、患者の努力を割り出すための本発明のいくつかの実施形態による方法を示しているフロー図である。
【図5】本発明の種々の実施形態に従って患者の努力を割り出すためのマイクロプロセッサベースのシステムを示している。
【図6】換気サイクルをトリガするための本発明のいくつかの実施形態による方法を示しているフロー図である。
【図7】本発明の種々の実施形態による推定された患者の努力の信号にもとづく換気サイクルのトリガを示しているタイミング図である。
【図8】圧力センサのトリガのプロセスを本発明の1つ以上の実施形態による推定された患者の努力の信号のトリガに対して比較するタイミング図である。
【図9】本発明の種々の実施形態に従って患者の努力に比例した換気を提供するための方法を示しているフロー図である。
【図10】本発明の1つ以上の実施形態による患者の努力に比例した換気の提供を図式的に示している一群のタイミング図を示している。
【図11】本発明のいくつかの実施形態による能動的な呼吸を有する患者に対応する患者の努力の表示を示している典型的なグラフィカルインターフェイスを示している。
【図12】本発明のいくつかの実施形態による能動的な呼吸を有する患者に対応する呼吸パラメータの表示を示している典型的なグラフィカルインターフェイスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、人工呼吸器に関し、さらに詳しくは、患者の呼吸の努力にもとづいて気体の送出を制御するためのシステムおよび方法に関する。
【0021】
換気サイクルの開始および終了を、自分自身での呼吸のために患者が行うことができる努力(すなわち、患者の努力)に同期させることが望ましい。例えば、人工呼吸器のトリガを正確にすることで、患者が吸気を試みるとすぐに人工呼吸器が呼気を開始させることが望ましい。いくつかの人口呼吸器が、患者が吸気を試みることによって生じる換気回路の圧力の変化を検出する圧力トリガを使用する一方で、他の人工呼吸器は、患者が吸気を試みることによって生じる流れの変化を検出する流量トリガを使用する。いずれの場合も、患者の努力と人工呼吸器の応答との間に、さまざまな理由に起因して遅延が生じる可能性がある。例えば、通気回路における漏れのために、患者の吸気の際に空気が回路へと進入する可能性がある。患者の呼吸の全体が、人工呼吸器の流量センサによって測定されず、人工呼吸器が、吸気を検出するために流れの変化を監視することができる(流量トリガ)ため、人工呼吸器の呼吸の開始が遅れる可能性がある。本発明のいくつかの実施形態は、換気サイクルの開始および終了をトリガするために単独または他の信号との関連において使用することができる患者の努力の適度に正確な推定をもたらすことによって、同期の改善を促進する。さらに、本発明の1つ以上の実施形態においては、推定された患者の努力を、患者の比例換気の制御に関して追加的に使用することができる。そのような比例換気は、気体を、そのような気体を受け取ろうとする患者の努力に比例して患者へと送出するように機能する。本発明の種々の実施形態において、推定された患者の努力および/または呼吸パラメータを、医師が患者の監視および/または診断の目的に使用することができるグラフィカル表示を駆動するために使用することができる。
【0022】
本開示の種々の実施形態は、1つ以上の呼吸パラメータおよび換気システムを適度な精度で駆動する少なくとも1つの非測定の入力信号を推定するためのシステムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの非測定の入力信号を、測定された入力信号(測定された圧力および測定された流量など)から導出し、呼吸パラメータを推定するために使用することができる。非測定の入力信号は、これらに限られるわけではないが、患者の努力および/もしくは患者の努力の派生物、換気システムの気体の漏れ(すなわち人工呼吸器を患者へと接続する管または患者インターフェイスにおいて生じる漏れ)、患者の気体の漏れ(例えば、患者の肺における漏れ)、ならびに/または流量および圧力の検出誤差であってもよい。呼吸パラメータとして、これらに限られるわけではないが、肺のコンプライアンス(CL)、患者の抵抗(RP)、および管のコンプライアンス(CT)を挙げることができる。いくつかの場合には、呼吸パラメータおよび非測定の入力信号の両者の推定が同時である。いくつかの実施形態においては、非測定の入力信号が、患者の努力に強い相関を有しており、したがって後の人工呼吸器の動作において患者の努力の代理として使用することが可能である。他の実施形態においては、本発明の方法によって、呼吸パラメータを連続的にもたらすことができる。このように、患者の努力ならびに呼吸または換気システムのパラメータ(肺のコンプライアンス、患者の抵抗、漏れ、など)を割り出すことができる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態においては、測定可能な圧力と、測定可能な流量と、未知である患者の努力との間の関係が、患者の努力および種々の呼吸パラメータの連続的な推定をもたらすために利用される。特定の事例においては、関係が、測定された圧力、測定された流量、および患者の努力に特に関係する伝達関数として定められる。そのような場合には、伝達関数を、1つ以上の中間値をもたらすべく線形回帰技法を使用して還元することができ、次いでそのような中間値を、患者の努力の推定に使用することができる。一実施形態においては、測定された圧力および測定された流量の継続的な入力が、患者の努力を推定し、必要に応じて1つ以上の呼吸パラメータを推定するために、伝達関数へと差し込まれる。他の実施形態においては、患者の努力の推定を、連続する計算期間において患者の努力のより正確な推定を導出するために再帰的に使用することができる。したがって、再帰を使用することによって、推定された患者の努力の値の精度を連続的に改善することができる。
【0024】
いくつかの場合には、測定された流れが、系から出る気体の正味の流れを系へと入る気体の正味の流れに組み合わせた正味の流れの値である。一特定の場合においては、系への気体の正味の流れが、系への空気の流れに組み合わせられた酸素の流れを含んでいる。そのような流れは、測定が適度に容易であり、肺の付近の気体の流れの測定に付随することが多い不正確さに左右されることがない。
【0025】
いくつかの場合には、上述のように計算された患者の努力の信号またはその何らかの代用物を、換気サイクルをトリガするために使用することができる。そのような信号を使用することで、換気システムが、機械的な換気を自身で呼吸を行おうとする患者の努力により正確に同期させることができるようになる。
【0026】
特に、呼吸パラメータおよび患者の努力の派生物を、同じモデルへと入力することができ、その同じモデルから導出される相互依存式を使用して計算することができる。相互依存式のいくつかから計算された値は、他の相互依存式への入力として使用されるため、一般的に中間値と称することが可能である。本明細書において使用されるとき、「中間値」という語句は、その最も広い意味にて、ある式から導出されて他の式への入力として使用される値を意味して使用される。本開示の検討にもとづき、さまざまな中間値を本発明の種々の実施形態に関して利用できることに、留意すべきである。
【0027】
図1に目を向けると、本発明の種々の実施形態による換気システム1が示されている。換気システム1は、人工呼吸器10、適応計算モジュール20、グラフィカルユーザインターフェイス40、および比例/トリガ制御モジュール30を含む。人工呼吸器10は、測定された圧力65、測定された入口流70、および測定された出口流75をもたらすことができる当該技術分野において知られている任意の人工呼吸器であってもよい。適応計算モジュール20が、圧力65、入口流70、および出口流75を受け取り、推定による患者の努力55および推定による呼吸パラメータ60を計算する。患者の努力55は、患者の努力それ自体であっても、患者の努力に強く相関した何らかの信号であってもよい。患者の努力に相関する信号は、さらに詳しく後述される。呼吸パラメータ60は、さらに詳しく後述される種々のパラメータを含むことができる。一実施形態においては、適応計算モジュール20によって実行される計算が、先の中間値に依存して呼吸パラメータ60および患者の努力55の推定が更新される適応的な性質であってもよい。いくつかの実施形態においては、そのような中間値が、図1に破線によって示されるとおり、患者の努力55および/または呼吸パラメータ60の推定を含むことができる。代案(図示せず)として、適応計算モジュール20によって使用される先の中間値が、特定可能ないずれの呼吸パラメータにも直接には対応しない複合パラメータであってもよい(例えば、さらに詳しく後述される共分散行列およびパラメータベクトルなど)。
【0028】
図示の実施形態においては、患者の努力55が、比例/トリガ制御モジュール30へともたらされる。患者の努力55にもとづき、比例/トリガ制御モジュール30が、人工呼吸器10へともたらされる1つ以上の制御信号80を生成する。いくつかの実施形態においては、制御信号80が、気体を患者へと送出タイミングを制御する。種々の実施形態においては、制御信号80が、患者へと送出される気体の量を制御し、気体の量は、患者の努力55に比例する。
【0029】
人工呼吸器10が、グラフィカルユーザインターフェイス40を駆動する制御信号90を供給する。グラフィカルユーザインターフェイス40を、これらに限られるわけではないがユーザの指令の受信および/または人工呼吸器の動作に関するデータの表示などといったユーザとのやり取りを可能にするために、人工呼吸器10の一部として含むことができる。いくつかの実施形態においては、人工呼吸器10が、グラフィカルユーザインターフェイス40に対して、適応計算モジュール20によってもたらされる情報85を表示するように指示することができる。そのような情報として、さらに詳しく後述されるように、呼吸パラメータ60および/または患者の努力55を挙げることができる(ただし、これらに限られるわけではない)。
【0030】
本発明の種々の実施形態は、患者の努力を割り出すために、患者人工呼吸器システムのパラメータ化された動的モデルを利用する。人工呼吸器システム100のモデルが、図2に示されている。人工呼吸器システム100は、入口空気流105(qAIR)、入口酸素流110(qO2)、および出口気体流115(qE)を含んでいる。人工呼吸器システム100が、空気および酸素という2つの気体源を示しているが、本発明の別の実施形態に関して、より多数または少数の入口気体流を使用してもよいことに、留意すべきである。例えば、空気源だけを使用してもよく、または入口空気源および入口酸素源に加えて、ヘリウムおよび/もしくはヘリオックスとの混合気体の供給源を含んでもよい。本明細書の開示にもとづき、当業者であれば、本発明の種々の実施形態に関して使用することができる他のさまざまな気体源を、理解できる。
【0031】
システムに含まれる管、流量バルブ、および/または圧力監視装置が、人工呼吸器システム100における気体の流れに何らかの抵抗を招く。特に、空気抵抗120(Rair)、酸素抵抗125(RO2)、呼気抵抗130(REV)、および患者抵抗135(RP)(すなわち、気道抵抗および気管内の管の抵抗の何らかの組み合わせ)が存在し得る。圧力センサ150が、空気流および酸素流が組み合わせられる場所において入口の圧力(pI)を測定し、圧力センサ155が、呼気の出力において圧力(pE)を測定する。圧力センサ150を、それぞれの入口配管に組み合わせられた個々の圧力センサによって置き換えてもよいことを、理解すべきである。入口および出口の気体が組み合わせられる場所の圧力(pY)が、バッフル140(例えば、Y字形の気体の圧力)として表わされており、患者の肺における圧力(pL)が、別のバッフルによって表わされている。本発明のいくつかの実施形態においては、pYが、圧力に対応する特定の位置またはその付近に取り付けられる圧力測定装置を使用することによって割り出される。本発明の他の実施形態においては、pYが、pIまたはpEのいずれかに等しく設定される一方で、本発明の別の実施形態においては、pYが、pIおよびpEの平均に設定される。上述の3つの場合のいずれにおいても、pYは、測定値または他の直接測定の値の平均であるため、「直接的に測定」されると考えられる。管における漏れ160に関係する気体の流れ(qTleak)および患者における漏れ165に関係する気体の流れ(qPleak)も特定される。患者の努力の値195(PP)が、患者の肺に出入りする気体の力と相互作用する力として示されている。
【0032】
人工呼吸器システム100の動作を記述するために、さまざまな式を使用することができる。例えば、質量保存の原理を使用し、種々の流量値(すなわち、qAIR、qO2、qT、qTleak、qP、qPleak、qLUNG、qI)を組み合わせ、以下の3つの式を得ることができる。
【数2】
【数3】
【数4】
さらに、力の釣り合いの原理を使用して、圧力pY、pL、およびpP、ならびに流量qTおよびqLを、以下の関係に組み合わせることができる。
【数5】
【数6】
最後に、圧力と流量との間の関係を使用し、人工呼吸器システム100にもとづいて以下の式を導出することができる。
【数7】
人工呼吸器システム100から導出された上述の式を代数学によって操作し、行列の形態に書き直すことによって、図2の人工呼吸器システム100の動作の特徴を表わす以下のパラメータ化モデル190が生み出され、
【数8】
ここで、
【数9】
は、管の分岐部において測定された圧力の一次導関数であり、
【数10】
は、患者の肺の圧力の一次導関数であり、
【数11】
は、患者の努力の一次導関数であり、CTは、管のコンプライアンスを表わし、CLは、肺のコンプライアンスを表わす。利用される入口気体がより多数または少数である場合には、パラメータ化モデル190を、本発明の他の実施形態に従って種々の気体を考慮するように変更できることに、留意すべきである。
【0033】
本発明の種々の実施形態が、患者の努力pPを割り出すためにパラメータ化モデル190を利用する。本発明のさまざまな実施形態においては、計算を簡単にするために仮定を行うことができる。本発明の一特定の実施形態においては、漏れ160を、管の漏れの流量と開口における圧力低下との間の以下の線形関係を呈するものと仮定することができる。
【数12】
本発明の他の実施形態において、管の漏れの流量と開口における圧力低下との間の関係について、他の仮定を使用してもよいことに留意すべきである。管の漏れの流量についての上述の線形な仮定にもとづくと、パラメータ化モデル190を、以下のモデルへと還元することができる。
【数13】
【0034】
上述のパラメータ化モデルにもとづき、pYについての伝達関数が、
【数14】
のように定められ、ここで、測定された流量の各々の瞬間の和(例えば、qAIR+qO2−qE)を、正味の流量qNと称する。
【数15】
が、正味の流量(qN)から出力(pY)への伝達関数を表わし、
【数16】
が、患者の努力の導関数
【数17】
から出力(pY)への伝達関数を表わし、
【数18】
が、患者の漏れ(qPleak)から出力(pY)への伝達関数を表わす。先の伝達関数の第1項(すなわち、qN項)が、知られている測定された値に関する伝達関数であり、先の伝達関数の第2項(すなわち、pP項)が、未知の適応的に推定される値に関する伝達関数であることに、留意すべきである。本発明のいくつかの実施形態においては、第3項(すなわち、qPleak)が、簡単化のためにゼロであると仮定される。やはり上述のパラメータ化モデルを使用して、伝達関数の係数とシステムのパラメータとの間の関係は、以下のとおりである。
【数19】
ここで、
【数20】
【数21】
ここで、
【数22】
【数23】
【数24】
【0035】
以上から、パラメータ化された出力モデルを線形回帰の形態で導出することが可能である。パラメータ化された線形回帰出力モデルの定義における第1の段階は、以下のような未知のパラメータベクトルを定義することを含む。
【数25】
未知のパラメータモデルから、ひとたび推定されると、人工呼吸器システム100のすべての一括パラメータ(例えば、CT、CL、RP、およびλLEAK)を取り出すことができる。pYについての伝達関数の代数的な操作を通じて、
【数26】
として表わすことができる。
この場合において、圧力
【数27】
は、適切なフィルタ
【数28】
によるフィルタ処理後の圧力pY(s)を表わす。そのような適切なフィルタは、s2と
同じまたはより高次の多項式Λ(s)に依存する(例えば、s2、s3、s4...)。患者の漏れ(qPleak)をゼロであると仮定することによって、換気システム100のパラメータ化モデル190に対応する入力−出力の関係のコンパクトな線形回帰の形態が、
【数29】
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
と表わされ、ここで、zは、出力の圧力値であり、φTは、知られている信号の集まりを表わす回帰ベクトルであり、φdは、フィルタ処理された患者の努力である。
【0036】
この場合、システムパラメータ
【数34】
を推定するために標準線形回帰を使用することは、φdが未知であるため不可能である。未知の項
【数35】
を点検し、患者の努力の導関数
【数36】
が有界の信号であり、フィルタ(Λ(s))が安定多項式であり、
【数37】
が適切な線形フィルタであることを理解することによって、未知のフィルタ処理された患者の努力(すなわち、φd)が滑らかな信号であることが明らかである。この理解にもとづき、任意の時点tにおける未知のフィルタ処理された患者の努力の値を、時点t−dt(ここでdtは、無限小または有限であるが短い時間をあらわす)における値によって近似することができる。
【数38】
本発明のいくつかの実施形態においては、dtが、5ミリ秒以下である。上述の近似は、呼吸パラメータの計算に使用でき、次いで患者の努力の計算に使用することができる時点tにおける未知のフィルタ処理された患者の努力の信号の妥当な推測または予測を表わす。この妥当な推測を、以下の式に従って定めることができるシステムの出力(z)の予測値
【数39】
を割り出すために使用される以下の式
【数40】
に従って定めることができる。
この定義から、パラメータの特定の問題を、φ(t)およびz(t)に鑑みて
【数41】
(ここで、J()は、Θの凸(例えば、()2)関数である)を見つけるという問題の公式化によって解くことができる。この点から、いくつかの数学的解法のうちの1つを、問題を解くために適用することができる。一例として、修正再帰最小二乗法を使用することができる。そのような手法の非修正の数学的実現に関するさらなる詳細が、(1)Lennart Ljung、「System Identification、Theory for the User」、Second Edition、Prentice Hall、1999(ISBN 0−13−656695−2)および(2)Petros IoannouおよびJing Sun、Robust Adaptive Control、Prentice Hall、1995(ISBN 9780134391007)の一方または両方にさらに詳しく記載されている。上述の両文献は、参照により、あらゆる目的において本明細書に組み込まれる。
【0037】
修正再帰最小二乗法の実施において、以下の式
【数42】
に記載のように、予測誤差(ε)が最初に正規化され、信号が正規化された信号のために採用され、ここで、εは、正規化された予測誤差であり、
【数43】
および
【数44】
は、それぞれ時間期間dtに対応する出力およびリグレッサの差であり、mは、正規化信号である。加えて、修正関数J()(コスト関数と称される)が、以下の式
【数45】
に従って採用され、ここで、β>0およびQ0≧0が、忘却因子およびペナルティ行列と称される。これにもとづき、解Θにおいて以下の静的状態が満足されなければならない。
【数46】
【0038】
したがって、Θを、非再帰的に
【数47】
と発見することができ、ここで、
【数48】
である。
行列PおよびベクトルΘが、パラメータの特定の問題を解くために使用することができる再帰アルゴリズムの定義を完成させる以下の2つの微分方程式
【数49】
を満足し、ここで、εは、正規化された誤差または最後に測定された値と新たに測定された値との間の差である。
【0039】
以下の検討において、リアルタイムで患者の努力の現在の値を間接的に推定するために使用することができる方法を説明する。さらに、上述した中間値(例えば、伝達関数の内部の信号)のさまざまな組み合わせが、どのように非測定の患者の努力との高いレベルの相関を有するのかが実証される。相関ゆえに、中間値を、患者の努力を妥当な精度で特徴付けるために使用することができる。
【0040】
以上のように確立された関係から、
【数50】
が明らかである。
【0041】
【数51】
をもたらす適切なフィルタ
【数52】
を選択することによって、患者の努力の実際の導関数
【数53】
について、患者の努力の導関数の推定
【数54】
を、
【数55】
のように計算することができる。
【0042】
以下の式のもとづき、予測誤差信号
【数56】
が、患者の努力の信号
【数57】
およびそのフィルタ処理されたバージョンφdに相関付けられることが明らかである。
【数58】
【0043】
上記で定義された伝達関数およびパラメータベクトルΘの現在の推定を使用して、管の現在の圧力(py)の予測
【数59】
が、以下の式によって表わされる。
【数60】
【0044】
これから、予測誤差を、以下の式
【数61】
によって記述することができ、これが患者の努力の導関数
【数62】
のフィルタ処理されたバージョンである。さらに、換気システムが管の漏れがないことを特徴とする場合(すなわち、λLEAK=0と仮定される場合)、予測誤差
【数63】
は、伝達関数
【数64】
が積分関数であるため、患者の努力の信号(pP)に似る。
【0045】
上述の式は、患者の努力(すなわち、pPおよび/または
【数65】
)と正確に得ることができる流量および圧力の測定値との間の関係を表わしている。図3が、患者の努力(すなわち、pPおよび/または
【数66】
)と上述したアルゴリズムの内部の典型的な信号との間の典型的な相関を、図式的に示している。図示のように、タイミング図210が、患者の努力(pP)を時間の関数として示している。タイミング図205が、患者の努力の一次導関数
【数67】
を時間の関数として示している。タイミング図215が、
【数68】
を示しており、タイミング図220が、
【数69】
を示している。pP、
【数70】
【数71】
および
【数72】
の各々の大きさは、H2Oのセンチメートル単位で表わしている。上述した分析にもとづいて予想されるとおり、図210に示されている患者の努力(pP)と図215に示されている信号
【数73】
との間に強い相関が存在する。同様に、図205および220が、患者の努力の一次導関数
【数74】
と信号
【数75】
との間の強い相関を実証している。したがって、再現された信号を、通常であれば未知である信号
【数76】
およびpPを予測するために使用することができる。結果が単なる例であり、本明細書に提示の開示にもとづいて、当業者であれば、未知である患者の努力の信号およびその導関数を特徴付けるために、本発明の種々の実施形態を使用することによって達成することができる種々の別の信号およびそれらの遅延バージョンを理解できることに、留意すべきである。
【0046】
図4に目を向けると、フロー図300が、患者の努力を割り出すための本発明のいくつかの実施形態による方法を示している。種々の管を使用して被験者へと接続された人工呼吸器を含む人工呼吸器システムが用意される。人工呼吸器が、1つ以上の入口気体流を受け取り、出口気体流を被験者への入口/出口に加えて含んでいる。フロー図300に従い、管の圧力(py)が、正味の流量(qn)を生成するための入口流量および出口流量とともに測定される(ブロック305)。圧力の値(py)がフィルタ処理され、出力(z)としてもたらされ(ブロック310)、圧力(py)および正味の流量の値(qn)がフィルタ処理され、回帰ベクトル(φT)に組み合わせられる(ブロック315)。上述の値(すなわち、zおよびφT)の差および/または導関数が計算され、出力m2、
【数77】
および
【数78】
が生成される(ブロック320)。加えて、zおよび
【数79】
の時間遅延バージョン(すなわち、ze−sdtおよび
【数80】
)が生成される(ブロック317、318)。m2、
【数81】
【数82】
およびΘTが、推定による正規化された予測誤差(ε)を生成すべく組み合わせられ(ブロック325)、m2、
【数83】
およびεが、先に計算された共分散行列(P0)とともに使用され、更新された共分散行列(P)が計算される(ブロック330)。新たに計算された共分散行列(P)が、後の共分散行列の更新において先に計算された共分散(P0)として使用するために、保存されて維持される(ブロック335)。更新された共分散行列(P)が、先に計算されたεおよび
【数84】
とともに使用され、更新されたシステムのパラメータベクトル(Θ)が計算される(ブロック340)。加えて、Θの時間遅延バージョン(すなわち、Θe−sdt)が生成される(ブロック319)。上述のように、システムのパラメータベクトル(Θ)は、例えば管のコンプライアンス(CT)、肺のコンプライアンス(CL)、一括抵抗(RP)、および漏れ(λLEAK)などの種々のシステムパラメータを含んでいる。
【0047】
上述の処理(ブロック305から340)の際に、さまざまな中間値を、患者の努力を推定するために、個別または組み合わせにて使用することができる(ブロック345)。例えば、上記の図3に示されているように、zが患者の努力に相関している。さらに、zを他の構成要素を使用して計算できるため、構成要素も患者の努力を推定するために使用することができる。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、患者の努力を予測するための構成要素の他の使用を理解できる。
【0048】
図5に目を向けると、患者の努力を割り出すためのマイクロプロセッサベースのシステム400が、本発明の種々の実施形態に従って示されている。システム400が、コンピュータ可読媒体460へと通信可能に接続されたマイクロプロセッサ410を含む。マイクロプロセッサ410は、種々の入力値を受信し、ソフトウェアまたはファームウェアインストラクションを実行し、入力値にもとづく出力をもたらすことができる当該技術分野において知られている任意のプロセッサであってもよい。コンピュータ可読媒体460は、マイクロプロセッサ410によって実行することができるインストラクションを保存することができる任意の媒体であってもよい。本明細書に提示の開示にもとづいて、当業者であれば、本発明のさまざまな実施形態に関して使用することができる種々のプロセッサを理解できる。あくまでもいくつかの例として、コンピュータ可読媒体460は、ハードディスクドライブ、テープドライブ、ポータブルな半導体メモリ、CD−ROM、RAM、または上述の組み合わせ、などであってもよい。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、本発明のさまざまな実施形態に関して使用することができる種々の媒体および媒体の組み合わせを理解できる。
【0049】
インストラクション450は、実行されたときに、マイクロプロセッサ410にI/Oインターフェイス420を介した種々のI/Oの受信を実行させる。受信されるI/Oは、測定された入口気体流量422、424および測定された出口気体流量426を含む。いくつかの場合には、測定された入口気体流量が、空気および酸素のそれぞれの流量を測定している。本発明の特定の実施形態に応じて、2つよりも多数または少数の入口気体流量を測定できることに、留意すべきである。出口気体流量426は、システム400から吐き出される気体の流量を測定する。さらに、受信されるI/Oは、それぞれの入口気体流量422、424に関係する測定された入口気体圧力428、430を含む。より多数またはより少数の入口気体流量が存在する場合には、I/Oがより多数または少数の測定された気体の圧力の入力を含んでもよいことに、留意すべきである。さらに、本発明のいくつかの実施形態においては、ただ1つの気体圧力センサが入口気体圧力428、430を効果的に組み合わせる圧力値の提供を可能にする位置においてシステム400に配置される場合に、ただ1つの気体の圧力の入力を、入口気体圧力428、430の代わりにもたらしてもよい。さらに、インストラクション450は、実行されたときに、マイクロプロセッサ410に、I/Oインターフェイス420を介して受信されるI/Oを使用して患者の努力の出力440をもたらす患者の努力のアルゴリズムを実行させる。そのような患者の努力のアルゴリズムは、これらに限られるわけではないが、図2および図4に関して上述した患者の努力のアルゴリズムであってもよい。患者の努力のアルゴリズムの実行の一部として、インストラクション450は、マイクロプロセッサ410に、これらに限られるわけではないが管のコンプライアンス412(CT)、肺のコンプライアンス414(CL)、一括抵抗416(RP)、および漏れ418(λLEAK)など、通常であれば未知である種々のシステムパラメータを計算させる。上述のシステムパラメータを、種々の中間の計算において使用することができ、1つ以上の中間の計算の結果が、患者の努力の出力440を予測する結果をもたらす。
【0050】
さらに、マイクロプロセッサベースのシステム400は、グラフィカルユーザインターフェイスドライバ490およびグラフィカルユーザインターフェイス495を含むことができる。グラフィカルユーザインターフェイス495は、マイクロプロセッサベースのシステム400からユーザへの情報の図式的な表現を提供する任意のインターフェイスであってもよい。したがって、グラフィカルユーザインターフェイス495は、当該技術分野において知られている任意の表示装置であってもよい。いくつかの場合には、グラフィカルユーザインターフェイス495が、ユーザからの入力を受け取る能力をさらに備えることができる。入力を受け取る能力を、例えば、グラフィカルユーザインターフェイス495に組み合わせて用意されるタッチスクリーン機能、キーボード、および/またはマウスなどによってもたらすことができる。グラフィカルユーザインターフェイスドライバ490は、マイクロプロセッサベースのシステム400からの情報をグラフィカルユーザインターフェイス495によって表示することができる図式的情報へと変換することができる当該技術分野において知られている任意の回路、システム、または装置であってもよい。
【0051】
図6は、換気サイクルをトリガするための本発明のいくつかの実施形態による方法を示しているフロー図500である。フロー図500に従い、圧力が測定され(ブロック505)、入口流量が測定され(ブロック510)、出口流量が測定される(ブロック515)。いくつかの場合には、圧力が、人工呼吸器を換気対象者へと接続している管において測定される。いくつかの場合には、圧力が、気体の入口の付近および/または気体の出口の付近において測定される。他の場合には、圧力が、気体の入口の気体の出口との分岐合流点の近くで測定される。種々の場合において、圧力の測定が、単一点の圧力測定である一方で、他の場合には、圧力の測定が多点の圧力測定であり、測定された圧力が、2つ以上の圧力測定の数学的な組み合わせである。入口流量の測定は、単一の気体の流量の測定を含むことができ、または2つ以上の気体の流量の測定および複数の流量値の合計を含むことができる。出口流量の測定は、これに限られるわけではないが、換気システムの出口における気体の流量の測定を含むことができる。特定の場合において、出口流量が入口流量から引き算され、瞬間の正味の流量が生成される(ブロック520)。
【0052】
所与の瞬間における正味の流量および測定された圧力が、患者の努力の更新された予測を計算するために使用される(ブロック525)。このプロセスを、図4に関して上述した手法を使用して行うことができる。次いで、患者の努力の更新された予測が、開始状態を示しているか否かが判断される(ブロック530)。開始状態を示している場合(ブロック530)、換気サイクルの開始がトリガされる(ブロック535)。例として、患者の努力の更新された予測は、上述したフィルタ処理された患者の努力の信号(φd)であってもよい。フィルタ処理された患者の努力の信号は、以下の式
【数85】
に記載されるように、患者の努力
【数86】
の導関数の関数である。
【0053】
このように、フィルタ処理された患者の努力の信号は、実際の患者の努力(pP)が減少するとき、負になると予想される。したがって、吸気の開始は、フィルタ処理された患者の努力の信号がゼロよりも小さくなるときに示される(例えば、信号が正の値から負の値へと移行するマイナス方向のゼロ交差を呈する)。この指標を、換気サイクルの開始を患者の努力に同期させるために使用することができる。そのような同期性が、患者の換気の改善をもたらす。いくつかの場合には、ひとたびフィルタ処理された患者の努力の信号がゼロよりも小さくなると、換気サイクルの開始がトリガされる。他の場合には、ひとたびフィルタ処理された患者の努力の信号が所定の負のしきい値または正のしきい値に達すると、換気サイクルの開始がトリガされる。先の例においては、フィルタ処理された患者の努力の信号が使用されているが、1つ以上の他の信号も同様に使用できることに、留意すべきである。例えば、予測誤差信号
【数87】
もまた、同様に実際の患者の努力に相関しているため、使用することが可能である。本明細書に提示の開示にもとづき、換気サイクルを開始させるために使用することができる種々の他の信号を、当業者であれば理解できる。
【0054】
あるいは、患者の努力の更新された予測が、終了状態を示しているか否かが判断される(ブロック540)。終了状態を示している場合(ブロック540)、先に開始された換気サイクルの終了がトリガされる(ブロック545)。例として、患者の努力の更新された予測は、吸気の開始のトリガに使用されたものと同じフィルタ処理された患者の努力の信号であってもよい。フィルタ処理された患者の努力の信号は、患者の努力の導関数の関数であるため、吸気の終了は、フィルタ処理された患者の努力の信号がゼロよりも大きくなるときに示される(例えば、信号が負の値から正の値へと移行するプラス方向のゼロ交差を呈する)。そのような指標を、換気サイクルの終了を患者の努力に同期させ、患者の換気の改善をもたらすために使用することができる。いくつかの場合には、ひとたびフィルタ処理された患者の努力の信号がゼロよりも大きくなると、換気サイクルの終了がトリガされる。他の場合には、ひとたびフィルタ処理された患者の努力の信号が所定の負のしきい値または正のしきい値に達すると、換気サイクルの終了がトリガされる。やはり、先の例においては、フィルタ処理された患者の努力の信号が使用されているが、1つ以上の他の信号も同様に使用できることに、留意すべきである。例えば、予測誤差信号
【数88】
もまた、同様に実際の患者の努力に相関しているため、使用することが可能である。本明細書に提示の開示にもとづき、換気サイクルを終了させるために使用することができる種々の他の信号を、当業者であれば理解できる。
【0055】
図7に目を向けると、タイミング図600が、患者の努力の代用物にもとづいて複数の換気サイクルをトリガするプロセスを示している。この場合には、患者の努力の代用物が、フィルタ処理された患者の努力信号(φd)610である。実際の患者の努力の信号(Pp)620が、本発明の種々の実施形態を使用して達成できる同期性を実証するために示されている。フィルタ処理された患者の努力の信号610が、換気のトリガとして示されているが、1つ以上の他の信号も同様に使用できることに、留意すべきである。例えば、予測誤差信号
【数89】
もまた、同様に実際の患者の努力に相関しているため、使用することが可能である。本明細書に提示の開示にもとづき、トリガを達成するために使用することができる種々の他の信号を、当業者であれば理解できる。
【0056】
図示のとおり、マイナス方向のゼロ交差点612aを通過するフィルタ処理された患者の努力の信号610の移行が、実際の患者の吸気の努力の開始622aに対応している。後のプラス方向のゼロ交差点614aが、呼気624aの開始に対応している。このプロセスが、いくつかの換気サイクルについて表わされている。タイミング図600に一致して、フィルタ処理された患者の努力の信号610のプラス方向のゼロ交差を、換気サイクルの開始をトリガするために使用することができ、フィルタ処理された患者の努力の信号610のマイナス方向のゼロ交差を、換気サイクルの終了をトリガするために使用することができる。
【0057】
図8は、pyに対応する圧力センサのトリガのプロセスを示すタイミング図710、推定による患者の努力の信号
【数90】
のトリガのプロセスを示すタイミング図720、および患者の努力に相関する他の信号
【数91】
のトリガのプロセスを示すタイミング図730を含んでいる。タイミング図710によって示されるとおり、圧力センサは、雑音レベル711を呈しており、トリガしきい値713が、偽のトリガを避けるために予想される雑音レベル711以下に雑音バッファ量712を設定する。図示のように、pyに対応する圧力が、最終的にトリガしきい値713を下回って低下し、吸気の開始の検出714がもたらされる(縦の破線によって示されている)。吸気の開始のしきい値714は、実際の吸気の開始716(縦の破線によって示されている)後に遅延期間715を生じる。タイミング図710から見て取ることができるとおり、遅延期間715の大きさは、雑音レベル711および雑音バッファ量712の関数である。
【0058】
圧力測定に関係する雑音は、必ずしも流量の測定に関係する雑音に相関していない。推定による患者の努力の信号の作成において、圧力および流量の両方の測定から導出される情報を組み合わせることによって、予想される雑音の量が、典型的には、ただ1つの測定だけしか使用されない場合に予想される雑音よりも少なくなる。雑音バッファ量は、多くの場合に、予想される雑音の大きさにもとづいて選択される。したがって、本発明のいくつかの実施形態においては、予想される雑音レベルおよび雑音バッファ量の両方が、ただ1つの測定のシステムに比べて小さい。これらの変数が小さくなることで、吸気の検出を、実際の吸気の開始に時間的にさらに近く相関付けることが可能になる。タイミング図720、730が、そのようなトリガの遅延の減少を図式的に示している。
【0059】
タイミング図720によれば、推定による患者の努力の信号
【数92】
が、比較的小さい雑音レベル721を呈しており、トリガしきい値723が、偽のトリガを避けるために予想される雑音レベル721以上に雑音バッファ量722を設定する。図示のように、推定による患者の努力の信号が、最終的にトリガしきい値723を超え、吸気の開始の検出724がもたらされる(縦の破線によって示されている)。吸気の開始の検出724は、実際の吸気の開始726(縦の破線によって示されている)後に遅延期間725を生じる。遅延期間725は、ただ1つの測定点だけが使用される場合の遅延時間よりも短い。同様に、タイミング図730によれば、推定による患者の努力の信号
【数93】
が、比較的小さい雑音レベル731を呈しており、トリガしきい値733が、偽のトリガを避けるために予想される雑音レベル731以上に雑音バッファ量732を設定する。図示のように、推定による患者の努力の信号が、最終的にトリガしきい値733を超え、吸気の開始の検出734がもたらされる(縦の破線によって示されている)。検出された吸気の開始734は、実際の吸気の開始736後に遅延期間735を生じる(縦の破線によって示されている)。遅延期間735は、ただ1つの測定点だけが使用される場合の遅延時間よりも短い。
【0060】
図9に目を向けると、フロー図800が、患者の努力に比例した換気を提供するための本発明の種々の実施形態による方法を示している。フロー図800によれば、圧力が測定され(ブロック805)、入口流量が測定され(ブロック810)、出口流量が測定される(ブロック815)。いくつかの場合には、圧力が、人工呼吸器を換気対象者へと接続している管において測定される。いくつかの場合には、圧力が、気体の入口の付近および/または気体の出口の付近において測定される。他の場合には、圧力が、気体の入口の気体の出口との分岐合流点の近くで測定される。種々の場合において、圧力の測定が、単一点の圧力測定である一方で、他の場合には、圧力の測定が多点の圧力測定であり、測定された圧力が、2つ以上の圧力測定の数学的な組み合わせである。入口流量の測定は、単一の気体の流量の測定を含むことができ、または2つ以上の気体の流量の測定および複数の流量値の合計を含むことができる。出口流量の測定は、これに限られるわけではないが、換気システムの出口における気体の流量の測定を含むことができる。特定の場合において、出口流量が入口流量から引き算され、瞬間の正味の流量が生成される(ブロック820)。
【0061】
所与の瞬間における正味の流量および測定された圧力が、患者の努力の更新された予測を計算するために使用される(ブロック825)。このプロセスを、図4に関して上述した手法を使用して行うことができる。次いで、計算された患者の努力に対応する瞬間に人工呼吸器によって送出されるべき気体の所望の気体送出パラメータが計算される(ブロック840)。本発明のいくつかの実施形態においては、気体送出パラメータが流量および/または圧力である。この場合、気体の送出の所望の圧力および流量が、それぞれ患者の努力の関数である。例えば、患者の努力が、関数f(x)によって記述される瞬間xにおける値になると判断される場合、計算される圧力を、関数g(f(x))を使用して記述することができ、時間における計算される流量を、関数h(f(x))を使用して瞬間において記述することができる。本発明の一特定の実施形態においては、関数gおよび関数hの各々が、一定の乗数である。そのような場合には、瞬間xにおける計算される圧力がk1f(x)であり、瞬間xにおける計算される流量がk2f(x)であり、ここで、k1が圧力に対応する定数であり、k2が流量に対応する係数である。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、本発明の種々の実施形態に関して使用することができる他の関数gおよび他の関数hを理解できる。送出される気体の基準として使用される圧力は、これらに限られるわけではないが、Y字における圧力または患者の肺の圧力であってもよい。送出される気体の基準として使用される流量は、これらに限られるわけではないが、患者の肺の流量または入口気体の流量であってもよい。
【0062】
次いで、患者の努力の更新された予測が、吸気段階を示しているか否かが判断される(ブロック830)。本発明のいくつかの実施形態においては、吸気段階が、患者の努力の導関
【数94】
がゼロよりも大きい場合に示される。吸気段階を示している場合(ブロック830)、気体が、すでに計算された気体送出パラメータに従って受け手へと送出される(ブロック835)。やはり、気体送出パラメータは、これらに限られるわけではないが、患者へと送出されるべき気体または気体成分(例えば、酸素、空気、チッ素、ヘリウム、など)の圧力および流量を含むことができる。他方で、吸気段階が示されない場合(ブロック830)、気体の送出はもたらされない。このような手法は、患者の努力の関数としての流量および/または圧力での気体の送出を提供する。このような手法は、患者の快適さを向上させ、患者自身の呼吸の試みをあまり邪魔しない。
【0063】
図10に目を向けると、4つのタイミング図、910、920、930、940が、本発明の1つ以上の実施形態による患者の努力に比例した換気の提供を図式的に示している。タイミング図910は、患者の努力を時間の関数として示しており、タイミング図920は、患者の努力の導関数を時間の関数として示している。図示のとおり、患者の努力の導関数がゼロよりも大きい(吸気段階に対応する)とき、患者の努力が、関数f(x)として記述される。タイミング図910は、患者の努力を時間において繰り返す同じ関数として示しているが、特定の患者の呼吸のパターンに応じて、第1の場合f1(x)912が第2の場合f2(x)914と実質的に異なってもよいことに、留意すべきである。
【0064】
タイミング図930が、患者の努力によって引き起こされる圧力の低下をオフセットすべくY字接続部における圧力を高めるための人工呼吸器による努力を示している。図示のように、吸気段階(すなわち、患者の努力の導関数がゼロより大きいとき)において、人工呼吸器が、患者の努力の関数g(f1(x))932としてY字接続部における圧力を高めようとする。次の呼吸においては、人工呼吸器が、患者の努力の関数g(f2(x))934としてY字における圧力を高めようとする。しかしながら、この特定の場合においては、関数gが定数k1であるが、他の時間変化する関数もまた、本発明の種々の実施形態に従って使用することが可能である。
【0065】
同様に、吸気段階において、人工呼吸器は、患者の努力の関数h(f1(x))942として患者への気体の流量を増加させる。次の呼吸において、人工呼吸器は、患者の努力の関数h(f2(x))944として患者への気体の流量を増加させる。この特定の場合においては、関数hが定数k2であるが、他の時間変化する関数も、本発明の種々の実施形態に従って使用することが可能である。いくつかの場合においては、関数gおよびhが、患者の努力に比例または反比例することができる。気体の送出が患者の努力の関数としてもたらされるという意味で、患者の努力を患者の努力(すなわち、患者の胸腔内圧)に直接的にもとづいて割り出すことができ、あるいは患者の努力の一次もしくはより高次の導関数にもとづいて割り出すことができることに、留意すべきである。
【0066】
図11に目を向けると、典型的なグラフィカルインターフェイス1000が、本発明のいくつかの実施形態による能動的な呼吸を有する患者に対応する患者の努力の表示を示している。グラフィカルインターフェイス1000は、フィルタ処理された患者の努力(φd)1010および患者の努力(pP)1020の各々の時間の関数としての図式的表示を含んでいる。本発明の特定の実施形態に応じ、図示した目安に加え、または図示した目安に代えて、患者の努力の他の目安も表示することが可能であることに留意すべきである。
【0067】
図示の実施形態においては、時間が横軸に表示され、それぞれの患者の努力の値の値が、左の軸に表示されている。時間が経つにつれて、横軸の時間刻みが、現在の時間の周囲のウインドウを反映するように更新される。さらに、ユーザが動かすことができる2本の縦バー1012、1022が、グラフ1010および1020に配置されている。これにより、ユーザが、イベントを測定するために特定の時刻に開始バー1012および終了バー1022を配置することができる。開始バー1012と終了バー1022との間の時間差を、それぞれの時点におけるフィルタ処理された患者の努力および患者の努力の値とともに、ユーザへと表示することができる。いくつかの場合には、開始バー1012および終了バー1022を、キーボード指令またはマウス指令によって使用することができる。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、グラフ1010、1020に関して開始バー1012および終了バー1022を操作するために使用することができるさまざまなI/Oを理解できる。
【0068】
さらに、図式的に表示される患者の努力に関する種々の指標を計算し、グラフィカルインターフェイス1000によって表示することができる。例えば、呼吸1030の間の平均時間を計算し、表示することができる。そのような平均時間を、所定の数の呼吸にもとづいて計算することができ、各々の呼吸の間の時間は、呼気の終わりから次の吸気の開始まで計算される。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、本発明の種々の実施形態に従って呼吸の間の平均時間を計算するために使用することができる種々の手法を理解できる。他の例として、ピークの呼吸の努力1040を表示することができる。ピークの呼吸の努力1040は、特定の実施例に応じて、所定の数の呼吸の経過の間にグラフ1010またはグラフ1020のいずれかにおいて記録される最大値であってもよい。さらに別の例として、呼吸ごとのピークの努力150を表示することができる。呼吸ごとのピークの努力1050は、最も最近の呼吸におけるグラフ1010またはグラフ1020のいずれかのピーク値を示すことができる。あるいは、開始バー1012によって特定される呼吸におけるグラフ1010またはグラフ1020のいずれかのピーク値を示してもよい。またさらなる例として、最後の吸気の継続時間1060を表示することができる。最後の吸気の継続時間106は、最も最近の呼吸について、吸気の開始が検出されたときから吸気の終了が検出されたときまでの時間を示す。一例においては、これを、患者の努力の一次導関数がしきい値を超えるときから再びしきい値を下回るまでを検出することによって達成することができる。他の例として、最後の呼気の継続時間1070を表示することができる。いくつかの場合には、最後の呼気の継続時間1070を、患者の努力の一次導関数がしきい値を下回って低下するときから再びしきい値を上回るときまでを検出することによって、計算することができる。他の例として、吸気の平均継続時間1080および呼気の平均継続時間1090を表示することができる。これを、先に述べた呼気の継続時間および吸気の継続時間のいくつかを平均することによって計算することができる。
【0069】
図12に目を向けると、典型的なグラフィカルインターフェイス1100が、本発明のいくつかの実施形態による能動的な呼吸を有する患者に対応する呼吸パラメータの表示を示している。詳しくは、グラフ1110が、患者抵抗パラメータの推定値を時間の関数として示している。いくつかの実施形態において、患者抵抗パラメータは、計算の結果であるため、患者抵抗の実際の値との区別のために、「推定Rp」と称される。グラフィカルインターフェイス1100が、推定Rpを表示するものとして説明されているが、他の呼吸パラメータも、本発明の種々の実施形態に従って表示できることに、留意すべきである。例えば、グラフィカルインターフェイス1100を、肺のコンプライアンスまたは漏れのパラメータを表示するように拡張することができ、これらの追加で表示されるパラメータは、本明細書において説明したものと同じまたは同様の一式の式を使用して割り出される。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、表示することができる種々の呼吸パラメータを理解できる。いくつかの場合には、表示される呼吸パラメータを、患者のリアルタイムでの評価のために監視の医師が使用することができる。これに代え、またはこれに加えて、表示される呼吸パラメータを、生じ得るシステムの故障を判断するために使用することができ、または患者が人工呼吸器から離れたことを示すために使用することができる。一特定の例として、Rpの劇的な増加が、部分的な閉塞を示すことができる。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、本発明の1つ以上の実施形態に従って達成することができるさまざまな利点を理解できる。
【0070】
図示のとおり、時間が横軸に表示され、推定Rpの値が左の軸に表示される。いくつかの実施形態においては、時間が経つにつれて、横軸の時間刻みが、現在の時間の周囲のウインドウを反映するように更新される。さらに、いくつかの実施形態においては、ユーザが動かすことができる2本の縦バー1112、1113が、グラフ1110上に配置されている。これにより、ユーザが、イベントを測定するために特定の時刻に開始バー1112および終了バー1113を配置することができる。開始バー1112と終了バー1113との間の時間差を、それぞれの時点におけるフィルタ処理された患者の努力および患者の努力の値とともに、ユーザへと表示することができる。いくつかの場合には、開始バー1112および終了バー1113を、キーボード指令またはマウス指令によって使用することができる。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、グラフ1110に関して開始バー1112および終了バー1113を操作するために使用することができるさまざまなI/Oを理解できる。
【0071】
この特定の例においては、初期期間1120について、推定Rpが、5cmH2O/lpsという値で初期化される。このとき、Rpの実際の値は、30cmH2O/lpsにより近い。ある時間期間にわたり、推定Rpの値を割り出すために使用されるアルゴリズムが、推定値が期間1130におけるRpの実際の値を近似するまで、適応的に順応する。50秒のしるしの付近の時点において、換気システムから閉塞が取り除かれ、Rpの実際の値が劇的に減少する。この時点で、アルゴリズムが、推定値が実際の値を近似するまで推定Rpの値を下げることによって適応的に順応する。期間1140において、推定Rpの値は、Rpの実際の値の付近でほぼ一定のままである。
【0072】
加えて、図式的に表示される抵抗パラメータに関する種々の指標を計算し、グラフィカルインターフェイス1100によって表示することができる。例えば、現在のRp値1150を表示することができ、平均のRp値1160を表示することができる。平均のRp値1160を、特定の時間期間にわたってRpのいくつかの値を平均することによって計算することができる。加えて、視覚による警報1170を表示することができる。そのような視覚による警報を、推定Rpの値の所定の増加または減少が検出されたときに生じさせることができる。グラフィカルインターフェイス1100を、さまざまな他の情報を表示するように拡張できることに、留意すべきである。
【0073】
本発明は、患者の努力に比例して気体を送出する新規なシステム、方法、および装置を提供する。以上、本発明の1つ以上の実施形態の詳細な説明を提示したが、種々の代案、変更、および均等物が、本発明の技術的思想を変更することなく、当業者にとって明らかである。したがって、以上の説明を、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の技術的範囲を限定するものと解釈してはならない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸器に関し、さらに詳しくは、動的な換気システムにおいて時間依存性の信号および/または呼吸パラメータを特定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器は、患者の肺を気体で換気することで、患者の自発的な呼吸の能力が何らかの形で損なわれた場合に患者を補助する。換気は、所定の気体混合物を定められた換気の態様に従って患者へと供給することによって達成される。各々の患者が異なる換気の方法を必要とする可能性があるため、最近の人工呼吸器は、個々の患者の特定のニーズに合わせてカスタマイズが可能である。
【0003】
最近の人工呼吸器は、動的な挙動および出力(患者へともたらされる圧力および流れなど)が入力信号(気体の流れなど)によって駆動される動的なシステムである。そのような人工呼吸器の適切な動作は、患者の気道の抵抗および肺のコンプライアンスなどといったさまざまな呼吸パラメータのある程度の理解に依存する。これらのパラメータは、ある換気システムと他の換気システムとで大きく異なる可能性があり、ある患者と他の患者とで大きく異なる可能性がある。多くの場合、換気システムの適切な動作は、そのようなパラメータの規定または推定の精度によって制限される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lennart Ljung、「System Identification、Theory for the User」、Second Edition、Prentice Hall、1999(ISBN 0−13−656695−2)
【非特許文献2】Petros IoannouおよびJing Sun、Robust Adaptive Control、Prentice Hall、1995(ISBN 9780134391007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定の個人または特定の換気の状況についての換気パラメータを特定するための方法が、開発されている。そのような方法を、静的な方法および動的な方法という2つの別々の分類へと分けることが可能である。静的な方法においては、呼吸パラメータは、典型的には、システムに短時間の平衡状態が作り出されている間(すなわち、操作)に、推定されるパラメータに関連する量の少数の測定を使用して推定される。対照的に、動的な方法は、換気下の患者の動的な挙動を示すように働き、典型的には、換気の状況の連続測定または部分的な連続測定にもとづく。歴史的に、呼吸パラメータの特定は、未知の入力信号によって駆動される換気システムの場合に難題をもたらしてきた。これは、能動的な呼吸のある患者に関係する換気システムおよび漏れのある換気システムの場合に当てはまり、多くの既存の手法は、システムを駆動するこれらの信号を典型的には測定不可能であるにもかかわらず特定アルゴリズムにおいて考慮しなければならないため、充分に正確な結果をもたらすことができない。例えば、患者の呼吸の努力を推定するための種々の手法は、不正確であり、したがって推定による患者の努力に依存する動的な方法は、多くの場合に不適切である。
【0006】
いくつかの場合には、患者の呼吸の努力が、運動方程式を使用し、患者の肺へと出入りする気体の流れの測定および圧力の測定のみに依存して推定されている。そのような手法の信頼性は、患者の肺へと出入りする気体の流れをどの程度の精度で測定できるかによって制限される。しかしながら、そのような測定は、患者の気管へと挿入されたチューブまたはその付近に位置する流量センサに依存するため、本質的に不正確である。流量センサの精度が、肺から吐き出される気体の湿気ゆえに大きく低下する。さらに、患者の気道の近くのそのような流量センサは、既存の換気システムにおいては利用できないことが多い。
【0007】
したがって、先進の換気システムおよびそのような換気システムの使用方法についてのニーズが、当該技術分野に存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、人工呼吸器に関し、さらに詳しくは、患者の呼吸の努力に少なくとも部分的にもとづいて気体の送出を制御するためのシステムおよび方法に関する。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態は、患者が充分自身での呼吸のために発揮することができる努力に比例して患者を換気することができる換気システムを提供する。そのようなシステムのいくつかは、コンピュータ可読媒体から入手できるインストラクションを実行することができるプロセッサを含んでいる。インストラクションが、測定された圧力の値の受信および正味の流量の値の受信をもたらす。患者の努力の値が、測定された圧力の値と、正味の流量の値と、患者の努力との間の関係にもとづいて計算される。患者の努力の値の関数として変化する気体の送出の基準が計算される。さらにインストラクションを、気体の送出の基準に一致した気体の送出を生じさせるために実行することができる。いくつかの場合においては、気体の送出の基準が、圧力および流量から選択され、流量は、患者の肺の流量、入口気体流量、または他の測定可能な流量もしくは推定される流量であってもよく、圧力は、肺の圧力、Y字接続部における圧力、または他の測定可能な圧力もしくは推定される圧力であってもよい。
【0010】
上述の実施形態のいくつかの場合においては、インストラクションを、患者の努力の値にもとづいて吸気段階を判断するためにさらに実行することができる。いくつかのそのような場合には、気体の送出が、吸気段階の最中に生じさせられる。特定の場合には、吸気段階は、計算された患者の努力の値がゼロよりも大きい場合に示される。
【0011】
上述の実施形態の種々の場合においては、患者の努力の値の第1の関数が、一定の乗数である。他の場合には、患者の努力の値の第1の関数が、非線形関数である。さらに他の場合には、患者の努力の値の第1の関数が、時間変化する関数である。
【0012】
いくつかの場合には、患者の努力の値が、推定による正規化された予測誤差、フィルタ処理された圧力の値、回帰ベクトル、およびパラメータベクトルの現在の推定値から選択される1つ以上の中間値の組み合わせによってさらに計算される。
【0013】
上述の実施形態のいくつかの場合には、患者の努力の値を計算するために使用される関係が、パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係である。いくつかの場合には、パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係が、回帰の形態z=ΘTφ+φdである。
パラメータ化された入力−出力の関係を、伝達関数から導出することができ、いくつかの場合には、伝達関数が、モデル
【数1】
から導出される。
【0014】
本開示の他の実施形態は、呼吸の支援をもたらすための方法を含む。そのような方法は、圧力を測定し、測定された圧力をもたらすステップ、ならびに入口流量および出口流量を測定し、測定された正味の流量をもたらすステップを含む。測定された圧力に関係する第1の値と、測定された正味の流量に関係する第2の値と、患者の努力に関係する第3の値との間の関係が、患者の努力の推定を計算するために使用される。次いで、気体が、患者の努力の推定に比例して供給される。いくつかの場合には、患者の努力の推定に比例して気体を供給することが、患者の努力の推定に比例した圧力および患者の努力の推定に比例した流量の何らかの組み合わせで気体を供給することを含んでいる。いくつかの場合には、患者の努力の推定が、測定された圧力および測定された正味の流量から導出される1つ以上の中間値の組み合わせにもとづき、1つ以上の中間値は、推定による正規化された予測誤差(ε)、フィルタ処理された圧力の値(z)、回帰ベクトル(φT)、およびパラメータベクトル(Θ)の現在の推定された値から選択される。
【0015】
上述の実施形態の1つ以上の場合においては、第2の値が、測定された正味の流量のフィルタ処理されたバージョンまたは測定された正味の流量であってもよい。上述の実施形態のいくつかの場合においては、第1の値が、測定された圧力のフィルタ処理されたバージョンまたは測定された圧力であってもよい。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、気体の入口と、気体の出口と、気体の入口および気体の出口を接続する管と、圧力センサと、少なくとも2つの流量センサとを備える換気システムを提供する。圧力センサが、管内の圧力を示す測定された圧力値をもたらすように機能することができる。流量センサのうちの1つが、気体の入口に関する流量を示す入口流量値をもたらすように機能することができ、別の流量センサが、気体の出口に関する流量を示す出口流量値をもたらすように機能することができる。コンピュータ可読媒体へと通信可能に接続されたプロセッサが含まれる。コンピュータ可読媒体が、測定された圧力の値を受信し、正味の流量の値を受信し、患者の努力と、測定された圧力の値と、正味の流量の値との間の関係にもとづいて、患者の努力の値を計算し、患者の努力の値の第1の関数として変化する気体の送出の基準を計算し、患者の努力の値にもとづいて吸気段階を判断し、気体の送出の基準に一致した気体の送出を生じさせるようにプロセッサによって実行することができるインストラクションを含んでいる。いくつかの実施形態においては、気体の送出の基準が、圧力および/または流量である。
【0017】
この概要は、本発明のいくつかの実施形態の全体的な概要を提示するにすぎない。本発明の多数の他の目的、特徴、利点、および実施形態が、以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面から、さらに充分に明らかになる。
【0018】
本開示の種々の実施形態のさらなる理解を、本明細書の残りの部分において説明される図面を参照することによって、実現することが可能である。図面においては、いくつかの図を通して、同様の参照番号が類似の構成要素を指し示すために使用される可能性がある。いくつかの場合には、小文字で構成される下位ラベルが、複数の類似の構成要素のうちの1つを指すために参照番号に組み合わせられる。存在する下位ラベルを指定することなく参照番号について参照される場合、それは、そのような複数の類似の構成要素のすべてを指している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】適応的に推定された呼吸パラメータおよび患者の努力をもたらすことができる適応計算モジュールを特に含んでいる本発明の種々の実施形態による換気システムを示している。
【図2】本発明のいくつかの実施形態に従って患者の努力を割り出すために使用することができる患者人工呼吸器システムおよび関連のパラメータ化モデルを示している。
【図3】本発明の特定の実施形態の実現を通じて達成することができる患者の努力の他の信号への相関について、図式的な例を提示している。
【図4】本発明の種々の実施形態に従って患者の努力を割り出すために、患者の努力を割り出すための本発明のいくつかの実施形態による方法を示しているフロー図である。
【図5】本発明の種々の実施形態に従って患者の努力を割り出すためのマイクロプロセッサベースのシステムを示している。
【図6】換気サイクルをトリガするための本発明のいくつかの実施形態による方法を示しているフロー図である。
【図7】本発明の種々の実施形態による推定された患者の努力の信号にもとづく換気サイクルのトリガを示しているタイミング図である。
【図8】圧力センサのトリガのプロセスを本発明の1つ以上の実施形態による推定された患者の努力の信号のトリガに対して比較するタイミング図である。
【図9】本発明の種々の実施形態に従って患者の努力に比例した換気を提供するための方法を示しているフロー図である。
【図10】本発明の1つ以上の実施形態による患者の努力に比例した換気の提供を図式的に示している一群のタイミング図を示している。
【図11】本発明のいくつかの実施形態による能動的な呼吸を有する患者に対応する患者の努力の表示を示している典型的なグラフィカルインターフェイスを示している。
【図12】本発明のいくつかの実施形態による能動的な呼吸を有する患者に対応する呼吸パラメータの表示を示している典型的なグラフィカルインターフェイスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、人工呼吸器に関し、さらに詳しくは、患者の呼吸の努力にもとづいて気体の送出を制御するためのシステムおよび方法に関する。
【0021】
換気サイクルの開始および終了を、自分自身での呼吸のために患者が行うことができる努力(すなわち、患者の努力)に同期させることが望ましい。例えば、人工呼吸器のトリガを正確にすることで、患者が吸気を試みるとすぐに人工呼吸器が呼気を開始させることが望ましい。いくつかの人口呼吸器が、患者が吸気を試みることによって生じる換気回路の圧力の変化を検出する圧力トリガを使用する一方で、他の人工呼吸器は、患者が吸気を試みることによって生じる流れの変化を検出する流量トリガを使用する。いずれの場合も、患者の努力と人工呼吸器の応答との間に、さまざまな理由に起因して遅延が生じる可能性がある。例えば、通気回路における漏れのために、患者の吸気の際に空気が回路へと進入する可能性がある。患者の呼吸の全体が、人工呼吸器の流量センサによって測定されず、人工呼吸器が、吸気を検出するために流れの変化を監視することができる(流量トリガ)ため、人工呼吸器の呼吸の開始が遅れる可能性がある。本発明のいくつかの実施形態は、換気サイクルの開始および終了をトリガするために単独または他の信号との関連において使用することができる患者の努力の適度に正確な推定をもたらすことによって、同期の改善を促進する。さらに、本発明の1つ以上の実施形態においては、推定された患者の努力を、患者の比例換気の制御に関して追加的に使用することができる。そのような比例換気は、気体を、そのような気体を受け取ろうとする患者の努力に比例して患者へと送出するように機能する。本発明の種々の実施形態において、推定された患者の努力および/または呼吸パラメータを、医師が患者の監視および/または診断の目的に使用することができるグラフィカル表示を駆動するために使用することができる。
【0022】
本開示の種々の実施形態は、1つ以上の呼吸パラメータおよび換気システムを適度な精度で駆動する少なくとも1つの非測定の入力信号を推定するためのシステムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの非測定の入力信号を、測定された入力信号(測定された圧力および測定された流量など)から導出し、呼吸パラメータを推定するために使用することができる。非測定の入力信号は、これらに限られるわけではないが、患者の努力および/もしくは患者の努力の派生物、換気システムの気体の漏れ(すなわち人工呼吸器を患者へと接続する管または患者インターフェイスにおいて生じる漏れ)、患者の気体の漏れ(例えば、患者の肺における漏れ)、ならびに/または流量および圧力の検出誤差であってもよい。呼吸パラメータとして、これらに限られるわけではないが、肺のコンプライアンス(CL)、患者の抵抗(RP)、および管のコンプライアンス(CT)を挙げることができる。いくつかの場合には、呼吸パラメータおよび非測定の入力信号の両者の推定が同時である。いくつかの実施形態においては、非測定の入力信号が、患者の努力に強い相関を有しており、したがって後の人工呼吸器の動作において患者の努力の代理として使用することが可能である。他の実施形態においては、本発明の方法によって、呼吸パラメータを連続的にもたらすことができる。このように、患者の努力ならびに呼吸または換気システムのパラメータ(肺のコンプライアンス、患者の抵抗、漏れ、など)を割り出すことができる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態においては、測定可能な圧力と、測定可能な流量と、未知である患者の努力との間の関係が、患者の努力および種々の呼吸パラメータの連続的な推定をもたらすために利用される。特定の事例においては、関係が、測定された圧力、測定された流量、および患者の努力に特に関係する伝達関数として定められる。そのような場合には、伝達関数を、1つ以上の中間値をもたらすべく線形回帰技法を使用して還元することができ、次いでそのような中間値を、患者の努力の推定に使用することができる。一実施形態においては、測定された圧力および測定された流量の継続的な入力が、患者の努力を推定し、必要に応じて1つ以上の呼吸パラメータを推定するために、伝達関数へと差し込まれる。他の実施形態においては、患者の努力の推定を、連続する計算期間において患者の努力のより正確な推定を導出するために再帰的に使用することができる。したがって、再帰を使用することによって、推定された患者の努力の値の精度を連続的に改善することができる。
【0024】
いくつかの場合には、測定された流れが、系から出る気体の正味の流れを系へと入る気体の正味の流れに組み合わせた正味の流れの値である。一特定の場合においては、系への気体の正味の流れが、系への空気の流れに組み合わせられた酸素の流れを含んでいる。そのような流れは、測定が適度に容易であり、肺の付近の気体の流れの測定に付随することが多い不正確さに左右されることがない。
【0025】
いくつかの場合には、上述のように計算された患者の努力の信号またはその何らかの代用物を、換気サイクルをトリガするために使用することができる。そのような信号を使用することで、換気システムが、機械的な換気を自身で呼吸を行おうとする患者の努力により正確に同期させることができるようになる。
【0026】
特に、呼吸パラメータおよび患者の努力の派生物を、同じモデルへと入力することができ、その同じモデルから導出される相互依存式を使用して計算することができる。相互依存式のいくつかから計算された値は、他の相互依存式への入力として使用されるため、一般的に中間値と称することが可能である。本明細書において使用されるとき、「中間値」という語句は、その最も広い意味にて、ある式から導出されて他の式への入力として使用される値を意味して使用される。本開示の検討にもとづき、さまざまな中間値を本発明の種々の実施形態に関して利用できることに、留意すべきである。
【0027】
図1に目を向けると、本発明の種々の実施形態による換気システム1が示されている。換気システム1は、人工呼吸器10、適応計算モジュール20、グラフィカルユーザインターフェイス40、および比例/トリガ制御モジュール30を含む。人工呼吸器10は、測定された圧力65、測定された入口流70、および測定された出口流75をもたらすことができる当該技術分野において知られている任意の人工呼吸器であってもよい。適応計算モジュール20が、圧力65、入口流70、および出口流75を受け取り、推定による患者の努力55および推定による呼吸パラメータ60を計算する。患者の努力55は、患者の努力それ自体であっても、患者の努力に強く相関した何らかの信号であってもよい。患者の努力に相関する信号は、さらに詳しく後述される。呼吸パラメータ60は、さらに詳しく後述される種々のパラメータを含むことができる。一実施形態においては、適応計算モジュール20によって実行される計算が、先の中間値に依存して呼吸パラメータ60および患者の努力55の推定が更新される適応的な性質であってもよい。いくつかの実施形態においては、そのような中間値が、図1に破線によって示されるとおり、患者の努力55および/または呼吸パラメータ60の推定を含むことができる。代案(図示せず)として、適応計算モジュール20によって使用される先の中間値が、特定可能ないずれの呼吸パラメータにも直接には対応しない複合パラメータであってもよい(例えば、さらに詳しく後述される共分散行列およびパラメータベクトルなど)。
【0028】
図示の実施形態においては、患者の努力55が、比例/トリガ制御モジュール30へともたらされる。患者の努力55にもとづき、比例/トリガ制御モジュール30が、人工呼吸器10へともたらされる1つ以上の制御信号80を生成する。いくつかの実施形態においては、制御信号80が、気体を患者へと送出タイミングを制御する。種々の実施形態においては、制御信号80が、患者へと送出される気体の量を制御し、気体の量は、患者の努力55に比例する。
【0029】
人工呼吸器10が、グラフィカルユーザインターフェイス40を駆動する制御信号90を供給する。グラフィカルユーザインターフェイス40を、これらに限られるわけではないがユーザの指令の受信および/または人工呼吸器の動作に関するデータの表示などといったユーザとのやり取りを可能にするために、人工呼吸器10の一部として含むことができる。いくつかの実施形態においては、人工呼吸器10が、グラフィカルユーザインターフェイス40に対して、適応計算モジュール20によってもたらされる情報85を表示するように指示することができる。そのような情報として、さらに詳しく後述されるように、呼吸パラメータ60および/または患者の努力55を挙げることができる(ただし、これらに限られるわけではない)。
【0030】
本発明の種々の実施形態は、患者の努力を割り出すために、患者人工呼吸器システムのパラメータ化された動的モデルを利用する。人工呼吸器システム100のモデルが、図2に示されている。人工呼吸器システム100は、入口空気流105(qAIR)、入口酸素流110(qO2)、および出口気体流115(qE)を含んでいる。人工呼吸器システム100が、空気および酸素という2つの気体源を示しているが、本発明の別の実施形態に関して、より多数または少数の入口気体流を使用してもよいことに、留意すべきである。例えば、空気源だけを使用してもよく、または入口空気源および入口酸素源に加えて、ヘリウムおよび/もしくはヘリオックスとの混合気体の供給源を含んでもよい。本明細書の開示にもとづき、当業者であれば、本発明の種々の実施形態に関して使用することができる他のさまざまな気体源を、理解できる。
【0031】
システムに含まれる管、流量バルブ、および/または圧力監視装置が、人工呼吸器システム100における気体の流れに何らかの抵抗を招く。特に、空気抵抗120(Rair)、酸素抵抗125(RO2)、呼気抵抗130(REV)、および患者抵抗135(RP)(すなわち、気道抵抗および気管内の管の抵抗の何らかの組み合わせ)が存在し得る。圧力センサ150が、空気流および酸素流が組み合わせられる場所において入口の圧力(pI)を測定し、圧力センサ155が、呼気の出力において圧力(pE)を測定する。圧力センサ150を、それぞれの入口配管に組み合わせられた個々の圧力センサによって置き換えてもよいことを、理解すべきである。入口および出口の気体が組み合わせられる場所の圧力(pY)が、バッフル140(例えば、Y字形の気体の圧力)として表わされており、患者の肺における圧力(pL)が、別のバッフルによって表わされている。本発明のいくつかの実施形態においては、pYが、圧力に対応する特定の位置またはその付近に取り付けられる圧力測定装置を使用することによって割り出される。本発明の他の実施形態においては、pYが、pIまたはpEのいずれかに等しく設定される一方で、本発明の別の実施形態においては、pYが、pIおよびpEの平均に設定される。上述の3つの場合のいずれにおいても、pYは、測定値または他の直接測定の値の平均であるため、「直接的に測定」されると考えられる。管における漏れ160に関係する気体の流れ(qTleak)および患者における漏れ165に関係する気体の流れ(qPleak)も特定される。患者の努力の値195(PP)が、患者の肺に出入りする気体の力と相互作用する力として示されている。
【0032】
人工呼吸器システム100の動作を記述するために、さまざまな式を使用することができる。例えば、質量保存の原理を使用し、種々の流量値(すなわち、qAIR、qO2、qT、qTleak、qP、qPleak、qLUNG、qI)を組み合わせ、以下の3つの式を得ることができる。
【数2】
【数3】
【数4】
さらに、力の釣り合いの原理を使用して、圧力pY、pL、およびpP、ならびに流量qTおよびqLを、以下の関係に組み合わせることができる。
【数5】
【数6】
最後に、圧力と流量との間の関係を使用し、人工呼吸器システム100にもとづいて以下の式を導出することができる。
【数7】
人工呼吸器システム100から導出された上述の式を代数学によって操作し、行列の形態に書き直すことによって、図2の人工呼吸器システム100の動作の特徴を表わす以下のパラメータ化モデル190が生み出され、
【数8】
ここで、
【数9】
は、管の分岐部において測定された圧力の一次導関数であり、
【数10】
は、患者の肺の圧力の一次導関数であり、
【数11】
は、患者の努力の一次導関数であり、CTは、管のコンプライアンスを表わし、CLは、肺のコンプライアンスを表わす。利用される入口気体がより多数または少数である場合には、パラメータ化モデル190を、本発明の他の実施形態に従って種々の気体を考慮するように変更できることに、留意すべきである。
【0033】
本発明の種々の実施形態が、患者の努力pPを割り出すためにパラメータ化モデル190を利用する。本発明のさまざまな実施形態においては、計算を簡単にするために仮定を行うことができる。本発明の一特定の実施形態においては、漏れ160を、管の漏れの流量と開口における圧力低下との間の以下の線形関係を呈するものと仮定することができる。
【数12】
本発明の他の実施形態において、管の漏れの流量と開口における圧力低下との間の関係について、他の仮定を使用してもよいことに留意すべきである。管の漏れの流量についての上述の線形な仮定にもとづくと、パラメータ化モデル190を、以下のモデルへと還元することができる。
【数13】
【0034】
上述のパラメータ化モデルにもとづき、pYについての伝達関数が、
【数14】
のように定められ、ここで、測定された流量の各々の瞬間の和(例えば、qAIR+qO2−qE)を、正味の流量qNと称する。
【数15】
が、正味の流量(qN)から出力(pY)への伝達関数を表わし、
【数16】
が、患者の努力の導関数
【数17】
から出力(pY)への伝達関数を表わし、
【数18】
が、患者の漏れ(qPleak)から出力(pY)への伝達関数を表わす。先の伝達関数の第1項(すなわち、qN項)が、知られている測定された値に関する伝達関数であり、先の伝達関数の第2項(すなわち、pP項)が、未知の適応的に推定される値に関する伝達関数であることに、留意すべきである。本発明のいくつかの実施形態においては、第3項(すなわち、qPleak)が、簡単化のためにゼロであると仮定される。やはり上述のパラメータ化モデルを使用して、伝達関数の係数とシステムのパラメータとの間の関係は、以下のとおりである。
【数19】
ここで、
【数20】
【数21】
ここで、
【数22】
【数23】
【数24】
【0035】
以上から、パラメータ化された出力モデルを線形回帰の形態で導出することが可能である。パラメータ化された線形回帰出力モデルの定義における第1の段階は、以下のような未知のパラメータベクトルを定義することを含む。
【数25】
未知のパラメータモデルから、ひとたび推定されると、人工呼吸器システム100のすべての一括パラメータ(例えば、CT、CL、RP、およびλLEAK)を取り出すことができる。pYについての伝達関数の代数的な操作を通じて、
【数26】
として表わすことができる。
この場合において、圧力
【数27】
は、適切なフィルタ
【数28】
によるフィルタ処理後の圧力pY(s)を表わす。そのような適切なフィルタは、s2と
同じまたはより高次の多項式Λ(s)に依存する(例えば、s2、s3、s4...)。患者の漏れ(qPleak)をゼロであると仮定することによって、換気システム100のパラメータ化モデル190に対応する入力−出力の関係のコンパクトな線形回帰の形態が、
【数29】
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
と表わされ、ここで、zは、出力の圧力値であり、φTは、知られている信号の集まりを表わす回帰ベクトルであり、φdは、フィルタ処理された患者の努力である。
【0036】
この場合、システムパラメータ
【数34】
を推定するために標準線形回帰を使用することは、φdが未知であるため不可能である。未知の項
【数35】
を点検し、患者の努力の導関数
【数36】
が有界の信号であり、フィルタ(Λ(s))が安定多項式であり、
【数37】
が適切な線形フィルタであることを理解することによって、未知のフィルタ処理された患者の努力(すなわち、φd)が滑らかな信号であることが明らかである。この理解にもとづき、任意の時点tにおける未知のフィルタ処理された患者の努力の値を、時点t−dt(ここでdtは、無限小または有限であるが短い時間をあらわす)における値によって近似することができる。
【数38】
本発明のいくつかの実施形態においては、dtが、5ミリ秒以下である。上述の近似は、呼吸パラメータの計算に使用でき、次いで患者の努力の計算に使用することができる時点tにおける未知のフィルタ処理された患者の努力の信号の妥当な推測または予測を表わす。この妥当な推測を、以下の式に従って定めることができるシステムの出力(z)の予測値
【数39】
を割り出すために使用される以下の式
【数40】
に従って定めることができる。
この定義から、パラメータの特定の問題を、φ(t)およびz(t)に鑑みて
【数41】
(ここで、J()は、Θの凸(例えば、()2)関数である)を見つけるという問題の公式化によって解くことができる。この点から、いくつかの数学的解法のうちの1つを、問題を解くために適用することができる。一例として、修正再帰最小二乗法を使用することができる。そのような手法の非修正の数学的実現に関するさらなる詳細が、(1)Lennart Ljung、「System Identification、Theory for the User」、Second Edition、Prentice Hall、1999(ISBN 0−13−656695−2)および(2)Petros IoannouおよびJing Sun、Robust Adaptive Control、Prentice Hall、1995(ISBN 9780134391007)の一方または両方にさらに詳しく記載されている。上述の両文献は、参照により、あらゆる目的において本明細書に組み込まれる。
【0037】
修正再帰最小二乗法の実施において、以下の式
【数42】
に記載のように、予測誤差(ε)が最初に正規化され、信号が正規化された信号のために採用され、ここで、εは、正規化された予測誤差であり、
【数43】
および
【数44】
は、それぞれ時間期間dtに対応する出力およびリグレッサの差であり、mは、正規化信号である。加えて、修正関数J()(コスト関数と称される)が、以下の式
【数45】
に従って採用され、ここで、β>0およびQ0≧0が、忘却因子およびペナルティ行列と称される。これにもとづき、解Θにおいて以下の静的状態が満足されなければならない。
【数46】
【0038】
したがって、Θを、非再帰的に
【数47】
と発見することができ、ここで、
【数48】
である。
行列PおよびベクトルΘが、パラメータの特定の問題を解くために使用することができる再帰アルゴリズムの定義を完成させる以下の2つの微分方程式
【数49】
を満足し、ここで、εは、正規化された誤差または最後に測定された値と新たに測定された値との間の差である。
【0039】
以下の検討において、リアルタイムで患者の努力の現在の値を間接的に推定するために使用することができる方法を説明する。さらに、上述した中間値(例えば、伝達関数の内部の信号)のさまざまな組み合わせが、どのように非測定の患者の努力との高いレベルの相関を有するのかが実証される。相関ゆえに、中間値を、患者の努力を妥当な精度で特徴付けるために使用することができる。
【0040】
以上のように確立された関係から、
【数50】
が明らかである。
【0041】
【数51】
をもたらす適切なフィルタ
【数52】
を選択することによって、患者の努力の実際の導関数
【数53】
について、患者の努力の導関数の推定
【数54】
を、
【数55】
のように計算することができる。
【0042】
以下の式のもとづき、予測誤差信号
【数56】
が、患者の努力の信号
【数57】
およびそのフィルタ処理されたバージョンφdに相関付けられることが明らかである。
【数58】
【0043】
上記で定義された伝達関数およびパラメータベクトルΘの現在の推定を使用して、管の現在の圧力(py)の予測
【数59】
が、以下の式によって表わされる。
【数60】
【0044】
これから、予測誤差を、以下の式
【数61】
によって記述することができ、これが患者の努力の導関数
【数62】
のフィルタ処理されたバージョンである。さらに、換気システムが管の漏れがないことを特徴とする場合(すなわち、λLEAK=0と仮定される場合)、予測誤差
【数63】
は、伝達関数
【数64】
が積分関数であるため、患者の努力の信号(pP)に似る。
【0045】
上述の式は、患者の努力(すなわち、pPおよび/または
【数65】
)と正確に得ることができる流量および圧力の測定値との間の関係を表わしている。図3が、患者の努力(すなわち、pPおよび/または
【数66】
)と上述したアルゴリズムの内部の典型的な信号との間の典型的な相関を、図式的に示している。図示のように、タイミング図210が、患者の努力(pP)を時間の関数として示している。タイミング図205が、患者の努力の一次導関数
【数67】
を時間の関数として示している。タイミング図215が、
【数68】
を示しており、タイミング図220が、
【数69】
を示している。pP、
【数70】
【数71】
および
【数72】
の各々の大きさは、H2Oのセンチメートル単位で表わしている。上述した分析にもとづいて予想されるとおり、図210に示されている患者の努力(pP)と図215に示されている信号
【数73】
との間に強い相関が存在する。同様に、図205および220が、患者の努力の一次導関数
【数74】
と信号
【数75】
との間の強い相関を実証している。したがって、再現された信号を、通常であれば未知である信号
【数76】
およびpPを予測するために使用することができる。結果が単なる例であり、本明細書に提示の開示にもとづいて、当業者であれば、未知である患者の努力の信号およびその導関数を特徴付けるために、本発明の種々の実施形態を使用することによって達成することができる種々の別の信号およびそれらの遅延バージョンを理解できることに、留意すべきである。
【0046】
図4に目を向けると、フロー図300が、患者の努力を割り出すための本発明のいくつかの実施形態による方法を示している。種々の管を使用して被験者へと接続された人工呼吸器を含む人工呼吸器システムが用意される。人工呼吸器が、1つ以上の入口気体流を受け取り、出口気体流を被験者への入口/出口に加えて含んでいる。フロー図300に従い、管の圧力(py)が、正味の流量(qn)を生成するための入口流量および出口流量とともに測定される(ブロック305)。圧力の値(py)がフィルタ処理され、出力(z)としてもたらされ(ブロック310)、圧力(py)および正味の流量の値(qn)がフィルタ処理され、回帰ベクトル(φT)に組み合わせられる(ブロック315)。上述の値(すなわち、zおよびφT)の差および/または導関数が計算され、出力m2、
【数77】
および
【数78】
が生成される(ブロック320)。加えて、zおよび
【数79】
の時間遅延バージョン(すなわち、ze−sdtおよび
【数80】
)が生成される(ブロック317、318)。m2、
【数81】
【数82】
およびΘTが、推定による正規化された予測誤差(ε)を生成すべく組み合わせられ(ブロック325)、m2、
【数83】
およびεが、先に計算された共分散行列(P0)とともに使用され、更新された共分散行列(P)が計算される(ブロック330)。新たに計算された共分散行列(P)が、後の共分散行列の更新において先に計算された共分散(P0)として使用するために、保存されて維持される(ブロック335)。更新された共分散行列(P)が、先に計算されたεおよび
【数84】
とともに使用され、更新されたシステムのパラメータベクトル(Θ)が計算される(ブロック340)。加えて、Θの時間遅延バージョン(すなわち、Θe−sdt)が生成される(ブロック319)。上述のように、システムのパラメータベクトル(Θ)は、例えば管のコンプライアンス(CT)、肺のコンプライアンス(CL)、一括抵抗(RP)、および漏れ(λLEAK)などの種々のシステムパラメータを含んでいる。
【0047】
上述の処理(ブロック305から340)の際に、さまざまな中間値を、患者の努力を推定するために、個別または組み合わせにて使用することができる(ブロック345)。例えば、上記の図3に示されているように、zが患者の努力に相関している。さらに、zを他の構成要素を使用して計算できるため、構成要素も患者の努力を推定するために使用することができる。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、患者の努力を予測するための構成要素の他の使用を理解できる。
【0048】
図5に目を向けると、患者の努力を割り出すためのマイクロプロセッサベースのシステム400が、本発明の種々の実施形態に従って示されている。システム400が、コンピュータ可読媒体460へと通信可能に接続されたマイクロプロセッサ410を含む。マイクロプロセッサ410は、種々の入力値を受信し、ソフトウェアまたはファームウェアインストラクションを実行し、入力値にもとづく出力をもたらすことができる当該技術分野において知られている任意のプロセッサであってもよい。コンピュータ可読媒体460は、マイクロプロセッサ410によって実行することができるインストラクションを保存することができる任意の媒体であってもよい。本明細書に提示の開示にもとづいて、当業者であれば、本発明のさまざまな実施形態に関して使用することができる種々のプロセッサを理解できる。あくまでもいくつかの例として、コンピュータ可読媒体460は、ハードディスクドライブ、テープドライブ、ポータブルな半導体メモリ、CD−ROM、RAM、または上述の組み合わせ、などであってもよい。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、本発明のさまざまな実施形態に関して使用することができる種々の媒体および媒体の組み合わせを理解できる。
【0049】
インストラクション450は、実行されたときに、マイクロプロセッサ410にI/Oインターフェイス420を介した種々のI/Oの受信を実行させる。受信されるI/Oは、測定された入口気体流量422、424および測定された出口気体流量426を含む。いくつかの場合には、測定された入口気体流量が、空気および酸素のそれぞれの流量を測定している。本発明の特定の実施形態に応じて、2つよりも多数または少数の入口気体流量を測定できることに、留意すべきである。出口気体流量426は、システム400から吐き出される気体の流量を測定する。さらに、受信されるI/Oは、それぞれの入口気体流量422、424に関係する測定された入口気体圧力428、430を含む。より多数またはより少数の入口気体流量が存在する場合には、I/Oがより多数または少数の測定された気体の圧力の入力を含んでもよいことに、留意すべきである。さらに、本発明のいくつかの実施形態においては、ただ1つの気体圧力センサが入口気体圧力428、430を効果的に組み合わせる圧力値の提供を可能にする位置においてシステム400に配置される場合に、ただ1つの気体の圧力の入力を、入口気体圧力428、430の代わりにもたらしてもよい。さらに、インストラクション450は、実行されたときに、マイクロプロセッサ410に、I/Oインターフェイス420を介して受信されるI/Oを使用して患者の努力の出力440をもたらす患者の努力のアルゴリズムを実行させる。そのような患者の努力のアルゴリズムは、これらに限られるわけではないが、図2および図4に関して上述した患者の努力のアルゴリズムであってもよい。患者の努力のアルゴリズムの実行の一部として、インストラクション450は、マイクロプロセッサ410に、これらに限られるわけではないが管のコンプライアンス412(CT)、肺のコンプライアンス414(CL)、一括抵抗416(RP)、および漏れ418(λLEAK)など、通常であれば未知である種々のシステムパラメータを計算させる。上述のシステムパラメータを、種々の中間の計算において使用することができ、1つ以上の中間の計算の結果が、患者の努力の出力440を予測する結果をもたらす。
【0050】
さらに、マイクロプロセッサベースのシステム400は、グラフィカルユーザインターフェイスドライバ490およびグラフィカルユーザインターフェイス495を含むことができる。グラフィカルユーザインターフェイス495は、マイクロプロセッサベースのシステム400からユーザへの情報の図式的な表現を提供する任意のインターフェイスであってもよい。したがって、グラフィカルユーザインターフェイス495は、当該技術分野において知られている任意の表示装置であってもよい。いくつかの場合には、グラフィカルユーザインターフェイス495が、ユーザからの入力を受け取る能力をさらに備えることができる。入力を受け取る能力を、例えば、グラフィカルユーザインターフェイス495に組み合わせて用意されるタッチスクリーン機能、キーボード、および/またはマウスなどによってもたらすことができる。グラフィカルユーザインターフェイスドライバ490は、マイクロプロセッサベースのシステム400からの情報をグラフィカルユーザインターフェイス495によって表示することができる図式的情報へと変換することができる当該技術分野において知られている任意の回路、システム、または装置であってもよい。
【0051】
図6は、換気サイクルをトリガするための本発明のいくつかの実施形態による方法を示しているフロー図500である。フロー図500に従い、圧力が測定され(ブロック505)、入口流量が測定され(ブロック510)、出口流量が測定される(ブロック515)。いくつかの場合には、圧力が、人工呼吸器を換気対象者へと接続している管において測定される。いくつかの場合には、圧力が、気体の入口の付近および/または気体の出口の付近において測定される。他の場合には、圧力が、気体の入口の気体の出口との分岐合流点の近くで測定される。種々の場合において、圧力の測定が、単一点の圧力測定である一方で、他の場合には、圧力の測定が多点の圧力測定であり、測定された圧力が、2つ以上の圧力測定の数学的な組み合わせである。入口流量の測定は、単一の気体の流量の測定を含むことができ、または2つ以上の気体の流量の測定および複数の流量値の合計を含むことができる。出口流量の測定は、これに限られるわけではないが、換気システムの出口における気体の流量の測定を含むことができる。特定の場合において、出口流量が入口流量から引き算され、瞬間の正味の流量が生成される(ブロック520)。
【0052】
所与の瞬間における正味の流量および測定された圧力が、患者の努力の更新された予測を計算するために使用される(ブロック525)。このプロセスを、図4に関して上述した手法を使用して行うことができる。次いで、患者の努力の更新された予測が、開始状態を示しているか否かが判断される(ブロック530)。開始状態を示している場合(ブロック530)、換気サイクルの開始がトリガされる(ブロック535)。例として、患者の努力の更新された予測は、上述したフィルタ処理された患者の努力の信号(φd)であってもよい。フィルタ処理された患者の努力の信号は、以下の式
【数85】
に記載されるように、患者の努力
【数86】
の導関数の関数である。
【0053】
このように、フィルタ処理された患者の努力の信号は、実際の患者の努力(pP)が減少するとき、負になると予想される。したがって、吸気の開始は、フィルタ処理された患者の努力の信号がゼロよりも小さくなるときに示される(例えば、信号が正の値から負の値へと移行するマイナス方向のゼロ交差を呈する)。この指標を、換気サイクルの開始を患者の努力に同期させるために使用することができる。そのような同期性が、患者の換気の改善をもたらす。いくつかの場合には、ひとたびフィルタ処理された患者の努力の信号がゼロよりも小さくなると、換気サイクルの開始がトリガされる。他の場合には、ひとたびフィルタ処理された患者の努力の信号が所定の負のしきい値または正のしきい値に達すると、換気サイクルの開始がトリガされる。先の例においては、フィルタ処理された患者の努力の信号が使用されているが、1つ以上の他の信号も同様に使用できることに、留意すべきである。例えば、予測誤差信号
【数87】
もまた、同様に実際の患者の努力に相関しているため、使用することが可能である。本明細書に提示の開示にもとづき、換気サイクルを開始させるために使用することができる種々の他の信号を、当業者であれば理解できる。
【0054】
あるいは、患者の努力の更新された予測が、終了状態を示しているか否かが判断される(ブロック540)。終了状態を示している場合(ブロック540)、先に開始された換気サイクルの終了がトリガされる(ブロック545)。例として、患者の努力の更新された予測は、吸気の開始のトリガに使用されたものと同じフィルタ処理された患者の努力の信号であってもよい。フィルタ処理された患者の努力の信号は、患者の努力の導関数の関数であるため、吸気の終了は、フィルタ処理された患者の努力の信号がゼロよりも大きくなるときに示される(例えば、信号が負の値から正の値へと移行するプラス方向のゼロ交差を呈する)。そのような指標を、換気サイクルの終了を患者の努力に同期させ、患者の換気の改善をもたらすために使用することができる。いくつかの場合には、ひとたびフィルタ処理された患者の努力の信号がゼロよりも大きくなると、換気サイクルの終了がトリガされる。他の場合には、ひとたびフィルタ処理された患者の努力の信号が所定の負のしきい値または正のしきい値に達すると、換気サイクルの終了がトリガされる。やはり、先の例においては、フィルタ処理された患者の努力の信号が使用されているが、1つ以上の他の信号も同様に使用できることに、留意すべきである。例えば、予測誤差信号
【数88】
もまた、同様に実際の患者の努力に相関しているため、使用することが可能である。本明細書に提示の開示にもとづき、換気サイクルを終了させるために使用することができる種々の他の信号を、当業者であれば理解できる。
【0055】
図7に目を向けると、タイミング図600が、患者の努力の代用物にもとづいて複数の換気サイクルをトリガするプロセスを示している。この場合には、患者の努力の代用物が、フィルタ処理された患者の努力信号(φd)610である。実際の患者の努力の信号(Pp)620が、本発明の種々の実施形態を使用して達成できる同期性を実証するために示されている。フィルタ処理された患者の努力の信号610が、換気のトリガとして示されているが、1つ以上の他の信号も同様に使用できることに、留意すべきである。例えば、予測誤差信号
【数89】
もまた、同様に実際の患者の努力に相関しているため、使用することが可能である。本明細書に提示の開示にもとづき、トリガを達成するために使用することができる種々の他の信号を、当業者であれば理解できる。
【0056】
図示のとおり、マイナス方向のゼロ交差点612aを通過するフィルタ処理された患者の努力の信号610の移行が、実際の患者の吸気の努力の開始622aに対応している。後のプラス方向のゼロ交差点614aが、呼気624aの開始に対応している。このプロセスが、いくつかの換気サイクルについて表わされている。タイミング図600に一致して、フィルタ処理された患者の努力の信号610のプラス方向のゼロ交差を、換気サイクルの開始をトリガするために使用することができ、フィルタ処理された患者の努力の信号610のマイナス方向のゼロ交差を、換気サイクルの終了をトリガするために使用することができる。
【0057】
図8は、pyに対応する圧力センサのトリガのプロセスを示すタイミング図710、推定による患者の努力の信号
【数90】
のトリガのプロセスを示すタイミング図720、および患者の努力に相関する他の信号
【数91】
のトリガのプロセスを示すタイミング図730を含んでいる。タイミング図710によって示されるとおり、圧力センサは、雑音レベル711を呈しており、トリガしきい値713が、偽のトリガを避けるために予想される雑音レベル711以下に雑音バッファ量712を設定する。図示のように、pyに対応する圧力が、最終的にトリガしきい値713を下回って低下し、吸気の開始の検出714がもたらされる(縦の破線によって示されている)。吸気の開始のしきい値714は、実際の吸気の開始716(縦の破線によって示されている)後に遅延期間715を生じる。タイミング図710から見て取ることができるとおり、遅延期間715の大きさは、雑音レベル711および雑音バッファ量712の関数である。
【0058】
圧力測定に関係する雑音は、必ずしも流量の測定に関係する雑音に相関していない。推定による患者の努力の信号の作成において、圧力および流量の両方の測定から導出される情報を組み合わせることによって、予想される雑音の量が、典型的には、ただ1つの測定だけしか使用されない場合に予想される雑音よりも少なくなる。雑音バッファ量は、多くの場合に、予想される雑音の大きさにもとづいて選択される。したがって、本発明のいくつかの実施形態においては、予想される雑音レベルおよび雑音バッファ量の両方が、ただ1つの測定のシステムに比べて小さい。これらの変数が小さくなることで、吸気の検出を、実際の吸気の開始に時間的にさらに近く相関付けることが可能になる。タイミング図720、730が、そのようなトリガの遅延の減少を図式的に示している。
【0059】
タイミング図720によれば、推定による患者の努力の信号
【数92】
が、比較的小さい雑音レベル721を呈しており、トリガしきい値723が、偽のトリガを避けるために予想される雑音レベル721以上に雑音バッファ量722を設定する。図示のように、推定による患者の努力の信号が、最終的にトリガしきい値723を超え、吸気の開始の検出724がもたらされる(縦の破線によって示されている)。吸気の開始の検出724は、実際の吸気の開始726(縦の破線によって示されている)後に遅延期間725を生じる。遅延期間725は、ただ1つの測定点だけが使用される場合の遅延時間よりも短い。同様に、タイミング図730によれば、推定による患者の努力の信号
【数93】
が、比較的小さい雑音レベル731を呈しており、トリガしきい値733が、偽のトリガを避けるために予想される雑音レベル731以上に雑音バッファ量732を設定する。図示のように、推定による患者の努力の信号が、最終的にトリガしきい値733を超え、吸気の開始の検出734がもたらされる(縦の破線によって示されている)。検出された吸気の開始734は、実際の吸気の開始736後に遅延期間735を生じる(縦の破線によって示されている)。遅延期間735は、ただ1つの測定点だけが使用される場合の遅延時間よりも短い。
【0060】
図9に目を向けると、フロー図800が、患者の努力に比例した換気を提供するための本発明の種々の実施形態による方法を示している。フロー図800によれば、圧力が測定され(ブロック805)、入口流量が測定され(ブロック810)、出口流量が測定される(ブロック815)。いくつかの場合には、圧力が、人工呼吸器を換気対象者へと接続している管において測定される。いくつかの場合には、圧力が、気体の入口の付近および/または気体の出口の付近において測定される。他の場合には、圧力が、気体の入口の気体の出口との分岐合流点の近くで測定される。種々の場合において、圧力の測定が、単一点の圧力測定である一方で、他の場合には、圧力の測定が多点の圧力測定であり、測定された圧力が、2つ以上の圧力測定の数学的な組み合わせである。入口流量の測定は、単一の気体の流量の測定を含むことができ、または2つ以上の気体の流量の測定および複数の流量値の合計を含むことができる。出口流量の測定は、これに限られるわけではないが、換気システムの出口における気体の流量の測定を含むことができる。特定の場合において、出口流量が入口流量から引き算され、瞬間の正味の流量が生成される(ブロック820)。
【0061】
所与の瞬間における正味の流量および測定された圧力が、患者の努力の更新された予測を計算するために使用される(ブロック825)。このプロセスを、図4に関して上述した手法を使用して行うことができる。次いで、計算された患者の努力に対応する瞬間に人工呼吸器によって送出されるべき気体の所望の気体送出パラメータが計算される(ブロック840)。本発明のいくつかの実施形態においては、気体送出パラメータが流量および/または圧力である。この場合、気体の送出の所望の圧力および流量が、それぞれ患者の努力の関数である。例えば、患者の努力が、関数f(x)によって記述される瞬間xにおける値になると判断される場合、計算される圧力を、関数g(f(x))を使用して記述することができ、時間における計算される流量を、関数h(f(x))を使用して瞬間において記述することができる。本発明の一特定の実施形態においては、関数gおよび関数hの各々が、一定の乗数である。そのような場合には、瞬間xにおける計算される圧力がk1f(x)であり、瞬間xにおける計算される流量がk2f(x)であり、ここで、k1が圧力に対応する定数であり、k2が流量に対応する係数である。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、本発明の種々の実施形態に関して使用することができる他の関数gおよび他の関数hを理解できる。送出される気体の基準として使用される圧力は、これらに限られるわけではないが、Y字における圧力または患者の肺の圧力であってもよい。送出される気体の基準として使用される流量は、これらに限られるわけではないが、患者の肺の流量または入口気体の流量であってもよい。
【0062】
次いで、患者の努力の更新された予測が、吸気段階を示しているか否かが判断される(ブロック830)。本発明のいくつかの実施形態においては、吸気段階が、患者の努力の導関
【数94】
がゼロよりも大きい場合に示される。吸気段階を示している場合(ブロック830)、気体が、すでに計算された気体送出パラメータに従って受け手へと送出される(ブロック835)。やはり、気体送出パラメータは、これらに限られるわけではないが、患者へと送出されるべき気体または気体成分(例えば、酸素、空気、チッ素、ヘリウム、など)の圧力および流量を含むことができる。他方で、吸気段階が示されない場合(ブロック830)、気体の送出はもたらされない。このような手法は、患者の努力の関数としての流量および/または圧力での気体の送出を提供する。このような手法は、患者の快適さを向上させ、患者自身の呼吸の試みをあまり邪魔しない。
【0063】
図10に目を向けると、4つのタイミング図、910、920、930、940が、本発明の1つ以上の実施形態による患者の努力に比例した換気の提供を図式的に示している。タイミング図910は、患者の努力を時間の関数として示しており、タイミング図920は、患者の努力の導関数を時間の関数として示している。図示のとおり、患者の努力の導関数がゼロよりも大きい(吸気段階に対応する)とき、患者の努力が、関数f(x)として記述される。タイミング図910は、患者の努力を時間において繰り返す同じ関数として示しているが、特定の患者の呼吸のパターンに応じて、第1の場合f1(x)912が第2の場合f2(x)914と実質的に異なってもよいことに、留意すべきである。
【0064】
タイミング図930が、患者の努力によって引き起こされる圧力の低下をオフセットすべくY字接続部における圧力を高めるための人工呼吸器による努力を示している。図示のように、吸気段階(すなわち、患者の努力の導関数がゼロより大きいとき)において、人工呼吸器が、患者の努力の関数g(f1(x))932としてY字接続部における圧力を高めようとする。次の呼吸においては、人工呼吸器が、患者の努力の関数g(f2(x))934としてY字における圧力を高めようとする。しかしながら、この特定の場合においては、関数gが定数k1であるが、他の時間変化する関数もまた、本発明の種々の実施形態に従って使用することが可能である。
【0065】
同様に、吸気段階において、人工呼吸器は、患者の努力の関数h(f1(x))942として患者への気体の流量を増加させる。次の呼吸において、人工呼吸器は、患者の努力の関数h(f2(x))944として患者への気体の流量を増加させる。この特定の場合においては、関数hが定数k2であるが、他の時間変化する関数も、本発明の種々の実施形態に従って使用することが可能である。いくつかの場合においては、関数gおよびhが、患者の努力に比例または反比例することができる。気体の送出が患者の努力の関数としてもたらされるという意味で、患者の努力を患者の努力(すなわち、患者の胸腔内圧)に直接的にもとづいて割り出すことができ、あるいは患者の努力の一次もしくはより高次の導関数にもとづいて割り出すことができることに、留意すべきである。
【0066】
図11に目を向けると、典型的なグラフィカルインターフェイス1000が、本発明のいくつかの実施形態による能動的な呼吸を有する患者に対応する患者の努力の表示を示している。グラフィカルインターフェイス1000は、フィルタ処理された患者の努力(φd)1010および患者の努力(pP)1020の各々の時間の関数としての図式的表示を含んでいる。本発明の特定の実施形態に応じ、図示した目安に加え、または図示した目安に代えて、患者の努力の他の目安も表示することが可能であることに留意すべきである。
【0067】
図示の実施形態においては、時間が横軸に表示され、それぞれの患者の努力の値の値が、左の軸に表示されている。時間が経つにつれて、横軸の時間刻みが、現在の時間の周囲のウインドウを反映するように更新される。さらに、ユーザが動かすことができる2本の縦バー1012、1022が、グラフ1010および1020に配置されている。これにより、ユーザが、イベントを測定するために特定の時刻に開始バー1012および終了バー1022を配置することができる。開始バー1012と終了バー1022との間の時間差を、それぞれの時点におけるフィルタ処理された患者の努力および患者の努力の値とともに、ユーザへと表示することができる。いくつかの場合には、開始バー1012および終了バー1022を、キーボード指令またはマウス指令によって使用することができる。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、グラフ1010、1020に関して開始バー1012および終了バー1022を操作するために使用することができるさまざまなI/Oを理解できる。
【0068】
さらに、図式的に表示される患者の努力に関する種々の指標を計算し、グラフィカルインターフェイス1000によって表示することができる。例えば、呼吸1030の間の平均時間を計算し、表示することができる。そのような平均時間を、所定の数の呼吸にもとづいて計算することができ、各々の呼吸の間の時間は、呼気の終わりから次の吸気の開始まで計算される。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、本発明の種々の実施形態に従って呼吸の間の平均時間を計算するために使用することができる種々の手法を理解できる。他の例として、ピークの呼吸の努力1040を表示することができる。ピークの呼吸の努力1040は、特定の実施例に応じて、所定の数の呼吸の経過の間にグラフ1010またはグラフ1020のいずれかにおいて記録される最大値であってもよい。さらに別の例として、呼吸ごとのピークの努力150を表示することができる。呼吸ごとのピークの努力1050は、最も最近の呼吸におけるグラフ1010またはグラフ1020のいずれかのピーク値を示すことができる。あるいは、開始バー1012によって特定される呼吸におけるグラフ1010またはグラフ1020のいずれかのピーク値を示してもよい。またさらなる例として、最後の吸気の継続時間1060を表示することができる。最後の吸気の継続時間106は、最も最近の呼吸について、吸気の開始が検出されたときから吸気の終了が検出されたときまでの時間を示す。一例においては、これを、患者の努力の一次導関数がしきい値を超えるときから再びしきい値を下回るまでを検出することによって達成することができる。他の例として、最後の呼気の継続時間1070を表示することができる。いくつかの場合には、最後の呼気の継続時間1070を、患者の努力の一次導関数がしきい値を下回って低下するときから再びしきい値を上回るときまでを検出することによって、計算することができる。他の例として、吸気の平均継続時間1080および呼気の平均継続時間1090を表示することができる。これを、先に述べた呼気の継続時間および吸気の継続時間のいくつかを平均することによって計算することができる。
【0069】
図12に目を向けると、典型的なグラフィカルインターフェイス1100が、本発明のいくつかの実施形態による能動的な呼吸を有する患者に対応する呼吸パラメータの表示を示している。詳しくは、グラフ1110が、患者抵抗パラメータの推定値を時間の関数として示している。いくつかの実施形態において、患者抵抗パラメータは、計算の結果であるため、患者抵抗の実際の値との区別のために、「推定Rp」と称される。グラフィカルインターフェイス1100が、推定Rpを表示するものとして説明されているが、他の呼吸パラメータも、本発明の種々の実施形態に従って表示できることに、留意すべきである。例えば、グラフィカルインターフェイス1100を、肺のコンプライアンスまたは漏れのパラメータを表示するように拡張することができ、これらの追加で表示されるパラメータは、本明細書において説明したものと同じまたは同様の一式の式を使用して割り出される。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、表示することができる種々の呼吸パラメータを理解できる。いくつかの場合には、表示される呼吸パラメータを、患者のリアルタイムでの評価のために監視の医師が使用することができる。これに代え、またはこれに加えて、表示される呼吸パラメータを、生じ得るシステムの故障を判断するために使用することができ、または患者が人工呼吸器から離れたことを示すために使用することができる。一特定の例として、Rpの劇的な増加が、部分的な閉塞を示すことができる。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、本発明の1つ以上の実施形態に従って達成することができるさまざまな利点を理解できる。
【0070】
図示のとおり、時間が横軸に表示され、推定Rpの値が左の軸に表示される。いくつかの実施形態においては、時間が経つにつれて、横軸の時間刻みが、現在の時間の周囲のウインドウを反映するように更新される。さらに、いくつかの実施形態においては、ユーザが動かすことができる2本の縦バー1112、1113が、グラフ1110上に配置されている。これにより、ユーザが、イベントを測定するために特定の時刻に開始バー1112および終了バー1113を配置することができる。開始バー1112と終了バー1113との間の時間差を、それぞれの時点におけるフィルタ処理された患者の努力および患者の努力の値とともに、ユーザへと表示することができる。いくつかの場合には、開始バー1112および終了バー1113を、キーボード指令またはマウス指令によって使用することができる。本明細書に提示の開示にもとづき、当業者であれば、グラフ1110に関して開始バー1112および終了バー1113を操作するために使用することができるさまざまなI/Oを理解できる。
【0071】
この特定の例においては、初期期間1120について、推定Rpが、5cmH2O/lpsという値で初期化される。このとき、Rpの実際の値は、30cmH2O/lpsにより近い。ある時間期間にわたり、推定Rpの値を割り出すために使用されるアルゴリズムが、推定値が期間1130におけるRpの実際の値を近似するまで、適応的に順応する。50秒のしるしの付近の時点において、換気システムから閉塞が取り除かれ、Rpの実際の値が劇的に減少する。この時点で、アルゴリズムが、推定値が実際の値を近似するまで推定Rpの値を下げることによって適応的に順応する。期間1140において、推定Rpの値は、Rpの実際の値の付近でほぼ一定のままである。
【0072】
加えて、図式的に表示される抵抗パラメータに関する種々の指標を計算し、グラフィカルインターフェイス1100によって表示することができる。例えば、現在のRp値1150を表示することができ、平均のRp値1160を表示することができる。平均のRp値1160を、特定の時間期間にわたってRpのいくつかの値を平均することによって計算することができる。加えて、視覚による警報1170を表示することができる。そのような視覚による警報を、推定Rpの値の所定の増加または減少が検出されたときに生じさせることができる。グラフィカルインターフェイス1100を、さまざまな他の情報を表示するように拡張できることに、留意すべきである。
【0073】
本発明は、患者の努力に比例して気体を送出する新規なシステム、方法、および装置を提供する。以上、本発明の1つ以上の実施形態の詳細な説明を提示したが、種々の代案、変更、および均等物が、本発明の技術的思想を変更することなく、当業者にとって明らかである。したがって、以上の説明を、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の技術的範囲を限定するものと解釈してはならない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ可読媒体へと通信可能に接続されたプロセッサを備えており、
コンピュータ可読媒体が、
測定された圧力の値を受信し、
正味の流量の値を受信し、
患者の努力と、測定された圧力の値と、正味の流量の値との間の関係にもとづいて、患者の努力の値を計算し、
患者の努力の値の関数として変化する気体の送出の基準を計算し、
気体の送出の基準に一致した気体の送出を生じさせるようにプロセッサによって実行することができるインストラクションを含んでいる、換気システム。
【請求項2】
気体の送出の基準が、圧力および流量から選択される、請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
流量が、患者の肺の流量および入口気体流量から選択される、請求項2に記載の換気システム。
【請求項4】
圧力が、肺の圧力およびY字の圧力から選択される、請求項2に記載の換気システム。
【請求項5】
コンピュータ可読媒体が、
患者の努力の値にもとづいて吸気段階を判断するようにプロセッサによって実行することができるインストラクションをさらに含んでいる、請求項1に記載の換気システム。
【請求項6】
計算された患者の努力の値がゼロよりも大きい場合に、吸気段階が示される、請求項5に記載の換気システム。
【請求項7】
判断された吸気段階において気体を送出するように動作することができる、請求項5に記載の換気システム。
【請求項8】
患者の努力の値の関数が、一定の乗数である、請求項1に記載の換気システム。
【請求項9】
患者の努力の値の関数が、非線形関数である、請求項1に記載の換気システム。
【請求項10】
患者の努力の値の関数が、時間変化する関数である、請求項1に記載の換気システム。
【請求項11】
患者の努力の値が、測定された圧力の値および正味の流量の値を使用して計算される1つ以上の中間値の組み合わせにもとづいてさらに計算され、1つ以上の中間値が、推定による正規化された予測誤差(ε)、フィルタ処理された圧力の値(z)、回帰ベクトル(φT)、およびパラメータベクトル(Θ)の現在の推定された値から選択される、請求項1に記載の換気システム。
【請求項12】
関係が、パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係である、請求項1に記載の換気システム。
【請求項13】
パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係が、回帰の形態z=ΘTφ+φdである、請求項12に記載の換気システム。
【請求項14】
パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係が、伝達関数から導出される、請求項13に記載の換気システム。
【請求項15】
伝達関数が、モデル
【数1】
から導出される、請求項14に記載の換気システム。
【請求項16】
呼吸の支援のための方法であって、
圧力を測定し、測定された圧力をもたらすステップと、
入口流量および出口流量を測定し、測定された正味の流量をもたらすステップと、
測定された圧力に関係する第1の値と、測定された正味の流量に関係する第2の値と、患者の努力に関係する第3の値との間の関係を使用し、測定された圧力および測定された正味の流量から患者の努力の推定を計算するステップと、
患者の努力の推定に比例して気体を供給するステップとを含んでいる、方法。
【請求項17】
患者の努力の推定に比例して気体を供給するステップが、患者の努力の推定に比例した圧力で気体を供給するステップを含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者の努力の推定に比例して気体を供給するステップが、患者の努力の推定に比例した流量で気体を供給するステップを含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
患者の努力の推定が、測定された圧力および測定された正味の流量から導出される1つ以上の中間値の組み合わせにさらにもとづいており、1つ以上の中間値が、推定による正規化された予測誤差(ε)、フィルタ処理された圧力の値(z)、回帰ベクトル(φT)、およびパラメータベクトル(Θ)の現在の推定された値から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
第2の値が、測定された正味の流量のフィルタ処理されたバージョンおよび測定された正味の流量から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
第1の値が、測定された圧力のフィルタ処理されたバージョンおよび測定された圧力から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
関係が、パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係が、回帰の形態z=ΘTφ+φdである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係が、伝達関数から導出される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
伝達関数が、モデル
【数2】
から導出される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
気体の入口と、
気体の出口と、
気体の入口および気体の出口を接続する管と、
管内の圧力を示す測定された圧力値をもたらすように機能することができる圧力センサと、
気体の入口に関する流量を示す入口流量値をもたらすように機能することができる第1の流量センサ、
気体の出口に関する流量を示す出口流量値をもたらすように機能することができる第2の流量センサと、
コンピュータ可読媒体へと通信可能に接続されたプロセッサとを備えており、
コンピュータ可読媒体が、
測定された圧力の値を受信し、
正味の流量の値を受信し、
患者の努力と、測定された圧力の値と、正味の流量の値との間の関係にもとづいて、患者の努力の値を計算し、
患者の努力の値の第1の関数として変化する気体の送出の基準を計算し、
患者の努力の値にもとづいて吸気段階を判断し、
気体の送出の基準に一致した気体の送出を生じさせるようにプロセッサによって実行することができるインストラクションを含んでいる、換気システム。
【請求項1】
コンピュータ可読媒体へと通信可能に接続されたプロセッサを備えており、
コンピュータ可読媒体が、
測定された圧力の値を受信し、
正味の流量の値を受信し、
患者の努力と、測定された圧力の値と、正味の流量の値との間の関係にもとづいて、患者の努力の値を計算し、
患者の努力の値の関数として変化する気体の送出の基準を計算し、
気体の送出の基準に一致した気体の送出を生じさせるようにプロセッサによって実行することができるインストラクションを含んでいる、換気システム。
【請求項2】
気体の送出の基準が、圧力および流量から選択される、請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
流量が、患者の肺の流量および入口気体流量から選択される、請求項2に記載の換気システム。
【請求項4】
圧力が、肺の圧力およびY字の圧力から選択される、請求項2に記載の換気システム。
【請求項5】
コンピュータ可読媒体が、
患者の努力の値にもとづいて吸気段階を判断するようにプロセッサによって実行することができるインストラクションをさらに含んでいる、請求項1に記載の換気システム。
【請求項6】
計算された患者の努力の値がゼロよりも大きい場合に、吸気段階が示される、請求項5に記載の換気システム。
【請求項7】
判断された吸気段階において気体を送出するように動作することができる、請求項5に記載の換気システム。
【請求項8】
患者の努力の値の関数が、一定の乗数である、請求項1に記載の換気システム。
【請求項9】
患者の努力の値の関数が、非線形関数である、請求項1に記載の換気システム。
【請求項10】
患者の努力の値の関数が、時間変化する関数である、請求項1に記載の換気システム。
【請求項11】
患者の努力の値が、測定された圧力の値および正味の流量の値を使用して計算される1つ以上の中間値の組み合わせにもとづいてさらに計算され、1つ以上の中間値が、推定による正規化された予測誤差(ε)、フィルタ処理された圧力の値(z)、回帰ベクトル(φT)、およびパラメータベクトル(Θ)の現在の推定された値から選択される、請求項1に記載の換気システム。
【請求項12】
関係が、パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係である、請求項1に記載の換気システム。
【請求項13】
パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係が、回帰の形態z=ΘTφ+φdである、請求項12に記載の換気システム。
【請求項14】
パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係が、伝達関数から導出される、請求項13に記載の換気システム。
【請求項15】
伝達関数が、モデル
【数1】
から導出される、請求項14に記載の換気システム。
【請求項16】
呼吸の支援のための方法であって、
圧力を測定し、測定された圧力をもたらすステップと、
入口流量および出口流量を測定し、測定された正味の流量をもたらすステップと、
測定された圧力に関係する第1の値と、測定された正味の流量に関係する第2の値と、患者の努力に関係する第3の値との間の関係を使用し、測定された圧力および測定された正味の流量から患者の努力の推定を計算するステップと、
患者の努力の推定に比例して気体を供給するステップとを含んでいる、方法。
【請求項17】
患者の努力の推定に比例して気体を供給するステップが、患者の努力の推定に比例した圧力で気体を供給するステップを含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者の努力の推定に比例して気体を供給するステップが、患者の努力の推定に比例した流量で気体を供給するステップを含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
患者の努力の推定が、測定された圧力および測定された正味の流量から導出される1つ以上の中間値の組み合わせにさらにもとづいており、1つ以上の中間値が、推定による正規化された予測誤差(ε)、フィルタ処理された圧力の値(z)、回帰ベクトル(φT)、およびパラメータベクトル(Θ)の現在の推定された値から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
第2の値が、測定された正味の流量のフィルタ処理されたバージョンおよび測定された正味の流量から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
第1の値が、測定された圧力のフィルタ処理されたバージョンおよび測定された圧力から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
関係が、パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係が、回帰の形態z=ΘTφ+φdである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
パラメータ化されたシステムの入力−出力の関係が、伝達関数から導出される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
伝達関数が、モデル
【数2】
から導出される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
気体の入口と、
気体の出口と、
気体の入口および気体の出口を接続する管と、
管内の圧力を示す測定された圧力値をもたらすように機能することができる圧力センサと、
気体の入口に関する流量を示す入口流量値をもたらすように機能することができる第1の流量センサ、
気体の出口に関する流量を示す出口流量値をもたらすように機能することができる第2の流量センサと、
コンピュータ可読媒体へと通信可能に接続されたプロセッサとを備えており、
コンピュータ可読媒体が、
測定された圧力の値を受信し、
正味の流量の値を受信し、
患者の努力と、測定された圧力の値と、正味の流量の値との間の関係にもとづいて、患者の努力の値を計算し、
患者の努力の値の第1の関数として変化する気体の送出の基準を計算し、
患者の努力の値にもとづいて吸気段階を判断し、
気体の送出の基準に一致した気体の送出を生じさせるようにプロセッサによって実行することができるインストラクションを含んでいる、換気システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−522621(P2011−522621A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512691(P2011−512691)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/046418
【国際公開番号】WO2009/149357
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(591191572)ネルコー ピューリタン ベネット エルエルシー (22)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/046418
【国際公開番号】WO2009/149357
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(591191572)ネルコー ピューリタン ベネット エルエルシー (22)
【Fターム(参考)】
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