説明

患者の肺に関する容積を測定するための方法及び装置

患者(50)の肺に関する容積を測定するために、患者(50)に直接又は間接的に結合可能な装置(48)が記載されており、当該装置は、呼吸ガスが患者(50)に向かって入っていく吸気部分(54)と呼吸ガスが患者(50)から出て行く呼気部分(56)を有しており、吸気部分(54)は、呼吸ガス内のガス成分を変化するためのマウスピース(64)を有している。容積を測定するための方法は、ガス成分内の変化に依存している測定パラメータを測定するために、呼気部分(56)内に配置される検出器(66)、及び、測定パラメータ内の変化を測定し、及び、測定された変化から、容積を測定するための検出器ユニット(66)に接続された計算ユニット(58)を備えた装置(48)によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気部分が、肺を通過するガス成分を変える処理ステップを有する、患者の肺に関する容積を測定するための方法に関する。
【0002】
本発明は、患者の肺に関する容積を測定するために、患者に直接又は間接に結合可能な装置であって、呼吸ガスが患者に向かって入っていく吸気部分と、呼吸ガスが患者から出ていく呼気部分を有しており、吸気部分は、呼吸ガス内のガス成分を変えるためのマウスピースを有している装置に関する。
【0003】
肺は、呼吸中、肺胞内に流入し(吸入、吸気)、肺胞から流出する(呼出、呼気)呼吸ガスによって容積が変化する動的な器官である。異なった容積を特徴付けるために、幾つかのパラメータが採用されている。これらのパラメータのいくつかは:通常呼吸中に吸気/呼気される容積の測定値である1回換気量;最大吸気量(容積)と最大呼気量(容積)の総容量である肺活量;通常呼気後に肺内に残留する容積の測定値である機能的残気量(FRC);及び、呼吸中、肺と血液循環との間でのガスの交換に寄与しないガス容積の測定値である無効1回換気量(主として、気管支枝内と気管内の容積によって形成される)。
【0004】
ヨーロッパ特許公開第0653183号公報には、機能的残気量FRCを測定するために有用な方法及び装置が記載されている。この方法の1つの例では、原理的に、流入期間中、不活性及び非毒性の標識ガスが、吸気中呼吸ガスに供給されて、肺内での標識ガスの濃度が平衡状態となるようになる。供給が停止され、呼気(流出期間:washing-out phase)の連続中、標識ガスの流れと濃度を測定することによって、標識ガスの呼気容積を測定することができ、この標識ガスの呼気容積は、(装置及び患者内の死腔を考慮して)機能的残気量FRCを形成する。
【0005】
公知の方法は、十分に機能する:しかし、臨界的な環境内で同様に機能するためには、明らかに、幾つかの特殊な機器を必要とする。ベンチレータ(人工呼吸器)、麻酔剤装置、等の全てに適切な標識ガスを供給し、当該標識ガスの濃度を測定するための完全な機器を設けることは、経済的にあまり実施しようとは思われず、特に、測定装置が可能な一連の標識ガスを測定することができる必要がある場合にはなおさらである。別の要因は、臨床的に使われる標識ガスは、このような用途のために設けられる必要があり、場合によっては、特別なやり方で処理されるという点にある。所定のガス、例えば、SF6(六フッ化硫黄)は、それ自体非常に適しているが、それと同時に、当該ガスが通常の病院内で臨床的に使用するのが容認されているとしても、当該ガスの扱い方の点で条件がある。SF6は、温室効果ガスの例でもあり、大気中に不必要に放出するのを最小化する必要がある。
【0006】
従って、患者の肺に関しての容積、特に、機能的残気量FRCを簡単且つ確実に測定するための方法及び装置を提供することが所望されている。
【0007】
つまり、特定の標識ガスの調量、測定又は管理用の既存の装置のように非常に長い時間がかかるという複雑な問題を生じずに、直接臨床環境内で用いることができる、患者の肺に関する容積、特に、機能的残気量FRCを測定するための方法及び装置を提供することが所望である。
【0008】
所望の結果の1つ又は幾つかを少なくとも部分的に充足する方法は、本発明によると、請求項1記載の各方法ステップによって達成される。更に有利な方法の実施例は、請求項1の従属請求項から明らかである。
【0009】
本発明は、吸気ガス成分の変化により、呼気ガス成分を可変に変化させる(均衡状態が達成される迄)ことができるという理解に基づいている。測定パラメータの、これらの変化を測定することによって、容積を測定することができる。
【0010】
方法の有利な実施例では、超音波流量計が、この測定を実行するために使われる。
【0011】
超音波の流量測定は、医療用のベンチレータ(人工呼吸器)でも使用される既知の方法である(例えば、Servoi,Maquest Critical Care AB, Solna, Sweden)。サウンドパルスをフロー内に下流の方に送信し、サウンドパルスをフロー内に上流の方に送信することによって、流速を(下流と上流との間でのサウンドパルスの伝搬時間差から)測定することができる。流れに依存しないタイムオブフライト(サウンド信号の伝搬時間)は、上流と下流での伝搬時間の平均を測定することによって得られる。
【0012】
ガスの音響特性は、特に、ガスの成分、例えば、呼吸ガス内の酸素成分に依存する。このことが、本発明では使われている。1回以上の吸気での呼吸ガスの成分を変えることによって、吸気ガスの成分を、肺の中で均衡状態が達成される迄うまく変えることができる。サウンドパルスに作用する呼気ガスをうまく変えるやり方を決めることによって、容積を測定することができる。
【0013】
使用に適したパラメータは、フローに依存しない期間である(タイムオブフライト)。一連の呼気の間、ガスの成分をうまく変えられるので、フローに依存しない期間も変わる。この変化の時定数を測定することによって、肺の容積を測定することができる。
【0014】
この変形実施例では、仮想の時間t’を使うことができる。こうすることによって、自発呼吸している患者の測定中、呼吸の深さ及び呼吸間隔を変えてしまうような影響を低減することができる。つまり、ガス成分の変化は、先ず、容積依存の過程であって、時間に依存しないからである。従って、仮想の時間t’は、全通過流容積と一定フローとの関係で測定される。超音波フロー測定を使うための択一的な例は、例えば、濃度測定器又は熱放射測定器を用いて(ガス成分の変化が熱伝導度に作用する)、ガス成分内の変化を測定することを含む。呼吸ガスに供給されるガス成分の変化は、ステップ状の変化からなるようにすることができ、その際、変化は、全測定プロシージャの間生じる。
【0015】
択一的に、一回又は数回の呼吸の間に大きな変化が生じるように、パルス状に変化させてもよい。その後、通常のガス成分に復帰する。こうすることによって、全測定プロシージャ中患者に与える影響を低くすることができる。
【0016】
このような変化は、酸素含有量の変化を生じることがあり、例えば、ステップ状の変化により、30−35%の通常レベルから5%の酸素含有量が増加することがある。パルス状の変化により、2回の呼吸で、例えば、21%から100%に増大するようにすることができる。
【0017】
ガス成分を、これ以外の変化も可能であることは明らかである。この変化は、酸素とは別の何らかのガス成分、例えば、笑気又はキセノン(麻酔剤)に関連することがある。(例えば、技術の状態から)特定の外乱ガス、例えば、ヘリウムを供給することによって変化が生じることがある。それは、重要な測定パラメータの変化である。
【0018】
測定の際の外乱を最小化するために、特に、温度、湿度などの変化に関する外乱を最少にするために(音速にも影響する)、呼気毎の相関時点から、例えば、呼気の最終期間内で、全ての測定データを採取するのが適している。
【0019】
少なくとも、目的の幾つかを充足する装置は、本発明によると、請求項12の上位概念記載の装置によって達成される。
【0020】
更に有利な装置の実施例は、請求項12の従属請求項から明らかである。
【0021】
原理的には、装置は、上述の方法を実行することができるように構成されている。
装置は、異なった種々のやり方で、かなり複雑に構成してもよい。装置を、この関連で、測定室と超音波ユニットとガス成分に干渉するためのマウスピースを備えた携帯チューブを構成するようにしてもよい。後者は、1回の呼吸中又は何回かの呼吸中リリースされる圧縮ガス、例えば、酸素、又は、ヘリウムを充填したカプセルを構成することができ、この呼吸後、パラメータの変化が測定され、上述のようにして容積が測定される。
【0022】
択一的に、装置は、方法を実行するために構成されたベンチレータ(人工呼吸器)を構成してもよい。
【0023】
以下、本発明について、図示の実施例を用いて詳細に説明する。
【0024】
図面の簡単な説明
図1は、本発明による装置の第1の実施例を示す図であり、
図2は、肺の第1のモデルを示す図であり、
図3は、容積を測定する場合の第1の測定列を示す図であり、
図4は、容積を測定する場合の第2の測定列を示す図であり、
図5は、可変の呼吸容積及び可変の呼吸間隔が測定に及ぼすことがある影響の様子を示す図であり、
図6は、肺の第2のモデルを示す図であり、
図7は、可変の呼吸容積及び可変の呼吸間隔を補償することができる様子を示す図であり、
図8は、本発明による装置の第2の実施例を示す図である。
【0025】
図1は、本発明による装置の第1の実施例としての携帯用のテスト装置2を示す。テスト装置2は、原理的に、患者が息を吸い込んだり吐き出したりするためのマウスピース6が設けられたチューブ4を有している。これに関して、チューブ4は、テスト装置2用の吸気部分並びに呼気部分を構成する。
【0026】
本発明で言うところの「患者」とは、後述の方法によって肺に関する容積を測定することができる肺呼吸する人間及び動物全てを含む一般的な意味で使っている。
【0027】
患者の肺に関する容積を測定するために、呼吸ガスの成分中に擾乱が入るのは避けられない。テスト装置2では、呼吸ガスは、規則的な空気からなる。ガスカプセル8は、呼吸ガスの成分を変えるガスを供給することができるチューブに結合することができる。
【0028】
ガスカプセル8は、有利には、その容積を最小化して調量を簡単にするために圧縮されたガスを有するようにするとよい。ガスは、呼吸ガス中での音速とは異なった音速となる、酸素、ヘリウム又はそれ以外の非毒性ガスにするとよい。
【0029】
ガスカプセル8内のガスは、一回又は数回の呼吸中に放出することができる。この放出は、数回又はそれ以上の呼吸の間、成分が変わるかどうかに依存して、単純な換気、一定フローのオープニング、膜の制動、等によって行うことができる。
【0030】
チューブ4内に、第1のトランシーバ10と、第2のトランシーバ12が設けられており、それにより、呼気ガス内のサウンドパルス用の流れに依存しない期間(タイム・オブ・フライト)が決められる(アップストリーム期間及びダウンストリーム期間の夫々の平均値)。これに関して、チューブ4は、容積測定用の測定室を構成する。トランシーバ10,12は、原理的に、アップストリーム期間を測定するのに、サウンド送信器とサウンド受信器で代用することができ、ダウンストリーム期間を測定するのに、サウンド送信器とサウンド受信器の第2の対で代用することができる。択一的に、トランシーバを、測定セクションの一端で使用し、他端でサウンドレフレクタを使用することができる。1つ又はそれ以上のサウンドパルスの期間を測定するために、例えば、フローに対して垂直方向にサウンドパルスの期間を測定することによって、コンポーネントの他の構成を使用してもよいことは明らかである。
【0031】
このサウンドパルスの期間は、一対の呼吸の間に測定され、この期間中、肺内のガス成分は、正常値に戻るようにされる。
【0032】
計算ユニット14で、測定すべき容積が実際に計算される。計算ユニット14は、図示のようにテスト装置2と統合してもよいが、ケーブル又はワイヤレスにより、テスト装置と通信する別個のコンポーネントを構成するようにしてもよい。
【0033】
図2に示された肺のモデルを用いて、計算モデルについて説明する。肺は、容積Vの容器16のモデルに相応する。容積Vは、肺胞気のフローVAで換気される。容積V内で良好に混合されているとすると、酸素濃度の変化に対して以下の式が得られる:
【数1】

【0034】
その際、Vは、平均容積を示す。これは、微分方程式を有する:
【数2】

この式は、以下の解を有する。
【数3】

時定数τが分かると、平均容積Vは、以下によって計算することができる:
【数4】

その際、VEは、呼気分容量を示し、VDは、死腔(dead volume)の換気を示す。平均容積から、例えば、FRCが、特に死腔に相応する容積を減算することによって測定されうる。
【0035】
時定数τは、呼吸ガスを通るサウンドパルスの持続時間を変えることによって測定することができる。
【0036】
図3は、幾つかの呼吸周期用の持続時間の測定列18を示す。持続時間は、呼吸周期全体の間変化するが、呼吸周期20で、呼吸ガス成分が段階的に変化し始め、推移曲線が開始する。測定点22の最初の列から、推移曲線用の時定数を決めることができる。
【0037】
測定点22は、各呼吸周期の間、1つ且つ同一時点に相関されており、即ち、測定点22は、温度、湿度、CO2等に関して実際上同一環境で選定される。このようにして、測定点22は、できる限り、この期間に影響を及ぼすことがありうる要因全てに対して無関係となる。
原理的に、最大値及び/又は最小値は、時定数τを測定するのに使うことができる。
【0038】
呼吸周期24で、ガス成分は、元の成分に復帰される。第2列の測定点26は、この関連で、もう一度同じ測定を実行するのに使うことができる。このようにして実行される2つの測定は、測定された容積が適切であるように制御するのに使うことができる。
【0039】
上述のような段階的な変化に関連してガスを変化するように酸素が使われる場合、肺内のガス交換が変わるように不所望な作用が結果として生じることがある。そのような作用を最小化するために、代わりに、ガス成分をパルス状に変えるようにしてもよい。
【0040】
図4は、呼吸周期30内で、ガス成分のパルス状の変化が生じる測定列28を示す。この場合、パルス状の変化は、2つの呼吸周期の間、患者に供給される純粋な酸素により形成される。続いて、時定数τが、上述と同じやり方で、測定点32の列から測定される。
パルス方法により、肺内のガス成分の偏差を一層短い時間にすることができる。パルス方法によると、更に、血液中の物理的な溶解度や、メタボリステックな変化のようなファクタが最小化されるので、容積を測定する際に精度が向上する。
【0041】
図2は、肺を示すモデル及び肺の換気を示す。図2のモデルの欠点は、比較的一定の呼吸リズムを前提としており、即ち、呼吸の容積及び呼吸の間隔は、各呼吸周期毎に一定であることを前提としている点にある。
【0042】
図5は、図2のモデルの場合での、呼吸の容積及び間隔の変化に及ぼす影響について示す。上側の図は、変化した酸素濃度の流入期間に相応する、時間に亘っての酸素の変化を示す。下側の図は、4つの呼吸34A,34B,34C,34Dの場合の、時間に亘る1回換気量を示す。上側の図の指数関数36は、流入時の理想的な変化を示す(時定数τを測定するため)。曲線38は、4つの呼吸周期34A,34B,34C,34Dの間の実際の変化を示す。酸素濃度の実際の変化は、呼吸の容積に依存している。従って、第1の呼吸34Aの結果、酸素濃度は、第1の段階的な変化40Aとなる。著しく小さな1回換気量しかない第2の呼吸34Bの結果、酸素濃度は、小さな第2の段階的な変化40Bとなるに過ぎない。長い休息期間の後、小さな1回換気量の第3の呼吸34Cが生じる。従って、第3の段階的な変化40Cも小さく、相応の時間間隔の後に生じる。最後に、比較的大きな1回換気量の第4の呼吸34Dは、第3の呼吸34Cの直ぐ後に生じる。これに関連して、相応の第4の段階変化40Dも比較的大きく、指数関数36のところに達する。それから、流入が生じる。
【0043】
曲線38を指数関数36に適合させるのは難しいことは明らかである。
【0044】
容積測定時に、指数関数及び時定数をもっと容易に測定することができるようにするために、代わりに、図6のモデルを使うことができる。このモデルでも、肺は容器42に相応している。容器は、一定フローVin=Vut=Vが流れる容積Vを有している。つまり、流入又は流出期間は、以下のように記述することができる:
【数5】

【0045】
従って、一定フローfであると仮定し、及び、肺を通って流れるガスの全容積Vtot2を測定すると、仮想時間t'は、以下の式に従って測定することができる:
【数6】

【0046】
可変の仮想時間t’は、連続フローが肺を通過したとした場合、即ち、規則的な呼吸リズムの状況で生じるような連続フローの場合に経過した時間に相応する。
【0047】
図7の上側の図及び下側の図は、図5の上側の図及び下側の図に相応して示されている。下側の図には、4つの呼吸34A,34B,34C及び34Dが示されている。上側の図は、指数関数34を示す。曲線44は、仮想時間t'により、図5の曲線38よりも一層良好に適合する様子を示す。時点t1で生じる第1の呼吸34Aは、仮想状態を示す図で、時点t'1での第1の段階変化46Aに相応する。時点t2での第2の呼吸34Bは、小さな一回呼吸量を有する。これは、時点t'2での第2の小さな段階変化46Bに相応する。時点t3での第3の呼吸34Cは、時点t'3での第3の段階変化46Cに相応し、時点t4での第4の呼吸34Dは、時点t'4での第4の段階変化46Dに相応する。
【0048】
曲線44は、図5の曲線36よりも一層良好に指数関数36に相応することが明らかに分かる。
【0049】
図8は、本発明の装置の第2の実施例を示す。この実施例では、装置は、ホースシステム52を介して患者50に結合可能なベンチレータ(人工呼吸器)48を構成する。ベンチレータ48は、例えば、変更したServoi,Maquet Critical Care AB, Solna, Swedenにするとよい。
【0050】
ベンチレータ48は、吸気部分54,呼気部分56、計算ユニット58及びユーザインターフェース60を有する。以下、ベンチレータに使うことができるコンポーネント全てについて説明するには及ばないが、上述のプロセスに従って容積測定を実行するのに重要なコンポーネントについてだけ説明する。他のコンポーネントの大部分は知られており、従って、ベンチレータ48内に含むことができる。
【0051】
従って、吸気部分54は、それ自体に、特に、ガス、例えば、空気及び酸素用のコネクション62A,62B、及び、成分、圧力及び呼吸ガスのフローを制御するレギュレータ64を有している。呼吸部分56は、超音波でフローを測定するフローメータ66を有している。計算ユニット58は、1つ以上のプロセッサ又はプロセッサのようなものを有していることができ、全て、ベンチレータ48用の機能を制御及び監視することができる。ユーザインターフェース60は、呼吸モードを導入するため、プロセスを開始するため等にインタラクティブスクリーン68を有しているようにすることができ、測定データ、曲線及び計算された容積を表示することができる。
【0052】
機能的残気量FRCを測定するための容積測定機能をベンチレータ48で実行することができるやり方の一例は、ユーザインターフェース60を介して容積測定を要求することによって測定が開始されるようにすることである。計算ユニット58は、その際、ガスレギュレータ64を制御して、例えば、100%酸素での2回の呼吸の形式で、呼吸ガス成分が変化し始めるようにされる。
【0053】
フローメータで、持続時間は、フローを測定するために使われるサウンドパルス用に測定される。このフローから、流出するガスの容積が一様に受け取られる。原理的には、図4に示された測定と同様に行うことができる持続時間測定から、幾つかの呼吸周期のために、呼吸周期での同一位相から測定点が決められる。複数測定点から、時定数τ及び肺内の平均容積が測定される。機能的残気量FRCを得るために、死腔が減算される(公知のやり方で測定することができる)。
【0054】
超音波測定だけが、図1及び図8の各実施例にはっきりと記載されているとしても、それ以外のコンポーネントを相応のやり方で用いて、時定数(又は、相応のパラメータ)を用いて、容積測定を実行することができる。ガスの検出器及び熱放射の検出器について既述したが、これらを用いると、容積と時定数との等価式及び結合が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による装置の第1の実施例を示す図
【図2】肺の第1のモデルを示す図
【図3】容積を測定する場合の第1の測定列を示す図
【図4】容積を測定する場合の第2の測定列を示す図
【図5】可変の呼吸容積及び可変の呼吸間隔が測定に及ぼすことがある影響の様子を示す図
【図6】肺の第2のモデルを示す図
【図7】可変の呼吸容積及び可変の呼吸間隔を補償することができる様子を示す図
【図8】本発明による装置の第2の実施例を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気部分で、肺を通過するガス成分を変える処理ステップを有する、患者の肺に関する容積を測定するための方法において、
呼気部分で、ガス成分の変化に依存する測定パラメータの変化を特徴付けるパラメータ(τ)を測定するステップと、
前記測定パラメータの変化を特徴付ける前記パラメータ(τ)から、容積を測定するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
一連の測定パルスを形成し、該測定パルスを呼気部分内の測定室に送信し、測定パラメータを、一連のサウンドパルスに関連付けられていて、ガス成分の変化によって生じるパラメータにする請求項1記載の方法。
【請求項3】
測定パラメータを、サウンドパルスを測定室に送信する、流れに依存しない期間(タイム・オブ・フライト)にする請求項2記載の方法。
【請求項4】
測定パラメータを、測定中肺を通って流れるガスの全容積(Vtot)に基づいて、及び、前記肺を通る前記ガスの、想定された一定フロー(f)に基づいて、連続フローが前記肺を通過した場合に経過する時間に相応する仮想時間(t’)にする請求項2記載の方法。
【請求項5】
測定パラメータを、変化したガス成分での1成分のガス濃度にする請求項1記載の方法。
【請求項6】
測定パラメータを、呼気部分内の2つの固定点間での熱放射のための、流れに依存しない期間にする請求項1記載の方法。
【請求項7】
ガス成分内の変化を、ステップ状の変化として実行する請求項1から6迄の何れか1記載の方法。
【請求項8】
ガス成分内の変化を、パルス状の変化として実行する請求項1から6迄の何れか1記載の方法。
【請求項9】
測定パラメータの変化を特徴付けるパラメータ(r)を、数回の呼吸での各呼吸周期の間、相関する時間点で受信された測定データから測定する請求項1から8迄の何れか1記載の方法。
【請求項10】
測定パラメータの変化を特徴付けるパラメータ(τ)を、前記変化の時定数にする請求項1から9迄の何れか1記載の方法。
【請求項11】
測定された容積から、機能的残気量を算出する請求項1から10迄の何れか1記載の方法。
【請求項12】
患者(50)の肺に関する容積を測定するために、前記患者(50)に直接又は間接的に結合可能な装置(48)であって、呼吸ガスが患者(50)に向かって入っていく吸気部分(54)と、前記呼吸ガスが前記患者(50)から出ていく呼気部分(56)を有しており、前記吸気部分(54)は、前記呼吸ガス内のガス成分を変えるためのマウスピース(64)を有している装置(48)において、ガス成分内の変化に依存する測定パラメータを測定するために、呼気部分(56)内に配設された検出器(66)、及び、測定パラメータの変化を特徴付け、且つ、測定された変化を特徴付けるパラメータから、容積を測定するパラメータ(τ)を測定するために前記検出器(66)に接続された計算ユニット(58)を有することを特徴とする装置(48)。
【請求項13】
検出器(66)は、超音波ユニットであり、該超音波ユニットは、サウンドパルスを呼気部分(56)内の測定室内に送信し、且つ、検出する請求項12記載の装置。
【請求項14】
測定パラメータの変化を特徴付けるパラメータ(τ)を、前記変化の時定数にする請求項12記載の装置。
【請求項15】
装置は、医療用ベンチレータ(人工呼吸器)である請求項12から14迄の何れか1記載の装置。
【請求項16】
吸気部分及び呼気部分は、患者に直接結合可能な共通のチューブ(4)を構成する(図1)請求項12から14迄の何れか1記載の装置。
【請求項17】
ガス成分を変えるための器官は、チューブに交換可能に結合される、ガスを充填したカプセル(8)を構成する請求項12から14迄の何れか1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−532164(P2007−532164A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506780(P2007−506780)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051550
【国際公開番号】WO2005/096934
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(503443865)マークェット クリティカル ケア アクチボラゲット (3)
【氏名又は名称原語表記】Maquet Critical Care AB
【住所又は居所原語表記】Roentgenvaegen 2, SE−17195 Solna, Sweden
【Fターム(参考)】