患者体温を制御するための装置および方法
患者の身体を加熱または冷却するための比較的非侵襲的な装置および方法が開示される。治療的低体温を誘発することによって虚血状態を治療するための装置および方法が開示される。食道冷却によって治療的低体温を誘発するための装置および方法が開示される。手術温度管理のための装置および方法が開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]この出願は、2009年2月26日に出願された米国仮特許出願第61/155,876号の優先権を主張する。米国仮特許出願第61/155,876号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0004]先進国では、1年につき100,000人あたり36から128人の居住者が、突然の院外心停止(「OHCA」)を経験するが、生き残ることは依然として稀なことである。心血管系疾患は、推定で80,700,000人の北米の成人に影響を及ぼし、毎日およそ2400人が心血管系疾患のため死亡している(平均で37秒あたり1人が死亡する)。OHCAによるおよそ310,000件の冠動脈心疾患死が年間発生する。
【0003】
[0005]2007年の米国心肺蘇生登録(National Registry of Cardiopulmonary Resuscitation)による報告では、心肺停止を発症した患者の75%超は、その事態を乗り切り生存することができない。さらに、その事態を乗り切った者のうち35.2%がその後に死亡する。
【0004】
[0006]1950年代に、中等度低体温法(約28℃から約32℃の体温)、および超低体温法(およそ28℃未満の体温)が、様々な外科的処置のため、ならびに心停止に関連した神経傷害を実験的に回復させるために利用された。しかし、中等度低体温法および超低体温法の多くの合併症、ならびに、これらの温度降下を誘発する難しさのため、治療的低体温の使用に対する熱意は衰えた。結果として、正常体温の心停止後の神経傷害を回復するのを助けるための低体温の使用は、数十年にわたり休止した。しかし、1980年代後半より、イヌに関して軽度低体温法での心停止後の良好な結果が報告された。
【0005】
[0007]人間の患者での心停止後の軽度治療的低体温の現代的な用法は、最近の無作為対照試験および個々の患者のデータのメタ分析によって支持されている。国際蘇生連絡協議会(International Liaison Committee on Resuscitation)(「ILCOR」)、および米国心臓協会(American Heart Association)(「AHA」)を含む主要な団体では、昏睡状態の心停止生存者に対して軽度治療的低体温の導入を推薦する。しかし、AHAの治療的低体温のガイドラインは、どのように患者を冷却するかについて具体的な説明を欠いている。
【0006】
[0008]主要な蘇生法の組織の合意を得た推薦を含めて心停止の文脈で軽度治療的低体温の支持が広がったにもかかわらず、臨床での軽度治療的低体温の使用が少ない。多くの臨床医は、治療的低体温は実際に実行するのが技術的に難しいと報告する。
【0007】
[0009]また、医療専門家は、時として、特定の外科的処置の際に低体温を誘発する必要、または、非制御の意図的でない正常の体温からの逸脱による偶発的な低体温および複合的副作用を防止する必要がある。
【0008】
[0010]例えば、手術中の軽度の偶発的な低体温であっても、創傷感染の発生率を増大し、入院期間を長引かせ、病的心臓事象および心室頻拍の発生率を増大し、凝固を障害するため、手術室で外科的処置を受ける間の患者の体温を制御することは有益である。
【0009】
[0011]軽度の低体温(<1℃)でさえ、著しいことに、失血を約16%増大し、輸血の相対リスクを22%増大するのに対し、周術期正常体温を維持する場合、失血および輸血必要量が臨床的に重要な量だけ減少する。
【0010】
[0012]かなりの有力な証拠が、熱管理が様々な外科患者の成績を改善することを示すことから、現行の2007年版ACC/AHA非心臓手術患者の周術期心血管系評価と管理ガイドライン(American Heart Association−American College of Cardiology 2007 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation and Care for Noncardiac Surgery)は、周術期正常体温の維持のレベル1勧告を含む。
【0011】
[0013]さらに、周術期低体温の多くの合併症を認識して、最近、米国麻酔学会(American Society of Anesthesiologists)(ASA)は、術後体温が、低体温の防止に関する現行ガイドラインの医師のコンプライアンスを評価するための根拠となることを勧告した。
【0012】
[0014]手術時の偶発的な低体温が最も予防可能な外科合併症のうちの1つと考えられているが、体温を制御する既存の技術は有効性が限られており、そのため、外科患者の手術時の偶発的な低体温の発生率が50%を超える可能性がある。
【0013】
[0015]現在の体温を制御するための利用可能な方法には、非侵襲と侵襲の両方の技術がある。例えば、治療的低体温を誘発するために開発された最も一般的に使用される技術として、表面冷却と侵襲冷却がある。
【0014】
[0016]表面冷却は、比較的使用が容易であり、外部ベスト、冷却ヘルメット、循環冷水ブランケット、または強制空冷ブランケット(cold forced−air blanket)、あるいは、氷嚢や冷水浸のような比較的洗練されていない方法を用いて達成されうるが、中核体温を低下させるために2時間から8時間かかる。表面冷却は、皮膚から中央部に向かって短絡する血流の傾向による冷却が生じる速度によって制限される。ベストまたはブランケットのような外部装置は、カテーテル留置などのために救急医療でしばしば必要とされる重要な患者の部位へのアクセスを著しく制限し、CPRを行うために除去または変形が必要である。氷嚢などの表面冷却技術は、患者の体温を制御できる精度を制限する。氷嚢および従来の冷却ブランケットを用いた冷却は、意図しない過冷却をしばしば引き起こす。
【0015】
[0017]他の例では、いくつかの方法が、患者を温めるために利用され、手術室温度を上げること、および、強制空気加温ブランケットのような外部加温装置を使用することを含む。
【0016】
[0018]これらの現在の方法に伴ういくつかの問題がある。例えば、(1)過度に暖かい室温が、外科チームに不快な環境をもたらし、(2)強制空気加温器が、かさばって手術野に影響を与えるおそれがあり、不効率になる傾向があって、手術室で長時間使用される必要があり、(3)これらのシステムは、適切に温度を制御または管理できず、過熱を生じたり、より頻繁には不充分な加温をもたらしたりする。
【0017】
[0019]Rasmussenら(Forced−air surface warming versus oesophageal heat exchanger in the prevention of perioperative hypothermia. Acta Anaesthesiol Scand、1998年3月、42(3):348〜52ページ)は、上体に関する強制空気加温は、少なくとも2時間の予定期間の腹部手術を受ける患者で正常温度を維持するのに効果的である一方、食道熱交換器による集中加熱は、低体温を防止するのに充分ではないと述べている。Brauerら(Oesophageal heat exchanger in the prevention of perioperative hypothermia. Acta Anaesthesiol Scand、1998年3月、42(10):1232〜33ページ)は、食道熱交換器は、身体の全体的熱収支に対し少量の熱しか追加できないと述べている。
【0018】
[0020]侵襲的温度管理処置としては、冷たい静脈輸液の注入、温めた静脈輸液の注入、冷温頸動脈注入、体外冷却血液を用いた単一頸動脈灌流、心肺バイパス、氷水鼻洗浄、冷温腹腔洗浄、経鼻胃および直腸洗浄、ならびに、冷媒または熱交換(加温)装置に接続された侵襲的静脈内カテーテルの留置が挙げられる。侵襲的温度管理処置を首尾よく行うためには、かなりの個人的関与ならびに注意を必要とすることが多い。さらに、いくつかの特定の侵襲的温度管理療法は、過冷、過熱、より頻繁には不充分な加温と関連している。
【0019】
[0021]温度管理療法としての静脈輸液の使用は、循環液体容量負荷に寄与する望ましくない効果があり、目標温度を維持するのに不充分であることが分かっている。また、有意な効果を得るためには大量の液体が注入されなければならない。
【0020】
[0022]低体温を達成するための他の技術は吸入ガスによる血液冷却、およびバルーン・カテーテルの使用を含む。
[0023]しかし、Andrewsら(Randomized controlled trial of effects of the airflow through the upper respiratory tract of intubated brain−injured patients on brain temperature and selective brain cooling、Br.J.Anaesthesia、2005年、94(3):330〜335ページ)は、挿管された脳損傷患者の上部気道を通した室温の加湿空気の流入は、臨床的に関連するまたは統計的に有意な脳温度の低下をもたらさなかったことを述べている。
【0021】
[0024]Dohiら(Positive selective brain cooling method: a novel, simple, and selective nasopharyngeal brain cooling method、Acta Neurochirgurgica、2006年、96:409〜412ページ)は、冷却空気を誘導するために鼻腔に挿入したフォーリー・バルーン・カテーテルが、扇風機による頭部冷却と組み合わせて使用されると、選択的に脳温度を低下させることが判明したと述べている。
【0022】
[0025]Holtら(General hypothermia with intragastric cooling、Surg.Gynecol Obstet、1958年、107(2):251〜54ページ、General hypothermia with intragastric cooling:a further study、Surg Forum、1958年、9:287〜91ページ)は、外科的処置を受けている患者の低体温を実現するために熱ブランケットと組み合わせて胃内バルーンを使用することについて述べている。
【0023】
[0026]同様に、Barnard(Hypothermia:a method of intragastric cooling、Br.J.Surg、1956年、44(185):296〜98ページ)は、胃内冷却によって低体温を誘発するための胃内バルーンの使用について述べている。
【0024】
[0027]Lasherasの米国特許出願公開第2004/0199229号では、患者の結腸に挿入されたバルーンを介した加熱または冷却について述べている。
[0028]Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号では、心臓を特定的に冷却するための経食道バルーン・カテーテルについて述べ、身体全体を冷却する技術を否定的に見ている。
【0025】
[0029]Mayseらの米国特許出願公開第2007/0055328号では、心不整脈を直すために心臓アブレーションを受ける人物の消化管を保護するためのバルーン・カテーテルについて述べている。
【0026】
[0030]Daeらの米国特許第6,607,517号は、一般に、うっ血性心不全を治療するために血管内冷却を用いることに関する。
[0031]胃、結腸、または他の胃腸器官内で膨張したバルーンにより発生しうるような胃腸管内の圧力増加から生じるいくつかの合併症が知られている。例えば、胃の膨張が、肺炎、食道裂傷、結腸壊死、および腸管虚血をもたらすおそれがある腸破裂、逆流、および誤嚥を引き起こすことがある。
【0027】
[0032]さらに、いくつかの温度制御療法、特に、インフレータブル・バルーンを使用する療法は、患者ケアに決定的に重要でありうる例えば胃など特定の解剖学的構造への医療提供者のアクセスを限定する。これらの療法は、適切な治療を遂行するために除去または修正を必要とすることがある。
【0028】
[0033]今まで、患者体温を制御するための利用可能な療法で、既存の技術的、論理的、経済的障壁を充分に解消するものが見つかっていない。理想的な患者体温制御装置は、まだ開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
[0034]要約すると、患者体温の制御に関する技術水準は、少なくとも1つの重要な長年にわたる必要性、すなわち、追加の処置が必要な解剖学的領域に対するアクセスを保持しながら、患者体温の効率的で安全かつ迅速な制御をするための方法および装置の必要性を有する。本技術は、患者体温を制御することによって治療または予防されうるいくつかの徴候、疾患、障害、および状態を特定し、さらに、従来の装置および方法が招くリスクを低減しながら患者体温を迅速かつ効率的に制御するための比較的非侵襲的な方法および装置を提供する。さらに、本技術のいくつかの実施形態は、重要な解剖学的構造へのアクセスを維持すると同時に患者体温を迅速かつ効率的に制御するための比較的非侵襲的な方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
[0035]本技術の少なくとも1つの態様は、全身性低体温を誘発するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含む。伝熱装置は、患者の食道に限定される別個の伝熱領域を含むことができる。患者は、例えば、少なくとも約2時間にわたり低体温の状態に維持されうる。上記方法はさらに、患者の少なくとも1つの体温などの生理学的パラメータを監視するステップを含むことができる。上記方法はさらに、患者の体温を約34℃未満に維持するステップを含むことができる。
【0031】
[0036]本技術の少なくとも1つの態様は、患者の中核体温を制御するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って伝熱媒体の流れを開始するステップと、患者の中核体温を制御するために充分な時間にわたり流体路に沿って媒体を循環させるステップとを含む。伝熱装置は、患者の食道に限定される別個の伝熱領域を含むことができる。患者の中核体温は、例えば、少なくとも約2時間にわたり制御されうる。上記方法はさらに、体温など患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップを含むことができる。上記方法はさらに、患者の体温を、例えば、約34℃未満、約34℃と約37℃の間、または約37℃に維持するステップを含むことができる。
【0032】
[0037]本技術の少なくとも1つの態様は、1つまたは複数の食道伝熱装置を提供する。上記装置は、伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成された複数の内腔と、入力口および出力口を含む近位端と、患者の食道に挿入されるように構成された遠位端とを備える。上記装置はさらに、患者の胃に延入するように構成された遠位端を有する中空管を備えることができる。上記装置はさらに、抗菌コーティングを備えることができる。
【0033】
[0038]本技術の少なくとも1つの態様は、虚血再灌流傷害または虚血状態による傷害を治療または予防するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含む。
【0034】
[0039]本技術の少なくとも1つの態様は、神経損傷または心外傷を治療または予防するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含む。神経損傷に関連することがあるのは、例えば、(虚血性脳卒中を含む)卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、クモ膜下出血、院外心肺停止、肝性脳症、周産期仮死、低酸素/無酸素性脳症、小児ウィルス性脳症、溺水、無酸素性脳損傷、外傷性頭部損傷、外傷性心停止、新生児低酸素/無酸素性脳症、肝性脳症、細菌性髄膜炎、心不全、術後頻脈、または急性呼吸促迫症候群(「ARDS」)である。
【0035】
[0040]本技術の少なくとも1つの態様は、心筋梗塞、卒中、外傷性脳損傷、またはARDSを治療するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、患者の軽度治療的低体温を誘発するステップを含む。軽度治療的低体温は、食道冷却を介して誘発されうる。患者は、例えば、少なくとも約2時間にわたり低体温の状態に維持されうる。上記方法はさらに、患者の少なくとも1つの体温などの生理学的パラメータを監視するステップを含むことができる。上記方法はさらに、患者の体温を約34℃未満に維持するステップを含むことができる。
【0036】
[0041]本技術の少なくとも1つの態様は、心筋梗塞、卒中、外傷性脳損傷、またはARDSを治療するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含む。
【0037】
[0042]本技術の少なくとも1つの態様は、心停止を治療するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、食道冷却を介して全身性低体温を誘発するステップを含む。上記方法はさらに、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含むことができる。
【0038】
[0043]本技術の少なくとも1つの態様は、手術温度管理のための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、食道冷却を介して患者の中核体温を制御するステップを含む。上記方法はさらに、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って伝熱媒体の流れを開始するステップと、患者の中核体温を制御するために充分な時間にわたり流体路に沿って伝熱媒体を循環させるステップとを含むことができる。
【0039】
[0044]本技術の少なくとも1つの態様は、患者の身体の少なくとも1つの部分を冷却または加温するための1つまたは複数の装置を提供する。上記装置は、近位端、遠位端、および、近位端および遠位端を伸長する少なくとも1つの可撓管を備える伝熱装置を含む。近位端は、伝熱媒体入力口、および伝熱媒体出力口を含む。遠位端は、患者の開口部に挿入されるように構成される。可撓管は、流入内腔および流出内腔を画成し、これらの内腔は、伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成されうる。上記装置はさらに、入力口に接続された供給ラインと、出力口に接続された戻りラインとを備える。
【0040】
[0045]上記装置は、例えば、虚血状態による傷害、虚血−再灌流傷害、神経損傷、心外傷を治療または予防するために使用されうる。上記装置は、心筋梗塞、卒中、外傷性脳損傷、またはARDSを経験したかまたは経験している患者を治療するために使用されうる。そのような状態または疾患を治療または防止する方法は、伝熱装置の遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、遠位端を患者の食道内に進入させるステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含む。患者は、少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持されうる。上記方法はさらに、患者の少なくとも1つの体温などの生理学的パラメータを監視するステップを含むことができる。上記方法はさらに、患者の体温を約34℃未満に維持するステップを含むことができる。
【0041】
[0046]上記装置は、例えば、外科的処置において患者の中核体温を制御するために使用されうる。患者の中核体温を制御する方法は、伝熱装置の遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、遠位端を患者の食道内に進入させるステップと、流体路に沿って伝熱媒体の流れを開始するステップと、患者の制御中核体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って伝熱媒体を循環させるステップとを含む。患者の中核体温は、例えば、少なくとも約2時間にわたり制御されうる。上記方法はさらに、患者の少なくとも1つの体温などの生理学的パラメータを監視するステップを含むことができる。上記方法はさらに、患者の体温を、例えば、約34℃未満、約34℃と約37℃の間、または約37℃に維持するステップを含むことができる。
【0042】
[0047]本技術の少なくとも1つの態様は、(a)伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成された複数の内腔と、(b)患者の食道上皮に接触するように構成された伝熱領域と、(c)入力口および出力口を含む近位端と、(d)患者の食道に挿入されるように構成された遠位端とを備える食道伝熱装置を提供する。伝熱装置はまた、患者の胃に延入するように構成された遠位端を有する中空管を備えることもできる。伝熱装置は、患者の食道上皮のすべてと実質的に接触することができるものであってよい。伝熱装置は、半剛性材料を含むことができる。伝熱装置は、約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却を行う能力を有することができる。伝熱装置は、約350kJ/hから約530kJ/hの速度で、特に約430kJ/hの速度で、質量体を冷却する能力を有することができる。伝熱装置は、少なくとも約100cm2の表面積、特に約140cm2の表面積を有する伝熱領域を含むことができる。
【0043】
[0048]本技術の少なくとも1つの態様は、伝熱装置と、供給ラインと、戻りラインとを備える、患者の身体の少なくとも1つの部分を冷却または加温するためのシステムを提供し、伝熱装置は、近位端、遠位端、および、近位端と遠位端の間に延在する少なくとも1つの半剛性管を備える。伝熱装置の近位端は、伝熱媒体入力口、および伝熱媒体出力口を含む。伝熱装置の遠位端は、食道内腔など患者の開口部に挿入されるように構成される。半剛性管は、流入内腔および流出内腔を画成し、これらの内腔は、伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成される。供給ラインは、入力口に接続され、戻りラインは、出力口に接続される。伝熱装置はまた、患者の胃に延入するように構成された遠位端を有する中空管を備えることもできる。伝熱装置は、患者の食道上皮のすべてと実質的に接触する能力を有することができる。伝熱装置は、半剛性材料を含むことができる。伝熱装置は、約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却する能力を有することができる。伝熱装置は、約350kJ/hから約530kJ/hの速度で、特に約430kJ/hの速度で、質量体を冷却する能力を有することができる。伝熱装置は、少なくとも約100cm2の表面積、特に約140cm2の表面積を有する伝熱領域を含むことができる。
【0044】
[0049]本技術の少なくとも1つの態様は、被術者の中核体温を制御するためのシステムを提供し、このシステムは、被術者の食道内に挿入可能な伝熱管と、伝熱流体を含む外部熱交換器と、伝熱管内の回路を介して伝熱流体を流すためのポンプと、外部熱交換器と接触する伝熱要素と、パラメータを検出し、パラメータを表す信号を生成するためのセンサとを備え、信号は、(i)回路内の流動伝熱流体、または(ii)伝熱流体の温度を制御するために、マイクロプロセッサに送信される。上記管は、被術者の食道の上皮層に接触するように構成される。センサは、伝熱管より遠位に配置された温度センサとすることができ、被術者の中核体温を表す信号を生成するように構成されうる。マイクロプロセッサは、目標温度の入力を受け取り、被術者が目標温度に接近する速度を制御するために、温度センサからの信号に対しPID応答により応答することができる。センサは、気泡検出器とすることができ、回路内の空気の存在を表す信号を生成するように構成されうる。伝熱装置はまた、患者の胃に延入するように構成された遠位端を有する中空管を備えることができる。伝熱装置は、患者の食道上皮のすべてと実質的に接触する能力を有することができる。伝熱装置は、半剛性材料を含むことができる。伝熱装置は、約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却を行う能力を有することができる。伝熱装置は、約350kJ/hから約530kJ/hの速度で、特に約430kJ/hの速度で、質量体を冷却する能力を有することができる。伝熱装置は、少なくとも約100cm2の表面積、特に約140cm2の表面積を有する伝熱領域を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】[0050]本技術の例示的実施形態による伝熱システムの概略図である。
【図2】[0051]本技術の例示的実施形態による伝熱装置を示す図である。
【図3】[0052]図3Aは、本技術の例示的実施形態による伝熱装置の概略図である。図3Bは、本技術の例示的実施形態による伝熱装置の上面図である。図3Cは、本技術の例示的実施形態による伝熱装置の断面図である。
【図4】[0053]本技術の例示的実施形態による伝熱装置の近位端の概略図である。
【図5A】[0054]本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の概略図である。
【図5B】本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の断面図である。
【図5C】本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の断面図である。
【図5D】本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の断面図である。
【図5E】本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の断面図である。
【図5F】本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の断面図である。
【図6】[0055]本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の概略図である。
【図7】[0056]本技術の実施形態による例示的冷却装置により達成された冷却を示すグラフである。
【図8】[0057]Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号で示された冷却の速度と比較された、本技術の伝熱装置により達成された冷却の速度のグラフ比較である。
【図9】[0058]実験の加温および維持段階において伝達された熱の総量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[0059]本技術は、患者の全身を加熱または冷却するための比較的非侵襲的な装置および方法を提供する。本技術はまた、治療的低体温を誘発することによって虚血状態を治療するための装置および方法を提供する。本技術の他の態様は、食道冷却によって治療低体温を誘発するための装置および方法を提供する。本出願は、本技術の伝熱装置および方法が、他の装置および方法、特に、Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号に述べられた装置および方法と比べて予期される以上に速い温度変化速度を達成したことを示す。
【0047】
[0060]本技術は、軽度治療的低体温(目標温度:約32℃〜約34℃)を誘発して正常体温(目標温度:約37℃)を維持することによって、様々な疾患および障害に苦しむ患者を治療するための装置および方法を提供する。特に、軽度治療的低体温は、虚血または虚血に関係する状態に苦しむ患者を治療するために誘発されうる。いかなる特定の理論にも束縛されることなく、虚血−再灌流カスケードに関連したいくつかの分子および生理反応、例えば、グルタミン酸放出、血液脳関門の安定化、酸素ラジカル生成、細胞内シグナル伝導、タンパク質合成、虚血性脱分極、脳代謝の減少、膜安定化、炎症、プロテインキナーゼの活性化、細胞骨格の崩壊、および初期遺伝子発現などは、虚血中および虚血後の温度低下に敏感であると考えられる。特に、軽度治療的低体温は、フリーラジカルのようないくつかの代謝メディエータの形成を最小限にし、虚血−再灌流に関連した炎症反応を抑制しうる。さらに、神経学的転帰に関して、軽度治療的低体温は、脳の炎症性反応を鈍化し、興奮性アミノ酸およびモノアミンのような脳損傷の興奮性メディエータの産出を低下させ、脳代謝率を低下させ、頭蓋内圧を低下しうる。一方、手術中の偶発的な低体温は、血小板機能を低下させ、凝固カスケードの酵素を弱くし、麻酔薬効果を増進し、凝結障害に寄与し、心臓需要を増大させ、手術創感染の発生率を高める可能性がある。
【0048】
[0061]本技術のいくつかの実施形態は、心筋梗塞、卒中、外傷性脳損傷、ARDS、出血性ショック、非外傷性の動脈瘤性SAHを含むクモ膜下出血(「SAH」)、新生児脳症、周産期仮死(低酸素性虚血性脳症)、脊髄損傷、髄膜炎、縊頸、および溺水を経験している個人を治療するために、軽度治療的低体温を誘発するための装置および方法を提供する。いかなる特定の理論にも束縛されることなく、軽度治療的低体温は、神経的損傷または他の上述の状態に関連する障害を予防、軽減、または改善しうると考えられる。本技術の他の実施形態は、代謝性アシドーシス、膵炎、悪性高熱、肝不全、および肝性脳症を経験している個人を治療するために、軽度治療的低体温を誘発するための装置および方法を提供する。本技術の他の実施形態は、一般外科的処置の際の患者体温を制御するための装置および方法を提供する。本明細書では、用語「患者体温を制御すること」は、患者の中核体温を意味し、中核体温を下げること、中核体温を維持すること、中核体温を上げること、低体温を誘発すること、正常体温を維持すること、および、高体温を誘発することを含む。
【0049】
[0062]本技術のいくつかの実施形態は、食道の加温または冷却を介して患者体温を制御することを実現する。例えば、伝熱剤が、患者の食道に配置された伝熱装置を通して循環されうる。いくつかの実施形態では、装置の伝熱部分が、患者の食道に限定される。いくつかの実施形態では、伝熱装置は、患者の食道の上皮表面のすべてと実質的に接触する。伝熱装置は、バルーンまたは部分的に膨張可能な内腔を含むことができる。一方、本発明のいくつかの実施形態では、伝熱装置の伝熱部分が、バルーンまたは部分的に膨張可能な内腔を含まない。
【0050】
[0063]手術中、伝熱剤から食道に熱を伝達され、その結果、食道、ならびに、大動脈、右心房、大静脈、奇静脈を含む近接する器官および構造の温度の上昇をもたらし、最終的には全身の正常体温をもたらすことができ、あるいは、食道から伝熱剤に熱を伝達され、その結果、食道、ならびに、大動脈、右心房、大静脈、奇静脈を含む近接する器官および構造の温度の低下をもたらし、最終的には全身性低体温をもたらすことができる。
【0051】
[0064]本技術のいくつかの実施形態は、食道−胃の熱伝達によって患者体温を制御することを実現する。例えば、その伝熱部分が患者の食道から胃に延長するのに充分な長さを有する伝熱装置を介して、熱交換媒体が循環されうる。いくつかの実施形態では、伝熱装置は、患者の食道の上皮表面のすべてと実質的に接触する。伝熱装置は、バルーンまたは部分的に膨張可能な内腔を含むことができる。一方、本発明のいくつかの実施形態では、伝熱装置の伝熱部分が、バルーンまたは部分的に膨張可能な内腔を含まない。このような食道−胃温度制御装置を利用して患者体温を調節することにより、伝熱用の表面積が拡大され、その結果、より効率的でより迅速な温度管理が得られる。
【0052】
[0065]本技術のいくつかの実施形態では、コカイン誘導心停止、外傷性心停止、および、冠状動脈に起因しない心停止を含む心停止を経験している個人を治療するために、例えば、食道冷却によって、軽度治療的低体温を誘発することを実現する。
【0053】
[0066]本技術のさらに他の実施形態は、患者の膀胱、結腸、直腸、または他の解剖学的構造の冷却または加温によって、患者体温を制御することを実現する。例えば、患者の膀胱、結腸、直腸、または他の解剖学的構造に配置された伝熱装置を介して、熱交換媒体が循環されうる。
【0054】
[0067]本技術のいくつかの実施形態は、患者を加熱または冷却するための伝熱システムを実現する。伝熱システムは、伝熱装置、熱交換器、伝熱媒体、ならびに、伝熱装置と熱交換器の間で伝熱媒体を循環するための管状構造の回路網を含むことができる。他の実施形態では、伝熱システムは、伝熱装置、冷却装置、冷媒、ならびに、伝熱装置と冷却装置の間で冷媒を循環するための管状構造の回路網を含む。さらに他の実施形態では、伝熱システムは、患者を冷却し、続いて再び温め、さらに、患者を所定の維持温度で維持するために使用されうる。
【0055】
[0068]本技術のいくつかの実施形態では、伝熱装置は、遠位端、近位端、および、それらの間に延在する1つまたは複数の管を備える。伝熱装置の近位端は、熱交換器から伝熱媒体を受け取るための入力口と、伝熱媒体が熱交換器に戻ることを可能にする出力口とを含む。およそ伝熱装置の近位端からおよそ伝熱装置の遠位端に伸長する管は、伝熱媒体供給管および伝熱媒体戻り管を含むことができる。伝熱媒体供給管と伝熱媒体戻り管は、例えば、平行または同心状に配置されうる。伝熱媒体供給管および伝熱媒体戻り管の内腔は、流体連通することができ、したがって、伝熱媒体供給管および伝熱媒体戻り管の内腔によって画成される流体路に沿って伝熱媒体が流れることができるようになる。
【0056】
[0069]伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁の厚さは、装置の伝熱抵抗の一因となる。したがって、いくつかの実施形態では、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管は、薄い壁を有することが好ましい。例えば、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁は、約1ミリメートル未満とすることができる。あるいは、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁は、約0.01ミリメートル未満とすることができる。いくつかの実施形態では、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁は、約0.008ミリメートル未満とすることができる。当業者には認識されるように、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁の厚さは、例えば、約0.001ミリメートル、約0.01ミリメートル、または約0.1ミリメートル単位で修正されうる。
【0057】
[0070]本技術の伝熱装置の製造は、比較的安価である。例えば、食道伝熱装置は、生物医学グレードの押出シリコンゴムなどのエラストマ、および接着剤を使用して作製されうる。市販のエラストマおよび接着剤としては、例えば、Dow Corning Q7 4765シリコン、およびNusil Med2−4213がある。このような材料の低コストおよび使いやすさが、本技術の食道伝熱装置の広範な採用につながることが期待される。
【0058】
[0071]いくつかの実施形態では、例えば供給管を備える、伝熱装置は、例えば、エチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、およびフッ化エチレンプロピレン(FEP)を含む半硬質プラスチックなどの半剛性材料、あるいは、シリコンなどの半剛性エラストマを含むことができる。半剛性材料で構成された供給管を含む伝熱装置は、例えば、可撓性のバルーン型装置よりも、患者の食道内に配置することが容易である。特に、バルーンのような可撓性材料を含む伝熱装置は、伝熱装置を患者の食道内に誘導するために、カテーテル、ガイドワイヤ、またはスリーブのような送達装置を必要とする。さらに、バルーンのような可撓性の膨張可能な材料は、破裂、分割、または穿刺のような障害に弱い。伝熱装置の作製に半剛体材料を使用すると、バルーン型装置に関連する故障点が減少する。
【0059】
[0072]いくつかの実施形態では、剛性スリーブが、伝熱装置を患者内に配置する際に案内するために利用されうる。剛性スリーブは、スリーブがほぼ半円を横断面に含むように部分的切抜きを有することができる。スリーブは、伝熱装置に対して近位側に摺動することによって除去されうる。このようなスリーブは、ガイドワイヤの体腔内への紛失やガイドワイヤによる損傷といったガイドワイヤの使用による合併症の発生率が低下することを含めて、中央に配置されたガイドワイヤに関して、いくつかの利点を有する。
【0060】
[0073]本技術の食道伝熱装置は、持ち運びでき、比較的使用が容易であり、また、看護師、資格のある第一対応者、パラメディック、救急救命士、あるいは他の病院前または病院内医療提供者を含む単独の医療提供者によって、患者の食道内に挿入されうる。本技術の食道伝熱装置は、複数の人々および/または高度な医療の訓練を受けた人物を必要とする装置に対して有利な点を有する。さらに、手術環境において、例えば、本技術の食道伝熱装置は、食道伝熱装置を挿入、利用、かつ/または監視するために必要な人員および注意がより少なくて済むという点で、他の温度管理療法に対して有利な点を有する。
【0061】
[0074]例えば、バルーン型装置のユーザは、バルーンの膨張の過剰または不足を防止しなければならない。過膨張は、圧迫壊死を含む望ましくない結果をもたらすおそれがある。膨張不足は、患者へ/から熱を伝達する装置の能力を低下させるおそれがある。また、バルーン型伝熱装置の使用は、膨張圧を監視するために圧力監視装置の使用を必要とすることがある。圧力監視装置と併せて使用したときでも、バルーンの適切な膨張を達成することができない場合がある。
【0062】
[0075]伝熱装置は、例えば、咽頭−食道伝熱装置、食道伝熱装置、食道−胃伝熱装置、または咽頭−食道−胃伝熱装置であってよい。例えば、食道伝熱装置は、約20センチメートルの伝熱領域を含むことができる。また、食道−胃伝熱装置は、約40センチメートルの伝熱領域を含むことができる。さらに他の代替形態では、咽頭−食道−胃伝熱装置は、約45センチメートルから約50センチメートルの伝熱領域を含むことができる。本技術の伝熱装置は、約22、約24、約26、約28、約30、約32、約34、約36、約38、約40、約42、約44、約46、約48、約50、約52、約54、約56、約58、約60、約62、約64、約66、約68、または約70センチメートルの伝熱領域を含むことができる。
【0063】
[0076]本技術の伝熱装置は、例えば、約1.0から約2.0センチメートルの直径を持つ伝熱領域を有することができる。伝熱領域の直径は、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、または約1.9センチメートルとしてもよい。いくつかの実施形態では、本技術の伝熱装置の伝熱領域は、約32cmの長さと約1.4センチメートルの直径を有し、約140cm2の表面積となる。
【0064】
[0077]装置の伝熱領域の長さおよび/または円周の増大、したがって、伝熱領域の表面積の拡大は、患者が冷却または加熱(もしくは再加温)される速度および効率を向上する。いくつかの実施形態では、伝熱領域は、約96.774cm2(約15in2)、約129.032cm2(約20in2)、約161.29cm2(約25in2)、193.548cm2(30in2)、約225.806cm2(約35in2)、約258.064cm2(約40in2)、約290.322cm2(約45in2)、約50cm2、約60cm2、約70cm2、約80cm2、約90cm2、約100cm2、約110cm2、約120cm2、約130cm2、約140cm2、約150cm2、約160cm2、約170cm2、約180cm2、約190cm2、約200cm2、約210cm2、約220cm2、約230cm2、約240cm2、約250cm2、約260cm2、約270cm2、約280cm2、約290cm2、約300cm2、約310cm2、約320cm2、約330cm2、約340cm2、または約350cm2とすることができる。いくつかの実施形態では、伝熱領域は、患者の食道の上皮表面のすべてと実質的に接触することができる。
【0065】
[0078]伝熱装置は、患者の医療提供者に対して胃へのアクセスを可能にするように適合されうる。伝熱装置は、例えば、胃管または胃プローブを組み込むことができる。胃管または胃プローブは、伝熱媒体供給管および伝熱媒体戻り管と平行することができる。あるいは、胃管、胃プローブ、またはその両方は、伝熱媒体供給管または伝熱媒体戻り管の少なくとも一方と同心配置されてもよい。胃プローブは、例えば、温度プローブとすることができる。
【0066】
[0079]本技術の他の実施形態は、軽度治療的低体温を誘発するための複数内腔の伝熱装置を提供する。伝熱装置は、冷媒の循環の流体路を提供する1つまたは複数の内腔を備えることができる。例えば、伝熱装置は、冷媒供給管および冷媒戻り管を備えることができる。冷媒供給管および冷媒戻り管の内腔は、互いに流体連通することができ、それにより、冷媒の流れの流体路を画成する。冷媒供給管と冷媒戻り管は、例えば、平行または同心状に配置されうる。
【0067】
[0080]本技術の他の実施形態は、患者体温を制御するための複数内腔伝熱装置を提供する。伝熱装置は、伝熱媒体の循環のための流体路を提供する1つまたは複数の内腔を備えることができる。例えば、伝熱装置は、媒体供給管および媒体戻り管を備えることができる。媒体供給管および媒体戻り管の内腔は、互いに流体連通することができ、それにより、媒体の流れの流体路を画成する。媒体供給管と媒体戻り管は、例えば、平行または同心状に配置されうる。
【0068】
[0081]本技術のいくつかの実施形態は、米国特許出願公開第2007/0203552号(Machold)に記載のような制御装置を利用することができる。特に、制御装置は、カスケードPID(cascading proportional integrated differential)制御方式を利用することができる。こうした方式では、以下の2つのセクションに分割することができる制御システムが提供される。すなわち、(a)医療提供者または他のユーザからの目標温度などの入力と、患者体温を示す患者上のセンサからの入力とを受け取り、中間的設定点温度(SP1)と、伝熱流体PID制御(Heat Transfer Fluid PID control)に対する出力信号とを計算する、バルクPID制御(Bulk PID control)セクション、ならびに、(b)バルクPID制御セクションと伝熱流体の温度を示すセンサとから入力を受け取り、例えば、熱交換器への電力入力を変動させることによって、熱交換器の温度を制御する信号を生成する、伝熱流体PID制御である。
【0069】
[0082]伝熱流体は、熱交換器において循環し、したがって、伝熱流体PIDは、伝熱流体の温度を基本的に制御する。このようにして、この制御方式は、患者上に配置されたセンサからの入力と制御装置に組み込まれたロジックとに基づいて、指定された目標を自動的に達成することができる。さらに、この方式は、ユニットが、患者体温を最後の数十分の1度まで非常に少しずつ自動的に変化させることができるようにして、目標温度を非常に穏やかに達成し、行き過ぎや、潜在的に損傷を生じる熱交換器への電力の著しい揺れを回避する。目標温度が達成されると、システムは、目標温度に患者を維持するのに必要な速度で精密に熱を追加または除去するように自動的な動作を継続する。
【0070】
[0083]一般に、制御装置は、ポンプ出力または熱交換器へのパワー入力などの制御変量を含むことができる。検出ユニットまたはセンサは、患者体温またはライン内の空気の存在のようなパラメータを検出し、制御変数に関係するフィードバック信号を出力するためのフィードバック装置として機能することができる。制御ユニットは、フィードバック信号と所定の目標値の間の比較に応じて制御変量が調節されるPID動作を実行する。
【0071】
[0084]例えば、フィードバック信号Tは、患者体温を表し、所定の目標値TTargは、医療専門家によって設定された目標温度を表すことができる。フィードバック信号Tが、目標値TTargよりも大きいとき、患者体温は高すぎることを意味する。したがって、制御装置は、熱交換媒体の温度および/または流量を変更するために、例えば、ポンプ出力または熱交換器へのパワー入力を増大または減少させる。フィードバック信号Tが、目標値TTargよりも小さいとき、患者体温は低すぎることを意味する。したがって、制御装置は、熱交換媒体の温度および/または流量を変更するために、例えば、ポンプ出力または熱交換器へのパワー入力を増大または減少させる。
【0072】
[0085]本技術のいくつかの実施形態は、他の装置および方法に関連する予期される以上に優れた温度変化速度を実現する。本方法および装置は、平均的な成人の人間と同様の大きさの大きな動物モデルで、約0.5℃/hから約2.2℃/hの冷却速度を実現することができる。本方法および装置は、約250kJ/hから約750kJ/hの総熱除去能力を実施することができる。例えば、本方法および装置は、平均的な成人の人間と同様の大きさの大きな動物モデルで、約1.2℃/hから約1.8℃/hの冷却速度を実現することができ、それにより、約350kJ/hから約530kJ/hの総熱除去能力を実施することができる。本技術の方法および装置は、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、および約1.7℃/hの冷却速度を実現することができる。本技術の方法および装置は、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、約500、約510、および約520kJ/hの総熱除去能力を実施することができる。
【0073】
[0086]いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、本技術の装置および方法は、他の装置よりも単位時間当たりに多くの熱を伝達すると考えられる。例として、本技術の伝熱装置は、例えば、患者の食道の実質的に全部の長さおよび/または円周に及ぶ伝熱領域を含み、伝熱装置の伝熱領域と食道上皮および食道を取り囲む脈管構造を含む患者の解剖学的組織との間の拡大された接触面を提供する。さらに、本技術の伝熱装置は、胃の換気によって胃圧を低下することを可能にし、それにより、食道粘膜との接触が途切れる食道粘膜の膨張および拡張の可能性を低くし、さらに、食道粘膜を介した熱伝達を増進する。さらに、本技術の伝熱装置を作製するための材料は、優れた伝熱特性を有する材料を含む。本技術の伝熱装置は、より薄い壁厚で製造されることが可能であり、それにより、装置全体の伝熱抵抗を減らし、患者からの熱除去または患者への熱付加の有効性を高めることができる。
【0074】
[0087]ここで、本技術を添付の図面を参照して説明するが、それによって本技術の範囲は限定されるものではない。本技術の範囲は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されないことは理解されよう。本技術は、具体的な説明と異なるように実施されてもよいが、そうであっても特許請求の範囲に含まれうる。
【0075】
[0088]図1は、本技術の一実施形態による伝熱(heat transfer)システム100の概略図である。伝熱システム100は、伝熱装置102、熱交換器104、伝熱媒体106、および、伝熱装置102と熱交換器104の間で伝熱媒体106を循環させるための管状構造の回路網108を備える。
【0076】
[0089]熱交換器104は、伝熱媒体106を加熱または冷却するように構成される。熱交換器104は、従来設計された様々な熱交換器104のいずれとしてもよい。例えば、熱交換器104は、New Brunswick Scientificによって製造されたRF−25 Recirculating Chillerのような標準的な冷却装置であってよい。伝熱媒体106は、例えば、亜酸化窒素、フレオン、二酸化炭素、または窒素などの気体とすることができる。あるいは、伝熱媒体106は、例えば、水、生理食塩水、プロピレングリコール、エチレングリコール、またはそれらの混合物などの液体とすることもできる。他の実施形態では、伝熱媒体106は、例えば、氷と塩の混合などのスラリーとすることができる。さらに他の実施形態では、伝熱媒体106は、例えば、冷媒ゲルなどのゲルとすることができる。あるいは、伝熱媒体106は、例えば、氷または熱伝導金属などの固体とすることができる。他の実施形態では、伝熱媒体106は、例えば、液体と粉末の混合によって形成されうる。このように、上述の媒体の組合せおよび/または混合が、本技術による伝熱装置106を実現するために利用されうることは理解されよう。
【0077】
[0090]伝熱媒体106を循環させるための管状構造の回路網108は、外部供給管110および外部戻り管112を備えることができる。外部供給管110は、外部供給内腔114を画成して、熱交換器104から伝熱装置102への伝熱媒体106の流れの流体路を提供する。外部戻り管112は、外部戻り内腔116を画成して、伝熱装置102から熱交換器104への伝熱媒体106の流れの流体路を提供する。ポンプ118は、管状構造の回路網108を通して伝熱媒体106を循環させるために利用することができ、媒体の流量、したがって装置の伝熱能力は、ポンプ流量を調節することによって調整可能である。
【0078】
[0091]伝熱装置102は、哺乳類の患者の解剖学的構造内に配置されるように適合される。伝熱装置102は、近位端および遠位端を有する。伝熱装置102の遠位端は、身体開口部に挿入されるように構成されうる。例えば、伝熱装置102の遠位端は、患者の鼻孔、口、肛門、または尿道に挿入されるように構成されうる。適切に挿入されると、伝熱装置102の遠位端は、食道、直腸、結腸、膀胱、または他の解剖学的構造に最終的に配置されうる。伝熱装置102の近位端は、入力口120および出力口122を含む。入力口120および出力口122は、伝熱媒体106を循環させるための管状構造の回路網108に結合される。例えば、入力口120は、外部供給管110に結合されることが可能であり、出力口122は、外部戻り管112に結合されうる。したがって、いくつの実施形態では、熱交換器104は、管状構造の回路網108を介して伝熱装置102と流体連通することができる。
【0079】
[0092]手術中、伝熱装置102は、食道などの解剖学的構造内に配置される。熱交換器104は、外部供給管110を介して伝熱装置102に供給される伝熱媒体106を、加熱または冷却するために使用される。伝熱媒体106は、外部供給管110を通って流れ、入力口120を介して伝熱装置102に入る。伝熱媒体106は、伝熱装置102内を循環し、出力口122を介して伝熱装置102から出て、外部戻り管112を通って熱交換器104に戻る。伝熱媒体106の温度の上昇または低下が、患者の体温を変化させる。
【0080】
[0093]伝熱システム100はさらに、温度、圧力、または電磁気的変動などの生理学的パラメータを測定する装置を含むことができる。例えば、伝熱システム100は、周囲温度、患者体温、または伝熱媒体106の温度を測定するための1つまたは複数の温度計124を含むことができ、各温度計124は、1つまたは複数の温度プローブ126を有する。温度計は、別個の装置としても、伝熱システム100と一体化してもよい。
【0081】
[0094]図2は、本技術の一実施形態による伝熱装置200を示す。この実施形態をさらに明瞭に示すために、熱交換器は、冷却装置(図示せず)と呼び、伝熱媒体は、冷媒と呼ぶことにする。しかし、任意の適切な熱交換器および任意の適切な伝熱媒体が、図2に示された伝熱装置とともに使用されうることは理解されよう。
【0082】
[0095]伝熱装置200は、遠位端202、近位端204、および、それらの間に延在するある長さの可撓管206を備える。近位端202は、冷却装置から冷媒を受け取るための入力口208と、冷媒が冷却装置に戻ることを可能にする出力口210とを含む。
【0083】
[0096]入力口208は、標準的な配管用T字継手212を備える。代わりに、Y字継手のような2つ以上の開口端を有する任意の継手が使用されてもよい。継手は、例えば、銅または鉄のような金属、鋼または真鍮のような金属合金、あるいは、ポリ塩化ビニル(「PVC」)またはポリエチレン(「PE」)のようなプラスチックを含む、任意の適切な材料で構成されうる。真鍮プラグ214は、T字継手212の近位開口端に取り付けられる。代わりに、金属キャップまたはプラスチックキャップのような標準的キャップが、継手の近位開口端に取り付けられてもよい。プラグ214は、配管クリアランスを可能にするために開口を備える。プラグ214は、例えば、室温加硫(RTV)シリコン・シーラント(Room−Temperature Vulcanization (“RTV”) Silicone Sealant)のような化学シーラント216を用いて継手に取り付けられる。他の実施形態では、入力口208は、例えば、押し出しなどによって、取付け型の端部キャップの必要性を除去するような態様で製造されうる。
【0084】
[0097]出力口210は、標準的な配管用T字継手212を備える。代わりに、Y字継手のような2つ以上の開口端を有する任意の継手が使用されてもよい。継手は、例えば、銅または鉄のような金属、鋼または真鍮のような金属合金、あるいは、PVCまたはPEのようなプラスチックを含む、任意の適切な材料で構成されうる。真鍮プラグ214は、T字継手212の近位開口端および遠位開口端に取り付けられる。代わりに、金属、金属合金、またはプラスチックキャップのような標準的キャップが、継手の開口端に取り付けられてもよい。各プラグ214は、配管クリアランスを可能にするために開口を備えることができる。プラグ214は、例えば、RTVシリコン・シーラントのような化学シーラント216によって継手に取り付けられる。他の実施形態では、出力口210は、例えば、押し出しなどによって、取付け型の端部キャップの必要性を除去するような態様で製造されうる。
【0085】
[0098]伝熱装置200の近位端204と遠位端202の間に延在する管部206が、冷媒供給管218である。冷媒供給管218は、透明なビニルで構成されうる。代わりに、冷媒供給管218は、例えば、可撓性のある医療グレードの透明なPVCなど他の適切な材料で構成されてもよい。冷媒供給管218の寸法は、およそ外径(「OD」)1.5875センチメートル(0.625インチ)×内径(「ID」)1.27センチメートル(0.500インチ)とすることができる。冷媒供給管218は、例えば、RTVシリコン・シーラントのような化学シーラント216によって、入力口208に取り付けられる。冷媒供給管218は、伝熱装置200の入力口208から遠位端202に伸長する。冷媒供給管218の長さは、約18センチメートルから約52センチメートルとしてよい。いくつかの実施形態では、冷媒供給管218の長さは、約18センチメートルから約22センチメートルとしてもよい。いくつかの実施形態では、冷媒供給管218の長さは、約30センチメートルから約42センチメートルとしてもよい。いくつかの実施形態では、冷媒供給管218の長さは、約45センチメートルから約52センチメートルとしてもよい。冷媒供給管218の長さは、約32センチメートルとすることができる。
【0086】
[0099]伝熱装置200の遠位端202は、端部キャップ220を備える。端部キャップ220は、例えば、銅または鉄のような金属、鋼または真鍮のような金属合金、あるいは、PVCまたはPEのようなプラスチックを含む、任意の適切な材料で構成されうる。端部キャップ220は、例えば、RTVシリコン・シーラントのような化学シーラント216によって冷媒供給管に取り付けられる。
【0087】
[00100]冷媒戻り管222は、冷媒供給管218内に配置されうる。冷媒戻り管222は、透明なビニルで構成されうる。代わりに、冷媒戻り管222は、例えば、可撓性のある医療グレードの透明なPVCなど他の適切な材料で構成されてもよい。冷媒戻り管222の外径は、冷媒供給管218の内径よりも小さい。例えば、冷媒戻り管222の寸法は、およそ外径(「OD」)1.10998センチメートル(0.437インチ)×内径(「ID」)0.79248センチメートル(0.312インチ)とすることができる。冷媒戻り管222は、例えば、RTVシリコン・シーラントのような化学シーラント216によって、入力口208と出力口210の一方または両方に取り付けられうる。
【0088】
[00101]冷媒戻り管222は、伝熱装置200の遠位端202にある端部キャップ220にまでは伸長しない。したがって、冷媒供給管の内腔224および冷媒戻り管の内腔226は、互いに流体連通することができ、それにより、冷媒の流れの流体路を画成する。
【0089】
[00102]手術中、冷媒は、入力口208に入り、冷媒供給管の内腔224を通って流れ、例えば、患者の食道に配置されうる、伝熱装置200の遠位端202に流れる。次いで、冷媒は、冷却戻り管の内腔226を通って出力口210に流れる。手術中、熱は、例えば食道から、冷媒に伝達され、その結果、食道および近接する器官の温度が低下し、最終的には全身性低体温をもたらす。
【0090】
[00103]いくつかの実施形態では、例えば銅のような、高い伝熱係数を有する添加物が、冷媒供給管218または冷媒戻り管222の製造のために使用される材料に添加されうる。一実施形態では、例えば、管の長さ方向に沿って直線的またはらせん状に延びる、いくつかのワイヤが含まれうる。他の実施形態では、高い伝熱係数を有する粒状物質が、冷媒供給管218または冷媒戻り管222の製造のために使用される材料(例えば、ビニルまたはPVC)内に、押出しの前または最中に混合されうる。
【0091】
[00104]いくつかの実施形態では、冷媒供給管218および/または冷媒戻り管222の壁は、比較的薄くすることができる。例えば、冷媒供給管218の壁は、約1ミリメートル未満とすることができる。代わりに、冷媒供給管218の壁は、約0.01ミリメートル未満とすることができる。いくつかの実施形態では、冷媒供給管218の壁は、約0.008ミリメートル未満とすることができる。当業者には認識されるように、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁の厚さは、例えば、約0.001ミリメートル、約0.01ミリメートル、または約0.1ミリメートル単位で修正されうる。
【0092】
[00105]任意選択で、伝熱装置200は、診断および/または治療のために、胃へのアクセス、例えば、胃吸引および胃洗浄を可能にするために、胃管228を所望に応じて含むことができる。胃管228は、透明なビニルで構成されうる。代わりに、胃管228は、例えば、可撓性のある医療グレードの透明なPVCなど他の適切な材料で構成されてもよい。胃管228の外径は、冷媒戻り管222の内径よりも小さい。例えば、胃管228の寸法は、およそ外径(「OD」)0.635センチメートル(0.250インチ)×内径(「ID」)0.4318センチメートル(0.170インチ)とすることができる。胃管228は、例えば、RTVシリコン・シーラントのような化学シーラント216によって、入力口208または出力口210のいずれか最も近位の開口に取り付けられうる。胃管228は、患者の医療提供者が、例えば、胃内容物の吸引を可能にする経鼻胃管を挿入することを可能にできる。あるいは、胃管228は、患者の医療提供者が、例えば、胃温度プローブ(図示せず)を挿入することを可能にできる。
【0093】
[00106]任意選択で、抗生または抗菌コーティングが、冷媒供給管218、冷媒戻り管222、または胃管228の部分に塗布されうる。特に、抗生または抗菌コーティングは、管が患者に挿入されると、例えば患者の粘膜内層に接触する可能性がある管の部分に塗布されうる。例えば、トブラマイシン、コリスチン、アムホテリシンB、またはこれらの組合せなどの外用抗生物質が、管に塗布されうる。抗生または抗菌コーティングの取り入れにより、選択的消化管除菌(「SDD」)を可能にすることができ、さらに結果を改善することができる。
【0094】
[00107]他の代替形態では、伝熱装置200の全部または一部が、例えば、押出しによって製造されうる。そのような製造方法を採用することにより、接合部を封止したり端部キャップを付加したりする必要をなくし、漏れが発生する箇所を減少させる。
【0095】
[00108]図3は、本技術の一実施形態による伝熱装置300を示す。伝熱装置300は、近位端302、遠位端306、および、それらの間に延在するある長さの可撓管304を備える。
【0096】
[00109]伝熱装置300の全部または一部は、例えば、押出しによって製造されうる。そのような製造方法を採用することにより、接合部を封止したり端部キャップを付加したりする必要をなくし、漏れが発生する箇所を減少させる。代替または追加として、RTVシリコン・シーラントまたは温度硬化性シーラントのような高速硬化型接着剤が、接合部を封止しかつ/または管を一緒に結合するために使用されうる。伝熱装置300は、生体適合性エラストマおよび/またはプラスチック、ならびに任意選択で接着剤を使用して構成されうる。例えば、Dow Corning Q7 4765シリコンなどの生物医学グレードの押出シリコンゴム、および、Nusil Med2−4213などの接着剤が、伝熱装置300を製造するために使用されうる。
【0097】
[00110]図3Aは、伝熱装置300の外観の概略図を示す。伝熱装置300は、入力口308、伝熱媒体供給管310、伝熱媒体戻り管312、および出力口314を備える。伝熱装置はまた、例えば胃へのアクセスを可能にする、中心管316を備えることができる。中央管316は、伝熱媒体供給管310または伝熱媒体戻り管312と同心配置される(図3B参照)。中心管内腔318は、患者の食道内に伝熱装置が配置されている間、例えば患者の胃へのアクセスを医療専門家に提供する。
【0098】
[00111]図3Cは、図3Bで特定される線3Cに沿った断面図である。
[00112]最も外側の管は、伝熱媒体供給管310である。伝熱媒体供給管310は、およそ入力口308からおよそ伝熱装置300の遠位端306まで伸長する。伝熱媒体供給管310の長さは、約18センチメートルから約75センチメートルとすることができる。ある特定の実施形態では、伝熱媒体供給管310の長さは、約32センチメートルである。伝熱媒体供給管310の外径は、例えば、約1.0センチメートルから約2.0センチメートルとすることができる。ある特定の実施形態では、伝熱媒体供給管310の外径は、約1.4センチメートルである。
【0099】
[00113]例えば、患者の食道内に挿入されると、伝熱媒体供給管310の壁は、患者の食道と直接接触することができる。前述のように、伝熱媒体供給管310の長さおよび/または外周、ひいては伝熱媒体供給管310の表面積は、異なるようにできる。伝熱装置300と患者の食道の間の接触面積の増大は、患者が冷却または加熱(もしくは再加温)される速度および効率を向上する。いくつかの実施形態では、伝熱媒体供給管310の表面積は、約50cm2から約350cm2とすることができる。ある特定の実施形態では、伝熱媒体供給管310の伝熱領域の表面積は、約140cm2とすることができる。いくつかの実施形態では、伝熱媒体供給管310は、患者の食道の上皮表面のすべてと実質的に接触することができる。
【0100】
[00114]伝熱媒体戻り管312は、伝熱媒体供給管310内に配置される。伝熱媒体戻り管312の外径は、伝熱媒体供給管310の内径よりも小さい。伝熱媒体戻り管312は、伝熱媒体供給管310の遠位端までは伸長しない。したがって、伝熱媒体供給管内腔320および伝熱媒体戻り管内腔322は、互いに流体連通して、それにより、伝熱媒体の流れの流体路を画成する。
【0101】
[00115]中心管316は、伝熱媒体戻り管内に配置される。中心管316の外径は、伝熱媒体戻り管312の内径よりも小さい。中心管316は、例えば、胃へのアクセスを可能にする胃管とすることができる。中心管316は、医療専門家が、例えば、胃内容物の吸引を可能にする経鼻胃管を挿入することを可能にできる。あるいは、中心管316は、医療専門家が、例えば、胃温度プローブを挿入することを可能にできる。
【0102】
[00116]伝熱媒体供給管310の遠位端は、端部キャップ324によって封止されうる。端部キャップ324は、例えば、シリコンから構成されうる。端部キャップ324は、中心管316が貫通する穴または他の通路を備えることができる。同様に、伝熱媒体戻り管312の近位端は、端部キャップ326によって封止されうる。端部キャップ326は、例えば、シリコンから構成されうる。端部キャップ326は、中心管316が貫通する穴または他の通路を備えることができる。様々な構成要素と管の間の接合部が、Nusil Med2−4213などのシーラント328によって封止されうる。
【0103】
[00117]図4は、本技術による伝熱装置の近位端のいくつかの眺めを示す。
[00118]伝熱装置は、伝熱供給管402および伝熱戻り管404のような少なくとも2つの同心配置された管を備えて、全体として同軸内腔構成を有する複数内腔の伝熱装置を形成する。伝熱供給管402および伝熱戻り管404のそれぞれの近位端は、端部キャップ(図示せず)によって封止されうる。伝熱装置は、任意選択で、第1の中心管410および/または第2の中心管412を備える。例えば、伝熱装置は、1つまたは複数の胃管を備えることができる。
【0104】
[00119]伝熱供給管内腔406は、伝熱戻り管404の通過を可能にするのに充分な直径を有する。同様に、伝熱戻り管内腔408は、第1の中心管410および/または第2の中心管412の通過を可能にするのに充分な直径を有する。第1の中心管410および第2の中心管412は、例えば、患者の胃へのアクセスを可能にして胃内容物の吸引および/または胃温度プローブの配置を可能にする、胃管とすることができる。伝熱戻り管404の端部キャップ(図示せず)は、中央管410および412が貫通する穴または他の通路を備えることができる。
【0105】
[00120]伝熱供給管402は、入力口414と結合されうる。入力口414は、冷却装置および/または加温装置とのインターフェースのための標準的コネクタを備える外部供給管(図示せず)に結合されうる。伝熱戻り管404は、出力口416に結合されうる。出力口416は、冷却装置および/または加温装置とのインターフェースのための標準的コネクタを備える外部戻り管(図示せず)に結合されうる。
【0106】
[00121]図5は、本技術による伝熱装置の遠位端の概略図および断面図を示す。
[00122]図5Aに示される伝熱装置は、伝熱供給管502および伝熱戻り管504のような少なくとも2つの同心配置された管を備えて、全体として同軸内腔構成を有する複数内腔の伝熱装置を形成する。伝熱供給管502の遠位端は、伝熱戻り管504の遠位端から突出して、伝熱供給管502および伝熱戻り管504が伝熱流路を形成するようにする。伝熱供給管502の遠位端は、患者の食道への伝熱装置の挿入および配置を容易にするために、丸くされるかまたは他の形状にされうる。伝熱装置はまた、第1の中心管506および/または第2の中心管508を備えることができる。第1の中心管506および第2の中心管508は、例えば、患者の胃へのアクセスを可能にして胃内容物の吸引および/または胃温度プローブの配置を可能にする、胃管とすることができる。
【0107】
[00123]図5Bは、図5Aで特定された線5Bに沿った断面図である。伝熱供給管502と伝熱戻り管504は、同心配置される。伝熱戻り管504は、伝熱供給管内腔510内に配置される。第1の中心管506および第2の中心管508は、伝熱戻り管内腔512内に配置される。医療専門家は、例えば、第1の中心管内腔514および/または第2の中心管内腔516を通して胃温度プローブ(図示せず)を挿入することができる。
【0108】
[00124]図5C〜5Fは、本技術の一実施形態による複数内腔の伝熱装置のいくつかの代替構成の断面図を示す。
[00125]図5Cに示されるように、伝熱供給管内腔510と伝熱戻り管内腔512は、互いに平行に配置されうる。図5Dに示すように、第1の中心管内腔514および第2の中心管内腔516もまた、伝熱供給管内腔510および伝熱戻り管内腔512と平行に配置されうる。あるいは、図5Eおよび5Fに示すように、第1の中心管内腔514および/または第2の中心管内腔516は、伝熱供給管内腔510と伝熱戻り管内腔512の間に配置されうる。任意選択で、胃管または胃プローブが、第1の中心管内腔514および/または第2の中心管内腔516を介して患者の胃内に挿入されうる。
【0109】
[00126]図2〜5に示され、また以上に説明された食道伝熱装置は、単に例に過ぎず、本技術を限定するものではない。本技術の伝熱装置は、患者の鼻孔、口、肛門、または尿道に挿入されるように構成されうる。適切に挿入されると、装置の伝熱部分は、食道、胃、直腸、結腸、膀胱、または他の解剖学的構造に最終的に配置されうる。
【0110】
[00127]図6は、本技術の一実施形態による伝熱装置の遠位端の概略図を示す。
[00128]いくつかの実施形態では、食道伝熱装置は、胃管602を組み込む。胃管602は、管の同心配置の中心管とすることができ、また、胃へのアクセスを実現する全体的に中空の管を含むことができる。例えば、胃内容物の吸引を可能にする管が、胃管602を介して患者の胃に挿入されうる。いくつかの実施形態では、胃管602は、胃内容物を吸入するための管の役割を果たし、別個の経鼻胃管を配置する必要性が除去される。他の例では、胃温度プローブが、胃管602を介して挿入されうる。
【0111】
[00129]胃管602は、外部環境(ここでは患者の胃)から胃管内腔606への小さな管状の連通路または通路の役割をするいくつかの開口604を備えることができる。開口604は、胃管内腔606と(のみ)直接連通することができる。開口604は、伝熱装置の遠位端に配置されて、患者の胃と胃管602の間の追加の連通口を提供することができる。開口604は、胃内容物が患者の胃から出て胃管内腔606を通って流れるための追加の通路を提供し、それにより、半固体の胃内容物による単一内腔の閉塞の可能性を低下させる。
【0112】
[00130]他の実施形態では、食道−胃伝熱装置が、いくつかの中心管を備え、最も中心の管が胃管602の役割をするようにする。そのような配置において、最も外側の管は、例えば、伝熱媒体供給管608とすることができる。伝熱媒体戻り管610は、伝熱媒体供給管608内に配置されうる。同様に、胃管602は、伝熱媒体戻り管610内に配置されうる。
【0113】
[00131]図6に示されるように、伝熱装置は、食道または食道−胃伝熱装置とすることができ、伝熱媒体供給管608、伝熱媒体戻り管610、および胃管602を含む3つの同心配置された管を備えて、全体として同軸内腔構成を有する複数内腔の伝熱装置を形成する。伝熱装置の伝熱部分は、患者の食道に限定されることが可能で、このとき、胃管602が患者の胃に延入する。伝熱装置はまた、胃管602の側面に沿って開口604を備えることができる。胃管602の遠位端は、胃管内腔606へのアクセスを提供するための管の側面に沿ったいくつかの開口を含み、それにより、半固体の胃内容物による単一内腔の閉塞の可能性を低下させる。このような開口604の追加により、胃内物の除去の改善および促進することができ、それにより、胃粘膜と伝熱装置の間の接触性を改善することができる。こうした接触性の改良により、伝熱装置と胃粘膜の間の熱伝達を向上することができる。
【0114】
[00132]図6に示される開口の形状は、楕円形である。しかし、これらの開口は、例えば、胃から胃管内腔606への胃内容物の流れを可能にする円形、矩形、または他の形状とすることができる。
【0115】
[00133]いくつかの実施形態では、「患者」という用語は、病状、疾患、または障害、あるいはそれらに関連した症状に関して治療を必要とする哺乳動物を指す。用語「患者」は、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、マウス、およびヒトを含む。用語「患者」は、あらゆる点で正常な個人を排除するものではない。
【0116】
[00134]本明細書では、用語「治療」は、疾患、障害、または病状の臨床症状および/または非臨床症状について、抑止をすること、予防をすること、その進行を実質的に抑制、減速、または反転すること、その臨床症状および/または非臨床症状を実質的に改善すること、あるいは、その出現を実質的に予防または遅延することを意味する。
【0117】
[00135]以上の段落において、単数形の使用は、特段の指示がない限り、複数形を含むことができる。本明細書では、単語「ある」および「その」(“a,” “an,” and “the”)は、他に指定がない限り、「1つまたは複数の」を意味する。また、代替形態の列挙を参照して本技術の諸態様が説明されるが、本技術は、代替形態の列挙の任意の単一要素または部分群、および、それらの1つまたは複数の任意の組合せを含む。
【0118】
[00136]公開特許出願を含むすべての特許および刊行物の開示は、各特許および刊行物が具体的に個別に参照により組み込まれるのと同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
[00137]本技術の範囲は、上述の特定の実施形態に限定されないことは理解されよう。本技術は、具体的な説明と異なるように実施されてもよいが、そうであっても特許請求の範囲に含まれうる。
【0120】
[00138]同様に、以下の実施例は、本技術をより完全に説明するために提示される。しかし、それらは、本明細書に開示の技術の広範な範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0121】
[00139]モデル系の冷却
[00140]本技術の例示的実施形態の使用によって達成可能な温度低下のおよその速度を定量化するために実験が実施された。目標の温度低下は、4℃である。図7に示されるように、データが収集され通常のX−Yグラフにプロットされた。
【0122】
[00141]この実験の機器の構成は、図1に示される。機器の各要素の簡単な説明を以下に述べる。
1. 伝熱装置102は、本技術による伝熱装置の例示的実施形態であった。
2. 表1に示される初期温度の88kgの水を含む96cm(l)×36cm(w)×36cm(h)の絶縁容器が、冷却される質量体を表す。
3. 110Vの電気ポンプのLittle Giant Model PES−70(4.4リットル/分フリーフロー(free−flow))が、絶縁容器(2)内の温水を循環してこの容器内の一様な水温を維持するために使用された。
4. 熱交換器104が、40kgの氷水を含む51cm(l)×28cm(w)×34cm(d)の絶縁容器を含むものであった。
5. ポンプ118は、110V電気ポンプのLittle Giant Model PES−70(設置時に250ミリリットル/分)を含み、冷媒が熱交換器104から外部供給管110を通り、次いで伝熱装置102を通り、次いで外部戻り管112を通って熱交換器104に戻る循環を提供するために使用された。
6. 外部供給管110は、熱交換器104から伝熱装置102に冷媒を輸送するための外径1.5875センチメートル(5/8インチ)×内径1.27センチメートル(1/2インチ)×長さ106.68センチメートル(42インチ)のWattsクリアビニル#SVKI10を含むものであった。
7. 外部戻り管112は、伝熱装置102から熱交換器104に冷媒を輸送するための外径1.5875センチメートル(5/8インチ)×内径1.27センチメートル(1/2インチ)×長さ106.68センチメートル(42インチ)のWattsクリアビニル#SVKI10を含むものであった。
8. 2つの遠隔プローブ126を備えるデジタル防水温度計のような温度計124として、Taylor Model 1441が、以下のものを監視するために使用された。
【0123】
a. 外部戻り管112から熱交換器104内への放出の近傍の(図1にT3として示される)冷媒温度
b. テストセル内の(図1にT4として示される)周囲温度
9. 2つの遠隔プローブ126を備えるデジタル防水温度計のような温度計124として、Taylor Model 1441が、以下のものを監視するために使用された。
【0124】
a. 循環ポンプ(3)の反対端における絶縁容器(2)内の(図1にT1として示される)温水温度
b. 循環ポンプ(3)の最近端における絶縁容器(2)内の(図1にT2として示される)温水温度
[00142]この実験の各反復(iteration)で冷却される物体は、94×36×26cmの大きさの絶縁容器(2)内に保持された88kgの質量の水であった。この質量は、典型的な成人男性の体重を表すものとして選択された。一体の水の94×36cmの上面を通して、自由対流による外気の熱伝達があった。この水の塊の手順反復ごとの初期温度が、表1に示される。
【0125】
[00143]この実験のそれぞれの反復ごとの冷媒は、絶縁容器内に保持された追加の10kgの氷を含む30kgの質量の水であった。電源付きの冷却器の必要なしに実験の各反復期間にわたって冷媒の温度をほぼ一定に維持するために、氷が使用された。氷は、伝導冷却モードが使用可能にされた各反復の開始時に補充された。
【0126】
[00144]この実験では、考慮すべき温度低下の2つのモードがある。すなわち、外気に対する対流冷却(convective cooling)と、伝熱装置を介した伝導冷却(conductive cooling)である。温度低下全体に対する各モードの寄与を定量化するために、対照ケースは、伝導冷却モードを無効にした(伝熱装置を介して冷媒が循環しない)状態で実施された。そして、追加で2回の手順が伝導冷却モードを有効にして実施された(伝熱装置が温水内に沈められ、それを介して冷媒が循環された)。伝導冷却が有効な状態とそうでない状態の温度低下速度の差は、伝熱装置を介した伝導冷却による温度低下速度になる。
【0127】
[00145]実験の各反復のデータの要約が、以下の表1に示される。
[00146]
【0128】
【表1】
【0129】
[00147]表1において、「Tinit,avg」は、冷却される物体の平均初期温度、すなわち、2つの測定値の平均であり、「Tamb,avg」は、反復期間の平均周囲温度であり、「Tcoolant,avg」は、反復期間の平均冷媒温度であり、「4℃降下時間」は、冷却される物体の平均温度の4℃低下を達成するのに必要な時間である。
【0130】
[00148]このように、この実施例で採用された例示的伝熱装置を介した伝導冷却は、4℃の温度低下を達成する時間を有意に低下させる。
【実施例2】
【0131】
[00149]手術温度管理
[00150]本技術による伝熱装置が、以下に説明される動物実験で使用された。伝熱装置の伝熱領域は、(鼻部の長さに対応するために)約70センチメートルの長さであり、表面積が約305cm2で、約1.4センチメートルの直径を有する。
【0132】
[00151]人間の患者の寸法および平均的質量を最も良く表すものとして、70kgの質量の大きなブタが選ばれた。このブタは、国際実験動物管理公認協会(Association for the Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care, International)(AAALAC)に認定された施設に、米国農務省動物福祉法(USDA Animal Welfare Act)(米国連邦規則集9巻1、2、および3部)に指定される一次囲いを伴い、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(National Academy Press、Washington DC、1996年)に記載されるように、単独で収容された。
【0133】
[00152]このブタは、テロゾール/キシラジン(Telozole/Xylazine)の前麻酔薬混合によって麻酔され、当業者に周知の標準的な気管内挿管装置および技術によって達成される気管内挿管の後、イソフルラン2%で吸入経路を介して麻酔を提供された。静脈麻痺によって筋麻痺が得られた。温度は、麻酔および気管内挿管後に配置された直腸熱電対プローブを介して継続的に監視された。
【0134】
[00153]市販の熱水槽循環器(thermal water bath and circulator)(Gaymar Meditherm MTA−5900)が、伝熱装置に温度制御された伝熱媒体を供給するために利用された。使用された具体的な伝熱媒体は、蒸留水であった。熱水槽循環器の仕様は、以下の通りである。
【0135】
[00154]寸法:高さ94cm×幅35cm×奥行き48cm
[00155]重量:54.9kg(空)、64.0kg(満載時)
[00156]材料:アルミニウムシェル、16ゲージ・スチール・シャシ
[00157]流量:毎分1リットル
[00158]パワー:220V、240V、50Hz、6A
[00159]温度:手動:4〜42℃、自動:30〜39℃
[00160]電気コード:4.6m着脱可能電源コード
[00161]伝熱装置は、熱水槽循環器に接続され、次いで、熱水槽循環器の電源が入れられ、ブタを準備する間に平衡化することが可能にされた。
【0136】
[00162]ブタの麻酔、麻痺、および気管内挿管の成功後、中央半剛性スタイレットが、伝熱装置内に配置され、伝熱装置は、生体適合性のある潤滑剤によって潤滑された。
[00163]次いで、伝熱装置は、当業者に周知の標準的食道挿管技術を用いてブタの食道内に挿入された。口腔咽頭の開口から剣状突起の距離の外部測定が、伝熱装置が挿入される深さの指標の役割をする。伝熱装置の胃管腔を通る胃内容物の成功裏の吸引によって、挿入の適切な深さの確認が得られた。
【0137】
[00164]手術室環境で一般的に見られる低体温の状態下で患者を首尾よく加温するための伝熱装置の能力を実証するために、ブタの温度を33.6℃にまで低下させるために充分な時間にわたり、伝熱媒体の供給温度を低い設定点(4℃)に設定することによって、ブタは冷却された。
【0138】
[00165]実験の冷却部分からのデータが表2に示される。表2に見られるように、67.5kgのブタの中核体温の1℃の低下が、約40分で達成され、67.5kgのブタの中核体温の2℃の低下が、約80分で達成され、67.5kgのブタの中核体温の3℃の低下が、約125分で達成され、67.5kgのブタの中核体温の4℃の低下が、約175分で達成された。
【0139】
[00166]
【0140】
【表2】
【0141】
[00167]図8は、Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号で示された冷却の速度と比較された、本技術の伝熱装置により達成された冷却の速度の比較を示す。正確な比較をするために、また、2つの実験の質量の差を適切に説明するために、各ケースで除去された熱の総量が、ジュールの標準単位で計算される。実験動物の比熱容量をモデル化するために水の標準的比熱容量(cp=4.186J/g C)を使用して、各時点で除去された熱が、Q=m(ΔT)cpとして計算される。ここで、mは、実験動物の質量であり、ΔTは、各時点で得られた温度差である。
【0142】
[00168]1時間の時点において、本技術の伝熱装置では、総除去熱量は1時間で439kJ(122ワット)であり、これに対して、Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号に記載の装置で達成されたのは、1時間で260kJ(72ワット)の総除去熱量である。
【0143】
[00169]このブタの冷却実験の結果は、相応に大きい蓄熱容量を有する比較的大きな動物についてさえ、本技術の伝熱装置によって、Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号に記載のような従来の装置よりもかなり大きな伝熱速度が達成可能であることを示す。除去された総熱量およびその結果の達成された冷却は、Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号に記載のような従来の装置によって達成された伝熱および冷却速度と比較して、本技術の伝熱装置ではかなり上回っていることが、提示されたデータから見て取れる。したがって、本技術の伝熱装置によって達成された冷却速度が他の装置によって達成された冷却速度よりもかなり速いこと、ならびに、本技術の方法および装置は、他の装置よりも単位時間当たり多くの熱を伝達することが、予想外にも驚くべきことに観測される。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、これらの予想外の成果は、例えば、伝熱装置の以下の特徴、すなわち、伝熱装置の伝熱部分と患者の解剖学的組織の間の拡張された接触面と、より薄い壁厚で本技術の伝熱装置を製造することにより達成される装置全体の伝熱抵抗の低減と、本技術の伝熱装置を作製するのに使用される材料の優れた伝熱特性と、胃の換気による胃圧の低下とのうち1つまたは複数に起因されうると考えられる。
【0144】
[00170]冷却に続いて、伝熱媒体の設定点温度が、加温モード(42℃)に切り換えられた。
[00171]手術室の低体温誘発条件をさらにシミュレートするために、ブタは手術室での周囲温度(22℃)にさらされ、吸入麻酔で引き続き麻酔され、震えを防止するために非脱分極性麻痺によって麻痺させられ、維持室温静脈内流体補液の継続的流れが供給された。
【0145】
[00172]実験の加温および維持段階からのデータが、表3に示される。表3のデータは、33.6℃のブタの体温の初期の維持と、それに続く実験期間中の安全で漸進的な体温の上昇の成功を示す。図9は、実験の加温および維持段階において上記に計算されるような伝達された熱の総量を示す。
【0146】
[00173]
【0147】
【表3】
【0148】
[00174]したがって、データは、患者が手術室環境の不利な低体温状態にさらされている間に、本技術の伝熱装置が、体温を維持すること、および上昇させることができることを示す。
特定の実施形態
[00175]本明細書で説明された装置、方法、およびシステムは、番号が付された段落で列挙される以下の実施形態によって例示されうる。
【0149】
1. 全身性低体温を誘発するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0150】
2. 前記伝熱装置は別個の伝熱領域を含み、前記伝熱領域は前記食道に限定される、段落1に記載の方法。
3. 前記媒体を正常体温未満の温度にまで冷却するステップをさらに含む、段落1に記載の方法。
【0151】
4. 前記患者を少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落1に記載の方法。
5. 前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップをさらに含む、段落1に記載の方法。
【0152】
6. 前記少なくとも1つの生理学的パラメータは体温である、段落5に記載の方法。
7. 前記体温を約34℃未満に維持するステップをさらに含む、段落6に記載の方法。
【0153】
8. 前記体温を約32℃から約34℃の間に維持するステップをさらに含む、段落7に記載の方法。
9. (a)伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成された複数の内腔と、
(b)入力口および出力口を含む近位端と、
(c)患者の食道に挿入されるように構成された遠位端とを備える、食道伝熱装置。
【0154】
10. 前記患者の胃に延入するように構成された遠位端を有する中空管をさらに備える、段落9に記載の伝熱装置。
11. 抗菌コーティングをさらに備える、段落9に記載の伝熱装置。
【0155】
12. 膨張可能バルーンをさらに備える、段落9に記載の伝熱装置。
13. 虚血状態によって引き起こされる傷害を治療または予防するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0156】
14. 虚血再灌流傷害を治療または予防するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0157】
15. 神経損傷を治療または予防するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0158】
16. 前記神経損傷は、卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、クモ膜下出血、院外心肺停止、肝性脳症、周産期仮死、低酸素/無酸素性脳症、小児ウィルス性脳症、溺水、無酸素性脳損傷、外傷性頭部損傷、外傷性心停止、新生児低酸素/無酸素性脳症、肝性脳症、細菌性髄膜炎、心不全、術後頻脈、または急性呼吸促迫症候群に関連する、段落15に記載の方法。
【0159】
17. 前記卒中は、虚血性脳卒中である、段落16に記載の方法。
18. 心外傷を治療または予防するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0160】
19. 軽度治療的低体温を誘発するステップを含む、心筋梗塞を治療するための方法。
20. 軽度治療的低体温を誘発するステップを含む、卒中を治療するための方法。
【0161】
21. 軽度治療的低体温を誘発するステップを含む、外傷性脳損傷を治療するための方法。
22. 軽度治療的低体温を誘発するステップを含む、急性呼吸促迫症候群を治療するための方法。
【0162】
23. 前記低体温は全身性低体温である、段落19から22のいずれか1つに記載の方法。
24. 前記低体温は、食道冷却を介して誘発される、段落19から22のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
25. 前記患者を少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落19から22のいずれか1つに記載の方法。
26. 前記患者を少なくとも24時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落25に記載の方法。
【0164】
27. 前記患者を少なくとも72時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落26に記載の方法。
28. 前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップをさらに含む、段落19から22のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
29. 前記少なくとも1つの生理学的パラメータは体温である、段落28に記載の方法。
30. 前記体温を約34℃未満に維持するステップをさらに含む、段落29に記載の方法。
【0166】
31. 前記体温を約32℃から約34℃の間に維持するステップをさらに含む、段落30に記載の方法。
32. 伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとをさらに含む、段落24に記載の方法。
【0167】
33. 食道冷却を介して全身性低体温を誘発するステップを含む、心停止を治療するための方法。
34. 伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとをさらに含む、段落33に記載の方法。
【0168】
35. 患者の身体の少なくとも1つの部分を冷却または加温するための装置であって、
近位端、遠位端、および、それらの間に延在する少なくとも1つの可撓管を備える伝熱装置であって、
前記近位端は、伝熱媒体入力口および伝熱媒体出力口を含み、
前記遠位端は、患者の開口部に挿入されるように構成され、
前記少なくとも1つの可撓管は、流入内腔および流出内腔を画成し、
前記内腔は、伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成される、伝熱装置と、
前記入力口に接続された供給ラインと、
前記出力口に接続された戻りラインとを含む、装置。
【0169】
36. 前記伝熱媒体は冷却媒体である、段落35に記載の装置。
37. 段落36に記載の装置を使用して、虚血状態によって引き起こされる傷害を治療または予防するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0170】
38. 段落36に記載の装置を使用して、虚血再灌流傷害を治療または予防するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0171】
39. 段落36に記載の装置を使用して、神経損傷を治療または予防するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0172】
40. 段落36に記載の装置を使用して、心外傷を治療または予防するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0173】
41. 段落36に記載の装置を使用して、心筋梗塞を治療するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0174】
42. 段落36に記載の装置を使用して、卒中を治療するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0175】
43. 段落36に記載の装置を使用して、外傷性脳損傷を治療するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0176】
44. 段落36に記載の装置を使用して、急性呼吸促迫症候群を治療するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0177】
45. 前記媒体を正常体温未満の温度にまで冷却するステップをさらに含む、段落37から44のいずれか1つに記載の方法。
46. 前記患者を少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落37から44のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
47. 前記患者を少なくとも24時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落46に記載の方法。
48. 前記患者を少なくとも72時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落47に記載の方法。
【0179】
49. 前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップをさらに含む、段落37から44のいずれか1つに記載の方法。
50. 前記少なくとも1つの生理学的パラメータは体温である、段落49に記載の方法。
【0180】
51. 前記体温を約34℃未満に維持するステップをさらに含む、段落50に記載の方法。
52. 前記体温を約32℃から約34℃の間に維持するステップをさらに含む、段落51に記載の方法。
【0181】
53. 患者の中核体温を制御するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って伝熱媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の中核体温を制御するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0182】
54. 前記伝熱装置は別個の伝熱領域を含み、前記伝熱領域は前記食道に限定される、段落53に記載の方法。
55. 前記媒体を正常体温未満の温度にまで冷却するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
【0183】
56. 前記媒体を正常体温より高い温度にまで加温するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
57. 前記患者を少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
【0184】
58. 前記患者を少なくとも2時間にわたり正常体温に維持するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
59. 前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
【0185】
60. 前記少なくとも1つの生理学的パラメータは体温である、段落59に記載の方法。
61. 前記体温を約34℃未満に維持するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
【0186】
62. 前記体温を約32℃から約34℃の間に維持するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
63. 前記体温を約37℃に維持するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
【0187】
64. 手術温度管理のための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って伝熱媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の中核体温を管理するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0188】
65. 前記患者を少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
66. 前記体温を約34℃未満に維持するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
【0189】
67. 前記体温を約32℃から約34℃の間に維持するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
68. 前記患者を少なくとも2時間にわたり正常体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
【0190】
69. 前記体温を約37℃に維持するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
70. 前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
【0191】
71. 前記少なくとも1つの生理学的パラメータは体温である、段落70に記載の方法。
[00176]ここで記載された技術は、それが属する技術分野の当業者が同じ技術を実施できるように、完全、明瞭、簡潔、かつ正確な言葉で説明された。以上は、本技術の好ましい実施形態を説明するものであって、特許請求の範囲に示される本発明の精神または範囲から逸脱することなく改変が可能であることは理解されよう。
【技術分野】
【0001】
[0001]この出願は、2009年2月26日に出願された米国仮特許出願第61/155,876号の優先権を主張する。米国仮特許出願第61/155,876号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0004]先進国では、1年につき100,000人あたり36から128人の居住者が、突然の院外心停止(「OHCA」)を経験するが、生き残ることは依然として稀なことである。心血管系疾患は、推定で80,700,000人の北米の成人に影響を及ぼし、毎日およそ2400人が心血管系疾患のため死亡している(平均で37秒あたり1人が死亡する)。OHCAによるおよそ310,000件の冠動脈心疾患死が年間発生する。
【0003】
[0005]2007年の米国心肺蘇生登録(National Registry of Cardiopulmonary Resuscitation)による報告では、心肺停止を発症した患者の75%超は、その事態を乗り切り生存することができない。さらに、その事態を乗り切った者のうち35.2%がその後に死亡する。
【0004】
[0006]1950年代に、中等度低体温法(約28℃から約32℃の体温)、および超低体温法(およそ28℃未満の体温)が、様々な外科的処置のため、ならびに心停止に関連した神経傷害を実験的に回復させるために利用された。しかし、中等度低体温法および超低体温法の多くの合併症、ならびに、これらの温度降下を誘発する難しさのため、治療的低体温の使用に対する熱意は衰えた。結果として、正常体温の心停止後の神経傷害を回復するのを助けるための低体温の使用は、数十年にわたり休止した。しかし、1980年代後半より、イヌに関して軽度低体温法での心停止後の良好な結果が報告された。
【0005】
[0007]人間の患者での心停止後の軽度治療的低体温の現代的な用法は、最近の無作為対照試験および個々の患者のデータのメタ分析によって支持されている。国際蘇生連絡協議会(International Liaison Committee on Resuscitation)(「ILCOR」)、および米国心臓協会(American Heart Association)(「AHA」)を含む主要な団体では、昏睡状態の心停止生存者に対して軽度治療的低体温の導入を推薦する。しかし、AHAの治療的低体温のガイドラインは、どのように患者を冷却するかについて具体的な説明を欠いている。
【0006】
[0008]主要な蘇生法の組織の合意を得た推薦を含めて心停止の文脈で軽度治療的低体温の支持が広がったにもかかわらず、臨床での軽度治療的低体温の使用が少ない。多くの臨床医は、治療的低体温は実際に実行するのが技術的に難しいと報告する。
【0007】
[0009]また、医療専門家は、時として、特定の外科的処置の際に低体温を誘発する必要、または、非制御の意図的でない正常の体温からの逸脱による偶発的な低体温および複合的副作用を防止する必要がある。
【0008】
[0010]例えば、手術中の軽度の偶発的な低体温であっても、創傷感染の発生率を増大し、入院期間を長引かせ、病的心臓事象および心室頻拍の発生率を増大し、凝固を障害するため、手術室で外科的処置を受ける間の患者の体温を制御することは有益である。
【0009】
[0011]軽度の低体温(<1℃)でさえ、著しいことに、失血を約16%増大し、輸血の相対リスクを22%増大するのに対し、周術期正常体温を維持する場合、失血および輸血必要量が臨床的に重要な量だけ減少する。
【0010】
[0012]かなりの有力な証拠が、熱管理が様々な外科患者の成績を改善することを示すことから、現行の2007年版ACC/AHA非心臓手術患者の周術期心血管系評価と管理ガイドライン(American Heart Association−American College of Cardiology 2007 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation and Care for Noncardiac Surgery)は、周術期正常体温の維持のレベル1勧告を含む。
【0011】
[0013]さらに、周術期低体温の多くの合併症を認識して、最近、米国麻酔学会(American Society of Anesthesiologists)(ASA)は、術後体温が、低体温の防止に関する現行ガイドラインの医師のコンプライアンスを評価するための根拠となることを勧告した。
【0012】
[0014]手術時の偶発的な低体温が最も予防可能な外科合併症のうちの1つと考えられているが、体温を制御する既存の技術は有効性が限られており、そのため、外科患者の手術時の偶発的な低体温の発生率が50%を超える可能性がある。
【0013】
[0015]現在の体温を制御するための利用可能な方法には、非侵襲と侵襲の両方の技術がある。例えば、治療的低体温を誘発するために開発された最も一般的に使用される技術として、表面冷却と侵襲冷却がある。
【0014】
[0016]表面冷却は、比較的使用が容易であり、外部ベスト、冷却ヘルメット、循環冷水ブランケット、または強制空冷ブランケット(cold forced−air blanket)、あるいは、氷嚢や冷水浸のような比較的洗練されていない方法を用いて達成されうるが、中核体温を低下させるために2時間から8時間かかる。表面冷却は、皮膚から中央部に向かって短絡する血流の傾向による冷却が生じる速度によって制限される。ベストまたはブランケットのような外部装置は、カテーテル留置などのために救急医療でしばしば必要とされる重要な患者の部位へのアクセスを著しく制限し、CPRを行うために除去または変形が必要である。氷嚢などの表面冷却技術は、患者の体温を制御できる精度を制限する。氷嚢および従来の冷却ブランケットを用いた冷却は、意図しない過冷却をしばしば引き起こす。
【0015】
[0017]他の例では、いくつかの方法が、患者を温めるために利用され、手術室温度を上げること、および、強制空気加温ブランケットのような外部加温装置を使用することを含む。
【0016】
[0018]これらの現在の方法に伴ういくつかの問題がある。例えば、(1)過度に暖かい室温が、外科チームに不快な環境をもたらし、(2)強制空気加温器が、かさばって手術野に影響を与えるおそれがあり、不効率になる傾向があって、手術室で長時間使用される必要があり、(3)これらのシステムは、適切に温度を制御または管理できず、過熱を生じたり、より頻繁には不充分な加温をもたらしたりする。
【0017】
[0019]Rasmussenら(Forced−air surface warming versus oesophageal heat exchanger in the prevention of perioperative hypothermia. Acta Anaesthesiol Scand、1998年3月、42(3):348〜52ページ)は、上体に関する強制空気加温は、少なくとも2時間の予定期間の腹部手術を受ける患者で正常温度を維持するのに効果的である一方、食道熱交換器による集中加熱は、低体温を防止するのに充分ではないと述べている。Brauerら(Oesophageal heat exchanger in the prevention of perioperative hypothermia. Acta Anaesthesiol Scand、1998年3月、42(10):1232〜33ページ)は、食道熱交換器は、身体の全体的熱収支に対し少量の熱しか追加できないと述べている。
【0018】
[0020]侵襲的温度管理処置としては、冷たい静脈輸液の注入、温めた静脈輸液の注入、冷温頸動脈注入、体外冷却血液を用いた単一頸動脈灌流、心肺バイパス、氷水鼻洗浄、冷温腹腔洗浄、経鼻胃および直腸洗浄、ならびに、冷媒または熱交換(加温)装置に接続された侵襲的静脈内カテーテルの留置が挙げられる。侵襲的温度管理処置を首尾よく行うためには、かなりの個人的関与ならびに注意を必要とすることが多い。さらに、いくつかの特定の侵襲的温度管理療法は、過冷、過熱、より頻繁には不充分な加温と関連している。
【0019】
[0021]温度管理療法としての静脈輸液の使用は、循環液体容量負荷に寄与する望ましくない効果があり、目標温度を維持するのに不充分であることが分かっている。また、有意な効果を得るためには大量の液体が注入されなければならない。
【0020】
[0022]低体温を達成するための他の技術は吸入ガスによる血液冷却、およびバルーン・カテーテルの使用を含む。
[0023]しかし、Andrewsら(Randomized controlled trial of effects of the airflow through the upper respiratory tract of intubated brain−injured patients on brain temperature and selective brain cooling、Br.J.Anaesthesia、2005年、94(3):330〜335ページ)は、挿管された脳損傷患者の上部気道を通した室温の加湿空気の流入は、臨床的に関連するまたは統計的に有意な脳温度の低下をもたらさなかったことを述べている。
【0021】
[0024]Dohiら(Positive selective brain cooling method: a novel, simple, and selective nasopharyngeal brain cooling method、Acta Neurochirgurgica、2006年、96:409〜412ページ)は、冷却空気を誘導するために鼻腔に挿入したフォーリー・バルーン・カテーテルが、扇風機による頭部冷却と組み合わせて使用されると、選択的に脳温度を低下させることが判明したと述べている。
【0022】
[0025]Holtら(General hypothermia with intragastric cooling、Surg.Gynecol Obstet、1958年、107(2):251〜54ページ、General hypothermia with intragastric cooling:a further study、Surg Forum、1958年、9:287〜91ページ)は、外科的処置を受けている患者の低体温を実現するために熱ブランケットと組み合わせて胃内バルーンを使用することについて述べている。
【0023】
[0026]同様に、Barnard(Hypothermia:a method of intragastric cooling、Br.J.Surg、1956年、44(185):296〜98ページ)は、胃内冷却によって低体温を誘発するための胃内バルーンの使用について述べている。
【0024】
[0027]Lasherasの米国特許出願公開第2004/0199229号では、患者の結腸に挿入されたバルーンを介した加熱または冷却について述べている。
[0028]Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号では、心臓を特定的に冷却するための経食道バルーン・カテーテルについて述べ、身体全体を冷却する技術を否定的に見ている。
【0025】
[0029]Mayseらの米国特許出願公開第2007/0055328号では、心不整脈を直すために心臓アブレーションを受ける人物の消化管を保護するためのバルーン・カテーテルについて述べている。
【0026】
[0030]Daeらの米国特許第6,607,517号は、一般に、うっ血性心不全を治療するために血管内冷却を用いることに関する。
[0031]胃、結腸、または他の胃腸器官内で膨張したバルーンにより発生しうるような胃腸管内の圧力増加から生じるいくつかの合併症が知られている。例えば、胃の膨張が、肺炎、食道裂傷、結腸壊死、および腸管虚血をもたらすおそれがある腸破裂、逆流、および誤嚥を引き起こすことがある。
【0027】
[0032]さらに、いくつかの温度制御療法、特に、インフレータブル・バルーンを使用する療法は、患者ケアに決定的に重要でありうる例えば胃など特定の解剖学的構造への医療提供者のアクセスを限定する。これらの療法は、適切な治療を遂行するために除去または修正を必要とすることがある。
【0028】
[0033]今まで、患者体温を制御するための利用可能な療法で、既存の技術的、論理的、経済的障壁を充分に解消するものが見つかっていない。理想的な患者体温制御装置は、まだ開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
[0034]要約すると、患者体温の制御に関する技術水準は、少なくとも1つの重要な長年にわたる必要性、すなわち、追加の処置が必要な解剖学的領域に対するアクセスを保持しながら、患者体温の効率的で安全かつ迅速な制御をするための方法および装置の必要性を有する。本技術は、患者体温を制御することによって治療または予防されうるいくつかの徴候、疾患、障害、および状態を特定し、さらに、従来の装置および方法が招くリスクを低減しながら患者体温を迅速かつ効率的に制御するための比較的非侵襲的な方法および装置を提供する。さらに、本技術のいくつかの実施形態は、重要な解剖学的構造へのアクセスを維持すると同時に患者体温を迅速かつ効率的に制御するための比較的非侵襲的な方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
[0035]本技術の少なくとも1つの態様は、全身性低体温を誘発するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含む。伝熱装置は、患者の食道に限定される別個の伝熱領域を含むことができる。患者は、例えば、少なくとも約2時間にわたり低体温の状態に維持されうる。上記方法はさらに、患者の少なくとも1つの体温などの生理学的パラメータを監視するステップを含むことができる。上記方法はさらに、患者の体温を約34℃未満に維持するステップを含むことができる。
【0031】
[0036]本技術の少なくとも1つの態様は、患者の中核体温を制御するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って伝熱媒体の流れを開始するステップと、患者の中核体温を制御するために充分な時間にわたり流体路に沿って媒体を循環させるステップとを含む。伝熱装置は、患者の食道に限定される別個の伝熱領域を含むことができる。患者の中核体温は、例えば、少なくとも約2時間にわたり制御されうる。上記方法はさらに、体温など患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップを含むことができる。上記方法はさらに、患者の体温を、例えば、約34℃未満、約34℃と約37℃の間、または約37℃に維持するステップを含むことができる。
【0032】
[0037]本技術の少なくとも1つの態様は、1つまたは複数の食道伝熱装置を提供する。上記装置は、伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成された複数の内腔と、入力口および出力口を含む近位端と、患者の食道に挿入されるように構成された遠位端とを備える。上記装置はさらに、患者の胃に延入するように構成された遠位端を有する中空管を備えることができる。上記装置はさらに、抗菌コーティングを備えることができる。
【0033】
[0038]本技術の少なくとも1つの態様は、虚血再灌流傷害または虚血状態による傷害を治療または予防するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含む。
【0034】
[0039]本技術の少なくとも1つの態様は、神経損傷または心外傷を治療または予防するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含む。神経損傷に関連することがあるのは、例えば、(虚血性脳卒中を含む)卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、クモ膜下出血、院外心肺停止、肝性脳症、周産期仮死、低酸素/無酸素性脳症、小児ウィルス性脳症、溺水、無酸素性脳損傷、外傷性頭部損傷、外傷性心停止、新生児低酸素/無酸素性脳症、肝性脳症、細菌性髄膜炎、心不全、術後頻脈、または急性呼吸促迫症候群(「ARDS」)である。
【0035】
[0040]本技術の少なくとも1つの態様は、心筋梗塞、卒中、外傷性脳損傷、またはARDSを治療するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、患者の軽度治療的低体温を誘発するステップを含む。軽度治療的低体温は、食道冷却を介して誘発されうる。患者は、例えば、少なくとも約2時間にわたり低体温の状態に維持されうる。上記方法はさらに、患者の少なくとも1つの体温などの生理学的パラメータを監視するステップを含むことができる。上記方法はさらに、患者の体温を約34℃未満に維持するステップを含むことができる。
【0036】
[0041]本技術の少なくとも1つの態様は、心筋梗塞、卒中、外傷性脳損傷、またはARDSを治療するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含む。
【0037】
[0042]本技術の少なくとも1つの態様は、心停止を治療するための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、食道冷却を介して全身性低体温を誘発するステップを含む。上記方法はさらに、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含むことができる。
【0038】
[0043]本技術の少なくとも1つの態様は、手術温度管理のための1つまたは複数の方法を提供する。上記方法は、食道冷却を介して患者の中核体温を制御するステップを含む。上記方法はさらに、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を含む伝熱装置を患者の食道に挿入するステップと、流体路に沿って伝熱媒体の流れを開始するステップと、患者の中核体温を制御するために充分な時間にわたり流体路に沿って伝熱媒体を循環させるステップとを含むことができる。
【0039】
[0044]本技術の少なくとも1つの態様は、患者の身体の少なくとも1つの部分を冷却または加温するための1つまたは複数の装置を提供する。上記装置は、近位端、遠位端、および、近位端および遠位端を伸長する少なくとも1つの可撓管を備える伝熱装置を含む。近位端は、伝熱媒体入力口、および伝熱媒体出力口を含む。遠位端は、患者の開口部に挿入されるように構成される。可撓管は、流入内腔および流出内腔を画成し、これらの内腔は、伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成されうる。上記装置はさらに、入力口に接続された供給ラインと、出力口に接続された戻りラインとを備える。
【0040】
[0045]上記装置は、例えば、虚血状態による傷害、虚血−再灌流傷害、神経損傷、心外傷を治療または予防するために使用されうる。上記装置は、心筋梗塞、卒中、外傷性脳損傷、またはARDSを経験したかまたは経験している患者を治療するために使用されうる。そのような状態または疾患を治療または防止する方法は、伝熱装置の遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、遠位端を患者の食道内に進入させるステップと、流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って冷却媒体を循環させるステップとを含む。患者は、少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持されうる。上記方法はさらに、患者の少なくとも1つの体温などの生理学的パラメータを監視するステップを含むことができる。上記方法はさらに、患者の体温を約34℃未満に維持するステップを含むことができる。
【0041】
[0046]上記装置は、例えば、外科的処置において患者の中核体温を制御するために使用されうる。患者の中核体温を制御する方法は、伝熱装置の遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、遠位端を患者の食道内に進入させるステップと、流体路に沿って伝熱媒体の流れを開始するステップと、患者の制御中核体温を誘発するために充分な時間にわたり流体路に沿って伝熱媒体を循環させるステップとを含む。患者の中核体温は、例えば、少なくとも約2時間にわたり制御されうる。上記方法はさらに、患者の少なくとも1つの体温などの生理学的パラメータを監視するステップを含むことができる。上記方法はさらに、患者の体温を、例えば、約34℃未満、約34℃と約37℃の間、または約37℃に維持するステップを含むことができる。
【0042】
[0047]本技術の少なくとも1つの態様は、(a)伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成された複数の内腔と、(b)患者の食道上皮に接触するように構成された伝熱領域と、(c)入力口および出力口を含む近位端と、(d)患者の食道に挿入されるように構成された遠位端とを備える食道伝熱装置を提供する。伝熱装置はまた、患者の胃に延入するように構成された遠位端を有する中空管を備えることもできる。伝熱装置は、患者の食道上皮のすべてと実質的に接触することができるものであってよい。伝熱装置は、半剛性材料を含むことができる。伝熱装置は、約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却を行う能力を有することができる。伝熱装置は、約350kJ/hから約530kJ/hの速度で、特に約430kJ/hの速度で、質量体を冷却する能力を有することができる。伝熱装置は、少なくとも約100cm2の表面積、特に約140cm2の表面積を有する伝熱領域を含むことができる。
【0043】
[0048]本技術の少なくとも1つの態様は、伝熱装置と、供給ラインと、戻りラインとを備える、患者の身体の少なくとも1つの部分を冷却または加温するためのシステムを提供し、伝熱装置は、近位端、遠位端、および、近位端と遠位端の間に延在する少なくとも1つの半剛性管を備える。伝熱装置の近位端は、伝熱媒体入力口、および伝熱媒体出力口を含む。伝熱装置の遠位端は、食道内腔など患者の開口部に挿入されるように構成される。半剛性管は、流入内腔および流出内腔を画成し、これらの内腔は、伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成される。供給ラインは、入力口に接続され、戻りラインは、出力口に接続される。伝熱装置はまた、患者の胃に延入するように構成された遠位端を有する中空管を備えることもできる。伝熱装置は、患者の食道上皮のすべてと実質的に接触する能力を有することができる。伝熱装置は、半剛性材料を含むことができる。伝熱装置は、約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却する能力を有することができる。伝熱装置は、約350kJ/hから約530kJ/hの速度で、特に約430kJ/hの速度で、質量体を冷却する能力を有することができる。伝熱装置は、少なくとも約100cm2の表面積、特に約140cm2の表面積を有する伝熱領域を含むことができる。
【0044】
[0049]本技術の少なくとも1つの態様は、被術者の中核体温を制御するためのシステムを提供し、このシステムは、被術者の食道内に挿入可能な伝熱管と、伝熱流体を含む外部熱交換器と、伝熱管内の回路を介して伝熱流体を流すためのポンプと、外部熱交換器と接触する伝熱要素と、パラメータを検出し、パラメータを表す信号を生成するためのセンサとを備え、信号は、(i)回路内の流動伝熱流体、または(ii)伝熱流体の温度を制御するために、マイクロプロセッサに送信される。上記管は、被術者の食道の上皮層に接触するように構成される。センサは、伝熱管より遠位に配置された温度センサとすることができ、被術者の中核体温を表す信号を生成するように構成されうる。マイクロプロセッサは、目標温度の入力を受け取り、被術者が目標温度に接近する速度を制御するために、温度センサからの信号に対しPID応答により応答することができる。センサは、気泡検出器とすることができ、回路内の空気の存在を表す信号を生成するように構成されうる。伝熱装置はまた、患者の胃に延入するように構成された遠位端を有する中空管を備えることができる。伝熱装置は、患者の食道上皮のすべてと実質的に接触する能力を有することができる。伝熱装置は、半剛性材料を含むことができる。伝熱装置は、約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却を行う能力を有することができる。伝熱装置は、約350kJ/hから約530kJ/hの速度で、特に約430kJ/hの速度で、質量体を冷却する能力を有することができる。伝熱装置は、少なくとも約100cm2の表面積、特に約140cm2の表面積を有する伝熱領域を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】[0050]本技術の例示的実施形態による伝熱システムの概略図である。
【図2】[0051]本技術の例示的実施形態による伝熱装置を示す図である。
【図3】[0052]図3Aは、本技術の例示的実施形態による伝熱装置の概略図である。図3Bは、本技術の例示的実施形態による伝熱装置の上面図である。図3Cは、本技術の例示的実施形態による伝熱装置の断面図である。
【図4】[0053]本技術の例示的実施形態による伝熱装置の近位端の概略図である。
【図5A】[0054]本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の概略図である。
【図5B】本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の断面図である。
【図5C】本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の断面図である。
【図5D】本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の断面図である。
【図5E】本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の断面図である。
【図5F】本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の断面図である。
【図6】[0055]本技術の例示的実施形態による伝熱装置の遠位端の概略図である。
【図7】[0056]本技術の実施形態による例示的冷却装置により達成された冷却を示すグラフである。
【図8】[0057]Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号で示された冷却の速度と比較された、本技術の伝熱装置により達成された冷却の速度のグラフ比較である。
【図9】[0058]実験の加温および維持段階において伝達された熱の総量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[0059]本技術は、患者の全身を加熱または冷却するための比較的非侵襲的な装置および方法を提供する。本技術はまた、治療的低体温を誘発することによって虚血状態を治療するための装置および方法を提供する。本技術の他の態様は、食道冷却によって治療低体温を誘発するための装置および方法を提供する。本出願は、本技術の伝熱装置および方法が、他の装置および方法、特に、Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号に述べられた装置および方法と比べて予期される以上に速い温度変化速度を達成したことを示す。
【0047】
[0060]本技術は、軽度治療的低体温(目標温度:約32℃〜約34℃)を誘発して正常体温(目標温度:約37℃)を維持することによって、様々な疾患および障害に苦しむ患者を治療するための装置および方法を提供する。特に、軽度治療的低体温は、虚血または虚血に関係する状態に苦しむ患者を治療するために誘発されうる。いかなる特定の理論にも束縛されることなく、虚血−再灌流カスケードに関連したいくつかの分子および生理反応、例えば、グルタミン酸放出、血液脳関門の安定化、酸素ラジカル生成、細胞内シグナル伝導、タンパク質合成、虚血性脱分極、脳代謝の減少、膜安定化、炎症、プロテインキナーゼの活性化、細胞骨格の崩壊、および初期遺伝子発現などは、虚血中および虚血後の温度低下に敏感であると考えられる。特に、軽度治療的低体温は、フリーラジカルのようないくつかの代謝メディエータの形成を最小限にし、虚血−再灌流に関連した炎症反応を抑制しうる。さらに、神経学的転帰に関して、軽度治療的低体温は、脳の炎症性反応を鈍化し、興奮性アミノ酸およびモノアミンのような脳損傷の興奮性メディエータの産出を低下させ、脳代謝率を低下させ、頭蓋内圧を低下しうる。一方、手術中の偶発的な低体温は、血小板機能を低下させ、凝固カスケードの酵素を弱くし、麻酔薬効果を増進し、凝結障害に寄与し、心臓需要を増大させ、手術創感染の発生率を高める可能性がある。
【0048】
[0061]本技術のいくつかの実施形態は、心筋梗塞、卒中、外傷性脳損傷、ARDS、出血性ショック、非外傷性の動脈瘤性SAHを含むクモ膜下出血(「SAH」)、新生児脳症、周産期仮死(低酸素性虚血性脳症)、脊髄損傷、髄膜炎、縊頸、および溺水を経験している個人を治療するために、軽度治療的低体温を誘発するための装置および方法を提供する。いかなる特定の理論にも束縛されることなく、軽度治療的低体温は、神経的損傷または他の上述の状態に関連する障害を予防、軽減、または改善しうると考えられる。本技術の他の実施形態は、代謝性アシドーシス、膵炎、悪性高熱、肝不全、および肝性脳症を経験している個人を治療するために、軽度治療的低体温を誘発するための装置および方法を提供する。本技術の他の実施形態は、一般外科的処置の際の患者体温を制御するための装置および方法を提供する。本明細書では、用語「患者体温を制御すること」は、患者の中核体温を意味し、中核体温を下げること、中核体温を維持すること、中核体温を上げること、低体温を誘発すること、正常体温を維持すること、および、高体温を誘発することを含む。
【0049】
[0062]本技術のいくつかの実施形態は、食道の加温または冷却を介して患者体温を制御することを実現する。例えば、伝熱剤が、患者の食道に配置された伝熱装置を通して循環されうる。いくつかの実施形態では、装置の伝熱部分が、患者の食道に限定される。いくつかの実施形態では、伝熱装置は、患者の食道の上皮表面のすべてと実質的に接触する。伝熱装置は、バルーンまたは部分的に膨張可能な内腔を含むことができる。一方、本発明のいくつかの実施形態では、伝熱装置の伝熱部分が、バルーンまたは部分的に膨張可能な内腔を含まない。
【0050】
[0063]手術中、伝熱剤から食道に熱を伝達され、その結果、食道、ならびに、大動脈、右心房、大静脈、奇静脈を含む近接する器官および構造の温度の上昇をもたらし、最終的には全身の正常体温をもたらすことができ、あるいは、食道から伝熱剤に熱を伝達され、その結果、食道、ならびに、大動脈、右心房、大静脈、奇静脈を含む近接する器官および構造の温度の低下をもたらし、最終的には全身性低体温をもたらすことができる。
【0051】
[0064]本技術のいくつかの実施形態は、食道−胃の熱伝達によって患者体温を制御することを実現する。例えば、その伝熱部分が患者の食道から胃に延長するのに充分な長さを有する伝熱装置を介して、熱交換媒体が循環されうる。いくつかの実施形態では、伝熱装置は、患者の食道の上皮表面のすべてと実質的に接触する。伝熱装置は、バルーンまたは部分的に膨張可能な内腔を含むことができる。一方、本発明のいくつかの実施形態では、伝熱装置の伝熱部分が、バルーンまたは部分的に膨張可能な内腔を含まない。このような食道−胃温度制御装置を利用して患者体温を調節することにより、伝熱用の表面積が拡大され、その結果、より効率的でより迅速な温度管理が得られる。
【0052】
[0065]本技術のいくつかの実施形態では、コカイン誘導心停止、外傷性心停止、および、冠状動脈に起因しない心停止を含む心停止を経験している個人を治療するために、例えば、食道冷却によって、軽度治療的低体温を誘発することを実現する。
【0053】
[0066]本技術のさらに他の実施形態は、患者の膀胱、結腸、直腸、または他の解剖学的構造の冷却または加温によって、患者体温を制御することを実現する。例えば、患者の膀胱、結腸、直腸、または他の解剖学的構造に配置された伝熱装置を介して、熱交換媒体が循環されうる。
【0054】
[0067]本技術のいくつかの実施形態は、患者を加熱または冷却するための伝熱システムを実現する。伝熱システムは、伝熱装置、熱交換器、伝熱媒体、ならびに、伝熱装置と熱交換器の間で伝熱媒体を循環するための管状構造の回路網を含むことができる。他の実施形態では、伝熱システムは、伝熱装置、冷却装置、冷媒、ならびに、伝熱装置と冷却装置の間で冷媒を循環するための管状構造の回路網を含む。さらに他の実施形態では、伝熱システムは、患者を冷却し、続いて再び温め、さらに、患者を所定の維持温度で維持するために使用されうる。
【0055】
[0068]本技術のいくつかの実施形態では、伝熱装置は、遠位端、近位端、および、それらの間に延在する1つまたは複数の管を備える。伝熱装置の近位端は、熱交換器から伝熱媒体を受け取るための入力口と、伝熱媒体が熱交換器に戻ることを可能にする出力口とを含む。およそ伝熱装置の近位端からおよそ伝熱装置の遠位端に伸長する管は、伝熱媒体供給管および伝熱媒体戻り管を含むことができる。伝熱媒体供給管と伝熱媒体戻り管は、例えば、平行または同心状に配置されうる。伝熱媒体供給管および伝熱媒体戻り管の内腔は、流体連通することができ、したがって、伝熱媒体供給管および伝熱媒体戻り管の内腔によって画成される流体路に沿って伝熱媒体が流れることができるようになる。
【0056】
[0069]伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁の厚さは、装置の伝熱抵抗の一因となる。したがって、いくつかの実施形態では、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管は、薄い壁を有することが好ましい。例えば、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁は、約1ミリメートル未満とすることができる。あるいは、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁は、約0.01ミリメートル未満とすることができる。いくつかの実施形態では、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁は、約0.008ミリメートル未満とすることができる。当業者には認識されるように、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁の厚さは、例えば、約0.001ミリメートル、約0.01ミリメートル、または約0.1ミリメートル単位で修正されうる。
【0057】
[0070]本技術の伝熱装置の製造は、比較的安価である。例えば、食道伝熱装置は、生物医学グレードの押出シリコンゴムなどのエラストマ、および接着剤を使用して作製されうる。市販のエラストマおよび接着剤としては、例えば、Dow Corning Q7 4765シリコン、およびNusil Med2−4213がある。このような材料の低コストおよび使いやすさが、本技術の食道伝熱装置の広範な採用につながることが期待される。
【0058】
[0071]いくつかの実施形態では、例えば供給管を備える、伝熱装置は、例えば、エチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、およびフッ化エチレンプロピレン(FEP)を含む半硬質プラスチックなどの半剛性材料、あるいは、シリコンなどの半剛性エラストマを含むことができる。半剛性材料で構成された供給管を含む伝熱装置は、例えば、可撓性のバルーン型装置よりも、患者の食道内に配置することが容易である。特に、バルーンのような可撓性材料を含む伝熱装置は、伝熱装置を患者の食道内に誘導するために、カテーテル、ガイドワイヤ、またはスリーブのような送達装置を必要とする。さらに、バルーンのような可撓性の膨張可能な材料は、破裂、分割、または穿刺のような障害に弱い。伝熱装置の作製に半剛体材料を使用すると、バルーン型装置に関連する故障点が減少する。
【0059】
[0072]いくつかの実施形態では、剛性スリーブが、伝熱装置を患者内に配置する際に案内するために利用されうる。剛性スリーブは、スリーブがほぼ半円を横断面に含むように部分的切抜きを有することができる。スリーブは、伝熱装置に対して近位側に摺動することによって除去されうる。このようなスリーブは、ガイドワイヤの体腔内への紛失やガイドワイヤによる損傷といったガイドワイヤの使用による合併症の発生率が低下することを含めて、中央に配置されたガイドワイヤに関して、いくつかの利点を有する。
【0060】
[0073]本技術の食道伝熱装置は、持ち運びでき、比較的使用が容易であり、また、看護師、資格のある第一対応者、パラメディック、救急救命士、あるいは他の病院前または病院内医療提供者を含む単独の医療提供者によって、患者の食道内に挿入されうる。本技術の食道伝熱装置は、複数の人々および/または高度な医療の訓練を受けた人物を必要とする装置に対して有利な点を有する。さらに、手術環境において、例えば、本技術の食道伝熱装置は、食道伝熱装置を挿入、利用、かつ/または監視するために必要な人員および注意がより少なくて済むという点で、他の温度管理療法に対して有利な点を有する。
【0061】
[0074]例えば、バルーン型装置のユーザは、バルーンの膨張の過剰または不足を防止しなければならない。過膨張は、圧迫壊死を含む望ましくない結果をもたらすおそれがある。膨張不足は、患者へ/から熱を伝達する装置の能力を低下させるおそれがある。また、バルーン型伝熱装置の使用は、膨張圧を監視するために圧力監視装置の使用を必要とすることがある。圧力監視装置と併せて使用したときでも、バルーンの適切な膨張を達成することができない場合がある。
【0062】
[0075]伝熱装置は、例えば、咽頭−食道伝熱装置、食道伝熱装置、食道−胃伝熱装置、または咽頭−食道−胃伝熱装置であってよい。例えば、食道伝熱装置は、約20センチメートルの伝熱領域を含むことができる。また、食道−胃伝熱装置は、約40センチメートルの伝熱領域を含むことができる。さらに他の代替形態では、咽頭−食道−胃伝熱装置は、約45センチメートルから約50センチメートルの伝熱領域を含むことができる。本技術の伝熱装置は、約22、約24、約26、約28、約30、約32、約34、約36、約38、約40、約42、約44、約46、約48、約50、約52、約54、約56、約58、約60、約62、約64、約66、約68、または約70センチメートルの伝熱領域を含むことができる。
【0063】
[0076]本技術の伝熱装置は、例えば、約1.0から約2.0センチメートルの直径を持つ伝熱領域を有することができる。伝熱領域の直径は、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、または約1.9センチメートルとしてもよい。いくつかの実施形態では、本技術の伝熱装置の伝熱領域は、約32cmの長さと約1.4センチメートルの直径を有し、約140cm2の表面積となる。
【0064】
[0077]装置の伝熱領域の長さおよび/または円周の増大、したがって、伝熱領域の表面積の拡大は、患者が冷却または加熱(もしくは再加温)される速度および効率を向上する。いくつかの実施形態では、伝熱領域は、約96.774cm2(約15in2)、約129.032cm2(約20in2)、約161.29cm2(約25in2)、193.548cm2(30in2)、約225.806cm2(約35in2)、約258.064cm2(約40in2)、約290.322cm2(約45in2)、約50cm2、約60cm2、約70cm2、約80cm2、約90cm2、約100cm2、約110cm2、約120cm2、約130cm2、約140cm2、約150cm2、約160cm2、約170cm2、約180cm2、約190cm2、約200cm2、約210cm2、約220cm2、約230cm2、約240cm2、約250cm2、約260cm2、約270cm2、約280cm2、約290cm2、約300cm2、約310cm2、約320cm2、約330cm2、約340cm2、または約350cm2とすることができる。いくつかの実施形態では、伝熱領域は、患者の食道の上皮表面のすべてと実質的に接触することができる。
【0065】
[0078]伝熱装置は、患者の医療提供者に対して胃へのアクセスを可能にするように適合されうる。伝熱装置は、例えば、胃管または胃プローブを組み込むことができる。胃管または胃プローブは、伝熱媒体供給管および伝熱媒体戻り管と平行することができる。あるいは、胃管、胃プローブ、またはその両方は、伝熱媒体供給管または伝熱媒体戻り管の少なくとも一方と同心配置されてもよい。胃プローブは、例えば、温度プローブとすることができる。
【0066】
[0079]本技術の他の実施形態は、軽度治療的低体温を誘発するための複数内腔の伝熱装置を提供する。伝熱装置は、冷媒の循環の流体路を提供する1つまたは複数の内腔を備えることができる。例えば、伝熱装置は、冷媒供給管および冷媒戻り管を備えることができる。冷媒供給管および冷媒戻り管の内腔は、互いに流体連通することができ、それにより、冷媒の流れの流体路を画成する。冷媒供給管と冷媒戻り管は、例えば、平行または同心状に配置されうる。
【0067】
[0080]本技術の他の実施形態は、患者体温を制御するための複数内腔伝熱装置を提供する。伝熱装置は、伝熱媒体の循環のための流体路を提供する1つまたは複数の内腔を備えることができる。例えば、伝熱装置は、媒体供給管および媒体戻り管を備えることができる。媒体供給管および媒体戻り管の内腔は、互いに流体連通することができ、それにより、媒体の流れの流体路を画成する。媒体供給管と媒体戻り管は、例えば、平行または同心状に配置されうる。
【0068】
[0081]本技術のいくつかの実施形態は、米国特許出願公開第2007/0203552号(Machold)に記載のような制御装置を利用することができる。特に、制御装置は、カスケードPID(cascading proportional integrated differential)制御方式を利用することができる。こうした方式では、以下の2つのセクションに分割することができる制御システムが提供される。すなわち、(a)医療提供者または他のユーザからの目標温度などの入力と、患者体温を示す患者上のセンサからの入力とを受け取り、中間的設定点温度(SP1)と、伝熱流体PID制御(Heat Transfer Fluid PID control)に対する出力信号とを計算する、バルクPID制御(Bulk PID control)セクション、ならびに、(b)バルクPID制御セクションと伝熱流体の温度を示すセンサとから入力を受け取り、例えば、熱交換器への電力入力を変動させることによって、熱交換器の温度を制御する信号を生成する、伝熱流体PID制御である。
【0069】
[0082]伝熱流体は、熱交換器において循環し、したがって、伝熱流体PIDは、伝熱流体の温度を基本的に制御する。このようにして、この制御方式は、患者上に配置されたセンサからの入力と制御装置に組み込まれたロジックとに基づいて、指定された目標を自動的に達成することができる。さらに、この方式は、ユニットが、患者体温を最後の数十分の1度まで非常に少しずつ自動的に変化させることができるようにして、目標温度を非常に穏やかに達成し、行き過ぎや、潜在的に損傷を生じる熱交換器への電力の著しい揺れを回避する。目標温度が達成されると、システムは、目標温度に患者を維持するのに必要な速度で精密に熱を追加または除去するように自動的な動作を継続する。
【0070】
[0083]一般に、制御装置は、ポンプ出力または熱交換器へのパワー入力などの制御変量を含むことができる。検出ユニットまたはセンサは、患者体温またはライン内の空気の存在のようなパラメータを検出し、制御変数に関係するフィードバック信号を出力するためのフィードバック装置として機能することができる。制御ユニットは、フィードバック信号と所定の目標値の間の比較に応じて制御変量が調節されるPID動作を実行する。
【0071】
[0084]例えば、フィードバック信号Tは、患者体温を表し、所定の目標値TTargは、医療専門家によって設定された目標温度を表すことができる。フィードバック信号Tが、目標値TTargよりも大きいとき、患者体温は高すぎることを意味する。したがって、制御装置は、熱交換媒体の温度および/または流量を変更するために、例えば、ポンプ出力または熱交換器へのパワー入力を増大または減少させる。フィードバック信号Tが、目標値TTargよりも小さいとき、患者体温は低すぎることを意味する。したがって、制御装置は、熱交換媒体の温度および/または流量を変更するために、例えば、ポンプ出力または熱交換器へのパワー入力を増大または減少させる。
【0072】
[0085]本技術のいくつかの実施形態は、他の装置および方法に関連する予期される以上に優れた温度変化速度を実現する。本方法および装置は、平均的な成人の人間と同様の大きさの大きな動物モデルで、約0.5℃/hから約2.2℃/hの冷却速度を実現することができる。本方法および装置は、約250kJ/hから約750kJ/hの総熱除去能力を実施することができる。例えば、本方法および装置は、平均的な成人の人間と同様の大きさの大きな動物モデルで、約1.2℃/hから約1.8℃/hの冷却速度を実現することができ、それにより、約350kJ/hから約530kJ/hの総熱除去能力を実施することができる。本技術の方法および装置は、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、および約1.7℃/hの冷却速度を実現することができる。本技術の方法および装置は、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、約500、約510、および約520kJ/hの総熱除去能力を実施することができる。
【0073】
[0086]いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、本技術の装置および方法は、他の装置よりも単位時間当たりに多くの熱を伝達すると考えられる。例として、本技術の伝熱装置は、例えば、患者の食道の実質的に全部の長さおよび/または円周に及ぶ伝熱領域を含み、伝熱装置の伝熱領域と食道上皮および食道を取り囲む脈管構造を含む患者の解剖学的組織との間の拡大された接触面を提供する。さらに、本技術の伝熱装置は、胃の換気によって胃圧を低下することを可能にし、それにより、食道粘膜との接触が途切れる食道粘膜の膨張および拡張の可能性を低くし、さらに、食道粘膜を介した熱伝達を増進する。さらに、本技術の伝熱装置を作製するための材料は、優れた伝熱特性を有する材料を含む。本技術の伝熱装置は、より薄い壁厚で製造されることが可能であり、それにより、装置全体の伝熱抵抗を減らし、患者からの熱除去または患者への熱付加の有効性を高めることができる。
【0074】
[0087]ここで、本技術を添付の図面を参照して説明するが、それによって本技術の範囲は限定されるものではない。本技術の範囲は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されないことは理解されよう。本技術は、具体的な説明と異なるように実施されてもよいが、そうであっても特許請求の範囲に含まれうる。
【0075】
[0088]図1は、本技術の一実施形態による伝熱(heat transfer)システム100の概略図である。伝熱システム100は、伝熱装置102、熱交換器104、伝熱媒体106、および、伝熱装置102と熱交換器104の間で伝熱媒体106を循環させるための管状構造の回路網108を備える。
【0076】
[0089]熱交換器104は、伝熱媒体106を加熱または冷却するように構成される。熱交換器104は、従来設計された様々な熱交換器104のいずれとしてもよい。例えば、熱交換器104は、New Brunswick Scientificによって製造されたRF−25 Recirculating Chillerのような標準的な冷却装置であってよい。伝熱媒体106は、例えば、亜酸化窒素、フレオン、二酸化炭素、または窒素などの気体とすることができる。あるいは、伝熱媒体106は、例えば、水、生理食塩水、プロピレングリコール、エチレングリコール、またはそれらの混合物などの液体とすることもできる。他の実施形態では、伝熱媒体106は、例えば、氷と塩の混合などのスラリーとすることができる。さらに他の実施形態では、伝熱媒体106は、例えば、冷媒ゲルなどのゲルとすることができる。あるいは、伝熱媒体106は、例えば、氷または熱伝導金属などの固体とすることができる。他の実施形態では、伝熱媒体106は、例えば、液体と粉末の混合によって形成されうる。このように、上述の媒体の組合せおよび/または混合が、本技術による伝熱装置106を実現するために利用されうることは理解されよう。
【0077】
[0090]伝熱媒体106を循環させるための管状構造の回路網108は、外部供給管110および外部戻り管112を備えることができる。外部供給管110は、外部供給内腔114を画成して、熱交換器104から伝熱装置102への伝熱媒体106の流れの流体路を提供する。外部戻り管112は、外部戻り内腔116を画成して、伝熱装置102から熱交換器104への伝熱媒体106の流れの流体路を提供する。ポンプ118は、管状構造の回路網108を通して伝熱媒体106を循環させるために利用することができ、媒体の流量、したがって装置の伝熱能力は、ポンプ流量を調節することによって調整可能である。
【0078】
[0091]伝熱装置102は、哺乳類の患者の解剖学的構造内に配置されるように適合される。伝熱装置102は、近位端および遠位端を有する。伝熱装置102の遠位端は、身体開口部に挿入されるように構成されうる。例えば、伝熱装置102の遠位端は、患者の鼻孔、口、肛門、または尿道に挿入されるように構成されうる。適切に挿入されると、伝熱装置102の遠位端は、食道、直腸、結腸、膀胱、または他の解剖学的構造に最終的に配置されうる。伝熱装置102の近位端は、入力口120および出力口122を含む。入力口120および出力口122は、伝熱媒体106を循環させるための管状構造の回路網108に結合される。例えば、入力口120は、外部供給管110に結合されることが可能であり、出力口122は、外部戻り管112に結合されうる。したがって、いくつの実施形態では、熱交換器104は、管状構造の回路網108を介して伝熱装置102と流体連通することができる。
【0079】
[0092]手術中、伝熱装置102は、食道などの解剖学的構造内に配置される。熱交換器104は、外部供給管110を介して伝熱装置102に供給される伝熱媒体106を、加熱または冷却するために使用される。伝熱媒体106は、外部供給管110を通って流れ、入力口120を介して伝熱装置102に入る。伝熱媒体106は、伝熱装置102内を循環し、出力口122を介して伝熱装置102から出て、外部戻り管112を通って熱交換器104に戻る。伝熱媒体106の温度の上昇または低下が、患者の体温を変化させる。
【0080】
[0093]伝熱システム100はさらに、温度、圧力、または電磁気的変動などの生理学的パラメータを測定する装置を含むことができる。例えば、伝熱システム100は、周囲温度、患者体温、または伝熱媒体106の温度を測定するための1つまたは複数の温度計124を含むことができ、各温度計124は、1つまたは複数の温度プローブ126を有する。温度計は、別個の装置としても、伝熱システム100と一体化してもよい。
【0081】
[0094]図2は、本技術の一実施形態による伝熱装置200を示す。この実施形態をさらに明瞭に示すために、熱交換器は、冷却装置(図示せず)と呼び、伝熱媒体は、冷媒と呼ぶことにする。しかし、任意の適切な熱交換器および任意の適切な伝熱媒体が、図2に示された伝熱装置とともに使用されうることは理解されよう。
【0082】
[0095]伝熱装置200は、遠位端202、近位端204、および、それらの間に延在するある長さの可撓管206を備える。近位端202は、冷却装置から冷媒を受け取るための入力口208と、冷媒が冷却装置に戻ることを可能にする出力口210とを含む。
【0083】
[0096]入力口208は、標準的な配管用T字継手212を備える。代わりに、Y字継手のような2つ以上の開口端を有する任意の継手が使用されてもよい。継手は、例えば、銅または鉄のような金属、鋼または真鍮のような金属合金、あるいは、ポリ塩化ビニル(「PVC」)またはポリエチレン(「PE」)のようなプラスチックを含む、任意の適切な材料で構成されうる。真鍮プラグ214は、T字継手212の近位開口端に取り付けられる。代わりに、金属キャップまたはプラスチックキャップのような標準的キャップが、継手の近位開口端に取り付けられてもよい。プラグ214は、配管クリアランスを可能にするために開口を備える。プラグ214は、例えば、室温加硫(RTV)シリコン・シーラント(Room−Temperature Vulcanization (“RTV”) Silicone Sealant)のような化学シーラント216を用いて継手に取り付けられる。他の実施形態では、入力口208は、例えば、押し出しなどによって、取付け型の端部キャップの必要性を除去するような態様で製造されうる。
【0084】
[0097]出力口210は、標準的な配管用T字継手212を備える。代わりに、Y字継手のような2つ以上の開口端を有する任意の継手が使用されてもよい。継手は、例えば、銅または鉄のような金属、鋼または真鍮のような金属合金、あるいは、PVCまたはPEのようなプラスチックを含む、任意の適切な材料で構成されうる。真鍮プラグ214は、T字継手212の近位開口端および遠位開口端に取り付けられる。代わりに、金属、金属合金、またはプラスチックキャップのような標準的キャップが、継手の開口端に取り付けられてもよい。各プラグ214は、配管クリアランスを可能にするために開口を備えることができる。プラグ214は、例えば、RTVシリコン・シーラントのような化学シーラント216によって継手に取り付けられる。他の実施形態では、出力口210は、例えば、押し出しなどによって、取付け型の端部キャップの必要性を除去するような態様で製造されうる。
【0085】
[0098]伝熱装置200の近位端204と遠位端202の間に延在する管部206が、冷媒供給管218である。冷媒供給管218は、透明なビニルで構成されうる。代わりに、冷媒供給管218は、例えば、可撓性のある医療グレードの透明なPVCなど他の適切な材料で構成されてもよい。冷媒供給管218の寸法は、およそ外径(「OD」)1.5875センチメートル(0.625インチ)×内径(「ID」)1.27センチメートル(0.500インチ)とすることができる。冷媒供給管218は、例えば、RTVシリコン・シーラントのような化学シーラント216によって、入力口208に取り付けられる。冷媒供給管218は、伝熱装置200の入力口208から遠位端202に伸長する。冷媒供給管218の長さは、約18センチメートルから約52センチメートルとしてよい。いくつかの実施形態では、冷媒供給管218の長さは、約18センチメートルから約22センチメートルとしてもよい。いくつかの実施形態では、冷媒供給管218の長さは、約30センチメートルから約42センチメートルとしてもよい。いくつかの実施形態では、冷媒供給管218の長さは、約45センチメートルから約52センチメートルとしてもよい。冷媒供給管218の長さは、約32センチメートルとすることができる。
【0086】
[0099]伝熱装置200の遠位端202は、端部キャップ220を備える。端部キャップ220は、例えば、銅または鉄のような金属、鋼または真鍮のような金属合金、あるいは、PVCまたはPEのようなプラスチックを含む、任意の適切な材料で構成されうる。端部キャップ220は、例えば、RTVシリコン・シーラントのような化学シーラント216によって冷媒供給管に取り付けられる。
【0087】
[00100]冷媒戻り管222は、冷媒供給管218内に配置されうる。冷媒戻り管222は、透明なビニルで構成されうる。代わりに、冷媒戻り管222は、例えば、可撓性のある医療グレードの透明なPVCなど他の適切な材料で構成されてもよい。冷媒戻り管222の外径は、冷媒供給管218の内径よりも小さい。例えば、冷媒戻り管222の寸法は、およそ外径(「OD」)1.10998センチメートル(0.437インチ)×内径(「ID」)0.79248センチメートル(0.312インチ)とすることができる。冷媒戻り管222は、例えば、RTVシリコン・シーラントのような化学シーラント216によって、入力口208と出力口210の一方または両方に取り付けられうる。
【0088】
[00101]冷媒戻り管222は、伝熱装置200の遠位端202にある端部キャップ220にまでは伸長しない。したがって、冷媒供給管の内腔224および冷媒戻り管の内腔226は、互いに流体連通することができ、それにより、冷媒の流れの流体路を画成する。
【0089】
[00102]手術中、冷媒は、入力口208に入り、冷媒供給管の内腔224を通って流れ、例えば、患者の食道に配置されうる、伝熱装置200の遠位端202に流れる。次いで、冷媒は、冷却戻り管の内腔226を通って出力口210に流れる。手術中、熱は、例えば食道から、冷媒に伝達され、その結果、食道および近接する器官の温度が低下し、最終的には全身性低体温をもたらす。
【0090】
[00103]いくつかの実施形態では、例えば銅のような、高い伝熱係数を有する添加物が、冷媒供給管218または冷媒戻り管222の製造のために使用される材料に添加されうる。一実施形態では、例えば、管の長さ方向に沿って直線的またはらせん状に延びる、いくつかのワイヤが含まれうる。他の実施形態では、高い伝熱係数を有する粒状物質が、冷媒供給管218または冷媒戻り管222の製造のために使用される材料(例えば、ビニルまたはPVC)内に、押出しの前または最中に混合されうる。
【0091】
[00104]いくつかの実施形態では、冷媒供給管218および/または冷媒戻り管222の壁は、比較的薄くすることができる。例えば、冷媒供給管218の壁は、約1ミリメートル未満とすることができる。代わりに、冷媒供給管218の壁は、約0.01ミリメートル未満とすることができる。いくつかの実施形態では、冷媒供給管218の壁は、約0.008ミリメートル未満とすることができる。当業者には認識されるように、伝熱媒体供給管および/または伝熱媒体戻り管の壁の厚さは、例えば、約0.001ミリメートル、約0.01ミリメートル、または約0.1ミリメートル単位で修正されうる。
【0092】
[00105]任意選択で、伝熱装置200は、診断および/または治療のために、胃へのアクセス、例えば、胃吸引および胃洗浄を可能にするために、胃管228を所望に応じて含むことができる。胃管228は、透明なビニルで構成されうる。代わりに、胃管228は、例えば、可撓性のある医療グレードの透明なPVCなど他の適切な材料で構成されてもよい。胃管228の外径は、冷媒戻り管222の内径よりも小さい。例えば、胃管228の寸法は、およそ外径(「OD」)0.635センチメートル(0.250インチ)×内径(「ID」)0.4318センチメートル(0.170インチ)とすることができる。胃管228は、例えば、RTVシリコン・シーラントのような化学シーラント216によって、入力口208または出力口210のいずれか最も近位の開口に取り付けられうる。胃管228は、患者の医療提供者が、例えば、胃内容物の吸引を可能にする経鼻胃管を挿入することを可能にできる。あるいは、胃管228は、患者の医療提供者が、例えば、胃温度プローブ(図示せず)を挿入することを可能にできる。
【0093】
[00106]任意選択で、抗生または抗菌コーティングが、冷媒供給管218、冷媒戻り管222、または胃管228の部分に塗布されうる。特に、抗生または抗菌コーティングは、管が患者に挿入されると、例えば患者の粘膜内層に接触する可能性がある管の部分に塗布されうる。例えば、トブラマイシン、コリスチン、アムホテリシンB、またはこれらの組合せなどの外用抗生物質が、管に塗布されうる。抗生または抗菌コーティングの取り入れにより、選択的消化管除菌(「SDD」)を可能にすることができ、さらに結果を改善することができる。
【0094】
[00107]他の代替形態では、伝熱装置200の全部または一部が、例えば、押出しによって製造されうる。そのような製造方法を採用することにより、接合部を封止したり端部キャップを付加したりする必要をなくし、漏れが発生する箇所を減少させる。
【0095】
[00108]図3は、本技術の一実施形態による伝熱装置300を示す。伝熱装置300は、近位端302、遠位端306、および、それらの間に延在するある長さの可撓管304を備える。
【0096】
[00109]伝熱装置300の全部または一部は、例えば、押出しによって製造されうる。そのような製造方法を採用することにより、接合部を封止したり端部キャップを付加したりする必要をなくし、漏れが発生する箇所を減少させる。代替または追加として、RTVシリコン・シーラントまたは温度硬化性シーラントのような高速硬化型接着剤が、接合部を封止しかつ/または管を一緒に結合するために使用されうる。伝熱装置300は、生体適合性エラストマおよび/またはプラスチック、ならびに任意選択で接着剤を使用して構成されうる。例えば、Dow Corning Q7 4765シリコンなどの生物医学グレードの押出シリコンゴム、および、Nusil Med2−4213などの接着剤が、伝熱装置300を製造するために使用されうる。
【0097】
[00110]図3Aは、伝熱装置300の外観の概略図を示す。伝熱装置300は、入力口308、伝熱媒体供給管310、伝熱媒体戻り管312、および出力口314を備える。伝熱装置はまた、例えば胃へのアクセスを可能にする、中心管316を備えることができる。中央管316は、伝熱媒体供給管310または伝熱媒体戻り管312と同心配置される(図3B参照)。中心管内腔318は、患者の食道内に伝熱装置が配置されている間、例えば患者の胃へのアクセスを医療専門家に提供する。
【0098】
[00111]図3Cは、図3Bで特定される線3Cに沿った断面図である。
[00112]最も外側の管は、伝熱媒体供給管310である。伝熱媒体供給管310は、およそ入力口308からおよそ伝熱装置300の遠位端306まで伸長する。伝熱媒体供給管310の長さは、約18センチメートルから約75センチメートルとすることができる。ある特定の実施形態では、伝熱媒体供給管310の長さは、約32センチメートルである。伝熱媒体供給管310の外径は、例えば、約1.0センチメートルから約2.0センチメートルとすることができる。ある特定の実施形態では、伝熱媒体供給管310の外径は、約1.4センチメートルである。
【0099】
[00113]例えば、患者の食道内に挿入されると、伝熱媒体供給管310の壁は、患者の食道と直接接触することができる。前述のように、伝熱媒体供給管310の長さおよび/または外周、ひいては伝熱媒体供給管310の表面積は、異なるようにできる。伝熱装置300と患者の食道の間の接触面積の増大は、患者が冷却または加熱(もしくは再加温)される速度および効率を向上する。いくつかの実施形態では、伝熱媒体供給管310の表面積は、約50cm2から約350cm2とすることができる。ある特定の実施形態では、伝熱媒体供給管310の伝熱領域の表面積は、約140cm2とすることができる。いくつかの実施形態では、伝熱媒体供給管310は、患者の食道の上皮表面のすべてと実質的に接触することができる。
【0100】
[00114]伝熱媒体戻り管312は、伝熱媒体供給管310内に配置される。伝熱媒体戻り管312の外径は、伝熱媒体供給管310の内径よりも小さい。伝熱媒体戻り管312は、伝熱媒体供給管310の遠位端までは伸長しない。したがって、伝熱媒体供給管内腔320および伝熱媒体戻り管内腔322は、互いに流体連通して、それにより、伝熱媒体の流れの流体路を画成する。
【0101】
[00115]中心管316は、伝熱媒体戻り管内に配置される。中心管316の外径は、伝熱媒体戻り管312の内径よりも小さい。中心管316は、例えば、胃へのアクセスを可能にする胃管とすることができる。中心管316は、医療専門家が、例えば、胃内容物の吸引を可能にする経鼻胃管を挿入することを可能にできる。あるいは、中心管316は、医療専門家が、例えば、胃温度プローブを挿入することを可能にできる。
【0102】
[00116]伝熱媒体供給管310の遠位端は、端部キャップ324によって封止されうる。端部キャップ324は、例えば、シリコンから構成されうる。端部キャップ324は、中心管316が貫通する穴または他の通路を備えることができる。同様に、伝熱媒体戻り管312の近位端は、端部キャップ326によって封止されうる。端部キャップ326は、例えば、シリコンから構成されうる。端部キャップ326は、中心管316が貫通する穴または他の通路を備えることができる。様々な構成要素と管の間の接合部が、Nusil Med2−4213などのシーラント328によって封止されうる。
【0103】
[00117]図4は、本技術による伝熱装置の近位端のいくつかの眺めを示す。
[00118]伝熱装置は、伝熱供給管402および伝熱戻り管404のような少なくとも2つの同心配置された管を備えて、全体として同軸内腔構成を有する複数内腔の伝熱装置を形成する。伝熱供給管402および伝熱戻り管404のそれぞれの近位端は、端部キャップ(図示せず)によって封止されうる。伝熱装置は、任意選択で、第1の中心管410および/または第2の中心管412を備える。例えば、伝熱装置は、1つまたは複数の胃管を備えることができる。
【0104】
[00119]伝熱供給管内腔406は、伝熱戻り管404の通過を可能にするのに充分な直径を有する。同様に、伝熱戻り管内腔408は、第1の中心管410および/または第2の中心管412の通過を可能にするのに充分な直径を有する。第1の中心管410および第2の中心管412は、例えば、患者の胃へのアクセスを可能にして胃内容物の吸引および/または胃温度プローブの配置を可能にする、胃管とすることができる。伝熱戻り管404の端部キャップ(図示せず)は、中央管410および412が貫通する穴または他の通路を備えることができる。
【0105】
[00120]伝熱供給管402は、入力口414と結合されうる。入力口414は、冷却装置および/または加温装置とのインターフェースのための標準的コネクタを備える外部供給管(図示せず)に結合されうる。伝熱戻り管404は、出力口416に結合されうる。出力口416は、冷却装置および/または加温装置とのインターフェースのための標準的コネクタを備える外部戻り管(図示せず)に結合されうる。
【0106】
[00121]図5は、本技術による伝熱装置の遠位端の概略図および断面図を示す。
[00122]図5Aに示される伝熱装置は、伝熱供給管502および伝熱戻り管504のような少なくとも2つの同心配置された管を備えて、全体として同軸内腔構成を有する複数内腔の伝熱装置を形成する。伝熱供給管502の遠位端は、伝熱戻り管504の遠位端から突出して、伝熱供給管502および伝熱戻り管504が伝熱流路を形成するようにする。伝熱供給管502の遠位端は、患者の食道への伝熱装置の挿入および配置を容易にするために、丸くされるかまたは他の形状にされうる。伝熱装置はまた、第1の中心管506および/または第2の中心管508を備えることができる。第1の中心管506および第2の中心管508は、例えば、患者の胃へのアクセスを可能にして胃内容物の吸引および/または胃温度プローブの配置を可能にする、胃管とすることができる。
【0107】
[00123]図5Bは、図5Aで特定された線5Bに沿った断面図である。伝熱供給管502と伝熱戻り管504は、同心配置される。伝熱戻り管504は、伝熱供給管内腔510内に配置される。第1の中心管506および第2の中心管508は、伝熱戻り管内腔512内に配置される。医療専門家は、例えば、第1の中心管内腔514および/または第2の中心管内腔516を通して胃温度プローブ(図示せず)を挿入することができる。
【0108】
[00124]図5C〜5Fは、本技術の一実施形態による複数内腔の伝熱装置のいくつかの代替構成の断面図を示す。
[00125]図5Cに示されるように、伝熱供給管内腔510と伝熱戻り管内腔512は、互いに平行に配置されうる。図5Dに示すように、第1の中心管内腔514および第2の中心管内腔516もまた、伝熱供給管内腔510および伝熱戻り管内腔512と平行に配置されうる。あるいは、図5Eおよび5Fに示すように、第1の中心管内腔514および/または第2の中心管内腔516は、伝熱供給管内腔510と伝熱戻り管内腔512の間に配置されうる。任意選択で、胃管または胃プローブが、第1の中心管内腔514および/または第2の中心管内腔516を介して患者の胃内に挿入されうる。
【0109】
[00126]図2〜5に示され、また以上に説明された食道伝熱装置は、単に例に過ぎず、本技術を限定するものではない。本技術の伝熱装置は、患者の鼻孔、口、肛門、または尿道に挿入されるように構成されうる。適切に挿入されると、装置の伝熱部分は、食道、胃、直腸、結腸、膀胱、または他の解剖学的構造に最終的に配置されうる。
【0110】
[00127]図6は、本技術の一実施形態による伝熱装置の遠位端の概略図を示す。
[00128]いくつかの実施形態では、食道伝熱装置は、胃管602を組み込む。胃管602は、管の同心配置の中心管とすることができ、また、胃へのアクセスを実現する全体的に中空の管を含むことができる。例えば、胃内容物の吸引を可能にする管が、胃管602を介して患者の胃に挿入されうる。いくつかの実施形態では、胃管602は、胃内容物を吸入するための管の役割を果たし、別個の経鼻胃管を配置する必要性が除去される。他の例では、胃温度プローブが、胃管602を介して挿入されうる。
【0111】
[00129]胃管602は、外部環境(ここでは患者の胃)から胃管内腔606への小さな管状の連通路または通路の役割をするいくつかの開口604を備えることができる。開口604は、胃管内腔606と(のみ)直接連通することができる。開口604は、伝熱装置の遠位端に配置されて、患者の胃と胃管602の間の追加の連通口を提供することができる。開口604は、胃内容物が患者の胃から出て胃管内腔606を通って流れるための追加の通路を提供し、それにより、半固体の胃内容物による単一内腔の閉塞の可能性を低下させる。
【0112】
[00130]他の実施形態では、食道−胃伝熱装置が、いくつかの中心管を備え、最も中心の管が胃管602の役割をするようにする。そのような配置において、最も外側の管は、例えば、伝熱媒体供給管608とすることができる。伝熱媒体戻り管610は、伝熱媒体供給管608内に配置されうる。同様に、胃管602は、伝熱媒体戻り管610内に配置されうる。
【0113】
[00131]図6に示されるように、伝熱装置は、食道または食道−胃伝熱装置とすることができ、伝熱媒体供給管608、伝熱媒体戻り管610、および胃管602を含む3つの同心配置された管を備えて、全体として同軸内腔構成を有する複数内腔の伝熱装置を形成する。伝熱装置の伝熱部分は、患者の食道に限定されることが可能で、このとき、胃管602が患者の胃に延入する。伝熱装置はまた、胃管602の側面に沿って開口604を備えることができる。胃管602の遠位端は、胃管内腔606へのアクセスを提供するための管の側面に沿ったいくつかの開口を含み、それにより、半固体の胃内容物による単一内腔の閉塞の可能性を低下させる。このような開口604の追加により、胃内物の除去の改善および促進することができ、それにより、胃粘膜と伝熱装置の間の接触性を改善することができる。こうした接触性の改良により、伝熱装置と胃粘膜の間の熱伝達を向上することができる。
【0114】
[00132]図6に示される開口の形状は、楕円形である。しかし、これらの開口は、例えば、胃から胃管内腔606への胃内容物の流れを可能にする円形、矩形、または他の形状とすることができる。
【0115】
[00133]いくつかの実施形態では、「患者」という用語は、病状、疾患、または障害、あるいはそれらに関連した症状に関して治療を必要とする哺乳動物を指す。用語「患者」は、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、マウス、およびヒトを含む。用語「患者」は、あらゆる点で正常な個人を排除するものではない。
【0116】
[00134]本明細書では、用語「治療」は、疾患、障害、または病状の臨床症状および/または非臨床症状について、抑止をすること、予防をすること、その進行を実質的に抑制、減速、または反転すること、その臨床症状および/または非臨床症状を実質的に改善すること、あるいは、その出現を実質的に予防または遅延することを意味する。
【0117】
[00135]以上の段落において、単数形の使用は、特段の指示がない限り、複数形を含むことができる。本明細書では、単語「ある」および「その」(“a,” “an,” and “the”)は、他に指定がない限り、「1つまたは複数の」を意味する。また、代替形態の列挙を参照して本技術の諸態様が説明されるが、本技術は、代替形態の列挙の任意の単一要素または部分群、および、それらの1つまたは複数の任意の組合せを含む。
【0118】
[00136]公開特許出願を含むすべての特許および刊行物の開示は、各特許および刊行物が具体的に個別に参照により組み込まれるのと同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
[00137]本技術の範囲は、上述の特定の実施形態に限定されないことは理解されよう。本技術は、具体的な説明と異なるように実施されてもよいが、そうであっても特許請求の範囲に含まれうる。
【0120】
[00138]同様に、以下の実施例は、本技術をより完全に説明するために提示される。しかし、それらは、本明細書に開示の技術の広範な範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0121】
[00139]モデル系の冷却
[00140]本技術の例示的実施形態の使用によって達成可能な温度低下のおよその速度を定量化するために実験が実施された。目標の温度低下は、4℃である。図7に示されるように、データが収集され通常のX−Yグラフにプロットされた。
【0122】
[00141]この実験の機器の構成は、図1に示される。機器の各要素の簡単な説明を以下に述べる。
1. 伝熱装置102は、本技術による伝熱装置の例示的実施形態であった。
2. 表1に示される初期温度の88kgの水を含む96cm(l)×36cm(w)×36cm(h)の絶縁容器が、冷却される質量体を表す。
3. 110Vの電気ポンプのLittle Giant Model PES−70(4.4リットル/分フリーフロー(free−flow))が、絶縁容器(2)内の温水を循環してこの容器内の一様な水温を維持するために使用された。
4. 熱交換器104が、40kgの氷水を含む51cm(l)×28cm(w)×34cm(d)の絶縁容器を含むものであった。
5. ポンプ118は、110V電気ポンプのLittle Giant Model PES−70(設置時に250ミリリットル/分)を含み、冷媒が熱交換器104から外部供給管110を通り、次いで伝熱装置102を通り、次いで外部戻り管112を通って熱交換器104に戻る循環を提供するために使用された。
6. 外部供給管110は、熱交換器104から伝熱装置102に冷媒を輸送するための外径1.5875センチメートル(5/8インチ)×内径1.27センチメートル(1/2インチ)×長さ106.68センチメートル(42インチ)のWattsクリアビニル#SVKI10を含むものであった。
7. 外部戻り管112は、伝熱装置102から熱交換器104に冷媒を輸送するための外径1.5875センチメートル(5/8インチ)×内径1.27センチメートル(1/2インチ)×長さ106.68センチメートル(42インチ)のWattsクリアビニル#SVKI10を含むものであった。
8. 2つの遠隔プローブ126を備えるデジタル防水温度計のような温度計124として、Taylor Model 1441が、以下のものを監視するために使用された。
【0123】
a. 外部戻り管112から熱交換器104内への放出の近傍の(図1にT3として示される)冷媒温度
b. テストセル内の(図1にT4として示される)周囲温度
9. 2つの遠隔プローブ126を備えるデジタル防水温度計のような温度計124として、Taylor Model 1441が、以下のものを監視するために使用された。
【0124】
a. 循環ポンプ(3)の反対端における絶縁容器(2)内の(図1にT1として示される)温水温度
b. 循環ポンプ(3)の最近端における絶縁容器(2)内の(図1にT2として示される)温水温度
[00142]この実験の各反復(iteration)で冷却される物体は、94×36×26cmの大きさの絶縁容器(2)内に保持された88kgの質量の水であった。この質量は、典型的な成人男性の体重を表すものとして選択された。一体の水の94×36cmの上面を通して、自由対流による外気の熱伝達があった。この水の塊の手順反復ごとの初期温度が、表1に示される。
【0125】
[00143]この実験のそれぞれの反復ごとの冷媒は、絶縁容器内に保持された追加の10kgの氷を含む30kgの質量の水であった。電源付きの冷却器の必要なしに実験の各反復期間にわたって冷媒の温度をほぼ一定に維持するために、氷が使用された。氷は、伝導冷却モードが使用可能にされた各反復の開始時に補充された。
【0126】
[00144]この実験では、考慮すべき温度低下の2つのモードがある。すなわち、外気に対する対流冷却(convective cooling)と、伝熱装置を介した伝導冷却(conductive cooling)である。温度低下全体に対する各モードの寄与を定量化するために、対照ケースは、伝導冷却モードを無効にした(伝熱装置を介して冷媒が循環しない)状態で実施された。そして、追加で2回の手順が伝導冷却モードを有効にして実施された(伝熱装置が温水内に沈められ、それを介して冷媒が循環された)。伝導冷却が有効な状態とそうでない状態の温度低下速度の差は、伝熱装置を介した伝導冷却による温度低下速度になる。
【0127】
[00145]実験の各反復のデータの要約が、以下の表1に示される。
[00146]
【0128】
【表1】
【0129】
[00147]表1において、「Tinit,avg」は、冷却される物体の平均初期温度、すなわち、2つの測定値の平均であり、「Tamb,avg」は、反復期間の平均周囲温度であり、「Tcoolant,avg」は、反復期間の平均冷媒温度であり、「4℃降下時間」は、冷却される物体の平均温度の4℃低下を達成するのに必要な時間である。
【0130】
[00148]このように、この実施例で採用された例示的伝熱装置を介した伝導冷却は、4℃の温度低下を達成する時間を有意に低下させる。
【実施例2】
【0131】
[00149]手術温度管理
[00150]本技術による伝熱装置が、以下に説明される動物実験で使用された。伝熱装置の伝熱領域は、(鼻部の長さに対応するために)約70センチメートルの長さであり、表面積が約305cm2で、約1.4センチメートルの直径を有する。
【0132】
[00151]人間の患者の寸法および平均的質量を最も良く表すものとして、70kgの質量の大きなブタが選ばれた。このブタは、国際実験動物管理公認協会(Association for the Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care, International)(AAALAC)に認定された施設に、米国農務省動物福祉法(USDA Animal Welfare Act)(米国連邦規則集9巻1、2、および3部)に指定される一次囲いを伴い、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(National Academy Press、Washington DC、1996年)に記載されるように、単独で収容された。
【0133】
[00152]このブタは、テロゾール/キシラジン(Telozole/Xylazine)の前麻酔薬混合によって麻酔され、当業者に周知の標準的な気管内挿管装置および技術によって達成される気管内挿管の後、イソフルラン2%で吸入経路を介して麻酔を提供された。静脈麻痺によって筋麻痺が得られた。温度は、麻酔および気管内挿管後に配置された直腸熱電対プローブを介して継続的に監視された。
【0134】
[00153]市販の熱水槽循環器(thermal water bath and circulator)(Gaymar Meditherm MTA−5900)が、伝熱装置に温度制御された伝熱媒体を供給するために利用された。使用された具体的な伝熱媒体は、蒸留水であった。熱水槽循環器の仕様は、以下の通りである。
【0135】
[00154]寸法:高さ94cm×幅35cm×奥行き48cm
[00155]重量:54.9kg(空)、64.0kg(満載時)
[00156]材料:アルミニウムシェル、16ゲージ・スチール・シャシ
[00157]流量:毎分1リットル
[00158]パワー:220V、240V、50Hz、6A
[00159]温度:手動:4〜42℃、自動:30〜39℃
[00160]電気コード:4.6m着脱可能電源コード
[00161]伝熱装置は、熱水槽循環器に接続され、次いで、熱水槽循環器の電源が入れられ、ブタを準備する間に平衡化することが可能にされた。
【0136】
[00162]ブタの麻酔、麻痺、および気管内挿管の成功後、中央半剛性スタイレットが、伝熱装置内に配置され、伝熱装置は、生体適合性のある潤滑剤によって潤滑された。
[00163]次いで、伝熱装置は、当業者に周知の標準的食道挿管技術を用いてブタの食道内に挿入された。口腔咽頭の開口から剣状突起の距離の外部測定が、伝熱装置が挿入される深さの指標の役割をする。伝熱装置の胃管腔を通る胃内容物の成功裏の吸引によって、挿入の適切な深さの確認が得られた。
【0137】
[00164]手術室環境で一般的に見られる低体温の状態下で患者を首尾よく加温するための伝熱装置の能力を実証するために、ブタの温度を33.6℃にまで低下させるために充分な時間にわたり、伝熱媒体の供給温度を低い設定点(4℃)に設定することによって、ブタは冷却された。
【0138】
[00165]実験の冷却部分からのデータが表2に示される。表2に見られるように、67.5kgのブタの中核体温の1℃の低下が、約40分で達成され、67.5kgのブタの中核体温の2℃の低下が、約80分で達成され、67.5kgのブタの中核体温の3℃の低下が、約125分で達成され、67.5kgのブタの中核体温の4℃の低下が、約175分で達成された。
【0139】
[00166]
【0140】
【表2】
【0141】
[00167]図8は、Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号で示された冷却の速度と比較された、本技術の伝熱装置により達成された冷却の速度の比較を示す。正確な比較をするために、また、2つの実験の質量の差を適切に説明するために、各ケースで除去された熱の総量が、ジュールの標準単位で計算される。実験動物の比熱容量をモデル化するために水の標準的比熱容量(cp=4.186J/g C)を使用して、各時点で除去された熱が、Q=m(ΔT)cpとして計算される。ここで、mは、実験動物の質量であり、ΔTは、各時点で得られた温度差である。
【0142】
[00168]1時間の時点において、本技術の伝熱装置では、総除去熱量は1時間で439kJ(122ワット)であり、これに対して、Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号に記載の装置で達成されたのは、1時間で260kJ(72ワット)の総除去熱量である。
【0143】
[00169]このブタの冷却実験の結果は、相応に大きい蓄熱容量を有する比較的大きな動物についてさえ、本技術の伝熱装置によって、Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号に記載のような従来の装置よりもかなり大きな伝熱速度が達成可能であることを示す。除去された総熱量およびその結果の達成された冷却は、Dzengらの米国特許出願公開第2004/0210281号に記載のような従来の装置によって達成された伝熱および冷却速度と比較して、本技術の伝熱装置ではかなり上回っていることが、提示されたデータから見て取れる。したがって、本技術の伝熱装置によって達成された冷却速度が他の装置によって達成された冷却速度よりもかなり速いこと、ならびに、本技術の方法および装置は、他の装置よりも単位時間当たり多くの熱を伝達することが、予想外にも驚くべきことに観測される。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、これらの予想外の成果は、例えば、伝熱装置の以下の特徴、すなわち、伝熱装置の伝熱部分と患者の解剖学的組織の間の拡張された接触面と、より薄い壁厚で本技術の伝熱装置を製造することにより達成される装置全体の伝熱抵抗の低減と、本技術の伝熱装置を作製するのに使用される材料の優れた伝熱特性と、胃の換気による胃圧の低下とのうち1つまたは複数に起因されうると考えられる。
【0144】
[00170]冷却に続いて、伝熱媒体の設定点温度が、加温モード(42℃)に切り換えられた。
[00171]手術室の低体温誘発条件をさらにシミュレートするために、ブタは手術室での周囲温度(22℃)にさらされ、吸入麻酔で引き続き麻酔され、震えを防止するために非脱分極性麻痺によって麻痺させられ、維持室温静脈内流体補液の継続的流れが供給された。
【0145】
[00172]実験の加温および維持段階からのデータが、表3に示される。表3のデータは、33.6℃のブタの体温の初期の維持と、それに続く実験期間中の安全で漸進的な体温の上昇の成功を示す。図9は、実験の加温および維持段階において上記に計算されるような伝達された熱の総量を示す。
【0146】
[00173]
【0147】
【表3】
【0148】
[00174]したがって、データは、患者が手術室環境の不利な低体温状態にさらされている間に、本技術の伝熱装置が、体温を維持すること、および上昇させることができることを示す。
特定の実施形態
[00175]本明細書で説明された装置、方法、およびシステムは、番号が付された段落で列挙される以下の実施形態によって例示されうる。
【0149】
1. 全身性低体温を誘発するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0150】
2. 前記伝熱装置は別個の伝熱領域を含み、前記伝熱領域は前記食道に限定される、段落1に記載の方法。
3. 前記媒体を正常体温未満の温度にまで冷却するステップをさらに含む、段落1に記載の方法。
【0151】
4. 前記患者を少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落1に記載の方法。
5. 前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップをさらに含む、段落1に記載の方法。
【0152】
6. 前記少なくとも1つの生理学的パラメータは体温である、段落5に記載の方法。
7. 前記体温を約34℃未満に維持するステップをさらに含む、段落6に記載の方法。
【0153】
8. 前記体温を約32℃から約34℃の間に維持するステップをさらに含む、段落7に記載の方法。
9. (a)伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成された複数の内腔と、
(b)入力口および出力口を含む近位端と、
(c)患者の食道に挿入されるように構成された遠位端とを備える、食道伝熱装置。
【0154】
10. 前記患者の胃に延入するように構成された遠位端を有する中空管をさらに備える、段落9に記載の伝熱装置。
11. 抗菌コーティングをさらに備える、段落9に記載の伝熱装置。
【0155】
12. 膨張可能バルーンをさらに備える、段落9に記載の伝熱装置。
13. 虚血状態によって引き起こされる傷害を治療または予防するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0156】
14. 虚血再灌流傷害を治療または予防するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0157】
15. 神経損傷を治療または予防するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0158】
16. 前記神経損傷は、卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、クモ膜下出血、院外心肺停止、肝性脳症、周産期仮死、低酸素/無酸素性脳症、小児ウィルス性脳症、溺水、無酸素性脳損傷、外傷性頭部損傷、外傷性心停止、新生児低酸素/無酸素性脳症、肝性脳症、細菌性髄膜炎、心不全、術後頻脈、または急性呼吸促迫症候群に関連する、段落15に記載の方法。
【0159】
17. 前記卒中は、虚血性脳卒中である、段落16に記載の方法。
18. 心外傷を治療または予防するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0160】
19. 軽度治療的低体温を誘発するステップを含む、心筋梗塞を治療するための方法。
20. 軽度治療的低体温を誘発するステップを含む、卒中を治療するための方法。
【0161】
21. 軽度治療的低体温を誘発するステップを含む、外傷性脳損傷を治療するための方法。
22. 軽度治療的低体温を誘発するステップを含む、急性呼吸促迫症候群を治療するための方法。
【0162】
23. 前記低体温は全身性低体温である、段落19から22のいずれか1つに記載の方法。
24. 前記低体温は、食道冷却を介して誘発される、段落19から22のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
25. 前記患者を少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落19から22のいずれか1つに記載の方法。
26. 前記患者を少なくとも24時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落25に記載の方法。
【0164】
27. 前記患者を少なくとも72時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落26に記載の方法。
28. 前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップをさらに含む、段落19から22のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
29. 前記少なくとも1つの生理学的パラメータは体温である、段落28に記載の方法。
30. 前記体温を約34℃未満に維持するステップをさらに含む、段落29に記載の方法。
【0166】
31. 前記体温を約32℃から約34℃の間に維持するステップをさらに含む、段落30に記載の方法。
32. 伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとをさらに含む、段落24に記載の方法。
【0167】
33. 食道冷却を介して全身性低体温を誘発するステップを含む、心停止を治療するための方法。
34. 伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとをさらに含む、段落33に記載の方法。
【0168】
35. 患者の身体の少なくとも1つの部分を冷却または加温するための装置であって、
近位端、遠位端、および、それらの間に延在する少なくとも1つの可撓管を備える伝熱装置であって、
前記近位端は、伝熱媒体入力口および伝熱媒体出力口を含み、
前記遠位端は、患者の開口部に挿入されるように構成され、
前記少なくとも1つの可撓管は、流入内腔および流出内腔を画成し、
前記内腔は、伝熱媒体の流れの流体路を提供するように構成される、伝熱装置と、
前記入力口に接続された供給ラインと、
前記出力口に接続された戻りラインとを含む、装置。
【0169】
36. 前記伝熱媒体は冷却媒体である、段落35に記載の装置。
37. 段落36に記載の装置を使用して、虚血状態によって引き起こされる傷害を治療または予防するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0170】
38. 段落36に記載の装置を使用して、虚血再灌流傷害を治療または予防するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0171】
39. 段落36に記載の装置を使用して、神経損傷を治療または予防するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0172】
40. 段落36に記載の装置を使用して、心外傷を治療または予防するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0173】
41. 段落36に記載の装置を使用して、心筋梗塞を治療するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0174】
42. 段落36に記載の装置を使用して、卒中を治療するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0175】
43. 段落36に記載の装置を使用して、外傷性脳損傷を治療するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0176】
44. 段落36に記載の装置を使用して、急性呼吸促迫症候群を治療するための方法であって、
前記伝熱装置の前記遠位端を経鼻的または経口的に挿入するステップと、
前記遠位端を食道内に進入させるステップと、
前記流体路に沿って冷却媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の全身性低体温を誘発するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0177】
45. 前記媒体を正常体温未満の温度にまで冷却するステップをさらに含む、段落37から44のいずれか1つに記載の方法。
46. 前記患者を少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落37から44のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
47. 前記患者を少なくとも24時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落46に記載の方法。
48. 前記患者を少なくとも72時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落47に記載の方法。
【0179】
49. 前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップをさらに含む、段落37から44のいずれか1つに記載の方法。
50. 前記少なくとも1つの生理学的パラメータは体温である、段落49に記載の方法。
【0180】
51. 前記体温を約34℃未満に維持するステップをさらに含む、段落50に記載の方法。
52. 前記体温を約32℃から約34℃の間に維持するステップをさらに含む、段落51に記載の方法。
【0181】
53. 患者の中核体温を制御するための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って伝熱媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の中核体温を制御するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0182】
54. 前記伝熱装置は別個の伝熱領域を含み、前記伝熱領域は前記食道に限定される、段落53に記載の方法。
55. 前記媒体を正常体温未満の温度にまで冷却するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
【0183】
56. 前記媒体を正常体温より高い温度にまで加温するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
57. 前記患者を少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
【0184】
58. 前記患者を少なくとも2時間にわたり正常体温に維持するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
59. 前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
【0185】
60. 前記少なくとも1つの生理学的パラメータは体温である、段落59に記載の方法。
61. 前記体温を約34℃未満に維持するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
【0186】
62. 前記体温を約32℃から約34℃の間に維持するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
63. 前記体温を約37℃に維持するステップをさらに含む、段落53に記載の方法。
【0187】
64. 手術温度管理のための方法であって、
伝熱装置を患者の食道に挿入するステップであって、前記伝熱装置は、流入内腔および流出内腔によって画成される流体路を備えるステップと、
前記流体路に沿って伝熱媒体の流れを開始するステップと、
前記患者の中核体温を管理するために充分な時間にわたり前記流体路に沿って前記媒体を循環させるステップとを含む方法。
【0188】
65. 前記患者を少なくとも2時間にわたり低体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
66. 前記体温を約34℃未満に維持するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
【0189】
67. 前記体温を約32℃から約34℃の間に維持するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
68. 前記患者を少なくとも2時間にわたり正常体温の状態に維持するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
【0190】
69. 前記体温を約37℃に維持するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
70. 前記患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するステップをさらに含む、段落64に記載の方法。
【0191】
71. 前記少なくとも1つの生理学的パラメータは体温である、段落70に記載の方法。
[00176]ここで記載された技術は、それが属する技術分野の当業者が同じ技術を実施できるように、完全、明瞭、簡潔、かつ正確な言葉で説明された。以上は、本技術の好ましい実施形態を説明するものであって、特許請求の範囲に示される本発明の精神または範囲から逸脱することなく改変が可能であることは理解されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)伝熱媒体の流れの流路を提供するように構成された複数の内腔と、
(b)患者の食道上皮に接触するように構成された伝熱領域と、
(c)入力口および出力口を含む近位端と、
(d)患者の食道に挿入されるように構成された遠位端とを備える、食道伝熱装置。
【請求項2】
前記患者の胃内に延びるように構成された遠位端を有する中空管をさらに備える、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項3】
前記伝熱領域は、食道上皮の実質的にすべてと接触することができる、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項4】
前記伝熱領域は、半剛性材料を備える、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項5】
約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却を行うことができる、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項6】
約350kJ/hから約530kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項7】
約430kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項6に記載の伝熱装置。
【請求項8】
少なくとも約100cm2の表面積を有する伝熱領域を含む、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項9】
前記伝熱領域は、約140cm2の表面積を有する、請求項8に記載の伝熱装置。
【請求項10】
患者の身体の少なくとも一部を冷却または加温するためのシステムであって、
近位端、遠位端、および、それらの間に延在する少なくとも1つの半剛性管を備える伝熱装置であって、
前記近位端は、伝熱媒体入力口および伝熱媒体出力口を含み、
前記遠位端は、患者の開口部に挿入されるように構成され、
前記少なくとも1つの半剛性管は、流入内腔および流出内腔を画成し、
前記内腔は、伝熱媒体の流れの流路を提供するように構成される、伝熱装置と、
前記入力口に接続された供給ラインと、
前記出力口に接続された戻りラインとを含む、システム。
【請求項11】
前記開口部は食道内腔である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記伝熱装置は、食道上皮の実質的にすべてと接触することができる伝熱領域を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記患者の胃内に延びるように構成された遠位端を有する中空管をさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記装置が、約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却を行うことができる、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記装置が、約350kJ/hから約530kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記装置が、約430kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記装置が、少なくとも約100cm2の表面積を有する伝熱領域を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記伝熱領域は、約140cm2の表面積を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
被術者の中核体温を制御するためのシステムであって、
前記被術者の食道内に挿入可能な伝熱管であって、前記食道の上皮層に接触するように構成される伝熱管と、
伝熱流体を含む外部熱交換器と、
前記伝熱管内の回路を介して前記伝熱流体を流すためのポンプと、
前記外部熱交換器と接触する伝熱要素と、
パラメータを検出し、前記パラメータを表す信号を生成するためのセンサとを備え、前記信号は、(i)前記回路内の流動伝熱流体、または(ii)前記伝熱流体の温度を制御するように、マイクロプロセッサに送信される、システム。
【請求項20】
前記センサは、前記伝熱管より遠位側に配置された温度センサであり、前記被術者の前記中核体温を表す信号を生成するように構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記マイクロプロセッサは、目標温度の入力を受け取り、前記被術者が前記目標温度に近づく速度を制御するために、前記温度センサからの前記信号に対しPID応答により応答する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記センサは、気泡検出器であり、前記回路内の空気の存在を表す信号を生成するように構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記伝熱管は、食道上皮の実質的にすべてと接触することができる伝熱領域を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記患者の胃内に延びるように構成された遠位端を有する中空管をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記装置が、約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却を行うことができる、請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記装置が、約350kJ/hから約530kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
前記装置が、約430kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
前記装置が、少なくとも約100cm2の表面積を有する伝熱領域を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項29】
前記伝熱領域は、約140cm2の表面積を有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項1】
(a)伝熱媒体の流れの流路を提供するように構成された複数の内腔と、
(b)患者の食道上皮に接触するように構成された伝熱領域と、
(c)入力口および出力口を含む近位端と、
(d)患者の食道に挿入されるように構成された遠位端とを備える、食道伝熱装置。
【請求項2】
前記患者の胃内に延びるように構成された遠位端を有する中空管をさらに備える、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項3】
前記伝熱領域は、食道上皮の実質的にすべてと接触することができる、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項4】
前記伝熱領域は、半剛性材料を備える、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項5】
約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却を行うことができる、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項6】
約350kJ/hから約530kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項7】
約430kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項6に記載の伝熱装置。
【請求項8】
少なくとも約100cm2の表面積を有する伝熱領域を含む、請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項9】
前記伝熱領域は、約140cm2の表面積を有する、請求項8に記載の伝熱装置。
【請求項10】
患者の身体の少なくとも一部を冷却または加温するためのシステムであって、
近位端、遠位端、および、それらの間に延在する少なくとも1つの半剛性管を備える伝熱装置であって、
前記近位端は、伝熱媒体入力口および伝熱媒体出力口を含み、
前記遠位端は、患者の開口部に挿入されるように構成され、
前記少なくとも1つの半剛性管は、流入内腔および流出内腔を画成し、
前記内腔は、伝熱媒体の流れの流路を提供するように構成される、伝熱装置と、
前記入力口に接続された供給ラインと、
前記出力口に接続された戻りラインとを含む、システム。
【請求項11】
前記開口部は食道内腔である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記伝熱装置は、食道上皮の実質的にすべてと接触することができる伝熱領域を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記患者の胃内に延びるように構成された遠位端を有する中空管をさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記装置が、約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却を行うことができる、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記装置が、約350kJ/hから約530kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記装置が、約430kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記装置が、少なくとも約100cm2の表面積を有する伝熱領域を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記伝熱領域は、約140cm2の表面積を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
被術者の中核体温を制御するためのシステムであって、
前記被術者の食道内に挿入可能な伝熱管であって、前記食道の上皮層に接触するように構成される伝熱管と、
伝熱流体を含む外部熱交換器と、
前記伝熱管内の回路を介して前記伝熱流体を流すためのポンプと、
前記外部熱交換器と接触する伝熱要素と、
パラメータを検出し、前記パラメータを表す信号を生成するためのセンサとを備え、前記信号は、(i)前記回路内の流動伝熱流体、または(ii)前記伝熱流体の温度を制御するように、マイクロプロセッサに送信される、システム。
【請求項20】
前記センサは、前記伝熱管より遠位側に配置された温度センサであり、前記被術者の前記中核体温を表す信号を生成するように構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記マイクロプロセッサは、目標温度の入力を受け取り、前記被術者が前記目標温度に近づく速度を制御するために、前記温度センサからの前記信号に対しPID応答により応答する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記センサは、気泡検出器であり、前記回路内の空気の存在を表す信号を生成するように構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記伝熱管は、食道上皮の実質的にすべてと接触することができる伝熱領域を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記患者の胃内に延びるように構成された遠位端を有する中空管をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記装置が、約1.2℃/hから約1.8℃/hの速度で冷却を行うことができる、請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記装置が、約350kJ/hから約530kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
前記装置が、約430kJ/hの速度で質量体を冷却することができる、請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
前記装置が、少なくとも約100cm2の表面積を有する伝熱領域を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項29】
前記伝熱領域は、約140cm2の表面積を有する、請求項28に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2012−519033(P2012−519033A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552179(P2011−552179)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025523
【国際公開番号】WO2010/099396
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511207648)アドバンスト・クーリング・セラピー,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025523
【国際公開番号】WO2010/099396
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511207648)アドバンスト・クーリング・セラピー,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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