説明

患者生検試料とスポンジ状裏打ち用紙の接着・定着固定剤とその病理学的使用法

【課題】 臨床側からの固定移送時の生検試料の良好な生物学的固定を保証し、該生検試料の挫滅・移動混入・紛失を防止し、該生検試料の採取位置番号や試料標本作製方向等の患者生検試料の臨床情報を確実正確に伝達出来る、患者生検試料の採取提出側である臨床側と該生検試料の標本作製・検査である病理学的検査側との正確な作業性を高め、患者試料の臨床情報が確実に繁栄された染色スライド標本を作製する器具と方法を提案する。
【解決手段】 生検試料と一緒に固定移送・脱水・脱脂・透徹・包埋剤浸透・包埋・薄切できるスポンジ状裏打ち用紙と該スポンジ状裏打ち用紙上の所定の箇所に生検試料を素早く接着・定着固定できるシアノアクリレート系接着剤からなる接着・定着固定剤とで該生検試料を該スポンジ状裏打ち用紙上に接着・固定して、患者生検試料の良好な生物学的固定を保証し、該生検試料の挫滅・移動混入・紛失を防止し、該生検試料の採取位置番号や試料標本作製方向等の患者生検試料の臨床情報を確実正確に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師や生命科学者が病気の診断や治療を決定または研究ために、患者や生命体から採取した生検試料の生物学的固定を素早く開始して、生検試料を該試料と一緒に薄切刀の刃を傷つけることなく薄切でき、染色標本の作製ができるスポンジ状ポリマーで成形した試料の固定移送用裏打ち台紙の所定の位置に微量で素早く生検試料を設置定着固定できる生物試料の接着・定着固定剤とその使用包埋方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の病理学的検査に於いて、臨床側での患者生検試料採取時の患者生検試料病理学的検査用固定移送方法は病理検査側が推奨する患者生検試料の固定移送方法と一致しているとは限らない。
何故ならば、臨床側は患者から生検試料を採取する場合には患者への苦痛侵襲を最小限にすることと、臨床側の正確な診断行為を主眼にして医療行為を実施しているのであり、病理検査側の患者生検試料の標本作製工程への便宜性を最重要視して患者生検試料を採取・固定移送している訳ではないからです。
【0003】
患者生検試料の採取と病理学的検査依頼の権限は臨床側が持っており、病理検査側はその検査依頼を受けて正確な標本作製と病理診断を実施するのです。故に、病理検査側としては臨床側にとって病理検査の依頼・固定移送が簡便で、臨床側患者データと病理データのリンクが正確な検体(患者試料と患者属性と臨床データ)の固定移送方法を開発して臨床側に協力してもらわなくてはならないのが現状です。
【0004】
従来の患者検体の移送方法の中で、臨床側患者データと病理診断報告書データの移送・連結は臨床側・病理側の両者の責任性と必要性は同等であり、紙情報以外にも電子化情報伝達・連結方法も発展してきております。
現在、患者検体の受け渡しで多くのトラブルの主な原因になっているのは患者採取生検試料の患者属性・臨床側データとの照合・確認と該患者生検試料の固定移送上の生物学的固定状況とであります。
【0005】
故に、臨床側からの患者検体の受付・受領作業において患者生検試料の臨床側(患者属性と検査依頼書)データと該患者生検試料との照合・確認作業工程が正しく終了した後の病理検査側の標本作製作業工程の入り口である切り出し作業工程での患者検体の照合・確認作業が重要なのです。
【0006】
該切り出し作業工程とは、該患者検体の該患者の臨床側検査依頼書データと該患者生検試料の生物学的固定状況と該生検試料内の試料個数と生検試料位置番号等の患者x生検試料の病理学的診断に直結した検体試料情報とを、病理側データに正確に変換連結して病理標本作製作業工程に入る為の病理検査側の重要な作業工程であり病理医師等が直接的に作業・確認します。
【0007】
前記切り出し作業では、病理医師等が該患者臨床側検査依頼書データに基づいて、臨床側で採取固定移送してきた該患者生検試料の生物学的固定(一般的には固定液としては10〜20%ホルマリン水に浸漬して該生物細胞組織の生命活性を主に蛋白質を固定液にて凝固・停止させて、標本作製の目的にあった一定の状況に生物学的に固定停止する事)状況の確認と該患者生検試料のマクロ的観察及び臨床側で採取した生検試料の位置番号の確認・スケッチ或いは接写・マクロ所見記載等の作業後に、該患者生検試料を試料の薬液処理用病理組織処理籠(一般的には図7A・B、図8、図9A・B・C・Dの10と10b とからで構成される所謂カセット)に収納して自動固定包埋装置なる機器にセットします。
【0008】
しかし、説明図5A,B,C、図6A,B,C、図7A,Bに示す如く、従来の生検試料4の採取・固定移送・薬液処理等の標本作製工程に於いて、例えば図5の内視鏡検査の鉗子(図5Aの8)から生検試料(図5の4)の挫滅を最小限に抑えて、試料の生体内浸出液の固定液による固化力で生検試料4と貼り付ける試料の採取部位の位置番号(図5の4a)を記載できる裏打ち台紙(図5の9a)や、針生検の棒状或いは糸状の細長い生検試料の折れ・紛失・前後順序の入れ替わり・混入・挫滅防止と採取部位の位置番号記載用裏打ち台紙や内視鏡的粘膜切除術(EMR)の裏打ち台紙は、従来は全て濾紙やケント紙状の紙製で形成されており、この裏打ち台紙は試料の薬液処理或いは包埋試料ブロック作製時には試料から剥がし廃棄されている。
【0009】
それは、濾紙或いはケント紙製の裏打ち台紙を一緒に包埋してブロック試料作製して試料と一緒に薄切すると3から5ミクロン程で薄切することが困難であり、薄切刀の刃も直ぐに刃こぼれを起こし、その染色標本も多くの色素に染まってしまうからである。
【0010】
また、濾紙或いはケント紙製の裏打ち台紙は試料の固定等の薬液浸透を阻害する傾向があり、時には直径0.5mm程度以下の生検試料は濾紙或いはケント紙製の裏打ち台紙の紙繊維内に食い込み試料を剥がすことが困難に成ることも屡々である。
【0011】
更に又、切り出し作業時或いは包埋作業時に前記裏打ち用紙から前記生検試料をピンセット等で剥がす時、該生検試料を挫滅破壊或いは弾き飛ばして紛失する事も間々あり得る。
【0012】
更にまた、図5Cに示す様に従来の固定移送容器で前記患者生検試料を移送する場合に1個の固定移送容器内に複数の生検試料を裏打ち台紙に貼り付けて一緒に収納移送すると移送時の固定液の振動と試料同士の接触によって生検試料が裏打ち台紙から剥げ落ちて患者試料の採取部位が不明に成ることが多い。また、この患者試料の採取部位を明確にする為は、患者生検試料のその採取部位番号データを記載した固定移送容器ごとにそこに対応している各1個の生検試料を収納する方法であり、固定移送容器の必要数は採取生検試料の数だけ必要になり、経費が嵩む。
【0013】
更にまた、説明図6A・B・Cに示す様に本願発明者が既に発明出願登録済みの特許文献1の(グルコマンナンの修飾誘導体からなる生検試料の定着支持剤とその製造方法。)や既に出願済みの特許文献2の(2種類の形状・機能が異なるポリマーを用いた、試料の固定移送用台紙と試料包埋定着支持剤とその使用方法)の包埋定着支持剤のように未固定の生検試料の上部から裏打ち用紙上の生検試料の上部・周囲に掛けて該生検試料を裏打ち用紙上に包埋定着支持すると、該生検試料とホルマリン等固定液の間に包埋定着支持剤が存在して生検試料に固定液が浸透固定される時間が遅れて、生検組織が変性してスライドグラス標本にアーチファクトが現れることがあり、病理診断等の弊害になることがある。
【0014】
更にまた、図7Aの9分画カセット基体の内部に収納された生検試料や図7Bの様に特許文献5の(通液性、弾力性があり柔軟で二つ折りにしてカセット基体内部にほぼ一杯に収納できる大きさの板材で挟持収納された)生検試料は、脱水・脱脂・透徹・包埋剤浸透等の薬液処理を施されて包埋皿の底部に移し替えられ、その上から前記カセット基体を該包埋皿の開口部の所定の箇所に設置して該カセット基体を薄切用ブロック支持台木として生物試料を包埋ブロック試料として一体的に包埋する。その後、前記包埋ブロック試料は、前記基台を薄切用ミクロトーム用カセットアダプターに固定して薄切し、スライドグラスへの薄切切片試料の転写・伸展・乾燥貼り付け・染色・封入等の作業工程後顕微鏡判定や診断に供する。
【0015】
従来の技術は上述の通りであるので、この様な医療トラブルは多くの医療機関でも生じており、患者生検試料の挫滅・紛失・コンタミは本発明者が既に発明・出願済みの特許文献1と特許文献2で殆ど解決しているが、患者生検試料の確実で変性のない生物学的固定と定着支持方法は今まで解決していなかった。即ち、従来の図5から図7の生検試料の採取・固定・移送方法では患者検体(試料を収納した固定移送容器と試料データ)の受付照合・切り出し作業・標本作製作業(固定・脱水・脱脂・透徹・包埋剤浸透・包埋・薄切・スライドグラスへの薄切切片試料の転写と伸展貼り付け・染色・封入)・鏡検病理診断から該生検試料の保管管理検索工程に於いて、患者生検試料の確実で変性のない生物学的固定と定着支持に関するトラブル事故を完全には防止できてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第4164608号公報
【特許文献2】特願2010−118642号
【特許文献3】特開平11−12243号広報
【特許文献4】特開2008−259617号広報
【特許文献5】実開昭和58−132870号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】日消外会誌32(3):888〜891,1999年
【非特許文献2】接着の科学(講談社):124〜128, 1997年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来の技術は上述の通りであるので、本発明が解決しようとする問題点は、患者生検試料の確実で変性のない生物学的固定と移動混入・紛失のない定着支持方法の二方法を統一完成させることである。
【0019】
何故ならば、其れは本発明者が既に発明出願している特許文献1の酸化グルコマンナン修飾誘導体からなる包埋定着支持剤や特許文献2のポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させてアセタール化したポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルホマール樹脂を含む)製、またはゼラチンを付加したポリビニルアルコール製、またはウレタン樹脂製等の化学合成系プラスチックを素材にした(スポンジ状)裏打ち用紙とジェランガムを中心にした食物繊維から作られた包埋定着支持剤では、生検試料と薄切可能な裏打ち用紙との接着力が弱いので、生検試料上部から包み込むように包埋定着しなければ生検試料を確実に裏打ち用紙上に定着支持固定することが出来なかったので、生検試料周囲の該包埋定着支持剤の存在が生物学的固定液の浸透を邪魔して、該生検試料の固定液浸透時間が遅れて該生検試料の薄切スライドグラス標本の染色組織像に変性アーチファクトが出現して、該生検試料から成るスライドグラス標本での病理学的診断に差し障りが一部出ていたからである。
【0020】
其処で、本発明が解決しようとする問題点は、患者生検試料の固定移送から試料包埋ブロック作製と該包埋ブロックの薄切までの病理患者試料標本作製工程に於いて、該患者生検試料の裏打ち用紙には、本発明者が既に発明出願している特許文献2のポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させてアセタール化したポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルホマール樹脂を含む)製、またはゼラチンを付加したポリビニルアルコール製(この時、カゼイン等蛋白質成分を付加してもよい。) またはウレタン樹脂製等の化学合成系プラスチックを素材にした3ミクロン単位で薄切できるスポンジ状裏打ち用紙を使用して、該裏打ち用紙上の所定の箇所に該患者生検試料を微量で素早く確実に接着・定着固定して、該患者生検採取位置番号や標本作製方向情報が明確な生検試料が固定液に接触する面積を増加して十分な生物学的固定を保証することである。
【0021】
また更に、本発明が解決しようとする問題点は、従来の包埋定着支持剤による生検試料の裏打ち用紙上への定着固定は、臨床側での該生検試料採取時の固定前(未固定)生検試料の裏打ち用紙上への該生検試料から滲み出る組織液(浸出液)のホルマリン等固定液による凝固力を利用した接着力のみなので、該生検試料の裏打ち用紙上への設置固定の接着・定着固定力は強いものではなく、屡々剥離・脱落し、試料の入れ替わりや紛失が生じているので、該生検試料と前記裏打ち用紙の間を微量で素早く確実に接着・定着固定して、病理試料の標本作成工程で使用される水、ホルマリン、有機溶剤や包埋剤で変質・溶解しないで該生検試料が裏打ち用紙上に貼り付いて最後まで剥がれない接着・定着固定剤を探し出すことである。
【0022】
更に、本発明が解決しようとする問題点は、前記スポンジ状裏打ち用紙上の所定の箇所に前記生検試料を微量で素早く確実に接着・定着固定する接着剤は、微量の水分存在下でも生検試料をスポンジ状裏打ち用紙上に接着でき該生検試料の固定・脱水・脱脂・透徹・包埋剤浸透の邪魔や組織を変性させないで且つ試料の薄切時薄切の邪魔をしないことである。
【0023】
更にまた、本発明が解決しようとする問題点は、前記生検試料を前記スポンジ状裏打ち用紙上に接着・定着固定する前記接着・定着固定剤が該生検試料組織の深部に浸透しないで表面の浅部で接着をすることである。
【0024】
更にまた、本発明が解決しようとする問題点は、前記生検試料を前記裏打ち用紙上に接着・定着固定する前記接着・定着固定剤と前記スポンジ状裏打ち用紙とが、染色スライドグラス標本完成時にはスライド標本上には殆ど残存していないか或いは殆ど染め出されない事である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の基本である主要な特徴は、包埋作業のイメージ説明図14A・B・D・E・G・H・J・Kに記載の如く包埋皿23の収納底部に生検試料と一緒に3ミクロン単位の厚さで薄切できる前記スポンジ状裏打ち用紙を下側に、前記生検試料を上側にして包埋ブロックを作製することである。
【0026】
但し、内視鏡的粘膜切除術(EMR)4c の場合には図14C・F・I・Lに示す様にEMR4c と一緒に該スポンジ状裏打ち用紙2を短冊状に切り出して、切り出しトリミングされた短冊状裏打ち用紙とEMR4c を説明図12乃至14の様に一緒に立ててEMR4c の割面を薄切面として試料の包埋ブロックを作製する。この時、EMR4c の前記切り出し作業(図12)時にトリミングで分離されたスポンジ状裏打ち用紙2d 上のEMR片4c の裏側を図12Dのように試料の接着・定着固定剤(Sample Fixer)1で接着・定着固定すると二片に分離しているEMR片4cは短冊状裏打ち用紙2d 上に定着固定されて一体的に包埋処理できることである。
【0027】
更に、本発明の基本である主要な特徴は、段落(0002)と(0003)の理由から、臨床側で患者の生検試料を採取時に固定移送容器に収納し易く且つ病理側の作業を能率的にして、経費を下げる方法として図9A・Bに示す従来の板状スポンジと、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させてアセタール化したポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルホマール樹脂を含む)製、またはゼラチンやカゼイン等蛋白質成分を付加したポリビニルアルコール製、またはウレタン樹脂製等の化学合成系プラスチックを素材にしたスポンジ状裏打ち用紙と、を併用することである。
【0028】
勿論この時点では接着・定着固定剤は使用せずに、図9A・Bに示す様に臨床側で採取された固定前(未固定)生検試料4はスポンジ状裏打ち用紙2上に設置されてスポンジ6との間に挟持されて試料収納処理容器籠10・10b (カセット)に収納されて図示されていないが固定移送容器に試料収納処理容器籠10・10b (カセット)ごと収納固定移送される。図9C・Dは図9A・Bの縦断面図であることから理解されるように厚さ0.3mmの半透明な薄いスポンジ状裏打ち用紙2を通して生検試料4が見えています。この固定移送の間に該固定前(未固定)生検試料4は完全に良好な生物学的固定が完了する。しかしこの時、臨床側で該スポンジ状裏打ち用紙2上に接着・定着固定剤(Sample Fixer)1を少量滴下接着しても患者生検試料4の生物学的固定には差し障りなくスポンジ状裏打ち用紙2上に定着固定できる。
【0029】
更に又、本発明の基本である主要な特徴は、該スポンジ状裏打ち用紙上の所定の箇所に生検試料を接着・定着固定する接着・定着固定剤が微量で素早く確実に接着・定着固定できる接着・定着固定剤であり、該スポンジ状裏打ち用紙と該生検試料の細胞組織と一緒に固定・脱水・脱脂・透徹・包埋剤浸透の薬液処理工程を通過しても、接着・定着固定力が劣化・消失しない接着・定着固定剤としてシアノアクリレート系接着剤を使用することである。該シアノアクリレート系接着剤は特許文献3と特許文献4と非特許文献2記載内容からも理解される様に微量の水分存在下で重合反応が起きて、該スポンジ状裏打ち用紙2と該生検試料を微量で素早く確実に接着・定着固定する瞬間接着剤であり、非特許文献1にあるように既に現在医学外科手術で縫合糸の代わりの接着剤や充填剤として使用され始めている。これは生物体には体液・血液なる水分があり、該シアノアクリレート系接着剤が該水分に反応して、次の反応式(式1)に示す様に素早く重合反応を開始して接着するからである。患者生検試料と該スポンジ状裏打ち用紙中にも微量水分(空中水分、生検組織浸出液、ホルマリン水等)が存在しています。故に、ホルマリンで生物学的固定後の生検試料も該スポンジ状裏打ち用紙2上の所定の箇所に接着・定着固定します。
【化1】

【0030】
更に又、本発明の基本である主要な特徴は、病理検査側で臨床側から例えば図9に図示された様に患者採取生検試料が前記スポンジ状裏打ち用紙2上の所定の箇所に設置されスポンジ6との間に軽く挟持されて固定移送されてきた患者生検試料検体を受付・受領後の切り出し作業で該生検試料の状況確認・観察する時に、例えば図10A・B・C(パンチ生検試料)、図11(針生検試料)、図12A・B・C・D・E(内視鏡的粘膜切除術:EMR)、前記3種類の生検試料のスポンジ状裏打ち用紙2上への接着・定着固定剤を使用しての接着・定着固定方法(図13)の作業完成予想図で示す形態で試料収納処理容器籠10・10b (カセット)に各々収納して、更に生検試料の固定・脱水・脱脂・透徹・包埋剤浸透の薬液処理をする自動固定包埋装置でカセットごとセットして薬液処理後、包埋作業時に説明図14に図示したように、各3種類の生検試料の使用方法に合わせてスポンジ状裏打ち用紙2と一緒に包埋ブロック試料19を作製して、次に図15、図16、図17に示す様にスポンジ状裏打ち用紙2上に設置された該生検試料の紛失・移動を防止して、採取位置番号や生検試料の方向性を正確に病理スライド標本図15C、図16B、図17Bの上に繁栄する生検試料の接着・定着固定をすることである。
【発明の効果】
【0031】
この発明は上述の通りであるので、患者生検試料をポリビニルアセタール樹脂製、またはゼラチンやカゼイン等蛋白質成分を付加したポリビニルアルコール製、またはウレタン樹脂製等の化学合成系プラスチックを素材にしたスポンジ状裏打ち用紙の所定の箇所にシアノアクリレート系接着剤で接着すると、該生検試料を該スポンジ状裏打ち用紙上に微量で素早く確実に接着・定着固定できて、従来の包埋定着支持剤による包埋支持ではなく該生検試料の外周囲は固定液等処理液に直接に浸漬されて、臨床側での患者の生検試料採取から検体・固定移送と病理検査側の検体受付・切り出し・固定・脱水・脱脂・透徹・包埋剤浸透・包埋ブロック作製・薄切完了までの各工程で一貫して生検試料の薬液処理効果が高まる。
【0032】
更に、前記スポンジ状裏打ち用紙には図2にも示す裏打ち用紙の方向基準2b が形成され、更に鉛筆図3(濃さB又は2B以上)で患者生検試料の患者試料名や採取位置番号等のデータ記載が出来るので、該スポンジ状裏打ち用紙上の所定の箇所にシアノアクリレート系接着剤で該患者生検試料を素早く確実に接着・定着固定すると、説明図13乃至図17に示す様に一纏めの生検試料に患者名等のデータが記載されて病理標本作製工程を移動することが出来る。
【0033】
更に、患者生検組織試料と一緒に3ミクロン単位の厚さで薄切できて、多くの染色液に染まりにくいポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルホマール樹脂含む)を素材にしたスポンジ状裏打ち用紙は上にシアノアクリレート系接着剤を用いて患者生件試料を接着・定着固定すると従来の裏打ち用紙や分画カセットを用いての患者採取生検試料の固定移送から受付・切り出し・自動固定包埋装置(固定・脱水・脱脂・透 徹・包埋剤浸透)と包埋作業工程の全作業工程の中で該患者生検試料の挫滅・移動混入・紛失が生じる危険性の高い作業である以下の4つの作業工程、
(1)固定移送作業での生検試料の剥げ落ちまたは入れ間違いと、
(2)切り出し作業での生検試料のピンセットでの挟持時の挫滅・移動混入・弾き飛ばしての紛失と、
(3)包埋作業での生検試料のピンセットでの挟持時の挫滅・移動混入・弾き飛ばしての紛失と、
(4)薄切作業での切片のスライドグラスへの貼付・伸展:患者包埋ブロックの切片の確認・照合上の医療事故を防止できる。
【0034】
更に又、前記ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルホマール樹脂含む)製、またはゼラチンやカゼイン等蛋白質成分を付加したポリビニルアルコール製、またはウレタン樹脂製等の化学合成系プラスチックを素材にしたスポンジ状裏打ち用紙を薄く(例えば現在の可能な厚さ0.3〜0.5mm以下)成形して、段落(0025)記載と包埋作業のイメージ説明図14A・B・D・E・G・H・J・Kに記載の如く包埋皿23の収納底部に生検試料と一緒に3ミクロン単位の厚さで薄切できる前記スポンジ状裏打ち用紙を下側に、前記生検試料を上側にして包埋ブロックを作製するとパンチ生検試料のブロック試料の面だし荒削り図15A、切片試料の伸展貼付スライドグラス図15B、染色・封入完成スライドグラス説明予想図15Cと針(穿刺)生検試料のブロック試料の面だし荒削り図16A、染色・封入完成スライドグラス説明予想図16Bからも理解できるように染色・封入完成スライドグラス上にはブロック試料の薄切検査面の面だし荒削り薄切作業でスポンジ状裏打ち用紙と試料の接着・定着固定剤(シアノアクリレート系接着剤等)は削り除去されて残っていないので、生検試料の切片が一定の間隔で正しく配列した綺麗な染色スライドグラス標本が作製される。
【0035】
更に又、段落(0026)記載の様に内視鏡的粘膜切除術(EMR)4c の場合には図14C・F・I・Lに示す様にEMRと一緒に該スポンジ状裏打ち用紙2を短冊状に切り出して、切り出しトリミングされた該スポンジ状短冊状裏打ち用紙2とEMR4c を説明図12乃至14の様に一緒に立ててEMR4c の割面を薄切面として試料の包埋ブロックを作製する。この時、EMR4c の前記切り出し作業(図12)時にトリミングで分離されたスポンジ状裏打ち用紙2d 上のEMR片4c の裏側を図12Dのように試料の接着・定着固定剤(Sample Fixer)1で接着・定着固定すると二片に分離しているEMR片4c は短冊状裏打ち用紙2d 上に定着固定されて一体的に包埋処理できることである。この時、図17A・Bに示す様に前記スポンジ状裏打ち用紙は染色・封入完成スライドグラス上に該スポンジ状裏打ち用紙2の厚さ分だけ残り染色液に因っては若干染め出されるが、該スポンジ状裏打ち用紙2の間にEMR4c 試料が観察されるのでかえって試料の鏡検が楽になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1A・Bは本発明の実施形態である接着・定着固定剤を使用して、患者生検試料を特許文献2の試料のスポンジゲル製裏打ち用紙(固定移送用台紙:厚さ約0.3mm)上に、微量で素早く確実に接着・定着固定している様子を示した説明図である。
【図2】図2は図1の一部分である試料のスポンジ状裏打ち用紙(厚さ約0.3mmの固定移送用台紙)のシートの説明図である。
【図3】図3は図2の一部分であるスポンジ状裏打ち用紙(厚さ約0.3mmの固定移送用台紙)にB或いは2Bの濃さの鉛筆で患者試料データを記載している図である。
【図4】図4は図1の一部分であるパンチ生検試料を内視鏡鉗子から楊子(或いは採取針)で採取している説明図である。
【図5】図5A・B・Cは従来の濾紙或いはケント紙製の裏打ち用紙での生検試料の固定移送方法である。図5Aは内視鏡鉗子内の生検試料を紙ピンセットで採取している図であり、図5Bは従来の生検試料の紙製裏打ち台紙と生検試料の位置番号、図5Cは試料の固定液と固定移送容器を示している。
【図6】図6A・Bは従来の特許文献2、図6Cは従来の特許文献1の包埋定着支持剤で生検試料の上から該包埋定着支持剤を掛けて定着固定している図である。
【図7】図7Aはやはり従来使用している分画カセットの小部屋に生検試料を収納して、図7Bは従来の特許文献5の(通液性、弾力性があり柔軟で二つ折りにしてカセット基体内部にほぼ一杯に収納できる大きさの板材:板状スポンジ)で、生検試料を挟持収納している説明図である。
【図8】図8は本発明の別の作業工程の実施形態の説明図であり、図1のスポンジゲル製裏打ち用紙(厚さ約0.3mmの固定移送用台紙)を使用して臨床側で採取した生検試料を挟持収納している説明図である。
【図9】図9A・B・C・Dは本発明の別の作業工程の実施形態の説明図であり、図7Bと図8のスポンジゲル製裏打ち用紙(厚さ約0.3mmの固定移送用台紙)の優秀な機能を集約している。 図9Aは図7Bの生検試料の柔軟な挟持力の間に生検試料とスポンジゲル製裏打ち用紙(固定移送用台紙)を挟み込み、 図9Bは図7Bのスポンジ板材とスポンジゲル製裏打ち用紙(厚さ約0.3mmの固定移送用台紙)とで生検試料を挟持・固定移送する。 図9Cは図9Aの縦断面図で試料の収納容器籠(病理用カセット)は特許文献2の独立した生物試料処理用独立籠と枠状基体を示し、 図9Dは図9Bの縦断面図であり試料の収納容器籠(病理用カセット)は特許文献2の該生物試料用ユニット連結嵌合構成体カセットを示している。
【図10】図10は図1の本発明の実施形態である接着・定着固定剤を使用して、患者生検試料を特許文献2の試料のスポンジゲル製裏打ち用紙(固定移送用台紙:厚さ約0.3mm)上に、微量で素早く確実に接着・定着固定している様子を示した説明図である。
【図11】図11は図10とは別の実施形態で、本発明の実施形態である接着・定着固定剤を使用して、患者の針生検試料を特許文献2の試料のスポンジゲル製裏打ち用紙(固定移送用台紙:厚さ約0.3mm)上に、微量で素早く確実に接着・定着固定している様子を示した説明図である。
【図12】図12A・B・C・D・Eは図11とは別の実施形態で、本発明の実施形態である接着・定着固定剤を使用して、患者のEMR試料を特許文献2の試料のスポンジゲル製裏打ち用紙(固定移送用台紙:厚さ約0.3mm)上に貼り付け、EMR試料の分離した部分をスポンジゲル製裏打ち用紙に微量で素早く確実に接着・定着固定している様子を示した説明図である。
【図13】図13A・B・Cは本発明の実施形態の病理標本作製工程中での完成予想図で図13Aは図10A、図13Bは図11、図13Cは図12の完成予想図である。但し、この説明図13A・Bの生検試料はスポンジゲル製裏打ち用紙の下側に接着・定着固定されており厚さ0.3mmのスポンジゲルを通して接着・定着固定剤で接着された生検試料が見えています。
【図14】図14A・B・C・D・E・F・G・H・I・J・K・Lは、図13A・B・Cの実施形態の病理標本作製工程中以降の包埋ブロック作製時の本発明の実施形態を示している。図14A・Bは図13A・Bとは反対に生検試料がスポンジゲル製裏打ち用紙の上側に接着・定着固定されて見えている。図14D・E・Fは図14A・B・Cの縦断面図であり、図14G・H・Iは包埋作業で包埋皿収納底部に図14D・E・Fの位置形態のままスポンジゲル製裏打ち用紙を下側にして、生検試料を上側に接着・定着固定したスポンジゲル製裏打ち用紙を包埋皿底部に設置して包埋ブロック試料を作製している。図14J・K・Lは図14G・H・Iの平面図である。
【図15】図15A・B・Cは図14A・B・C・D・E・F・G・H・I・J・K・Lの包埋作業工程後の実施形態である。図15Aは薄切作業、図15Bはスライドグラスに切片伸展・貼付、図15Cは染色完了スライド標本のパンチ生検試料の平面図である。
【図16】図16A・Bは針(穿刺)生検試料の包埋作業工程後の実施形態である。図16Aは薄切作業、図16Bは染色完了スライド標本の平面図である。
【図17】図17A・Bは内視鏡的粘膜切除術(EMR)の包埋作業工程後の実施形態である。図17Aは薄切作業、図17Bは染色完了スライド標本の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を説明図:図1〜図4と図8〜図17に基づいて説明する。
【0038】
図1は本発明の基本の実施形態であり、病理学的検査側の切り出し作業で生検試料4を該生検試料4と一緒に固定・脱水・脱脂・透徹・包埋剤浸透・包埋・薄切と染色の病理組織スライドグラス標本作製作業工程で薬液処理できるポリビニルアセタール樹脂製(ポリビニルアセタール樹脂を含む)またはゼラチンやカゼイン等蛋白質成分を付加したポリビニルアルコール製、またはウレタン樹脂製等の化学合成系プラスチックを素材にしたスポンジ状裏打ち用紙2の所定の箇所にシアノアクリレート系接着剤1で接着している説明図で、この時の該スポンジ状裏打ち用紙2の厚さを約0.3mm〜0.7mmで使用すれば、生検試料4の上部からではなく生検試料4の下部であるスポンジ状裏打ち用紙2の下側から接着・定着固定剤(Sample Fixer)1であるシアノアクリレート系接着剤を微量滴下しても生検試料4を綺麗に裏打ち用紙に接着・定着固定できる。
【0039】
図2は図1の構成体の一部であり、スポンジ状裏打ち用紙2(厚さ約0.3mm〜0.7mmの固定移送用台紙)のシートで切り取り線又は折れ線用ミシン線2aが形成されていて、必要によって手でも切り取れる。
【0040】
図3は図2の一部分であるスポンジ状裏打ち用紙2(厚さ約0.3mm〜0.7mmの固定移送用台紙)にB或いは2B以上の濃さの鉛筆7で患者試料データ2c を記載している。2a は折れ線用ミシン線で、2b は裏打ち用紙の方向基準マークで、図3Bの6は板状スポンジ(スポンジ板材)である。
【0041】
図4は内視鏡鉗子8から生検採取用針又は楊子9で患者生検試料4を採取している図である。
【0042】
図5から図7は従来の技術で、図5の(1) 薄切出来ない紙製裏打ち用紙9aと(2)該紙製裏打ち用紙9a から剥離しやすい生検試料の組織浸出液の凝固力による裏打ち用紙生検試料定着法、図6は(3)生検試料の包埋支持剤による包埋定着支持法であるので固定前(未固定)試料に使用すると、固定液の浸透が遅くなり生物学的に固定上のアーチファクトが生じる。図7は(4)臨床側で患者採取生検試料の収納時に不便で、更に病理検査側の包埋作業時等に小型の生検試料を直接にピンセット等で挟持移動するので生検試料の挫滅・弾き飛ばしての紛失の危険性が高い等の問題が生じていたが、本特許はこれら従来の技術の弱点の全てを解決している。
【0043】
図8は臨床側で患者採取生検試料の固定移送方法を示している説明図で、図1〜図3で示した試料と一緒に病理標本作製工程を通過できて、試料と一緒に3ミクロン単位で薄切出来る約0.3mmの厚さのスポンジ状裏打ち用紙2を使用しており、水分を含みやや半透明になり、端に方向基準2b を形成した裏打ち用紙(固定移送用台紙)2上に臨床側で、患者採取した生検試料4を所定の箇所に順番に設置している説明図である。生検試料4の採取位置番号4a は方向基準2b を基準にして判断できる。この時生検試料4は、スポンジ状裏打ち用紙2を折りたたみ生検試料4を挟持して薬液処理用病理組織処理籠(カセット多孔底部10と該カセット多孔底部の蓋部10b で構成される所謂病理試料用カセット)に収納されて固定移送される。即ち、図7Bと同様の挟持収納ができると同時に該スポンジゲル製裏打ち用紙2はそのまま生検試料4と一緒に包埋・薄切ができる。この時、臨床医は採取した生検試料を例えば左側方向基準2b から順次右側に移行しながら設置していけばよい。収納容器開口部の経口と生検試料の収納・固定移送方法は図7B と同じであるが、本発明のスポンジ状裏打ち用紙2は試料と一緒に薬液処理されて、包埋ブロックになり3ミクロンで薄切できるので、生検試料の生物学的固定不良・挫滅・移動混入・紛失・試料の方向性・採取位置番号等の従来の弱点を全て解決している。
【0044】
図9は、図8とは別の患者採取生検試料の固定移送方法の実施例を示している説明図である。図8のスポンジ状裏打ち用紙2を折りたたんで生検試料4を挟持する形式であるが、図9Aは包埋皿底部に合わせた一枚のスポンジ状裏打ち用紙2と板状スポンジ6とで患者採取生検試料4を挟持しており、図9Bは生検試料4各々が該生検試料4の採取位置番号4a の記載されたスポンジ状裏打ち用紙2と板状スポンジ6とで挟持されて固定移送される。この固定移送方法は該生検試料4の固定法としては各生検試料4の採取時点ごと固定出来るので患者採取生検試料4の固定法としては最良の方法形態といえる。図9Cは図9Aの縦断面であり、図9Dは図9Bの生検試料4の採取位置番号と該生検試料4の配列順序を示している。
【0045】
図10は、本発明の基本の実施形態である図1の具体的実施例である切り出し作業の説明図であり、例えば、図9Aの実施方法で臨床側から病理学的検査側へ生検試料4が固定移送されてきた場合には、患者検体の受付・受領後の切り出し作業で、臨床側からの患者の病理学的検査依頼書に則り、該患者の生検試料4を図示していないが固定移送容器の中の薬液処理用病理組織処理籠(カセット多孔底部10と該カセット多孔底部の蓋部10b で構成される所謂病理試料用カセット)図9A・Cから図10Aの様に余分の水分を吸収するペイパータオル11上に板状スポンジ6とスポンジ状裏打ち用紙2の間に挟持され固定移送されてきた生検試料4を纏めて置いて、余分のホルマリン等固定液を取り除き、生検試料4のマクロ所見の観察・確認の上、生検試料採取位置番号の順に該生検試料4を配列して、説明図10A の様にスポンジ状裏打ち用紙2の上から板状スポンジ6の上の生物学的固定完了の生検試料4の上に接着・定着固定剤であるシアノアクリレート系接着剤1(図10B)を滴下1a して軽く抑えて再度データ記載済みの薬液処理用病理組織処理籠(カセット多孔底部10と該カセット多孔底部の蓋部10b で構成される所謂病理試料用カセット)図10Cに収納する。この薬液処理用病理組織処理籠収納前に、シアノアクリレート系接着剤で生検試料4を所定の箇所に接着・定着固定したスポンジ状裏打ち用紙2を一度水やホルマリン水に数秒浸漬するとシアノアクリレート系接着剤の(式1)の重合接着反応が完了停止するのでベタ付きが無くなる。勿論、図9Bの実施方法で臨床側から病理学的検査側へ生検試料4が固定移送されてきた場合にも同様の切り出し作業で各々の生検試料4とスポンジ状裏打ち用紙2とを接着・定着固定する。
【0046】
図11は針生検試料4b の図10Aの作業に該当する説明図である。余分の水分を吸収するペイパータオル11上で、スポンジ状裏打ち用紙2の上から板状スポンジ6の上の生物学的固定完了の針生検試料4b の上に接着・定着固定剤であるシアノアクリレート系接着剤1を滴下1a して軽く抑えている図である。
【0047】
図12は、内視鏡的粘膜切除術(EMR)4c の切り出し作業時の使用説明図であり、図10と図11との作業に順次共通していて、図12A・B・CはEMR4c の切り出し作業図でEMR生検試料4c と一緒に下のスポンジ状裏打ち用紙2をも短冊状に切り出しており、それら短冊状のEMR4c を下側の短冊状裏打ち用紙と一緒に横に立てて包埋して割面を薄切標本にする。この実施例では、スポンジ状裏打ち用紙2の短冊状トリミング1〜7の内の7番目の切片2d 上のEMR4cが二片に分離されている。この二片に分かれた試料を7番目のスポンジ状裏打ち用紙2d の所定の箇所に接着・定着固定剤(シアノアクリレート系接着剤)1で接着・定着固定しているのが図12Dでその全てのEMR試料4c を横に立てて並べたのが図12Eである。
【0048】
図13は、図10と図11と図12の生検試料( パンチ生検試料4・ 針生検試料4b・内視鏡的粘膜切除術EMR 4c )とスポンジ状裏打ち用紙2の各々が接着・定着固定した試料の完成予想図である。
【0049】
図14は、前図切り出し作業図10・図11・図12とその各々の生検試料(パンチ生検試料4・針生検試料4b・内視鏡的粘膜切除術:EMR 4c )とスポンジ状裏打ち用紙2の各々が接着・定着固定した試料を再度データ記載済みの薬液処理用病理組織処理籠(カセット多孔底部10と該カセット多孔底部の蓋部10b で構成される所謂病理試料用カセット)図10Cに収納して、固定・脱水・脱脂・透徹・包埋剤浸透の自動固定包埋装置に掛けて後の包埋作業工程の説明図である。自動固定包埋装置での薬液処理が完了後、所謂病理試料用カセットからスポンジ状裏打ち用紙2上に接着・定着固定されているパンチ生検試料4と針生検試料4b と内視鏡的粘膜切除術(EMR)4c (平面図:図14A・B・C、縦断面図:図14D・E・F)のスポンジ状裏打ち用紙2をピンセットで挟持して、各々包埋皿23の収容底部に載せ替えて包埋する。この時、該スポンジ状裏打ち用紙2は下側にして生検試料(パンチ生検試料4、針生検試料4b)は上側にして縦断面図:図14G・H、平面図:図14J・Kの様に包埋する。この時該スポンジ状裏打ち用紙2に患者名等試料データを記載しておくとより患者試料の照合が正確になる。但し、内視鏡的粘膜切除術(EMR)4c は図14C・F・I・Lからも理解されるように薄切検査面は内視鏡的粘膜切除術(EMR)4c の短冊状切り出しトリミング割面であり、該内視鏡的粘膜切除術(EMR)4c の短冊状トリミング試料は短冊状に切り出されたスポンジ状裏打ち用紙2に交互の挟持された割面になっている。
【0050】
図15は、前述の前記スポンジ状裏打ち用紙2の所定の箇所に接着・定着固定された前記パンチ生検試料4の包埋ブロック試料19の薄切作業説明図15Aであり、包埋ブロック試料19の台木部分のカセット10は図示していないが薄切機(ミクロトーム)とのジョイントアダプター13に挟持固定されて、薄切刀14で薄切されて切片16が切片採取具(ナメシ)15で採取されて、水槽(図示していない)上に載替られてスライドグラス17に伸展・貼付けられる図15B。該切片16上には薄切生検試料4の薄切切片4d のみ見られ、カバーグラス18で封入された染色スライドグラス標本図15Cにはパンチ生検試料4の切片染色像4d 以外スポンジ状裏打ち用紙2や接着・定着固定剤1であるシアノアクリレート系接着剤の形跡も見られない。これは、包埋ブロック試料19の面だし荒削りで全て削り取られているからである。
【0051】
図16は、前述の前記スポンジ状裏打ち用紙2の所定の箇所に接着・定着固定された前記針生検試料4b の包埋ブロック試料19の薄切作業説明図16Aであり、図16Bはその染色スライドグラス標本である。図15Cと同様に針生検試料切片の染色像4e以外スポンジ状裏打ち用紙2や接着・定着固定剤1であるシアノアクリレート系接着剤の形跡も見られない。
【0052】
図17Aは、図12A・B・C・D・Eに示す内視鏡的粘膜切除術(EMR)4c の包埋ブロック試料19の薄切作業説明図16Aである。故に、図14C・F・I・Lからも理解されるように、図17Bの染色スライドグラス標本には上述のパンチ生検試料図15と針生検試料図16とは異なり、前記スポンジ状裏打ち用紙2は染色・封入完成スライドグラス上に該スポンジ状裏打ち用紙2の厚さ分だけ残り染色液によっては若干染め出されるが、該スポンジ状裏打ち用紙2の間にEMR試料の染色像4f が観察されるのでかえって試料の鏡検が楽になる。
【0053】
(その他の実施例)
更に又、前記スポンジ状裏打ち用紙2上に生検試料を接着・定着固定する接着・定着固定剤1としてシアノアクリレート系接着剤の他にゼラチンやカゼイン等蛋白質成分の接着剤と該蛋白質成分の接着剤のホルマリン浸漬によってゼラチンやカゼイン等の蛋白質成分の接着剤を不溶解性にする方法もある。何故ならば、蛋白質は多くの染色液に染まるが本発明の包埋法を用いると前記スポンジ状裏打ち用紙2上に生検試料を接着・定着固定する接着・定着固定剤1は染色スライドグラス標本中には多くは残らないからである。
【符号の説明】
【0054】
1 試料の接着・定着固定剤(Sample Fixer)
1a 試料の接着・定着固定剤(Sample Fixer)の一滴
1b 試料の接着・定着固定剤(Sample Fixer)の凝固固定部
2 ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルホマール樹脂を含む)製、またはゼラチンまたはカゼイン等蛋白質成分を付加したポリビニルアルコール製、またはウレタン樹脂製等の化学合成系プラスチックを素材にしたスポンジ状裏打ち用紙
2a 切り取り・折り線用ミシン線
2b 裏打ち用紙の方向基準
2c 患者・試料記載データ
2d 切り出し時に切り分けられた化学合成系プラスチックを素材にした裏打ち用紙
3 ホルマリン等固定液
3a 固定移送容器
4 パンチ生検試料
4a 生検試料の位置番号
4b 針生件試料(Needle Biopsy)
4c 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
4d 4パンチ生検試料の薄切試料
4e 4b 針生件試料(Needle Biopsy)の薄切試料
4f 4c 内視鏡的粘膜切除術(EMR)の薄切試料
5 メス
6 通液性、弾力性がある柔軟で二つ折りにしてカセット基体内部にほぼ一杯に収納できる大きさの板材(板状スポンジ)
7 鉛筆(濃さB又は2B以上)
8 内視鏡鉗子
9 生検試料採取用針又は楊子
9a 紙ピンセット或いは従来の裏打ち台紙
10 カセット多孔底部
10a カセット底部データ記載部
10b カセット透明保護板付き蓋
11 余分の水分を吸収する作業ペイパータオル
12 切り出し刀(切り出しメス)
13 ミクロトーム用カセット挟持用アダプター
14 薄切刀
15 切片採取用紙(ナメシ)
16 薄切された切片
17 スライドグラス
18 カバーグラス
19 ブロック試料
20 ジェランガム系包埋定着支持剤の凝固剤
21 ジェランガム系包埋定着支持剤
21a ゲル化したジェランガム系包埋定着支持剤
22 グルコマンナン系包埋定着支持剤
22a ゲル化したグルコマンナン系包埋定着支持剤
23 包埋皿


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の病理学的検査の為の臨床側での患者生検試料採取時の該生検試料の固定移送作業から、病理学的検査側の検体受付と該生検試料の標本作製の為の切り出し作業から包埋・薄切・染色スライド標本作製までの全行程に於いて:
従来の紙製裏打ち用紙とは異なるポリビニルアセタール樹脂製(ポリビニルアセタール樹脂を含む)またはゼラチンやカゼイン等蛋白質成分を付加したポリビニルアルコール製、またはウレタン樹脂製の化学合成系プラスチックを素材にした、試料と一緒に薄切できるスポンジ状裏打ち用紙の所定の箇所に該患者生検試料を素早く確実に接着・定着固定できる生検試料の接着・定着固定剤がシアノアクリレート系接着剤からなることを特徴とするスポンジ状裏打ち用紙と該スポンジ状裏打ち用紙上に生検試料を接着・定着固定できる接着・定着固定剤から成る生検試料の固定移送薬液処理用器具キット


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−220280(P2012−220280A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84652(P2011−84652)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(595017665)
【Fターム(参考)】