悪性かつ形質転換した哺乳動物細胞を選択的に殺すペプチド
【課題】悪性または形質転換された細胞を選択的に殺すペプチド、並びにこれらのペプチドをコードするトランス遺伝子を配合するアデノウイルスベクター(AdV)の提供。
【解決手段】ペプチドをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合されたプロモーター配列からなり、該ペプチドがアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるかまたはそのアナログまたは誘導体である複製不能アデノウイルス(AdV)ベクター。
【解決手段】ペプチドをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合されたプロモーター配列からなり、該ペプチドがアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるかまたはそのアナログまたは誘導体である複製不能アデノウイルス(AdV)ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潰瘍性疾患の治療用の薬剤に関する。さらに特に、本発明は、悪性かつ形質転換した細胞を選択的に破壊する合成ペプチド、並びにそれに基づく潰瘍性疾患の治療方法を含む。本発明は、またガンに対するウイルス治療に関する。
【背景技術】
【0002】
p53蛋白は、細胞サイクルの重要な調節物である。それは、一部分、有糸分裂を誘導する蛋白の転写をブロックすることによりそして有糸分裂をブロックする蛋白の転写を誘導することにより有糸分裂を誘導しそしてアポトーシスを促進する多数のガン遺伝子蛋白のガン遺伝子作用をブロックする。p53細胞がないことは、細胞の形質転換および悪性疾患と関係がある。(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】Haffner,R&Oren,M.(1995)Curr.Opin.Genet.Dev.5:84−90
【0004】
p53蛋白分子は、393のアミノ酸からなる。それは、残基93〜313からなるDNA結合ドメイン中のDNAの特定配列に結合するドメインを含む。この領域の結晶構造は、X線結晶分析により決定されている。残基312〜393は、p53蛋白のホモテトラマーの形成に含まれる。残基1〜93は、p53蛋白の活性および半減期の調節に含まれる。
【0005】
p53蛋白は、他の重要な調節蛋白であるMDM−2蛋白に結合する。MDM−2蛋白をエンコードするMDM遺伝子は、周知のガン遺伝子である。MDM−2蛋白は、p53蛋白と複合体を形成し、それは、ユビキネーション経路によりp53蛋白の分解を生ずる。p53蛋白は、p53蛋白の残基14〜22(インバリアント)を含むアミノ酸配列を使用してMDM−2蛋白に結合する。p53蛋白の全MDM−2蛋白結合ドメインは、残基12〜26に及ぶ。(非特許文献2)。
【0006】
【非特許文献2】Haffner,R&Oren,M.(1995)Curr.Opin.Genet.Dev.5:84−90
【0007】
MDM−2蛋白が周知のガン遺伝子の発現生成物であることを考えて、MDM−2蛋白が非常に重要な調節蛋白であることは驚くにあたらない。その上、MDM−2蛋白の過剰発現または増幅は、ヒト乳房腫瘍の50%を含むヒトの悪性の40〜60%に見いだされている。p53蛋白とMDM−2蛋白との間の複合体の形成が、p53蛋白の転写活性の阻害を生じ、そのためp53蛋白の活性化ドメインまたはそのなかのDNA結合部位のブロックによる分子の抗腫瘍作用を生ずることが示唆されている。さらに一般的に、これらおよび他の実験の観察は、p53蛋白の抗腫瘍作用が、p53蛋白へのMDM−2蛋白の結合を干渉できるペプチドによって増強されるかもしれないことを示唆していると解釈されてきている。事実、多数の研究が、MDM−2/p53複合体が合理的なドラッグデザインの標的であるかもしれないことを示唆している。(非特許文献3)および(特許文献1)参照。
【0008】
【非特許文献3】Christine Wasylyk etal.,「p53 Mediated Death of Cells Overexpressing MDM2 by an Inhibitor of MDM2 Interaction with p53」Oncogene,18,1921−34(1999)
【特許文献1】米国特許5770377
【0009】
広範囲のスペクトルの細胞に感染するアデノウイルスの能力およびその高い感染能力は、それをガン治療の顕著な候補者にしている(非特許文献4)。アデノウイルスは、二十面体のキャプシドからなる。ウイルスのゲノムを包んでいるキャプシドは、3つの主な蛋白すなわちヘキソン、ペントン塩基そしてこぶ状になった繊維からなる。さらに、いくつかの小さい蛋白、VI、VIII、IX、IIIaおよびIVa2並びにウイルスをエンコードしたプロテアーゼも存在する。ウイルスのゲノムは、長い末端の繰り返し(LTR)を有する5’末端に共有結合で結合した末端蛋白を有する線状の二本鎖DNAである。DNAは、また蛋白VIIおよびmuとして周知のペプチドと伴生している(非特許文献5)。アデノウイルスのゲノムは、3つの機能的なカテゴリーにさらに分類でき、初期の遺伝子(E1A、E1B、E2、E3およびE4蛋白についてエンコードする)、遅滞遺伝子および単一の主な後期のユニットである。DNA複製、ウイルス遺伝子の転写、宿主細胞の免疫抑制および宿主細胞のアポトーシスの阻害は、初期遺伝子生成物に起因する。後期遺伝子の生成は、ウイルスアセンブリを必要とする(非特許文献6)。
【0010】
【非特許文献4】Russel,W.C.(2000)Update on adenovirus and its vectors.Journal of General virology,Vol 81 2573−2604
【非特許文献5】Russel,W.C.(2000)Update on adenovirus and its vectors.Journal of General virology,Vol 81 2573−2604
【非特許文献6】Wang I.I.and Huang I.I.(2000)Adenovirus technology for gene manipulation and functioal studies.Drug Discoveiy Today 5,10−16
【0011】
アデノウイルスの感染性サイクルは、初期の相および後期の相で規定できる。初期の相は、宿主細胞中へのウイルスの侵入次に核中へのウイルスゲノムの移動および初期遺伝子の選択的転写および翻訳をカバーする(非特許文献7)。これらの初期の事象では、ウイルスは、後期の遺伝子の翻訳を導くウイルスDNAの複製を助けるために、宿主細胞の機能を引き継ぐ。細胞の屈性における主要なファクターは、受容体の認識である。蛋白のこぶ状になった繊維は、高い親和性で、コクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)として周知の細胞表面の受容体に結合する。細胞の感染は、先ずこぶ状になった繊維のCARへの結合により開始される。ウイルスのインターナリゼーションは、表面のインテグリン−蛋白(細胞接着、細胞−細胞結合および他の細胞−細胞関連現象における細胞外マトリックスに含まれる)へのペントン塩基の追加の結合を含む(非特許文献8)、(非特許文献9)。多数のシグナル経路が、次に誘導され、ウイルス粒子のクラスリン仲介エンドサイトーシスを助ける。エンドサイトーシスは、ウイルス粒子の陥入、次にエンドサイトーシス小胞の発生を生ずるプラズマ膜の切り取りを含む。ウイルスをエンコードするプロテアーゼは、次に構造蛋白VIの分解によりウイルスキャプシドを分裂させる。ウイルスは、次に核膜に移動し、そこでゲノムは核中に入り、最初の転写を導く。ウイルスゲノムは、細胞蛋白p32の助けにより宿主の核に近づくことができると思われる。p32は、主としてミトコンドリアに見いだされるが、また核にも存在する。蛋白は、ミトコンドリアと核との間の細胞内シャトルとして働く。ウイルスは、核へ近づくためにこの細胞内シャトルシステムを支配できるように見える(非特許文献10)。
【0012】
【非特許文献7】Russel,W.C.(2000)Update on adenovirus and its vectors.Journal of General virology,Vol 81 2573−2604
【非特許文献8】Mathias,P.,Galleno,M.&Nernerow,G.R.(1998).Interactions of solble recombinant integrin αv β5 with human adenoviruses.Journal of General virology 75,3365−3374.
【非特許文献9】Meredith,J.E.,Jr,Winitz,S.,Lewis,J.M.,Hess,S.,Ren,X.D.,Renshaw,M.W.&Schwartz;M.A.(1996).The regulation of growth and intracellular signaling by integrins.Endocrinology Reviews 17,207−220.
【非特許文献10】Russel,W.C.(2000)Update on adenovirus and its vectors.Journal of General virology,Vol 81 2573−2604
【0013】
低い病的状態および高いレベルのトランス遺伝子発現は、アデノウイルスを機能的な研究において非常に魅力的なベクターにする。しかし、生体内の免疫反応の優越性は、ベクターの実際的な展開において制限ファクターである。トランス遺伝子発現の持続時間は、生体内では、感染した細胞に向かう宿主の抗アデノウイルス免疫反応により大幅に制限される(非特許文献11)。上皮細胞は、例えば、アデノウイルス感染を阻害する抗細菌性ペプチドを放出できる(非特許文献12)。他の防御機構は、感染初期におけるインターフェロンとして周知の細胞性蛋白の放出を含む。インターフェロンは、細胞のJak/STAT経路を活性化し、それは感染された細胞を排除しそして感染から健康な細胞を保護できる一連の遺伝子生成物の転写を制御するインターフェロン反応要素の活性化を生ずる(非特許文献13)。MHCクラスI抗原の範囲における感染された細胞の表面に存在するウイルス抗原のT細胞の認識は、細胞毒性T細胞からのパーフォリンの移動および感染された細胞の溶解を生ずる。ウイルスの活性は、またプログラムされた細胞死を導くアポトーシス経路を生ずる。特にガン治療では、その目的がすべての形質転換された細胞を排除することであるが、免疫反応の活性化が望ましい作用である。
【0014】
【非特許文献11】Yang,Y.,Nunes,F.A.,Berencsi,K.,Furth,E.F.,Gonczol,E.and Wilson,J.M.;Proc.Natl.Acad.Sci.1994,91:4407−4411:Cellular immunity to viral antigens limits El−deleted adenoviruses for gene therapy
【非特許文献12】Gropp,R.,Frye,M.,Wagner,T.O.&Bargon,J.(1999).Epithelial defensins impair adenoviral infection:Implication for adeiovirus−rnediated gene therapy.Gene Therapy X,957−964
【非特許文献13】Goodbourn,S.,Didcock,L.&Randall,R.E.(2000).Interferons:cell signaling,immune modulation,antiviral responses and virus countermeasures.Journal of General Virology 81,2341−2365
【0015】
腫瘍サプレッサーp53は、アポトーシスおよび細胞サイクル阻止において主要な役割をはたす(非特許文献14)。この蛋白は、Baxのような抗増殖蛋白の転写を制御する。Baxは、ミトコンドリアからのシトクロムcの放出を刺激し、それはアダプター蛋白Apaf−1および全複合体に結合し、次にプロカスパスを活性化して細胞死を導く(非特許文献15)。p53は、腫瘍蛋白マウスダブルマイニュート2、mdm2により制御される。mdm2は、p53蛋白と複合体を形成でき、そのユビキチン化およびプロテアソームによるその分解を導く(非特許文献16)。p53は、細胞に生ずるかもしれないコントロールされない細胞の増殖および突然変異のような危険な事象からの保護をもたらす。防御性p53遺伝子は、細胞について多数の有害な結果を有する。p53を欠く細胞または突然変異したp53を含む細胞は、アポトーシスを回避できそしてそれらの増殖を続ける。これらの細胞内のDNA損傷は、それぞれの新しい部分に蓄積し、一方細胞はそれらを修復できない。従って、p53の機能の損失は、ガンの発生に密接に関連している。p53の機能の損失により、突然変異細胞は、細胞サイクルを通してアポトーシスそしてそれらが分裂するときガン促進突然変異の蓄積を回避し続けることができる(非特許文献17)。
【0016】
【非特許文献14】Alberts,B.,Johnson A.,Lewis J.,RaffM.,Roberts K,Walter P.(2002).Molecular biology of the cell.Garland science
【非特許文献15】Alberts,B.,Johnson A.,Lewis J.,RaffM.,Roberts K,Walter P.(2002).Molecular biology of the cell.Garland science
【非特許文献16】Uchida T.,Minei S.,Gao,J.,Wang C.,Satoh T.,Baba S.(2002)Clinical significance ofp53,MDM2 and bcl−2 expression in transitional cell carcinoma of the bladder.Oncology Reports 9:253−259
【非特許文献17】Alberts,B.,Johnson A.,Lewis J.,RaffM.,Roberts K,Walter P.(2002).Molecular biology of the cell.Garland science
【0017】
p53遺伝子の突然変異並びに広範囲のヒトの腫瘍の発生へのその関連は、野生型p53を配合したベクターの開発を促している。これらのベクターは、未分化甲状腺ガン、ヒト悪性グリオームおよび乳ガンについて生体外および生体内でテストして成功している(非特許文献18)。
【0018】
【非特許文献18】Russel,W.C.(2000)Update on adenovirus and its vectors.Journal of General virology,Vol 81 2573−2604
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
悪性または形質転換された細胞を選択的に殺すペプチドを提供することに加えて、本発明は、これらのペプチドをコードするトランス遺伝子(transgene)を配合するアデノウイルスベクター(AdV)を提供する。これらのベクターを悪性および形質転換された細胞への投与は、これら細胞の死を生ずる。目的のAdV発現伝達体は、膵臓ガンを含む異なる潰瘍性疾患を治療するのにそれらの抗増殖性について特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、アミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドまたはそのアナログまたは誘導体を提供し、該ペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、膜浸透リーダー配列に融合しそして悪性または形質転換した細胞を選択的に死に至らしめる。
【0021】
これらペプチドの例は、PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)またはそのアナログまたは誘導体、PPLSQETFS(配列番号2)またはそのアナログまたは誘導体、ETFSDLWKLL(配列番号3)またはそのアナログまたは誘導体である。細胞膜を通って輸送されそして悪性または形質転換された細胞を選択的に殺すために、リーダー配列は、好ましくは、ペプチド、そのアナログまたは誘導体のカルボキシル末端に位置する。好ましくは、リーダー配列は、主として正の電荷を有するアミノ酸残基からなる。本発明に従って使用できるリーダー配列の例は、ペネトラチン、Args、HIV1のTAT、D−TAT、R−TAT、SV40−NLS、ヌクレオプラスミン−NLS、HIV REV(34−50)、FHVコート(35−49)、BMV GAG(7−25)、HTLV−IIREX(4−16)、CCMV GAG(7−25)、P22N(14−30)、ラムダN(1−22)、デルタN(12−29)、酵母GCN4、およびp−vecを含むが、これらに限定されない。好ましくは、リーダー配列は、アミノ酸配列KKWKMRRNQFWVKVQRG(配列番号4)を有するアンテナペディア蛋白からのペネトラチン配列である。
【0022】
製薬上許容できる担体と混合された本発明のペプチドの少なくとも1つを含む製薬組成物も提供される。さらに、患者の潰瘍性疾患を治療するすなわち患者の悪性または潰瘍性細胞を選択的に殺す方法が提供される。1つの態様では、方法は、患者に、治療上有効な量のアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドまたはそのアナログまたは誘導体を投与し、該ペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、そのカルボキシル末端で膜浸透リーダー配列に融合しそして悪性または形質転換した細胞を選択的に死に至らしめる。他の態様では、方法は、患者に、治療上有効な量の配列番号1、配列番号2または配列番号3に示される配列を有する少なくとも1つのペプチドまたはそのアナログまたは誘導体を投与することであり、膜浸透リーダー配列は、ペプチド、そのアナログまたは誘導体のカルボキシル末端に融合する。
【0023】
本発明は、また本発明のペプチドをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーターからなる複製不能アデノウイルス(AdV)ベクターを提供する。複製不能AdVの例は、例えば、欠失したE1およびE3遺伝子を有するAdVを含む。1つの態様では、ペプチドがアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドまたはそのアナログまたは誘導体からなる、本発明のペプチドをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーターからなる複製不能AdVベクターが提供される。例えば、アミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)またはそのアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーター配列からなる複製不能AdVベクターが提供される。本発明の他の態様では、アミノ酸配列PPLSQETFS(配列番号2)またはそのアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーター配列からなる複製不能AdVベクターが提供される。本発明のなお他の態様では、アミノ酸配列ETFSDLWKLL(配列番号3)またはそのアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーター配列からなる複製不能AdVベクターが提供される。
【0024】
本発明の他の構成では、患者の悪性または潰瘍性細胞を選択的に殺す方法を提供する。方法は、患者に、前記のペプチドの任意のものまたはそのアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーターからなる本発明の複製不能AdVベクターの治療上有効な量を投与することからなる。好ましくは、悪性または潰瘍性細胞は、膵臓ガン細胞である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明によれば、悪性および形質転換した細胞が、単一の連続するポリペプチド鎖としてp53蛋白内のアミノ酸の配列およびリーダー配列からなる合成ペプチドの投与により選択的に破壊されることが見いだされた。作用の機構は、p53ペプチドがp53蛋白を全く生成しない形質転換した細胞を選択的に殺すので、MDM−2蛋白に結合しているp53蛋白に無関係なように思われる。p53ペプチドは、また正常の細胞を殺すことなく正常または高レベルのp53蛋白を発現する悪性および形質転換した細胞を選択的に殺す。
【0026】
本発明によれば、ヒトp53のアミノ酸残基12−26のすべてまたは一部に相当するペプチドからなる組成物が提供される。この領域は、hdm−2およびmdm−2蛋白と接触しそしていずれかの蛋白に結合したときα−らせん構造をとることが知られている。膜浸透リーダー配列によりカルボキシ末端に融合するとき、本発明のペプチドは、悪性および形質転換したヒト細胞を選択的に殺す。
【0027】
本発明の第一の構成では、以下のアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドが提供され、少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドは、リーダー配列に融合する。好ましくは、ペプチドは、少なくとも約8から少なくとも約15のアミノ酸残基からなる。好ましい態様では、配列番号1に示される配列の少なくとも約8から少なくとも約15のアミノ酸からなるペプチドは、以下のアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)を有する。他の好ましい態様では、配列番号1に示される配列の少なくとも約8から少なくとも約15のアミノ酸からなるペプチドは、以下のアミノ酸配列PPLSQETFS(配列番号2)を有する。なお他の態様では、配列番号1に示される配列の少なくとも約8から少なくとも約15のアミノ酸からなるペプチドは、以下のアミノ酸配列ETFSDLWKLL(配列番号3)を有する。
【0028】
本発明のペプチドを細胞に運ぶ機能のリーダー配列は、種々の源から由来する。好ましくは、リーダー配列は、正の電荷を有するリーダー配列が本発明のペプチドのアルファらせんを安定化するために、圧倒的に正の電荷を有するアミノ酸残基からなる。本発明のペプチドに結合するリーダー配列の例は、(非特許文献19)に記載されており、以下の膜浸透リーダー配列を含むが、これらに限定されない(蛋白のリーダー配列を構成しているアミノ酸残基の数は、多くの場合、蛋白の名の直後にかっこで示されている)。ペネトラチン(KKWKMRRNQFWVKVQRG)(配列番号4);(Arg)8または(R)4−(R)16からの任意のポリ−R;HIV−1 TAT(47−60)(YGRKKRRQRRRPPQ)(配列番号5);D−TAT(GRKKRRQRRRPPQ)(配列番号6);R−TAT G(R)9PPQ(配列番号7);SV40−NLS(PKKKRKV)(配列番号8);ヌクレオプラスミン−NLS(KRPAAIKKAGQAKKKK)(配列番号9);HIV REV(34−50)−(TRQARRNRRRRWRERQR)(配列番号10);FHV(35−49)コート−(RRRRNRTRRNRRRVR)(配列番号11);BMV GAG(7−25)−(KMTRAQRRAAARRNRWTAR)(配列番号12);HTLV−II REX4−16−(TRRQRTRRARRNR)(配列番号13);CCMV GAG(7−25)−(KLTRAQRRAAARKNKRNTR)(配列番号14);P22N(14−30)(NAKTRRHERRRKLAIER)(配列番号15);LAMBDA N(1−22)(MDAQTRRRERRAEKQAQWKAAN)(配列番号16);PhiN(12−29)(TAKTRYKARRAELIAERR)(配列番号17);YEAST PRP6(129−124)(TRRNKRNRIQEQLNRK)(配列番号18);HUMAN U2AF(SQMTRQARRLYV)(配列番号19);HUMAN C−FOS(139−164)KRRIRRERNKMAAAKSRNRRRELTDT(配列番号20);HUMAN C−JUN(252−279)(RIKAERKRMRNRIAASKSRKRKLERIAR)(配列番号21);YEAST GCN4(KRARNTEAARRSRARKLQRMKQ)(配列番号22);KLALKLALKALKAALKLA(配列番号23);p−vec LLIIRRRIRKQAKAHSK(配列番号24)。他の膜浸透リーダー配列も使用できる。これらの配列は、非常に容易に入手でき、そして例えば(非特許文献20)および(非特許文献21)に記載されている。
【0029】
【非特許文献19】Scheller et.al.(2000)Eur.J.Biochem.267:6043−6049
【非特許文献20】Elmquist et.al.(2001)Exp.Cell Res.269:237−244
【非特許文献21】Elmquist et.al.(2001)Exp.Cell Res.269:237−244
【0030】
好ましくは、アンテナペディア蛋白のペネトラチンリーダー配列の正の電荷を有するリーダー配列が使用される。このリーダー配列は、以下のアミノ酸配列を有する。KKWKMRRNQFWVKVQRG(配列番号4)。好ましくは、リーダー配列は、p53ペプチドのカルボキシル末端に付着して、合成ペプチドが形質転換した悪性の細胞を殺すことができる。
【0031】
構造的に関連のあるアミノ酸配列は、本発明を実施するに当たって、配列番号1、2、3または4に示される開示された配列の代わりをすることができる。それらのアナログまたは誘導体を含む配列番号1、2または3に記載される任意の配列は、配列番号4に記載される配列を含むがこれに限定されないリーダー配列と結合するとき、本明細書では、「合成ペプチド」または「複数の合成ペプチド」と呼称される。これらの合成ペプチドの三次元構造を真似る固定した分子は、ペプチド類似物とよばれ、そしてまた本発明の範囲内に含まれる。p53ペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端の何れかまたはそれらの両者でのアルファらせん安定化アミノ酸残基を、それがMDM−2蛋白に結合するとき、p53蛋白のこの領域の立体配座であることが知られているアルファらせん立体配座を安定化するために添加できる。アルファらせん安定化アミノ酸の例は、Leu、Glu(特にらせんのアミノ末端において)、MetおよびPheを含む。
【0032】
本発明のペプチドのアミノ酸挿入誘導体は、アミノおよび/またはカルボキシル末端融合、並びに単一または複数のアミノ酸の配列内挿入を含む。挿入アミノ酸配列の変異型は、ランダムな挿入も得られる生成物の好適なスクリーニングにより可能であるが、本発明のペプチドにおける予定された部位中に1つ以上のアミノ酸残基が誘導されるものである。欠失変異型は、本発明のペプチドの配列から1つ以上のアミノ酸を除くことにより生成できる。置換アミノ酸変異型は、配列中の少なくとも1つの残基が除かれそして異なる残基がその位置に挿入されているものである。代表的な置換は、以下の表1に従って生成されるものである。
【0033】
【表1】
【0034】
合成ペプチドがアミノ酸置換により誘導されるとき、アミノ酸は、一般に、同様な性質例えば疎水性、親水性、電気陰性、かさ高な側鎖などを有する他のアミノ酸によって置換される。本明細書で使用されるとき、用語「誘導体」、「アナログ」、「フラグメント」、「部分」および「同様な分子」は、該誘導体、アナログ、フラグメント、部分または同様な分子が形質転換したまたは新生物の細胞に入りそして選択的に殺す能力を維持する限り、アミノ酸置換、挿入、付加または欠失を有する配列番号1、2、3または4に示されるようなアミノ酸配列を有する本発明のペプチドをいう。
【0035】
本発明の合成ペプチドは、多数の周知の技術により合成できる。例えば、ペプチドは、(非特許文献22)により最初に記述された固相技術を使用して製造できる。他のペプチド合成技術は、(非特許文献23)および当業者が容易に入手できる他の参考文献に見いだすことができる。ポリペプチドの合成技術の要約は、(非特許文献24)に見いだすことができる。ペプチドは、また(非特許文献25)に記述されたように溶液法により合成できる。異なるペプチド合成に使用される適切な保護基は、上記のテキスト並びに(非特許文献26)に記述されている。本発明のペプチドは、またp53蛋白の大部分からまたはp53蛋白全体から化学または酵素による切断によって製造できる。同様に、本発明の合成ペプチドで使用されるリーダー配列は、これらのリーダー配列が由来する蛋白の大部分または蛋白全体からの化学または酵素による切断により製造できる。
【0036】
【非特許文献22】J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154,Merrifield(1963)
【非特許文献23】M.Bodanszky et.al.Peptide Synthesis,John Wiley and Sons、第二版(1976)
【非特許文献24】J.Strurart and J.S.Young,Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Company,Rockford,III.,(1984)
【非特許文献25】The Proteins、II巻、第三版、Neurath、H.et.al.,105−237,Academic Press,New York,N.Y.(1976)
【非特許文献26】J.F.W.McOmie,Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press,New York,N.Y.(1973)
【0037】
さらに、本発明のペプチドは、また組み換えDNA技術により製造できる。蛋白をつくるのに使用されるほとんどのアミノ酸では、1つより多いコーディングヌクレオチドトリプレット(コドン)は、特別のアミノ酸残基についてコードする。遺伝コードのこの性質は、重複性として周知である。そのため、多数のヌクレオチド配列は、悪性および形質転換した哺乳動物の細胞を選択的に殺す特別の本発明のペプチドについてコードできる。本発明は、またそれから本発明のペプチドが酵素的または化学的に切断されるキメラペプチドまたは本発明のペプチドをコードするすなわち発現できる遺伝子を規定するデオキシリボ核酸(DNA)を包含する。
【0038】
培地で成長する細胞に適用されるとき、合成ペプチドは、悪性または形質転換した細胞を選択的に殺し、細胞の数を投与量に依存して低下させる。効果は、2時間内または3時間内そしてせいぜい48時間内で一般に観察できる。培地で成長したラットの膵臓腺房細胞の系(BMRPA.430)は、K−rasにより形質転換された。正常の細胞系は、膵臓腺房細胞に典型的な構造を示し、形質転換した細胞(TUC−3)は、腺房細胞の文化した形態を欠き、典型的な膵臓ガン細胞と思われる。BMRPA.430細胞が、リーダー配列番号4にカップリングした配列番号1の一次構造を有する合成ペプチドにより50μg/mLの投与量で処理されたとき、細胞は影響されなかった。しかし、TUC−3細胞が、リーダー配列番号4にカップリングした配列番号1の一次構造を有するペプチドにより100μg/mLの投与量で処理されたとき、それらは3−4日以内に死んだ。同様な結果は、同じ実験が行われたが配列番号1が配列番号2または配列番号3の何れかにより置換されたとき、得られた。さらに、形質転換したおよび悪性の細胞の死は、リーダー配列番号にカップリングした配列番号1の一次構造を有する合成ペプチドにより100μg/mLの投与量で処理されたヒト乳ガン細胞系および黒色腫およびHela細胞について観察された。対照的に、同じ投与量で同じ合成ペプチドは、非悪性および非形質転換したヒト胸部または繊維芽細胞系に対してなんら作用しなかった。
【0039】
配列番号4に示されるリーダー配列がPNC29すなわち以下のアミノ酸配列MPFSTGKRIMLGE(配列番号25)を有するコントロール蛋白のカルボキシ末端に位置したとき、悪性または正常の細胞になんら作用しなかった。
【0040】
さらに、配列番号4に示されるリーダー配列へカルボキシ末端で融合した配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するペプチドは、成長因子の存在下造血細胞系に分化するヒト幹細胞の能力になんら作用しない。これは、このペプチドが、化学治療薬として投与されるとき、骨髄細胞に有害ではないことを示している。(非特許文献27)参照。この記述は、十分に示されるならば、本明細書に参考として引用される。
【0041】
【非特許文献27】Kanovsky et.al.,(2001年10月23日)Proc.Nat.Acad.Sci.USA,98(22):12438−12443
【0042】
培養されたガン細胞が、100μg/mLの投与量で、結合したリーダー配列なしの配列番号1の一次構造を有するペプチドにより処理されたとき、細胞は影響されなかった。同様に、培養されたガン細胞が、同じ投与量で、リーダー配列番号4すなわち現在好ましいリーダー配列により処理されたとき、細胞は、また影響されなかった。これらの結果は、合成ペプチドのリーダー配列が合成ペプチドを処理された細胞の細胞膜を通ることを可能にすることを示し、そして合成ペプチドの作用が必ず細胞内であることを示している。
【0043】
合成ペプチドが、p53蛋白およびMDM−2蛋白の結合と干渉することにより働いたかどうかを決定するために、合成ペプチドは、ホモ接合の欠失によりp53蛋白を作ることができなくされた形質転換した結腸直腸腺ガン細胞についてテストされた。驚くべきことに、合成ペプチドは、形質転換した細胞を選択的に殺すが、正常な細胞に対して作用しなかった。これらの結果は、作用のメカニズムが、MDM−2蛋白に結合したp53蛋白に関係がないように見える。それは、p53ペプチドが、p53蛋白を全く生成しない形質転換した細胞を選択的に殺すからである。これらの結果は、MDM−2蛋白へのp53蛋白の結合との干渉が、それにより合成ペプチドが悪性および形質転換した細胞の選択的死を生じさせるメカニズムではないことを示している。本明細書で開示された合成ペプチド、それらの誘導体、アナログおよびペプチド類似分子は、ガンのような新生物疾患の治療に有用であるが、形質転換および悪性の細胞に対する作用メカニズムは、見いだされていない。
【0044】
本発明のペプチドは、生体内で新生物細胞に対して有効である。例えば、膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3を異種移植されしかも約3−6mmの発育した腫瘍サイズを有するマウスは、本発明の合成ペプチド、例えばカルボキシ末端でリーダー配列に融合した配列番号3に示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドの投与後、これらの腫瘍のサイズを劇的に低下させる。
【0045】
本発明のペプチドの観察された性質と一致して、本発明のペプチドは、新生物または悪性の細胞すなわち動物殊にヒトのガン細胞を選択的に殺すのに使用できる。本発明の合成ペプチドは、従って有効量で投与されて、患者のヒトまたは動物の新生物細胞を殺す。
【0046】
本発明の合成ペプチドは、好ましくは、製薬上許容できる担体とともに本発明による少なくとも1つの合成ペプチドを治療上有効な量で含む製薬組成物としてヒトの患者に投与できる。用語「治療上有効量」または「製薬上有効量」は、新生物または悪性の細胞すなわちガン細胞を選択的に殺すことを含む抑制された成長を個体に生成するのに必要な投与量を意味する。
【0047】
好ましくは、本発明の1つ以上の合成ペプチドを含む組成物は、新生物細胞を選択的に殺す従って新生物または悪性の疾患例えばガンを治療する目的で静脈内に投与される。本発明の1つ以上のペプチドを使用して有効に治療できる異なるガンの例は、乳ガン、前立腺ガン、肺ガン、子宮頸ガン、結腸ガン、黒色腫、膵臓ガンおよびすべての固形組織腫瘍(上皮細胞腫瘍)を含むがこれらに限定されず、そしてリンパ腫および白血病を含むがこれらに限定されない血液のガンを含む。
【0048】
本発明の合成ペプチドの投与は、経口、静脈内、鼻孔内、直腸内、腹腔内、筋肉内、皮内または皮下の投与によりまたは注入または埋め込みによる。これらの方法で投与されるとき、本発明の合成ペプチドは、他の成分例えば担体および/または助剤と組み合わせることができる。他の成分の性質には制限がないが、ただしそれらは製薬上許容でき、それらの目的とする投与に有効でなければならず、組成物の活性成分の活性を低下させてはならずそして本発明のペプチドの細胞中への移入を妨げてはならない。ペプチド組成物は、また好ましくは、それからパッチまたは挿入物が、本発明の合成ペプチドの1つ以上を治療上有効な量で時間依存で放出する液状または半液状の皮膚伝達パッチに含浸でき、または皮下挿入物に含まれることができる。
【0049】
注射に好適な製薬の形は、滅菌の注射可能な溶液または分散物の即時の調製のための滅菌粉末、および滅菌溶液または分散物を含む。最終の溶液の形は、すべての場合で、滅菌かつ流体でなければならない。典型的な担体は、例えば水緩衝した水溶液すなわち生体適合性緩衝液、エタノール、ポリオール例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、これらの好適な混合物、界面活性剤または植物油を含む溶媒または分散媒体を含む。滅菌は、濾過または抗菌剤または抗かび剤の添加を含むがこれらに限定されない任意の当該技術に認められている方法を利用して達成できる。これらの剤の例は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸またはチメロサールを含む。等張剤例えば砂糖または塩化ナトリウムも本発明の組成物中に配合できる。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「製薬上許容できる担体」は、任意かつすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗かび剤、等張剤などを含む。これらの媒体および剤の使用は、当業者に周知である。
【0051】
本発明の合成ペプチドを含む滅菌の注射可能な溶液の製造は、必要に応じ上記の種々の成分の1つ以上を含む適切な溶媒中に、必要な量で上記の本発明の合成ペプチドの1つ以上を配合し、次に滅菌好ましくは濾過滅菌により達成される。滅菌粉末を得るために、上記の溶液は、必要に応じ真空乾燥または凍結乾燥される。
【0052】
不活性希釈剤および/または同化可能な可食性の担体などは、ペプチドが経口的に投与されるとき、製薬組成物の一部にできる。製薬組成物は、ハードまたはソフトのゼラチンカプセル中に存在するか、または錠剤に打錠されるかまたはエリキシル、懸濁物、シロップなどに製造される。
【0053】
本発明の合成ペプチドは、従って治療上有効な投与量で好適な製薬上許容できる担体ともに製薬上有効な量で好都合かつ有効な投与に製造される。製薬上有効な量の例は、少なくとも約25μg/mLから少なくとも約300μg/mLの範囲のペプチド濃度を含む。
【0054】
ヒトに適用される本発明の方法で使用されるべき合成ペプチドの精密な治療上有効な量は、新生物疾患の段階、腫瘍のサイズおよび強さ、転移の存在または程度などの変動により述べることができない。さらに、個体の体重、性別および全体の健康は、考慮されねばならずそして投与量に影響するだろう。しかし、本発明の合成ペプチドが1投与あたり少なくとも約10mgの量、さらに好ましくは1投与あたり約1000mgまでの量で投与されることが、一般に述べることができる。本発明のペプチド組成物は最終的に血流から排除されるので、製薬組成物の再投与が指示され好まれる。
【0055】
本発明の合成ペプチドは、投与処方と適合するやり方でそして治療上有効である量で投与できる。合成ペプチドは、年齢、体重および患者の症状および投与の経路に依存する。ヒト成人への投与の好適な投与量の例は、体重1kgあたり約0.1〜約20mgに及ぶ。好ましくは、投与量は、体重1kgあたり約0.1〜約10mgである。
【0056】
本発明によって、また新生物疾患を治療する方法が提供される。方法は、この治療を要する患者に、そのアナログおよび誘導体を含む上記の合成ペプチドを治療上有効な量で投与することからなる。従って、例えば、1つの態様では、リーダー配列へそのカルボキシ末端で融合した配列番号1に示される少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、有効な量で患者に投与される。他の態様では、リーダー配列へそのカルボキシ末端で融合した配列番号1に示される少なくとも約8から少なくとも約10の連続するアミノ酸からなるペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、有効な量で患者に投与される。例えば、リーダー配列へそのカルボキシ末端で融合した配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、有効な量で患者に投与される。リーダー配列へそのカルボキシ末端で融合した配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、有効な量で患者に投与できる。なお他の態様では、リーダー配列にそのカルボキシ末端で融合した配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、有効な量で患者に投与できる。治療法によれば、合成ペプチドの混合物が投与できる。従って、例えば、有効な量で上記のペプチドまたはそのアナログまたは誘導体の1つを投与することに加えて、2つ以上の上記のペプチドまたはアナログまたは誘導体の混合物が患者に投与できる。
【0057】
本発明の他の構成では、上記で十分に記述された、複製不能アデノウイルス(AdV)を含みそして本発明のペプチドのためのコーディング配列に実施可能に結合したプロモーター配列例えば上記のペプチドすなわち配列番号1、配列番号2,配列番号3またはそれらのアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列を有する発現媒体が提供される。上記のように、1つより多いトリプレット(コドン)は、特定のアミノ酸残基についてコードできる。表2は、配列番号1、配列番号2および配列番号3に示されたアミノ酸配列をエンコードするのに使用できるコドンの異なる組み合わせを示す。配列番号1のアミノ酸配列は、太字で表の一番上のラインに示される。配列番号2および配列番号3の両者のアミノ酸配列は、この太字の部分内に見いだすことができる。表2の太字のヌクレオチド配列は、PNC−28EGのヌクレオチド配列に相当する。
【0058】
【表2】
【0059】
配列番号1、2または3に示されるアミノ酸配列のアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列を使用するには、当業者は、遺伝コードの表を参照して適切なコドンを選ぶことができる。
【0060】
Adの多数の異なるクラスが存在し、そして本発明の方法で使用できる。これらのAdベクターは、文献に記載されておりそして容易に入手できる。例えば、(非特許文献28)、(非特許文献29)参照。例えば、本発明によれば、E1および/またはE3遺伝子が除かれたAdベクターが使用でき、異種プロモーターのコントロールの下約6.5kbまでのトランス遺伝子の導入を可能にする。(非特許文献30)。欠陥E1ウイルスは、E1相補細胞系例えば293A細胞(E1遺伝子をトランスでもたらす)で増殖できる。
【0061】
【非特許文献28】Bramson,J.L.,Graham,F.L.and Gauldie,J.;Curr.Opin.BiotechnoL 1995,6:590−595:The use of adenoviral vectors for gene therapy and gene transfer in vivo
【非特許文献29】Hitt,M.M.,Addison,CL.and Graham,F.L.;Adv.PharmacoL 1996,40:137−206:Human adenovirus vectors for gene transfer into mammalian cells.
【非特許文献30】Graham FL.Smiley.J.,Russel,W.C.,and Narin,R.(1977).Characteristics of a Human Cell Line Trasnform3ed by DNA from Human Adenovirus Type 5.J.Gen.virol.36,59−74.
【0062】
別に、E1およびE3遺伝子を欠くことに加えてまたE2遺伝子を欠くAdベクターが使用できる。例えば、(非特許文献31)および(非特許文献32)参照。
【0063】
【非特許文献31】Lusky,Christ et al.,1998“In vitro and in vivo biology of recombinant adenovirus vectors with El,E1/E2A,or E1/E4 deleted”J.Virol.72(3):2022−3
【非特許文献32】O’Neal,Zhou et al.,1998“Toxicological comparison of E2a−deleted and first−generation adenoviral vectors expressing alphal−antitrypsin after systemic delivery”Human Gene Therapy.9(11):1597−98
【0064】
さらに、ほとんどまたはすべてのAdコーディング配列を欠くヘルパー依存(HD)または実質を失った(gutted)ベクターは、本発明に従って使用できる。これらのベクターは、治療遺伝子の長期にわたる発現が、マウスおよびモンキーで観察されているので、遺伝子治療用の遺伝子伝達ベクターとして大きな可能性を有する。組織培養におけるこれらの実質を失ったベクターの生成は、トランスの実質を失ったベクターの成長および組み立てに必要な蛋白を提供するために、相補的ヘルパーウイルスを要する。(非特許文献33)、(非特許文献34)、(非特許文献35)参照。これらの文献およびそれらに引用されているすべての文献を、もし十分に示されているならば、参考として引用する。
【0065】
【非特許文献33】Chen,Mack et al.,1997“Persistance in muscle of an adenoviral vector that lacks all viral genes”Proc.Nati.Acad.Sci.USA 94(4):1414−1419
【非特許文献34】Morral,N.,RJ Parks,et al.(1998)“High doses of a helper−dependent adenoviral vector yield supraphysiological levels of alpha 1−antritrypsin with negligible toxicity”Human Gene Therapy 9(18):2709−2716
【非特許文献35】Morral,O’Neal et al.,1999“Administration of helper−dependent adenoviral vectors and sequential delivery of different vector serotype for long−term liver−directed gene transfer in baboons.“Proc.Nati.Acad.Sci.USA 96(22):l2816−12821
【0066】
上述のように、新生物疾患例えばガンのウイルス治療に関する本発明では、治療の目的が目標組織の取り除きである場合、ベクター感染細胞を目標とする宿主抗Ad免疫反応が望ましいと考えられている。従って、実質を失ったAdベクターは、宿主のより強い免疫反応を誘発する初期の世代のいくつかと同様に、好ましくない。
【0067】
Adベクターは、2つのプラスミド系、すなわちエントリープラスミド、並びに上記のペプチド(配列番号1−3)およびそのアナログまたは誘導体の1つをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーターを含むE1およびE3遺伝子欠失アデノウイルスゲノムから作られたデスチネーションベクターに基づく。2つのプラスミド系は、(非特許文献36)、(非特許文献37)、および(非特許文献38)に十分に記載されている。E1およびE3の遺伝子欠失により、ウイルスは、E1およびE3蛋白を発現しない細胞を複製することを妨げられる。
【0068】
【非特許文献36】Graham FL.Smiley.J.,Russel,W.C.,and Narin,R.(1977).Characteristics of a Human Cell Line Trasnform3ed by DNA from Human Adenovirus Type 5.J.Gen.virol.36,59−74
【非特許文献37】Kozarsky,KF and Wilson JM (1993) Gene Therapy:Adenovirus Vectros.Curr.Opin.Genet.Dev.3,499−503
【非特許文献38】Krougliak V,and GrahamPL (1995).Development of Cell Lines Capable ofComplementing El,E4,and Protein IX Defective Adenovirus Type 5 Mutants.Hum.Gene Ther.6,1575−1586
【0069】
例えば、エントリープラスミドは、そのプラスミドがラムダ組み換え反応によりAdV中にクローンされる本発明のペプチドをエンコードする遺伝子を含む。複製不能ベクターは、293A細胞で増殖し、それはAdVゲノムDNAにより形質転換されたバイオエンジニアリングにより作られたヒト胚腎細胞である(非特許文献39)。この細胞系は、ウイルス複製に必要な欠失遺伝子を補給する。
【0070】
【非特許文献39】Wang I.I.and Huang I.I.(2000)Adenovirus technology for gene manipulation and functional studies.Drug.Discoveiy Today 5,10−16
【0071】
本発明の複製不能AdVベクターは、標準の組み換えDNA法を使用して構築できる。ベクターの構築のための標準の技術は、当業者に周知であり、そして文献例えば(非特許文献40)、または非常に入手可能な組み換えDNA技術に関する多数の実験マニュアルの任意のものに見いだされる。種々の戦略は、DNAの連結フラグメントについて利用可能であり、その選択は、DNAフラグメントの末端の性質に依存しそして当業者によって容易に決定できる。本発明のペプチドをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合できる多数の異なるプロモーターが存在する。プロモーターは、本発明のAdVベクターによる本発明の実施されるウイルス治療の細胞において機能しなければならない。本発明のAdVベクターで使用できる多数の広く利用できるプロモーターが存在する。これらプロモーターの例は、CMV、SV40、RSV、LTR、ベータ−アクチン、EF−アルファ、Gal−Elb、UbC、ベータ−カゼイン、EM−7、EF、TEF1、CMV−2およびBsdを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、プロモーターはCMVである。
【0072】
【非特許文献40】Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.;Molecular cloning.A laboratory manual.2nd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989,Cold Spring Harbor,NY
【0073】
組み換えベクターは、次に(非特許文献41)Stow,N.D.1981(もし十分に示されるならば、参考として引用される)に記載されたような標準の方法を使用して未処理のウイルス中に再建される。未処理のウイルス中へ組み換えベクターを再建することを記述している他の文献は、(非特許文献42)Crouzet J.L.Naudinら、1997(また十分に示されるならば、参考として引用される)を含む。
【0074】
【非特許文献41】Stow,N.D.,1981,“Cloning a DNA fragment from the left−hand terminus of the adenovirus type 2 genome and its use in site−directed mutagenesis”J.Virol.37:171−180
【非特許文献42】Crouzet J,L.Naudin et al.,1997,“Reconibinational construction in Escherichia coli of infectious adenoviral genomes“Proc.Natl Acad.Sci.USA 94(4):1414−1419
【0075】
一度本発明のAdVベクターが構築されるならば、それは異なるタイプのガンにかかった患者を治療するのに使用できる。新生物疾患(ガン)の治療は、これらの疾患にかかった患者に、本発明のアデノウイルスベクターからなる組成物を投与することにより達成される。ガンにかかったヒトの患者またはヒト以外の哺乳動物は、有効な抗新生物投与量の本発明のベクターを投与することにより治療できる。本発明のペプチドをエンコードするヌクレオチドに実施可能に結合したプロモーターからなる本発明のAdVベクターは、乳ガン、前立腺ガン、肺ガン、子宮頸ガン、結腸ガン、黒色腫、膵臓ガンおよびすべての固形組織腫瘍(上皮細胞腫瘍)を含むがこれらに限定されず、そしてリンパ腫および白血病を含むがこれらに限定されない血液のガンを含む。好ましい態様では、治療されるガンは、膵臓ガンである。
【0076】
感染性アデノウイルス粒子の懸濁物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下および局所を含む種々の経路により新生物組織に適用できる。他の経路は、霧としての吸入(例えば、肺ガンの治療)、または例えばもし必要ならば手術中または子宮頸ガンのような腫瘍部位を綿棒で塗るような直接の適用を含む。アデノウイルス懸濁物は、また例えば卵巣ガンを治療するための腹腔中への点滴により投与できる。他の好適な経路は、浣腸(結腸ガン)またはカテーテル(膀胱ガンの場合)により、腫瘍の塊例えば乳ガン中への直接の注射を含む。
【0077】
実際の投与は、年齢、体重、ガンのタイプおよび進行度、1つ以上の腫瘍の位置、転移の存在および患者の全体の状態に基づいて患者ごとに異なる。しかし、1mLあたり約103〜約1015またはそれ以上のビリオン粒子を含むアデノウイルス懸濁物が投与されると、一般にいわれる。AdVベクター懸濁物の再投与は、必要に応じ行われる。
【0078】
本発明のAdVベクターは、薬理学的に有効な量の1つ以上の本発明のAdVベクターを含む滅菌組成物で混合される。一般に、組成物は、水性懸濁物中で約103〜約1015またはそれ以上のAdV粒子を含む。滅菌組成物は、通常、例えば水、緩衝された水、0.4%塩水、0.3%グリシンなどのような水溶液である。これら組成物は、例えば生理学的な条件を模倣するための製薬上許容できる補助物質、例えばpH調節および緩衝剤、毒性調節剤など、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含むことができる。組成物は、また本発明のAdVベクターによる細胞の感染を増加する助剤を含むことができる。
【0079】
以下の実施例は、本発明をさらに説明しそしてその範囲を制限することを意味するものではない。
【実施例1】
【0080】
以下の実験は、アミノ酸の末端に付着したリーダー配列を有する本発明のペプチドの有効性を比較するために行われた。上述したように、カルボキシ末端においてリーダー配列により合成されたペプチドは、MDM−2に結合したとき、このペプチドのp53部分の活性なコンホメーションであるペプチドのへリックスらせん形成を促進した。上述のように、配列番号1、2および3に示されたアミノ酸配列を有する本発明のペプチドは、同型的にp53遺伝子を欠失したものを含む広範囲のヒトガン細胞に対して強い毒性を有する。配列番号1、2および3に示されたアミノ酸配列を有するそれぞれのペプチドに関するα−へリックスの確率のプロフィルは、2つの異なる方法、すなわち1つは蛋白のデータベースからのへリックスの確率を使用するもの(非特許文献43)そして他は、(非特許文献44)および(非特許文献45)に記載されたように、これらのパラメーターに対する電荷の影響を含むことにより改変された、20の天然Lアミノ酸のそれぞれに関するブロックコポリマーから実験的に決定された平衡定数、らせん核形成(σ)および成長(s)に基づくIsingモデルを使用するものを使用して行われた。確率プロフィルは、もしリーダー配列がアミノ酸末端にあるならば、たとえペプチドが細胞膜を横切っているとしても、α−へリックス定数は、遙かに低いことを示した。
【0081】
【非特許文献43】Karplus,K.et al.1998,Bioinformatics 14:846−856
【非特許文献44】Vasquez、M.et al.1987,Biopolymers 26:351−372
【非特許文献45】Vasquez、M.et al.1987,Biopolymers 26:373−393
【0082】
配列番号3に示された配列を有するペプチドは、アミノ酸の末端に付着したリーダー配列による固相合成により合成された。このペプチドは、以下の表3においてPNC28’とラベルされる。PNC28’ペプチドは、3つの異なる濃度すなわち25、50および100μg/mLで、形質転換した膵臓ガン(TUC−3)細胞とインキュベートされた。インキュベーション2週後、最高の投与量のペプチドで、細胞の死がなく、そして細胞のほぼ半分が腺房を形成するのが見られ、そして未形質転換の形態の表現型を示した。同じ現象は、50μg/mLで観察され、そして25μg/mLでは、顕著に少ない細胞が復帰したのが見られた。対照的に、リーダー配列がペプチドのカルボキシ末端に付着したとき(表3のPNC28)、50および100μg/mLの投与量で、100%の細胞の死が約4日で生じた。
【0083】
これらの結果は、リーダー配列が、p53ペプチドのMDM−2部分のカルボキシル末端に選択的に付加して、ペプチドをして細胞膜を横切らせそして特異的に悪性細胞を殺すことを可能にすることを示す。表3では、リーダー配列は、KKWKMRRNQFWVKVQRG(配列番号4)である。
【0084】
【表3】
【0085】
これらの結果は、本発明の特異性、すなわち正の電荷を有する残基のリーダーまたはクラスターがガン細胞の毒性に関して任意のエフェクターペプチドのカルボキシ末端に配置されなければならないことを示す。
【実施例2】
【0086】
体重20−22gのNu/Nuマウス(Harlan Laboratories,Indianapolis,IN,n=10)に、左の後脚の領域に、生きている膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3(1x106細胞/マウス)を皮下(s.c.)に異種移植した。腫瘍は、発生し成長させ、そして毎日の検査中すべてのマウスが、非常に同様の成長速度で腫瘍を発育させることが観察された。
【0087】
12日後、腫瘍は直径3−6mmのサイズに達し、そしてマウスをそれぞれ5匹ずつの2つの群に分けた。それぞれの群には、Alzet(商標)浸透圧ポンプをs.c.で埋め込み、一定速度かつ14日間の規定された期間で、20mg/マウスの濃度でそれぞれのペプチドを含む全体積0.095mLの規定の塩水を注入した。マウスの1つの群は、ペネトラチンリーダー配列(配列番号4)へそのカルボキシ末端で融合したPNC−28(配列番号3に示されたアミノ酸を有するペプチド)を用い、そしてマウスの他の群は、PNC−29すなわち以下のアミノ酸配列MPFSTGKRIMLGE(配列番号25)を有する同様なサイズのコントロールペプチドを用いた。ポンプは、製造者のガイドラインに従いそして滅菌条件で満たされた。ポンプを、そのなかに小さいポンプが挿入されたマウスの皮膚の下にポケットをつくることにより麻酔されたマウスの左の脇腹にs.c.で埋め込んだ。それぞれのポケットは、簡単な縫合により閉じられた。それらの内側の室から、ポンプは、それぞれのマウスに0.25μL/時で連続して注入した。マウスは、かれらが動物施設の分離棟へ戻されるとき、手術から回復するまで観察された。動物がNu/Nuマウスであり従って易感染性であるため、かれらは病原体に曝されたとき、非常に影響を受けやすい。手術並びにすべての手術前および後の処置は、そのため、滅菌フードの環境で行われた。
【0088】
図1に明らかに示されるように、マウス中への注入48〜72時間以内のPNC−28は、腫瘍の成長を有効に停止させる。対照的に、コントロールペプチドPNC−29は、正常または腫瘍の細胞になんら作用しなかった。PNC−29で処理されたマウスでは、腫瘍は、連続する速度で成長を続け、2週間の処置そしてポンプが全くペプチド溶液を放出することを止めた以後の期間にわたり10〜16mmの直径の腫瘍になった。マウスの両方の群における腫瘍のサイズの測定の統計分析は、p<0.001のそれらの間の有意をもたらした。
【実施例3】
【0089】
実施例2の同じ方法を用い、生きた膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3(1x106細胞/マウス)がマウス(n=10)中に異種移植されたときと同時にポンプを開始した。5匹のマウスにはPNC28が投与され、そして5匹のマウスは全く処置されなかった(偽処置)。結果は以下の通りである。
【0090】
【表4】
【0091】
【実施例4】
【0092】
実施例2に記載されたのと同じ方法を用い、生きた膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3(1x106細胞/マウス)を5匹のマウスの腹腔に移植した。ポンプを、腫瘍細胞の移植と同時に右肩の領域に入れた。5匹のマウス全部では、3週間後肉眼で腫瘍は見られなかった。
【実施例5】
【0093】
AdVベクター構築における材料および方法
細胞および細胞培養:Invitrogen(Carlsbad、CA)から得られた293A細胞を、クリオバイアルから解凍し、そしてDMEM,2mM L−グルタミン、10%胎児ウシ血清(FBS,Atlanta Biologicals,Norcross,GA)および1%ペニシリン−ストレプトマイシン(cDMEM)からなる培地中で75cm2組織培養フラスコ(TCF,Corning)で成長させた。細胞は、CO2−95%空気の混合物を供給されたインキュベータで37℃で成長した。培地を2日置きに変えた。細胞が90〜95%密集成長したとき、それらを1xPBSで洗い、1xトリプシンにより外し、そして新しいTCF中に継代した。
【0094】
BMRPA1.TUC3細胞(生きた膵臓ガン細胞)は、コドン12における発ガン突然変異(Gly12→Val12)を有するヒトk−ras遺伝子およびネオマイシン抵抗性遺伝子を含むプラスミドによる正常のラット膵臓腺房細胞(BMRPA1)のトランスフェクションにより生成された。生体外のコントロールされない細胞増殖、接触阻害の損失、低栄養素培地における成長および生体内の腫瘍の形成は、この形質転換した膵臓細胞系の特徴である。(非特許文献46)または(特許文献2)2003年1月17日に出願された継続中の予備特許出願番号60/440699、この出願はもし十分に示されるならば本明細書で参考として引用される)。BMRPA1.TUC3細胞は、微量元素、成長因子および10%FBSを含む半合成RPMI培地(cRPMI)で成長させた(Bradu,2000)。培地を2日置きに変えそして細胞を90−95%の密集成長で継代した。
【0095】
【非特許文献46】Bradu S(2000).An in vitro Model of Pancreatic Carcinogenesis:Characterization of transformation−associated biological and molecular alterations induced by thetobacco smoke carcinogen NNK in rat pancreatic BMRPA1 cells.PhD Thesis,School of Graduate Studies,SUNY−HSC at Brooklyn
【特許文献2】2003年1月17日に出願された継続中の予備特許出願番号60/440699
【0096】
PNC−28EGの合成:ペプチド配列、開始コドン(ATG)、停止コドン(TAG)、Not IおよびKpn I制限部位(New England BioLabs Inc.Beverly,MA)および追加の4塩基対(適切な制限酵素結合のために必要である)を含む2つの一本鎖DNAフラグメントを、Invitrogen,Carlsbad,CAによりこの研究のために合成した。2つの一本鎖を95℃で5分間アニーリングし、そして以下のプライマーGAGTGCGGCCGCTTCTAGAGG(PNC−28EG−Rev)、ATCCGGTACCAAATGGAGACC(PNC−28EG−Frw)およびTaqポリメラーゼを使用して25μLの反応体積でPCRによって増幅した。誤った初回免疫の可能性を防ぐために、PNC−28EG−FrwおよびRevを10pモルの濃度で使用した。次に、5μLのPCR生成物を100bpマーカー(Invitrogen)とともに2%アガロースゲルで分析して、62bpの遺伝子の長さを立証した。
【0097】
ポリメラーゼ連鎖反応:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、生体外で別個のDNAフラグメントを増幅するのに役立つ方法である。この目的のために、二本鎖DNAは、まず変性されそして複製されるべきDNAフラグメントに並ぶ2つの相補性オリゴヌクレオチド(プライマー)によりアニーリングされる。2つのプライマーの間のDNAフラグメントは、Taqポリメラーゼ(Qiagen,Valencia,CA)を用いて合成された。これらの3つの段階の繰り返しにより、最初のセグメントは理想的に2x倍に増幅され、この場合xはサイクルの数である(非特許文献47)。最後に、すべての不完全な鎖合成は、追加の長い延長時間により完成された。他に述べていない限り、PCRの条件は、以下の通りであった。5分95℃(変性)、次に1分95℃(変性)、1分50℃(アニーリング)、1分72℃(延長)の30サイクル、次に72℃で10分の最終の延長時間。
【0098】
【非特許文献47】Saiki,R.K.,Scharf,S.J.,Faloona,F.,Mullis,K.B.,Horn G.T.,Erlich,H.A.and Arnheim,N.(1985)Science,230,1350
【0099】
他に述べていない限り、すべてのPCR生成物は、DNAバンドを染めるためのエチジウムブロミド(10mg/mL)7.5μLを含む1xTBE(トリス、硼酸、EDTA)100mLあたり2gのアガロース(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)により製造された2%アガロースゲルで分析された。DNA生成物は、70ボルトで分離されそして紫外線照明により分析された。
【0100】
pCR2.1におけるPNC−28EGのクローニングおよびTOP10感応E.coliの形質転換:PNC−28EGを配列するために、PCR生成物を、InvitrogenのTOPOクローニングおよび形質転換のプロトコールに従ってpCR2.1Topoベクター(Invitrogen)にクローンした。pCR2.1Topo/PNC−28EGベクター(2μL)をTOP10化学的感応E.coli(Invitrogen)に添加し、そして30分間氷上でインキュベートし、42℃で水浴でヒートショックし、250μLのSOC培地(Invitrogen)でインキュベートし、そして37℃で1時間200rpmでショックをかけた。100μLのこの混合物を選択アンピシリン(50μg/μL)アガロースプレートにおいた。細菌を1晩増殖させ、そしてコロニーを正確なサイズにされた遺伝子の存在についてPCRにより分析した。
【0101】
pCR2.1Topo/PNC−28EGに関する細菌コロニーの分析:いくつかの反応混合物を、1μLのPNC−28EG−Rev(10pモル)、1μLのPNC−28EG−Frw(10pモル)、0.5μLのdNTP(Qiagen)、0.5μLのTaqポリメラーゼ、2.5μLの10xBuffer(Qiagen)および19.5μLの滅菌水をそれぞれ含むことにより調製した。選択されたコロニーは、接種ループにより取り出し、そして反応混合物を含む予めラベルされた0.5mLのポリプロピレン管(USA Scientific,Ocala,FL)中に移し、そしてPCRを行った。添加する緩衝液(5μL)および5xFicollを8μLのPCR生成物に添加し、そしてPCR生成物を2%アガロースゲルで分析した。
【0102】
組み換えプラスミドを含むコロニーを、Lurea Bertani(LB)ブロス(50μg/μLのアンピシリンを含むLBブロス)で37℃で1晩成長させた。細菌を採集し、pCR2.1Topo/PNC−28EGを、QiagenのMiniprepプラスミド単離キットを使用して単離した。単離したプラスミドの濃度を、配列決定前にOD260nm/280nmで測定した。
【0103】
エントリーベクター(pENTR11/PNC−28EG)の構築:エントリーベクターは、PNC−28EGをpENTR11にクローニングすることにより構築された。PNC−28EGをpCR2.1Topoから精製し、そして製造者の指示(Invitrogen)に従ってpENTR11の曝された末端に結合した。連結反応のために、pCR2.1Topo/PNC−28EGおよびpENTR−11をKpn1,Not1(New England Biolabs Inc.Beverly,MA)により消化し、DNAフラグメントをアガロースゲルで分離しそしてゲル抽出により精製した。
【0104】
Kpn1消化:60μgのpCR2.1Topo/PNC−28を、30μLのpCR2.1Topo/PNC−28(2μg/μL)、6μLのKpn 1(10単位/μL)、5μLの10xBuffer(酵素を補充する)および9μLの滅菌水を含む50μLの反応物中で60単位のKpn 1により1時間37℃で消化した。消化は、フェノールクロロホルム抽出およびエタノール沈殿を次に行い、Not1によるさらなる消化と干渉する蛋白および酵素を除いた。25μLの1:1フェノール クロロホルムを消化したサンプルに添加した。サンプルを15秒攪拌しそして3分間13,000rで遠心分離した。3層は、遠心分離後サンプル中で確認でき、プラスミドを含む重ねるものを、中間層または界面を乱すことなく新しい管に注意して移した。プラスミドを次に100μLの100%エタノールおよび5μLの3M Na−アセテートを添加することにより沈殿させ、次に−80℃においた。1時間後、管を−80℃から取り出し、20分間13,000rpmで遠心分離してプラスミドをペレットにした。上澄をペレットを乱すことなく取り出した。予冷した70%エタノール(150μL)を添加しそして管をさらに5分間の遠心分離にかけた。エタノールのすべての痕跡を管から除き、ペレットを残して10分間風乾した。
【0105】
Not1消化:ペレットを38.5μLの滅菌水により再溶出し、そして上述したKpn 1消化と同じ条件下でNot1により消化した。すなわち60単位のNot1(6μL)、5μLの10xBuffer(Not1酵素を補充する)、0.5μLの100xBSAおよび38.5μLの滅菌水、37℃、1時間。
【0106】
pENTR11(20μg)を、pCR2.1Topo/PNC−28EGエントリーベクターについて記述したのと同じ方法で、pCR2.1Topo/PNC−28EGベクターと平行してKpn IおよびNot1制限酵素消化により処理した。
【0107】
ゲル抽出:Ficoll(5x、20μL)を50μLの反応物に添加し、全混合物を5分間70Vで1%アガロースゲルで分離した。ゲルを、PNC−28EGを含む適切なサイズのバンドを削り取る場所についてUV光の下分析した。PNC−28EGを、Qiagenのゲル抽出キットを使用してアガローススラブから精製した。PNC−28EGを次にT4DNAリガーゼ(New England Bio Labs Inc.Beverly,MA)により線状化pENTR11に連結して、pENTR11/PNC−28EGエントリーベクターを構築した。
【0108】
連結反応:両方のサンプルをOD260nm/280nmで定量し、連結反応に必要な両方のサンプルの最後の濃度を決定した。8.5μLのPNC−28EG、8.5μLのpENTR11、1μLのT4−DNAリガーゼ、2μLの10xBuffer(リガーゼを補充する)を含む連結反応を実施した。反応混合物を16℃で4時間インキュベートした。2μLの連結反応物をE.coliに形質転換した。形質転換したE.coli混合物(100μL)を選択カナマイシン(50μL/mL)アガロースプレートに広げた(50μL/μL)。プレートで成長したコロニーを、特異的プライマーとしてPNC−28EG初回免疫オリゴヌクレオチド(PNC−28EG FrwおよびRev)を使用してPCR増幅にかけた。生成物を2%アガロースゲルで分析してpENTR11へのPNC−28EGの適切な連結反応を決定した。PNC−28EGポジティブコロニーを選択しそして50μLのカナマイシンを含む25mLの液体培地で1晩成長させた。pENTR11/PNC−28ベクターを、Qiagenのミニプレップ単離キットを使って細菌から単離した。
【0109】
PNC−28を含むAdV(pAd/CMV/V5/PNC−28EG)の構築:完全pENTR11/PNC−28EG(202.5ng)を、Invitrogenのラムダ組み換え(LR)プロトコールに従って、2時間25℃のインキュベーション中150ngのpAD/CMV/V5−DESTベクターにクローンした。反応混合物(1μL)を使用してE.coliを形質転換して、次に選択アンピシリンアガロースプレートにおいた。1晩の成長後、コロニーをランダムに取り出し、そして特異的プライマーとしてPNC−28EGオリゴヌクレオチドを使用してPCR増幅にかけた。PNC−28EGポジティブコロニーを選択アンピシリンLBブロスで培養し、そしてそれらのベクターをDNA配列決定のために単離した。PNC−28EGの正確なDNA配列を含むベクターから、4μgをPac I制限酵素(New England Bio Labs Inc.Beverly,MA)により消化し、そして293A細胞中に形質転換して新しく構築されたウイルス(pAd/CMV/V5/PNC−28EG)を増殖した。
【0110】
pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスを増殖するための293A細胞のトランスフェクション:293A細胞を、トランスフェクションの前日に2mLのcDMEMを含む6穴の皿に1穴あたり5x105細胞で接種した。トランスフェクションの日に、cDMEMを、10%のFBSを含む1.5mLのOpti−MEM(Invitrogen)により置換した。1μgのpac I消化pAD/CMV/V5−GW/LacZベクターを250μLのOpti−MEMで希釈し、そして3μLのリポフェクタミン2000を250μLのOpti−MEMで希釈した。溶液を5分間室温でインキュベートし、混合しそしてさらに室温で20分間インキュベートした。混合した溶液を6穴皿の穴に添加し、細胞を37℃でインキュベートしそして2−3日毎に養分をあたえた。細胞を、細胞分解が明らかになるまで(14日以内)成長させた。細胞の80−90%が分解した後、ウイルスを含む上澄を採集し、次に細胞懸濁物を凍結(−80℃)および解凍(37℃)した。凍結と乾燥との3サイクル後、細胞のフラグメントを15分間3000rpmで遠心分離することによりペレット化し、上澄を回収し、1mL容のクリオバイアルに入れ、将来の使用のために−80℃で貯蔵した。
【0111】
pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスによるBMRAP1.TUC−3のトランスフェクション:細胞は、ウイルスが細胞系で複製できないとき、トランスフェクションされるよりもむしろ形質導入されるといわれている。形質導入の前日に、BMRAP1.TUC−3細胞を1穴あたり1x105細胞の濃度で6穴のプレートに接種した。形質導入の日に、pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスを、cRPMI中に10−9から10−4の10倍希釈で希釈して最終体積を1mLにした。培地の廃物を除き、pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスの1mL希釈物をそれらのそれぞれの穴に添加した。次の日、ウイルスを含む培地をそれぞれの穴から取り出し、そしてプラーク化培地(3%のFBSを含むcRPMI)および4%のアガロースからなる予め加温(65℃)されたアガロースの重ねるもの2mLをそれぞれの穴に添加した。プレートを37℃の加湿CO2インキュベータに戻した。最初の重ねるものの添加3日後、1mLの追加の重ねるものをそれぞれの穴に加えた。293A細胞は、コントロールBMRAP1.TUC−3を提供するためにpAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスと同じ方法でトランスフェクションされ、そして293A細胞は、細胞分解の徴候のために14日にわたってモニターされた。
【0112】
pAd/CMV/V5/PNC−28EGベクターによるBMRPA1.TUC3細胞のトランスフェクション:トラスフェクションの日、BMRAP1.TUC3細胞を離し、そして10%FBSを含む抗生物質のないcRPMI培地中で1x105細胞の濃度で6穴のプレート中に接種し、そして4時間接着させた。pAd/CMV/V5/PNC−28EGベクター(4.0μg)を250μLのOpti−MEMに希釈し、そして10μLのリポフェクタミン2000を250μLのOpti−MEMで希釈した。溶液を室温で5分間インキュベートし、混合しそしてさらに室温で20分間インキュベートした。次に、混合物を細胞に添加した。コントロールのために、BMRAP1.TUC3細胞のセットをpAd/CMV/V5−GW/LacZベクターによりトランスフェクションし、そして細胞の第三のセットは10μLのリポフェクタミン2000のみを用いた。プレートを37℃の加湿CO2インキュベータに戻した。24時間および48時間後、穴のそれぞれのセットの上澄を集め(2mL)、遠心分離し、そしてペレット化非接着細胞をカウントした。それぞれの場合、穴を2mLの新鮮な培地で補充した。トランスフェクション72時間後、各穴からの上澄を集めそして非接着細胞をカウントし、接着細胞を0.5mLの1xトリプシンに離し、血球計およびトリプシンブルー排除(非特許文献48)によりカウントした。写真は、400ASA富士フィルムをつけた倒立サイズZeiss顕微鏡で撮った。
【実施例6】
【0113】
【非特許文献48】Michl J.DJ Ohlbaum,SC Silverstein,1976.2−Deoxyglucose selectively inhibits Fc and complement receptor−mediated phagocytosis in mouse peritoneal macrophages.JExp Med,144:1465−1483
【0114】
結果
アデノウイルスベクターの構築は、保守的部位特異性組み換えに基づく。細菌ウイルスであるバクテリオファージラムダは、保守的部位特異性組み換えを示したと理解される最初のミクロ実体であった。ウイルスがその宿主細胞中に入るとき、ラムダインテグラーゼとよばれる酵素が合成される。この酵素は、細菌染色体中へのウイルスDNAの共有結合を仲介し、ウイルスDNAをして宿主のDNAの必須部分として複製を可能にする(非特許文献49)。組み換えは、バクテリオファージおよび細菌染色体に見いだされる関連するが異なるDNA認識部位に基づく。バクテリオファージインテグラーゼは、バクテリオファージに見いだされるDNA配列に結合し、そしてDNA−蛋白複合体を形成する。この複合体は、細菌染色体に見いだされる付着DNA配列に結合できる。インテグラーゼは、次に部位特異的鎖交換を生ずるDNAを切断かつ再閉する反応を触媒化できる。
【0115】
【非特許文献49】Alberts,B.,Johnson A.,Lewis J.,Raff M.,Roberts K,Walter P.2002).Molecular biology of the cell.Garland science
【0116】
バクテリオファージ−宿主組み込みを行う同じメカニズムは、アデノウイルスベクターpAd/CMV/V5/PNC−28EGのデザインに存在する。PNC−28(PNC−28EG)をエンコードする遺伝子は、PNC−28EGの発現に必要なプロモーターを欠くエントリープラスミド中にクローンされ、従って転写的に不活動といわれる。エントリープラスミドは、特異的な組み換え部位を含み、それはトラス遺伝子と並びそしてアデノウイルスデスチネーションベクターpAd/CMV/V5−DESTの組み換え部位に相当する。pAd/CMV/V5−DESTベクターは、PNC−28EGの転写および翻訳を行う必要なプロモーターを含む。組み換え反応によって、PNC−28EGは、pAd/CMV/V5−DESTベクター中にサブクローンされて、アデノウイルスベクターpAd/CMV/V5/PNC−28EGを生ずる。pAd/CMV/V5/PNC−28EGは、適切なウイルスパッケージングおよびアデノウイルス生成に必要な遺伝子および要素をエンコードするヒトアデノウイルスタイプ5配列を含む。しかし、それはE1およびE3配列を欠いて、これらの遺伝子を補給しない細胞系においてそれを複製不能にする。
【0117】
新しく構築されたpAd/CMV/V5/PNC−28EGベクターが膵臓ガン細胞における抗ガン剤としてテストされる前に、ウイルスの複製可能な性質を知ることがzベクターが膵臓ガン細胞における抗ガン剤としてテストされる前に、ウイルスの複製可能な性質を知ることが重要である。上述のように、pAd/CMV/V5/PNC−28EGは、アデノウイルスゲノムに見いだされるE1およびE3配列を欠き、そしてこれらの不足した遺伝子を発現するようにバイオエンジニアリングによりつくられた293Aのような細胞系でのみ複製可能である(非特許文献50)。すべての哺乳動物の細胞系の完全なゲノムは、なお未知であり、そのため、膵臓ガン細胞系BMRPA1.TUC−3がこれらの遺伝子を発現するかどうか、そして細胞死をおそらくもたらすAdウイルスのこのタイプの複製を支持するかどうかは未知数であった。PNC−28は、膵臓ガンで細胞分解を誘導するが、感応細胞においてウイルス複製を行うメカニズムも細胞死を誘導する。治療手段へのpAd/CMV/V5/PNC−28EGの開発では、膵臓ガン細胞における細胞死が、PNC−28遺伝子の転写および翻訳に基づくものでありそしてウイルス複製によらなかったことを確かめることが重要であった。
【0118】
【非特許文献50】Wang I.I.and Huang I.I.(2000) Adenovirus technology for gene manipulation and functional studies.Drug Discovery Today 5,10−16
【0119】
pAd/CMV/V5/PNC−28EGトランスフェクション細胞の細胞分解の原因を確かめるために、PNC−28EGを欠いたコントロールアデノウイルスベクターすなわちpAd/CMV/V5−GW/LacZを要した。pAd/CMV/V5−GW/LacZは、構築されたpAd/CMV/V5/PNC−28EGベクターと同じであるが、ただしそれはPNC−28EGの代わりにLacZ遺伝子を含んだ。コントロールベクターは2つの利点をもたらした。すなわち、それはPNC−28EGを欠いておりそのためコントロールとして働きそしてガラクトシダーゼ発現が容易に検出される。粗製のウイルス原料は、pAd/CMV/V5−GW/LacZ、脂質に基づくトランスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000により293A細胞をトランスフェクションすることにより得られた。接着細胞の80〜90%が分解したとき、ウイルスを採集した。この最初の原料は、1x107−1x108プラーク形成単位(pfu)のウイルス力価を含んだ。粗製ウイルス原料は、より高い力価を生成するために再び293A細胞をトランスフェクションするのに使用した。1x108−1x109pfuの力価が得られそしてこのような高い力価が望ましい。6つの10倍希釈がpAd/CMV/V5−GW/LacZに行われ、1x10−9−1x10−4に及んだ。これらの希釈物は、それぞれ293Aを含む6穴プレートの穴並びにBMRAP1.TUC3細胞を含む第二の6穴のプレートの穴に添加された。ウイルスは293A細胞で複製したので、293A細胞の分解は、ウイルスが適切に働いていたことを立証するコントロールとして働いた。次の日、アガロースの重ねるものを細胞の上に置き、そしてそれらは2週間の間プラークの形成についてモニターされ、初めの日から4日後、第二のアガロースの重ねるものを加えた。図2に示されるように、明らかな形態上の変化が293Aについて見られるが、BMRPA1.TUC3細胞ではそうではなかった。
【0120】
図2A−2Hは、293AおよびBMRPA1.TUC3細胞に対するpAd/CMV/V5−GW/LacZの作用を示す。図2A−2Fは、293A細胞の希釈物(pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスの10−9−10−4)の顕微鏡写真である。14日後、293A細胞の形態は変化した。10−9希釈物では、90%の細胞はなお密集成長しているが、しかし細胞分解は肉眼では認められない。pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスの濃度を上げると、丸くなり死んだ細胞の大きな面積が肉眼で確認される。密集成長が低い少数の領域のみが、10−5より高い濃度のpAd/CMV/V5−GW/LacZで検出できる。
【0121】
図2Gおよび2Hは、10−9〜10−4のpAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスが添加されたBMRPA1.TUC3細胞の希釈物の顕微鏡写真である。細胞分解の肉眼で確認できる徴候は、任意のpAd/CMV/V5−GW/LacZ希釈物(10−8〜10−5は示されず)でBMRPA1.TUC3培養物で検出できず、細胞は、それらが最低の濃度10−9希釈(図2G)と同じく、10−4希釈で密集成長する(図2H)。
【0122】
BMRPA1.TUC−3細胞は、細胞分解または細胞死の徴候を示さなかった。これは、BMRPA1.TUC3細胞が欠失したE1およびE3遺伝子を補充せず、その結果ウイルスは複製不能であることを示す。もしウイルスがBMRPA1.TUC3培養物に細胞分解を生じさせるならば、それは目標細胞中への細胞毒性PNC−28遺伝子の導入のための好適な候補者と考えられないだろう。
【0123】
Ad/CMV/V5/PNC−28の構築:PNC−28EGの合成は、Adベクター構築の最初の段階であった。(非特許文献51)により公開されたPNC−28のアミノ酸配列(ETFSDLWKLL)に相当する2つのオリゴヌクレオチドが合成された。PNC−28ペプチドをエンコードするのに加えて、オリゴヌクレオチド配列も開始コドン、停止コドン、Kpn 1およびNotI解裂部位およびそれぞれの末端の4つの追加の塩基(DNAフラグメントを安定化しそして制限部位への適切な酵素結合に必要であった)を含んだ。Kpn 1およびNotI制限部位は、それらがpENTR−11ベクターの複数のクローニング部位(MCS)に存在したために、選ばれた。pENTR−11のKpn 1およびNotI制限部位の解裂は、突き出した末端を曝し、そしてpENTR11ベクター中への62bpの全配列(図3)とのPNC−28EGの連結を可能にした。
【0124】
【非特許文献51】Kanovsky M,Raffo A,Drew L,Rosal R,Do T,Friedman FK,Rubinstein P,Visser J,Robinson R,Brandt−RaufPW,Michl J,Fine RL,Pincus MR;Proc.Natl Acad Sci US A.2001 Oct 23;98(22):12438−43:Peptides from the amino termina1 mdm−2− binding domain of p53,designed from conformational analysis,are selectively cytotoxic to transformed cells
【0125】
オリゴヌクレオチドの合成中製造者の情報(Invitrogen)に従って、不正確な合成の確率は、1ヌクレオチドあたり0.99である。従って、正確に合成されるこのオリゴヌクレオチドの確率は、0.9962であり、所望のダイマーを形成するための2つの正確な鎖アニーリングの確率は、(0.9962)2である。そのため、アニーリングされたPNC−28EGは、所望のアニーリング生成物を指数的に増幅するためのPCR増幅用のテンプレートとして使用し、そうすることにおいて、それぞれのベクター中にクローンされるこのDNAの超過の確率を上げることになる。欠失または点突然変異は、蛋白合成中DNA翻訳に関する読み枠を変化またはシフトし勝ちであり、そして無効なまたは短い蛋白が転写されるかまたは全く蛋白が転写されないことになり勝ちであろう。
【0126】
2つの初回免疫オリゴヌクレオチドが合成された。1つは、5’−3’方向のPNC−28EG、GAGTGCGGCCGCTTCTAGAGG(PNC−28EG−Frw)に相補的であり、他は3’−5’方向のもの、ATCCGGTACCAAATGGAGACC(PNC−28EG−Rev)に相補的であった。ゲル電気泳動を次に使用して、増幅したPNC−28EGの分子サイズを同定した。62bpのサイズは、PNC−28EGの適切なアニーリングおよび増幅を示す。図4は、100bpマーカー(レーン4)と比較することにより決定された、PCR生成物(レーン1、2、3)を示す。PCR生成物の3つの異なる希釈物(1:20、1:50および1:100)。それらは、それぞれレーン1、2および3で分離された。
【0127】
62bpのバンドの適切な分子サイズは、どんな欠失も配列ではなかったことを示す。削り取ったバンドのDNA配列決定(Sambrookら、1989)によるさらなる分析は、どんな改変も存在しなかったことを示した。この段階は、反応に使用されるDNAのTaqポリメラーゼが1サイクルあたり2x10−4ヌクレオチドの率でヌクレオチドを誤って配合するために、重要であった。
【0128】
PNC−28EGの配列決定に使用される戦略は、普遍的初回免疫部位を含んだプラスミド中に遺伝子をクローンし、感応E.coli中にこの組み換えプラスミドを形質転換し、プラスミドを含んだ選択的に成長したコロニーから組み換えプラスミドを精製し、そしてプラスミドDNAを配列決定に送ることであった。PNC−28EGは、pCR2.1Topoベクター中にクローンされた。このプラスミドは、それがトポイソメラーゼIの使用によってベクター中へのPCR生成物の迅速かつ有効な挿入をもたらすために、選ばれた。トポイソメラーゼIは、PNC−28EGの3’末端におけるTaqポリメラーゼにより生成されたデオキシアデノシン(A)のオーバーハングを、線状化されたベクターに存在するデオキシチミジン(T)の3’オーバーハングに連結する。pCR2.1Topoベクターは、アンピシリン、カナマイシン選択性マーカーおよびlacZ遺伝子を含み、それは組み換えプラスミドを含む細菌コロニーの選択を可能にした。pCR2.1Topoに関するクローニング部位は、図5に示される。図5に示されるように、クローンされた遺伝子は、配列決定のプライマーとして使用される普遍的M13プライマーの配列範囲内にある。ベクターは、アンピシリンおよびカナマイシン抵抗性遺伝子およびlacZ遺伝子を含む。
【0129】
pCR2.1TOPO/PNC−28EG組み換えプラスミドは、次に解凍したTOP10感応細菌細胞へ連結したプラスミド混合物を加えそして細胞を短く加熱することにより、感応E.coli中に形質転換された。この温度の短い変化は、細菌細胞がプラスミドを取り上げるのを可能にした。形質転換した細菌細胞を、x−galを含んだ選択アンピシリンプレートで成長させた。pCR2.1TOPO/PNC−28EGに存在するLacZ遺伝子は、ポジティブなコロニーすなわちプラスミドを含むコロニーについてスクリーニングするのに使用された。LacZは、β−ガラクトシダーゼについてエンコードし、それはβ−ガラクトシドX−galを代謝しそしてこれは青い色を生成する(Invitrogen)。pCR2.1TopoプラスミドへのPNC−28EGのクローニングは、LacZの発現を防ぐ。そのため、pCR2.1TOPO/PNC−28EGポジティブコロニーは、青い色を発しない。培養プレートに添加されたアンピシリンは、それらがプラスミドに見いだされるアンピシリン抵抗性遺伝子を欠いているために、pCR2.1TOPO/PNC−28EGネガティブ細菌の成長を防ぐ。最後に、PCRは、偽のポジティブの白色のコロニー、またはPNC−28EGを含まないコロニーをスクリーニングするのに使用される。細菌コロニーは、上記のように初回免疫オリゴヌクレオチドPNC−28EG−FrwおよびPNC−28−Revのためのテンプレートとして用いられた。PCR生成物は、アガロースゲルで分析されて、組み換えプラスミド中の遺伝子を含むコロニーを同定した。
【0130】
形質転換は、数百の白色コロニーおよび数少ない青色のコロニーを生じた。19のランダムに選択した白色のコロニーおよび10のランダムに選択した青色のコロニー(図示せず)をpCR2.1TOPO/PNC−28EGについてスクリーニングした。pCR2.1TOPO/PNC−28EGを含むコロニーは、62bpの蛍光バンドを示すことが予想された。図6は、白色のコロニーの分析の結果を示す。図6は、PNC−28EG形質転換した白色コロニーからの増幅したPCR生成物を示すゲル写真である。19の選択されたポジティブコロニーからのPCR生成物は、2%アガロースゲルで分離された。エチジウムブルー染色DNAバンドは、100bpマークを越えて移動し(レーン20)、PCR生成物(1−18)のサイズが正確でありそしてこれらのコロニーがPNC−28EG/pCR2.1Topoを含むことを示す。
【0131】
レーン19(図6)は、予想されたサイズ以下の弱いバンドを示す。この現象は、プライマーがPCR生成物に配合されなかったときに通常生じ、それは次にテンプレート(pCR2.1TOPO/PNC−28EG)が存在せずそしてこのPCR生成物が偽のポジティブの結果であるように思われることを示唆している。
【0132】
PCR増幅は、ポジティブと思われるコロニーの中の偽のポジティブをスクリーニングする手段を提供する。これは、挿入物の正確なサイズにより、どのコロニーが組み換えプラスミドを含んでいるかを示した。これらのコロニーのいくつかのプラスミドは、次に配列決定されて、PNC−28EGが適切な配向で挿入されそして配列にどんな点突然変異も存在しなかったことを立証した。レーン1、5および8(図6)に相当したコロニーから単離されたプラスミドは、自動DNA配列決定装置に送られた。3つのプラスミドのうち、コロニー8(図6)に存在するものは、PNC−28EGに関する正確な配列を含んだ。コロニー8から得られた配列と合成したPNC−28EG配列との間の比較は、図7に示される。
【0133】
PNC−28についてエンコードするセグメントにおいて位置96(星印図7参照)で1つの点突然変異が存在する。TからCへの変化がある。しかし、これはアミノ酸配列の同定に影響しない。それは、コドンTTCもTTTフェニルアミンと同じアミノ酸をエンコードするからである。また、Kpn1制限部位において3つの未知のヌクレオチド(N)が存在する。これは、自動配列決定装置により生じた誤りの結果と思われる。もしこれらの3つのヌクレオチドが問題を生ずるとしたならば、Kpn1は、制限部位を解裂することができず、以後のpAd/CMV/V5/PNC−28EGベクターの構築は不可能であったろう。しかし、Kpn1制限は影響されないままであり、そしてpAd/CMV/V5/PNC−28EGベクターの構築は、以下のように進行した。
【0134】
細菌コロニー8は、細菌が採取されそして上記のようにプラスミドが単離されたとき、16時間37℃で液体培地で成長した。
【0135】
pAd/CMV/V5/PNC−28EG構築の次の段階は、エントリーベクターpENTR−11へPNC−28EGをクローンすることである。図8は、pENTR−11のベクターマップを示す。エントリーベクターは、組み換え部位attL 1およびattL 2を含み、それらは、アデノウイルス発現ベクターpAD/CMV/V5−DESTへのPNC−28EGの組み換えクローニングを可能にする。それは、またカナマイシン抵抗性遺伝子、attL 1およびattL 2の間のccdB遺伝子並びにその複数のクローニング部位(MCS)におけるKpn1およびNotlに関する制限部位を含む。
【0136】
pENTR−11の組み換え部位間に見いだされるccdB遺伝子は、ネガティブ選択を可能にする。ccdB遺伝子は、TOP10E.coli(使用される菌株)(Invitrogen)について毒性のある蛋白をエンコードする。PNC−28EGがpENTR−11ベクターにクローンされるとき、ccdB遺伝子は除かれる。そのため、PNC−28EGを含まないコロニーは、成長できない。カナマイシン抵抗性遺伝子も、カナマイシン処理培養プレートでのポジティブコロニーの選択を可能にする。
【0137】
pENTR−11ベクターをKpn1およびNot1により消化して、突き出した末端を曝しそしてPNC−28EGの連結を可能にした。消化は、またccdB遺伝子の除去を生ずる。pCR2.1TOPO/PNC−28EGは、同じ方法で消化された。PNC−28EGは、次にアガロースゲルの消化した生成物を分離しそして遺伝子を含むアガロースのスラブを削り取ることによりpCR2.1Topoベクターから精製された。線状化pENTR11ベクターも同様な方法で精製した。アガローススラブは溶融され、そしてPNC−28EGを、触媒としてT4DNAリガーゼを使用してpENTR11に連結した。クローンしたエントリーベクターpENTR11/PNC−28EGを使用して選択カナマイシンアガロースプレート上に成長した化学的感応TOP10E.coliを形質転換した。
【0138】
多数のコロニーが成長し、そしてそれらはすべてPNC−28EGを含んだが、いくつかのコロニーをPCRスクリーニングにかけた。ベクターを2つの異なる制限酵素により消化して、PNC−28EGを含まないベクターが機能性プラスミド中に連結しそしてccdB選択の妨害により偽のポジティブを生ずる可能性を最低にした。PNC−28EGそれ自体のDNA配列は、関連する唯一の反応が制限反応であるので、改変されてはならず、複製メカニズムも含まれなかった。この重要な分析は、事実すべてのコロニーがPNC−28EGを含むものではないことを示した。PNC−28ポジティブクローンは、次に多量に成長しそして組み換えエントリーベクターpENTR11/PNC−28EGがこのコロニーから単離された。
【0139】
pAd/CMV/V5/PNC−28EG構築における最後の段階は、pENTR11/PNC−28EGから単離されたPNC−28EGをアデノウイルスデスチネーションベクターであるpAD/CMV/V5−DEST中にサブクローニングすることであった。pAD/CMV/V5−DESTは、pENTR11に見いだされるattL 1およびattL 2部位に相当するattB 1およびattB 2組み換え部位を含む。これは、pENTR−11ベクターからpAD/CMV/V5−DESTへのPNC−28EGのインテグラーゼ仲介組み換えクローニングを可能にする。pAD/CMV/V5−DESTは、またPNC−28EGの発現を増強するヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む。アンピシリン抵抗性ccdbネガティブ選択およびmRNAの有効な転写停止およびポリアデニル化のための単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)ポリアデニル化配列もpAD/CMV/V5−DESTに存在する。図9は、pAD/CMV/V5−DESTの組み換え部位を示す。pNC−28EGは、pAD/CMV/V5−DESTへの組み換えによりクローンされ、所望の発現クローンを生成した。
【0140】
複製不能ウイルスをエンコードする必要な配列を含んだpAD/CMV/V5/PNC−28EGは、PNC−28を発現できる。化学的感応TOP10E.coliを、pAD/CMV/V5/PNC−28EGベクターにより形質転換しそして選択アンピシリンプレートで成長させた。多数のコロニーが成長し、そして10のランダムに選択したコロニーがPCRスクリーニングにかけられた(図10)。図10は、2%アガロースゲル上で分離された10の選択されたポジティブコロニーからのPCR生成物を示す写真である。エチジウムブロマイド染色DNAバンドは、100bpマークを越えて移動し(レーン11)、PCR生成物(1−9)のサイズが正確でありそしてこれらのコロニーがpAD/CMV/V5/PNC−28EGを含むことを示す。レーン10の弱いバンドは、偽のポジティブコロニーを示す。従って、バンドの移動は、10のランダムに選択されたコロニーの内の9つが、pAD/CMV/V5/PNC−28EGを含むことを示した。これらのポジティブなコロニーは、大量の液体培地で成長しそしてpAD/CMV/V5/PNC−28EGはそれらから精製された。図11は、アガロースゲル上で分離された精製プラスミドを示す。
【0141】
ゲルの結果は、単離されたpAD/CMV/V5/PNC−28EGが非常に純粋であることを示す。レーン1および3で単一のバンドのみが存在するので、精製されたプラスミドには他の不純物がない。バンドの分子サイズは約35kbである。
【0142】
一度pAD/CMV/V5/PNC−28EGが精製されたならば、それは次にBMRPA1.TUC3細胞をトランスフェクションするのに使用されて、PNC−28蛋白中に転写かつ翻訳されたとき、PNC−28のための遺伝子が膵臓ガン細胞に対し細胞毒性を有しそのため構築されたベクターが抗膵臓ガン剤として有用であることを立証した。
【0143】
BMRPA1.TUC3細胞は、抗生物質のない培地(cRMPI、10%FBS)を有する6穴のプレートの3つの穴に1x105細胞の濃度で接種された。細胞は、37℃で4時間のインキュベーションにより穴に接着した。2つのトランスフェクションを行った。第一の穴はpAD/CMV/V5/PNC−28EGによりトランスフェクションされ、そして第二の穴は、コントロールプラスミドpAD/CMV/V5−GW/LacZによりなされた。両方の場合とも、細胞は4μgのプラスミドおよび10μLのリポフェクタミン2000(比2:5)によりトランスフェクションされた。第三の穴の細胞は、第二のコントロールとして用いられそしてリポフェクタミン2000(10μL)のみを用いた。
【0144】
細胞を37℃でインキュベータに戻した。24時間後、それぞれの穴からの上澄を集め、そして懸濁された細胞をカウントした。細胞の生存も注目した。細胞を新しい培地で満たし、そしてインキュベータに戻した。この手順を、トラスフェクション後72時間まで連続する24時間毎に繰り返した。
【0145】
トランスフェクション後72時間で、残りの接着細胞を次に離しそしてカウントした。図12Aおよび表5は、72時間目のそれぞれの穴での接着細胞の数を示す。図12Aおよび表5に示されるように、pAD/CMV/V5/PNC−28EGによりトランスフェクションされた細胞は、細胞の最初の接種から細胞の濃度が85%増加したことを示す。pAD/CMV/V5−GW/LacZによりトランスフェクションされたBMRPA1.TUC3細胞は、72時間後3.5倍に増え、すべてのプラスミドによりトランスフェクションされなかった細胞は、接種された細胞の最初の量から7.5倍増加した。図12bは、トランスフェクション後72時間の細胞の写真を示す。トランスフェクション後72時間で、残りの接着細胞は、次に離されそしてカウントされた。図12bに示されるように、トランスフェクション後72時間で、pAD/CMV/V5/PNC−28EGにより処理された細胞の98%が、コントロールに比べて分解した。LacZベクターによりトランスフェクションされた細胞およびリポフェクタミン2000によるものは、90−100%の密集成長を示したに過ぎない。
【0146】
【表5】
【0147】
pAD/CMV/V5/PNC−28EGによりトランスフェクションされた膵臓ガンBMRPA1.TUC3細胞の>98%の低下そして開始時の数より3.5倍および7.5倍の両方のコントロール細胞数の増加は、pAD/CMV/V5/PNC−28EG細胞の細胞分解作用がPNC−28の生合成によることを明らかに示している。Ad/PNC−28EGベクターによりトランスフェクションされたBMRPA1.TUC3細胞も、非接着および死んだ細胞において最高の増加(5xコントロール)を示す。対照的に、pAD/CMV/V5−GW/LacZトランスフェクションBMRPA1.TUC3細胞は、細胞の分解を示さず、そしてリポフェクタミン2000処理細胞と比較したとき、わずかに遅い成長を示すに過ぎなかった。pAD/CMV/V5−GW/LacZトランスフェクションおよびリポフェクタミン処理BMRPA1.TUC3細胞における細胞分解の不存在は、さらに新しく合成されたPNC−28蛋白がpAD/CMV/V5/PNC−28EGトランスフェクション細胞における細胞死の原因であるという主張を強化する。トランスフェクション後48時間のpAD/CMV/V5/PNC−28EGトランスフェクションBMRPA1.TUC3群における非接着かつ死んだ細胞の急速な増加は、PNC−28の発現がこの時間枠内で生ずることを示唆する。この観察は、ペネトラチン配列に付着したPNC−28が、薬剤への細胞の暴露後48−72時間以内でBMRPA1.TUC3細胞に対して細胞死を誘導する、実施例2および図1に報告された時間枠と有利に比較される。
【0148】
上記の明細書およびそこに報告された実験結果は、説明のためであり、そして本発明の範囲の制限ではない。当業者は、種々の改変が本発明から離れることなくなされうることを理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】膵臓ガン細胞により異種移植された同型接合したNU/NUマウスにおけるPNC−28(SEQ ID NO:4へそのカルボキシ末端で融合したSEQ ID NO:3)の生体内腫瘍阻害作用を描いている。星をつけた矢印は、腫瘍成長期間中の13日(正確には13.5日)のs.c.ポンプ移植の時間を示す。
【図2】A−Hは、293AおよびBMRPA1.TUC3細胞に対するpAD/CMV/V5−GW/LacZウイルスの作用を示す顕微鏡写真である。
【図3】PNC−28EGの62bpDNA配列を示す。開始コドンおよび停止コドンの両者は、強調されている。本発明のペプチドをエンコードする配列は、イタリックで強調されている。DNA配列のそれぞれのコドンの下に、対応するアミノ酸がある。
【図4】PNC−28EG PCR生成物を示すゲル写真である。レーン4は100bpマーカーを含む。
【図5】pCR2.1Topoベクターのヌクレオチド配列および制限マップである。ラベル「PCR生成物」は、PNC−28EGがベクターでクローンされる場所を示す。クローンされた遺伝子は、配列決定プライマーとして使用される普遍的M13プライマーの配列範囲内にある。ベクターは、アンピシリンおよびカナマイシン抵抗性遺伝子およびlacZ遺伝子を含む。
【図6】19の選択ポジティブコロニーからのPCR生成物並びに分子マーカーを示すゲル写真である。
【図7】図6からのコロニー8のDNA配列を示す。一番上の線は、実際のDNA配列でありそして図の下方に示されているのは、自動DNA配列分析から得られたクロマトグラムである。
【図8】pENTR−11ベクターのマップである。
【図9】Ad/CMV/V5−DESTベクターのマップである。
【図10】PNC−28EGのPCR増幅生成物を示すゲル写真である。
【図11】精製されたpAD/CMV/V5/PNC−28EG(レーン1および2)および500bpDNAマーカー(レーン7)のゲル写真である。
【図12】Aは、トランスフェクション後72時間の接着BMRPA1.TUC3細胞の数を示すグラフである。Bは、トランスフェクション後72時間目のBMRPA1.TUC3細胞を示す顕微鏡写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、潰瘍性疾患の治療用の薬剤に関する。さらに特に、本発明は、悪性かつ形質転換した細胞を選択的に破壊する合成ペプチド、並びにそれに基づく潰瘍性疾患の治療方法を含む。本発明は、またガンに対するウイルス治療に関する。
【背景技術】
【0002】
p53蛋白は、細胞サイクルの重要な調節物である。それは、一部分、有糸分裂を誘導する蛋白の転写をブロックすることによりそして有糸分裂をブロックする蛋白の転写を誘導することにより有糸分裂を誘導しそしてアポトーシスを促進する多数のガン遺伝子蛋白のガン遺伝子作用をブロックする。p53細胞がないことは、細胞の形質転換および悪性疾患と関係がある。(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】Haffner,R&Oren,M.(1995)Curr.Opin.Genet.Dev.5:84−90
【0004】
p53蛋白分子は、393のアミノ酸からなる。それは、残基93〜313からなるDNA結合ドメイン中のDNAの特定配列に結合するドメインを含む。この領域の結晶構造は、X線結晶分析により決定されている。残基312〜393は、p53蛋白のホモテトラマーの形成に含まれる。残基1〜93は、p53蛋白の活性および半減期の調節に含まれる。
【0005】
p53蛋白は、他の重要な調節蛋白であるMDM−2蛋白に結合する。MDM−2蛋白をエンコードするMDM遺伝子は、周知のガン遺伝子である。MDM−2蛋白は、p53蛋白と複合体を形成し、それは、ユビキネーション経路によりp53蛋白の分解を生ずる。p53蛋白は、p53蛋白の残基14〜22(インバリアント)を含むアミノ酸配列を使用してMDM−2蛋白に結合する。p53蛋白の全MDM−2蛋白結合ドメインは、残基12〜26に及ぶ。(非特許文献2)。
【0006】
【非特許文献2】Haffner,R&Oren,M.(1995)Curr.Opin.Genet.Dev.5:84−90
【0007】
MDM−2蛋白が周知のガン遺伝子の発現生成物であることを考えて、MDM−2蛋白が非常に重要な調節蛋白であることは驚くにあたらない。その上、MDM−2蛋白の過剰発現または増幅は、ヒト乳房腫瘍の50%を含むヒトの悪性の40〜60%に見いだされている。p53蛋白とMDM−2蛋白との間の複合体の形成が、p53蛋白の転写活性の阻害を生じ、そのためp53蛋白の活性化ドメインまたはそのなかのDNA結合部位のブロックによる分子の抗腫瘍作用を生ずることが示唆されている。さらに一般的に、これらおよび他の実験の観察は、p53蛋白の抗腫瘍作用が、p53蛋白へのMDM−2蛋白の結合を干渉できるペプチドによって増強されるかもしれないことを示唆していると解釈されてきている。事実、多数の研究が、MDM−2/p53複合体が合理的なドラッグデザインの標的であるかもしれないことを示唆している。(非特許文献3)および(特許文献1)参照。
【0008】
【非特許文献3】Christine Wasylyk etal.,「p53 Mediated Death of Cells Overexpressing MDM2 by an Inhibitor of MDM2 Interaction with p53」Oncogene,18,1921−34(1999)
【特許文献1】米国特許5770377
【0009】
広範囲のスペクトルの細胞に感染するアデノウイルスの能力およびその高い感染能力は、それをガン治療の顕著な候補者にしている(非特許文献4)。アデノウイルスは、二十面体のキャプシドからなる。ウイルスのゲノムを包んでいるキャプシドは、3つの主な蛋白すなわちヘキソン、ペントン塩基そしてこぶ状になった繊維からなる。さらに、いくつかの小さい蛋白、VI、VIII、IX、IIIaおよびIVa2並びにウイルスをエンコードしたプロテアーゼも存在する。ウイルスのゲノムは、長い末端の繰り返し(LTR)を有する5’末端に共有結合で結合した末端蛋白を有する線状の二本鎖DNAである。DNAは、また蛋白VIIおよびmuとして周知のペプチドと伴生している(非特許文献5)。アデノウイルスのゲノムは、3つの機能的なカテゴリーにさらに分類でき、初期の遺伝子(E1A、E1B、E2、E3およびE4蛋白についてエンコードする)、遅滞遺伝子および単一の主な後期のユニットである。DNA複製、ウイルス遺伝子の転写、宿主細胞の免疫抑制および宿主細胞のアポトーシスの阻害は、初期遺伝子生成物に起因する。後期遺伝子の生成は、ウイルスアセンブリを必要とする(非特許文献6)。
【0010】
【非特許文献4】Russel,W.C.(2000)Update on adenovirus and its vectors.Journal of General virology,Vol 81 2573−2604
【非特許文献5】Russel,W.C.(2000)Update on adenovirus and its vectors.Journal of General virology,Vol 81 2573−2604
【非特許文献6】Wang I.I.and Huang I.I.(2000)Adenovirus technology for gene manipulation and functioal studies.Drug Discoveiy Today 5,10−16
【0011】
アデノウイルスの感染性サイクルは、初期の相および後期の相で規定できる。初期の相は、宿主細胞中へのウイルスの侵入次に核中へのウイルスゲノムの移動および初期遺伝子の選択的転写および翻訳をカバーする(非特許文献7)。これらの初期の事象では、ウイルスは、後期の遺伝子の翻訳を導くウイルスDNAの複製を助けるために、宿主細胞の機能を引き継ぐ。細胞の屈性における主要なファクターは、受容体の認識である。蛋白のこぶ状になった繊維は、高い親和性で、コクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)として周知の細胞表面の受容体に結合する。細胞の感染は、先ずこぶ状になった繊維のCARへの結合により開始される。ウイルスのインターナリゼーションは、表面のインテグリン−蛋白(細胞接着、細胞−細胞結合および他の細胞−細胞関連現象における細胞外マトリックスに含まれる)へのペントン塩基の追加の結合を含む(非特許文献8)、(非特許文献9)。多数のシグナル経路が、次に誘導され、ウイルス粒子のクラスリン仲介エンドサイトーシスを助ける。エンドサイトーシスは、ウイルス粒子の陥入、次にエンドサイトーシス小胞の発生を生ずるプラズマ膜の切り取りを含む。ウイルスをエンコードするプロテアーゼは、次に構造蛋白VIの分解によりウイルスキャプシドを分裂させる。ウイルスは、次に核膜に移動し、そこでゲノムは核中に入り、最初の転写を導く。ウイルスゲノムは、細胞蛋白p32の助けにより宿主の核に近づくことができると思われる。p32は、主としてミトコンドリアに見いだされるが、また核にも存在する。蛋白は、ミトコンドリアと核との間の細胞内シャトルとして働く。ウイルスは、核へ近づくためにこの細胞内シャトルシステムを支配できるように見える(非特許文献10)。
【0012】
【非特許文献7】Russel,W.C.(2000)Update on adenovirus and its vectors.Journal of General virology,Vol 81 2573−2604
【非特許文献8】Mathias,P.,Galleno,M.&Nernerow,G.R.(1998).Interactions of solble recombinant integrin αv β5 with human adenoviruses.Journal of General virology 75,3365−3374.
【非特許文献9】Meredith,J.E.,Jr,Winitz,S.,Lewis,J.M.,Hess,S.,Ren,X.D.,Renshaw,M.W.&Schwartz;M.A.(1996).The regulation of growth and intracellular signaling by integrins.Endocrinology Reviews 17,207−220.
【非特許文献10】Russel,W.C.(2000)Update on adenovirus and its vectors.Journal of General virology,Vol 81 2573−2604
【0013】
低い病的状態および高いレベルのトランス遺伝子発現は、アデノウイルスを機能的な研究において非常に魅力的なベクターにする。しかし、生体内の免疫反応の優越性は、ベクターの実際的な展開において制限ファクターである。トランス遺伝子発現の持続時間は、生体内では、感染した細胞に向かう宿主の抗アデノウイルス免疫反応により大幅に制限される(非特許文献11)。上皮細胞は、例えば、アデノウイルス感染を阻害する抗細菌性ペプチドを放出できる(非特許文献12)。他の防御機構は、感染初期におけるインターフェロンとして周知の細胞性蛋白の放出を含む。インターフェロンは、細胞のJak/STAT経路を活性化し、それは感染された細胞を排除しそして感染から健康な細胞を保護できる一連の遺伝子生成物の転写を制御するインターフェロン反応要素の活性化を生ずる(非特許文献13)。MHCクラスI抗原の範囲における感染された細胞の表面に存在するウイルス抗原のT細胞の認識は、細胞毒性T細胞からのパーフォリンの移動および感染された細胞の溶解を生ずる。ウイルスの活性は、またプログラムされた細胞死を導くアポトーシス経路を生ずる。特にガン治療では、その目的がすべての形質転換された細胞を排除することであるが、免疫反応の活性化が望ましい作用である。
【0014】
【非特許文献11】Yang,Y.,Nunes,F.A.,Berencsi,K.,Furth,E.F.,Gonczol,E.and Wilson,J.M.;Proc.Natl.Acad.Sci.1994,91:4407−4411:Cellular immunity to viral antigens limits El−deleted adenoviruses for gene therapy
【非特許文献12】Gropp,R.,Frye,M.,Wagner,T.O.&Bargon,J.(1999).Epithelial defensins impair adenoviral infection:Implication for adeiovirus−rnediated gene therapy.Gene Therapy X,957−964
【非特許文献13】Goodbourn,S.,Didcock,L.&Randall,R.E.(2000).Interferons:cell signaling,immune modulation,antiviral responses and virus countermeasures.Journal of General Virology 81,2341−2365
【0015】
腫瘍サプレッサーp53は、アポトーシスおよび細胞サイクル阻止において主要な役割をはたす(非特許文献14)。この蛋白は、Baxのような抗増殖蛋白の転写を制御する。Baxは、ミトコンドリアからのシトクロムcの放出を刺激し、それはアダプター蛋白Apaf−1および全複合体に結合し、次にプロカスパスを活性化して細胞死を導く(非特許文献15)。p53は、腫瘍蛋白マウスダブルマイニュート2、mdm2により制御される。mdm2は、p53蛋白と複合体を形成でき、そのユビキチン化およびプロテアソームによるその分解を導く(非特許文献16)。p53は、細胞に生ずるかもしれないコントロールされない細胞の増殖および突然変異のような危険な事象からの保護をもたらす。防御性p53遺伝子は、細胞について多数の有害な結果を有する。p53を欠く細胞または突然変異したp53を含む細胞は、アポトーシスを回避できそしてそれらの増殖を続ける。これらの細胞内のDNA損傷は、それぞれの新しい部分に蓄積し、一方細胞はそれらを修復できない。従って、p53の機能の損失は、ガンの発生に密接に関連している。p53の機能の損失により、突然変異細胞は、細胞サイクルを通してアポトーシスそしてそれらが分裂するときガン促進突然変異の蓄積を回避し続けることができる(非特許文献17)。
【0016】
【非特許文献14】Alberts,B.,Johnson A.,Lewis J.,RaffM.,Roberts K,Walter P.(2002).Molecular biology of the cell.Garland science
【非特許文献15】Alberts,B.,Johnson A.,Lewis J.,RaffM.,Roberts K,Walter P.(2002).Molecular biology of the cell.Garland science
【非特許文献16】Uchida T.,Minei S.,Gao,J.,Wang C.,Satoh T.,Baba S.(2002)Clinical significance ofp53,MDM2 and bcl−2 expression in transitional cell carcinoma of the bladder.Oncology Reports 9:253−259
【非特許文献17】Alberts,B.,Johnson A.,Lewis J.,RaffM.,Roberts K,Walter P.(2002).Molecular biology of the cell.Garland science
【0017】
p53遺伝子の突然変異並びに広範囲のヒトの腫瘍の発生へのその関連は、野生型p53を配合したベクターの開発を促している。これらのベクターは、未分化甲状腺ガン、ヒト悪性グリオームおよび乳ガンについて生体外および生体内でテストして成功している(非特許文献18)。
【0018】
【非特許文献18】Russel,W.C.(2000)Update on adenovirus and its vectors.Journal of General virology,Vol 81 2573−2604
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
悪性または形質転換された細胞を選択的に殺すペプチドを提供することに加えて、本発明は、これらのペプチドをコードするトランス遺伝子(transgene)を配合するアデノウイルスベクター(AdV)を提供する。これらのベクターを悪性および形質転換された細胞への投与は、これら細胞の死を生ずる。目的のAdV発現伝達体は、膵臓ガンを含む異なる潰瘍性疾患を治療するのにそれらの抗増殖性について特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、アミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドまたはそのアナログまたは誘導体を提供し、該ペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、膜浸透リーダー配列に融合しそして悪性または形質転換した細胞を選択的に死に至らしめる。
【0021】
これらペプチドの例は、PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)またはそのアナログまたは誘導体、PPLSQETFS(配列番号2)またはそのアナログまたは誘導体、ETFSDLWKLL(配列番号3)またはそのアナログまたは誘導体である。細胞膜を通って輸送されそして悪性または形質転換された細胞を選択的に殺すために、リーダー配列は、好ましくは、ペプチド、そのアナログまたは誘導体のカルボキシル末端に位置する。好ましくは、リーダー配列は、主として正の電荷を有するアミノ酸残基からなる。本発明に従って使用できるリーダー配列の例は、ペネトラチン、Args、HIV1のTAT、D−TAT、R−TAT、SV40−NLS、ヌクレオプラスミン−NLS、HIV REV(34−50)、FHVコート(35−49)、BMV GAG(7−25)、HTLV−IIREX(4−16)、CCMV GAG(7−25)、P22N(14−30)、ラムダN(1−22)、デルタN(12−29)、酵母GCN4、およびp−vecを含むが、これらに限定されない。好ましくは、リーダー配列は、アミノ酸配列KKWKMRRNQFWVKVQRG(配列番号4)を有するアンテナペディア蛋白からのペネトラチン配列である。
【0022】
製薬上許容できる担体と混合された本発明のペプチドの少なくとも1つを含む製薬組成物も提供される。さらに、患者の潰瘍性疾患を治療するすなわち患者の悪性または潰瘍性細胞を選択的に殺す方法が提供される。1つの態様では、方法は、患者に、治療上有効な量のアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドまたはそのアナログまたは誘導体を投与し、該ペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、そのカルボキシル末端で膜浸透リーダー配列に融合しそして悪性または形質転換した細胞を選択的に死に至らしめる。他の態様では、方法は、患者に、治療上有効な量の配列番号1、配列番号2または配列番号3に示される配列を有する少なくとも1つのペプチドまたはそのアナログまたは誘導体を投与することであり、膜浸透リーダー配列は、ペプチド、そのアナログまたは誘導体のカルボキシル末端に融合する。
【0023】
本発明は、また本発明のペプチドをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーターからなる複製不能アデノウイルス(AdV)ベクターを提供する。複製不能AdVの例は、例えば、欠失したE1およびE3遺伝子を有するAdVを含む。1つの態様では、ペプチドがアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドまたはそのアナログまたは誘導体からなる、本発明のペプチドをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーターからなる複製不能AdVベクターが提供される。例えば、アミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)またはそのアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーター配列からなる複製不能AdVベクターが提供される。本発明の他の態様では、アミノ酸配列PPLSQETFS(配列番号2)またはそのアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーター配列からなる複製不能AdVベクターが提供される。本発明のなお他の態様では、アミノ酸配列ETFSDLWKLL(配列番号3)またはそのアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーター配列からなる複製不能AdVベクターが提供される。
【0024】
本発明の他の構成では、患者の悪性または潰瘍性細胞を選択的に殺す方法を提供する。方法は、患者に、前記のペプチドの任意のものまたはそのアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーターからなる本発明の複製不能AdVベクターの治療上有効な量を投与することからなる。好ましくは、悪性または潰瘍性細胞は、膵臓ガン細胞である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明によれば、悪性および形質転換した細胞が、単一の連続するポリペプチド鎖としてp53蛋白内のアミノ酸の配列およびリーダー配列からなる合成ペプチドの投与により選択的に破壊されることが見いだされた。作用の機構は、p53ペプチドがp53蛋白を全く生成しない形質転換した細胞を選択的に殺すので、MDM−2蛋白に結合しているp53蛋白に無関係なように思われる。p53ペプチドは、また正常の細胞を殺すことなく正常または高レベルのp53蛋白を発現する悪性および形質転換した細胞を選択的に殺す。
【0026】
本発明によれば、ヒトp53のアミノ酸残基12−26のすべてまたは一部に相当するペプチドからなる組成物が提供される。この領域は、hdm−2およびmdm−2蛋白と接触しそしていずれかの蛋白に結合したときα−らせん構造をとることが知られている。膜浸透リーダー配列によりカルボキシ末端に融合するとき、本発明のペプチドは、悪性および形質転換したヒト細胞を選択的に殺す。
【0027】
本発明の第一の構成では、以下のアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドが提供され、少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドは、リーダー配列に融合する。好ましくは、ペプチドは、少なくとも約8から少なくとも約15のアミノ酸残基からなる。好ましい態様では、配列番号1に示される配列の少なくとも約8から少なくとも約15のアミノ酸からなるペプチドは、以下のアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)を有する。他の好ましい態様では、配列番号1に示される配列の少なくとも約8から少なくとも約15のアミノ酸からなるペプチドは、以下のアミノ酸配列PPLSQETFS(配列番号2)を有する。なお他の態様では、配列番号1に示される配列の少なくとも約8から少なくとも約15のアミノ酸からなるペプチドは、以下のアミノ酸配列ETFSDLWKLL(配列番号3)を有する。
【0028】
本発明のペプチドを細胞に運ぶ機能のリーダー配列は、種々の源から由来する。好ましくは、リーダー配列は、正の電荷を有するリーダー配列が本発明のペプチドのアルファらせんを安定化するために、圧倒的に正の電荷を有するアミノ酸残基からなる。本発明のペプチドに結合するリーダー配列の例は、(非特許文献19)に記載されており、以下の膜浸透リーダー配列を含むが、これらに限定されない(蛋白のリーダー配列を構成しているアミノ酸残基の数は、多くの場合、蛋白の名の直後にかっこで示されている)。ペネトラチン(KKWKMRRNQFWVKVQRG)(配列番号4);(Arg)8または(R)4−(R)16からの任意のポリ−R;HIV−1 TAT(47−60)(YGRKKRRQRRRPPQ)(配列番号5);D−TAT(GRKKRRQRRRPPQ)(配列番号6);R−TAT G(R)9PPQ(配列番号7);SV40−NLS(PKKKRKV)(配列番号8);ヌクレオプラスミン−NLS(KRPAAIKKAGQAKKKK)(配列番号9);HIV REV(34−50)−(TRQARRNRRRRWRERQR)(配列番号10);FHV(35−49)コート−(RRRRNRTRRNRRRVR)(配列番号11);BMV GAG(7−25)−(KMTRAQRRAAARRNRWTAR)(配列番号12);HTLV−II REX4−16−(TRRQRTRRARRNR)(配列番号13);CCMV GAG(7−25)−(KLTRAQRRAAARKNKRNTR)(配列番号14);P22N(14−30)(NAKTRRHERRRKLAIER)(配列番号15);LAMBDA N(1−22)(MDAQTRRRERRAEKQAQWKAAN)(配列番号16);PhiN(12−29)(TAKTRYKARRAELIAERR)(配列番号17);YEAST PRP6(129−124)(TRRNKRNRIQEQLNRK)(配列番号18);HUMAN U2AF(SQMTRQARRLYV)(配列番号19);HUMAN C−FOS(139−164)KRRIRRERNKMAAAKSRNRRRELTDT(配列番号20);HUMAN C−JUN(252−279)(RIKAERKRMRNRIAASKSRKRKLERIAR)(配列番号21);YEAST GCN4(KRARNTEAARRSRARKLQRMKQ)(配列番号22);KLALKLALKALKAALKLA(配列番号23);p−vec LLIIRRRIRKQAKAHSK(配列番号24)。他の膜浸透リーダー配列も使用できる。これらの配列は、非常に容易に入手でき、そして例えば(非特許文献20)および(非特許文献21)に記載されている。
【0029】
【非特許文献19】Scheller et.al.(2000)Eur.J.Biochem.267:6043−6049
【非特許文献20】Elmquist et.al.(2001)Exp.Cell Res.269:237−244
【非特許文献21】Elmquist et.al.(2001)Exp.Cell Res.269:237−244
【0030】
好ましくは、アンテナペディア蛋白のペネトラチンリーダー配列の正の電荷を有するリーダー配列が使用される。このリーダー配列は、以下のアミノ酸配列を有する。KKWKMRRNQFWVKVQRG(配列番号4)。好ましくは、リーダー配列は、p53ペプチドのカルボキシル末端に付着して、合成ペプチドが形質転換した悪性の細胞を殺すことができる。
【0031】
構造的に関連のあるアミノ酸配列は、本発明を実施するに当たって、配列番号1、2、3または4に示される開示された配列の代わりをすることができる。それらのアナログまたは誘導体を含む配列番号1、2または3に記載される任意の配列は、配列番号4に記載される配列を含むがこれに限定されないリーダー配列と結合するとき、本明細書では、「合成ペプチド」または「複数の合成ペプチド」と呼称される。これらの合成ペプチドの三次元構造を真似る固定した分子は、ペプチド類似物とよばれ、そしてまた本発明の範囲内に含まれる。p53ペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端の何れかまたはそれらの両者でのアルファらせん安定化アミノ酸残基を、それがMDM−2蛋白に結合するとき、p53蛋白のこの領域の立体配座であることが知られているアルファらせん立体配座を安定化するために添加できる。アルファらせん安定化アミノ酸の例は、Leu、Glu(特にらせんのアミノ末端において)、MetおよびPheを含む。
【0032】
本発明のペプチドのアミノ酸挿入誘導体は、アミノおよび/またはカルボキシル末端融合、並びに単一または複数のアミノ酸の配列内挿入を含む。挿入アミノ酸配列の変異型は、ランダムな挿入も得られる生成物の好適なスクリーニングにより可能であるが、本発明のペプチドにおける予定された部位中に1つ以上のアミノ酸残基が誘導されるものである。欠失変異型は、本発明のペプチドの配列から1つ以上のアミノ酸を除くことにより生成できる。置換アミノ酸変異型は、配列中の少なくとも1つの残基が除かれそして異なる残基がその位置に挿入されているものである。代表的な置換は、以下の表1に従って生成されるものである。
【0033】
【表1】
【0034】
合成ペプチドがアミノ酸置換により誘導されるとき、アミノ酸は、一般に、同様な性質例えば疎水性、親水性、電気陰性、かさ高な側鎖などを有する他のアミノ酸によって置換される。本明細書で使用されるとき、用語「誘導体」、「アナログ」、「フラグメント」、「部分」および「同様な分子」は、該誘導体、アナログ、フラグメント、部分または同様な分子が形質転換したまたは新生物の細胞に入りそして選択的に殺す能力を維持する限り、アミノ酸置換、挿入、付加または欠失を有する配列番号1、2、3または4に示されるようなアミノ酸配列を有する本発明のペプチドをいう。
【0035】
本発明の合成ペプチドは、多数の周知の技術により合成できる。例えば、ペプチドは、(非特許文献22)により最初に記述された固相技術を使用して製造できる。他のペプチド合成技術は、(非特許文献23)および当業者が容易に入手できる他の参考文献に見いだすことができる。ポリペプチドの合成技術の要約は、(非特許文献24)に見いだすことができる。ペプチドは、また(非特許文献25)に記述されたように溶液法により合成できる。異なるペプチド合成に使用される適切な保護基は、上記のテキスト並びに(非特許文献26)に記述されている。本発明のペプチドは、またp53蛋白の大部分からまたはp53蛋白全体から化学または酵素による切断によって製造できる。同様に、本発明の合成ペプチドで使用されるリーダー配列は、これらのリーダー配列が由来する蛋白の大部分または蛋白全体からの化学または酵素による切断により製造できる。
【0036】
【非特許文献22】J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154,Merrifield(1963)
【非特許文献23】M.Bodanszky et.al.Peptide Synthesis,John Wiley and Sons、第二版(1976)
【非特許文献24】J.Strurart and J.S.Young,Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Company,Rockford,III.,(1984)
【非特許文献25】The Proteins、II巻、第三版、Neurath、H.et.al.,105−237,Academic Press,New York,N.Y.(1976)
【非特許文献26】J.F.W.McOmie,Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press,New York,N.Y.(1973)
【0037】
さらに、本発明のペプチドは、また組み換えDNA技術により製造できる。蛋白をつくるのに使用されるほとんどのアミノ酸では、1つより多いコーディングヌクレオチドトリプレット(コドン)は、特別のアミノ酸残基についてコードする。遺伝コードのこの性質は、重複性として周知である。そのため、多数のヌクレオチド配列は、悪性および形質転換した哺乳動物の細胞を選択的に殺す特別の本発明のペプチドについてコードできる。本発明は、またそれから本発明のペプチドが酵素的または化学的に切断されるキメラペプチドまたは本発明のペプチドをコードするすなわち発現できる遺伝子を規定するデオキシリボ核酸(DNA)を包含する。
【0038】
培地で成長する細胞に適用されるとき、合成ペプチドは、悪性または形質転換した細胞を選択的に殺し、細胞の数を投与量に依存して低下させる。効果は、2時間内または3時間内そしてせいぜい48時間内で一般に観察できる。培地で成長したラットの膵臓腺房細胞の系(BMRPA.430)は、K−rasにより形質転換された。正常の細胞系は、膵臓腺房細胞に典型的な構造を示し、形質転換した細胞(TUC−3)は、腺房細胞の文化した形態を欠き、典型的な膵臓ガン細胞と思われる。BMRPA.430細胞が、リーダー配列番号4にカップリングした配列番号1の一次構造を有する合成ペプチドにより50μg/mLの投与量で処理されたとき、細胞は影響されなかった。しかし、TUC−3細胞が、リーダー配列番号4にカップリングした配列番号1の一次構造を有するペプチドにより100μg/mLの投与量で処理されたとき、それらは3−4日以内に死んだ。同様な結果は、同じ実験が行われたが配列番号1が配列番号2または配列番号3の何れかにより置換されたとき、得られた。さらに、形質転換したおよび悪性の細胞の死は、リーダー配列番号にカップリングした配列番号1の一次構造を有する合成ペプチドにより100μg/mLの投与量で処理されたヒト乳ガン細胞系および黒色腫およびHela細胞について観察された。対照的に、同じ投与量で同じ合成ペプチドは、非悪性および非形質転換したヒト胸部または繊維芽細胞系に対してなんら作用しなかった。
【0039】
配列番号4に示されるリーダー配列がPNC29すなわち以下のアミノ酸配列MPFSTGKRIMLGE(配列番号25)を有するコントロール蛋白のカルボキシ末端に位置したとき、悪性または正常の細胞になんら作用しなかった。
【0040】
さらに、配列番号4に示されるリーダー配列へカルボキシ末端で融合した配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するペプチドは、成長因子の存在下造血細胞系に分化するヒト幹細胞の能力になんら作用しない。これは、このペプチドが、化学治療薬として投与されるとき、骨髄細胞に有害ではないことを示している。(非特許文献27)参照。この記述は、十分に示されるならば、本明細書に参考として引用される。
【0041】
【非特許文献27】Kanovsky et.al.,(2001年10月23日)Proc.Nat.Acad.Sci.USA,98(22):12438−12443
【0042】
培養されたガン細胞が、100μg/mLの投与量で、結合したリーダー配列なしの配列番号1の一次構造を有するペプチドにより処理されたとき、細胞は影響されなかった。同様に、培養されたガン細胞が、同じ投与量で、リーダー配列番号4すなわち現在好ましいリーダー配列により処理されたとき、細胞は、また影響されなかった。これらの結果は、合成ペプチドのリーダー配列が合成ペプチドを処理された細胞の細胞膜を通ることを可能にすることを示し、そして合成ペプチドの作用が必ず細胞内であることを示している。
【0043】
合成ペプチドが、p53蛋白およびMDM−2蛋白の結合と干渉することにより働いたかどうかを決定するために、合成ペプチドは、ホモ接合の欠失によりp53蛋白を作ることができなくされた形質転換した結腸直腸腺ガン細胞についてテストされた。驚くべきことに、合成ペプチドは、形質転換した細胞を選択的に殺すが、正常な細胞に対して作用しなかった。これらの結果は、作用のメカニズムが、MDM−2蛋白に結合したp53蛋白に関係がないように見える。それは、p53ペプチドが、p53蛋白を全く生成しない形質転換した細胞を選択的に殺すからである。これらの結果は、MDM−2蛋白へのp53蛋白の結合との干渉が、それにより合成ペプチドが悪性および形質転換した細胞の選択的死を生じさせるメカニズムではないことを示している。本明細書で開示された合成ペプチド、それらの誘導体、アナログおよびペプチド類似分子は、ガンのような新生物疾患の治療に有用であるが、形質転換および悪性の細胞に対する作用メカニズムは、見いだされていない。
【0044】
本発明のペプチドは、生体内で新生物細胞に対して有効である。例えば、膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3を異種移植されしかも約3−6mmの発育した腫瘍サイズを有するマウスは、本発明の合成ペプチド、例えばカルボキシ末端でリーダー配列に融合した配列番号3に示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドの投与後、これらの腫瘍のサイズを劇的に低下させる。
【0045】
本発明のペプチドの観察された性質と一致して、本発明のペプチドは、新生物または悪性の細胞すなわち動物殊にヒトのガン細胞を選択的に殺すのに使用できる。本発明の合成ペプチドは、従って有効量で投与されて、患者のヒトまたは動物の新生物細胞を殺す。
【0046】
本発明の合成ペプチドは、好ましくは、製薬上許容できる担体とともに本発明による少なくとも1つの合成ペプチドを治療上有効な量で含む製薬組成物としてヒトの患者に投与できる。用語「治療上有効量」または「製薬上有効量」は、新生物または悪性の細胞すなわちガン細胞を選択的に殺すことを含む抑制された成長を個体に生成するのに必要な投与量を意味する。
【0047】
好ましくは、本発明の1つ以上の合成ペプチドを含む組成物は、新生物細胞を選択的に殺す従って新生物または悪性の疾患例えばガンを治療する目的で静脈内に投与される。本発明の1つ以上のペプチドを使用して有効に治療できる異なるガンの例は、乳ガン、前立腺ガン、肺ガン、子宮頸ガン、結腸ガン、黒色腫、膵臓ガンおよびすべての固形組織腫瘍(上皮細胞腫瘍)を含むがこれらに限定されず、そしてリンパ腫および白血病を含むがこれらに限定されない血液のガンを含む。
【0048】
本発明の合成ペプチドの投与は、経口、静脈内、鼻孔内、直腸内、腹腔内、筋肉内、皮内または皮下の投与によりまたは注入または埋め込みによる。これらの方法で投与されるとき、本発明の合成ペプチドは、他の成分例えば担体および/または助剤と組み合わせることができる。他の成分の性質には制限がないが、ただしそれらは製薬上許容でき、それらの目的とする投与に有効でなければならず、組成物の活性成分の活性を低下させてはならずそして本発明のペプチドの細胞中への移入を妨げてはならない。ペプチド組成物は、また好ましくは、それからパッチまたは挿入物が、本発明の合成ペプチドの1つ以上を治療上有効な量で時間依存で放出する液状または半液状の皮膚伝達パッチに含浸でき、または皮下挿入物に含まれることができる。
【0049】
注射に好適な製薬の形は、滅菌の注射可能な溶液または分散物の即時の調製のための滅菌粉末、および滅菌溶液または分散物を含む。最終の溶液の形は、すべての場合で、滅菌かつ流体でなければならない。典型的な担体は、例えば水緩衝した水溶液すなわち生体適合性緩衝液、エタノール、ポリオール例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、これらの好適な混合物、界面活性剤または植物油を含む溶媒または分散媒体を含む。滅菌は、濾過または抗菌剤または抗かび剤の添加を含むがこれらに限定されない任意の当該技術に認められている方法を利用して達成できる。これらの剤の例は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸またはチメロサールを含む。等張剤例えば砂糖または塩化ナトリウムも本発明の組成物中に配合できる。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「製薬上許容できる担体」は、任意かつすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗かび剤、等張剤などを含む。これらの媒体および剤の使用は、当業者に周知である。
【0051】
本発明の合成ペプチドを含む滅菌の注射可能な溶液の製造は、必要に応じ上記の種々の成分の1つ以上を含む適切な溶媒中に、必要な量で上記の本発明の合成ペプチドの1つ以上を配合し、次に滅菌好ましくは濾過滅菌により達成される。滅菌粉末を得るために、上記の溶液は、必要に応じ真空乾燥または凍結乾燥される。
【0052】
不活性希釈剤および/または同化可能な可食性の担体などは、ペプチドが経口的に投与されるとき、製薬組成物の一部にできる。製薬組成物は、ハードまたはソフトのゼラチンカプセル中に存在するか、または錠剤に打錠されるかまたはエリキシル、懸濁物、シロップなどに製造される。
【0053】
本発明の合成ペプチドは、従って治療上有効な投与量で好適な製薬上許容できる担体ともに製薬上有効な量で好都合かつ有効な投与に製造される。製薬上有効な量の例は、少なくとも約25μg/mLから少なくとも約300μg/mLの範囲のペプチド濃度を含む。
【0054】
ヒトに適用される本発明の方法で使用されるべき合成ペプチドの精密な治療上有効な量は、新生物疾患の段階、腫瘍のサイズおよび強さ、転移の存在または程度などの変動により述べることができない。さらに、個体の体重、性別および全体の健康は、考慮されねばならずそして投与量に影響するだろう。しかし、本発明の合成ペプチドが1投与あたり少なくとも約10mgの量、さらに好ましくは1投与あたり約1000mgまでの量で投与されることが、一般に述べることができる。本発明のペプチド組成物は最終的に血流から排除されるので、製薬組成物の再投与が指示され好まれる。
【0055】
本発明の合成ペプチドは、投与処方と適合するやり方でそして治療上有効である量で投与できる。合成ペプチドは、年齢、体重および患者の症状および投与の経路に依存する。ヒト成人への投与の好適な投与量の例は、体重1kgあたり約0.1〜約20mgに及ぶ。好ましくは、投与量は、体重1kgあたり約0.1〜約10mgである。
【0056】
本発明によって、また新生物疾患を治療する方法が提供される。方法は、この治療を要する患者に、そのアナログおよび誘導体を含む上記の合成ペプチドを治療上有効な量で投与することからなる。従って、例えば、1つの態様では、リーダー配列へそのカルボキシ末端で融合した配列番号1に示される少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、有効な量で患者に投与される。他の態様では、リーダー配列へそのカルボキシ末端で融合した配列番号1に示される少なくとも約8から少なくとも約10の連続するアミノ酸からなるペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、有効な量で患者に投与される。例えば、リーダー配列へそのカルボキシ末端で融合した配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、有効な量で患者に投与される。リーダー配列へそのカルボキシ末端で融合した配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、有効な量で患者に投与できる。なお他の態様では、リーダー配列にそのカルボキシ末端で融合した配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログまたは誘導体は、有効な量で患者に投与できる。治療法によれば、合成ペプチドの混合物が投与できる。従って、例えば、有効な量で上記のペプチドまたはそのアナログまたは誘導体の1つを投与することに加えて、2つ以上の上記のペプチドまたはアナログまたは誘導体の混合物が患者に投与できる。
【0057】
本発明の他の構成では、上記で十分に記述された、複製不能アデノウイルス(AdV)を含みそして本発明のペプチドのためのコーディング配列に実施可能に結合したプロモーター配列例えば上記のペプチドすなわち配列番号1、配列番号2,配列番号3またはそれらのアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列を有する発現媒体が提供される。上記のように、1つより多いトリプレット(コドン)は、特定のアミノ酸残基についてコードできる。表2は、配列番号1、配列番号2および配列番号3に示されたアミノ酸配列をエンコードするのに使用できるコドンの異なる組み合わせを示す。配列番号1のアミノ酸配列は、太字で表の一番上のラインに示される。配列番号2および配列番号3の両者のアミノ酸配列は、この太字の部分内に見いだすことができる。表2の太字のヌクレオチド配列は、PNC−28EGのヌクレオチド配列に相当する。
【0058】
【表2】
【0059】
配列番号1、2または3に示されるアミノ酸配列のアナログまたは誘導体をエンコードするヌクレオチド配列を使用するには、当業者は、遺伝コードの表を参照して適切なコドンを選ぶことができる。
【0060】
Adの多数の異なるクラスが存在し、そして本発明の方法で使用できる。これらのAdベクターは、文献に記載されておりそして容易に入手できる。例えば、(非特許文献28)、(非特許文献29)参照。例えば、本発明によれば、E1および/またはE3遺伝子が除かれたAdベクターが使用でき、異種プロモーターのコントロールの下約6.5kbまでのトランス遺伝子の導入を可能にする。(非特許文献30)。欠陥E1ウイルスは、E1相補細胞系例えば293A細胞(E1遺伝子をトランスでもたらす)で増殖できる。
【0061】
【非特許文献28】Bramson,J.L.,Graham,F.L.and Gauldie,J.;Curr.Opin.BiotechnoL 1995,6:590−595:The use of adenoviral vectors for gene therapy and gene transfer in vivo
【非特許文献29】Hitt,M.M.,Addison,CL.and Graham,F.L.;Adv.PharmacoL 1996,40:137−206:Human adenovirus vectors for gene transfer into mammalian cells.
【非特許文献30】Graham FL.Smiley.J.,Russel,W.C.,and Narin,R.(1977).Characteristics of a Human Cell Line Trasnform3ed by DNA from Human Adenovirus Type 5.J.Gen.virol.36,59−74.
【0062】
別に、E1およびE3遺伝子を欠くことに加えてまたE2遺伝子を欠くAdベクターが使用できる。例えば、(非特許文献31)および(非特許文献32)参照。
【0063】
【非特許文献31】Lusky,Christ et al.,1998“In vitro and in vivo biology of recombinant adenovirus vectors with El,E1/E2A,or E1/E4 deleted”J.Virol.72(3):2022−3
【非特許文献32】O’Neal,Zhou et al.,1998“Toxicological comparison of E2a−deleted and first−generation adenoviral vectors expressing alphal−antitrypsin after systemic delivery”Human Gene Therapy.9(11):1597−98
【0064】
さらに、ほとんどまたはすべてのAdコーディング配列を欠くヘルパー依存(HD)または実質を失った(gutted)ベクターは、本発明に従って使用できる。これらのベクターは、治療遺伝子の長期にわたる発現が、マウスおよびモンキーで観察されているので、遺伝子治療用の遺伝子伝達ベクターとして大きな可能性を有する。組織培養におけるこれらの実質を失ったベクターの生成は、トランスの実質を失ったベクターの成長および組み立てに必要な蛋白を提供するために、相補的ヘルパーウイルスを要する。(非特許文献33)、(非特許文献34)、(非特許文献35)参照。これらの文献およびそれらに引用されているすべての文献を、もし十分に示されているならば、参考として引用する。
【0065】
【非特許文献33】Chen,Mack et al.,1997“Persistance in muscle of an adenoviral vector that lacks all viral genes”Proc.Nati.Acad.Sci.USA 94(4):1414−1419
【非特許文献34】Morral,N.,RJ Parks,et al.(1998)“High doses of a helper−dependent adenoviral vector yield supraphysiological levels of alpha 1−antritrypsin with negligible toxicity”Human Gene Therapy 9(18):2709−2716
【非特許文献35】Morral,O’Neal et al.,1999“Administration of helper−dependent adenoviral vectors and sequential delivery of different vector serotype for long−term liver−directed gene transfer in baboons.“Proc.Nati.Acad.Sci.USA 96(22):l2816−12821
【0066】
上述のように、新生物疾患例えばガンのウイルス治療に関する本発明では、治療の目的が目標組織の取り除きである場合、ベクター感染細胞を目標とする宿主抗Ad免疫反応が望ましいと考えられている。従って、実質を失ったAdベクターは、宿主のより強い免疫反応を誘発する初期の世代のいくつかと同様に、好ましくない。
【0067】
Adベクターは、2つのプラスミド系、すなわちエントリープラスミド、並びに上記のペプチド(配列番号1−3)およびそのアナログまたは誘導体の1つをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合したプロモーターを含むE1およびE3遺伝子欠失アデノウイルスゲノムから作られたデスチネーションベクターに基づく。2つのプラスミド系は、(非特許文献36)、(非特許文献37)、および(非特許文献38)に十分に記載されている。E1およびE3の遺伝子欠失により、ウイルスは、E1およびE3蛋白を発現しない細胞を複製することを妨げられる。
【0068】
【非特許文献36】Graham FL.Smiley.J.,Russel,W.C.,and Narin,R.(1977).Characteristics of a Human Cell Line Trasnform3ed by DNA from Human Adenovirus Type 5.J.Gen.virol.36,59−74
【非特許文献37】Kozarsky,KF and Wilson JM (1993) Gene Therapy:Adenovirus Vectros.Curr.Opin.Genet.Dev.3,499−503
【非特許文献38】Krougliak V,and GrahamPL (1995).Development of Cell Lines Capable ofComplementing El,E4,and Protein IX Defective Adenovirus Type 5 Mutants.Hum.Gene Ther.6,1575−1586
【0069】
例えば、エントリープラスミドは、そのプラスミドがラムダ組み換え反応によりAdV中にクローンされる本発明のペプチドをエンコードする遺伝子を含む。複製不能ベクターは、293A細胞で増殖し、それはAdVゲノムDNAにより形質転換されたバイオエンジニアリングにより作られたヒト胚腎細胞である(非特許文献39)。この細胞系は、ウイルス複製に必要な欠失遺伝子を補給する。
【0070】
【非特許文献39】Wang I.I.and Huang I.I.(2000)Adenovirus technology for gene manipulation and functional studies.Drug.Discoveiy Today 5,10−16
【0071】
本発明の複製不能AdVベクターは、標準の組み換えDNA法を使用して構築できる。ベクターの構築のための標準の技術は、当業者に周知であり、そして文献例えば(非特許文献40)、または非常に入手可能な組み換えDNA技術に関する多数の実験マニュアルの任意のものに見いだされる。種々の戦略は、DNAの連結フラグメントについて利用可能であり、その選択は、DNAフラグメントの末端の性質に依存しそして当業者によって容易に決定できる。本発明のペプチドをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合できる多数の異なるプロモーターが存在する。プロモーターは、本発明のAdVベクターによる本発明の実施されるウイルス治療の細胞において機能しなければならない。本発明のAdVベクターで使用できる多数の広く利用できるプロモーターが存在する。これらプロモーターの例は、CMV、SV40、RSV、LTR、ベータ−アクチン、EF−アルファ、Gal−Elb、UbC、ベータ−カゼイン、EM−7、EF、TEF1、CMV−2およびBsdを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、プロモーターはCMVである。
【0072】
【非特許文献40】Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.;Molecular cloning.A laboratory manual.2nd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989,Cold Spring Harbor,NY
【0073】
組み換えベクターは、次に(非特許文献41)Stow,N.D.1981(もし十分に示されるならば、参考として引用される)に記載されたような標準の方法を使用して未処理のウイルス中に再建される。未処理のウイルス中へ組み換えベクターを再建することを記述している他の文献は、(非特許文献42)Crouzet J.L.Naudinら、1997(また十分に示されるならば、参考として引用される)を含む。
【0074】
【非特許文献41】Stow,N.D.,1981,“Cloning a DNA fragment from the left−hand terminus of the adenovirus type 2 genome and its use in site−directed mutagenesis”J.Virol.37:171−180
【非特許文献42】Crouzet J,L.Naudin et al.,1997,“Reconibinational construction in Escherichia coli of infectious adenoviral genomes“Proc.Natl Acad.Sci.USA 94(4):1414−1419
【0075】
一度本発明のAdVベクターが構築されるならば、それは異なるタイプのガンにかかった患者を治療するのに使用できる。新生物疾患(ガン)の治療は、これらの疾患にかかった患者に、本発明のアデノウイルスベクターからなる組成物を投与することにより達成される。ガンにかかったヒトの患者またはヒト以外の哺乳動物は、有効な抗新生物投与量の本発明のベクターを投与することにより治療できる。本発明のペプチドをエンコードするヌクレオチドに実施可能に結合したプロモーターからなる本発明のAdVベクターは、乳ガン、前立腺ガン、肺ガン、子宮頸ガン、結腸ガン、黒色腫、膵臓ガンおよびすべての固形組織腫瘍(上皮細胞腫瘍)を含むがこれらに限定されず、そしてリンパ腫および白血病を含むがこれらに限定されない血液のガンを含む。好ましい態様では、治療されるガンは、膵臓ガンである。
【0076】
感染性アデノウイルス粒子の懸濁物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下および局所を含む種々の経路により新生物組織に適用できる。他の経路は、霧としての吸入(例えば、肺ガンの治療)、または例えばもし必要ならば手術中または子宮頸ガンのような腫瘍部位を綿棒で塗るような直接の適用を含む。アデノウイルス懸濁物は、また例えば卵巣ガンを治療するための腹腔中への点滴により投与できる。他の好適な経路は、浣腸(結腸ガン)またはカテーテル(膀胱ガンの場合)により、腫瘍の塊例えば乳ガン中への直接の注射を含む。
【0077】
実際の投与は、年齢、体重、ガンのタイプおよび進行度、1つ以上の腫瘍の位置、転移の存在および患者の全体の状態に基づいて患者ごとに異なる。しかし、1mLあたり約103〜約1015またはそれ以上のビリオン粒子を含むアデノウイルス懸濁物が投与されると、一般にいわれる。AdVベクター懸濁物の再投与は、必要に応じ行われる。
【0078】
本発明のAdVベクターは、薬理学的に有効な量の1つ以上の本発明のAdVベクターを含む滅菌組成物で混合される。一般に、組成物は、水性懸濁物中で約103〜約1015またはそれ以上のAdV粒子を含む。滅菌組成物は、通常、例えば水、緩衝された水、0.4%塩水、0.3%グリシンなどのような水溶液である。これら組成物は、例えば生理学的な条件を模倣するための製薬上許容できる補助物質、例えばpH調節および緩衝剤、毒性調節剤など、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含むことができる。組成物は、また本発明のAdVベクターによる細胞の感染を増加する助剤を含むことができる。
【0079】
以下の実施例は、本発明をさらに説明しそしてその範囲を制限することを意味するものではない。
【実施例1】
【0080】
以下の実験は、アミノ酸の末端に付着したリーダー配列を有する本発明のペプチドの有効性を比較するために行われた。上述したように、カルボキシ末端においてリーダー配列により合成されたペプチドは、MDM−2に結合したとき、このペプチドのp53部分の活性なコンホメーションであるペプチドのへリックスらせん形成を促進した。上述のように、配列番号1、2および3に示されたアミノ酸配列を有する本発明のペプチドは、同型的にp53遺伝子を欠失したものを含む広範囲のヒトガン細胞に対して強い毒性を有する。配列番号1、2および3に示されたアミノ酸配列を有するそれぞれのペプチドに関するα−へリックスの確率のプロフィルは、2つの異なる方法、すなわち1つは蛋白のデータベースからのへリックスの確率を使用するもの(非特許文献43)そして他は、(非特許文献44)および(非特許文献45)に記載されたように、これらのパラメーターに対する電荷の影響を含むことにより改変された、20の天然Lアミノ酸のそれぞれに関するブロックコポリマーから実験的に決定された平衡定数、らせん核形成(σ)および成長(s)に基づくIsingモデルを使用するものを使用して行われた。確率プロフィルは、もしリーダー配列がアミノ酸末端にあるならば、たとえペプチドが細胞膜を横切っているとしても、α−へリックス定数は、遙かに低いことを示した。
【0081】
【非特許文献43】Karplus,K.et al.1998,Bioinformatics 14:846−856
【非特許文献44】Vasquez、M.et al.1987,Biopolymers 26:351−372
【非特許文献45】Vasquez、M.et al.1987,Biopolymers 26:373−393
【0082】
配列番号3に示された配列を有するペプチドは、アミノ酸の末端に付着したリーダー配列による固相合成により合成された。このペプチドは、以下の表3においてPNC28’とラベルされる。PNC28’ペプチドは、3つの異なる濃度すなわち25、50および100μg/mLで、形質転換した膵臓ガン(TUC−3)細胞とインキュベートされた。インキュベーション2週後、最高の投与量のペプチドで、細胞の死がなく、そして細胞のほぼ半分が腺房を形成するのが見られ、そして未形質転換の形態の表現型を示した。同じ現象は、50μg/mLで観察され、そして25μg/mLでは、顕著に少ない細胞が復帰したのが見られた。対照的に、リーダー配列がペプチドのカルボキシ末端に付着したとき(表3のPNC28)、50および100μg/mLの投与量で、100%の細胞の死が約4日で生じた。
【0083】
これらの結果は、リーダー配列が、p53ペプチドのMDM−2部分のカルボキシル末端に選択的に付加して、ペプチドをして細胞膜を横切らせそして特異的に悪性細胞を殺すことを可能にすることを示す。表3では、リーダー配列は、KKWKMRRNQFWVKVQRG(配列番号4)である。
【0084】
【表3】
【0085】
これらの結果は、本発明の特異性、すなわち正の電荷を有する残基のリーダーまたはクラスターがガン細胞の毒性に関して任意のエフェクターペプチドのカルボキシ末端に配置されなければならないことを示す。
【実施例2】
【0086】
体重20−22gのNu/Nuマウス(Harlan Laboratories,Indianapolis,IN,n=10)に、左の後脚の領域に、生きている膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3(1x106細胞/マウス)を皮下(s.c.)に異種移植した。腫瘍は、発生し成長させ、そして毎日の検査中すべてのマウスが、非常に同様の成長速度で腫瘍を発育させることが観察された。
【0087】
12日後、腫瘍は直径3−6mmのサイズに達し、そしてマウスをそれぞれ5匹ずつの2つの群に分けた。それぞれの群には、Alzet(商標)浸透圧ポンプをs.c.で埋め込み、一定速度かつ14日間の規定された期間で、20mg/マウスの濃度でそれぞれのペプチドを含む全体積0.095mLの規定の塩水を注入した。マウスの1つの群は、ペネトラチンリーダー配列(配列番号4)へそのカルボキシ末端で融合したPNC−28(配列番号3に示されたアミノ酸を有するペプチド)を用い、そしてマウスの他の群は、PNC−29すなわち以下のアミノ酸配列MPFSTGKRIMLGE(配列番号25)を有する同様なサイズのコントロールペプチドを用いた。ポンプは、製造者のガイドラインに従いそして滅菌条件で満たされた。ポンプを、そのなかに小さいポンプが挿入されたマウスの皮膚の下にポケットをつくることにより麻酔されたマウスの左の脇腹にs.c.で埋め込んだ。それぞれのポケットは、簡単な縫合により閉じられた。それらの内側の室から、ポンプは、それぞれのマウスに0.25μL/時で連続して注入した。マウスは、かれらが動物施設の分離棟へ戻されるとき、手術から回復するまで観察された。動物がNu/Nuマウスであり従って易感染性であるため、かれらは病原体に曝されたとき、非常に影響を受けやすい。手術並びにすべての手術前および後の処置は、そのため、滅菌フードの環境で行われた。
【0088】
図1に明らかに示されるように、マウス中への注入48〜72時間以内のPNC−28は、腫瘍の成長を有効に停止させる。対照的に、コントロールペプチドPNC−29は、正常または腫瘍の細胞になんら作用しなかった。PNC−29で処理されたマウスでは、腫瘍は、連続する速度で成長を続け、2週間の処置そしてポンプが全くペプチド溶液を放出することを止めた以後の期間にわたり10〜16mmの直径の腫瘍になった。マウスの両方の群における腫瘍のサイズの測定の統計分析は、p<0.001のそれらの間の有意をもたらした。
【実施例3】
【0089】
実施例2の同じ方法を用い、生きた膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3(1x106細胞/マウス)がマウス(n=10)中に異種移植されたときと同時にポンプを開始した。5匹のマウスにはPNC28が投与され、そして5匹のマウスは全く処置されなかった(偽処置)。結果は以下の通りである。
【0090】
【表4】
【0091】
【実施例4】
【0092】
実施例2に記載されたのと同じ方法を用い、生きた膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3(1x106細胞/マウス)を5匹のマウスの腹腔に移植した。ポンプを、腫瘍細胞の移植と同時に右肩の領域に入れた。5匹のマウス全部では、3週間後肉眼で腫瘍は見られなかった。
【実施例5】
【0093】
AdVベクター構築における材料および方法
細胞および細胞培養:Invitrogen(Carlsbad、CA)から得られた293A細胞を、クリオバイアルから解凍し、そしてDMEM,2mM L−グルタミン、10%胎児ウシ血清(FBS,Atlanta Biologicals,Norcross,GA)および1%ペニシリン−ストレプトマイシン(cDMEM)からなる培地中で75cm2組織培養フラスコ(TCF,Corning)で成長させた。細胞は、CO2−95%空気の混合物を供給されたインキュベータで37℃で成長した。培地を2日置きに変えた。細胞が90〜95%密集成長したとき、それらを1xPBSで洗い、1xトリプシンにより外し、そして新しいTCF中に継代した。
【0094】
BMRPA1.TUC3細胞(生きた膵臓ガン細胞)は、コドン12における発ガン突然変異(Gly12→Val12)を有するヒトk−ras遺伝子およびネオマイシン抵抗性遺伝子を含むプラスミドによる正常のラット膵臓腺房細胞(BMRPA1)のトランスフェクションにより生成された。生体外のコントロールされない細胞増殖、接触阻害の損失、低栄養素培地における成長および生体内の腫瘍の形成は、この形質転換した膵臓細胞系の特徴である。(非特許文献46)または(特許文献2)2003年1月17日に出願された継続中の予備特許出願番号60/440699、この出願はもし十分に示されるならば本明細書で参考として引用される)。BMRPA1.TUC3細胞は、微量元素、成長因子および10%FBSを含む半合成RPMI培地(cRPMI)で成長させた(Bradu,2000)。培地を2日置きに変えそして細胞を90−95%の密集成長で継代した。
【0095】
【非特許文献46】Bradu S(2000).An in vitro Model of Pancreatic Carcinogenesis:Characterization of transformation−associated biological and molecular alterations induced by thetobacco smoke carcinogen NNK in rat pancreatic BMRPA1 cells.PhD Thesis,School of Graduate Studies,SUNY−HSC at Brooklyn
【特許文献2】2003年1月17日に出願された継続中の予備特許出願番号60/440699
【0096】
PNC−28EGの合成:ペプチド配列、開始コドン(ATG)、停止コドン(TAG)、Not IおよびKpn I制限部位(New England BioLabs Inc.Beverly,MA)および追加の4塩基対(適切な制限酵素結合のために必要である)を含む2つの一本鎖DNAフラグメントを、Invitrogen,Carlsbad,CAによりこの研究のために合成した。2つの一本鎖を95℃で5分間アニーリングし、そして以下のプライマーGAGTGCGGCCGCTTCTAGAGG(PNC−28EG−Rev)、ATCCGGTACCAAATGGAGACC(PNC−28EG−Frw)およびTaqポリメラーゼを使用して25μLの反応体積でPCRによって増幅した。誤った初回免疫の可能性を防ぐために、PNC−28EG−FrwおよびRevを10pモルの濃度で使用した。次に、5μLのPCR生成物を100bpマーカー(Invitrogen)とともに2%アガロースゲルで分析して、62bpの遺伝子の長さを立証した。
【0097】
ポリメラーゼ連鎖反応:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、生体外で別個のDNAフラグメントを増幅するのに役立つ方法である。この目的のために、二本鎖DNAは、まず変性されそして複製されるべきDNAフラグメントに並ぶ2つの相補性オリゴヌクレオチド(プライマー)によりアニーリングされる。2つのプライマーの間のDNAフラグメントは、Taqポリメラーゼ(Qiagen,Valencia,CA)を用いて合成された。これらの3つの段階の繰り返しにより、最初のセグメントは理想的に2x倍に増幅され、この場合xはサイクルの数である(非特許文献47)。最後に、すべての不完全な鎖合成は、追加の長い延長時間により完成された。他に述べていない限り、PCRの条件は、以下の通りであった。5分95℃(変性)、次に1分95℃(変性)、1分50℃(アニーリング)、1分72℃(延長)の30サイクル、次に72℃で10分の最終の延長時間。
【0098】
【非特許文献47】Saiki,R.K.,Scharf,S.J.,Faloona,F.,Mullis,K.B.,Horn G.T.,Erlich,H.A.and Arnheim,N.(1985)Science,230,1350
【0099】
他に述べていない限り、すべてのPCR生成物は、DNAバンドを染めるためのエチジウムブロミド(10mg/mL)7.5μLを含む1xTBE(トリス、硼酸、EDTA)100mLあたり2gのアガロース(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)により製造された2%アガロースゲルで分析された。DNA生成物は、70ボルトで分離されそして紫外線照明により分析された。
【0100】
pCR2.1におけるPNC−28EGのクローニングおよびTOP10感応E.coliの形質転換:PNC−28EGを配列するために、PCR生成物を、InvitrogenのTOPOクローニングおよび形質転換のプロトコールに従ってpCR2.1Topoベクター(Invitrogen)にクローンした。pCR2.1Topo/PNC−28EGベクター(2μL)をTOP10化学的感応E.coli(Invitrogen)に添加し、そして30分間氷上でインキュベートし、42℃で水浴でヒートショックし、250μLのSOC培地(Invitrogen)でインキュベートし、そして37℃で1時間200rpmでショックをかけた。100μLのこの混合物を選択アンピシリン(50μg/μL)アガロースプレートにおいた。細菌を1晩増殖させ、そしてコロニーを正確なサイズにされた遺伝子の存在についてPCRにより分析した。
【0101】
pCR2.1Topo/PNC−28EGに関する細菌コロニーの分析:いくつかの反応混合物を、1μLのPNC−28EG−Rev(10pモル)、1μLのPNC−28EG−Frw(10pモル)、0.5μLのdNTP(Qiagen)、0.5μLのTaqポリメラーゼ、2.5μLの10xBuffer(Qiagen)および19.5μLの滅菌水をそれぞれ含むことにより調製した。選択されたコロニーは、接種ループにより取り出し、そして反応混合物を含む予めラベルされた0.5mLのポリプロピレン管(USA Scientific,Ocala,FL)中に移し、そしてPCRを行った。添加する緩衝液(5μL)および5xFicollを8μLのPCR生成物に添加し、そしてPCR生成物を2%アガロースゲルで分析した。
【0102】
組み換えプラスミドを含むコロニーを、Lurea Bertani(LB)ブロス(50μg/μLのアンピシリンを含むLBブロス)で37℃で1晩成長させた。細菌を採集し、pCR2.1Topo/PNC−28EGを、QiagenのMiniprepプラスミド単離キットを使用して単離した。単離したプラスミドの濃度を、配列決定前にOD260nm/280nmで測定した。
【0103】
エントリーベクター(pENTR11/PNC−28EG)の構築:エントリーベクターは、PNC−28EGをpENTR11にクローニングすることにより構築された。PNC−28EGをpCR2.1Topoから精製し、そして製造者の指示(Invitrogen)に従ってpENTR11の曝された末端に結合した。連結反応のために、pCR2.1Topo/PNC−28EGおよびpENTR−11をKpn1,Not1(New England Biolabs Inc.Beverly,MA)により消化し、DNAフラグメントをアガロースゲルで分離しそしてゲル抽出により精製した。
【0104】
Kpn1消化:60μgのpCR2.1Topo/PNC−28を、30μLのpCR2.1Topo/PNC−28(2μg/μL)、6μLのKpn 1(10単位/μL)、5μLの10xBuffer(酵素を補充する)および9μLの滅菌水を含む50μLの反応物中で60単位のKpn 1により1時間37℃で消化した。消化は、フェノールクロロホルム抽出およびエタノール沈殿を次に行い、Not1によるさらなる消化と干渉する蛋白および酵素を除いた。25μLの1:1フェノール クロロホルムを消化したサンプルに添加した。サンプルを15秒攪拌しそして3分間13,000rで遠心分離した。3層は、遠心分離後サンプル中で確認でき、プラスミドを含む重ねるものを、中間層または界面を乱すことなく新しい管に注意して移した。プラスミドを次に100μLの100%エタノールおよび5μLの3M Na−アセテートを添加することにより沈殿させ、次に−80℃においた。1時間後、管を−80℃から取り出し、20分間13,000rpmで遠心分離してプラスミドをペレットにした。上澄をペレットを乱すことなく取り出した。予冷した70%エタノール(150μL)を添加しそして管をさらに5分間の遠心分離にかけた。エタノールのすべての痕跡を管から除き、ペレットを残して10分間風乾した。
【0105】
Not1消化:ペレットを38.5μLの滅菌水により再溶出し、そして上述したKpn 1消化と同じ条件下でNot1により消化した。すなわち60単位のNot1(6μL)、5μLの10xBuffer(Not1酵素を補充する)、0.5μLの100xBSAおよび38.5μLの滅菌水、37℃、1時間。
【0106】
pENTR11(20μg)を、pCR2.1Topo/PNC−28EGエントリーベクターについて記述したのと同じ方法で、pCR2.1Topo/PNC−28EGベクターと平行してKpn IおよびNot1制限酵素消化により処理した。
【0107】
ゲル抽出:Ficoll(5x、20μL)を50μLの反応物に添加し、全混合物を5分間70Vで1%アガロースゲルで分離した。ゲルを、PNC−28EGを含む適切なサイズのバンドを削り取る場所についてUV光の下分析した。PNC−28EGを、Qiagenのゲル抽出キットを使用してアガローススラブから精製した。PNC−28EGを次にT4DNAリガーゼ(New England Bio Labs Inc.Beverly,MA)により線状化pENTR11に連結して、pENTR11/PNC−28EGエントリーベクターを構築した。
【0108】
連結反応:両方のサンプルをOD260nm/280nmで定量し、連結反応に必要な両方のサンプルの最後の濃度を決定した。8.5μLのPNC−28EG、8.5μLのpENTR11、1μLのT4−DNAリガーゼ、2μLの10xBuffer(リガーゼを補充する)を含む連結反応を実施した。反応混合物を16℃で4時間インキュベートした。2μLの連結反応物をE.coliに形質転換した。形質転換したE.coli混合物(100μL)を選択カナマイシン(50μL/mL)アガロースプレートに広げた(50μL/μL)。プレートで成長したコロニーを、特異的プライマーとしてPNC−28EG初回免疫オリゴヌクレオチド(PNC−28EG FrwおよびRev)を使用してPCR増幅にかけた。生成物を2%アガロースゲルで分析してpENTR11へのPNC−28EGの適切な連結反応を決定した。PNC−28EGポジティブコロニーを選択しそして50μLのカナマイシンを含む25mLの液体培地で1晩成長させた。pENTR11/PNC−28ベクターを、Qiagenのミニプレップ単離キットを使って細菌から単離した。
【0109】
PNC−28を含むAdV(pAd/CMV/V5/PNC−28EG)の構築:完全pENTR11/PNC−28EG(202.5ng)を、Invitrogenのラムダ組み換え(LR)プロトコールに従って、2時間25℃のインキュベーション中150ngのpAD/CMV/V5−DESTベクターにクローンした。反応混合物(1μL)を使用してE.coliを形質転換して、次に選択アンピシリンアガロースプレートにおいた。1晩の成長後、コロニーをランダムに取り出し、そして特異的プライマーとしてPNC−28EGオリゴヌクレオチドを使用してPCR増幅にかけた。PNC−28EGポジティブコロニーを選択アンピシリンLBブロスで培養し、そしてそれらのベクターをDNA配列決定のために単離した。PNC−28EGの正確なDNA配列を含むベクターから、4μgをPac I制限酵素(New England Bio Labs Inc.Beverly,MA)により消化し、そして293A細胞中に形質転換して新しく構築されたウイルス(pAd/CMV/V5/PNC−28EG)を増殖した。
【0110】
pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスを増殖するための293A細胞のトランスフェクション:293A細胞を、トランスフェクションの前日に2mLのcDMEMを含む6穴の皿に1穴あたり5x105細胞で接種した。トランスフェクションの日に、cDMEMを、10%のFBSを含む1.5mLのOpti−MEM(Invitrogen)により置換した。1μgのpac I消化pAD/CMV/V5−GW/LacZベクターを250μLのOpti−MEMで希釈し、そして3μLのリポフェクタミン2000を250μLのOpti−MEMで希釈した。溶液を5分間室温でインキュベートし、混合しそしてさらに室温で20分間インキュベートした。混合した溶液を6穴皿の穴に添加し、細胞を37℃でインキュベートしそして2−3日毎に養分をあたえた。細胞を、細胞分解が明らかになるまで(14日以内)成長させた。細胞の80−90%が分解した後、ウイルスを含む上澄を採集し、次に細胞懸濁物を凍結(−80℃)および解凍(37℃)した。凍結と乾燥との3サイクル後、細胞のフラグメントを15分間3000rpmで遠心分離することによりペレット化し、上澄を回収し、1mL容のクリオバイアルに入れ、将来の使用のために−80℃で貯蔵した。
【0111】
pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスによるBMRAP1.TUC−3のトランスフェクション:細胞は、ウイルスが細胞系で複製できないとき、トランスフェクションされるよりもむしろ形質導入されるといわれている。形質導入の前日に、BMRAP1.TUC−3細胞を1穴あたり1x105細胞の濃度で6穴のプレートに接種した。形質導入の日に、pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスを、cRPMI中に10−9から10−4の10倍希釈で希釈して最終体積を1mLにした。培地の廃物を除き、pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスの1mL希釈物をそれらのそれぞれの穴に添加した。次の日、ウイルスを含む培地をそれぞれの穴から取り出し、そしてプラーク化培地(3%のFBSを含むcRPMI)および4%のアガロースからなる予め加温(65℃)されたアガロースの重ねるもの2mLをそれぞれの穴に添加した。プレートを37℃の加湿CO2インキュベータに戻した。最初の重ねるものの添加3日後、1mLの追加の重ねるものをそれぞれの穴に加えた。293A細胞は、コントロールBMRAP1.TUC−3を提供するためにpAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスと同じ方法でトランスフェクションされ、そして293A細胞は、細胞分解の徴候のために14日にわたってモニターされた。
【0112】
pAd/CMV/V5/PNC−28EGベクターによるBMRPA1.TUC3細胞のトランスフェクション:トラスフェクションの日、BMRAP1.TUC3細胞を離し、そして10%FBSを含む抗生物質のないcRPMI培地中で1x105細胞の濃度で6穴のプレート中に接種し、そして4時間接着させた。pAd/CMV/V5/PNC−28EGベクター(4.0μg)を250μLのOpti−MEMに希釈し、そして10μLのリポフェクタミン2000を250μLのOpti−MEMで希釈した。溶液を室温で5分間インキュベートし、混合しそしてさらに室温で20分間インキュベートした。次に、混合物を細胞に添加した。コントロールのために、BMRAP1.TUC3細胞のセットをpAd/CMV/V5−GW/LacZベクターによりトランスフェクションし、そして細胞の第三のセットは10μLのリポフェクタミン2000のみを用いた。プレートを37℃の加湿CO2インキュベータに戻した。24時間および48時間後、穴のそれぞれのセットの上澄を集め(2mL)、遠心分離し、そしてペレット化非接着細胞をカウントした。それぞれの場合、穴を2mLの新鮮な培地で補充した。トランスフェクション72時間後、各穴からの上澄を集めそして非接着細胞をカウントし、接着細胞を0.5mLの1xトリプシンに離し、血球計およびトリプシンブルー排除(非特許文献48)によりカウントした。写真は、400ASA富士フィルムをつけた倒立サイズZeiss顕微鏡で撮った。
【実施例6】
【0113】
【非特許文献48】Michl J.DJ Ohlbaum,SC Silverstein,1976.2−Deoxyglucose selectively inhibits Fc and complement receptor−mediated phagocytosis in mouse peritoneal macrophages.JExp Med,144:1465−1483
【0114】
結果
アデノウイルスベクターの構築は、保守的部位特異性組み換えに基づく。細菌ウイルスであるバクテリオファージラムダは、保守的部位特異性組み換えを示したと理解される最初のミクロ実体であった。ウイルスがその宿主細胞中に入るとき、ラムダインテグラーゼとよばれる酵素が合成される。この酵素は、細菌染色体中へのウイルスDNAの共有結合を仲介し、ウイルスDNAをして宿主のDNAの必須部分として複製を可能にする(非特許文献49)。組み換えは、バクテリオファージおよび細菌染色体に見いだされる関連するが異なるDNA認識部位に基づく。バクテリオファージインテグラーゼは、バクテリオファージに見いだされるDNA配列に結合し、そしてDNA−蛋白複合体を形成する。この複合体は、細菌染色体に見いだされる付着DNA配列に結合できる。インテグラーゼは、次に部位特異的鎖交換を生ずるDNAを切断かつ再閉する反応を触媒化できる。
【0115】
【非特許文献49】Alberts,B.,Johnson A.,Lewis J.,Raff M.,Roberts K,Walter P.2002).Molecular biology of the cell.Garland science
【0116】
バクテリオファージ−宿主組み込みを行う同じメカニズムは、アデノウイルスベクターpAd/CMV/V5/PNC−28EGのデザインに存在する。PNC−28(PNC−28EG)をエンコードする遺伝子は、PNC−28EGの発現に必要なプロモーターを欠くエントリープラスミド中にクローンされ、従って転写的に不活動といわれる。エントリープラスミドは、特異的な組み換え部位を含み、それはトラス遺伝子と並びそしてアデノウイルスデスチネーションベクターpAd/CMV/V5−DESTの組み換え部位に相当する。pAd/CMV/V5−DESTベクターは、PNC−28EGの転写および翻訳を行う必要なプロモーターを含む。組み換え反応によって、PNC−28EGは、pAd/CMV/V5−DESTベクター中にサブクローンされて、アデノウイルスベクターpAd/CMV/V5/PNC−28EGを生ずる。pAd/CMV/V5/PNC−28EGは、適切なウイルスパッケージングおよびアデノウイルス生成に必要な遺伝子および要素をエンコードするヒトアデノウイルスタイプ5配列を含む。しかし、それはE1およびE3配列を欠いて、これらの遺伝子を補給しない細胞系においてそれを複製不能にする。
【0117】
新しく構築されたpAd/CMV/V5/PNC−28EGベクターが膵臓ガン細胞における抗ガン剤としてテストされる前に、ウイルスの複製可能な性質を知ることがzベクターが膵臓ガン細胞における抗ガン剤としてテストされる前に、ウイルスの複製可能な性質を知ることが重要である。上述のように、pAd/CMV/V5/PNC−28EGは、アデノウイルスゲノムに見いだされるE1およびE3配列を欠き、そしてこれらの不足した遺伝子を発現するようにバイオエンジニアリングによりつくられた293Aのような細胞系でのみ複製可能である(非特許文献50)。すべての哺乳動物の細胞系の完全なゲノムは、なお未知であり、そのため、膵臓ガン細胞系BMRPA1.TUC−3がこれらの遺伝子を発現するかどうか、そして細胞死をおそらくもたらすAdウイルスのこのタイプの複製を支持するかどうかは未知数であった。PNC−28は、膵臓ガンで細胞分解を誘導するが、感応細胞においてウイルス複製を行うメカニズムも細胞死を誘導する。治療手段へのpAd/CMV/V5/PNC−28EGの開発では、膵臓ガン細胞における細胞死が、PNC−28遺伝子の転写および翻訳に基づくものでありそしてウイルス複製によらなかったことを確かめることが重要であった。
【0118】
【非特許文献50】Wang I.I.and Huang I.I.(2000) Adenovirus technology for gene manipulation and functional studies.Drug Discovery Today 5,10−16
【0119】
pAd/CMV/V5/PNC−28EGトランスフェクション細胞の細胞分解の原因を確かめるために、PNC−28EGを欠いたコントロールアデノウイルスベクターすなわちpAd/CMV/V5−GW/LacZを要した。pAd/CMV/V5−GW/LacZは、構築されたpAd/CMV/V5/PNC−28EGベクターと同じであるが、ただしそれはPNC−28EGの代わりにLacZ遺伝子を含んだ。コントロールベクターは2つの利点をもたらした。すなわち、それはPNC−28EGを欠いておりそのためコントロールとして働きそしてガラクトシダーゼ発現が容易に検出される。粗製のウイルス原料は、pAd/CMV/V5−GW/LacZ、脂質に基づくトランスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000により293A細胞をトランスフェクションすることにより得られた。接着細胞の80〜90%が分解したとき、ウイルスを採集した。この最初の原料は、1x107−1x108プラーク形成単位(pfu)のウイルス力価を含んだ。粗製ウイルス原料は、より高い力価を生成するために再び293A細胞をトランスフェクションするのに使用した。1x108−1x109pfuの力価が得られそしてこのような高い力価が望ましい。6つの10倍希釈がpAd/CMV/V5−GW/LacZに行われ、1x10−9−1x10−4に及んだ。これらの希釈物は、それぞれ293Aを含む6穴プレートの穴並びにBMRAP1.TUC3細胞を含む第二の6穴のプレートの穴に添加された。ウイルスは293A細胞で複製したので、293A細胞の分解は、ウイルスが適切に働いていたことを立証するコントロールとして働いた。次の日、アガロースの重ねるものを細胞の上に置き、そしてそれらは2週間の間プラークの形成についてモニターされ、初めの日から4日後、第二のアガロースの重ねるものを加えた。図2に示されるように、明らかな形態上の変化が293Aについて見られるが、BMRPA1.TUC3細胞ではそうではなかった。
【0120】
図2A−2Hは、293AおよびBMRPA1.TUC3細胞に対するpAd/CMV/V5−GW/LacZの作用を示す。図2A−2Fは、293A細胞の希釈物(pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスの10−9−10−4)の顕微鏡写真である。14日後、293A細胞の形態は変化した。10−9希釈物では、90%の細胞はなお密集成長しているが、しかし細胞分解は肉眼では認められない。pAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスの濃度を上げると、丸くなり死んだ細胞の大きな面積が肉眼で確認される。密集成長が低い少数の領域のみが、10−5より高い濃度のpAd/CMV/V5−GW/LacZで検出できる。
【0121】
図2Gおよび2Hは、10−9〜10−4のpAd/CMV/V5−GW/LacZウイルスが添加されたBMRPA1.TUC3細胞の希釈物の顕微鏡写真である。細胞分解の肉眼で確認できる徴候は、任意のpAd/CMV/V5−GW/LacZ希釈物(10−8〜10−5は示されず)でBMRPA1.TUC3培養物で検出できず、細胞は、それらが最低の濃度10−9希釈(図2G)と同じく、10−4希釈で密集成長する(図2H)。
【0122】
BMRPA1.TUC−3細胞は、細胞分解または細胞死の徴候を示さなかった。これは、BMRPA1.TUC3細胞が欠失したE1およびE3遺伝子を補充せず、その結果ウイルスは複製不能であることを示す。もしウイルスがBMRPA1.TUC3培養物に細胞分解を生じさせるならば、それは目標細胞中への細胞毒性PNC−28遺伝子の導入のための好適な候補者と考えられないだろう。
【0123】
Ad/CMV/V5/PNC−28の構築:PNC−28EGの合成は、Adベクター構築の最初の段階であった。(非特許文献51)により公開されたPNC−28のアミノ酸配列(ETFSDLWKLL)に相当する2つのオリゴヌクレオチドが合成された。PNC−28ペプチドをエンコードするのに加えて、オリゴヌクレオチド配列も開始コドン、停止コドン、Kpn 1およびNotI解裂部位およびそれぞれの末端の4つの追加の塩基(DNAフラグメントを安定化しそして制限部位への適切な酵素結合に必要であった)を含んだ。Kpn 1およびNotI制限部位は、それらがpENTR−11ベクターの複数のクローニング部位(MCS)に存在したために、選ばれた。pENTR−11のKpn 1およびNotI制限部位の解裂は、突き出した末端を曝し、そしてpENTR11ベクター中への62bpの全配列(図3)とのPNC−28EGの連結を可能にした。
【0124】
【非特許文献51】Kanovsky M,Raffo A,Drew L,Rosal R,Do T,Friedman FK,Rubinstein P,Visser J,Robinson R,Brandt−RaufPW,Michl J,Fine RL,Pincus MR;Proc.Natl Acad Sci US A.2001 Oct 23;98(22):12438−43:Peptides from the amino termina1 mdm−2− binding domain of p53,designed from conformational analysis,are selectively cytotoxic to transformed cells
【0125】
オリゴヌクレオチドの合成中製造者の情報(Invitrogen)に従って、不正確な合成の確率は、1ヌクレオチドあたり0.99である。従って、正確に合成されるこのオリゴヌクレオチドの確率は、0.9962であり、所望のダイマーを形成するための2つの正確な鎖アニーリングの確率は、(0.9962)2である。そのため、アニーリングされたPNC−28EGは、所望のアニーリング生成物を指数的に増幅するためのPCR増幅用のテンプレートとして使用し、そうすることにおいて、それぞれのベクター中にクローンされるこのDNAの超過の確率を上げることになる。欠失または点突然変異は、蛋白合成中DNA翻訳に関する読み枠を変化またはシフトし勝ちであり、そして無効なまたは短い蛋白が転写されるかまたは全く蛋白が転写されないことになり勝ちであろう。
【0126】
2つの初回免疫オリゴヌクレオチドが合成された。1つは、5’−3’方向のPNC−28EG、GAGTGCGGCCGCTTCTAGAGG(PNC−28EG−Frw)に相補的であり、他は3’−5’方向のもの、ATCCGGTACCAAATGGAGACC(PNC−28EG−Rev)に相補的であった。ゲル電気泳動を次に使用して、増幅したPNC−28EGの分子サイズを同定した。62bpのサイズは、PNC−28EGの適切なアニーリングおよび増幅を示す。図4は、100bpマーカー(レーン4)と比較することにより決定された、PCR生成物(レーン1、2、3)を示す。PCR生成物の3つの異なる希釈物(1:20、1:50および1:100)。それらは、それぞれレーン1、2および3で分離された。
【0127】
62bpのバンドの適切な分子サイズは、どんな欠失も配列ではなかったことを示す。削り取ったバンドのDNA配列決定(Sambrookら、1989)によるさらなる分析は、どんな改変も存在しなかったことを示した。この段階は、反応に使用されるDNAのTaqポリメラーゼが1サイクルあたり2x10−4ヌクレオチドの率でヌクレオチドを誤って配合するために、重要であった。
【0128】
PNC−28EGの配列決定に使用される戦略は、普遍的初回免疫部位を含んだプラスミド中に遺伝子をクローンし、感応E.coli中にこの組み換えプラスミドを形質転換し、プラスミドを含んだ選択的に成長したコロニーから組み換えプラスミドを精製し、そしてプラスミドDNAを配列決定に送ることであった。PNC−28EGは、pCR2.1Topoベクター中にクローンされた。このプラスミドは、それがトポイソメラーゼIの使用によってベクター中へのPCR生成物の迅速かつ有効な挿入をもたらすために、選ばれた。トポイソメラーゼIは、PNC−28EGの3’末端におけるTaqポリメラーゼにより生成されたデオキシアデノシン(A)のオーバーハングを、線状化されたベクターに存在するデオキシチミジン(T)の3’オーバーハングに連結する。pCR2.1Topoベクターは、アンピシリン、カナマイシン選択性マーカーおよびlacZ遺伝子を含み、それは組み換えプラスミドを含む細菌コロニーの選択を可能にした。pCR2.1Topoに関するクローニング部位は、図5に示される。図5に示されるように、クローンされた遺伝子は、配列決定のプライマーとして使用される普遍的M13プライマーの配列範囲内にある。ベクターは、アンピシリンおよびカナマイシン抵抗性遺伝子およびlacZ遺伝子を含む。
【0129】
pCR2.1TOPO/PNC−28EG組み換えプラスミドは、次に解凍したTOP10感応細菌細胞へ連結したプラスミド混合物を加えそして細胞を短く加熱することにより、感応E.coli中に形質転換された。この温度の短い変化は、細菌細胞がプラスミドを取り上げるのを可能にした。形質転換した細菌細胞を、x−galを含んだ選択アンピシリンプレートで成長させた。pCR2.1TOPO/PNC−28EGに存在するLacZ遺伝子は、ポジティブなコロニーすなわちプラスミドを含むコロニーについてスクリーニングするのに使用された。LacZは、β−ガラクトシダーゼについてエンコードし、それはβ−ガラクトシドX−galを代謝しそしてこれは青い色を生成する(Invitrogen)。pCR2.1TopoプラスミドへのPNC−28EGのクローニングは、LacZの発現を防ぐ。そのため、pCR2.1TOPO/PNC−28EGポジティブコロニーは、青い色を発しない。培養プレートに添加されたアンピシリンは、それらがプラスミドに見いだされるアンピシリン抵抗性遺伝子を欠いているために、pCR2.1TOPO/PNC−28EGネガティブ細菌の成長を防ぐ。最後に、PCRは、偽のポジティブの白色のコロニー、またはPNC−28EGを含まないコロニーをスクリーニングするのに使用される。細菌コロニーは、上記のように初回免疫オリゴヌクレオチドPNC−28EG−FrwおよびPNC−28−Revのためのテンプレートとして用いられた。PCR生成物は、アガロースゲルで分析されて、組み換えプラスミド中の遺伝子を含むコロニーを同定した。
【0130】
形質転換は、数百の白色コロニーおよび数少ない青色のコロニーを生じた。19のランダムに選択した白色のコロニーおよび10のランダムに選択した青色のコロニー(図示せず)をpCR2.1TOPO/PNC−28EGについてスクリーニングした。pCR2.1TOPO/PNC−28EGを含むコロニーは、62bpの蛍光バンドを示すことが予想された。図6は、白色のコロニーの分析の結果を示す。図6は、PNC−28EG形質転換した白色コロニーからの増幅したPCR生成物を示すゲル写真である。19の選択されたポジティブコロニーからのPCR生成物は、2%アガロースゲルで分離された。エチジウムブルー染色DNAバンドは、100bpマークを越えて移動し(レーン20)、PCR生成物(1−18)のサイズが正確でありそしてこれらのコロニーがPNC−28EG/pCR2.1Topoを含むことを示す。
【0131】
レーン19(図6)は、予想されたサイズ以下の弱いバンドを示す。この現象は、プライマーがPCR生成物に配合されなかったときに通常生じ、それは次にテンプレート(pCR2.1TOPO/PNC−28EG)が存在せずそしてこのPCR生成物が偽のポジティブの結果であるように思われることを示唆している。
【0132】
PCR増幅は、ポジティブと思われるコロニーの中の偽のポジティブをスクリーニングする手段を提供する。これは、挿入物の正確なサイズにより、どのコロニーが組み換えプラスミドを含んでいるかを示した。これらのコロニーのいくつかのプラスミドは、次に配列決定されて、PNC−28EGが適切な配向で挿入されそして配列にどんな点突然変異も存在しなかったことを立証した。レーン1、5および8(図6)に相当したコロニーから単離されたプラスミドは、自動DNA配列決定装置に送られた。3つのプラスミドのうち、コロニー8(図6)に存在するものは、PNC−28EGに関する正確な配列を含んだ。コロニー8から得られた配列と合成したPNC−28EG配列との間の比較は、図7に示される。
【0133】
PNC−28についてエンコードするセグメントにおいて位置96(星印図7参照)で1つの点突然変異が存在する。TからCへの変化がある。しかし、これはアミノ酸配列の同定に影響しない。それは、コドンTTCもTTTフェニルアミンと同じアミノ酸をエンコードするからである。また、Kpn1制限部位において3つの未知のヌクレオチド(N)が存在する。これは、自動配列決定装置により生じた誤りの結果と思われる。もしこれらの3つのヌクレオチドが問題を生ずるとしたならば、Kpn1は、制限部位を解裂することができず、以後のpAd/CMV/V5/PNC−28EGベクターの構築は不可能であったろう。しかし、Kpn1制限は影響されないままであり、そしてpAd/CMV/V5/PNC−28EGベクターの構築は、以下のように進行した。
【0134】
細菌コロニー8は、細菌が採取されそして上記のようにプラスミドが単離されたとき、16時間37℃で液体培地で成長した。
【0135】
pAd/CMV/V5/PNC−28EG構築の次の段階は、エントリーベクターpENTR−11へPNC−28EGをクローンすることである。図8は、pENTR−11のベクターマップを示す。エントリーベクターは、組み換え部位attL 1およびattL 2を含み、それらは、アデノウイルス発現ベクターpAD/CMV/V5−DESTへのPNC−28EGの組み換えクローニングを可能にする。それは、またカナマイシン抵抗性遺伝子、attL 1およびattL 2の間のccdB遺伝子並びにその複数のクローニング部位(MCS)におけるKpn1およびNotlに関する制限部位を含む。
【0136】
pENTR−11の組み換え部位間に見いだされるccdB遺伝子は、ネガティブ選択を可能にする。ccdB遺伝子は、TOP10E.coli(使用される菌株)(Invitrogen)について毒性のある蛋白をエンコードする。PNC−28EGがpENTR−11ベクターにクローンされるとき、ccdB遺伝子は除かれる。そのため、PNC−28EGを含まないコロニーは、成長できない。カナマイシン抵抗性遺伝子も、カナマイシン処理培養プレートでのポジティブコロニーの選択を可能にする。
【0137】
pENTR−11ベクターをKpn1およびNot1により消化して、突き出した末端を曝しそしてPNC−28EGの連結を可能にした。消化は、またccdB遺伝子の除去を生ずる。pCR2.1TOPO/PNC−28EGは、同じ方法で消化された。PNC−28EGは、次にアガロースゲルの消化した生成物を分離しそして遺伝子を含むアガロースのスラブを削り取ることによりpCR2.1Topoベクターから精製された。線状化pENTR11ベクターも同様な方法で精製した。アガローススラブは溶融され、そしてPNC−28EGを、触媒としてT4DNAリガーゼを使用してpENTR11に連結した。クローンしたエントリーベクターpENTR11/PNC−28EGを使用して選択カナマイシンアガロースプレート上に成長した化学的感応TOP10E.coliを形質転換した。
【0138】
多数のコロニーが成長し、そしてそれらはすべてPNC−28EGを含んだが、いくつかのコロニーをPCRスクリーニングにかけた。ベクターを2つの異なる制限酵素により消化して、PNC−28EGを含まないベクターが機能性プラスミド中に連結しそしてccdB選択の妨害により偽のポジティブを生ずる可能性を最低にした。PNC−28EGそれ自体のDNA配列は、関連する唯一の反応が制限反応であるので、改変されてはならず、複製メカニズムも含まれなかった。この重要な分析は、事実すべてのコロニーがPNC−28EGを含むものではないことを示した。PNC−28ポジティブクローンは、次に多量に成長しそして組み換えエントリーベクターpENTR11/PNC−28EGがこのコロニーから単離された。
【0139】
pAd/CMV/V5/PNC−28EG構築における最後の段階は、pENTR11/PNC−28EGから単離されたPNC−28EGをアデノウイルスデスチネーションベクターであるpAD/CMV/V5−DEST中にサブクローニングすることであった。pAD/CMV/V5−DESTは、pENTR11に見いだされるattL 1およびattL 2部位に相当するattB 1およびattB 2組み換え部位を含む。これは、pENTR−11ベクターからpAD/CMV/V5−DESTへのPNC−28EGのインテグラーゼ仲介組み換えクローニングを可能にする。pAD/CMV/V5−DESTは、またPNC−28EGの発現を増強するヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む。アンピシリン抵抗性ccdbネガティブ選択およびmRNAの有効な転写停止およびポリアデニル化のための単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)ポリアデニル化配列もpAD/CMV/V5−DESTに存在する。図9は、pAD/CMV/V5−DESTの組み換え部位を示す。pNC−28EGは、pAD/CMV/V5−DESTへの組み換えによりクローンされ、所望の発現クローンを生成した。
【0140】
複製不能ウイルスをエンコードする必要な配列を含んだpAD/CMV/V5/PNC−28EGは、PNC−28を発現できる。化学的感応TOP10E.coliを、pAD/CMV/V5/PNC−28EGベクターにより形質転換しそして選択アンピシリンプレートで成長させた。多数のコロニーが成長し、そして10のランダムに選択したコロニーがPCRスクリーニングにかけられた(図10)。図10は、2%アガロースゲル上で分離された10の選択されたポジティブコロニーからのPCR生成物を示す写真である。エチジウムブロマイド染色DNAバンドは、100bpマークを越えて移動し(レーン11)、PCR生成物(1−9)のサイズが正確でありそしてこれらのコロニーがpAD/CMV/V5/PNC−28EGを含むことを示す。レーン10の弱いバンドは、偽のポジティブコロニーを示す。従って、バンドの移動は、10のランダムに選択されたコロニーの内の9つが、pAD/CMV/V5/PNC−28EGを含むことを示した。これらのポジティブなコロニーは、大量の液体培地で成長しそしてpAD/CMV/V5/PNC−28EGはそれらから精製された。図11は、アガロースゲル上で分離された精製プラスミドを示す。
【0141】
ゲルの結果は、単離されたpAD/CMV/V5/PNC−28EGが非常に純粋であることを示す。レーン1および3で単一のバンドのみが存在するので、精製されたプラスミドには他の不純物がない。バンドの分子サイズは約35kbである。
【0142】
一度pAD/CMV/V5/PNC−28EGが精製されたならば、それは次にBMRPA1.TUC3細胞をトランスフェクションするのに使用されて、PNC−28蛋白中に転写かつ翻訳されたとき、PNC−28のための遺伝子が膵臓ガン細胞に対し細胞毒性を有しそのため構築されたベクターが抗膵臓ガン剤として有用であることを立証した。
【0143】
BMRPA1.TUC3細胞は、抗生物質のない培地(cRMPI、10%FBS)を有する6穴のプレートの3つの穴に1x105細胞の濃度で接種された。細胞は、37℃で4時間のインキュベーションにより穴に接着した。2つのトランスフェクションを行った。第一の穴はpAD/CMV/V5/PNC−28EGによりトランスフェクションされ、そして第二の穴は、コントロールプラスミドpAD/CMV/V5−GW/LacZによりなされた。両方の場合とも、細胞は4μgのプラスミドおよび10μLのリポフェクタミン2000(比2:5)によりトランスフェクションされた。第三の穴の細胞は、第二のコントロールとして用いられそしてリポフェクタミン2000(10μL)のみを用いた。
【0144】
細胞を37℃でインキュベータに戻した。24時間後、それぞれの穴からの上澄を集め、そして懸濁された細胞をカウントした。細胞の生存も注目した。細胞を新しい培地で満たし、そしてインキュベータに戻した。この手順を、トラスフェクション後72時間まで連続する24時間毎に繰り返した。
【0145】
トランスフェクション後72時間で、残りの接着細胞を次に離しそしてカウントした。図12Aおよび表5は、72時間目のそれぞれの穴での接着細胞の数を示す。図12Aおよび表5に示されるように、pAD/CMV/V5/PNC−28EGによりトランスフェクションされた細胞は、細胞の最初の接種から細胞の濃度が85%増加したことを示す。pAD/CMV/V5−GW/LacZによりトランスフェクションされたBMRPA1.TUC3細胞は、72時間後3.5倍に増え、すべてのプラスミドによりトランスフェクションされなかった細胞は、接種された細胞の最初の量から7.5倍増加した。図12bは、トランスフェクション後72時間の細胞の写真を示す。トランスフェクション後72時間で、残りの接着細胞は、次に離されそしてカウントされた。図12bに示されるように、トランスフェクション後72時間で、pAD/CMV/V5/PNC−28EGにより処理された細胞の98%が、コントロールに比べて分解した。LacZベクターによりトランスフェクションされた細胞およびリポフェクタミン2000によるものは、90−100%の密集成長を示したに過ぎない。
【0146】
【表5】
【0147】
pAD/CMV/V5/PNC−28EGによりトランスフェクションされた膵臓ガンBMRPA1.TUC3細胞の>98%の低下そして開始時の数より3.5倍および7.5倍の両方のコントロール細胞数の増加は、pAD/CMV/V5/PNC−28EG細胞の細胞分解作用がPNC−28の生合成によることを明らかに示している。Ad/PNC−28EGベクターによりトランスフェクションされたBMRPA1.TUC3細胞も、非接着および死んだ細胞において最高の増加(5xコントロール)を示す。対照的に、pAD/CMV/V5−GW/LacZトランスフェクションBMRPA1.TUC3細胞は、細胞の分解を示さず、そしてリポフェクタミン2000処理細胞と比較したとき、わずかに遅い成長を示すに過ぎなかった。pAD/CMV/V5−GW/LacZトランスフェクションおよびリポフェクタミン処理BMRPA1.TUC3細胞における細胞分解の不存在は、さらに新しく合成されたPNC−28蛋白がpAD/CMV/V5/PNC−28EGトランスフェクション細胞における細胞死の原因であるという主張を強化する。トランスフェクション後48時間のpAD/CMV/V5/PNC−28EGトランスフェクションBMRPA1.TUC3群における非接着かつ死んだ細胞の急速な増加は、PNC−28の発現がこの時間枠内で生ずることを示唆する。この観察は、ペネトラチン配列に付着したPNC−28が、薬剤への細胞の暴露後48−72時間以内でBMRPA1.TUC3細胞に対して細胞死を誘導する、実施例2および図1に報告された時間枠と有利に比較される。
【0148】
上記の明細書およびそこに報告された実験結果は、説明のためであり、そして本発明の範囲の制限ではない。当業者は、種々の改変が本発明から離れることなくなされうることを理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】膵臓ガン細胞により異種移植された同型接合したNU/NUマウスにおけるPNC−28(SEQ ID NO:4へそのカルボキシ末端で融合したSEQ ID NO:3)の生体内腫瘍阻害作用を描いている。星をつけた矢印は、腫瘍成長期間中の13日(正確には13.5日)のs.c.ポンプ移植の時間を示す。
【図2】A−Hは、293AおよびBMRPA1.TUC3細胞に対するpAD/CMV/V5−GW/LacZウイルスの作用を示す顕微鏡写真である。
【図3】PNC−28EGの62bpDNA配列を示す。開始コドンおよび停止コドンの両者は、強調されている。本発明のペプチドをエンコードする配列は、イタリックで強調されている。DNA配列のそれぞれのコドンの下に、対応するアミノ酸がある。
【図4】PNC−28EG PCR生成物を示すゲル写真である。レーン4は100bpマーカーを含む。
【図5】pCR2.1Topoベクターのヌクレオチド配列および制限マップである。ラベル「PCR生成物」は、PNC−28EGがベクターでクローンされる場所を示す。クローンされた遺伝子は、配列決定プライマーとして使用される普遍的M13プライマーの配列範囲内にある。ベクターは、アンピシリンおよびカナマイシン抵抗性遺伝子およびlacZ遺伝子を含む。
【図6】19の選択ポジティブコロニーからのPCR生成物並びに分子マーカーを示すゲル写真である。
【図7】図6からのコロニー8のDNA配列を示す。一番上の線は、実際のDNA配列でありそして図の下方に示されているのは、自動DNA配列分析から得られたクロマトグラムである。
【図8】pENTR−11ベクターのマップである。
【図9】Ad/CMV/V5−DESTベクターのマップである。
【図10】PNC−28EGのPCR増幅生成物を示すゲル写真である。
【図11】精製されたpAD/CMV/V5/PNC−28EG(レーン1および2)および500bpDNAマーカー(レーン7)のゲル写真である。
【図12】Aは、トランスフェクション後72時間の接着BMRPA1.TUC3細胞の数を示すグラフである。Bは、トランスフェクション後72時間目のBMRPA1.TUC3細胞を示す顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合されたプロモーター配列からなり、該ペプチドがアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるかまたはそのアナログまたは誘導体であることを特徴とする複製不能アデノウイルス(AdV)ベクター。
【請求項2】
ヌクレオチド配列が、アミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)またはそのアナログまたは誘導体をエンコードする請求項1記載の複製不能AdVベクター。
【請求項3】
ヌクレオチド配列が、アミノ酸配列PPLSQETFS(配列番号2)またはそのアナログまたは誘導体をエンコードする請求項1記載の複製不能AdVベクター。
【請求項4】
ヌクレオチド配列が、アミノ酸配列ETFSDLWKLL(配列番号3)またはそのアナログまたは誘導体である請求項1記載の複製不能AdVベクター。
【請求項5】
ヌクレオチド配列が、GAGACCTTTTCTGACCTCTGGAAACTCCTC(配列番号)からなる請求項4記載の複製不能AdVベクター。
【請求項6】
E1およびE3遺伝子が欠失している請求項1〜5の何れか1つの項記載の複製不能AdVベクター。
【請求項7】
AdVベクターが、pAD/CMV/V5/PNC−28EGである請求項5記載の複製不能AdVベクター。
【請求項8】
プロモーター配列が、CMV、SV40、RSV、LTR、ベータ−アクチン、EF−アルファ、Gal−Elb、UbC、ベータ−カゼイン、EM−7、EF、TEF1、CMV−2およびBsdからなる群から選ばれる請求項1〜5の何れか1つの項記載の複製不能AdVベクター。
【請求項9】
プロモーター配列がCMVである請求項8記載の複製不能AdVベクター。
【請求項10】
患者に治療上有効な量の請求項1記載のAdVベクターを投与することを特徴とする患者のガン細胞を選択的に殺す方法。
【請求項11】
患者に治療上有効な量の請求項2記載のAdVベクターを投与することを特徴とする患者のガン細胞を選択的に殺す方法。
【請求項12】
患者に治療上有効な量の請求項3記載のAdVベクターを投与することを特徴とする患者のガン細胞を選択的に殺す方法。
【請求項13】
患者に治療上有効な量の請求項4記載のAdVベクターを投与することを特徴とする患者のガン細胞を選択的に殺す方法。
【請求項14】
ガン細胞が、乳ガン、前立腺ガン、肺ガン、子宮頚ガン、結腸ガン、黒色腫、膵臓ガン、固体組織腫瘍または血液のガンの少なくとも1つである請求項10〜13の何れか1つの項記載の方法。
【請求項15】
血液のガンが、リンパ腫または白血病である請求項14記載の方法。
【請求項16】
ガンが膵臓ガンである請求項14記載の方法。
【請求項1】
ペプチドをエンコードするヌクレオチド配列に実施可能に結合されたプロモーター配列からなり、該ペプチドがアミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続するアミノ酸からなるかまたはそのアナログまたは誘導体であることを特徴とする複製不能アデノウイルス(AdV)ベクター。
【請求項2】
ヌクレオチド配列が、アミノ酸配列PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)またはそのアナログまたは誘導体をエンコードする請求項1記載の複製不能AdVベクター。
【請求項3】
ヌクレオチド配列が、アミノ酸配列PPLSQETFS(配列番号2)またはそのアナログまたは誘導体をエンコードする請求項1記載の複製不能AdVベクター。
【請求項4】
ヌクレオチド配列が、アミノ酸配列ETFSDLWKLL(配列番号3)またはそのアナログまたは誘導体である請求項1記載の複製不能AdVベクター。
【請求項5】
ヌクレオチド配列が、GAGACCTTTTCTGACCTCTGGAAACTCCTC(配列番号)からなる請求項4記載の複製不能AdVベクター。
【請求項6】
E1およびE3遺伝子が欠失している請求項1〜5の何れか1つの項記載の複製不能AdVベクター。
【請求項7】
AdVベクターが、pAD/CMV/V5/PNC−28EGである請求項5記載の複製不能AdVベクター。
【請求項8】
プロモーター配列が、CMV、SV40、RSV、LTR、ベータ−アクチン、EF−アルファ、Gal−Elb、UbC、ベータ−カゼイン、EM−7、EF、TEF1、CMV−2およびBsdからなる群から選ばれる請求項1〜5の何れか1つの項記載の複製不能AdVベクター。
【請求項9】
プロモーター配列がCMVである請求項8記載の複製不能AdVベクター。
【請求項10】
患者に治療上有効な量の請求項1記載のAdVベクターを投与することを特徴とする患者のガン細胞を選択的に殺す方法。
【請求項11】
患者に治療上有効な量の請求項2記載のAdVベクターを投与することを特徴とする患者のガン細胞を選択的に殺す方法。
【請求項12】
患者に治療上有効な量の請求項3記載のAdVベクターを投与することを特徴とする患者のガン細胞を選択的に殺す方法。
【請求項13】
患者に治療上有効な量の請求項4記載のAdVベクターを投与することを特徴とする患者のガン細胞を選択的に殺す方法。
【請求項14】
ガン細胞が、乳ガン、前立腺ガン、肺ガン、子宮頚ガン、結腸ガン、黒色腫、膵臓ガン、固体組織腫瘍または血液のガンの少なくとも1つである請求項10〜13の何れか1つの項記載の方法。
【請求項15】
血液のガンが、リンパ腫または白血病である請求項14記載の方法。
【請求項16】
ガンが膵臓ガンである請求項14記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−519614(P2006−519614A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508596(P2006−508596)
【出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/000684
【国際公開番号】WO2004/081030
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(504344842)ザ リサーチ ファンデーション オブ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/000684
【国際公開番号】WO2004/081030
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(504344842)ザ リサーチ ファンデーション オブ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク (8)
【Fターム(参考)】
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