説明

情報コード、情報コード読取装置および情報コード生成方法

【課題】 情報コードが記された部分における単位面積当たりの情報量を増加することができる情報コード、情報コード読取装置および情報コード生成方法を実現する。
【解決手段】 情報コードC1は、基準面Rと、基準面Rからの深さが少なくとも2種類存在する凹部1〜3とで構成されており、基準面Rおよび各深さには、情報コードC1を構成する各値が割り付けられている。レーザ光源22からレーザ光Lを出射し、その反射光を受光センサ23により受光する。凹部の深さと、反射光の受光位置とは対応関係にあり、受光位置を検出することにより、情報コードを割り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基準面と、この基準面から窪んだ凹部とを組み合わせ、基準面および凹部にそれぞれ割り付けられた値により構成された情報コード、その情報コードを読取る情報コード読取装置および情報コード生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス層中の異なる層に形成されたマーカをレーザ光によってスキャンすることにより、各マーカに設定された情報コードを読取る技術が提案されている(特許文献1)。また、シート部材の表面に配置された凹状のドットによって情報コードを形成する方法が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−259004号公報(第21,23,30,35段落、図1,3,7)
【特許文献2】特許第3019614号公報(第22段落、図8,9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載のマーカ、あるいは、特許文献2に記載のドットは、情報コードの「0」または「1」を示すものであり、従来のバーコードなどの1次元コード、あるいは、QRコード(「QRコード」は、株式会社デンソーウェーブの登録商標)などの2次元コードなどと同じ情報量であるため、情報コードが記された部分における単位面積当たりの情報量を増加することができない。
【0004】
この発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、情報コードが記された部分における単位面積当たりの情報量を増加することができる情報コード、情報コード読取装置および情報コード生成方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明では、基準面(R)と、前記基準面から窪んでおり、光(L)を反射する底面(1a,2a,3a)を有する凹部(1,2,3)とを組み合わせて構成されており、前記基準面から前記底面までの深さ(d1,d2,d3)が少なくとも2種類存在し、かつ、前記基準面および前記各深さにそれぞれ割り付けられた値(0,1,2,3)により情報コードが構成されている情報コード(C1)の読取装置(10)であって、前記基準面および凹部の底面に光を照射し、その照射位置から前記基準面および底面までの距離(b1,b2,b3)を測定する測定手段(20)と、前記測定手段により測定された距離に基づいて、前記情報コードに割り付けられた値を復元する復元手段(11)と、を備えた情報コード読取装置を特徴とする。
【0006】
請求項6に記載の発明では、基準面(R)と、前記基準面から窪んでおり、光(L)を反射する底面(1a,2a,3a)を有する凹部(1,2,3)とを組み合わせて構成されており、前記基準面から前記底面までの深さ(d1,d2,d3)が少なくとも2種類存在し、かつ、前記基準面および前記各深さにそれぞれ割り付けられた値(0,1,2,3)により情報コードが構成されている情報コード(C1)の生成方法であって、前記情報コードを構成する値に前記基準面および深さを割り付ける第1工程と、前記第1工程により割り付けられた深さの凹部と基準面との組合せを前記基準面に形成する第2工程と、を有する情報コード生成方法を特徴とする。
【0007】
請求項9に記載の発明では、基準面(R)と、前記基準面から窪んでおり、光(L)を反射する底面(1a,2a,3a)を有する凹部(1,2,3)とを組み合わせて構成されており、前記基準面から前記底面までの深さ(d1,d2,d3)が少なくとも2種類存在し、かつ、前記基準面および前記各深さにそれぞれ割り付けられた値(0,1,2,3)により情報コードが構成されている情報コード(C1)を特徴とする。
【0008】
上記のように請求項1,6,9に記載の発明によれば、基準面から凹部の底面までの深さが少なくとも2種類存在し、かつ、基準面および各深さにそれぞれ割り付けられた値により情報コードが構成されているため、基準面から凹部の底面までの深さの種類の数だけ、情報コードを構成する値を増やすことができる。
従って、情報コードが記された部分における単位面積当たりの情報量を増加することができる。
例えば、基準面および3種類の深さを有する凹部によって情報コードを構成した場合は、基準面および各凹部にそれぞれ0,1,2,3の4種類の値を割り付けることができるため、従来の0,1だけの2種類の値を割り付ける情報コードよりも凹部1個当り情報量を2倍に増加することができる。つまり、m種類の凹部をn個有する場合は、情報量を(m/2)倍に増加することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の情報コード読取装置(10)において、凹部(1,2,3)の各底面(1a,2a,3a)が、それぞれ基準面(R)に対して傾斜していることを特徴とする。
【0010】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の情報コード生成方法において、前記第2工程は、各凹部(1,2,3)の各底面(1a,2a,3a)をそれぞれ前記基準面(R)に対して傾斜するように形成することを特徴とする。
【0011】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の情報コードにおいて、前記各凹部(1,2,3)の各底面(1a,2a,3a)は、それぞれ前記基準面(R)に対して傾斜していることを特徴とする。
【0012】
上記のように請求項2,7,10に記載の発明によれば、凹部の各底面をそれぞれ基準面に対して傾斜させることにより、凹部の底面に照射した光の反射角度を大きくすることができるため、照射した光と反射した光との干渉を少なくすることができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、請求項1に記載の情報コード読取装置(10)において、前記測定手段(70)は、前記光(L)を基準面(R)および凹部(1,2,3)の底面(1a,2a,3a)に対して鋭角の入射角度で照射する照射手段(22)と、前記照射手段により照射され、前記基準面および凹部の底面にて反射した反射光を受光する受光手段(23)と、を備えており、前記受光手段により受光された前記反射光の受光位置に基づいて前記距離(b1,b2,b3)を測定するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
このように、光を基準面および凹部の底面に対して鋭角の入射角度で照射することにより、凹部の深さによって反射光を受光する位置を異ならせることができるため、その受光位置に基づいて、光の照射位置から基準面および底面までの距離を測定することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、請求項2に記載の情報コード読取装置(10)において、前記測定手段(70)は、前記光(L)を基準面(R)および凹部(1,2,3)に対して垂直に照射する照射手段(22)と、前記照射手段により照射され、前記基準面および凹部の底面にて反射した反射光を受光する受光手段(23)と、を備えており、前記受光手段により受光された前記反射光の受光位置に基づいて前記距離(b1,b2,b3)を測定するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
凹部の底面は基準面に対して傾斜しているため、光を凹部に向けて垂直に照射した場合であっても、凹部の底面にて反射した反射光は、照射方向とは異なる方向へ反射する。このため、凹部の深さによって反射光を受光する位置を異ならせることができるため、その受光位置に基づいて、光の照射位置から基準面および底面までの距離を測定することができる。
ところで、光を鋭角の入射角度で照射する場合は、光は入射角度と同じ角度の反射角度で反射するため、その入射角度および反射角度を確保可能な開口部を有する凹部が必要となる。
しかし、請求項4に係る発明では、光を凹部に向けて垂直に照射するため、入射角度を確保する必要がなく、開口部の狭い凹部にも光を照射することができる。
従って、凹部を密に配置することができるため、情報コードの単位面積当たりの情報量を増加することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の情報コード読取装置(10)において、前記基準面(R)および凹部(1,2,3)の底面(1a,2a,3a)は、それぞれ前記光(L)の反射強度が異なり、前記基準面および前記各深さ(d1,d2,d3)に加えて、前記基準面および凹部の底面の前記光に対するそれぞれの反射強度も前記情報コード(C1)を構成する値として割り付けられており、前記測定手段(70)は、前記基準面および凹部の底面に光を照射し、その照射位置から前記基準面および底面までの距離を測定するとともに、前記基準面および底面にて反射した光の強度を計測し、前記復元手段(11)は、前記測定手段により測定された距離(b1,b2,b3)および光の強度に基づいて、前記情報コードに割り付けられた値を復元することを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の発明では、請求項6または請求項7に記載の情報コード生成方法において、前記基準面(R)および凹部(1,2,3)の底面(1a,2a,3a)は、それぞれ前記光(L)の反射強度が異なり、前記基準面および前記各深さ(d1,d2,d3)に加えて、前記基準面および凹部の底面の前記光に対するそれぞれの反射強度が前記情報コード(C1)を構成する値として割り付けられており、前記第1工程は、前記情報コードを構成する値に前記基準面と、前記深さと、前記反射強度とを割り付ける工程であり、前記第2工程は、前記第1工程により割り付けられた深さおよび反射強度を有する凹部および基準面の組合せを前記基準面に形成する工程であることを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の発明では、請求項9または請求項10に記載の情報コードにおいて、前記基準面(R)および凹部(1,2,3)の底面(1a,2a,3a)は、それぞれ前記光(L)の反射強度が異なり、前記基準面と、前記各深さ(d1,d2,d3)と、前記各反射強度とにそれぞれ割り付けられた値により情報コード(C1)が構成されていることを特徴とする。
【0020】
上記のように請求項5,8,11に記載の発明によれば、基準面および各凹部の深さに加えて、基準面および凹部の底面の光に対するそれぞれの反射強度も情報コードを構成する値として割り付けられており、測定手段により測定された距離および光の強度に基づいて、情報コードに割り付けられた値を復元するため、基準面および各凹部の深さにのみ情報コードを構成する値を割り付ける場合よりも、情報コードを構成する値を増加することができる。
従って、情報コードが記された部分における単位面積当たりの情報量をより一層増加することができる。
【0021】
なお、上記括弧内の符号は、後述する発明の実施形態における具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の第1実施形態について図を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
[情報コードの構造]
情報コードの構造について図1を参照して説明する。図1は情報コードの説明図であり、(a)は情報コードの平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0023】
情報コードC1は、平坦な基準面Rと、この基準面Rから窪んだ複数の凹部1,2,3とから構成される。各凹部の深さは少なくとも2種類存在する。各凹部1〜3の底面1a〜3aは、それぞれ基準面Rと平行な平坦に形成されている。基準面Rおよび各底面1a〜3aは、それぞれレーザ光に対して高い反射強度を有する。情報コードC1の平面構造は、バーコードなどの1次元コードあるいはQRコード(「QRコード」は、株式会社デンソーウェーブの登録商標)などの2次元コードを利用して形成することができる。例えば、バーコードを構成するバーの部分あるいはQRコードのセルの部分を凹部に形成する。図1は、QRコードのセルの部分を凹部に形成した場合の一例である。但し、各凹部は3種類の深さを有する。
【0024】
[情報コード読取装置の構成]
情報コード読取装置の構成について図を参照して説明する。図2は、情報コード読取装置に備えられたレーザ照射装置の説明図である。図3は、図2に示すレーザ照射装置に備えられたレーザ光源および受光センサの説明図であり、(a)はレーザ光源から出射されたレーザ光Lが受光センサにより受光される様子を模式的に示す説明図、(b)は受光センサにおける受光位置と、レーザ光Lの出射位置から照射位置までの距離との関係を示す説明図である。
【0025】
情報コード読取装置は、レーザ光Lを基準面Rおよび各凹部1〜3の底面1a〜3aへ照射するとともに、反射したレーザ光Lを受光するレーザ照射装置20を備える。図2に示すように、レーザ照射装置20は、ベース部材10aの底面から垂下するように取付けられている。情報コードC1は、矢印F1で示す方向へ移動し、レーザ照射装置20は定位置に固定された状態である。
【0026】
例えば、情報コードC1は、製造工程においてコンベア上を流れる製品に付され、その製品の情報コードC1が通過する軌道の上方にレーザ照射装置20が配置される。レーザ照射装置20は、情報コードC1に向けてレーザ光Lを照射し、マイコンデコード処理部(図5において符号11で示す)が、レーザ光Lの受光位置に基づいて、レーザ光Lの出射位置と照射位置との距離を測定する。具体的には、レーザ光Lの照射位置と、レーザ光Lを照射した基準面Rとの距離と、レーザ光Lの照射位置と、レーザ光Lを照射した各凹部の各底面との距離とを測定する。
【0027】
図3に示すように、レーザ照射装置20は、レーザ光Lを照射するレーザ光源22と、基準面Rまたは凹部の底面にて反射したレーザ光Lを受光する受光センサ23とを備える。レーザ光源22は、レーザダイオード(図示せず)と、このレーザダイオードから出射されたレーザ光を集光するレンズ(図示せず)とを備える。受光センサ23は、CCD(Charge Coupled Device)を2次元(縦横)に配列してなるCCDイメージセンサにより構成される。
【0028】
n個×m個の2次元に配置されたCCD群を1ブロックとして、複数のブロックがレーザ光Lを受光可能なラインに沿って配置されている。図3(b)に示す例では、G1〜G4の計4個のブロックが配置されている。そして、各ブロックのうち、最も受光量の多いブロックが、目標から反射したレーザ光Lを受光したブロックに決定される。
【0029】
なお、バーコードのような1次元の情報コードは、レーザ照射装置20による1回の走査によって情報コードを読取ることができるが、QRコードのような2次元の情報コードは、2次元に走査する必要があるため、レーザ光源22および受光センサ23を走査方向と直交する方向に2次元コードのセルの数と同じ数配置した構成とする。また、受光センサ23は、C−MOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を2次元(縦横)に配列してなるC−MOSイメージセンサなどの2次元イメージセンサにより構成してもよい。
【0030】
[距離測定の原理]
次に、距離測定の原理について、それを示す図4を参照して説明する。
レーザ照射装置20から出射するレーザ光Lの出射位置およびレーザ光Lの照射目標に対する入射角度は変化しないものとする。また、レーザ光Lの出射位置および受光位置は、同一平面上にあるものとする。以下、レーザ光Lの出射位置と照射位置との距離を照射距離といい、レーザ光Lの出射位置と受光位置との距離を受光距離という。
【0031】
出射位置から距離b1に位置する基準面Rに対してレーザ光Lを照射した場合の受光距離はP1である。次に、出射位置からの距離がb2であって基準面Rからの深さがd1の凹部1の底面1aにレーザ光Lを照射した場合の受光距離はP1より長いP2(P2>P1)となる。次に、出射位置からの距離がb3であって基準面Rからの深さがd1よりも深いd2(d2>d1)の凹部2の底面2aにレーザ光Lを照射した場合の受光距離はP2よりも長いP3(P3>P2)となる。次に、出射位置からの距離がb4であって基準面Rからの深さがd2よりも深いd3(d3>d2)の凹部3の底面3aにレーザ光Lを照射した場合の受光距離はP3よりも長いP4(P4>P3)となる。
【0032】
上記のように、d1<d2<d3およびb1<b2<b3<b4である場合において、P1<P2<P3<P4の関係にある。つまり、受光距離P1〜P4は、凹部の深さd1〜d3が深いほど、換言すると、照射距離が長いほど長くなる。
従って、照射距離に応じて受光距離が変化することを利用し、情報コードを構成する値と照射距離または受光距離とを対応付けておくことにより、計測した照射距離または受光距離に対応する値を求めることができ、その値の組合せから情報コードを割り出すことができる。
【0033】
また、照射距離の種類が増加するほど、各照射距離に割り付けることのできる値も増加する。例えば、凹部の深さが上記のように3種類あると、基準面Rを含めて全部で4種類の照射距離となるから、4種類の値を割り付けることができる。基準面Rに0を割り付け、凹部の深さd1,d2,d3にそれぞれ1,2,3を割り付けると、0〜3の4つの値から構成された情報コードを作成することができる。従来の0および1の2つの値だけで構成された情報コードよりも、組み合わせ可能な情報コードの情報量を凹部1個当り2倍に増加することができる。
つまり、情報コードをm種類の深さを有するn個の凹部により構成することにより、mの情報量を表すことができる。
【0034】
[電気的構成]
次に、情報コード読取装置10の電気的構成について、それをブロックで示す図5を参照して説明する。
情報コード読取装置10は、レーザ照射装置20と、2値化回路13と、マイコンデコード処理部11と、メモリ12と、データ出力部15とを備える。2値化回路13は、レーザ照射装置20に備えられた受光センサ23において光電変換され受光量に対応するアナログ信号のノイズを除去するローパスフィルタと、このローパスフィルタから出力された信号を所定の増幅率(ゲイン)で増幅する増幅回路と、この増幅回路から出力された信号をパルス信号に変換する微分回路と、この微分回路から出力されたパルス信号を絶対値を取ったパルス列に変換する絶対値回路とを備える。
【0035】
マイコンデコード処理部11は、図示しないが、デコード処理および各回路の制御などを実行するCPUと、このCPUが実行する各種の制御プログラムが格納されたROMと、CPUの処理結果などを一時的に格納するRAMと、クロック信号発生回路と、各回路との間でデータの入出力を行う入出力回路とを備える。
【0036】
図3(b)に示すように、受光センサ23を構成するCCDの各ブロックには、照射距離b1〜b4に対応させて、G1〜G4のID(識別番号)が設定されている。例えば、ブロックG1にてレーザ光Lを受光した場合は、照射距離はb1であり、ブロックG4にてレーザ光Lを受光した場合は、照射距離はb4である。
【0037】
図6は、上記のROMなどに格納されたテーブルの説明図である。テーブルtaは、IDG1,G2,G3,G4と、情報コードを構成する値0,1,2,3とをそれぞれ対応付けて構成される。例えば、目標位置から反射したレーザ光Lを受光したブロックのIDが連続してG1,G2,G1,G4,G3であった場合は、テーブルtaから0,1,0,3,2の値が読み出される。例えば、レーザ照射装置20が図2に示す情報コードC1を左端から右端へ走査した場合、テーブルtaから読出される値は、010101032130120310となる。
【0038】
マイコンデコード処理部11は、前記の2値化回路13の絶対値回路から出力されたパルス列の各パルスを所定の基準値と比較することにより光量を判定し、その判定結果に対応する2値データを生成し、その2値データをメモリ12に格納する。そして、メモリ12に格納された2値データに基づいて、最大の光量を受光したCCDのブロックを検出する。例えば、所定の単位時間内にメモリ12に2値データ「1」が最も多く格納されたブロックを、目標位置で反射したレーザ光Lを受光したブロックであると判定する。そして、そのブロックに設定されているIDに対応する値をテーブルtaから読出す。つまり、情報コードC1のデコード処理を実行する。
【0039】
データ出力部15は、デコードしたデータなどを外部装置(図示せず)へ出力する。また、情報コード読取装置10には、マイコンデコード処理部11および各回路へ動作電源を供給するための電源回路16が備えられている。なお、情報コードC1のデコードが成功したかったとき(あるいは成功したとき)に「ピッ」などの音を発生したり、LEDを点灯させたりする報知回路をマイコンデコード処理部11に接続してもよい。また、情報コード読取装置10の電源をON/OFFするスイッチを電源回路16に接続してもよい。
【0040】
[情報コードの生成方法]
次に、情報コードの生成方法について説明する。
(第1工程)
情報コードC1を構成する値に基準面および凹部の深さを割り付ける。例えば、情報コードC1を構成する値が「0,1,0,3,2」である場合は、各値に「R,d1,R,d1,d3,d2」を割り付ける。
【0041】
(第2工程)
次に、第1工程により割り付けられた深さの凹部と基準面との組合せを基準面に形成する。例えば、第1工程において割り付けられた深さおよび基準面の組合せが、「R,d1,R,d1,d3,d2」であった場合は、情報コードC1を形成する対象に「基準面R,深さd1の凹部1,基準面R,深さd1の凹部1,深さd3の凹部3,深さd2の凹部2」の順に配置された構造を形成する。
【0042】
図7は、情報コードを形成するための方法を示す説明図である。例えば、情報コードC1の凹凸を逆にした構造の雄型30を作成し、その雄型30を用いてプレス成型あるいは射出成型などの成型方法によって情報コードC1を作成する。
【0043】
情報コードC1を形成する対象Cが、金属などのレーザ光に対する反射強度が高い場合は、基準面および各凹部の底面を特に加工する必要はないが、基準面および各凹部の底面は、レーザ光の反射方向が乱れないようにするために微細な凹凸が形成されていない方が望ましい。また、対象Cがガラスなどのレーザ光が透過する性質のものである場合は、基準面および各凹部の底面にアルミニウムなどのレーザ光に対する反射強度の高い材料による膜を蒸着などの手法によって形成する。ガラス層の下が反射強度の高い面である場合は、ガラス層の表面に反射強度の高い膜を特に形成する必要はない。なお、レーザ加工、プラズマ加工、切削加工などによって各凹部を形成することもできる。
【0044】
[第1実施形態の効果]
(1)上述の第1実施形態の情報コードC1、情報コード読取装置10および情報コード生成方法によれば、基準面Rから凹部1〜3の底面1a〜1cまでの深さd1〜d3が少なくとも2種類存在し、かつ、基準面Rおよび各深さd1〜d3にそれぞれ割り付けられた値により情報コードC1が構成されているため、基準面Rから凹部1〜3の底面1a〜1cまでの深さd1〜d3の種類の数だけ、情報コードC1を構成する値を増やすことができる。
従って、情報コードC1が記された部分における単位面積当たりの情報量を増加することができる。
【0045】
(2)また、従来の情報コード読取装置は、情報コードに割り付けられた値を反射光の光量に基づいて復元するため、情報コードを照明する光量の影響を受けてデコードに誤差が発生しやすいが、上述の第1実施形態によれば、情報コードC1に割り付けられた値をレーザ光Lの照射距離に基づいて復元するため、照明の光量に起因する誤差が発生することがなく、高精度のデコードを行うことができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、この発明の第2実施形態について図を参照して説明する。
図8は、この実施形態の情報コード読取装置における距離測定の原理を示す説明図である。情報コードC2を構成する各凹部1〜3の各底面1b〜3bは、レーザ光Lを受光する側に向けて下り勾配になった傾斜面に形成されている。このように、各底面1b〜3bは、傾斜面であるため、レーザ光Lを各凹部に向けて垂直に照射した場合であっても、底面にて反射したレーザ光Lは、照射方向とは異なる方向へ反射する。このため、凹部の深さによってレーザ光Lの反射波を受光する位置を異ならせることができるため、その受光位置に基づいて、レーザ光Lの照射距離を測定することができる。
【0047】
ところで、レーザ光Lを鋭角の入射角度で照射する場合は、レーザ光Lは入射角度と同じ角度の反射角度で反射するため、その入射角度および反射角度を確保可能な開口部を有する凹部が必要となる。
しかし、この実施形態によれば、レーザ光Lを凹部に向けて垂直に照射するため、入射角度を確保する必要がなく、開口部の狭い凹部の底面にもレーザ光Lを照射することができる。
従って、凹部を密に配置することができるため、情報コードの単位面積当たりの情報量を増加することができる。なお、上記の情報コードC2は、第1実施形態における情報コードの生成方法を用いて生成することができる。
【0048】
<第3実施形態>
次に、この発明の第3実施形態について図を参照して説明する。
図9は情報コードの説明図であり、(a)は情報コードの平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0049】
情報コードC3は、平面視ではQRコードに対応する構造に形成されている。情報コードC3は、QRコードのセル(暗)に対応する部分が凹部1〜3に形成されており、セル間(明)に対応する部分が基準面Rに形成されている。各凹部の深さは少なくとも2種類以上存在しており、各凹部の底面1c〜3cは、レーザ光に対する反射強度が低く形成されている。例えば、各凹部の底面に、黒色などの有色の材料により膜を形成し、その膜によりレーザ光を吸収するように構成する。なお、上記の情報コードC3は、第1実施形態における情報コードの生成方法を用いて生成することができる。この場合、第1工程において、情報コードC1を構成する値に基準面、凹部の深さおよび反射強度を割り付ける。
【0050】
このように構成することにより、基準面Rおよび各凹部1〜3の深さに加えて、基準面Rおよび凹部の底面1c〜3cのレーザ光に対するそれぞれの反射強度にも情報コードを構成する値として割り付けることができる。そして、レーザ光の照射距離と、受光センサにより受光された反射光の強度とに基づいて、情報コードに割り付けられた値を復元するため、基準面および各凹部の深さにのみ情報コードを構成する値を割り付ける場合よりも、情報コードを構成する値を増加することができる。
従って、情報コードが記された部分における単位面積当たりの情報量をQRコードよりも増加することができる。
【0051】
<他の実施形態>
(1)第2実施形態において凹部の底面の傾斜角度を少なくとも2種類設定し、各傾斜角度に値を割り付けることもできる。この構造によれば、情報コードが記された部分における単位面積当たりの情報量をより一層増加することができる。
(2)平坦な底面を有する凹部と、傾斜した底面を有する凹部とを組み合わせることもできる。この構造によれば、情報コードが記された部分における単位面積当たりの情報量をより一層増加することができる。
(3)レーザ照射装置20を移動させて情報コードを読取ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態の情報コードの説明図であり、(a)は情報コードの平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図2】情報コード読取装置に備えられたレーザ照射装置の説明図である。
【図3】図2に示すレーザ照射装置に備えられたレーザ光源および受光センサの説明図であり、(a)はレーザ光源から出射されたレーザ光Lが受光センサにより受光される様子を模式的に示す説明図、(b)は受光センサにおける受光位置と、レーザ光Lの出射位置から照射位置までの距離との関係を示す説明図である。
【図4】距離測定の原理を示す説明図である。
【図5】情報コード読取装置10の電気的構成をブロックで示す説明図である。
【図6】ROMなどに格納されたテーブルの説明図である。
【図7】情報コードを形成するための方法を示す説明図である。
【図8】第2実施形態の情報コード読取装置における距離測定の原理を示す説明図である。
【図9】第3実施形態の情報コードの説明図であり、(a)は情報コードの平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1,2,3・・凹部、1a,2a,3a・・底面、10・・情報コード読取装置、
11・・マイコンデコード処理部、20・・レーザ照射装置、C1・・情報コード、
R・・基準面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面と、
前記基準面から窪んでおり、光を反射する底面を有する凹部とを組み合わせて構成されており、
前記基準面から前記底面までの深さが少なくとも2種類存在し、かつ、前記基準面および前記各深さにそれぞれ割り付けられた値により情報コードが構成されている情報コードの読取装置であって、
前記基準面および凹部の底面に光を照射し、その照射位置から前記基準面および底面までの距離を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された距離に基づいて、前記情報コードに割り付けられた値を復元する復元手段と、
を備えたことを特徴とする情報コード読取装置。
【請求項2】
前記各凹部の各底面は、それぞれ前記基準面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の情報コード読取装置。
【請求項3】
前記測定手段は、
前記光を前記基準面および凹部の底面に対して鋭角の入射角度で照射する照射手段と、
前記照射手段により照射され、前記基準面および凹部の底面にて反射した反射光を受光する受光手段と、を備えており、
前記受光手段により受光された前記反射光の受光位置に基づいて前記距離を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報コード読取装置。
【請求項4】
前記測定手段は、
前記光を前記基準面および凹部に対して垂直に照射する照射手段と、
前記照射手段により照射され、前記基準面および凹部の底面にて反射した反射光を受光する受光手段と、を備えており、
前記受光手段により受光された前記反射光の受光位置に基づいて前記距離を測定するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の情報コード読取装置。
【請求項5】
前記基準面および凹部の底面は、それぞれ前記光の反射強度が異なり、
前記基準面および前記各深さに加えて、前記基準面および凹部の底面の前記光に対するそれぞれの反射強度も前記情報コードを構成する値として割り付けられており、
前記測定手段は、前記基準面および凹部の底面に光を照射し、その照射位置から前記基準面および底面までの距離を測定するとともに、前記基準面および底面にて反射した反射光の強度を計測し、
前記復元手段は、前記測定手段により測定された距離および反射光の強度に基づいて、前記情報コードに割り付けられた値を復元することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の情報コード読取装置。
【請求項6】
基準面と、
前記基準面から窪んでおり、光を反射する底面を有する凹部とを組み合わせて構成されており、
前記基準面から前記底面までの深さが少なくとも2種類存在し、かつ、前記基準面および前記各深さにそれぞれ割り付けられた値により情報コードが構成されている情報コードの生成方法であって、
前記情報コードを構成する値に前記基準面および深さを割り付ける第1工程と、
前記第1工程により割り付けられた深さの凹部と基準面との組合せを前記基準面に形成する第2工程と、
を有することを特徴とする情報コード生成方法。
【請求項7】
前記第2工程は、各凹部の各底面をそれぞれ前記基準面に対して傾斜するように形成することを特徴とする請求項6に記載の情報コード生成方法。
【請求項8】
前記基準面および凹部の底面は、それぞれ前記光の反射強度が異なり、
前記基準面および前記各深さに加えて、前記基準面および凹部の底面の前記光に対するそれぞれの反射強度が前記情報コードを構成する値として割り付けられており、
前記第1工程は、前記情報コードを構成する値に前記基準面と、前記深さと、前記反射強度とを割り付ける工程であり、
前記第2工程は、前記第1工程により割り付けられた深さおよび反射強度を有する凹部および基準面の組合せを前記基準面に形成する工程であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の情報コード生成方法。
【請求項9】
基準面と、
前記基準面から窪んでおり、光を反射する底面を有する凹部とを組み合わせて構成されており、
前記基準面から前記底面までの深さが少なくとも2種類存在し、かつ、前記基準面および前記各深さにそれぞれ割り付けられた値により情報コードが構成されていることを特徴とする情報コード。
【請求項10】
前記各凹部の各底面は、それぞれ前記基準面に対して傾斜していることを特徴とする請求項9に記載の情報コード。
【請求項11】
前記基準面および凹部の底面は、それぞれ前記光の反射強度が異なり、
前記基準面と、前記各深さと、前記各反射強度とにそれぞれ割り付けられた値により情報コードが構成されていることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の情報コード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−269219(P2008−269219A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110395(P2007−110395)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】