説明

情報再生装置、およびその制御方法

【課題】光ディスクの再生信号をサンプリングするA/Dクロックの周波数を、誤検出を防止しつつ簡素な構成で検出することでできる情報再生装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る情報再生装置は、光ピックアップと、再生信号を再生データに変換するA/D変換器と、同期パターンの有無を検出すると共に、同期パターン長をサンプリングクロック単位で検出するパターン検出部と、サンプリングクロック単位の同期パターン長と基準同期パターン長との比、および基準繰返し周期とから、同期パターンの出現位置を予測する同期パターン位置予測部と、予測した前記出現位置に基づいて、同期パターン長の検出を確定する検出確定部と、確定された同期パターンの同期パターン長から周波数誤差を算出する周波数誤差算出部と、A/D変換器のサンプリングクロックのクロック周波数を制御する周波数制御部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報再生装置、およびその制御方法に係り、特に、光ディスク再生信号のA/Dクロック周波数を周波数制御する情報再生装置、およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、高密度記録型の光ディスク、例えば、HD DVD等、の開発が進められ実用段階に入ってきている。高密度記録型の光ディスクは、従来型のDVDに比べると単位時間あたりの処理データ数が格段に増大している。膨大なデータ量の記録や再生を高速にかつ確実に行うため、データフォーマット上にも各種の工夫がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高密度記録型の光ディスクに係る各種データフォーマットが詳細に開示されている。
【0004】
一般に、光ディスクには、所定のクロック周波数(書込みクロック周波数)に対応したデータレートでデータが記録されている。記録データを正しく再生するためには、再生信号をサンプリングするA/Dクロック周波数と書込みクロック周波数とを一致させ、かつ位相も同期させる必要がある。
【0005】
この目的のため、再生信号に含まれる書込みクロック周波数の成分に対して、再生装置側のA/Dクロックの周波数および位相を制御し、両者を一致させるようにしている。具体的には、再生装置のA/Dクロック発信器に対して、PLLループや周波数制御ループによって同期制御を行っている。
【0006】
A/Dクロックの周波数の同期制御に関する技術として、例えば、特許文献2がある。特許文献2では、位相同期ループと周波数同期ループを併用することで同期引き込み時間を短縮可能とする技術を開示している。
【特許文献1】特開2004−303344号公報
【特許文献2】特開平9−147499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2が開示する技術は、A/Dクロックの周波数が位相同期引き込み範囲外にあるときは、A/Dクロックの周波数を検出し、A/Dクロック周波数を位相同期引き込み範囲内に入るように制御する周波数制御ループを用いるものである。周波数制御ループを用いることで、始動時の位相同期引き込み時間や、位相同期がオフした場合の同期復帰時間を短縮することができる、とするものである。
【0008】
しかしながら、この技術は、A/Dクロックの周波数の検出のために、別途高速の固定クロック発信器を必要とするものであり、ハードウェア構成やソフトウェア処理が複雑化するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、光ディスクの再生信号をサンプリングするA/Dクロックの周波数を、誤検出を防止しつつ簡素な構成で検出することでできる、情報再生装置、およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る情報再生装置は、請求項1に記載したように、光ディスクの記録データを読み出し、再生信号を出力する光ピックアップと、前記再生信号をサンプリングし、再生データに変換するA/D変換器と、前記A/D変換器のサンプリングクロックを生成するクロック生成部と、前記再生データに一定の繰返し周期で含まれる、所定の同期パターン長の同期パターンの有無を検出すると共に、前記同期パターン長を前記サンプリングクロック単位で検出するパターン検出部と、検出された前記サンプリングクロック単位の同期パターン長と前記所定の同期パターン長との比、および前記一定の繰返し周期とから、同期パターンの出現位置を前記サンプリングクロック単位で予測する同期パターン位置予測部と、予測した前記出現位置に基づいて、前記同期パターンの有無と同期パターン長の検出を確定する検出確定部と、前記検出確定部において確定された同期パターンの同期パターン長から、前記サンプリングクロックのクロック周波数と基準クロック周波数との周波数誤差を算出する周波数誤差算出部と、算出された前記周波数誤差に基づいて前記クロック生成部で生成するサンプリングクロックのクロック周波数を制御する周波数制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る情報再生装置の制御方法は、請求項7に記載したように、光ディスクの記録データを読み出し、再生信号を出力するステップと、前記再生信号をサンプリングし再生データに変換するA/D変換ステップと、前記A/D変換スッテプのサンプリングクロックを生成するクロック生成ステップと、前記再生データに一定の繰返し周期で含まれる、所定の同期パターン長の同期パターンの有無を検出すると共に、前記同期パターン長を前記サンプリングクロック単位で検出するパターン検出ステップと、検出された前記サンプリングクロック単位の同期パターン長と前記所定の同期パターン長との比、および前記一定の繰返し周期とから、同期パターンの出現位置を前記サンプリングクロック単位で予測する同期パターン位置予測ステップと、予測した前記出現位置に基づいて、前記同期パターンの有無と同期パターン長の検出を確定する検出確定ステップと、前記検出確定ステップにおいて確定された同期パターンの同期パターン長から、前記サンプリングクロックのクロック周波数と基準クロック周波数との周波数誤差を算出する周波数誤差算出ステップと、算出された前記周波数誤差に基づいて前記クロック生成ステップで生成するサンプリングクロックのクロック周波数を制御する周波数制御ステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る情報再生装置、およびその制御方法によれば、光ディスクの再生信号をサンプリングするA/Dクロックの周波数を、誤検出を防止しつつ簡素な構成で検出することでできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る情報再生装置、およびその制御方法の実施形態に付いて、添付図面を参照して説明する。
【0014】
(1)情報処理装置の構成
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報再生装置1の構成例を示す図である。
【0015】
情報再生装置1は、光ピックアップ10、プリアンプ20、波形等化部30、A/D変換器40、オフセット/ゲイン調整部50、データ復調部60、周波数誤差検出部70、位相比較器80、周波数制御部81、およびクロック生成部90を備えて構成される。
【0016】
光ピックアップ10は、光ディスク100の記録面に対してレーザ光を照射し、その反射光を光電変換して再生信号を出力する。
【0017】
プリアンプ20は、光ピックアップ10から出力された再生信号を所定の振幅値に増幅する。
【0018】
波形等化部30は、例えば、高次リップルフィルタ等を備えて構成される。この高次リップルフィルタは、特定領域の周波数成分をブーストするブースト量や、カットオフ周波数を変更可能に構成されている。
【0019】
A/D変換器40は、波形等化部30から出力される再生信号をサンプリングクロックでサンプリングし、多値の、例えば8ビットの、デジタルデータ入力変換する(以下、デジタルデータに変換された再生信号を、再生データという)。
【0020】
オフセット/ゲイン調整部50は、再生データに含まれるオフセット成分を補正すると共に、再生データの振幅が所要の値となるようにゲイン調整を行っている。
【0021】
データ復調部60は、オフセット/ゲイン調整が行われた再生データに対して復調処理を行うと共に、外部のホスト機器(図示せず)、例えばパーソナルコンピュータや映像表示装置等、とのインターフェースに適合したデータフォーマットに変換して出力する。
【0022】
他方、再生データは、A/D変換器40に供給されるサンプリングクロックの周波数制御及び位相制御を行うため、周波数誤差検出部70、および位相比較器80にフィードバックされる。
【0023】
光ディスク100の記録面には、所定の記録クロック周波数でデータが記録されている(以下、この記録クロックを基準クロックという)。従って、再生信号に含まれるデータのビット長もこの基準クロックの周期tを単位長としている。
【0024】
このため、再生信号のデータビットを正しくサンプリングするためには、A/D変換器40のサンプリングクロックの周波数及び位相を基準クロックの周波数及び位相に同期させる必要がある。
【0025】
このサンプリングクロックの周波数及び位相の同期制御を行っているフィードバック系が、周波数誤差検出部70、位相比較器80、周波数制御部81、及びクロック生成部である。
【0026】
このうち、周波数誤差検出部70では、基準クロック周波数とサンプリングクロック周波数との周波数誤差を検出している。また、位相比較器80では、基準クロックとサンプリングクロックの位相誤差を検出している。これらの周波数誤差、および位相誤差は周波数制御部81に入力される。
【0027】
周波数制御部81は、ループフィルタを備えて構成されており、周波数誤差、および位相誤差を平滑化し、サンプリングクロック周波数の制御信号、例えば制御電圧を生成している。
【0028】
クロック生成部90は、例えば、VCOによって構成される。周波数制御部81から出力される制御電圧に基づいて周波数が変化する発信器出力を波形成型してサンプリングクロックを生成し、A/D変換器40に供給している。
【0029】
位相同期ループがロックしている状態では、周波数と位相は位相同期ループによって制御されるが、一般に位相同期の引き込み範囲は狭い。このため、光ディスクの回転始動時等、基準クロックとサンプリングクロックとの周波数差が大きな場合には、まず周波数制御ループでサンプリングクロックの周波数を位相同期の引き込み範囲に追い込んでいる。
【0030】
また、動作中に位相同期がロックオフした場合にも、基準クロックとサンプリングクロックとの周波数差が大きくなるため、動作中も周波数制御ループによる周波数制御を並行動作させることにより、短時間での位相ロックへの復帰を可能としている。
【0031】
本発明のポイントは、周波数誤差検出部70の構成およびその動作にあり、基準クロック周波数とサンプリングクロック周波数の誤差を簡素な構成で、かつ誤検出を防止する機構を備えて構成している点にある。
【0032】
図2は、周波数誤差検出部70の細部構成例を示す図である。
【0033】
周波数誤差検出部70は、再生データに含まれている同期パターン(SYNCパターン)を検出する同期パターン検出部71、同期パターンの出現位置を予測する同期パターン位置予測部72、予測された同期パターンの出現位置に基づいて同期パターンの検出を確定する検出確定部73、および検出が確定された同期パターンの同期パターン長から周波数誤差を算出する周波数誤差算出部74を備えて構成されている。
【0034】
上記のように構成された情報再生装置1の動作、特にサンプリングクロックの周波数制御動作について、以下に説明する。
【0035】
(2)情報再生装置の周波数制御動作
図3は、本実施形態に係る周波数制御方法の処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートの流れに沿って、図2を参照しつつサンプリングクロックの周波数制御方法について説明する。
【0036】
光ピックアップ10から出力される再生信号は、プリアンプ20及び波形等化部30を通って、A/D変換器40に入力される(ステップST1)。
【0037】
A/D変換器40は、クロック生成部90から供給されるサンプリングクロックによって再生信号をサンプリングし、多値(例えば8ビットでA/D変換する場合は256値)のデジタルデータ(再生データ)に変換される(ステップST2)。
【0038】
再生データの含まれているビットデータの単位長は、基準クロックのクロック周期tであり、サンプリングクロックのクロック周期tとは一致していない(以下、この状態を、基準クロックの周波数とサンプリングクロックの周波数が一致していない、という場合がある)。位相同期ループがロックしている場合は、基準クロックの周波数とサンプリングクロックの周波数はほぼ一致するが、厳密には両者は所定のトラッキングエラーを持って追従しているだけである。
【0039】
以下の説明では、基準クロックの周波数とサンプリングクロックの周波数は基本的には一致していない(即ち、基準クロックのクロック周期tとサンプリングクロックのクロック周期tは一致していない)という前提で説明を進める。
【0040】
ステップST3では、再生データに含まれている同期パターンの検出を行う。この検出は、図2の同期パターン検出部71によって行われる。ステップST3で行う同期パターンの検出は、仮検出であり、誤検出された同期パターンを含みうるものである。
【0041】
本実施形態で行っている同期パターン方法の具体例を説明する前に、光ディスク100に記録されているデータのデータフォーマットについて簡単に説明しておく。
【0042】
図4は、光ディスク100の一例として、HD DVDのデータフォーマットを示している(より詳しくは、特許文献1等に開示されている)。
【0043】
光ディスク100に対しては、図4(a)に示したブロック(或いはECCブロック)と呼ばれるデータの単位で記録、再生が行われ、このブロック単位で誤り訂正処理が行われている。ブロックには、VFOと呼ばれる領域が先頭に設けられており、VFO領域に続いて832個のフレームを有している。
【0044】
VFO領域には、71バイトの単一周期のデータが記録されている。また、各フレームは、それぞれ93バイトのデータで構成されている。ブロックの全データ量は、77,469バイト(71+93×823バイト)である。
【0045】
図4(b)は、フレームのデータ構成を示す図あり、各フレームは先頭に2バイトの同期パターンを有しており、91バイトのデータこれに続いて構成されている。1バイトは12チャネルビット(以下、単にビットという)から構成されており、同期パターンは24ビットで構成され、これに続くデータは1092ビットで構成されている。
【0046】
同期パターンのビットパターンは、例えば、HD DVDでは4種類のビットパターンが規定されているが、いずれも同一の共通な18ビットのビットパターンを有している。
【0047】
図4(c)は、この共通パターンを示したものであり、「010000000000001001」で表される。このビット系列は、NRZIでコード化された表記であり、「1」によってコード化前のデータのビットが反転することを示している。従って、コード化前のビット列で表記すると、「011111111111110001」又は、「100000000000001110」となる。即ち、連続して13個の「1」が続き、これに「0」が3個続く、或いは、連続して13個の「0」が続き、これに「1」が3個続くというビットパターンが、総ての同期パターンに共通する性質である。本実施形態では、この性質を利用して同期パターンの検出を行っている。
【0048】
図5は、同期パターン検出方法の具体的な例を説明する図である。図5に示した波形は、同期パターン検出部71に入力される再生データを波形のイメージで表示したものである。ビットが「1」の場合は、波形の振幅はプラス方向に振れ、ビットが「0」の場合はマイナス方向に振れる波形となる。
【0049】
図5に例示した左側の部分の波形は、同期パターンが「011111111111110001」の場合の同期パターンの波形であり、13個の連続する「1」によってプラス方向に振幅が振れ、その後連続する3個の「0」によって振幅がマイナス方向に振れている状態を示している。同期パターンが「100000000000001110」の場合は、反転した波形となるが、同期パターンは全く同一の方法で検出できるため、図示を省略している。
【0050】
同期パターン検出部71では、まず、ゼロクロス検出を行う。即ち、再生データの振幅がゼロをクロスする点を検出し、ゼロクロス点の間の時間間隔を測定する。
【0051】
ところで、同期パターン検出部71に入力される再生データは、A/D変換器40のサンプリングクロックで再生信号をサンプリングしたものである。従って、ゼロクロス点の間の時間間隔は、サンプリングクロックのクロック周期tを基本単位とする時間で表されることになる。
【0052】
このため、A/D変換器40に入力される再生信号が同一波形であっても、サンプリングクロックの周波数が異なれば、測定されるゼロクロス点の間の時間間隔は異なってくる。
【0053】
例えば、図5のケースaは、サンプリングクロックの周波数と基準クロックの周波数が一致している場合の例を示したものである。この場合、「1」が連続する領域の時間間隔τaは、「13t」となり、「0」が連続する領域の時間間隔τbは、「3t」となる。
【0054】
他方、図5のケースbは、サンプリングクロックの周波数と基準クロックの周波数が大きくずれている場合の例であり、サンプリングクロックの周波数が基準クロックの周波数に対して2倍高い周波数となっている場合を示している。この場合、「1」が連続する領域の時間間隔τaは、「26t」となり、「0」が連続する領域の時間間隔τbは、「6t」となる。
【0055】
このように、測定時のサンプリングクロックの周波数によって、時間間隔τaと時間間隔τbの絶対値は異なってくる。
【0056】
次に、時間間隔τaと時間間隔τbの比をとる。同期パターンは、図4に示したように、共通パターンを有しており、基準クロックの単位長としてみると「13t」とこれに続く「3t」を必ず有している。従って、時間間隔τaと時間間隔τbの絶対値は異なっていたとしても、その比(τb/τa)が、3/13(以下、基準ビットパターン比という)と一致しているか否かで、同期パターンの有無を検出することができる。
【0057】
この方法によれば、サンプリングクロックの周波数が基準クロックの周波数と大きくずれている場合であっても同期パターンの有無を再生データの中から検出することができる。
【0058】
また、測定した時間間隔τaと時間間隔τbから、その和であるτ(以下、検出同期パターン長τという)も併せて検出(測定)できる。
【0059】
なお、時間間隔τaと時間間隔τbの比(τb/τa)と、基準ビットパターン比(3/13)との一致判定は、完全一致判定だけでなく、所定の許容範囲を持たせた判定としても良い。
【0060】
このようにして、同期パターンの有無が検出され、また検出同期パターン長τが得られると、次に同期パターンの位置予測を行う(図3のステップST4)。
【0061】
図6は、同期パターンの位置予測方法の具体例を説明する図である。図6では、連続する2つのフレームとこれに続く3番目のフレームの同期パターンの部分を図示している。
【0062】
説明の便宜上、一番目の同期パターンS1は、正しく検出されたと仮定する。この場合、同期パターン検出部71で得られた同期パターン検出信号(同期パターン「有り」を示す信号)と検出同期パターン長τとは、検出確定部73を通って、同期パターン位置予測部72に入力される。
【0063】
同期パターン位置予測部72では、検出同期パターン長τ、基準同期パターン長τ、および基準繰返し周期Tを用いて、同期パターン出現予測位置Tpを算出する。
【0064】
前述したように、同期パターン長は、基準クロックの周期tで表すと、総て16tであり(図4(c)参照)、これを基準同期パターン長τとしている。
【0065】
また、図4(a)に示したように、各フレームの長さは93バイトの同一データ長を有している。従って、再生データに含まれる同期パターンは、この93バイトに対応する一定の繰返し周期(以下、基準繰返し周期Tという)で出現することになる。この場合、基準繰返し周期Tも基準クロックの周期tで表現されることになり、具体的には、基準繰返し周期Tは、1,116t(93×12ビット)となる。
【0066】
他方、検出された同期パターンから次の同期パターンの出現位置を予測する場合には、基準クロックとサンプリングクロックとが同期していない段階では、自分の時計で予測するしか方法が無い。即ち、サンプリングクロックの単位長tで予測せざるを得ない。
【0067】
本実施形態では、検出同期パターン長τ(サンプリングクロックの単位長tで測定されたもの)と基準同期パターン長τとの比(τ/τ)をとることでこれを可能としている。具体的には、例えば、以下の式、
[数1]
Tp=(τ/τ)T−τ
によって、検出された同期パターンの終了時刻(図6において記号Cで示した時刻)から次の同期パターンの先頭が出現すると予想されるまでの時間を算出している。
【0068】
本実施形態に係る予測方法によれば、基準クロックとサンプリングクロックの周波数が一致していない場合であっても、2つの既知の値(基準同期パターン長τ、および基準繰返し周期T)と、A/D変換器40のサンプリングクロックで測定した検出同期パターン長τとから、上記の簡単な演算で次の同期パターンの出現位置を予測することができる。
【0069】
このため、例えば特許文献2に開示されているような、A/Dクロック周波数測定用の高速の固定クロック発信器を別途設ける必要が無く、システム構成を簡素化できる。
【0070】
同期パターンの出現位置が予測された後は、この値を用いて、同期パターン検出の確定を行う(図3のステップST5)。
【0071】
同期パターン検出の確定は、検出確定部73によって行う。具体的には、図6に示したように、次の同期パターンS2が同期パターン検出部71にて検出(仮検出)されたときに、その検出位置が前の同期パターンS1に基づいて予測された出現位置と一致する場合には、正しい同期パターンが検出できたとして、その検出を確定する。
【0072】
他方、同期パターン検出部71で検出(仮検出)された同期パターンの検出位置が前の同期パターンS1に基づいて予測された出現位置と異なる場合には、誤って検出された同期パターンであるとして、その情報(同期パターン検出信号及び検出同期パターン長τ)を破棄する。
【0073】
上述したように、同期パターンの検出には、「1」パターンと「0」パターンの比(τb/τa)を用いている。このため、データ中に類似したパターンの比が存在した場合には、同期パターンの誤検出が生じる可能性がある。図6中の偽同期パターンFは、誤検出(仮検出)された同期パターンを例示している。この場合であっても、検出確定部73において同期パターン出現予測位置との一致判定を行っているため、この偽同期パターンFを誤検出として排除することができる。
【0074】
なお、一致判定は、3番目の同期パターンS3の図に併記したように、完全な一致判定ではなく、検出同期パターン長τよりも広めの許容窓W2を設け、この許容窓W2に同期パターンが入ったか否かで判定する方法でも良い。
【0075】
次に、確定された検出同期パターン長τを用いて周波数誤差の算出を行う(ステップST6)。
【0076】
確定された検出同期パターン長τが、τ=nt(nはサンプリングクロックのクロック数)であった場合、周波数誤差εは、例えば、次式で算出される。
[数2]
ε=k(n−13)
【0077】
サンプリングクロックの周波数が基準クロックの周波数と一致している場合には、検出同期パターン長τと基準同期パターン長τ(τ=13t)とは一致する。即ち、n=13、となり、周波数誤差εはゼロとなる。サンプリングクロックの周波数が基準クロックの周波数と一致していない場合はゼロ以外の周波数誤差εが算出される。
【0078】
最後に、算出された周波数誤差εに基づいて、A/Dクロック周波数の制御が行われる(図3のステップST7)。
【0079】
具体的には、周波数誤差εが周波数制御部81のループフィルタで平滑化された後、クロック生成部90の制御信号となって、サンプリングクロックの周波数が基準クロックの周波数に近づくように制御される。
【0080】
図7は、第2の実施形態に係る情報再生装置1aの構成例を示す図である。第2の実施形態では、周波数誤差検出部70、および位相比較器80に入力する再生データを、オフセット/ゲイン調整部50をバイパスして入力する形態としている。
【0081】
第2の実施形態では、オフセット/ゲイン調整部50をバイパスしているため、再生データのオフセットによって同期パターンの検出位置に若干の誤差を生じる虞があるものの、オフセット/ゲイン調整部50による処理遅延時間が排除されるため、周波数制御や位相制御のループ応答性が改善されるという利点がある。
【0082】
上述したように、本実施形態に係る情報再生装置1、およびその制御方法によれば、光ディスクの再生信号をサンプリングするA/Dクロックの周波数を、誤検出を防止しつつ簡素な構成で検出することでできる。
【0083】
なお、本発明は上記の各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る情報再生装置の第1の実施形態におけるシステム構成例を示す図。
【図2】本発明に係る情報再生装置の第1の実施形態における周波数誤差検出部の細部構成例を示す図。
【図3】本発明に係る情報再生装置の制御方法の実施形態における処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図4】本発明に係る情報再生装置で再生するデータのデータフォーマットの一例を示す図。
【図5】本実施形態に係る同期パターンの検出方法の一例を説明する図。
【図6】本実施形態に係る同期パターンの出現位置予測方法の一例を説明する図。
【図7】本発明に係る情報再生装置の第2の実施形態における周波数誤差検出部の細部構成例を示す図。
【符号の説明】
【0085】
1 情報再生装置
10 光ピックアップ
20 プリアンプ
30 波形等化部
40 A/D変換器
50 オフセット/ゲイン調整部
60 データ復調部
70 周波数誤差検出部
71 同期パターン検出部
72 同期パターン位置予測部
73 検出確定部
74 周波数誤差算出部
80 位相比較器
81 周波数制御部
90 クロック生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの記録データを読み出し、再生信号を出力する光ピックアップと、
前記再生信号をサンプリングし、再生データに変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器のサンプリングクロックを生成するクロック生成部と、
前記再生データに一定の繰返し周期で含まれる、所定の同期パターン長の同期パターンの有無を検出すると共に、前記同期パターン長を前記サンプリングクロック単位で検出するパターン検出部と、
検出された前記サンプリングクロック単位の同期パターン長と前記所定の同期パターン長との比、および前記一定の繰返し周期とから、同期パターンの出現位置を前記サンプリングクロック単位で予測する同期パターン位置予測部と、
予測した前記出現位置に基づいて、前記同期パターンの有無と同期パターン長の検出を確定する検出確定部と、
前記検出確定部において確定された同期パターンの同期パターン長から、前記サンプリングクロックのクロック周波数と基準クロック周波数との周波数誤差を算出する周波数誤差算出部と、
算出された前記周波数誤差に基づいて前記クロック生成部で生成するサンプリングクロックのクロック周波数を制御する周波数制御部と、
を備えたことを特徴とする情報再生装置。
【請求項2】
前記検出確定部は、予測された同期パターンの出現位置に対して所定の範囲の許容窓を設定し、検出された同期パターンの位置が前記許容窓の範囲内にあるときに、前記同期パターンの有無と同期パターン長の検出を確定する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項3】
前記A/D変換器から出力される再生データのオフセットおよびゲインの少なくとも一方を調整するオフセットゲイン調整部をさらに備え、
前記パターン検出部は、前記オフセットゲイン調整部から出力される再生データに対して、前記同期パターンの有無、及び前記同期パターン長を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項4】
前記A/D変換器から出力される再生データのオフセットおよびゲインの少なくとも一方を調整するオフセットゲイン調整部をさらに備え、
前記パターン検出部は、前記オフセットゲイン調整部をバイパスした再生データに対して、前記同期パターンの有無、及び前記同期パターン長を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項5】
前記同期パターンは、連続する第1の所定数の「0」とこれに続く連続する第2の所定数の「1」、又は連続する第1の所定数の「1」とこれに続く連続する第2の所定数の「0」の何れかのビットパタンを有して構成されており、
前記パターン検出部は、
「0」の連続数とこれに続く「1」の連続数との比、又は、「1」の連続数とこれに続く「0」の連続数との比を検出し、検出した比と、前記第1の所定数と前記第2の所定数
との比とに基づいて前記同期パターンの有無を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項6】
前記周波数誤差検出部は、
基準となるクロックの単位で表された前記所定の同期パターン長と、検出された前記サンプリングクロック単位で表された同期パターン長との差を前記クロック周波数の誤差として検出し、
前記周波数制御部は、
前記サンプリングクロックの周波数が、前記基準となるクロックの周波数に一致するように周波数制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項7】
光ディスクの記録データを読み出し、再生信号を出力するステップと、
前記再生信号をサンプリングし再生データに変換するA/D変換ステップと、
前記A/D変換スッテプのサンプリングクロックを生成するクロック生成ステップと、
前記再生データに一定の繰返し周期で含まれる、所定の同期パターン長の同期パターンの有無を検出すると共に、前記同期パターン長を前記サンプリングクロック単位で検出するパターン検出ステップと、
検出された前記サンプリングクロック単位の同期パターン長と前記所定の同期パターン長との比、および前記一定の繰返し周期とから、同期パターンの出現位置を前記サンプリングクロック単位で予測する同期パターン位置予測ステップと、
予測した前記出現位置に基づいて、前記同期パターンの有無と同期パターン長の検出を確定する検出確定ステップと、
前記検出確定ステップにおいて確定された同期パターンの同期パターン長から、前記サンプリングクロックのクロック周波数と基準クロック周波数との周波数誤差を算出する周波数誤差算出ステップと、
算出された前記周波数誤差に基づいて前記クロック生成ステップで生成するサンプリングクロックのクロック周波数を制御する周波数制御ステップと、
を備えたことを特徴とする情報再生装置の制御方法。
【請求項8】
前記検出確定ステップは、予測された同期パターンの出現位置に対して所定の範囲の許容窓を設定し、検出された同期パターンの位置が前記許容窓の範囲内にあるときに、前記同期パターンの有無と同期パターン長の検出を確定する、ことを特徴とする請求項7に記載の情報再生装置の制御方法。
【請求項9】
前記A/D変換ステップにおいて得られる再生データのオフセットおよびゲインの少なくとも一方を調整するオフセットゲイン調整ステップをさらに備え、
前記パターン検出ステップは、前記オフセットゲイン調整ステップの後に、前記同期パターンの有無、及び前記同期パターン長を検出する、
ことを特徴とする請求項7に記載の情報再生装置の制御方法。
【請求項10】
前記A/D変換ステップにおいて得られる再生データのオフセットおよびゲインの少なくとも一方を調整するオフセットゲイン調整ステップをさらに備え、
前記パターン検出ステップは、前記オフセットゲイン調整ステップの前に、前記同期パターンの有無、及び前記同期パターン長を検出する、
ことを特徴とする請求項7に記載の情報再生装置の制御方法。
【請求項11】
前記同期パターンは、連続する第1の所定数の「0」とこれに続く連続する第2の所定数の「1」、又は連続する第1の所定数の「1」とこれに続く連続する第2の所定数の「0」の何れかのビットパタンを有して構成されており、
前記パターン検出ステップは、
「0」の連続数とこれに続く「1」の連続数との比、又は、「1」の連続数とこれに続く「0」の連続数との比を検出し、検出した比と、前記第1の所定数と前記第2の所定数
との比とに基づいて前記同期パターンの有無を検出する、
ことを特徴とする請求項7に記載の情報再生装置の制御方法。
【請求項12】
前記周波数誤差検出ステップは、
基準となるクロックの単位で表された前記所定の同期パターン長と、検出された前記サンプリングクロック単位で表された同期パターン長との差を前記クロック周波数の誤差として検出し、
前記周波数制御ステップは、
前記サンプリングクロックの周波数が、前記基準となるクロックの周波数に一致するように周波数制御する、
ことを特徴とする請求項7に記載の情報再生装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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