説明

情報再生装置

【課題】ECC訂正不能エラーによりリトライ処理が発生してもスループット低下を抑止しリーダビリティーを確保する情報再生装置を提供する。
【解決手段】本発明の情報再生装置によると、メモリにはADC出力がそのままバッファリングされている。したがって、訂正不能通知をトリガにしてバッファリングを停止すると、メモリ上には再生不能となったデータが保持されていることになる。通常のリトライでは、ターゲット領域を再度読み出すためにシークと回転待ちといった待ち時間が生じるが、メモリのアドレスを切り替えるだけで瞬時にターゲット領域のADCデータを取り出すことができるため、ピックアップのシークや回転待ち時間なしでリトライ処理ができるためスループットを向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報再生装置および光ディスク装置と、その情報再生方法および光ディスク再生方法とに係り、特に、エラー訂正を行う情報再生装置および光ディスク装置と、その情報再生方法および光ディスク再生方法とに係る。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤーおよびDVDレコーダーの急速な普及に伴い、音楽データだけではなく映像データを含む大容量のデジタルデータを個人が記録あるいは再生することが一般的になっている。映像情報を保存するために、DVD−R/+Rといった安価なメディアが普及しており、記録後はDVDプレーヤーで再生が可能である。
【0003】
光ディスク媒体上には同心円状あるいはスパイラル状の案内溝(トラック)が形成されており、微小情報ピットはこのトラックに沿って形成されている。光ディスク装置は、集光したレーザビームをスピンドルモータによって回転するディスク媒体記録面に照射し、集光ビームはディスク面とビーム集光用対物レンズの距離が一定になるようにフォーカシングサーボが、またトラックを追従するようにディスク半径方向に対してトラッキングサーボがかけられる。ディスク上に形成した微小情報ピットにより変化する反射光の明暗や偏光を電気信号として検出し、この再生信号をフィルタリング処理後、PLL(Phase Locked Loop)によって同期クロックを抽出し、この同期タイミングで再生信号をデジタルデータとして識別する。一般にPLLは局所発振器等のアナログ回路を含むシステムである。従ってLSI(Large Size Integrated circuit)化した場合の歩留まりが悪いが、細かい位相制御が必要なためデジタル化が困難であった。これに対して特許文献2(特開平10−27435号公報)に示すように、固定周波数でA/D(Analog/Digital)変換後に補間データを生成し、この補間位相を制御することで高い周波数のシステムクロックなしで完全デジタルのPLLを構成することができ、LSI化が容易となっている。
【0004】
一方、光ディスク装置のような可換媒体に情報を記録再生する装置では、ディスク上に付着する埃や傷によって情報が欠落してしまう。このため、ディスク上に記録されている情報は、予め誤り訂正用のパリティ情報が付加されており誤り訂正符号(ECC:Error Correction Code)ブロック単位に記録再生を行う。特にDVDの場合では、182Byte×208行で32KByteのECCブロックを構成する。ここで、各行は172Byteにつき10Byteのリードソロモン符号のパリティが、縦方向では192Byteに付き16Byteのパリティが、それぞれ付加されている。さらに、ラン長制限符号によって変調されている。再生時には復調処理の後、横方向の誤り訂正(PI訂正)および縦方向の誤り訂正(PO訂正)を行う。PI訂正で全て訂正できた場合にはデータ中に埋め込まれているもう一つのパリティ情報であるECD(Error Correcting Decoder)によってチェックを行いエラーなしの場合には次のデータの再生を行う。PI訂正不能行があるか又はEDCチェックでNGとなった場合にはPO訂正を行い、再度PI訂正をかけて訂正を行う。すなわち、ランダムエラーはPI訂正によって誤り訂正を行い、バーストエラーの場合にはPO訂正を利用することで、リーダビリティーを高めている。
【0005】
CD(Compact Disc)に比べるとDVDは記録密度が高いため同じ大きさのディフェクトに対して影響が大きい。そのためDVDの誤り訂正符号の方が強力になっている。それでも、埃、傷の他にドライブ装置への衝撃、記録不良、ピックアップのメカ系の劣化、ピックアップの光学系の劣化などあるいはこれらの複合的な原因により、ECC訂正エラー発生を零にすることは不可能である。
【0006】
図1は、関連技術の固定レートADC(Analog/Digital Converter)サンプリングによる情報再生装置の構成例を示すブロック図である。この情報再生装置は、ADC1と、リードチャネル4と、DEC(Decoder)/ECC5と、メモリ6と、システムコントローラ7とを具備する。
【0007】
ADC1の出力は、リードチャネル4の入力に接続されている。リードチャネル4の出力は、DEC/ECC5の入力に接続されている。DEC/ECC5の出力は、メモリ6の入力と、システムコントローラ7の入力とに接続されている。メモリ6の出力は、DEC/ECC5の入力と、システムコントローラ7の入力とに接続されている。システムコントローラの出力は、リードチャネル4の入力と、DEC/ECC5の入力と、メモリ6の入力とに接続されている。
【0008】
光ディスクからの再生信号をADC1によって固定レートでサンプリングし、デジタルリードチャネル4内の補間型PLLによって同期タイミングを生成しかつ2値化データを生成する。このデータを受けてデコーダ5は、復調処理と誤り訂正処理を行う。訂正不能となった場合には、システムコントローラ7がリトライ処理を行う。
【0009】
リトライ処理では、訂正不能エラーを起こしたECCブロック先頭領域までヘッドを移動させて再度再生動作を行う。その際、サーボ系パラメータやリードチャネル系パラメータの変更を行い、シーク後、回転待ちをしてから再生を行う。最初のリトライで訂正不能となった場合には、一連の処理を繰り返し行うことになる。このため、スループットが低下し、例えば映像再生時などでは画像が乱れたりする場合がある。
【0010】
これに対して、例えば特許文献1(特開平9−282809号公報)では、リトライ時の再生速度を低下させると共に、訂正処理能力を通常より強化する設定で再生する方式が開示されている。一般に、低速再生した方が再生信号の信号帯域が狭くなるためSNRを稼ぐことができリーダビリティーが向上する。また、多少処理時間はかかるが誤り訂正能力を上げることで通常再生時に訂正できなかったエラーが訂正可能となる確率が高くなる。必然的にリトライ回数が減り、スループットを上げることができる。
【0011】
また、特許文献4(特開2001−291344号公報)では、ECC訂正エラー発生時のリトライ処理で、ECCブロック全てを再度再生するのではなく、PIエラー訂正不能となった領域のみを再度読み直すことによって、リトライ回数の低減が可能となる。
【0012】
また、特許文献3(特開2000−182330号公報)には、情報再生方法に係る発明が開示されている。
特許文献3発明の情報再生方法は、情報記録媒体から再生ヘッドによってデジタル信号を再生するものである。この情報再生方法は、メモリに再生信号を記憶すると共に、第1の波形等化器によって前記再生信号を波形等化し、適応学習器によって前記第1の波形等化器の等化特性を、適応アルゴリズムを用いて更新する適応学習を行い、前記第1の波形等化器の適応学習動作終了後、前記第1の波形等化器における等化特性の値を第2の波形等化器における等化特性の値として設定し、前記メモリから信号を読み出して前記第2の波形等化器により波形等化を行い、復調器によって前記第2の波形等化器の出力を復調する。
【0013】
また、特許文献5(再公表WO2004/053873号公報)には、データ記録再生システムに係る発明が開示されている。
特許文献5発明のデータ記録再生システムは、データが畳み込み符号により符号化された記録信号を、パーシャルレスポンスチャネルを通して記録し且つ再生し、再生信号から、尤度情報を用いた反復復号を使用して記データの復号を行うものである。このデータ記録再生システムは、メモリ部と、リトライ判断部とを具備する。ここで、メモリ部は、再生信号を記憶するものである。リトライ判断部は、第1回目の再生による再生信号に基づいて、再度再生が必要か否かを判断するものである。リトライ判断部により、再度再生が必要であると判断された場合には、メモリ部に記憶されている第1回目の再生による再生信号と、再度再生により再生した再生信号の両方又は何れか一方を使用して、データを復号する。
【0014】
【特許文献1】特開平9−282809号公報
【特許文献2】特開平10−27435号公報
【特許文献3】特開2000−182330号公報
【特許文献4】特開2001−291344号公報
【特許文献5】再公表WO2004/053873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
サーボはずれを伴うECCエラーに対しては、リトライが必須である。しかし、書き継ぎを行った場合などサーボ動作的には問題ないが、リンキング部分で再生信号にDC(Direct Current)段差や周波数ずれあるいは位相の急激な変動などが発生することが多い。この場合、再生PLLの同期はずれが主因でECCエラーが発生することが多い。このため、PLL前段のHPF(High Pass Filter)のカットオフ周波数あるいはPLLループ帯域を上げて再生性能を犠牲にしてもPLL同期が維持できるようにパラメータを変更し、リトライ処理を行うことが効果的である。しかしPLLループ帯域を上げると逆に追従不要な変動に引き摺られて同期が外れる場合も存在する。このため、何種類かのパラメータでリトライを行う必要がある。HPFのカットオフ周波数に関しても同様である。従来、パラメータを何通りか切り換えてリトライ処理を行う場合、シーク、回転待ち、前回再生不能だった領域の再生を繰り返す必要があり、上記関連技術を用いてもリトライ回数を少なくすることはできず、スループットは大幅に低下してしまうという課題があった。
【0016】
本発明の目的は、ECC訂正不能エラーによりリトライ処理が発生してもスループット低下を抑止しリーダビリティーを確保する情報再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による情報再生装置は、ADCと、メモリと、セレクタと、リードチャネル回路と、デコーダと、システムコントローラとを具備する。ここで、ADCは、任意の情報記録媒体からの読み出し信号をデジタル化して出力するものである。メモリは、ADCからの出力をバッファリングして出力するものである。ADCからの出力と、メモリからの出力との、いずれか一方を選択的に出力するものである。リードチャネル回路は、所定の動作パラメータに基づいて、前記セレクタからの出力を2値化して2値化データを出力するものである。デコーダは、2値化データを復調し、ECC誤り訂正を行った上で出力し、さらに誤り訂正の状態を出力するものである。システムコントローラは、誤り訂正の状態を監視し、かつ、メモリと、セレクタと、リードチャネル回路と、デコーダとを制御するものである。また、誤り訂正が正常に動作している状態において、セレクタは、ADCからの出力を出力する。誤り訂正が訂正不能である状態において、システムコントローラは、仮想リトライ処理を行う。仮想リトライ処理において、メモリは、バッファリングを中断し、かつ、既にバッファリングされた信号を出力し、セレクタは、メモリからの出力を出力し、リードチャネル回路は、動作パラメータを変更する。
【0018】
本発明による情報再生方法は、(a)ADCにおいて、任意の情報記録媒体からの読み出し信号をデジタル化して出力するステップと、(b)メモリにおいて、ADCからの出力をバッファリングして出力するステップと、(c)セレクタにおいて、ADCからの出力と、メモリからの出力との、いずれか一方を選択的に出力するステップと、(d)リードチャネル回路において、所定の動作パラメータに基づいて、セレクタからの出力を2値化して2値化データを出力するステップと、(e)デコーダにおいて、2値化データを復調し、ECC誤り訂正を行った上で出力し、さらに誤り訂正の状態を出力するステップと、(f)システムコントローラにおいて、誤り訂正の状態を受け、かつ、メモリと、セレクタと、リードチャネルと、デコーダとを制御するステップとを具備する。ここで、ステップ(c)は、(c−1)セレクタにおいて、誤り訂正が正常に動作している状態においてはADCからの出力を出力するステップを具備する。ステップ(f)は、(f−1)システムコントローラにおいて、誤り訂正が訂正不能である状態においては仮想リトライ処理を行うステップを具備する。ステップ(b)は、(b−1)メモリにおいて、仮想リトライ処理においてはバッファリングを停止し、かつ、既にバッファリングされた信号を出力するステップを具備する。ステップ(c)は、(c−2)セレクタにおいて、仮想リトライ処理においてはメモリからの出力を出力するステップを具備する。ステップ(d)は、(d−1)リードチャネル回路において、仮想リトライ処理においては動作パラメータを変更するステップを具備する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の情報再生装置によると、メモリにはADC出力がそのままバッファリングされている。したがって、訂正不能通知をトリガにしてバッファリングを停止すると、メモリ上には再生不能となったデータが保持されていることになる。通常のリトライでは、ターゲット領域を再度読み出すためにシークと回転待ちといった待ち時間が生じるが、メモリのアドレスを切り替えるだけで瞬時にターゲット領域のADCデータを取り出すことができるため、ピックアップのシークや回転待ち時間なしでリトライ処理ができるためスループットを向上させることが可能となる。以降、シークおよび回転待ちを伴わないメモリ読み出しのリトライを仮想リトライ、通常のシークを伴うリトライを実リトライと記述し区別する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明による情報再生装置および情報再生方法を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0021】
図2は、本発明の実施形態である情報再生装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態による情報再生装置は、ADC1と、第1のメモリ2と、SEL(SELector:セレクタ)3と、リードチャネル4と、DEC5と、第2のメモリ6と、システムコントローラ7と、CLK生成部8とを具備する。
【0022】
本実施形態による情報再生装置の各構成要素同士の接続関係を説明する。ADC1は、外部から再生信号を入力する。ADC1の出力は、分岐点a_outを介して、第1のメモリ2の入力と、セレクタ3の入力とに接続されている。第1のメモリ2の出力は、セレクタ3の入力に接続されている。セレクタ3の出力は、リードチャネル4の入力に接続されている。リードチャネル4の2つの出力は、いずれもDEC5の2つの入力にそれぞれ接続されている。DEC5の2つの出力は、第2のメモリ6の入力と、システムコントローラ7の入力とにそれぞれ接続されている。第2のメモリ6における2つの出力は、DEC5の入力と、システムコントローラ7の入力とにそれぞれ接続されている。システムコントローラ7の7つの出力は、第1のメモリ2にの入力と、セレクタ3の入力と、リードチャネル4の入力と、DEC5の入力と、第2のメモリ6の入力と、CLK生成部8の入力と、外部の上位システムへと、それぞれ接続されている。CLK生成部8の出力は、クロック信号clkとして、ADC1と、第1のメモリ2と、リードチャネル4とにそれぞれ接続されている。
【0023】
本実施形態における情報再生装置の動作例について説明する。例えば、光ディスク上に記録されている微小ピットを光学ヘッドによって読み出した再生信号をADC1に入力する。サンプリングクロックは固定発振周波数クロック(clk)とし、ADC1入力前段で図示していない帯域制限フィルタによってclk周波数の半分の周波数で制限されているものとする。ADC1はPRML(Partial Response Maximum Likelihood)にて検出することを考えても4〜8bit程度の量子化ビット数で十分である。ADC1出力は、セレクタ3に入力されると同時に第1のメモリ2に入力される。通常再生時、セレクタ3からはADC1出力がそのまま出力されてリードチャネル4に入力されるが、コントローラ7によって選択信号(sel)によって選択状態を切り替えることができる。
【0024】
図3は、第1のメモリ2の内部構造を説明するためのブロック図である。第1のメモリ2は、図3に示すようにclkによってレジスタ22がシフトするFIFO(First−In Fast−Out)構造を有し、通常再生時には前段のセレクタ21は入力inを選択する。またメモリ長はチャネルクロック相当で1ECC以上とし、ADC出力がバッファリングされるため、現時刻より前の1ECCブロック以上のサンプリングデータが保持される。コントローラ7の選択信号(r/w)によってメモリへのデータ書き込みを中断して保持データをリング状に接続して出力することを可能とする。もちろん、FIFO構造ではなく通常メモリとアドレスコントローラによって構成することが可能であるが、ランダムアクセスが不用で高速動作が必要であるためFIFO構成の方が扱い易い。また、メモリに保持した情報を順方向に読み出すのではなくLIFO(Last−In First−Out)のような逆順読み出しができる機能を付加していても良い。
【0025】
リードチャネル4は、入力信号より同期クロック(rclk)と2値化データ(rdata)を生成する。ただし、rclkはclkをゲーティングしたものである。リードチャネル4の再生パラメータ特にリードPLLのループ帯域およびHPFのカットオフ周波数等はコントローラ7によって変更することができる。rdatとrclkはデコーダ5に入力され、復調処理とECC誤り訂正がなされる。誤り訂正を行うためにデータ列は、一旦、第2のメモリ6に展開される。デコーダ5は誤り訂正結果をコントローラ7に通知し、コントローラ7は誤り訂正開始タイミングをデコーダ5に向けて出力する。また、第2のメモリ6上の訂正後データを上位システムに向けて出力することができるものとする。さらに、上述のデジタル回路のマスタクロックを生成するクロックジェネレータ8を設けてコントローラ7によって回路系の動作速度を切り替える機能を設けても良い。アナログVCO(Voltage Controlled Oscillator)を制御するPLL構成にしてADC1におけるサンプリングクロックおよび第1のメモリ2におけるクロックを再生信号に同期したPLLクロックとしても良い。ただしこの場合には、仮想リトライ時にPLLのループ特性を切り替えることはできないため、デジタルPLL構成の方がリーダビリティーを上げることが可能である。
【0026】
図4は、図2におけるリードチャネル4の構成例を示すブロック図である。このリードチャネル4は、フィルタ41と、デジタルPLL42と、PRML43とを具備する。ここで、デジタルPLL42は、リサンプラ421と、デコーダ422と、LPF(Low Pass Filter)423と、NCO(Numerically Controlled Oscillator)424とを具備する。
【0027】
このリードチャネル4における各構成要素の接続関係を説明する。フィルタ41は、外部から信号r_inを入力する。フィルタ41の出力は、リサンプラ421の入力に接続されている。リサンプラ421の出力は、デコーダ422の入力と、PRML43の入力とに接続されている。デコーダ422の出力は、LPF423の入力に接続されている。LPF423の出力は、NCO424の入力に接続されている。NCO424の出力は、リサンプラ421の入力と、PRML43の入力と、外部へとそれぞれ接続されている。PRML43の出力は、外部へと接続されいてる。
【0028】
チャネル非同期の固定レートでサンプルされた再生信号はフィルタ41によりDCレベルの補正、ゲインの補正がなされる。フィルタ41出力はリサンプラ421により入力に同期したクロックによりあたかもサンプリングしたかのような同期化RF信号が出力される。この同期化RF信号はPRML3によって最尤検出されて2値データrdatを出力する。また、リサンプラ421出力はデコーダ422によって位相誤差に変換されLPF423により平均化されNCO424の発振周波数を制御する。NCO424からクロック情報と共にリサンプラの補間位置情報が生成されてフィードバック制御を行う。これによってPLLループを構成する。
【0029】
図5は、本実施形態における情報再生装置の動作を説明するためのタイムチャートである。図中にはECCブロック単位で記録された情報が読み出されておりシーケンシャルに番号をつけてある。通常再生時において、セレクタ3からはADC1出力(a_out)がそのままr_inとして出力される一方で、第1のメモリ2にはADC1出力がバッファリングされる。第1のメモリ2出力(m_out)がa_outに比べて遅延しているのは、第1のメモリ2内部が約1.3ECCブロック長のFIFO構成となっているためである。
【0030】
この図では、ECCブロック1および2はECC訂正OKとなっていて、ブロック3にディフェクトがあり訂正不能となっている場合を想定している。ECC訂正処理には時間がかかるため、ブロック4の先頭部分を再生している途中でECC訂正NGフラグが立っている。これを受けてコントローラ7は、仮想リトライ処理を行う。
【0031】
仮想リトライ処理について説明する。まずセレクタ3制御信号SELを変化させてメモリ2からの出力をリードチャネル4に入力する。同時にメモリの入出力モード(r/w)を切り換えてメモリ2のデータ更新を中止する。またリードチャネル4の再生パラメータ、例えばPLLのループゲインを変更してメモリデータの再生動作を行う。図では最初の仮想リトライでも訂正NGフラグが立っているが、2回目の仮想リトライではPLLループを再度変更してメモリからの読み出しを行う。この2回目の仮想リトライで訂正OKとなったため、SEL、r/wおよびPLLループを通常再生値に戻し、仮想リトライを終了する。
【0032】
仮想リトライ動作中、クロックジェネレータの分周率を切り換えクロック周波数を上げて回路動作速度を高めてもよい。これによって仮想リトライ時のデータ処理時間を短縮させることが可能である。
【0033】
図6は、本実施形態による情報再生装置における、ピックアップの半径位置の時間経過についてその一例を説明するためのグラフである。図6の時間軸は、図5のそれに対応している。この図の例では、訂正不能エラーが発生した時点でシークバックが発生するが、仮想リトライ処理時間が短いため、転送レートの低下はわずかである。
【0034】
図7は、仮想リトライの代わりに、関連技術による実リトライを行う場合の、ピックアップの半径位置の時間経過について説明するためのグラフである。実リトライを2回行う図6では、リトライに時間がかかるためにスループットが大幅に低下することを示している。
【0035】
図8は、書き継ぎなどによるDC段差について説明するための図である。一般に、書き継ぎ部あるいは上書き開始部分では、記録パワー、ストラテジずれ等によって再生信号が変動する場合が多い。図8において、縦軸は、書き継ぎ開始位置におけるDC段差を示している。第2ECCブロックの先頭にDC段差があるために、順方向仮想リトライ時にHPFのカットオフ周波数を上げてもECC先頭の(1)セクタでエラーが発生する可能性が高い。HPFカットオフ周波数を上げることで別セクタのエラーを増加させる可能性もあり、第2ECCブロックがECC訂正不能となってしまう。これに対してADC変換単位でメモリ書き込み方向とは逆順にメモリ情報を再生すると後段で並べ替えは必要となるものの第2ECCブロックを処理した後でDC段差が現れるためセクタ(1)が良好に再生でき第2ECCブロックがECC訂正可能となる。
【0036】
ここまで、光ディスク装置にフォーカスして実施例を示してきたが、本発明を光ディスク装置ではなく他の情報再生装置であるHDDや磁気テープ装置に応用することも可能である。特に磁気テープでリトライが発生するとリポジションを繰り返す必要があり、ディスク状記録媒体に比べてテープおよびテープ走行メカ系にストレスがかかるため本発明が有効である。
【0037】
本発明による第1の効果としては、ECC訂正不能エラーによりリトライ処理が発生してもスループット低下を抑えることができる。これは、予めメモリの保持してある再生データを用いてリトライ処理が可能なため、シークおよび回転待ち時間を無視することができるためである。また、リトライ動作時に動作速度を上げることでリトライ処理時間そのものも短縮することが可能である。
【0038】
本発明による第2の効果としては、リトライ時消費電力を削減することが可能である。これはリトライ時のメカ的なシーク動作が不要となるためである。
【0039】
本発明は、ディスク等の情報再生装置、特に光ディスクの再生に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、関連技術の固定レートADCサンプリングによる情報再生装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における情報再生装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態における第1のメモリの内部構造を説明するためのブロック図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態におけるリードチャネル4の構成例を示すブロック図である。
【図5】図5は、本実施形態における情報再生装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図6】図6は、本実施形態による情報再生装置における、ピックアップの半径位置の時間経過を説明するためのグラフである。
【図7】図7は、仮想リトライの代わりに、関連技術による実リトライを行う場合の、ピックアップの半径位置の時間経過について説明するためのグラフである。
【図8】図8は、書き継ぎなどによるDC段差について説明するための図である。
【符号の説明】
【0041】
1 A/D変換器
2 第1のメモリ回路
3 セレクタ
4 デジタルリードチャネル回路
5 復調回路およびECC誤り訂正回路
6 (第2の)メモリ回路
7 システムコントローラ
8 クロックジェネレータ
21 セレクタ
22 レジスタ
41 デジタルフィルタ
42 デジタルPLL
43 PRML
421 リサンプラ
422 デコーダ
423 LPF
424 NCO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の情報記録媒体からの読み出し信号をデジタル化して出力するADC(Analog/Digital Converter)と、
前記ADCからの出力をバッファリングして出力するメモリと、
前記ADCからの出力と、前記メモリからの出力との、いずれか一方を選択的に出力するセレクタと、
所定の動作パラメータに基づいて、前記セレクタからの出力を2値化して2値化データを出力するリードチャネル回路と、
前記2値化データを復調し、ECC(Error Correcting Code)誤り訂正を行った上で出力し、さらに前記誤り訂正の状態を出力するデコーダと、
前記誤り訂正の状態を監視し、かつ、前記メモリと、前記セレクタと、前記リードチャネル回路と、前記デコーダとを制御するシステムコントローラと
を具備し、
前記誤り訂正が正常に動作している状態において、前記セレクタは、前記ADCからの出力を出力し、
前記誤り訂正が訂正不能である状態において、前記システムコントローラは、仮想リトライ処理を行い、
前記仮想リトライ処理において、
前記メモリは、前記バッファリングを中断し、かつ、既にバッファリングされた信号を出力し、
前記セレクタは、前記メモリからの出力を出力し、
前記リードチャネル回路は、前記動作パラメータを変更する
情報再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報再生装置において、
前記ADCは、周波数が前記読み出し信号とは非同期なサンプリングクロック信号を入力し、
前記リードチャネル回路は、
前記読み出し信号に同期したクロック信号を生成出力するデジタルPLL
を具備し、
前記動作パラメータは、
前記デジタルPLLの特性パラメータ
を含む
情報再生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報再生装置において、
前記サンプリングクロック信号を生成出力するクロック生成器
をさらに具備し、
前記システムコントローラは、前記クロック生成器を制御することによって、前記サンプリングクロック信号の発振周波数発振周波数を制御可能であり、
前記メモリと、前記リードチャネル回路と、前記デコーダとの動作速度は、前記サンプリングクロック信号に基づいて変化する
情報再生装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の情報再生装置において、
前記リードチャネル回路は、前記仮想リトライ処理において、前記メモリから出力される信号を、前記メモリにバッファリングされた際とは逆順で再生する
情報再生装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の情報再生装置において、
前記メモリのサイズは、1ECCブロックより長い
情報再生装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の情報再生装置において、
前記情報記録媒体として光ディスクを用いる
光ディスク装置。
【請求項7】
(a)ADCにおいて、任意の情報記録媒体からの読み出し信号をデジタル化して出力するステップと、
(b)メモリにおいて、前記ADCからの出力をバッファリングして出力するステップと、
(c)セレクタにおいて、前記ADCからの出力と、前記メモリからの出力との、いずれか一方を選択的に出力するステップと、
(d)リードチャネル回路において、所定の動作パラメータに基づいて、前記セレクタからの出力を2値化して2値化データを出力するステップと、
(e)デコーダにおいて、前記2値化データを復調し、ECC誤り訂正を行った上で出力し、さらに前記誤り訂正の状態を出力するステップと、
(f)システムコントローラにおいて、前記誤り訂正の状態を受け、かつ、前記メモリと、前記セレクタと、前記リードチャネルと、前記デコーダとを制御するステップと
を具備し、
前記ステップ(c)は、
(c−1)前記セレクタにおいて、前記誤り訂正が正常に動作している状態においては前記ADCからの出力を出力するステップ
を具備し、
前記ステップ(f)は、
(f−1)前記システムコントローラにおいて、前記誤り訂正が訂正不能である状態においては仮想リトライ処理を行うステップ
を具備し、
前記ステップ(b)は、
(b−1)前記メモリにおいて、前記仮想リトライ処理においては前記バッファリングを停止し、かつ、既にバッファリングされた信号を出力するステップ
を具備し、
前記ステップ(c)は、
(c−2)前記セレクタにおいて、前記仮想リトライ処理においては前記メモリからの出力を出力するステップ
をさらに具備し、
前記ステップ(d)は、
(d−1)前記リードチャネル回路において、前記仮想リトライ処理においては前記動作パラメータを変更するステップ
を具備する
情報再生方法。
【請求項8】
請求項7に記載の情報再生方法において、
前記ステップ(a)は、
(a−1)前記ADCにおいて、周波数が前記読み出し信号とは非同期なサンプリングクロック信号を入力するステップ
をさらに具備し、
前記ステップ(d)は、
(d−2)前記リードチャネル回路が具備するデジタルPLLにおいて、前記読み出し信号に同期したクロック信号を生成出力するステップ
をさらに具備し、
前記動作パラメータは、
前記デジタルPLLの特性パラメータ
を含む
情報再生方法。
【請求項9】
請求項8に記載の情報再生装置において、
(g)クロック生成器において、前記サンプリングクロック信号を生成出力するステップ
をさらに具備し、
前記ステップ(f)は、
(f−2)前記システムコントローラにおいて、前記クロック生成器を制御することによって、前記サンプリングクロック信号の発振周波数を制御するステップ
をさらに具備し、
前記ステップ(b)は、
(b−2)前記メモリにおいて、動作速度を前記サンプリングクロック信号に基づいて変化するステップ
をさらに具備し、
前記ステップ(d)は、
(d−3)前記リードチャネル回路において、動作速度を前記サンプリングクロック信号に基づいて変化するステップ
をさらに具備し、
前記ステップ(e)は、
(e−1)前記デコーダにおいて、動作速度を前記サンプリングクロック信号に基づいて変化するステップ
を具備する
情報再生方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の情報再生方法において、
前記ステップ(d)は、
(d−4)前記リードチャネル回路において、前記仮想リトライ処理においては前記メモリから出力される信号を、前記メモリにバッファリングされた際とは逆順で再生するステップ
をさらに具備する
情報再生方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載の情報再生方法において、
前記メモリのサイズは、1ECCブロックより長い
情報再生方法。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載の情報再生方法において、
前記情報記録媒体として光ディスクを用いる
光ディスク再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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