説明

情報処理システムおよび制御プログラム

【課題】クライアントである情報処理端末をシステムに追加した場合等において、迅速かつ適確なアプリケーションの動作環境を構築せしめる情報処理システム及び制御プログラムを提供すること。
【解決手段】サーバ装置に、更新データを配信した履歴情報を記憶する履歴記憶手段を設ける。情報処理端末は、自身のプログラムファイルの更新状況を特定するとともに、サーバ装置が記憶した履歴情報の送信を要求する。そして、これに応じてサーバ装置が送信した履歴情報と、特定した更新状況とに基づいて、プログラムファイルを更新すべき更新データを特定し、特定した更新データをダウンロードし、該データに基づいてプログラムファイルを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ装置とクライアントである情報処理端末とを備えた情報処理システムおよび上記情報処理端末の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する従来技術として、サーバと、このサーバにネットワークを介して通信接続されたクライアント端末とを備えたシステムにおいて、サーバがクライアント端末にソフトウェアを配信し、当該ソフトウェアをクライアント端末がインストールするシステムが知られている。(例えば、特許文献1を参照)
サーバは、ソフトウェア自体をクライアント端末に配信するのではなく、クライアント端末にソフトウェアの更新プログラムを配信する場合もある。クライアント端末は、受信した更新プログラムを用いて自身にインストールされたソフトウェアを更新する。かくして、クライアント端末のソフトウェアのバージョンは、サーバによって管理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−318692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記クライアント端末にインストールされたアプリケーションは、システムの初期導入時から様々な機能が追加・修正されていることが多い。そのため、新たなクライアント端末がシステムに追加された場合やアプリケーションが記憶されたHDD(Hard Disk Drive)を交換した場合等には、ユーザが所望の設定を実現するために当該クライアント端末を操作してソフトウェアを更新する必要があった。このような作業は、手間と時間を要するだけでなく、作業ミスにより正常な動作環境が構築されない蓋然性がある。
【0005】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、クライアントである情報処理端末をシステムに追加した場合等において、迅速かつ適確なアプリケーションの動作環境を構築せしめる情報処理システム及び制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、プログラムファイルを記憶するプログラムファイル記憶手段を備えた情報処理端末と、前記情報処理端末に前記プログラムファイルの更新データを配信するサーバ装置とを通信接続した情報処理システムにおいて、前記サーバ装置は、前記情報処理端末に前記更新データを配信した履歴情報を記憶する履歴記憶手段を備え、前記情報処理端末は、前記プログラムファイル記憶手段に記憶されたプログラムファイルの更新状況を特定する更新状況特定手段と、前記サーバ装置に前記履歴情報の送信を要求する履歴要求手段と、この履歴要求手段の要求に応じて前記サーバ装置が送信した履歴情報と前記更新状況特定手段が特定した更新状況とに基づいて前記プログラムファイルを更新すべき更新データを特定する更新データ特定手段と、この更新データ特定手段により特定された更新データをダウンロードするダウンロード手段と、このダウンロード手段によりダウンロードされた更新データに基づいて前記プログラムファイルを更新する更新手段とを具備していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
かかる手段を講じた本発明によれば、クライアントである情報処理端末をシステムに追加した場合等において、迅速かつ適確なアプリケーションの動作環境を構築せしめる情報処理システム及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態であるPOSシステムの全体構成を示す模式図。
【図2】同実施形態におけるPOS端末の要部構成を示す模式図。
【図3】同実施形態における管理リストのデータ構造を示す模式図。
【図4】同実施形態における更新処理の流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態は、本発明に係る情報処理システムを、商品販売店舗等で商品の販売処理に使用されるPOS(Point Of Sales)端末を備えたPOSシステムに適用した場合である。
【0010】
図1は、当該POSシステムの全体構成を示す模式図である。当該POSシステムは、サーバ装置であるストアコントローラ1と、情報処理端末であるPOS端末101〜105とを、LANケーブル3を介して相互通信可能に接続して構成されている。POS端末101〜105は、設置エリアや用途に応じて任意のグループに分別されている。本実施形態においては、POS端末101,102,103はグループAに属し、POS端末104,105はグループBに属している。なお、POS端末103は、HDDの交換が予定されており、POS端末106は、グループBに追加が予定されているPOS端末である。
【0011】
ストアコントローラ1は、CPUを主体として構成された制御手段10、HDD等の記憶デバイスに記憶された履歴記憶手段である管理リスト12、及び更新データであるパッケージを記憶するパッケージデータベース(DB)13を備えている。制御手段10が備えるメモリには、各POS端末へのパッケージ配信を管理する配信管理プログラム11が記憶されている。管理リスト12は、過去に当該システムに接続された各POS端末に対して配信したパッケージの履歴を記憶している。パッケージデータベース13は、上記グループAに属するPOS端末のアプリケーションを更新する3つのパッケージ“Ver 1.1”,“Ver 1.2”,“緊急パッチ”からなるグループAパッケージと、上記グループBに属するPOS端末のアプリケーションを更新する2つのパッケージ“Sub 1.1”,“Sub 1.2”からなるグループBパッケージとで構成されている。
【0012】
図2は、POS端末101〜106の要部構成を示す模式図である。POS端末101〜106は、CPUを主体として構成された制御手段20及び記憶デバイスであるHDD22等を備えている。制御手段20が備えるメモリには、後述の更新処理を行う更新用プログラム21が記憶されている。HDD22には、商品販売処理等の各種アプリケーションに関するデータで構成されるアプリケーションファイル23及びストアコントローラ1から配信されたパッケージで構成されるパッケージファイル24等が記憶されている。さらに、パッケージファイル24を構成する個々のパッケージに関する情報で構成されるパッケージ管理情報25及びストアコントローラ1で動作する配信管理プログラム11とのアクセスに関する情報で構成されるサーバ情報26が、ROM或いはRAM等に記憶されている。パッケージ管理情報25は、パッケージファイル24を構成する各パッケージの名称、当該POS端末の機器名、及び当該POS端末が所属するグループの名称から構成される。
【0013】
上記更新用プログラム21は、POS端末のシステム起動後に自動的に実行され、システムがシャットダウンされるまで常駐する。そして、サーバ情報26から上記配信管理プログラム接続情報を読み出してストアコントローラ1の配信管理プログラム11にアクセスし、アプリケーションファイル23の更新処理を行う。
【0014】
図3は、管理リスト12のデータ構造を示す模式図である。管理リスト12には、各POS端末に配信された順に、パッケージ“Ver. 1.1”,“Ver. 1.2”,“緊急パッチ”,“Sub 1.1”,“Sub 1.2”に関する履歴情報が記憶されている。各履歴情報は、例えば“〈Ver. 1.1〉”のようなパッケージ名称に対し、パッケージ取得先“〈DownLoadURL〉”,パッケージモジュール“〈Package〉”,パッケージ対象機器“〈Target〉”,パッケージ対象グループ“〈Group〉”に関する情報を対応付けて構成される。上記パッケージ取得先は、パッケージのダウンロード元のURLであり、本実施形態においてはストアコントローラ1のURLが記憶されている。上記パッケージモジュールは、パッケージのインストーラを起動するモジュールの名称である。上記パッケージ対象機器は、パッケージを配信したPOS端末の名称である。上記パッケージ対象グループは、パッケージを配信したグループの名称である。なお、パッケージ対象機器として“xxx”が記録されている場合には、パッケージ対象グループとして指定されたグループに属するPOS端末の全てに当該パッケージが配信されたことを意味する。一方、パッケージ対象機器として特定のPOS端末の名称が記録されている場合には、当該POS端末に対してのみ当該パッケージを配信したことを意味する。
【0015】
次に、図1に示したPOSシステムにおいて、POS端末103のHDD22を交換する場合を例にとり、上記のような構成による作用について説明する。なお、交換後のHDD22は初期状態にあり、アプリケーションファイル23は記憶されているが、パッケージファイル24は記憶されていない。
【0016】
HDD22を交換した後、POS端末103のシステムが起動されると、既述の如く更新用プログラム21が起動される。図4は、更新用プログラム21及び配信管理プログラム11に基づいて、POS端末103の制御手段20及びストアコントローラ1の制御手段10により実行される更新処理の流れ図である。
【0017】
先ず、制御手段20は、HDD22にアクセスしてパッケージファイル24を参照し、パッケージ管理情報25を更新する(ST1)。ただし、HDD22を交換した直後はパッケージファイル24が記憶されていないので、パッケージ管理情報25にパッケージ名称は登録されない。パッケージ管理情報25を更新した後、サーバ情報26から配信管理プログラム接続情報を読み出す(ST2)。そして、読み出した配信管理プログラム接続情報に基づいてストアコントローラ1にアクセスし、管理リストの送信を要求する(ST3)。この要求を受けたとき、ストアコントローラ1の制御手段10は、管理リスト12をPOS端末103に返信する(ST4)。なお、ST3の処理は、履歴要求手段を構成する。
【0018】
管理リスト12を受信したとき、POS端末103の制御手段20は、パッケージ管理情報25を読み出してアプリケーションファイル23の更新状況を特定し(ST5)、管理リスト12とパッケージ管理情報25とを比較する(ST6)。この比較処理では、(1)パッケージ対象グループがパッケージ管理情報25を構成するグループ名称と同一であり、(2)パッケージ対象機器がパッケージ管理情報25を構成する機器名と同一の機器名、或いは“xxx”であり、(3)パッケージ名称がパッケージ管理情報25に登録されていない、ことを条件としてパッケージを検索する。なお、ST5の処理は、更新状況特定手段を構成する。
【0019】
図2に示した管理リスト12から上記比較条件に該当するパッケージを検索した場合、パッケージ“Ver. 1.1”,“Ver. 1.2”,“緊急パッチ”が条件(1)をクリアする。さらに、これら3つのパッケージの中からパッケージ“Ver. 1.1”,“Ver. 1.2”が条件(2)をクリアする。HDD22を交換した直後においては、パッケージ管理情報25にパッケージ名称が登録されていないので、パッケージ“Ver. 1.1”,“Ver. 1.2”の双方とも条件(3)をクリアする。従って、パッケージ“Ver. 1.1”,“Ver. 1.2”がインストールすべきパッケージとして特定される。なお、ST6の処理は、更新データ特定手段を構成する。
【0020】
かくしてインストールすべきパッケージを特定したならば(ST7のYes)、当該パッケージの送信をパッケージ取得先であるストアコントローラ1に要求する(ST8)。この要求をストアコントローラ1が受信したとき、制御手段10は、該当するパッケージをパッケージデータベース13から検索し、POS端末103に返信する(ST9)。なお、ST8の処理は、更新データであるパッケージをダウンロードするダウンロード手段を構成する。
【0021】
返信されたパッケージを受信したとき、制御手段20は、パッケージのインストーラを起動し、管理リスト12の上位に登録されたパッケージから順にインストールする(ST10)。このように管理リスト12の上位に登録されたパッケージから順にインストールするのは、旧バージョンのパッケージから新バージョンのパッケージへと段階的にインストールしなければエラーを生じるようなパッケージの存在を考慮したためである。パッケージのインストールが完了すると、当該更新処理を終了する。なお、ST10の処理は、プログラムファイルであるアプリケーションファイル23を更新する更新手段を構成する。
【0022】
上記ST7の処理にてインストールすべきパッケージを発見しなかったときには(ST7のNo)、パッケージの送信要求及びインストールを行わずに当該更新処理を終了する。
【0023】
次に、図1に示したPOSシステムにおいて、新たにPOS端末106をグループBに追加する場合を例にとり、更新処理を説明する。かかる場合においてもPOS端末106のシステム起動時に図4を用いて説明した処理が行われる。
【0024】
図2に示した管理リスト12から上記比較条件(1)〜(3)に該当するパッケージを検索した場合、パッケージ“Sub. 1.1”,“Sub. 1.2”が条件(1)をクリアする。さらに、これら2つのパッケージの双方が条件(2)をクリアする。POS端末106のHDD22にはパッケージファイル24が記憶されていないので、パッケージ管理情報25にパッケージ名称が登録されておらず、パッケージ“Sub. 1.1”,“Sub. 1.2”の双方とも条件(3)をクリアする。従って、パッケージ“Sub. 1.1”,“Sub. 1.2”がインストールすべきパッケージとして特定される。
【0025】
かくして特定されたパッケージ“Sub. 1.1”,“Sub. 1.2”は、ストアコントローラ1からダウンロードされ、パッケージ“Sub. 1.1”,“Sub. 1.2”の順にインストールされる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理端末であるPOS端末は、システム起動時に自動的に更新用プログラムを実行し、ストアコントローラ1に管理リスト12の送信を要求する。そして、ストアコントローラ1が返信した管理リスト12から所定の条件を満たす履歴情報を特定し、特定した履歴情報に係るパッケージをダウンロードし、ダウンロードしたパッケージをインストールする。このように構成することで、POS端末のHDD22を交換したときや、システムにPOS端末を新たに追加したときに、自動的にアプリケーションプログラムが更新される。したがって、作業員が手動でアプリケーションプログラムを更新せず、迅速かつ適確なアプリケーションの動作環境を構築することができる。
【0027】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階においてはその要旨を逸脱しない範囲内にて各構成要素を適宜変形して具体化することができる。
【0028】
例えば、情報処理端末及びサーバ装置は、POS端末及びストアコントローラに限定されず、その他のクライアント・サーバシステムに本発明を適用してもよい。
【0029】
また、パッケージのダウンロード先は、ストアコントローラのみに限られず、インターネット等のネットワークに接続された他の装置からダウンロードするようにしてもよい。
【0030】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全体構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…ストアコントローラ、11…配信管理プログラム、12…管理リスト、13…パッケージデータベース、21…更新用プログラム、23…アプリケーションファイル、24…パッケージファイル、25…パッケージ管理情報、26…サーバ情報、101〜106…POS端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムファイルを記憶するプログラムファイル記憶手段を備えた情報処理端末と、前記情報処理端末に前記プログラムファイルの更新データを配信するサーバ装置とを通信接続した情報処理システムにおいて、
前記サーバ装置は、前記情報処理端末に前記更新データを配信した履歴情報を記憶する履歴記憶手段を備え、
前記情報処理端末は、
前記プログラムファイル記憶手段に記憶されたプログラムファイルの更新状況を特定する更新状況特定手段と、
前記サーバ装置に前記履歴情報の送信を要求する履歴要求手段と、
この履歴要求手段の要求に応じて前記サーバ装置が送信した履歴情報と前記更新状況特定手段が特定した更新状況とに基づいて前記プログラムファイルを更新すべき更新データを特定する更新データ特定手段と、
この更新データ特定手段により特定された更新データをダウンロードするダウンロード手段と、
このダウンロード手段によりダウンロードされた更新データに基づいて前記プログラムファイルを更新する更新手段と、
を具備していることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
プログラムファイルを記憶するプログラムファイル記憶手段を備え、前記プログラムファイルの更新データを配信しその履歴情報を記憶する履歴記憶手段を備えたサーバ装置と通信接続された情報処理端末の制御プログラムであって、
前記情報処理装置に、
前記プログラムファイル記憶手段に記憶されたプログラムファイルの更新状況を特定する更新状況特定機能と、
前記サーバ装置に前記履歴情報の送信を要求する履歴要求機能と、
この履歴要求機能の要求に応じて前記サーバ装置が送信した履歴情報と前記更新状況特定機能が特定した更新状況とに基づいて前記プログラムファイルを更新すべき更新データを特定する更新データ特定機能と、
この更新データ特定機能により特定された更新データをダウンロードするダウンロード機能と、
このダウンロード機能によりダウンロードされた更新データに基づいて前記プログラムファイルを更新する更新機能とを実現させるための制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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