説明

情報処理システム

【課題】各タイマが別々に設けられると、消費電流が大きくなってしまうこと。
【解決手段】RTC2がタイマとして用いられる。虚時刻である「2000年1月11日0:00」がRTC2のレジスタに記憶される。具体的には、虚時刻である「2000年1月11日0:00」よりも後に到来する「2000年1月11日0:30」がRTC2のレジスタに記憶される。RTC2において、アラームのイネーブルビットが「1」に設定される。21日周期の割り込みがRTC2の定周期割り込みビットに設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主電源及び補助電源に接続され情報を処理する情報処理システムに関するものであって、より詳しくは、ナビゲーションシステム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、リアルタイムクロック(RTC)とは別に設けられたタイマ部による計時時間を用いてPSRAM等への電源供給を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2003−345473号公報(図1乃至図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景技術においては、計時時間がPSRAM等への電源供給以外にも用いられる場合、別のタイマ部が必要である。
【0004】
例えば、アクセサリ電源及びバッテリに接続されるナビゲーション装置では、電源がアクセサリ電源からバッテリに切り替った後、所定の期間が経過しても、処理が終了していなければ(いわゆる処理の暴走)、この処理を終了するために処理部への電源供給を停止する必要がある。また、電源がアクセサリ電源からバッテリに切り替った後、所定の期間が経過すれば、暗電流を削減するためにDRAM等への電源供給を停止する必要がある。つまり、このナビゲーション装置では、少なくとも2系統のタイマが必要である。ところが、各タイマが別々に設けられると、消費電流が大きくなってしまうという課題がある。他方、電源がアクセサリ電源からバッテリに切り替った後、ソフトウエア割り込みによるタイマは、ソフトウエアのバグによるリスクを孕んでおり、信頼性の観点から好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る情報処理システムは、主電源がオフされた後には補助電源のみを用いる情報処理システムであって、リアルタイムクロックと、前記リアルタイムクロックに接続される制御装置とを備え、前記制御装置は、電源が前記主電源から前記補助電源に切り替る前に前記リアルタイムクロックに対して虚時刻及びこの虚時刻よりも後に到来するアラーム時刻を記憶させ、前記リアルタイムクロックは、前記主電源がオフされた後に、前記虚時刻を基準として求められる経過時刻と前記アラーム時刻とが一致することを条件としてアラームを発生し、前記主電源がオフされた後にハードウエア動作のみに依存する複数系統のタイマが実現されることを特徴とするものである。本発明における字句の解釈は、次のとおりである。
【0006】
「情報処理システム」が車両に搭載される場合、「主電源」と「補助電源」との関係はアクセサリ電源とバッテリとの関係である。
【0007】
「主電源がオフされた後には補助電源のみを用いる」とは、主電源がオフされる前には補助電源を用いるか否かを問わないことを意味する。
【0008】
「接続される」とは、直に接続されること及び他の装置を介して接続されることを含む概念である(以下、同じ)。
【0009】
「リアルタイムクロック」とは、いわゆるRTCであって、レジスタに記憶された時刻を基準として現在時刻を求める装置である。その機能として、計時機能の他に、アラーム機能がある。アラーム機能とは、求められた現在時刻と設定されたアラーム時刻とが一致するとアラームを発生する機能である。
【0010】
「制御装置」とは、ハードウエア又はハードウエアとソフトウエアとの協働によって具体的な処理を実現する装置である。
【0011】
「虚時刻」とは、変化しない時刻である。「虚時刻」がリアルタイムクロックのレジスタに記憶されると、「リアルタイムクロック」は、「虚時刻」を基準として現在時刻を求める。ここで求められた現在時刻は、実際の現在時刻とは異なる「経過時刻」である。「リアルタイムクロック」は、「経過時刻」と「アラーム時刻」とが一致すれば、アラームを発生する(アラーム機能)。
【0012】
「電源が前記主電源から前記補助電源に切り替る前に・・・記憶させ」とは、「・・・記憶させ」る処理が「切り替る前に」一度だけ実行される場合を含む概念である。もっとも、「・・・記憶させ」る処理は「予め定められた周期」で実行されることが好ましい。
【0013】
「複数系統のタイマが実現される」とは、複数系統のタイマは全てリアルタイムクロックによって実現され、かつ、複数系統のタイマのうち少なくとも1系統はアラームによって実現されていることをいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、リアルタイムクロックをタイマとして機能させることによって、複数のタイマを低い消費電流で実現することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る情報処理システムを実施するための最良の形態は、図1及び図2で示される。
【0016】
<ハードウエア構成について>本実施の形態に係る情報処理システムのハードウエア構成は、図1で示される。情報処理システム1は、車両に搭載され、図示されないアクセサリ電源(「主電源」に相当する)及びバッテリ(「補助電源」に相当する)に接続され、アクセサリ電源がオフされた後にはバッテリのみを用いている。
【0017】
情報処理システム1は、リアルタイムクロックチップ(「リアルタイムクロック」に相当する)2(以下、RTC2という)と、システムマイコン(「制御装置」に相当する)3と、システム電源供給回路4と、バックアップ電源供給回路5と、発振器(発振周波数32.786kHz)6とを備える。
【0018】
RTC2は、システムマイコン3、システム電源供給回路4、バックアップ電源供給回路6及び発振器6に接続されている。本実施の形態では、RTC2として、「RV5C339A」(株式会社RICHO製)が用いられている。
【0019】
システムマイコン3は、I/O、ROMやRAM等のコンピュータアーキテクチャからなる装置である。
【0020】
<主要信号について>本実施の形態で用いられる各信号は、図1で示される。各信号のうち主要な信号は、次のとおりである。
【0021】
「P−RTC.INT」は、RTC2で出力され、システム電源供給回路4に入力される。システム電源供給回路4は、「P−RTC.INT」を受けて、電源がシステムマイコン3に誤って供給されていれば、システムマイコン3に対して「P−RESET」を出力する。ここで、電源が誤って供給されているか否かの判定は「DC.ON」を用いて行われる。当該判定の根拠は、バッテリ動作時には「DC.ON」が必ず「ネゲート」状態であることに求められる。「P−RESET」が出力されると、システムマイコン3は、リセットされる。
【0022】
「RTC.INT」は、RTC2で出力され、バックアップ電源供給回路5に入力される。バックアップ電源供給回路5は、「P−RTC.INT」を受けて、図示されないDRAMに供給される電源をオフする。
【0023】
<処理について>システムマイコン3の処理は、図2で示される。システムマイコン3では、CPUが、アクセサリ電源がオフされる前に、ROMに記憶されたプログラムを実行し、以下の処理を実現する。
【0024】
アラームが無効化される(ステップS1)。具体的には、RTC2において、アラームのイネーブルビットが「0」に設定される。
【0025】
虚時刻が記憶される(ステップS2)。具体的には、虚時刻である「2000年1月11日0:00」がRTC2のレジスタに記憶される。
【0026】
定周期割り込みが設定される(ステップS3)。具体的には、21日周期の割り込みがRTC2の定周期割り込みビットに設定される。
【0027】
アラーム時刻が記憶される(ステップS4)。具体的には、虚時刻である「2000年1月11日0:00」よりも後に到来する「2000年1月11日0:30」がRTC2のレジスタに記憶される。
【0028】
アラームが有効化される(ステップS5)。具体的には、RTC2において、アラームのイネーブルビットが「1」に設定される。
【0029】
ステップS1からステップS5までの処理は、アクセサリ電源がオフされる前に、予め定められた周期(例えば、1分周期)で実行される。特に、アクセサリ電源がオンされた直後においては、アラームのフラグビットを消去することが望ましい。
【0030】
<RTCの動作について>ステップS1からステップS5までの処理が施されると、アクセサリ電源がオフした後、以下の動作が行われる。
【0031】
経過時刻がレジスタに記憶された虚時刻「2000年1月11日0:00」を基準として求められる。
【0032】
経過時刻がレジスタに記憶されたアラーム記憶「2000年1月11日0:30」になると、アラーム「P−RTC.INT」が発生する。つまり、アラーム機能はタイマとして機能する。これによって、アクセサリ電源がオフしてから30分が経過した後、システムマイコン3における処理の暴走を停止することができる。
【0033】
予め定められた期間(21日)が虚時刻「2000年1月11日0:00」から経過すると、21日周期の割り込み「RTC.INT」が発生する。これによって、アクセサリ電源がオフしてから20日が経過した後、バックアップ電源供給回路5は電源を強制的にオフし、DRAMで消費される電流を削減することができる。
【0034】
<本実施の形態における効果>本実施の形態によれば、RTC2がタイマとして機能するので、暴走停止用のタイマ及びバックアップ停止用のタイマを低い消費電流で実現することができる。
【0035】
本実施の形態によれば、RTC2に対して虚時刻を記憶させるための処理が1分周期で実行されるので、アクセサリ電源がオンしている間に、アラームが発生することを防止することができる。
【0036】
本実施の形態によれば、ハードウエアであるRTC2がタイマとして機能するので、ソフトウエアタイマにおけるバグの問題は生じず、情報処理システム1の信頼性を高めることができる。
【0037】
<変形例>本実施の形態では、「アラーム」の期間が短いRTC2が用いられているので、21日タイマとして「割り込み」が用いられている。もっとも、RTC2として、「アラーム」の期間が長い(例えば、30日)ものが存在すれば、21日タイマについても「アラーム」を用いられるべきである。言い換えれば、RTCが許容する限り、21日タイマについても「アラーム」を用いることが望ましい。なぜなら、「アラーム」によるタイマの方が「割り込み」によるタイマよりも設計しやすいからである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、リアルタイムクロックをタイマとして機能させることによって、ソフトウエアタイマを用いる必要がなくなり、複数のタイマを高い信頼性かつ低い消費電流で実現することができるという効果を有し、ナビゲーションシステム等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態に係る情報処理システムのハードウエア構成を示す図
【図2】本実施の形態におけるシステムマイコンでの処理の流れを示すフロー図
【符号の説明】
【0040】
1 情報処理システム
2 RTC(リアルタイムクロック)
3 システムマイコン(制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源がオフされた後には補助電源のみを用いる情報処理システムであって、
リアルタイムクロックと、前記リアルタイムクロックに接続される制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記主電源がオフされる前に前記リアルタイムクロックに対して虚時刻及びこの虚時刻よりも後に到来するアラーム時刻を記憶させ、
前記リアルタイムクロックは、前記主電源がオフされた後に、前記虚時刻を基準として求められる経過時刻と前記アラーム時刻とが一致することを条件としてアラームを発生し、
前記主電源がオフされた後にハードウエア動作のみに依存する複数系統のタイマが実現されることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記リアルタイムクロックに対して前記虚時刻及び前記アラーム時刻を記憶させる処理を予め定められた周期で実行することを特徴とする請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項3】
車両に搭載され、前記主電源及び前記補助電源がそれぞれアクセサリ電源及びバッテリであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
リアルタイムクロックに接続される制御装置であって、
前記リアルタイムクロックに対して虚時刻及びこの虚時刻よりも後に到来するアラーム時刻を記憶させる制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記リアルタイムクロックに対して前記虚時刻及び前記アラーム時刻を記憶させる処理を予め定められた周期で実行することを特徴とする請求項4に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−32459(P2008−32459A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204370(P2006−204370)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】