説明

情報処理装置、プログラムならびに方法

【課題】 救急隊員が、救急救助の優先順位が容易に決定できる。
【解決手段】 測位機能付きの複数の第1ユーザ端末装置から、負傷レベル情報と前記第1ユーザ端末装置の位置を示す第1位置情報とを含む第1データを取得して記憶する被災データ格納手段と、前記被災データ格納手段から、各々の第1データを取得し、前記第1データが含む負傷レベル毎に、前記負傷レベルが高い順に、所定の時間間隔をおいて、出力するデータ出力手段と、を有する情報処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置、プログラムならびに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
頻発する大地震等の自然災害に際し、救助システムの確立が急がれている。特許文献1は、安否確認対象者の携帯端末から受信した、現在位置情報と発生した災害/事件の位置情報と波及情報から、災害/事件情報処理装置が、この安否確認対象者の安否情報を得る方法を開示している。
【0003】
特許文献2は、監視対象家屋内の住人が小型ワイヤレス送受話器を携帯し、この送受話器に内蔵されたセンサが、該住人の脈拍、体温等の生態情報を救急隊員の所持する簡易基地局に、送信することによって、安否情報を得る方法を開示している。
【0004】
特許文献3は、景観画像取得時の位置情報とカメラ属性情報から、地図情報空間の中で視野空間を求め、存在する構造物の名称、ラベル付与位置等を含むラベル情報を基に、対応する画像中に地図情報の名称またはその属性情報を重畳して表示する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−253951号公報
【特許文献2】特開2009―205408号公報
【特許文献3】特開平10−267671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、負傷者は個々に安否情報を返信するので、種々雑多なレベルの情報が災害/事件情報処理装置に送り込まれることになり、救助隊員は救助の優先順位を決めるために、負傷レベルの判断や、情報の整理が必要となる。
【0007】
特許文献2の方法では、簡易基地局が脈拍、体温等の生態情報も得るため、負傷レベルの判断や負傷情報の整理は特許文献1の方法よりは効率化されるが、救急隊員は多くのデータから、急を要する負傷者を選り分けなくてはならない。
【0008】
特許文献3の方法において、構造物を負傷者レベル情報に置き換えることは可能だが、負傷者が多数になると、ラベルの林立が発生する。したがって、救急隊員は、複雑な表示から、急を要する負傷者を選り分けなくてはならない。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、救急隊員にとって救助優先順位を容易に決定できる情報処理装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の情報処理装置は、測位機能付きの複数の第1ユーザ端末装置から、負傷レベル情報と前記第1ユーザ端末装置の位置を示す第1位置情報とを含む第1データを取得して記憶する被災データ格納手段と、前記被災データ格納手段から、各々の第1データを取得し、前記第1データが含む負傷レベル毎に、前記負傷レベルが高い順に、所定の時間間隔をおいて、出力するデータ出力手段と、を有する。
【0011】
本発明の情報処理プログラムは、測位機能付きの複数の第1ユーザ端末装置から、負傷レベル情報と前記第1ユーザ端末装置の位置を示す第1位置情報とを含む第1データを取得して、被災データ格納部に記憶する被災データ格納処理と、をコンピュータに実行させる。
【0012】
本発明の情報処理方法は、測位機能付きの複数の第1ユーザ端末装置から、負傷レベル情報と前記第1ユーザ端末装置の位置を示す第1位置情報とを含む第1データを取得して被災データ格納部に記憶し、前記被災データ格納部から、各々の第1データを取得し、前記第1データが含む負傷レベル毎に、前記負傷レベルが高い順に、所定の時間間隔をおいて、出力する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、救急隊員は、救急救命の優先順位を、決定し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態の構成を表す図である。
【図2】図2は本発明の第1の実施形態のシーケンスチャートを表す図である。
【図3】図3は本発明の第1の実施形態の登録情報テーブルを表す図である。
【図4】図4は本発明の第1の実施形態の被災データテーブルを表す図である。
【図5】図5は本発明の第1の実施形態の負傷者分布情報を表す図である。
【図6】図6は本発明の第2の実施形態の構成を表す図である。
【図7】図7は本発明の第2の実施形態のシーケンスチャートを表す図である。
【図8】図8は本発明の第2の実施形態のタグ情報テーブルを表す図である。
【図9】図9は本発明の第2の実施形態のタグの例を表す図である。
【図10】図10は本発明の第2の実施形態の負傷者分布情報を表す図である。
【図11】図11は本発明の第4の実施形態の構成を表す図である。
【図12】図12は本発明の第3の実施形態のシーケンスチャートを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態の構成を示す図である。
【0016】
セルブロードキャストサーバ30は、災害時に、被災地域のセルを管轄する基地局を介して、複数の第1ユーザ端末装置40に同報メールを送信する。この同報メールには救助隊の支援が必要な人向けのURL(Uniform Resource Locator)が掲載されている。
【0017】
第1ユーザ端末装置40は、被災者等が所有する携帯電話、モバイルフォン、セルラー等の携帯端末である。第1ユーザ端末装置40は測位機能を有し、上記の基地局を介してロケーションサーバ60と通信することにより、自機の位置に関する、経緯度情報を取得することができる。また、第1ユーザ端末装置40は、上記の基地局を介してメールに付されたURLにアクセスし、WEBサーバ50に負傷レベル、位置情報を、ボタン操作により登録することができる。なお、第1ユーザ端末装置40の位置情報は第1位置情報と呼ばれることもある。WEBサーバ50は、これらの情報を図3に示す登録情報テーブルに格納する。登録情報テーブルにおいては、第1ユーザ端末装置40毎に付されたIDナンバー(ID:Identification)に関連付けて、第1位置情報、負傷レベル情報が記録されている。第1位置情報は経度及び緯度で表されている。なお、経度、緯度の組み合わせで表されたデータは、以降、経緯度座標と呼ばれる。負傷レベル0は“負傷なし”、負傷レベル1は“軽傷”、負傷レベル2は“重傷”、負傷レベル3は“頻死”を表わしている。
【0018】
情報処理装置100は、被災データ格納部10と、データ出力部20を含んでいる。被災データ格納部10は、WEBサーバ50の登録情報テーブルから負傷レベル、第1位置情報を取得し、図4に示す被災データテーブルに、負傷レベル毎に格納する。なお、第1位置情報と負傷レベル情報との組み合わせは、第1データと呼ばれる。
【0019】
被災データ格納部10は、地図サーバ70から、経緯度情報を指定して、被災データテーブルの第1位置情報の位置を含む地図データを取得し、第1データと関連づけて、第1データとともに、内部に格納する。
【0020】
地図サーバ70は、地図データを格納しており、地図データ格納部とも呼ばれる。ここで、地図データは、一定の縮尺により地上の事物を地図記号で表し、これを地上の配置を模して平面に配置したもののみを意味するものではない。地図データは地上の景観を写真撮影した画像ファイルをも含む。地図サーバ70は、地図データを、経緯度座標で指定された領域を、被災データ格納部10に出力することができる。また、地図サーバ70は、ファイル名で指定された画像ファイルを被災データ格納部10に出力することもできる。地図サーバ70は地図データ格納部とも呼ぶ。
【0021】
データ出力部20は、被災データ格納部10から、負傷レベルと第1位置情報を取得し、地図データの第1位置情報の示す位置に相当する位置に負傷レベルを重畳して表示する、負傷者分布情報のデータを作成する。
【0022】
データ出力部20は、作成した負傷者分布情報のデータを、救急隊員等が所持する第2ユーザ端末装置80に送信する。
【0023】
被災データ格納部10、データ出力部20は、論理回路を組み合わせたハードウェアで実現することも可能であるし、ソフトウェアアプリケーションで実行するコンピュータプログラムで実現されることも可能である。
【0024】
図2は本実施形態のシーケンスチャートを示す図である。災害発生時、セルブロードキャストサーバ30は、被災地域のセルを管轄する基地局を介して、複数の第1ユーザ端末装置40に向けた同報メールを送信する(SQ1)。
【0025】
被災地域で、この同報メールを受信した第1ユーザ端末装置40は、このメールに付記されたURLにアクセスし、WEBサーバ50に無線接続する(SQ2)。
【0026】
WEBサーバ50は、第1ユーザ端末装置40の画面に、アクセスされたURLのページを表示させる(SQ3)。
【0027】
第1ユーザ端末装置40は、ロケーションサーバ60に、自機の位置情報である第1位置情報の取得を要求する(SQ4)。
【0028】
この要求を受けた、ロケーションサーバ60は、第1ユーザ端末装置40の第1位置情報をWEBサーバ50に送信する(SQ5)。
【0029】
第1ユーザ端末装置40は、負傷レベル情報(0、1、2、3のいずれか一つ)をWEBサーバ50に送信する(SQ6)。
【0030】
WEBサーバ50は、第1位置情報、負傷レベル情報について、第1ユーザ端末装置40に確認を要求し(SQ7)、第1ユーザ端末装置40は、これを確認した旨の通知をWEBサーバ50に返信する(SQ8)。
【0031】
WEBサーバ50は、所定数の第1ユーザ端末装置40から確認を受けた時点で、情報処理装置100の被災データ格納部10に、格納している負傷レベルの種類の個数N及びすべての第1位置情報を含む経緯度座標領域、を通知する(SQ9)。負傷レベルの種類の個数とは、本実施形態の場合は、負傷レベル0、1、2、3の4個となる。なお、負傷レベルの種類の個数は、以降、レベル数と呼ばれる。
【0032】
情報処理装置100の被災データ格納部10は、N=0か否かを判断する。被災データ格納部10は、Nが0ではない場合、レベル数に元のレベル数から1を差し引いたN−1を代入し、もっとも高い負傷レベルから順番に負傷レベルを指定して、その負傷レベルの被災者の第1位置情報を、WEBサーバ50に要求する(SQ11)。
【0033】
WEBサーバ50は、指定された負傷レベルの被災者の第1位置情報を被災データ格納部10に送信する(SQ12)。
【0034】
本実施形態においては、最も高い負傷レベルは3なので、被災データ格納部10は、SQ11で、負傷レベル3の被災者の第1位置情報をWEBサーバ50に要求する。WEBサーバ50は登録情報テーブルから、負傷レベル3の被災者のIDと第1位置情報とを取得し、被災データ格納部10に送信する。被災データ格納部10は、取得した情報を、負傷レベル毎に、図4に示す被災データテーブル(負傷レベル3)に格納する。
【0035】
次に、被災データ格納部10は、地図サーバ70に、SQ9で取得した経緯度座標で指定された領域の地図データを、地図サーバ70に要求する(SQ13)。
【0036】
本実施形態では、この段階で被災データ格納部10が有する第1位置情報の地点をすべて含む平面は、経緯度座標で表すと、(35度39分0秒、139度44分43秒)と(35度39分39秒、139度44分63秒)を結ぶ直線を対角線とする矩形である。被災データ格納部10は、この対角線座標を指定して地図データを地図サーバ70に要求する。
【0037】
地図サーバ70は、被災データ格納部10に、要求された地図データを送信する(SQ14)。
【0038】
情報処理装置100のデータ出力部20は、地図データの第1位置情報と対応する位置に、負傷レベルを重畳して表示する負傷者分布情報のデータを作成し、第2ユーザ端末装置80に、これを送信する(SQ15)。図5は、各負傷レベルの負傷者分布情報の例を示す。図5(a)に注目すると、負傷レベルを表す3が、第1位置情報が対応する位置に、第1のユーザ端末装置のID番号とともに表示されている。
【0039】
データ出力部20が第2ユーザ端末装置80に、指定された負傷レベルの負傷者分布情報を送信した時点をT=0として、所定の時間T1が経過した後(SQ17)、次に指定された負傷レベルについて、同様の操作が繰り返される。
【0040】
本実施形態では負傷レベル3の次に高い負傷レベルは「2」である。負傷レベル3の負傷者分布情報が送信された後、所定の時間T1が経過した後に、引き続き、図5(b)に示される負傷レベル2の負傷者分布情報が、第2ユーザ端末装置80に送信される。データ出力部20は、図5(c)、(d)に示す負傷レベル1、0の負傷者分布情報も、同様にして、順次、第2ユーザ端末装置80に送信する。
【0041】
第2ユーザ端末装置80の表示は、負傷者分布情報を受信した際に、受信した負傷者分布情報を表示するよう、自動的に更新される。この際、過去に受信した負傷者分布情報も、再度参照することができるよう、第2ユーザ端末装置40の記憶部に保存される設定をとってもよい。
【0042】
所定の時間T1が経過する前は、データ出力部20は次の処理を行わず、待機する(SQ16)。
【0043】
N=0の場合、被災データ格納部10は処理を終了する(SQ10)。
【0044】
本実施形態では、データ出力部20が、負傷者分布情報に、負傷レベルとともに、IDも表示しているが、IDの表示はなくてもよい。
【0045】
本実施形態では、データ出力部20が、負傷レベルが高い順に、すべての負傷レベルについて、負傷者分布情報が作成されているが、必ずしもすべての負傷レベルについて負傷者分布情報を作成する必要はない。データ出力部20は、負傷レベルが低い負傷者分布情報は作成しないという設定を行うこともできる。また、データ出力部20は、配備可能な救急隊の装備を勘案し、負傷レベルの低い負傷者分布情報のみを作成するという設定を行うこともできる。
【0046】
本実施形態では、WEBサーバ50は、所定数の第1ユーザ端末装置40から確認を受けた時点で、情報処理装置100の被災データ格納部10に、格納している負傷レベルの種類の個数N及びすべての第1位置情報を含む経緯度座標領域、を通知している。しかし、必ずしも所定数の確認を受けた時点まで、通知を待つ必要はなく、WEBサーバ50は、一定時間の経過後に、経緯度座標領域を通知する設定をとってもよい。
【0047】
本実施形態では、被災データ格納部10が、経緯度座標を指定して、地図データを地図データ格納部から取得しているが、必ずしも経緯度座標を指定する必要はない。著名な建造物等と、その建造物等を中心とする円の半径が指定されてもよい。
【0048】
本実施形態では、WEBサーバ50を介して、負傷レベル情報、第1位置情報が情報処理装置100の被災データ格納部10に送られているが、第1ユーザ端末から直接、これらの第1データが送信されてもよい。この場合は、SQ5で、ロケーションサーバ60は第1ユーザ端末装置40に、第1位置情報を送信する。また、データ出力部20が、負傷レベル毎に第1データを分ける処理を行う。
【0049】
本実施形態では、被災データ格納部10が、SQ3で、すべての第1位置情報を含む経緯度座標で指定した領域の地図データを地図サーバ70に要求しているが、指定した負傷レベルの第1位置情報のみを含む領域を指定してもよい。
【0050】
本実施形態によれば、救助隊員等が所持する第2ユーザ端末装置80には、負傷レベル毎に負傷者分布情報が表示されるので、救助隊員等は、複雑な表示を理解する時間をかけることなく、救助の優先順位を、容易に決定することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、データ出力部20が、第2ユーザ端末装置80に、負傷者分布情報として、地図データに負傷レベルを重畳したものを送信した。第2の実施形態では、データ出力部20が、負傷レベルを、第2ユーザ端末装置80が撮影する景観画像に重畳させる。図6は、第2の実施形態の構成を示す図である。第1の実施形態と異なる点は、以下の2点である。(1)第2ユーザ端末装置80は、測位、方向検出、撮影の各機能を有する携帯端末である。(2)第2ユーザ端末装置80は、情報処理装置100の被災データ格納部10に景観画像ファイル、撮影データ(後述)を送信できる。
【0052】
第2ユーザ端末装置80は、撮影部と、その方位角を測定する方向検出部と、自機の位置を計測する測位部とを有している。方向検出部としては、地磁気/加速度センサを用いることができる。なお、第2ユーザ端末装置80の保持者である、救急隊員らに、地面に対して垂直且つ平行に第2ユーザ端末装置80に保持して撮影することを指示するものとするため、傾斜角及び回転角は一定である。また、すべての救急隊員に対して同じ画角の第2ユーザ端末装置80を保持させれば、それぞれの第2ユーザ端末装置80の画角は一定である。また、第2ユーザ端末装置80は、撮影した景観の画像ファイル(景観画像ファイル、地図データとも呼ぶ)を格納する記憶部を、有している。また、第2ユーザ端末装置80は、撮影データと、景観画像ファイルのファイル名と、景観画像ファイルとを被災データ格納部10に送信する機能を有している。ここで撮影データは、方向検出部で測定した方位角と、第2ユーザ端末装置80の位置情報である第2位置情報と、を含んでいる。第2ユーザ端末装置の測位部は、常に自機の測位情報を、情報処理装置100の図示しない、端末位置モニター部に向けて送信している。
【0053】
被災データ格納部10は、複数の第2ユーザ端末装置80から、その所在地が、第1位置情報に近い位置にある第2ユーザ端末装置を選択することができる。この選択は、端末位置モニター部が出力する、それぞれの第2ユーザ端末の経緯度座標と第1位置情報が示す経緯度領域の位置関係を被災データ格納部10が計算することによって、行われる。
【0054】
また、被災データ格納部10は、第2ユーザ端末装置80から取得した撮影データから、景観画像データに対応する経緯度領域を算出する。また、被災データ格納部10は、計算で得られた経緯度領域に、第1ユーザ端末装置40の位置情報である第1位置情報に相当する位置が含まれているか否かを判断する。被災データ格納部10は、第1位置情報に相当する位置が含まれている場合には、景観画像データの第1位置情報に相当する位置に負傷レベルを、景観画像データに重畳して表示するデータを作成する。
【0055】
図7は本実施形態のシーケンスチャートを示す図である。SQ21からSQ32までのステップは、第1の実施形態のSQ1からSQ12までと同じである。情報処理装置100の被災データ格納部10は、第1位置情報の近傍に位置している、第2ユーザ端末装置80を選択し、景観画像の撮影を指示する(SQ33)。また、被災データ格納部10は、SQ32で格納した指定した負傷レベルの被災者の位置情報を元に、位置情報に負傷レベルを対応させた、負傷レベルを表示するためのタグに書き込む情報を作成し、タグ情報テーブルとして記憶する。図8はタグ情報テーブルの一例を示す。タグ情報テーブルは、それぞれの第1ユーザ端末装置40に付されたIDに関係付けて、経緯度座標、負傷レベル情報、タグ情報、表示対象フラッグ(後述)を格納している。第2ユーザ端末装置80は、景観画像を撮影した景観の画像ファイルと、方位角と第2位置情報とを含む撮影データと、を情報処理装置100の被災データ格納部10に送信する(SQ34)。被災データ格納部10は、この撮影データから、地図データの経緯度領域を計算し、タグ情報と一致する経緯度座標を含んでいるか否かを判定する。被災データ格納部10は、含んでいない場合、再度撮影指示を出す(SQ35)。含んでいる場合、被災データ格納部10は、タグ情報テーブルの経緯度座標が地図データに含まれるIDに、表示対象フラッグ“1”を立てる。図8は一例として、ID3、4、6、8、9、10が地図データの領域に入っており、フラッグ“1“がたてられている様子を示している。データ出力部20は、被災データ格納部10のタグ情報テーブルを参照し、フラッグ“1”を立てられたIDに対して、図9に示すようなタグを表示するタグデータを作成する。データ出力部20は、このタグデータを、景観画像ファイルである地図データの、対応する経緯度座標の位置に重畳した、負傷者分布情報のデータを作成する(SQ36)。データ出力部20は、この負傷者分布情報を、第2ユーザ端末装置80に送信する(SQ37)。第2ユーザ端末装置80の画面には、図10のように、負傷レベルのタグが、撮影された景観画像に重畳して表示される。一例として、第1の実施形態同様、負傷レベル3から始まって、レベルが高い順に負傷者分布情報を表示する場合、(a)、(b)、(c)の順に画像が更新される。データ出力部20が第2ユーザ端末装置80に、指定された負傷レベルの負傷者分布情報を送信した時点をT=0として、所定の時間T1が経過した後(SQ39)、次に指定された負傷レベルについて、同様の操作が、第1の実施形態と同様に繰り返される。所定の時間T1が経過する前は、情報処理装置100は次の処理を行わず、待機する(SQ38)。
【0056】
本実施形態では、第2ユーザ端末装置80の傾斜角及び回転角は一定であるとしたが、被災データ格納部10は、方向検出部により、傾斜角、回転角をも取得し、経緯度領域の計算で、これらのデータを使って、経緯度領域の計算を行うこともできる。この場合、救急隊員は、第2ユーザ端末装置80の保持方位を意識する必要はなく、自由な角度で撮影することが可能である。また、本実施形態では、第2ユーザ端末装置80の画角は一定であるとしたが、それぞれ異なる画角の第2ユーザ端末装置80が使われてもよい。この場合、被災データ格納部10は、それぞれの第2ユーザ端末装置80から画角を取得し、経緯度領域の計算で、画角のデータを使って、経緯度領域を計算する。
【0057】
本実施形態によれば、救助隊員が撮影している、現実の景観画像に、負傷レベル情報が重畳されるので、第1の実施形態以上に、優先順位の判断が容易となる。
【0058】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、情報処理装置100の被災データ格納部10が、第2ユーザ端末装置80から取得した撮影データから、景観画像データに対応する経緯度領域を算出していた。また、情報処理装置100のデータ出力部20が、第2ユーザ端末装置80から受信した景観の画像ファイルの、対応する経緯度座標の位置に負傷レベルを重畳した、負傷者分布情報のデータを作成し、第2ユーザ端末装置80に送信していた。
【0059】
しかし、第2ユーザ端末装置80が、景観画像データに対応する経緯度領域を算出し、経緯度領域の座標範囲のみを被災データ格納部10に送信する機能(座標算出機能)を有していてもよい。また、第2ユーザ端末装置80が、景観の画像に、データ出力部20から受信した第1データを重畳する機能(画像重畳機能)をもっていてもよい。第3の実施形態は、第2ユーザ端末装置80が、座標算出機能、画像重畳機能を受け持つ実施形態である。
【0060】
図12は本実施形態のシーケンスチャートを示す図である。SQ41からSQ53までのステップは、第2の実施形態のSQ21からSQ33までと同じである。情報処理装置100の被災データ格納部10は、第2の実施形態と同様に、第1データを元にタグ情報テーブルを作成し、これを記憶する。第2ユーザ端末装置80は、景観画像を撮影し、撮影時の方位角と第2位置情報とを含む撮影データとから、経緯度領域を計算する。第2ユーザ端末装置80は、この計算の結果得た、前記景観に対応する領域の座標範囲を、情報処理装置100の被災データ格納部10に送信する(SQ54)。被災データ格納部10は、この座標範囲がタグ情報と一致する経緯度座標が含んでいるか否かを判定する。被災データ格納部10は、この座標範囲がタグ情報と一致する経緯度座標を、含んでいない場合(SQ55)、第2ユーザ端末装置80に、再度撮影指示を出す(SQ53)。含んでいる場合、被災データ格納部10は、第2の実施形態と同様に、タグ情報テーブルの経緯度座標が、この座標範囲に含まれるIDに、表示対象フラッグ“1”を立てタグを作成する。データ出力部20は、指定負傷レベルと位置情報の組み合わせた情報、すなわち第1データと、この第1データに対応するタグデータとを、第2ユーザ端末装置80に送信する(SQ56)。第2ユーザ端末装置80は、景観の画像にタグ情報を重畳する。
【0061】
本実施形態によれば、被災データ格納部10が、タグを作成するが、必ずしも被災データ格納部10がタグを作成する必要はなく、第2ユーザ端末装置80がタグを作成する機能を有していてもよい。この場合、第2ユーザ端末装置80は、タグを新たに作成するだけではなく、保有している絵文字、画像ファイルを選択することもできる。この場合、SQ56において、データ出力部20は、第2ユーザ端末装置80に、指定負傷レベルの第1データのみを送る。
【0062】
本実施形態によれば、救助隊員が撮影している、現実の景観画像に、負傷レベル情報が重畳されるので、第1の実施形態以上に、優先順位の判断が容易となる。また、本実施形態によれば、第2ユーザ端末装置80は、経緯度座標のデータのみを、情報処理装置100の被災データ格納部10に送るので、第2に実施形態に較べて、データ送信に要する時間が少ない。
【0063】
(第4の実施形態)
図11は本発明の第3の実施形態の構成を示す図である。本発明の第3の実施形態は、
測位機能付きの複数の第1ユーザ端末装置40から、負傷レベル情報とこれらの第1ユーザ端末装置40の位置を示す第1位置情報とを含む第1データを取得して記憶する被災データ格納部10と、この被災データ格納部から、各々の第1データを取得し、この第1データが含む負傷レベル毎に、この負傷レベルが高い順に、所定の時間間隔をおいて、出力するデータ出力部20と、を有する情報処理装置100である。
【0064】
本実施形態によれば、救急救助の優先順位を容易的に決定することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 被災データ格納部
20 データ出力部
30 セルブロードキャストサーバ
40 第1ユーザ端末装置
50 WEBサーバ
60 ロケーションサーバ
70 地図サーバ
80 第2ユーザ端末装置
100 情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位機能付きの複数の第1ユーザ端末装置から、負傷レベル情報と前記第1ユーザ端末装置の位置を示す第1位置情報とを含む第1データを取得して記憶する被災データ格納手段と、
前記被災データ格納手段から、各々の第1データを取得し、前記第1データが含む負傷レベル毎に、前記負傷レベルが高い順に、所定の時間間隔をおいて、出力するデータ出力手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記被災データ格納手段は、記憶している前記第1位置情報が示す位置をすべて含む範囲を指定して、地図データ格納手段から当該範囲の地図データを取得し、
前記データ出力手段は、前記負傷レベルを、前記地図データの第1位置情報が示す位置に、前記地図データと重畳して負傷者分布情報を作成し、第2ユーザ端末装置に送信する請求項1の情報処理装置。
【請求項3】
前記被災データ格納手段は、撮影手段と、方向検出手段と、測位手段とを有する第2ユーザ端末装置から、前記方向検出手段で測定した前記撮影手段の方位角と、前記測位手段で測定した、前記第2ユーザ端末装置の座標を含む第2位置情報と、を含む撮影データと、前記撮影手段で撮影された景観の画像ファイルと、を受信し、前記撮影データから前記景観に対応する領域の座標範囲を算出し、
前記データ出力手段は、前記領域に前記第1位置情報が対応する位置が含まれている前記第1データの前記負傷レベルを、前記画像ファイルの第1位置情報が示す位置に、前記画像ファイルと重畳して負傷者分布情報を作成し、前記第2ユーザ端末装置に送信する請求項1の情報処理装置。
【請求項4】
前記被災データ格納手段は、第2ユーザ端末装置から、前記第2ユーザ端末装置が撮影した、景観に対応する領域の座標範囲を受信し、
前記データ出力手段は、前記領域に前記第1位置情報が対応する位置が含まれている前記第1データを、前記第1データの前記負傷レベルを前記景観の画像の第1位置情報が示す位置に、前記景観の画像と重畳して表示する前記第2ユーザ端末装置に送信する、請求項1の情報処理装置。
【請求項5】
測位機能付きの複数の第1ユーザ端末装置から、負傷レベル情報と前記第1ユーザ端末装置の位置を示す第1位置情報とを含む第1データを取得して、被災データ格納部に記憶する被災データ格納処理と、
前記被災データ格納部から、各々の第1データを取得し、前記第1データが含む負傷レベル毎に、前記負傷レベルが高い順に、所定の時間間隔をおいて、出力するデータ出力処理と、をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【請求項6】
記憶している前記第1位置情報が示す位置をすべて含む範囲を指定して、地図データ格納部から当該範囲の地図データを取得する前記被災データ格納処理と、
前記負傷レベルを、前記地図データの第1位置情報が示す位置に、前記地図データと重畳して負傷者分布情報を作成し、第2ユーザ端末装置に送信する前記データ出力処理と、を前記コンピュータに実行させる請求項5の情報処理プログラム。
【請求項7】
撮影部と、方向検出部と、測位部とを有する第2ユーザ端末装置から、前記方向検出部で測定した前記撮影部の方位角と、前記測位部で測定した、前記第2ユーザ端末装置の座標を含む第2位置情報と、を含む撮影データと、前記撮影部で撮影された景観の画像ファイルと、を受信し、前記撮影データから前記景観に対応する領域の座標範囲を算出する前記被災データ格納処理と、
前記領域に前記第1位置情報が対応する位置が含まれている前記第1データの前記負傷レベルを、前記画像ファイルの第1位置情報が示す位置に、前記画像ファイルと重畳して負傷者分布情報を作成し、前記第2ユーザ端末装置に送信する前記データ出力処理と、を前記コンピュータに実行させる請求項5の情報処理プログラム。
【請求項8】
第2ユーザ端末装置から、前記第2ユーザ端末装置が撮影した、景観に対応する領域の座標範囲を受信する前記被災データ格納処理と、
前記領域に前記第1位置情報が対応する位置が含まれている前記第1データを、前記第1データの前記負傷レベルを前記景観の画像の第1位置情報が示す位置に、前記景観の画像と重畳して表示する前記第2ユーザ端末装置に送信する前記データ出力処理とを、前記コンピュータに実行させる請求項5の情報処理プログラム。
【請求項9】
測位機能付きの複数の第1ユーザ端末装置から、負傷レベル情報と前記第1ユーザ端末装置の位置を示す第1位置情報とを含む第1データを取得して被災データ格納部に記憶し、
前記被災データ格納部から、各々の第1データを取得し、前記第1データが含む負傷レベル毎に、前記負傷レベルが高い順に、所定の時間間隔をおいて、出力する情報処理方法。
【請求項10】
第2ユーザ端末装置から、前記第2ユーザ端末装置が撮影した、景観に対応する領域の座標範囲を受信し、
前記領域に前記第1位置情報が対応する位置が含まれている前記第1データを、前記第1データの前記負傷レベルを前記景観の画像の第1位置情報が示す位置に、前記景観の画像と重畳して表示する前記第2ユーザ端末装置に送信する請求項9の情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−203550(P2012−203550A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66205(P2011−66205)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】