説明

情報処理装置、レーザ照射装置、描画情報生成方法、制御システム、プログラム

【課題】文字のサイズとレーザ光で描く線の太さが可変の場合でも、適切にフォントデータを選択して、小さなサイズの文字を視認性よく描画する情報処理装置等を提供すること。
【解決手段】線画の描画情報を生成する情報処理装置100であって、線画の太さとサイズに応じて、1つの線画の複数の形状情報を記憶した形状情報記憶手段41と、線画の太さ情報を取得する太さ情報取得手段203と、描画対象の線画のコード情報を取得するコード情報取得手段201と、描画対象の線画のサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段202と、太さ情報及び前記サイズ情報に基づき、文字毎に、複数の形状情報から1つを選択する形状情報選択手段204と、形状情報選択手段により選択された形状情報を形状情報記憶手段から読み出して、形状情報から描画情報を生成する描画情報生成手段205と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字などの線画を非接触又は接触に描画する際の描画情報を生成する、情報処理装置、レーザ照射装置、描画情報生成方法、制御システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品のあて先や物品名を印字するラベルに感熱紙が用いられることがある。例えば、工場で使われるプラスチック製のコンテナにはこのような感熱型のラベルが貼付されている。感熱紙のラベルは、熱により発色する性質をもっており、熱ヘッド等を利用して文字や記号を書き込むことができる。
【0003】
そして、このような感熱紙でも書き込み、消去を繰り返し行えるリライタブルタイプのものが登場してきた。物流で利用する際には、コンテナにラベルを貼ったまま書き込み、消去ができることが望ましいため、非接触でレーザ光をラベルに照射して発熱させることで文字等を描く方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、フレキシブルジョイントにより構成された複数のレンズ系の一端から入射したレーザ光による画像を他端まで伝達するリレーレンズ系が記載されている。
【0004】
なお、レーザによる画像形成は従来から知られており(例えば、特許文献2参照。)、特許文献2には、1つの原画像データを複数のラインに分割して、ライン毎に感光ドラムにレーザを照射する画像形成方法が記載されている。
【0005】
ところで、一般にレーザ光のビーム径は細くても0.3mm程度であり、比較的太いため、レーザによる文字等の描画では、ストロークフォントが用いられることが多い。すなわち、一般に文字等の描画に用いられるアウトラインフォントのように、輪郭を決定し輪郭内を塗りつぶす作業が不要である。ストロークフォントは文字の芯線データで定義された座標に応じてレーザを走査すれば、鉛筆で文字を描く如くに文字を描画できる。描く文字のサイズを変えたい場合は、元のフォントデータの座標値を拡大または縮小して、文字の描画情報を新たに生成し、レーザでその座標どおりにリライタブルメディアを走査して、文字を描く。
【0006】
しかしながら、レーザ光のビーム径の下限に制限があるため(約0.3mm程度)、小さなサイズの文字を描くことが困難になるという不都合がある。すなわち、描く線が太いため、小さな文字を描くと文字がつぶれて文字の判別が困難になってしまう。レーザプリンタで用いるレーザ光のように非常に細い線であれば、人間が判読できる程度までのサイズの文字をストロークフォントにより描いてもつぶれることはなかったが、サーマルリライタブルメディアの発色に用いるレーザ光で描ける線は太いため、漢字のような複雑な文字を描く場合には5mm角程度のサイズがないと、隣り合う線同士が重なってしまい、判読が難しくなる場合が多々発生する。
【0007】
一般的なプリンタやワープロソフトウェアでは、文字のサイズに応じてフォントを切り替える手法が知られている(例えば、特許文献3、4参照。)。ある程度小さな文字を印刷したりディスプレイに表示する場合、同じ文字の小サイズ用フォントデータを用いることで、視認性の低下を防いでいた。
【0008】
また、アウトラインフォトをラスタライズする際、ストロークの線幅が所定値以下であれば、そのストロークを除外して任意サイズの文字を描画するプリンタが開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、レーザプリンタではレーザ光の線が非常に細いため、アウトラインフォントによる輪郭描画および内部の塗りつぶしが主たる方式であり、小さいサイズの文字を描画する場合にストロークフォントの描画方法を工夫した技術はない。
【0010】
ここで、引用文献3,4では、小さなサイズの文字を描くために小サイズ用フォントデータを利用するか否かの判断は、文字のサイズのみに基づいて行われている。しかし、例えば線の太さが0.3mmの場合と、0.6mmの場合では、同じサイズの同じ文字を描いても、後者のほうがよりつぶれやすい。このため、ストロークフォントでは、文字のサイズだけでは、小サイズ用フォントデータを用いるか否かを判断することが困難である。
【0011】
すなわち、特許文献3、4に記載されているように、文字のサイズに応じて単に描画情報を切り替えるだけでは、ストロークフォントに対応できない。レーザプリンタでは、線が極めて細いこと、描画態様がストロークフォントの描画方法と異なるため、文字の太さに対する配慮が必要なく、レーザプリンタの技術をそのままストロークフォントの描画に適用することはできない。
【0012】
また、特許文献5に記載されたプリンタでは、ラスタライズ後のストロークが細い場合にそのストロークを省略するものであり、レーザ光により描画される文字が太い場合に、文字の視認性を向上させることについては開示されていない。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑み、文字のサイズとレーザ光で描く線の太さが可変の場合でも、適切にフォントデータを選択して、小さなサイズの文字を視認性よく描画する、情報処理装置、レーザ照射装置、描画情報生成方法、制御システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題に鑑み、本発明は、発色する媒体に伝達位置を変えながらエネルギーを断続的に伝達することで描画される、線画の描画情報を生成する情報処理装置であって、線画の太さとサイズに応じて、1つの線画の複数の形状情報を記憶した形状情報記憶手段と、線画の太さ情報を取得する太さ情報取得手段と、描画対象の線画のコード情報を取得するコード情報取得手段と、描画対象の線画のサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段と、太さ情報及び前記サイズ情報に基づき、文字毎に、複数の形状情報から1つを選択する形状情報選択手段と、形状情報選択手段により選択された形状情報を形状情報記憶手段から読み出し、形状情報から描画情報を生成する描画情報生成手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
文字のサイズとレーザ光で描く線の太さが可変の場合でも、適切にフォントデータを選択して、小さなサイズの文字を視認性よく描画する、情報処理装置、レーザ照射装置、描画情報生成方法、制御システム及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】レーザ照射装置のハードウェア構成図の一例である。
【図2】制御装置のハードウェア構成図の一例である。
【図3】フォントデータ、描画命令、描画例の一例を示す図である。
【図4】重複が排除された文字の、フォントデータ、描画命令、描画例の一例を示す図である。
【図5】レーザ照射装置の機能ブロック図の一例である。
【図6】レーザ照射装置がフォントデータを選択して文字を描画する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図7】図6のステップS40の処理を詳細に説明するためのフローチャート図の一例である。
【図8】下限値情報の決定を模式的に示す図の一例である。
【図9】小サイズ用フォントデータの一例を示す図である。
【図10】図6のステップS40を詳細に説明するフローチャート図の一例である。
【図11】2つの小サイズ用フォントデータを説明する図の一例である。
【図12】フォントデータの選択手順を示すフローチャート図の一例である。
【図13】レーザ照射システムのハードウェア構成図の一例である(実施例4)。
【図14】レーザ照射システムの機能ブロック図の一例である(実施例4)。
【図15】描画命令生成用PCのハードウェア構成図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本実施形態のレーザ照射装置の概略について説明する。
レーザ照射装置は、ストロークフォントのフォントデータが指示する座標にレーザ光を照射して文字を描画する。本実施例のレーザ照射装置は、以下のようにして、レーザ光が描く線の太さと文字のサイズに応じて、通常サイズのフォントデータ(以下、「標準フォントデータ」という)と小サイズ用のフォントデータ(以下、小サイズ用フォントデータという)を切り替える。
(1)1つの文字に対し、標準フォントデータと小サイズ用フォントデータを予め用意しておく。小サイズ用フォントデータは、描ききれない(潰れてしまう)ストロークにより文字の視認性を損なわない範囲で、ストロークが省略されている。また、文字毎に、後述する下限値情報をフォントデータに登録しておく。
(2)レーザ照射装置の線の太さと文字のサイズは、文字の描画前に既知となるので、レーザ照射装置は、この線の太さと文字のサイズから、文字毎に、小サイズ用フォントデータを使用するか否かを決定する。ストロークの省略はできるだけ行わないほうが、文字の持つ情報量を低減しなくて済むので、可能な限り標準フォントデータを用いる。線の太さと文字のサイズにより、小サイズ用フォントデータを使用せざるを得ない場合、レーザ照射装置は小サイズ用フォントデータに切り替える。
【0018】
文字のサイズだけではなく文字の太さも用いて、小サイズ用フォントデータを用いるか否かを判断することで、適切なフォントデータを選択できる。
【0019】
なお、以下では、文字を対象に説明するが、ストロークの組み合わせで表現できる線画であれば、レーザ照射装置により描画できる。また、文字には、数字や「!、$、%、&、?」等の記号が含まれ、絵文字や顔文字を含む。
【0020】
また、本実施例ではレーザで描画する場合を例に説明したが、熱風や冷風により描画してもよいし、電子線や放射線を用いてこれらに反応するメディアに描画してもよい。また、レーザは非接触で描画することができるが、プローブ(スタイラス)等を直接サーマルリライタブルメディア20に接触させて描画してもよい。
【0021】
〔レーザ照射装置のハードウェア構成図〕
図1は、本実施例のレーザ照射装置200のハードウェア構成図の一例を示す。レーザ照射装置200をレーザマーカと称する場合があるが、実体に相違はない。
【0022】
レーザ照射装置200は、全体を制御する制御装置100と、レーザを照射するレーザ照射部160とを有する。また、レーザ照射部160は、レーザを照射するレーザ発振器11と、レーザの照射方向を変える方向制御ミラー13と、方向制御ミラー13を駆動する方向制御モータ12と、スポット径調整レンズ14と、焦点距離調整レンズ15と、を有する。
【0023】
レーザ発振器11は、半導体レーザ(LD(Laser Diode))であるが、気体レーザ、固体レーザ、液体レーザ等でもよい。方向制御モータ12は、方向制御ミラー13の反射面の向きを2軸に制御する例えばサーボモータである。方向制御モータ12と方向制御ミラー13とによりガルバノミラーを構成する。スポット径調整レンズ14は、レーザ光のスポット径を大きくするレンズであり、焦点距離調整レンズ15はレーザ光を収束させて焦点距離を調整するレンズである。
【0024】
また、サーマルリライタブルメディア20は、例えばロイコ染料と顕色剤が分離した状態で膜を形成し、そこに所定温度Taの熱を加え急冷することでロイコ染料と顕色在が結合して発色し、所定温度Taよりも低い所定温度Tbを加えるとロイコ染料と顕色剤が分離した状態に戻ることで消色するメディア、例えば書き換え可能な感熱タイプの紙である。本実施形態では、このような書き換え可能なサーマルリライタブルメディア20の劣化抑制を可能とするが、サーマルペーパのように書き換えが可能でないメディアに対しても好適に適用できる。また、発色に熱を使う必要はなく、サーマルリライタブルメディアでないリライタブルメディアに文字を描画してもよい。
【0025】
レーザ発振器11で発生したレーザ光は、スポット径調整レンズ14を通過してスポット径が拡大される。そして、ガルバノミラーにより文字の形状に応じた方向に進行方向が調整された後、焦点距離調整レンズ15により所定の焦点距離に集光され、サーマルリライタブルメディア20に照射される。レーザ光が照射されるとサーマルリライタブルメディア20が熱を持ち、その熱で発色して文字などを描画できることになる。なお、消去パワーは抑制されている。
【0026】
照射位置の調整は、制御装置100が方向制御モータ12を駆動して方向制御ミラー13を動かすことで行う。レーザのON、OFFやパワーは制御装置100がレーザ発振器11を制御して行う。パワーの制御や焦点距離調整レンズ15の位置を制御することで、描画するストローク幅を変化させることもできる。
【0027】
図2は、制御装置100のハードウェア構成図の一例を示す。図2は、主にソフトウェアによって制御装置100を実装する場合のハードウェア構成図であり、コンピュータを実体としている。コンピュータを実体とせず制御措置100を実現する場合、ASIC((Application Specific Integrated Circuit))等の特定機能向けに生成されたICを利用する。
【0028】
制御装置100は、CPU31、メモリ32、ハードディスク35、入力装置36、CD−ROMドライブ33、ディスプレイ37及びネットワーク装置34を有する。ハードディスク35には、ストロークフォントの各文字のフォントデータを記憶するフォントデータDB41、フォントデータから標準フォントデータと小サイズ用フォントデータを切り替え描画命令を生成しレーザ照射部160を制御する文字描画プログラム42が記憶されている。
【0029】
フォントデータDB41には、1つの文字に対し、標準フォントデータ及び小サイズ用フォントデータが登録されている。なお、全ての文字について2種類のフォントデータを有している必要はなく、形状の複雑でない文字(例えば、「一」「ノ」等)では標準フォントデータのみを有している。また、標準フォントデータとは、ストロークが省略されていないフォントデータである。
【0030】
CPU31は、ハードディスク35から文字描画プログラム42を読み出し実行し、後述する手順で、サーマルリライタブルメディア20に文字を描画する。メモリ32は、DRAMなどの揮発性メモリで、CPU31が文字描画プログラム42を実行する際の作業エリアとなる。入力装置36は、マウスやキーボードなどレーザ照射部160を制御する指示をユーザが入力するための装置である。ディスプレイ37は、例えば文字描画プログラム42が指示する画面情報に基づき所定の解像度や色数で、GUI(Graphical User Interface)画面を表示するユーザインターフェイスとなる。例えば、サーマルリライタブルメディア20に描画する文字の入力欄が表示される。
【0031】
CD−ROMドライブ33は、CD-ROM38を脱着可能に構成され、CD−ROM38からデータを読み出し、また、記録可能な記録媒体にデータを書き込む際に利用される。文字描画プログラム42及びフォントデータDB41は、CD-ROM38に記憶された状態で配布され、CD-ROM38から読み出されハードディスク35にインストールされる。CD−ROM38は、この他、DVD、ブルーレイディスク、SDカード、メモリースティック(登録商標)、マルチメディアカード、xDカード等、不揮発性のメモリで代用することができる。
【0032】
ネットワーク装置34は、LANやインターネットなどのネットワークに接続するためのインターフェイス(例えばイーサネット(登録商標)カード)であり、OSI基本参照モデルの物理層、データリンク層に規定されたプロトコルに従う処理を実行して、レーザ照射部160に文字コードに応じた描画命令を送信することを可能とする。文字描画プログラム42及びフォントデータDB41は、ネットワークを介して接続した所定のサーバからダウンロードすることができる。なお、ネットワーク経由でなく、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、ワイヤレスUSB、Bluetooth等で直接、制御装置100とレーザ照射部160を接続してもよい。
【0033】
サーマルリライタブルメディア20に描画される描画対象の文字は、例えばリスト状にハードディスク35に記憶されているか、入力装置36から入力される。文字は、UNICODEやJISコードなどの文字コードで特定され、制御装置100は文字コードに対応する文字のフォントデータをフォントデータDB41から読み出し、それを描画命令に変換することでレーザ照射部160を制御する。
【0034】
〔ストロークフォントのフォントデータ〕
レーザ光によるストロークフォントを描画する際のフォントデータについて簡単に説明する。
【0035】
図3(a)はフォントデータの一例を示す。図3(a)のフォントデータは「1」という文字のフォントデータであり、ストローク(直線又は曲線のいずれでもよい)で定義される文字の例である。ストロークフォントのフォントデータは、文字の一画又は直線部に対応するストロークの座標を組み合わせたものである。フォントデータは、このストロークの端点の座標、及び、描画順を有する。この座標は、文字をビットマップに配置した場合のビットマップの所定画素を原点に指定されている。
【0036】
ストロークフォントをレーザなどで描画する場合、座標だけではレーザを照射しながら移動するのか、レーザを照射しないで移動するのかを判別できない。このため、ストロークフォントのフォントデータには、レーザの描画開始位置(人間が書くとすると筆をおろす位置)と移動命令、レーザの描画終了位置(人間が書くとすると筆を上げる位置)と移動命令が含まれている。図3(a)では、「m」がレーザの描画開始位置と次の座標までの移動命令を、「d」が描画終了位置と次の座標までの移動命令をそれぞれ示す。したがって、「m」は筆をおろして移動すること、「d」は筆を上げて移動すること、を意味する。このように、フォントデータは、座標による文字の形状、描画の順番、描画の方向(図では矢印を有するストローク)を規定し、「m」「d」によりレーザ照射の有無を規定する。
【0037】
したがって、図示するフォントデータの場合、座標(24,24)から座標(88、24)までストロークが描かれ、座標(88,24)から座標(56、24)まではストロークを描かずに移動し、座標(56、24)から座標(56、224)までストロークが描かれ、座標(56、224)から座標(24、176)までストロークが描かれる。
【0038】
ストロークフォントは、アウトラインフォントのようにスケーラブルフォントの一種なので、例えばサーマルリライタブルメディア20に描画する際の文字の大きさを指定できるようになっている。図3(b)では、フォントデータに基づき文字の大きさを2倍に拡大した。ストロークフォントの文字の大きさの調整方法はいくつか知られているが、ここでは説明のため単にフォントデータの座標をそれぞれ2倍にした。例えば文字の中心からの距離に応じてストロークの座標を調整してもよい。なお、小サイズ用フォントデータは省略した。
【0039】
ストロークの描画の順番は、図3(b)の「[ ]」内に示されている。この順番は、図3(a)のフォントデータにおける各ストロークの、例えばアドレス順に決定される。
【0040】
図3(c)は、描画命令の一例を示す。「m」と「d」は図3(a)と同じ制御コードであり、「t」は文字の太さ、「w」は描画にかかるまでの待ち時間(動いた方向制御ミラー13が完全停止するまでまって描画を安定させるための制御コード)を示す。なお、「w」はレーザ照射部160に適した固定値が予め与えられており、例えばミリ秒やマイクロ秒、又は、レーザ照射部160に特有のユニット時間を単位とする。
【0041】
図3(d)は、レーザ用フォントデータにより描画された文字の一例を示す。線分91〜93がレーザ光の中心が通過した軌跡に対応し、矢印の向きが描画の方向を示す。矢印を囲む領域は、レーザ光によって描かれた(発色した)部分であり、矢印を囲む領域の幅が文字の太さである。また、文字中に記された数字(0,1,2)は、各線分91〜93の描画の順番である。レーザのパワーや焦点距離調整レンズ15の焦点位置に応じてえられた太さの文字「1」が描画されている。
【0042】
〔重複を解消したストロークフォントのフォントデータ〕
図4は、重複が排除された文字の描画例とその描画命令の一例を示す。図3に示した「1」という文字は、座標(112,48)で2つのストロークが重複しており、座標(112,48)で折り返し(以下、両者を区別せずに単に「重複」「重複部」という)が生じている。重複部は、レーザ光が複数回走査する領域なので、サーマルリライタブルメディア20が過熱するおそれがある。そこで、図4に示すように、重複を排除したフォントデータで描画することが好適となる。重複を排除したフォントデータの生成方法は例えば特願2008−208631号公報に詳しい。または、フォントデータとして重複が除去されたものをあらかじめ用意しておいてもよい。
【0043】
図4の文字「1」は3つの線分から構成されていたが、線分91は交点(112、48)により線分91a、91bに分割され、線分93は折り返し点(112、448)により短縮され線分93aとなっている。したがって、重複が排除された結果、線分は4つになっている。
【0044】
図4(a)は図3(b)と同じものであり、図4(b)は、重複が排除されたフォントデータの座標である。図4(b)のフォントデータから描画命令が生成される。このように、線分の座標、描画順、が定まれば、図3で説明した「m」と「d」を座標に対応づけることで描画命令を生成することができる。
図4(c)は、描画命令の一例を、図4(d)は、描画例をそれぞれ示す。図4(c)において「m」、「d」、「t」、「w」は図3(c)と同じ制御コードである。図4(c)によれば、最初に座標(48,48)まで描画せずに移動し、その後、所定時間「w 50」待つので、「m 48 48」「w 50」となる。
【0045】
次に、座標(48,48)から(80,48)まで筆をおいて描画し、その後、描画せずに座標(112,48)に移動し、その後、所定時間「w 50」待つので、「d 80 48」「m 112 48」 「w 50」となる。
【0046】
次に、座標(112,48)から座標(112,448)まで筆をおいて描画し、その後、描画せずに座標(80,400)に移動するので、「d 112 448」「m 80 400」「w 50」となる。
【0047】
次に、座標(80,400)から座標(48,352)まで筆をおいて描画し、その後、描画せずに座標(144,48)に移動するので、「d 48 352」「m 144 48」「w 50」となる。
【0048】
次に、座標(144,48)から座標(176,48)まで筆をおいて描画し、終了なので、「d 176 48」となる。
【0049】
このような描画命令により、図4(d)のように重複のない文字を最短時間で描画することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、重複を解消するまえの文字を対象に説明する。しかし、小サイズ用フォントデータから重複を解消したフォントデータを生成することができるので、フォントデータの切り替えは、重複を排除するか否かに関係なく適用できる。
【0051】
〔フォントデータの切り替え〕
以下、フォントデータの切り替えについて詳細に説明する。
図5は、レーザ照射装置200の機能ブロック図の一例を示す。制御装置100は、描画象文字取得手段201、文字サイズ取得手段202、線幅取得手段203、使用フォント判定手段204、及び、描画データ生成手段205を有する。各ブロックをソフトウェアで実現する場合、各ブロックはCPU31が文字描画プログラム42を実行することで実現される。また、制御装置は、フォントデータDB41にフォントデータを記憶している。
【0052】
以下、各機能を図6のフローチャート図に基づき説明する。図6は、レーザ照射装置200がフォントデータを選択して文字を描画する手順を示すフローチャート図の一例である。なお、図6のフローチャート図は、例えば、ユーザが入力装置36から文字の描画を指示するとスタートする。
【0053】
<S10:文字の太さの取得>
まず、線幅取得手段203は、描画する文字(ストローク)の太さを取得する。文字の太さは、レーザ照射部160がサーマルリライタブルメディア20に照射するレーザ光の径に依存する。レーザ光の径は、レーザ光源から照射される過程におけるレンズの構成、サーマルリライタブルメディア20までの距離、レーザのパワーにより可変である。本実施例では、線の太さとレーザ光の径を定めるパラメータの対応関係が予め校正されている。したがって、ユーザは、予め定められた範囲で文字の太さ(例えば、0.1mm〜1mm等)を入力装置36から入力することができる。
【0054】
<S20:描画対象の文字の文字コードの取得>
次に、描画対象文字取得手段201は、描画対象の文字の文字コードを取得する。描画する文字はユーザが指定する。描画対象の文字の文字コードは、入力装置36から入力される場合と、予めハードディスク35に記憶されている場合(ネットワーク経由で入力される場合を含む)とがある。入力装置36から入力される場合はキーボードのキーを押下することで入力されるキーコードに対応した文字コード、又は、IME(Input Method Editor)が起動している場合にキーコードからIMEが変換した文字コードが、描画対象の文字コードとなる。また、ハードディスク35に予め記憶されている場合、例えば宛先などの文字列がリスト状に記憶されているので、描画対象文字取得手段201は、ハードディスク35から文字列の各文字の文字コードを順番に読み出す。
【0055】
<S30:文字のサイズの取得>
次に、文字サイズ取得手段202は、各文字毎に又は全文字に共通に、描画する文字のサイズを取得する。文字のサイズは、ユーザが入力装置36から入力する。サイズの指定は、例えばミリメートルやポイントなどで指定できる。数値を指定してもよいし、ユーザが複数のサイズから選択できるようになっていてもよい。以上で、制御装置100は、文字の太さ、文字コード、及び、文字のサイズを取得できた。制御装置100は、取得した文字の太さ、文字コード、及び、文字のサイズを例えばメモリ32に記憶しておく。なお、文字の太さ、文字コード、及び、文字のサイズの取得順は、順不同である。
【0056】
<S40:使用するフォントデータの判定>
次に、使用フォント判定手段204は、取得した文字のサイズ及び文字の太さに基づき、文字毎に、使用すべきフォントデータを判定する。
図7は、ステップS40の処理をさらに詳細に説明するためのフローチャート図の一例である。
【0057】
フォントデータDB41には、予め文字毎に、ある文字の太さに対し、標準フォントデータで描ける文字のサイズの下限値が定義されている。例えば、「目」という文字に関して、文字の太さ「0.3mm」の場合、文字のサイズが「1.5mm」角以上なら標準フォントデータを使う、というような情報(以下、両者を「下限値情報」という)が、フォントデータDB41に登録されている。下限値情報は、1つの文字に1つのみが対応づけられていてもよいし、2つ以上が対応づけられていてもよい。
【0058】
単純な形状の文字は、より小さなサイズまで標準フォントデータで描画できる。一方、複雑な形状の文字(鷹、轟など)は、より大きなサイズでないとストローク同士の間隔を維持できず、判読できなくなる。したがって、下限値情報の文字の太さが各文字に共通であるとすると、単純な形状の文字が有する下限値情報の文字のサイズは小さく、複雑な形状の文字が有する下限値情報の文字のサイズは、より大きくなる。なお、文字の太さは文字毎に共通であることが多いので、下限値情報の文字の太さは各文字に共通であることが多い。
【0059】
下限値情報は、ある文字の太さで、文字のサイズを変えながらレーザ光により文字を描画することで、実験的に明らかとなる。
図8は、下限値情報の決定を模式的に示す図の一例である。文字の太さが0.4mmの場合と、0.3mmの場合、それぞれについて、「目」という文字のサイズを変えた描画例が示されている。図では、2.0mm角、1.6mm角、1.5mm角、1.4mm角、の4つの文字のサイズについて示した。
【0060】
文字の太さが0.3mmの場合、文字が1.5mm角までなら「目」として認識が可能であるが、1.4mm以下では、ストローク同士の間隔を維持できず、文字が潰れてしまうことがわかる。したがって、「目」の下限値情報は、「文字の太さ0.3mmにおいて、文字のサイズ1.5mm」となる。
【0061】
一方、文字の太さ0.4mmの場合、2.0mm角までなら「目」として認識が可能であるが、1.6mm以下では、ストローク同士の間隔を維持できず、文字が潰れてしまうことがわかる。したがって、「目」の下限値情報は、「文字の太さ0.4mmにおいて、文字のサイズ2.0mm」となる。
【0062】
なお、ストロークとストロークの間の間隔(隙間)は、ある程度の大きさがないと肉眼では認知できないので、さらに余裕をもって下限値情報を決定してもよい。例えば、線幅0.3mmの場合、1.6〜2.0mm程度を最小の文字のサイズと決定してもよい。このように、下限値をどの程度に決定するかは、文字毎に、実験的に定めることができる。
【0063】
なお、文字の大きさと文字の画数(ストロークの数)から、下限値情報を算出することで決定してもよい。文字が、横方向又は縦方向の直線だけから構成されていると仮定すると、ストローク間の間隔を維持して描画できるストロークの数は、次のようにして推定できる。
【0064】
ストローク間の間隔を維持して描画できるストロークの数=文字のサイズ÷太さ−1 (少数以下は切り捨て)
例えば、文字のサイズが2.0mm、太さが0.3mmの場合、ストロークの数は5本であり、文字のサイズが2.0mm、太さが0.4mmの場合、ストロークの数は4本である。
【0065】
したがって、上式を変形すれば、文字の太さと文字のサイズとの関係(下限値情報)を推定できる。
文字のサイズ = 文字の太さ×(ストロークの数+1)
例えば、文字の太さが0.3mm、ストロークの数が5本(目の画数)の場合、文字のサイズは1.8mmとなる。また、文字の太さが0.4mm、ストロークの数が5本(目の画数)の場合、文字のサイズは2.4mmとなる。この式で算出される文字のサイズは、全てのストロークが横線又は縦線であると仮定しているので、この文字のサイズであればほぼ全ての文字を、文字潰れなく描画することができる。また、この式で算出される文字のサイズは大きめになる傾向があるので、補正定数で小さくなるように補正してもよい。
図7のフローチャート図に戻り、使用フォント判定手段204は、下限値情報から文字のサイズと文字の太さの比率値Rtを算出する(S401)。
比率値Rt= 文字のサイズ/文字の太さ
下限値情報の定義が「文字の太さ0.3mmの場合、文字のサイズ1.5mm角まで」の場合、「比率値Rt=1.5/0.3=5.0」 である。
【0066】
次に、使用フォント判定手段204は、描画対象の文字のサイズと太さから比率値Rを算出する(S402)。
比率値R= 文字のサイズ/文字の太さ
「目」という文字について、文字の太さが0.4mmの場合に、文字のサイズが2.0mm、及び、1.6mmの2つのサイズで描画する場合を考える。この場合の比率値Rはそれぞれ次のようになる。
R=2.0/0.4=0.5
R=1.6/0.4=0.4
RやRtの比率値は、文字の太さが太い場合は文字のサイズも比例して大きいとの仮定に基づき導入されている。したがって、比率値Rが比率値Rt以下の場合、文字潰れなく文字を描画できると考えられる。このように、RtとRの大小を比較することで、ステップS10で入力された文字の太さで、ステップS30で入力されたサイズの文字を文字潰れなく描画できるか否かを判定できる。以上から、使用フォント判定手段204は、次のようにして標準フォントデータを使用するか否かを判定する(S403)。
【0067】
<S50〜S70:標準フォントデータを使用可能か判定>
図6のステップS50に戻り、使用フォント判定手段204は、RtとRの大小関係に従い、標準フォントデータと小サイズ用フォントデータのいずれを使用するかを判定する。
・Rt≦R の場合、標準フォントデータを使用する
・Rt>R の場合、小サイズ用フォントデータを使用する
したがって、R=0.5の場合、Rt≦Rなので、使用フォント判定手段204は、標準フォントデータを使用すると判定する。R=0.4の場合、Rt>Rなので、使用フォント判定手段204は、小サイズ用フォントデータを使用すると判定する。
【0068】
Rt≦R の場合、使用フォント判定手段204は、描画データ生成手段205に、標準フォントデータを使用するよう要求する。描画データ生成手段205は、フォントデータDB41から、例えば「目」という文字の標準フォントデータを読み出す(S60)。
【0069】
また、Rt>R の場合、使用フォント判定手段204は、描画データ生成手段205に、小サイズ用フォントデータを使用するよう要求する。描画データ生成手段205は、フォントデータDB41から、例えば「目」という文字の小サイズ用フォントデータを読み出す(S70)。
【0070】
図9は、小サイズ用フォントデータの一例を示す図である。図9では文字の太さを0.4mmとした。小サイズ用フォントデータは、線を適宜間引いた、簡略化されたフォントデータである。小サイズ用フォントデータは、予めフォントデータDB41に登録されている。
【0071】
図9(a)は、「目」の標準フォントデータである。図9(b)は、横のストロークを1本間引いた「目」という文字の小サイズ用フォントデータである。図9(b)では「日」という文字と読めるが、小さな文字であれば前後の文脈も含めて、「目」と判読できる。図9(c)は、図9(b)と同じサイズで、標準フォントデータを用いて「目」という文字を描画した際の描画例である。図9(b)と図9(c)を比較すると明らかなように、標準フォントデータでは文字のサイズが小さい場合に、文字潰れが生じるが、小サイズ用フォントデータを用いることで文字潰れを回避できることが分かる。
【0072】
<S80:描画データ生成>
使用するフォントデータが決定されれば、描画データ生成手段205は、図3(c)又は図4(c)に示した描画命令を生成することができる。
【0073】
<S90>
描画対象文字取得手段201は、描画対象の全文字について処理が終了したか否かを判定する。入力装置36から描画対象の文字が入力される場合、例えばリターンキーの文字コードが検出されると、描画対象文字取得手段201は描画対象の全文字について処理が終了したと判定する。なお、文字の太さが装置で固定の場合は、繰り返し処理は、ステップS20から行えばよい。この場合、文字の太さの取得にかかる時間が節約できる。
【0074】
<S100>
レーザ照射部160は、描画命令に従いサーマルリライタブルメディア20に文字を描画する。以上で、図6のフローチャート図は終了する。
【0075】
本実施例のレーザ照射装置200によれば、文字の太さと文字のサイズから文字毎にフォントデータを切り替えるので、レーザ照射装置200のような太い線を用いて、大きなサイズの文字も、小さなサイズの文字も視認性よく描画することができる。また、文字の重複を排除しておけば、サーマルリライタブルメディア20の過熱を防止することもできる。
【実施例2】
【0076】
文字の形状はほぼ正方形であることが多いが、横方向に小さくしたり、縦方向に小さくする場合もある。例えば、文字を横書きする場合、縦方向の長さに制約があるため、縦方向にだけ文字を小さくすることがあり、文字を縦書きする場合、横方向の長さに制約があるため、横方向にだけ文字を小さくすることがある。この逆に、文字を横書きする場合、横方向のスペースに制約があるため、横方向にだけ文字を小さくすることがあり、文字を縦書きする場合、縦方向のスペースに制約があるため、縦方向にだけ文字を小さくすることがある。
【0077】
一方、「目」のような文字を描く場合、縦方向にサイズが小さくなると、横線が4本あるため線同士が重なりやすくなるが、横方向にサイズが小さくなる場合は、縦線が2本しかないので、縦方向のサイズ変更ほどには影響がない。
【0078】
そこで、本実施例では、縦・横で別々に下限値情報を設定しておき、縦・横それぞれの方向で標準フォントデータを使用するか否かを判定するレーザ照射装置200について説明する。本実施例のレーザ照射装置200によれば、文字が縦・横独立に変倍された場合にも、標準フォントデータと小サイズ用フォントデータを的確に使い分けることができる。
【0079】
本実施例の下限値情報について説明する。本実施例では、フォントデータDB41に、文字毎に、予め、縦方向と横方向の下限値情報を定義しておく。この下限値情報は、実施例1と同様に、ある文字の太さで、縦方向と横方向の文字のサイズを変えながらレーザ光により文字を描画することで、実験的に明らかとなる。
【0080】
例えば、ある文字の場合は、文字の太さ0.3mmの場合に、文字の高さの下限が3.0mm、文字の幅の下限が2.0mmと定義されているものとする。このように、本実施例の下限値情報では、1つの文字の太さに、縦・横それぞれの下限の文字のサイズが対応づけてられている。そして、本実施例では、縦・横のいずれもが文字潰れなく描画できる場合に、標準フォントデータを使用する。
【0081】
なお、本実施例の機能ブロック図とフローチャート図は実施例1と同じである。本実施例では、使用するフォントを判定するステップS40のみが異なるので、ステップS40について説明する。
【0082】
図10は、図6のステップS40を詳細に説明するフローチャート図の一例である。
まず、使用フォント判定手段204は、下限値情報の縦方向の文字のサイズと文字の太さから、比率値Rt_vを算出する(S411)。
比率値Rt_v=下限値情報の縦方向の文字のサイズ/文字の太さ
次に、使用フォント判定手段204は、描画対象の文字の縦方向サイズから比率値R_vを算出する(S412)。縦方向のサイズは、ユーザが入力装置36から入力するものとし、文字サイズ取得手段202が入力装置36から文字の縦方向のサイズを取得する。
【0083】
比率値R_v=描画対象の文字の縦方向サイズ/文字の太さ
次に、使用フォント判定手段204は、下限値情報の横方向の文字のサイズと文字の太さから、比率値Rt_hを算出する(S413)。
比率値Rt_h=下限値情報の横方向の文字のサイズ/文字の太さ
次に、使用フォント判定手段204は、描画対象の文字の横方向サイズから比率値R_hを算出する(S414)。横方向のサイズは、ユーザが入力装置36から入力するものとし、文字サイズ取得手段202が入力装置36から文字の横方向のサイズを取得する。
【0084】
比率値R_v=描画対象の文字の横方向サイズ/文字の太さ
そして、使用フォント判定手段204は、Rt _v ≦ R_v かつ Rt _h ≦ R_hか否かを判定する(S415)。ステップS415が成立すれば、縦方向と横方向のいずれに対しても、標準フォントデータが使用可能であることになる。
【0085】
<S50〜S70:標準フォントデータを使用可能か判定>
使用フォント判定手段204は、
・Rt_v≦R_v かつ Rh_t≦R_h の場合、標準フォントデータを使用する
・Rt_v>R_v 又は Rh_t>R_h 場合、小サイズ用フォントデータを使用する
と判定する。
【0086】
Rt_v≦R_v かつ Rh_t≦R_h の場合、使用フォント判定手段204は、描画データ生成手段205に、標準フォントデータを使用するよう要求する。描画データ生成手段205は、フォントデータDB41から、例えば「目」という文字の標準フォントデータを読み出す(S60)。
【0087】
また、Rt_v>R_v 又は Rh_t>R_h 場合、使用フォント判定手段204は、描画データ生成手段205に、小サイズ用フォントデータを使用するよう要求する。描画データ生成手段205は、フォントデータDB41から、例えば「目」という文字の小サイズ用フォントデータを読み出す(S70)。以降の処理は実施例1と同じである。
【0088】
本実施例のレーザ照射装置200は、縦方向と横方向それぞれの方向で文字潰れがあるか否かを判定するので、文字のサイズが縦方向と横方向で異なっていても、使用するフォントデータを適切に切り替えることができる。
【0089】
ところで、小サイズ用フォントデータは1種類であることを前提に説明したが、縦方向のサイズが横方向よりも小さい場合、及び、横方向のサイズが縦方向よりも小さい場合、のそれぞれ対応した小サイズ用フォントデータを記憶しておいてもよい。こうすることで、Rt _v ≦ R_v と Rt _h ≦ R_hそれぞれの判定結果に応じて、小サイズ用フォントデータを使い分けることができる。
【0090】
図11は、2つの小サイズ用フォントデータを説明する図の一例である。「田」という文字を例に示している。図11(a)は標準フォントデータを、図11(b)は横方向のサイズが下限値情報(例えばRt、Rt _v)を満たしていない場合の小サイズ用フォントデータを、図11(c)は縦方向のサイズが下限値情報(例えばRt、Rt _h)を満たしていない場合の小サイズ用フォントデータを、図11(d)は縦と横のサイズがいずれも下限値情報(例えばRt、Rt _v、Rt _h)を満たしていない場合の小サイズ用フォントデータを、それぞれ示す。
【0091】
図11(b)では「田」の縦方向のストロークが省略されている。図11(c)では「田」の横方向のストロークが省略されている。図11(c)では「田」の縦方向と横方向のストロークが省略されている。
【0092】
このようなフォントデータが用意されている場合、使用フォント判定手段204は、ステップS415の判定結果に応じて、次のように使用するフォントデータを決定することができる。
・Rt _v ≦ R_v かつ Rt _h ≦ R_hの場合(縦・横のいずれも文字が潰れない場合)、
使用フォント判定手段204は、図11(a)の標準フォントデータを使用すると判定する。
・Rt _v ≦ R_v かつ Rt _h > R_hの場合(横方向に縮小され、文字が潰れるおそれがある場合)、
使用フォント判定手段204は、図11(b)の小サイズ用フォントデータを使用すると判定する。
・Rt _v > R_v かつ Rt _h ≦ R_hの場合(縦方向に縮小され、文字が潰れるおそれがある場合)、
使用フォント判定手段204は、図11(c)の小サイズ用フォントデータを使用すると判定する。
・Rt _v > R_v かつ Rt _h > R_hの場合(縦・横のいずれも文字が潰れる場合)、
使用フォント判定手段204は、図11(d)の小サイズ用フォントデータを使用すると判定する。
【0093】
したがって、縦方向のサイズが小さい場合の小サイズ用フォントデータ、横方向のサイズが小さい場合の小サイズ用フォントデータ、縦と横のサイズがいずれも小さい場合の小サイズ用フォントデータを、それぞれ用意しておくことで、文字のサイズが縦方向と横方向で異なっていても、使用するフォントデータを適切に切り替えることができる。
【実施例3】
【0094】
形状の複雑な文字によっては、文字のサイズに応じて、適宜、ストロークを省略することで、文字のサイズに応じて判別性と視認性のよい文字を描画できる。したがって、文字によっては、複数の小サイズ用フォントデータを予め用意しておくことが好ましい。すなわち、小サイズ用フォントデータを何段階か分けて用意しておき、それぞれに、下限値情報を対応づけておく。使用フォント判定手段204は、下限値情報からRtを算出し、描画対象の文字のサイズと文字の太さから、使用可能な最大の小サイズ用フォントデータを決定する。
【0095】
なお、本実施例の機能ブロック図とフローチャート図は実施例1と同一である。本実施例では、使用するフォントを判定するステップS40のみが異なるので、ステップS40について説明する。
【0096】
図12は、フォントデータの選択手順を示すフローチャート図の一例である。図12において図6と同一ステップには同一の符号を付しその説明は省略する。
【0097】
線幅取得手段203は文字の太さを、描画対象文字取得手段201は描画対象の文字の文字コードを、文字サイズ取得手段202は文字のサイズを、それぞれ取得する(S10〜S30)。
【0098】
そして、使用フォント判定手段204は、使用するフォントデータを決定する(S40)。使用フォント判定手段204は、描画対象の文字のフォントデータを1つ選択する。使用フォント判定手段204は、大きいサイズのフォントデータから、1段階づつ小さいサイズ用のフォントデータを選択する。したがって、一番最初は、標準フォントデータを選択する。
【0099】
使用フォント判定手段204は、フォントデータが有する下限値情報から比率値Rtを算出し、描画対象の文字について取得された文字の太さと文字のサイズから、比率値Rを実施例1と同様に算出する。
【0100】
そして、使用フォント判定手段204は、比率値Rと比率値Rtを比較し、この選択しているフォントデータで描画が可能か否かを判定する(S51)。選択しているフォントデータで描画可能の場合(S51のYes)、使用フォント判定手段204は、描画データ生成手段205に、現在、選択しているフォントデータを使用するよう要求する(S61)。
【0101】
選択しているフォントデータで描画可能でない場合(S51のNo)、使用フォント判定手段204は、描画対象の文字に、より小さいサイズ用のフォントデータが登録されているか否かを判定する(S52)。
【0102】
より小さいサイズ用のフォントデータが登録されている場合(S52のYes)、使用フォント判定手段204は、そのフォントデータをフォントデータDB41から読み出す(S53)。そして、ステップS40以下の処理を繰り返す。
【0103】
より小さいサイズ用のフォントデータが登録されていない場合(S52のNo)、使用フォント判定手段204は、現在、選択しているフォントデータを使用するよう要求する(S61)。この場合(より小さいサイズ用のフォントデータを用意しきれない場合)、文字のストロークが重ならないで描画可能なフォントデータが存在しないことになるが、何も描画しないよりはよいので、現在、選択しているフォントデータから描画命令を作成する。
【0104】
本実施例によれば、段階的に複数の小サイズ用フォントデータを用意しておくことにより、文字のサイズに応じた最適なフォントデータで描画することが可能になる。例えば、最小のサイズ用フォントデータのみを用意した場合には、比較的文字が大きいにもかかわらず、極めて簡略された(極小サイズ用の)フォントデータで描画せざるを得ないので、視認性が低下してしまうが、本実施例ではそのような不都合を回避できる。
【実施例4】
【0105】
実施例1では、レーザ照射装置200が単体で文字を描画したが、レーザ照射装置200をシステムとして実装してもよい。
図13は、本実施例のレーザ照射システム300のハードウェア構成図の一例を示す。図13において図1と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。基幹システム330と描画命令生成用PC320はネットワーク又は専用線で接続されており、描画命令生成用PC320と制御装置100はネットワーク又は専用線で接続されている。
【0106】
図1の制御装置100が、図13の制御装置100及び描画命令生成用PC320に対応している。基幹システム330は、例えば、コンテナで搬送する商品を管理するシステムで、各サーマルリライタブルメディア20に印刷する文字を、描画命令生成用PC320に指示する。指示には、商品名、日時情報、等、商品を管理するための描画対象データが含まれる。描画命令生成用PC320は、描画対象データを受信し、描画命令を生成する。描画命令の生成方法は実施例1〜3のいずれの方法を採用してもよい。描画命令生成用PC320は、生成した描画命令を制御装置100に送信する。
【0107】
図14は、本実施例のレーザ照射システム300の機能ブロック図の一例を示す。図14において図5と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。図14では、描画命令生成用PC320が、図5の各機能を提供する。すなわち、フォントデータの選択を描画命令生成用PC320が行い、描画命令の生成を描画命令生成用PC320が行う。
【0108】
基幹システム330と描画命令生成用PC320は、システムとのインターフェイス206を介して接続されている。システムとのインターフェイス206は、図15の例えばネットワーク装置1である。
【0109】
描画命令生成用PC320は描画命令をレーザマーカ310の制御装置100に送出する。制御装置100は、描画命令を解釈し、方向制御ミラー13を駆動したり、レーザ光のON/OFFを切り替えてサーマルリライタブルメディア20に描画する。
【0110】
図15は、描画命令生成用PC320のハードウェア構成図の一例を示す。図15において図2と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。描画対象の元になるデータ(例えば描画したい文字の文字コード、文字の太さや大きさ、書体などの文字属性)は、基幹システム330からネットワーク装置1を介してハードディスク35などに記憶されている。また、文字を描く際に必要なフォントデータは、予めCD-ROM38から読み出され、ハードディスク35に格納されている。
【0111】
CPU31は、記録媒体38から上述した処理機能、手順を実現する文字描画プログラム42を必要なデータとともに読み出し、処理の結果を、ネットワーク装置2を介してレーザマーカ310に送信する。必要に応じて処理結果をハードディスク35に保存したり、ディスプレイ37に出力したりすることもできる。
【0112】
本実施例によれば、描画命令生成用PC320とレーザマーカ310を別体にしたので、1つのレーザマーカ310に複数の描画命令生成用PC320を接続したり、描画命令生成用PC320だけを移動したり交換するなど、システムの柔軟性を向上できる。
【符号の説明】
【0113】
11 レーザ発振器
12 方向制御モータ
13 方向制御ミラー
14 スポット径調整レンズ
15 焦点距離調整レンズ
20 サーマルリライタブルメディア
38 CD−ROM(記憶媒体)
41 フォントデータDB
42 文字描画プログラム
100 制御装置
160 レーザ照射部
201 描画対象文字取得手段
202 文字サイズ取得手段
203 線幅取得手段
204 使用フォント判定手段
205 描画データ生成手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0114】
【特許文献1】特開2004−90026号公報
【特許文献2】特開2004−341373号公報
【特許文献3】特開2007−152580号公報
【特許文献4】特開2008−219793号公報
【特許文献5】特許3146771号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発色する媒体に伝達位置を変えながらエネルギーを断続的に伝達することで描画される、線画の描画情報を生成する情報処理装置であって、
線画の太さとサイズに応じて、1つの線画の複数の形状情報を記憶した形状情報記憶手段と、
線画の太さ情報を取得する太さ情報取得手段と、
描画対象の線画のコード情報を取得するコード情報取得手段と、
描画対象の線画のサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段と、
前記太さ情報及び前記サイズ情報に基づき、文字毎に、複数の形状情報から1つを選択する形状情報選択手段と、
前記形状情報選択手段により選択された形状情報を前記形状情報記憶手段から読み出して、前記形状情報から描画情報を生成する描画情報生成手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記形状情報記憶手段は、線画の太さと該太さで描画可能な下限のサイズを組にした下限値情報を記憶しており、
前記形状情報選択手段は、前記下限値情報が有する下限のサイズと線画の太さの第1の比と、前記サイズ情報と前記太さ情報の第2の比を、比較して、描画できると判定できた形状情報を選択する、
ことを特徴とする請求項1の情報処理装置。
【請求項3】
前記形状情報記憶手段は、1つの線画に3以上の形状情報、及び、各形状情報毎に前記下限値情報を記憶しており、
前記形状情報選択手段は、前記下限のサイズが大きいものから順に前記第1の比を算出して、前記第2の比と比較し、
比較の結果、描画できないと判定した場合、前記下限のサイズが次に大きい下限値情報から前記第1の比を算出して、前記第2の比と比較することを繰り返す、
ことを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記下限値情報は、1つの線画の太さに対し、該太さで描画可能な下限の横サイズ及び下限の縦サイズを独立に記憶している、
ことを特徴とする請求項2又は3記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記形状情報選択手段は、
前記下限の横サイズと線画の太さの第3の比と、前記第2の比を比較すると共に、
前記下限の縦サイズと線画の太さの第4の比と、前記第2の比を比較して、
2つの比較結果の両方で描画できると判定できた形状情報を選択する、
ことを特徴とする請求項4記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記形状情報記憶手段は、1つの線画に対し、線画の横サイズ縮小用の形状情報、及び、線画の縦サイズ縮小用の形状情報を記憶しており、
前記形状情報選択手段は、
前記下限の横サイズと線画の太さの第3の比と、前記第2の比を比較すると共に、
前記下限の縦サイズと線画の太さの第4の比と、前記第2の比をそれぞれ比較し、
前記第3の比と前記第2の比の比較結果から描画できると判定し、前記第4の比と前記第2の比の比較結果から描画できないと判定した場合、横サイズ縮小用の形状情報を選択し、
前記第3の比と前記第2の比の比較結果から描画できないと判定し、前記第4の比と前記第2の比の比較結果から描画できると判定した場合、縦サイズ縮小用の形状情報を選択する、
ことを特徴とする請求項4記載の情報処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載の情報処理装置と、
レーザを照射するレーザ発振器と、
レーザの照射方向を変える方向制御ミラーと、
方向制御ミラーを駆動する方向制御モータと、
スポット径調整レンズと、
焦点距離調整レンズと、
を有することを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項8】
伝達位置を変えながらエネルギーを断続的に伝達して媒体を発色させる装置と、描画対象の線画の描画情報を生成する情報処理装置と、を有する制御システムであって、
前記情報処理装置は、
線画の太さとサイズに応じて、1つの線画の複数の形状情報を記憶した形状情報記憶手段と、
線画の太さ情報を取得する太さ情報取得手段と、
描画対象の線画のコード情報を取得するコード情報取得手段と、
描画対象の線画のサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段と、
前記太さ情報及び前記サイズ情報に基づき、文字毎に、複数の形状情報から1つを選択する形状情報選択手段と、
前記形状情報選択手段により選択された形状情報を前記形状情報記憶手段から読み出して、前記形状情報から描画情報を生成する描画情報生成手段と、を有し、
前記装置は、描画情報に基づき伝達位置を変えながらエネルギーを断続的に伝達して媒体を発色させる、
ることを特徴とする制御システム。
【請求項9】
発色する媒体に伝達位置を変えながらエネルギーを断続的に伝達することで描画される、線画の描画情報を生成する描画情報生成方法であって、
太さ情報取得手段が、線画の太さ情報を取得するステップと、
コード情報取得手段が、描画対象の線画のコード情報を取得するステップと、
サイズ情報取得手段が、描画対象の線画のサイズ情報を取得するステップと、
形状情報選択手段が、前記太さ情報及び前記サイズ情報に基づき、文字毎に、複数の形状情報から1つを選択するステップと、
線画の太さとサイズに応じて、1つの線画の複数の形状情報を記憶した形状情報記憶手段から、描画情報生成手段が、前記形状情報選択手段により選択された形状情報を前記形状情報記憶手段から読み出し、前記形状情報から描画情報を生成するステップと、
を有することを特徴とする描画情報生成方法。
【請求項10】
発色する媒体に伝達位置を変えながらエネルギーを断続的に伝達することで描画される、線画の描画情報を生成するプログラムであって、
コンピュータを、
線画の太さ情報を取得する太さ情報取得手段と、
描画対象の線画のコード情報を取得するコード情報取得手段と、
描画対象の線画のサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段と、
前記太さ情報及び前記サイズ情報に基づき、文字毎に、複数の形状情報から1つを選択する形状情報選択手段と、
線画の太さとサイズに応じて、1つの線画の複数の形状情報を記憶した形状情報記憶手段から、前記形状情報選択手段により選択された形状情報を読み出し、前記形状情報から描画情報を生成する描画情報生成手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−264692(P2010−264692A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118908(P2009−118908)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】