説明

情報処理装置、入力情報決定方法、入力情報決定プログラム、および入力情報決定プログラムを記録した記録媒体

【課題】利用者の入力操作に対して情報処理装置の応答を向上させ、操作時の無駄な待ち時間が軽減された快適な入力操作を実現する。
【解決手段】入力装置の傾きを計測する加速度センサと、入力装置が静止したことを検知する静止検知センサとを有する入力装置から送信された情報に基づいて、入力情報を決定する情報処理装置2であって、前記入力装置から送信された静止検知センサ情報を用いて、利用者が入力装置を静止した時を検出する状態判別手段261と、前記状態判別手段261が静止した時を検出した場合、前記入力装置から送信された加速度センサ情報を用いて、前記加速度センサの収束値を推定する推定手段262とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置が備えるセンサのセンサ情報を用いて入力情報を決定する情報処理装置、入力情報決定方法、入力情報決定プログラム、および入力情報決定プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサは、入力装置のデザインに影響が少なく、安価に入手でき、重力方向に対する傾きを正確に検出するセンサとして有効なセンサである。加速度センサを用いて入力装置の傾きを検出し、その傾きを入力とする多くの入力操作が提案されている。
【0003】
加速度センサを用いた入力操作については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−270412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
入力装置の正確な傾きを検出するためには、加速度センサ自体が静止している(すなわち、加速度センサのセンサ値が、傾きに対応した収束値になる)ことが必要である。特許文献1の加速度センサを用いた生体の姿勢を演算する演算部では、「比較的緩やかに変化する重力加速度」を用いて姿勢を検出すると記載され、この比較的緩やかに変化する部分は加速度センサの傾きに対応した収束値付近に相当する。
【0006】
しかし、入力装置を比較的激しく変化させた場合(例えば、入力装置を振る動作など)、利用者が入力装置を静止してから、加速度センサ自体が静止するまでに遅れが生じる問題がある。そのため、利用者の操作に対して受信機である情報処理装置の応答性が速いことが求められるアプリケーションに対して、特許文献1の技術を利用するのは適していないという現状がある。
【0007】
しかし、利用者が入力装置を静止してから、加速度センサ自体が静止するまでに遅れが生じる問題がある。そのため、利用者の操作に対して受信機である情報処理装置の応答性が速いことが求められるアプリケーションに、特許文献1の技術を利用するのは適していないという現状がある。
【0008】
また、利用者の個々の操作特性を用いて加速度センサの収束値を推定する方法も考えられるが、人の操作時のあらゆる行動を示す複数の操作ログを収集するまで効果が得られないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、利用者の操作ログを収集することなく、利用者の入力操作に対して情報処理装置の応答を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、入力装置の傾きを計測する加速度センサと、入力装置が静止したことを検知する静止検知センサとを有する入力装置から送信された情報に基づいて、入力情報を決定する情報処理装置であって、前記入力装置から送信された静止検知センサ情報を用いて、利用者が入力装置を静止した時を検出する状態判別手段と、前記状態判別手段が静止した時を検出した場合、前記入力装置から送信された加速度センサ情報を用いて、前記加速度センサの収束値を推定する推定手段とを備えることを要旨とする。
【0011】
また、本発明は、入力装置の傾きを計測する加速度センサと、入力装置が静止したことを検知する静止検知センサとを有する入力装置から送信された情報に基づいて、入力情報を決定する入力情報決定方法であって、情報処理装置は、前記入力装置から送信された静止検知センサ情報を用いて、利用者が入力装置を静止した時を検出する状態判別ステップと、前記状態判別ステップで静止した時を検出した場合、前記入力装置から送信された加速度センサ情報を用いて、前記加速度センサの収束値を推定する推定ステップとを行うことを要旨とする。
【0012】
また、本発明は、情報処理装置が実行する、入力装置の傾きを計測する加速度センサと、入力装置が静止したことを検知する静止検知センサとを有する入力装置から送信された情報に基づいて、入力情報を決定する入力情報決定プログラムであって、前記情報処理装置に、前記入力装置から送信された静止検知センサ情報を用いて、利用者が入力装置を静止した時を検出する状態判別ステップと、前記状態判別ステップで静止した時を検出した場合、前記入力装置から送信された加速度センサ情報を用いて、前記加速度センサの収束値を推定する推定ステップとを実行させることを要旨とする。
【0013】
また、本発明は、情報処理装置が実行する、入力装置の傾きを計測する加速度センサと、入力装置が静止したことを検知する静止検知センサとを有する入力装置から送信された情報に基づいて、入力情報を決定する入力情報決定プログラムを記録した記録媒体であって、前記情報処理装置に、前記入力装置から送信された静止検知センサ情報を用いて、利用者が入力装置を静止した時を検出する状態判別ステップと、前記状態判別ステップで静止した時を検出した場合、前記入力装置から送信された加速度センサ情報を用いて、前記加速度センサの収束値を推定する推定ステップとを実行させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、利用者の操作ログを収集することなく、利用者の入力操作に対して情報処理装置の応答を向上させることができ、操作時の無駄な待ち時間が軽減された快適な入力操作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】利用者がリモコン端末を操作する方法を模式的に示した図である。
【図2】デジタルTVのディスプレイに表示されるアイコン選択画面の一例を示す図である。
【図3】リモコン端末を傾けた角度と、選択されるアイコンとの関係を模式的に示した図である。
【図4】各アイコンが選択されるリモコン端末の傾き角度の範囲の一例を示す表である。
【図5】本発明の実施形態に係るシステムの全体構成図である。
【図6】リモコン端末の機能構成を示す機能構成図である。
【図7】デジタルTV2の機能構成を示す機能構成図である。
【図8】選択するアイコンを変更した場合に生じる加速度センサのセンサ値の変化を示すグラフである。
【図9】選択するアイコンを変更した場合に生じるジャイロセンサのセンサ値の変化を示すグラフである。
【図10】図8と図9を統合したグラフである。
【図11】デジタルTVの表示制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
[本実施形態のアプリケーション]
まず、本実施形態におけるアプリケーションの一例について説明する。
【0018】
図1は、デジタルTVに情報を入力するために、利用者がリモコン端末1を操作する方法を模式的に示した図である。利用者は、リモコン端末1を図示するように把持した状態で、ピッチ方向101にリモコン端末1を傾ける操作を行う。本実施形態では、リモコン端末1を傾けた角度(図1のX−Y面に対する傾き)に応じて、利用者は、デジタルTVに表示されたメニューの所望のアイコンを選択することができるアプリケーションを用いるものとする。
【0019】
図2は、デジタルTV2のディスプレイに表示されるアイコン選択画面の一例を示す図である。図示するメニューには、1から5の数字が表示された5つのアイコンからなる数字配列表が表示され、リモコン端末1の傾きに応じて、いずれかのアイコンを選択することができるものとする。
【0020】
図3は、リモコン端末1を傾けた角度と、選択されるアイコンとの関係を模式的に示した図である。図3(a)は、リモコン端末1を90°に傾けた場合に「1」のアイコンが選択されることを示し、図3(b)は、リモコン端末1を45°に傾けた場合に「2」のアイコンが選択されることを示し、図3(c)は、リモコン端末1を0°に傾けた場合(傾けない場合)に「3」のアイコンが選択されることを示し、図3(d)は、リモコン端末1を−45°に傾けた場合に「4」のアイコンが選択されることを示し、図3(e)は、リモコン端末1を−90°に傾けた場合に「5」のアイコンが選択されることを示している。
【0021】
図4は、各アイコンが選択されるリモコン端末1の傾き角度の範囲の一例を示す表である。図示する表の場合、例えば「1」のアイコンを選択するには、利用者は、リモコン端末1を「54°〜90°」の範囲に傾ける必要がある。
【0022】
本実施形態では、リモコン端末1の傾きを計測するのに加速度センサを用い、利用者がリモコン端末を静止しているかどうかを判別する静止検知センサとしてジャイロセンサを用いることとする。
[全体のシステム構成]
図5は、本発明の実施形態に係るシステムの全体構成図である。図示するシステムは、赤外線等の無線や有線により互いに通信可能なリモコン端末1(入力装置)と、デジタルTV2(情報処理装置)とを有する。
【0023】
リモコン端末1は、視認により判別できるような識別力のある記号が表面に付された複数の特殊キー30〜36からなる特殊キー部4と、上下左右の方向を指示する4つの方向キー51〜54からなる十字キー部5と、十字キー部5の中央に配置された中心キー6とを備える。また、リモコン端末1は、利用者が当該リモコン端末1を静止しているかどうかを検出するジャイロセンサと、リモコン端末1が重力方向に垂直な面(図1のX−Y面)に対してどの程度傾いているかを検出する加速度センサとを備える。
【0024】
リモコン端末1が、各センサにより検出されたセンサ情報および利用者がリモコン端末1上に配置されたキーを押下したかどうかの情報をデジタルTV2に送信することで、利用者はデジタルTV2を遠隔操作することができる。
【0025】
一方、デジタルTV2は、Webブラウザまたはウィジェット等の表示モジュールを備え、リモコン端末1の入力操作に応じた操作コマンドを実行し、実行結果を画面に表示する。
【0026】
[リモコン端末のシステム構成]
図6は、リモコン端末1の機能構成を示す機能構成図である。図示するリモコン端末1は、前述したようにデジタルTV2に各種指示を出力する指示端末であって、キー状態検出部11と、加速度センサ12と、ジャイロセンサ13(静止検知センサ)と、マイコン部14と、送信部15とを備える。
【0027】
キー状態検出部11は、図5に示す特殊キー部4の各特殊キー、十字キー部5の各方向キー、中心キー6が利用者によって押下された場合に、押下されたキーがいずれのキーであるかの状態を検出し、検出結果をマイコン部14に送出する。加速度センサ12は、リモコン端末1の傾きを計測し、計測結果であるセンサ値をマイコン部14に送出する。ジャイロセンサ13は、リモコン端末1が静止しているかどうかを計測し、計測結果であるセンサ値をマイコン部14に送出する。
【0028】
マイコン部14は、キー状態検出部11、加速度センサ12、ジャイロセンサ13で検出された各情報を処理し、送信部15に送出する。送信部15は、マイコン部14によって処理された信号(キー入力情報、加速度センサのセンサ値、ジャイロセンサのセンサ値を含む情報)を、デジタルTV2に赤外線又は無線通信で送信する。
[デジタルTVのシステム構成]
本実施形態のデジタルTV2は、加速度センサが組み込まれたリモコン端末1の加速度センサ情報をもとに、リモコン端末1の重力方向に対する傾きを計測し、またリモコン端末1の重力方向の傾きを予測するものである。
【0029】
加速度センサ12は、ある方向に働いている加速度を計測する装置であって、複数軸方向の加速を検知することで、リモコン端末1が重力方向に対してどれだけ傾いているかを計測することができる。加速度センサ12は、光学式・機械式・半導体式などに分類され、その種類によって計測手段は異なるが、計測原理は同じ力学モデルの後述する支配方程式で表される。この支配方程式は、バネ・ダンパモデルの運動方程式であるため、加速度センサ12を用いて正確な傾きの値を得るにはリモコン端末1が静止したときの傾きに対応する加速度センサ12の値に収束するまで待つことになり、入力に大きな遅延が生じてしまう。
【0030】
本実施形態のデジタルTV2は、加速度センサ12を用いた遅延の少ない入力を可能にするために、利用者がリモコン端末1の傾きを変更して当該リモコン端末1を静止した時を検出し、その静止時からできるだけ早く加速度センサ12の収束値(リモコン端末1の傾きを導出するための値)を推定する。
【0031】
図7は、デジタルTV2の機能構成を示す機能構成図である。図示するデジタルTV2は、信号受信部21と、信号分離部22と、信号データ蓄積部23と、力学モデルのパラメータ蓄積部25と、表示制御部26と、表示出力部27とを備える。
【0032】
信号受信部21は、リモコン端末1から送信された入力信号(キー入力情報、加速度センサのセンサ値、ジャイロセンサのセンサ値を含めた情報)を受信する。信号分離部22は、信号受信部21で受信した入力信号を、加速度センサ値と、ジャイロセンサ値と、各キーのON/OFF状態の情報とに分離する。
【0033】
信号データ蓄積部23は、信号分離部22で分離された各種情報をそれぞれ記憶し保持する。これにより、信号データ蓄積部23には、利用者がリモコン端末1の傾きを変更してリモコン端末1を静止し、加速度センサ12が静止するまでの一連の加速度センサ12およびジャイロセンサ13のセンサデータが蓄積される。
【0034】
なお、信号データ蓄積部23としては、例えばメモリ、ハードディスク等の記憶装置を用いることが一般的である。また、信号データ蓄積部23は、デジタルTV2の内部に備える場合だけでなく、インターネットや電話回線等の通信ネットワークを介して電気的に接続可能な外部の記憶装置を用いることも可能である。
【0035】
力学モデルのパラメータ蓄積部25は、リモコン端末1を静止した瞬間からその静止したリモコン端末1の傾き(姿勢)を推定するために用いる数式のパラメータの数値を記憶・保持する。表示制御部26は、状態判別部261と、処理部262と、アイコン選択部263とを有する。
【0036】
状態判別部261は、利用者がリモコン端末1の傾きを変更して当該リモコン端末1を静止した時を検出する。具体的には、状態判別部261は、利用者がリモコン端末1を操作しているときに、リアルタイムにリモコン端末1から送信されるセンサ情報を用いて、下記の3つの状態を判別する。
【0037】
1.状態A:利用者がリモコン端末1の傾きを変化させ、加速度センサ値も変化している状態
2.状態B:利用者がリモコン端末1を静止し、かつ加速度センサ値が収束していない状態
3.状態C:利用者がリモコン端末1を静止し、かつ加速度センサ値が傾きに対応する角度に収束している状態
処理部262は、判別された状態に応じた各処理を行う。具体的には、処理部262は、判別された状態が状態Bの場合、利用者がリモコン端末1を静止したときからのリアルタイムに受信したセンサ情報(信号データ蓄積部23のデータ)と、パラメータ蓄積部25のデータとを用いて、加速度センサ12の収束値を推定する。また、処理部262は、加速度センサ12の収束値を用いてリモコン端末1の傾きを導出する。
【0038】
アイコン選択部263は、導出された傾きに応じて、いずれかのアイコンを選択する。表示出力部27は、表示制御部26で得られた結果に対応したメニュー(図2、図3参照)を表示する。本実施形態では、表示制御部26が選択したアイコンを利用者に提示する。
【0039】
上記説明したデジタルTV2には、例えば、CPUと、メモリと、HDD等の外部記憶装置と、入力装置と、出力装置とを備えた汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされたデジタルTV2用のプログラムを実行することにより、デジタルTV2の各機能が実現される。なお、このプログラムは、コンピュータシステムが読取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。
【0040】
次に、本実施形態の処理について説明する。
【0041】
図8は、選択するアイコンを「5」のアイコンから「1」のアイコンに変更した場合に生じる加速度センサ12のセンサ値の変化を示すものである。図9は、図8の場合と同様に、選択するアイコンを「5」のアイコンから「1」のアイコンに変更した場合に生じるジャイロセンサ13のセンサ値の変化を示すものである。図8の単位は、横軸が時間(ms)で、縦軸が加速度センサ12のセンサ値(mm/s)である。図9の単位は、横軸が時間(ms)で、縦軸がジャイロセンサ13のセンサ値(dps)である。
【0042】
図8より、利用者がリモコン端末1を操作した瞬間に加速度センサ12のセンサ値が変化し(状態C→状態Aまたは状態B)、その後、加速度センサ12のセンサ値がリモコン端末1を静止した傾きに対応した収束値になる(状態Aまたは状態B→状態C)ことがわかる。
【0043】
また、図9より、利用者がリモコン端末1を操作し始めた途端に、ジャイロセンサ13のセンサ値が変化し(状態Bまたは状態C→状態A)、その後、リモコン端末1を静止したときに、ほとんど振動していないセンサ値をとる(状態A→状態Bまたは状態C)ことがわかる。これにより、利用者がリモコン端末1を静止した瞬間を検知することができる。
【0044】
図10は、図8と図9を合わせたものである。図10より、ジャイロセンサ13で利用者がリモコン端末1を静止した時刻と、加速度センサ12が静止したリモコン端末1の傾きに対応した収束値に収束した時刻との間にズレが生じていることがわかる(状態B部分)。加速度センサ12のみを用いた場合、この状態Bの時間が利用者の操作に対するデジタルTV2側の応答性の悪さにつながり、利用者は操作しづらいと感じ、またストレスを感じる。さらに、加速度センサ12では状態Aと状態Bを区別することが容易ではないため、力学モデルでモデル化することも困難である。
【0045】
そこで、上記のような状態Aと状態Bを判別する手段として、本実施形態ではジャイロセンサ13を導入することで、モデル化しやすい状態Bのみを抽出し、状態Bの中で加速度センサ12の収束値を推定する。以下に、デジタルTV2の表示制御部26が行う、加速度センサ12の収束値の推定処理を説明する。
【0046】
図11は、表示制御部26の処理を示すフローチャートである。まず、表示制御部26の状態判別部261は、信号データ蓄積部23をモニタリングし、リモコン端末1から受信したセンサ情報(加速度センサのセンサ値、ジャイロセンサのセンサ値)が信号データ蓄積部23に記憶されたか否かをチェックする(S101)。なお、信号受信部21がリモコン端末1から送信された入力信号を受信すると、信号分離部22は、受信した入力信号を分離し、信号データ蓄積部23に記憶する。
【0047】
センサ情報が信号データ蓄積部23に記憶された場合(S102:YES)、状態判別部261は、現在の状態が状態A、状態Bまたは状態Cのいずれかであるかを判別する(S103、S104)。
【0048】
すなわち、状態判別部261は、利用者がリモコン端末1の傾きを変更する操作から静止したことを検知する方法として、ジャイロセンサ13のセンサ値を用いて下記の式1を用いて判別する。
【数1】

【0049】
ただし、Sgnow、Sgkは、ジャイロセンサ静止時の基準値Sgbase近傍の値のみを利用する。
【0050】
状態判別部261は、式1の左辺の値を信号データ蓄積部23に時系列に蓄積されたジャイロセンサ13のセンサ値を用いて算出し、算出した左辺の値と右辺のジャイロセンサ静止判断用の閾値(Thresholdg)とを比較する。左辺の値が右辺の閾値以上の場合、状態判別部261は、状態A(利用者がリモコン端末1の傾きを変化させ、加速度センサ値も変化している状態)であると判別する。
【0051】
一方、左辺の値が右辺の閾値より小さい場合(S103:状態BorC)、状態判別部261は、加速度センサ12が収束したかどうかを以下の式2を用いて判別する。
【数2】

【0052】
状態判別部261は、式2の左辺の値を信号データ蓄積部23に時系列に蓄積された加速度センサ12のセンサ値を用いて算出し、算出した左辺の値と右辺の加速度センサ収束判断用の閾値(Thresholda)とを比較する(S104)。状態判別部261は、左辺の値が右辺の閾値以上の場合、状態B(利用者がリモコン端末1を静止し、かつ加速度センサ値が収束していない状態)であると判別する。一方、左辺の値が右辺の閾値より小さい場合、状態C(利用者がリモコン端末1を静止し、かつ加速度センサ値が傾きに対応する角度に収束している状態)であると判別する。
【0053】
次に、表示制御部26の処理部262が行う、各状態に対応した処理について説明する。状態Aの場合(S103:状態A)、利用者のリモコン端末1の操作に伴う外力によって加速度センサ12のセンサ値は変化する。利用者の操作は必ずしも同じではなく、加わる外力を検出することが難しいため、状態Aの場合は何も処理を行わず、S101に戻る。
【0054】
状態Cの場合(S104:状態C)においては、加速度センサ12のセンサ値はすでに収束しているので、その収束値を用いて傾きを導出する(S107)。なお、収束値は、図8の状態Cにおける加速度センサの値(各軸方向の加速度)を指す。
【0055】
また、リモコン端末1のピッチ方向の傾きを収束した各軸方向の加速度から導出するには、下記の式を用いる。重力加速度は比例定数である。
【0056】
ピッチ方向の傾き=arcsin(x軸の加速度センサの値/重力加速度)
次に、状態Bの場合(S104:状態B)に、加速度センサ12の収束値を推定する処理(S105)について説明する。状態Bになった瞬間から、リモコン端末1の加速度センサ12は、その傾きに対応する角度に向かって収束を始める。このとき、収束するまでの加速度センサ12のセンサ値の変化は、加速度センサ12の特性としてバネ・ダンパの力学モデルで表現することができる。
【0057】
すなわち、利用者がリモコン端末1を静止した後、加速度センサ12の振動現象は、重力以外の外部からの入力が存在しないバネ・ダンパモデルの力学モデルで表現される。このとき、リモコン端末1を利用者が静止してからの加速度センサ12の力学モデルの支配方程式は下記の式3で表わされる。
【数3】

【0058】
そして、式3の一般解である、状態Bにおけるバネ・ダンパモデルによるセンサ値の変化を下記の式4で示すことができる。式4の未知パラメータを、信号データ蓄積部23に時系列に蓄積された加速度センサ12のセンサ値を用いて導出することにより、加速度センサ12の収束値を推定することができる。
【数4】

【0059】
状態Bになったことを検知してから取得した加速度センサ12の複数のセンサ値を通る式4の未知パラメータA、B、C、D、gを、以下の最小2乗法を用いて決定する。
【数5】

【数6】

【0060】
このとき式6を満たす未知パラメータを求める。式5は非線形方程式であることから式6の解を求めることができない場合がある。ここではニュートンラフソン法を用いた近似解を求める方法を用いる。なお、ニュートンラフソン法については、以下に記載されている。
【0061】
「新・数理/工学ライブラリ[数学]1、理工学のための数値計算法」、水島二郎、柳瀬眞一郎 著、数理工学社
【数7】

【0062】
式7の漸化式を反復計算していき、所定の回数反復計算を行った後、計算を打ち切れば近似解を得ることができる。ここで得られた未知パラメータgが求めたい収束値の推定値となる。処理部262は、この推定値に基づいて、リモコン端末1の傾きを導出する(S107)。すなわち、前述の式(「ピッチ方向の傾き」の式)を用いて、傾きを算出する。
【0063】
そして、表示制御部26のアイコン選択部263は、加速度センサ12のセンサ値の収束値から導出したリモコン端末1の傾きに対応するアイコンを、前述の図4に示す表を参照して選択し、選択したアイコンの識別情報(ここでは、アイコンの番号)を表示出力部27に送出する(S108)。これにより、表示出力部27は、選択されたアイコンの色を変えるなどしたアイコン選択画面(図2参照)を生成して表示し、どのアイコンが選択されているかを利用者に提示する。これにより、状態Bの期間におけるデジタルTV2側の応答の遅延時間を減少することができる。
【0064】
以上説明した本実施形態のデジタルTV2では、利用者が傾きを変更しリモコン端末1を静止した時を検出する状態判別部261と、その静止時からできるだけ早く加速度センサ12の収束値(リモコン端末1の傾きを導出するための値)を推定する処理部262を備える。これにより、本実施形態では、利用者のリモコン端末1の傾きを変更する入力操作に伴うデジタルTV2の応答を速くすることができ、操作時の無駄な待ち時間が軽減された快適な入力操作を実現することができる。すなわち、本実施形態では、利用者の操作ログを収集することなくすぐに効果がある状態で利用できるとともに、利用者の入力操作に対してデジタルTV2の応答を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、利用者がリモコン端末1を静止したことを検出する方法として、リモコン端末1にジャイロセンサ13を組み込み、当該ジャイロセンサ13のセンサ情報を用いる。ジャイロセンサ13は、リモコン端末1を静止したときに、どの姿勢でも同じセンサ値をとる特性があり、また、リモコン端末1の操作に対するセンサの応答も速い。このようなジャイロセンサ13の特性を利用することにより、本実施形態では、利用者のリモコン端末1の傾きを変更する入力操作に伴うデジタルTV2の応答を、より速くすることができる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 リモコン端末
11 キー状態検出部
12 加速度センサ
13 ジャイロセンサ
14 マイコン部
15 送信部
2 デジタルTV
21 信号受信部
22 信号分離部
23 信号データ蓄積部
25 力学モデルのパラメータ蓄積部
26 表示制御部
261 状態判別部
262 処理部
263 アイコン選択部
27 表示出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力装置の傾きを計測する加速度センサと、入力装置が静止したことを検知する静止検知センサとを有する入力装置から送信された情報に基づいて、入力情報を決定する情報処理装置であって、
前記入力装置から送信された静止検知センサ情報を用いて、利用者が入力装置を静止した時を検出する状態判別手段と、
前記状態判別手段が静止した時を検出した場合、前記入力装置から送信された加速度センサ情報を用いて、前記加速度センサの収束値を推定する推定手段とを備えること
を特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報処理装置であって、
前記入力装置から送信された前記加速度センサ情報を時系列に記憶する記憶装置を、さらに有し、
前記推定手段は、前記記憶装置に記憶された加速度センサ情報を用いて、力学モデルによる加速度センサ情報の変化を示す方程式の解を算出することにより、前記加速度センサの収束値を推定すること
を特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
入力装置の傾きを計測する加速度センサと、入力装置が静止したことを検知する静止検知センサとを有する入力装置から送信された情報に基づいて、入力情報を決定する入力情報決定方法であって、
情報処理装置は、
前記入力装置から送信された静止検知センサ情報を用いて、利用者が入力装置を静止した時を検出する状態判別ステップと、
前記状態判別ステップで静止した時を検出した場合、前記入力装置から送信された加速度センサ情報を用いて、前記加速度センサの収束値を推定する推定ステップとを行うこと
を特徴とする入力情報決定方法。
【請求項4】
請求項3記載の入力情報決定方法であって、
前記情報処理装置は、入力装置から送信された前記加速度センサ情報を時系列に記憶する記憶部を有し、
前記推定ステップは、前記記憶部に記憶された加速度センサ情報を用いて、力学モデルによる加速度センサ情報の変化を示す方程式の解を算出することにより、前記加速度センサの収束値を推定すること
を特徴とする入力情報決定方法。
【請求項5】
情報処理装置が実行する、入力装置の傾きを計測する加速度センサと、入力装置が静止したことを検知する静止検知センサとを有する入力装置から送信された情報に基づいて、入力情報を決定する入力情報決定プログラムであって、
前記情報処理装置に、
前記入力装置から送信された静止検知センサ情報を用いて、利用者が入力装置を静止した時を検出する状態判別ステップと、
前記状態判別ステップで静止した時を検出した場合、前記入力装置から送信された加速度センサ情報を用いて、前記加速度センサの収束値を推定する推定ステップとを実行させること
を特徴とする入力情報決定プログラム。
【請求項6】
請求項5記載の入力情報決定プログラムであって、
前記情報処理装置は、入力装置から送信された前記加速度センサ情報を時系列に記憶する記憶部を有し、
前記推定ステップは、前記記憶部に記憶された加速度センサ情報を用いて、力学モデルによる加速度センサ情報の変化を示す方程式の解を算出することにより、前記加速度センサの収束値を推定すること
を特徴とする入力情報決定プログラム。
【請求項7】
情報処理装置が実行する、入力装置の傾きを計測する加速度センサと、入力装置が静止したことを検知する静止検知センサとを有する入力装置から送信された情報に基づいて、入力情報を決定する入力情報決定プログラムを記録した記録媒体であって、
前記情報処理装置に、
前記入力装置から送信された静止検知センサ情報を用いて、利用者が入力装置を静止した時を検出する状態判別ステップと、
前記状態判別ステップで静止した時を検出した場合、前記入力装置から送信された加速度センサ情報を用いて、前記加速度センサの収束値を推定する推定ステップとを実行させること
を特徴とする入力情報決定プログラムを記録した記録媒体。
【請求項8】
請求項7記載の入力情報決定プログラムを記録した記録媒体であって、
前記情報処理装置は、入力装置から送信された前記加速度センサ情報を時系列に記憶する記憶部を有し、
前記推定ステップは、前記記憶部に記憶された加速度センサ情報を用いて、力学モデルによる加速度センサ情報の変化を示す方程式の解を算出することにより、前記加速度センサの収束値を推定すること
を特徴とする入力情報決定プログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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