説明

情報処理装置、取引検査方法及びプログラム

【課題】ATMを利用するユーザの同一性を考慮して詐欺犯罪の被害を効果的に防止すること。
【解決手段】ユーザによる金銭取引のための操作が行われる端末装置から、ユーザの顔を撮影した顔画像と当該顔画像が撮影された際の前記金銭取引における取引金額データとを受信する通信部と、前記通信部により受信された顔画像を過去に受信された他の顔画像と照合する照合部と、前記照合部による照合の結果及び前記取引金額データに基づいて、前記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する判定部と、を備える情報処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、取引検査方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電話による会話等を通じて騙した相手から金銭を詐取する振り込め詐欺の増加が社会問題となっている。振り込め詐欺には、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、又は融資保証金詐欺などの様々な形態が含まれるが、これら形態の多くに共通しているのは、被害者に現金自動預け払い機(ATM)を利用して金銭を振り込ませるという手口である。
【0003】
このような事態に対し、銀行又は信用金庫などの金融機関では、例えばATMの操作画面に詐欺犯罪について注意を喚起するメッセージを表示するなどの対応をとっている。また、例えば、下記特許文献1は、振込先口座の取引履歴に基づいてその口座が振り込め詐欺に利用されている預金口座である可能性が高いと判定される場合にだけ、振り込め詐欺に対する注意喚起のためのメッセージを出力することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−272410号公報
【特許文献2】特開2002−189724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば上記特許文献1に記載された手法のように1つの口座における金銭取引の履歴を解析するだけでは、振り込め詐欺が発生している可能性を十分に評価できない場合もある。例えば、振り込め詐欺に関連する金銭取引の特徴は、1つの口座に限定されない同一人物による取引の履歴にも現れ得る。また、1つの口座における取引履歴の内容が同じだったとしても、取引をしたユーザが同一人物かどうかによってその取引が振り込め詐欺に関連している可能性は相違する。
【0006】
ATMを利用するユーザの同一性を判断する手法としては、例えば、上記特許文献2に記載された顔画像認識技術を用いる手法がある。同文献は、ATMでの取引に際し、本人確認手段として、IDカード又は暗証番号若しくはパスワードの代わりに顔画像認識技術を使用することを提案している。しかし、同文献は、かかる顔画像認識技術を詐欺犯罪の防止へ応用することについては示唆していない。
【0007】
そこで、本発明は、ATMを利用するユーザの同一性を考慮して詐欺犯罪の被害を効果的に防止することのできる、新規かつ改良された情報処理装置、取引検査方法及びプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある実施形態によれば、ユーザによる金銭取引のための操作が行われる端末装置から、ユーザの顔を撮影した顔画像と当該顔画像が撮影された際の上記金銭取引における取引金額データとを受信する通信部と、上記通信部により受信された顔画像を過去に受信された他の顔画像と照合する照合部と、上記照合部による照合の結果及び上記取引金額データに基づいて、上記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する判定部と、を備える情報処理装置が提供される。
【0009】
かかる構成によれば、ATMなどに相当する端末装置を操作するユーザの顔画像と過去に受信された他の顔画像が照合され、その照合結果と取引金額データに基づいて現在の金銭取引が異常取引であるか否かが判定される。それにより、端末装置100を利用するユーザの同一性を考慮した上で、金銭取引が詐欺犯罪と関連している可能性に応じて、ユーザに警告を表示し又は取引を中止するなどの犯罪防止策をとることができる。
【0010】
また、上記情報処理装置は、上記照合部による照合の結果を用いて、同一人物による取引の特徴を表す第1特徴データを算出する特徴データ算出部、をさらに備え、上記判定部は、上記特徴データ算出部により算出された上記第1特徴データを所定の閾値と比較することにより、上記金銭取引が異常取引であるか否かを判定してもよい。
【0011】
また、上記第1特徴データは、所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引金額の合計値を含み、上記判定部は、上記振込取引金額の合計値が所定の閾値を上回る場合には、上記金銭取引が異常取引であると判定してもよい。
【0012】
また、上記第1特徴データは、所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引の1回あたりの平均取引金額に対する上記通信部により受信された振込取引金額の倍率を含み、上記判定部は、上記倍率が所定の閾値を上回る場合には、上記金銭取引が異常取引であると判定してもよい。
【0013】
また、上記通信部は、さらに、上記金銭取引の対象となる口座を特定するための口座データを受信し、上記情報処理装置は、上記通信部により受信された上記口座データと上記照合部による照合の結果とを用いて、同一口座の取引の特徴を表す第2特徴データを算出する特徴データ算出部、をさらに備え、上記判定部は、上記特徴データ算出部により算出された上記第2特徴データを所定の閾値と比較することにより、上記金銭取引が異常取引であるか否かを判定してもよい。
【0014】
また、上記第2特徴データは、所定の期間にわたって同一口座から引出取引をした異なる人物の人物数を含み、上記判定部は、上記人物数が所定の閾値を上回る場合には、上記金銭取引が異常取引であると判定してもよい。
【0015】
また、上記判定部は、上記金銭取引が異常取引であると判定した場合に、当該金銭取引に対する警告又は取引中止の指示を上記端末装置へ送信してもよい。
【0016】
また、本発明の別の実施形態によれば、ユーザによる金銭取引のための操作が行われる端末装置との間で通信可能な情報処理装置を用いて、上記端末装置からユーザの顔を撮影した顔画像と当該顔画像が撮影された際の上記金銭取引における取引金額データとを受信するステップと、受信された顔画像を過去に受信された他の顔画像と照合するステップと、上記照合の結果及び上記取引金額データに基づいて、上記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する判定ステップと、を含む取引検査方法が提供される。
【0017】
また、本発明の別の実施形態によれば、ユーザによる金銭取引のための操作が行われる端末装置との間で通信可能な情報処理装置を制御するコンピュータを、上記端末装置から、ユーザの顔を撮影した顔画像と当該顔画像が撮影された際の上記金銭取引における取引金額データとを受信する通信部と、上記通信部により受信された顔画像を過去に受信された他の顔画像と照合する照合部と、上記照合部による照合の結果及び上記取引金額データに基づいて、上記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する判定部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【0018】
また、本発明の別の実施形態によれば、ユーザによる金銭取引のための操作が行われる端末装置であって、ユーザの顔を撮影して顔画像を生成する撮影部と、前記撮影部により生成された前記顔画像を過去に撮影された他の顔画像と照合する照合部と、前記照合部による照合の結果及び前記金銭取引における取引金額データに基づいて、前記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する判定部と、を備える端末装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る情報処理装置、取引検査方法及びプログラムによれば、ATMを利用するユーザの同一性を考慮して詐欺犯罪の被害を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係る取引処理システムの概要を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る端末装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係る取引検査処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態に係る異常取引判定処理の詳細な流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態において異常であると判定される取引の一例を示す説明図である。
【図7】第1の実施形態において異常であると判定される取引の他の例を示す説明図である。
【図8】端末装置の画面に表示されるメッセージの一例を示す説明図である。
【図9】第2の実施形態に係る取引処理システムの概要を示す模式図である。
【図10】第2の実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】第2の実施形態に係る取引検査処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態に係る異常取引判定処理の詳細な流れの一例を示すフローチャートである。
【図13】第2の実施形態において異常であると判定される取引の一例を示す説明図である。
【図14】端末装置の画面に表示されるメッセージの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0022】
<1.第1の実施形態>
[1−1.システムの概要]
まず、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る取引処理システムの概要について説明する。図1は、本実施形態に係る取引処理システム1の概要を示す模式図である。図1を参照すると、取引処理システム1は、端末装置100、ネットワーク104、情報処理装置200、データベース202、勘定系サーバ204、及び汎用端末装置300を含む。
【0023】
端末装置100は、ユーザによる操作を受けて金銭取引を実行するための端末装置である。端末装置100は、典型的には、現金自動預け払い機(ATM)として実現される。端末装置100は、例えば、金融機関の営業店、コンビニエンスストア、駅構内、ホテル、病院、アミューズメントパーク、飲食店、又はオフィスビルディングなどの多様な施設に設置され得る。
【0024】
また、本実施形態において、端末装置100には撮影装置102が設けられる。撮影装置102は、端末装置100を操作して金銭取引を行うユーザの顔を撮影する装置である。撮影装置102は、例えば、CCD若しくはCMOSなどのイメージセンサを用いたデジタル方式のカメラであってもよく、又はAD(Analogue to Digital)変換処理を通じてデジタル画像を出力することのできるアナログ方式のカメラであってもよい。後述するように、端末装置100は、撮影装置102により撮影された画像をネットワーク104を介して情報処理装置200へ送信する。
【0025】
ネットワーク104は、端末装置100、情報処理装置200、勘定系サーバ204、及び汎用端末装置300を相互に接続する通信ネットワークである。ネットワーク104は、例えば、専用線又はIP−VPN(Internet Protocol-Virtual Private Network)などとして実現され得る。なお、図1ではネットワーク104に端末装置100及び汎用端末装置300が1つずつ接続されているが、ネットワーク104にはそれぞれ複数の端末装置100又は汎用端末装置300が接続されてよい。
【0026】
情報処理装置200は、端末装置100からネットワーク104を介してユーザの顔画像と金銭取引における取引金額データとを受信し、受信したデータに基づいて金銭取引が詐欺犯罪に関連する異常な取引でないかを判定する装置である。情報処理装置200は、典型的には、汎用的なコンピュータを用いたサーバ装置として実現され得る。情報処理装置200の具体的な構成と処理については、後にさらに説明する。
【0027】
データベース202は、情報処理装置200に接続される。データベース202は、例えば、情報処理装置200により受信された上述したユーザの顔画像及び取引金額データが記憶する。かかるユーザの顔画像及び取引金額データは、情報処理装置200が新たな顔画像を受信した際に、情報処理装置200による異常取引の判定処理のために読み出される。
【0028】
勘定系サーバ204は、端末装置100を操作するユーザによる金銭取引を処理するサーバ装置である。勘定系サーバ204により処理可能な金銭取引の種類には、例えば、振込取引、引出取引、預入取引、又は残高照会などが含まれ得る。このうち、本実施形態では、振込取引に着目する。また、次節で説明する第2の実施形態では、引出取引に着目する。なお、図1では勘定系サーバ204と情報処理装置200とはネットワーク104を介して接続されているが、勘定系サーバ204と情報処理装置200とは直接接続されてもよく、又は一体の装置として構成されてもよい。
【0029】
汎用端末装置300は、例えば、情報処理装置200による異常取引の判定処理に用いられる閾値をオペレータが設定するために使用される端末装置である。汎用端末装置300は、典型的には、汎用的なコンピュータを用いた端末装置として実現され得る。汎用端末装置300は、例えば、金融機関の店舗等に設置され、上記オペレータに該当する金融機関の職員等により操作される。なお、異常取引の判定処理に用いられる閾値については、後にさらに詳しく説明する。
【0030】
ここまで、図1を用いて本実施形態に係る取引処理システム1の概要を説明した。次に、取引処理システム1に含まれる端末装置100及び情報処理装置200の具体的な構成について、順に説明する。
【0031】
[1−2.端末装置の構成例]
図2は、本実施形態に係る端末装置100の具体的な構成の一例を示すブロック図である。図2を参照すると、端末装置100は、操作部110、表示部120、カードリーダライタ130、通帳記帳部140、入出金部150、撮影部160、通信部170、及び制御部180を備える。
【0032】
操作部110は、ユーザから端末装置100に金銭取引のための様々な指示又は情報入力を与えるためのユーザインタフェースを提供する。操作部110は、例えば、ボタン、スイッチ、キーボード、又はタッチパネルなどを含み得る。
【0033】
表示部120は、端末装置100がユーザに金銭取引に関連する情報又は操作画面などを表示するための表示手段を提供する。表示部120は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、液晶ディスプレイ、又はOLEDなどのディスプレイ装置を用いて実現され得る。なお、上述した操作部110と表示部120とは、物理的には1つの装置、例えばタッチパネルなどを用いて実現されてもよい。
【0034】
カードリーダライタ130は、例えば、キャッシュカードからのデータの読み取り機能、及びキャッシュカードへの情報の書き込み機能を有する。より具体的には、カードリーダライタ130は、例えば、キャッシュカードに設けられた磁気ストライプ又はICチップに書き込まれた情報を読み取り、及び当該磁気ストライプ又はICチップに情報を書き込むことができる。
【0035】
通帳記帳部140は、通帳挿入口から挿入される通帳に設けられた磁気ストライプの読み取り機能、及び通帳への印刷機能を有する。例えば、通帳記帳部140は、制御部180による制御に応じて、通帳の磁気ストライプから口座番号などの口座データを読み取り、及び勘定系サーバ204から取得される当該口座番号に関連する取引履歴を通帳に記帳することができる。
【0036】
入出金部150は、制御部180による制御に応じて、入出金口を介して紙幣及び硬貨などの金銭の入金処理又は出金処理を行う。入金処理とは、例えば、ユーザが入出金口に投入した紙幣の種類及び枚数を識別し、紙幣を所定の場所に収納する処理である。また、出金処理とは、例えば、ユーザによる操作部110への操作によって指定された金額に相当する紙幣及び硬貨を計数し、入出金口に搬送する処理である。
【0037】
撮影部160は、図1に示した撮影装置102を用いて、端末装置100を操作するユーザの顔画像を撮影する。撮影部160は、例えば、撮影した当該ユーザの顔画像を、制御部180へ出力する。
【0038】
通信部170は、任意の通信プロトコルに従い、ネットワーク104を介する端末装置100と他の装置との間の通信を仲介するインタフェースである。例えば、通信部170は、制御部180から入力されるユーザの顔画像と取引金額データとを、情報処理装置200へ送信する。また、例えば、通信部170は、情報処理装置200により金銭取引が異常な取引であると判定された場合には、その取引に対する警告又は中止の指示などを受信してもよい。また、例えば、通信部170は、金銭取引を実行するために必要とされるデータを勘定系サーバ204との間で送受信する。
【0039】
制御部180は、端末装置100の上述した機能全般を制御する。例えば、制御部180は、操作部110を介してユーザにより金銭取引が行われる際、撮影部160にユーザの顔画像の撮影を指示する。そして、例えば、制御部180は、撮影部160により撮影された顔画像と金銭取引における取引の種類及び取引金額を表す取引金額データとを、通信部170を介して情報処理装置200へ送信する。また、制御部180は、例えば、通信部170を介して情報処理装置200から受信した警告などのメッセージを、表示部120に表示させてもよい。
【0040】
[1−3.情報処理装置の構成例]
図3は、本実施形態に係る情報処理装置200の具体的な構成の一例を示すブロック図である。図3を参照すると、情報処理装置200は、通信部210、照合部220、データ入出力部230、特徴データ算出部240、及び判定部250を備える。
【0041】
通信部210は、端末装置100の通信部170と同様、任意の通信プロトコルに従い、ネットワーク104を介する情報処理装置200と他の装置との間の通信を仲介するインタフェースである。例えば、通信部210は、金銭取引を行うユーザの顔画像と取引金額データとを端末装置100から受信する。また、例えば、通信部210は、後述する判定部250により金銭取引が異常な取引であると判定され、その取引に対する警告又は中止の指示などが判定部250から出力された場合には、当該警告又は中止の指示などを端末装置100へ送信してもよい。
【0042】
照合部220は、通信部210により新たに受信された顔画像を過去に受信された他の顔画像と照合する。より具体的には、照合部220は、端末装置100から送信された顔画像が通信部210により受信されると、データベース202に蓄積されている過去に受信された一群の顔画像をデータ入出力部230を介して取得する。そして、照合部220は、上記新たに受信された顔画像と、データベース202から取得した各顔画像とを順次照合する。照合部220による照合処理は、例えば、上記特許文献2に記載された手法など、任意の公知のパターンマッチング法による処理であってよい。そして、照合部220は、例えば、同一人物が映っていると判定された顔画像を特定するための識別子(以下、画像データ識別子という)などを、照合の結果として特徴データ算出部240へ出力する。また、照合部220は、例えば、同一人物が映っている過去の顔画像が存在しない場合には、当該顔画像をデータ入出力部230へ出力してデータベース202に記憶させてもよい。
【0043】
データ入出力部230は、例えば、照合部220からの要求に応じて、データベース202に蓄積されている過去に受信された一群の顔画像を取得する。また、データ入出力部230は、例えば、照合部220から入力される新たな顔画像をデータベース202に記憶させる。このとき、データ入出力部230は、さらに、顔画像と共に受信された取引金額データを顔画像と関連付けてデータベース202に記憶させる。取引金額データには、例えば、取引の日付、取引の種類及び取引金額などが含まれ得る。また、データ入出力部230は、例えば、後述する特徴データ算出部240からの要求に応じて、所定の顔画像と関連付けられた取引金額データをデータベース202から取得する。
【0044】
特徴データ算出部240は、照合部220による照合の結果に基づいて、同一人物による取引の特徴を表す第1特徴データを算出する。かかる第1特徴データは、後述する判定部250での異常取引判定処理において所与の閾値と比較され、取引が例えば詐欺犯罪と関連している異常な取引か否かの判定に使用される。
【0045】
例えば、ユーザが2日続けてキャッシュカードの振込限度額に近い振込取引をすることは不自然であると考えることができる。通常、2日に分けてキャッシュカードで振込取引を行うよりも、振込限度額を超える合計金額を1度に窓口で処理する方が、取引に要する手間や手数料は少ないためである。そこで、例えば、第1特徴データには、所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引金額の合計値を含むことができる。ここでの所定の期間とは、例えば、取引の時点から過去2日間などであってよい。
【0046】
また、例えば、同一のユーザが日常的にしている振込取引の平均取引金額よりも高額な振込取引を行う場合には、その振込取引は相対的に詐欺犯罪における被害者による取引である可能性が高いと言える。そこで、例えば、第1特徴データには、所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引の1回あたりの平均取引金額に対する新たに受信された振込取引金額の倍率を含むことができる。ここでの所定の期間とは、例えば、取引の時点から過去1ヶ月間などであってよい。
【0047】
即ち、特徴データ算出部240は、まず、照合部220による照合の結果に基づき、同一人物の顔画像に関連付けられた過去の取引金額データをデータ入出力部230を介してデータベース202から取得する。そして、特徴データ算出部240は、取得した取引金額データから上述した第1特徴データを算出し、算出した第1特徴データを判定部250へ出力する。
【0048】
判定部250は、照合部220による照合の結果及び取引金額データに基づいて算出された上記第1特徴データを用いて、端末装置100における金銭取引が異常取引であるか否かを判定する。
【0049】
例えば、判定部250は、上述したような所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引金額の合計値が、第1の閾値(以下、閾値T1とする)を上回る場合に、金銭取引が異常取引であると判定してもよい。閾値T1は、例えば、端末装置100におけるキャッシュカードでの1日当たりの振込限度額が50万円であって、所定の期間が2日間である場合には、T1=50万円×2−1万円=199万円などであってよい。そうした場合には、2日間続けてユーザが振込限度額の振込取引をした場合にその取引を異常取引であると判定することができる。
【0050】
また、例えば、判定部250は、上述したような所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引の1回あたりの平均取引金額に対する新たに受信された振込取引金額の倍率が、第2の閾値(以下、閾値T2とする)を上回る場合に、金銭取引が異常取引であると判定してもよい。閾値T2は、例えば、数倍〜数十倍などの任意の値であってよい。このような閾値T1及びT2の値は、例えば、ネットワーク104を介して、図1に示した汎用端末装置300を操作する金融機関の職員等により実際の詐欺被害の統計データなどに応じて適切に設定又は更新され得る。その代わりに、閾値T1及びT2の値は、例えば、端末装置100に追加的に設けられる保守画面を通して設定又は更新されてもよい。また、閾値T1及びT2の値は、例えば、情報処理装置200に設けられる入力手段を介して設定又は更新されてもよい。
【0051】
判定部250は、このようにして金銭取引が異常取引であると判定した場合には、例えば、当該金銭取引に対する警告メッセージを通信部210を介して端末装置100へ送信することができる。この場合、端末装置100は、例えば、受信した警告メッセージを画面上に表示し、その警告に対してユーザが取引続行を選択した場合にのみ、勘定系サーバ204との間での取引を継続することができる。
【0052】
ここまで、図2及び図3を用いて、本実施形態に係る端末装置100及び情報処理装置200の具体的な構成の一例について説明した。次に、かかる情報処理装置200により行われる取引検査処理の流れについて説明する。
【0053】
[1−4.処理の流れ]
図4は、本実施形態に係る情報処理装置200による取引検査処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0054】
図4を参照すると、まず、情報処理装置200の通信部210は、端末装置100から金銭取引を行っているユーザの顔画像と当該金銭取引に関する取引金額データとを受信する(S102)。ここで受信された顔画像及び取引金額データは、照合部220へ入力される。
【0055】
次に、照合部220は、入力された顔画像とデータベース202に蓄積されている過去に受信された一群の顔画像とを順次照合する(S104)。その後、照合部220により、ステップS102において受信された顔画像と同一人物であると推定される過去の顔画像が検出された場合には、処理はステップS110へ進む。一方、同一人物であると推定される顔画像が検出されなかった場合には、処理はステップS108へ進む(S106)。
【0056】
ステップS108では、新たな顔画像及び取引金額データが、データ入出力部230によりデータベース220へ保存される(S108)。その後、情報処理装置200による取引検査処理は終了し、端末装置100と勘定系サーバ204との間の取引処理が進められる。
【0057】
一方、ステップS110では、データ入出力部230により、照合の結果として同一人物であると判定された顔画像と関連付けて取引金額データがデータベース220へ保存される(S110)。
【0058】
次に、特徴データ算出部240により、同一人物の顔画像に関連付けられた一連の取引金額データから上述した第1特徴データが算出される(S112)。ここで算出された第1特徴データは、判定部250へ出力される。
【0059】
次に、特徴データ算出部240から入力された上記第1特徴データに基づいて、判定部250により異常取引判定処理が行われる(S114)。かかる異常取引判定処理の流れについては、後により詳細に説明する。
【0060】
ここで、判定部250により現在の金銭取引が詐欺犯罪に関連している可能性のある異常な取引であると判定された場合には、処理はステップS118へ進む。一方、現在の金銭取引が異常な取引であると判定されなかった場合には、情報処理装置200による取引検査処理は終了し、端末装置100と勘定系サーバ204との間の取引処理が進められる(S116)。
【0061】
ステップS118では、判定部250による判定結果を受けて、通信部210から端末装置100へ、ユーザに現在の取引が振り込め詐欺などの詐欺犯罪に関連している可能性があることを警告するメッセージが送信される(S118)。かかる警告メッセージは、例えば、端末装置100の通信部170により受信され、表示部120の画面上に表示される。
【0062】
図5は、図4に示したフローチャートにおける異常取引判定処理のより詳細な流れの一例を示すフローチャートである。
【0063】
図5を参照すると、情報処理装置200の判定部250は、まず、第1特徴データに含まれる、所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引金額の合計値が、閾値T1を上回るか否かを判定する(S202)。ここで、当該合計値が閾値T1を上回っている場合には、判定部250は、現在の取引が異常取引であると判定する(S208)。一方、当該合計値が閾値T1を上回っていない場合には、処理はステップS204へ進む。
【0064】
次に、判定部250は、第1特徴データに含まれる、所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引の1回あたりの平均取引金額に対する新たに受信された振込取引金額の倍率が、閾値T2を上回るか否かを判定する(S204)。ここで、当該倍率が閾値T2を上回っている場合には、判定部250は、現在の取引が異常取引であると判定する(S208)。一方、当該倍率が閾値T2を上回っていない場合には、判定部250は、現在の取引が異常取引ではないと判定する(S206)。
【0065】
なお、判定部250による異常取引判定処理の流れはかかる例に限定されない。例えば、ここでは、上記2つのパラメータのいずれかが各閾値を上回っている場合に現在の取引は異常取引であると判定された。しかし、その代わりに、上記2つのパラメータの双方がそれぞれ閾値を上回っている場合に、現在の取引は異常取引であると判定されてもよい。
【0066】
ここまで、図4及び図5を用いて、本実施形態に係る情報処理装置200による取引検査処理の流れの一例について説明した。次に、かかる取引検査処理により異常取引であると判定され得る取引の例について説明する。
【0067】
[1−5.異常取引の例]
図6は、本実施形態において異常であると判定される取引の一例を示す説明図である。
【0068】
図6において、情報処理装置200の通信部210は、端末装置100から新たな顔画像IM02と取引金額データTD02とを受信したものとする。取引金額データTD02は、3月2日における取引金額100万円の振込取引を指定するデータである。また、取引金額データTD02では、ユーザが有する特定の口座からの振込ではなく現金での振込が指定されている。
【0069】
情報処理装置200の照合部220は、例えば、かかる顔画像IM02をデータベース202から取得される一群の顔画像と照合し、同一人物が映っていると判定される顔画像IM01を特定する。そうすると、例えば、特徴データ算出部240により、顔画像IM01に関連付けられた取引金額データTD01及び顔画像IM02に関連付けられた取引金額データTD02に基づき、所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引金額の合計値が計算される。例えば、所定の期間が2日間であれば、特徴データ算出部240は、3月1日の取引金額データTD01の振込取引金額100万円と3月2日の取引金額データTD02の振込取引金額100万円とを合計し、合計振込取引金額200万円を算出する。そして、判定部250により、当該合計振込取引金額と閾値T1とが比較される。図6の例では、合計振込取引金額200万円、閾値T1=199万円であり、合計振込取引金額の方が上回っているため、判定部250は、取引金額データTD02に係る現在の取引は異常取引であると判定する。
【0070】
図7は、本実施形態において異常であると判定される取引の他の例を示す説明図である。
【0071】
図7において、情報処理装置200の通信部210は、端末装置100から新たな顔画像IM13と取引金額データTD13とを受信したものとする。取引金額データTD13は、4月28日における取引金額90万円の振込取引を指定するデータである。また、取引金額データTD13では、ユーザが有する口座Bからの振込が指定されている。
【0072】
情報処理装置200の照合部220は、例えば、かかる顔画像IM13をデータベース202から取得される一群の顔画像と照合し、同一人物が映っていると判定される顔画像IM11及びIM12を特定する。そうすると、例えば、特徴データ算出部240により、顔画像IM11〜IM13にそれぞれ関連付けられた取引金額データTD11〜13に基づき、所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引の1回あたりの平均取引金額に対する新たに受信された振込取引金額の倍率が計算される。例えば、所定の期間が1ヶ月であれば、まず、4月1日の取引金額データTD11の振込取引金額5千円及び4月8日の取引金額データTD12の振込取引金額1万円から、平均振込取引金額は(5千円+1万円)÷2=7千5百円である。よって、上記平均振込取引金額に対する今回の新たな振込取引金額の倍率は90万円÷7千5百円=12倍と算出される。そして、判定部250により、当該倍率と閾値T2とが比較される。図7の例では、倍率12倍、閾値T2=5.0倍であり、倍率の方が上回っているため、判定部250は、取引金額データTD13に係る現在の取引は異常取引であると判定する。なお、この場合、異常取引の判定は顔画像を用いて認識されるユーザの同一性に基づいている。そのため、振込元の口座として異なる口座が使用され、又は口座が使用されず現金での振込が行われた場合であっても、異常取引の判定を適切に行うことができることが分かる。
【0073】
図8は、図6又は図7のように現在の取引が異常取引であると判定された場合に、情報処理装置200から端末装置100へ送信され、端末装置100の画面に表示される警告メッセージの一例を示す説明図である。
【0074】
図8を参照すると、画面122aに、振り込め詐欺の被害に遭っていないかを確認すべきことを想起させる警告メッセージが示されている。また、画面122aには、取引を中止することを選択するボタンと取引を続行することを選択するボタンとが配置されている。それにより、例えば、ユーザは、振り込め詐欺の被害に遭っていないことを確認した上で被害に遭っていないと判断できる場合にのみ、金銭取引を続行することができる。
【0075】
ここまで、図1〜図8を用いて、本発明の第1の実施形態について具体的に説明した。かかる実施形態によれば、ATMなどに相当する端末装置100を操作するユーザの顔画像の照合結果に応じて取得される過去の取引金額から、同一人物の取引の特徴を表す第1特徴データが算出される。そして、当該第1特徴データを所定の閾値と比較することにより、現在の金銭取引が異常取引であるか否かが判定される。それにより、端末装置100を利用するユーザの同一性を考慮して金銭取引が詐欺犯罪と関連している可能性を評価し、詐欺犯罪の被害を効果的に防止することができる。
【0076】
また、本実施形態においては、金銭取引が詐欺犯罪と関連している可能性を評価するにあたり、口座番号などの口座を特定するデータを使用しなくてよい。そのため、特定の金融機関の顧客ではないユーザを詐欺犯罪の被害から守ること、及び複数の金融機関をまたがって詐欺犯罪の被害の防止の取り組みを進めることも可能となる。
【0077】
<2.第2の実施形態>
本発明の第1の実施形態では、端末装置100において撮影される顔画像と取引金額データとを用いて、端末装置100を操作するユーザが詐欺犯罪の被害者であるか否かが主に判定された。これに対し、例えば、異常取引の判定においてさらに口座情報を使用することで、ユーザが詐欺犯罪の加害者であるか否かを判定することもできる。そこで、本節では、ユーザが詐欺犯罪の加害者である場合の異常取引について判定する本発明の第2の実施形態について説明する。
【0078】
[2−1.システムの概要]
図9は、本実施形態に係る取引処理システム2の概要を示す模式図である。図9を参照すると、取引処理システム2は、端末装置100、ネットワーク104、情報処理装置400、データベース202、勘定系サーバ204、及び汎用端末装置300を含む。
【0079】
情報処理装置400は、端末装置100からネットワーク104を介してユーザの顔画像、金銭取引における取引金額データ及び口座データを受信し、受信したデータに基づいて金銭取引が詐欺犯罪に関連する異常な取引でないかを判定する装置である。情報処理装置400は、典型的には、汎用的なコンピュータを用いたサーバ装置として実現され得る。
【0080】
[2−2.情報処理装置の構成例]
図10は、本実施形態に係る情報処理装置400の具体的な構成の一例を示すブロック図である。図10を参照すると、情報処理装置400は、通信部410、照合部420、データ入出力部430、特徴データ算出部440、及び判定部450を備える。
【0081】
通信部410は、第1の実施形態に係る通信部210と同様、任意の通信プロトコルに従い、ネットワーク104を介する情報処理装置400と他の装置との間の通信を仲介するインタフェースである。本実施形態において、通信部410は、金銭取引を行うユーザの顔画像、取引金額データ、及び口座データを端末装置100から受信する。かかる口座データとは、金銭取引の対象となる口座を特定するためのデータである。例えば、口座データとは、引出取引についての金銭が引き出された口座の口座番号などであってよい。
【0082】
照合部420は、通信部410により受信された口座データと同一の口座に関連付けられた過去の一群の顔画像を、データ入出力部430を介してデータベース202から取得する。次に、照合部420は、取得した一群の顔画像を通信部410により受信された顔画像と順次照合する。そして、照合部420は、例えば、各顔画像との照合の結果(即ち、例えば同一人物が映っているか否か)を、特徴データ算出部440へ出力する。また、照合部420は、通信部410により受信された顔画像、取引金額データ及び口座データを、データベース入出力部430を介してデータベース202に記憶させる。
【0083】
データ入出力部430は、例えば、照合部420からの要求に応じて、所定の口座データと同一の口座に関連付けられた一群の顔画像をデータベース202から取得する。また、データ入出力部430は、例えば、照合部420から入力される新たな顔画像、取引金額データ及び口座データをデータベース202に記憶させる。また、データ入出力部430は、例えば、後述する特徴データ算出部440からの要求に応じて、所定の口座データと関連付けられた取引金額データをデータベース202から取得する。
【0084】
特徴データ算出部440は、照合部420による照合の結果を用いて、同一口座の取引の特徴を表す第2特徴データを算出する。かかる第2特徴データは、後述する判定部450での異常取引判定処理において所与の閾値と比較され、取引が例えば詐欺犯罪と関連している異常な取引か否かの判定に使用される。
【0085】
例えば、ユーザが数日間続けてキャッシュカードの引出限度額に近い引出取引をすることは不自然であると考えることができる。通常、複数の日に分けてキャッシュカードで引出取引を行うよりも、引出限度額を超える合計金額を1度に窓口で処理する方が、取引に要する手間や手数料は少ないためである。そこで、例えば、第2特徴データには、所定の期間にわたって同一口座からされた引出取引金額の合計値を含むことができる。ここでの所定の期間とは、例えば、取引の時点から過去5日間などであってよい。
【0086】
また、例えば、1つの口座は通常1人のユーザが所有するものであり、短期間に異なる人物により同一の口座から引出取引がされることは少ないと考えられる。例えば、夫婦間でキャッシュカードを受け渡し、夫名義の口座のカードで妻が引出取引をすることは想定されるが、3人以上の異なるユーザにより引出取引がされるケースは稀であると言える。そこで、例えば、第2特徴データには、所定の期間にわたって同一口座から引出取引をした異なる人物の人物数を含むことができる。ここでの所定の期間とは、例えば、取引の時点から過去1ヶ月間などであってよい。
【0087】
即ち、特徴データ算出部440は、まず、通信部410により受信された口座データと同一の口座に関連付けられた過去の取引金額データをデータ入出力部430を介してデータベース202から取得する。そして、特徴データ算出部440は、照合部420から入力される顔画像の照合の結果と上記取引金額データから上述した第2特徴データを算出し、算出した第2特徴データを判定部450へ出力する。
【0088】
判定部450は、照合部420による照合の結果及び取引金額データに基づいて算出された上記第2特徴データを用いて、端末装置100における金銭取引が異常取引であるか否かを判定する。
【0089】
例えば、判定部450は、上述したような所定の期間にわたって同一口座からされた引出取引金額の合計値が、第3の閾値(以下、閾値T3とする)を上回る場合に、金銭取引が異常取引であると判定してもよい。閾値T3は、例えば、端末装置100におけるキャッシュカードでの1日当たりの引出限度額が50万円であって、所定の期間が5日間である場合には、T3=50万円×5−1万円=249万円などであってよい。そうした場合には、5日間続けてユーザが引出限度額の引出取引をした場合にその取引を異常取引であると判定することができる。
【0090】
また、例えば、判定部450は、上述したような所定の期間にわたって同一口座から引出取引をした異なる人物の人物数が、第4の閾値(以下、閾値T4とする)を上回る場合に、金銭取引が異常取引であると判定してもよい。閾値T4は、例えば、3人などであってよい。
【0091】
判定部450は、このようにして金銭取引が異常取引であると判定した場合には、例えば、当該金銭取引に対する取引中止の指示を通信部410を介して端末装置100へ送信する。そうすると、端末装置100により、例えば、金銭取引を中止する旨のメッセージが画面上に表示され、取引が中止される。
【0092】
ここまで、図10を用いて、本実施形態に係る情報処理装置400の具体的な構成の一例について説明した。次に、かかる情報処理装置400により行われる取引検査処理の流れについて説明する。
【0093】
[2−3.処理の流れ]
図11は、本実施形態に係る情報処理装置400による取引検査処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0094】
図11を参照すると、まず、情報処理装置400の通信部410は、端末装置100から金銭取引を行っているユーザの顔画像と当該金銭取引に関する取引金額データ及び口座データとを受信する(S302)。ここで受信された顔画像、取引金額データ及び口座データは、照合部420へ入力される。
【0095】
次に、照合部420は、入力された顔画像とデータベース202に蓄積されている同一口座の一群の顔画像とを順次照合する(S304)。ここでの照合の結果は、特徴データ算出部440へ出力される。また、照合部420は、ステップS302において受信された顔画像、取引金額データ及び口座データを、データ入出力部430を介してデータベース220に保存する(S306)。
【0096】
次に、特徴データ算出部440により、同一口座の取引の特徴を表す上述した第2特徴データが算出される(S308)。ここで算出された第2特徴データは、判定部450へ出力される。次に、上記第2特徴データに基づいて、判定部450により異常取引判定処理が行われる(S310)。かかる異常取引判定処理の流れについては、後により詳細に説明する。
【0097】
ここで、判定部450により現在の金銭取引が詐欺犯罪に関連している可能性のある異常な取引であると判定された場合には、処理はステップS314へ進む。一方、現在の金銭取引が異常な取引であると判定されなかった場合には、情報処理装置400による取引検査処理は終了し、端末装置100と勘定系サーバ204との間の取引処理が進められる(S312)。
【0098】
ステップS314では、判定部450による判定結果を受けて、通信部410から端末装置100へ、取引を中止させるための指示が送信される(S314)。それにより、端末装置100において、例えば、ユーザに現在の取引が振り込め詐欺などの詐欺犯罪に関連している可能性があることを伝え、取引を中止する旨を通知するメッセージ表示される。
【0099】
図12は、図11に示したフローチャートにおける異常取引判定処理のより詳細な流れの一例を示すフローチャートである。
【0100】
図12を参照すると、情報処理装置400の判定部450は、まず、第2特徴データに含まれる、所定の期間にわたって同一口座からされた引出取引金額の合計値が、閾値T3を上回るか否かを判定する(S402)。ここで、当該合計値が閾値T3を上回っている場合には、判定部450は、現在の取引が異常取引であると判定する(S408)。一方、当該合計値が閾値T3を上回っていない場合には、処理はステップS404へ進む。
【0101】
次に、判定部450は、第2特徴データに含まれる、所定の期間にわたって同一口座から引出取引をした異なる人物の人物数が、閾値T4を上回るか否かを判定する(S404)。ここで、当該人物数が閾値T4を上回っている場合には、判定部450は、現在の取引が異常取引であると判定する(S408)。一方、当該人物数が閾値T4を上回っていない場合には、判定部450は、現在の取引が異常取引ではないと判定する(S406)。
【0102】
なお、判定部450による異常取引判定処理の流れはかかる例に限定されない。例えば、上記2つのパラメータの双方がそれぞれ閾値を上回っている場合に、現在の取引は異常取引であると判定されてもよい。
【0103】
ここまで、図11及び図12を用いて、本実施形態に係る情報処理装置400による取引検査処理の流れの一例について説明した。次に、かかる取引検査処理により異常取引であると判定され得る取引の例について説明する。
【0104】
[2−4.異常取引の例]
図13は、本実施形態において異常であると判定される取引の一例を示す説明図である。
【0105】
図13において、情報処理装置400の通信部410は、端末装置100から新たな顔画像IM23と取引金額データ及び口座データTD23とを受信したものとする。データTD23は、5月6日における取引金額50万円の口座Xからの引出取引を指定するデータである。
【0106】
この場合、情報処理装置400の照合部420は、例えば、口座Xに関連付けられた過去の顔画像IM21及び顔画像IM22を顔画像IM23と照合し、それぞれ同一人物であるか否かを判定する。図13の例では、顔画像IM21及び顔画像IM22は、共に顔画像IM23とは異なる人物が映っている画像であると判定されている。かかる照合の結果に基づき、例えば、特徴データ算出部440により、所定の期間にわたって同一口座から引出取引をした異なる人物の人物数は3人と計算される。そして、判定部450により、当該人物数と閾値T4とが比較される。図13の例では、人物数3人、閾値T4=2人であり、人物数の方が上回っているため、判定部450は、現在の取引は異常取引であると判定する。
【0107】
図14は、図13のように現在の取引が異常取引であると判定された場合に、端末装置100の画面に表示される取引中止のメッセージの一例を示す説明図である。
【0108】
図14を参照すると、画面122bに、取引を中止する旨を示すメッセージが示されている。それにより、取引処理システム2は、例えば振り込め詐欺の加害者が被害者を欺いて振り込ませた金銭を口座から引き出そうとした場合に、その引出取引を中止させることができる。
【0109】
ここまで、図9〜図14を用いて、本発明の第2の実施形態について具体的に説明した。かかる実施形態によれば、ATMなどに相当する端末装置100を操作するユーザの顔画像の照合結果及び取引金額データに加えて、口座データを用いて第2特徴データが計算される。そして、当該第2特徴データに基づいて、現在の金銭取引が異常取引であるか否かが判定される。それにより、例えばユーザが振り込め詐欺の加害者(詐取した金銭を引き出す“出し子”など)である可能性をも評価することが可能となり、その可能性に応じて取引を中止させることで、詐欺犯罪の被害を効果的に防止することができる。
【0110】
なお、本明細書では、ATMに相当する端末装置と異常取引の判定処理を行う情報処理装置とがネットワークを介して接続される例について主に説明した。しかしながら、例えば、本明細書で説明した異常取引の判定処理を自らスタンドアローンで行う端末装置が提供されてもよい。即ち、上述した第1の実施形態に係る端末装置100と情報処理装置200(及びデータベース202)、又は第2の実施形態に係る端末装置100と情報処理装置400(及びデータベース202)は、それぞれ一体的な端末装置として構成されてもよい。そうした場合には、当該端末装置は、例えば、図1に関連して説明した撮影装置102を用いてユーザの顔を撮影して顔画像を生成し、その顔画像を過去に撮影した他の顔画像と照合し、その照合の結果及び金銭取引における取引金額データに基づいて、金銭取引が異常取引であるか否かを判定する。
【0111】
また、第1の実施形態に係る異常取引判定処理と第2の実施形態に係る異常取引判定処理とを共に行う情報処理装置又は端末装置が提供されてもよい。
【0112】
また、第1及び第2の実施形態に係る一連の処理をハードウェアで実現するかソフトウェアで実現するかは問わない。一連の処理又はその一部をソフトウェアで実行させる場合には、ソフトウェアを構成するプログラムが、各装置に組み込まれたコンピュータを用いて実行される。より具体的には、ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置に設けられるROM(Read Only Memory)などの記録媒体に格納され、実行時にRAM(Random Access Memory)に読み込まれて、CPU(Central Processing Unit)により実行される。
【0113】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属すものと了解される。
【符号の説明】
【0114】
1,2 取引処理システム
100 端末装置(現金自動預け払い機)
102 撮影装置
104 ネットワーク
200,400 情報処理装置
202 データベース
204 勘定系サーバ
210,410 通信部
220,420 照合部
230,430 データ入出力部
240,440 特徴データ算出部
250,450 判定部
300 汎用端末装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる金銭取引のための操作が行われる端末装置から、ユーザの顔を撮影した顔画像と当該顔画像が撮影された際の前記金銭取引における取引金額データとを受信する通信部と;
前記通信部により受信された顔画像を過去に受信された他の顔画像と照合する照合部と;
前記照合部による照合の結果及び前記取引金額データに基づいて、前記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する判定部と;
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記照合部による照合の結果を用いて、同一人物による取引の特徴を表す第1特徴データを算出する特徴データ算出部、をさらに備え、
前記判定部は、前記特徴データ算出部により算出された前記第1特徴データを所定の閾値と比較することにより、前記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1特徴データは、所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引金額の合計値を含み、
前記判定部は、前記振込取引金額の合計値が所定の閾値を上回る場合には、前記金銭取引が異常取引であると判定する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1特徴データは、所定の期間にわたって同一人物によりされた振込取引の1回あたりの平均取引金額に対する前記通信部により受信された振込取引金額の倍率を含み、
前記判定部は、前記倍率が所定の閾値を上回る場合には、前記金銭取引が異常取引であると判定する、
請求項2又は請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記通信部は、さらに、前記金銭取引の対象となる口座を特定するための口座データを受信し、
前記情報処理装置は、前記通信部により受信された前記口座データと前記照合部による照合の結果とを用いて、同一口座の取引の特徴を表す第2特徴データを算出する特徴データ算出部、をさらに備え、
前記判定部は、前記特徴データ算出部により算出された前記第2特徴データを所定の閾値と比較することにより、前記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第2特徴データは、所定の期間にわたって同一口座から引出取引をした異なる人物の人物数を含み、
前記判定部は、前記人物数が所定の閾値を上回る場合には、前記金銭取引が異常取引であると判定する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記金銭取引が異常取引であると判定した場合に、当該金銭取引に対する警告又は取引中止の指示を前記端末装置へ送信する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
ユーザによる金銭取引のための操作が行われる端末装置との間で通信可能な情報処理装置を用いて:
前記端末装置からユーザの顔を撮影した顔画像と当該顔画像が撮影された際の前記金銭取引における取引金額データとを受信するステップと;
受信された顔画像を過去に受信された他の顔画像と照合するステップと;
前記照合の結果及び前記取引金額データに基づいて、前記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する判定ステップと;
を含む取引検査方法。
【請求項9】
ユーザによる金銭取引のための操作が行われる端末装置との間で通信可能な情報処理装置を制御するコンピュータを:
前記端末装置から、ユーザの顔を撮影した顔画像と当該顔画像が撮影された際の前記金銭取引における取引金額データとを受信する通信部と;
前記通信部により受信された顔画像を過去に受信された他の顔画像と照合する照合部と;
前記照合部による照合の結果及び前記取引金額データに基づいて、前記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する判定部と;
として機能させるための、プログラム。
【請求項10】
ユーザによる金銭取引のための操作が行われる端末装置であって:
ユーザの顔を撮影して顔画像を生成する撮影部と;
前記撮影部により生成された前記顔画像を過去に撮影された他の顔画像と照合する照合部と;
前記照合部による照合の結果及び前記金銭取引における取引金額データに基づいて、前記金銭取引が異常取引であるか否かを判定する判定部と;
を備える端末装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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