説明

情報処理装置、情報処理装置の制御方法、及びプログラム

【課題】ウィンドウ内に設定された表示対象領域のうち画面上で視認可能な領域を示す実表示領域に、オブジェクトの注目部分を、注目部分のサイズ及びオブジェクトのレイアウトを変えずに表示させる。
【解決手段】制御部は、ウェブページ表示対象領域(20)のうち他のウィンドウ(16a)に覆われていない領域である実表示領域に表示要素が表示されるよう、ウェブページが描画される描画対象領域(22)における表示要素及び実表示領域の位置、に基づいて基準点Pを設定する。例えば、(a)表示要素をそのままのサイズで実表示領域に表示させ、(b)基準点Pの移動によって生じる余白領域の面積を最小化し、又は(c)複数の表示要素のうち優先順位が相対的に高い表示要素を優先的に実表示領域内に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィンドウ内に設定された表示対象領域のうちの一部が画面に表示されない場合、当該表示されない視認不能な部分に配置される表示要素が画面上で視認できなくなる。そこで、下記特許文献では、表示対象領域の一部が視認不能になった場合に、表示対象領域を縮小しつつ、視認不能になった部分に配置されていたテキストのカーソル位置を、スクロール処理によりウィンドウ内の視認可能な部分に表示させること、が記載されている(例えば、特許文献1の図13)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−11263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献では、実表示部分の形状によらず、所定方向へのスクロールによりカーソル位置を移動させることから、視認不能な部分に表示されていたテキストの実表示部分における表示位置がほぼ限定される。そのため、視認不能な部分に配置されていた、例えば画像や表等の表示要素を実表示部分に表示させる場合、実表示部分における表示位置に十分なスペースがないと、表示要素のサイズを変更(例えば、縮小)しないかぎり、表示要素を実表示部分に表示させることができなくなる。
【0005】
また、上記特許文献の技術では、表示対象領域の一部が視認不能になった場合に、表示対象領域のサイズが所定方向に縮小される。そのため、テキストの記載方向によっては、表示要素のレイアウトが崩れてしまう。
【0006】
本発明の目的は、ウィンドウ内に設定された表示対象領域のうち画面上で視認可能な領域を示す実表示領域に、オブジェクトの注目部分を、注目部分のサイズ及びオブジェクトのレイアウトを変えずに表示させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る情報処理装置は、ウィンドウ内の表示対象領域に描画されている又は描画されるべきオブジェクトの注目部分の当該表示対象領域における位置を取得する取得手段と、前記表示対象領域のうちの画面上で視認可能な領域を示す実表示領域を特定する特定手段と、前記実表示領域に前記注目部分が表示されるよう、前記取得された注目部分の位置及び前記特定された実表示領域に基づいて前記オブジェクトが描画される位置を設定する設定手段と、を含むことを特徴とする。ここで、オブジェクトには、例えば、文書オブジェクト(例えば、Webページ等)、画像オブジェクト(例えば、電子マップ等)等が含まれるものとする。また、注目部分とは、例えば、文書オブジェクト内に配置されるコンテンツ(例えば、テキスト,リンク,画像等)内の1点又は少なくとも一部の領域、画像オブジェクト内の1点又は少なくとも一部の領域をいう。なお、前記オブジェクトは、例えば、前記表示対象領域の少なくとも一部の領域であって前記表示対象領域内の基準点により定まる描画対象領域に描画されてよい。この場合、前記設定手段は、前記実表示領域に前記注目部分が表示されるよう、前記注目要素の位置及び前記特定された実表示領域に基づいて前記基準点を設定すればよい。
【0008】
また、上記課題を解決するために本発明に係る情報処理装置の制御方法は、ウィンドウ内の表示対象領域に描画されている又は描画されるべきオブジェクトの注目部分の当該表示対象領域における位置を取得する取得ステップと、前記表示対象領域のうちの画面上で視認可能な領域を示す実表示領域を特定する特定ステップと、前記実表示領域に前記注目部分が表示されるよう、前記取得された注目部分の位置及び前記特定された実表示領域に基づいて前記オブジェクトが描画される位置を設定する設定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るプログラムは、ウィンドウ内の表示対象領域に描画されている又は描画されるべきオブジェクトの注目部分の当該表示対象領域における位置を取得する取得手段、前記表示対象領域のうちの画面上で視認可能な領域を示す実表示領域を特定する特定手段、前記実表示領域に前記注目部分が表示されるよう、前記取得された注目部分の位置及び前記特定された実表示領域に基づいて前記オブジェクトが描画される位置を設定する設定手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る情報記録媒体は、上記プログラムを記録したコンピュータ読取可能な情報記録媒体である。
【0011】
本発明によれば、注目部分の位置及び実表示領域に基づいてオブジェクトの描画される位置が設定されるので、オブジェクトの注目部分を実表示領域に、注目部分のサイズ及びオブジェクトのレイアウトを変えずに表示させることができる。
【0012】
本発明の一態様では、前記オブジェクトが描画される位置の設定は、「前記画面内における前記ウィンドウの位置に起因して前記注目部分の位置が前記実表示領域に含まれないと判定される場合」に、行われてもよい。すなわち、前記オブジェクトが描画される位置の設定は、「前記ウィンドウの位置に起因せずに前記注目部分の位置が前記実表示領域に含まれないと判定される場合」には行われなくてもよい。ここで、「前記画面内における前記ウィンドウの位置に起因して前記注目部分の位置が前記実表示領域に含まれないと判定される場合」とは、例えば、「前記ウィンドウの一部に他のウィンドウが重なるために前記注目部分の位置が前記表示対象領域のうち前記他のウィンドウが重なっていない部分(すなわち、実表示領域)に含まれないと判定される場合」や、「前記ウィンドウの一部が前記画面内にないために前記注目部分の位置が前記表示対象領域のうち前記画面内にある部分(すなわち、実表示領域)に含まれないと判定される場合」である。また、「前記ウィンドウの位置に起因せずに前記注目部分の位置が前記実表示領域に含まれないと判定される場合」とは、例えば、「いわゆるスクロールの結果、前記注目部分の位置が前記表示対象領域(すなわち、実表示領域)に含まれないと判定される場合」である。こうすれば、例えばスクロールにより前記注目部分の位置が実表示領域に含まれないと判定される場合には、前記オブジェクトの描画される位置の設定が行われないので、ユーザにストレスを感じさせないようにしつつ、オブジェクトの注目部分を実表示領域に表示させることができる。
【0013】
本発明の一態様では、前記取得手段は、前記表示対象領域内の複数の位置の各々について、当該位置が前記基準点として設定された場合における前記注目部分の前記表示対象領域における位置を取得し、前記情報処理装置は、前記複数の位置の各々について、当該位置について前記取得手段が取得した位置に基づき、当該位置が前記基準点として設定された場合における前記注目部分の前記実表示領域における露出量を評価する露出量評価手段をさらに含み、前記設定手段は、前記複数の位置の各々について得られた前記露出量評価手段の評価結果に基づいて、前記基準点を設定してもよい。こうすれば、注目部分の実表示領域における露出量を考慮して基準点を設定することが可能になる。例えば、注目部分を所定割合以上表示させることが可能な基準点を設定することが可能になる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記複数の位置の各々について、当該位置が前記基準点として設定された場合に生じる余白領域の量を、当該位置に基づいて評価する余白評価手段をさらに含み、前記設定手段は、前記複数の位置の各々について得られた、前記露出量評価手段の評価結果及び前記余白評価手段の評価結果、に基づいて前記基準点を設定してもよい。こうすれば、基準点が設定された場合に生じる余白領域を考慮して基準点を設定することも可能になる。例えば、余白領域を最小化することが可能な基準点を設定することも可能になる。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記オブジェクトは前記注目部分を複数含み、前記取得手段は、前記複数の位置の各々について、当該位置が前記基準点として設定された場合における各注目部分の前記表示対象領域における位置を取得し、前記露出量評価手段は、前記複数の位置の各々について、当該位置が前記基準点として設定された場合における各注目部分の露出量を評価し、前記設定手段は、前記複数の位置の各々について得られた各注目部分の露出量の評価結果に基づいて、前記基準点を設定してもよい。こうすれば、各注目部分の実表示領域における露出量を考慮して基準点を設定することが可能になる。例えば、なるべく多くの注目部分を実表示領域に表示させることが可能な基準点を設定することが可能になる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記複数の注目部分には優先順位が設定され、前記設定手段は、前記複数の位置の各々について得られた各注目部分の露出量の評価結果と、各注目部分の優先順位と、に基づいて、前記基準点を設定してもよい。こうすれば、各注目部分の優先順位を考慮して基準点を設定することが可能になる。そのため、例えば、優先順位が上位の注目部分を優先的に表示させることができる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記オブジェクトは優先順位が設定された複数の前記注目部分を含み、前記情報処理装置は、前記複数の注目部分のうちからいずれかの注目部分を優先順位に基づいて選択する選択手段をさらに含み、前記取得手段は、前記複数の位置の各々について、当該位置が前記基準点として設定された場合における、前記選択された注目部分の前記表示対象領域における位置を取得し、前記露出量評価手段は、前記複数の位置の各々について、当該位置について前記取得手段が取得した位置に基づき、当該位置が前記基準点として設定された場合における、前記選択された注目部分の露出量を評価してもよい。こうしても、各注目部分の優先順位を考慮して基準点を設定することが可能になる。そのため、例えば、優先順位が上位の注目部分を優先的に表示させることができる。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記複数の位置の各々について得られた評価結果が所定の条件を満足する場合に、前記設定手段による、当該評価結果に基づく前記基準点の設定を制限するとともに、優先順位に基づいて他の注目部分を再選択してもよい。こうすれば、例えば、基準点の設定の際に着目すべき注目部分を、優先順位に応じた順番で切り替えることができる。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記設定手段により前記基準点が設定されたとき、前記表示対象領域に表示される注目部分の優先順位を、前記設定手段により前記基準点がその初期位置とは異なる位置に設定される場合に下げてもよい。こうすれば、例えば、特定の注目部分だけが実表示領域に表示され続けるようなことがないように図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】サービス提供システムの構成を示す図である。
【図2】スクリーンの表示内容の一例を示す図である。
【図3】ウィンドウ管理テーブルの一例を示す図である。
【図4】スクリーンの表示内容の一例を示す図である。
【図5】ウィンドウBの一例を示す図である。
【図6】スクリーンの表示内容の遷移を示す図である。
【図7A】スクリーンの表示内容の遷移を示す図である。
【図7B】スクリーンの表示内容の遷移を示す図である。
【図8】ウィンドウBを示す図である。
【図9A】ウィンドウBを示す図である。
【図9B】ウィンドウBを示す図である。
【図10】ウィンドウBを示す図である。
【図11】ウィンドウBを示す図である。
【図12】ウィンドウBを示す図である。
【図13】ウェブデータの記述内容の一例を示す図である。
【図14】制御部が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【図15】制御部が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【図16】制御部が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【図17】制御部が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【図18】制御部が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【図19】制御部が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の例について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、サービス提供システム1の構成を示す図である。同図に示すように、サービス提供システム1は、ユーザのクライアントパーソナルコンピュータ4(以下、クライアントPC4と表記する。)と、インターネットサービス提供業者のウェブサーバ2と、を含む。ウェブサーバ2は、サービス提供業者が自社サービスをユーザに提供するためのサーバであり、クライアントPC4とウェブサーバ2とはネットワークを介して通信可能になっている。
【0023】
クライアントPC4は、制御部6と、記憶部8と、操作入力部10と、表示部12と、ネットワークインタフェース14(以下、ネットワークIF14と表記する。)と、を含む。
【0024】
制御部6は、マイクロプロセッサであり、記憶部8に記憶されるプログラムに従って各種情報処理を行う。記憶部8は、制御部6が情報処理を行う過程で必要となるデータを記憶する。また、記憶部8には、オペレーティングシステム、及びブラウザアプリケーション(プログラム)を含む複数のアプリケーションが記憶される。これらのアプリケーションは、DVD(登録商標)−ROM等のコンピュータ読取可能な情報記憶媒体から読み出されて記憶部8に格納されてもよいし、ネットワーク等の通信網から供給されて記憶部8に格納されてもよい。
【0025】
操作入力部10は、マウス及びキーボードなどであり、ユーザの操作内容を示す操作信号を制御部6に出力する。また、表示部12は、例えば液晶ディスプレイであり、制御部6から出力される情報をスクリーンに表示させる。また、ネットワークIF14は、クライアントPC4をネットワークに接続するための通信インタフェースである。
【0026】
ユーザは、ブラウザアプリケーションを利用することにより、ウェブサーバ2から配信されるウェブデータをウェブページ(オブジェクト(文書オブジェクト))としてブラウザウィンドウに表示させる。ウェブデータとは、マークアップ言語で記述されたデータであり、ここではHTML(HyperText Markup Language)データである。なお、ここではウェブデータをウェブサーバ2が配信することにより、ウェブデータがクライアントPC4に提供されるものとするが、ウェブデータは、上記サービス提供業者から提供されるDVD(登録商標)−ROM等のコンピュータ読取可能な情報記録媒体から読み出されてもよい。
【0027】
図2は、スクリーン(画面)の表示内容の一例を示す図である。同図に示すように、スクリーンには、各アプリケーションのウィンドウ16が表示されている。具体的には、ウィンドウ16aと、ウィンドウ16b、及びウィンドウ16cが表示されている。これらのウィンドウ16は、アプリケーションが起動したときにそのアプリケーションに対してオペレーティングシステムによって割り当てられ、オペレーティングシステムによって管理される。なお、スクリーンには、スクリーン左上の頂点を原点とするxy座標系が設定されており、xy座標系の座標値によりスクリーン内の任意の位置が特定される。
【0028】
以下、ウィンドウ16aをウィンドウAと表記し、ウィンドウ16bをウィンドウBと表記し、ウィンドウ16cをウィンドウCと表記する。ここでは、ウィンドウB(ウィンドウ)がブラウザアプリケーションのウィンドウであるものとする。
【0029】
図3は、オペレーティングシステムがウィンドウを管理するために用いるウィンドウ管理テーブルの一例を示す図である。ウィンドウ管理テーブルは、記憶部8に記憶される。同図に示すように、ウィンドウ管理テーブルには、各ウィンドウの左上の頂点の位置を示すxy座標系の座標値が格納される。ユーザがウィンドウを移動すると、オペレーティングシステムにより更新される。また、ウィンドウ管理テーブルには、各ウィンドウのサイズ、すなわち高さと幅と、が格納される。ウィンドウの左上の頂点の位置と、ウィンドウのサイズと、により、スクリーンにおけるウィンドウの領域が表される。
【0030】
また、ウィンドウ管理テーブルには、各ウィンドウの優先順位が格納される。オペレーティングシステムは、優先順位が低いウィンドウから順番にウィンドウの描画を行う。そのため、あるウィンドウの一部分がそのウィンドウより優先順位が上位の他のウィンドウと重なっている場合、その部分が他のウィンドウに覆われることになる。図4に、優先順位が「2」であるウィンドウBの一部が優先順位が「1」であるウィンドウAと重なっている場合における、スクリーンの表示内容の一例を示した。
【0031】
なお、オペレーティングシステムは、ユーザがいずれかのウィンドウを操作すると、そのウィンドウの優先順位を「1」に更新し、そのウィンドウより優先順位が相対的に上位であった他のウィンドウの優先順位を原則1つ下げる。
【0032】
次に、ブラウザアプリケーションのウィンドウであるウィンドウBについて説明する。
【0033】
図5は、ウィンドウBの一例を示す図である。同図に示すように、ウィンドウBは矩形形状を有し、バー領域18と、ウェブページ表示対象領域20(表示対象領域)と、を含む。
【0034】
バー領域18は、ウィンドウBの左上の頂点、点O、点O、及びウィンドウBの右上の頂点を頂点とする矩形形状の領域であり、例えばタイトルバー、メニューバー、及びアドレスバーなどが表示される。なお、点O、点OのウィンドウBにおける位置は、ブラウザアプリケーションにより、ウィンドウサイズに応じて適宜設定される。
【0035】
また、ウェブページ表示対象領域20は、上述のようにウィンドウBに含まれる領域であり、本実施形態の場合、点O、ウィンドウBの左下の頂点O、ウィンドウBの右下の頂点O、及び点Oを頂点とする矩形形状の領域である。ウィンドウBには、点Oを原点とするXY座標系が設定されており、XY座標系のXY座標値によりウェブページ表示対象領域20以内の任意の位置が表される。
【0036】
このウェブページ表示対象領域20には、その少なくとも一部に描画対象領域22(描画対象領域)が設定される。ここで、描画対象領域22は、ウェブページ表示対象領域20以内の位置である基準点Pを左上の頂点とし、点Oを右下の頂点とする矩形形状の領域である。この描画対象領域22に、複数の表示要素を含むウェブページが描画される。基準点Pにより描画対象領域22が定まる。そのため、基準点Pによりウェブページが描画される位置が定まることになる。表示要素は、画像、テキスト、及び動画などであり、ここでは、ウェブページの一部を占めるバナー画像である。また、ここでは、ウェブページに表示要素Aと表示要素Bとが含まれているものとする。また、ここでは、サービス提供業者は、表示要素Aのことを表示の優先順位が一位の表示要素と認識し、表示要素Bのことを表示の優先順位が二位の表示要素と認識しているものとする。
【0037】
基準点Pによりウェブページ表示対象領域20と描画対象領域22との間のマージンが規定される。すなわち、基準点PのX座標値「X」により、ウェブページ表示対象領域20と描画対象領域22との間の左マージンの幅が規定され、基準点PのY座標値「Y」により、上マージンの幅が規定される。図5では、マージン基準点Pが点Oに設定されている。つまり、X及びYの双方とも「0」である。従って、ウェブページ表示対象領域20と描画対象領域22とが一致している。なお、基準点PのX座標値「X」により、ウェブページ表示対象領域20と描画対象領域22との間の右マージンの幅が規定されてもよいし、基準点PのY座標値「Y」により、下マージンの幅が規定されてもよい。ここでは、上述のように、基準点PのX座標値「X」により、ウェブページ表示対象領域20と描画対象領域22との間の左マージンの幅が規定され、基準点PのY座標値「Y」により、上マージンの幅が規定されるものとする。
【0038】
図6、図7A、及び図7Bは、スクリーンの表示内容の遷移を示す図である。上記のようなサービス提供システム1では、優先順位が「1」のウィンドウAと、優先順位が「2」のウィンドウBと、が離れている場合(図6参照)において、ユーザがウィンドウAをウィンドウBの方へ移動させると、ウィンドウBのうちウィンドウAに覆われた部分がスクリーンに表示されなくなり、視認不能になる。この場合、ウィンドウAに覆われた部分に表示要素Aと表示要素Bとが位置していると、図7Aに示すように、表示要素Aと表示要素Bとがスクリーンに表示されなくなる。
【0039】
また、例えば、ユーザがウィンドウBを移動させることによって、図7Bに示すように、ウィンドウBのうちスクリーン外にはみ出た部分がスクリーンに表示されなくなり、視認不能になる。点線で示した部分が、スクリーン外にはみ出た部分を示している。この場合、スクリーン外にはみ出た部分に表示要素Aと表示要素Bとが位置していると、表示要素Aと表示要素Bとがスクリーンに表示されなくなる。
【0040】
この点、このクライアントPC4では、ウィンドウBの表示要素が図7A及び図7Bに示す原因でスクリーンに表示されなくなる場合に、以下の対処がとられるようになっている。
【0041】
以下、この点につき説明する。なお、ウェブページ表示対象領域20のうち他のウィンドウに覆われている部分や、ウェブページ表示対象領域20のうちスクリーン外にはみ出ている部分のことを、視認不能領域と呼ぶ。図7Aに示す場合、点Oを左上の頂点とし、ウィンドウAの右下の頂点を右下の頂点とする矩形形状の領域が、視認不能領域に該当する。また、ウェブページ表示対象領域20のうち視認不能領域を除く視認可能な領域のことを実表示領域と呼ぶ。
【0042】
すなわち、このクライアントPC4では、図7Aに示す場合に、制御部6が、ウェブページのレイアウトを変えずに表示要素Bより優先順位が上位の表示要素Aが優先的に実表示領域内に表示されるよう、基準点Pを移動させる。図8に基準点Pを下方向(Y軸のプラス方向)に移動させた後のウィンドウBを示した。
【0043】
クライアントPC4の特徴はこれだけではない。例えば、表示要素Aを実表示領域内に表示させるだけなら、常に、図8と同様に基準点Pを単に下方向に移動させればよい。しかしながら、図9Aに示す場合、基準点Pを下方向に移動させても、実表示領域の形状及びサイズと表示要素Aの形状及びサイズとの関係で、表示要素Aの全部を格納可能なスペースがなく、そのままのサイズでは表示要素Aを実表示領域内に表示させることができなくなる。この点、このクライアントPC4では、表示要素Aをそのままのサイズで実表示領域に表示させられるよう、基準点Pを移動させる。図9Bに基準点Pを右方向(X軸のプラス方向)に移動させた後のウィンドウBを示した。
【0044】
クライアントPC4の特徴はまだある。例えば、図7Aに示す場合において、表示要素Aを実表示領域内に表示させるだけなら、図10に示すようにして、基準点Pを右方向に移動させてもよい。しかしながら、図10に示す場合、基準点Pの移動によって生じるハッチング部分(以下、余白領域と表記する)が大きく、ウェブページ表示対象領域20の有効利用が図れない。この点、このクライアントPC4では、図8に示すように、制御部6が、基準点Pの移動によって生じる余白領域の面積(基準点PのX座標の増分とY座標の増分との積)が最小となるように、基準点Pを移動させる。
【0045】
クライアントPC4の特徴はまだある。例えば、図11に示す場合、表示要素Aの全部を格納可能なスペースが実表示領域内のどこにもないため、基準点Pをどこへ移動させても、表示要素Aの全部を実表示領域内に表示させることができない。
【0046】
この点、このクライアントPC4では、実表示領域内に表示要素Aを格納可能なスペースがない場合に、図12に示すように、制御部6が、優先順位が表示要素Aより相対的に下位のいずれかの表示要素(ここでは、一つ下位の表示要素B)が実表示領域内に表示されるよう、基準点Pを移動させるようにもなっている。なお、この場合においても、制御部6は、余白領域の面積が最小となるように、基準点Pを移動させるようになっている。
【0047】
以下、クライアントPC4で行われる処理について説明する。まず、描画対象領域22にウェブページを描画するためのウェブデータについて説明する。
【0048】
図13は、ウェブデータであるHTMLデータの記述内容の一例を示す図である。同図に示すように、ウェブデータには、HTML文書であることを示す<html>タグと</html>タグとが記述される。
【0049】
また、<body>タグと</body>タグとが記述されている。<body>タグと</body>タグとの間に上記サービス提供業者により記述されたスクリプトが記述される。このスクリプトは基準点Pを決定するためのスクリプト部分であり、各表示要素に関する情報(ソース、表示サイズ、ウェブページにおける配置等)や各表示要素の優先順位、及び基準点Pを決定するためのアルゴリズムなどが記述されている。ブラウザアプリケーション(すなわち、制御部6)は、上記スクリプトによって決定された基準点Pをもとに、パーシング処理及びレンダリング処理を順番に行うことになる。なお、パーシング処理では、基準点Pの座標値(X、Y)や各表示要素に関する情報に基づいて、各表示要素の描画領域(位置)を示すXY座標値が所定のパーシングアルゴリズムに従って算出され、レンダリング処理では、パーシング結果に基づいてウェブページが描画対象領域22に描画されることになる。
【0050】
図14は、ブラウザアプリケーションに従って動作する制御部6が、基準点Pを決定すべく、上記スクリプトに従って実行する処理を例示する図である。この処理は、クライアントPC4がウェブデータを受信したタイミング、いずれかのウィンドウがユーザにより操作されたタイミング、この処理を前回実行してから所定の時間が経過したタイミング等で実行されるとよい。
【0051】
まず、制御部6は、第1スクリプト部分に記述されている各表示要素の優先順位を読み出し(S101)、これらのうちの複数の注目表示要素を優先順位の昇順でソートする(S102)。注目表示要素が注目部分に相当する。ここでは、ウェブページに含まれる表示要素のそれぞれを注目表示要素としているが、優先順位が1〜n(nは例えば3)番目の表示要素が注目表示要素として選択されてもよい。なお、以下、注目表示要素のそれぞれをC(i=1〜N)と表記する。「i」が小さいほど優先順位が上位であることを示す。
【0052】
そして、制御部6(選択手段)は、優先順位が最も上位の注目表示要素C(i=1)を選択し(S103)、記憶部8に記憶される評価値Eに初期値Einiを設定する(S104)。ここで、Einiの値は、「X」の上限値「Xmax」と「Y」の上限値「Ymax」との積に設定されている。また、制御部6は、基準点Pを点O(初期位置)に設定する(S105)。
【0053】
そして、制御部6(取得手段)は、上記パーシング処理を行う(S106)。パーシング処理により、各表示要素の描画領域を示すXY座標値が算出される。
【0054】
そして、制御部6は、実表示領域を特定する(S107)。図14に示す処理手順の場合、制御部6は、ウィンドウ管理テーブルの記憶内容をオペレーティングシステムから受け取り、自ウィンドウの一部がスクリーン外にはみ出ている場合、ウェブページ表示対象領域20のうちスクリーン外にはみ出ていない部分を示すXY座標値を実表示領域を示すXY座標値として算出する。例えば、自ウィンドウの左端部がスクリーン外にはみ出ている場合、すなわち、自ウィンドウの左上頂点のx座標値が「0」未満である場合、制御部6は、当該頂点のx座標値からウェブページ表示対象領域20のうちスクリーン外にはみ出ていない部分(すなわち、実表示領域)の左端のX座標値を求め、求めたX座標値に基づいて実表示領域を示すXY座標値を算出する。
【0055】
自ウィンドウの左端部がスクリーン外にはみ出ていない場合、制御部6は、自ウィンドウより優先順位が上位のウィンドウがない場合や、自ウィンドウより優先順位が上位の他のウィンドウがあっても自ウィンドウの全頂点が当該他のウィンドウ内にない場合に、ウェブページ表示対象領域20を示すXY座標値を実表示領域として特定する。一方、例えば自ウィンドウのいずれかの頂点が他のウィンドウ内にある場合は、制御部6は、自ウィンドウのうち当該他のウィンドウに覆われていない部分を示すXY座標値を実表示領域を示すXY座標値として算出する。すなわち、制御部6は、例えば自ウィンドウの左上頂点が他のウィンドウ内にある場合、自ウィンドウの左上頂点のxy座標値と、他のウィンドウの右下頂点のxy座標値と、の関係から、ウェブページ表示対象領域20のうち他のウィンドウに覆われている部分の右下頂点のXY座標値を特定し、特定したXY座標値に基づいて実表示領域を示すXY座標値を算出する。
【0056】
そして、制御部6(露出量評価手段)は、注目表示要素Cが実表示領域に表示されるか否かを判定する(S108)。すなわち、制御部6は、注目表示要素Cの描画領域が、実表示領域に含まれるか否かを判定する。注目表示要素Cの描画領域が実表示領域に含まれる場合、注目表示要素Cが実表示領域に表示されると判定され、注目表示要素Cの描画領域が実表示領域に含まれない場合、注目表示要素Cが実表示領域に表示されないと判定される。
【0057】
なお、「注目表示要素Cの描画領域が所定割合r以上実表示領域に含まれる場合」が、「注目表示要素Cが実表示領域に表示される場合」と定義し、かつ、「注目表示要素Cの描画領域が所定割合r未満しか実表示領域に含まれない場合」が、「注目表示要素Cが実表示領域に表示されない場合」と定義してもよい。
【0058】
注目表示要素Cが実表示領域に表示される場合(S108のYes)、基準点Pが初期位置(すなわち、点O)に位置していなければ(S109のNo)、制御部6(余白評価手段)が、余白領域(図8等参照)の面積を評価するための「X」及び「Y」の余白評価関数E(X、Y)の関数値を算出する。ここでは、E(X、Y)は「X」と「Y」との積として表される。余白領域の面積が小さいほどE(X、Y)の値は小さくなる。そして、制御部6(設定手段)は、E(X、Y)の関数値が記憶部8に記憶される評価値E未満であるか否かを判定する(S110)。
【0059】
E(X、Y)の関数値が評価値E未満である場合(S110のYes)、制御部6(設定手段)は、余白領域の面積の最小化のために、評価値Eの値をE(X、Y)の関数値に更新する。また、制御部6(設定手段)は、記憶部8に記憶される候補値「X」及び候補値「Y」の値を、それぞれ「X」、「Y」に更新する(S111)。
【0060】
なお、注目表示要素Cが実表示領域に表示されると判定されなかった場合(S108のNo)、現在の基準点Pだと注目表示要素Cが実表示領域に表示されなくなるので、S112のステップに進む。また、S108のステップで注目表示要素Cが実表示領域に表示されると判定されても、E(X、Y)の関数値が評価値Eを超える場合(S110のYes)、現在の基準点Pだと余白領域の面積が最小にはならないので、注目表示要素Cが実表示領域に表示されると判定されなかった場合と同様に、S112のステップに進む。
【0061】
S112及びS113のステップでは、基準点Pを、ラスタスキャンニングに応じた移動経路でウェブページ表示対象領域20内を移動させるための処理を実行する。すなわち、制御部6は、「X」が「Xmax」以上であるか否かを判定し(S112)、「X」が「Xmax」以上でない場合(S112のNo)は、基準点Pを右にΔXだけずらす(S112a)。一方、「X」が「Xmax」以上である場合(S112のYes)、基準点Pが移動経路の終点に到達したか否かを判定するために、制御部6は、「Y」が「Ymax」以上であるか否かを判定する(S113)。「Y」が「Ymax」以上でない場合(S113のNo)、制御部6は、基準点Pが移動経路の終点にまだ到達していないので、基準点Pを下にΔYだけずらしつつウェブページ表示対象領域20の左端に移動させる(S113a)。なお、ΔX及びΔYには、適当な正の実数を設定することができる。
【0062】
一方、「Y」が「Ymax」以上である場合(S113のYes)、基準点Pが移動経路の終点に到達したので、制御部6(設定手段)は、移動経路のうちに注目表示要素Cを実表示領域に表示させることのできる基準点Pの候補があったか否かを判定するために、評価値Eが初期値Eini(=Xmax×Ymax)未満であるか否かを判定する(S114)。評価値Eが初期値Eini未満であるということは、移動経路のうちに注目表示要素Cを実表示領域に表示させることのできる基準点Pの候補が存在することを意味し、評価値Eが初期値Einiと等しいということは、そのような候補が移動経路のうちに存在しなかったことを意味している。
【0063】
そのため、制御部6(設定手段)は、評価値Eが初期値Eini未満である場合(S114のYes)、「X」を候補値「X」に設定し、且つ、「Y」を候補値「Y」に設定する(S115)。この場合、基準点Pが点O以外の位置に設定される。
【0064】
一方、評価値Eが初期値Einiと等しい場合(S114のNo)、注目表示要素Cを実表示領域に表示させることのできる基準点Pの候補が存在しないので、制御部6(選択手段)は、注目表示要素Cが最後の注目表示要素Cであるか否かを判定し(S116)、注目表示要素Cが最後の注目表示要素Cでなければ(S116のNo)、注目表示要素Cの次の注目表示要素を新たな注目表示要素Cとして再選択し(S116a)、S104以降のステップを再実行する。
【0065】
一方、注目表示要素Cが注目表示要素Cである場合(S116のYes)、いずれかの注目表示要素を実表示領域に表示させることのできる基準点Pの候補が移動経路のうちに一つもないので、基準点Pを点Oに設定する(S117)。
【0066】
図14に示す処理で基準点Pを設定した後、制御部6は、描画対象領域22にウェブページを描画することとなる。
【0067】
こうすれば、例えば、図8及び図12に示すようにして表示要素Aを実表示領域に表示させることができるようになる。すなわち、表示要素Aを、サイズを変えずに、実表示領域に表示させることできる。また、表示要素Aを、余白領域の面積を最小にしつつ、実表示領域に表示させることもできる。
【0068】
なお、余白領域の面積の最小化を必要としないのであれば、制御部6は、図14に示す処理の代わりに図15に示す処理を実行してもよい。以下、図15に示す処理について説明する。なお、以下、図14に示す処理のことを第1処理態様と表記し、図15に示す処理のことを第2処理態様と表記する。
【0069】
すなわち、制御部6は、S101のステップと同様の処理を実行して、各表示要素の優先順位を取得する(S201)。また、S102のステップと同様の処理を実行して、複数の注目表示要素を優先順位の昇順でソートする(S202)。
【0070】
そして、制御部6は、第1処理態様と同様にして、注目表示要素Cを順次選択し、基準点Pを点Oから上記移動経路に沿って移動させながら、注目表示要素Cを実表示領域に表示させることができる基準点Pの位置を探す。
【0071】
但し、第2処理態様では、第1処理態様とは異なり、余白評価関数E(X、Y)の関数値の算出は行われず、注目表示要素Cが実表示領域に表示されると判定された時点で処理が終了する。
【0072】
すなわち、制御部6は、S103のステップと同様に、優先順位が最も上位の注目表示要素C(i=1)を選択する(S203)。そして、制御部6は、S104のステップと同様の処理を行わずに、S105のステップと同様の処理を実行して基準点Pを点Oに設定する(S204)。
【0073】
そして、第1処理態様と同様に、制御部6は、パーシング処理(S205)、実表示領域の特定(S206)、及び、注目表示要素Cが実表示領域に表示されるか否かの判定(S207)、を実行する。
【0074】
注目表示要素Cが実表示領域に表示されないと判定した場合(S207のYes)、制御部6は、第1処理態様と同様に、基準点Pを上記移動経路に沿って移動させるための処理を実行する(S208、S208a、S209、及びS209a)。
【0075】
一方、注目表示要素Cが実表示領域に表示されると判定した場合(S207のYes)、制御部6は、S109乃至S111のステップと同様の処理を行わずに、その時点で処理を終了する。
【0076】
なお、基準点Pが移動経路の終点に到達した場合(S209のYes)、制御部6は、注目表示要素Cが最後の注目表示要素Cであるか否かを判定し(S210)、注目表示要素Cが最後の注目表示要素Cでなければ(S210のNo)、注目表示要素Cの次の注目表示要素を新たな注目表示要素Cとして再選択し(S210a)、S204以降のステップを再実行する。
【0077】
一方、注目表示要素Cが注目表示要素Cである場合(S210のYes)、いずれかの注目表示要素を実表示領域に表示させることのできる基準点Pの候補が移動経路のうちに一つもないので、制御部6は、基準点Pを点Oに設定する(S211)。
【0078】
ところで、第1処理態様及び第2処理態様では、制御部6は、選択した注目表示要素のみに着目して、基準点Pを設定している。こうすることで、制御部6は、選択した注目表示要素を実表示領域に確実に表示させるようにしている。ただし、第1処理態様及び第2処理態様では、選択された注目表示要素のみに着目しており、選択された注目表示要素以外の注目表示要素の存在までは考慮されていない。
【0079】
そこで、制御部6は、なるべく多くの注目表示要素を実表示領域に表示させるために、図14に示す処理の代わりに図16に示す処理(第3処理態様)を実行してもよい。以下、第3処理態様を説明する。
【0080】
まず、制御部6は、S101のステップと同様にして各表示要素の優先順位を取得する(S301)。そして、制御部6は、S102のステップの処理と同様にして、複数の注目表示要素を優先順位の昇順でソートし(S302)、基準点Pを点Oに設定する(S303)。
【0081】
そして、制御部6は、S304〜S317aのステップの処理を実行することにより、どれだけ多くの注目表示要素が実表示領域に表示されるかという観点を中心に、上記移動経路上の各位置を評価する。また、制御部6は、特にS314及びS315のステップの処理を実行することで、評価が最もよい位置を特定する。
【0082】
すなわち、制御部6は、最大評価値Emaxの値を初期値「0」に初期化して(S304)、パーシング処理を行う(S305)。
【0083】
そして、制御部6は、S107のステップと同様の処理を実行して、実表示領域を特定し(S306)、優先順位が最も上位の注目表示要素C(すなわち、C)を選択する(S307)。また、制御部6は、評価値Eの値を初期値「0」に初期化する(S308)。
【0084】
そして、制御部6は、S309乃至S312aのステップを実行することにより、各注目表示要素Cにつき個別評価値E(r)を算出し、これらの総和である上記評価値Eを算出する。
【0085】
すなわち、制御部6(露出量評価手段)は、注目表示要素Cの表示割合rを算出する(S309)。ここでは、表示割合rは、注目表示要素Cの描画領域のうち実表示領域に含まれる領域の面積の、当該描画領域の面積に対する割合である。
【0086】
そして、制御部6は、個別評価値E(r)を算出する(S310)。ここで、個別評価値E(r)は、注目表示要素Cの優先順位「i」及び注目表示要素Cの表示割合rの関数値である。本実施形態の場合、個別評価値E(r)は次式で表される。
(r)=0 (r<rのとき)
(r)=(N+1−i)/N (r≧rのとき)
【0087】
ここで、rは、基準割合であり、ここでは、「1」である。そのため、注目表示要素Cの描画領域の全部が実表示領域に含まれていないと、E(r)の関数値が「0」になる。なお、個別評価値E(r)は、次式で表されてもよい。
(r)=((N+1−i)/N)×r
【0088】
個別評価値E(r)は、優先順位「i」の減少関数となっている。そのため、評価値Eも、優先順位「i」の減少関数となっている。また、個別評価値E(r)は、注目表示要素Cの表示割合rの増加関数になっている。そのため、評価値Eも、注目表示要素Cの表示割合rの増加関数になっている。
【0089】
個別評価値E(r)を算出すると、制御部6は、算出した個別評価値E(r)を評価値Eに加算し(S311)、注目表示要素Cが優先順位が最も下位の注目表示要素Cでなければ(S312のNo)、注目表示要素Cより優先順位が一つ下位の注目表示要素を選択し(S312a)、S309のステップに戻る。
【0090】
評価値Eを算出すると(S312のYes)、制御部6は、現位置の評価を示す位置評価値Eを算出する(S313)。位置評価値Eの値が大きいほど評価が良いことを示す。具体的には、制御部6は、第1処理態様とは異なる余白評価関数E(X、Y)の関数値を算出し、余白評価関数E(X、Y)の関数値と評価値Eとの積を、位置評価値Eとして算出する。ここで、余白評価関数E(X、Y)は、次式で表される。
【0091】
E(X、Y)=((Xmax×Ymax)−(X×Y))/(Xmax×Ymax
【0092】
上述したように、余白領域の面積が小さいほど「X×Y」の値は小さくなる。そのため、余白評価関数E(X、Y)の関数値は、余白領域の面積が小さいほど大きくなる。従って、位置評価値Eは、余白評価関数E(X、Y)の関数値の増加関数であるから、余白領域の面積が小さいほど評価が良くなる。
【0093】
なお、上述のように、評価値Eは、注目表示要素Cの表示割合rの増加関数となっている。従って、位置評価値Eも注目表示要素Cの表示割合rの増加関数となる。従って、実表示領域に表示される注目表示要素の数が多いほど、評価が良くなる。また、評価値Eは、優先順位「i」の減少関数ともなっている。従って、位置評価値Eも優先順位「i」の減少関数となるので、実表示領域に表示される注目表示要素の優先順位が上位であるほど、評価が良くなる。
【0094】
そして、制御部6(設定手段)は、位置評価値Eが最大評価値Emaxより大きいか否かを判定する(S314)。位置評価値Eが最大評価値Emax以下である場合(S314のNo)、制御部6は、基準点を移動させるために、S316のステップに進む。一方、位置評価値Eが最大評価値Emaxより大きい場合(S314のYes)、制御部6は、最大評価値Emaxを位置評価値Eに更新したり、候補値「X」及び候補値「Y」の値を、それぞれ「X」、「Y」に設定したりしてから(S315)、S316のステップに進む。
【0095】
S316乃至S317aのステップでは、基準点Pを移動させるための処理が行われる。すなわち、制御部6は、「X」が「Xmax」以上であるか否かを判定し(S316)、「X」が「Xmax」以上でない場合(S316のNo)は、基準点Pを右にΔXだけずらす(S316a)。一方、「X」が「Xmax」以上である場合(S316のYes)、基準点Pが移動経路の終点に到達したか否かを判定するために、制御部6は、「Y」が「Ymax」以上であるか否かを判定する(S317)。「Y」が「Ymax」以上でない場合(S317のNo)、制御部6は、基準点Pが移動経路の終点にまだ到達していないので、基準点Pを下にΔYだけずらしつつウェブページ表示対象領域20の左端に移動させる(S317a)。なお、ΔX及びΔYには、適当な正の実数を設定することができる。
【0096】
基準点Pが移動経路の終点に到達すると(S317のYes)、制御部6(設定手段)は、最も評価が位置を基準点Pとして設定すべく、位置(X、Y)を基準点Pとして設定する(S318)。
【0097】
上述のように、実表示領域に表示される注目表示要素の数が多いほど、評価が良くなる。従って、第3処理態様によれば、なるべく多くの注目表示要素を実表示領域に表示させることができる。また、上述のように、実表示領域に表示される注目表示要素の優先順位が上位であるほど、評価が良くなる。従って、優先順位が上位の注目表示要素を優先的に実表示領域に表示させることもできる。また、上述のように、余白領域の面積が小さいほど評価が良くなるので、余白領域の軽減を図ることもできる。
【0098】
なお、第3処理態様でも、第1処理態様と同様、図8及び図12に示すようにして表示要素Aを実表示領域に表示させることができるようになる。この場合、個別評価値E(r)や余白評価関数E(X、Y)の定義式を適宜設定すればよい。
【0099】
なお、本発明の実施形態は上記実施形態だけに限らない。
【0100】
例えば、上記実施形態では、「ウィンドウ」は、ブラウザアプリケーションのウィンドウBに限らず、いかなる種類のアプリケーションのウィンドウであってもよい。例えば、ドキュメントアプリケーションのウィンドウが「ウィンドウ」に相当していてもよい。
【0101】
また、例えば、制御部6は、基準点Pが設定されたときに実表示領域に表示される注目表示要素の優先順位を、基準点Pが点Oとは異なる位置に設定される場合に下げてもよい。こうすれば、特定の注目表示要素(例えば、優先順位が上位の注目表示要素)ばかりが優先的に実表示領域に表示されるようなことがないように図ることができる。この場合、第1処理態様では、S115のステップ後に制御部6が下記の処理を行えばよい。すなわち、制御部6が、図17に示すように、S115のステップの後、注目表示要素Cの優先順位を下げればよい(S115a)。また、第2処理態様では、注目表示要素Cが表示されると判定された場合(S207のYes)に、制御部6が下記の処理を行えばよい。すなわち、図18に示すように、制御部6が、基準点Pが点Oであるか否かを判定し(S207a)、基準点Pが点Oでない場合に(S207aのNo)、注目表示要素Cの優先順位を下げればよい(S207b)。
【0102】
また、第3処理態様では、制御部6が下記の処理を追加で行えばよい。すなわち、図19に示すように、制御部6は、S308のステップの後、要素集合Sを空集合に初期化することを行う(S308a)。また、制御部6は、S309のステップで表示割合rを算出すると、表示割合rが基準割合r以上であるか否かを判定し(S309a)、表示割合rが基準割合r以上である場合に(S309aのNo)、要素集合Sに注目表示要素Cを追加することも行う(S309b)。また、制御部6は、位置評価値Eが最大評価値Emaxを超える場合に(S314のYes)、S315のステップの処理だけでなく、要素集合Sを候補集合Sとして設定することも行う(S315a)。また、制御部6は、S318のステップで基準点Pを設定すると、設定された基準点Pが点Oであるか否かを判定し(S318a)、基準点Pが点Oでない場合に(S318aのNo)、候補集合Sに属する注目表示要素の優先順位を下げる(S318b)
【符号の説明】
【0103】
1 サービス提供システム、2 ウェブサーバ、4 クライアントPC、6 制御部、8 記憶部、10 操作入力部、12 表示部、14 ネットワークインタフェース、16,16A,16B,16C ウィンドウ、18 バー領域、20 ウェブページ表示対象領域、22 描画対象領域、O,O,O,O 点、P 基準点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドウ内の表示対象領域に描画されている又は描画されるべきオブジェクトの注目部分の当該表示対象領域における位置を取得する取得手段と、
前記表示対象領域のうちの画面上で視認可能な領域を示す実表示領域を特定する特定手段と、
前記実表示領域に前記注目部分が表示されるよう、前記取得された注目部分の位置及び前記特定された実表示領域に基づいて前記オブジェクトが描画される位置を設定する設定手段と、
を含む情報処理装置。
【請求項2】
前記設定手段は、
前記画面内における前記ウィンドウの位置に起因して前記注目部分の位置が前記実表示領域に含まれないと判定される場合に、前記実表示領域に前記注目部分が表示されるよう、前記取得された注目部分の位置及び前記特定された実表示領域に基づいて前記オブジェクトが描画される位置を設定すること、
を特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記オブジェクトは、前記表示対象領域の少なくとも一部の領域であって前記表示対象領域内の基準点により定まる描画対象領域に描画され、
前記設定手段は、
前記実表示領域に前記注目部分が表示されるよう、前記取得された注目部分の位置及び前記特定された実表示領域に基づいて前記基準点を設定すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得手段は、
前記表示対象領域内の複数の位置の各々について、当該位置が前記基準点として設定された場合における前記注目部分の前記表示対象領域における位置を取得し、
前記情報処理装置は、
前記複数の位置の各々について、当該位置について前記取得手段が取得した位置に基づき、当該位置が前記基準点として設定された場合における前記注目部分の前記実表示領域における露出量を評価する露出量評価手段をさらに含み、
前記設定手段は、
前記複数の位置の各々について得られた前記露出量評価手段の評価結果に基づいて、前記基準点を設定すること、
を特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記複数の位置の各々について、当該位置が前記基準点として設定された場合に生じる余白領域の量を、当該位置に基づいて評価する余白評価手段をさらに含み、
前記設定手段は、
前記複数の位置の各々について得られた、前記露出量評価手段の評価結果及び前記余白評価手段の評価結果、に基づいて前記基準点を設定すること、
を特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記オブジェクトは前記注目部分を複数含み、
前記取得手段は、
前記複数の位置の各々について、当該位置が前記基準点として設定された場合における各注目部分の前記表示対象領域における位置を取得し、
前記露出量評価手段は、
前記複数の位置の各々について、当該位置が前記基準点として設定された場合における各注目部分の露出量を評価し、
前記設定手段は、
前記複数の位置の各々について得られた各注目部分の露出量の評価結果に基づいて、前記基準点を設定すること、
を特徴とする請求項4又は5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記複数の注目部分には優先順位が設定され、
前記設定手段は、
前記複数の位置の各々について得られた各注目部分の露出量の評価結果と、各注目部分の優先順位と、に基づいて、前記基準点を設定すること、
を特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記オブジェクトは優先順位が設定された複数の前記注目部分を含み、
前記情報処理装置は、
前記複数の注目部分のうちからいずれかの注目部分を優先順位に基づいて選択する選択手段をさらに含み、
前記取得手段は、
前記複数の位置の各々について、当該位置が前記基準点として設定された場合における、前記選択された注目部分の前記表示対象領域における位置を取得し、
前記露出量評価手段は、
前記複数の位置の各々について、当該位置について前記取得手段が取得した位置に基づき、当該位置が前記基準点として設定された場合における、前記選択された注目部分の露出量を評価すること、
を特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記選択手段は、
前記複数の位置の各々について得られた評価結果が所定の条件を満足する場合に、前記設定手段による、当該評価結果に基づく前記基準点の設定を制限するとともに、優先順位に基づいて他の注目部分を再選択すること、
を特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記設定手段により前記基準点が設定されたとき、前記表示対象領域に表示される注目部分の優先順位を、前記設定手段により前記基準点がその初期位置とは異なる位置に設定される場合に下げる手段、
をさらに含むことを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項11】
ウィンドウ内の表示対象領域に描画されている又は描画されるべきオブジェクトの注目部分の当該表示対象領域における位置を取得する取得ステップと、
前記表示対象領域のうちの画面上で視認可能な領域を示す実表示領域を特定する特定ステップと、
前記実表示領域に前記注目部分が表示されるよう、前記取得された注目部分の位置及び前記特定された実表示領域に基づいて前記オブジェクトが描画される位置を設定する設定ステップと、
を含む情報処理装置の制御方法。
【請求項12】
ウィンドウ内の表示対象領域に描画されている又は描画されるべきオブジェクトの注目部分の当該表示対象領域における位置を取得する取得手段、
前記表示対象領域のうちの画面上で視認可能な領域を示す実表示領域を特定する特定手段、
前記実表示領域に前記注目部分が表示されるよう、前記取得された注目部分の位置及び前記特定された実表示領域に基づいて前記オブジェクトが描画される位置を設定する設定手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項13】
ウィンドウ内の表示対象領域に描画されている又は描画されるべきオブジェクトの注目部分の当該表示対象領域における位置を取得する取得手段、
前記表示対象領域のうちの画面上で視認可能な領域を示す実表示領域を特定する特定手段、
前記実表示領域に前記注目部分が表示されるよう、前記取得された注目部分の位置及び前記特定された実表示領域に基づいて前記オブジェクトが描画される位置を設定する設定手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−33308(P2013−33308A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167821(P2011−167821)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(399037405)楽天株式会社 (416)
【Fターム(参考)】