説明

情報処理装置および制御方法

【課題】書き換えに要する時間が異なる表示装置あるいは駆動モードのいずれにおいても適切な操作性を有する操作子を提供すること。
【解決手段】情報処理装置は、少なくとも1つの表示装置と、ある基準点から変位する操作子と、前記操作子の変位量を検出する変位量検出手段と、前記変位量検出手段により検出された変位量に応じて前記少なくとも1つの表示装置における表示を変化させる制御信号を前記少なくとも1つの表示装置に供給する信号供給手段と、前記少なくとも1つの表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、前記操作子に与えられる負荷を制御する負荷制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作子を有する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイを搭載したデバイスには、ジョグダイヤル(登録商標)などの回転式操作子が搭載されていることが多い。回転式操作子は、軸を中心に回転する回転体やその回転角度及び回転量を検出して信号化するセンサなどからなる。この回転式操作子の被操作体となるデバイスは、その回転量の大きさに応じて参照対象となるデータをスライドさせる。よって、この種のデバイスを操作する操作者は、はじめは回転式操作子をすばやく回転させてスライド量を大きくとった後、所望のデータの近くに至ったところでゆっくりと回転させるといった操作を行うことで、ディスプレイに表示させるデータをその他を含む多くの中から効率よく探し出すことができる。
【0003】
操作子の操作性をよりよくする仕組みを開示した文献として、特許文献1や2がある。特許文献1に開示された入力装置は、触覚素子を搭載し、ディスプレイ上の選択アイコンが選択可能なエレメントと重なったことを契機としてこの触覚素子を振動させるようになっている。また、特許文献2に開示されたマウスは、そのマウスカバーを上下に駆動させるカバー駆動機構を搭載し、ディスプレイ上の選択アイコンが重なったエレメントの種別に応じてマウスカバーの高さを制御するようになっている。
【特許文献1】特許第2571793号公報
【特許文献2】特開平6−102997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子ペーパーと呼ばれる、記憶性の表示体を用いた表示装置が開発されている。記憶性表示体は、電圧を印加しなくても表示状態を保持するため、低消費電力で表示を行うことができるという利点がある。記憶性表示体としては、例えば、コレステリック液晶や電気泳動ディスプレイが用いられる。
【0005】
一般的に、記憶性表示体は非記憶性表示体と比較して書き換えに時間がかかるという欠点がある。この欠点を補うための一つのアプローチとして、電子ペーパーにTN(Twisted Nematic)液晶など非記憶性表示体を持たせることが考えられる。あるいは、表示品質
は高いが書き換えが遅い通常の駆動モードに加え、表示品質は低くても書き換えが速い駆動モードで記憶性表示体を駆動するというアプローチもある。いずれにしても、特許文献1および2に記載の技術では、書き換えに要する時間が異なる表示装置あるいは駆動モードのいずれにおいても適切な操作性を提供することは困難であった。
【0006】
これに対し本発明は、書き換えに要する時間が異なる表示装置あるいは駆動モードのいずれにおいても適切な操作性を有する操作子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つの表示装置と、ある基準点から変位する操作子と、前記操作子の変位量を検出する変位量検出手段と、前記変位量検出手段により検出された変位量に応じて前記少なくとも1つの表示装置における表示を変化させる制御信号を前記少なくとも1つの表示装置に供給する信号供給手段と、前記少なくとも1つの表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、前記操作子に与えられる負荷を制御する負荷制御手段とを有する情報処理装置を提供する。
この情報処理装置によれば、表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、操作子に与えられる負荷が制御される。
【0008】
好ましい態様において、この情報処理装置は、各々表示速度が異なる複数の表示装置を有し、前記信号供給手段が、前記複数の表示装置のいずれかに前記制御信号を供給し、前記負荷制御手段が、前記制御信号の供給先に応じて、前記操作子に与えられる負荷を制御してもよい。
この情報処理装置によれば、制御信号の供給先に応じて、操作子に与えられる負荷が制御される。
【0009】
別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記負荷制御手段は、前記制御信号の供給先の表示装置の書き換え速度が高くなるほど、前記負荷が小さくなるように前記操作子に与えられる負荷を制御してもよい。
この情報処理装置によれば、表示装置の書き換え速度が高くなるほど、負荷が小さくなるように操作子に与えられる負荷が制御される。
【0010】
さらに別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記少なくとも1つの表示装置のうち1つの表示装置が、単位情報量あたりの表示書き換え時間が異なる複数の駆動モードで駆動可能であり、前記負荷制御手段が、前記複数の駆動モードのうち、前記1つの表示装置の駆動モードに応じて、前記操作子に与えられる負荷を制御してもよい。
この情報処理装置によれば、表示装置の駆動モードに応じて、操作子に与えられる負荷が制御される。
【0011】
さらに別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記負荷制御手段は、前記駆動モードで駆動される表示装置の書き換え速度が高くなるほど、前記負荷が小さくなるように前記操作子に与えられる負荷を制御してもよい。
この情報処理装置によれば、表示装置の書き換え速度が高くなるほど、負荷が小さくなるように操作子に与えられる負荷が制御される。
【0012】
さらに別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記1つの表示装置が、コレステリック液晶を用いた表示体を含み、前記複数の動作モードが、DDS(Dynamic Drive Scheme)方式による駆動モードおよびコンベンショナル方式による駆動モードを含んでもよい。
この情報処理装置によれば、表示装置の駆動モードがDDS方式であるかコンベンショナル方式であるかに応じて、操作子に与えられる負荷が制御される。
【0013】
さらに別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記負荷が、前記操作子の変位を妨げる力であってもよい。
この情報処理装置によれば、表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、操作子の変位を妨げる力が制御される。
【0014】
さらに別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記負荷が、前記表示装置における単位情報量の表示書き換えに必要な前記操作子の変位量であってもよい。
この情報処理装置によれば、表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、表示装置における単位情報量の表示書き換えに必要な操作子の変位量が制御される。
【0015】
さらに別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記信号供給手段が、前記変位量検出手段により検出された変位量がしきい値を超えるたびに、前記少なくとも1の表示装置における表示の書き換えを指示する制御信号を供給してもよい。
この情報処理装置によれば、変位量がしきい値を超えるたびに、表示装置における表示の書き換えを指示する制御信号が供給される。
【0016】
さらに別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記少なくとも1つの表示装置が、コレステリック液晶を用いた表示体を含んでもよい。
この情報処理装置によれば、コレステリック液晶を用いた表示体を含む表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、操作子に与えられる負荷が制御される。
【0017】
さらに別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記少なくとも1つの表示装置への制御信号の供給タイミングと合わせて発光する発光手段を有してもよい。
さらに別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記少なくとも1つの表示装置への制御信号の供給タイミングと合わせて放音する放音手段を有してもよい。
この情報処理装置によれば、制御信号の供給タイミングと合わせて光または音が出力される。
【0018】
さらに別の好ましい態様において、この情報処理装置は、前記操作子が、軸を中心に回転する回転式操作子であり、前記変位量が、前記操作子の回転量であってもよい。
この情報処理装置によれば、表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、回転式操作子に与えられる負荷が制御される。
【0019】
また、本発明は、少なくとも1つの表示装置と、ある基準点から変位する操作子と、前記操作子の変位量を検出する変位量検出手段と、前記少なくとも1つの表示装置における表示を変化させる制御信号を前記少なくとも1つの表示装置に供給する信号供給手段とを有する情報処理装置における制御方法であって、前記少なくとも1つの表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、前記回転体に与えられる負荷を制御するステップと、前記信号供給手段が、前記回転量検出手段により検出された回転量に応じて前記少なくとも1つの表示装置における表示を変化させる制御信号を前記表示駆動装置に供給するステップとを有する制御方法を提供する。
この制御方法によれば、表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、操作子に与えられる負荷が制御される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態において、情報処理装置の表示装置に表示させる画像の選択は回転式操作子により行なわれる。また、表示装置は、画質を重視するモードと駆動速度を重視するモードの2つの駆動モードのうちいずれかにより駆動される。さらに、回転式操作子の負荷は、駆動モードに応じて制御される。
【0021】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア概略構成を示す図である。図2は、情報処理装置の外観を示す図である。図1に示すように、この情報処理装置は、メイン表示部10(表示装置)、押下式操作子20、回転式操作子30、及びそれら各部の動作を制御する制御部40を備える。
【0022】
メイン表示部10は、コレステリック液晶パネル11、セグメント電極駆動回路12、及びコモン電極駆動回路13を有する。コレステリック液晶パネル11は、透明電極を設けた2枚のガラス基板によってコレステリック液晶層を上下から挟み込み封止した構造を有している。このうち下側のガラス基板の下面の略中央の位置には、温度センサ91が貼り付けられている。本実施形態に係る情報処理装置は、制御部40による制御の下、画像を表示する。具体的に、制御部40は、セグメント電極駆動回路12及びコモン電極駆動回路13を介してコレステリック液晶パネル11の両ガラス基板の透明電極に所定の電圧を印加することで、コレステリック液晶層の配向状態を遷移させる。
【0023】
図3は、コレステリック液晶パネル11の断面及びコレステリック液晶の配向状態を示す図である。コレステリック液晶パネル11は、上側ガラス基板14、上側透明電極15、コレステリック液晶層16、下側透明電極17、下側ガラス基板18、及び光吸収板19を有する。透明電極15および17は、コレステリック液晶層16に電圧を印加するためのデータ電極および走査電極として機能する。また、図2に示すように、コレステリック液晶パネル11の上側ガラス基板14はディプレイ装置の筐体90の開口部を介して外部へ露出されている。
【0024】
図4は、コレステリック液晶パネル11の構成を示す図である。コレステリック液晶パネル11は、n行の走査電極(Y1、Y2、…、Yn)およびm列のデータ電極(X1、X2、…、Xm)を含むn×mマトリクス配線を有する。なお、nおよびmは正の整数である。また、本実施形態において、コレステリック液晶パネル11はいわゆるパッシブマトリクス式の表示装置であるので、走査電極およびデータ電極がそれぞれ走査線およびデータ線の機能も兼ねる。走査電極およびデータ電極が交差する領域(図4において走査電極およびデータ電極の交点)には、電気光学素子16aが形成されている。電気光学素子16aは、2枚の電極(データ電極(画素電極またはセグメント電極ということもある)および走査電極(共通電極またはコモン電極ということもある)、いずれも図示略)、これら2枚の電極間に封止された電気光学層を有する。本実施形態において、電気光学層として、記憶性液晶であるコレステリック液晶を含む液晶層が用いられる。記憶性液晶とは、電力を供給しなくても表示を維持できる液晶をいう。電気光学素子16aには、対応する走査電極に印加される電圧(以下「走査電圧」という)および対応するデータ電極に印加される電圧(以下「データ電圧」という)に応じた電圧が印加される。電気光学層に印加される電圧を「駆動電圧」という。電気光学層の光学的性質(施光性、光散乱性など)は、印加される電圧によって変化する。電気光学素子16aは、液晶の光学的性質の変化によって画像を形成するものである。なお、基本的に一の電気光学素子16aは、一の画素に対応する。RGB表色系でカラー表示を行うカラーディスプレイの場合、一の電気光学素子16aは、ある画素のうち、RGBの色成分のうちいずれか一の色成分に対応する。
【0025】
図3において、電気光学素子16a(コレステリック液晶)の配向状態は、(a)に示すプレーナ配向(以下、「P配向」と呼ぶ)、(b)に示すフォーカルコニック配向(以下、「F配向」と呼ぶ)、及び(c)に示すホメオトロピック配向(以下「H配向」という)の3種の配向状態の間を遷移する。P配向状態では、上側ガラス基板14の側から入射する光が反射され、白が表されることになる。反対に、F配向状態では、入射する光が透過されて光吸収板19まで到達するので、黒が表されることになる。P配向とH配向の中間の配向状態に遷移させれば中間調を表すことも可能である。そして、このP配向とH配向は一度遷移すると電圧の印加が無くてもその状態が維持される。また、後に詳述するように、P配向からF配向への切り替えの際は、電圧の印加無しに維持し得ない配向状態であるH配向状態への過渡的な遷移を経る必要がある。
【0026】
図1において、押下式操作子20及び回転式操作子30は、各種入力を行なうための操作子である。これら両操作子について具体的に説明する。押下式操作子20は、利用者の押下操作を信号に変換するための操作子である。押下式操作子20は、2つのボタン21,22、及びそれらの押下の有無を検知するセンサ(図示せず)を有する。図2に示されるように、押下式操作子20のボタン21および22は、ディプレイ装置の筐体90の外部へ露出されている。
【0027】
図5は、回転式操作子30の側面図でありる。図6は、図5の矢視線Aが示す面を上側から見た図である。回転式操作子30は、利用者の回転操作を信号に変換するための操作子である。図に示すように、回転式操作子30は、回転つまみ31、ロータリエンコーダ32、負荷制御部33、及びこれらを連結させる回転軸34を有する。回転つまみ31は、扁平な円柱形状を有し、その下側端面の略中央から上側に向けて開けられた穴を有する。この穴には、回転軸34の上端が挿入されている。これにより、回転軸34は回転つまみ31に対して固定されている。図2にも示されるように、回転つまみ31は、ディプレイ装置の筐体90の外部へ露出している。回転つまみ31の上側の端面には回転基準位置を示すマーク31aが記されている。
【0028】
ロータリエンコーダ32は、回転スリット円板32a、固定板32b、それらの両板を挟み込む発光素子32cと受光素子32dを有する。回転スリット円板32aは、中心に貫通孔を有している。その貫通孔には、回転軸34が挿入され、回転スリット円板32aは回転軸34に対して固定されている。また、回転スリット円板32aには、いわゆるアブソリュート型パターンのスリットが設けられている。固定板32bは、回転スリット円板32aの上に固定されている。固定板32bは、回転軸34から放射状に拡がる線の1つと平行な複数個の孔を有する。発光素子32cは、固定板32bの孔と同じ数のLED(Light Emitting Diode)を有する。LEDは、固定板32bの孔の真上に並べて固定されている。受光素子32dは、LEDと同じ数の光学センサを有する。光学センサは、LEDから固定板32bおよび回転スリット円板32aを通り抜けた光を受光し得る位置に並べられている。回転スリット円板32aの角度と光センサの受光の有無の組み合わせを示すバイナリデータとを対応付けたテーブルを準備して逐次参照することにより、受光素子32dの受光状態から回転スリット円板32aの回転角度を特定することができる。
【0029】
負荷制御部33は、回転阻止部材33a、電磁石33b、及び磁力制御回路33cを有する。回転阻止部材33aは、略円柱状の基材と、その側面にほぼ等間隔に固定された8つの永久磁石rを有する。電磁石33bは、鉄心と、鉄心に巻かれたコイルを有する。電磁石33bは、磁力制御回路33cより供給される電力に応じた大きさの磁力を、回転阻止部材33aとの間に発生させる。したがって、この磁力を小さくすれば回転つまみ31の回転負荷が小さくなり、反対に、この磁力を大きくすれば回転つまみ31の回転負荷が大きくなる。
【0030】
図7は、電磁石33bの負荷−角度曲線を示す図である。図7は、磁力が大きい状態(曲線B)及び磁力が小さい状態(曲線C)で、回転つまみ31を45度、つまり、電磁石33bに吸引されている永久磁石rを引き離してその隣の別の永久磁石rを吸引させるに至るまで回転させた例を示す。図7によれば、磁力の大小にかかわらず、回転操作当初から徐々に負荷が大きくなってゆき、ある角度に到達した時点で急激に小さくなるように遷移している。そして、実線Bに示す高磁力状態での負荷の方が鎖線Cに示す低磁力状態での負荷よりも高くなり、利用者からみれば回転させ難くなることが分かる。
【0031】
図1の説明に戻る。制御部40は、ADC(Analog/Digital Converter)41、セグメント用電源生成回路42、コモン用電源生成回路43、CPU44、RAM45、ROM46、メイン表示部駆動制御回路47、及びI/Oコントローラ48を有する。
ADC41は、温度センサ91から出力されるアナログ信号、すなわち、検出温度を示す信号を、デジタル信号に変換する。ADC41は、このデジタル信号、つまり、コレステリック液晶パネル11の略中央の位置の温度を示すデジタル信号をCPU44へ供給する。セグメント用電源生成回路42及びコモン用電源生成回路43は、それぞれ、セグメント電極駆動回路12及びコモン電極駆動回路13へ電力を供給する。
【0032】
CPU44は、RAM45をワークエリアとして利用して各種処理演算を行う。ROM46は、各種プログラムや後述するテーブルを記憶する。I/Oコントローラ48は、押下式操作子20及び回転式操作子30とCPU44の間の各種信号のやりとりを制御する。
【0033】
次に、本実施形態における負荷設定処理と画像切換処理について説明する。
【0034】
図8は、負荷設定処理を示すフローチャートである。図8に示す処理は、利用者が押下式操作子20を操作することによりコレステリック液晶パネル11に駆動モード選択画面を表示させ、その画面を介して駆動モードの選択を行ったことをトリガーとして開始される。
【0035】
図9は、駆動モード選択画面を示す図である。この画面は、高速駆動モード及び低速駆動モードの一方の選択を促す画面である。なお、本実施形態にかかる情報処理装置の表示装置は、低速駆動モードをデフォルトとして動作しているので、画面が表示された当初は低速駆動モードが選択された状態になっている。低速駆動モードはコンベンショナル駆動方式に従って液晶を駆動させるモードであり、駆動速度よりも画質を重視するときに選択するときはこのモードを選択することが望ましい。高速駆動モードはDDS駆動方式に従って液晶を駆動させるモードであり、画質よりも駆動速度を重視するときにはこのモードを選択することが望ましい。
【0036】
ここで、DDS駆動方式およびコンベンショナル駆動方式について説明しておく。
図10は、DDS駆動における電圧印加サイクルを例示する図である。図10に示すように、DDS駆動において、コレステリック液晶の駆動サイクルは、Preparation期間(
リセット期間)、Selection期間(選択期間)、及びEvolution期間(保持期間)にNon Selection期間(非選択期間)を加えた4段階に分けられる。各期間のサイクルの位相は、
画像の走査線Y毎にずらされ、各期間に固有の電圧が、パイプライン処理的に印加される。
【0037】
DDS駆動の各期間に印加される駆動電圧を具体的に説明する。まず、Preparation期
間には、駆動対象となったラインを成す電気光学素子16aのすべてをH配向状態に遷移させる駆動電圧が印加される。Selection期間には、駆動対象であるラインの電気光学素
子16aをH配向状態に維持するか、液晶分子のらせん構造が若干弛緩した過渡プレーナ配向(以下、「TP配向」と呼ぶ)への弛緩を許可するかを選択する駆動電圧が印加される。更に、Evolution期間には、H配向である電気光学素子16aの配向状態を維持する
ともにP配向である電気光学素子16aをF配向に遷移させる駆動電圧が印加される。Non Selection期間(非選択期間)には、駆動電圧は消去される(厳密には電圧はゼロにな
らない場合もある)。コレステリック液晶層の配向状態は、これらのうちSelection期間
(選択期間)に印加する駆動電圧の大きさに応じ、後続するEvolution期間(保持期間)
乃至Non Selection期間(非選択期間)において、P配向及びF配向の一方へと遷移する

【0038】
図11は、コレステリック液晶の反射率−電圧曲線を示す。具体的には、図11は、P配向及びN配向のコレステリック液晶に印加される駆動電圧と、その駆動電圧を急速に除去した後に遷移する配向状態の関係を示す。縦軸は反射率を、横軸は駆動電圧を示す。また、電圧V1乃至V4は、配向状態を遷移させるための駆動電圧の閾値である。コレステリック液晶がP配向状態であった場合、V1からV2の駆動電圧を印加している間は、駆動電圧が高くなるにつれてF配向に徐々に遷移して透明度が高まり、光吸収板19の色である黒色が表れる。そして、V2からV3の駆動電圧を印加している間はF配向状態が維持される。V3からV4の駆動電圧を印加している間は、F配向状態からH配向状態に遷移して再び反射率が高まる。一方、コレステリック液晶がF配向状態であった場合、V1からV3の駆動電圧を印加している間はその配向状態が遷移しない。V3からV4の駆動電圧を印加している間は、F配向状態からH配向状態に遷移して反射率が高まる。したがって、DDS駆動では、Preparation期間にて各電気光学素子16aに印加される駆動電圧の大きさに応じ、その後の期間で遷移する配向状態が決定付けられる。
【0039】
図12は、コレステリック液晶の配向状態の遷移を示す図である。まず、Preparation
期間では、V4以上の駆動電圧が印加されることにより、P配向状態又はF配向状態であった電気光学素子16aがH配向状態に遷移する。そして、Selection期間では、表したい色の配向状態に応じた駆動電圧が印加される。つまり、白を表したいのであればV2以上の、黒を表したいのであればV1以下の駆動電圧が印加される。V1以下の駆動電圧が印加された場合、TP配向状態にまず遷移する。更にEvolution期間にてV4以下の駆動
電圧が印加されるとF配向状態に遷移し、その状態が次の駆動サイクルまで維持される。一方、Selection期間でV2以上の駆動電圧が印加された場合、H配向状態がそのまま維
持される。続くEvolution期間にてH配向状態を維持可能な駆動電圧が印加され、更にそ
の後のNon Selection期間で駆動電圧が急速に除去されるとP配向状態に遷移する。P配
向状態は、次の駆動サイクルまで維持される。
【0040】
一方、コンベンショナル駆動方式は、各期間に固有の電圧の印加を画像の走査ラインの各々へ1つずつ行っていく方式である。この方式は広く知られているため、駆動サイクルや印加電圧などの詳細な説明は割愛する。
【0041】
再び図8を参照して説明する。ステップS110において、CPU44は、駆動モード選択画面における駆動モードの選択がなされたか否かを監視している。駆動モードが選択されると、選択された駆動モードを識別する識別子をRAM45に記憶させる。CPU44は、処理をステップS120に進める。
【0042】
ステップS120において、CPU44は、駆動モードがデフォルトである低速駆動モードから高速駆動モードへと変更されたか否か判断する。そして、高速駆動モードへ変更された場合、CPU44は、処理をステップS130へ進める。高速駆動モードへ変更されていない場合、CPU44は、処理をステップS140へ進める。
【0043】
ステップS130において、CPU44は、負荷制御部33を高負荷状態にする信号を、I/Oコントローラ48を介して磁力制御回路33cへ供給する。この信号の供給を受けた磁力制御回路33cは、図7の実線Bに示す負荷を回転つまみ31に付与すために必要な電力を、電磁石33bへ供給する。
【0044】
ステップS140において、CPU44は、負荷制御部33を低負荷状態にする信号を、I/Oコントローラ48を介して磁力制御回路33cへ供給する。この信号の供給を受けた磁力制御回路33cは、図7の鎖線Cに示す負荷を回転つまみ31に付与すために必要な電力を、電磁石33bへ供給する。
【0045】
図13は、画像切換処理を示すフローチャートである。図13に示す一連の処理が行われている間、I/Oコントローラ48は、ロータリエンコーダ32により検出される回転つまみ31の回転量と回転方向とを示す信号をCPU44へ供給し続ける。
【0046】
ステップS210において、CPU44は、I/Oコントローラ48より供給される信号が示す回転量が、RAM45に記憶されている画像切換の閾値の角度に至ったか否かを監視している。回転量が閾値に至ると、CPU44は、処理をステップS220へ進める。
ステップS220において、CPU44は、温度センサ91の検出温度を示すデジタル信号をADC41から取得する。
【0047】
ステップS230において、CPU44は、RAM45に記憶された識別子を参照し、低速駆動モードと高速駆動モードの何れが選択されているか判断する。
ステップS230にて高速駆動モードが選択されていると判断した場合、ステップS240において、CPU44は、高速駆動モード用パラメータをROM46のテーブルから読み出す。「高速駆動モード用パラメータ」とは、高速駆動モード用に予め準備された、黒、白の各駆動電圧の波形(図10に示すV1乃至V4の閾値)を決定付けるパラメータである。一方、低速駆動モードが選択されていると判断した場合、ステップS250において、CPU44は、低速駆動モード用パラメータをROM46のテーブルから読み出す。「低速駆動モード用パラメータ」とは、低速駆動モード用に予め準備された、黒、白の各駆動電圧の波形を決定付けるパラメータである。
【0048】
このテーブルに記憶されるパラメータが示す閾値は、基準温度(例えば25℃)のコレステリック液晶の配向状態を遷移させるに至る値として実測に基づいて得られたものである。
【0049】
パラメータを読み出すと、CPU44は、検出温度に応じてそのパラメータを変更する(S260)。具体的には、図10のSelection期間で印加される電圧の閾値V1および
V2を、検出温度に応じて変更する。
【0050】
ここで、検出温度に応じて閾値の変更を行う理由について、図14を参照して説明する。
図14は、選択電圧とコレステリック液晶の反射率の関係を模式的に示す図である。横軸は電圧を、縦軸は反射率を示している。反射率は、基準となる標準白色板の反射輝度を100%としたときの相対的輝度である。反射率が高いということは、コレステリック液晶がP配向に近づいて白みが強くなっていることを意味し、反射率が低いということは、コレステリック液晶がF配向に近づいて黒みが強くなっていることを意味する。図14に示されるように、コレステリック液晶の反射率を100%(白)へ遷移させる電圧と0%(黒)へ遷移させる電圧は、その温度が高くなるほど高電圧側にシフトし、低くなるほど低電圧側へシフトする。このように、コレステリック液晶の反射率−電圧特性は温度に依存するので、検出温度に応じて駆動パラメータを変更する構成が採用されている。
【0051】
再び図13を参照して説明する。ステップS270において、CPU44は、ステップS250にて読み出したパラメータについても同様に、検出温度に応じて変更する。
【0052】
ステップS260又はステップS270でパラメータを変更すると、ステップS280において、CPU44は、コレステリック液晶パネル11に表示させる画像データをROM46に記憶された一連の画像データの中から特定し、その特定した画像データを取得する。画像データの特定は、以下のように行われる。まず、ROM46には、複数の画像データが各々に固有のファイル名を対応付けた上で記憶されている。そして、本ステップS280では、ファイル名を昇順に並べたとしたならば、コレステリック液晶パネル11に現在表示されている画像の前又は後の参照順になるファイル名と対応する画像ファイルが、特定される。参照順の前又は後の何れのファイル名と対応する画像ファイルを特定するかは、回転つまみ31が正逆どちらの回転方向へ回転したかにより決まる。
【0053】
ステップS290において、CPU44は、ステップS280で取得した画像データとステップS260又はステップS270で変更を施したパラメータとをメイン表示部駆動制御回路47へ供給する。画像データ及びパラメータの供給を受けると、メイン表示部駆動制御回路47は、コレステリック液晶の配向状態を遷移させるに至る駆動電圧の各波形をパラメータに従って特定する。また、メイン表示部駆動制御回路47は、表示させる画像の各主走査ラインの画素の色を画像データを基に特定する。さらに、メイン表示部駆動制御回路47は、各画素と対応する電気光学素子16aの配向状態を遷移させるための制御信号を、セグメント用電源生成回路42及びコモン用電源生成回路43へ順次供給する。これにより、DDS駆動又はコンベンショナル駆動の一方の駆動方式に従って電気光学素子16aの配向状態が1ラインずつ順次遷移する。全ラインの遷移が済むと画像の書き換えが完了する。
【0054】
以上説明した本実施形態では、メイン表示部に表示された画像の切換を指示する操作子である回転式操作子の回転の負荷が、高速駆動モードと低速駆動モードの何れが選択されているかに応じて切り替わる。したがって、駆動モードに応じた負荷が回転式操作子に提供される。
【0055】
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態において、情報処理装置は、メイン表示部(第1の表示装置)とは別にサブ表示部(第2の表示装置)を有する。サブ表示部は、コレステリック液晶と異なる特性の表示体、具体的には、書き換え速度が異なる液晶を用いている。回転式操作子の操作対象は、メイン表示部とサブ表示部の何れにするかを選択可能である。回転操作子において、画像切換の閾値となる角度の大きさは、操作対象がメイン表示部であるかサブ表示部であるかに応じて制御される。さらに、回転式操作子の操作によりその回転が検出されるたびに光が点滅する。これにより、利用者による操作の視認性を向上させる。
【0056】
メイン表示部10は、電子ペーパーの主要なディスプレイであり、高精細、低消費電力といった特長を有している。この特長を生かし、主たる文書を表示し、ユーザはその内容をじっくりと読むというように用いられることが多い。しかし、メイン表示部10は、書き換え速度が遅い。そのため表示の書き換えは、ページ(またはページの一部)全面の書き換えであり、スクロールは行われない。一方、サブ表示部50は、補助的なディスプレイであり、高速書き換えが可能である。そのため、サブ表示部50は、操作メニューの表示、ファイル検索窓の表示、メインディスプレイに表示されている文書の書誌情報の表示などの補助的な情報の表示に用いられる。サブディスプレイは高速書き換えが可能であるので、回転操作子の操作に応じてスクロールが行われてもよい。しかし、サブ表示部50は、低解像度、高消費電力、画面が狭いという特徴を有しているため、主たる文書の表示には適さない。
【0057】
図15は、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア概略構成図を示す。図16は、情報処理装置の外観を示す図である。図15に示すように、この情報処理装置は、メイン表示部10、押下式操作子20、回転式操作子30、及び制御部40に加えて、サブ表示部50及びLED60を有する。また、制御部40は、ADC41、セグメント用電源生成回路42、コモン用電源生成回路43、CPU44、RAM45、ROM46、メイン表示部駆動制御回路47、及びI/Oコントローラ48に加え、サブ表示部駆動制御回路49を有する。なお、メイン表示部10の詳細な構成は第1実施形態と同じであるため図示を省略している。
【0058】
LED60は、I/Oコントローラ48から信号の供給を受けて発光する光学素子である。図16に示すように、LED60は、ディプレイ装置の筐体90の外部へ露出している。
サブ表示部50は、温度変化に対する耐性と駆動速度がコレステリック液晶よりも優る表示体(例えば、ネマティック液晶)が用いられている点においてメイン表示部10と異なっている。また、図2に示すように、サブ表示部50の液晶パネルの上側ガラス基板はディプレイ装置の筐体90の開口部を介して外部へ露出している。
【0059】
制御部40内のサブ表示部駆動制御回路49は、サブ表示部50へ制御信号を供給することによりその液晶パネルへ画像を表示させる。
また、本実施形態に係る情報処理装置において、回転式操作子30の構造が第1実施形態と異なる。この回転式操作子30の構造について、図17及び図18を参照して詳細に説明する。
【0060】
図17は、回転式操作子30の側面図である。図18は、図17の矢視線Dが示す面を上側から見た図である。回転式操作子30をなす回転つまみ31とロータリエンコーダ32の構造は第1実施形態と同様なので説明を割愛する。
【0061】
図に示す負荷制御部33は、歯車33e、剛球33f、スプリング33g及びアクチュエータ33hを有する。歯車33eは、中心に貫通孔を有する。貫通孔には回転軸34が挿入され、歯車33eは回転軸34に対して固定されている。歯車33eと剛球33fとは、スプリング33gを介して連結されている。アクチュエータ33hは、歯車33eに近づく方角とその逆の方角の間の移動により、歯車33eの側面に剛球33fを押し当てる不勢力を調整する。
【0062】
アクチュエータ33hが歯車33eと遠ざかる方向に移動し、図18(a)に示すように剛球33fが歯車33eの側面と完全に離れると、回転つまみ31の回転の負荷はほぼ0になる。そして、この状態からアクチュエータ33hが歯車33eに近づく方向へ移動すると、剛球33fが歯車33eの側面に接触し、その側面のスプライン(溝)の1つへ剛球33fが嵌った時点で回転を妨げる負荷が付与される。そして、図18(b)に示すようにアクチュエータ33hが歯車33eに近づく方向へ更に移動すると、回転軸34を介してその歯車33eと連結された回転つまみ31の回転負荷もより大きくなる。
【0063】
本実施形態の特徴的な処理である画像切換処理について説明する。
図19は、画像切換処理を示すフローチャートである。図に示す一連の処理が行われている間、I/Oコントローラ48はロータリエンコーダ32により検出される回転つまみ31の回転量と回転方向とを示す信号をCPU44へ供給し続ける。また、本実施形態にかかる情報処理装置は、メイン表示部10とそれよりもプライオリティの低いサブ表示部50をそれぞれ別のソフトウェアを用いて制御する。
【0064】
ステップS310において、CPU44は、メイン表示部10を制御するソフトウェアが起動された状態であるか否か判断する。メイン表示部10を制御するソフトウェアが起動された状態であると判断した場合(S310:YES)、ステップS320において、CPU44は、RAM45に記憶されている画像切換の閾値の角度を45度に設定する。以降、CPU44は、I/Oコントローラ48から供給される信号を基に特定される回転つまみ31の回転量がこの閾値である45度に至るたびに、コレステリック液晶パネル11に表示させる画像データをROM46に記憶された一連の画像データの中から取得してメイン表示部駆動制御回路47へ供給する。画像データの取得の手順は、図13のステップS280と同様である。画像データの供給を受けたメイン表示部駆動制御回路47は、電気光学素子16aの配向状態をその画像データに応じて遷移させるための制御信号をセグメント用電源生成回路42及びコモン用電源生成回路43へ供給することによって、コレステリック液晶パネル11の画像を書き換える。
【0065】
画像切換の閾値を45度に設定すると、ステップS330において、CPU44は、負荷制御部を負荷付与状態にする信号をI/Oコントローラ48を介してアクチュエータ33hに供給する。この信号の供給を受けたアクチュエータ33hは歯車33eに近づく方向に移動する。アクチュエータ33hがこのように移動すると、回転つまみ31の回転を妨げる負荷が付与される。信号をアクチュエータ33hに供給すると、CPU44は、処理をステップS310に戻す。
ステップS310にて、メイン表示部10を制御するソフトウェアが起動された状態でないと判断した場合(S310:NO)、ステップS340において、CPU44は、サブ表示部50を制御するソフトウェアが起動された状態であるか否か判断する。
【0066】
サブ表示部50を制御するソフトウェアが起動された状態であると判断した場合(S340:YES)、ステップS350において、CPU44は、RAM45に記憶されている画像切換の閾値の角度を15度に設定する。以降、CPU44は、I/Oコントローラ48から供給される信号を基に特定される回転つまみ31の回転量がこの閾値である15度に至るたびに、コレステリック液晶パネル11に表示させる画像データをROM46に記憶された一連の画像データの中から取得してサブ表示部50へ供給する。
【0067】
画像切換の閾値を15度に設定すると、ステップS360において、CPU44は、負荷制御部を負荷除去状態にする信号をI/Oコントローラ48を介してアクチュエータ33hに供給する。この信号の供給を受けたアクチュエータ33hは歯車33eから遠ざかる方向に移動する。アクチュエータ33hのこの移動により、回転つまみ31の回転を妨げる負荷が除去される。信号をアクチュエータ33hに供給すると、CPU44は、処理をステップS310に戻す。
【0068】
サブ表示部50を制御するソフトウェアが起動された状態でないと判断した場合(S340:NO)、CPU44は、ステップS370において、I/Oコントローラ48からの信号の供給を待つ。回転の角度を示す信号が供給された場合(S370:YES)、ステップS380において、CPU44は、点灯を指示する信号をI/Oコントローラ48を介してLED60へ供給する。この信号が供給されると、LED60は一定時間点灯する。これにより、回転式操作子30のロータリエンコーダ32が回転つまみ31の回転を検出するたびにLEDが点滅することになる。
【0069】
以上説明した本実施形態によると、画像切り換えの閾値は、操作対象がメイン表示部であるかサブ表示部であるかに応じて制御される。サブ表示部はメイン表示部よりも駆動速度が速いが、画像切換の閾値は操作対象に応じて制御される。よって、操作対象に応じた負荷が回転式操作子に提供される。
【0070】
3.他の実施形態
本願発明は、以下で説明するように種々の変形実施が可能である。なお、以下の変形例の2つ以上のものが第1実施形態または第2実施形態と組み合わせて用いられてもよい。
【0071】
第1実施形態においては、液晶の駆動速度が速い高速駆動モードのときは回転つまみの回転を妨げる電磁力は大きくされ、液晶の駆動速度が遅い低速駆動モードのときはその電磁力は小さくされた。これによって、回転つまみの操作感覚は、液晶の駆動速度に追随していた。これに対し、高速駆動モードと低速駆動モードの何れが選択されたかに応じて、画像の切換の閾値となる角度を切り換えるようにしてもよい。
【0072】
第2実施形態において、サブ表示部を回転つまみの回転を通じて操作するときは画像切換の閾値となる回転角度が小さくされ、メイン表示部を操作するときは画像切換の閾値となる回転角度が大きくされた。これによって、回転つまみの操作感覚は、液晶の駆動速度に追随していた。これに対し、第1実施形態と同様に電磁石を利用してもよい。すなわち、サブ表示部が操作対象となっているときとメイン表示部が操作対象となっているときとで回転つまみの回転を妨げる電磁力の大きさが切り換えられてもよい。
【0073】
第2実施形態において、回転式操作子の操作対象は、メイン表示部とサブ表示部の2つであったが、3つ以上の表示部が操作対象となってもよい。すなわち、3つ以上の表示部を1つの回転式操作子により操作できるようにしてもよい。この場合、それらの何れが操作対象になっているかに応じて画像切換の閾値が切り換えられる。
【0074】
上記実施形態において、負荷制御部のロータリエンコーダは、アブソリュート型ロータリエンコーダである例について説明した。しかし、これをインクリメント型ロータリエンコーダにしてもよい。インクリメント型ロータリエンコーダの場合、回転つまみが回転した際の絶対角度を検出することはできないものの、相対的な回転量は検出できる。この場合、その相対的な回転が閾値を超えるたびに現在表示されている画像の前又は後の参照順になる画像ファイルを特定するようにすればよい。
【0075】
上記実施形態において、液晶パネルに表示される一連の画像データはROMに記憶されていたが、フラッシュロムやハードディスクなどといった他の記憶装置に複数の画像データを記憶しておき、それらを回転式操作子の操作に応じて特定し、液晶パネルに表示させるようにしてもよい。
【0076】
第2実施形態では、液晶ディスプレイ装置の筐体からLEDが露出していた。このLEDの点滅を通じて、回転つまみの回転量が閾値の角度を超えたことを利用者に通知していた。これに対し、LEDの代わりにスピーカを搭載させ、このスピーカからのビープ音やクリック音の放音を通じて回転つまみの回転量が閾値の角度を越えたことをユーザに通知するようにしてもよい。
【0077】
第2実施形態では、メイン表示部が回転式操作子の操作対象になっているときは画像切換の閾値が45度に設定され、サブ表示部が回転式操作子の操作対象になっているときは画像切換の閾値が15度に設定された。しかし、角度の設定値はこれに限定されない。メイン表示部が操作対象となったときの設定角度のほうがサブ表示部が操作対象となったときの設定角度より大きくなってさえいれば、他の閾値が設定されてもよい。
【0078】
第1実施形態では、高速駆動モードか低速駆動モードかに応じて回転式操作子の負荷が2値的に切り換わるようになっていた。しかし、液晶の駆動速度は表示対象となる画像データそのもののデータ量に応じて変動し得る。したがって、表示対象となった画像データのデータ量に応じてその後の負荷が微調整されるようにしてもよい。この変形例の構成及び動作を概念的に示すと、「情報の表示体と、複数の画像データを記憶した記憶手段と、前記表示体の駆動モードを選択する選択手段と、軸を中心に回転する回転体と、前記回転体の回転量を検出する回転量検出手段と、前記検出された回転量に応じて特定される画像データを前記記憶手段から読み出し、その画像データを前記表示体に表示させる表示制御手段と、前記回転体にその回転を妨げる負荷を付与する手段であって、付与する負荷の大きさの基準量を前記選択手段による駆動モードの選択に応じて特定し、特定した基準量を前記読み出された画像データのデータ量に応じて調整する負荷付与手段とを備えた回転式操作子。」となる。
【0079】
第2実施形態において、メイン表示部10に表示される画像は主たる文書の画像に限定されない。情報処理装置を操作するメニュー画面のような補助的な情報をメイン表示部10に表示してもよい。この場合、文書を表示する場合には回転操作子の負荷を大きくし、メニューを表示する場合には負荷を小さくするというように、表示される画像の種類に応じて負荷を切り換えてもよい。
【0080】
回転操作子に与えられる負荷は、第1実施形態および第2実施形態で説明したものに限定されない。すなわち、操作子の「負荷」とは、操作対象となる表示装置において、単位情報量の画像を表示書き換えするのに必要な仕事である。仕事=力×変位であるから、操作子の「負荷」とは、操作対象となる表示装置において、単位情報量の画像を表示書き換えするのに必要な力および変位の少なくともいずれか一方を意味する。要するに、一実施形態における情報処理装置は、書き換え速度、すなわち、表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、前記回転体を単位変位量変位させるのに必要な力、および、表示書き換えを指示するのに必要な変位量の少なくともいずれか一方を制御するものであれば、どのような装置であってもよい。
【0081】
上述の実施形態において、操作子が回転式である例について説明した。しかし、操作子は回転式に限定されない。レバーがスライドする構成のもの、いわゆるトラックボール式のもの、その他の、ある基準点(例えば、回転軸、スライドバーの一端、トラックボールの中心など)からの操作子の変位に応じた信号を出力するものであれば、どのような構成の操作子が用いられてもよい。
【0082】
上述の実施形態において、表示装置に用いられる表示体がコレステリック液晶層である例について説明した。しかし、表示体はコレステリック液晶に限定されない。電気泳動素子、その他の記憶性表示体が用いられてもよい。また、情報処理装置が有する表示部の数は、各実施形態で例示されたものに限定されない。例えば第1実施形態において、情報処理装置は2つ以上の表示部を有していてもよい。この場合、複数の表示部のうち少なくとも1つの表示部が、書き換え速度が異なる複数の駆動モードで駆動可能であればよい。例えば第2実施形態において、情報処理装置は3つ以上の表示部を有していてもよい。この場合、複数の表示部のうち少なくとも1つの表示部が、他の表示部と書き換え速度が異なる表示体を用いたものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】液晶ディスプレイ装置のハードウェア概略構成図である。
【図2】液晶ディスプレイ装置の外観図である。
【図3】コレステリック液晶パネルの断面を示す図である。
【図4】走査線とデータ線を示す図である。
【図5】回転式操作子の構造を示す図である。
【図6】回転式操作子の構造を示す図である。
【図7】回転つまみの負荷(トルク)の遷移を示す図である。
【図8】負荷設定処理を示すフローチャートである。
【図9】駆動モード選択画面を示す図である。
【図10】DDS駆動を示す図である。
【図11】駆動電圧と配向状態の遷移の関係を示す図である。
【図12】駆動電圧と配向状態の遷移の関係を示す図である。
【図13】画像切換処理を示すフローチャートである。
【図14】印加電圧と反射率の関係を模式的に示す図である。
【図15】液晶ディスプレイ装置のハードウェア概略構成図である。
【図16】液晶ディスプレイ装置の外観図である。
【図17】回転式操作子の構造を示す図である。
【図18】回転式操作子の構造を示す図である。
【図19】画像切換処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
10…メイン表示部、11…コレステリック液晶パネル、12…セグメント電極駆動回路、13…コモン電極駆動回路、14…上側ガラス基板、15…上側透明電極、16…コレステリック液晶、17…下側透明電極、18…下側ガラス基板、19…光吸収板、20…押下式操作子、21…ボタン、22…ボタン、30…回転式操作子、32…ロータリエンコーダ、33…負荷制御部、34…回転軸、40…制御部、41…ADC、42…セグメント用電源生成回路、43…コモン用電源生成回路、44…CPU、45…RAM、46…ROM、47…メイン表示部駆動制御回路、48…I/Oコントローラ、49…サブ表示部駆動制御回路、50…サブ表示部、60…LED、90…筐体、91…温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表示装置と、
ある基準点から変位する操作子と、
前記操作子の変位量を検出する変位量検出手段と、
前記変位量検出手段により検出された変位量に応じて前記少なくとも1つの表示装置における表示を変化させる制御信号を前記少なくとも1つの表示装置に供給する信号供給手段と、
前記少なくとも1つの表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、前記操作子に与えられる負荷を制御する負荷制御手段と
を有する情報処理装置。
【請求項2】
各々表示速度が異なる複数の表示装置を有し、
前記信号供給手段が、前記複数の表示装置のいずれかに前記制御信号を供給し、
前記負荷制御手段が、前記制御信号の供給先に応じて、前記操作子に与えられる負荷を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記負荷制御手段は、前記制御信号の供給先の表示装置の書き換え速度が高くなるほど、前記負荷が小さくなるように前記操作子に与えられる負荷を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの表示装置のうち1つの表示装置が、単位情報量あたりの表示書き換え時間が異なる複数の駆動モードで駆動可能であり、
前記負荷制御手段が、前記複数の駆動モードのうち、前記1つの表示装置の駆動モードに応じて、前記操作子に与えられる負荷を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記負荷制御手段は、前記駆動モードで駆動される表示装置の書き換え速度が高くなるほど、前記負荷が小さくなるように前記操作子に与えられる負荷を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記1つの表示装置が、コレステリック液晶を用いた表示体を含み、
前記複数の動作モードが、DDS(Dynamic Drive Scheme)方式による駆動モードおよびコンベンショナル方式による駆動モードを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記負荷が、前記操作子の変位を妨げる力である
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記負荷が、前記表示装置における単位情報量の表示書き換えに必要な前記操作子の変位量である
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記信号供給手段が、前記変位量検出手段により検出された変位量がしきい値を超えるたびに、前記少なくとも1の表示装置における表示の書き換えを指示する制御信号を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの表示装置が、コレステリック液晶を用いた表示体を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの表示装置への制御信号の供給タイミングと合わせて発光する発光手段
を有する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの表示装置への制御信号の供給タイミングと合わせて放音する放音手段
を有する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記操作子が、軸を中心に回転する操作子であり、
前記変位量が、前記操作子の回転量である
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
少なくとも1つの表示装置と、ある基準点から変位する操作子と、前記操作子の変位量を検出する変位量検出手段と、前記少なくとも1つの表示装置における表示を変化させる制御信号を前記少なくとも1つの表示装置に供給する信号供給手段とを有する情報処理装置における制御方法であって、
前記少なくとも1つの表示装置における単位情報量あたりの表示書き換え時間に応じて、前記回転体に与えられる負荷を制御するステップと、
前記信号供給手段が、前記回転量検出手段により検出された回転量に応じて前記少なくとも1つの表示装置における表示を変化させる制御信号を前記表示駆動装置に供給するステップと
を有する制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−310836(P2008−310836A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254710(P2008−254710)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【分割の表示】特願2007−151833(P2007−151833)の分割
【原出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】