説明

情報処理装置

【課題】現実に移動物体を基準物体に取付ける、または取外す場合などに、移動物体を移動させるときの移動の難易性に則するように、移動物体を移動させるときの難易性を表す情報を出力することができる情報処理装置を提供する。
【解決手段】移動対象部品を移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品と、固定部品、冶具および作業台との間の距離が最小となる距離である部品間距離s6、および移動対象部品が移動する移動空間と基台、固定部品、冶具および作業台とが重なる部分の体積である共有体積s9を求める。移動対象部品を基台に取付ける、または取外すときに、移動対象部品を移動させるときの難易性の要因となる部品間距離、共有体積および移動対象部品の質量特性値s10に基づいて、移動対象部品を取付けるとき、または取外すときの難易性を表す作業評価値を算出s12する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品を組立てる、または分解する作業など、基準物体に対して移動物体を相対的に移動させるときの難易性を表す情報を生成する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品を組立てる作業が容易である場合、製品を組立てるときの作業効率が高く、製品を組立てるために要する時間が短くなり、製品の製造コストを抑制することができる。逆に、たとえば製品をリサイクルするために製品を分解する場合、製品を分解する作業が容易であれば、製品を分解するときの作業効率が高く、製品を分解するために要する時間が短くなり、製品を分解するためのコストを抑制することができる。したがって、製品の設計を行うときには、製品を組立てるときの組立て易さ、または製品を分解するときの分解のし易さを考慮しなければならない。
【0003】
従来の技術では、三次元CADによって作成した形状データを用いて、機械装置の組立/分解作業のシミュレーションを行う設計/製造工程支援装置がある。設計/製造工程支援装置は、組立/分解対象部品を、組立/分解経路に沿って移動/回転させながら他の部品などとの干渉チェックを行い、他の部品などと干渉しない場合に、組立/分解対象部品の移動/回転量に基づいて組立性評価データを作成する。この組立性評価データを用いて、機械装置を組立てるときの組立て易さ、または機械装置を分解するときの分解のし易さを評価している(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3378726号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術の設計/製造工程支援装置では、組立/分解対象部品の移動/回転量に基づいて、機械装置の組立/分解性を評価しているので、機械装置を組立て易い場合であっても、組立/分解対象部品の移動/回転量が多いときには、組立/分解性が悪い評価になるという問題がある。また、従来の技術の設計/製造工程支援装置では、組立/分解対象部品と他の部品とが干渉する場合には、組立/分解をすることが不可であると判断されるので、たとえば溝に部品を押し込んで組立てる作業を行うような、部品同士を干渉させながら組立てを行う作業があるときの組立性を評価することはできないという問題がある。
【0006】
したがって本発明の目的は、現実に移動物体を基準物体に取付ける、または取外す場合などに、移動物体を移動させるときの移動の難易性に則するように、移動物体を移動させるときの難易性を表す情報を出力することができる情報処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基準物体およびこの基準物体に対して移動する移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報に基づいて、移動物体を基準物体に対して移動させたとき、移動物体の移動経路に近接して配置される近接物体と移動物体との間隔が最小となる距離を求める最小距離算出手段と、
前記移動経路に沿って移動物体が移動したときの移動物体が占有する移動物体占有空間と、基準物体および近接物体が占有する空間とが重なる重複空間の体積を求める重複体積算出手段と、
最小距離算出手段および重複体積算出手段によって求めた結果に基づいて、移動物体を移動させるときの難易性を表す難易性判定情報を生成する判定情報生成手段と、
判定情報生成手段によって生成された難易性判定情報を出力する出力手段とを含むことを特徴とする情報処理装置である。
【0008】
また本発明は、前記移動物体は、協働して用いられる複数の機器と、これらの機器によって操作される部品とを含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記判定情報生成手段は、前記最小距離算出手段および前記重複体積算出手段によって求めた結果と、前記部品の属性とに基づいて、難易性判定情報を生成することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記基準物体および前記移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報は、CADによって生成されることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記判定情報生成手段は、前記移動経路に沿って前記移動物体を移動させるときの難易性を数値化した値によって生成し、この数値化された値と予め定める値とを比較して、移動物体を移動させることが容易か否かを表す情報を難易性判定情報として生成することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、コンピュータを、
基準物体およびこの基準物体に対して移動する移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報に基づいて、移動物体を基準物体に対して移動させたとき、移動物体の移動経路に近接して配置される近接物体と移動物体との間隔が最小となる距離を求める最小距離算出手段と、
前記移動経路に沿って移動物体が移動したときの移動物体が占有する移動物体占有空間と、基準物体および近接物体が占有する空間とが重なる重複空間の体積を求める重複体積算出手段と、
最小距離算出手段および重複体積算出手段によって求めた結果に基づいて、移動物体を移動させるときの難易性を表す難易性判定情報を生成する判定情報生成手段と、
判定情報生成手段によって生成された難易性判定情報を出力する出力手段として機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、最小距離算出手段は、基準物体およびこの基準物体に対して移動する移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報に基づいて、移動物体を基準物体に対して移動させたとき、移動物体の移動経路に近接して配置される近接物体と移動物体との間隔が最小となる距離を求める。
【0014】
最小距離算出手段によって求められる距離は、移動物体が移動する移動経路上において、移動物体が近接物体と最接近したときの距離を表す。移動物体が近接物体と最接近したときの距離が大きいほど、移動物体が移動する移動経路上において、移動物体と近接物体との間に大きな空間が存在することになるので、移動物体を移動させ易くなる。
【0015】
重複体積算出手段は、前記移動経路に沿って移動物体が移動したときの移動物体が占有する移動物体占有空間と、基準物体および近接物体が占有する空間とが重なる重複空間の体積を求める。重複体積算出手段によって求められる体積は、移動物体が移動する経路上において、移動物体と基準物体および近接物体のうち少なくともいずれか一方とが干渉しながら移動物体が移動するときの体積を表すので、たとえば移動物体、基準物体および近接物体が変形しない物体の場合には、この体積が大きいほど、移動物体の経路を大きく変更する必要があることがわかる。また移動物体と基準物体および近接物体との少なくともいずれか一方が変形する物体の場合には、重複体積が大きいほど、変形可能な移動物体と基準物体および近接物体との少なくともいずれか一方の体積をより収縮させながら移動物体を移動させなければならず、移動物体を移動させ難いことがわかる。
【0016】
判定情報生成手段は、最小距離算出手段および重複体積算出手段によって求めた結果に基づいて、移動物体を移動させるときの難易性を表す難易性判定情報を生成する。判定情報生成手段は、移動物体が移動する距離によって移動物体を移動させるときの難易性を表す難易性判定情報を生成するのではなく、移動物体を移動させるときの難易性の要因となる最小距離算出手段および重複体積算出手段によって求めた結果に基づいて、移動物体を移動させるときの難易性を表す難易性判定情報を生成するので、難易性判定情報は、現実に移動物体を基準物体に取付ける、または取外す場合などに、移動物体を移動させるときの移動の難易性に則する。また判定情報生成手段は、重複体積を考慮して求められるので、移動物体が基準物体および近接物体のうち少なくともいずれか一方と干渉しながら移動させる必要がある場合であっても、移動物体を移動させるときの難易性を表す難易性判定情報を生成することができる。
【0017】
出力手段は、判定情報生成手段によって生成された難易性判定情報を出力する。出力手段によって出力される難易性判定情報に基づいて、情報処理装置の使用者は、移動物体を前記移動経路に沿って移動させるときの難易性を把握することができる。使用者は、難易性判定情報を利用することによって、移動物体をより容易に移動させることができるように、移動経路を決定したり、移動物体、基準物体および近接物体の形状を設計したりすることができるようになる。これによってたとえば移動物体を移動させるときに要する時間を短縮することができ、移動物体を移動させる作業に要するコストを低減することができる。
【0018】
また本発明によれば、移動物体は、協働して用いられる複数の機器と、これらの機器によって操作される部品とを含む。判定情報生成手段は、前記部品だけでなく、協働して用いられる複数の機器を考慮して、移動物体を移動するときの難易性を表す難易性判定情報を生成する。
【0019】
難易性判定情報は、前記部品だけでなく、協働して用いられる複数の機器を考慮して生成されるので、現実に移動物体を移動させるときに近い状況における、移動物体を移動するときの難易性を表す。
【0020】
また本発明によれば、判定情報生成手段は、最小距離算出手段および重複体積算出手段によって求めた結果だけでなく、前記部品の属性に基づいて難易性判定情報を生成する。
【0021】
部品の属性が異なると、移動物体を移動させる難易性は異なったものとなる。部品の属性とは、たとえば部品の形状、質量、硬度、把持性、温度、熱膨張率、寸法、体積、および部品を操作する機器の表面に対する部品の表面の摩擦係数などである。
【0022】
難易性判定情報は、最小距離算出手段および重複体積算出手段によって求めた結果だけでなく、部品の属性を考慮して生成されるので、現実に移動物体を移動させるときに近い状況における、移動物体を移動するときの難易性を表す。
【0023】
また本発明によれば、前記基準物体および前記移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報は、CAD(Computer Aided Design)によって生成される。
【0024】
CADによって基準物体および移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報を生成するので、この情報を生成する効率を向上させることができ、この基準物体および移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報を生成するために要するコストを低減することができる。
【0025】
また本発明によれば、判定情報生成手段は、前記移動経路に沿って前記移動物体を移動させるときの難易性を数値化した値によって生成し、この数値化された値と予め定める値とを比較して、移動物体を移動させることが容易か否かを表す情報を難易性判定情報として生成する。
【0026】
出力手段によって出力される難易性判定情
報に基づいて、情報処理装置の使用者は、移動物体を前記経路に沿って移動させることが、予め定める容易さよりも容易か否かを把握することができる。たとえば予め定める値として、移動物体を移動させるときの難易性を評価させる対象の製品よりも古いモデルの製品の難易性を表す値を用いた場合、古いモデルの製品と比較して、移動物体を移動させることが容易か否かを判断することができる。これによって、使用者は、移動経路、移動物体、基準物体および近接物体の位置および形状を再度設計すべきか否かを判断することができる。また予め定める値として、使用者が設定する理想値を用いてもよい。
【0027】
また本発明によれば、コンピュータを、基準物体およびこの基準物体に対して移動する移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報に基づいて、移動物体を基準物体に対して移動させたとき、移動物体の移動経路に近接して配置される近接物体と移動物体との間隔が最小となる距離を求める最小距離算出手段と、前記移動経路に沿って移動物体が移動したときの移動物体が占有する移動物体占有空間と、基準物体および近接物体が占有する空間とが重なる重複空間の体積を求める重複体積算出手段と、最小距離算出手段および重複体積算出手段によって求めた結果に基づいて、移動物体を移動させるときの難易性を表す難易性判定情報を生成する判定情報生成手段と、判定情報生成手段によって生成された難易性判定情報を出力する出力手段として機能させることができる。
【0028】
これによって、前述したように、たとえば移動物体を移動させるときに要する時間を短縮することができ、移動物体を移動させる作業に要するコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の実施の一形態の情報処理装置1の構成を示す機能ブロック図である。図2は、本発明の実施の一形態の情報処理装置1の電気的な構成を示す図である。
【0030】
情報処理装置1は、入力手段2、出力手段3、記憶手段4および演算処理手段5を含んで構成される。入力手段2は、マウス、キーボードおよびデータグローブなどによって実現される。情報処理装置1の使用者が入力手段2を操作することによって、情報処理装置1に情報を入力することができる。記憶手段4は、演算処理手段5からの指令に基づいて情報を記憶する。記憶手段4は、たとえばフラッシュロムによって実現される。出力手段3は、演算処理手段5の指令に基づいて情報を出力する。出力手段3は、液晶表示ディスプレイおよびプリンタなどによって実現される。演算処理手段5は、中央演算処理装置(
Central Processing Unit:略称CPU)および制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)とを含んで実現される。演算処理手段5は、ROMに記憶された制御プログラムを実行することによって、情報処理装置1の入力手段2、出力手段3および記憶手段4である各手段を制御する。
【0031】
情報処理装置1は、3次元データ作成部10、3次元データ記憶部11、3次元データ表示部12、組立分解動作設定部13、移動情報入力部14、角変位情報入力部15、組立分解動作記憶部16、干渉チェック処理部20、共有体積算出部21、部品間距離算出部22、組立分解性評価部23、評価値出力部24、部品特性記憶部25、評価特性記憶部26、部品特性入力部30および評価特性入力部31を有する。演算処理手段5は、ROMに記憶された制御プログラムを実行することによって、情報処理装置1を、3次元データ作成部10、3次元データ記憶部11、3次元データ表示部12、組立分解動作設定部13、移動情報入力部14、角変位情報入力部15、組立分解動作記憶部16、干渉チェック処理部20、共有体積算出部21、部品間距離算出部22、組立分解性評価部23、評価値出力部24、部品特性記憶部25、評価特性記憶部26、部品特性入力部30および評価特性入力部31として機能させる。
【0032】
3次元データ作成部10は、情報処理装置1の使用者が入力手段2を操作することによって入力される情報であり、移動物体である移動対象部品35の属性を表す情報と、移動物体である移動対象部品35、近接物体である固定部品37、作業台38および冶具36、ならびに基準物体である基台34、などの3次元直交座標系における位置および形状を表す座標値を表す情報とを、3次元CADデータに変換し、変換した3次元CADデータを3次元データ記憶部11に渡す処理を行う。移動対象部品35などの属性を表す情報とは、たとえば移動対象部品35の質量および種類などである。3次元CADデータは、移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36などの位置および形状をそれぞれ表す情報を含む。
【0033】
3次元データ記憶部11は、3次元データ作成部10から受け取る3次元CADデータを、記憶手段4に記憶する処理を行う。3次元データ表示部12は、3次元データ記憶部11に記憶された3次元CADデータが表す情報を、出力手段3の出力画面27に出力させる処理を行う。
【0034】
図3は、出力手段3の出力画面27を示す図である。出力画面27には、記憶手段4に記憶された移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36の3次元CADデータが表す情報が表示される。
【0035】
移動情報入力部14は、情報処理装置1の使用者が入力手段2を操作することによって入力される移動対象部品35の移動距離および移動方向を表す情報を、移動ベクトルに変換し、組立分解動作設定部13に渡す。移動情報入力部14は、移動距離および移動方向を表す情報を、変換行列、すなわち移動マトリクスに変換して組立分解動作設定部13に渡してもよい。角変位情報入力部15は、情報処理装置1の使用者が入力手段2を操作することによって入力される移動対象部品35の角変位量および回転軸を表す情報を、角変位ベクトルに変換し、組立分解動作設定部13に渡す。角変位情報入力部15は、角変位量および回転軸を表す情報を、変換行列、すなわち角変位マトリクスに変換して組立分解動作設定部13に渡してもよい。
【0036】
組立分解動作設定部13は、移動情報入力部14および角変位情報入力部15から受け取った移動ベクトルおよび角変位ベクトルと3次元CADデータとに基づいて、移動物体の移動経路を表す移動経路情報を作成し、組立分解動作記憶部16に渡す。組立分解動作記憶部16は、組立分解動作設定部13から受け取った移動経路情報を記憶手段4に記憶する処理を行う。
【0037】
部品間距離算出部22は、移動対象部品35を、移動経路情報が表す移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35と固定部品37、作業台38および冶具36との間隔が最小となる距離を求める。部品間距離算出部22によって求められる距離を部品間距離と記載する。移動対象部品35を、移動経路情報が表す移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35と固定部品37、作業台38および冶具36とが干渉する場合には、干渉している部分に関しては、部品間距離は負の値となる。最小距離算出手段は、部品間距離算出部22によって実現される。
【0038】
干渉チェック処理部20は、組立分解動作記憶部16によって記憶手段4に記憶された移動経路情報と、3次元データ記憶部11によって記憶手段4に記憶された移動対象部品35、固定部品37、作業台38および冶具36などの3次元CADデータとに基づいて、移動対象部品35を移動経路情報が表す移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35と固定部品37、作業台38および冶具36などとが干渉したか否かを判断する処理を行う。移動対象部品35と固定部品37、作業台38および冶具36などとが干渉したか否かは、部品間距離算出部22によって算出される部品間距離の値の正負に基づいて判断してもよい。
【0039】
共有体積算出部21は、移動対象部品35を移動経路情報が表す移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35が移動したときの移動対象部品35が占有する移動物体占有空間である移動空間47と、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36が占有する空間とが重なる重複空間である共有領域28の体積を求める。共有領域28の体積のことを共有体積と記載する。移動対象部品35を移動経路情報が表す移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35と基台34、固定部品37、作業台38および冶具36とが干渉しない場合の共有体積は、0となる。
【0040】
部品特性入力部30は、情報処理装置1の使用者が入力手段2を操作することによって入力される部品の特性値を、部品特性データに変換して部品特性記憶部25に渡す。部品の特性値とは、部品の属性にそれぞれ対応する値のことである。部品の属性とは、たとえば部品の形状、質量、硬度、把持性、温度、熱膨張率、寸法、体積、および部品を保持する保持体の表面に対する部品の表面の摩擦係数である。部品特性記憶部25は、部品特性入力部30から受け取った部品特性データを、記憶手段4に記憶する処理を行う。
【0041】
評価特性入力部31は、情報処理装置1の使用者が入力手段2を操作することによって入力される作業性評価式を評価特性記憶部26に渡す。評価特性記憶部26は、評価特性入力部31から受け取った作業性評価式を記憶手段4に記憶する処理を行う。
【0042】
組立分解性評価部23は、評価特性記憶部26によって記憶手段4に記憶された作業性評価式、共有体積算出部21によって求められる共有体積、部品間距離算出部22によって求められる部品間距離、および部品特性記憶部25によって記憶された部品特性データに基づいて、移動対象部品35を基台34に取付け、または取外すときの難易性を数値化して表す作業表価値を生成する。判定情報生成手段は、組立分解性評価部23によって実現される。
【0043】
評価値出力部24は、組立分解性評価部23によって生成された作業評価値を出力手段3に出力させる処理を行う。
【0044】
図4は、移動対象部品35を基台34に取付けるときの難易性を表す作業評価値を生成する処理を表すフローチャートである。本実施の形態では、情報処理装置1は、電子部品を取付けて電子製品を組立てるときの作業性を評価するときに適用される。
【0045】
情報処理装置1の使用者が、入力手段2から移動対象部品35および基台34、固定部品37、作業台38および冶具36の3次元直交座標系における位置および形状を表す座標値を表す情報と、移動対象部品35の属性を表す情報とを入力すると、ステップs0からステップs1に移る。本実施の形態では、移動物体は、基台34に取付けるべき電子部品を表す移動対象部品35であり、基準物体は、基台34であり、近接物体は、基台34に設けられた固定部品37、基台34が設けられる作業台38、および作業台38に基台34を固定する冶具36である。
【0046】
ステップs1では、3次元データ作成部10は、入力手段2から入力された、移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36の3次元直交座標系における位置および形状を表す座標値を表す情報と、移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36の属性を表す情報とを、3次元CADデータに変換して3次元データ記憶部11に渡し、ステップs2に移る。ステップs2では、3次元データ記憶部11は、3次元データ作成部10から受け取った移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36の3次元CADデータを記憶手段4に記憶し、ステップs3に移る。
【0047】
ステップs3では、3次元データ表示部12は、3次元データ記憶部11によって記憶手段4に記憶された移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36の3次元CADデータが表す情報を出力手段3に出力させ、ステップs4に移る。
【0048】
図3は、出力手段3の出力画面27を示す図である。出力手段3の出力画面27には、移動対象部品35、作業台38、冶具36、基台34および固定部品37が表示される。基台34、固定部品37および移動対象部品35は、板状体によって形成され、略直方体形状を有する。4脚の作業台38の一表面40上に、基台34が設けられる。基台34の厚み方向一表面41の4隅には、基台34を作業台38に固定するための冶具36が設けられる。基台34の厚み方向一表面41上に、固定部品37が設けられる。固定部品37は、基台34の短手方向の中央であって、基台34の長手方向一方寄りに設けられる。移動対象部品35は、基台34の厚み方向一方側に、基台34から離間して設けられる。
【0049】
ステップs4では、移動情報入力部14および角変位情報入力部15から移動ベクトルおよび角変位ベクトルを表す情報が渡されると、移動ベクトルおよび角変位ベクトルに基づいて、移動対象部品35の移動経路を表す移動経路情報を作成し、組立分解動作記憶部16に渡し、ステップs5に移る。
【0050】
図5は、移動情報入力部14および角変位情報入力部15によって移動ベクトルおよび角変位ベクトルを生成するときの出力手段3の出力画面27を示す図である。移動ベクトルおよび角変位ベクトルを生成するために、情報処理装置1の使用者が入力手段2を構成するマウスを操作する。マウスを操作することによって、出力画面27上において移動対象部品35が表示されている場所にマウスポインタ42を移動させ、移動対象部品35をドラッグし、移動対象部品35を移動させるべき場所まで移動させて移動対象部品35をドロップする。移動情報入力部14および角変位情報入力部15は、マウスポインタが移動した軌跡に基づいて移動ベクトルおよび角変位ベクトルを生成し、組立分解動作設定部13に渡す。マウスとして、3次元情報を入力することができる3次元ポインティングデバイスを使用すると、移動情報入力部14および角変位情報入力部15によって、3次元の移動ベクトルおよび角変位ベクトルを生成することができる。
【0051】
ステップs5では、組立分解動作記憶部16は、受け取った移動経路情報を記憶手段4に記憶させ、ステップs6に移る。
【0052】
ステップs6では、部品間距離算出部22は、移動対象部品35を移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35と、固定部品37、作業台38および冶具36との間隔が最小となる距離を求める。次にステップs7に移る。
【0053】
ステップs7では、干渉チェック処理部20は、移動対象部品35を移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35と、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36とが干渉したか否かを判断し、ステップs8に移る。
【0054】
ステップs8では、移動対象部品35を移動経路に沿って移動させたときに、移動対象部品35と、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36とが干渉した場合には、ステップs9に移る。
【0055】
ステップs9では、共有体積算出部21は、移動対象部品35を移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35が移動したときに占有する空間である移動空間47と、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36とが占有する空間とが重なる共有領域28の体積、つまり共有体積を求め、ステップs10に移る。移動対象部品35が移動したときに占有する移動空間47とは、移動対象部品35が移動するときに辿る空間のことである。
【0056】
図6は、移動対象部品35を移動経路に沿って仮想的に移動させたときの、出力手段3の出力画面27を示す図である。移動対象部品35が移動経路に沿って移動する移動空間47を、仮想線によって表す。移動対象部品35を移動経路に沿って仮想的に移動させたときに、固定部品35の長手方向一端部が、移動対象部品35が移動する空間と重なり合う。移動対象部品35を移動経路に沿って仮想的に移動させたときに、移動対象部品35と固定部品37とが重なり合う領域を、共有領域28と記載する。
【0057】
ステップs8において移動対象部品35を移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35と、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36とが干渉しなかった場合には、ステップs10に移る。この場合、共有体積算出部21によって共有体積は求められないので、共有体積は、0である。
【0058】
ステップs10では、部品特性記憶部25によって記憶手段4に記憶された部品特性データから、部品特性値を取得する。表1は、記憶手段4に記憶された部品の属性である質量および部品の種類に対応する部品特性値を表す。ステップs10では、この部品特性データから、移動対象部品35の部品の種類と質量に対応する質量特性値を取得する。質量特性値は、部品の属性である質量および部品の種類によって異なる。たとえばネジの場合、質量が大きいほど、質量特性値は大きくなる。たとえば移動対象部品35がネジであり、その質量が15kgであれば、質量特性値は25である。
【0059】
【表1】

【0060】
ステップs11では、評価特性記憶部26は、評価特性記憶部26によって記憶手段4に記憶された作業性評価式を取得し、ステップs12に移る。
【0061】
ステップs12では、組立分解性評価部23は、作業評価値を算出する。作業評価値は、ステップs11において取得した作業性評価式に、ステップs6において算出された部品間距離、ステップs9において算出された共有体積、およびステップs10において取得した質量特性値を代入することによって求められる。作業評価値を求めるための作業性評価式を式(1)に示す。式(1)において、K、LおよびMは、定数を表す。
作業評価値=K×部品間距離+L×共有体積+M×質量特性値 …(1)
【0062】
式(1)中の定数Kは負の値、定数LおよびMは正の値である。式(1)によって求められる作業評価値の値が小さいほど、移動対象部品35を基台34に取付け易い。式(1)中の定数K、LおよびMは、製品毎に定めてもよい。たとえば共有体積が部品間距離および質量特性値に比べて著しく大きい場合には、作業評価値に部品間距離および質量特性値の影響が表れにくいので、式(1)中の定数Lの値を、他の定数KおよびMの値よりも非常に小さい値とすればよい。また、たとえば移動対象部品35の硬度が高い場合、式(1)中の定数Lの値を、他の定数KおよびMの値よりも非常に大きい値とすればよい。移動対象部品35の硬度が高いときは、移動対象部品35に力を加えてもほとんど変形しないので、移動対象部品35と、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36とが干渉する場合には、移動対象部品35を移動させることはできない。この場合、式(1)中の定数Lの値が非常に大きいので、作業評価値も非常に大きい値となり、移動対象部品35を取付けることが困難であることがわかる。または、作業性評価式の変数に、移動経路における共有体積の偏差値を付加してもよい。
【0063】
ステップs13では、作業評価値出力部24は、組立分解性評価部23によって求められた作業評価値を、出力手段3の出力画面27に表示させ、ステップs14に移る。
【0064】
ステップs14では、入力手段2から、出力手段3の出力画面27に表示された作業評価値を確認した情報処理装置1の使用者によって入力される作業評価値を再評価するか否かを表す情報に基づいて、移動経路を再度設定して、作業評価値を再評価するか否かを判断する。再評価する場合には、ステップs4に移る。
【0065】
ステップs14において、再評価しないと判断した場合には、ステップs15に移る。ステップs15では、処理を終了する。
【0066】
本実施の形態では、組立分解性評価部23は、作業性評価式に、部品間距離算出部22によって求められる部品間距離、共有体積算出部21によって求められる共有体積、および部品特性記憶部25によって記憶手段4に記憶された質量特性値を代入することによって、移動対象部品35を基台34に取付けるときの難易性を表す作業評価値を求める。部品間距離、共有体積および質量特性値は、現実に移動対象部品35を基台34に取付けるときの取付けやすさの要因となる。部品間距離が大きいほど、移動対象部品35を移動させるときの移動空間47と、固定部品37、作業台38および冶具36との間に大きな空間が存在することになるので、移動対象部品35を移動させ易くなる。干渉体積は、移動対象部品35が、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36と干渉しながら移動するときの、干渉する度合いを表すので、たとえば移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36が変形しない物体の場合には、干渉体積が大きいほど、移動対象部品35の移動経路を大きく変更しなければならないことがわかる。移動対象部品35と、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36との少なくともいずれか一方が変形する物体の場合には、変形可能な移動対象部品35と、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36との少なくともいずれか一方の体積をより収縮させながら移動対象部品35を移動させなければならず、移動対象部品35を移動させ難いことがわかる。質量特性値は、移動対象部品35の質量が大きいほど大きい値をとる。移動対象部品35の質量が大きい程、移動対象部品35を保持し難くなり、移動対象部品35を移動させ難くなる。作業評価値は、現実に移動対象部品35を移動させるときの、移動させ易さの要因となる部品間距離、共有体積および質量特性値に基づいて算出されるので、作業評価値は、現実に移動対象物35を基台34に取付けるときの難易性を、現実に則して表す。
【0067】
出力手段3の出力画面27に作業評価値が表示されることによって、情報処理装置1の使用者は、移動対象物35を移動経路に沿って移動させるときの難易性を把握することができる。使用者は、作業評価値を確認することによって、移動対象部品35をより容易に移動させることができるように、移動経路を再度設定したり、移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36の位置および形状を再度設計したりすることができるようになる。作業評価値が低くなるように、移動経路を再度設定したり、移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36の位置および形状を再度設計すれば、組立て、または分解が容易となり、たとえば移動対象部品35を移動させるときに要する時間を短縮することができ、移動対象部品35を移動させる作業に要するコストを低減することができ、生産性を向上させることができる。
【0068】
また、部品間距離は、固定部品37に加えて、作業台38および冶具36を考慮して算出され、共有体積は、基台34に加えて、固定部品37、作業台38および冶具36を考慮して算出されるので、部品間距離および共有体積は、移動対象部品35を現実に移動させるときの部品間距離および共有体積に近い値となる。したがって、部品間距離、共有体積および質量特性値に基づいて算出される作業評価値は、移動対象部品35を移動させるときの難易性を、より現実に則して表す。
【0069】
また本実施の形態では、移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36の位置および形状を表す情報は、CADによって生成されるので、移動対象部品35、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36の位置および形状を生成するために要するコストを低減することができる。
【0070】
また、今回設計した電子製品の作業評価値と、今回設計した製品以前に設計したモデルの電子製品の作業評価値とを比較することによって、今回設計した製品の組立性を評価することができる。また、情報処理装置1の使用者が予め定める作業評価値の理想値と、今回設計した製品の作業評価値とを比較して、今回設計した製品の組立性を評価することができる。
【0071】
本実施の形態では、移動対象部品35を基台34に取付けるときの作業評価値を求めたが、移動対象部品35を取付けるときの作業評価値に限らず、入力手段2から移動対象部品35を基台34から取外すときの移動経路を表す情報を入力することによって、移動対象部品35を基台34から取外すときの作業評価値を求めることができる。組立分解動作設定部13は、移動対象部品35を基台34に取付けるときの移動ベクトルおよび角変位ベクトルを反転させて、移動対象部品35を基台34から取外すときの移動経路情報を生成してもよい。
【0072】
また本実施の形態では、作業評価値を求めるための作業性評価式は、式(1)によって表されるとしたけれども、作業評価式は、式(1)よりも複雑な式によって表されてもよい。
【0073】
本実施の形態では、作業評価値は、部品間距離、共有体積および質量特性値を変数としているが、部品間距離、共有体積および質量特性値に加えて、移動対象部品35の形状、硬度、把持性、温度、熱膨張率、寸法、体積、および移動対象部品35を保持する保持体の表面に対する移動対象部品35の表面の摩擦係数などの移動対象部品35の属性にそれぞれ対応する部品特性値を変数としてもよい。移動対象部品35の属性が異なると、移動対象部品35を移動させる難易性は異なったものとなる。たとえば移動対象部品35の形状が、移動対象部品35を基台34に取付け、または移動対象部品35を基台34から取外すときに適さない形をしている場合、移動対象部品35を基台34に取付け、または移動対象部品35を基台34から取外す作業が難しくなるので、移動対象部品35を移動させ難くなる。たとえば移動対象部品35の硬度が高ければ、移動対象部品35と基台34、固定部品37、作業台38および冶具36とが干渉しながら移動対象部品35が移動するときに、移動対象部品35が収縮され難いので、移動対象部品35を収縮させるために大きな力が必要となるので、移動対象部品35を移動させ難くなる。たとえば移動対象部品35の把持性が悪い場合、移動対象部品35を保持し難いので、移動対象部品35を移動させ難くなる。たとえば移動対象部品35の温度に対する耐性が悪いとき、高温となる領域を避けて移動対象部品35を移動させなければならず、移動対象部品35を移動させ難くなる。たとえば熱膨張率が大きい場合には、温度によって移動対象部品35の形状が変化する率が大きく、移動対象部品35を保持する保持体は、膨張した移動対象部品35の形状に応じて移動対象部品35を保持しなければならいので、移動対象部品35を移動させ難くなる。たとえば移動対象部品35の寸法が、移動対象部品35を基台34に取付け、または移動対象部品35を基台34から取外すときに適さない寸法の場合、移動対象部品35を基台34に取付け、または移動対象部品35を基台34から取外す作業が難しくなり、移動対象部品35を移動させ難くなる。たとえば移動対象部品35の体積が大きい場合、移動対象部品35を保持する保持体は、移動対象部品35を保持し難くなるので、移動対象部品35を移動させ難くなる。たとえば移動対象部品35を保持する保持体の表面に対する移動対象部品35の表面の摩擦係数が小さい場合、保持体は、移動対象部品35を保持し難くなるので、移動対象部品35を移動させ難くなる。
【0074】
部品間距離、共有体積および質量特性値に加えて、より多くの部品の属性にそれぞれ対応する部品特性値を考慮して作業評価値を算出することによって、作業評価値は、現実に移動対象部品35を移動させるときにより近い状況における、移動対象部品35を移動するときの難易性を表す。
【0075】
また本実施の形態では、ステップs14において再評価するか否かは、情報処理装置1の使用者が作業評価値を確認して再評価するか否かを表す情報を入力し、入力された情報に基づいて判断されるが、予め定める基準値よりも作業評価値が小さい場合には再評価せず、予め定める基準値よりも作業評価値が大きい場合には再評価するようにしてもよい。予め定める基準値は、たとえば今回設計した電子製品以前に設計されたモデルの電子製品の作業評価値、または情報処理装置1の使用者が予め定める作業評価値の理想値を用いてもよい。これによって、情報処理装置1の使用者が、再評価するか否かの判断をしなくてもよくなる。
【0076】
本発明の他の実施の形態の情報処理装置は、前述の実施の形態の情報処理装置1と同様の構成であり、移動対象部品35が膨張したときを考慮して作業評価値を算出する。本実施の形態の情報処理装置は、前述の情報処理装置1と同様の構成であるので、対応する部分については同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。また、本実施の形態の情報処理装置は、前述の情報処理装置1と同様の構成であるので、前述の情報処理装置1と同様の効果は、本実施の形態の情報処理装置においても同様に得られる。
【0077】
図7は、移動対象部品35を移動経路に沿って仮想的に移動させたときの、出力手段3の出力画面27を示す図である。3次元データ作成部10は、部品特性記憶部25によって記憶手段4に記憶された移動対象部品35の熱膨張率から、予め定める温度のときの移動対象部品35の3次元直交座標系における位置および形状を表す情報をCADデータとして作成する。移動対象部品35が仮想的に膨張したときの形状と、移動対象部品35が仮想的に膨張したときの移動対象部品35が移動する移動空間47とを仮想線によって示す。
【0078】
移動対象部品35が仮想的に膨張することによって、移動対象部品35が前述の実施の形態の移動経路と同じ経路を移動した場合であっても、共有領域28の体積、つまり共有体積が大きくなり、部品間距離は小さくなる。したがって、組立分解性評価部23によって求められる作業評価値は、前述の実施の形態の組立分解性評価部23によって求められる作業評価値よりも大きくなり、移動対象部品35を基台34に取付けることが、難しくなることがわかる。移動対象部品35が膨張した場合を考慮して作業評価値を求めることによって、作業評価値は、移動対象部品35を基台34に取付けるときの難易性を、より現実に則して表す。
【0079】
本発明のさらに他の実施の形態の情報処理装置は、前述の実施の形態の情報処理装置と同様の構成であり、前述の実施の形態の固定部品37の位置および形状が異なる場合の作業評価値を算出する。本実施の形態の情報処理装置は、前述の情報処理装置と同様の構成であるので、対応する部分については同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。また、本実施の形態の情報処理装置は、前述の情報処理装置と同様の構成であるので、前述の情報処理装置と同様の効果は本実施の形態の情報処理装置においても同様に得られる。
【0080】
図8は、移動対象部品35を移動経路に沿って仮想的に移動させたときの、出力手段3の出力画面27を示す図である。基台34の厚み方向一表面41に、第1および第2固定部品43,44が設けられる。第1および第2固定部品43,44は、略立方体形状を有する。また、第1および第2固定部品43,44の各辺の長さは、前述の実施の形態の固定部品37の短手方向の辺の長さよりも長い。第1固定部品43は、基台34の長手方向一方側に設けられ、第2固定部品44は、基台34の長手方向他方側に設けられる。移動対象部品35は、第1および第2固定部品43,44の間を移動し、基台34に取付けられる。
【0081】
第1固定部品43の厚みが、前述の実施の形態の移動対象部品35の厚みよりも厚いので、移動対象部品35の移動経路が同じであっても、移動対象部品35を移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35が移動する移動空間47と第1固定部品34とが重なる共有領域28の体積、つまり共有体積は大きくなる。したがって、組立分解性評価部23によって求められる作業評価値は、前述の実施の形態の組立分解性評価部23によって求められる作業評価値よりも大きくなり、移動対象部品35を基台34に取付けることが、難しくなることがわかる。
【0082】
本発明のさらに他の実施の形態の情報処理装置は、前述の実施の形態の情報処理装置1と同様の構成であり、移動対象部品35を保持する作業者の手をモデル化した保持体45を考慮して作業評価値を算出する。本実施の形態の情報処理装置は、前述の情報処理装置1と同様の構成であるので、対応する部分については同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。また、本実施の形態の情報処理装置は、前述の情報処理装置1と同様の構成であるので、前述の情報処理装置1と同様の効果は本実施の形態の情報処理装置においても同様に得られる。
【0083】
図9は、移動対象部品35を移動経路に沿って仮想的に移動させたときの、出力手段3の出力画面27を示す図である。
【0084】
情報処理装置の使用者が入力手段2を操作することによって、移動対象部品35を保持する作業者の手をモデル化した保持体45の3次元空間における位置および形状を表す情報が入力されると、3次元データ作成部10が、入力された情報に基づいて、保持体45の3次元CADデータを作成する。本実施の形態では、移動対象部品35を保持する作業者の手をモデル化した保持体45は、協働して用いられる複数の機器のうちの1つであり、移動対象部品35は、保持体45によって操作される部品である。
【0085】
部品間距離算出部22は、移動対象部品35および保持体45を移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35および保持体45と、固定部品37、作業台38および冶具36との間隔が最小となる距離を求める。干渉チェック処理部20は、移動対象部品35および保持体45を移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35および保持体45と基台34、固定部品37、作業台38および冶具36とが干渉したか否かを判断する。共有体積算出部21は、移動対象部品35および保持体45を移動経路に沿って移動させたとき、移動対象部品35および保持体45が移動する移動空間47と、基台34、固定部品37、作業台38および冶具36とが占有する空間とが重なる共有領域28の体積、つまり共有体積を求める。組立分解性評価部23は、作業性評価式、部品間距離算出部22によって算出される部品間距離、共有体積算出部21によって算出される共有体積、および部品特性記憶部25に記憶された部品特性データに基づいて作業評価値を求める。保持体45を考慮することによって、移動対象部品35および保持体45を前述の実施の形態の移動経路と同じ経路を移動させた場合であっても、保持体45と固定部品37とが重なる空間の体積の分だけ共有体積が大きくなり、また部品間距離は小さくなるので、作業評価値は大きくなり、移動対象部品35を基台34に取付けることが難しくなることがわかる。
【0086】
本実施の形態では、移動対象部品35を保持する作業者の手をモデル化した保持体45を考慮して作業評価値を算出するので、作業評価値は、移動対象部品35を移動させるときの難易性を、より現実に則して表す。
【0087】
また、保持体45が移動対象部品35を保持する場所および保持する保持の仕方を変えた場合の作業評価値を求めることによって、移動対象部品35を保持する保持体45の保持の仕方を検討することができる。
【0088】
本実施の形態では、協働して用いられる複数の機器として作業者の手をモデル化した保持体45を考慮したが、協働して用いられる複数の機器として、移動対象部品35および保持体35の移動経路とは異なる経路に沿って移動し、移動対象部品35を基台34に取付ける、または基台34から取外すための工具を考慮してもよい。工具を考慮して作業評価値を算出することによって、作業評価値は、移動対象部品35を移動させるときの難易性を、より現実に則して表す。
【0089】
本発明のさらに他の実施の形態の情報処理装置は、前述の実施の形態の情報処理装置1と同様の構成であり、固定部品50と干渉しながら移動対象部品52を固定部品50に取付ける作業を行うときの作業評価値を求める。本実施の形態の情報処理装置は、前述の情報処理装置と同様の構成であるので、対応する部分については同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。また、本実施の形態の情報処理装置は、前述の情報処理装置1と同様の構成であるので、前述の情報処理装置1と同様の効果は本実施の形態の情報処理装置においても同様に得られる。
【0090】
図10は、移動対象部品52を移動経路に沿って仮想的に移動させたときの、出力手段3の出力画面27を示す図である。固定部品50は、溝部51を有する。移動対象部品52は、固定部品50の溝部51の溝よりも大きい。したがって、移動対象部品52は、固定部品50の溝部51と干渉しながら、固定部品50の溝に取付けられる。
【0091】
組立分解性評価部23は、作業性評価式、部品間距離算出部22によって算出される部品間距離、共有体積算出部21によって算出される共有領域28の体積、つまり共有体積、および部品特性記憶部25に記憶された部品特性データに基づいて、移動対象部品52を固定部品50の溝に取付ける作業を行うときの作業評価値を求める。共有体積算出部21によって求められる共有体積が大きいほど、作業評価値は大きくなり、移動対象部品52を固定部品50の溝に取付け難いことがわかる。これは、現実に移動対象部品52を固定部品50に取付けるときに、共有体積が大きいほど、移動対象部品52をより収縮させて、固定部品50の溝に取付けなければならないので、移動対象部品52を固定部品50に取付けることが難しくなるということに対応する。作業評価値は、共有体積を考慮して求められるので、固定部品50と干渉しながら移動対象部品52を固定部品50に取付けるときの取付け易さを、現実に則して表す。
【0092】
本実施の形態では、溝部51を有する固定部品50に移動対象部品52を取付ける作業を行うときの作業評価値を求めたが、ワイヤなどを指でより分けながら移動対象部品を取付ける作業を行うときの難易性を表す作業評価値を求めることもできる。
【0093】
ワイヤを指でより分ける作業の難易性は、移動対象部品を移動経路に沿って仮想的に移動させたときに、移動対象部品が移動する移動空間と、ワイヤとが重なる空間の体積、つまり共有体積、および部品特性データに登録されたワイヤの硬度の特性値によって表される。作業評価値は、共有体積、部品間距離および部品特性値に基づいて作成されるので、作業評価値は、ワイヤを指でより分ける作業の容易さを表す。これによって、ワイヤなどの柔らかい部品を指でより分けながら移動対象部品を取付ける作業を行うときの容易性を表す情報を作成することができる。
【0094】
前述の実施の各形態では、情報処理装置が、電子部品を取付けて電子製品を組立てる、または電子部品を取外して電子製品を分解するときの作業性を評価する場合について説明したが、本発明の情報処理装置は、電子部品などをプリント配線基板に実装するときの作業性を評価する場合などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の一形態の情報処理装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の一形態の情報処理装置1の電気的な構成を示す図である。
【図3】出力手段3の出力画面27を示す図である。
【図4】移動対象部品35を基台34に取付けるときの難易性を表す作業評価値を生成する処理を表すフローチャートである。
【図5】移動情報入力部14および角変位情報入力部15によって移動ベクトルおよび角変位ベクトルを生成するときの出力手段3の出力画面27を示す図である。
【図6】移動対象部品35を移動経路に沿って仮想的に移動させたときの、出力手段3の出力画面27を示す図である。
【図7】移動対象部品35を移動経路に沿って仮想的に移動させたときの、出力手段3の出力画面27を示す図である。
【図8】移動対象部品35を移動経路に沿って仮想的に移動させたときの、出力手段3の出力画面27を示す図である。
【図9】移動対象部品35を移動経路に沿って仮想的に移動させたときの、出力手段3の出力画面27を示す図である。
【図10】移動対象部品52を移動経路に沿って仮想的に移動させたときの、出力手段3の出力画面27を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1 情報処理装置
2 入力手段
3 出力手段
4 記憶手段
5 演算処理手段
10 3次元データ作成部
11 3次元データ記憶部
12 3次元データ表示部
13 組立分解動作設定部
14 移動情報入力部
15 角変位情報入力部
16 組立分解動作記憶部
20 干渉チェック処理部
21 共有体積算出部
22 部品間距離算出部
23 組立分解性評価部
24 評価値出力部
25 部品特性記憶部
26 評価特性記憶部
28 共有領域
30 部品特性入力部
31 評価特性入力部
34 基台
35,52 移動対象部品
36 冶具
37,50 固定部品
38 作業台
43 第1固定部品
44 第2固定部品
45 保持体
47 移動空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準物体およびこの基準物体に対して移動する移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報に基づいて、移動物体を基準物体に対して移動させたとき、移動物体の移動経路に近接して配置される近接物体と移動物体との間隔が最小となる距離を求める最小距離算出手段と、
前記移動経路に沿って移動物体が移動したときの移動物体が占有する移動物体占有空間と、基準物体および近接物体が占有する空間とが重なる重複空間の体積を求める重複体積算出手段と、
最小距離算出手段および重複体積算出手段によって求めた結果に基づいて、移動物体を移動させるときの難易性を表す難易性判定情報を生成する判定情報生成手段と、
判定情報生成手段によって生成された難易性判定情報を出力する出力手段とを含むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記移動物体は、協働して用いられる複数の機器と、これらの機器によって操作される部品とを含むことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判定情報生成手段は、前記最小距離算出手段および前記重複体積算出手段によって求めた結果と、前記部品の属性とに基づいて、難易性判定情報を生成することを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記基準物体および前記移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報は、CADによって生成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記判定情報生成手段は、前記移動経路に沿って前記移動物体を移動させるときの難易性を数値化した値によって生成し、この数値化された値と予め定める値とを比較して、移動物体を移動させることが容易か否かを表す情報を難易性判定情報として生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
基準物体およびこの基準物体に対して移動する移動物体の位置および形状をそれぞれ表す情報に基づいて、移動物体を基準物体に対して移動させたとき、移動物体の移動経路に近接して配置される近接物体と移動物体との間隔が最小となる距離を求める最小距離算出手段と、
前記移動経路に沿って移動物体が移動したときの移動物体が占有する移動物体占有空間と、基準物体および近接物体が占有する空間とが重なる重複空間の体積を求める重複体積算出手段と、
最小距離算出手段および重複体積算出手段によって求めた結果に基づいて、移動物体を移動させるときの難易性を表す難易性判定情報を生成する判定情報生成手段と、
判定情報生成手段によって生成された難易性判定情報を出力する出力手段として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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