説明

情報取得方法及び情報取得装置

【課題】空間分解能の高い二次元分布像を取得し得る情報取得方法及びこの情報取得方法を実行する情報取得装置を提供する。
【解決手段】対象物の質量に関する情報を飛行時間型質量分析計を用いて取得する情報取得方法であって、該対象物のイオン化を促進する金属コロイド粒子を、該イオン化を行う1次ビームに相対して該対象物の下部に配置する工程と、集束し、パルス化し、かつ走査可能な、イオン、中性粒子、及び電子、並びに集光し、パルス化し、かつ走査可能な、レーザー光からなる群から選択された1つの該1次ビームを用いて該対象物に照射を行い該対象物を構成する構成物をイオン化して飛翔させる工程と、該飛翔した構成物の質量に関する情報を、該飛行時間型質量分析計を用いて取得する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報取得方法及び情報取得装置に係り、特に、飛行時間型質量分析計を用いて対象物の情報を取得する情報取得方法及びこの方法を実行する情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のゲノム(genome)解析の進展により、生体内に存在する遺伝子産物であるタンパク質の解析の重要性が急速にクローズアップされてきている。従来から、タンパク質の発現及び機能解析の重要性が指摘されており、その解析手法の開発が進められている。このタンパク質の解析手法は、以下の技術を組み合わせたものを基本としたものが多い。
【0003】
(1)二次元電気泳動や高速液体クロマトグラフ(HPLC)による分離精製
(2)放射線分析、光学的分析、質量分析等の検出系
【0004】
タンパク質解析技術の基盤はプロテオーム(proteome)解析と呼ばれるもので、これは遺伝子(gene)から作り出され実際に生体内で働いているタンパク質を解析し、細胞の機能や疾患の原因を究明することを目的としている。代表的な解析手法としては、以下の手順のものが挙げられる。
【0005】
(1)対象とする生体組織や細胞からのタンパク質の抽出
(2)二次元電気泳動によるタンパク質の分離
(3)MALDI法(マトリクス支援レーザー脱離−飛行時間型質量分析法:MALDI−TOFMS)などの質量分析によるタンパク質またはその断片の分析
(4)ゲノムプロジェクトなどのデータベースを利用したタンパク質の同定
【0006】
また、解析手法として、以下の手順のものも挙げられる(非特許文献1)。
【0007】
(1)対象とする生体組織や細胞からのタンパク質の抽出
(2)抽出したタンパク質の消化(または変性)
(3)液体クロマトグラフ(LC)とイオントラップ型質量分析計(Ion−trap MS)を組み合わせたシステムを用いた上記消化(または変性)タンパク質の分析
(4)データベースの構築及びタンパク質の同定
【0008】
これらのプロテオーム解析により、癌を例に挙げれば、再発や転移に関与するタンパク質が明らかになりつつあるなど、既に成果が出始めている。
【0009】
一方、プロテインチップや生体組織切片におけるタンパク質の二次元分布の可視化を目的とした、TOF−SIMS法(飛行時間型二次イオン質量分析法)をベースとする情報取得手法及び装置を本願発明者らが提案した(特許文献1)。この手法は、まず、インクジェット法などを用い、イオン化促進物質および/または消化酵素を上記のプロテインチップや生体組織切片に付与する。その後、タンパク質の種類に関する情報(消化酵素により限定分解されたペプチドの情報を含む)を、その位置情報を保持したままTOF−SIMS法により可視化するというものである。
【0010】
さらに、TOF−SIMSでポリペプチドを分析した例としては、以下の技術が挙げられる。
【0011】
MALDI法と同様の前処理の適用、すなわちポリペプチドをマトリックス物質と混合することにより、分子量の大きなポリペプチド親分子を検出するもの(非特許文献2)
特定のポリペプチドの一部分を15Nなどでアイソトープラベル化し、当該ポリペプチドをC15のような2次イオンを用いてイメージング検出するもの(非特許文献3)
アミノ酸残基に対応するフラグメントイオン(2次イオン)の種類やその相対強度からポリペプチドの種類を推定するもの(非特許文献4)
各種基板上に吸着させたポリペプチドについてのTOF−SIMS検出限界を調べたもの(非特許文献5)
金ナノパーティクルをポリペプチドに化学修飾し検出感度の向上に利用したもの(非特許文献6)
【0012】
本願発明者らが提案した情報取得方法(特許文献1)は、病変組織及び正常組織におけるタンパク質に関する情報(消化酵素により限定分解されたペプチドの情報を含む)を取得できるが、検出感度をさらに向上させることが好ましい。非特許文献1に開示の方法は、分子量の大きなポリペプチドでも1次イオン照射によるペプチドの分解を抑制し、元の質量を保持したまま親分子を検出できる方法である。しかし、この方法では、ポリペプチドとマトリックス物質とを混合したものを測定試料とするため、上述のタンパク質チップのような試料の場合には、元の二次元分布情報を取得することができない。また、非特許文献3に開示の方法では、特定のポリペプチドの一部分をアイソトープラベル化するもので、TOF−SIMSの持つ高空間分解能を十分生かせる方法である。しかしながら、測定毎に特定のポリペプチドをアイソトープラベル化するのは一般的ではない。また、非特許文献4に開示のアミノ酸残基に対応するフラグメントイオン(2次イオン)の種類やその相対強度からポリペプチドの種類を推定する方法は、アミノ酸の構成が似たポリペプチドが混在する場合は判別が難しくなる。
【0013】
また、金属基板や金属微粒子を用いてポリペプチドの分解フラグメントイオン生成を極力抑えて親分子の検出感度を向上させる試みがなされている。非特許文献5に開示の方法は、ポリペプチド親分子のイオン化を促進して検出感度を向上させる方法である。つまり、この方法は、まず、ポリペプチドを金属基板上へ数分子層の薄膜状に配置する。これに、1次イオン照射によりポリペプチド膜を通過して基板に多くの衝撃を与え、基板より反跳したエネルギー伝播により基板上部に配置された分子を効率良く解離させ、薄膜ゆえ障害なく分子を上方へ飛翔させる。これによって、フラグメントイオン化を抑えつつ、ポリペプチド親分子のイオン化を促し、検出感度を向上させることができる。さらには、非特許文献6に開示の方法では、ポリペプチドの一端を金微粒子で修飾し基板上に配向させ、上記非特許文献5に開示の方法と同様に、1次イオン照射により金微粒子に衝撃を与える。これにより、金原子面より反跳したエネルギー伝播により微粒子表面の分子を解離・飛翔させて、ポリペプチド親分子のイオン化を促し検出感度を向上させる方法である。しかしながら、この両手法とも、基板上への数分子層状の薄膜化や金微粒子修飾処理の工程を経る必要があるため、上述のように、タンパク質チップや生体標本のポリペプチドの二次元分布情報を取得することはできなかった。
【0014】
このようにして、タンパク質チップや生体標本に対してTOF−SIMS法を応用する際、位置情報を維持しながら、2次イオンの分解フラグメント化を抑えてポリペプチドの親分子イオンの検出感度を向上させる技術改善が強く要望されている。しかしながら、従来開示されているものについては、これらの点で必ずしも十分なものではなかった。
【特許文献1】特開2006−10658号公報
【非特許文献1】磯辺俊明、高橋信弘編、「実験医学別冊 プロテオーム解析」、羊土社、2000年
【非特許文献2】K.J.Wuら著、Anal.Chem.、1996年、68巻、p.873
【非特許文献3】A.M.Beluら著、Anal.Chem.、2001年、73巻、p.143
【非特許文献4】D.S.Mantusら著、Anal.Chem.、1993年、65巻、p.1431
【非特許文献5】M.S.Wagnerら著、J.Biomater.Sci.Polymer Edn.、2002年、13巻、p.407
【非特許文献6】Y−P.Kimら著、Anal.Chem.、2006年、78巻、p.1913
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の従来の問題に鑑みなされたものであって、空間分解能の高い二次元分布像を取得し得る情報取得方法及びこの情報取得方法を実行する情報取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による情報取得方法は、対象物の質量に関する情報を飛行時間型質量分析計を用いて取得する情報取得方法であって、該対象物のイオン化を促進する金属コロイド粒子を、該イオン化を行う1次ビームに相対して該対象物の下部に配置する工程と、集束し、パルス化し、かつ走査可能な、イオン、中性粒子、及び電子、並びに集光し、パルス化し、かつ走査可能な、レーザー光からなる群から選択された1つの該1次ビームを用いて該対象物に照射を行い該対象物を構成する構成物をイオン化して飛翔させる工程と、該飛翔した構成物の質量に関する情報を、該飛行時間型質量分析計を用いて取得する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明による情報取得装置は、対象物の質量に関する情報を飛行時間型質量分析計を用いて取得する情報取得装置であって、該対象物のイオン化を促進する金属コロイド粒子を、該イオン化を行う1次ビームに相対して該対象物の下部に配置させる手段と、集束し、パルス化し、かつ走査可能な、イオン、中性粒子、及び電子、並びに集光し、パルス化し、かつ走査可能な、レーザー光からなる群から選択された1つの該1次ビームを用いて該対象物に照射を行い該対象物を構成する構成物をイオン化して飛翔させる手段と、該飛翔した構成物の質量に関する情報を、該飛行時間型質量分析計を用いて取得する手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、対象物を構成する構成物の親分子イオンを効率良く生成させることができる。また、この構成物の二次元分布状態を保持したままイメージング検出することが可能となる。また、物体表面の微細な領域での、構成物自体の分布を効率良く観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
<本発明による情報取得方法>
図1は、本発明による情報取得方法の概要を示した概念図である。本発明による情報取得方法は、まず、対象物5のイオン化を促進する金属コロイド粒子3を、1次ビーム1に相対して情報の取得の対象とする対象物5の下部に配置する。次に、このように配置した対象物5の対象物目的位置4に1次ビーム1を照射して、対象物5を構成する構成物2をイオン化するとともに飛翔させる。その後、この飛翔した構成物2のそれぞれについて、飛行時間型質量分析計を用いて、その質量に関する情報を取得する。その後、この質量に関する情報を元に、情報の取得の対象とした対象物における各構成物の分布状態に関する情報を得る。
【0021】
金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程としては、1次ビームに相対して対象物の表面から一定の距離に金属コロイド粒子を配置させ得る方法であれば、特に制約はない。例えば、種々の混合物からなる溶液を情報の取得の対象物とする場合、あらかじめ基板上に金属コロイド粒子からなる層を形成させた後、その層上に先の溶液を塗布することで種々の混合物からなる層を積層して形成されてもよい。また、キャピラリーやカテーテルを用いて挿入するマイクロインジェクション法、PEG法、レーザー法及びパーティクルガン法並びにインクジェット法を用いて、金属コロイド粒子を対象物の下部に配置してもよい。特に、これらの方法は、細胞や組織などの生体由来の物質を対象物とする場合に、有用である。
【0022】
この金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程として、1次ビームを用いる場合、1次ビームの入射エネルギーとしては、15keV〜25keVであってもよい。これにより、有機膜中に20〜40nmのオーダーで有機膜中にビームが打ち込まれることとなり、表面と対象物との間に金属コロイド粒子を配置しておけば、任意の深さからの上述の各種の情報を得ることが可能となる。
【0023】
マイクロインジェクション法を用いてこの金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程を行う場合、対象物の斜め上方向から入射せしめ、対象物目的位置の下部に一定の深さをもって配置してもよい。これにより、目的位置における構成物の分布状態を破壊することなく構成物の分布状態を、サブミクロンといった微細な空間分解能で検出(イメージング)することができる。
【0024】
なかでも、ガス圧の調整により粒子の適度な深度の調整が可能で、かつ、比較的容易に多数の粒子を対象物質の目的位置に打ち込めるパーティクルガン法を用いることが好ましい。
【0025】
また、この金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程として、多数の金属コロイド粒子を均一に配置し得る点で、金属コロイド粒子を有する溶液を用いたインクジェット法を用いることが好ましい。
【0026】
上述のマイクロインジェクション法やパーティクルガン法などの高圧力で金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する方法は、確実性が高い反面、配置時の金属コロイド粒子のエネルギーが高いことから、精密な調整を必要とする点で、若干不利である。また、配置の際の金属コロイド粒子に与えられるエネルギーの分散性や、配置の方向を制御するのに、精度を要する。特に、組織切片などの組織由来のものを本発明による情報取得方法の情報の取得の対象とする場合、この対象物の分析に必要となるサブミクロンオーダーでの緻密な分散性を期待するのは困難を要する。そこで、より簡易に、より多数で、かつ、サブミクロンレベルの均一性を保持させながら、対象物の下部に粒子を配置する方法として、金属コロイド粒子を水溶液等の適当な溶媒に溶解させたものをインクジェット法によって配置する方法が好ましい。この際、金属コロイド粒子を溶媒に溶解させたものを用いて、この溶液の溶媒の成分及び量、並びにこの溶液の吐出角度及び距離等を調節して、溶媒が蒸散し金属コロイド粒子のみを対象物に到達させるように行うことが好ましい。このインクジェット法は、プリンターなどの通常の印字と同じ仕様で用いると、このような通常の印字の際の吐出速度が数10m/秒程度であり、この速度は、パーティクルガン法の際に得られるエネルギーに換算すると、数kgf/cmに相当する。このエネルギーから見ると、金属コロイド粒子を対象物の下部に配置するには、十分なエネルギーであると言える。しかしながら、インクジェット法を用いた場合、液滴の状態で対象物の表面に衝突させると、金属コロイド粒子の溶液が物理的なクッションのように働いて、エネルギーの散逸が生じてしまう。そのため、金属コロイド粒子の吐出の際のエネルギーが対象物の衝突時に激減してしまい、対象物の下部に注入配置することが困難となる。従って、上述のように、インクジェット法により金属コロイド粒子からなる溶液を用いて金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程を行う場合、この溶液の溶媒が蒸散し金属コロイド粒子のみを対象物に到達させるように行うことが好ましい。
【0027】
この金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程において、配置させる際の金属コロイド粒子の形態としては、固体状、液体状のいずれであってもよい。特に、金属コロイド粒子を水などの溶媒に分散させた溶液を用いてもよい。
【0028】
この金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程において、金属コロイド粒子を対象物の下部に配置させる際の対象物に相対する配置方向としては、上述の要件を満たす方向であれば、特に限定されない。例えば、この配置方向としては、対象物を載置する基板から見て、対象物の上方から配置してもよく、また、対象物の表面に対して90°未満の一定の角度をなす方向から配置してもよい。また、基板が存在しない試料を用い多針構造のマイクロインジェクションを対象物裏面より挿しこみ、目的位置下部に一度に多数の粒子を配置するような方法も充分に有効である。
【0029】
この金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程において、1次ビーム1を照射する対象物目的位置4における対象物5の破壊を抑える目的で、対象物目的位置4の上部に1次ビーム1の衝撃を抑える部材を配置してもよい。このような部材としては、紙やゲル溶液などの固形物又は液体が挙げられる。
【0030】
本発明による情報取得方法において、1次ビームに相対して前記対象物の表面から0.1nm以上100nm以下の位置に前記金属コロイド粒子を配置することが好ましい。100nmを越えると、本発明による情報取得方法において、1次ビームが有機物からなる細胞膜などの対象物を通過して、金属コロイド粒子に衝撃を与える必要性があることから、十分なエネルギーを金属コロイド粒子に与えることができない。また、0.1nm未満であると、粒子表面の物質量が少なくなりすぎて、十分なイオン信号を検出できなくなる。
【0031】
1次ビームに相対した対象物からの金属コロイド粒子の配置位置(以下、配置深さとも称する。)を測定する方法としては、エリプソメトリー法などの偏光解析法が挙げられる。また、配置深さの絶対値としては得られないものの、後述の飛行時間型質量分析計を用いて、金属コロイド粒子を構成する金属イオン種の強度が配置深さに反比例することを利用して、外挿法などによって配置深さを求めてもよい。特に、金属コロイド粒子としてAuを用いる場合、後述の1次ビームの照射により発生するAu3+を配置深さを示す指標として用いて、配置深さを算出してもよい。
【0032】
本発明による情報取得方法において、対象物を構成する構成物をイオン化して飛翔させる工程としては、対象物を構成する構成物をイオン質量分析法などに用いられる1次ビームを用いてイオン化し且つ飛翔させ得るものであれば、特に限定されない。
【0033】
本発明による情報取得方法において、対象物を構成する構成物のイオン化を行う1次ビームとしては、集束することが可能で、パルス化することが可能で、かつ走査することが可能な、イオン、中性粒子及び電子からなるものが用いられる。また、この1次ビームとしては、集光することが可能で、パルス化することが可能で、かつ走査することが可能なレーザー光を用いてもよい。なかでも、1次ビームは、イオンからなることが好ましい。
【0034】
1次ビームを構成する1次イオン種としては、イオン化効率、質量分解能等の観点からガリウムイオン、セシウムイオン、金(Au)イオン、ビスマス(Bi)イオン、カーボンフラーレン(C60)が好ましい。なお、Auイオン、Biイオン、C60イオンを用いると、極めて高感度の分析が可能となる点でより好ましい。その際、Auイオン、Biイオンのみならず、金、ビスマスの多原子イオンである、Auイオン、Auイオン、Biイオン、Biイオンを用いることができ、この順で感度の上昇が図られる場合も多い。特に、金、ビスマスの多原子イオンは、さらに好ましい。
【0035】
さらに、1次イオンビームパルス周波数は、1kHz〜50kHzの範囲であることが好ましい。また、1次イオンビームエネルギーは、12keV〜25keVの範囲であることが好ましい。また、1次イオンビームパルス幅は、0.5ns〜10nsの範囲であることが好ましい。
【0036】
また、本発明は、定量精度を向上させるために、高い質量分解能を保持し、比較的短時間で測定を完了させる必要があることから(一測定が数10秒から数10分のオーダー)、1次イオンビーム径を多少犠牲にして測定することが好ましい。具体的には、1次イオンビーム径をサブミクロンオーダーまで絞らずに、1μmから10μmの範囲に設定することが好ましい。
【0037】
このように、1次ビームを用いて対象物に照射を行って対象物を構成する構成物をイオン化することで、1次ビームの持つ反跳エネルギー伝播により金属コロイド粒子の1次ビーム照射側に位置する構成物が上方へと障害なく飛翔することが可能となる。また、TOF−SIMSでのフラグメントイオンの生成を抑え、効率良く飛翔させることができる。
【0038】
本発明による情報取得方法において、構成物の質量に関する情報を取得する工程は、飛行時間型質量分析計を用いて、先の対象物を構成する構成物をイオン化して飛翔させる工程で得た構成物の2次イオンの質量に関する情報を取得する工程である。この取得工程は、標準的なTOF−SIMS法を用いて行えばよい。
【0039】
なお、本発明による情報取得方法において、対象物を構成する構成物の質量に関する情報としては、対象物の下部に配置した金属コロイド粒子とともに1次ビームを照射して得られるもののうち、以下の一項から三項に挙げるイオンの質量数が含まれる。
【0040】
(1)対象物に金属コロイド粒子を構成する金属が付加したものの質量数
(2)対象物に金属コロイド粒子を構成する金属が付加し、これに水素、炭素、窒素及び酸素からなる群から選択される1以上10以下の数の原子が付加したものの質量数
(3)(2)に規定のものから、水素、炭素、窒素及び酸素からなる群から選択される1以上10以下の数の原子が脱離したものの質量数
【0041】
本発明による情報取得方法において、構成物の前記対象物における分布状態に関する情報を得る工程としては、対象物を載置した基板上における位置情報と、先の飛翔させた構成物の質量に関する情報とを用いて、画像化処理を行う方法が挙げられる。また、この構成物の前記対象物における分布状態に関する情報を得る工程としては、構成物の対象物における2次元での分布状態を得る工程であってもよい。
【0042】
特に、この画像化処理として、この構成物に相当する質量スペクトルにおけるピーク (強度)をXY平面で切り出したイメージ像を、TOF−SIMS測定で得た対象物の三次元データ上に、上記タンパク質の2次元分布像として表示させてもよい。対象物における取得の対象とする構成物が複数種ある場合は、この操作を繰り返せばよい。このような処理を行うことで、構成物毎に、対象物の基板上における存在量の分布として取得することが可能である。さらには、別途、顕微鏡観察において測定された対象物表面の画像と、2次イオン種のピーク強度を二次元的にイメージ表示させたものとを対応づけることで、対象物における、構成物の局在部位の特定を行うことが可能となる。
【0043】
本発明による情報取得方法において、対象物の2次元分布状態の検出(イメージング)は、この対象物を識別できる2次イオンを用いることを特徴とするものである。この2次イオンは質量/電荷比が500以上のイオンであることが好ましく、質量/電荷比が1000以上のイオンであることが特に好ましい。
【0044】
(対象物)
本発明による情報取得方法において、情報を取得する対象物としては、タンパク質やペプチド(以下、ポリペプチドと称する。)などの有機物であれば、特に限定されない。特に、対象物は、臓器から取得した細胞や組織などの生体組織切片であってもよい。また、対象物は、固形であることが好ましい。
【0045】
本発明による情報取得方法において、この対象物は、本技術分野公知の種々の方法により、後述の基板上に載置され、上述の方法に供される。
【0046】
(基板)
本発明による情報取得方法において、対象物を載置する基板としては、対象物に1次ビームを照射して得た上記の構成物についての質量情報の検出を妨げることのない固形物であれば、特に制約はない。具体的には、シリコンなどの導電性を有するもの、有機ポリマーやガラスなどの絶縁性を有するものが挙げられる。また、ここで「基板」と称しているが、板状の形態に限られることはなく、粉末状、粒状のようなあらゆる形態のものを用いることができる。
【0047】
(金属コロイド粒子)
本発明による情報取得方法において、利用される金属コロイド粒子の構成物質としては、例えば以下の金属又はこれらの金属からなる合金を少なくとも1種類以上有するものが挙げられる。つまり、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウム及びケイ素が挙げられる。なかでも、比較的容易に入手が可能で、かつ、イオン検出感度の向上が最も高い点で、金からなることが好ましい。金属コロイド粒子の粒径としては、特に制約はなく、例えば市販品のような数nmから数百nmまでのものであってもよい。なかでも、金属コロイド粒子の直径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。この範囲から外れると、上述の1次ビームが通常の測定条件において1個/100nmといった密度で入射され、またこの時、金属表面より反跳されるエネルギー伝播領域が100nm程度であることから考えて、反跳エネルギーが増大し過ぎてしまう。特に、TOF−SIMS分析における一般的な測定時間内での1次イオン入射密度、および、粒子入射における対象物のダメージを最小限に抑えることを考えると、金属コロイドの粒径としては、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。
【0048】
<本発明による情報取得装置>
本発明による情報取得装置は、対象物の質量に関する情報を飛行時間型質量分析計を用いて取得する情報取得装置であって、該対象物のイオン化を促進する金属コロイド粒子を、該イオン化を行う1次ビームに相対して該対象物の下部に配置させる手段と、集束し、パルス化し、かつ走査可能な、イオン、中性粒子、及び電子、並びに集光し、パルス化し、かつ走査可能な、レーザー光からなる群から選択された1つの該1次ビームを用いて該対象物に照射を行い該対象物を構成する構成物をイオン化して飛翔させる手段と、該飛翔した構成物の質量に関する情報を、該飛行時間型質量分析計を用いて取得する手段と、を有することを特徴とする。また、本発明による情報取得装置において、前記構成物の前記対象物における分布状態に関する情報を得る手段をさらに有することを特徴とする。
【0049】
本発明による情報取得装置において、金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する手段は、上述の本発明による情報取得方法における金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程を実行し得る手段に対応する。また、本発明による情報取得装置において、対象物を構成する構成物をイオン化して飛翔させる手段は、上述の本発明による情報取得方法における対象物を構成する構成物をイオン化して飛翔させる工程を実行し得る手段に対応する。また、本発明による情報取得装置において、構成物の質量に関する情報を取得する手段は、上述の本発明による情報取得方法における構成物の質量に関する情報を取得する工程を実行し得る手段に対応する。また、本発明による情報取得装置において、構成物の前記対象物における分布状態に関する情報を得る手段は、上述の本発明による情報取得方法における構成物の前記対象物における分布状態に関する情報を得る工程を実行し得る手段に対応する。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0051】
なお、実施例1では、対象物に金属コロイド粒子を単に分散した場合の例について示し、実施例2では、金属コロイド粒子上に対象物を配置した場合の例について示し、実施例3では、対象物の下部に金属コロイド粒子を配置した場合の例について示す。これらの実施例は、本発明の最良の実施形態を説明するものであるが、本発明は、斯かる具体的形態に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
金コロイド粒子を混合したポリペプチド膜のTOF−SIMS分析
【0053】
本発明の要件として、金属コロイド粒子を目的位置の下部にある一定の深さで配置することにあるが、前段階として本発明の効果確認をするため、単純にポリペプチド膜中に金コロイド粒子を分散させた試料を作成し、本発明の効果の検証をおこなった。
【0054】
最初に試料作成について述べる。基板としては、不純物を含まない1×1cm□シリコン基板をアセトンおよび脱イオン水の順番で洗浄したものを用いた。使用したポリペプチドとして、下記の物質をそれぞれ10ng/1μM水溶液となるように調製し、脱イオン水を用いてそれぞれ1ng/μLに調製し、各100μLを全て混合した水溶液を調製した。以下、この水溶液を混合ポリペプチド溶液と呼ぶ。
【0055】
アンジオテンシンI(配列番号1、ウシ由来、平均分子量:1295.51、以下アンジオテンシンと表記)(New England Biolabs社製)
ニューロテンシン(配列番号2、ウシ由来、平均分子量:1672.96)(New England Biolabs社製)
ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)(18−39)(配列番号3、ウシ由来、平均分子量:2465.72、以下ACTHと表記)(New England Biolabs社製)
【0056】
次に、この混合ポリペプチド溶液に、金コロイド粒子溶液(粒径40nm、クエン酸1M水溶液に0.6ミリ質量%で分散)を100μL混合した。これを、軽く攪拌したのち、シリコン基板上にマイクロピペッターにより20μLを滴下し、自然乾燥させて直径2mm程度で膜厚が数μm程度の膜を形成した。
【0057】
また、参照試料として、上述の金コロイド粒子を用いずに、上述と同様に、数μm程度の膜を形成した。
【0058】
続いて、測定条件について述べる。TOF−SIMS分析では、ION TOF社製TOF−SIMS5型装置を用いた。測定条件を以下に要約する。
【0059】
1次イオン:25kV Bi、0.3pA(パルス電流値)、sawtoothスキャンモード
1次イオンのパルス周波数:3.3kHz(300μ秒/shot)
1次イオンパルス幅:約0.8n秒
1次イオンビーム直径:約3μm
測定領域:300μm×300μm
2次イオン像のピクセル数:128×128
積算時間:約400秒
【0060】
このような条件で正の2次イオン質量スペクトルを測定した。その結果として得られた実測スペクトルを図2に示す。それぞれのスペクトルにおいて、上段は、金コロイド粒子を用いずに調製した混合ポリペプチド溶液だけの参照試料で、下段は、金コロイド粒子を有する混合ポリペプチド溶液の試料から得られたスペクトルである。(a)は広域質量領域におけるスペクトルを表す。また、(b)乃至(e)は、広域質量領域におけるスペクトルをそれぞれ拡大したものであって、(b)は、[アンジオテンシン+H]、(c)[ニューロテンシン+H]、(d)[ACTH+H]、(e)Auについてのものである。
【0061】
(実施例2)
金基板上に膜厚を変化させて配置したポリペプチド膜のTOF−SIMS分析
上述のように、本発明の効果を最大限に得るため、金属コロイド粒子を対象物の目的位置下部の一定の深さに配置することが望ましい。この金属コロイド粒子の埋め込みの深さを最適化するため、金基板上にスピンコート法で種々の膜厚を持つポリペプチド薄膜を作製した。この薄膜について、TOF−SIMSでの測定によって、擬似的に金コロイド粒子を適用する際の配置深さの検討として、金表面におけるポリペプチド薄膜の最適な厚み評価を行った。
【0062】
最初に試料の調製について述べる。基板としては不純物を含まない1×1cm□のシリコン基板をアセトンおよび脱イオン水の順番で洗浄し、金を加熱蒸着法で数100nm程度に成膜したものを金基板として用いた。ポリペプチドとしては、実施例1で使用した混合ポリペプチド溶液を用い、マイクロピペッターを用いて、10μLずつを上記の金基板上にスポッティングし、回転数1500回/分の速度でスピンコート法により成膜を行った。このとき、成膜する膜厚のコントロールとして、スポッティングの回数を1回から4回と変化させて、混合ポリペプチド溶液からなる膜の膜厚が異なる試料をそれぞれ作成した。この基板を自然乾燥した後、TOF−SIMS分析に用いた。
【0063】
混合ポリペプチド溶液からなる膜の膜厚は、1次ビームを照射した際に得られる金表面のAu3+に由来するシグナルから、相対値として算出した。
【0064】
測定条件についても、上述の実施例1と全く同様にして分析を行った。その結果として得られた実測スペクトルを図3に示す。それぞれのスペクトルは、(a)[アンジオテンシン+H]、(b)[ニューロテンシン+H]、(c)[ACTH+H]、(d)Auを示す。各種ポリペプチドの親分子イオン(+H付加)の信号が試料の膜厚(Auの信号強度に反比例)に依存するように検出され、Auの信号強度が2.5×10cnt/秒となる試料膜厚の時に各種ポリペプチドの強度が最大となった。この実験結果により、金コロイド粒子を目的位置の下部に配置する際、本発明の効果を最大限に得られる最適な配置深さが存在することが明らかとなった。また、この最適な配置深さは、同TOF−SIMSの測定条件で計測してAuの信号強度が2.5×10cnt/秒程度になるように調整することにより得ることができると予想される。
【0065】
(実施例3)
インクジェット法を用いた生体試料下部への金コロイド粒子配置
上述のように、発明の効果を最大限に発揮するため、金属コロイド粒子を、より多数かつより均一に試料下部の一定深さに配置する方法として、金属コロイド粒子の溶液をインクジェット法で吐出して試料下部に注入配置する手段を用いた。用いた金属コロイド粒子溶液は、実施例1と同様に、金コロイド粒子溶液(粒径40nm、クエン酸1M水溶液に0.6m質量%で分散)をそのままの状態で使用した。インクジェット方式は熱加熱(バブルジェット(登録商標))方式を用い、市販のプリンター(キヤノン PIXUS990i:1つの液滴サイズ8pL)の印字受け箇所を改造して、液滴の飛翔距離が1cmのところに1cm角の基板試料を設置できるようにした。この液滴飛翔距離の改造により、液滴の飛翔中に溶媒成分を蒸発させ、金コロイド粒子を試料下部に注入配置させることが可能となる。用いた生体試料は、胃壁組織(健常人の胃部より摘出)をミクロトームで厚さ1μm程度に切片化し、パラフィンでSi基板上に固定した後、エタノールで洗浄し、室温・大気下で十分に乾風したものを用いた。図4に、実際に金コロイド粒子を吐出した切片組織表面における走査型電子顕微鏡(SEM)の像を示す。図中、白く丸く写っている箇所は、直径40nmの金コロイド粒子を示す。そのうち、輝度が高い部分は、試料表面から露出している箇所を示し、少し輝度が低い部分は、金コロイド粒子が試料に埋没している様子を示す。この図に示されるように、このインクジェットの手法によって、金コロイド粒子が生体試料表面下部に埋め込まれて配置されている様子が判る。さらに、このインクジェット法によって金コロイド粒子を注入配置した試料を、実施例1と同様に、TOF−SIMSで計測した。その結果を図5に示す。図5(a)は、通常のバブルジェットプリンター(登録商標)での液滴飛翔距離2mmで、金コロイド粒子溶液を試料表面に吐出した試料のTOF−SIMSスペクトルを示す。また、図5(b)は、上述のように、液滴飛翔距離を1cmにして、金コロイド粒子溶液を試料表面に吐出した試料のTOF−SIMSスペクトルを示す。この両スペクトルの高質量の領域(>400amu)において、(a)からは、金のクラスターピークが検出されているだけであるのに対して、(b)からは、脂肪酸由来と思われるピークが多数、かつ、強く検出されている。このことからも、液滴飛翔距離を十分に広げることにより、溶媒成分の蒸発によって、金属コロイド粒子が試料下部に注入配置され、そのことにより、TOF−SIMSの2次イオン感度が増強されたことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による情報取得方法の概要を示した概念図である。
【図2】実施例1における正の2次イオン質量スペクトルの比較図である。
【図3】実施例2における、正の2次イオン質量スペクトルの比較図である。
【図4】実施例3で得た走査型電子顕微鏡写真像である。
【図5】実施例3で得た正の2次イオン質量スペクトルである。
【符号の説明】
【0067】
1 1次ビーム
2 構成物
3 金属コロイド粒子
4 対象物目的位置
5 対象物
6 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の質量に関する情報を飛行時間型質量分析計を用いて取得する情報取得方法であって、
該対象物のイオン化を促進する金属コロイド粒子を、該イオン化を行う1次ビームに相対して該対象物の下部に配置する工程と、
集束し、パルス化し、かつ走査可能な、イオン、中性粒子、及び電子、並びに集光し、パルス化し、かつ走査可能な、レーザー光からなる群から選択された1つの該1次ビームを用いて該対象物に照射を行い該対象物を構成する構成物をイオン化して飛翔させる工程と、
該飛翔した構成物の質量に関する情報を、該飛行時間型質量分析計を用いて取得する工程と、
を有することを特徴とする情報取得方法。
【請求項2】
前記の金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程は、マイクロインジェクション法、PEG法、レーザー法及びパーティクルガン法並びにインクジェット法からなる群から選択された少なくとも1種の方法を用いて行う工程である、請求項1に記載の情報取得方法。
【請求項3】
前記の金属コロイド粒子を対象物の下部に配置する工程は、前記1次ビームに相対して前記対象物の表面から0.1nm以上100nm以下の位置に前記金属コロイド粒子を配置するように行う工程である、請求項1又は2に記載の情報取得方法。
【請求項4】
前記構成物の前記対象物における分布状態に関する情報を得る工程をさらに有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報取得方法。
【請求項5】
前記の構成物の前記対象物における分布状態に関する情報を得る工程は、前記構成物の前記対象物における2次元での分布状態を得る工程である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報取得方法。
【請求項6】
前記金属コロイド粒子の直径は、1nm以上100nm以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の情報取得方法。
【請求項7】
前記金属コロイド粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウム及びケイ素からなる群から選択された少なくとも1種類の金属又は合金を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の情報取得方法。
【請求項8】
前記1次ビームは、イオンからなる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の情報取得方法。
【請求項9】
前記対象物は、細胞又は組織を含む生体由来である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の情報取得方法。
【請求項10】
対象物の質量に関する情報を飛行時間型質量分析計を用いて取得する情報取得装置であって、
該対象物のイオン化を促進する金属コロイド粒子を、該イオン化を行う1次ビームに相対して該対象物の下部に配置させる手段と、
集束し、パルス化し、かつ走査可能な、イオン、中性粒子、及び電子、並びに集光し、パルス化し、かつ走査可能な、レーザー光からなる群から選択された1つの該1次ビームを用いて該対象物に照射を行い該対象物を構成する構成物をイオン化して飛翔させる手段と、
該飛翔した構成物の質量に関する情報を、該飛行時間型質量分析計を用いて取得する手段と、
を有することを特徴とする情報取得装置。
【請求項11】
前記構成物の前記対象物における分布状態に関する情報を得る手段をさらに有する、請求項10に記載の情報取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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