説明

情報埋め込み装置、情報抽出装置、情報埋め込み方法および情報抽出方法

【課題】 回転に対する補正を行なうことなく、画像の回転の影響を軽減して、埋め込まれた情報を抽出する。
【解決手段】 情報抽出方法は、画像情報に埋め込まれた情報を抽出する方法であって、基準Y座標に読み取りY座標をセットするステップ(S9010)と、画像から埋め込み情報を抽出するステップ(S9020)と、異なる変換方法の情報があると(S9030にてYES)、読み込み領域を読み取りY座標より上にシフトするステップ(S9040)と、さらに画像から埋め込み情報を抽出して(S9050)、異なる変換方法の情報があると(S9060にてYES)、読み込み領域を読み取りY座標より下にシフトするステップ(S9070)と、さらに画像から埋め込み情報を抽出するステップ(S9080)とを、画像情報の全てについて繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に対して情報を埋め込む技術、埋め込んだ情報を抽出する技術に関し、特に、画像が回転する等の変形が発生しても、情報として埋め込まれた電子透かし情報等を確実に抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタル計算機技術の向上に伴い、デジタル画像や動画が芸術的価値をもつ著作物として販売されるようになっている。計算機上で取り扱うデジタル著作物は、品質の劣化を伴わない複製を容易に行なうことが可能であるため、複製物の不正な頒布がされやすいなどの問題がある。また、企業などの機密情報を記した書類を計算機上のワード・プロセッサで作成することが多くなっているが、近年の計算機はネットワークに接続されて用いられることが多く、そのため機密情報の流出も起こりやすくなっている。
【0003】
このように、様々な価値を有するデジタル画像や文書がデジタル計算機上で広く使われるようになっているが、上述したように複製や流出が起こりやすくなっているため、その財産的価値を守るための技術が広く研究されている。このような技術が、電子透かしや情報埋め込みという技術である。このような技術を用いることで、デジタル画像に著作者情報や電子署名情報を埋め込み、それを検証に用いることでその真正性を証明したり、機密文書に配布経路情報を埋め込むことで、流出した際の流出経路を把握したりすることができる。
【0004】
このような技術に関し、特開2003−101762号公報(特許文献1)は、正確に秘密情報を取り出すことの可能な、透かし情報埋め込み装置を開示する。この公報に開示された透かし画像埋め込み装置は、文書データを基にして、文書画像をページごとに作成する文書画像形成部と、透かし画像を作成する透かし画像形成部と、文書画像と透かし画像を重ね合わせて透かし入り文書画像を作成する透かし入り画像合成部とを備える。透かし画像は、複数種類のドットパターンが規則正しく配置され、その中の少なくとも1種類のドットパターンは特定の機密を表わす機密情報が与えられることを特徴とする。さらに、ドットの配列によって波の方向および/または波長を変化させたドットパターンを複数用意し、1つのドットパターンに対して1つのシンボルを与え、ドットパターンを組み合わせて配置することにより、機密情報が与えられ、シンボルは、機密情報の一部を成す有効なシンボルと、機密情報とは無関係の無効なシンボルとからなることを特徴とする。
【0005】
この透かし情報埋め込み装置によると、ドットの配列の違いにより埋め込み情報を表現するため、元の文書のフォント、文字間や行間のピッチに対する変更を伴わない。また、シンボルを割り当てているドットパターンと、シンボルを割り当てていないドットパターンの濃度(一定区間内のドットの数)が等しいため、人の目には文書の背景に一様な濃度の網掛けがされているように見え、情報の存在が目立たない。さらに、シンボルを割り当てているドットパターンと割り当てていないドットパターンを秘密にしておくことで、埋め込まれている情報の解読が困難となる。さらに、情報を表わすパターンは細かいドットの集まりで、文書の背景として一面に埋め込まれているため、埋め込みアルゴリズムが公開されたとしても、印刷された文書に対する埋め込み情報の改ざんが困難となる。さらに、波(濃淡変化)の方向の違いにより埋め込み信号を検出するため(1画素単位の詳細な検出を行なわないので)、印刷文書に多少の汚れなどがあった場合でも、安定した情報検出を行なうことができる。
【特許文献1】特開2003−101762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2003−101762号報に記載の透かし情報埋め込み装置においては、埋め込み時に画像にドットパターンを配置するのでは、抽出の際の画像読み取り時に回転の影響を受ける。このため、抽出のためには、その補正を行なわなければならない。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、回転に対する補正を行なうことなく、画像の回転の影響を軽減できる、情報埋め込み装置、情報抽出装置、情報埋め込み方法および情報抽出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る情報埋め込み装置は、画像情報に付加情報を埋め込む装置であって、デジタル符号を画像に変換して埋め込み情報パターンを生成するための埋め込み情報パターン生成手段と、埋め込み情報パターンを複数配置した埋め込み情報画像を生成するための埋め込み情報画像生成手段と、埋め込み情報画像と画像とを重ね合わせるための情報埋め込み手段とを含む。埋め込み情報パターン生成手段は、複数の変換手順を用いて埋め込み情報パターンを生成するための手段を含む。埋め込み情報画像生成手段は、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンを異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンになるように配置して、埋め込み情報画像を生成するための手段を含む。
【0009】
また、第7の発明に係る情報埋め込み方法は、画像情報に付加情報を埋め込む方法であって、デジタル符号を画像に変換して埋め込み情報パターンを生成する埋め込み情報パターン生成ステップと、埋め込み情報パターンを複数配置した埋め込み情報画像を生成する埋め込み情報画像生成ステップと、埋め込み情報画像と画像とを重ね合わせる情報埋め込みステップとを含む。埋め込み情報パターン生成ステップは、複数の変換手順を用いて埋め込み情報パターンを生成するステップを含む。埋め込み情報画像生成ステップは、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンを異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンになるように配置して、埋め込み情報画像を生成するステップを含む。
【0010】
第1の発明または第7の発明によると、埋め込まれた情報の抽出時においては、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンについては、異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンになるように配置されて、埋め込み情報画像が生成される。このため、読み取り方向の読み取り処理を実行して情報パターンが異なる変換手順で変換されているものであることを検知すると、読み取り方向を正しい方向に修正する。すなわち、情報パターンが同じ変換手順で変換されているものになるように修正する。このようにすると、たとえば、画像が回転している場合においても、正しく埋め込まれた情報を抽出することができる。その結果、回転に対する補正を行なうことなく、画像の回転の影響を軽減できる、情報埋め込み装置および情報埋め込み方法を提供することができる。
【0011】
第2の発明に係る情報埋め込み装置においては、第1の発明の構成に加えて、埋め込み情報パターン生成手段は、複数の周波数帯域を用いて、埋め込み情報パターンを生成するための手段を含む。
【0012】
また、第8の発明に係る情報埋め込み方法においては、第7の発明の構成に加えて、埋め込み情報パターン生成ステップは、複数の周波数帯域を用いて、埋め込み情報パターンを生成するステップを含む。
【0013】
第2の発明または第8の発明によると、たとえば、低周波数帯域(低周波数領域)を用いた変換手順と、高周波数帯域(高周波数領域)を用いた変換手順の2つの変換手順を用いて、埋め込みパターンを生成する。この変換手順が、読み取り方向に直交する位置が同じであるにもかかわらず変更されると、画像自体が回転している等であるので、読み取られた画像の情報抽出方向を修正するようにして、正しく埋め込まれた情報を抽出することができる。
【0014】
第3の発明に係る情報埋め込み装置は、第1の発明の構成に加えて、埋め込み情報パターンの配置に関する情報を含む抽出情報を表わす画像を生成するための手段をさらに含む。埋め込み情報画像生成手段は、抽出情報に従って、埋め込み情報パターンを配置するための手段を含む。
【0015】
また、第9の発明に係る情報埋め込み方法は、第7の発明の構成に加えて、埋め込み情報パターンの配置に関する情報を含む抽出情報を表わす画像を生成するステップをさらに含む。埋め込み情報画像生成ステップは、抽出情報に従って、埋め込み情報パターンを配置するステップを含む。
【0016】
第3の発明または第9の発明によると、埋め込み情報パターンの配置に関する情報を含む抽出情報に基づいて埋め込みパターンが配置される。埋め込まれた情報の抽出時においては、この抽出情報を先に読み出して、この情報に基づいて埋め込まれた情報を抽出するようにできる。
【0017】
第4の発明に係る情報抽出装置は、画像情報に埋め込まれた付加情報を抽出する装置であって、予め定められた読み取り方向に従って、画像情報を読み取るための手段と、画像に埋め込まれた付加情報であるデジタル符号を抽出するための埋め込み情報抽出手段とを含む。埋め込み情報抽出手段は、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンが異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンを、変換手順を区別するようにして、デジタル符号を抽出するための手段を含む。
【0018】
また、第10の発明に係る画像抽出方法は、画像情報に埋め込まれた付加情報を抽出する方法であって、予め定められた読み取り方向に従って、画像情報を読み取るステップと、画像に埋め込まれた付加情報であるデジタル符号を抽出する埋め込み情報抽出ステップとを含む。埋め込み情報抽出ステップは、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンが異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンを、変換手順を区別するようにして、デジタル符号を抽出するステップを含む。
【0019】
第4の発明または第10の発明によると、埋め込まれた情報の抽出時においては、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンについては、異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンになるように配置されて生成された埋め込み情報画像から、埋め込まれた情報が抽出される。このため、読み取り方向の読み取り処理を実行して情報パターンが異なる変換手順で変換されているものであることを検知すると、読み取り方向を正しい方向に修正する。すなわち、情報パターンが同じ変換手順で変換されているものになるように修正する。このようにすると、たとえば、画像が回転している場合においても、正しく埋め込まれた情報を抽出することができる。その結果、回転に対する補正を行なうことなく、画像の回転の影響を軽減できる、情報抽出装置および情報抽出方法を提供することができる。
【0020】
第5の発明に係る情報抽出装置においては、第4の発明の構成に加えて、埋め込み情報抽出手段は、変換手順が変更されたことを検知すると、デジタル符号を抽出する画素の方向を変更して、デジタル符号を抽出するための手段を含む
また、第11の発明に係る情報埋め込み方法においては、第10の発明の構成に加えて、埋め込み情報抽出ステップは、変換手順が変更されたことを検知すると、デジタル符号を抽出する画素の方向を変更して、デジタル符号を抽出するステップを含む。
【0021】
第5の発明または第11の発明によると、変換手順が、読み取り方向に直交する位置が同じであるにもかかわらず変更されたことを検知すると、画像自体が回転している等であるので、読み取られた画像の情報抽出方向を修正するようにして、正しく埋め込まれた情報を抽出することができる。
【0022】
第6の発明に係る情報抽出装置においては、第4または5の発明の構成に加えて、変換手順は、複数の周波数帯域を用いて変換される。
【0023】
また、第12の発明に係る情報抽出方法においては、第10または11の発明の構成に加えて、変換手順は、複数の周波数帯域を用いて変換される。
【0024】
第6の発明または第12の発明によると、たとえば、低周波数帯域(低周波数領域)を用いた変換手順と、高周波数帯域(高周波数領域)を用いた変換手順の2つの変換手順を用いて、埋め込みパターンを生成する。この変換手順が、読み取り方向に直交する位置が同じであるにもかかわらず変更されると、画像自体が回転している等であるので、読み取られた画像の情報抽出方向を修正するようにして、正しく埋め込まれた情報を抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明においては、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0026】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る情報埋め込み装置および埋め込み情報抽出装置を含むシステムの構成を示した制御ブロック図である。
【0027】
本実施の形態においては、情報埋め込み装置2010はIEEE802.3によって規定されるネットワークによって計算機2100と接続され、TCP/IPと呼ばれるプロトコルで計算機2100と通信することにより、計算機2100から印刷画像および埋め込み情報を受信して、それらの情報が印刷された印刷媒体を出力するものであると想定する。また、埋め込み情報抽出装置2060による読み取り方向はX軸方向(横方向)で、印刷媒体の左端を座標0とする。
【0028】
図1に示すように、この情報埋め込み装置2010は、埋め込み情報パターン生成部2020、埋め込み情報画像生成部2030、情報埋め込み部2040、画像出力部2050から構成される。さらに、埋め込み情報抽出装置2060は、画像情報読み取り部2070、埋め込み情報抽出部2080、埋め込み情報出力部2090から構成される。
【0029】
以下、まず、情報埋め込み装置2010により文書画像に情報を埋め込む場合について説明して、次に、埋め込み情報抽出装置2060により情報が埋め込まれた文書画像から埋め込まれた情報を抽出する場合について説明することとする。
【0030】
情報埋め込み装置2010は、上述したように、埋め込み情報パターン生成部2020、埋め込み情報画像生成部2030、情報埋め込み部2040、画像出力部2050から構成され、印刷画像と埋め込み情報とから、情報が埋め込まれた印刷媒体を出力する。これらの埋め込み情報パターン生成部2020、埋め込み情報画像生成部2030、情報埋め込み部2040は、プログラムを実行するCPUとメモリ等の記憶部とを有するコンピュータ等により実現される。
【0031】
埋め込み情報パターン生成部2020は、計算機2100から埋め込み情報を読み込み、それを画像の配列とする処理を実行する。本実施の形態においては、埋め込む情報は、計算機2100のIPアドレスとする。本実施の形態においては、埋め込む情報を計算機2100のIPアドレスとしたが、画像作成者の電子署名情報や、画像そのものの特徴を表した情報など、デジタル情報であれば特に限定されない。
【0032】
図2を参照して、埋め込み情報パターン生成部2020において実行されるプログラムの制御構造を説明する。
【0033】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)3010にて、埋め込み情報パターン生成部2020は、第1番目(ひとつめ)の変換方法として、0を表わす埋め込み情報パターン、1を表わす埋め込み情報パターンをそれぞれ作成する。本実施の形態における、ひとつめの変換方法は、図3中の領域(32画素×32画素のデータ領域)4010において、黒で塗りつぶされている領域の値を0または1に対応する値に変更した画像を、2次元逆離散コサイン変換するものである。なお、格子状の線は画素の境界を表わす線である。さらに、ひとつの埋め込み情報パターンの大きさは、32画素×32画素とする。値を変更する画素をこのように配置しているのは、「DCTを用いた電子透かしの印刷取込み耐性の検討」、(電子情報通信学会論文誌 第J85-A巻 第4号、水本匡、松井甲子雄著、(社)電子情報通信学会発行)によると、DCTを用いた電子透かしによる情報埋め込みにおいて、回転に耐性を持つためには、透かし成分をDC(直流)成分から高周波側へ直線状に埋め込めばよいことが知られているためである。
【0034】
本実施の形態においては、このように定めているが、埋め込み情報パターンの作成方法はこの例に限らない。周波数領域を利用せず、抽出時に読み取りやすい(なんらかの)形態(模様)で0または1を表現してもよいし、画素数も32画素×32画素に限定されるものではない。また、ひとつの埋め込み情報パターンに複数ビットの情報を含ませてもよい。
【0035】
S3020にて、埋め込み情報パターン生成部2020は、第2番目(ふたつめ)の変換方法として、0を表わす埋め込み情報パターン、1を表わす埋め込み情報パターンをそれぞれ作成する。本実施の形態における、ふたつめの変換方法は、図4中の領域(32画素×32画素のデータ領域)5010において、黒で塗りつぶされている領域の値を0または1に対応する値に変更した画像を2次元逆離散コサイン変換するというものである。
【0036】
なお、本実施の形態においては、変換方法の数を2つとしているが、3つ以上の変換方法を用いてもよい。
【0037】
S3030にて、埋め込み情報パターン生成部2020は、S3010にて作成した0のパターンと1のパターンを配置することにより、埋め込み情報である計算機2100のIPアドレス(4オクテットつまり32ビットで表現される)を表現する配列を作成する。同様にして、埋め込み情報パターン生成部2020は、S3020にて作成した0のパターンと1のパターンを配置することにより、埋め込み情報である計算機2100のIPアドレスを表現する配列を作成する。
【0038】
本実施の形態においては、単純に0と1とを32ビット分配置するだけであるが、読み取り時の精度向上のために誤り訂正符号などを用いて冗長性を持たせるようにしてもよい。
【0039】
S3040にて、埋め込み情報パターン生成部2020は、作成した2つの配列を埋め込み情報画像生成部2030に出力する。この後、処理は終了する。
【0040】
次いで、埋め込み情報画像生成部2030について説明する。埋め込み情報画像生成部2030は、埋め込み情報パターン生成部2020で作成した埋め込み情報パターンの配列を受け取り、埋め込み情報画像を生成する。本実施の形態においては、埋め込み情報画像は、図5(A)および図5(B)のように埋め込み情報パターンを配置する。
【0041】
図5(A)および図5(B)は、埋め込み情報画像の一部分を表した例である。
領域6010(Aと記載されている部分)には、前述したひとつめの変換方法を用いて変換した埋め込み情報パターンの配列が配置されている。
【0042】
領域6020(Bと記載されている部分)には、前述したふたつめの変換方法を用いて変換した埋め込み情報パターンの配列が配置されている。すなわち、領域6010(Aと記載されている部分)と領域6020(Bと記載されている部分)とで、同じ情報を埋め込んでいる。埋め込み情報画像生成部2030は、これを、印刷領域全体に繰り返し配置した画像を埋め込み情報画像として、情報埋め込み部2040に出力する。
【0043】
なお、印刷領域の最も上の段は、ひとつめの変換方法で変換した埋め込み情報パターンの配列を配置するものとする。本実施の形態においては、埋め込む情報は4オクテットであるが、著作権情報など、もっと多い情報を埋め込む際には、複数の段にわたって異なる情報を埋め込むようにしてもよい。すなわち、領域6010で表わされる段と領域6020で表わされる段が必ず同じ情報を持っている必要はなく、たとえば埋め込み情報画像すべてをあわせてひとつの情報を表わすようにしてもよい。
【0044】
また、読み取り時の精度を上げるために、図5(B)の領域6030で表わされるように、連続して同じ埋め込みパターン情報の配列を配置するようにしてもよい。すなわち、領域6040、領域6050のように、複数の段にわたって同じ埋め込み情報パターンの配列を配置してもよい。
【0045】
本実施の形態においては、埋め込み情報画像を生成する際に、読み取り方向と直交する方向、すなわちY軸方向、に隣り合う段にはそれぞれ異なる変換方法で変換したパターンを配置するようになりさえすればよい。3つ以上の変換方法を利用した場合でも、読み取り方向と直交する方向に隣り合う段には異なる変換方法で変換したパターンを配置すればよい。
【0046】
また、本実施の形態においては、埋め込み情報パターンは、印刷領域全体に配置しているが、計算機2100が出力する印刷画像情報を参照して、印刷画像情報の画素の値がない部分にのみ配置するようにしてもよい。
【0047】
次いで、図6を参照して、埋め込み情報画像生成部2030において実行されるプログラムの制御構造を説明する。
【0048】
S7010にて、埋め込み情報画像生成部2030は、画像生成のための埋め込み情報パターン配置を行なう際の変換方法の初期化を行なう。本実施の形態においては、変換方法の初期値は、前述の埋め込み情報パターン生成部2020において実行されるプログラムの制御構造において説明した、ひとつめの変換方法であるとする。
【0049】
S7020にて、埋め込み情報画像生成部2030は、埋め込み情報パターン配置の開始点を(本実施の形態においては、印刷領域の左上端のY座標に)設定する。
【0050】
S7030にて、埋め込み情報画像生成部2030は、印刷領域の左上端のX座標を設定する。
【0051】
S7040にて、埋め込み情報画像生成部2030は、埋め込み情報パターン生成部2020において作成された埋め込み情報パターンの配列から埋め込むべき情報を配置する。埋め込み情報パターンの配列は、0または1に対応する埋め込み情報パターンが連なっている2つの配列であり、2つの異なる変換によって、同一の情報(すなわち本実施の形態においてはIPアドレス)から生成されたパターンが記憶されている。また、S7040にて、埋め込み情報画像生成部2030は、現在設定されている変換方法によって変換されている埋め込み情報パターンの配列から、1ビット分の情報を表わすパターン(32画素×32画素)を印刷画像に配置する。
【0052】
S7050にて、埋め込み情報画像生成部2030は、読み取りX座標の更新および埋め込み情報パターンの配列の添字の更新を行なう。本実施の形態においては、具体的には、読み取りX座標には32画素分加算し、埋め込み情報パターンの配列の添字の更新は1を加算する。なお、配列は32ビット分の大きさなので、加算の結果、添字が範囲を超える場合は0に値を戻す。
【0053】
S7060にて、埋め込み情報画像生成部2030は、画像の右端まで埋め込み情報パターンを配置したか否かを判断する。画像の右端まで埋め込み情報パターンを配置していれば(S7060にてYES)、処理はS7070へ移される。もしそうでないと(S7060にてNO)、処理はS7040へ戻される。
【0054】
S7070にて、埋め込み情報画像生成部2030は、埋め込みY座標の更新を行ない、さらに下の段に配置するようにする。
【0055】
S7080にて、埋め込み情報画像生成部2030は、埋め込みの際の変換方式の更新を行なう。本実施の形態においては、用いられる変換方法は2つであるので、現在、前述の埋め込み情報パターン生成部2020にて実行されるプログラムの制御構造において説明した、ひとつめの変換方法で読み取っている場合にはふたつめに、ふたつめの変換方法で読み取っている場合にはひとつめの変換方法に更新する。
【0056】
S7090にて、埋め込み情報画像生成部2030は、印刷領域すべてにおいて、情報を埋め込み終わったか否かを判断する。印刷領域すべてにおいて、情報を埋め込み終わっていると(S7090にてYES)、この処理は終了して、情報を埋め込んだ画像を情報埋め込み部2040に出力する。もしそうでないと(S7090にてNO)、処理はS7030に戻される。
【0057】
次いで、情報埋め込み部2040について説明する。情報埋め込み部2040は、埋め込み情報画像生成部2030で生成した埋め込み情報画像と、計算機2100から出力される印刷画像情報を重ね合わせて、印刷媒体に印刷する画像を生成する。
【0058】
本実施の形態においては、単純に重ね合わせるものとするが、印刷画像情報の画素の値がない部分にのみ重ね合わせたりするなど、印刷画像にあわせた重ね合わせ方をしてもよい。情報埋め込み部2040は、生成した画像を画像出力部2050に出力する。
【0059】
次いで、画像出力部2050について説明する。画像出力部2050は、情報埋め込み部2040が出力した画像を印刷媒体に印刷する。通常のプリンタなどと同じ印刷技術が用いられるので、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0060】
以下、情報埋め込み装置2010により文書画像に埋め込まれた情報を埋め込み情報抽出装置2060により抽出する場合について説明する。
【0061】
埋め込み情報抽出装置2060は、上述したように、画像情報読み取り部2070、埋め込み情報抽出部2080、埋め込み情報出力部2090から構成され、情報埋め込み装置2010によって作成された印刷媒体から埋め込み情報を抽出する。これらの埋め込み情報抽出部2080、埋め込み情報出力部2090は、プログラムを実行するCPUとメモリ等の記憶部とを有するコンピュータ等により実現される。
【0062】
画像情報読み取り部2070は、印刷媒体から画像情報を読み取る。通常のスキャナなどと同じ技術で印刷媒体から画像情報を読み取る。通常のスキャナなどと同じ技術が用いられるので、ここでの詳細な説明は繰り返さない。画像情報読み取り部2070は、読み取った画像情報を、埋め込み情報抽出部2080に出力する。
【0063】
図7を参照して、埋め込み情報抽出部2080において実行されるプログラムの制御構造を説明する。
【0064】
S8010にて、埋め込み情報抽出部2080は、読み取る際の変換方法の初期化を行なう。本実施の形態においては、印刷領域の原点を領域の左上とし、読み取りの際の変換方法の初期値は、前述の埋め込み情報パターン生成部2020において実行されるプログラムの制御構造において説明した、ひとつめの変換方法であるとする。
【0065】
S8020にて、埋め込み情報抽出部2080は、読み取り開始点、すなわち印刷領域の左上端のY座標を、読み取りの際の基準Y座標に設定する。本実施の形態において基準Y座標と表記しているのは、左端を読み取る際のY座標である。X座標が更新されるにしたがって、読み取り時のY座標は、画像自体の回転等により変化していく可能性があるので、読み取り時のY座標とは別に記憶しておくことにしている。
【0066】
S8030にて、埋め込み情報抽出部2080は、印刷領域の左上端のX座標を、読み取りの際の読み取りX座標に設定する。
【0067】
S8040にて、埋め込み情報抽出部2080は、画像情報から埋め込み情報を抽出する。この部分の詳しい動作については図8を用いて詳述する。
【0068】
S8050にて、埋め込み情報抽出部2080は、読み取りX座標の更新を行なう。本実施の形態においては、具体的には32画素分加算する。
【0069】
S8060にて、埋め込み情報抽出部2080は、画像の右端まで読み取ったか否かを判断する。画像の右端まで読み取っていれば(S8060にてYES)、処理はS8070へ移される。もしそうでないと(S8060にてNO)、処理はS8040へ戻される。
【0070】
S8070にて、埋め込み情報抽出部2080は、基準Y座標の更新を行ない、さらに下の段を読み取れるようにする。本実施の形態においては、具体的には32画素分加算する。
【0071】
S8080にて、埋め込み情報抽出部2080は、読み取る際の変換方式の更新を行なう。本実施の形態においては、用いられる変換方法は2つであるので、現在、前述の埋め込み情報パターン生成部2020にて実行されるプログラムの制御構造において説明した、ひとつめの変換方法で読み取っている場合はふたつめに、ふたつめの変換方法で読み取っている場合はひとつめの変換方法に更新する。
【0072】
S8090にて、埋め込み情報抽出部2080は、印刷領域すべてから情報を抽出し終わったか否かを判断する。印刷領域すべてから情報を抽出し終わっていれば(S8090にてYES)、この処理を終了して、抽出した情報を埋め込み情報出力部2090に出力する。もしそうでないと(S8090にてNO)、処理はS8030に戻される。
【0073】
図8は、図7のS8040における埋め込み情報の抽出処理の詳細を表したフローチャートである。以下、図8に従って、S8040における埋め込み情報の抽出処理について詳しく説明する。
【0074】
S9010にて、埋め込み情報抽出部2080は、基準Y座標を読み取りY座標にセットする。これは、X軸方向に読み取っていくにしたがって、読み込むY座標が変化する可能性があるためである。
【0075】
S9020にて、埋め込み情報抽出部2080は、画像から埋め込み情報を抽出する。本実施の形態においては、読み取りX座標、Y座標から32画素×32画素の画像を2次元離散コサイン変換して、図3や図4で表わす黒い部分の値が埋め込み情報パターン生成部2020において作成したパターンの値に近いか否かによって、0または1を判別する。ここでは、単純に32画素×32画素を用いているが、境界部分の影響を少なくするなどの目的で、ハミング窓などの窓関数を用いるようにしてもよい。また、元の印刷画像情報の影響を考えて、図3や図4における黒い部分以外の係数が大きい場合はその値を使わないようにするなど、元の印刷画像において画素の値がないところから読み取った値を使用するようにしてもよい。
【0076】
S9030にて、埋め込み情報抽出部2080は、現在の読み取り対象とは異なる変換方法で変換されたパターンであるか否かを判断する。これは、前述のS8010やS8080において設定された変換方法か否かを判断する。設定された変換方法が前述の埋め込み情報パターン生成部2020にて実行されるプログラムの制御構造において説明した、ひとつめの変換方法であれば、図3中の黒い部分の値の値は大きいはずであるが、図4中の黒い部分の係数は大きくないはずである。ふたつめの変換方法であれば、図4中の黒い部分の値の値は大きいはずであるが、図3中の黒い部分の係数は大きくないはずである。このようにして、どちらの変換方法で変換されたパターンであるかのかを判断する。設定された変換方法とは異なる変換方法で変換されたパターンの部分を読み込んでいると判断されると(S9030にてYES)、処理はS9040に移される。もしそうでないと(S9030にてNO)、抽出が成功したと判断して、処理はS9100へ移される。
【0077】
この抽出が成功した場合を図示すると、図9において、情報を抽出する領域1010を読み取った後、読み取り対象を情報を抽出する領域1020に進めるような場合である。
【0078】
S9040にて、埋め込み情報抽出部2080は、異なる変換方法の情報があると判断された場合であるから、読み取り座標を上下どちらかにずらす必要があると判断する。本実施の形態においては、読み取り座標を上に16画素分だけシフトすると想定するが、特に16画素に限定されない。
【0079】
S9050およびS9060においては、それぞれS9020およびS9030と同じ処理が実行される。この場合を図示すると、図9において、情報を抽出する領域1040から情報を抽出した後、異なる変換方法の情報があると判断されたため、情報を抽出する領域1050の領域に移った場合である。読み取りY座標を上にシフトさせた1050でも異なる変換方法の情報があると判断された場合には、下にシフトする必要があると判断されてS9070に進む。図9においては、回転によって読み取り座標を下に移す必要があるが、図9とは逆の方向に回転しており、情報を抽出する領域1050に異なる変換方法の情報がないと判定された場合はS9090に進む。
【0080】
S9070にて、埋め込み情報抽出部2080は、S9040と同様に、読み取りY座標を下にシフトする。S9040において上に16画素分だけシフトしているので、S9070においては、下に32画素分だけシフトする。図示すると、図9において、情報を抽出する領域1050から情報を抽出した後に、情報を抽出する領域1030から情報を抽出するような場合である。
【0081】
S9080においては、S9050と同じ処理が実行され、情報が抽出される。
S9090にて、埋め込み情報抽出部2080は、シフトさせた読み取りY座標で次も読み取るために、その値に更新する。
【0082】
S9100にて、埋め込み情報抽出部2080は、抽出した値を記憶して処理を終了する。処理は、この後、図7のS8050に戻されるサブルーチン形式を採用しているため、さらに右の領域から情報を抽出することになる。
【0083】
埋め込み情報出力部2090は、埋め込み情報抽出部2080によって抽出された埋め込み情報を出力する。本実施の形態においては、出力はディスプレイを含む表示装置によち行われると想定する。なお、出力はこのような表示装置に限定されるものではなく、たとえば、ネットワークを通じて他の計算機に情報を送信するようにしてもよい。
【0084】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る情報埋め込み装置2010および埋め込み情報抽出装置2060の動作について説明する。まず、情報埋め込み装置2010の動作について説明する。
【0085】
計算機2100のIPアドレスが埋め込み情報として、計算機2100から情報埋め込み装置2010の埋め込み情報パターン生成部2020に送信される。埋め込み情報パターン生成部2020において、低周波領域(図3に対応)を利用した埋め込み情報パターンが作成され(S3010)、高周波領域(図4に対応)を利用した埋め込み情報パターンが作成される(S3020)。埋め込み情報パターン生成部2020において、埋め込み情報である計算機2100のIPアドレスを表現する配列(図5)が作成され(S3030)、埋め込み情報画像生成部2030に出力される(S3040)。
【0086】
埋め込み情報画像生成部2030において、変換方法の初期化(S7010)、埋め込みY座標の初期化(S7020)、埋め込みX座標の初期化(S7030)が行なわれる。このような初期化処理の後に、埋め込み情報パターンの配列から埋め込むべき情報が配置される(S7040)。埋め込み情報画像生成部2030において、画像の右端まで埋め込み情報パターンを配置するまで(S7060にてYES)、埋め込みX座標および配列添字を更新しながら(S7050)、情報の配置が繰り返し実行される。さらに、埋め込み情報画像生成部2030において、印刷領域のすべてまで埋め込み情報パターンを配置するまで(S7090にてYES)、埋め込みY座標および変換方法を更新しながら(S7070、S7080)、情報の配置が繰り返し実行される。
【0087】
このようにして埋め込み情報画像生成部2030において印刷領域の全てに埋め込まれた埋め込み情報画像が、情報埋め込み部2040において、計算機2100から出力される印刷画像情報に重ね合わせられて、印刷媒体に印刷する画像が生成される。画像出力部2050において画像が印刷媒体に印刷されて出力される。
【0088】
このようにして、計算機2100のIPアドレスを埋め込んだ画像が印刷された印刷媒体が出力できる。次に、埋め込み情報抽出装置2060の動作について説明する。
【0089】
このような印刷媒体が、画像情報読み取り部2070により読み取られ、読み取られた画像は、埋め込み情報抽出部2080に出力される。
【0090】
埋め込み情報抽出部2080において、変換方法の初期化(S8010)、読み取り開始Y座標を基準Y座標に設定(S8020)、読み取り開始X座標を基準X座標に設定(S8030)が行なわれる。このような設定処理の後に、印刷媒体から読み取られたデータ(画像情報)から埋め込み情報が抽出される(S8040)。埋め込み情報抽出部2080において、画像の右端まで埋め込み情報を抽出するまで(S8060にてYES)、埋め込みX座標を更新しながら(S8050)、埋め込み情報の抽出が繰り返し実行される。さらに、埋め込み情報抽出部2080において、印刷領域のすべてまで埋め込み情報を抽出するまで(S8090にてYES)、基準Y座標および変換方法を更新しながら(S8070、S8080)、埋め込み情報の抽出が繰り返し実行される。
【0091】
このように埋め込み情報の抽出が繰り返し実行されているときに、異なる変換方法の埋め込み情報を抽出すると(S9030にてYES)読み取り領域を読み取りY座標より上側にシフトしたり(S9040)、読み取り領域を読み取りY座標より下側にシフトしたり(S9080)する。
【0092】
このようにすると、基準Y座標に基づいて、埋め込まれた埋め込み情報を抽出する差異において、たとえば、画像情報読み取り部2070においてスキャニングしたときに画像が回転していても、確実に埋め込み情報を抽出することができる。
【0093】
以上のようにして、本実施の形態においては、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンにおいてはそれぞれ異なる変換方法で変換された埋め込み情報パターンを配置する。本実施の形態に係る埋め込み情報抽出装置は、複数の変換方法によって埋め込み情報パターンを変換してデジタル符号を得る。このため、画像読み取り時の回転の影響によって読み取るべきでない埋め込み情報パターンが表わす符号を読み込まないようにできるため、画像読み取り時の回転の影響を軽減しながら、情報を埋め込むことができ、それを抽出することができる。
【0094】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る情報埋め込み装置12010について説明する。
【0095】
図10に示すように、本実施の形態に係る情報埋め込み装置12010は、前述の第1の実施の形態における情報埋め込み装置2010の埋め込み情報画像生成部2030を有さない点、および、情報埋め込み部2040とは異なる情報埋め込み部12040を有する点が異なる。この点が第1の実施の形態と異なる。すなわち、第2の実施の形態においては、情報埋め込み装置12010において、印刷画像と埋め込み情報画像を重ねるのではなく、情報埋め込み部12040において印刷画像に埋め込み情報パターンを直接配置する点が、第1の実施の形態と異なり、これ以外は同じである。以下、この異なる点である情報埋め込み部12040について説明する。それ以外は、第1の実施の形態と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0096】
図11を参照して、情報埋め込み部12040において実行されるプログラムの制御構造を説明する。
【0097】
S11010にて、情報埋め込み部12040は、配置のための座標を初期化する。本実施の形態においては、初期化される座標は、印刷画像の左上の座標とする。
【0098】
S11020にて、情報埋め込み部12040は、変換方式を初期化する。この初期値は、変換方法の初期値は、前述の埋め込み情報パターン生成部2020において実行されるプログラムの制御構造において説明した、ひとつめの変換方法であるとする。
【0099】
S11030にて、情報埋め込み部12040は、印刷画像を配置のための座標から32画素×32画素分を2次元離散コサイン変換する。
【0100】
S11040にて、情報埋め込み部12040は、図4または図5において、現在の変換方式に対応するほうの黒い部分の値を、埋め込み情報パターン生成部2020において生成された埋め込み情報パターンの配列に対応した値に書き換える。
【0101】
S11050にて、情報埋め込み部12040は、2次元逆離散コサイン変換して、この部分における配置を終了する。
【0102】
S11060にて、情報埋め込み部12040は、配置のためのX座標を更新する。本実施の形態においては、具体的には、配置のためのX座標には32画素分だけ加算する。
【0103】
S11070にて、情報埋め込み部12040は、印刷画像の右端まで埋め込み情報を配置することを終了したか否かを判断する。終了していると(S11070にてYES)、処理はS11080に移される。もしそうでないと(S11070にてNO)、処理はS11030に戻される。
【0104】
S11080にて、情報埋め込み部12040は、配置のためのY座標を更新する。本実施の形態においては、具体的には、32画素分だけ加算する。
【0105】
S11090にて、情報埋め込み部12040は、変換方式を更新する。これは第1の実施の形態におけるS8080と同じように、現在、前述の埋め込み情報パターン生成部202の動作で説明したひとつめの変換方法で読み取っている場合はふたつめに、ふたつめの変換方法で読み取っている場合はひとつめの変換方法に更新する。
【0106】
S11100にて、情報埋め込み部12040は、印刷画像の下端まで埋め込み情報を配置したか否かを判断する。印刷画像の下端まで埋め込み情報を配置していると(S11100にてYES)、この処理は終了して、画像出力部2050に印刷画像情報を出力する。もしそうでないと(S11100にてNO)、処理はS11030に戻される。
【0107】
以上のようにして、本実施の形態に係る情報埋め込み装置においては、印刷画像に埋め込み情報パターンを直接配置することができる。
【0108】
なお、本実施の形態においては、上述したように、離散コサイン変換を用いて印刷画像の周波数領域における値を処理して情報を埋め込んでいるが、埋め込み情報パターンの配置はこのような処理に限定されるものではない。印刷画像の画素の値のない部分のみに、埋め込み情報を配置するなどにより判定するようにしてもよい。
【0109】
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態に係る情報埋め込み装置22010および埋め込み情報抽出装置22060について説明する。
【0110】
図12に示すように、本実施の形態に係る情報埋め込み装置22010は、前述の第1の実施の形態における情報埋め込み装置2010の埋め込み情報画像生成部2030とは異なる埋め込み情報画像生成部22030を有する点が異なり、本実施の形態に係る埋め込み情報抽出装置22060は、前述の第1の実施の形態における埋め込み情報抽出装置2060の埋め込み情報抽出部2080とは異なる埋め込み情報抽出部22080を有する点が異なる。この点が第1の実施の形態と異なる。
【0111】
すなわち、本実施の形態においては、情報埋め込み装置22010の埋め込み情報画像生成部22030において、埋め込む情報に関する情報(以下、抽出情報と記載する)を埋め込む点、さらに埋め込み情報抽出装置22060の埋め込み情報抽出部22080において、抽出情報に読み取り、抽出情報を元にして埋め込み情報を抽出する点が、第1の実施の形態と異なり、これ以外は同じである。以下、この異なる点である、埋め込み情報画像生成部22030および埋め込み情報抽出部22080について説明する。それ以外は、第1の実施の形態と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0112】
また、埋め込み情報画像生成部22030は、埋め込み情報パターン生成部2020にて生成した埋め込み情報と、抽出情報とを埋め込み情報画像として、情報埋め込み部2040に出力する。新たに抽出情報を含む点が、第1の実施の形態と異なる。抽出情報は、埋め込む情報に関する情報を含む。本実施の形態においては、埋め込み情報パターンの大きさ(画素数)、変換方式の並び方の情報を含むものとする。なお、抽出情報に含まれる情報はこのような情報に限定されず、埋め込みに関する情報や埋め込む情報のメタ情報であっても構わない。
【0113】
さらに、本実施の形態においては、抽出情報には一般的な技術である二次元コードを用いるものと想定する。この二次元コードは、画像に情報を埋め込んだり、他の画像と重ね合わせて情報を埋め込むという用途には向かないが、紙などの印刷媒体に情報を持たせる用途には向くものである。なお、本実施の形態においては、このような二次元コードを用いるが、抽出情報の付与には他の方式を用いるようにしても構わない。
【0114】
図13を参照して、埋め込み情報画像生成部22030において実行されるプログラムの制御構造を説明する。なお、図13に示すフローチャートの中で、前述の図6に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらの処理は同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0115】
S13010にて、埋め込み情報画像生成部22030は、抽出情報の配置を行なう。抽出情報は、埋め込み情報パターンの大きさおよび変換方式の並び方の情報である。埋め込み情報パターンの大きさは32画素×32画素であるが、ここでは縦方向のみの画素数を用いる。変換方式の並び方の情報としては、図5(A)に示されている並び方が0、図5(B)に示されている並び方が1にそれぞれ符号を割り当てるものとする。ここでは、0の並び方に従って配置する。これらの32および0という情報を二次元コードに変換して、印刷画像の左上端に配置する。
【0116】
S13020にて、埋め込み情報画像生成部22030は、画像生成のための埋め込み情報パターン配置を行なう際の変換方法の初期化を行なう。変換方法の初期値は、前述の埋め込み情報パターン生成部2020において実行されるプログラムの制御構造において説明した、ひとつめの変換方法であるとする。
【0117】
S13030にて、埋め込み情報画像生成部22030は、埋め込みY座標を初期化する。このとき、埋め込みY座標は、埋め込み情報パターン配置の開始点、本実施の形態においては印刷領域の左上端のY座標に設定される。
【0118】
S13040にて、埋め込み情報画像生成部22030は、埋め込みX座標を初期化する。このとき、埋め込みX座標は、印刷領域の左上端から抽出情報を表わす二次元コード分ずらしたX座標に設定される。
【0119】
図14を参照して、埋め込み情報抽出部22080において実行されるプログラムの制御構造を説明する。なお、図14に示すフローチャートの中で、前述の図7に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらの処理は同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。なお、埋め込み情報抽出部22080は、画像情報読み取り部2070から印刷媒体の画像情報を受け取り、抽出情報を読み取り、その抽出情報を元にして埋め込まれている情報を抽出する。抽出情報を用いる点が第1の実施の形態と異なる。
【0120】
S14010にて、埋め込み情報抽出部22080は、抽出情報の読み取りを行なう。これは一般的な二次元コードの読み取り手法を用いる。
【0121】
S14020にて、埋め込み情報抽出部22080は、読み取る際の変換方法の初期化を行なう。初期値を設定するために、S14010において読み取った抽出情報から得られる、変換方式の並び方の情報を用いる。本実施の形態においては、変換方式の並び方がいずれの場合も、読み取りの際の変換方法の初期値は、前述の埋め込み情報パターン生成部2020において実行されるプログラムの制御構造において説明した、ひとつめの変換方法であるとする。
【0122】
S14030にて、埋め込み情報抽出部22080は、読み取り開始点、すなわち印刷領域の左上端のY座標を、読み取りの際の基準Y座標に設定する。本実施の形態において基準Y座標と表記しているのは、左端を読み取る際のY座標である。X座標が更新されていくにつれて、読み取り時のY座標は変化していく可能性があるので、読み取り時のY座標とは別に記憶しておくことにする。
【0123】
S14040にて、埋め込み情報抽出部22080は、印刷領域の左上端から抽出情報を表わす二次元コード分ずらしたX座標を、読み取りの際の読み取りX座標に設定する。
【0124】
以上のようにして、本実施の形態に係る情報埋め込み装置および埋め込み情報抽出装置においては、2次元コードにより表わされる抽出情報を用いて、印刷画像に埋め込み情報パターンを配置したり、埋め込んだ情報を読み出したりすることができる。
【0125】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る情報埋め込み装置および埋め込み情報抽出装置と含むシステムの制御ブロック図である。
【図2】図1の埋め込み情報パターン生成部において実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図3】埋め込み情報パターンの一例を示す図(その1)である。
【図4】埋め込み情報パターンの一例を示す図(その2)である。
【図5】埋め込み情報パターン配置の一例を示す図である。
【図6】図1の埋め込み情報画像生成部において実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】図1の埋め込み情報抽出部において実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図8】図7のS8040の処理の詳細な制御構造を示すフローチャートである
【図9】埋め込み情報抽出時の読み取り領域変化の一例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る情報埋め込み装置および埋め込み情報抽出装置と含むシステムの制御ブロック図である。
【図11】図10の情報埋め込み部において実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る情報埋め込み装置および埋め込み情報抽出装置と含むシステムの制御ブロック図である。
【図13】図12の埋め込み情報画像生成部において実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図14】図12の埋め込み情報抽出部において実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0127】
1010 情報を抽出する領域、1020 領域1010の次に情報を抽出する領域、1030 回転の影響があると判断して抽出する座標を下にシフトした場合に情報を抽出する領域、1040 領域1020の次に情報を抽出する領域、1050 回転の影響があると判断して抽出する座標を上にシフトした場合に情報を抽出する領域、1060 領域1030の次に情報を抽出する領域、2100 計算機、2010,12010,22010 情報埋め込み装置、2020 埋め込み情報パターン生成部、2030,22030 埋め込み情報画像生成部、2040,12040 情報埋め込み部、2050 画像出力部、2060,22060 埋め込み情報抽出装置、2070 画像情報読み取り部、2080,22080 埋め込み情報抽出部、2090 埋め込み情報出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に付加情報を埋め込む情報埋め込み装置であって、
デジタル符号を画像に変換して埋め込み情報パターンを生成するための埋め込み情報パターン生成手段と、
前記埋め込み情報パターンを複数配置した埋め込み情報画像を生成するための埋め込み情報画像生成手段と、
前記埋め込み情報画像と画像とを重ね合わせるための情報埋め込み手段とを含み、
前記埋め込み情報パターン生成手段は、複数の変換手順を用いて前記埋め込み情報パターンを生成するための手段を含み、
前記埋め込み情報画像生成手段は、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンを異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンになるように配置して、埋め込み情報画像を生成するための手段を含む、情報埋め込み装置。
【請求項2】
前記埋め込み情報パターン生成手段は、複数の周波数帯域を用いて、前記埋め込み情報パターンを生成するための手段を含む、請求項1に記載の情報埋め込み装置。
【請求項3】
前記情報埋め込み装置は、前記埋め込み情報パターンの配置に関する情報を含む抽出情報を表わす画像を生成するための手段をさらに含み、
前記埋め込み情報画像生成手段は、前記抽出情報に従って、埋め込み情報パターンを配置するための手段を含む、請求項1に記載の情報埋め込み装置。
【請求項4】
画像情報に埋め込まれた付加情報を抽出する情報抽出装置であって、
予め定められた読み取り方向に従って、前記画像情報を読み取るための手段と、
画像に埋め込まれた付加情報であるデジタル符号を抽出するための埋め込み情報抽出手段とを含み、
前記埋め込み情報抽出手段は、前記読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンが異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンを、前記変換手順を区別するようにして、前記デジタル符号を抽出するための手段を含む、情報抽出装置。
【請求項5】
前記埋め込み情報抽出手段は、前記変換手順が変更されたことを検知すると、前記デジタル符号を抽出する画素の方向を変更して、前記デジタル符号を抽出するための手段を含む、請求項4に記載の情報抽出装置。
【請求項6】
前記変換手順は、複数の周波数帯域を用いて変換される、請求項4または5に記載の情報抽出装置。
【請求項7】
画像情報に付加情報を埋め込む情報埋め込み方法であって、
デジタル符号を画像に変換して埋め込み情報パターンを生成する埋め込み情報パターン生成ステップと、
前記埋め込み情報パターンを複数配置した埋め込み情報画像を生成する埋め込み情報画像生成ステップと、
前記埋め込み情報画像と画像とを重ね合わせる情報埋め込みステップとを含み、
前記埋め込み情報パターン生成ステップは、複数の変換手順を用いて前記埋め込み情報パターンを生成するステップを含み、
前記埋め込み情報画像生成ステップは、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンを異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンになるように配置して、埋め込み情報画像を生成するステップを含む、情報埋め込み方法。
【請求項8】
前記埋め込み情報パターン生成ステップは、複数の周波数帯域を用いて、前記埋め込み情報パターンを生成するステップを含む、請求項7に記載の情報埋め込み方法。
【請求項9】
前記情報埋め込み方法は、前記埋め込み情報パターンの配置に関する情報を含む抽出情報を表わす画像を生成するステップをさらに含み、
前記埋め込み情報画像生成ステップは、前記抽出情報に従って、埋め込み情報パターンを配置するステップを含む、請求項7に記載の情報埋め込み方法。
【請求項10】
画像情報に埋め込まれた付加情報を抽出する情報抽出方法であって、
予め定められた読み取り方向に従って、前記画像情報を読み取るステップと、
画像に埋め込まれた付加情報であるデジタル符号を抽出する埋め込み情報抽出ステップとを含み、
前記埋め込み情報抽出ステップは、前記読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンが異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンを、前記変換手順を区別するようにして、前記デジタル符号を抽出するステップを含む、情報抽出方法。
【請求項11】
前記埋め込み情報抽出ステップは、前記変換手順が変更されたことを検知すると、前記デジタル符号を抽出する画素の方向を変更して、前記デジタル符号を抽出するステップを含む、請求項10に記載の情報抽出方法。
【請求項12】
前記変換手順は、複数の周波数帯域を用いて変換される、請求項10または11に記載の情報抽出方法。
【請求項13】
画像情報に付加情報を埋め込む情報埋め込み装置であって、
デジタル符号を画像に変換して埋め込み情報パターンを生成するための埋め込み情報パターン生成手段と、
画像に前記埋め込み情報パターンを複数配置するための情報埋め込み手段とを含み、
前記埋め込み情報パターン生成手段は、複数の変換手順を用いて前記埋め込み情報パターンを生成するための手段を含み、
前記情報埋め込み手段は、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンを異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンになるように配置して、画像を生成するための手段を含む、情報埋め込み装置。
【請求項14】
画像情報に付加情報を埋め込む情報埋め込み方法であって、
デジタル符号を画像に変換して埋め込み情報パターンを生成する埋め込み情報パターン生成ステップと、
画像に前記埋め込み情報パターンを複数配置する情報埋め込みステップとを含み、
前記埋め込み情報パターン生成ステップは、複数の変換手順を用いて前記埋め込み情報パターンを生成するステップを含み、
前記情報埋め込みステップは、読み取り方向と直交した方向に隣り合う埋め込み情報パターンを異なる変換手順で変換された埋め込み情報パターンになるように配置して、画像を生成するステップを含む、情報埋め込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−340073(P2006−340073A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162668(P2005−162668)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】