情報提供装置、方法及びシステム
【課題】 交通事故や道路障害等のイベントの通知情報を、それを必要とする車両に確実かつ効率的に提供する。
【解決手段】 本発明は、車両通行に支障が生じるイベントの通知情報を車両5に提供する情報提供装置1に関する。この装置1は、記イベントの発生を検出して通知情報を生成する生成手段102と、情報提供すべき提供対象の属性と、その属性ごとの優先順位を定めた抽出ポリシーPL1を記憶する記憶手段105と、抽出ポリシーPL1に含まれるいずれかの属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を対象車両に付与する抽出手段103と、付与された優先順位の順序で対象車両に通知情報を通知する通知手段101とを備える。
【解決手段】 本発明は、車両通行に支障が生じるイベントの通知情報を車両5に提供する情報提供装置1に関する。この装置1は、記イベントの発生を検出して通知情報を生成する生成手段102と、情報提供すべき提供対象の属性と、その属性ごとの優先順位を定めた抽出ポリシーPL1を記憶する記憶手段105と、抽出ポリシーPL1に含まれるいずれかの属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を対象車両に付与する抽出手段103と、付与された優先順位の順序で対象車両に通知情報を通知する通知手段101とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両通行に支障が生じる交通事故等のイベントの通知情報を車両に提供する情報提供装置、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路の交通情報をドライバーに提供する技術として、財団法人道路交通情報通信システムセンターによるVICS(Vehicle Information and Communication System:なお、「VICS」は上記財団法人の登録商標)が広く知られている。
このVICSは、各種の路側センサ(車両感知器やループコイル等)から収集した車両台数や車両速度等よりなる定点観測情報に基づいて、各路線での渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報を集計し、その交通情報を、光ビーコンによる狭域通信やFM放送等の広域通信によってドライバーに提供するものである。
【0003】
また、道路の交通情報をドライバーに提供する他の技術として、プローブカーを利用した交通情報予測システム(以下、プローブシステムという。)も知られている。
このプローブシステムは、例えば特許文献1及び2に示すように、実際に道路を走行する車両(プローブ車両)を移動体センサとして利用するものであり、現時点の車両位置や時刻を含むプローブ情報を無線通信によって各プローブ車両から収集し、中央装置等の交通制御装置にて交通情報を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−151496号公報
【特許文献2】特開2005−4467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記プローブシステムにおいて、例えば、1又は複数のプローブ車両でのエアバックやABS(Antilock Brake System )の作動を交通事故や路面状態の悪化の発生と見なし、その検出信号をプローブ情報に含めて路側に無線でアップリンク送信すれば、後続の車両通行に支障が生じる交通事故や道路障害のイベントが発生したことを、路側の交通制御装置がほぼリアルタイムに察知することができる。
【0006】
従って、上記イベントを含むプローブ情報がアップリンクされた場合に、たとえば路側の交通制御装置にてイベント発生地点を含む通知情報を生成し、路側通信機を通じて無線でその通知情報をダウンリンク送信すれば、路車間通信が可能な他の車両にイベントの発生をいち早く通知することができる。この場合、単純に情報を配信するだけであれば、上記通知情報をブロードキャストで配信すればよい。
しかし、上記通知情報をブロードキャストで配信すると、通信帯域を圧迫することになるとともに、イベントの通知情報が不要な車両にも無差別に配信され、却って混乱を招く恐れがある。また、ブロードキャストによる配信では、必ずしもイベントの通知情報が車両に確実に届くとは限らない。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、交通事故や道路障害等のイベントの通知情報を、それを必要とする車両に確実かつ効率的に提供できる情報提供装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る装置は、車両通行に支障が生じるイベントの通知情報を車両に提供する情報提供装置であって、プローブ情報を取得する手段と、前記イベントの発生を検出して前記通知情報を生成する生成手段と、情報提供すべき対象車両の属性と、その属性ごとの優先順位を定めた抽出ポリシーを記憶する記憶手段と、前記プローブ情報により特定した車両のうちから、前記抽出ポリシーに含まれるいずれかの前記属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を前記対象車両に付与する抽出手段と、付与された前記優先順位の順序で前記対象車両に前記通知情報を通知する通知手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の情報提供装置によれば、抽出手段が、抽出ポリシーに含まれるいずれかの属性に適合する対象車両を抽出して、当該属性に対応する優先順位を対象車両に付与し、通知手段が、付与された優先順位の順序で対象車両に通知情報を通知するので、抽出ポリシーの属性と優先順位とを実情に即して適切に定めておくことにより、通知情報が不要な車両への通知や、迅速な通知が必要な車両への通知が遅れるのを防止でき、イベントの通知情報を、それを必要とする車両に確実かつ効率的に提供することができる。
【0010】
(2) 本発明の情報提供装置において、例えば、前記抽出ポリシーに含まれるすべての前記属性を、前記イベントの発生地点から上流側に位置する車両を提供対象とするものとすれば、イベントの発生地点から下流側に位置する、通知情報が不要と考えられる車両への通知を防止することができる。
【0011】
(3) また、本発明の情報提供装置において、前記抽出ポリシーの前記属性は、前記イベントの発生地点から所定距離未満に存在する車両を提供対象とする第1属性と、その所定距離以上に存在する車両を提供対象とする第2属性とを含み、前記第1属性の方が前記第2属性よりも優先順位が高く設定されていることが好ましい。
この場合、迅速な通知が必要と考えられる、イベントの発生地点から近い車両に対する通知が遅れるのを防止することができる。
【0012】
(4) 本発明の情報提供装置において、前記抽出手段は、前記対象車両が複数の前記属性に適合する場合には、複数の前記属性の優先順位のうちで最も高いものを当該対象車両の優先順位とすることが好ましい。
その理由は、優先順位が最も高い属性に適合する対象車両である以上、その優先順位に従って通知を行うことが実情に適っているからである。
【0013】
(5) 本発明の情報提供装置において、前記抽出手段は、前記対象車両の抽出を行う候補を、前記イベントに遭遇した車両の走行軌跡に沿う一次車両、この一次車両の走行軌跡に沿う二次車両、及び、以下同様に走行軌跡を用いて探索した所定のN次車両に限定することが好ましい。
かかる限定を行えば、複雑な経路探索処理を行わずに、イベントの発生地点から上流側に位置する車両を効率よく見つけることができ、処理速度を向上することができる。
【0014】
(6) また、本発明の情報提供装置において、前記抽出手段は、前記対象車両の抽出を行う候補を、幹線道路を走行中の車両に限定することにしてもよい。
かかる限定を行えば、イベントの発生地点から上流側に位置する車両を経路探索処理によって特定する場合に、その探索処理の演算負荷を低減することができる。
【0015】
(7) 本発明に係るシステムは、前記通知情報の通知エリアが互いに隣接するように配置された複数の本発明に係る情報提供装置よりなる情報提供システムであって、各々の前記情報提供装置は、他の前記情報提供装置から前記通知情報を取得する取得手段を更に備えている。
また、本発明の情報提供システムでは、前記通知情報の生成元である前記情報提供装置が、前記イベントの発生地点から上流側に遡る道路が進入する前記通知エリアをカバーする上流側の他装置に、当該通知エリアへの進入ポイントと前記通知情報とを通知することにより、生成元である情報提供装置の通知エリアに隣接する他の通知エリアを担当する情報提供装置に、通知情報を伝搬させるようになっている。
【0016】
(8) この場合、前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置が、通知された前記進入ポイントから上流側に遡る道路が進入する前記通知エリアをカバーする上流側の他装置に、当該通知エリアへの進入ポイントと前記通知情報とを通知するようにすれば、生成元でない情報提供装置の通知エリアに隣接する他の通知エリアを担当する情報提供装置にも、通知情報を更に伝搬させることができる。
【0017】
(9) もっとも、前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置は、ホップ数が所定回数以下の前記通知情報、或いは、前記イベントの発生地点から所定距離以下の前記通知情報に限り、他の前記情報提供装置に前記通知情報を通知することが好ましい。
その理由は、通知情報の伝搬範囲を何らかの基準で制限しないと、通知情報がほぼ無限に伝搬され続け、イベントの発生地点から遠すぎて通知情報が不要な車両にも、通知情報が通知される恐れがあるからである。
【0018】
(10) また、この場合、前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置は、前記イベントの規模や前記イベントが発生した道路種別に応じて前記所定回数又は前記所定距離を変動させることが好ましい。
このようにすれば、イベントによる通行阻害の影響が重大となる場合には、通知情報の伝搬範囲を広げ、それほど重大でない場合にはその伝搬範囲を比較的絞るなど、実情に即した柔軟な運用を行うことができる。
【0019】
(11) 本発明の情報提供システムにおいて、前記通知手段は、前記イベントの発生時刻から所定時間以内の前記通知情報に限りその通知を行い、当該所定時間を超えた前記通知情報については破棄することが好ましい。
その理由は、例えば数時間以上前の交通事故などの古いイベントは、現時点ではそのイベントが解消している可能性があり、そのような古いイベントの通知情報を何時までも車両に通知すると、却ってドライバーに混乱が生じる恐れがあるからである。
【0020】
(12) 本発明に係る方法は、車両通行に支障が生じるイベントの通知情報を車両に提供する情報提供方法であって、プローブ情報を取得するステップと、前記イベントの発生を検出して前記通知情報を生成するステップと、情報提供すべき対象車両の属性と、その属性ごとの優先順位を定めた抽出ポリシーを記憶する記憶手段を参照して、前記プローブ情報より特定した車両のうちから、前記抽出ポリシーに含まれるいずれかの前記属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を前記対象車両に付与するステップと、付与された前記優先順位の順序で前記対象車両に前記通知情報を通知するステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の情報提供方法は、本発明の情報提供装置が行う方法であって、当該提供装置と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0022】
以上の通り、本発明によれば、交通事故や道路障害等のイベントの通知情報を、それを必要とする車両に確実かつ効率的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した情報提供システムの全体構成図である。
【図2】複数のエージェントの通知エリアの配置例を示す道路平面図である。
【図3】情報提供装置のエージェントの機能ブロック図である。
【図4】抽出ポリシーの一例を示す表である。
【図5】転送ポリシーの一例を示す表である。
【図6】抽出ポリシーの適用例を示す道路線形図である。
【図7】抽出ポリシーの別の適用例を示す道路線形図である。
【図8】抽出ポリシーの別の適用例を示す道路線形図である。
【図9】対象車両の候補の別の探索方法を示す説明図である。
【図10】対象車両の候補の別の探索方法を示す説明図である。
【図11】通知エリアの変形例を示す道路平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔システムの全体構成〕
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用した情報提供システムの全体構成図である。
本実施形態の情報提供システムは、情報提供装置1、車載装置2を搭載したプローブ車両(以下、単に「車両」ともいう。)5、路側センサ3、中央装置4、車載装置2と無線通信する路側通信機6などを含む。
【0025】
中央装置4は、VICS情報やプローブ情報などを収集し、車両5に提供するための交通情報を生成する機能を有している。中央装置4は、生成した交通情報に基づいて、管轄エリア内の交通信号機に対する系統制御や交通管制などの処理も行うこともできる。
情報提供装置1は、本実施の形態において、中央装置4の管轄エリア内の交差点のそれぞれに設置された交通信号制御機のうちの1つに組み込まれている。路側通信機6は、ITS無線機などの広域無通信機よりなり、中央装置4の管轄エリア内の適所に設置されている。
【0026】
車載装置2は、車両5のGPS受信機が定期的に取得するGPS信号により自車の絶対位置を求め、車両5の車速センサ及びジャイロセンサから随時入力される入力信号に基づいてその位置及び方位を補間し、車両5の正確な現在位置及び方位を把握している。
車載装置2は、プローブ車両5の移動観測情報としてのプローブ情報(走行軌跡)を生成し、その情報を路側通信機6にアップリンク送信する。プローブ情報には、車両位置、通過時刻、車両速度、方位及び車両IDなどが含まれる。
【0027】
本実施形態では、主として、プローブ車両5がアップリンク送信したプローブ情報に基づいて、車両通行に支障が生じるイベントの発生を情報提供装置1が検出する。かかるイベントは、交通事故と車両通行が妨げられる道路障害とに大別され、道路障害には、路面凍結、落石、障害物及び道路水没などがある。
車載装置2は、車両5に搭載されたCAN(Controller Area Network )バスモニタから取得した電子機器の制御信号や、車載カメラの画像データに基づいて、例えば次のようなイベントを検出可能である。
【0028】
すなわち、車載装置2は、例えば、エアバックの作動信号の取得によって当該車両5での交通事故を検出でき、ABSの作動信号の取得によって路面凍結を検出でき、ワイパーの作動信号によって局所的豪雨などを検出することができる。また、車載装置2は、車載カメラによる画像データを解析することで、上記各イベントを検出することができる。
車載装置2は、これらのイベントを検出すると、そのイベント種別、発生地点(例えば絶対位置)及び発生時刻などをプローブ情報に含め、その情報を路側通信機6にアップリンク送信する。
【0029】
路側通信機6は、車載装置2との間で無線通信にて情報の送受信を行う。具体的には、路側通信機6は、車載装置2が送信したプローブ情報を受信すると、これを情報提供装置1と中央装置4に転送する。
また、路側通信機6は、情報提供装置1や中央装置4が生成した交通情報を各装置1,4から受信すると、その交通情報を車載装置2にダウンリンク送信する。
【0030】
路側センサ3は、道路の定点観測情報を収集する固定センサであり、例えば、直下を通行する車両を超音波感知する車両感知器や、インダクタンス変化で車両を感知するループコイル、或いは、カメラの映像を画像処理して交通量や車両速度を計測する画像感知器よりなる。
この路側センサ3は、交差点等に流入する車両台数や車両速度を計測する目的で、高速道路や主要な幹線道路に設置されている。
【0031】
路側センサ3が検出した観測情報は、通信回線を介してVICSセンター7に送信され、VICSセンター7は、その観測情報に基づいてVICS情報を生成する。このVICS情報は、通信回線を介して中央装置4に送信される。
なお、図1において、仮想線で囲まれた範囲Aは、1つの情報提供装置1に割り当てられた「通知エリア」を示している。すなわち、通知エリアAは、1つの情報提供装置1からの指令により1又は複数の路側通信機6がダウンリンク送信可能な通信エリアを示している。
【0032】
図1に示すように、情報提供装置(以下、「端末」ともいう。)1は、通知エリアAが異なる他の複数の端末1,1…とも通信可能に接続されている。これらの端末1は、所定のOSが搭載されたコンピュータよりなる。
また、各端末1には、各種アプリケーションプログラムの動作基盤となるソフトウェアエージェント(以下、単に「エージェント」ともいう。)1Aがインストールされている。エージェント1Aは、他の端末1のエージェント1Aと通信を行いつつ協調動作することで、後述の各種機能を端末1に実行させる。
【0033】
〔通知エリアの配置例〕
図2は、複数のエージェント1Aの通知エリアAの配置例を示す道路平面図である。
図2の例では、所定範囲のエリアが合計9個の通知エリアA1〜A9(たとえば10km四方のエリア)に分割されており、それらの通知エリアA1〜A9の各々が1つのエージェントAg1〜Ag9が担当する通知エリア(本実施形態では、イベント発生の監視範囲でもある。)とされている。
【0034】
なお、図2において、斜線なしの道路は「一般道路」を示し、斜線ありの道路は「高速道路」を示し(他の図も同様)、矢印は各車両C1〜C7の進行方向を示し、車両C8は事故車両を示している。また、図2に示すエージェントAg1〜Ag9による協調処理については後述する。
【0035】
この例では、各エージェントの監視エリアをメッシュ状に形成しているが、これに限られるものではない。たとえば監視エリアは、高速道路や一般道路などの道路種別によって設定してもよい。予め定めたリンクまたはリンクのグループによって監視エリアを設定してもよい。さらにこれらを組み合わせて監視エリアを設定してもよい。さらに監視エリアは、日種や時間帯などによって変化させるようにしてもよい。例えば同一の地域範囲を非混雑時は単一のエージェントによって監視し、混雑時は複数のエージェントによって監視するようにしてもよい。
【0036】
〔エージェントの構成〕
図3は、情報提供装置1のエージェント1Aの機能ブロック図である。この図3に示すエージェント1Aの各機能は、当該エージェント1Aが各端末1の演算処理装置(CPU)において実行されることで発揮される。
図3に示すように、エージェント1Aは、機能部として、通信制御部101、情報生成部102、対象車両抽出部103及び転送判定部104を備えている。
【0037】
通信制御部101は、中央装置4や自身以外のエージェント1Aとのネットワーク通信制御や、自身の通知エリアAを通信範囲とする1又は複数の路側通信機6との間の通信制御を行う機能を有する。
通信制御部101は、路側通信機6からプローブ情報を受信すると、それを中央装置4に転送するとともに情報生成部102に送る。通信制御部101は、自身の通知エリアAに送信すべきイベントの通知情報がある場合には、それを路側通信機6にユニキャストでダウンリンク送信させる。
【0038】
すなわち、通信制御部101は、自身の通知エリアAの路側通信機6が路車間通信している相手方の車両IDを捕捉しており、その車両IDを宛先とした通知情報を生成して路側通信機6にダウンリンク送信させる。
また、通信制御部101は、他のエージェント1Aからイベントの通知情報を受信すると、それを転送判定部104に送る。転送判定部104は、送られた通知情報を他のエージェント1Aに転送すべきか否かを、自端末1の記憶装置105に格納された「転送ポリシーPL2」(図5)に基づいて判定し、その判定結果を通信制御部101に返す。
【0039】
通信制御部101は、転送判定部104の判定結果が肯定的である場合には、その通知情報を路側通信機6に送って自身の通知エリアAからユニキャストでダウンリンク送信させるだけでなく、通知を受けたエージェント1Aとは異なるエージェント1Aにその通知情報を転送する。
逆に、通信制御部101は、転送判定部104の判定結果が否定的である場合には、上記ダウンリンク送信を行うが、異なるエージェント1Aに対する通知情報の転送は行わない。
【0040】
通信制御部101からプローブ情報を受けた情報生成部102は、プローブ情報の中にイベント種別が含まれているか否かを検出し、イベント種別がある場合には、次のデータ(a)〜(c)を含む「第1の通知情報」と、これにデータ(d)を加えた「第2の通知情報」を生成する。
第1の通知情報は、自身の通知エリアAで車両5に提供する通知情報であり、第2の通知情報は、他のエージェント1Aに転送する通知情報である。
【0041】
(a) イベントの発生地点
(b) イベントの発生時刻
(c) イベントの危険レベル
(d) 他の端末の通知エリアへの進入ポイント
【0042】
上記(a)の「発生地点」は、プローブ車両5にて検出された発生地点がそのまま踏襲される。発生地点のデータ形式は絶対位置でもよいし、リンク番号とそのリンク内位置で表したデータであってもよい。また、上記(b)の発生時刻も、車載装置2が検出した発生時刻がそのまま踏襲される。
上記(c)の危険レベルは、プローブ情報に記されたイベント種別に応じて情報生成部102が判定するものである。例えば、イベントが交通事故の場合、大規模道路で発生したなら「大」、中規模道路なら「中」、小規模道路なら「小」などと判定される。
【0043】
また、上記(d)の「進入ポイント」とは、イベントの発生地点から上流側に遡る道路が、隣接する他の通知エリアに進入するポイント(例えば、図2のP1)のことをいう。
情報生成部102は、エージェント1Aの機能或いは端末1のアプリケーションソフトの機能として経路探索を実行することができ、情報生成部102は、イベントの発生地点を含む或いは近いリンクを出発リンクとして、上流側に遡る経路探索を行う。
この場合、途中で分岐ノードに到達した場合には、出来るだけイベントの発生地点から遠ざかるリンクを選択するように経路を探索し、発生地点の上流側で最初に別の通知エリアAに到達した地点を、その通知エリアAへの進入ポイントとする。
【0044】
なお、情報生成部102は、自身が通知情報の生成元「である」場合(自身の通知エリアAでイベントが発生した場合)には、イベントの発生地点に対応するリンクを出発リンクとして経路探索を行うが、自身が通知情報の生成元「でない」場合(他のエージェント1Aから通知情報を取得した場合)には、他のエージェント1Aから通知された「進入ポイント」に対応するリンクを出発リンクとして、上述の経路探索を行う。
【0045】
〔抽出ポリシーに基づく抽出処理〕
次に、エージェント1Aの対象車両抽出部(以下、単に「抽出部」ともいう。)103が行う、第1の通知情報を提供すべき対象車両の抽出処理について説明する。
抽出部103は、まず、通知エリアA内におけるイベントの発生地点への流入経路に含まれるプローブ車両5をすべて特定し、その車両5を第1の通知情報を提供する対象車両の候補とする。また、抽出部103は、自端末1の記憶装置105に格納された「抽出ポリシーPL1」(図4)に従って、その候補の中から対象車両を抽出する。
【0046】
図4は、抽出ポリシーPL1の一例を示す表である。
図4に示すように、本実施形態の抽出ポリシーPL1は、情報提供すべき対象車両の「属性」と、その属性ごとの優先順位(優先度)を定めたものである。図4中の優先順位は、その数値が小さいほど優先されることを意味する。また、図4において、属性1〜属性7は、後続車両のイベント回避を重視した属性であり、属性8〜属性10は、交通流の最適化を重視した属性である。なお、交通流を最適化することを目的として情報を提供する場合には、第1の通知情報として、上述の(a)〜(c)に加えて、イベント発生箇所を回避するため代替路情報を含めるのが好ましい。
【0047】
抽出部103は、上記候補の中から、抽出ポリシーPL1に含まれるいずれかの属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を対象車両に付与する。
例えば、候補車両の車両位置が「イベント箇所」から上流側にあり、かつ、イベント箇所から300mの地点である場合には、抽出部103は、その候補車両については、「属性1」に該当するため対象車両として抽出し、優先順位として「1」を付与する。
同様に、候補車両の車両位置が「イベント箇所」から上流側にあり、かつ、イベント箇所から2000mの地点である場合には、抽出部103は、その候補車両については、「属性2」に該当するため対象車両として抽出し、優先順位として「9」を付与する。
【0048】
なお、図4において、「イベント箇所」とは、イベントの発生地点又は前記した進入ポイントのことをいう。
また、イベント箇所から下流側に位置する車両5の場合には、イベント箇所に戻って通行阻害を受ける可能性が殆どななく、通知情報が不要と考えられる。従って、図4の抽出ポリシーPL1では、すべての属性1〜10がイベント箇所から上流側に位置する車両5を提供対象としている。
【0049】
更に、抽出ポリシーPL1に含まれる属性のうち、属性1は、イベント箇所から所定距離(図例では1km)未満に存在する車両を提供対象とし、属性2は、その所定距離以上に存在する車両を提供対象としているが、属性1の方が属性2よりも優先順位が高く設定されている。
その理由は、イベント箇所に近い車両5ほど迅速な通知が必要と考えられるので、より高い優先順位を設定して通知の遅れを防止せねばならないからである。
【0050】
なお、ある1つの対象車両が、属性1〜10のうちの複数の属性に適合する場合もあり得るが、このような場合には、抽出部103は、複数の属性の優先順位のうちで最も高いものを、当該対象車両の優先順位として付与するようになっている。
その理由は、優先順位が最も高い属性に適合する以上、その最も高い優先順位に従って対象車両に通知情報を通知するのが実情に適っているからである。
【0051】
抽出部103は、上記のようにして優先順位を付与した1又は複数の対象車両を抽出すると、その車両IDを通信制御部101に報告する。
通信制御部101は、優先順位が小さい車両IDの順序で、情報生成部102が生成した第1の通信情報を路側通信機6に送り、自身の通知エリアAにてユニキャストでダウンリンク送信させる。
【0052】
〔転送ポリシーによる判定処理〕
前述の通り、本実施形態では、特定のエージェント1Aの通知エリアAにおいてイベントが発生した場合に、いかなる範囲の他のエージェント1Aまで第2の通知情報を伝搬させるかを、各エージェント1Aの転送判定部104が、所定の転送ポリシーに基づいて判定している。
各エージェント1Aの通信制御部101は、転送判定部104が肯定的な判定を行った第2の通知情報に限り、他のエージェント1Aに対する情報転送を行う。
【0053】
図5は、その転送ポリシーPL2の一例を示す表である。
図5に示すポリシー内容のうち、「固定範囲」とは、転送する範囲を固定的に定めるものであり、図例では、ホップ数が所定回数以下の第2の通知情報、或いは、イベントの発生地点から所定距離以下の第2の通知情報に限り、他のエージェント1Aに第2の通知情報を通知するものである。
【0054】
なお、「ホップ数」とは、第2の通知情報の転送回数のことをいい、生成元から次のエージェント1Aに転送された場合はホップ数が「1」、更に次のエージェント1Aに転送された場合はホップ数が「2」である。
従って、かかるホップ数を用いて転送する範囲を限定するには、エージェント1A間で送受信する第2の通知情報にホップ数の格納フィールドを定義し、他のエージェント1Aに転送した場合にそのフィールド値をインクリメントする処理が必要である。
【0055】
また、図5の「変動範囲1」は、イベントの規模によってホップ数や距離の閾値を変動させる転送ポリシーであり、イベントの規模が大きいほど、ホップ数や距離の閾値が大きく設定される。
このため、イベントの規模が大きくて通行阻害の影響が重大なほど、第2の通知情報の伝搬範囲が広がるようになっている。
【0056】
また、図5の「変動範囲2」は、イベントが発生した道路種別に応じてホップ数や距離の閾値を変動させる転送ポリシーであり、高速道路の方が一般道路よりもホップ数や距離の閾値が大きく設定される。
このため、後続車両への影響が大きい高速道路ほど、第2の通知情報の伝搬範囲が広がるようになっている。なお、変動範囲1と変動範囲2とは重畳適用することもできる。
【0057】
〔エージェント間の協調処理の例〕
図2に戻り、本実施形態のエージェント1A間で行われる協調処理の例を説明する。
ここでは、エージェントAg6の通知エリアA6にある車両C8が交通事故に遭遇したと仮定している。
この場合、エージェントAg6は、自エリアA6の事故車両C8をその車両C8からのプローブ情報によって検出し、自エリアA6で通知する第1の通知情報を生成する。
【0058】
また、エージェントAg6は、イベントの発生地点から上流側に遡る道路が隣接する通知エリアA5に進入する進入ポイントP1を経路探索によって求め、この進入ポイントP1の位置情報を含む第2の通知情報を生成する。
次に、エージェントAg6は、抽出ポリシーPL1に従って対象車両の抽出処理を実行し、自エリアA6内において事故車両C8の上流側に位置する車両C7を対象車両として抽出する。
【0059】
そして、エージェントAg6は、自エリアA6にある路側通信機(図2では図示せず。)を用いて、車両C7宛のユニキャストにて第1の通知情報をダウンリンク送信する。
また、エージェントAg6は、進入ポイントP1で接続する通知エリアA5のエージェントAg5に、進入ポイントP1の位置情報を含む第2の通知情報を転送する。
【0060】
一方、エージェントAg5は、第2の通知情報をエージェントAg6から取得すると、その通知情報に含まれる進入ポイントP1から上流側に遡る道路が隣接する通知エリアA2に進入する進入ポイントP2を経路探索によって求め、進入ポイントP2の位置情報を含む第2の通知情報を生成する。
また、エージェントAg5は、抽出ポリシーPL1に従って対象車両の抽出処理を実行し、自エリアA5内において進入ポイントP1の上流側に位置する車両C2と車両C5を対象車両として抽出する。
【0061】
なお、この場合、図2の車両C3は進入ポイントP1から遠ざかる別方向のため、車両C4は高速道路を走行しているため、いずれも対象車両として抽出されない。
そして、エージェントAg5は、自エリアA5にある路側通信機を用いて、車両C2と進入C5宛のユニキャストにて第1の通知情報をダウンリンク送信する。
また、エージェントAg5は、進入ポイントP2で接続する通知エリアA2のエージェントAg2に、進入ポイントP2の位置情報を含む第2の通知情報を転送する。
【0062】
なお、車両に通知情報を提供する各エージェントAg6,Ag5は、事故車両C8での交通事故(イベント)の発生時刻から、所定時間以内の通知情報に限り車両に対する通知を行い、当該所定時間を超えた通知情報については破棄する。
古いイベントの通知情報を何時までも車両に通知すると、却ってドライバーに混乱が生じる恐れがあるからである。
【0063】
〔抽出ポリシーの適用例〕
図6〜図8は、前述の抽出ポリシー(図4)の適用例を示す道路線形図である。
図6において、事故車両C0から距離が2km離れた上流側の位置を車両C1が走行しており、その上流側の分岐点の更に上流側を車両C2が走行している。
また、車両C3は事故が発生した道路と下流側で合流する、事故と無関係と考えられる道路を走行している。
【0064】
この場合、図4の抽出ポリシーPLによれば、車両C1は「属性2」と「属性3」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」と「10」であるから、車両C1は優先順位が「9」の対象車両である。
また、車両C2は「属性2」、「属性3」及び「属性8」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」、「10」及び「6」であるから、車両C2は優先順位が「6」の対象車両である。なお、車両C3は該当する属性がないので対象車両ではない。
従って、図6の場合には、エージェント1Aは、車両C2→車両C1の順で第1の通知情報を送信し、車両C3には第1の通知情報を送信しない。
【0065】
図7の例では、事故車両C0から距離が1.5km離れた上流側の位置を車両C1が走行しており、その上流側の分岐点の更に上流側を車両C2が走行している。
また、車両C3は事故が発生した道路と下流側で合流する、事故と無関係と考えられる道路を走行している。図6の例との違いは、車両C2の下流側の分岐点で分岐する分岐路が、図示左側に膨らんだ逆方向代替路となっている点にある。
【0066】
この場合、図4の抽出ポリシーPLによれば、車両C1は「属性2」と「属性3」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」と「10」であるから、車両C1は優先順位が「9」の対象車両である。
また、車両C2は「属性2」、「属性3」及び「属性9」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」、「10」及び「8」であるから、車両C2は優先順位が「8」の対象車両である。なお、車両C3は該当する属性がないので対象車両ではない。
従って、図7の場合にも、エージェント1Aは、車両C2→車両C1の順で第1の通知情報を送信し、車両C3には第1の通知情報を送信しない。
【0067】
図8の例では、事故車両C0は高速道路で事故に遭遇しており、後続の車両C1〜C3が同じ高速道路を走行している。その後続車両C1〜C3のうち、車両C1は事故車両C0から距離が0.5km離れた上流側の位置を走行しており、車両C2は事故車両C0から距離が2km離れた上流側の位置を走行している。
また、車両C3は、分岐点B1にて一般道路へ迂回できる位置を走行しており、車両C4は、分岐点B2にて高速道路へ流入できる位置を走行している。
【0068】
この場合、図4の抽出ポリシーPLによれば、車両C1は「属性1」と「属性3」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「1」と「10」であるから、車両C1は優先順位が「1」の対象車両である。
車両C2は「属性2」と「属性3」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」と「10」であるから、車両C2は優先順位が「9」の対象車両である。
【0069】
車両C3は、「属性2」、「属性3」及び「属性10」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」、「10」及び「7」であるから、車両C3は優先順位が「7」の対象車両である。
また、車両C4は、「属性2」と「属性8」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」と「6」であるから、車両C4は優先順位が「6」の対象車両である。
従って、図8の場合には、エージェント1Aは、車両C1→車両C4→車両C3→車両C2の順で第1の通知情報を送信する。
【0070】
〔情報提供装置の効果〕
以上の通り、本実施形態の情報提供装置1(エージェント1A)によれば、抽出ポリシーPL1に含まれるいずれかの属性1〜10に適合する対象車両を抽出して、当該属性1〜10に対応する優先順位を対象車両に付与し、付与された優先順位の順序で対象車両に通知情報を通知するようになっている。
【0071】
このため、抽出ポリシーPL1の属性1〜10とその優先順位を図4のように実情に即して適切に定めておけば、通知情報が不要な車両(例えば、図6及び図7の車両C3)への通知や、迅速な通知が必要な車両(例えば、図6及び図7の車両C2や図8の車両C1,C4)への通知が遅れるのを防止でき、イベントの通知情報を、それを必要とする車両5に確実かつ効率的に提供することができる。
【0072】
〔第1の変形例〕
図9は、対象車両の候補の別の探索方法を示す説明図である。
図9において、距離Rは予め定められた一定距離の半径であり、車両C0は事故車両である。K0は事故車両C0の走行軌跡であり、K2は後続の車両C2の走行軌跡である。
また、車両C2と車両C3は、事故車両C0の走行軌跡K0に沿って走行中であり、車両C4は、車両C2の走行軌跡K2に沿って走行中であるものとする。
【0073】
この第1の変形例では、エージェント1A(対象車両抽出部103)は、事故車両C0についてのイベントを検出すると、まず、所定半径R内の比較的近距離の車両(図9では車両C1)を、すべて通知情報を送信する対象車両の候補に含める。
次に、エージェント1Aは、事故車両C0の走行軌跡K0に沿って走行する一次車両(図9では車両C2と車両C3)のうち、所定距離内或いは所定時間内のものを探索し、これについても対象車両の候補に含める。
【0074】
また、エージェント1Aは、一次車両C2の走行軌跡K2に沿って走行する二次車両(図9では車両C4)のうち、所定距離内或いは所定時間内のものを探索し、これについても通知情報を送信する対象車両の候補に含める。
以下、同様にして、車両の走行軌跡を順次遡って所定のN次車両まで探索し、これについても対象車両の候補に含める。
【0075】
この場合、走行軌跡に乗らない車両(図9の車両C6)については、イベントの発生地点に流入し易い位置にあっても、対象車両の候補から外れることになるが、通知エリアA内の比較的広い範囲を対象とした複雑な経路探索処理を行う必要がないので、イベントの発生地点から上流側に位置する車両を効率よく見つけることができ、処理速度を向上できるという利点がある。
【0076】
〔第2の変形例〕
図10は、対象車両の候補の別の探索方法を示す説明図である。
図10において、中心に沿って破線を付した道路は「幹線道路」であり、破線を付していない道路はそれ以外の「小規模道路」である。
【0077】
この第2の変形例では、エージェント1A(対象車両抽出部103)は、車両C0のイベントを検出すると、小規模道路のリンクを除く幹線道路に対応するリンクのみを対象として、通知エリアA内でイベントの発生位置に流入する経路の探索を行い、その経路に含まれる車両(図10では車両C1,車両C3及び車両C4)を、通知情報を通知する対象車両の候補に含める。
【0078】
このように、対象車両の候補を特定するための経路探索を、幹線道路等の特定種別の道路に限定すれば、通知エリアA内のすべての道路種別について探索処理を行う場合に比べて、演算負荷を大幅に削減することができる。
また、第2の変形例では、エージェント1Aは、求めた経路を一定時間保持しておき、その時間内に経路上に現れた車両についても対象車両の候補に含める。このため、上記の経路探索で対象車両の候補から外れた車両(図10では車両C2と車両C5)であっても、幹線道路に流入した時点で候補に含めることができる。
【0079】
〔第3の変形例〕
図11は、通知エリアAの変形例を示す道路平面図である。
上述の実施形態では、図2に示すように、各エージェントAg1〜Ag9の通知エリアA1〜A9がメッシュエリアとなっていたが、通知エリアは、例えば図11に示すように、丸形の平面形状でかつ互いに重複する部分があってもよい。
【0080】
その他、1つのエージェント1Aの通知エリア(監視単位)Aの例として考えられる態様を纏めると、次の通りである。
1) 2次メッシュ(10km四方)のエリアをエージェントで監視させる。
2) 高速道路と一般道路を別エリアとして別のエージェントで監視させる。
3) 所定のリンク番号の範囲のリンクを1つのエージェントで監視させる。
また、日別や時間帯別で通知エリアAに対する監視の仕方を変化させることもできる。例えば、同じ範囲の1つの通知エリアAを、混雑時には複数のエージェント1Aにて監視させ、それ以外の通常時は1つのエージェント1Aにて監視させることにしてもよい。
【0081】
〔その他の変形例〕
上述の実施形態(変形例を含む。)は例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、エージェント1Aは中央装置4のコンピュータに実装することにしてもよい。この場合、中央装置4が本発明の情報提供装置を構成することになる。実装するコンピュータは、1または複数であってもよい。
【0082】
また、本発明の情報提供装置にインストールするソフトウェアは、必ずしもソフトウェアエージェント1Aでなくてもよく、本発明に必要な各機能を実現するアプリケーションソフトウェアであってもよい。
上述の実施形態では、プローブ車両5を利用したセンシングによって交通事故や道路障害などのイベントを検出しているが、その検出情報に代えて或いはそれに加えて、道路に設置した路側センサ(例えば、画像センサ)によって得られた検出情報を情報提供装置1に送信するようにしてもよい。
【0083】
また、上述の実施形態において、車両5が自車の走行予定経路をプローブ情報に含めてアップリンク送信することにしてもよい。この場合、走行予定経路がイベントの発生地点を経由する車両5については、イベントの影響を被ることがほぼ確実であるから、抽出ポリシーPL1(図4)を適用せずに、第2の通知情報を通知する提供対象と判定することにしてもよい。
なお、この場合、プローブ情報には車両5の出発地と目的地とを含めることにし、走行予定経路の探索を情報提供装置1(エージェント1A)側で行うことにしてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 情報提供装置
2 車載装置
3 路側センサ
4 中央装置
5 プローブ車両
6 路側通信機
101 通信制御部(通知手段、取得手段)
102 情報生成部(生成手段)
103 対象車両抽出部(抽出手段)
104 転送判定部
105 記憶装置(記憶手段)
P1 進入ポイント
P2 進入ポイント
PL1 抽出ポリシー
PL2 転送ポリシー
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両通行に支障が生じる交通事故等のイベントの通知情報を車両に提供する情報提供装置、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路の交通情報をドライバーに提供する技術として、財団法人道路交通情報通信システムセンターによるVICS(Vehicle Information and Communication System:なお、「VICS」は上記財団法人の登録商標)が広く知られている。
このVICSは、各種の路側センサ(車両感知器やループコイル等)から収集した車両台数や車両速度等よりなる定点観測情報に基づいて、各路線での渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報を集計し、その交通情報を、光ビーコンによる狭域通信やFM放送等の広域通信によってドライバーに提供するものである。
【0003】
また、道路の交通情報をドライバーに提供する他の技術として、プローブカーを利用した交通情報予測システム(以下、プローブシステムという。)も知られている。
このプローブシステムは、例えば特許文献1及び2に示すように、実際に道路を走行する車両(プローブ車両)を移動体センサとして利用するものであり、現時点の車両位置や時刻を含むプローブ情報を無線通信によって各プローブ車両から収集し、中央装置等の交通制御装置にて交通情報を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−151496号公報
【特許文献2】特開2005−4467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記プローブシステムにおいて、例えば、1又は複数のプローブ車両でのエアバックやABS(Antilock Brake System )の作動を交通事故や路面状態の悪化の発生と見なし、その検出信号をプローブ情報に含めて路側に無線でアップリンク送信すれば、後続の車両通行に支障が生じる交通事故や道路障害のイベントが発生したことを、路側の交通制御装置がほぼリアルタイムに察知することができる。
【0006】
従って、上記イベントを含むプローブ情報がアップリンクされた場合に、たとえば路側の交通制御装置にてイベント発生地点を含む通知情報を生成し、路側通信機を通じて無線でその通知情報をダウンリンク送信すれば、路車間通信が可能な他の車両にイベントの発生をいち早く通知することができる。この場合、単純に情報を配信するだけであれば、上記通知情報をブロードキャストで配信すればよい。
しかし、上記通知情報をブロードキャストで配信すると、通信帯域を圧迫することになるとともに、イベントの通知情報が不要な車両にも無差別に配信され、却って混乱を招く恐れがある。また、ブロードキャストによる配信では、必ずしもイベントの通知情報が車両に確実に届くとは限らない。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、交通事故や道路障害等のイベントの通知情報を、それを必要とする車両に確実かつ効率的に提供できる情報提供装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る装置は、車両通行に支障が生じるイベントの通知情報を車両に提供する情報提供装置であって、プローブ情報を取得する手段と、前記イベントの発生を検出して前記通知情報を生成する生成手段と、情報提供すべき対象車両の属性と、その属性ごとの優先順位を定めた抽出ポリシーを記憶する記憶手段と、前記プローブ情報により特定した車両のうちから、前記抽出ポリシーに含まれるいずれかの前記属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を前記対象車両に付与する抽出手段と、付与された前記優先順位の順序で前記対象車両に前記通知情報を通知する通知手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の情報提供装置によれば、抽出手段が、抽出ポリシーに含まれるいずれかの属性に適合する対象車両を抽出して、当該属性に対応する優先順位を対象車両に付与し、通知手段が、付与された優先順位の順序で対象車両に通知情報を通知するので、抽出ポリシーの属性と優先順位とを実情に即して適切に定めておくことにより、通知情報が不要な車両への通知や、迅速な通知が必要な車両への通知が遅れるのを防止でき、イベントの通知情報を、それを必要とする車両に確実かつ効率的に提供することができる。
【0010】
(2) 本発明の情報提供装置において、例えば、前記抽出ポリシーに含まれるすべての前記属性を、前記イベントの発生地点から上流側に位置する車両を提供対象とするものとすれば、イベントの発生地点から下流側に位置する、通知情報が不要と考えられる車両への通知を防止することができる。
【0011】
(3) また、本発明の情報提供装置において、前記抽出ポリシーの前記属性は、前記イベントの発生地点から所定距離未満に存在する車両を提供対象とする第1属性と、その所定距離以上に存在する車両を提供対象とする第2属性とを含み、前記第1属性の方が前記第2属性よりも優先順位が高く設定されていることが好ましい。
この場合、迅速な通知が必要と考えられる、イベントの発生地点から近い車両に対する通知が遅れるのを防止することができる。
【0012】
(4) 本発明の情報提供装置において、前記抽出手段は、前記対象車両が複数の前記属性に適合する場合には、複数の前記属性の優先順位のうちで最も高いものを当該対象車両の優先順位とすることが好ましい。
その理由は、優先順位が最も高い属性に適合する対象車両である以上、その優先順位に従って通知を行うことが実情に適っているからである。
【0013】
(5) 本発明の情報提供装置において、前記抽出手段は、前記対象車両の抽出を行う候補を、前記イベントに遭遇した車両の走行軌跡に沿う一次車両、この一次車両の走行軌跡に沿う二次車両、及び、以下同様に走行軌跡を用いて探索した所定のN次車両に限定することが好ましい。
かかる限定を行えば、複雑な経路探索処理を行わずに、イベントの発生地点から上流側に位置する車両を効率よく見つけることができ、処理速度を向上することができる。
【0014】
(6) また、本発明の情報提供装置において、前記抽出手段は、前記対象車両の抽出を行う候補を、幹線道路を走行中の車両に限定することにしてもよい。
かかる限定を行えば、イベントの発生地点から上流側に位置する車両を経路探索処理によって特定する場合に、その探索処理の演算負荷を低減することができる。
【0015】
(7) 本発明に係るシステムは、前記通知情報の通知エリアが互いに隣接するように配置された複数の本発明に係る情報提供装置よりなる情報提供システムであって、各々の前記情報提供装置は、他の前記情報提供装置から前記通知情報を取得する取得手段を更に備えている。
また、本発明の情報提供システムでは、前記通知情報の生成元である前記情報提供装置が、前記イベントの発生地点から上流側に遡る道路が進入する前記通知エリアをカバーする上流側の他装置に、当該通知エリアへの進入ポイントと前記通知情報とを通知することにより、生成元である情報提供装置の通知エリアに隣接する他の通知エリアを担当する情報提供装置に、通知情報を伝搬させるようになっている。
【0016】
(8) この場合、前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置が、通知された前記進入ポイントから上流側に遡る道路が進入する前記通知エリアをカバーする上流側の他装置に、当該通知エリアへの進入ポイントと前記通知情報とを通知するようにすれば、生成元でない情報提供装置の通知エリアに隣接する他の通知エリアを担当する情報提供装置にも、通知情報を更に伝搬させることができる。
【0017】
(9) もっとも、前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置は、ホップ数が所定回数以下の前記通知情報、或いは、前記イベントの発生地点から所定距離以下の前記通知情報に限り、他の前記情報提供装置に前記通知情報を通知することが好ましい。
その理由は、通知情報の伝搬範囲を何らかの基準で制限しないと、通知情報がほぼ無限に伝搬され続け、イベントの発生地点から遠すぎて通知情報が不要な車両にも、通知情報が通知される恐れがあるからである。
【0018】
(10) また、この場合、前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置は、前記イベントの規模や前記イベントが発生した道路種別に応じて前記所定回数又は前記所定距離を変動させることが好ましい。
このようにすれば、イベントによる通行阻害の影響が重大となる場合には、通知情報の伝搬範囲を広げ、それほど重大でない場合にはその伝搬範囲を比較的絞るなど、実情に即した柔軟な運用を行うことができる。
【0019】
(11) 本発明の情報提供システムにおいて、前記通知手段は、前記イベントの発生時刻から所定時間以内の前記通知情報に限りその通知を行い、当該所定時間を超えた前記通知情報については破棄することが好ましい。
その理由は、例えば数時間以上前の交通事故などの古いイベントは、現時点ではそのイベントが解消している可能性があり、そのような古いイベントの通知情報を何時までも車両に通知すると、却ってドライバーに混乱が生じる恐れがあるからである。
【0020】
(12) 本発明に係る方法は、車両通行に支障が生じるイベントの通知情報を車両に提供する情報提供方法であって、プローブ情報を取得するステップと、前記イベントの発生を検出して前記通知情報を生成するステップと、情報提供すべき対象車両の属性と、その属性ごとの優先順位を定めた抽出ポリシーを記憶する記憶手段を参照して、前記プローブ情報より特定した車両のうちから、前記抽出ポリシーに含まれるいずれかの前記属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を前記対象車両に付与するステップと、付与された前記優先順位の順序で前記対象車両に前記通知情報を通知するステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の情報提供方法は、本発明の情報提供装置が行う方法であって、当該提供装置と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0022】
以上の通り、本発明によれば、交通事故や道路障害等のイベントの通知情報を、それを必要とする車両に確実かつ効率的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した情報提供システムの全体構成図である。
【図2】複数のエージェントの通知エリアの配置例を示す道路平面図である。
【図3】情報提供装置のエージェントの機能ブロック図である。
【図4】抽出ポリシーの一例を示す表である。
【図5】転送ポリシーの一例を示す表である。
【図6】抽出ポリシーの適用例を示す道路線形図である。
【図7】抽出ポリシーの別の適用例を示す道路線形図である。
【図8】抽出ポリシーの別の適用例を示す道路線形図である。
【図9】対象車両の候補の別の探索方法を示す説明図である。
【図10】対象車両の候補の別の探索方法を示す説明図である。
【図11】通知エリアの変形例を示す道路平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔システムの全体構成〕
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用した情報提供システムの全体構成図である。
本実施形態の情報提供システムは、情報提供装置1、車載装置2を搭載したプローブ車両(以下、単に「車両」ともいう。)5、路側センサ3、中央装置4、車載装置2と無線通信する路側通信機6などを含む。
【0025】
中央装置4は、VICS情報やプローブ情報などを収集し、車両5に提供するための交通情報を生成する機能を有している。中央装置4は、生成した交通情報に基づいて、管轄エリア内の交通信号機に対する系統制御や交通管制などの処理も行うこともできる。
情報提供装置1は、本実施の形態において、中央装置4の管轄エリア内の交差点のそれぞれに設置された交通信号制御機のうちの1つに組み込まれている。路側通信機6は、ITS無線機などの広域無通信機よりなり、中央装置4の管轄エリア内の適所に設置されている。
【0026】
車載装置2は、車両5のGPS受信機が定期的に取得するGPS信号により自車の絶対位置を求め、車両5の車速センサ及びジャイロセンサから随時入力される入力信号に基づいてその位置及び方位を補間し、車両5の正確な現在位置及び方位を把握している。
車載装置2は、プローブ車両5の移動観測情報としてのプローブ情報(走行軌跡)を生成し、その情報を路側通信機6にアップリンク送信する。プローブ情報には、車両位置、通過時刻、車両速度、方位及び車両IDなどが含まれる。
【0027】
本実施形態では、主として、プローブ車両5がアップリンク送信したプローブ情報に基づいて、車両通行に支障が生じるイベントの発生を情報提供装置1が検出する。かかるイベントは、交通事故と車両通行が妨げられる道路障害とに大別され、道路障害には、路面凍結、落石、障害物及び道路水没などがある。
車載装置2は、車両5に搭載されたCAN(Controller Area Network )バスモニタから取得した電子機器の制御信号や、車載カメラの画像データに基づいて、例えば次のようなイベントを検出可能である。
【0028】
すなわち、車載装置2は、例えば、エアバックの作動信号の取得によって当該車両5での交通事故を検出でき、ABSの作動信号の取得によって路面凍結を検出でき、ワイパーの作動信号によって局所的豪雨などを検出することができる。また、車載装置2は、車載カメラによる画像データを解析することで、上記各イベントを検出することができる。
車載装置2は、これらのイベントを検出すると、そのイベント種別、発生地点(例えば絶対位置)及び発生時刻などをプローブ情報に含め、その情報を路側通信機6にアップリンク送信する。
【0029】
路側通信機6は、車載装置2との間で無線通信にて情報の送受信を行う。具体的には、路側通信機6は、車載装置2が送信したプローブ情報を受信すると、これを情報提供装置1と中央装置4に転送する。
また、路側通信機6は、情報提供装置1や中央装置4が生成した交通情報を各装置1,4から受信すると、その交通情報を車載装置2にダウンリンク送信する。
【0030】
路側センサ3は、道路の定点観測情報を収集する固定センサであり、例えば、直下を通行する車両を超音波感知する車両感知器や、インダクタンス変化で車両を感知するループコイル、或いは、カメラの映像を画像処理して交通量や車両速度を計測する画像感知器よりなる。
この路側センサ3は、交差点等に流入する車両台数や車両速度を計測する目的で、高速道路や主要な幹線道路に設置されている。
【0031】
路側センサ3が検出した観測情報は、通信回線を介してVICSセンター7に送信され、VICSセンター7は、その観測情報に基づいてVICS情報を生成する。このVICS情報は、通信回線を介して中央装置4に送信される。
なお、図1において、仮想線で囲まれた範囲Aは、1つの情報提供装置1に割り当てられた「通知エリア」を示している。すなわち、通知エリアAは、1つの情報提供装置1からの指令により1又は複数の路側通信機6がダウンリンク送信可能な通信エリアを示している。
【0032】
図1に示すように、情報提供装置(以下、「端末」ともいう。)1は、通知エリアAが異なる他の複数の端末1,1…とも通信可能に接続されている。これらの端末1は、所定のOSが搭載されたコンピュータよりなる。
また、各端末1には、各種アプリケーションプログラムの動作基盤となるソフトウェアエージェント(以下、単に「エージェント」ともいう。)1Aがインストールされている。エージェント1Aは、他の端末1のエージェント1Aと通信を行いつつ協調動作することで、後述の各種機能を端末1に実行させる。
【0033】
〔通知エリアの配置例〕
図2は、複数のエージェント1Aの通知エリアAの配置例を示す道路平面図である。
図2の例では、所定範囲のエリアが合計9個の通知エリアA1〜A9(たとえば10km四方のエリア)に分割されており、それらの通知エリアA1〜A9の各々が1つのエージェントAg1〜Ag9が担当する通知エリア(本実施形態では、イベント発生の監視範囲でもある。)とされている。
【0034】
なお、図2において、斜線なしの道路は「一般道路」を示し、斜線ありの道路は「高速道路」を示し(他の図も同様)、矢印は各車両C1〜C7の進行方向を示し、車両C8は事故車両を示している。また、図2に示すエージェントAg1〜Ag9による協調処理については後述する。
【0035】
この例では、各エージェントの監視エリアをメッシュ状に形成しているが、これに限られるものではない。たとえば監視エリアは、高速道路や一般道路などの道路種別によって設定してもよい。予め定めたリンクまたはリンクのグループによって監視エリアを設定してもよい。さらにこれらを組み合わせて監視エリアを設定してもよい。さらに監視エリアは、日種や時間帯などによって変化させるようにしてもよい。例えば同一の地域範囲を非混雑時は単一のエージェントによって監視し、混雑時は複数のエージェントによって監視するようにしてもよい。
【0036】
〔エージェントの構成〕
図3は、情報提供装置1のエージェント1Aの機能ブロック図である。この図3に示すエージェント1Aの各機能は、当該エージェント1Aが各端末1の演算処理装置(CPU)において実行されることで発揮される。
図3に示すように、エージェント1Aは、機能部として、通信制御部101、情報生成部102、対象車両抽出部103及び転送判定部104を備えている。
【0037】
通信制御部101は、中央装置4や自身以外のエージェント1Aとのネットワーク通信制御や、自身の通知エリアAを通信範囲とする1又は複数の路側通信機6との間の通信制御を行う機能を有する。
通信制御部101は、路側通信機6からプローブ情報を受信すると、それを中央装置4に転送するとともに情報生成部102に送る。通信制御部101は、自身の通知エリアAに送信すべきイベントの通知情報がある場合には、それを路側通信機6にユニキャストでダウンリンク送信させる。
【0038】
すなわち、通信制御部101は、自身の通知エリアAの路側通信機6が路車間通信している相手方の車両IDを捕捉しており、その車両IDを宛先とした通知情報を生成して路側通信機6にダウンリンク送信させる。
また、通信制御部101は、他のエージェント1Aからイベントの通知情報を受信すると、それを転送判定部104に送る。転送判定部104は、送られた通知情報を他のエージェント1Aに転送すべきか否かを、自端末1の記憶装置105に格納された「転送ポリシーPL2」(図5)に基づいて判定し、その判定結果を通信制御部101に返す。
【0039】
通信制御部101は、転送判定部104の判定結果が肯定的である場合には、その通知情報を路側通信機6に送って自身の通知エリアAからユニキャストでダウンリンク送信させるだけでなく、通知を受けたエージェント1Aとは異なるエージェント1Aにその通知情報を転送する。
逆に、通信制御部101は、転送判定部104の判定結果が否定的である場合には、上記ダウンリンク送信を行うが、異なるエージェント1Aに対する通知情報の転送は行わない。
【0040】
通信制御部101からプローブ情報を受けた情報生成部102は、プローブ情報の中にイベント種別が含まれているか否かを検出し、イベント種別がある場合には、次のデータ(a)〜(c)を含む「第1の通知情報」と、これにデータ(d)を加えた「第2の通知情報」を生成する。
第1の通知情報は、自身の通知エリアAで車両5に提供する通知情報であり、第2の通知情報は、他のエージェント1Aに転送する通知情報である。
【0041】
(a) イベントの発生地点
(b) イベントの発生時刻
(c) イベントの危険レベル
(d) 他の端末の通知エリアへの進入ポイント
【0042】
上記(a)の「発生地点」は、プローブ車両5にて検出された発生地点がそのまま踏襲される。発生地点のデータ形式は絶対位置でもよいし、リンク番号とそのリンク内位置で表したデータであってもよい。また、上記(b)の発生時刻も、車載装置2が検出した発生時刻がそのまま踏襲される。
上記(c)の危険レベルは、プローブ情報に記されたイベント種別に応じて情報生成部102が判定するものである。例えば、イベントが交通事故の場合、大規模道路で発生したなら「大」、中規模道路なら「中」、小規模道路なら「小」などと判定される。
【0043】
また、上記(d)の「進入ポイント」とは、イベントの発生地点から上流側に遡る道路が、隣接する他の通知エリアに進入するポイント(例えば、図2のP1)のことをいう。
情報生成部102は、エージェント1Aの機能或いは端末1のアプリケーションソフトの機能として経路探索を実行することができ、情報生成部102は、イベントの発生地点を含む或いは近いリンクを出発リンクとして、上流側に遡る経路探索を行う。
この場合、途中で分岐ノードに到達した場合には、出来るだけイベントの発生地点から遠ざかるリンクを選択するように経路を探索し、発生地点の上流側で最初に別の通知エリアAに到達した地点を、その通知エリアAへの進入ポイントとする。
【0044】
なお、情報生成部102は、自身が通知情報の生成元「である」場合(自身の通知エリアAでイベントが発生した場合)には、イベントの発生地点に対応するリンクを出発リンクとして経路探索を行うが、自身が通知情報の生成元「でない」場合(他のエージェント1Aから通知情報を取得した場合)には、他のエージェント1Aから通知された「進入ポイント」に対応するリンクを出発リンクとして、上述の経路探索を行う。
【0045】
〔抽出ポリシーに基づく抽出処理〕
次に、エージェント1Aの対象車両抽出部(以下、単に「抽出部」ともいう。)103が行う、第1の通知情報を提供すべき対象車両の抽出処理について説明する。
抽出部103は、まず、通知エリアA内におけるイベントの発生地点への流入経路に含まれるプローブ車両5をすべて特定し、その車両5を第1の通知情報を提供する対象車両の候補とする。また、抽出部103は、自端末1の記憶装置105に格納された「抽出ポリシーPL1」(図4)に従って、その候補の中から対象車両を抽出する。
【0046】
図4は、抽出ポリシーPL1の一例を示す表である。
図4に示すように、本実施形態の抽出ポリシーPL1は、情報提供すべき対象車両の「属性」と、その属性ごとの優先順位(優先度)を定めたものである。図4中の優先順位は、その数値が小さいほど優先されることを意味する。また、図4において、属性1〜属性7は、後続車両のイベント回避を重視した属性であり、属性8〜属性10は、交通流の最適化を重視した属性である。なお、交通流を最適化することを目的として情報を提供する場合には、第1の通知情報として、上述の(a)〜(c)に加えて、イベント発生箇所を回避するため代替路情報を含めるのが好ましい。
【0047】
抽出部103は、上記候補の中から、抽出ポリシーPL1に含まれるいずれかの属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を対象車両に付与する。
例えば、候補車両の車両位置が「イベント箇所」から上流側にあり、かつ、イベント箇所から300mの地点である場合には、抽出部103は、その候補車両については、「属性1」に該当するため対象車両として抽出し、優先順位として「1」を付与する。
同様に、候補車両の車両位置が「イベント箇所」から上流側にあり、かつ、イベント箇所から2000mの地点である場合には、抽出部103は、その候補車両については、「属性2」に該当するため対象車両として抽出し、優先順位として「9」を付与する。
【0048】
なお、図4において、「イベント箇所」とは、イベントの発生地点又は前記した進入ポイントのことをいう。
また、イベント箇所から下流側に位置する車両5の場合には、イベント箇所に戻って通行阻害を受ける可能性が殆どななく、通知情報が不要と考えられる。従って、図4の抽出ポリシーPL1では、すべての属性1〜10がイベント箇所から上流側に位置する車両5を提供対象としている。
【0049】
更に、抽出ポリシーPL1に含まれる属性のうち、属性1は、イベント箇所から所定距離(図例では1km)未満に存在する車両を提供対象とし、属性2は、その所定距離以上に存在する車両を提供対象としているが、属性1の方が属性2よりも優先順位が高く設定されている。
その理由は、イベント箇所に近い車両5ほど迅速な通知が必要と考えられるので、より高い優先順位を設定して通知の遅れを防止せねばならないからである。
【0050】
なお、ある1つの対象車両が、属性1〜10のうちの複数の属性に適合する場合もあり得るが、このような場合には、抽出部103は、複数の属性の優先順位のうちで最も高いものを、当該対象車両の優先順位として付与するようになっている。
その理由は、優先順位が最も高い属性に適合する以上、その最も高い優先順位に従って対象車両に通知情報を通知するのが実情に適っているからである。
【0051】
抽出部103は、上記のようにして優先順位を付与した1又は複数の対象車両を抽出すると、その車両IDを通信制御部101に報告する。
通信制御部101は、優先順位が小さい車両IDの順序で、情報生成部102が生成した第1の通信情報を路側通信機6に送り、自身の通知エリアAにてユニキャストでダウンリンク送信させる。
【0052】
〔転送ポリシーによる判定処理〕
前述の通り、本実施形態では、特定のエージェント1Aの通知エリアAにおいてイベントが発生した場合に、いかなる範囲の他のエージェント1Aまで第2の通知情報を伝搬させるかを、各エージェント1Aの転送判定部104が、所定の転送ポリシーに基づいて判定している。
各エージェント1Aの通信制御部101は、転送判定部104が肯定的な判定を行った第2の通知情報に限り、他のエージェント1Aに対する情報転送を行う。
【0053】
図5は、その転送ポリシーPL2の一例を示す表である。
図5に示すポリシー内容のうち、「固定範囲」とは、転送する範囲を固定的に定めるものであり、図例では、ホップ数が所定回数以下の第2の通知情報、或いは、イベントの発生地点から所定距離以下の第2の通知情報に限り、他のエージェント1Aに第2の通知情報を通知するものである。
【0054】
なお、「ホップ数」とは、第2の通知情報の転送回数のことをいい、生成元から次のエージェント1Aに転送された場合はホップ数が「1」、更に次のエージェント1Aに転送された場合はホップ数が「2」である。
従って、かかるホップ数を用いて転送する範囲を限定するには、エージェント1A間で送受信する第2の通知情報にホップ数の格納フィールドを定義し、他のエージェント1Aに転送した場合にそのフィールド値をインクリメントする処理が必要である。
【0055】
また、図5の「変動範囲1」は、イベントの規模によってホップ数や距離の閾値を変動させる転送ポリシーであり、イベントの規模が大きいほど、ホップ数や距離の閾値が大きく設定される。
このため、イベントの規模が大きくて通行阻害の影響が重大なほど、第2の通知情報の伝搬範囲が広がるようになっている。
【0056】
また、図5の「変動範囲2」は、イベントが発生した道路種別に応じてホップ数や距離の閾値を変動させる転送ポリシーであり、高速道路の方が一般道路よりもホップ数や距離の閾値が大きく設定される。
このため、後続車両への影響が大きい高速道路ほど、第2の通知情報の伝搬範囲が広がるようになっている。なお、変動範囲1と変動範囲2とは重畳適用することもできる。
【0057】
〔エージェント間の協調処理の例〕
図2に戻り、本実施形態のエージェント1A間で行われる協調処理の例を説明する。
ここでは、エージェントAg6の通知エリアA6にある車両C8が交通事故に遭遇したと仮定している。
この場合、エージェントAg6は、自エリアA6の事故車両C8をその車両C8からのプローブ情報によって検出し、自エリアA6で通知する第1の通知情報を生成する。
【0058】
また、エージェントAg6は、イベントの発生地点から上流側に遡る道路が隣接する通知エリアA5に進入する進入ポイントP1を経路探索によって求め、この進入ポイントP1の位置情報を含む第2の通知情報を生成する。
次に、エージェントAg6は、抽出ポリシーPL1に従って対象車両の抽出処理を実行し、自エリアA6内において事故車両C8の上流側に位置する車両C7を対象車両として抽出する。
【0059】
そして、エージェントAg6は、自エリアA6にある路側通信機(図2では図示せず。)を用いて、車両C7宛のユニキャストにて第1の通知情報をダウンリンク送信する。
また、エージェントAg6は、進入ポイントP1で接続する通知エリアA5のエージェントAg5に、進入ポイントP1の位置情報を含む第2の通知情報を転送する。
【0060】
一方、エージェントAg5は、第2の通知情報をエージェントAg6から取得すると、その通知情報に含まれる進入ポイントP1から上流側に遡る道路が隣接する通知エリアA2に進入する進入ポイントP2を経路探索によって求め、進入ポイントP2の位置情報を含む第2の通知情報を生成する。
また、エージェントAg5は、抽出ポリシーPL1に従って対象車両の抽出処理を実行し、自エリアA5内において進入ポイントP1の上流側に位置する車両C2と車両C5を対象車両として抽出する。
【0061】
なお、この場合、図2の車両C3は進入ポイントP1から遠ざかる別方向のため、車両C4は高速道路を走行しているため、いずれも対象車両として抽出されない。
そして、エージェントAg5は、自エリアA5にある路側通信機を用いて、車両C2と進入C5宛のユニキャストにて第1の通知情報をダウンリンク送信する。
また、エージェントAg5は、進入ポイントP2で接続する通知エリアA2のエージェントAg2に、進入ポイントP2の位置情報を含む第2の通知情報を転送する。
【0062】
なお、車両に通知情報を提供する各エージェントAg6,Ag5は、事故車両C8での交通事故(イベント)の発生時刻から、所定時間以内の通知情報に限り車両に対する通知を行い、当該所定時間を超えた通知情報については破棄する。
古いイベントの通知情報を何時までも車両に通知すると、却ってドライバーに混乱が生じる恐れがあるからである。
【0063】
〔抽出ポリシーの適用例〕
図6〜図8は、前述の抽出ポリシー(図4)の適用例を示す道路線形図である。
図6において、事故車両C0から距離が2km離れた上流側の位置を車両C1が走行しており、その上流側の分岐点の更に上流側を車両C2が走行している。
また、車両C3は事故が発生した道路と下流側で合流する、事故と無関係と考えられる道路を走行している。
【0064】
この場合、図4の抽出ポリシーPLによれば、車両C1は「属性2」と「属性3」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」と「10」であるから、車両C1は優先順位が「9」の対象車両である。
また、車両C2は「属性2」、「属性3」及び「属性8」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」、「10」及び「6」であるから、車両C2は優先順位が「6」の対象車両である。なお、車両C3は該当する属性がないので対象車両ではない。
従って、図6の場合には、エージェント1Aは、車両C2→車両C1の順で第1の通知情報を送信し、車両C3には第1の通知情報を送信しない。
【0065】
図7の例では、事故車両C0から距離が1.5km離れた上流側の位置を車両C1が走行しており、その上流側の分岐点の更に上流側を車両C2が走行している。
また、車両C3は事故が発生した道路と下流側で合流する、事故と無関係と考えられる道路を走行している。図6の例との違いは、車両C2の下流側の分岐点で分岐する分岐路が、図示左側に膨らんだ逆方向代替路となっている点にある。
【0066】
この場合、図4の抽出ポリシーPLによれば、車両C1は「属性2」と「属性3」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」と「10」であるから、車両C1は優先順位が「9」の対象車両である。
また、車両C2は「属性2」、「属性3」及び「属性9」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」、「10」及び「8」であるから、車両C2は優先順位が「8」の対象車両である。なお、車両C3は該当する属性がないので対象車両ではない。
従って、図7の場合にも、エージェント1Aは、車両C2→車両C1の順で第1の通知情報を送信し、車両C3には第1の通知情報を送信しない。
【0067】
図8の例では、事故車両C0は高速道路で事故に遭遇しており、後続の車両C1〜C3が同じ高速道路を走行している。その後続車両C1〜C3のうち、車両C1は事故車両C0から距離が0.5km離れた上流側の位置を走行しており、車両C2は事故車両C0から距離が2km離れた上流側の位置を走行している。
また、車両C3は、分岐点B1にて一般道路へ迂回できる位置を走行しており、車両C4は、分岐点B2にて高速道路へ流入できる位置を走行している。
【0068】
この場合、図4の抽出ポリシーPLによれば、車両C1は「属性1」と「属性3」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「1」と「10」であるから、車両C1は優先順位が「1」の対象車両である。
車両C2は「属性2」と「属性3」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」と「10」であるから、車両C2は優先順位が「9」の対象車両である。
【0069】
車両C3は、「属性2」、「属性3」及び「属性10」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」、「10」及び「7」であるから、車両C3は優先順位が「7」の対象車両である。
また、車両C4は、「属性2」と「属性8」に該当し、それらの優先順位はそれぞれ「9」と「6」であるから、車両C4は優先順位が「6」の対象車両である。
従って、図8の場合には、エージェント1Aは、車両C1→車両C4→車両C3→車両C2の順で第1の通知情報を送信する。
【0070】
〔情報提供装置の効果〕
以上の通り、本実施形態の情報提供装置1(エージェント1A)によれば、抽出ポリシーPL1に含まれるいずれかの属性1〜10に適合する対象車両を抽出して、当該属性1〜10に対応する優先順位を対象車両に付与し、付与された優先順位の順序で対象車両に通知情報を通知するようになっている。
【0071】
このため、抽出ポリシーPL1の属性1〜10とその優先順位を図4のように実情に即して適切に定めておけば、通知情報が不要な車両(例えば、図6及び図7の車両C3)への通知や、迅速な通知が必要な車両(例えば、図6及び図7の車両C2や図8の車両C1,C4)への通知が遅れるのを防止でき、イベントの通知情報を、それを必要とする車両5に確実かつ効率的に提供することができる。
【0072】
〔第1の変形例〕
図9は、対象車両の候補の別の探索方法を示す説明図である。
図9において、距離Rは予め定められた一定距離の半径であり、車両C0は事故車両である。K0は事故車両C0の走行軌跡であり、K2は後続の車両C2の走行軌跡である。
また、車両C2と車両C3は、事故車両C0の走行軌跡K0に沿って走行中であり、車両C4は、車両C2の走行軌跡K2に沿って走行中であるものとする。
【0073】
この第1の変形例では、エージェント1A(対象車両抽出部103)は、事故車両C0についてのイベントを検出すると、まず、所定半径R内の比較的近距離の車両(図9では車両C1)を、すべて通知情報を送信する対象車両の候補に含める。
次に、エージェント1Aは、事故車両C0の走行軌跡K0に沿って走行する一次車両(図9では車両C2と車両C3)のうち、所定距離内或いは所定時間内のものを探索し、これについても対象車両の候補に含める。
【0074】
また、エージェント1Aは、一次車両C2の走行軌跡K2に沿って走行する二次車両(図9では車両C4)のうち、所定距離内或いは所定時間内のものを探索し、これについても通知情報を送信する対象車両の候補に含める。
以下、同様にして、車両の走行軌跡を順次遡って所定のN次車両まで探索し、これについても対象車両の候補に含める。
【0075】
この場合、走行軌跡に乗らない車両(図9の車両C6)については、イベントの発生地点に流入し易い位置にあっても、対象車両の候補から外れることになるが、通知エリアA内の比較的広い範囲を対象とした複雑な経路探索処理を行う必要がないので、イベントの発生地点から上流側に位置する車両を効率よく見つけることができ、処理速度を向上できるという利点がある。
【0076】
〔第2の変形例〕
図10は、対象車両の候補の別の探索方法を示す説明図である。
図10において、中心に沿って破線を付した道路は「幹線道路」であり、破線を付していない道路はそれ以外の「小規模道路」である。
【0077】
この第2の変形例では、エージェント1A(対象車両抽出部103)は、車両C0のイベントを検出すると、小規模道路のリンクを除く幹線道路に対応するリンクのみを対象として、通知エリアA内でイベントの発生位置に流入する経路の探索を行い、その経路に含まれる車両(図10では車両C1,車両C3及び車両C4)を、通知情報を通知する対象車両の候補に含める。
【0078】
このように、対象車両の候補を特定するための経路探索を、幹線道路等の特定種別の道路に限定すれば、通知エリアA内のすべての道路種別について探索処理を行う場合に比べて、演算負荷を大幅に削減することができる。
また、第2の変形例では、エージェント1Aは、求めた経路を一定時間保持しておき、その時間内に経路上に現れた車両についても対象車両の候補に含める。このため、上記の経路探索で対象車両の候補から外れた車両(図10では車両C2と車両C5)であっても、幹線道路に流入した時点で候補に含めることができる。
【0079】
〔第3の変形例〕
図11は、通知エリアAの変形例を示す道路平面図である。
上述の実施形態では、図2に示すように、各エージェントAg1〜Ag9の通知エリアA1〜A9がメッシュエリアとなっていたが、通知エリアは、例えば図11に示すように、丸形の平面形状でかつ互いに重複する部分があってもよい。
【0080】
その他、1つのエージェント1Aの通知エリア(監視単位)Aの例として考えられる態様を纏めると、次の通りである。
1) 2次メッシュ(10km四方)のエリアをエージェントで監視させる。
2) 高速道路と一般道路を別エリアとして別のエージェントで監視させる。
3) 所定のリンク番号の範囲のリンクを1つのエージェントで監視させる。
また、日別や時間帯別で通知エリアAに対する監視の仕方を変化させることもできる。例えば、同じ範囲の1つの通知エリアAを、混雑時には複数のエージェント1Aにて監視させ、それ以外の通常時は1つのエージェント1Aにて監視させることにしてもよい。
【0081】
〔その他の変形例〕
上述の実施形態(変形例を含む。)は例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、エージェント1Aは中央装置4のコンピュータに実装することにしてもよい。この場合、中央装置4が本発明の情報提供装置を構成することになる。実装するコンピュータは、1または複数であってもよい。
【0082】
また、本発明の情報提供装置にインストールするソフトウェアは、必ずしもソフトウェアエージェント1Aでなくてもよく、本発明に必要な各機能を実現するアプリケーションソフトウェアであってもよい。
上述の実施形態では、プローブ車両5を利用したセンシングによって交通事故や道路障害などのイベントを検出しているが、その検出情報に代えて或いはそれに加えて、道路に設置した路側センサ(例えば、画像センサ)によって得られた検出情報を情報提供装置1に送信するようにしてもよい。
【0083】
また、上述の実施形態において、車両5が自車の走行予定経路をプローブ情報に含めてアップリンク送信することにしてもよい。この場合、走行予定経路がイベントの発生地点を経由する車両5については、イベントの影響を被ることがほぼ確実であるから、抽出ポリシーPL1(図4)を適用せずに、第2の通知情報を通知する提供対象と判定することにしてもよい。
なお、この場合、プローブ情報には車両5の出発地と目的地とを含めることにし、走行予定経路の探索を情報提供装置1(エージェント1A)側で行うことにしてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 情報提供装置
2 車載装置
3 路側センサ
4 中央装置
5 プローブ車両
6 路側通信機
101 通信制御部(通知手段、取得手段)
102 情報生成部(生成手段)
103 対象車両抽出部(抽出手段)
104 転送判定部
105 記憶装置(記憶手段)
P1 進入ポイント
P2 進入ポイント
PL1 抽出ポリシー
PL2 転送ポリシー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両通行に支障が生じるイベントの通知情報を車両に提供する情報提供装置であって、
プローブ情報を取得する手段と、
前記イベントの発生を検出して前記通知情報を生成する生成手段と、
情報提供すべき対象車両の属性と、その属性ごとの優先順位を定めた抽出ポリシーを記憶する記憶手段と、
前記プローブ情報により特定した車両のうちから、前記抽出ポリシーに含まれるいずれかの前記属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を前記対象車両に付与する抽出手段と、
付与された前記優先順位の順序で前記対象車両に前記通知情報を通知する通知手段と、
を備えていることを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記抽出ポリシーに含まれるすべての前記属性は、前記イベントの発生地点から上流側に位置する車両を提供対象としている請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記抽出ポリシーの前記属性は、前記イベントの発生地点から所定距離未満に存在する車両を提供対象とする第1属性と、その所定距離以上に存在する車両を提供対象とする第2属性とを含み、前記第1属性の方が前記第2属性よりも優先順位が高く設定されている請求項1又は2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記対象車両が複数の前記属性に適合する場合には、複数の前記属性の優先順位のうちで最も高いものを当該対象車両の優先順位とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記対象車両の抽出を行う候補を、前記イベントに遭遇した車両の走行軌跡に沿う一次車両、この一次車両の走行軌跡に沿う二次車両、及び、以下同様に走行軌跡を用いて探索した所定のN次車両に限定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記抽出手段は、前記対象車両の抽出を行う候補を、幹線道路を走行中の車両に限定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項7】
前記通知情報の通知エリアが互いに隣接するように配置された請求項1に記載の複数の情報提供装置よりなる情報提供システムであって、
各々の前記情報提供装置は、他の前記情報提供装置から前記通知情報を取得する取得手段を更に備えており、
前記通知情報の生成元である前記情報提供装置が、前記イベントの発生地点から上流側に遡る道路が進入する前記通知エリアをカバーする上流側の他装置に、当該通知エリアへの進入ポイントと前記通知情報とを通知することを特徴とする情報提供システム。
【請求項8】
前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置は、通知された前記進入ポイントから上流側に遡る道路が進入する前記通知エリアをカバーする上流側の他装置に、当該通知エリアへの進入ポイントと前記通知情報とを通知する請求項7に記載の情報提供システム。
【請求項9】
前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置は、ホップ数が所定回数以下の前記通知情報、或いは、前記イベントの発生地点から所定距離以下の前記通知情報に限り、他の前記情報提供装置に前記通知情報を通知する請求項8に記載の情報提供システム。
【請求項10】
前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置は、前記イベントの規模や前記イベントが発生した道路種別に応じて、前記所定回数又は前記所定距離を変動させる請求項9に記載の情報提供システム。
【請求項11】
前記情報提供装置は、前記イベントの発生時刻から所定時間以内の前記通知情報に限りその通知を行い、当該所定時間を超えた前記通知情報については破棄する請求項7〜10のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項12】
車両通行に支障が生じるイベントの通知情報を車両に提供する情報提供方法であって、
プローブ情報を取得するステップと、
前記イベントの発生を検出して前記通知情報を生成するステップと、
情報提供すべき対象車両の属性と、その属性ごとの優先順位を定めた抽出ポリシーを記憶する記憶手段を参照して、前記プローブ情報より特定した車両のうちから、前記抽出ポリシーに含まれるいずれかの前記属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を前記対象車両に付与するステップと、
付与された前記優先順位の順序で前記対象車両に前記通知情報を通知するステップと、
を含むことを特徴とする情報提供方法。
【請求項1】
車両通行に支障が生じるイベントの通知情報を車両に提供する情報提供装置であって、
プローブ情報を取得する手段と、
前記イベントの発生を検出して前記通知情報を生成する生成手段と、
情報提供すべき対象車両の属性と、その属性ごとの優先順位を定めた抽出ポリシーを記憶する記憶手段と、
前記プローブ情報により特定した車両のうちから、前記抽出ポリシーに含まれるいずれかの前記属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を前記対象車両に付与する抽出手段と、
付与された前記優先順位の順序で前記対象車両に前記通知情報を通知する通知手段と、
を備えていることを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記抽出ポリシーに含まれるすべての前記属性は、前記イベントの発生地点から上流側に位置する車両を提供対象としている請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記抽出ポリシーの前記属性は、前記イベントの発生地点から所定距離未満に存在する車両を提供対象とする第1属性と、その所定距離以上に存在する車両を提供対象とする第2属性とを含み、前記第1属性の方が前記第2属性よりも優先順位が高く設定されている請求項1又は2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記対象車両が複数の前記属性に適合する場合には、複数の前記属性の優先順位のうちで最も高いものを当該対象車両の優先順位とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記対象車両の抽出を行う候補を、前記イベントに遭遇した車両の走行軌跡に沿う一次車両、この一次車両の走行軌跡に沿う二次車両、及び、以下同様に走行軌跡を用いて探索した所定のN次車両に限定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記抽出手段は、前記対象車両の抽出を行う候補を、幹線道路を走行中の車両に限定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項7】
前記通知情報の通知エリアが互いに隣接するように配置された請求項1に記載の複数の情報提供装置よりなる情報提供システムであって、
各々の前記情報提供装置は、他の前記情報提供装置から前記通知情報を取得する取得手段を更に備えており、
前記通知情報の生成元である前記情報提供装置が、前記イベントの発生地点から上流側に遡る道路が進入する前記通知エリアをカバーする上流側の他装置に、当該通知エリアへの進入ポイントと前記通知情報とを通知することを特徴とする情報提供システム。
【請求項8】
前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置は、通知された前記進入ポイントから上流側に遡る道路が進入する前記通知エリアをカバーする上流側の他装置に、当該通知エリアへの進入ポイントと前記通知情報とを通知する請求項7に記載の情報提供システム。
【請求項9】
前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置は、ホップ数が所定回数以下の前記通知情報、或いは、前記イベントの発生地点から所定距離以下の前記通知情報に限り、他の前記情報提供装置に前記通知情報を通知する請求項8に記載の情報提供システム。
【請求項10】
前記通知情報の生成元でない前記情報提供装置は、前記イベントの規模や前記イベントが発生した道路種別に応じて、前記所定回数又は前記所定距離を変動させる請求項9に記載の情報提供システム。
【請求項11】
前記情報提供装置は、前記イベントの発生時刻から所定時間以内の前記通知情報に限りその通知を行い、当該所定時間を超えた前記通知情報については破棄する請求項7〜10のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項12】
車両通行に支障が生じるイベントの通知情報を車両に提供する情報提供方法であって、
プローブ情報を取得するステップと、
前記イベントの発生を検出して前記通知情報を生成するステップと、
情報提供すべき対象車両の属性と、その属性ごとの優先順位を定めた抽出ポリシーを記憶する記憶手段を参照して、前記プローブ情報より特定した車両のうちから、前記抽出ポリシーに含まれるいずれかの前記属性に適合する対象車両を抽出し、当該属性に対応する優先順位を前記対象車両に付与するステップと、
付与された前記優先順位の順序で前記対象車両に前記通知情報を通知するステップと、
を含むことを特徴とする情報提供方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−185668(P2012−185668A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48158(P2011−48158)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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