説明

情報活用デバイス

【課題】多機能情報端末等の板状物を、それに付着した菌により手術室等の内部が汚染されることがないように密封された状態で使用するための情報活用デバイスを提供する。
【解決手段】多機能情報端末30を挿入するための本体開口部を有する袋であって、多機能情報端末30を収納した時の画面の位置に相当する部分である主面対応部が透明であり、本体開口部付近にそれを密閉するファスナ213が設けられた本体210と、両端が開口する平坦筒状に形成された紙製の部材であって、筒長が前記本体の長さよりも長く、外部開口221aの両縁に、外側に折り返された衿部223が設けられた端末導入部材220とを備える。端末導入部材220を本体210内に挿入した状態で、端末導入部材の外部開口221aから多機能情報端末30を本体210内に挿入し、その後端末導入部材220を本体210から抜き取ることにより、本体210の開口部211に触れることなく多機能情報端末30を収納することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるタブレット型PC(Personal Computer)やスマートフォン等の多機能情報端末等を、該端末等に付着した菌により外部が汚染されることなく清潔に使用できるように、外部から隔離するためのバッグ状のデバイスに関する。本発明は、前記のような電子情報機器のみならず、清潔ではない紙や板状のものを清潔なバッグに収納して使用する際に用いられるデバイス一般(これを、本願では「情報活用デバイス」と呼ぶ。)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多機能情報端末が普及し、様々な分野で使用されている。そのような分野の一つとして、医療分野が挙げられる。例えば、手術の際には通常、複数の医師が関与することから、各医師の手元に一つずつ多機能情報端末を配置し、各端末の画面に、内視鏡等を用いて術野を撮影した画像や術前に撮影したレントゲン写真等を表示し、その画像を見て種々の判断をしながら手術を進める、という使用方法が挙げられる。従来、このような画像は手術室内に設置された1台の大型モニタに表示していたが、その場合には、各医師は術野から大きく視線を外してモニタを見る必要があるため、医師にとって煩わしいうえに、その間、手術の操作が止まってしまうという問題があった。それに対して、上記のように多機能情報端末を用いることにより、術野から大きく視線を外すことなく画像を確認することができるため、医師の負担が軽減されると共に、手術の時間を短縮することができる。
【0003】
通常の状態では、このような多機能情報端末の表面には様々な菌が付着しているため、そのままでは、手術台の上など、手術室内の滅菌環境中に多機能情報端末を持ち込むことができない。また、消毒液等を用いて多機能情報端末を滅菌することは、故障の原因となるためできない。
【0004】
特許文献1には、多機能情報端末(タッチパネル式電子機器)を収納するための収納袋であって、滅菌された外袋及び内袋の二重構造を有する収納袋が記載されている。内袋の開口部の内面には、内袋を密封するためのファスナ(チャック)が設けられている。この収納袋によれば、手術室の外で内袋に多機能情報端末を収納したうえでファスナにより内袋を密封し、該収納袋を手術室に持ち込んだ後に外袋から内袋を取り出すことにより、滅菌された内袋で覆われた状態で多機能情報端末を使用することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3167567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の収納袋では、内袋に多機能情報端末を収納する際に、多機能情報端末に付着していた菌が、内袋のファスナよりも開口部寄りの部分に移るおそれがある。このような部分は、外袋を除去した後にも残り、外部に対して開放された状態にあるため、この部分に付着した菌により手術室内が汚染されてしまう。
このような手術室内の汚染の問題は、多機能情報端末に限らず、サインボードやノート等、手術室内に持ち込むものについて同様に生じる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、多機能情報端末等の板状のものを、それに付着した菌により手術室内を汚染することがないように隔離された状態で使用するための情報活用デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る情報活用デバイスは、多機能情報端末等の板状のものを、該板状物に付着した菌により外部が汚染されることなく清潔に使用できるように外部から隔離するバッグ状のデバイスであって、
a) 板状物を挿入するための開口である本体開口部を有する扁平な形状を有するプラスチックフィルム製のバッグであって、該板状物を収納した時の該板状物の主たる面の位置に相当する部分である主面対応部が透明であり、前記本体開口部付近に該本体開口部を密閉する密閉手段が設けられた本体と、
b) 両端が開口する平坦筒状に形成された紙製の部材であって、筒長が前記本体の本体開口部側の端部と前記密閉手段の間の距離よりも長く、一方の開口の両縁に衿部が設けられた導入部材と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
前記本体は多機能情報端末等の板状物を収納するためのものであるため、その幅(開口の長さ)は板状物の幅よりもやや大きくしておき、深さ(開口から、それに対向する辺までの距離)は該板状物の長さよりもやや大きくしておく。
【0010】
上記において板状物の主たる面(主面)とは、例えばタブレット型PC等の多機能情報端末であればその画面、文書であればその文書が記載された面(両面ある場合にはそのうちの主たる面)等の、板状物を本体に収納した後に外から見たい面のことをいう。
【0011】
導入部材について、「平坦筒状」であるとは、両端の二辺が開口しており、それに直交する二辺が閉じている状態を言い、一枚の長方形の紙を一つの辺に平行な二本の線で折り、その両端を重ねて(接着剤を用いずに)作製したものでもよいし、接着剤等を用いて筒状に形成した紙筒を平坦にしたものでもよい。
【0012】
導入部材の一方の開口の両縁に設けた衿部とは、開口の両縁から突出する部分であって、それを指等で持って、開口よりも外側に開くことができる部分のことである。
【0013】
導入部材の筒長とは、その両開口の間の距離である。導入部材の幅(筒長の方向に直交する方向の長さ)は、前記本体に挿入(収納)しようとする板状物の幅よりもやや大きく、本体の内幅よりもやや小さくしておく。
導入部材の両側部には、本体に収納しようとする板状物の厚さと同程度のマチを設けておくことが望ましい。このマチには縦の折り目を入れておき、板状物を挿入する前、すなわち、本情報活用デバイスを使用する前の保管時等には、本情報活用デバイスの厚さを薄くして、保管効率を上げるようにしておくことが望ましい。このようにマチに縦の折り目を入れる際には、一方の側部のマチは内側に、他方の側部のマチは外側に折れるようにしておくことが望ましい。両方とも内側に折り込むようにすると、内幅が狭くなり、板状物を挿入しにくくなる。マチを外側に折り出すようにしておくと、外部開口(後述)を急激に開いた際にそこから破れやすくなる。従って、後述のように衿部を開く側が予め定められているときは、そちらの側の方のマチを内側に折り込み、他方のマチを外側に折り出すようにしておくことが望ましい。
【0014】
本発明に係る情報活用デバイスを使用する際には、導入部材の衿部が設けられた開口(外部開口)が外になるようにして、他方の開口(内部開口)を本体の、密閉手段よりも中に挿入しておく。望ましくは、導入部材の筒長を十分大きくしておき、その内部開口が本体の底(本体開口部とは反対側の辺)に当接した状態で、外部開口が本体開口部よりも外側に出るようにしておく。
【0015】
導入部材が筒状であることにより、板状物を本体内に挿入する際、板状物が本体の本体開口部側の内面に触れることが防止される。従って、板状物を本体内に挿入した後、導入部材のみを抜き出し、本体開口部を密閉手段で密閉することにより、板状物は完全に清潔な外部から隔離されて本体内に収納され、板状物に付着している細菌等は外部に漏れ出すことがない。
【0016】
また、導入部材に衿部が設けられているため、使用者は板状物を本体内に挿入する際に衿部を把持して外部開口を容易に拡げることができる。
【0017】
さらに、本体がプラスチックフィルム製であるのに対して、導入部材が紙製であるため、それら双方が共にプラスチックフィルム製である場合よりも両者が互いに滑り難くなる。そのため、板状物を本体内に挿入する時に、導入部材が不意に本体から抜けることを防ぐことができる。また、導入部材が紙製であり、適度な剛性を有するため、プラスチックフィルム製の場合よりも、板状物を本体内に挿入する時に前記外部開口が変形し難く、それゆえ挿入しやすい。
【0018】
導入部材の内面の一方又は双方に、外部開口から内部開口に延びる溝を1本又は複数本形成しておくことが望ましい。これにより、板状物を挿入する際、導入部材の内面との接触面においてより滑りやすくなり、スムーズに挿入することができるようになる。
【0019】
板状物を本体内に挿入する向きは、縦向き、横向きのいずれであってもよい。縦向きに挿入する場合には、開口の幅を板状物の短辺よりも長く(望ましくは挿入可能な程度でできるだけ短く)し、横向きに挿入する場合には、開口の幅を板状物の長辺よりも長く(同上)する。
【0020】
本発明に係る情報活用デバイスにおいて、前記衿部は前記導入部材の外側に折り返されていることが望ましい。これにより、該衿部を持つ指等を開口からより遠ざけることができ、清潔性をより確実に保つことができるとともに、導入部材の開口(及び、本体の本体開口部)を外側に向けて開くことが容易となる。
【0021】
本発明に係る情報活用デバイスにおいて、前記導入部材の内部開口の両隅(片隅でもよい)には切欠を設けておくことが望ましい。これにより、導入部材を本体内に挿入する際、内部開口の隅が本体開口部にひっかかることがなくなり(或いは、少なくなり)、挿入しやすくなる。また、前記のように導入部材の筒長を長くして本体の底にまで届くようにしたときは、板状物を本体内に挿入した際に、この切欠を通して、板状物が本体の奥まで挿入されていることを確認することができる。こうして板状物が本体の奥まで挿入されたことを確認した後、導入部材を本体から抜き出し、本体の密閉手段を封じることにより、本体開口部と密閉手段の間の部分に板状物が触れることを確実に防止することができる。
【0022】
本発明に係る情報活用デバイスにおいて、前記導入部材の表裏両面に1本ずつ、外部開口から内部開口に延びる山折り線が形成されていることが望ましい。ここで「山折り」とは、導入部材の筒の外側に山となることを意味する。この構成により、導入部材の外部開口が、その両端及びこれら山折り線を頂点とする菱形状に容易に開口するため、板状物を本体内に挿入しやすくなる。
【0023】
本発明に係る情報活用デバイスにおいて、前記衿部は前記導入部材の該衿部以外の部分とは異なる色に着色されていることが望ましい。導入部材の内側が、衿部を除いて、板状物に付着した菌に汚染されるため、このように着色して衿部の位置を明確にすることにより、手を清潔にした人が触れてもよい部分を容易に視認することができる。
【0024】
本発明に係る情報活用デバイスにおいて、前記導入部材の筒長を前記のようにその内部開口が本体の底に届く程度に長くし、且つ、その衿部を前記のように外側に折り返すとともに、その折り返した部分の長さを前記筒長に、本体底部の貼り代を加えた長さよりも長くしておくという形態をとることができる。こうすることにより、導入部材を挿入した本体の底が机の上等に接するように置いたとき、衿部の先端(折り返し部から遠い方の端)が持ち上げられ、両側の衿部がそれぞれ本体の表面から離れるように外側に開く。これにより、その隙間に指等を入れて、本体を挟みやすくなる。この場合、衿部の根元側(導入部材の外部開口側)の端の近くに外側に山折りしやすい線を形成しておくことが望ましい。これにより、本体のより本体開口部側の近くに指を入れることができるようになり、本体を指等で挟む際に安定した持ち方をすることができる。
【0025】
この場合、衿部の先端の両隅(片隅でもよい)にも前記同様に切欠を設けておくことが望ましい。
【0026】
また、両方の衿部のうち少なくとも一方の衿部の一方の側端には、指等を入れるための切り込みを設けておくことが望ましい。前記のとおり、その位置は、できるだけ上部(本体開口部に近い方)とすることが望ましい。
【0027】
本体については、本発明に係る情報活用デバイスにおいて、前記本体の内面のうち少なくとも前記主面対応部に防曇加工が施されていることが望ましい。これにより、本体内に密封された湿気によって主面対応部が曇って多機能情報端末の画面等が見難くなることを防ぐことができる。
【0028】
また、前記本体の外面のうち少なくとも前記主面対応部に光反射防止加工が施されていることが望ましい。これにより、手術室の照明が主面対応部で反射して多機能情報端末の画面等が見難くなることを防ぐことができる。
【0029】
前記主面対応部はポリエチレンテレフタラート製の外側層とポリエチレン又はポリプロピレンから成る内側層の2層を接着した構造を有し、該外側層の外側表面に光反射防止加工が施され、該内側層の内側表面に防曇加工が施されていることが望ましい。このような2層を有する構造とすることにより、高い強度を得ることができる。また、ポリエチレンテレフタラートは光反射防止加工をし易く、ポリエチレンやポリプロピレンは防曇加工がし易いという特長を有する。なお、外側層と内側層の間には、それらを接着するための接着層が設けられていてもよい。
【0030】
本発明に係る情報活用デバイスは、手術室の外、例えば入院患者や外来患者の居る病棟等において使用することもできる。この場合、外部の環境中の菌が付着することを防ぐために、前記本体の外面に抗菌加工が施されていることが望ましい。
【0031】
なお、上記において、本体に収納する物は板状物であるとして説明を行ってきたが、収納物は、本体に対して十分小さなものであれば、棒状や球形のものであっても構わない。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る情報活用デバイスでは、多機能情報端末等の板状物に付着した菌が収納作業の際に開口部に付着したり、本体内に収納された板状物から菌が外部に漏れ出すことがない。そのため、そのような菌により手術室内が汚染されることが無く、板状物を使用することができる。
【0033】
なお、ここまでに述べた医療現場以外でも、例えば、食品を取り扱う場所、食品等の衛生検査を行う場所、台所や乳児の居る部屋等の家庭内のように、清潔性が求められる場所においても、本発明に係る情報活用デバイスを好適に用いることができる。また、半導体製造工場や精密機械工場等のクリーンルームにおいて、本発明に係る情報活用デバイスを用いることにより、多機能情報端末等の板状物に付着した埃やゴミを飛散させることなく該板状物をクリーンルームに持ち込むことができる、という効果を奏する。
【0034】
逆に、外部が汚染されており、バッグ(本体)内の板状物を清潔に守らねばならない状況の下でも本発明に係る情報活用デバイスを有効に利用することができる。更には、海辺等の屋外や船上等の風雨の影響や強い直射光の影響下、土中等、様々な状況下で用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る情報活用デバイスの一実施例である多機能情報端末清潔隔離デバイスにおける本体の正面図。
【図2】(a)本体の表側フィルムの断面図、及び(b)本体の裏側フィルムの断面図。
【図3】本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイスにおける端末導入部材の正面図。
【図4】本実施例における端末導入部材の展開図。
【図5】本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイスの使用方法を説明するための概略図。
【図6】本体内にタブレット型PC(多機能情報端末)が収納された状態を示す概略図。
【図7】本発明に係る情報活用デバイスの第2の実施例である多機能情報端末清潔隔離デバイスの概略構成図(a)、及び該デバイスにタブレット型PCが横向きに収納された状態を示す概略図(b)。
【図8】本発明に係る情報活用デバイスの第3の実施例である多機能情報端末清潔隔離デバイスの正面図(a)。及び背面図(b)。
【図9】第3実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイスの端末導入部材の展開図(a)、及び溝の断面図(b)。
【図10】第3実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイスの使用方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1〜図6を用いて、本発明に係る情報活用デバイスの第1の実施例である多機能情報端末清潔隔離デバイスを説明する。
【実施例1】
【0037】
本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス100は、本体10と端末導入部材20から成る。本体10は、図1の平面図に示すように、本体開口部11を有するプラスチックフィルム製の袋12に、本体開口部側の端部から距離L1だけ袋の奥側の位置にファスナ(密閉手段)13が設けられたものである。本実施例では、袋12の内部の底からファスナ13までの距離は、使用されるタブレット型PC(多機能情報端末)の長辺よりもやや長くし、袋12の内部の幅はタブレット型PCの短辺よりもやや長くしている。また、これらの長さは、タブレット型PCの長辺や短辺の長さと比較して、あまり余裕を設けないように(余裕はせいぜい数cmと)している。これにより、タブレット型PCの収納(挿入)方向(縦方向)が使用者に明確に分かるようにし、且つ、収納後は袋12の中でタブレット型PCがあまり動かないようにする。
【0038】
袋12は、長方形の角を丸めた形状を有する表側フィルム14と裏側フィルム15の2枚のフィルムを、該長方形の4辺のうちの3辺を貼り代12bとして熱接着させることにより形成されている。ここで、「表側」とは、本体10にタブレット型PCが収納された際に、タブレット型PCの画面が向く側をいう。
【0039】
表側フィルム14は、外側層14aと内側層14bを接着層14cで接着した多層構造を有する(図2(a))。ここで、「外」及び「内」はそれぞれ、袋12の外及び内を指す。本実施例では、外側層14aの材料にはポリエチレンテレフタラートを、内側層14bの材料にはポリエチレンを、接着層14cにはエステル系の接着剤を、それぞれ用いた。外側層14aの外側表面には光拡散加工(アンチグレア加工)14a1が施され、内側層14bの内側表面には防曇加工14b1が施されている。これら各層はいずれも透明であり、表側フィルム14を向いているタブレット型PCの画面を外から視認することができる。
【0040】
なお、接着層14cには、エーテル系の接着剤等、他の接着剤を用いることもできる。また、内側層14bの材料に、ポリエチレンの代わりにポリプロピレン等を用いても、上記と同様の防曇加工を施すことができる。内側層14bの材料がポリプロピレンの場合には、接着層14cの材料にポリエチレンを用いることもできる。この場合、ポリエチレンは外側層14aのポリエチレンテレフタラート及び内側層14bのポリプロピレンよりも融点が低いため、外側層14aと内側層14bの間にポリエチレンのシートを挟み、該ポリエチレンシートのみを熱融解させることにより、外側層14aと内側層14bを接着させることができる。
【0041】
一方、裏側フィルム15は、本実施例では基本的に表側フィルム14と同様に、ポリエチレンテレフタラートから成る外側層15aとポリエチレンから成る内側層15bを有し、外側層15aと内側層15bが接着層15cで接着され、内側層15bの内側表面に防曇加工15b1が施されたものを用いた。但し、表側フィルム14でなされている光拡散加工は、タブレット型PCの画面を向けない裏側フィルム15では不要であるため、省略されている。このように光拡散加工が不要であるため、外側層15aにはポリエチレンテレフタラートの代わりにポリプロピレン等を用いることもできる。
【0042】
なお、表側フィルム14は上記のように光拡散加工が施されているため、裏側フィルム15よりもやや曇っているように見える。そのため、使用者が表側フィルム14と裏側フィルム15を区別すること、すなわち、タブレット型PCの画面を向けるべきフィルムを識別することは比較的容易であるが、表側フィルム14と裏側フィルム15を一目で区別できるように、裏側フィルム15に着色を施したり印を付けてもよい。
【0043】
ファスナ13には、表側フィルム14の内面と裏側フィルム15の内面のいずれか一方にオスが、他方に該オスと対向するようにメスが設けられ、オスとメスを重ねて本体10の外面から押すだけで封止されるものが用いられている。本実施例では、本体10の密閉性をより確実にするため、ファスナ13は2列設けられている。
【0044】
端末導入部材20は、本体10内に収納可能であって且つタブレット型PCが通過可能な幅を有し、長手方向の一方の端に外部開口21aが、他方の端に内部開口21bが設けられた平坦な筒状の部材である(図3)。端末導入部材20の材料は滅菌紙である。外部開口21aと内部開口21bの距離(筒長)は、上記距離L1よりも長いL2である。また、外部開口21a及び内部開口21bはいずれも、長方形のタブレット型PCの短辺が通過可能な大きさを有する。
【0045】
端末導入部材20の外部開口21aの表裏両縁には衿部22が設けられている。衿部22は端末導入部材の筒の外部開口21a側の端において外側に折り返されている。本実施例では、衿部22は外部開口21aから3cm幅で設けられており、外部開口21aの反対側において該開口よりも両端が2cmずつ短くなるように斜めに切り落とされている。
【0046】
端末導入部材20の内部開口21b側の両端には、端末導入部材20を斜めに切り落とした切欠23が設けられている。
【0047】
端末導入部材20を展開した図4に示すように、端末導入部材20は、表側部材20cと、その一方の側部に延設された裏側部材20dと、他方の側部に延設された折り返し部材25と、表側部材20c及び裏側部材20dに設けられた前述の衿部22から成る。表側部材20cの内面に裏側部材20dの内面を重ねるように折り、次に裏側部材20dの外面に折り返し部材25を重ねるように折ることにより端末導入部材20が使用状態に形成される。端末導入部材20の両側部のうちの一方は表側部材20cと裏側部材20dの境界により封じられ、他方は表側部材20cと折り返し部材25の境界により封じられる。
【0048】
端末導入部材20の表側部材20c及び裏側部材20dにはそれぞれ、外部開口21a側の端から内部開口21b側の端まで延びる山折り線24が形成されている。
【0049】
本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス100では、その製造工場において、予め本体10及び端末導入部材20を消毒液や紫外線等を用いて滅菌したうえで、滅菌済みの外袋(図示せず)に梱包した状態で出荷する。その際、衿部22及び外部開口21aが外になるようにして端末導入部材20の内部開口21bを本体10の、ファスナ13よりも中に挿入した状態(図5(a))で梱包しておく。そのため、多機能情報端末清潔隔離デバイス100を使用する際には、本体10及び端末導入部材20を滅菌したり、端末導入部材20を本体10に挿入する作業をする必要はない。なお、滅菌処理や上記挿入の作業は使用者(病院等)が行ってもよい。
【0050】
端末導入部材20には、本体10に挿入した状態において表側フィルム14を向く方の面に、模様を付したり、「タブレット型PCの画面をこの面に向けること」等の説明を記載することが望ましい。これにより、後述のように使用者がタブレット型PCを端末導入部材20及び本体10内に挿入する際に、タブレット型PCの画面を向けるべき方向を容易に知ることができる。
【0051】
図5を用いて、本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス100の使用方法を説明する。まず、手術用手袋を着用すること等により手を清潔にした人が、上記のように梱包された多機能情報端末清潔隔離デバイス100を外袋から出す(図5(a)の正面図)。次に、その人が両手で両衿部22をそれぞれ掴み、両側に引っ張って外部開口21aを開く。これにより、本体開口部11が開かれる。その際、表側部材20c及び裏側部材20dに山折り線24が形成されていること、及び端末導入部材20の材料に比較的剛性の高い紙を用いていることから、外部開口21aは図5(b)の上面図に示すように、ほぼ菱形となる。
【0052】
この状態で、他の人(手を清潔にする必要がない人)がタブレット型PC30を持ち、画面31を表側フィルム14の方に向けた状態で、外部開口21aから端末導入部材20を通して本体10内に該タブレット型PC30を挿入する(図5(c))。その際、タブレット型PC30が切欠23から端末導入部材20の外に出ていることを視認することにより、タブレット型PC30が十分奥まで挿入されていることを確認する。この操作において、端末導入部材20の外部開口21aが本体10の外に出ているため、本体10の本体開口部11はその内側が端末導入部材20で覆われている。これにより、本体開口部11は、タブレット型PC30の挿入時にそれに触れることがなく、タブレット型PC30に付着した菌が手術室内を汚染することが無い。
【0053】
続いて、手を清潔にした上記の人が端末導入部材20を本体10から抜き取る。その際にも、本体開口部11に触れるのは清潔な手、及び滅菌済みの端末導入部材20の外面だけであり、この外面はタブレット型PC30には触れないため、タブレット型PC30に付着した菌が本体開口部11に移ることはない。なお、抜き取った端末導入部材20には菌が付着しているため、手術室の外に搬出するか、あるいは滅菌処理をする等の処置を行う。最後に、手を清潔にした上記の人がファスナ13を閉じる(図6)。これにより、タブレット型PC30に付着した菌が本体10から手術室内に侵入することが防止される。
【0054】
本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス100では、タブレット型PC30を収納した時の画面の位置に相当する表側フィルム14の外面に光拡散加工が施されているため、手術室の照明が表側フィルム14の外面で反射して画面31が見難くなることを防ぐことができる。
【0055】
また、表側フィルム14の内面に防曇加工が施されているため、本体10内の湿気によって該内面が曇って画面31が見難くなることを防ぐことができると共に、タブレット型PC30の故障の原因となる水滴の発生を防ぐことができる。裏側フィルム15の内面の防曇加工は、画面31の見やすさには直接関係しないが、水滴の発生を防ぐことができるという点において意義がある。
【0056】
本発明は上記実施例には限定されない。例えば、表側フィルム14及び裏側フィルム15の外面には抗菌加工が施されていてもよい。このような抗菌加工は、外来患者や入院患者等、多数の患者が居る病棟においてタブレット型PCを使用する際に、タブレット型PCを介して患者間で菌への感染が生じることを防ぐことができる、という利点を有する。
【実施例2】
【0057】
上記第1実施例では、タブレット型PC30を縦向きに本体10内に収納する例を示したが、袋12Aの内部の底からファスナ13Aまでの距離をタブレット型PC30の短辺よりもやや長くし、袋12Aの内部の幅をタブレット型PCの長辺よりもやや長くすることにより、タブレット型PC30を横向きに本体10A内に収納する多機能情報端末清潔隔離デバイス100Aを構成することもできる(第2実施例。図7)。図7では、本第2実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス100Aの構成要素のうち、第1実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス100と同様の構成要素については、各構成要素に付した符号の末尾に「A」を付加して示すことにより、詳細な説明を省略した。例えば、多機能情報端末清潔隔離デバイス100の本体開口部11に相当する多機能情報端末清潔隔離デバイス100Aの本体開口部には「11A」との符号を付した。
【実施例3】
【0058】
本発明の第3実施例である多機能情報端末清潔隔離デバイス200を図8〜図10により説明する。
【0059】
本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス200の基本構造は第1及び第2実施例のそれらと同じであり、本体210と端末導入部材220から成る。本体210は第1実施例の本体10と同じである。端末導入部材220は第1実施例のものとその基本構造は同じであり、本体210内に装入される平坦な筒状の部材221と、その外部開口221aの両側端にそれぞれ延設され、外側に折り返された衿部223から成るが、衿部223は第1実施例のそれよりも長い。すなわち、平坦筒状部材221を、その内部開口221bが本体10の底に当接するまで本体10内に挿入したとき、衿部223の先端が本体10の底側の縁からはみ出す程度の長さとなっている。
【0060】
衿部223の、外部開口221aの縁の近くには、該縁に平行に山折り線(容易に山折りされるように押圧された線)223aが形成されている。また、双方の衿部223の同じ側の縁の上部(本体開口211に近い方)には、弧状の切り込み223bが設けられている。そして、衿部223の先端縁の両側の隅には切欠223cが設けられている。
【0061】
平坦筒状部材221では、その両側縁にマチ221cが設けられている。双方のマチ221cの縦方向中央には折り線が設けられており、本多機能情報端末清潔隔離デバイス200を使用しないときにはこの折り線で折ることにより、本多機能情報端末清潔隔離デバイス200が嵩張らないようになっている。2本のマチ221cの折り込み方向は左右で異なっており、衿部223に弧状の切り込み223bが設けられた側のマチ221c1では内側に折り込まれ、他方のマチ221c2では外側に折り出されている(図8参照)。本実施例の平坦筒状部材221でも、第1実施例の場合と同様、その内部開口221bの両隅には切欠221dが設けられている。
【0062】
図9(a)の展開図に示されるように、平坦筒状部材221の一方の面221eには、外部開口221aから内部開口221bに延びる、幅が約1mmの溝221fが3本設けられている。この溝221fは内面側でエンボス加工により形成されたものであり、内面側で溝、外面側で山となっている。この溝221fは、タブレット型PC30を本体210内に挿入する際に、この平坦筒状部材221の内面との間の滑りを良くするためのものである。溝221fの断面を図9(b)に示す。第1実施例の場合と同様、前記一方の面221eには折り返し部材221gが延設されている。
【0063】
本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス200の使用方法を図10により説明する。まず、手を清潔にした人が片手で両側の衿部223を先端から押し上げ、本体210の底まで持ち上げる。これにより、両側の衿部223が山折り線223aで山折れして開く(a)。次に、切り込み223bが設けられた側の開いた箇所から他方の手を入れ、端末導入部材220の外部開口221aを広げる(b)。この状態で、他の人(手を清潔にする必要がない人)がタブレット型PC30を持ち、外部開口221aから本体210内に挿入する(c)。タブレット型PC30が本体210内に完全に収納されたことは、平坦筒状部材221及び衿部223の下端両側の切欠221d及び223cから覗くタブレット型PC30を見ればわかる(d)。タブレット型PC30が本体210内に完全に収納されたことを確認した後、手の清潔な人が両衿部223を持ち上げ(e)、平坦筒状部材221を本体210内から引き出す(f)。その後、本体210の上部のファスナ213を閉じる。
【0064】
なお、本実施例の端末導入部材220の衿部223の先端部には、図8(a)、(b)に示すように、指の形を表す形状223d、223eが印刷されており、これにより本多機能情報端末清潔隔離デバイス200の使用方法を分かりやすくしているが、これは本発明においては任意である。
【符号の説明】
【0065】
100…多機能情報端末清潔隔離デバイス
10、10A…本体
11、11A…本体開口部
12、12A…袋
12b…貼り代
13、13A…ファスナ
14…表側フィルム
14a…外側層
14a1…光拡散加工(アンチグレア加工)
14b…内側層
14b1、15b1…防曇加工
14c…接着層
15…裏側フィルム
15a…外側層
15b…内側層
20…端末導入部材
20c…表側部材
20d…裏側部材
21a…外部開口
21b…内部開口
22…衿部
23…切欠
24…山折り線
25…折り返し部材
30…タブレット型PC(多機能情報端末)
31…タブレット型PCの画面
200…多機能情報端末清潔隔離デバイス
210…本体
211…本体開口部
220…端末導入部材
221…平坦筒状部材
221a…外部開口
221b…内部開口
221c、221c1、221c2…マチ
221d…切欠
221e…溝形成面
221f…溝
221g…折り返し部材
223…衿部
223a…山折り線
223b…切り込み
223c…切欠
223d、223e…指形状表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 多機能情報端末等の板状物を挿入するための開口である本体開口部を有する扁平な形状を有するプラスチックフィルム製のバッグ状のデバイスであって、該板状物を収納した時の該板状物の主たる面の位置に相当する部分である主面対応部が透明であり、前記本体開口部付近に該本体開口部を密閉する密閉手段が設けられた本体と、
b) 両端が開口する平坦筒状に形成された紙製の部材であって、筒長が前記本体開口部側の端部と前記密閉手段の間の距離よりも長く、一方の開口である外部開口の両縁に衿部が設けられた導入部材と、
を備えることを特徴とする情報活用デバイス。
【請求項2】
前記衿部が前記導入部材の外側に折り返されていることを特徴とする請求項1に記載の情報活用デバイス。
【請求項3】
前記導入部材の両側部にマチが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報活用デバイス。
【請求項4】
前記マチが、一方の側部で外側に折り出され、他方の側部で内側に折り込まれるようになっている請求項3に記載の情報活用デバイス。
【請求項5】
前記導入部材の前記外部開口とは反対側の開口である内部開口の隅に切欠が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の情報活用デバイス。
【請求項6】
前記導入部材の表裏両面に1本ずつ、前記外部開口から前記内部開口に延びる山折り線が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の情報活用デバイス。
【請求項7】
前記衿部が前記導入部材の該衿部以外の部分とは異なる色に着色されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の情報活用デバイス。
【請求項8】
前記導入部材の筒長が前記本体の長さよりも長く、前記衿部が該筒長に前記本体の底部の貼り代を加えた長さよりも長いことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の情報活用デバイス。
【請求項9】
前記衿部の先端の隅に切欠が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の情報活用デバイス。
【請求項10】
前記衿部に、前記外部開口の縁に平行な山折り線が形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の情報活用デバイス。
【請求項11】
前記導入部材の前記本体内の部分である平坦筒状部の内面に、前記外部開口から前記内部開口に延びる溝が設けられていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の情報活用デバイス。
【請求項12】
前記本体の内面のうち少なくとも前記主面対応部に防曇加工が施されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の情報活用デバイス。
【請求項13】
前記本体の外面のうち少なくとも前記主面対応部に光反射防止加工が施されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の情報活用デバイス。
【請求項14】
前記主面対応部がポリエチレンテレフタラート製の外側層とポリエチレン又はポリプロピレンから成る内側層の2層を接着した構造を有し、該外側層の外側表面に光反射防止加工が施され、該内側層の内側表面に防曇加工が施されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の情報活用デバイス。
【請求項15】
前記本体の外面に抗菌加工が施されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の情報活用デバイス。
【請求項16】
a) 物品を挿入するための開口である本体開口部を有する扁平な形状を有するプラスチックフィルム製のバッグ状のデバイスであって、該本体開口部付近に該本体開口部を密閉する密閉手段が設けられた本体と、
b) 両端が開口する平坦筒状に形成された紙製の部材であって、筒長が前記本体開口部側の端部と前記密閉手段の間の距離よりも長く、一方の開口である外部開口の両縁に衿部が設けられた導入部材と、
を備えることを特徴とする物品収納デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−46729(P2013−46729A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250928(P2011−250928)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(511160136)
【出願人】(303001483)スタープラスチック工業株式会社 (3)
【出願人】(500241181)中島工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】