説明

情報表示媒体、印刷装置及び印刷方法

【課題】消色すると、2度と情報を読めなくなる。
【解決手段】経時的に第1及び第2発色状態から第1及び第2消色状態へとそれぞれ色が変化するとともに、第1及び第2機能性インキ14及び16に共通した物理的操作を加えることにより、第1及び第2消色状態から第1及び第2発色状態へとそれぞれ色が変化する第1及び第2機能性インキを用いて下地12上に情報が表示されており、第1及び第2発色状態は、色が互いに区別不能であり、かつ、第1及び第2消色状態は、色が互いに区別不能であって、第1発色状態の第1機能性インキにより、下地上に情報が表示されており、かつ、第1機能性インキの情報表示領域を含む領域に、第2消色状態の第2機能性インキが塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機密保持性に優れた情報表示媒体、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙媒体に印刷された機密情報の漏洩が社会問題化している。この問題を解決するために、紙媒体に印刷された文字等が時間とともに自然に消色する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この技術では、インキとしてロイコ系染料と顕色剤とを利用する。この技術で用いられるインクは、時間とともに自然に色が消色していく特徴を有しており、この特徴を利用することにより、機密情報が自然に消色して判読できなくなる紙媒体が提案されている。
【特許文献1】特開2004−223898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された技術では、消色後に紙媒体を加熱すると、再びインクが発色するため、機密性を確保することが難しかった。
【0005】
また、特許文献1に開示された技術では、紙媒体の種類によっては自然消色完了後のインクの色が完全に透明にはならない場合があった。そのため、消色後であっても、紙媒体に印刷された情報が薄く読めてしまう、つまり情報機密性に欠ける場合があった。
【0006】
この発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものである。従って、この発明の目的は、消色すると、2度と情報を判読できなくなる情報表示媒体、印刷装置及び印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の発明者は、自然消色する性質と、共通の物理的操作を加えることにより発色する性質とを有する機能性インキを用い、発色状態にある第1機能性インキで情報を表示し、この情報を覆って、消色状態にある第1機能性インキと同色の第2機能性インキを塗布した構造の情報表示媒体とすれば上述した課題の解決を図れることに想到した。
【0008】
従って、この発明の情報表示媒体によれば、経時的に第1及び第2発色状態から双方とも透明な第1及び第2消色状態へとそれぞれ色が変化するとともに、第1及び第2機能性インキに共通した物理的操作を加えることにより、第1及び第2消色状態から第1及び第2発色状態へとそれぞれ色が変化する第1及び第2機能性インキを用いて下地上に情報が表示されている。
【0009】
ここで、第1及び第2発色状態にある第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあり、かつ、第1及び第2消色状態にある第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあるものとする。
【0010】
そして、下地の表面領域は、情報表示領域と非情報表示領域とに区画されており、第1機能性インキは、該情報表示領域中に、第1発色状態で設けられており、及び第2機能性インキは、情報表示領域を含む下地上の領域に、第2消色状態で塗布されている。
【0011】
この情報表示媒体において、下地が紙であることが好ましい。
【0012】
この情報表示媒体において、第1及び第2機能性インキが感熱性インキであり、及び物理的操作が加熱であることが好ましい。
【0013】
この情報表示媒体において、第1及び第2機能性インキがロイコ系染料と顕色剤とを主要成分として含むことが好ましい。
【0014】
この情報表示媒体において、第2機能性インキが、第1機能性インキに重畳して、情報表示領域を含む下地上の領域に塗布されていることが好ましい。
【0015】
また、この場合において、第1機能性インキが情報表示領域中で占有する領域を情報印刷領域とするとき、第2機能性インキは、第1及び第2機能性インキのそれぞれが第1及び第2消色状態の場合に、情報の判読を防止できる規則的又は不規則的なパターンで、情報表示領域中に塗布されていることが好ましい。
【0016】
また、第2機能性インキは、情報印刷領域外の、情報表示領域を含む下地上の領域に塗布されていることが好ましい。
【0017】
この発明の印刷装置は、経時的に第1及び第2発色状態から双方とも透明な第1及び第2消色状態へとそれぞれ色が変化するとともに、第1及び第2機能性インキに共通した物理的操作を加えることにより、第1及び第2消色状態から第1及び第2発色状態へとそれぞれ色が変化する第1及び第2機能性インキを用いて下地上に情報を印刷する。
【0018】
ここで、第1及び第2発色状態にある第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあり、かつ、第1及び第2消色状態にある第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあるものとする。
【0019】
また、印刷装置は、下地の表面に区画された情報表示領域中に、第1機能性インキを印刷して前記第1発色状態で設ける第1印刷部と、第2消色状態にある第2機能性インキを、情報表示領域を含む領域に塗布する第2印刷部とを含む。
【0020】
この印刷装置において、第1印刷部が、第1消色状態で第1機能性インキを印刷する印刷手段と、印刷された第1機能性インキを第1発色状態へと変化させる発色手段とを備えていることが好ましい。
【0021】
この印刷装置において、第1及び第2機能性インキとして感熱性インキが用いられており、及び発色手段が加熱手段であることが好ましい。
【0022】
この発明の印刷方法は、経時的に第1及び第2発色状態から双方とも透明な第1及び第2消色状態へとそれぞれ色が変化するとともに、第1及び第2機能性インキに共通した物理的操作を加えることにより、第1及び第2消色状態から第1及び第2発色状態へとそれぞれ色が変化する第1及び第2機能性インキを用いて下地上に情報を印刷するものである。
【0023】
ここで、第1及び第2発色状態にある第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあり、かつ、第1及び第2消色状態にある第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあるものとする。
【0024】
この印刷方法は、下地の表面に区画された情報表示領域中に、第1機能性インキを印刷して第1発色状態で設ける第1印刷工程と、第2消色状態にある第2機能性インキを、情報表示領域を含む領域に塗布する第2印刷工程とを含む。
【0025】
この印刷方法において、第1印刷工程が、第1消色状態で第1機能性インキを印刷する印刷サブ工程と、印刷された第1機能性インキを第1発色状態へと変化させる発色サブ工程とを備えていることが好ましい。
【0026】
この印刷方法において、第1及び第2機能性インキとして感熱性インキが用いられており、及び発色サブ工程において印刷された第1機能性インキを加熱することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
この発明は上述のような構成を有している。従って、この発明の情報表示媒体、印刷装置及び印刷方法によれば、消色すると、2度と情報を判読できなくなる情報表示媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示したものにすぎない。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施の形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0029】
(実施の形態1)
図1〜図3を参照して、実施の形態1の情報表示媒体について説明する。図1(A)は、実施の形態の情報表示媒体の平面図である。図1(B)は、図1(A)のA−A線に沿った切断端面図である。
【0030】
図1(A)及び(B)を参照すると、情報表示媒体10は下地12と、この下地12上に情報を表示している第1機能性インキ14と、第1機能性インキ14の情報表示領域18を含む領域に塗布された第2機能性インキ16とが設けられている。
【0031】
下地12は、図1の例では、好ましくは、例えば平面形状が矩形状の、厚みを有する紙とする。しかし、下地12は、紙には限定されず、プラスチック板、木板、布等、設計に応じた任意好適な材料を選択することができる。
【0032】
下地12の第1主面12aを上面又は単に表面と称する。この下地の表面領域を予め情報表示領域18と非情報表示領域17とに区別してあり、情報表示領域18は、図示はしないが複数個を互いに離間して設けてある。情報表示領域18には、第1発色状態(詳細は後述する。)の第1機能性インキ14により情報が設けられて表示されている。より具体的には、第1機能性インキ14で、文字や図形等のパターンで情報が印刷されている。ここでは、第1機能性インキ14は、ひらがなの「あ」の文字パターンで情報を表示した例として示してある。
【0033】
さらに、下地12の第1主面12a、すなわち表面領域には、第2機能性インキ16が塗布されて設けられている。この第2機能性インキ16は、情報表示領域18と非情報表示領域17との双方に塗布してもよいし、情報表示領域18内のみに塗布してもよい。図示の例では、情報表示領域18及び非情報表示領域17の双方、従って表面領域上の全面には、第1機能性インキ14を覆うように、第2消色状態(詳細は後述する。)の第2機能性インキ16が塗布されている。
【0034】
次に、各機能性インキ14及び16の特徴について詳述する。
【0035】
すなわち、第1機能性インキ14は、基本的には、経時的に第1発色状態から第1消色状態へと発色した色が薄く変化して、最終的には色が消えた状態となるとともに、物理的操作を加えることにより、基本的には、着色していない第1消色状態から発色して可視光で見える色で着色された第1発色状態へとそれぞれ色が変化する特性を有している。
【0036】
第1機能性インキ14の特徴をより詳細に説明すると、第1機能性インキ14は、室温では第1消色状態、すなわち可視光下では透明性が高い状態にある。すなわち、光学媒体である第1機能性インキの層を通す光の透過率が大きい。この場合には、下地12が白色の場合には、第1機能性インキ14で印刷された情報は、その着色の度合いすなわち程度は薄いが、肉眼で目視した場合、その情報を判読できる可能性がある。そこで、この明細書中では、完全に透明となる状態を含め、透明性が高い状態を含めて支障が無い限り「高透明度」又は「透明度が高い」と称する。
【0037】
第1消色状態の第1機能性インキ14は、室温より高い発色温度以上に加熱する物理的操作を加えると、第1発色状態、すなわち可視光で見える色で発色した状態へと変化する。発色による着色の度合いすなわち程度は濃くて、インキの層が不透明か、透明度が低い状態にある。この明細書中では、このような状態を「発色度が高い」又は「着色度が高い」と称する。また、着色の度合いすなわち程度が薄い状態を「発色度が低い」又は「着色度が低い」と称する。
【0038】
また、第1機能性インキ14は、発色させる条件とは異なる物理的条件下で、従って例えば第1発色状態のまま室温下に放置すると、徐々に発色した色が薄くなって、着色度が低下して、第1消色状態(略透明)に変化する特徴を有している。なお、第1発色状態から第1消色状態に変化するのに要する時間は、第1機能性インキ14の組成により調整することができる。
【0039】
第1機能性インキ14は、好ましくは、例えばロイコ系染料と顕色剤とを含む感熱性インキとする。
【0040】
ここで、ロイコ系染料とは、例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフルオロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン等が好適である。
【0041】
また、顕色剤としては、例えば、分子内に、ヒドロキシ芳香族炭化水素基と、エーテル結合と、カルボン酸類とアミン類との塩類とからなる構造を同時に全て有する顕色剤の具体例としては、例えば、第1のヒドロキシ芳香族炭化水素基および第1のエーテル結合の少なくとも何れか一方を有するカルボン酸類と、第2のヒドロキシ芳香族炭化水素基および第2のエーテル結合の少なくとも何れか一方を有するアミン類との塩類から実質的になる物質が好適である。
【0042】
第2機能性インキ16は、経時的に第2発色状態から第2消色状態へと発色した色が薄く変化していくとともに、ある物理条件下で、従って、物理的操作を加えることにより、第2消色状態から第2発色状態へと発色した色が変化して色が濃く、すなわち着色度が高くなる特性を有している。
【0043】
この第2機能性インキ16の特徴をより詳細に説明する。第2機能性インキ16は、室温では第2消色状態、すなわち透明に近い状態である。しかし、室温より高い発色温度以上に加熱する物理的操作を加えると、第2機能性インキ16は、第2発色状態、すなわち不透明か或いは透明度の低い、従って、第2機能性インキ16の層の透過率が小さい状態へと変化する。
【0044】
また、第2機能性インキ16は、第1機能性インキ14と同様に、発色させるための上述の物理的条件下とは異なる物理的条件下で、従って例えば、第2発色状態のまま室温下に放置すると、徐々に発色した色が薄くなって、着色度が低下して、第2消色状態に変化する特性を有している。なお、第2発色状態から第2消色状態に変化するのに要する時間は、第2機能性インキ16の組成により調整することができる。
【0045】
この実施の形態では、第1及び第2機能性インキ14及び16において、第1及び第2発色状態における色は同色すなわちそれぞれ等しいのが好ましい。その場合には、第1及び第2発色状態において、第1及び第2機能性インキ14及び16は、目視では非識別な状態の色を呈する。
【0046】
また、第1及び第2消色状態における色も同色すなわちそれぞれ等しいのが好ましい。その場合には、第1及び第2消色状態において、第1及び第2機能性インキ14及び16は、目視では非識別な状態の色を呈する。
【0047】
発色する色が同色でなくても、目視では第1及び第2機能性インキの層を識別できない状態にあればよい。従って、ここで、「色が等しい」とは、従来周知のL*a*b*色球体内部の点として色を表わした場合に、第1及び第2消色状態に対応する2点間と、第1及び第2発色状態に対応する2点間の色差ΔEがそれぞれ、0.3以下であることを示す。
【0048】
一般に、L*a*b*色球体における2点間の色差ΔEが0.3以下であれば、二つの色は目視で非識別な状態であることが知られている。
【0049】
そこで、この実施の形態では、第1及び第2機能性インキ14及び16として、発色する色が同色の同じ種類の感熱性インキを用いるのが好適であるが、発色する色が同色でなくても両色の色差ΔEが0.3以下となる、互いに異なる種類の感熱性インキを用いてもよい。
【0050】
また、第1及び第2機能性インキ14及び16が、第1及び第2消色状態から第1及び第2発色状態へとそれぞれ変化する温度(以下、単に「発色温度」と称する。)は、互いに等しいのが好ましい。
【0051】
次に、図2(A)〜(C)を参照して、この実施の形態の作用について説明する。図2(A)は、印刷直後の情報表示媒体の様子を模式的に示す平面図である。図2(B)は、図2(A)から所定時間が経過し、第1機能性インキが第1消色状態(略透明)になった時の情報表示媒体の様子を模式的に示す平面図である。図2(C)は、図2(B)に加熱操作を加えた後の情報表示媒体の様子を模式的に示す平面図である。
【0052】
図2(A)を参照すると、印刷直後には、第1発色状態(不透明)の第1機能性インキ14で文字情報としての「あ」文字パターンが下地12の情報表示領域18にパターン層として印刷されている。この場合には、文字パターンは、黒色に着色していて実質的に透明度の低い状態になっている。そして、第1機能性インキ14を覆って、情報表示領域18を含む下地12上の領域、すなわち情報表示領域18と非情報表示領域17との双方の領域には、第2消色状態の第2機能性インキ16が層状に塗布されている。この例では、第2機能性インキ16は下地12の第1主面、すなわち表面領域12aの全面に塗布されている。
【0053】
この場合、第1主面12aの全面に塗布された第2機能性インキ16の層が、着色度が低く、かつ、透明度が高い状態であるため、第1発色状態にある、すなわち透明度の低い第1機能性インキ14の層で下地12上に表示された情報を目視によって、第2機能性インキ16の層を通して下側の第1機能性インキ14の文字パターンの層を認識でき、従って、文字「あ」を判読することが可能である。
【0054】
続いて、図2(B)を参照して、第1機能性インキ14が第1消色状態に変化した場合の情報表示媒体10の様子について説明する。
【0055】
下地12の情報表示領域18において情報を表示している第1発色状態の第1機能性インキ14(点線で区画した領域)の発色している色は、経時的に消色していき、やがて第1消色状態、すなわち着色度が低くかつ透明度が高い状態に変化する。一方、下地12の第1主面12aの全面に塗布されている第2機能性インキ16は、第2消色状態のままである。
【0056】
ところで、第1及び第2機能性インキ14及び16の材料は同一であるので、第1機能性インキ14の第1消色状態と第2機能性インキ16の第2消色状態とは、上述のように色が互いに等しく、しかも低い着色度であってかつ高い透明度であって互いに等しい着色度及び透明度の状態にある。従って、情報表示領域18に第1消色状態の第1機能性インキ14で表示されている情報は、言わば、等しい色の背景、すなわち第2消色状態の第2機能性インキ16が塗布された領域に隠され、目視によって互いに識別できない状態に同化してしまい、丁度、第1機能性インキ14の層が第2機能性インキ16の層でカムフラージュされた状態となり、判読不能となる。
【0057】
続いて、図2(C)を参照して、図2(B)に示した情報表示媒体10が、室温より高い発色温度以上に加熱された場合の例について説明する。
【0058】
第1機能性インキ14が第1消色状態に変化することにより情報が判読不能となった情報表示媒体10(図2(B))に対し、発色温度以上に加熱するという物理的操作が加られたとする。
【0059】
この場合、第1及び第2機能性インキ14及び16の両者が同色で発色する。つまり、第1機能性インキ14が第1発色状態に変化し、及び第2機能性インキ16が第2発色状態に変化する。
【0060】
ところで、第1機能性インキ14の第1発色状態と第2機能性インキ16の第2発色状態とは、上述のように色が等しく、しかも、高い着色度であってかつ低い透明度となっており、互いに等しい着色度及び透明度の状態にある。従って、情報表示領域18に第1機能性インキ14の層で表示されている情報は、言わば、背景としての第2発色状態の第2機能性インキ16の層に同化してしまい、上述した消色状態の場合と同様に、丁度、第1機能性インキ14の層が、第2機能性インキ16の層でカムフラージュされた状態となり、よって、肉眼による目視によっては情報の判読が不能となる。
【0061】
以上をまとめると、この実施の形態の情報表示媒体10は以下の3つの特徴を有している。
【0062】
(1)図2(A)に示すように、印刷直後は、第1機能性インキ14で表示された情報を判読可能である。
【0063】
(2)図2(B)に示すように、所定の時間が経過して、情報を表示している第1機能性インキ14が第1消色状態に変化した後は、情報を形成している文字パターンと、その背景とが同色となるため、文字パターンとしての情報が判読不能となる。
【0064】
(3)図2(C)に示すように、一旦判読不能となった情報表示媒体10(図2(B))を、室温より高い発色温度以上に再度加熱したとしても、第1及び第2機能性インキ14及び16の双方ともが発色するために、文字パターンとその背景とが実質的に同色となるため、文字パターンとしての情報が判読不能となる。
【0065】
このように、この実施の形態の情報表示媒体10は、消色すれば2度と情報を判読することができなくなる。すなわち、加熱により情報を再表示できる従来の情報表示媒体と比較した場合、この実施の形態の情報表示媒体10は、機密保持性が格段に向上している。
【0066】
次に、この実施の形態の情報表示媒体10の変形例について説明する。
【0067】
上述した実施の形態の例では、第1及び第2機能性インキ14及び16として、同じ種類の機能性インキを用いた場合について説明した。しかし、第1及び第2機能性インキ14及び16は、第1及び第2消色状態における色が区別不能であり、かつ、第1及び第2発色状態における色が区別不能であれば、異なる光学性インキを用いてもよい。
【0068】
この実施の形態では、第1及び第2機能性インキ14及び16として、感熱性インキを用いた場合について説明した。しかし、第1及び第2機能性インキ14及び16は、両インキに共通した物理的操作により、消色状態と発色状態とが可逆的に変化するものであれば、感熱性インキには限定されない。
【0069】
例えば、紫外光等の光により発色又は消色をするインキや、圧力により発色又は消色するインキでも良い。
【0070】
この実施の形態では、第2機能性インキ16を、第1機能性インキ14に重畳して、情報表示領域18を含む下地12の第1主面12aの全面に塗布する場合について説明した。
【0071】
しかし、第2機能性インキ16を塗布する領域は、下地12の第1主面12aの全面には限定されない。第1機能性インキ14の消色後、下地12に表示されていた情報が判読不能となるような領域であればよい。
【0072】
例えば、図3(A)に示すように、第2機能性インキ16は、情報表示領域18の内部のみに、第1機能性インキ14に重畳して塗布してもよい。
【0073】
また、例えば、図3(B)に示すように、第2機能性インキ16は、情報表示領域18を含む下地12上の領域に、第1機能性インキ14に重畳して、格子状に規則的に塗布してもよい。
【0074】
また、例えば、図3(C)に示すように、第2機能性インキ16は、情報表示領域18を含む下地12上の領域に、第1機能性インキ14に重畳して、不規則な模様として塗布してもよい。
【0075】
この実施の形態では、第2機能性インキ16を、第1機能性インキ14に重畳して塗布する場合について説明した。
【0076】
しかし、第1機能性インキ14の消色後、下地12に表示されていた情報が判読不能となることを条件として、第2機能性インキ16は、第1機能性インキ14の印刷領域を除いた下地12の領域に塗布してもよい。
【0077】
図4を参照して、この点についてより詳細に説明する。図4は、第2機能性インキ16を第1機能性インキ14の印刷領域外に印刷した様子を模式的に示す、下地12の切断端面図である。
【0078】
図4を参照すると、第1機能性インキ14の層と、第2機能性インキ16の層とは重なり合わない。従って、第1機能性インキ14が第1消色状態に変化した場合に、情報パターンの色(第1機能性インキ14)と、背景の色(第2機能性インキ16)とが完全に等しくなる。よって、このように第2機能性インキ16を塗布した場合、より一層、第1機能性インキ14で表示された情報の機密性が高くなる。
【0079】
(実施の形態2)
図5を参照して、実施の形態2の印刷装置及び印刷方法について説明する。図5は、印刷装置及び印刷方法の説明に供する印刷装置の構成を概略的に示す模式図である。
【0080】
図5を参照すると、この実施の形態の印刷装置50は、第1印刷部52と、第2印刷部54とを主要構成要素として備えている。さらに、印刷装置50は、制御部(図示せず)と搬送手段57を備えている。
【0081】
以下、各構成要素について説明する。
【0082】
第1印刷部52は、さらに印刷手段56と発色手段58とを備えている。
【0083】
印刷手段56は、インクタンク56aと、印刷ヘッド56bとを備えている。印刷手段56は、下地12の搬送方向(図中矢印A)(以下、単に「搬送方向」と称する。)の最上流側に設けられている。
【0084】
インクタンク56aには、第1消色状態の第1機能性インキ14が貯蔵されており、後述する印刷ヘッド56bと接続されている。
【0085】
印刷ヘッド56bは、制御部から送信される情報信号に基づいて、下地12としての紙に、第1消色状態の第1機能性インキ14を用いて情報を印刷する。なお、印刷ヘッド56bには、インクタンク56aから適当量の第1機能性インキ14が絶えず供給されている。
【0086】
発色手段58は、印刷手段56よりも搬送方向の下流側に設けられている。より詳細には、発色手段58は、印刷手段56と、第2印刷部54との間に配置されている。
【0087】
発色手段58は、第1機能性インキ14を発色温度以上の温度に加熱する、言わば加熱ローラである。発色手段58の周面は、搬送される下地の表面と接触しながら、下地の搬送と同期して回転する。
【0088】
第1消色状態の第1機能性インキ14で印刷された情報は、発色手段58により発色温度以上の温度に加熱されることにより、色が第1発色状態へと変化する。これにより下地12に印刷された情報が判読可能となる。
【0089】
以上をまとめると、第1印刷部52は、下地12上に、第1機能性インキ14を第1発色状態で印刷する。
【0090】
第2印刷部54は、発色手段58よりも搬送方向下流側に設けられている。
【0091】
第2印刷部54は、インクタンク54aと印刷ヘッド54bとを備えている。
【0092】
インクタンク54aには、第2消色状態の第2機能性インキ16が貯蔵されており、後述する印刷ヘッド54bと接続されている。
【0093】
印刷ヘッド54bは、制御部から送信される情報信号に基づいて、下地12の情報表示領域18を含む領域に、第2消色状態の第2機能性インキ16を塗布する。つまり、第1印刷部52により判読可能な状態で印刷された情報を覆うように、下地12の第1主面12aの全面に第2消色状態の第2機能性インキ16を塗布する。
【0094】
次に、図5を参照して、印刷装置50の動作として、この実施の形態の印刷方法について説明する。
【0095】
下地12は、搬送手段57により、印刷装置50中を搬送方向に搬送される。
【0096】
(第1印刷工程)
第1印刷工程は、さらに印刷サブ工程と発色サブ工程とに細分化される。
【0097】
印刷サブ工程においては、搬送されてきた下地12には、印刷手段56が、第1機能性インキ14を用いて第1消色状態で情報を印刷する。この段階では、第1機能性インキ14は第1消色状態であるために、下地12に印刷された情報は判読不能である。
【0098】
発色サブ工程は、印刷サブ工程の次に行われる。すなわち、印刷サブ工程を経て、搬送方向に搬送される下地12は、続いて発色手段58に至る。そして、発色手段58の加熱ローラと接触することにより、下地12は、第1機能性インキ14の発色温度以上の温度に加熱される。
【0099】
その結果、第1機能性インキ14は、第1消色状態から第1発色状態へと変化する。これにより、第1機能性インキ14を用いて下地12に印刷された情報は判読可能となる。
【0100】
(第2印刷工程)
第1印刷工程を経た下地12は、搬送方向に搬送されて、第2印刷部54に至る。第2印刷工程では、第2印刷部54により下地12の情報表示領域18を含む領域に、第2消色状態の第2機能性インキ16が塗布される。つまり、第1印刷部52により判読可能な状態で印刷された情報を覆うように、第2消色状態の第2機能性インキ16が塗布される。
【0101】
これにより、図1(A)に示したような情報表示媒体10が得られる。
【0102】
このように、この実施の形態の印刷装置及び印刷方法によれば、消色すれば2度と情報を判読することができなくなる情報表示媒体10を得ることができる。すなわち、加熱により情報を再表示できる従来の情報表示媒体と比較した場合、機密保持性が格段に向上した情報表示媒体10を得ることができる。
【0103】
なお、この実施の形態では、印刷装置(印刷方向)が第1印刷部52(第1印刷工程)と第2印刷部54(第2印刷工程)のみを備えている場合について説明した。特に、インキとしてロイコ系染料を用いる場合には、第1印刷部52(第1印刷工程)と第2印刷部54(第2印刷工程)との間に、第1機能性インキ14の冷却を促進するための冷却手段(冷却工程)等を設けることがより好ましい。
【0104】
このようにすることにより、第1印刷部52(第1印刷工程)の発色手段58(発色サブ工程)で発色温度以上の温度に加熱された第1機能性インキ14を、急速に発色温度未満の温度に冷却することができる。
【0105】
一般に、ロイコ系染料は、発色温度以上への加熱の後、急冷することにより発色がよりスムーズに進行することが知られており、このように冷却手段(冷却工程を設けることにより、第1機能性インキ14の発色をより促進することができる。
【0106】
また、冷却手段(冷却工程)を設けることにより、下地12の温度も低下するので、第2印刷部54(第2印刷工程)で、第2機能性インキ16が誤って発色してしまうというトラブルを未然に防ぐことができる。
【0107】
また、この実施の形態では、第2印刷工程において、第1機能性インキ14に重畳して第2機能性インキ16を印刷する場合について説明した。しかし、第2機能性インキ16の印刷領域を第1機能性インキ14の印刷領域を除く領域としてもよい。
【0108】
この場合には、例えば、制御部は、第1印刷部52に対しては「図」の領域を印刷する指令を出力し、及び、第2印刷部54に対しては「地」の領域を印刷する指令を出力するように構成すればよい。
【0109】
このように構成することにより、実施の形態1の効果の項で既に説明したように、第1及び第2機能性インキ14及び16の両者ともに消色した状態(図2(B))における、情報の判読不能性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】(A)は、実施の形態の情報表示媒体の平面図である。(B)は、(A)のA−A線に沿った切断端面図である。
【図2】(A)は、印刷直後の情報表示媒体の様子を模式的に示す平面図である。(B)は、(A)から所定時間が経過し、第1機能性インキが第1消色状態(略透明)になった時の情報表示媒体の様子を模式的に示す平面図である。(C)は、(B)に加熱操作を加えた後の情報表示媒体の様子を模式的に示す平面図である。
【図3】(A)〜(C)は、実施の形態1の情報表示媒体の変形例を示す図である。
【図4】実施の形態1の情報表示媒体の変形例を示し、第2機能性インキを第1機能性インキの印刷領域外に印刷した様子を模式的に示す、下地の切断端面図である。
【図5】実施の形態2の印刷装置及び印刷方法の説明に供する印刷装置の構成を概略的に示す模式図である。
【符号の説明】
【0111】
10 情報表示媒体
12 下地
12a 第1主面
14 第1機能性インキ
16 第2機能性インキ
17 非情報表示領域
18 情報表示領域
50 印刷装置
52 第1印刷部
54 第2印刷部
56 印刷手段
54a,56a インクタンク
54b,56b 印刷ヘッド
58 発色手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経時的に第1及び第2発色状態から双方とも透明な第1及び第2消色状態へとそれぞれ色が変化するとともに、第1及び第2機能性インキに共通した物理的操作を加えることにより、前記第1及び第2消色状態から前記第1及び第2発色状態へとそれぞれ色が変化する当該第1及び第2機能性インキを用いて下地上に情報が表示されており、
前記第1及び第2発色状態にある前記第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあり、かつ、前記第1及び第2消色状態にある前記第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあり、
前記下地の表面領域は、情報表示領域と非情報表示領域とに区画されており、
前記第1機能性インキは、該情報表示領域中に、前記第1発色状態で設けられており、及び
前記第2機能性インキは、前記情報表示領域を含む前記下地上の領域に、前記第2消色状態で塗布されていることを特徴とする情報表示媒体。
【請求項2】
前記下地が紙であることを特徴とする請求項1に記載の情報表示媒体。
【請求項3】
前記第1及び第2機能性インキが感熱性インキであり、及び前記物理的操作が加熱であることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報表示媒体。
【請求項4】
前記第1及び第2機能性インキがロイコ系染料と顕色剤とを主要成分として含むことを特徴とする請求項3に記載の情報表示媒体。
【請求項5】
前記第2機能性インキは、前記第1機能性インキに重畳して、前記情報表示領域に塗布されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報表示媒体。
【請求項6】
前記第1機能性インキが前記情報表示領域中で占有する領域を情報印刷領域とするとき、
前記第2機能性インキは、前記第1及び第2機能性インキのそれぞれが前記第1及び第2消色状態の場合に、前記情報の判読を防止できる規則的又は不規則的なパターンで、前記情報表示領域中に塗布されていることを特徴とする請求項5に記載の情報表示媒体。
【請求項7】
前記第2機能性インキは、前記情報印刷領域外の、前記情報表示領域を含む前記下地上の領域に塗布されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報表示媒体。
【請求項8】
経時的に第1及び第2発色状態から双方とも透明な第1及び第2消色状態へとそれぞれ色が変化するとともに、第1及び第2機能性インキに共通した物理的操作を加えることにより、前記第1及び第2消色状態から前記第1及び第2発色状態へとそれぞれ色が変化する当該第1及び第2機能性インキを用いて下地上に情報を印刷する印刷装置であって、
前記第1及び第2発色状態にある前記第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあり、かつ、前記第1及び第2消色状態にある前記第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあり、
前記下地の表面領域に区画された情報表示領域中に、前記第1機能性インキを印刷して前記第1発色状態で設ける第1印刷部と、
前記第2消色状態にある前記第2機能性インキを、前記情報表示領域を含む前記下地上の領域に塗布する第2印刷部とを含むことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
前記第1印刷部は、前記第1消色状態の前記第1機能性インキを印刷する印刷手段と、該印刷された前記第1機能性インキを前記第1発色状態へと変化させる発色手段とを備えていることを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記第1及び第2機能性インキを感熱性インキとし、及び前記発色手段を加熱手段とすることを特徴とする請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
経時的に第1及び第2発色状態から双方とも透明な第1及び第2消色状態へとそれぞれ色が変化するとともに、第1及び第2機能性インキに共通した物理的操作を加えることにより、前記第1及び第2消色状態から前記第1及び第2発色状態へとそれぞれ色が変化する当該第1及び第2機能性インキを用いて下地上に情報を印刷する印刷方法であって、
前記第1及び第2発色状態にある前記第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態にあり、かつ、前記第1及び第2消色状態にある前記第1及び第2機能性インキのそれぞれの色は、目視では互いに非識別の状態であって、
前記下地の表面領域に区画された情報表示領域中に、前記第1機能性インキを印刷して前記第1発色状態で設ける第1印刷工程と、
前記第2消色状態にある前記第2機能性インキを、前記情報表示領域を含む領域に塗布する第2印刷工程とを含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項12】
前記第1印刷工程は、前記第1消色状態で前記第1機能性インキを印刷する印刷サブ工程と、該印刷された第1機能性インキを前記第1発色状態へと変化させる発色サブ工程とを備えていることを特徴とする請求項11に記載の印刷方法。
【請求項13】
前記第1及び第2機能性インキとして感熱性インキを用い、及び前記発色サブ工程において前記印刷された第1機能性インキを加熱することを特徴とする請求項12に記載の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−30107(P2010−30107A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193584(P2008−193584)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】