説明

情報表示方法およびその装置

【課題】 従来の情報表示装置にあっては、情報表示装置前面に配置された照度検出器で計測される照度値のみに基づいて、視認性に影響を及ぼさない表示輝度となるように調光制御しているので、無駄に必要以上の高い発光輝度で点灯し電力が浪費するといった問題があった。
【解決手段】 情報表示装置の緯度経度情報と表示面の方位を含む設置位置情報と情報表示装置の表示面に対する太陽の位置情報並びに計測した情報表示装置前面の照度値を基に表示面における反射輝度を求め、求めた反射輝度により判読に必要となるコントラストを確保できる点灯輝度値で表示を行うようにしたことを特徴とする情報表示方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示装置に対する太陽の照射位置と太陽の照射に対する表示面の反射特性と、そのときの外周照度を考慮してリアルタイムに表示輝度を制御することで省エネ化を図った情報表示方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードなど自発光素子を光源とする屋外に使用する情報表示装置、例えば、発光ダイオードを用いた道路情報表示装置において太陽光が表示面に照射されると、該表示面に配置されている発光ダイオードによる反射光が増大し、点灯している発光ダイオード(点灯部位)と消灯している発光ダイオード(背景部位)とのコントラストが低下することによって、表示している文字や図柄が見えにくくなることが知られている。
【0003】
そこで、視認性の改善を図る情報表示装置として、特開平7−64499号公報の発明がある。この発明は表示板の表裏に照度計を配置し、表示板の前面側と後面側の光量に差が生じた場合に、高い照度値を示した照度計によって表示板における発光ダイオードの表示輝度を決定し制御するというものである。
【0004】
また、特定方向からの太陽照射に対応する提案として、実公平8−7429号公報の技術がある。この考案は、情報表示装置における多数の発光ダイオードが配置される表示板の前面に周囲の明るさを検出する照度計によって表示面の照度が一定値以上となったこと、および、ソーラーダイヤル型タイムスイッチであるプログラムタイマにより日の出後や日没前の時間帯を検出したことで、発光ダイオードの輝度調整を行う発光ダイオード制御手段によって発光ダイオードの発光出力を高めて、表示板前面に太陽光よりの直射光が入射しても、常に表示内容を明確に視認することができるというものである。
【0005】
また、特開2001−117536号公報では、前記2件の提案をさらに発展させ、照度計実装用に太陽光入射穴を設け、太陽の照射方向を識別する複数の照度計を実装する方式が提案されている。
【0006】
以上、情報表示装置に関連する特許文献3件を示したが、これら輝度調光制御に関する提案は、何れも照度計により周囲の明るさを検出する方式が主体であり、照度計の照度に着目し、その照度値の検出方法に工夫が施されているのが特徴である。しかしながら、基本的な動作は、得られた照度値の大小に相関させて、表示輝度を増減させている点では変わらない。
【0007】
ここで、従来の表示輝度の制御の問題を明らかにするために、発明者らが計測した実験データを示す。愛知県海部郡美和町内(北緯35度12分、東経136度47分)で、南南東に向けて設置された情報表示装置において、概ね真正面から太陽光が照射される時刻における表示面の未点灯部位の反射輝度と、その際の照度値を計測したデータの一部である。
【0008】
<計測事例1>
計測時刻 : 2005年3月2日(水) 10時45分
反射輝度 : 1125[cd/m
照度 : 64300[lx]
太陽方位 : 真南より東方向に27.95度
太陽高度 : 43.28度
【0009】
<計測事例2>
計測時刻 : 2005年3月24日(木) 10時55分
反射輝度 : 1047[cd/m
照度 : 70120[lx]
太陽方位 : 真南より東方向に27.41度
太陽高度 : 52.75度
【0010】
この計測データは、共に晴れた日に測定されたものであるが、事例1の3月2日は薄曇りであったため、照度値が若干低い値となっている。
【0011】
一般的に、照度計の照度値は、光源の照射角αに対して余弦相関、つまり、C
osαを掛けた値となる。つまり、光源を正面方向(0°)から照射した場合を100%とすると、斜め60度方向から照射した場合には、Cos60°=0.5となり、同一光源の場合に正面方向と相対して50%の照度値を示すことになる。
【0012】
ここで、前記の事例1と事例2では、太陽照射角の大きい事例2が小さい照度値を通常は示すが、前記で述べたように、薄曇りの影響により事例1の照度値が低く計測された。
【0013】
ここで、この2つの計測データは、表示面に届く光量を示す照度値と、表示面の明るさを示す反射輝度が相関しない重要な事実を示している。事例1よりも事例2が高い照度値を示しているにも関わらず、事例1より事例2が低い反射輝度となっている。
【0014】
従来の情報表示装置は、周囲の明るさである光量に連動して表示輝度制御を行っているため、事例1よりも照度値の高い事例2の条件の方が、より高い輝度で点灯制御を行うこととなる。
【0015】
一般に、視認性の評価にコントラストを用いることがある。コントラストには算出方法により様々なコントラストがあるが、
コントラスト = 明るい部位 ÷ 暗い部位
によって算出するのが一般的に用いられている。
【0016】
ここでいう暗い部位とは、発光素子が点灯しないところの背景部位であり、太陽光の照射の反射によって起こる反射輝度を持つ。反射輝度とは、表示面から観測者に向けて発光される光量である。つまり、その表示面に照射される太陽光の強さと、表示面に対する光の照射角度に相関する反射特性の乗算によって定まるものである。なお、明るい部位とは、表示によって発光素子が点灯する部分を示すもので、調光制御によって定まる発光輝度に前述の太陽光の反射輝度の和が表示輝度となる。
【0017】
従来の調光制御方法によれば、事例1は、反射輝度が高いので背景部位(暗い部位)の輝度が高いが照度値が低いので発光輝度(明るい部位)は低くなる。逆に、事例2は、反射輝度が低く、表示輝度が高くなる。つまり、事例1より事例2が、より高いコントラストで表示されることは明らかであり、双方の視認性が異なることとなる。
【0018】
発明者らは、このような状況が起こる原因として太陽高度の違いによる反射輝度の変化に着目し、情報表示装置の表示面の太陽照射角度と反射輝度の関係が影響しているのではないかと考え、表示面の太陽照射角度と正面反射輝度の関係を、暗室にて擬似太陽光装置を用いて精密に計測した。
【0019】
図1は、計測結果のグラフである。この計測は、照射量が固定された擬似太陽光源を用いているので、単純に反射輝度を比較すれば、反射特性を知ることができる。グラフによれば事例2の太陽高度52.75度と比較して事例1の太陽高度43.28度のほうが、約1.17倍だけ反射輝度が高いことがわかる。つまり、太陽照射角の差によって、1.17倍の反射輝度の差を生じていることが予想される。
【0020】
ここで、事例2を基準に考え、仮説が正しいか検証する。事例2の照度値70120[lx]と事例1の照度値64300[lx]を比較すると、薄曇りの影響などで0.917倍である。正面反射輝度の特性は、前記したように太陽照射角の関係で約1.17倍高くなる。つまり、0.917×1.17=1.073となり、事例2で計測された反射輝度値1047[cd/m
を1.073倍して、事例1で計測された反射輝度値になれば太陽照射角と反射輝度の相関関係の重要性を証明することになる。1047×1.073=1123である。事例1での計測値は、1125[cd/m]であり、おおむね同様の値となり、相関関係を証明できた。
【0021】
この計測検証により、太陽光の照射角の違いによって表示面の反射輝度は影響を受け、コントラストの違いが生じるにも拘らず、従来の調光制御方法では太陽の照射角が考慮されていない点に問題があることが立証された。
【0022】
発明者らは、従来の調光制御に表示面の反射輝度、すなわち太陽照射角が考慮されていない点に疑問を感じ、コントラストと視認性の関係について引き続き調査した。
【0023】
図2は、コントラストと視認性の関係を示すグラフである。視認性評価の基準は、提示した文字の判読距離を用いた。このグラフから、コントラストの上昇に伴い、視距離も向上するが、コントラストが7を超えた辺りから、視距離が最大一定となり、いくらコントラストを上げても視距離が向上しないことがわかった。これはつまり、被験者の視力で判読できる最大限の距離を示している。例えば、視力1.0の被験者が、いくらコントラストが高くなったからといって視力2.0の人並みに判読距離が伸びることがないことからも理解できる。
【0024】
発明者らは、図2に示した計測グラフから、従来の調光制御方法が問題視されなかった理由を推測した。つまり、反射輝度の増減に対して最低限必要なコントラストを確保できれば、最大限の判読距離が常に確保できる。したがって、より高い発光輝度によって点灯制御を行えば、反射輝度の変化に影響されず高いコントラストが得られるため、視認性への影響が無く、常に高輝度で表示することが問題視されなかったと考えられる。つまり、高輝度表示により最大限の視距離が確保されているので、情報表示装置としての役目は満足され、問題にならなかったと推測できる。
【0025】
前記に挙げた3件の特許文献は、何れも朝日や夕日などの時間帯に太陽照射により反射輝度が増大してしまい、必要最低限のコントラストが確保できない場合を検出するものであり、視認性に支障が出る状況に点灯輝度を増大することに主眼を置いたものである。つまり、全ての時間帯の最適調光制御を目指したものではないことがわかる。
【0026】
図2に示したグラフより、視認性には、最低限必要なコントラストが確保できればよいことになるが、コントラストを算出するには反射輝度を知る必要があり、反射輝度は表示面と太陽照射角の関係を知らなければ算出できない。つまり、従来の照度値のみによる調光制御方式は、太陽照射角や表示面の反射特性を考慮していないので、照度値から反射輝度の相関関係を導き出すことができないため、最低限必要な点灯輝度を最低限必要なコントラストによって導き出し、常に省エネルギーを配慮した最適調光制御が行えない。
【特許文献1】特開平7−64499号公報
【特許文献2】実公平8−7492号公報
【特許文献3】特開2001−117536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
前記したように、従来の情報表示装置にあっては、周囲の明るさを照度計によって検出し、その照度値により発光輝度を増減させる調光制御が行われてきたが、発明者らの一連の実験検証によって、必要最小限のコントラストが確保されれば、最大限の判読距離が確保されることが証明され、コントラストを考慮した調光制御が省エネルギーに貢献できる方式であることがわかった。コントラストを考慮するには、表示面における未点灯部位の反射輝度を知る必要があり、反射輝度を知るには、表示面への太陽照射角と表示面の反射特性が必要である。
【0028】
しかしながら、従来の情報表示装置にあっては、太陽照射角や反射特性が考慮されておらず、単に表示面に照射される光量である照度のみで調光制御が行われたためコントラストを考慮することが不可能であった。つまり、照度値に一意に委ねられた制御形態であり、同じ照度値が計測されれば同じ点灯輝度で制御される。一方、情報表示装置にあっては、常に充分な視認性を確保することが重要視されるため、同じ照度値の場合において最も視認性が悪くなる条件に配慮し、照度値と点灯輝度の制御変換設定がされるのが一般的であった。ゆえに、ほとんどの場合において、必要以上により高い表示輝度で点灯し、判読には充分過ぎる高コントラストであっても視認性に影響を及ぼさなかったために問題視されなかったが、高い表示輝度で点灯するために電力を無駄に消費している点において問題があった。
【0029】
本発明は、前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、表示面に当たる光の量である照度値だけでなく、その光の照射される方向を太陽光と表示面の位置関係を予め記憶あるいは演算によって求め、予め設定した視認性に支障の無いコントラスト以下にならない発光輝度で点灯して最大限の省エネを図った情報表示方法およびその装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明に係る情報表示方法は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、情報表示装置の設置場所と表示面の方位を含む設置位置情報と情報表示装置の表示面に対する太陽の位置情報並びに計測した情報表示装置前面の照度値を基に表示面における反射輝度を求め、求めた反射輝度により判読に必要となるコントラストを確保できる点灯輝度値で表示を行うようにしたことを特徴とする。
【0031】
請求項2の手段は、前記した請求項1の手段において、前記設置位置情報に、予め計測された地形情報より求めたビルや山等の影になる時間帯情報が含まれていることを特徴とする。
【0032】
また、情報表示装置に係る請求項3の手段は、正確な時刻情報を取得する時刻取得部と、時刻と太陽位置および表示面の反射輝度予測値との相関関係を予め設置位置情報としての設置場所および表示面の方位や高度よりデータ化したデータベースと、情報表示装置前面の照度値を検出する照度検出器と、前記時刻取得部と前記データベースおよび照度検出器よりの照度値とから表示面での反射輝度予測値を算出する反射輝度演算部と、該反射輝度演算部よりの反射輝度予測値から、判読に必要となるコントラストになる点灯輝度を算出する点灯輝度演算部と、該点灯輝度演算部よりの点灯輝度値により表示素子を調光する点灯制御部とから構成したものである。
【0033】
請求項4の手段は、前記した請求項3において、前記天空演算部に、予め計測された地形情報より求めたビルや山等の影になる時間帯情報を与え、天空演算部よりの太陽位置情報出力をゼロとなし、前記反射輝度演算部は前記照度検出器よりの照度により反射輝度予測値を算出し、前記点灯制御部は前記反射輝度予測値に基づいて表示素子を調光することを特徴とする。
【0034】
請求項5の手段は、前記した請求項3もしくは請求項4において、前記点灯制御部は総点灯時間を記憶して経年変化による表示素子の劣化と、表示面が粉塵等によって汚れて反射輝度特性が変化する情報をデータ化し、該データに基づいて表示素子への出力を増加するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明の情報表示方法および情報表示装置によれば、情報表示装置の設置に関する設置場所および表示面の方位や高度等の設置位置情報を考慮し、太陽の位置情報から表示面への太陽照射角と反射特性情報によって快晴時の反射輝度を想定算出し、前記情報表示装置に取付けた照度検出器の照度値により表示面の反射輝度を想定算出し、表示情報の判読に必要なコントラストを確保できる点灯輝度値によって表示するようにしたので、視認性を損なわず最大限の省エネ化を図ることが可能であり、かつ、表示素子に対して過負荷となる高電圧や高電流を印加する必要がないので表示素子の長寿命化を図ることができる。
【0036】
また、情報表示装置が設置される周囲環境の3次元情報を保持することによって、ビルや山の影によって表示面に太陽照射されない時間帯を演算によって特定できるようにしたので、前記情報表示装置に取付けた照度検出器の照度値によって容易に表示面の反射輝度を算出することができ、表示情報の判読に必要なコントラストを確保できる点灯輝度値によって表示するようにしたので、視認性を損なわず最大限の省エネ化を図ることが可能であり、かつ、表示素子に対して過負荷となる高電圧や高電流を印加する必要がないので表示素子の長寿命化を図ることができる。
【0037】
さらに、経年劣化データベースを持ち、運用開始からの経過日数情報を管理し経年劣化を把握する機能を実装し、レンズの変色や排気ガス、粉塵等の汚れによって表示面が経年劣化することも考慮して表示素子の輝度を補正制御するようにしたので、常に、良好な視認性を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
太陽の位置と情報表示装置の位置と外周の照度に基づいて表示面の反射輝度を演算予測し、表示内容の判読に必要な点灯輝度によって表示素子の制御を行うものである。
【実施例1】
【0039】
本発明に係る情報表示方法およびその装置の基本的な概念について説明するに、太陽照射による表示面の反射輝度を知ること、つまり、太陽位置と表示面の照射方向と高度、および表示面の反射特性を把握することができれば実現可能である。
【0040】
天空上の太陽位置は、正確な時刻と情報表示装置の設置された場所の緯度経度などの設置場所を表す情報を得ることができれば、天文学的に算出が可能である。また、情報表示装置が、どの方角にどの様な角度で設置されているかを知ることができれば、演算によって表示面に対する太陽照射角は、算出が可能である。つまり、情報表示装置に設置位置情報として、設置場所および表示面の方位情報を保持し、正確な時刻と天文学的な演算を行う処理部を持てば解決できる。また、予めこれら情報を演算し、各時刻における太陽位置と表示面の関係をデータベース化して保持してもよい。ここで重要な点は、演算に際して、情報表示装置の地球上の設置場所を表す情報と表示面の方位に関する情報を用いる点である。ただし、地球上の設置場所を表す情報は設置場所の誤差の無い緯度経度情報に限定されるものではなく、地図上で読み取れる範囲のおおよその緯度経度や情報表示装置を設置した町や市の緯度経度であってもよく、その表現形式についても「何度何分」に限定されるものではなく、地図を細分化したブロックで表現するなど種々の方法によって設置場所を特定することが可能である。
【0041】
表示面の反射特性は、暗室において、予め擬似太陽光源を用いて様々な角度から照射した際の反射輝度を計測し、反射特性データとして保持しておけばよい。情報表示装置の表示素子は、その用途によって様々な種類が存在する。したがって、全ての種類の計測データを集め、データベース化しておけば、同一種の表示素子を用いる場合に容易にデータ設定が可能となる。
【0042】
以下、本発明に係る情報表示装置の第1の実施例を図3と共に説明する。
1は電波時計や時報等によって校正され、正確な時刻情報を取得する時刻取得部、2は該時刻取得部1より得られた正確な現在時刻から太陽位置を天文学的演算により算出する天空演算部、3および4はデータベースで、3は情報表示装置が設置された緯度経度や表示面の方位角や表示面の傾斜角および走行中のドライバーが表示面を見るであろう視認位置情報などの設置位置情報が記憶されている設置環境データ記憶部、4は情報表示装置の表示面に対する太陽位置と視認位置より観測される反射輝度特性をデータ化して記憶されている表示面反射特性データ記憶部である。5は情報表示装置の周囲環境照度(晴天、曇り等)を検出する照度検出器、6は前記天空演算部2よりの太陽位置と前記設置環境データ記憶部3と前記表示面反射特性データ記憶部4および照度検出器5で検出した照度値より現在における表示面の反射輝度の予測値を算出する反射輝度演算部、7は予め設定した判読に必要となるコントラスト値を設定記憶すると共に反射輝度演算部6より算出された反射輝度より設定されたコントラストになる点灯輝度を算出する点灯輝度演算部、8は点灯輝度演算部で演算された指定点灯輝度値で情報表示装置の発光ダイオード等の表示素子9を点灯制御する点灯制御部である。
【0043】
次に、前記した構成に基づいて動作を説明するに、先ず、時刻取得部1において正確な現在時刻が天空演算部2に送られ、この現在時刻、および設置環境データ記憶部3に記憶された情報表示装置の設置された緯度経度情報より現在の太陽位置が演算され、太陽の方角と高度が反射輝度演算部6に出力される。そして、設置環境データ記憶部3に記憶された情報表示装置の表示面方位、表示面の傾斜角、視認位置情報が与えられ、かつ、表示面反射特性データ記憶部4から表示面の反射特性が反射輝度演算部6に与えられているので、該反射輝度演算部6において太陽光と表示面の角度関係を算出すると共に、反射輝度予想値を算出する。
【0044】
次いで、照度検出器5で検出した照度が予め設定した照度以下(快晴時を考慮した照度以下)を検知している場合には、雲の影響によって反射輝度が低下していることになるため、反射輝度演算部6は検出した照度値に応じて反射輝度予想値に補正演算を行う。点灯輝度演算部7は入力された反射輝度想定値に従って指定コントラストになる点灯輝度を算出して点灯制御部8に指定された点灯輝度に調光する出力を送出する。ここで、点灯制御部8は指定された点灯輝度により表示素子9を点灯制御する。
【0045】
前記に説明した本発明の構成に基づいた動作は、常時動作するものである。従って、時刻の経過に従って前記天空演算部2よりの太陽位置情報によって太陽の方角および高度が変化したとすると、反射輝度演算部6よりの反射輝度予測値が変化するので、点灯輝度演算部7よりの点灯輝度値が変わり点灯制御部8は表示素子9の輝度値を低下あるいは上昇させるように調光する。また、照度検出器5で雲の影響を常時検出しているので、急な太陽光変化にも追従可能である。
【0046】
これにより、予め設定されている視認位置から見て判読に必要となるコントラストを確保できる輝度値で表示素子9を点灯することで、従来のように高輝度で長時間点灯する方法に比べ消費電力を小さくして省エネ化を図ることができる。
【実施例2】
【0047】
次に、図4に示す第2の実施例について説明する。なお、前記した図3と同一符号は同一回路ブロックを示し説明は省略する。
この第2の実施例は、前記した第1の実施例の構成の一部を通信手段で管理事務所に接続し、管理事務所で多数の情報表示装置を一括して制御する場合の実施例である。
【0048】
この実施例では設置環境データ記憶部3、表示面反射特性データ記憶部4に入力するデータは予め道路上に情報表示装置を設置する時点で判ることであるので反射輝度演算部6までを管理事務所で一括管理できる。一方、個々の情報表示装置の設置された周囲の照度値を検出する照度検出器は設置現場に取付けなければならないので、反射輝度補正演算部10に接続すると共に反射輝度演算部6よりの快晴時反射輝度想定値出力を入力するようにした。
【0049】
そして、反射輝度補正演算部10において照度検出器5よりの照度値より天候を判別し、晴天時反射輝度想定値を補正し現在の反射輝度を予測して点灯輝度演算部7に送出することで、反射輝度に応じた輝度で表示素子9を制御するので、前記した第1の実施例と同様に十分な視認性を確保しながらも省エネ化を図ることができ、しかも、反射輝度演算部6までを管理事務所において集約することができるので効率の向上も図ることができる。
【実施例3】
【0050】
ところで、情報表示装置の設置場所によっては時間帯によってビルや山の影が情報表示装置にかかり太陽直射光の影響が無い場合があり、また、表示素子9が経年変化によって点灯輝度が劣化し、さらに、粉塵等による表示面の汚れが原因で反射輝度特性が変化する場合がある。
【0051】
そこで、第3の実施例では表示素子9の輝度制御を前記した影情報や経年変化を考慮して行うようにした。図5において、前記した実施例と同一符号は同一回路ブロックを示し説明は省略する。11および12はデータベースで、11は三次元シミュレーション等によって情報表示装置が設置された周囲のビルや山等の影によって情報表示装置に太陽光が照射されないところの年間にわたる時間帯情報を記憶した影情報データ記憶部、12は表示素子9の経年変化によって生じる輝度劣化および表示面が粉塵等によって汚れて反射輝度特性が変化する情報を記憶した経年劣化データ記憶部である。なお、点灯制御部8では情報表示装置の設置からの経年時間や表示面を点灯した総点灯時間を記憶する経年時間総点灯時間記憶部が内蔵されている。
【0052】
次に、第3の実施例の動作について説明するに、時刻取得部1より現在時刻が出力されても天空演算部2には影情報データ記憶部11より情報表示装置の表示面にビルや山等の影がかかっている時間帯の場合には情報が入力されているので、天空演算部2からは太陽位置情報はゼロとなっている。従って、表示面反射特性データは照度検出器5が検出した周囲光による表示面反射特性データを用いて反射輝度演算部6において反射輝度予測値を算出して表示素子9の輝度制御を行う。
【0053】
また、点灯制御部8では、総点灯時間が記憶され経年変化による表示素子9の輝度値低下および粉塵等による表示面の汚れを原因とする反射輝度特性の変化を予測し、これらの原因による輝度値低下に対応した電圧電流を増加して表示素子9に印加して前記原因による変化が生じる以前のコントラストとなるように制御することで、確実なる視認性を確保することができる。
【0054】
なお、前記の第3の実施例については、影の影響を考慮した処理と経年変化を考慮した処理は、個々に独立したものであり、設置状況に応じて随時採用すればよい。例えば、平原に設置された情報表示板は影の影響が無いので、影を考慮した処理は不要である。
【実施例4】
【0055】
前記した第1〜3の実施例においては、現在時刻より太陽位置を求め情報表示装置の設置情報より、太陽光と表示面の照射角関係を毎回算出し、反射特性データより反射輝度予測値を毎回算出するものであったが、予め算出しデータベース化することで情報表示装置の演算を簡略化することが可能である。
【0056】
そこで、図6に示した実施例4では時刻と太陽位置、照度検出器5による照度値と、反射輝度予測値の相関関係をデータベース化して相関関係データ記憶部13として保存する。このように相関関係データとして、予め各時間における太陽光と表示面の照射角関係を算出して反射特性と合わせてデータベース化し、時間から直接の参照によって反射輝度予測値を得ることにより、照度検出器5からの照度値によって天候による影響を考慮し、データベースから得た反射輝度予測値を補正して最適なコントラストで表示素子9を制御することが可能となり、導入時にデータベースを構築する手間が掛かるが、第1の実施例よりも簡単な回路構成で実行することができる。
【実施例5】
【0057】
図7に示した第5の実施例は、前記した第4の実施例における点灯制御部8と表示素子9とを情報表示装置側に配置すると共に照度検出器5よりの照度情報を反射輝度演算部6に戻すように構成したものである。このように、各情報表示装置よりの照度値を得た管理事務所に設置された制御装置は、情報表示装置毎に反射輝度予測値を演算し、点灯輝度値を情報表示装置に制御指示する構成であるので、制御装置側の構成は複雑になるが、情報表示装置は従来方式に照度値を伝送する変更と、制御指示された点灯輝度で点灯制御を行うよう変更する簡単な改造のみでよく、従って、全体の設備費の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】情報表示装置の表示面に対する太陽光の照射方向と正面反射輝度の関係を計測したグラフである。
【図2】情報表示装置の輝度コントラストと判読距離の関係を計測したグラフである。
【図3】本発明に係る情報表示装置の第1の実施例を示す回路ブロック図である。
【図4】第2の実施例の回路ブロック図である。
【図5】第3の実施例の回路ブロック図である。
【図6】第4の実施例の回路ブロック図である。
【図7】第5の実施例の回路ブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
1 時刻取得部
2 天空演算部
3 設置環境データ記憶部
4 表示面反射特性データ記憶部
5 照度検出器
6 反射輝度演算部
7 点灯輝度演算部
8 点灯制御部
9 表示素子
10 反射輝度補正演算部
11 影情報データ記憶部
12 経年劣化データ記憶部
13 相関関係データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報表示装置の設置場所と表示面の方位を含む設置位置情報と情報表示装置の表示面に対する太陽の位置情報並びに計測した情報表示装置前面の照度値を基に表示面における反射輝度を求め、求めた反射輝度により
判読に必要となるコントラストを確保できる点灯輝度値で表示を行うようにしたことを特徴とする情報表示方法。
【請求項2】
前記設置位置情報に、予め計測された地形情報より求めたビルや山等の影になる時間帯情報が含まれていることを特徴とする請求項1記載の情報表示方法。
【請求項3】
正確な時刻情報を取得する時刻取得部と、時刻と太陽位置および表示面の反射輝度予測値との相関関係を予め設置位置情報としての設置場所および表示面の方位や高度よりデータ化したデータベースと、情報表示装置前面の照度値を検出する照度検出器と、前記時刻取得部と前記データベースおよび照度検出器よりの照度値とから表示面での反射輝度予測値を算出する反射輝度演算部と、該反射輝度演算部よりの反射輝度予測値から、判読に必要となるコントラストになる点灯輝度を算出する点灯輝度演算部と、該点灯輝度演算部よりの点灯輝度値により表示素子を調光する点灯制御部とから構成したことを特徴とする情報表示装置。
【請求項4】
前記データベースに、予め計測された地形情報より求めたビルや山等の影になる時間帯情報を与え、データベースよりの太陽位置情報出力をゼロとなし、前記反射輝度演算部は前記照度検出器よりの照度により反射輝度予測値を算出し、前記点灯制御部は前記反射輝度予測値に基づいて表示素子を調光することを特徴とする請求項3記載の情報表示装置。
【請求項5】
前記点灯制御部は総点灯時間を記憶して経年変化による表示素子の劣化と、表示面が粉塵等によって汚れて反射輝度特性が変化する情報をデータ化し、該データに基づいて表示素子への出力を増加するようにしたことを特徴とする請求項3もしくは4記載の情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−101702(P2007−101702A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288900(P2005−288900)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】