説明

情報表示用パネルの製造方法

【課題】余分な接着剤のはみ出しがあっても、その接着剤のはみ出し部分に充填した表示媒体が固着せず、生産性も良好な情報表示用パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明な2枚の基板間の隔壁により形成されたセル内に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの製造方法において、セル11内に表示媒体3を充填し、さらに粉体12をセル内に充填された表示媒体上に堆積させ、隔壁頂上の余分な表示媒体および粉体を除去後、2枚の基板を貼り合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の隔壁により形成されたセル内に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶(LCD)に代わる情報表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式等の技術を用いた情報表示装置が提案されている。
【0003】
これら従来技術は、LCDと比較すると、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットがあることから、次世代の安価な情報表示装置に使用可能な技術として考えられており、携帯端末用情報表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。特に最近では、分散粒子と着色溶液から成る分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置して成る電気泳動方式が提案され、期待が寄せられている。
【0004】
しかしながら、電気泳動方式では、液中を粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題がある。さらに、低比重の溶液中に酸化チタン等の高比重の粒子を分散させているため沈降しやすくなっており、分散状態の安定性維持が難しく、情報表示の繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。また、マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにして、見かけ上、上述した欠点が現れにくくしているだけであって、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0005】
一方、溶液中での挙動を利用する電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層とを基板の一部に組み入れる方式も提案され始めている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、電荷輸送層、さらには電荷発生層を配置するために構造が複雑化するとともに、導電性粒子に電荷を一定に注入することは難しいため、表示情報を書き換える際の安定性に欠けるという問題もある。
【0006】
上述した種々の問題を解決するための一方法として、少なくとも一方が透明である2枚の対向する基板間に、表示媒体を封入した後、あるいは、隔壁により互いに隔離されたセルを形成し、セル内に表示媒体を封入した後、表示媒体に電界を与え、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルが知られている。
【非特許文献1】趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”論文集、p.249-252
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した構成の粒子移動式の情報表示用パネルを製造するには、従来、一方の基板上の隔壁により形成されたセル内に表示媒体を充填し、隔壁頂上に付着した余分な表示媒体を除去した後、隔壁頂上もしくはもう一方の基板の隔壁に対応する部分に接着剤を配置して、2枚の基板を貼り合わせていた。上述した情報表示用パネルの製造方法では、2枚の基板を貼り合わせた後に、余分な接着剤のはみ出しがあり、その接着剤のはみ出し部分に充填した表示媒体が固着していまい、表示媒体駆動ができなくなる問題があった。また、2枚の基板を貼り合わせた後の接着剤のはみ出しがないように、接着剤の量を精度良く調整配置することは困難であり、生産性においても問題があった。
【0008】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、余分な接着剤のはみ出しがあっても、その接着剤のはみ出し部分に充填した表示媒体が固着せず、生産性も良好な情報表示用パネルの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の情報表示用パネルの製造方法は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の隔壁により形成されたセル内に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの製造方法において、セル内に表示媒体を充填し、さらに粉体をセル内に充填された表示媒体上に堆積させ、隔壁頂上の余分な表示媒体および粉体を除去後、2枚の基板を貼り合わせることを特徴とするものである。
【0010】
なお、本発明の情報表示用パネルの製造方法の好適例としては、表示媒体が、光学的反射率および帯電特性が異なる2種類の表示媒体であること、表示媒体を構成する粒子が母粒子に微粒子を付着もしくは固着させた粒子である場合には、粉体として表示媒体を構成する微粒子を用いること、表示媒体を構成する粒子の平均粒子径が1〜20μmであり、粉体を構成する粒子の平均粒子径が50〜500nmであること、がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セル内に表示媒体を充填し、さらに粉体をセル内に充填された表示媒体上に堆積させ、隔壁頂上の余分な表示媒体および粉体を除去後、2枚の基板を貼り合わせることで、2枚の基板の貼り合わせ時にはみ出した接着剤があっても、粉体の一部が接着剤とともに固着すれば、表示媒体が固着することを防止できるので、表示性能は損なわれない。また、はみ出した接着剤に取り込まれなかった粉体は、セル内において表示媒体に対して流動性を高める機能剤として働き、表示性能はむしろ改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明の製造方法の対象となる情報表示用パネルの基本的な構成について説明する。本発明の対象となる情報表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向にそって、帯電した表示媒体が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体が電位の切替による電界方向の変化によって移動方向を変えることにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示を書き換える時あるいは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0013】
本発明の製造方法の対象となる情報表示用パネルの基本的な構成を、図1〜図3に基づき説明する。
【0014】
図1に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電特性の異なる少なくとも2種以上の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと黒色表示媒体用粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、基板1、2の外部から付与する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。
【0015】
図2に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電特性の異なる少なくとも2種以上の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと黒色表示媒体用粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、基板1の内側に設けた電極5と基板2の内側に設けた電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。
【0016】
図3に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電性を有する1種の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wを示す)を、基板1に設けた電極5と電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と水平方向に移動させ、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うか、あるいは、電極6または基板1の色を観察者に視認させて電極6または基板1の色の表示を行っている。
【0017】
以上の説明は、粒子群からなる白色表示媒体3Wを粉流体からなる白色表示媒体に、粒子群からなる黒色表示媒体3Bを粉流体からなる黒色表示媒体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することが出来る。
【0018】
図4(a)〜(f)はそれぞれ本発明の情報表示用パネルの製造方法の一例を工程順に説明するための図である。以下、図4(a)〜(f)に従って、本発明の情報表示用パネルの製造方法を説明する。図4(a)〜(f)に示す例において、図1〜図3に示す例と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0019】
まず、図4(a)に示すように、基板1上に設けた隔壁4により形成されるセル11内に表示媒体3を充填する。本例では、白色表示媒体3Wと黒色表示媒体3Bとを用い、まず、白色表示媒体3Wをセル11内に充填し、セル11内に充填された白色表示媒体3W上に黒色表示媒体3Bを充填している。表示媒体3の充填方法は、従来から知られている充填方法のいずれをも用いることができる。
【0020】
次に、図4(b)に示すように、表示媒体3の接着剤への固着防止のために、粉体12をセル11内にすでに充填されている表示媒体3上に堆積させる。本例では、粉体12をセル11内に堆積させるためにスクリーン印刷用のスキージ13とスクリーン14とを用い、スクリーン14上に配置した粉体12をスキージ13を移動させることでスクリーン14の目開き部分から散布している。
【0021】
ここで用いる粉体12としては、本例のように2種類の表示媒体3を用いる例において、少なくとも一方の表示媒体3を構成する粒子が母粒子に微粒子を付着または固着させた粒子である場合には、表示媒体3を構成する微粒子と同じ微粒子を粉体12として用いることが好ましい。また、ここで用いる粉体12としては、表示媒体3に対して流動性を損なわないで、むしろ流動性を高めるものであることが好ましく、電子写真用現像剤(トナー)におけるトナー外添剤を粉体12として用いることが好ましい。さらに、ここで用いる粉体12は、表示媒体3を構成する粒子に比べて数段小さな粒子径(数十〜数百ナノメータ)を有する粒子から構成される粉体であることが好ましく、具体的な一例として、表示媒体を構成する粒子の平均粒子径が1〜20μmであり、粉体を構成する粒子の平均粒子径が50〜500nmであることが好ましい。
【0022】
次に、図4(c)に示すように、隔壁4上に載った粒子群(表示媒体3および粉体12)を除去する。次に、図4(d)に示すように、隔壁4上に基板貼り合わせ用の接着剤15を配置する。なお、接着剤15はもう一方の基板の隔壁に対応する部分に配置してもかまわない。次に、図4(e)に示すように、もう一方の基板2を隔壁4上に載せ、接着剤により2枚の基板1、2を貼り合わせて、最終的に情報表示用パネルを得ている。
【0023】
上述した実施例によれば、図4(f)に黒色表示状態を示すように、接着剤のはみ出しがあっても、最後に充填した粉体12−1のみが固着するに留まり、表示媒体3は固着しないので、良好な表示駆動が行える。また、接着剤のはみ出しに取り込まれた以外の粉体12−2は、表示状態を阻害することなく表示媒体3の駆動性を高めるので、さらに良好な表示駆動が行える。
【0024】
図5は本発明の情報表示用パネルの製造方法における粉体充填工程の他の例を説明するための図である。図5に示す例において、図4(a)〜(f)に示す例と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。図5に示す例では、粉体12を充填すべきセル11内に表示媒体3を充填した基板1上に、基板1全体を覆う容器21を設け、容器21の上部に設けたノズル22から表示媒体固着防止用の粉体12を容器21内に散布することで、表示媒体3上に粉体21を堆積させている。
【0025】
以下、本発明の製造方法の対象となる情報表示用パネルを構成する各部材について説明する。
【0026】
基板については、少なくとも一方の基板はパネル外側から表示媒体3の色が確認できる透明な基板2であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。基板1は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0027】
必要に応じて設ける電極の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状にパターニング形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布してパターニング形成する方法が用いられる。視認側(表示面側)基板に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面側基板に設ける電極の材質や厚みなどは上述した表示面側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0028】
隔壁4については、その形状は表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜100μm、好ましくは10〜50μmに調整される。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
これらのリブからなる隔壁により形成されるセルは、図6に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示の鮮明さが増す。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0029】
次に、本発明の情報表示用パネルで表示媒体として例えば用いる粉流体について説明する。なお、本発明の情報表示用パネルで用いる粉流体の名称については、本出願人が「電子粉流体(登録商標):登録番号4636931」の権利を得ている。
【0030】
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0031】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の情報表示用パネルで固体状物質を分散質とするものである。
【0032】
本発明の情報表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、例えば気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、小さな電界の力でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
本発明に表示媒体として例えば用いる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の情報表示用パネルでは、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で表示媒体として用いられる。
【0033】
次に、本発明の情報表示用パネルにおいて表示媒体を構成する表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)について説明する。表示媒体用粒子は、そのまま該表示媒体用粒子だけで構成して表示媒体としたり、その他の粒子と合わせて構成して表示媒体としたり、粉流体となるように調整、構成して表示媒体としたりして用いられる。
粒子には、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0034】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0035】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0036】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0037】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0038】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0039】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0040】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0041】
また、本発明の表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。
【0042】
更に本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な表示媒体としての移動が可能となる。
【0043】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が当量ずつ反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0044】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0045】
表示媒体用粒子の帯電量は当然その測定条件に依存するが、情報表示用パネルにおける表示媒体用粒子の帯電量はほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に表示媒体用粒子の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。
【0046】
本発明者らは鋭意検討の結果、ブローオフ法において同一のキャリア粒子を用いて、表示媒体に用いる粒子の帯電量測定を行うことにより、表示媒体用粒子の適正な帯電特性値の範囲を評価できることを見出した。
【0047】
更に、表示媒体用粒子で構成する粒子群や粉流体等の表示媒体を乾式の情報表示用パネルに適用する場合には、基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1〜図3において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示媒体3の占有部分、隔壁4の占有部分、情報表示用パネルのシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0048】
本発明の対象となる情報表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体の移動の支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の製造方法の対象となる情報表示用パネルは、ノートパソコン、PDA、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、電子POP、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の対象となる情報表示用パネルの一例を示す図である。
【図2】本発明の対象となる情報表示用パネルの他の例を示す図である。
【図3】本発明の対象となる情報表示用パネルのさらに他の例を示す図である。
【図4】(a)〜(f)はそれぞれ本発明の情報表示用パネルの製造方法の一例を工程順に説明するための図である。
【図5】本発明の情報表示用パネルの製造方法における粉体充填工程の他の例を説明するための図である。
【図6】本発明の情報表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1、2 基板
3 表示媒体(粒子群、粉流体)
3W 白色表示媒体
3Wa 白色表示媒体用粒子
3B 黒色表示媒体
3Ba 黒色表示媒体用粒子
4 隔壁
5、6 電極
11 セル
12、12−1、12−2 粉体
13 スキージ
14 スクリーン
15 接着剤
21 容器
22 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間の隔壁により形成されたセル内に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの製造方法において、セル内に表示媒体を充填し、さらに粉体をセル内に充填された表示媒体上に堆積させ、隔壁頂上の余分な表示媒体および粉体を除去後、2枚の基板を貼り合わせることを特徴とする情報表示用パネルの製造方法。
【請求項2】
表示媒体が、光学的反射率および帯電特性が異なる2種類の表示媒体であることを特徴とする請求項1に記載の情報表示用パネルの製造方法。
【請求項3】
表示媒体を構成する粒子が母粒子に微粒子を付着もしくは固着させた粒子である場合には、粉体として表示媒体を構成する微粒子を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の情報表示用パネルの製造方法。
【請求項4】
表示媒体を構成する粒子の平均粒子径が1〜20μmであり、粉体を構成する粒子の平均粒子径が50〜500nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報表示用パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−114678(P2007−114678A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308596(P2005−308596)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】