説明

情報記録媒体並びにその製造方法及び装置

【課題】表示品位が不十分な情報記録媒体が製造されるのを抑制する。
【解決手段】本発明の情報記録媒体の製造装置50は、基材10’上に印刷パターンを形成する印刷部510と、印刷パターンを形成した基材10’にレーザ加工によって黒色パターンを形成するレーザ加工部520とを具備し、レーザ加工部520は、印刷パターンを形成した基材10’を支持する支持体5201と、支持体5201に支持されている基材10’にレーザビーム照射によって黒色パターンを描画するレーザ描画装置5204と、支持体5201に支持されている基材10’に可視光及び/又は不可視光を照射する照明装置5202と、支持体5201に支持され且つ可視光又は不可視光を照射されている基材10’を撮影して画像情報を出力する撮像装置5203と、画像情報を利用してレーザ描画装置5204の描画動作を制御する制御部560とを含んだことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷法とレーザ加工とを利用して像を記録する情報記録技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、個人情報などの個別情報を記録した情報記録媒体の製造では、熱転写方式又はインクジェット方式による着色パターンの印刷と、レーザ描画方式による黒色パターンの形成とを組み合わせることがある。具体的には、人物像などの記録すべき像を、イエロー、マゼンタ、シアン及び黒色の4色に色分解する。そして、イエロー、マゼンタ及びシアン色の着色パターンを熱転写方式又はインクジェット方式により形成し、次いで、黒色パターンをレーザ描画方式により形成する。レーザ描画方式による黒色パターンの形成には、例えば、樹脂の炭化又は発色材の発色作用を利用する。
【0003】
このようにして形成した黒色パターンは、印刷法によって形成した着色パターンとは異なり、有機溶剤を用いて除去することはほぼ不可能である。それゆえ、記録されている情報を改ざんするべく、有機溶剤を用いて着色パターンを除去したとしても、黒色パターンは消えずに残る。この黒色パターンは別の像の上書きを阻害するので、情報を改ざんするためには、黒色パターンが形成されている記録層自体を破壊し、新たに記録層を形成しなければならない。従って、この技術は、優れた改ざん防止効果を達成する。
【特許文献1】特開2006−123174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者は、印刷法によって着色パターンを形成し、その後、レーザ描画方式によって黒色パターンを形成すると、優れた表示品位を達成できない可能性があることを見出している。
【0005】
従って、本発明の目的は、表示品位が不十分な情報記録媒体が製造されるのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によると、基材上に印刷パターンを形成する印刷部と、前記印刷パターンを形成した前記基材にレーザ加工によって黒色パターンを形成するレーザ加工部とを具備し、前記レーザ加工部は、前記印刷パターンを形成した前記基材を支持する支持体と、前記支持体に支持されている前記基材にレーザビーム照射によって前記黒色パターンを描画するレーザ描画装置と、前記支持体に支持されている前記基材に可視光及び/又は不可視光を照射する照明装置と、前記支持体に支持され且つ前記可視光又は前記不可視光を照射されている前記基材を撮影して画像情報を出力する撮像装置と、前記画像情報を利用して前記レーザ描画装置の描画動作を制御する制御部とを含んだことを特徴とする情報記録媒体の製造装置が提供される。
【0007】
本発明の第2側面によると、基材上に印刷パターンを形成することと、前記印刷パターンを形成した前記基材を支持体に支持させることと、前記支持体に支持されている前記基材に可視光又は不可視光を照射しながら前記基材を撮影することと、この撮影によって得られる画像情報を利用して描画動作を決定することと、前記描画動作に従って前記基材にレーザビームを照射することにより、前記基材に黒色パターンを形成することとを含んだことを特徴とする情報記録媒体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、表示品位が不十分な情報記録媒体が製造されるのを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全ての図面を通じて同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造装置を概略的に示す図である。
この製造装置50は、印刷部510と、レーザ加工部520と、搬送機構530と、フィーダ540と、スタッカ550と、制御部560とを含んでいる。
【0011】
印刷部510は、ブランク媒体10’上に、熱転写方式によって印刷パターンを形成する。ここでは、一例として、印刷部510は、ブランク媒体10’上に、イエロー、マゼンタ及びシアン色の着色パターンを形成することとする。
【0012】
なお、ブランク媒体10’は、印刷部510及びレーザ加工部520において記録すべき情報、例えば個人情報などの個別情報を記録していない媒体である。ブランク媒体10’に個別情報などを記録することにより、情報記録媒体10が得られる。
【0013】
印刷部510は、中間転写ベルト5101と、繰出ローラ5102と、巻取ローラ5103と、サーマルヘッド5104と、加圧ローラ5105と、転写ローラ5106と、加圧ローラ5107と、ガイドローラ5108とを含んでいる。この印刷部510には、インクリボン5111と、インクリボン5111を繰り出す繰出ローラ5112と、インクリボン5111を巻き取る巻取ローラ5113と、ガイドローラ5114とを含んだリボンカートリッジが着脱可能に装填されている。
【0014】
繰出ローラ5102は、中間転写ベルト5101を繰り出す。ガイドローラ5108は、繰出しローラ5102が繰出した中間転写ベルト5101を、サーマルヘッド5104と加圧ローラ5105との間及び転写ローラ5106と加圧ローラ5107との間へと順次案内する。巻取ローラ5103は、サーマルヘッド5104と加圧ローラ5105との間及び転写ローラ5106と加圧ローラ5107との間を通過した中間転写ベルト5101を巻き取る。
【0015】
サーマルヘッド5104は、制御部560に接続されている。サーマルヘッド5104の動作は、制御部560によって制御される。
【0016】
加圧ローラ5105は、サーマルヘッド5104と向き合って配置されている。サーマルヘッド5104と加圧ローラ5105とは、インクリボン5111のインキ層が設けられた面が中間転写ベルト5101と向き合うようにそれらを挟み込み、インクリボン5111の基材テープから中間転写ベルト5101上へとインキを熱転写する。これにより、中間転写ベルト5101上にインキパターンを形成する。
【0017】
転写ローラ5106と加圧ローラ5107とは、互いに向き合って配置されている。転写ローラ5106は、例えば、ヒータを内蔵している。転写ローラ5106と加圧ローラ5107とは、中間転写ベルト5101のインキパターンを支持している面がブランク媒体10’と向き合うようにそれらを挟み込み、中間転写ベルト5101からブランク媒体10’上へとインキパターンを熱転写する。これにより、ブランク媒体10’上に印刷パターンを形成する。
【0018】
なお、ここでは、中間転写ベルト5101を使用する構成を採用しているが、その代わりに、中間転写ローラを使用する構成を採用してもよい。或いは、中間転写ベルト5101を使用せずに、インクリボン5111からブランク媒体10’上へとインキを直接に熱転写する構成を採用してもよい。或いは、印刷部510には、熱転写方式によりインキパターンを形成する構成を採用する代わりに、インクジェット方式などの他の印刷方式によりインキパターンを形成する構成を採用してもよい。
【0019】
レーザ加工部520は、印刷部510において印刷パターンを形成したブランク媒体10’に、レーザ加工によって黒色パターンを形成する。レーザ加工部520は、ステージ5201と、照明装置5202と、撮像装置5203と、レーザ描画装置5204とを含んでいる。レーザ加工部520と印刷部510とは、互いから独立したユニットであってもよく、1つのユニットを構成していてもよい。
【0020】
ステージ5201は、印刷パターンを形成したブランク媒体10’を支持する支持体である。この例は、レーザ加工部520は、複数のステージ5201と、これらをレーザ加工部520内で循環させる循環機構とを含んでいる。
【0021】
具体的には、ステージ5201は、まず、受取位置において印刷部510からブランク媒体10’を受け取る。次いで、ステージ5201は、ブランク媒体10’を支持したまま、受け取り位置から描画位置へと移動する。ステージ5201はこの描画位置で停止し、ステージ5201が停止している期間内に後述する撮影及び描画を行う。その後、ステージ5201は、ブランク媒体10’に黒色パターンを描画してなる情報記録媒体10を支持したまま、描画位置から受渡位置へと移動する。受渡位置で情報記録媒体10をスタッカ550へと受け渡した後、ステージ5201は、受渡位置から受取位置へと移動する。なお、このような循環機構の動作は、例えば、制御部560によって制御する。
【0022】
ここでは、レーザ加工部520は複数のステージ5201を含んでいるが、レーザ加工部520はステージ5201を1つのみ含んでいてもよい。この場合、ステージ5201は、可動でなくてもよい。或いは、レーザ加工部520は、ステージ5201の代わりに他の支持体を含んでいてもよい。
【0023】
照明装置5202は、ステージ5201が支持しているブランク媒体10’に、可視光及び/又は不可視光を照射する。ここでは、一例として、照明装置5202は、ステージ5201が支持しているブランク媒体10’に白色光を照射することとする。
【0024】
照明装置5202は、制御部560に接続してもよい。この場合、制御部560によって照明装置5202の動作を制御することができる。
【0025】
撮像装置5202は、例えば、CCD(charge-coupled device)イメージセンサ又はCMOS( complementary metal-oxide semiconductor)イメージセンサを含んでいる。撮像装置5203は、ステージ5201に支持され且つ照明装置5202が照明しているブランク媒体10’を撮影する。撮像装置5203は、制御部560に接続されており、この撮影によって得られる第1画像情報を制御部560へと出力する。
【0026】
レーザ描画装置5204は、ステージ5201に支持されているブランク媒体10’にレーザビーム照射によって黒色パターンを描画する。レーザ描画装置5204は、制御部560に接続されている。レーザ描画装置5204の動作は、制御部560がこれに供給する制御信号によって制御される。
【0027】
搬送機構530は、ブランク媒体10’の印刷部510からレーザ加工部520への搬送と、完成した情報記録媒体10のレーザ加工部520からスタッカ550への排出を行う。搬送機構530は、複数の搬送ローラ5301を含んでいる。搬送機構530は、搬送ローラ5301の代わりに又は搬送ローラ5301に加えて、搬送ベルト及び/又は搬送ロボットを含んでいてもよい。また、搬送機構530は、ガイド板などの部材を更に含んでいてもよい。典型的には、搬送機構530は制御部560に接続されており、その動作は制御部560によって制御される。
【0028】
フィーダ540は、情報記録媒体10の製造プロセスにおいて、印刷部510に対して上流側に設置されている。フィーダ540は、容器5401と送出機構5402とを含んでいる。容器5401は、ブランク媒体10’を収容している。送出機構5402は、容器5401内に設置されており、容器5401内のブランク媒体10’を印刷部510へと順次供給する。送出機構5402は、例えば、送出ローラ及び/又は送出ベルトを含んでいる。典型的には、送出機構5402は制御部560に接続されており、その動作は制御部560によって制御される。
【0029】
スタッカ550は、情報記録媒体10の製造プロセスにおいて、レーザ加工部520に対して下流側に設置されている。スタッカ550は、レーザ加工部520から排出された情報記録媒体10を収容する。
【0030】
制御部560には、ブランク媒体10’に記録すべき情報が供給される。そして、制御部560は、印刷部510の印刷動作と、レーザ描画装置5204の描画動作とを制御する。具体的には、制御部560は、ブランク媒体10’に形成すべき複数のパターンのうち、黒色パターンの少なくとも一部をレーザ描画装置5204が形成し、残りを印刷部510が形成するように、印刷部510の印刷動作とレーザ描画装置5204の描画動作とを制御する。
【0031】
制御部560による描画動作の制御には、レーザ描画装置5204を用いて形成すべき黒色パターンについての情報と、撮像装置5203が出力する第1画像情報とを利用する。即ち、制御部560は、撮像装置5203が出力する第1画像情報を処理して、先の印刷パターンの少なくとも一部に対応した第2画像情報を生成する。例えば、制御部560は、第2画像情報として、ブランク媒体10’上に形成されている印刷パターンの寸法、方位、色、及びレーザ描画装置5204に対する相対位置の少なくとも1つを生成する。
【0032】
そして、制御部560は、この第2画像情報とレーザ描画装置5204を用いて形成すべき黒色パターンについての情報とに基いて、先の黒色パターンがブランク媒体10’に形成されるようにレーザ描画装置5204の描画動作を制御する。或いは、制御部560は、第2画像情報に基いてレーザ描画装置5204を用いて形成すべき黒色パターンを補正し、この補正した黒色パターンがブランク媒体10’に形成されるようにレーザ描画装置5204の描画動作を制御する。例えば、制御部560は、レーザビームの照射方向と露光量とに相当するベクトルデータを生成し、これらベクトルデータをレーザ描画装置5204に出力する。
【0033】
図2は、図1に示す製造装置を用いて製造可能な情報記録媒体の一例を概略的に示す平面図である。図3は、図2に示す情報記録媒体に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。図4は、図2に示す情報記録媒体の製造に利用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す平面図である。
【0034】
この情報記録媒体10は、図3に示す基材110と黒色像記録層120と印刷層130と透明保護層140とを含んでいる。
【0035】
基材110は、典型的には層形状を有している。基材110の材料としては、例えば、紙料、樹脂、金属又はガラスを使用することができる。基材110は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。例えば、基材110は、プラスチック板であってもよい。或いは、基材110は、紙とその一方の主面を被覆した樹脂層とを含んでいてもよい。
【0036】
黒色像記録層120は、基材110の一主面の一部又は全体を被覆している。黒色像記録層120は、レーザ描画装置5204を用いて形成した黒色パターンを保持している層である。図3では、参照符号120aで示している部分は、透明保護層140側から観察したときに黒色以外の色、例えば無色透明又は略白色に見える部分である。そして、図3では、参照符号120bで示している部分は、透明保護層140側から観察したときに黒色に見える黒色パターンである。この黒色パターンは、図2では、人物像を含んでいる像I1の黒色部と、この人物に関する個人情報を表示している文字列I2とを構成している。
【0037】
印刷層130は、黒色像記録層120上に形成されている。印刷層130は、図1に示す印刷部510における印刷によって形成された複数の印刷パターンを含んでいる。図3には一例として、イエロー色の印刷パターン130Yと、マゼンタ色の印刷パターン130Mと、シアン色の印刷パターン130Cとを描いている。これら印刷パターン130Y、130M及び130Cは、図2では、人物像を含んでいる像I1のうち黒色部以外の部分を構成している。なお、図3に示す例では、印刷層130は黒色部120bを被覆していないが、印刷層130は黒色部120bの少なくとも一部を被覆していてもよい。
【0038】
透明保護層140は、印刷層130を被覆している。透明保護層140は、例えば、印刷層130上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、これに紫外線を照射することにより得られる。透明保護層140は省略することができるが、透明保護層140を設けると、印刷層130の耐久性を向上させることができる。なお、透明保護層140を設ける場合、透明保護層140を形成する保護層形成部を図1に示す製造装置50に更に含めるか、又は、図1に示す製造装置50の下流側に保護層形成部を接続する。
【0039】
この情報記録媒体10は、印刷層130以外の印刷層を更に含んでいる。この印刷層は、図1に示す印刷部510における印刷によって形成されたものではなく、図4に示すブランク媒体10’が含んでいる印刷層である。この印刷層は、罫線及び見出しなどの像I3を表示している。この印刷層は、例えば、基材110と黒色像記録層120との間に形成する。或いは、この印刷層は、黒色像記録層120上に形成してもよい。或いは、この印刷層は、省略してもよい。
【0040】
なお、図4に示すブランク媒体10’は、印刷層130及び透明保護層140を含んでおらず、黒色像記録層120が黒色部120bを含んでいないこと以外は、図2及び図3を参照しながら説明した情報記録媒体10と同様の構造を有している。
【0041】
図1に示す製造装置50では、描画動作を行う位置でブランク媒体10’を撮影し、これにより得られる画像情報を利用して描画動作を行う。それゆえ、高い位置精度で黒色パターンを形成することができる。
【0042】
例えば、図2に示す情報記録媒体10において、像I1を表示する黒色パターンの印刷パターンに対する相対位置が理想値から約50μm以上ずれると、このずれに起因した表示品位の低下を肉眼で知覚できるようになる。これに対し、図1に示す製造装置50によると、先の位置ずれに起因した表示品位の低下を十分に小さくすることができ、その肉眼での知覚を不可能とすることができる。
【0043】
また、図4に示すブランク媒体10’は、典型的には、多数のブランク媒体10’に対応した大判の構造を形成し、これを抜き加工することにより製造する。そのため、ブランク媒体10’の輪郭に対する像I3の相対位置の精度は、必ずしも高くはない。従って、黒色パターンを描画する際に、ブランク媒体10’の輪郭のみを利用してその位置合わせを行った場合、像I3に対して像I2を高い位置精度で表示させることは難しい。これに対し、図1に示す製造装置50によると、ブランク媒体10’の輪郭は先の位置精度に影響を及ぼさない。従って、像I3に対する像I2の位置ずれを防止できる。
【0044】
また、レーザビームを照射することによって生じる被照射部の温度上昇には、被照射部の構造が影響を及ぼす。黒色部120bの寸法及び明度は、被照射部の温度上昇に応じて変化する可能性がある。
【0045】
上述した製造プロセスでは、描画動作の際、ブランク媒体10’には、印刷パターン130Y、130M及び130Cが形成されている。即ち、構造が異なる複数の被照射部に対して描画動作を行うこととなる。
【0046】
図1に示す製造装置50によると、制御部560に、撮像装置5203が出力する画像情報から被照射部の構造を推定させ、所望の寸法(例えば線幅)及び明度を有している黒色部120bが形成されるように、露光量を被照射部毎に設定させることができる。即ち、レーザビームを正しい位置に及び正しい露光量で照射することができる。従って、黒色部120bの寸法及び明度が設計値からずれるのを抑制できる。
【0047】
上述した例では、印刷部510において、イエロー色の印刷パターン130Yとマゼンタ色の印刷パターン130Mとシアン色の印刷パターン130Cとを形成している。印刷部510には、他の構成を採用してもよい。例えば、印刷部510に、黒色の印刷パターンを更に形成する構成を採用してもよい。或いは、印刷部510に、不可視インキなどの特殊インキを用いて印刷パターンを更に形成する構成を採用してもよい。
【0048】
不可視インキを用いて形成した印刷パターンは、例えば、真偽判定用のパターンの1つとして利用することができる。即ち、不可視インキを用いて形成した印刷パターンが無いか又は不可視インキを用いて形成した印刷パターンがあったとしても真正品に設けられているのとは異なっている情報記録媒体は、非真正品であると判断することができる。
【0049】
不可視インキを用いて形成した印刷パターンは、描画動作のためのアライメントマークとして利用することもできる。一般に、不可視インキを用いて形成した印刷パターンは、不可視インキを可視化する条件で観察した場合、通常の可視インキとの判別が容易である。そして、不可視インキを用いて形成した印刷パターンは、肉眼では判別できないので、情報記録媒体10の美観を損ねることがない。
【0050】
特殊インキを使用する場合、レーザ加工部520には、例えば、以下の構成を採用してもよい。
【0051】
図5は、レーザ加工部の一変形例を概略的に示す図である。図5に示すレーザ加工部520は、以下の構成を採用したこと以外は、図1に示す製造装置50のレーザ加工部520と同様である。
【0052】
即ち、このレーザ加工部520は、照明装置5202が2つの光源5202a及び5202bを含んでいる。光源5202a及び5202bは、スペクトルが異なる光を放射する。例えば、光源5202aは白色光などの可視光を放射し、光源5202bは赤外光及び紫外光などの不可視光を放射する。そして、この照明装置5202は制御部560と接続されており、制御部560による制御のもとで、照明装置5202が放射する光を、光源5202aが放射する光と、光源5202bが放射する光との間で切り替え可能である。なお、典型的には、撮像装置5203の前方に、特定波長域の光のみを選択的に透過させるフィルタを設置する。
【0053】
励起波長が紫外域内にある蛍光インキを用いて形成した印刷パターンは、通常、無色透明であるか又は白色である。そのため、照明装置5202に白色光を放射させて、ブランク媒体10’を撮影した場合に得られる画像情報は、印刷パターン130Y、130M及び130Cに対応した情報は含んでいるものの、蛍光インキからなる印刷パターンに対応した情報は含んでいない。従って、この画像情報から、蛍光インキからなる印刷パターンに関する情報を得ることはできない。この情報が得られない場合、蛍光インキからなる印刷パターンに対する黒色パターン120bの相対位置の精度が不十分となる可能性がある。
【0054】
照明装置5202に紫外光を放射させると、蛍光インキが発光する。従って、この状態でブランク媒体10’を撮影した場合に得られる画像情報は、蛍光インキからなる印刷パターンに対応した情報を含んでいる。それゆえ、この情報を利用することにより、蛍光インキからなる印刷パターンに対する黒色パターン120bの相対位置の精度が不十分となるのを防止できる。
【0055】
このように、図1に示す製造装置50によると、黒色パターン120bを高精度に形成することができる。従って、例えば、以下に説明するパターンを形成することができる。
【0056】
図6は、図1に示す製造装置に図5の構造を採用した場合に製造可能な情報記録媒体の一例を概略的に示す平面図である。図7は、図6に示す情報記録媒体の製造方法の一例を概略的に示す図である。図8は、図1に示す製造装置に図5の構造を採用した場合に製造可能な情報記録媒体の他の例を概略的に示す平面図である。
【0057】
図6において、参照符号130Kは、印刷部510において形成した黒インキからなる印刷パターンを示し、参照符号130Pは、印刷部510において形成した不可視インキからなる印刷パターンを示している。なお、図7では、黒色パターン120aの形状を分かり易くする為に、印刷パターン130K及び130Pを省略している。
【0058】
レーザ加工部520における描画動作の際に、蛍光インキからなる印刷パターン130Pにレーザビームが照射されると、蛍光インキの蛍光特性が劣化することがある。また、黒色インキ、特にはカーボンブラックを含んだインキなどの赤外線吸収インキはレーザビームの吸収率が高いため、印刷パターン130Kにレーザビームが照射されると、その位置で透明保護層140が焼けてしまうか又は印刷面に膨れを生じ、情報記録媒体10の美観や耐久性が損なわれることがある。
【0059】
図1に示す製造装置50に図5の構造を採用すると、印刷パターン130K及び130Pの双方に対して高い相対位置精度で黒色パターン120aを形成することができる。従って、印刷パターン130K及び130Pを横切るように曲線状の黒色パターン120aを形成する場合、印刷パターン130K及び130Pにレーザビームが照射されないように、描画パターンを図7に示す黒色パターン120aの如く設定した場合であっても、印刷パターン130K又は130Pにレーザビームが照射されることや、黒色パターン120aと印刷パターン130K又は130Pとの間に隙間が生じるのを防止できる。
【0060】
従って、例えば、図8に示すように、黒色パターン120aに複雑な細線模様を表示させ、この細線模様と不可視インキからなる印刷パターン130とを精度よく重ね合わせることも可能である。このような複雑な構造を偽造することは極めて困難である。
【0061】
印刷部510において形成する黒色パターンとレーザ加工部520において形成する黒色パターンとの一方は、他方に対する反転パターンであってもよい。この場合、印刷部510において形成した黒色パターンは、描画動作のためのアライメントマークとして利用することができる。また、レーザ加工部520において形成した黒色パターンは、改ざん防止用のパターンとして利用することができる。
【0062】
レーザ加工部520において黒色パターンを形成した後に、情報記録媒体10を撮像装置5203で撮影してもよい。撮像装置5203が出力する画像情報を制御部560において処理し、パターンの少なくとも一部が正しく形成されていなかった場合には、先の画像情報に基づいて、全てのパターンが正しく形成されるように、印刷部510及び/又はレーザ描画装置5204の動作を制御するフィードバック制御を行ってもよい。例えば、印刷部510において一部の黒色パターンを形成し、レーザ加工部520において残りの黒色パターンを形成する場合、それらの明度が一致するようにレーザ描画装置5204の描画動作を制御してもよい。
【0063】
図1に示す製造装置50は、ブランク媒体10’を反転させる反転装置を追加すると、以下の情報記録媒体の製造に利用することができる。
図9は、図1に示す製造装置に反転装置を追加した場合に製造可能な情報記録媒体の一例を概略的に示す平面図である。図10は、図9に示す情報記録媒体を裏面側から描いた平面図である。図11は、図9に示す情報記録媒体のXI−XI線に沿った断面図である。
【0064】
図9乃至図11に示す情報記録媒体20は、立体像を表示する情報記録媒体である。この情報記録媒体20は、図11に示すように、基材210と、帯状印刷層230Rと、帯状印刷層230Lと、黒色帯状パターン220bとを含んでいる。
【0065】
基材210は、透明であって、典型的には無色透明な層である。基材210の材料としては、例えば、樹脂又はガラスを使用することができる。基材210は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。例えば、基材210は、プラスチック板であってもよい。或いは、基材210は、プラスチック板とその一方の主面を被覆した樹脂層及び/又は無機物層とを含んでいてもよい。
【0066】
帯状印刷層230R及び230Lは、図9に示すように各々が帯形状を有しており、図9及び図11に示すように、基材210の一方の主面上でそれらの幅方向に交互に配列している。帯状印刷層230R及び230Lの各々は、例えば、プロセスインキを用いて形成した1つ以上の印刷パターンを含んでいる。
【0067】
帯状印刷層230Rが含んでいる印刷パターンは、右目用の画像を表示する。帯状印刷層230Lが含んでいる印刷パターンは、左目用の画像を表示する。右目用画像及び左目用画像は、被写体を右目及び左目で観察した像にそれぞれ相当している。
【0068】
黒色帯状パターン220bは、図10に示すように各々が帯形状を有している。黒色帯状パターン220bは、基材210の帯状印刷層230R及び230Lが形成された面の裏面に形成されている。黒色帯状パターン220bは、図10及び図11に示すように、基材210の帯状印刷層230R及び230Lが形成された面の裏面上でそれらの幅方向に一定の間隔を空けて配列している。具体的には、黒色帯状パターン220bは、帯状印刷層230Rと等しい空間周波数で配列している。
【0069】
この情報記録媒体20を黒色帯状パターン220b側からその長さ方向を略垂直にして観察した場合、黒色帯状パターン220bは、右目による左目用画像の知覚を妨げ、左目による右目用画像の知覚を妨げる。即ち、観察者は、右目では右目用の画像のみを知覚し、左目では左目用の画像のみを知覚する。従って、この情報記録媒体20が表示する画像は、立体的に見える。
【0070】
なお、ここでは、1つの右目用画像と1つの左目用画像とで1つの立体像を表示する構成を採用しているが、情報記録媒体20には、他の構成を採用してもよい。例えば、複数の右目用画像と複数の左目用画像とで複数の立体像を表示する構成を採用してもよい。こうすると、例えば、観察方向を変化させることに伴う観察対象物の見え方の変化を再現すること、即ち、アニメーションの視覚効果を得ることができる。或いは、或る方向から観察した場合と、他の方向から観察した場合とで、異なる像を表示させることができる。例えば、或る方向から観察した場合に人物像を表示させ、他の方向から観察した場合に風景像を表示させることができる。
【0071】
この情報記録媒体20は、例えば、以下の方法により製造する。
まず、基材210をブランク媒体として準備する。次いで、図1に示す製造装置50の印刷部510において、基材210の一方の主面上に、上述したのと同様の方法により印刷パターンを形成し、帯状印刷層230R及び230Lを得る。基材210には、印刷部510における印刷パターンの形成に先立ち、他の印刷パターンを形成しておいてもよい。
【0072】
次に、図示しない反転装置を用いて、基材210を裏返す。続いて、レーザ加工部520において、基材210の帯状印刷層230R及び230Lを形成した面の裏面に、黒色パターン120bについて説明したのと同様の方法により黒色帯状パターン220bを形成する。以上のようにして、情報記録媒体20を完成する。
【0073】
この情報記録媒体20の視覚効果は、情報記録媒体に他の構造を採用した場合にも得ることができる。例えば、情報記録媒体20から黒色帯状パターン220bを省略し、基材210と向き合うようにレンチキュラシートを設置する。或いは、情報記録媒体20から黒色帯状パターン220bを省略し、格子状の遮光層を形成した透明シートを基材210と向き合うように設置する。
【0074】
このような構造を採用した場合にも、情報記録媒体20と同様の視覚効果を得ることができる。しかしながら、帯状印刷層230R及び230Lを形成した基材210と、レンチキュラシート又は遮光層を形成した透明シートとを高い精度で位置合わせすることは難しい。しかも、これらの構造を採用した場合、その製造に多数の工程及び部品等が必要である。そのため、これら情報記録媒体は、低コスト化が難しい。
【0075】
これに対し、情報記録媒体20は、図1を参照しながら説明した方法により製造することができる。それゆえ、帯状印刷層230R及び230Lに対して黒色帯状パターン220bを高い位置精度で形成することが容易である。しかも、この情報記録媒体20は、簡略化された構造を有している。従って、この情報記録媒体20は、低コスト化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造装置を概略的に示す図。
【図2】図1に示す製造装置を用いて製造可能な情報記録媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図3】図2に示す情報記録媒体に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図4】図2に示す情報記録媒体の製造に利用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図5】レーザ加工部の一変形例を概略的に示す図。
【図6】図1に示す製造装置に図5の構造を採用した場合に製造可能な情報記録媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図7】図6に示す情報記録媒体の製造方法の一例を概略的に示す図。
【図8】図1に示す製造装置に図5の構造を採用した場合に製造可能な情報記録媒体の他の例を概略的に示す平面図。
【図9】図1に示す製造装置に反転装置を追加した場合に製造可能な情報記録媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図10】図9に示す情報記録媒体を裏面側から描いた平面図。
【図11】図9に示す情報記録媒体のXI−XI線に沿った断面図。
【符号の説明】
【0077】
10…情報記録媒体、10’…ブランク媒体、20…情報記録媒体、50…製造装置、110…基材、120…黒色像記録層、120a…無色透明又は略白色部、120b…黒色パターン、130…印刷層、130C…印刷パターン、130K…印刷パターン、130M…印刷パターン、130P…印刷パターン、130Y…印刷パターン、140…透明保護層、210…基材、220b…黒色帯状パターン、230L…帯状印刷層、230R…帯状印刷層、510…印刷部、520…レーザ加工部、530…搬送機構、540…フィーダ、550…スタッカ、560…制御部、5101…中間転写ベルト、5102…繰出ローラ、5103…巻取ローラ、5104…サーマルヘッド、5105…加圧ローラ、5106…転写ローラ、5107…加圧ローラ、5108…ガイドローラ、5111…インクリボン、5112…繰出ローラ、5113…巻取ローラ、5114…ガイドローラ、5201…ステージ、5202…照明装置、5202a…光源、5202b…光源、5203…撮像装置、5204…レーザ描画装置、5401…容器、5402…送出機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に印刷パターンを形成する印刷部と、前記印刷パターンを形成した前記基材にレーザ加工によって黒色パターンを形成するレーザ加工部とを具備し、前記レーザ加工部は、前記印刷パターンを形成した前記基材を支持する支持体と、前記支持体に支持されている前記基材にレーザビーム照射によって前記黒色パターンを描画するレーザ描画装置と、前記支持体に支持されている前記基材に可視光及び/又は不可視光を照射する照明装置と、前記支持体に支持され且つ前記可視光又は前記不可視光を照射されている前記基材を撮影して画像情報を出力する撮像装置と、前記画像情報を利用して前記レーザ描画装置の描画動作を制御する制御部とを含んだことを特徴とする情報記録媒体の製造装置。
【請求項2】
前記制御部は前記印刷パターンの少なくとも一部をアライメントマークとして利用して前記描画動作を制御する特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記印刷部は不可視インキを用いて前記印刷パターンの一部として前記アライメントマークを形成することを特徴とする請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記レーザ加工部はバンドパスフィルタを更に含み、前記撮像装置は前記バンドパスフィルタを介して前記支持体に支持されている前記基材を撮影可能であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の製造装置。
【請求項5】
基材上に印刷パターンを形成することと、前記印刷パターンを形成した前記基材を支持体に支持させることと、前記支持体に支持されている前記基材に可視光又は不可視光を照射しながら前記基材を撮影することと、この撮影によって得られる画像情報を利用して描画動作を決定することと、前記描画動作に従って前記基材にレーザビームを照射することにより、前記基材に黒色パターンを形成することとを含んだことを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
【請求項6】
基材と、不可視インキを用いて前記基材上に形成されたアライメントマークとしての印刷パターンと、前記基材にレーザ加工によって形成された黒色パターンとを具備したことを特徴とする情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−125938(P2009−125938A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299766(P2007−299766)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】