説明

情報記録装置

【課題】簡便な構成により、互いに異なるトラックピッチで形成した複数の領域における情報記録/再生を実現でき、製造工程の煩雑化を防止できる情報記録装置を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体に、仮想的に設けたバンドユニットごとに、互いに異なる第1、第2のいずれかのトラックピッチずつ離隔して配列されたトラックが形成され得る。各バンドユニット内において定められる調整トラックについては、前記第1、第2のいずれのトラックピッチにてトラックが形成された場合も、当該調整トラックに情報の記録又は再生を行う際のヘッドの位置が共通となるよう前記第1、第2トラックピッチが定められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置等の情報記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、種々の装置にハードディスクが搭載されている。例えば携帯用音楽プレーヤや、カーナビゲーションシステムなどにもハードディスクが搭載されている。こうした状況の下、ハードディスク自体の小型化を進めながら、情報の記録容量を増大させる技術の一つとして、例えば、記録媒体の円周内側から外側へと順次、隣接するデータトラックで一部を上書きしながら、板葺き屋根(shingle)のようにデータトラックを記録していく方法がある(以下、シングル(shingle)・ライト方式と呼ぶ)。これにより、実際の磁気ヘッドが書き込む記録幅よりも狭いデータトラックを実現できる。
【0003】
しかし、こうしたシングル・ライト方式のハードディスク装置であっても、記録媒体の一部にシングル・ライト方式のトラックを形成し、残りの部分には通常のトラックピッチずつ離隔したトラックを形成することが好ましい場合も多い。つまり、シングル・ライト方式で形成したトラックにはシーケンシャルな、例えば映像のストリームデータ等を記録し、通常のトラックピッチで形成したトラックには、ランダムアクセスの必要のあるデータを記録するなどの利用が考えられる。
【0004】
なお、こうした複数のトラックピッチの領域を形成する例については、特許文献1などに開示がある。
【特許文献1】特許第3689638号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、互いに異なるトラックピッチで形成した複数の領域のそれぞれについて、どのようにアドレッシングを行なうかについて開示がない。こうした場合、従来一般の技術では、トラックフォーマットごとにアドレッシング情報を設定し、トラックフォーマットごとに読み出しまたは書き込みヘッドの位置制御を行なわなければならない。このため、装置構成や制御が複雑になる。また、出荷前の検査や調整もトラックフォーマットごとに行なわなければならなくなり、製造工程が煩雑になる。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、簡便な構成により、互いに異なるトラックピッチで形成した複数の領域における情報記録/再生を実現でき、製造工程の煩雑化を防止できる情報記録装置を提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、情報記録装置であって、磁気記録媒体、当該磁気記録媒体に情報を記録し、また当該磁気記録媒体から情報を再生するヘッド、記憶部、及び制御部を備え、前記磁気記録媒体には、仮想的に設けたバンドユニットごとに、互いに異なる第1、第2のいずれかのトラックピッチずつ離隔して配列されたトラックが形成され得るとともに、前記バンドユニット内において定められる調整トラックについては、前記第1、第2のいずれのトラックピッチにてトラックが形成された場合も、当該調整トラックに情報の記録又は再生を行う際の前記ヘッドの位置が共通となるよう前記第1、第2トラックピッチが定められており、前記記憶部は、前記第1トラックピッチにてトラックが形成された場合の、各バンドユニットの調整トラックに情報を記録する際の前記ヘッドの位置と、前記第1トラックピッチにてトラックが形成された場合の、各バンドユニットの調整トラックから情報を再生する際の前記ヘッドの位置とを規定するトラックアドレステーブルを記憶し、前記制御部は、情報の記録又は再生の対象として指定されたトラックが、前記第2トラックピッチでトラックを形成したバンドユニットに含まれる場合に、前記トラックアドレステーブルに格納された情報に基づいて、前記指定されたトラックに関して情報を記録、又は再生する際のヘッドの位置を演算で求めることを特徴としている。
【0008】
このように特定のトラックピッチでのトラックアドレステーブルに基づき、異なるトラックピッチでトラックを形成したバンドユニットにおけるヘッドの位置を演算で求めるようにしたことで、装置構成や制御を簡便にすることができ、製造工程が煩雑になることも避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る情報記録装置は、例えばハードディスクであり、図1に示すように磁気記録媒体1と、ヘッドユニット2と、ヘッド駆動制御部3と、リード・ライト(RW)部4と、制御部5と、記憶部6とを含んで構成されている。
【0010】
磁気記録媒体1は、円盤状の磁気記録媒体である。この磁気記録媒体1は、支持部により円盤中心を回転中心として回転可能に支持される。この支持部は、筐体のベースに固定される。本実施の形態の磁気記録媒体1は、図2に示すように、同心円状のバンドユニットに分割される。またバンドユニット内には、例えば同心円状にデータトラックが形成されている。図2では4つのバンドユニットが形成される場合を例として説明している。
【0011】
また本実施の形態では、予めトラックピッチ候補が複数定められている。ここでは説明のため、第1トラックピッチTPwと、第2トラックピッチTPnの2つの互いに異なるトラックピッチが定められているものとする。またTPw>TWw>TPnであるとする。なお、TWwは、ヘッドユニット2に含まれる書き込みヘッド(ライトヘッド)の書き込み幅である。ここではTPnが、TWwよりも狭く、シングル・ライト方式のトラックのピッチとなる。
【0012】
また、この磁気記録媒体1上では、バンドユニットごとに、複数のトラックピッチ候補のいずれかのトラックピッチにてトラックが形成されている。またバンドユニット内では等間隔にトラックが形成される。つまり少なくともバンドユニットの間隔ごとに、第1トラックピッチTPwで形成したトラックへの記録時または再生時のヘッドの位置と、第2トラックピッチTPnで形成したトラックへの記録時または再生時のヘッド位置とが一致する(このトラックをここでは調整トラックと呼ぶ)。このことは言い換えれば、複数種類の物理トラックアドレス情報(以下、論理トラックアドレスとの区別の必要がない限り、単にトラックアドレス情報と呼ぶ)が用いられているディスク装置にあって、トラックアドレスのディスク半径位置が一定周期ごとに一致するようにしたということである。さらに言い換えると、第1トラックピッチTPwと第2トラックピッチTPnとは、整数比の関係にあるということになる。
【0013】
また、同じトラックピッチでトラックを形成するバンドユニットを隣接させて連続して形成しても構わない。以下の説明では、第1トラックピッチTPwでトラックを形成したバンドユニットが連続している領域を第1バンド、第2トラックピッチTPnでトラックを形成したバンドユニットが連続している領域を第2バンドと呼ぶ。
【0014】
ヘッドユニット2は、少なくとも一つのヘッドアセンブリを含む。このヘッドアセンブリは、図3にその概要を示すように、磁気記録媒体1の各記録面に対応するヘッド21と、各ヘッド21を支持するアーム22とを含んで構成されている。ヘッドユニット2は、ボイスコイルモータの回転中心Cを中心として回動可能なように支持される。ヘッド21は、記録ヘッド21wと、再生ヘッド21rとを含んで構成される。
【0015】
ヘッド駆動制御部3は、制御部5から入力される指示に従って、ボイスコイルモータを駆動し、ヘッドユニット2に含まれる、記録ヘッド21wや再生ヘッド21rの位置を制御する。RW部4は、ヘッド21に含まれる再生ヘッド21rが記録媒体1から読み出す情報に対し、復号などの所定処理を行い、制御部5に出力する。また、このRW部4は、制御部5から入力される記録対象の情報を符号化するなど所定処理し、ヘッド21に含まれる記録ヘッド21wを介して、磁気記録媒体1に当該情報を記録する。
【0016】
制御部5は、例えばマイクロコンピュータであり、記憶部6に格納されているプログラムに従って動作する。この制御部5は、ホストとなるコンピュータ等に接続され、ホスト側からの指示に基づいてヘッド駆動制御部3に対する指示を生成して出力し、磁気記録媒体1上で、ホスト側が要求する情報の記録されている場所へヘッド21を移動する制御を行なうとともに、RW部4が出力する情報をホスト側へ出力する。さらに制御部5は、ホスト側からの記録要求に従ってヘッド駆動制御部3に対する指示を生成して出力し、情報を記録する位置までヘッド21を移動する制御を行なうとともに、RW部4に対して記録の対象となる情報を出力する。この制御部5の動作については後に詳しく述べる。
【0017】
記憶部6は、RAMやROM等の記憶素子を含み、制御部5によって実行されるプログラムを保持する。また、この記憶部6にはトラックアドレステーブルが格納されている。
【0018】
本実施の形態では、各バンドユニットには、予め識別番号が割り当てられ、図4に示すように、第1バンドと第2バンドとが入れ替わるごとに、バンドの識別子と、当該バンドに含まれる最初のバンドユニットの識別番号と、当該バンド内の最初のバンドユニットにおける最初のトラックのトラック番号と、当該バンド内のバンドユニットでのトラックピッチと、を関連づけたバンドテーブルが記憶部6に格納される。以下の例では、第1トラックピッチTPwでトラックを形成した場合にバンドユニットには4つのトラックが形成可能であり、第2トラックピッチTPnでトラックを形成した場合にはバンドユニットに5つのトラックが形成可能であるとした場合を例として示している。
【0019】
そのため、最初のバンド(バンド識別子「0」)において、最初のバンドユニット「0」からバンドユニット「999」までの間の1000個のバンドユニットに、それぞれ4つずつのトラックが形成され、その積である4000番目のトラックから引き続くバンドユニットのトラック番号が割り当てられる。
【0020】
第2番目のバンド(バンド識別子「1」)においては、従って最初のトラックは「4000」となり、最初のバンドユニットは「1000」となる。ここで「1000」から「1799」までの800個のバンドユニットに、それぞれ5つずつのトラックが形成されるとしているので、4000から、800×5=4000だけ増分した「8000」が引き続くバンドユニットの最初のトラック番号となる。以下、同様にして、このバンドテーブルが生成される。
【0021】
また、この記憶部6には、アクセスの目標となるトラック上に、磁気記録媒体1の動径方向におけるヘッドの位置を規定するトラックアドレステーブルが格納される。本実施の形態のトラックアドレステーブルは、仮想的に、磁気記憶媒体1に形成されたすべてのバンドユニットについて、いずれも隣接するトラック間の距離が第1トラックピッチTPwとなるようにトラックを形成した場合のトラックアドレステーブルが格納される。この例は、図5に示すように、バンドユニットごとに、バンドユニットの最初のトラック(第1トラックピッチTPwで形成されたと仮定されるトラック)に記録ヘッドを位置させるときのヘッド位置の情報(WTw)と、バンドユニットの最初のトラック(第1トラックピッチTPwで形成されたと仮定されるトラック)に再生ヘッドを位置させるときのヘッド位置の情報(RDw)とを関連づけたものである。
【0022】
さらに、この記憶部6には、欠陥セクタテーブル(プライマリ・ディフェクト・テーブル(PDM))として、図6に例示するように、欠陥のあるセクタを示すトラック番号及びセクタ番号の組を列挙したテーブルが格納される。
【0023】
ここで制御部5の動作について説明する。まず、制御部5が磁気記録媒体1の初期化時に実行する調整処理について述べる。この調整処理では、図7に示すように、まず磁気記録媒体1をイニシャライズして、記録されている情報を消去する(S11)。また予め記憶部6に設定して格納されている、トラックピッチの情報TPw,TPnを記憶部6から読み出しておく。ここでトラックピッチTPwとTPnとは整数比の関係にあるものとし、以下では、1つのバンドユニットにトラックピッチTPwでトラックを形成した場合に4つ、トラックピッチTPnでトラックを形成した場合に5つだけトラックを形成できるものとする。つまり、TPw:TPn=5:4とする。
【0024】
制御部5は、バンドユニットの番号を表す変数iを「0」に初期化して(S12)、第1のトラックピッチTPwで形成するトラックのトラック番号を変数TRwとして、TRw=4×iとする(S13)。そして、磁気記録媒体1上の半径位置(回転中心からの距離)Rを、
R=R0+TPw×TRw
で演算する。ここでR0は、磁気記録媒体1上で最も内周側に形成するトラックに情報を記録する際の記録ヘッド21wの半径位置である。そして、制御部5は、このRを、トラック番号TRwのトラックへ情報を記録する際の記録ヘッド21wの半径位置WTw(TRw)として記憶部6に格納する(S14)。
【0025】
制御部5は、記録ヘッド21wを、この半径位置Rに移動させて、所定の情報を記録する(S15)。また制御部5は、再生ヘッド21rの中心が半径位置Rとなるよう初期的に設定し、再生ヘッド21rの半径位置を第1のトラックピッチTPwの範囲内で移動させつつ再生信号のエラーレート(SER)を測定する。そしてこのエラーレート(SER)が最小となる半径位置RDopを検出して、当該半径位置RDopを、トラック番号TRwのトラックから情報を再生する際の再生ヘッド21rの半径位置RDw(TRw)として記憶部6に格納する(S16)。
【0026】
さらに本実施の形態では、第1トラックピッチで形成したトラックが、シングル・ライト方式のトラックでないのに対して、第2トラックピッチで形成したトラックがシングル・ライト方式のトラックとなるので、あるトラックへアクセスする際の記録ヘッド21wの位置と再生ヘッド21rの位置との差は、第1トラックピッチで形成したトラックへのアクセスの際と、第2トラックピッチで形成したトラックへのアクセスの際とで異なる。そこで、ここでは第2トラックピッチで形成したトラックにアクセスする際(ここでは再生する際について説明する)のオフセットを別途定める必要がある。このとき、本実施の形態では、処理S15で形成したトラックを利用して第2トラックピッチのトラックにアクセスする際のオフセットを定める。すなわち、制御部5は第2のトラックピッチTPnで形成するトラックのトラック番号を変数TRnとして、TRn=5×iとする(S17)。
【0027】
そしてWTn(TRn)を処理S14で演算したRに設定して(S18)、この半径位置からさらにTPnだけ移動した位置WTn(TRn)+TPn=R+TPnを演算する(S19)。そして記録ヘッド21wをこのR+TPnの半径位置に移動させて、記録されている情報を消去する(S20)。このように、第1トラックピッチTPwのトラックに対する磁気ヘッドの位置を設定するために、処理S15において記録したトラックの一部を消去して、第2トラックピッチのトラックを形成させる。制御部5は、再生ヘッド21rの半径位置をR+TPn/2の位置に移動して、第2のトラックピッチTPnの範囲内で移動させつつ再生信号のエラーレート(SER)を測定する。そしてこのエラーレート(SER)が最小となる半径位置RDopを検出して、当該半径位置RDopを、第2トラックピッチTPnのトラック番号TRnのトラックから情報を再生する際の再生ヘッド21rの半径位置RDn(TRn)として記憶部6に格納する(S21)。
【0028】
制御部5は、バンドユニットの番号を表す変数iの値が最大値imax未満であるか否かを判断し(S22)、i<imaxであれば、iを「1」だけインクリメントして(S23)、処理S13に戻って処理を続ける(A)。
【0029】
以上の処理により、第1トラックピッチTPwのトラックについてはTRw=0,4,8…の4の倍数(バンドユニット内に形成されるトラックの数の倍数)のトラック番号のトラック(以下、第1トラックピッチの調整トラックと呼ぶ)について、情報を記録する際の記録ヘッド21wの半径位置と、調整トラックから情報を再生する際の再生ヘッド21rの半径位置とが演算される。また、第2トラックピッチTPnのトラックについてはTRn=0,5,10…の5の倍数(バンドユニット内に形成されるトラックの数の倍数)のトラック番号のトラック(以下、第2トラックピッチの調整トラックと呼ぶ)について、情報を記録する際の記録ヘッド21wの半径位置と、調整トラックから情報を再生する際の再生ヘッド21rの半径位置とが演算される。また、処理S22にて、i<imaxでなければ、処理を終了する。
【0030】
この例によると、比較的広いトラックピッチである第1トラックピッチにて調整トラックに所定信号を記録して、調整トラックの再生ヘッド21rの半径位置を定め、次いで当該調整トラックから比較的狭いトラックピッチである第2トラックピッチだけ記録ヘッド21wを移動して信号を消去して、第2トラックピッチの調整トラックを形成する。そして、この第2トラックピッチの調整トラックに対応する再生ヘッド21rの半径位置を定める。つまり第1トラックピッチのトラックに対する記録/再生時のヘッド21の位置を定めるために記録した信号の一部を消去して第2トラックピッチのトラックからの再生時のオフセットを定めることで、第2トラックピッチのトラックの形成のために再度書込みを行う負荷を軽減できる。
【0031】
なお、ここでは調整トラックとして記録ヘッド21wの半径位置を基準として再生ヘッド21rの半径位置を定める例を示したが、再生ヘッド21rの半径位置を基準として記録ヘッド21wの半径位置を定めるようにしても構わない。
【0032】
以上のようにして、バンドユニットごとに、
(1)第1トラックピッチの調整トラックに対応する記録ヘッド21wの半径位置及び再生ヘッド21rの半径位置(図5)、及び
(2)第2トラックピッチの調整トラックに対応する再生ヘッド21rの半径位置(オフセットテーブル)、
が記憶部6に格納されているようになる(図8)。
【0033】
次に、制御部5によるヘッド21の位置制御について説明する。制御部5は、ホスト側から入力される情報の再生指示に従い、次のように再生の対象となる情報が記録されているトラックへヘッド21を移動させる。ここで再生指示には、再生の対象となる情報が記録されているトラックのトラック番号Ttargetが含まれる。
【0034】
制御部5は、図4に示したバンドテーブルを参照して、対象となるトラック番号Ttargetが属しているバンドを特定する。例えば、Ttarget=4567であれば、図4のテーブルから、第1番目のバンドにTtargetが属していると判断され、さらに、当該バンドが第2トラックピッチのバンド(1つのバンドユニットあたり5つのトラックで構成される)であることから、Ttargetから、その属するバンドの最初のトラック番号を差し引いて、バンドユニットあたりのトラック数(ここでは5)で除する。
(4567−4000)/5
【0035】
この商は「113」で剰余は「2」である。そこで、Ttaget=4567が属するバンドユニットは、第1番目のバンドの最初のバンドユニット番号「1000」をこの商に加算して、「1113」となる。また、剰余が2であることから、当該「1113」番目のバンドユニットにある第3番目のトラックである(バンドユニットの最初のトラックについては剰余が「0」となるため)。
【0036】
制御部5は、そこで、「1113」番目のバンドユニットの調整トラックに対応する再生ヘッド21rの半径位置の情報を記憶部6から読み出す。そして、トラック番号Ttarget=4567に対応する再生ヘッド21rの半径位置を、
RDn(4567)=RDn(4565)+2×TPn
として演算する。なお、「4565」は、トラック番号4567のトラックが属するバンドユニットの調整トラックである。制御部5は、ここで演算した半径位置RDn(4567)に再生ヘッド21rを移動させるようヘッド駆動制御部3に指示する。
【0037】
この制御部5の指示に従い、ヘッド駆動制御部3が、磁気記録媒体1の回転中心から半径RDn(4567)の位置(半径位置)に、再生ヘッド21rを移動する。そして再生ヘッド21rが磁気記録媒体1から読み出した情報がRW部4によって増幅、復号されて制御部5に出力され、制御部5が、当該情報をホストへ出力する。
【0038】
また、制御部5は、ホスト側から情報の記録指示の入力を受けたときには次のように動作する。ここで記録指示にも、記録の先となるトラックのトラック番号Ttargetが含まれる。
【0039】
制御部5は、図4に示したバンドテーブルを参照して、対象となるトラック番号Ttargetが属しているバンドを特定する。例えば、Ttarget=4567であれば、情報の再生指示を受けたときと同様にして、Ttaget=4567が属するバンドユニット(「1113」)と、当該バンドユニットの何番目のトラックかを表す情報(剰余「2」)とを演算する。
【0040】
ここで、第2トラックピッチの調整トラックに対応する記録ヘッド21wの半径位置の情報は記憶部6に格納されていないので、制御部5は、「1113」番目のバンドユニットの調整トラックにおける第1トラックピッチの調整トラックに対応する記録ヘッド21wの半径位置の情報WTw(4565)を記憶部6から読み出す。そして、トラック番号Ttarget=4567に対応する記録ヘッド21wの半径位置を、
WTn(4567)=WTw(4565)+2×TPn
として演算する。制御部5は、ここで演算した半径位置WTn(4567)に記録ヘッド21wを移動させるようヘッド駆動制御部3に指示する。
【0041】
この制御部5の指示に従い、ヘッド駆動制御部3が、磁気記録媒体1の回転中心から半径WTn(4567)の位置(半径位置)に、記録ヘッド21wを移動する。そしてホストから記録の対象として入力される情報が、RW部4によって符号化され、増幅され、記録ヘッド21wが当該情報を磁気記録媒体1上に記録する。
【0042】
このように本実施の形態では、調整トラック以外のトラックについては、調整トラックからの補間演算によって、対応する再生ヘッド21r及び記録ヘッド21wの半径位置を決定する。
【0043】
なお、ここでは第2トラックピッチのトラックに対してアクセスする場合について説明したが、第1トラックピッチのトラックに対してアクセスする場合も略同様である。例えば制御部5が、ホストからトラック番号Ttarget=1234なるトラックに対しての情報の記録または再生の指示を受けた場合、図4のテーブルから、第0番目のバンドにTtargetが属していると判断され、さらに、当該バンドが第1トラックピッチのバンド(1つのバンドユニットあたり4つのトラックで構成される)であるので、Ttargetから、その属するバンドの最初のトラック番号を差し引いて、バンドユニットあたりのトラック数(ここでは4)で除して、
(1234−0)/4
【0044】
この商は「308」で剰余は「2」である。そこで、Ttaget=1234が属するバンドユニットは、第0番目のバンドの最初のバンドユニット番号「0」をこの商に加算して、「308」となる。また、剰余が2であることから、当該「308」番目のバンドユニットにある第3番目のトラックであることとなる。
【0045】
制御部5は、そこでホストからの指示が再生指示であれば、「308」番目のバンドユニットの調整トラックに対応する再生ヘッド21rの半径位置の情報を記憶部6から読み出す。そして、トラック番号Ttarget=1234に対応する再生ヘッド21rの半径位置を、
RDw(1234)=RDw(1232)+2×TPw
として演算する。なお、「1232」は、トラック番号1234のトラックが属するバンドユニットの調整トラックである。制御部5は、ここで演算した半径位置RDw(1234)に再生ヘッド21rを移動させるようヘッド駆動制御部3に指示する。
【0046】
また、ホストからの指示が記録指示であれば、「308」番目のバンドユニットの調整トラックに対応する記録ヘッド21wの半径位置の情報を記憶部6から読み出す。そして、トラック番号Ttarget=1234に対応する記録ヘッド21wの半径位置を、
WTw(1234)=WTw(1232)+2×TPw
として演算する。なお、「1232」は、トラック番号1234のトラックが属するバンドユニットの調整トラックである。制御部5は、ここで演算した半径位置WTw(1234)に記録ヘッド21wを移動させるようヘッド駆動制御部3に指示する。
【0047】
なお、制御部5は、欠陥セクタテーブルを用いて、アクセスするトラックに欠陥セクタがある場合は、当該欠陥セクタをスキップして使用しない(情報の記録に用いない)か、または、欠陥セクタに記録するべき情報を、予め定めた予備セクタに記録し、欠陥セクタから再生するべき情報を、予め定めた予備セクタから再生する。
【0048】
本実施の形態においては、磁気記録媒体1の外周から内周へと順次トラック番号を増分させている。そこでシングルライトされるトラックピッチである第2トラックピッチのバンドの内周に、シングルライトではないトラックピッチである第1トラックピッチのバンドが隣接する箇所では、当該第2トラックピッチのバンドに含まれる最終トラック(最も内周のトラック)をダミートラックとし、当該ダミートラックのすべてのセクタを、欠陥セクタテーブルに予め含めておく。これにより、第2トラックピッチのバンドの最も内側のトラック(第2トラックピッチ)をシングルライトする際に、隣接バンド(第1トラックピッチ)の最初のトラックの一部を消去してしまうことを防止する。
【0049】
このようにダミートラックを欠陥セクタテーブルに含めて扱う場合、当該ダミートラックとして欠陥セクタテーブルに登録されたセクタ(本来、欠陥のないセクタ)については、物理フォーマット(以下、単にフォーマットと呼ぶ)の変更の際に、再度利用できることが望ましい。そこで、欠陥セクタテーブルには、使用しないトラックとセクタとを特定する情報に関連づけて、フォーマット変更の際に再度利用するか否かを表す再利用フラグ情報を記録しておいてもよい。
【0050】
さらに、本実施の形態では、各バンドユニットにおけるトラックピッチの設定をフォーマット時などに適宜設定することができる。次にトラックピッチの設定を変更した場合の制御部5の処理について述べる。この処理では制御部5は、欠陥セクタテーブルを再設定する。フォーマット後のトラックピッチを指定する情報の入力を受けて、次のように動作する。
【0051】
制御部5は、図9に示すようにバンドユニット番号を表す変数iと更新前のトラック番号を表す変数Tpreと更新後のトラック番号を表す変数Taltとをいずれも「0」に設定する(S31)。そして制御部5は、欠陥セクタの変換処理を実行する。すなわち、制御部5は、記憶部6に格納されているバンドテーブルを参照してi番目のバンドユニットについてのトラックピッチの情報を取得し、当該取得した情報と、入力されたトラックピッチの指定の情報とを比較する。ここでトラックピッチの指定が現在の状態と一致していれば、欠陥セクタテーブルを参照して、i番目のバンドユニットに属していたトラック(トラック番号Tpre,Tpre+1,…)に関係する欠陥セクタを検索する。そして、検索の結果、欠陥セクタが見いだされれば、当該見いだした欠陥セクタについて、対応する更新後のトラック(トラック番号Talt,Talt+1,…)の番号に書き換えて、更新後の欠陥セクタテーブルに記録する(S33)。
【0052】
一方、この処理S33において、i番目のバンドユニットに対するトラックピッチの指定が、バンドテーブルにおける設定と一致していなければ、i番目のバンドユニットに属していたトラック(トラック番号Tpre,Tpre+1,…)に関係する欠陥セクタを欠陥セクタテーブルから検索する。そして検索の結果、i番目のバンドユニットに属していたトラックに関係する欠陥セクタが見いだされれば、当該欠陥セクタのあるトラックのトラック番号Tqを取得する。そしてトラックアドレステーブル、及び/又はオフセットテーブルを参照して、現在(更新前)のトラックの境界の半径位置を演算する。つまり例えばトラック番号Tqから情報を再生するときの再生ヘッド21rの半径位置Rを、情報の再生時と同様の処理によって演算する。
【0053】
そして、バンドテーブルにおいてi番目のバンドユニットが第1トラックピッチであるとされていれば、境界の半径位置を、それぞれ、
R−Tpw/2
R+Tpw/2
と演算する。
【0054】
そして制御部5は、指定により更新された後のi番目のバンドユニットにおいて、R−Tpw/2からR+Tpw/2の半径位置に係る少なくとも一つのトラック(欠陥部分を内包する可能性のあるトラック)のトラック番号を演算する。模式的に図10を参照して説明すると、本実施の形態では、バンドユニット内に形成するトラックのトラックピッチが変化しても各バンドユニットの境界は変化しない。そこで、図10の右側に示した第1トラックピッチ(バンドユニットあたりトラック4つを形成するトラックピッチ)のバンドユニットを、図10の左側に示した第2トラックピッチ(バンドユニットあたりトラック5つを形成するトラックピッチ)のバンドユニットに更新する場合、第1番目のトラックに欠陥セクタがあった場合、第2トラックピッチのトラックでは、更新前の第1番目のトラックの境界範囲内と重なりあう第1番目及び第2番目のトラックに当該欠陥セクタ部分が含まれる可能性があることとなる。
【0055】
そこで制御部5は、欠陥セクタテーブルにおけるトラック番号Tqのエントリーを、欠陥部分を内包する可能性のあるトラック番号についての少なくとも一つのエントリーとして書き換える。図10の例の場合、第1番目のトラックに含まれるセクタjが欠陥セクタであった場合、欠陥セクタテーブルにある「トラック番号1、セクタj」のエントリーに基づいて、「トラック番号1、セクタj」のエントリーと、「トラック番号2、セクタj」のエントリーとを生成して、更新後の欠陥セクタテーブルに記録する。
【0056】
また同様に、更新前のi番目のバンドユニットが第2トラックピッチであれば、境界の半径位置をそれぞれ、
R−Tpn/2
R+Tpn/2
と演算して、同様の欠陥セクタ変換処理(処理S33)を行う。このように比較的狭いトラックピッチから比較的広いトラックピッチへ変換する場合も、図11に示すように、更新前の元のトラックが、更新後の2つのトラックに関わる場合がある。なお、図10、図11では、説明の便宜のため、互いに異なるトラックピッチのトラックが周方向に隣接しているように示したが、現実にこのようなフォーマットになっているものではない。
【0057】
そして制御部5は、トラック番号Tpreに、i番目のバンドユニットに含められていた更新前のトラックの数を加算し、またトラック番号Taltに、i番目のバンドユニットに含める更新後のトラックの数を加算して(S34)、i番目のバンドユニットが、最終のバンドユニット(最も内周のバンドユニット)であるか否かを調べ(S35)、そうでなければiを「1」だけインクリメントして(S36)、処理S33に戻って処理を続ける。また、処理S35においてi番目のバンドユニットが最終のバンドユニットであれば、処理を終了する。
【0058】
この欠陥セクタテーブルの変換処理により、バンドユニット内のトラックピッチが変更された場合も、欠陥セクタの情報が維持される。なお、この欠陥セクタテーブルの変換処理において、更新前の欠陥セクタのエントリーに、再利用フラグが付されている場合(更新前の欠陥セクタのエントリーがダミートラックを形成するために便宜的に設定されたものである場合)は、当該エントリーに対応する更新後の欠陥セクタのエントリーを、更新後の欠陥セクタテーブルに含めない。
【0059】
この欠陥セクタテーブルの更新処理を完了すると、制御部5は、記憶部6に格納されていた更新前の欠陥セクタテーブルを、更新後の欠陥セクタテーブルで上書きし、以降は、当該更新後の欠陥セクタテーブルに基づいて、情報の記録再生を行なう。
【0060】
本実施の形態の情報記録装置によれば、磁気記録媒体1に複数のトラックフォーマットが混在しても、そのうち一つのトラックフォーマットについてのアドレッシング情報を設定し、当該設定に関わるトラックフォーマットとは異なるトラックフォーマットのトラックに読み出しまたは書き込みヘッドの位置制御を行なうときには、設定されているアドレッシング情報に基づく演算により、設定されているものとは異なるトラックフォーマットのアドレッシング情報を生成してヘッドの位置制御を行なう。これにより、装置構成や制御を簡略化でき、出荷前の検査や調整もアドレッシング情報を設定する一つのトラックフォーマットについて行えばよく、製造工程を簡便にできる。すなわち本実施の形態によると、簡便な構成により、互いに異なるトラックピッチで形成した複数の領域における情報記録/再生を実現でき、製造工程の煩雑化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報記録装置の概略構成例を表す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る情報記録装置の磁気記録媒体上に形成するバンドユニットの例を表す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る情報記録装置のヘッドの構成例を表す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る情報記録装置のバンドテーブルの内容例を表す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る情報記録装置におけるトラックアドレステーブルの内容例を表す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る情報記録装置における欠陥テーブルの内容例を表す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る情報記録装置におけるトラックアドレステーブル及びオフセットテーブルの生成処理例を表すフローチャート図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る情報記録装置におけるオフセットテーブルの内容例を表す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る情報記録装置における欠陥セクタの変換処理例を表すフローチャート図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る情報記録装置における欠陥セクタの変換例を表す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る情報記録装置における欠陥セクタの別の変換例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 磁気記録媒体、2 ヘッドユニット、3 ヘッド駆動制御部、4 リード・ライト部、5 制御部、6 記憶部、21 ヘッド、22 アーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体、当該磁気記録媒体に情報を記録し、また当該磁気記録媒体から情報を再生するヘッド、記憶部、及び制御部を備え、
前記磁気記録媒体には、仮想的に設けたバンドユニットごとに、互いに異なる第1、第2のいずれかのトラックピッチずつ離隔して配列されたトラックが形成され得るとともに、前記バンドユニット内において定められる調整トラックについては、前記第1、第2のいずれのトラックピッチにてトラックが形成された場合も、当該調整トラックに情報の記録又は再生を行う際の前記ヘッドの位置が共通となるよう前記第1、第2トラックピッチが定められており、
前記記憶部は、前記第1トラックピッチにてトラックが形成された場合の、各バンドユニットの調整トラックに情報を記録する際の前記ヘッドの位置と、前記第1トラックピッチにてトラックが形成された場合の、各バンドユニットの調整トラックから情報を再生する際の前記ヘッドの位置とを規定するトラックアドレステーブルを記憶し、
前記制御部は、情報の記録又は再生の対象として指定されたトラックが、前記第2トラックピッチでトラックを形成したバンドユニットに含まれる場合に、前記トラックアドレステーブルに格納された情報に基づいて、前記指定されたトラックに関して情報を記録、又は再生する際のヘッドの位置を演算で求めることを特徴とする情報記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報記録装置であって、
前記第2トラックピッチは、注目トラックに隣接するトラックにより、注目トラックの一部が上書きされるトラックピッチであり、
前記制御部は、前記第1トラックピッチにて形成したトラックに基づいて、前記トラックアドレステーブルを生成するとともに、当該第1トラックピッチにて形成したトラックのうち、前記調整トラックの一部を消去して第2トラックピッチで形成したと同じ幅のトラックを形成して、当該第2トラックピッチで形成したと同じ幅のトラックから情報を再生する際の、前記ヘッドの位置を決定して、前記記憶部にオフセットテーブルとして格納し、
当該オフセットテーブルは、再生の対象として指定されたトラックが、前記第2トラックピッチでトラックを形成したバンドユニットに含まれる場合に、前記ヘッドの位置を定める際に、前記制御部により利用されることを特徴とする情報記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−257797(P2007−257797A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83830(P2006−83830)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】