情報通信装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、デジタル・データの伝送に関し、特にテレビ信号を表すデジタル・データの伝送に関する。
【0002】
【従来の技術】慣例的に高品位テレビまたはHDTV(high definition television)と称する次世代のテレビ技術のために、何らかの形のデジタル伝送が必要とされることは一般の認めるところである。これは、主に、デジタル信号処理の方がアナログ信号処理より強力なビデオ圧縮方式が実施できるためである。しかしながら、デジタル伝送は種々の受信位置における信号対雑音比(SNR)の僅かな変化に対し潜在的に敏感であるため完全なデジタル伝送システムに頼るには幾分不安があった。
【0003】この現象は、時として敷居効果といわれるが、テレビ放送局からそれぞれ50マイルおよび63マイルの位置にある2つの受信機の場合を考えることにより説明することができる。放送信号の電力は、大まかに言って距離の2乗の逆数として変化するので、これらのテレビ受信機によって受信される信号電力の量の差は約2dBであると容易に確かめることができる。ここで、デジタル伝送方式を使用し、かつ50マイル離れた受信機への伝送が10-6のビット誤り率を示すものと仮定する。別のテレビ受像機に対する2dBの信号損失がその受信機の入力におけるSNRの2dBの減少に変化する場合、この受信機は、約10-4のビット誤り率で動作することになる。50マイル離れたテレビ受信機が、このようなビット誤り率であれば、受信状態は良好であるが、他方のテレビ受信機の受信状態は、おそらく非常に悪いはずである。このように短い距離で性能が急速に劣化することは、放送業界により受け入れられるとは一般に思われない。(比較によれば、現在使用されているアナログ・テレビ伝送方式に対する性能の劣化の方が、はるかに穏やかである。)
【0004】従って、この問題を解決するテレビ用途での使用に適したデジタル伝送方式が必要とされている。a)ケーブル・ベースの再生型のリピータ、またはb)音声帯域データ用途におけるフォール・バック・データ速度または制約を受ける電話回線の使用など、その他のデジタル伝送環境で用いられる解決方法が自由空間のテレビ放送環境に適用できないのは明かである。
【0005】ここでは総括的に「エラー不均一保護信号方式」と称するデジタル・テレビ信号の空中放送のための標準的なデジタル伝送の欠点を克服する有利な技術は、特別な種類のソース符号化段階とそれに続く特別な種類のチャネル割り当て段階とからなる。さらに具体的には、ソース符号化段階により、テレビ信号を2つ以上のデータ流で表し、チャネル割り当て段階において、種々のデータ流のデータ要素がチャネル誘導エラーの異なる確率を有する、即ち受信機において誤って検出される確率が異なる。例えば、前記のデータ流の第1のデータ流は、全体的なテレビ信号のうち最も重要と見なされる成分---例えば、音声、フレーミング情報、および核心部分であるビデオ情報を伝え、このデータ流は、そのデータ要素がチャネル誘導エラーの最低の確率を有するように割り当てられる。前記のデータ流の第2のデータ流は、全体的なテレビ信号のうち、第1のデータ流の成分ほど重要でないと考えられる成分を伝え、そのデータ要素が第1のデータ流のチャネル誘導エラーの確率ほど低くない確率を有するように割り当てられる。一般に、幾つのデータ流でも全体的なテレビ信号を表すことが可能であり、各データ流が、重要度の異なる成分を伝え、それぞれのエラー確率を持つようにすることができる。この方法によって、テレビ受信機の所在地における受信品質の穏やかな劣化が可能となる。これは、放送送信機からの距離が増加するにともない受信機のビット誤り率が増加し始めるため、最初に影響を受けるテレビ信号情報が比較的重要でない部分を表すビットだからである。
【0006】前記の全体的な概念を実施する方式の場合、ソース符号化段階で生成される異なる等級のデータ要素に対して異なるレベルのエラー保護を与えて、トレリス符号化変調などの符号化変調を用いることによって雑音免疫性を高めるわけであるが、所定の2N次元のチャネル記号コンステレーション(N≧1)における記号をグループ分けし、各グループを「超記号(supersymbol)」と称する。一連の記号期間のそれぞれの期間において、所定数の最も重要なデータ要素がチャネル符号化され、その結果得られるチャネル符号化されたデータ要素によって、超記号の中の1つを特定する。残りのデータ要素も、同様にチャネル符号化されて、前記の特定された超記号から特定の記号を選択するのに使用される。
【0007】これまで説明した方法は、通常の符号化変調方式もチャネル記号を一般に「部分集合」と称するグループに分割するという点で、概してこれと類似している。しかしながら、通常の符号化変調方式では、部分集合における記号間の最小ユークリッド距離(以降、「最小距離」と称する)が、全体としてのコンステレーションにおける記号間の最小距離より大きいという制約の下で部分集合が形成される。しかし、ここで説明する方法では、超記号の記号間の最小距離は、全体としてのコンステレーションにあるの記号間の最小距離と同じである。この距離の特性のため、最も重要なデータ要素に対する雑音免疫性の方がその他のデータ要素に対するそれより多く余裕が与えられ、この免疫性は、超記号間の最小距離を可能な限り大きく(通常は、コンステレーションの記号間の最小距離より大きい)保つことにより、最適化される。具体的には、ひとたび超記号を定義すると、各超記号が通常のコンステレーションにおける通常の記号であるかのように、最も重要なデータ要素に対する符号を設計することが可能となる。このようにして、最も重要なデータ要素に対して特定の程度の雑音免疫性を達成することができる(これは、その他のデータ要素に対して達成できる雑音免疫性より高い)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、前記の種類の不均一エラー検出信号方式の設計にさらに柔軟性を与えることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、チャネル割り当て段階で入力されたデータ流の少なくとも1つのデータ要素の符号化にいわゆるマルチレベル符号化を用いる。例えば、超記号の選択を最終的に決定するデータ要素の符号化にマルチレベル符号化を用いることができる。また、これは、選択された超記号の中からの特定の記号の選択を決定するデータ要素を符号化する場合も使用することができる。あるいは、マルチレベル符号化は、両ストリームに対しても使用することができる。マルチレベル符号化が実際にどのように用いられるかは、符号化されているデータの特定の等級に与えようとするエラー保護の程度の点から特定用途の必要条件に依存する。
【0010】この方法には少なくとも2つの利点がある。1つは、符号化される全体的なデータ流のうち最も重要と考え、扱われるべき所望の割合を実現するようにチャネル符号化を設計する際に高い柔軟性が得られることである。もう1つの利点は、最も重要なデータと重要度の低いデータとの間で利用できる冗長性を配分する際に高い柔軟性が与えられることにより、それらの2つの等級のデータに対し所望する特定の異なる水準のエラー保護を達成する機構が得られることである。さらに、別の利点は、この方法により、本発明によってマルチレベル符号化されるストリームの何れに属するデータ要素の部分ストリームにも異なる水準の保護を与えることができることである。
【0011】マルチレベル符号化そのものは、当分野で既に周知の方法である。その方法によれば、符号化するべきデータ要素を2つ以上の部分ストリームに分割する。次に、部分ストリームの中の1つ以上の部分ストリームに対し所望の任意の種類の符号を用いて個々に冗長符号化を行う。符号化された個々の部分ストリームは、符号化されずに残った部分ストリームと共にマルチレベル符号の出力を形成する。この出力は、従来の技術では、チャネルによって伝送するために所定のコンステレーションのチャネル記号を識別するために使用する。しかし、従来の技術は、マルチレベル符号化を有利に用いて全体的なエラー不均一保護信号方式のデータ流の符号化できるという本発明の中心にある教訓を取り入れていない。
【0012】
【実施例】実施例の説明に進む前に、本明細書において説明する種々のデジタル信号方式の概念は、例えばデジタル無線分野および音声帯域伝送分野においてすべて周知であるため、ここでは詳細に説明する必要がないことに留意されたい。これらの中には、Nをある整数とした2N次元のチャネル記号コンステレーションを用いる多次元信号方式、トレリス符号化、スクランブリング(攪乱方式)、通過帯域の整形、等化、ビタビまたは最尤復号化などが含まれる。これらの概念の説明は、次の文献にある。米国特許第3,810,021号(1974年5月7日発行、発明者:I.カレット(Kalet)ほか)、米国特許第4,015,222号(1977年5月29日発行、発明者:J.ウェルナー(Werner))、米国特許第4,170,764号(1979年10月9日、発明者:J.サルツ(Salz)ほか)、米国特許第4,247,940号(1981年1月27日発行、発明者:K.H.ミューラー(Mueller))、米国特許第4,304,962号(1981年12月8日発行、発明者:R.D.フレイカシ(Fracassi)ほか)、米国特許第4,457,004号(1984年6月26日発行、発明者:A.ガーショウ(Gersho)ほか)、米国特許第4,489,418号(1984年12月18日発行、発明者:J.E.マゾ(Mazo))、米国特許第4,520,490号(1985年5月28日、発明者:L.ウェイ(Wei))、米国特許第4,597,090号(1986年6月24日、発明者:G.D.フォーニ(Forney)二世)。
【0013】また、文脈から明らかなとおり、図示した種々の信号導線にはアナログ信号または直列もしくは並列のビットを通してもよい。
【0014】図1において、テレビ(TV)信号源101が、絵の情報を表すアナログ・ビデオ信号を発生し、この信号が、ソース符号器104に渡される。ソース符号器104は、データ要素の少なくとも1つの部分集合が残りのデータ要素によって表される情報の部分より重要な情報の一部を表すようなデータ要素からなるデジタル信号を生成する。具体的には、各データ要素は1つのデータ・ビットであり、一連の記号期間の各々に対して平均m+kの情報ビットが生成される。2Nがコンステレーション(後述)の次元数である場合、記号期間は、N個の信号期間からなる。信号期間は、T秒の持続時間を有し、従って、各記号期間は、NT秒の持続時間を有する。ここに明示的に開示した実施例では、偶然に、2次元のコンステレーションを使用している、即ちN=1である。そこで、これらの実施例に対しては、信号期間および記号期間は同じである。
【0015】前記のm+k情報ビットのうち、記号期間あたりmビットのストリームに含まれるビットは、導線105に現れるが、記号期間あたりkビットのストリームに含まれ、かつ導線106に現れるビットより重要である。
【0016】導線105および106上のビットは、スクランブラ110および111において独立してスクランブルされ、それぞれmおよびkの並列ビットが導線112および113上に出力される。(スクランブル処理は、習慣的に直列ビット・ストリームに対して実施される。このように、図1に明示的には示していないが、スクランブラ110および111は、スクランブル処理の前にそれぞれの入力ビットに対し並列/直列変換を行い、さらに出力において直列/並列変換を行うものと仮定できる。)次に、信号はチャネルに割り当てられる。具体的には、導線112および113上のそれぞれのビット・グループは、チャネル符号器114および115に接続される。これらのチャネル符号器は、各記号期間に、rおよびpビットのそれぞれ拡張されたグループを導線121および122上に生成する。ただし、r>mかつp>kである。これらのビットの値の組み合わせで、チャネル記号の所定のコンステレーション(詳細に後述するような図4のコンステレーションなど)の特定のチャネル記号が特定される。特定されたチャネル記号の複雑な平面座標がコンステレーション・マッパー131(例えば、参照テーブルまたは論理要素をそのまま組み合わせたものとして実現される)によって出力される。次に、通常の通過帯域の整形およびテレビ変調が、通過帯域整形器141およびテレビ変調器151によってそれぞれ行われる。そして、結果のアナログ信号は、アンテナ152によって通信チャネル(この場合、自由空間チャネル)で放送される。
【0017】本発明の理論的基礎を理解するために、ここで図3を考察する。図3は、デジタル無線および音声帯域データ伝送システムにおいて通常使用される種類の標準的な2次元データ伝送コンステレーションを示す。この標準的な方式(慣例的に直交振幅変調(QAM)と称する)において、それぞれ4つの情報ビットからなるデータ・ワードが、16の可能な2次元チャネル記号の1つへと割り当てられる。各チャネル記号は、同相座標、即ちI座標を水平軸に、直交位相座標、即ちQ座標を垂直軸に有する。各軸におけるチャネル記号の座標は、±1または±3であるから、各記号とそれに水平または垂直の方向に隣接する記号の各々との間の距離は、すべての記号に対して同じであり、この距離は2である。この一様な配置の結果として、同じ量の雑音免疫性がすべての4情報ビットに与えられる。
【0018】周知のとおり、記号を(この例では)16以上有する「拡張した」2次元コンステレーションがトレリスまたはその他のチャネル符号に関連して使用される符号化変調方式を用いて、帯域幅の効率(信号期間あたりの情報ビット)を犠牲にすることなく雑音免疫性を改善することが可能である。例えば、32の記号からなる2次元コンステレーションを8状態トレリス符号と共に使用して図3の符号化しない場合より約4dB改善した雑音免疫性を達成しながら、依然として信号期間あたり4情報ビットの伝送を与えることができる。しかしながら、この場合も、本質的に、すべての4情報ビットに対し同じ量の雑音免疫性が与えられる。
【0019】さらに、異なる等級のビットに対しチャネル誘導エラーの異なる水準の保護を与える一方で、符号化変調の周知の雑音免疫性および対域幅効率の利点が実現されることが分かる。具体的には、最も重要なビットの等級に対し、前記の通常の符号化変調方式で達成できるものより十分高い水準のエラー保護を達成することが可能である。事実、図1の送信機は、さらに詳細に説明するように、この概念を具体化するものである。
【0020】図1の送信機で使用されるコンステレーションは、例えば、図4に示した2次元の32記号コンステレーションである。この信号コンステレーションの記号は、「超記号」と称するグループへと分割される。具体的には、図4のコンステレーションは、2r=22=4個の超記号に分割される。この例では、各グループを囲む四角によって示したように、4象限にある点は、それぞれの超記号を構成する。超記号は、総括的にΩb4b3と表す。ただし、b4=0,1であり、b3=0,1である。従って、4つの超記号は、Ω00、Ω01、Ω10、およびΩ11である。
【0021】この例では、m=1.625かつk=2.125であるから、全体的なビットレートは、1記号あたり3.75ビットであり、43.33%のビットが最も重要なビットのクラスにある。(このような小数の平均ビットレートを現実に達成できる方法は、この説明の続きで明らかになる。)符号器114は、この符号器114に入力される1.625ビットごとに平均0.375ビットの冗長ビットを加えてr=2となるようにする。符号器115は、この符号器115に入力される2.125ビットごとに平均0.875ビットの冗長ビットを加えてp=3となるようにする。導線121上の(r=)2ビットによって、4つの超記号のうちの1つを特定し、導線122上の(p=)3ビットによって、特定された超記号内の8つのチャネル記号のうちの特定のものを選択する。コンステレーションの分割は、超記号の記号間の最小距離(図4ではd2で表す)がコンステレーション全体における記号間の最小距離と同じになるように、行われる。この特性が与えられると、(a)符号器114および115によって実装される符号、および(b)比率d1/d2(d1は、超記号間の最小距離である)を適切に選択することによって、最も重要なビットに対する雑音免疫性を高めることができる。(超記号の任意の対の間の距離が一方の超記号の任意の記号と他方の超記号の任意の記号との間の最小距離であるとき、パラメータd1は、超記号のすべての対の間の距離の最小によって与えられる。)
【0022】具体的には、4つの超記号が通常のコンステレーションの4つの通常の記号であるかのように、ここで符号化変調方式を最も重要なビットのために構成することができる。そのような符号化変調方式を設計するために、4つの超記号を通常どうり所定の数の部分集合に分割する。この場合、2つの部分集合があり、b3の値によって、超記号の各々が何れの部分集合に属するかを示す。従って、部分集合「0」と称する1つの部分集合は、超記号Ω00およびΩ10からなり、部分集合「1」と称する他方の部分集合は、超記号Ω01およびΩ11からなる。適切な符号を用いて最も重要な入力ビットを符号化して、a)一連のこれらの部分集合を定義し、かつb)その部分集合列の各部分集合に対し部分集合内の特定の超記号を選択するような符号化された出力ビット流を生成する。次に、このようにして選択された超記号の各々から特定の記号を送信するべく選択するために、重要度の低いビットを用いる。この例では、既に見たように、この選択には、符号化変調の使用も伴う。
【0023】本発明によれば、チャネル符号器の中の最低1つは、マルチレベル符号を実施する。この例では、特に、それらの両方がこれを実施する。既に述べたとおり、マルチレベル符号は、符号化するべきデータ要素(この例では、ビット)を2つ以上の部分ストリームに分割した符号である。そして、部分ストリームのうちの1つ以上の各ストリームを、所望の任意の種類の符号を用いて、個々に冗長符号化する。個々に符号化された部分ストリームは、符号化されずに残った部分ストリームと共に、マルチレベル符号の出力を形成する。
【0024】符号器114および115に対する説明のための実施例を図5および6に示す。符号器114は、2レベル符号を実施するため、2つの符号器1141および1142を備えている。符号器1141によって実施される冗長符号は、G.C.クラーク(Clark)二世およびJ.B.ケイン(Cain)による「デジタル通信のための誤り訂正符号化(Error-Correction Coding for Digital Communications)」(ニュー・ヨーク:プリーナム、1981年)に示されているような通常のビット率(R=)7/8のゼロ・サム・パリティ・チェック符号である。符号器1142によって実施される冗長符号は、通信に関するIEEE会報COM-32巻p.315-p.318(1984年)のY.ヤスダほかによる「ソフト決定のビタビ復号のための高率で破裂させた畳み込み符号(High-rate punctured convolutional codes for soft decision Viterbi decoding)」において示されたような通常のビット率(R=)3/4で破裂させた畳み込み符号である。動作中、符号器114の内部の直列/並列変換器1144は、8記号にわたって13ビットを取り入れ、前記のように記号期間あたりm=1.625ビットの平均入力ビット率を与える。変換器1144の出力は、ビットからなる2つの部分ストリームからなる。一方の部分ストリームにおいては、ビットが7の並列グループで符号器1141に与えられる。他方の部分ストリームでは、ビットが6の並列グループで符号器1142に与えられる。符号器1141は、7入力ビットのすべてのグループに対し、8ビット・バッファ1147に与えられる8出力ビットを生成する。同時に、符号器1142は、6入力ビットのすべてのグループに対し、バッファ1148に与えられる8出力ビットを生成する。バッファ1147および1148の内容は同期的に読み出され、各記号期間に2つの各バッファから1ビットずつビットの対が導線121に与えられるようになっている。これらのビットが、前記のビットb3およびb4である。ビットb3は、2つの部分集合「0」または「1」の中の1つを特定し、b4は、特定された部分集合の2つの超記号の1つを特定する。このように、2つのビットb3およびb4により、4つの超記号Ω00、Ω01、Ω10、およびΩ11の1つを特定する。
【0025】符号器115は、3レベル符号を実現するもので、それなりに符号器1151、1152および1153を備えている。符号器1151および1152は、それぞれ符号器1141および1142によって実施されるものと同じ符号を実施する。符号器1153は、前記のクラークおよびケインの文献に示されたような率R=1/2の畳み込み符号を実施する。動作中、直列/並列変換器1154は、8記号の期間にわたって17ビットを取り込み、前記のように記号期間あたりk=2.125ビットの平均入力ビット率を与える。変換器1154の出力は、ビットの3つの部分ストリームからなる。1つの部分ストリームのビットは、7の並列グループで符号器1151に与えられる。第2のストリームのビットは、6の並列グループで符号器1152に与えられる。第3のグループでは、ビットが4の並列グループで符号器1153に与えられる。7入力ビットのすべての各グループに対し、符号器1151が、8出力ビットを生成し、これらが8ビット・バッファ1157に与えられる。6入力ビットの各グループに対し、符号器1152が8出力ビットを生成し、これらが8ビット・バッファ1158に与えられる。4入力ビットの各グループに対し、符号器1153が8出力ビットを生成し、これらが、8ビット・バッファ1159に与えられる。
【0026】バッファ1157、1158および1159の内容は、同期して読み出され、各記号の期間に3つの各バッファから1ビットずつ3つのビットが、導線122に与えられるようになっている。これらの3つのビット(b2、b1およびb0で表される)により、符号器114の出力で特定される超記号から特定の記号が特定される。この目的のために、図4に示したようにコンステレーション内の各記号に3ビットのラベルを付ける。これらの3つのビットは、実際には前記のビットb2、b1およびb0である。
【0027】各超記号の記号は、分割の第1のレベルで2つの部分集合に分割される。各部分集合は、ラベル化されたb0の値によって示される4つの記号からなる。従って、1つの部分集合は、000、010、100および110で示される4つの記号からなる。他方の部分集合は、001、011、101および111で示される4つの記号からなる。これらの部分集合の各々の記号は、第2のレベルの分割において2つの第2レベルの部分集合に分割され、それらのラベル化されたb0およびb1の値によって特定される。第2レベルの各部分集合は、b2によって特定される2つの記号からなる。
【0028】それぞれの超記号の記号へのラベルの割り当ては、任意ではない。むしろ、符号器1151、1152、および1153によって実施される符号は、分割の各レベルにおける部分集合間の最小距離を考慮して決定される。具体的には、分割の第1のレベルにおいて、最も強力な符号、即ち、最低ビット率の符号(この場合、符号器1153によって実施されるビット率R=1/2の符号)を用いてb0を生成する。これは、第1のレベルにおける部分集合間の最小距離が最小であり、その距離がd1だからである。第2の最も強力でない符号、即ちそれぞれ符号器1152および1151によって実施されるビット率R=3/4およびR=7/8の符号が、b1およびb2を生成する。これは、第2レベルの部分集合の間の最小距離が第1のレベルの最小距離の21/2倍の大きさであるのに対し、第2レベルの各部分集合にある記号間の最小距離が第1のレベルの最小距離の2倍の大きさだからである。
【0029】このようにエラー不均一保護信号方式においてマルチレベル符号を使用することにより与えられる利点を以下において説明する。しかし、最初に図2の受信機を参照する。
【0030】詳細には、アナログ放送信号が、アンテナ201によって受信され、例えば復調などを含む処理ユニット211における通常のテレビ・フロント・エンド処理に掛けられ、さらにA/D変換器212によってデジタル形式に変換される。次に、この信号は、通過帯域チャネル等化器221によって等化され、これによって、伝送された記号のI成分およびQ成分の値に関する等化器の最良評価値を表す信号が生成される。この評価値は、以降「受信された記号信号」と称するが、並列の導線222および223に渡され、チャネル復号器231および232によってチャネル復号される。チャネル復号器232の機能は、超記号の最尤シーケンスを特定することであり、チャネル復号器231の機能は、記号の最尤シーケンスを特定することである。従って、復号器232の導線234への出力は、ビットb3およびb4からなり、一方、復号器231の導線233への出力は、ビットb0、b1およびb2からなる。
【0031】最も重要なビットおよび重要度の低いビットのストリームは、この実施例では共にマルチレベル符号化されるので、チャネル復号器231および232は、それぞれマルチレベル復号器でなければならない。ビタビ符号方式のような直接的な最尤符号化であれば、この目的に使用することができる。しかしながら、現在の説明のための実施例では、マルチレベル復号へのさらに洗練された方法、即ち、多段復号と称する方法を用いる。これは、周知の技術であり、詳細は、通信のIEEE会報(COM37巻p.222-p.229、1989年)のA.R.コールダーバンク(Calderbank)による「マルチレベル符号および多段復号方式(Multilevel codes and multistage decoding)」にあり、ここに参照によって取り入れた。現在の目的のためには、多段復号がどのように実施されるかの概要を要約すれば十分である。
【0032】具体的には、まずチャネル復号器232が、符号器114(図5)内部で符号器1142によって符号化されたビットを、符号器1141によって符号化されたビットに対して行われた復号処理を参照することなく独立して復元する。このため、図15に示したように、復号器232は、復号b3回路2321、復号b4回路2323および遅延要素2322を含む。動作中、受信された記号信号は、(Ω01 υ Ω11)および(Ω00 υ Ω10)において受信された信号の記号に最も近い記号---およびそれに関係付けられた距離---を最初に見つけることによってビットb3を復号するために、回路2321によって処理される。次に、符号器1142(図5R>5)によって実施される符号の通常のビタビ復号によってトレリス経路を延長し、その符号器によって符号化された以前の符号化情報に関する最終決定を生成する。復号されたビット----元の最も重要なビットの1つ----が導線234に出力として与えられる。また、このビットは、符号器1142の符号を用いて回路2321の内部で再び符号化し、ビットb3を回路2323だけでなく、後述のように導線236を介してチャネル復号器231(図16)にも与える。受信された記号信号の一部は、遅延要素2322により、直前で説明したようにビットb3の値を与えるに十分な時間だけ送らせる。そして、この信号は、回路2323へのビットb3と共に回路2323に与えられ、ビットb4の決定に進む。ビットb4の決定は、具体的には、超記号Ω0b3およびΩ1b3において受信された信号の記号に最も近い記号----およびそれに関係付けられた距離----を最初に求めることによって、行う。これらの距離は、バッファに記憶され、符号器1141(図5)によって実施された符号の最尤復号を行うために使用され、これによって、もう1つの最も重要なビットを導線234に与える。同時に、このビットを回路2323の内部で再び符号化して、ビットb4をチャネル復号器231の導線236に与える。
【0033】なお、この時点で、回路2321および2323は、明らかにそれぞれの機能を実行するために使用されているコンステレーションに関する情報の期間内に与えられなければならない。この情報は、例えば、コンステレーション記憶装置2325に記憶され、「A」として示されたその出力は、それら双方の回路のほか、図16の復号器231にも与えられる。
【0034】最も重要なビットが導線234に与えられ、ビットb3およびb4の値が復号器231の導線236に与えられると、後者のチャネル復号器の内部で多段復号を進めて、重要度の低いビットを復元することができる。このため、図16に示したように、復号器231は、復号b0回路2315、復号b1回路2316、復号b2回路2317、および遅延要素2311、2312、および2313を備えている。動作中、受信された記号信号を復号器232内部の処理遅延に等しい量だけ遅らせることにより、回路2315が、受信された記号信号を受信すると同時にビットb3およびb4が与えられるようにする。次に、回路2315は、超記号Ωb4b3の中で、受信された信号の記号に最も近く、b0=0かつb1=1であるような記号を最初に求める。次に、それら2つの最も近い記号に関係付けられた距離を用いて、ビットb0の復号、従って重要度の低いビットの1つの復元へと最終的に導いて、前記のようにトレリス経路を延長する。そして、このビットを回路2315の内部で再び符号化して、ビットb0の値を回路2316および2317に与えることができるようにする。後者は、遅延要素2312および2313の遅延が、再符号化されたビットを必要に応じて回路2316および2317の各々が受信できるようにするに十分である場合、他方の復号回路に関して上述したものと類似の要領で動作して、他方の重要度の低いビットを復元する。
【0035】多次元の記号が用いられる場合の復号も、類似の要領で実施される。
【0036】復号器231および232によって導線233および234に出力されるビットは、デスクランブラ241および242(送信器におけるスクランブラ111および110の逆関数をそれぞれ実行する)によりデスクランブルされる。次に、適切なテレビ受信機により表示できるように書式化されたテレビ信号をソース復号器253によってデスクランブラの出力から生成することによって、元のテレビ情報を復元する。次に、この信号をテレビ受信機260のテレビ視聴者に与える。
【0037】図1および2のシステムによって実施されるエラー不均一保護信号方式の性能は、丁度説明したように、公称符号化利得(即ち、非常に低い誤り率での符号化利得)によって特徴付けることができ、これは、符号化しない16QAMシステムの信号対雑音比を上回るSNRにおける利得である。通常の符号のそれぞれの状態の数を16に選定した場合、最重要ビットおよびそれほど重要でないビットに対する利得は、それぞれ6.24dBおよび2.70dBである。しかし、本発明に特有の利点は、達成された符号化利得の特定のレベルに完全に依存するわけではない。従来の技術において周知の符号化構造により、特定の用途において、それ匹敵するかまたはそれ以上の符号化利得の結果を達成できる。しかし、本発明が特に有利なところは、用途が与えられた場合、所望の性能基準を選択し、それらの基準を満たす符号化方式に容易に到達するための大いに高い可能性をシステム設計者に与える能力にある。
【0038】例えば、前記のシステムの全体的なデータ・レートは、符号器1141および1151によって実施される符号をレートR=15/16のゼロ・サム・パリティ検査符号に変更する(ほか、符号器において8ビットではなく16ビットのバッファを用いる)ことによって、符号化利得に影響を与えることなく記号あたり3.75ビットから3.875ビットへと増加させることができる。(同時に、最重要ビットの割合が、43.33%から43.55%まで極わずか増加する。)もう1つの例として、最重要ビットの割合は、34.375%まで減らすことができるが、同時に、a)符号器1141、1142、1152、および1153により実施される符号を、ビット率R=7/8の破裂畳み込み符号、ビット率R=3/4の畳み込み符号、ビット率R=7/8のゼロ・サム・パリティ検査符号へと変更し、さらにb)バッファ1157に加えられるビットが符号化されていないビットとなるように符号器1151を除去することによって、前記のビットに与えることのできるエラー保護のレベルを増加させることができる。この構造により、最重要ビットに対しては8dB、重要度の低いビットに対しては0.22dBの符号化利得が達成される。さらに、図4におけるd2/d1の比を変えることによって、最重要ビットの利得と重要度の低いビットの利得との間でトレード・オフを行うことができる。従って、本発明により、所望のシステムの設計基準を満たすために実質的に無限の範囲の設計パラメータ----符号のビット率、符号の複雑さ、全体的な符号方式の冗長性、(重要度の低いビットに使用されるものに対比した場合の)最重要ビットのエラー保護に使用されるその冗長性の端数----が利用者に許される。この柔軟性は、種々の異なる数の記号、記号配置、超記号のグループ化方式、および部分集合の分割方式を有するコンステレーションを含む種々の異なるコンステレーションを用いることによって、さらに高めることができる。実際に、新たな種類のコンステレーションを有利に用いて、システム設計者に一層の柔軟性を提供することができる。これらのコンステレーションは、コンステレーション内部の特別な距離関係に特徴がある。事実、符号化変調方式の設計における重要なパラメータは、いわゆる部分集合内距離である。このパラメータは、部分集合内の2つの記号間の最小距離である。本発明の場合とは異なり均一のエラー保護を与えようとする符号化変調方式の場合、設計の制約は、すべての部分集合にわたってとられる部分集合内距離の最小値を最大にするようにコンステレーションを部分集合に分割することである。この値(「最大部分集合内距離」またはMIDと定義する)は、特定の分割方式が与えられ、特定の部分集合の部分集合内距離を(記号対部分集合の割り当てを変更することによって)さらに増大させようとしても前記の最小値がそれ以上増大しない時に、達成されるものである。
【0039】さらに、エラー均一保護方式とエラー不均一保護方式との間の重要な相違に留意する必要がある。前者においては、いわゆる符号化済みのビットに対するエラー保護は、部分集合シーケンスの間の最小距離によって決定される一方、符号化されていないビットに対するエラー保護は、1つの部分集合内部の記号間の最小距離によって決定される。エラー均一保護方式の設計の場合、すべてのデータに対して均一なエラー保護が望まれるので、これら2つの最小値は互いに可能な限り近い方が望ましい。これらの方式の性能は、部分集合内の記号間の距離によって支配される。このことは、部分集合シーケンスの間に所望の距離を達成するために符号の複雑さをいつでも増すことができるという事実に起因する。
【0040】不均一なエラー保護の場合、対比してみると、超記号における記号は、重要度の低いビットによって選択される。これらの記号間の距離は、MIDより十分小さくすることができる。事実、その距離は、全体としてのコンステレーションの記号間の距離のみによって制限される。この距離は、重要度の低いビットに対し必要な水準のエラー保護を与えるように選定される。その距離を一度固定すると、この事実を利用するために部分集合の分割を行うことができ、このようにして、同じ複雑さで通常の符号化変調によって可能であるより長い超記号シーケンス間の距離の実現を可能とする。このようにして、もはや制約を受けることなく、超記号の内部においてすべての記号を互いに離しておくことができる。
【0041】以上のことを考慮すると、エラー不均一保護信号方式において有用なコンステレーションは、超記号の中の少なくとも1つの超記号の記号の少なくとも幾つかの間の最小距離がMIDより小さいという事実によって特徴付けられる。事実、この一般的な種類のコンステレーションは周知である。しかしながら、従来の分野では、超記号の記号間の最小距離は、全体としてのコンステレーションの記号間の最小距離と同じである。対比してみると、問題のコンステレーションはそれほど制約を受けない。つまり、超記号の中の少なくとも1つの超記号の記号の中の少なくとも幾つかの間の最小距離は、全体としてのコンステレーションの記号間の最小距離より大きく、やはりMIDより依然として小さい。図解的に言えば、この基準を満たすコンステレーションは、一般に、(均一なエラー保護方式に使用されるコンステレーションの部分集合がそうであるように)少なくともある程度は重複する超記号を有すると思われる。つまり、少なくとも1つの超記号の少なくとも1つの記号が、異なる超記号の各記号対に、その記号対の互いの距離より近くなる。
【0042】これらの原理を具体化する説明のための32記号のコンステレーションを図7に示す。このコンステレーションは、4つの超記号に分割され、それを構成する記号には、それぞれA、B、CおよびDとラベルを付けてある。「X」とラベルを付けた距離は、例えば1であることもあり、これによって、個々の記号が不均一に配置されたコンステレーションを与えることができる。あるいは、「X」を----31/2のように----1より大きくすることも可能であり、これによって、超記号間の距離の幾つかは大きくなる。これにより、エラー保護の所望の水準を達成する上で設計の自由度がさらに加えられる。
【0043】図7のコンステレーションのMIDは、「2」であり、これは、図8(同じコンステレーションがエラー均一保護を与えるように分割されている)の考察から確認することができる。つまり、例えば「A」とラベルが付けられた任意の2つの記号間の最小距離が実際に「2」である。図7において、対比してみると、本発明により対応する最小距離は、「2」より小さい。具体的には、21/2である。さらに、図式的に見ることにより、部分集合AおよびBは、部分集合CおよびDと同様に互いに重複し合う。(従って、図4において行ったように超記号を囲む四角を描くことは不可能である。)
【0044】別の説明のためのコンステレーション(これは64個の記号を有する)を図9に示す。この場合も、コンステレーションは、図7に対して使用したものと同様のラベルの付け方を用いてラベル付けした4つの超記号に分割されている。
【0045】図10から図14においても同様のラベルの付け方を用いているので、これらのコンステレーションの編成については、さらに説明の必要はない。
【0046】次の第1表および第2表は、エラー不均一保護信号方式を与える観点から本発明によって与えられる優れた柔軟性を示すものである。エラー不均一保護信号方式により、a)最重要ビットの割合、b)符号の全体的な冗長度、c)符号化利得、およびピーク電力対平均電力の比(これは、地上および衛星の電話チャネルのような電力が限られたチャネルの場合、重要な考慮項目である)の種々の異なる組み合わせが与えられる。第1表は、ビットの25%が最重要ビットを構成する符号の表である。第2表は、その他の種々の割合のビットが最重要ビットを構成する符号の表である。
【表1】
【表2】
【表3】
【0047】これらの表において、Pは次元あたりの平均電力を表し、PARはピーク電力対平均電力の比を、d2はその引数によって表される超記号の間のユークリッド距離の2乗を、Γは最重要ビットに対する公称符号化利得を、そしてγは重要度の比較的低いビットに対する公称符号化利得を示し、[g1,g2]は指定された畳み込み符号に対する8進表記の生成マトリックスであり、Lはパリティ検査符号の長さである。不均一なコンステレーションに対する不均一性の程度は、zによって決定される。また、これらの表は、達成可能な利得をxの関数として示す。
【0048】第1表および第2表に掲げたようなエラー不均一保護信号方式の設計において、一般に、あるパラメータの値が与えられなければならない。これらの値には、(a)利用可能なチャネルの帯域幅、(b)最悪の場合のチャネルSNR、(c)ビットの等級の数、(d)各等級におけるビットの割合、(e)最悪なチャネル状態の下で最終的に受信される信号の所望の品質、(f)容認できる復号器の複雑度、および(g)ピーク電力対平均電力の比が含まれる。これらが与えられると、与えられたパラメータの値を用いてエラー不均一保護方式の設計に移ることができる。
【0049】一般に、記号あたり約1つの全体的冗長ビットを許すように信号コンステレーションを選択することから開始する。必要な超記号の数は、記号あたりの重要なビットの実際の数によって決定する。例えば、ビットの25%以上で50%以下が重要であり、利用できる帯域幅および必要とされる全体的なビット率により、例えば記号あたり4情報ビットと示される場合、記号あたり1情報ビットを伝送しなければならない。さらに、重要なビットに対しある量の冗長性を与えることが望まれると仮定すると、4つの超記号を有する2次元コンステレーションを用いることが合理的である。ここに開示した種々のコンステレーションやその他の所望のコンステレーションを初期の設計の選択として使用することができる。次に、ビット流に対して使用するべき符号化方式を、それに割り当てようとする相対的な冗長性によって選択する。重要なことは、本発明によるマルチレベル符号の使用によって、所望の設計基準の達成を促進できることである。分析により、最悪の場合のSNRにおいて望まれる品質がこの時点で至る設計により達成できないようならば、実際にそれを達成できるかどうかを調べる目的で別のコンステレーションか、またはその他の符号を調査することができる。これができないようならば、容認可能な復号器の複雑度のような以前に与えた条件を1つ以上緩和しなければならない場合もある。符号の設計の選択に影響し得る他のパラメータのほか、他の設計基準も考えられる。
【0050】それぞれ異なる超記号からの記号の対の間の距離がそれら2つの超記号の記号の任意の対の間の最小距離である場合、特定された各超記号から記号を選択するために使用されるビットの値をそれらの記号に割り当てるのに都合のよい方法に従って、前記の記号の対を同じ重要度の比較的低いビットの値に割り当てる。このような方法を図10に示す。同図においては、図4と同様に、各記号は、b2、b1およびb0の組の値でラベルが付けられている。例えば、超記号Ω00、Ω01、Ω10、およびΩ11のそれぞれにおいて110とラベル付けされた記号は、すべて前記の基準を満たす。このようなラベルの付け方(これは、コンステレーションおよび超記号の幾何学的状態に応じて等級を変化させるように実現することができる)は、正しい超記号シーケンスの再生時にエラーが起こっても重要度の比較的低いビットが正しく復号される確率が改善されるという点において好都合である。これに加えて、前記の最小距離基準を満たさないような記号に対するビット割り当てを同様に賢明に選択することよってさらに恩恵を得ることも可能である。しかしながら、これは、図4のコンステレーションに関連して先に説明した例の場合のように超記号の内部の記号に対して実施される符号化によって課せられる制限の範囲内で実行する必要がある。
【0051】以上は、本発明の原理を単に説明しただけである。例えば、説明のために実施例は、2つのデータ流(最も重要なものおよび重要度の比較的低いもの)を用いて実施したが、本発明は、3つ以上のストリームを含む方式においても使用することができる。さらに、2次元のコンステレーションを示したが、本発明は、2次元以上のコンステレーションを用いる方式の場合も使用することができる。
【0052】また、本明細書では、例えばソース符号器、スクランブラのように個別的な機能構成ブロックによって実施されるように本発明を説明したが、それらの構成ブロックの任意の1つ以上を1つ以上の適切なプログラムされたプロセッサ・チップ、デジタル信号プロセッサ(DSP)チップなどを用いて実施することも可能である。
【0053】従って、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例が考えられるが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0054】尚、特許請求の範囲に記載した参照番号は、発明の容易なる理解のためで、その技術的範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【0055】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、本発明によるエラー不均一保護信号方式に1つ以上のマルチレベル符号を取り入れることにより、a)最も重要なデータ要素に対する符号化利得、b)重要度の低いデータ要素に対する符号化利得、およびc)最も重要なデータ要素の割合の特定の所望の組み合わせをさらに容易に達成することができる。符号化理論の観点から、この結果は、本発明により符号化方式全体に導入される冗長性を最も重要なデータ要素の符号化と重要度の低いデータ要素の符号化との間で実質的に任意の比率で割り当てることができるという事実から生じることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を具体化する送信機のブロック図である。
【図2】図1の送信機によって送られる信号のための受信機のブロック図である。
【図3】従来の技術の信号コンステレーションを表す図である。
【図4】図1の送信機によって使用される信号コンステレーションを表す図である。
【図5】本発明により図1の送信機において使用される説明のためのマルチレベル符号器を示す図である。
【図6】本発明により図1の送信機において使用される説明のためのマルチレベル符号器を示す図である。
【図7】図1の送信機によって代わりに使用できる信号コンステレーションを表す図である。
【図8】エラー均一保護方式で一般に使用される種類の信号コンステレーションを表す図である。
【図9】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図10】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図11】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図12】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図13】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図14】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図15】本発明によって図2の受信機で用いられる多段復号器の例を示す。
【図16】本発明によって図2の受信機で用いられる多段復号器の例を示す。
【符号の説明】
101 ビデオ信号源
104 ソース符号器
110、111
スクランブラ
114、115
チャネル符号器
131 コンステレーション・マッパー
141 通過帯域整形器
151 テレビ変調器
211 テレビ・フロント・エンド処理
212 A/D
221 通過帯域チャネル等化器
231、232
チャネル復号器
241、242
デスクランブラ
253 ソース復号器
260 テレビ受信機
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、デジタル・データの伝送に関し、特にテレビ信号を表すデジタル・データの伝送に関する。
【0002】
【従来の技術】慣例的に高品位テレビまたはHDTV(high definition television)と称する次世代のテレビ技術のために、何らかの形のデジタル伝送が必要とされることは一般の認めるところである。これは、主に、デジタル信号処理の方がアナログ信号処理より強力なビデオ圧縮方式が実施できるためである。しかしながら、デジタル伝送は種々の受信位置における信号対雑音比(SNR)の僅かな変化に対し潜在的に敏感であるため完全なデジタル伝送システムに頼るには幾分不安があった。
【0003】この現象は、時として敷居効果といわれるが、テレビ放送局からそれぞれ50マイルおよび63マイルの位置にある2つの受信機の場合を考えることにより説明することができる。放送信号の電力は、大まかに言って距離の2乗の逆数として変化するので、これらのテレビ受信機によって受信される信号電力の量の差は約2dBであると容易に確かめることができる。ここで、デジタル伝送方式を使用し、かつ50マイル離れた受信機への伝送が10-6のビット誤り率を示すものと仮定する。別のテレビ受像機に対する2dBの信号損失がその受信機の入力におけるSNRの2dBの減少に変化する場合、この受信機は、約10-4のビット誤り率で動作することになる。50マイル離れたテレビ受信機が、このようなビット誤り率であれば、受信状態は良好であるが、他方のテレビ受信機の受信状態は、おそらく非常に悪いはずである。このように短い距離で性能が急速に劣化することは、放送業界により受け入れられるとは一般に思われない。(比較によれば、現在使用されているアナログ・テレビ伝送方式に対する性能の劣化の方が、はるかに穏やかである。)
【0004】従って、この問題を解決するテレビ用途での使用に適したデジタル伝送方式が必要とされている。a)ケーブル・ベースの再生型のリピータ、またはb)音声帯域データ用途におけるフォール・バック・データ速度または制約を受ける電話回線の使用など、その他のデジタル伝送環境で用いられる解決方法が自由空間のテレビ放送環境に適用できないのは明かである。
【0005】ここでは総括的に「エラー不均一保護信号方式」と称するデジタル・テレビ信号の空中放送のための標準的なデジタル伝送の欠点を克服する有利な技術は、特別な種類のソース符号化段階とそれに続く特別な種類のチャネル割り当て段階とからなる。さらに具体的には、ソース符号化段階により、テレビ信号を2つ以上のデータ流で表し、チャネル割り当て段階において、種々のデータ流のデータ要素がチャネル誘導エラーの異なる確率を有する、即ち受信機において誤って検出される確率が異なる。例えば、前記のデータ流の第1のデータ流は、全体的なテレビ信号のうち最も重要と見なされる成分---例えば、音声、フレーミング情報、および核心部分であるビデオ情報を伝え、このデータ流は、そのデータ要素がチャネル誘導エラーの最低の確率を有するように割り当てられる。前記のデータ流の第2のデータ流は、全体的なテレビ信号のうち、第1のデータ流の成分ほど重要でないと考えられる成分を伝え、そのデータ要素が第1のデータ流のチャネル誘導エラーの確率ほど低くない確率を有するように割り当てられる。一般に、幾つのデータ流でも全体的なテレビ信号を表すことが可能であり、各データ流が、重要度の異なる成分を伝え、それぞれのエラー確率を持つようにすることができる。この方法によって、テレビ受信機の所在地における受信品質の穏やかな劣化が可能となる。これは、放送送信機からの距離が増加するにともない受信機のビット誤り率が増加し始めるため、最初に影響を受けるテレビ信号情報が比較的重要でない部分を表すビットだからである。
【0006】前記の全体的な概念を実施する方式の場合、ソース符号化段階で生成される異なる等級のデータ要素に対して異なるレベルのエラー保護を与えて、トレリス符号化変調などの符号化変調を用いることによって雑音免疫性を高めるわけであるが、所定の2N次元のチャネル記号コンステレーション(N≧1)における記号をグループ分けし、各グループを「超記号(supersymbol)」と称する。一連の記号期間のそれぞれの期間において、所定数の最も重要なデータ要素がチャネル符号化され、その結果得られるチャネル符号化されたデータ要素によって、超記号の中の1つを特定する。残りのデータ要素も、同様にチャネル符号化されて、前記の特定された超記号から特定の記号を選択するのに使用される。
【0007】これまで説明した方法は、通常の符号化変調方式もチャネル記号を一般に「部分集合」と称するグループに分割するという点で、概してこれと類似している。しかしながら、通常の符号化変調方式では、部分集合における記号間の最小ユークリッド距離(以降、「最小距離」と称する)が、全体としてのコンステレーションにおける記号間の最小距離より大きいという制約の下で部分集合が形成される。しかし、ここで説明する方法では、超記号の記号間の最小距離は、全体としてのコンステレーションにあるの記号間の最小距離と同じである。この距離の特性のため、最も重要なデータ要素に対する雑音免疫性の方がその他のデータ要素に対するそれより多く余裕が与えられ、この免疫性は、超記号間の最小距離を可能な限り大きく(通常は、コンステレーションの記号間の最小距離より大きい)保つことにより、最適化される。具体的には、ひとたび超記号を定義すると、各超記号が通常のコンステレーションにおける通常の記号であるかのように、最も重要なデータ要素に対する符号を設計することが可能となる。このようにして、最も重要なデータ要素に対して特定の程度の雑音免疫性を達成することができる(これは、その他のデータ要素に対して達成できる雑音免疫性より高い)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、前記の種類の不均一エラー検出信号方式の設計にさらに柔軟性を与えることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、チャネル割り当て段階で入力されたデータ流の少なくとも1つのデータ要素の符号化にいわゆるマルチレベル符号化を用いる。例えば、超記号の選択を最終的に決定するデータ要素の符号化にマルチレベル符号化を用いることができる。また、これは、選択された超記号の中からの特定の記号の選択を決定するデータ要素を符号化する場合も使用することができる。あるいは、マルチレベル符号化は、両ストリームに対しても使用することができる。マルチレベル符号化が実際にどのように用いられるかは、符号化されているデータの特定の等級に与えようとするエラー保護の程度の点から特定用途の必要条件に依存する。
【0010】この方法には少なくとも2つの利点がある。1つは、符号化される全体的なデータ流のうち最も重要と考え、扱われるべき所望の割合を実現するようにチャネル符号化を設計する際に高い柔軟性が得られることである。もう1つの利点は、最も重要なデータと重要度の低いデータとの間で利用できる冗長性を配分する際に高い柔軟性が与えられることにより、それらの2つの等級のデータに対し所望する特定の異なる水準のエラー保護を達成する機構が得られることである。さらに、別の利点は、この方法により、本発明によってマルチレベル符号化されるストリームの何れに属するデータ要素の部分ストリームにも異なる水準の保護を与えることができることである。
【0011】マルチレベル符号化そのものは、当分野で既に周知の方法である。その方法によれば、符号化するべきデータ要素を2つ以上の部分ストリームに分割する。次に、部分ストリームの中の1つ以上の部分ストリームに対し所望の任意の種類の符号を用いて個々に冗長符号化を行う。符号化された個々の部分ストリームは、符号化されずに残った部分ストリームと共にマルチレベル符号の出力を形成する。この出力は、従来の技術では、チャネルによって伝送するために所定のコンステレーションのチャネル記号を識別するために使用する。しかし、従来の技術は、マルチレベル符号化を有利に用いて全体的なエラー不均一保護信号方式のデータ流の符号化できるという本発明の中心にある教訓を取り入れていない。
【0012】
【実施例】実施例の説明に進む前に、本明細書において説明する種々のデジタル信号方式の概念は、例えばデジタル無線分野および音声帯域伝送分野においてすべて周知であるため、ここでは詳細に説明する必要がないことに留意されたい。これらの中には、Nをある整数とした2N次元のチャネル記号コンステレーションを用いる多次元信号方式、トレリス符号化、スクランブリング(攪乱方式)、通過帯域の整形、等化、ビタビまたは最尤復号化などが含まれる。これらの概念の説明は、次の文献にある。米国特許第3,810,021号(1974年5月7日発行、発明者:I.カレット(Kalet)ほか)、米国特許第4,015,222号(1977年5月29日発行、発明者:J.ウェルナー(Werner))、米国特許第4,170,764号(1979年10月9日、発明者:J.サルツ(Salz)ほか)、米国特許第4,247,940号(1981年1月27日発行、発明者:K.H.ミューラー(Mueller))、米国特許第4,304,962号(1981年12月8日発行、発明者:R.D.フレイカシ(Fracassi)ほか)、米国特許第4,457,004号(1984年6月26日発行、発明者:A.ガーショウ(Gersho)ほか)、米国特許第4,489,418号(1984年12月18日発行、発明者:J.E.マゾ(Mazo))、米国特許第4,520,490号(1985年5月28日、発明者:L.ウェイ(Wei))、米国特許第4,597,090号(1986年6月24日、発明者:G.D.フォーニ(Forney)二世)。
【0013】また、文脈から明らかなとおり、図示した種々の信号導線にはアナログ信号または直列もしくは並列のビットを通してもよい。
【0014】図1において、テレビ(TV)信号源101が、絵の情報を表すアナログ・ビデオ信号を発生し、この信号が、ソース符号器104に渡される。ソース符号器104は、データ要素の少なくとも1つの部分集合が残りのデータ要素によって表される情報の部分より重要な情報の一部を表すようなデータ要素からなるデジタル信号を生成する。具体的には、各データ要素は1つのデータ・ビットであり、一連の記号期間の各々に対して平均m+kの情報ビットが生成される。2Nがコンステレーション(後述)の次元数である場合、記号期間は、N個の信号期間からなる。信号期間は、T秒の持続時間を有し、従って、各記号期間は、NT秒の持続時間を有する。ここに明示的に開示した実施例では、偶然に、2次元のコンステレーションを使用している、即ちN=1である。そこで、これらの実施例に対しては、信号期間および記号期間は同じである。
【0015】前記のm+k情報ビットのうち、記号期間あたりmビットのストリームに含まれるビットは、導線105に現れるが、記号期間あたりkビットのストリームに含まれ、かつ導線106に現れるビットより重要である。
【0016】導線105および106上のビットは、スクランブラ110および111において独立してスクランブルされ、それぞれmおよびkの並列ビットが導線112および113上に出力される。(スクランブル処理は、習慣的に直列ビット・ストリームに対して実施される。このように、図1に明示的には示していないが、スクランブラ110および111は、スクランブル処理の前にそれぞれの入力ビットに対し並列/直列変換を行い、さらに出力において直列/並列変換を行うものと仮定できる。)次に、信号はチャネルに割り当てられる。具体的には、導線112および113上のそれぞれのビット・グループは、チャネル符号器114および115に接続される。これらのチャネル符号器は、各記号期間に、rおよびpビットのそれぞれ拡張されたグループを導線121および122上に生成する。ただし、r>mかつp>kである。これらのビットの値の組み合わせで、チャネル記号の所定のコンステレーション(詳細に後述するような図4のコンステレーションなど)の特定のチャネル記号が特定される。特定されたチャネル記号の複雑な平面座標がコンステレーション・マッパー131(例えば、参照テーブルまたは論理要素をそのまま組み合わせたものとして実現される)によって出力される。次に、通常の通過帯域の整形およびテレビ変調が、通過帯域整形器141およびテレビ変調器151によってそれぞれ行われる。そして、結果のアナログ信号は、アンテナ152によって通信チャネル(この場合、自由空間チャネル)で放送される。
【0017】本発明の理論的基礎を理解するために、ここで図3を考察する。図3は、デジタル無線および音声帯域データ伝送システムにおいて通常使用される種類の標準的な2次元データ伝送コンステレーションを示す。この標準的な方式(慣例的に直交振幅変調(QAM)と称する)において、それぞれ4つの情報ビットからなるデータ・ワードが、16の可能な2次元チャネル記号の1つへと割り当てられる。各チャネル記号は、同相座標、即ちI座標を水平軸に、直交位相座標、即ちQ座標を垂直軸に有する。各軸におけるチャネル記号の座標は、±1または±3であるから、各記号とそれに水平または垂直の方向に隣接する記号の各々との間の距離は、すべての記号に対して同じであり、この距離は2である。この一様な配置の結果として、同じ量の雑音免疫性がすべての4情報ビットに与えられる。
【0018】周知のとおり、記号を(この例では)16以上有する「拡張した」2次元コンステレーションがトレリスまたはその他のチャネル符号に関連して使用される符号化変調方式を用いて、帯域幅の効率(信号期間あたりの情報ビット)を犠牲にすることなく雑音免疫性を改善することが可能である。例えば、32の記号からなる2次元コンステレーションを8状態トレリス符号と共に使用して図3の符号化しない場合より約4dB改善した雑音免疫性を達成しながら、依然として信号期間あたり4情報ビットの伝送を与えることができる。しかしながら、この場合も、本質的に、すべての4情報ビットに対し同じ量の雑音免疫性が与えられる。
【0019】さらに、異なる等級のビットに対しチャネル誘導エラーの異なる水準の保護を与える一方で、符号化変調の周知の雑音免疫性および対域幅効率の利点が実現されることが分かる。具体的には、最も重要なビットの等級に対し、前記の通常の符号化変調方式で達成できるものより十分高い水準のエラー保護を達成することが可能である。事実、図1の送信機は、さらに詳細に説明するように、この概念を具体化するものである。
【0020】図1の送信機で使用されるコンステレーションは、例えば、図4に示した2次元の32記号コンステレーションである。この信号コンステレーションの記号は、「超記号」と称するグループへと分割される。具体的には、図4のコンステレーションは、2r=22=4個の超記号に分割される。この例では、各グループを囲む四角によって示したように、4象限にある点は、それぞれの超記号を構成する。超記号は、総括的にΩb4b3と表す。ただし、b4=0,1であり、b3=0,1である。従って、4つの超記号は、Ω00、Ω01、Ω10、およびΩ11である。
【0021】この例では、m=1.625かつk=2.125であるから、全体的なビットレートは、1記号あたり3.75ビットであり、43.33%のビットが最も重要なビットのクラスにある。(このような小数の平均ビットレートを現実に達成できる方法は、この説明の続きで明らかになる。)符号器114は、この符号器114に入力される1.625ビットごとに平均0.375ビットの冗長ビットを加えてr=2となるようにする。符号器115は、この符号器115に入力される2.125ビットごとに平均0.875ビットの冗長ビットを加えてp=3となるようにする。導線121上の(r=)2ビットによって、4つの超記号のうちの1つを特定し、導線122上の(p=)3ビットによって、特定された超記号内の8つのチャネル記号のうちの特定のものを選択する。コンステレーションの分割は、超記号の記号間の最小距離(図4ではd2で表す)がコンステレーション全体における記号間の最小距離と同じになるように、行われる。この特性が与えられると、(a)符号器114および115によって実装される符号、および(b)比率d1/d2(d1は、超記号間の最小距離である)を適切に選択することによって、最も重要なビットに対する雑音免疫性を高めることができる。(超記号の任意の対の間の距離が一方の超記号の任意の記号と他方の超記号の任意の記号との間の最小距離であるとき、パラメータd1は、超記号のすべての対の間の距離の最小によって与えられる。)
【0022】具体的には、4つの超記号が通常のコンステレーションの4つの通常の記号であるかのように、ここで符号化変調方式を最も重要なビットのために構成することができる。そのような符号化変調方式を設計するために、4つの超記号を通常どうり所定の数の部分集合に分割する。この場合、2つの部分集合があり、b3の値によって、超記号の各々が何れの部分集合に属するかを示す。従って、部分集合「0」と称する1つの部分集合は、超記号Ω00およびΩ10からなり、部分集合「1」と称する他方の部分集合は、超記号Ω01およびΩ11からなる。適切な符号を用いて最も重要な入力ビットを符号化して、a)一連のこれらの部分集合を定義し、かつb)その部分集合列の各部分集合に対し部分集合内の特定の超記号を選択するような符号化された出力ビット流を生成する。次に、このようにして選択された超記号の各々から特定の記号を送信するべく選択するために、重要度の低いビットを用いる。この例では、既に見たように、この選択には、符号化変調の使用も伴う。
【0023】本発明によれば、チャネル符号器の中の最低1つは、マルチレベル符号を実施する。この例では、特に、それらの両方がこれを実施する。既に述べたとおり、マルチレベル符号は、符号化するべきデータ要素(この例では、ビット)を2つ以上の部分ストリームに分割した符号である。そして、部分ストリームのうちの1つ以上の各ストリームを、所望の任意の種類の符号を用いて、個々に冗長符号化する。個々に符号化された部分ストリームは、符号化されずに残った部分ストリームと共に、マルチレベル符号の出力を形成する。
【0024】符号器114および115に対する説明のための実施例を図5および6に示す。符号器114は、2レベル符号を実施するため、2つの符号器1141および1142を備えている。符号器1141によって実施される冗長符号は、G.C.クラーク(Clark)二世およびJ.B.ケイン(Cain)による「デジタル通信のための誤り訂正符号化(Error-Correction Coding for Digital Communications)」(ニュー・ヨーク:プリーナム、1981年)に示されているような通常のビット率(R=)7/8のゼロ・サム・パリティ・チェック符号である。符号器1142によって実施される冗長符号は、通信に関するIEEE会報COM-32巻p.315-p.318(1984年)のY.ヤスダほかによる「ソフト決定のビタビ復号のための高率で破裂させた畳み込み符号(High-rate punctured convolutional codes for soft decision Viterbi decoding)」において示されたような通常のビット率(R=)3/4で破裂させた畳み込み符号である。動作中、符号器114の内部の直列/並列変換器1144は、8記号にわたって13ビットを取り入れ、前記のように記号期間あたりm=1.625ビットの平均入力ビット率を与える。変換器1144の出力は、ビットからなる2つの部分ストリームからなる。一方の部分ストリームにおいては、ビットが7の並列グループで符号器1141に与えられる。他方の部分ストリームでは、ビットが6の並列グループで符号器1142に与えられる。符号器1141は、7入力ビットのすべてのグループに対し、8ビット・バッファ1147に与えられる8出力ビットを生成する。同時に、符号器1142は、6入力ビットのすべてのグループに対し、バッファ1148に与えられる8出力ビットを生成する。バッファ1147および1148の内容は同期的に読み出され、各記号期間に2つの各バッファから1ビットずつビットの対が導線121に与えられるようになっている。これらのビットが、前記のビットb3およびb4である。ビットb3は、2つの部分集合「0」または「1」の中の1つを特定し、b4は、特定された部分集合の2つの超記号の1つを特定する。このように、2つのビットb3およびb4により、4つの超記号Ω00、Ω01、Ω10、およびΩ11の1つを特定する。
【0025】符号器115は、3レベル符号を実現するもので、それなりに符号器1151、1152および1153を備えている。符号器1151および1152は、それぞれ符号器1141および1142によって実施されるものと同じ符号を実施する。符号器1153は、前記のクラークおよびケインの文献に示されたような率R=1/2の畳み込み符号を実施する。動作中、直列/並列変換器1154は、8記号の期間にわたって17ビットを取り込み、前記のように記号期間あたりk=2.125ビットの平均入力ビット率を与える。変換器1154の出力は、ビットの3つの部分ストリームからなる。1つの部分ストリームのビットは、7の並列グループで符号器1151に与えられる。第2のストリームのビットは、6の並列グループで符号器1152に与えられる。第3のグループでは、ビットが4の並列グループで符号器1153に与えられる。7入力ビットのすべての各グループに対し、符号器1151が、8出力ビットを生成し、これらが8ビット・バッファ1157に与えられる。6入力ビットの各グループに対し、符号器1152が8出力ビットを生成し、これらが8ビット・バッファ1158に与えられる。4入力ビットの各グループに対し、符号器1153が8出力ビットを生成し、これらが、8ビット・バッファ1159に与えられる。
【0026】バッファ1157、1158および1159の内容は、同期して読み出され、各記号の期間に3つの各バッファから1ビットずつ3つのビットが、導線122に与えられるようになっている。これらの3つのビット(b2、b1およびb0で表される)により、符号器114の出力で特定される超記号から特定の記号が特定される。この目的のために、図4に示したようにコンステレーション内の各記号に3ビットのラベルを付ける。これらの3つのビットは、実際には前記のビットb2、b1およびb0である。
【0027】各超記号の記号は、分割の第1のレベルで2つの部分集合に分割される。各部分集合は、ラベル化されたb0の値によって示される4つの記号からなる。従って、1つの部分集合は、000、010、100および110で示される4つの記号からなる。他方の部分集合は、001、011、101および111で示される4つの記号からなる。これらの部分集合の各々の記号は、第2のレベルの分割において2つの第2レベルの部分集合に分割され、それらのラベル化されたb0およびb1の値によって特定される。第2レベルの各部分集合は、b2によって特定される2つの記号からなる。
【0028】それぞれの超記号の記号へのラベルの割り当ては、任意ではない。むしろ、符号器1151、1152、および1153によって実施される符号は、分割の各レベルにおける部分集合間の最小距離を考慮して決定される。具体的には、分割の第1のレベルにおいて、最も強力な符号、即ち、最低ビット率の符号(この場合、符号器1153によって実施されるビット率R=1/2の符号)を用いてb0を生成する。これは、第1のレベルにおける部分集合間の最小距離が最小であり、その距離がd1だからである。第2の最も強力でない符号、即ちそれぞれ符号器1152および1151によって実施されるビット率R=3/4およびR=7/8の符号が、b1およびb2を生成する。これは、第2レベルの部分集合の間の最小距離が第1のレベルの最小距離の21/2倍の大きさであるのに対し、第2レベルの各部分集合にある記号間の最小距離が第1のレベルの最小距離の2倍の大きさだからである。
【0029】このようにエラー不均一保護信号方式においてマルチレベル符号を使用することにより与えられる利点を以下において説明する。しかし、最初に図2の受信機を参照する。
【0030】詳細には、アナログ放送信号が、アンテナ201によって受信され、例えば復調などを含む処理ユニット211における通常のテレビ・フロント・エンド処理に掛けられ、さらにA/D変換器212によってデジタル形式に変換される。次に、この信号は、通過帯域チャネル等化器221によって等化され、これによって、伝送された記号のI成分およびQ成分の値に関する等化器の最良評価値を表す信号が生成される。この評価値は、以降「受信された記号信号」と称するが、並列の導線222および223に渡され、チャネル復号器231および232によってチャネル復号される。チャネル復号器232の機能は、超記号の最尤シーケンスを特定することであり、チャネル復号器231の機能は、記号の最尤シーケンスを特定することである。従って、復号器232の導線234への出力は、ビットb3およびb4からなり、一方、復号器231の導線233への出力は、ビットb0、b1およびb2からなる。
【0031】最も重要なビットおよび重要度の低いビットのストリームは、この実施例では共にマルチレベル符号化されるので、チャネル復号器231および232は、それぞれマルチレベル復号器でなければならない。ビタビ符号方式のような直接的な最尤符号化であれば、この目的に使用することができる。しかしながら、現在の説明のための実施例では、マルチレベル復号へのさらに洗練された方法、即ち、多段復号と称する方法を用いる。これは、周知の技術であり、詳細は、通信のIEEE会報(COM37巻p.222-p.229、1989年)のA.R.コールダーバンク(Calderbank)による「マルチレベル符号および多段復号方式(Multilevel codes and multistage decoding)」にあり、ここに参照によって取り入れた。現在の目的のためには、多段復号がどのように実施されるかの概要を要約すれば十分である。
【0032】具体的には、まずチャネル復号器232が、符号器114(図5)内部で符号器1142によって符号化されたビットを、符号器1141によって符号化されたビットに対して行われた復号処理を参照することなく独立して復元する。このため、図15に示したように、復号器232は、復号b3回路2321、復号b4回路2323および遅延要素2322を含む。動作中、受信された記号信号は、(Ω01 υ Ω11)および(Ω00 υ Ω10)において受信された信号の記号に最も近い記号---およびそれに関係付けられた距離---を最初に見つけることによってビットb3を復号するために、回路2321によって処理される。次に、符号器1142(図5R>5)によって実施される符号の通常のビタビ復号によってトレリス経路を延長し、その符号器によって符号化された以前の符号化情報に関する最終決定を生成する。復号されたビット----元の最も重要なビットの1つ----が導線234に出力として与えられる。また、このビットは、符号器1142の符号を用いて回路2321の内部で再び符号化し、ビットb3を回路2323だけでなく、後述のように導線236を介してチャネル復号器231(図16)にも与える。受信された記号信号の一部は、遅延要素2322により、直前で説明したようにビットb3の値を与えるに十分な時間だけ送らせる。そして、この信号は、回路2323へのビットb3と共に回路2323に与えられ、ビットb4の決定に進む。ビットb4の決定は、具体的には、超記号Ω0b3およびΩ1b3において受信された信号の記号に最も近い記号----およびそれに関係付けられた距離----を最初に求めることによって、行う。これらの距離は、バッファに記憶され、符号器1141(図5)によって実施された符号の最尤復号を行うために使用され、これによって、もう1つの最も重要なビットを導線234に与える。同時に、このビットを回路2323の内部で再び符号化して、ビットb4をチャネル復号器231の導線236に与える。
【0033】なお、この時点で、回路2321および2323は、明らかにそれぞれの機能を実行するために使用されているコンステレーションに関する情報の期間内に与えられなければならない。この情報は、例えば、コンステレーション記憶装置2325に記憶され、「A」として示されたその出力は、それら双方の回路のほか、図16の復号器231にも与えられる。
【0034】最も重要なビットが導線234に与えられ、ビットb3およびb4の値が復号器231の導線236に与えられると、後者のチャネル復号器の内部で多段復号を進めて、重要度の低いビットを復元することができる。このため、図16に示したように、復号器231は、復号b0回路2315、復号b1回路2316、復号b2回路2317、および遅延要素2311、2312、および2313を備えている。動作中、受信された記号信号を復号器232内部の処理遅延に等しい量だけ遅らせることにより、回路2315が、受信された記号信号を受信すると同時にビットb3およびb4が与えられるようにする。次に、回路2315は、超記号Ωb4b3の中で、受信された信号の記号に最も近く、b0=0かつb1=1であるような記号を最初に求める。次に、それら2つの最も近い記号に関係付けられた距離を用いて、ビットb0の復号、従って重要度の低いビットの1つの復元へと最終的に導いて、前記のようにトレリス経路を延長する。そして、このビットを回路2315の内部で再び符号化して、ビットb0の値を回路2316および2317に与えることができるようにする。後者は、遅延要素2312および2313の遅延が、再符号化されたビットを必要に応じて回路2316および2317の各々が受信できるようにするに十分である場合、他方の復号回路に関して上述したものと類似の要領で動作して、他方の重要度の低いビットを復元する。
【0035】多次元の記号が用いられる場合の復号も、類似の要領で実施される。
【0036】復号器231および232によって導線233および234に出力されるビットは、デスクランブラ241および242(送信器におけるスクランブラ111および110の逆関数をそれぞれ実行する)によりデスクランブルされる。次に、適切なテレビ受信機により表示できるように書式化されたテレビ信号をソース復号器253によってデスクランブラの出力から生成することによって、元のテレビ情報を復元する。次に、この信号をテレビ受信機260のテレビ視聴者に与える。
【0037】図1および2のシステムによって実施されるエラー不均一保護信号方式の性能は、丁度説明したように、公称符号化利得(即ち、非常に低い誤り率での符号化利得)によって特徴付けることができ、これは、符号化しない16QAMシステムの信号対雑音比を上回るSNRにおける利得である。通常の符号のそれぞれの状態の数を16に選定した場合、最重要ビットおよびそれほど重要でないビットに対する利得は、それぞれ6.24dBおよび2.70dBである。しかし、本発明に特有の利点は、達成された符号化利得の特定のレベルに完全に依存するわけではない。従来の技術において周知の符号化構造により、特定の用途において、それ匹敵するかまたはそれ以上の符号化利得の結果を達成できる。しかし、本発明が特に有利なところは、用途が与えられた場合、所望の性能基準を選択し、それらの基準を満たす符号化方式に容易に到達するための大いに高い可能性をシステム設計者に与える能力にある。
【0038】例えば、前記のシステムの全体的なデータ・レートは、符号器1141および1151によって実施される符号をレートR=15/16のゼロ・サム・パリティ検査符号に変更する(ほか、符号器において8ビットではなく16ビットのバッファを用いる)ことによって、符号化利得に影響を与えることなく記号あたり3.75ビットから3.875ビットへと増加させることができる。(同時に、最重要ビットの割合が、43.33%から43.55%まで極わずか増加する。)もう1つの例として、最重要ビットの割合は、34.375%まで減らすことができるが、同時に、a)符号器1141、1142、1152、および1153により実施される符号を、ビット率R=7/8の破裂畳み込み符号、ビット率R=3/4の畳み込み符号、ビット率R=7/8のゼロ・サム・パリティ検査符号へと変更し、さらにb)バッファ1157に加えられるビットが符号化されていないビットとなるように符号器1151を除去することによって、前記のビットに与えることのできるエラー保護のレベルを増加させることができる。この構造により、最重要ビットに対しては8dB、重要度の低いビットに対しては0.22dBの符号化利得が達成される。さらに、図4におけるd2/d1の比を変えることによって、最重要ビットの利得と重要度の低いビットの利得との間でトレード・オフを行うことができる。従って、本発明により、所望のシステムの設計基準を満たすために実質的に無限の範囲の設計パラメータ----符号のビット率、符号の複雑さ、全体的な符号方式の冗長性、(重要度の低いビットに使用されるものに対比した場合の)最重要ビットのエラー保護に使用されるその冗長性の端数----が利用者に許される。この柔軟性は、種々の異なる数の記号、記号配置、超記号のグループ化方式、および部分集合の分割方式を有するコンステレーションを含む種々の異なるコンステレーションを用いることによって、さらに高めることができる。実際に、新たな種類のコンステレーションを有利に用いて、システム設計者に一層の柔軟性を提供することができる。これらのコンステレーションは、コンステレーション内部の特別な距離関係に特徴がある。事実、符号化変調方式の設計における重要なパラメータは、いわゆる部分集合内距離である。このパラメータは、部分集合内の2つの記号間の最小距離である。本発明の場合とは異なり均一のエラー保護を与えようとする符号化変調方式の場合、設計の制約は、すべての部分集合にわたってとられる部分集合内距離の最小値を最大にするようにコンステレーションを部分集合に分割することである。この値(「最大部分集合内距離」またはMIDと定義する)は、特定の分割方式が与えられ、特定の部分集合の部分集合内距離を(記号対部分集合の割り当てを変更することによって)さらに増大させようとしても前記の最小値がそれ以上増大しない時に、達成されるものである。
【0039】さらに、エラー均一保護方式とエラー不均一保護方式との間の重要な相違に留意する必要がある。前者においては、いわゆる符号化済みのビットに対するエラー保護は、部分集合シーケンスの間の最小距離によって決定される一方、符号化されていないビットに対するエラー保護は、1つの部分集合内部の記号間の最小距離によって決定される。エラー均一保護方式の設計の場合、すべてのデータに対して均一なエラー保護が望まれるので、これら2つの最小値は互いに可能な限り近い方が望ましい。これらの方式の性能は、部分集合内の記号間の距離によって支配される。このことは、部分集合シーケンスの間に所望の距離を達成するために符号の複雑さをいつでも増すことができるという事実に起因する。
【0040】不均一なエラー保護の場合、対比してみると、超記号における記号は、重要度の低いビットによって選択される。これらの記号間の距離は、MIDより十分小さくすることができる。事実、その距離は、全体としてのコンステレーションの記号間の距離のみによって制限される。この距離は、重要度の低いビットに対し必要な水準のエラー保護を与えるように選定される。その距離を一度固定すると、この事実を利用するために部分集合の分割を行うことができ、このようにして、同じ複雑さで通常の符号化変調によって可能であるより長い超記号シーケンス間の距離の実現を可能とする。このようにして、もはや制約を受けることなく、超記号の内部においてすべての記号を互いに離しておくことができる。
【0041】以上のことを考慮すると、エラー不均一保護信号方式において有用なコンステレーションは、超記号の中の少なくとも1つの超記号の記号の少なくとも幾つかの間の最小距離がMIDより小さいという事実によって特徴付けられる。事実、この一般的な種類のコンステレーションは周知である。しかしながら、従来の分野では、超記号の記号間の最小距離は、全体としてのコンステレーションの記号間の最小距離と同じである。対比してみると、問題のコンステレーションはそれほど制約を受けない。つまり、超記号の中の少なくとも1つの超記号の記号の中の少なくとも幾つかの間の最小距離は、全体としてのコンステレーションの記号間の最小距離より大きく、やはりMIDより依然として小さい。図解的に言えば、この基準を満たすコンステレーションは、一般に、(均一なエラー保護方式に使用されるコンステレーションの部分集合がそうであるように)少なくともある程度は重複する超記号を有すると思われる。つまり、少なくとも1つの超記号の少なくとも1つの記号が、異なる超記号の各記号対に、その記号対の互いの距離より近くなる。
【0042】これらの原理を具体化する説明のための32記号のコンステレーションを図7に示す。このコンステレーションは、4つの超記号に分割され、それを構成する記号には、それぞれA、B、CおよびDとラベルを付けてある。「X」とラベルを付けた距離は、例えば1であることもあり、これによって、個々の記号が不均一に配置されたコンステレーションを与えることができる。あるいは、「X」を----31/2のように----1より大きくすることも可能であり、これによって、超記号間の距離の幾つかは大きくなる。これにより、エラー保護の所望の水準を達成する上で設計の自由度がさらに加えられる。
【0043】図7のコンステレーションのMIDは、「2」であり、これは、図8(同じコンステレーションがエラー均一保護を与えるように分割されている)の考察から確認することができる。つまり、例えば「A」とラベルが付けられた任意の2つの記号間の最小距離が実際に「2」である。図7において、対比してみると、本発明により対応する最小距離は、「2」より小さい。具体的には、21/2である。さらに、図式的に見ることにより、部分集合AおよびBは、部分集合CおよびDと同様に互いに重複し合う。(従って、図4において行ったように超記号を囲む四角を描くことは不可能である。)
【0044】別の説明のためのコンステレーション(これは64個の記号を有する)を図9に示す。この場合も、コンステレーションは、図7に対して使用したものと同様のラベルの付け方を用いてラベル付けした4つの超記号に分割されている。
【0045】図10から図14においても同様のラベルの付け方を用いているので、これらのコンステレーションの編成については、さらに説明の必要はない。
【0046】次の第1表および第2表は、エラー不均一保護信号方式を与える観点から本発明によって与えられる優れた柔軟性を示すものである。エラー不均一保護信号方式により、a)最重要ビットの割合、b)符号の全体的な冗長度、c)符号化利得、およびピーク電力対平均電力の比(これは、地上および衛星の電話チャネルのような電力が限られたチャネルの場合、重要な考慮項目である)の種々の異なる組み合わせが与えられる。第1表は、ビットの25%が最重要ビットを構成する符号の表である。第2表は、その他の種々の割合のビットが最重要ビットを構成する符号の表である。
【表1】
【表2】
【表3】
【0047】これらの表において、Pは次元あたりの平均電力を表し、PARはピーク電力対平均電力の比を、d2はその引数によって表される超記号の間のユークリッド距離の2乗を、Γは最重要ビットに対する公称符号化利得を、そしてγは重要度の比較的低いビットに対する公称符号化利得を示し、[g1,g2]は指定された畳み込み符号に対する8進表記の生成マトリックスであり、Lはパリティ検査符号の長さである。不均一なコンステレーションに対する不均一性の程度は、zによって決定される。また、これらの表は、達成可能な利得をxの関数として示す。
【0048】第1表および第2表に掲げたようなエラー不均一保護信号方式の設計において、一般に、あるパラメータの値が与えられなければならない。これらの値には、(a)利用可能なチャネルの帯域幅、(b)最悪の場合のチャネルSNR、(c)ビットの等級の数、(d)各等級におけるビットの割合、(e)最悪なチャネル状態の下で最終的に受信される信号の所望の品質、(f)容認できる復号器の複雑度、および(g)ピーク電力対平均電力の比が含まれる。これらが与えられると、与えられたパラメータの値を用いてエラー不均一保護方式の設計に移ることができる。
【0049】一般に、記号あたり約1つの全体的冗長ビットを許すように信号コンステレーションを選択することから開始する。必要な超記号の数は、記号あたりの重要なビットの実際の数によって決定する。例えば、ビットの25%以上で50%以下が重要であり、利用できる帯域幅および必要とされる全体的なビット率により、例えば記号あたり4情報ビットと示される場合、記号あたり1情報ビットを伝送しなければならない。さらに、重要なビットに対しある量の冗長性を与えることが望まれると仮定すると、4つの超記号を有する2次元コンステレーションを用いることが合理的である。ここに開示した種々のコンステレーションやその他の所望のコンステレーションを初期の設計の選択として使用することができる。次に、ビット流に対して使用するべき符号化方式を、それに割り当てようとする相対的な冗長性によって選択する。重要なことは、本発明によるマルチレベル符号の使用によって、所望の設計基準の達成を促進できることである。分析により、最悪の場合のSNRにおいて望まれる品質がこの時点で至る設計により達成できないようならば、実際にそれを達成できるかどうかを調べる目的で別のコンステレーションか、またはその他の符号を調査することができる。これができないようならば、容認可能な復号器の複雑度のような以前に与えた条件を1つ以上緩和しなければならない場合もある。符号の設計の選択に影響し得る他のパラメータのほか、他の設計基準も考えられる。
【0050】それぞれ異なる超記号からの記号の対の間の距離がそれら2つの超記号の記号の任意の対の間の最小距離である場合、特定された各超記号から記号を選択するために使用されるビットの値をそれらの記号に割り当てるのに都合のよい方法に従って、前記の記号の対を同じ重要度の比較的低いビットの値に割り当てる。このような方法を図10に示す。同図においては、図4と同様に、各記号は、b2、b1およびb0の組の値でラベルが付けられている。例えば、超記号Ω00、Ω01、Ω10、およびΩ11のそれぞれにおいて110とラベル付けされた記号は、すべて前記の基準を満たす。このようなラベルの付け方(これは、コンステレーションおよび超記号の幾何学的状態に応じて等級を変化させるように実現することができる)は、正しい超記号シーケンスの再生時にエラーが起こっても重要度の比較的低いビットが正しく復号される確率が改善されるという点において好都合である。これに加えて、前記の最小距離基準を満たさないような記号に対するビット割り当てを同様に賢明に選択することよってさらに恩恵を得ることも可能である。しかしながら、これは、図4のコンステレーションに関連して先に説明した例の場合のように超記号の内部の記号に対して実施される符号化によって課せられる制限の範囲内で実行する必要がある。
【0051】以上は、本発明の原理を単に説明しただけである。例えば、説明のために実施例は、2つのデータ流(最も重要なものおよび重要度の比較的低いもの)を用いて実施したが、本発明は、3つ以上のストリームを含む方式においても使用することができる。さらに、2次元のコンステレーションを示したが、本発明は、2次元以上のコンステレーションを用いる方式の場合も使用することができる。
【0052】また、本明細書では、例えばソース符号器、スクランブラのように個別的な機能構成ブロックによって実施されるように本発明を説明したが、それらの構成ブロックの任意の1つ以上を1つ以上の適切なプログラムされたプロセッサ・チップ、デジタル信号プロセッサ(DSP)チップなどを用いて実施することも可能である。
【0053】従って、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例が考えられるが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0054】尚、特許請求の範囲に記載した参照番号は、発明の容易なる理解のためで、その技術的範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【0055】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、本発明によるエラー不均一保護信号方式に1つ以上のマルチレベル符号を取り入れることにより、a)最も重要なデータ要素に対する符号化利得、b)重要度の低いデータ要素に対する符号化利得、およびc)最も重要なデータ要素の割合の特定の所望の組み合わせをさらに容易に達成することができる。符号化理論の観点から、この結果は、本発明により符号化方式全体に導入される冗長性を最も重要なデータ要素の符号化と重要度の低いデータ要素の符号化との間で実質的に任意の比率で割り当てることができるという事実から生じることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を具体化する送信機のブロック図である。
【図2】図1の送信機によって送られる信号のための受信機のブロック図である。
【図3】従来の技術の信号コンステレーションを表す図である。
【図4】図1の送信機によって使用される信号コンステレーションを表す図である。
【図5】本発明により図1の送信機において使用される説明のためのマルチレベル符号器を示す図である。
【図6】本発明により図1の送信機において使用される説明のためのマルチレベル符号器を示す図である。
【図7】図1の送信機によって代わりに使用できる信号コンステレーションを表す図である。
【図8】エラー均一保護方式で一般に使用される種類の信号コンステレーションを表す図である。
【図9】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図10】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図11】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図12】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図13】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図14】図1の送信機において代わりに使用し得る別の信号コンステレーションを表す図である。
【図15】本発明によって図2の受信機で用いられる多段復号器の例を示す。
【図16】本発明によって図2の受信機で用いられる多段復号器の例を示す。
【符号の説明】
101 ビデオ信号源
104 ソース符号器
110、111
スクランブラ
114、115
チャネル符号器
131 コンステレーション・マッパー
141 通過帯域整形器
151 テレビ変調器
211 テレビ・フロント・エンド処理
212 A/D
221 通過帯域チャネル等化器
231、232
チャネル復号器
241、242
デスクランブラ
253 ソース復号器
260 テレビ受信機
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のデータ要素を含む少なくとも第1および第2のデータストリームからなる、情報を表すデジタル信号を生成する手段(104)と、前記第1および第2のデータストリームのうちの少なくとも一方のデータストリームをマルチレベル符号化する手段(114)を有し、前記第1のデータストリームのデータ要素に対するチャネル誘導エラーの確率が前記第2のデータストリームのデータ要素に対するチャネル誘導エラーの確率より小さくなるように前記デジタル信号にチャネルを割り当てるチャネル割当て手段(110、111、114、115、131)と、チャネルが割り当てられた信号を通信チャネルで伝送する手段(141、151)とを備えた情報通信装置において、前記少なくとも一方のデータストリームは複数の部分ストリームを含み、前記マルチレベル符号化手段は、前記複数の部分ストリームのうちの少なくとも1つの部分ストリームを冗長符号化し、冗長符号化したすべての部分ストリームと、冗長符号化していない部分ストリームを結合して、チャネル割当てに使用する符号化信号を形成する手段(1141、1142)を備えたことを特徴とする情報通信装置。
【請求項2】 前記情報はテレビ信号情報であり、前記第1のデータストリームのデータ要素によって表されるテレビ信号情報は、前記第2のデータストリームのデータ要素によって表されるテレビ信号情報より重要であることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項3】 前記チャネル割当て手段は、データ要素を表す所定のコンステレーションから記号のシーケンスを選択し、前記コンステレーションは超記号からなり、少なくとも1つの超記号内の記号間の最小距離が、前記コンステレーションの最大の部分集合内距離より小さいことを特徴とする請求項1の装置。
【請求項4】 前記少なくとも1つの超記号内の記号間の最小距離が、コンステレーション全体での記号間の最小距離より大きいことを特徴とする請求項3の装置。
【請求項1】 複数のデータ要素を含む少なくとも第1および第2のデータストリームからなる、情報を表すデジタル信号を生成する手段(104)と、前記第1および第2のデータストリームのうちの少なくとも一方のデータストリームをマルチレベル符号化する手段(114)を有し、前記第1のデータストリームのデータ要素に対するチャネル誘導エラーの確率が前記第2のデータストリームのデータ要素に対するチャネル誘導エラーの確率より小さくなるように前記デジタル信号にチャネルを割り当てるチャネル割当て手段(110、111、114、115、131)と、チャネルが割り当てられた信号を通信チャネルで伝送する手段(141、151)とを備えた情報通信装置において、前記少なくとも一方のデータストリームは複数の部分ストリームを含み、前記マルチレベル符号化手段は、前記複数の部分ストリームのうちの少なくとも1つの部分ストリームを冗長符号化し、冗長符号化したすべての部分ストリームと、冗長符号化していない部分ストリームを結合して、チャネル割当てに使用する符号化信号を形成する手段(1141、1142)を備えたことを特徴とする情報通信装置。
【請求項2】 前記情報はテレビ信号情報であり、前記第1のデータストリームのデータ要素によって表されるテレビ信号情報は、前記第2のデータストリームのデータ要素によって表されるテレビ信号情報より重要であることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項3】 前記チャネル割当て手段は、データ要素を表す所定のコンステレーションから記号のシーケンスを選択し、前記コンステレーションは超記号からなり、少なくとも1つの超記号内の記号間の最小距離が、前記コンステレーションの最大の部分集合内距離より小さいことを特徴とする請求項1の装置。
【請求項4】 前記少なくとも1つの超記号内の記号間の最小距離が、コンステレーション全体での記号間の最小距離より大きいことを特徴とする請求項3の装置。
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図2】
【図1】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図11】
【図14】
【図12】
【図15】
【図16】
【図4】
【図5】
【図7】
【図2】
【図1】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図11】
【図14】
【図12】
【図15】
【図16】
【特許番号】第2801482号
【登録日】平成10年(1998)7月10日
【発行日】平成10年(1998)9月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−314327
【出願日】平成4年(1992)10月30日
【公開番号】特開平6−292161
【公開日】平成6年(1994)10月18日
【審査請求日】平成5年(1993)5月14日
【出願人】(390035493)エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション (130)
【氏名又は名称原語表記】AT&T CORP.
【参考文献】
【文献】特開 平2−2277(JP,A)
【文献】特開 昭63−39239(JP,A)
【文献】特開 昭63−237646(JP,A)
【文献】特開 平3−228465(JP,A)
【文献】特開 平3−11829(JP,A)
【文献】特開 平2−291744(JP,A)
【登録日】平成10年(1998)7月10日
【発行日】平成10年(1998)9月21日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)10月30日
【公開番号】特開平6−292161
【公開日】平成6年(1994)10月18日
【審査請求日】平成5年(1993)5月14日
【出願人】(390035493)エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション (130)
【氏名又は名称原語表記】AT&T CORP.
【参考文献】
【文献】特開 平2−2277(JP,A)
【文献】特開 昭63−39239(JP,A)
【文献】特開 昭63−237646(JP,A)
【文献】特開 平3−228465(JP,A)
【文献】特開 平3−11829(JP,A)
【文献】特開 平2−291744(JP,A)
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