説明

情緒障害処置用グリコサミノグリカン

本発明は、2400(∀200)Dの平均分子量を有するグリコサミノグリカン画分の、情緒障害、特に抑うつ障害、不安症、不安神経症、動揺、錯乱などの処置に適した薬学組成物の調製への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコサミノグリカンの新規の薬学的適用に係り、特に、2400(∀200)Dの平均分子量を有するグリコサミノグリカンの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
情緒障害は、抑うつ障害、不安症、精神病、躁病を含む精神領域における疾病に属し、周囲への異常な反応の態様で主に発現され、攻撃的な面から、錯乱及び無感動にまで及ぶ。
【0003】
情緒障害は、原因に依存した種々の方法で、薬理学的に処置される。単極性情動障害は、イミプラミンなどの三環系抗うつ薬や、フルオキセチンなどのセロトニン取込の選択的阻害剤などのヘテロ環系抗うつ薬や、フェネルジンなどのモノアミンンオキシダーゼ阻害剤などで処置される(この種の薬物は、非特許文献1のチャプター19に好ましく収載されているものである)。
【0004】
一方、双極性情動障害は、リチウム塩、バルプロ酸又は抗けいれん作用を有するその他の薬物で処置される(この種の薬物は、非特許文献1のチャプター20に好ましく収載されているものである)。
【0005】
全般性不安障害や強迫症状群などの初期の不安症は、上述の薬物や、ベンゾジアゼピン及び/又はブスピロンで処置される。
【0006】
しかしながら、上述の全ての症状は、種々の症候群を暗示しており、非特許文献2に定義されている。
【0007】
これら全ての症状を処置することが強く推奨され、患者の75%は、医療的に有意な有益性を得る。
【0008】
情緒障害の薬理学的処置は、しかしながら、正常な意識状態を変更するなど、種々の副作用を伴う。
【0009】
攻撃性、錯乱状態、新しい環境への適用不全などの特定の情緒障害は、脳シナプスや脳内伝達のレベルに対する結果的な効果により、流動性や容量の点(及び伝達容量の点)で脳内における細胞外マトリクス(ECM)の変化に起因すると考えられている。
【0010】
従って、ECMの流動性及び容量を改変させ得る製品は、脳内伝達を向上させるのに有用であり得る。
【0011】
さらに、グリコサミノグリカンは、脳内注入により、過剰不安効果(hyperanxiogenic effect)を有することが知られている。
【特許文献1】欧州特許第1181024号明細書
【非特許文献1】The Pharmacological basis of therapeutics、X編、2001年
【非特許文献2】Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (Manuale diagnostico e statistico dei disturbi mentali、DMS−IV−R)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、脳内の細胞外マトリクスの病態的変化を阻止又は減弱させ得る薬学的組成物の調製への、2400(∀200)Dの平均分子量を有するグリコサミノグリカン画分の使用に関する。この組成物は、従って、情緒障害の処置に使用され得る。また、特に、抑うつ障害、不安症、不安神経症、動揺、錯乱などの処置にも使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ここで、驚くべきことに、2400(∀200)Dの平均分子量を有するグリコサミノグリカンは、in vivoにおいて、脳内の細胞外マトリクス(ECM)の変化を抑制又は減弱させる能力に起因して、通常の意識状態を変化させることなく情緒障害を修正し得ることを見出した。
【0014】
従って、2400(∀200)Dの平均分子量を有するグリコサミノグリカン画分は、情緒障害の処置に適した薬学的組成物の調製に使用され得る。
【0015】
よく知られているように、グリコサミノグリカンは、人体において最も豊富なヘテロ多糖体であり、改変された糖であるN−アセチルガラクトサミン又はN−アセチルグルコサミンの1つか2つと、グルクロン酸又はイズロン酸などのウロン酸とから形成される二糖類の繰り返し単位で形成される。
【0016】
本発明は、特に、2400(∀200)Dの平均分子量を有するグリコサミノグリカン画分に関する。
【0017】
好ましくは、本発明のグリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸又はケラタン硫酸から得られる。
【0018】
上述の画分は、以下の種々のステップで、対応するグリコサミノグリカンの脱重合により製造されてもよい:つまり、グリコサミノグリカンをガンマ線で照射するステップと、その後ゲル濾過を行い、且つ限外濾過を行うことにより製造されてもよい。本発明によるグリコサミノグリカンを得る方法は、当業者に知られている。
【0019】
本発明の特定の好適実施例によると、本発明のグリコサミノグリカン画分は、例えば特許文献1に開示の方法により、ヘパリンから得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明によるグリコサミノグリカン画分の薬理学的な検討に関して、以下の評価により、ラットに実験系を適用した。つまり:
1)オープンフィールド試験又はOF試験を用いた、環境に対する反応性;
2)モリス水迷路(MWM)試験を用いた、水迷路中での学習性;及び
3)コンテキスト依存恐怖条件付け試験(context−dependent fear conditioning;CDFC)試験を用いた、敵対的環境に対する条件付け;
の実験系を適用した。
【0021】
(試験に用いた材料)
Harlan Sprague−Dawley Inc.(インディアナポリス In.)製で、300〜350gの体重の11月齢のブラウンノルウェー(BN)ラットを用いた。
【0022】
種々の処置又は生物学的試験を行う前に、2週間、新しい環境にラットを適合させた。薬物を処置する動物(7匹)及びビヒクル単独で処置する動物(7匹)をランダムに指定した。これらの動物を、個々のケージ内に保持し、温度を調節し(22〜26℃)12時間のサーカディアンリズム(照射は7:00から開始)で、実験動物管理認定協会の指針に従って評価した。動物には、食事と水とを自由に与えた。挙動に関する全ての評価は、居住場所に近接した防音環境において9:00〜13:00の間に行った。実験の終期である、検討中の製品又はビヒクルによる処理後42〜44日において、ペントバルビタールナトリウムを高い用量(100mg/kg静注)で屠殺した。これら全ての手法は、ロヤラ大学医療センター(Loyala University Medical Center;IACUC)のIAUC(Institutional Animal Care and Use Committee)により承認されている。
【0023】
2400(∀200)Dの平均分子量を有するグリコサミノグリカン画分(以下、C3と称する。)は、特許文献1に述べるように、γ線照射によるヘパリンの脱重合の後所望の分子量を有する連続する画分を得るように、得られ、水溶性の白色粉末からなる。これを、42〜44日の間、動物が25mg/kgの日投与量で投与されるように、飲料水で希釈した。個々の動物の水消費量は、適合期間の最初の2週間の間に測定した。実験の間、C3を有する飲料水を、3〜4日おきに交換した。
【0024】
週毎に分割した以下のスキームに、挙動分析に関する実験手法を示す。
【0025】
【表1】

【0026】
2週間後(1週間は、適合を行い、もう一週間は、水の消費量の評価を行う)、動物に3つの試験、つまり、OF、MWM及びCDFCを行った。
【0027】
(OF(オープンフィールド))
新たな環境への曝露(12分間)で得られる挙動により、新規環境への嫌悪反応(新規環境の恐怖)及び探索反応の測定が可能となる。
【0028】
OF試験は、100cm×100cm×40cmの寸法のプラットフォーム上で行った。ニス塗りしたベニア板で壁を構築した。床には、白色を塗布し、床を、薄い黒線でマークした25区画(25cm×25cm)で分割した。上述のプラットフォームの中央の9つの区画で形成された端部に配置された角には、3.5cm径の4つの穴を設けた。
【0029】
間接的に照明を行った防音室にプラットフォームを載置した。
【0030】
動物をプラットフォームの中央に載置し、12分間観察した。
【0031】
動物の挙動をビデオカセットに記録した。以下の挙動要素を検討した:つまり、1)プラットフォームの中心の区画を去るのに要した時間(秒)及び壁に沿った区画の一つに入るのに要する時間(走触性);2)歩いた区画の数(水平探索);3)レアリングの数、つまり、ラットが後脚で立った回数(垂直探索);並びに4)床の穴の一つに鼻を突き入れた数;を検討した。
【0032】
各セッションの後、OFを70%エタノール溶液で洗浄し、個々の動物に関連した種々の臭覚刺激物を除去した。
【0033】
(MWM(モリス水迷路))
水迷路を用いて、学習及び空間記憶を評価し得る。これは、水から脱出可能なプラットフォームの位置を学習し記憶する動物の能力を測定するものである。加えて、この試験で評価され得るのは、動物の興奮状態又は鎮静状態である。
【0034】
この迷路は、プラスティック製シリンダー(152cm径、74cm高)で構築され、白色を塗布し、56cmまで水を充填し、4分円とした。中央と端部との間の中間で水表面の下1.5cmの位置に、9cmのプラットフォームを設けた。水には、粉ミルクを添加して不透明とし、水温は、22〜26℃に保った。水迷路の外部の参照地点は、一定に保持した。各動物の挙動を、ビデオ(SMART Video Tracking System、San Diego Instruments、サンディエゴ、CA)で記録した。ビデオカメラをコンピューターに接続し、水迷路の中央の上部に載置した。コンピューターを用いて:1)上述の隠されたプラットフォームに動物が到達するのに要する軌道の長さ(cm);2)各4分円で停止した時間(秒)及び移動した距離(cm);並びに3)プラットフォームを発見し、登るのに要した時間(秒);を測定した。
【0035】
一日当たりこの試験を4回行った。各試験において、動物を、水迷路の端部に置いた。プラットフォームは、最初の6日間は常に同じ位置(4分円1)に起き、次の7〜9日目の3日間は、「回復(reversal)試験」用に、異なる位置(4分円3)に置いた。
【0036】
第1試験において、プラットフォームを有する1区画の隣、つまり4分円1の隣にある4分円2に動物を置いた。次の3つの試験の間、時計回りの方向の4分円の一つに動物を置いた。動物がプラットフォームに到達するか、最大60秒が経過するまで、試験を行った。動物が60秒以内にプラットフォームに到達しなかった場合は、プラットフォーム上に動物を静かに載置し、60秒間、そのままにしておいた。各動物をプラットフォーム上に60秒間置き、その後即座に試験を繰り返した。4つの試験の後、タオルで静かに動物を乾燥させ、ケージに戻した。
【0037】
(CDFC(context−dependent fear conditioning))
この試験は、逆行的に条件付けされていない刺激(UCS)を対とした条件付け刺激(CS)を学習し記憶する動物の能力を測定するものである。
【0038】
5日間の連続して行われるこの試験は、条件付けされた(CS又は光)出来事(event)(前景(foreground))と、条件付けされておらず(UCS、弱い電気ショック)、且つ環境(背景)の出来事との関係を学習し記憶する動物の能力を分析することを可能とする。
【0039】
動物を2日の連続する間、第1環境状況(状況A)に適合させた。
【0040】
光の後にショック(通常の強度で若干の電流が脚を通過するが、疼痛を与えるには十分な強度である)を与えることからなる3つの連続した刺激の間、3日目において、動物の挙動を分析した。なお、これが、それぞれCS及びUSCである;これらの刺激により、「フリーズ(freezing)」(動物が特徴的な姿勢ですくむ)という現象を発現させる恐怖の状態を発生させ、これが、恐怖の度合いを正確に測定させることとなる。事実、刺激の連続により、状況Aにおいて実行される「前景」という出来事を示す。
【0041】
4日目において、種々のCS又はUCS刺激を発生させることなく、動物を状況Aに戻した。これにより、「背景」の状態(つまり、CS−UCSという出来事を前に経験した状況)にある動物の挙動を分析することが可能となる。以前の実験において、海馬の損傷は、この「背景」が条件付け、つまり「前景」に関連付けられたことを思い出すことが全体的に不能となる事象を包含することを示す。4日目におけるフリーズする現象が完全に欠如するということは、記憶障害が起こっていることを示すものであって、つまり、動物は、上述の出来事が起こっている状況を思い出さないということである。
【0042】
5日目において、動物を、異なる環境(状況B)に載置し、光刺激(CS)のみを適用し、環境とは独立して(このセッションでは、UCS型の刺激を適用しない)、この刺激が逆行する性質の出来事を示すことを思い出せるかどうかを同定した。この異なる状況に対してフリーズして反応する動物の能力は、光刺激に係る負の認識、つまり、この後に疼痛を伴う刺激があることを理解したことを示すものである。
【0043】
状況A及びBは、小型チャンバー(48cm長×25cm深×28cm高)で発生させた。実験は、8分間続けた。
【0044】
状況Aにおいて、床は、2.5mmの径で中心から中心まで10mm離れた金属チューブで形成された格子からなる。上述のチャンバーの壁は、すべて、プレキシグラス(登録商標)製であり、前壁は、透明であり、後部は黒であり、その他は、白色である。光刺激用の7.5Wのランプは、チャンバーの後部から14cmの位置で、チャンバーの側壁の一つの中心に置いた。
【0045】
3日目の「前景」なる条件付けは、以下の通り行った。2分間の間隔の後、光を点灯させ(CS)、20秒後、動物の脚に電気ショックを与えた(脚ショック)。なお、この電気ショックは、上述の金属製の格子を介して、交流0.8mAの強度で2秒間行い、交流は、Grason−Stadler社製発電器(モデルE1064GS)から発生させた。2分の間隔でCS及びUCSを行う他の2つのセッションに動物をさらし、全体で、3回のCS−UCSを行った。全てのセッションをビデオに記録し、その後評価した。
【0046】
ストップウォッチを用いて、ビデオ記録に基づいて、4つのセッション(2×4分=8分/日)における「フリーズ」の程度を秒単位で測定した。
【0047】
4日目において、状況Aを再び用いたが、動物には、種々の刺激を与えず、従って、試験は、背景単独に対する反応、つまり、敵対的環境の記憶を評価したものである。フリーズは、3日目のフリーズとして測定した。
【0048】
4日目において、状況Bを使用した。チャンバーの寸法は、状況Aのものと同一であるが、格子と後部壁は、ベニア板に置き換えた。各セッションの後、すぐにペットザイム(PetZyme(登録商標))(色及び臭いを除去するもの)を用いて、チャンバーを洗浄した。ペットザイムは、1〜5日目における状況Aに使用した70%エタノール溶液とは異なる臭覚刺激を発生する。2分の間隔の後、2分の間隔で、CS刺激(20秒間の光照射)を3回適用した。UCSは、適用しなかった。従って、5日目は、前景の条件付け、つまり、環境と敵対との関連を測定する機能を有する。フリーズは、3日目のフリーズとして測定した。
【0049】
データの統計分析は、平均値及び標準誤差の算出に基づいたが、2つの群の比較は、非パラメータ統計(Mann−WhitneyのU試験)を用いて行った。
【0050】
(結果)
動物が日毎に消費する水分量は、35.7±1.1mLであり、C3は、消費に影響を及ぼさなかった。
【0051】
(オープンフィールド)
1)中央を去るのに要する時間(秒):平均±標準誤差
(垂直探査)
コントロール: 25±8.0
C3: 12.6±2.5
U試験: p<0.05
【0052】
2)歩いた区画の数:平均±標準誤差
コントロール: 56.5±3.4
C3: 76±8.4
U試験: p<0.05
【0053】
これらの結果により、C3による処理は、環境に対する恐怖を減少させ、且つ結果として、動物の探索行動を増加させることが示された。
【0054】
(MWM(モリス水迷路))
この試験については、処置動物とコントロール動物との間に有意な変化は観察されなかった。習得特性と「回復」特性とは、ほぼ同一であった(データ示さず)。この試験の評価は軌道の長さとプラットフォームに到達するのに要する時間とに基づいているので、C3は、学習又は運動を変化させないことが示されたといえ、したがって、種々の刺激作用を惹起しない。言い換えれば、C3で処理した動物は、鎮静も刺激も示さないといえる。
【0055】
(CDFC(Context−dependent fear conditioning))
1)フリーズ時間(秒:3日目における4セッションでの平均±標準誤差)
【表2】

*U試験:p<0.05
【0056】
これらの結果、C3は、CS及びUCS刺激を適用する全てのセッションにおいて、フリーズを有意に減少させることが示された。これは、前景での作用を示しており、敵対的な環境に直面した際、パニックを減少させることを示すものである。
【0057】
2)上述の方法に示したように、CDFCの4日目において、8分間のうち、各2分で種々の刺激を適用せずに試験チャンバーに動物を載置した。
【0058】
これらの環境において、しかしながら、動物は、この環境(背景)を敵対的な出来事(前景)に関連付ける傾向にあり、従って、恐怖の条件付けを構築する。
【0059】
これらの結果を以下の表に示す。
【0060】
フリーズ時間(秒):4日目における4セッションでの平均±標準誤差
【表3】

*U試験:p<0.05
【0061】
第一セッションにおいてC3で処理した動物に係る平均値は、コントロールに比較して、より有意に減少した。これは、敵対的な環境に直面した際、より制御された恐怖を一般的に示すものである。最後のセッションにおいて、処置群とコントロール群との間の差は、もはやなく、フリーズ時間の増加は、2つの群の間で有意な差ではない値で安定した。このことは、両群において、敵対的であった環境に係る記憶が残存することを示すものである。
【0062】
3)5日目における結果、つまり、環境的な状況が変化せず、光刺激のみを適用して、疼痛刺激(つまり、格子がない状態)を適用しなかった場合、以下の結果となった。
【0063】
フリーズ時間(秒):5日目のセッションにおける平均±標準誤差
【表4】

*U試験:p<0.05
【0064】
これらの結果は、フリーズ挙動が、2つの群と同様であることを示し、つまり、両群において一様に増加することを示す。C3で処置した群では、フリーズが減少しており、これは、6分目においてゼロと有意に異なるとともに、全体のセッションにおいて基本的に、より減少したものである。
【0065】
(結論)
42〜44日の間、25mg/kg/日の用量でC3により処置すると、以下の効果を示す。
【0066】
1)OF情動反応は減少し、探索行動は増加する。
【0067】
2)習得期間(3日目)におけるCDFCによりフリーズが減少し、敵意を発生することなく敵対的環境にのみ曝露することによりフリーズが減衰し(4日目)、最終的に、同様の新規の状況及び部分的刺激に対してフリーズが減衰した(5日目)。これらの3つの要素の全て、特に習得期間に関連するものは、環境及びその可能性のある敵対性に対して良好な適合性に係る一義的な指標である。
【0068】
3)水迷路により検討され得る状況及び位相(学習及び回復)における学習及び部分的な記憶の補完はなかった。
【0069】
4)運動活性の変化で明らかにされ得るCNS刺激又は抑圧効果はなかった。
【0070】
したがって、得られた結果が示すのは、C3は、CNS抑制剤又は刺激剤として作用することなく、環境に対する情動反応を向上させることである。
【0071】
従って、2400(∀200)Dの平均分子量を有するグリコサミノグリカンは、情緒障害の処置に適した薬学的組成物の調製に使用され得る。
【0072】
この組成物は、薬剤学的に許容可能な希釈剤又は賦形剤とともに薬理学的に有効な量の上述の活性本体を有し、皮下、筋肉内、静脈内及び経口投与に適した形態であってもよい。
【0073】
上述の薬剤学的に許容可能な希釈剤又は賦形剤の例としては、生理食塩水、コロイダルシリカなどが挙げられる。
【0074】
本発明による組成物は、10mg以上100mg以下の範囲の量のグリコサミノグリカンを通常有する。
【0075】
情緒障害の処置は、患者に約10mg/日以上400mg/日以下の活性本体を投与することを有する。
【0076】
特に、皮下、筋肉内又は静脈投与では、10mg/日以上50mg/日以下で投与することが好ましく、経口投与では、50mg/日以上100mg/日以下で投与することが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳内の細胞外マトリクスの病態変化を阻止又は減少させ得る薬学的組成物を調製するための、2400(∀200)Dの平均分子量を有するグリコサミノグリカン画分の使用。
【請求項2】
前記グリコサミノグリカン画分は、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸又はケラタン硫酸の脱重合により得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記グリコサミノグリカン画分は、ヘパリンの脱重合により得られるものであることを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記薬学的組成物は、情緒障害の処置に使用されるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記情緒障害は、抑うつ障害、不安病、不安神経症、動揺又は錯乱であることを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記薬学的組成物は、2400(∀200)Dの平均分子量を有する前記のグリコサミノグリカンを10mg以上100mg以下有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
情緒障害の患者の処置方法であって、
2400(∀200)Dの平均分子量を有する前記グリコサミノグリカンを10mg/日以上400mg/日以下で投与するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
皮下、筋肉内又は静脈経路で患者に前記グリコサミノグリカンを10mg/日以上50mg/日以下で投与することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
経口経路で患者に前記グリコサミノグリカンを50mg/日以上100mg/日以下で投与することを特徴とする請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2006−528670(P2006−528670A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530208(P2006−530208)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050860
【国際公開番号】WO2004/103381
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505411413)
【Fターム(参考)】