説明

惣菜パンの製造方法

【課題】水分が多い惣菜であっても惣菜パンの惣菜にすることができる惣菜パンの製造方法を提供する。
【解決手段】この惣菜パンの製造方法は、パン生地を変形させて、底部21とそれに連続した環状の周壁部22とを有するようパン本体2を成形する成形工程と、発酵室の中でパン本体2を発酵させる発酵工程と、焼成室の中でパン本体2を焼成する焼成工程と、具材3及びゲル状に固化した汁材4をパン本体2に載置する組合せ工程と、を備える惣菜パンの製造方法であって、成形工程においては、第1の型具の内側面と第2の型具の外側面の間に環状の周壁部22が挟まれ、焼成工程においては、焼成途中で一旦パン本体2を焼成室から取り出してパン本体2から第2の型具を取り外し、再度パン本体2を焼成室に戻す工程が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、惣菜パンの製造方法、特に惣菜として汁物(スープ)や鍋物や麺類などを可能とする惣菜パンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、サラダパン、コロッケパン、焼きそばパン、カレーパンなど、パンの中に惣菜を入れたり載せたりした、いわゆる惣菜パンは、非常に簡便な食材であるため、好まれて広く食されている。このような惣菜パンの惣菜は、その水分によりパンの形状が崩れたり、水分がパンの外面に漏れたりしないように、水分がパンに移行し難い材料のものか、或いは、水分がパンに移行し難いよう加工されたもの(例えば、特許文献1に記載のもの)などが用いられている。なお、惣菜パンには、パン工場で大量生産され各スーパー等で販売されるものや、パン工房で比較的少量が生産されてそこで販売されるもの、などが有る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−112744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、汁物や鍋物や麺類など、水分が多い惣菜は、水分がパンに移行し難いようにするのが容易ではないために、これらは惣菜パンの惣菜とはなっていないのが現状である。
【0005】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、水分が多い惣菜であっても惣菜パンの惣菜にすることができる惣菜パンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の惣菜パンの製造方法は、パン生地を変形させて、底部とそれに連続した環状の周壁部とを有するようパン本体を成形する成形工程と、発酵室の中でパン本体を発酵させる発酵工程と、焼成室の中でパン本体を焼成する焼成工程と、具材及びゲル状に固化した汁材をパン本体に載置する組合せ工程と、を備える惣菜パンの製造方法であって、前記成形工程においては、第1の型具の内側面と第2の型具の外側面の間に環状の周壁部が挟まれ、前記焼成工程においては、焼成途中で一旦パン本体を焼成室から取り出してパン本体から第2の型具を取り外し、再度パン本体を焼成室に戻す工程が含まれることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の惣菜パンの製造方法は、請求項1に記載の惣菜パンの製造方法において、前記焼成工程では、第2の型具を取り外したとき、パン本体の周壁部の内方側面と底部の内方側面とにより形成された凹所に溶き卵が塗布されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の惣菜パンの製造方法は、請求項2に記載の惣菜パンの製造方法において、前記成形工程では、前記凹所に多数の穴が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る惣菜パンの製造方法によれば、パン本体の周壁部がほぼ均一な厚さで環状に形成されており、しかも周壁部の内方側面と底部の内方表面とにより形成された凹所の表面が固く焼成されているので、パン本体に惣菜(具材と汁材)から水分が浸透し難く、型崩れし難いものとなり、その結果、水分が多い惣菜であっても惣菜パンの惣菜にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る惣菜パンの製造方法による出来上がりの惣菜パンの模式的な断面図である。
【図2】同上の惣菜パンの製造方法の成型工程を説明する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を説明する。本発明の実施形態に係る惣菜パンの製造方法は、惣菜が汁物(スープ)や鍋物や麺類など、水分が多いものであり、パン工房で生産されてそこで販売される惣菜パンに好適なものである。出来上がりの惣菜パン1は、図1に示すように、パン本体2に、惣菜として、具材3と後述するゲル状に固化した汁材4が分かれて載せられたものである。
【0012】
パン本体2の製造方法は、パン生地を変形させて所望のパン本体2の形状に成形する成形工程と、発酵室(ホイロ)の中でパン本体2を発酵させる発酵工程と、焼成室(オーブン)の中でパン本体2を焼成する焼成工程と、が含まれる。成形工程以前に行うパン生地生成工程は通常のパンのパン生地生成工程と同様であり、当然に微妙に異なった多種のものが可能である。パン生地は、例えば、強力粉、砂糖、塩、水、イーストなどを混合し撹拌して作り上げ、所望の大きさに分割し、寝かせ、冷所に保存しておく。
【0013】
成形工程では、パン本体2は、図2に示すように、底部21とその底部21に連続した環状の周壁部22とを有するように成形され、周壁部22の内方側面と底部21の内方表面とにより上方に開放(開口)した凹所2aが形成される。この凹所2aの内方(パン本体2の内方)には、後述の組合せ工程で、具材3とゲル状に固化した汁材4が載せられる。
【0014】
また、成形工程では、基台S0と、パン本体2の周壁部22の外方側面に対応する内径の内側面と周壁部22の高さに対応する長さを有する筒状の第1の型具S1と、周壁部22の内方側面に対応する外径の外側面と凹所2aの深さに対応する長さを有する柱状の第2の型具S2と、が用いられる。この第2の型具S2は、周壁部22の内方側面と底部21の内方表面に対向する外側面が存在すればよいので、有底筒状であってもよい。第1の型具S1と第2の型具S2により、後続の発酵工程の中で、パン本体2の底部21と周壁部22が膨れて厚さが変わったり形状が崩れたりすることが阻まれるのであるが、少なくとも、環状の周壁部22が第1の型具S1の内側面と第2の型具S2の外側面の間に挟まれるようにして、周壁部22の厚さが変わったり形状が崩れたりすることを阻むことが重要である。
【0015】
より具体的には、基台S0として天板を用いることができ、そして、パン本体2が図2に示すような典型的な形状のものでは、第1の型具S1として、金属製のセルクル(例えば、筒部の内径約10cm)を用いることができる。この第1の型具S1を基台S0上に置き、その内方にパン生地を投入し、底部21(例えば、厚さ約5mm)と環状の周壁部22(例えば、厚さ約5mm)を手作業でもって形成する。そして、周壁部22の内方側面と底部21の内方表面とにより形成された凹所2aをほぼ満たすように、適度な重さの第2の型具S2(例えば、多数の胡桃をアルミホイルで包んで所定の形状にしたもの)を配置する。なお、パン本体2の具体的な形状は、図2に示すような形状の他に、さまざまなものが可能である。例えば、凹所2aは、ワイングラスのように、周壁部22の内方側面から底部21の内方表面に滑らかに移行するような曲面状にしてもよい。
【0016】
第2の型具S2を配置する前に、凹所2a(周壁部22の内方側面と底部21の内方表面)に多数の穴を設けることが好ましい。これは、後述のように溶き卵を塗布する場合に、溶き卵を満遍なく凹所2aにしっかり付着させるためである。多数の穴は、例えば、大きさが約1mmの突起を約1cm間隔で周面に多数形成したローラを凹所2a表面に転がすことによって、形成することができる。
【0017】
発酵工程は、成形が完了した通常のパンを発酵させるのと同様の工程(例えば、温度40℃強で湿度80%前後の発酵室の中に約30〜40分程度発酵させる工程)を用いることができる。この発酵工程は、成形工程における第1の型具S1と第2の型具S2との配置関係を維持した状態で行われるので、パン生地が発酵してもパン本体2の底部21と周壁部22の形状が崩れることがなく、厚さがほぼ均一になる。
【0018】
焼成工程は、発酵工程後の通常のパンを焼成するのとほぼ同様の工程(例えば、温度250℃前後でスチーム有りの状況下で約10分程度焼成する工程)を用いることができる。この焼成工程で特別なことは、当初は第1の型具S1と第2の型具S2との配置関係を維持した状態で行われるが、焼成途中で一旦パン本体2を焼成室から取り出してパン本体2から第2の型具S2を取り外し、再度パン本体2を焼成室に戻す工程が含まれることである。周壁部22は、この焼成途中までに、第2の型具S2を取り外しても型崩れしないような固さになっている。また、再度焼成室に戻した後には、周壁部22の内方側面と底部21の内方表面とにより形成された凹所2aの表面が特別固く焼成されるようになる。
【0019】
この再度焼成室に戻す前には、凹所2aに溶き卵が塗布されることが特に好ましい。塗布された溶き卵は、パン本体2が焼成室で再度焼成されると、凹所2aの表面を非常に固くすることができる。
【0020】
このようにして、パンとしての風味を維持しながら、パン本体2を製造することができるのである。
【0021】
組合せ工程では、出来上がったパン本体2に、具材3とゲル状に固化した汁材4が載置され(組み合わせられ)て、惣菜パン1となる。典型的な実施例としては、惣菜パン1は、顧客の注文に応じ、パン本体2に具材3とゲル状に固化した汁材4が載置され、そして、店頭或いは宅配により、顧客に渡される。具材3とゲル状に固化した汁材4は、その組合せにより一つの惣菜を構成している。惣菜には、汁物や鍋物や麺類など(より詳細には、味噌汁、ポトフ、湯豆腐、うどん、そばなど)様々なものが可能である。例えば、惣菜がうどんの場合、具材3がうどん麺であり、ゲル状に固化した汁材4がそのスープである。
【0022】
惣菜パン1は、家庭等において、電子レンジで温められると、ゲル状に固化していた汁材4が液状になり、具材3に汁材4が混じって暖かい惣菜となる。この状態において、パン本体2は、その周壁部22がほぼ均一な厚さで環状に形成されており、しかも凹所2aの表面が固く焼成されているので、惣菜からの水分が浸透し難く、型崩れし難くなっている。このような惣菜パン1においては、食器類を特に用意する必要がないので、パン工房にとっても顧客にとっても簡便な食材となる。また、パン本体2も食することができるので、廃棄されるものを極力少なくすることができる。
【0023】
汁材4は、ゼラチンを添加することによりゲル状に固化させるのが好ましい。パン本体2、具材3、汁材4が電子レンジで過度に長時間加温されると、パン本体2は、高温となって汁材4の水分が浸透して型崩れし易い状況になるが、ゼラチンにより固化した汁材4の場合は、比較的短時間で液状になるため、パン本体2は余り高温にならず、また、高温の時間が短くてすむからである。また、ゼラチンにより固化した汁材4は、一旦液状になっても、冷蔵庫等で冷やすと再度ゲル状になるため、食べ残しが有る場合にも有効である。
【0024】
なお、発明者が実験したところでは、電子レンジで惣菜パン1(惣菜がうどん)を温めて食せる状態にしてから1時間半放置しても、スープがパン本体2の外面から漏れることがなかった。また、スープが付着或いは滲みたパン本体2は美味しく食すことができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態に係る惣菜パンの製造方法について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、パン本体2の凹所2aの上方を閉塞するようにパン蓋体を別途製造して、惣菜パン1に組み合わせてもよい。この場合、電子レンジで温めるときに、蒸気が溜まることによってパン本体2に水分が浸透し易くなることを考慮する必要がある。
【符号の説明】
【0026】
1 惣菜パン
2 パン本体
21 パン本体2の底部
22 パン本体2の周壁部
3 具材
4 汁材
S0 基台
S1 第1の型具
S2 第2の型具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン生地を変形させて、底部とそれに連続した環状の周壁部とを有するようパン本体を成形する成形工程と、
発酵室の中でパン本体を発酵させる発酵工程と、
焼成室の中でパン本体を焼成する焼成工程と、
具材及びゲル状に固化した汁材をパン本体に載置する組合せ工程と、
を備える惣菜パンの製造方法であって、
前記成形工程においては、第1の型具の内側面と第2の型具の外側面の間に環状の周壁部が挟まれ、
前記焼成工程においては、焼成途中で一旦パン本体を焼成室から取り出してパン本体から第2の型具を取り外し、再度パン本体を焼成室に戻す工程が含まれることを特徴とする惣菜パンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の惣菜パンの製造方法において、
前記焼成工程では、第2の型具を取り外したとき、パン本体の周壁部の内方側面と底部の内方側面とにより形成された凹所に溶き卵が塗布されることを特徴とする惣菜パンの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の惣菜パンの製造方法において、
前記成形工程では、前記凹所に多数の穴が設けられることを特徴とする惣菜パンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−29566(P2012−29566A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169027(P2010−169027)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(593151572)
【出願人】(503214553)
【Fターム(参考)】