説明

感光ドラムおよびその振動低減方法、ならびに感光ドラムユニット

【課題】新たな部品の追加をともなわず、従来技術と同等以上に騒音原因となる振動を低減できる構造を備えた感光ドラムを提供すること。
【解決手段】表面に感光層12が形成された筒状の導電性基体11と、導電性基体11の両端から挿入されることで当該両端に取り付けられたフランジ13と、を備える感光ドラム2である。導電性基体11の筒長方向Zにおいて、フランジ13の先端部13aが、感光層12の帯電領域Leの内側で導電性基体11の内面11aと接触させられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリなどの電子写真プロセスを用いた画像形成装置に組み込まれる感光ドラムの振動低減構造および振動低減方法に関する。特に、騒音原因となる振動を低減するための感光ドラムの構造および振動低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリなどの画像形成装置に組み込まれる感光ドラムは、電子写真プロセスにおける帯電、露光、現像、および転写に供される。この感光ドラムに発生する振動を低減するための技術は、既に多数提案されている。例えば、以下の特許文献1、2に記載されたような技術がある。
【0003】
特許文献1には、感光ドラムの固有振動数が加振力の周波数よりも高くなるように、円筒状ドラムの剛性を定めるという技術が記載されている。感光ドラムの固有振動数と加振力の周波数とが一致して感光ドラムが共振することを回避しようとする技術である。
【0004】
特許文献2には、例えばアルミニウムなどの充填物を内部に内装した感光ドラムが記載されている(特許文献2の図3参照)。内装した充填物で感光ドラムの重量および剛性を増加させることにより、感光ドラムの振動を低減しようとする技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−222011号公報
【特許文献2】特開平6−95560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、詳しくは後述するが、本発明者らは、感光ドラムを対象にその騒音調査を実施した結果、感光ドラムからの騒音は、帯電にともなう帯電器からの加振力によるドラムの強制振動が主原因であることを見出した。感光ドラムの固有振動数は帯電周波数よりも十分に高く、感光ドラムの共振はその騒音原因として特に問題ではなかった。すなわち、特許文献1のように感光ドラムの共振(固有振動数)に着目することは、感光ドラムの騒音対策としてあまり意味がない。
【0007】
ここで、特許文献2に記載された技術は、前記したように感光ドラムの重量および剛性を増加させることにより感光ドラムの振動を低減しようとする技術である。このように、感光ドラムの重量および剛性を単純に増加させることによって、結果として、帯電にともなうドラムの振動を抑制することはできる。しかしながら、特許文献2に記載された技術では、感光ドラム内部への充填物の挿入(新たな部品の追加)、これによる発泡剤などでの充填物の固定(新たな部品固定工程の追加)が必要となり、感光ドラムの製造コストがアップしてしまう。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、新たな部品の追加をともなわず、従来技術と同等以上に騒音原因となる振動を低減できる構造を備えた感光ドラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、筒状の導電性基体への挿入部長さを長くしたフランジを用い、帯電領域の内側で導電性基体の内面と当該フランジの先端部を接触させることにより、帯電にともなう加振力による導電性基体の強制振動を低減させることができた。この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明は、表面に感光層が形成された筒状の導電性基体と、前記導電性基体の端部から挿入されることで当該端部に取り付けられたフランジと、を備え、前記導電性基体の筒長方向において、前記フランジが、帯電領域の内側で当該導電性基体の内面と接触していることを特徴とする感光ドラムである。
【0011】
この構成によると、帯電領域の内側で導電性基体(ドラム)の内面とフランジとを接触させることにより、導電性基体の強制振動を小さく抑えることができる。すなわち、騒音原因となる導電性基体の振動を低減できる。また、感光ドラムの製造にあたり部品点数を増やす必要はない。
【0012】
また本発明は、その第2の態様によれば、前記感光ドラムと、当該感光ドラムの感光層を帯電させる帯電器と、を備え、前記導電性基体の筒長方向において、前記フランジが、前記導電性基体と前記帯電器との接触領域の内側で、当該導電性基体の内面と接触していることを特徴とする感光ドラムユニットである。
【0013】
この構成によると、導電性基体と帯電器との接触領域の内側で導電性基体(ドラム)の内面とフランジとを接触させることにより、導電性基体の強制振動を小さく抑えることができる。すなわち、騒音原因となる導電性基体の振動を低減できる。また、感光ドラムの製造にあたり部品点数を増やす必要はない。
【0014】
また本発明は、その第3の態様によれば、表面に感光層が形成された筒状の導電性基体と、当該導電性基体の端部に取り付けられるフランジと、を具備してなる感光ドラムの振動低減方法であって、前記導電性基体の端部から前記フランジを挿入し、帯電領域の内側で当該フランジを当該導電性基体の内面と接触させることにより、帯電にともなう加振力による当該導電性基体の強制振動を低減することを特徴とする感光ドラムの振動低減方法である。
【0015】
また本発明において、前記導電性基体の端部から前記フランジを挿入し、前記導電性基体と帯電器との接触領域の内側で当該フランジを当該導電性基体の内面と接触させることにより、帯電にともなう加振力による当該導電性基体の強制振動を低減することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、新たな部品の追加をともなわず、従来技術と同等以上に騒音原因となる振動を低減できる感光ドラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る感光ドラムを備える感光ドラムユニットの断面図である。
【図2】図1に示した感光ドラムユニットの正面図および側面図である。
【図3】フランジの挿入部長さと感光ドラムの固有振動数との関係を示すグラフである。
【図4】フランジの挿入部長さと感光ドラムの加振線上の強制振動振幅の総和との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の効果の実証結果(プリンタ実機による評価結果)を示すグラフである。
【図6】図2に示した感光ドラムのフランジの変形例を示すための感光ドラムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る感光ドラム2を備える感光ドラムユニット1の断面図である。図2(a)は、図1のA−A矢視図(感光ドラムユニット1の正面図)である。また、図2(b)は、図2(a)のB−B矢視図(感光ドラムユニット1の側面図)である。
【0019】
(感光ドラムユニットの構成)
図1に示すように、感光ドラムユニット1は、感光ドラム2と帯電ローラ3(帯電器)とを具備してなる、接触帯電式の感光ドラムユニットである。なお、本発明は、コロナ放電などを利用した非接触帯電式の感光ドラムユニットにも適用できる。
【0020】
(帯電ローラ)
帯電ローラ3は、導電性芯金14と、その外周に形成された導電性弾性層15とを備える。導電性芯金14は、鉄・ステンレス鋼などの導電性材料からなる棒状体である。導電性弾性層15は、カーボン含有ウレタンなどの導電性材料からなる筒状の層である。帯電ローラ3は、感光ドラム2の回転にともない従動回転する。すなわち、帯電ローラ3と感光ドラム2とは接触している。帯電ローラ3により、接触方式にて後述の感光層12は帯電処理される。なお、帯電ローラ3以外の帯電器を用いてもよい。例えば、ブレード型、ブラシ型などの帯電器がある。
【0021】
(感光ドラム)
感光ドラム2は、表面に感光層12が形成された筒状の導電性基体11と、導電性基体11の両端から挿入されることで当該両端にそれぞれ取り付けられた2つのフランジ13と、を備える。図1に示したように、感光ドラム2は、例えば時計方向に所定の周速度で回転駆動される。なお、導電性基体11の両端部のうちいずれか一方の端部のみに本発明に係るフランジ13が取り付けられていてもよい。
【0022】
(導電性基体)
筒状の導電性基体11は、アルミニウム製のパイプである。なお、導電性基体11は、導電性材料からなるものであればよく、例えばステンレス製のパイプであってもよい。導電性基体11の径は、帯電ローラ3の径よりも大きい。
【0023】
導電性基体11の表面に形成された感光層12は、例えば有機感光層である。感光層12は、導電性基体11の全周にわたって形成されている。筒長方向Zにおいては、導電性基体11の一端から他端まで感光層12は形成されている。この感光層12が、帯電ローラ3により負電荷または正電荷に帯電処理される。
【0024】
(帯電領域)
感光層12を均一に帯電させるために、直流電圧と交流電圧とを重畳させた電圧が帯電ローラ3に印加される。帯電ローラ3にこの電圧が印加されると、感光ドラム2(導電性基体11)と帯電ローラ3との間に静電気力による引力が作用する。この引力の大きさが周期的に変動することで、感光ドラム2(導電性基体11)は振動する。静電気力により周期的に変動するこの引力が、帯電にともなう加振力である。また、この加振力による感光ドラム2(導電性基体11)の振動が、帯電にともなう騒音の原因である。帯電ローラ3に印加される上記した交流電圧の周波数が帯電周波数である。
【0025】
本発明において帯電領域とは、帯電ローラ3により直接的に帯電される領域(範囲)のことである。換言すれば、感光ドラム2(導電性基体11)と帯電ローラ3(帯電器)との間に上記引力が作用する導電性基体11の領域(範囲)のことを帯電領域という。さらには、導電性基体11が帯電ローラ3(帯電器)から直接帯電(加振力)を受ける領域のことを帯電領域という。この帯電領域は、導電性基体11と帯電ローラ3との相互の位置関係、帯電ローラ3における静電気力の発生する領域(範囲)などにより決まってくる。
【0026】
本実施形態の帯電領域Leは、図2(a)に示したように、導電性基体11の筒長方向Zにおいては、導電性基体11の両端部(長さL1部分)を除いた中央側の領域(範囲)である。一方、導電性基体11の周方向(回転方向)においては、周方向全体にわたる領域(範囲)が帯電領域である。
【0027】
なお、帯電ローラ3の全長において静電気力(加振力)が発生する場合には、帯電領域Leの両端位置は帯電ローラ3(帯電器)の両端位置と一致する。この場合、帯電領域Leの両端位置は、導電性基体11と帯電ローラ3との接触領域と等しい。
【0028】
(フランジ)
フランジ13は、導電性基体11を両端支持するためのものであり、例えばABS樹脂などの樹脂材料からなる。図2(a)に示すように、本実施形態のフランジ13は、大径部13Bおよび小径部13Sを有する。大径部13Bと小径部13Sとは同心に形成され、小径部13Sは大径部13Bの端から延在する。フランジ13の径方向中心部には、貫通孔13bが形成されている。貫通孔13bには、軸(不図示)が通される。大径部13Bの外周面に歯が形成され、導電性基体11を回転駆動するギア(歯車)の役割をフランジ13が担うこともある。
【0029】
フランジ13の小径部13Sの外径と、導電性基体11の内径とはほぼ等しい。導電性基体11の端からその内部へフランジ13の小径部13Sを挿入し、そして小径部13Sの外面と導電性基体11の内面11aとの間を接着剤で接着するなどして、導電性基体11の両端部にそれぞれフランジ13を固定する。
【0030】
ここで、導電性基体11の筒長方向Zにおいて、フランジ13の先端部13aは、帯電領域Leの内側で導電性基体11の内面11aと接触させられている。すなわち、フランジ13の小径部13Sの長さLf(挿入部長さ)は、その先端部13aが、帯電領域Leの内側(筒長方向Zにおける内側)で導電性基体11の内面11aと接触する長さとなるように決められている。
【0031】
帯電領域Leの内側で導電性基体11の内面11aとフランジ13の先端部13aとを接触させることにより、帯電にともなう加振力による導電性基体11の強制振動振幅は従来よりも小さくなる。すなわち、騒音原因となる導電性基体11の振動を低減できる。なお、本実施形態の感光ドラム2によると、その製造にあたり従来よりも部品点数を増やす必要はない。すなわち、感光ドラムの騒音対策のために新たな部品の追加は必要なく、感光ドラムの製造にあたり、材料・加工・組立コストの増加を抑制できる。
【0032】
また、本実施形態では、小径部13Sの周方向(回転方向)の全面と、導電性基体11の内面11aとを接触させて接着固定している。これにより、導電性基体11とフランジ13とを強固に固定することができる。なお、フランジ13を導電性基体11に挿入・接着する際の生産性を考慮して、フランジ13の小径部13S表面に、挿入方向や周方向に延在する溝や切り込みを設けたり、小径部13Sの先端外周を面取りしたりすることもある。
【0033】
なお、フランジ13の先端部13aとは、フランジ13の先端だけではなく、フランジ13の先端近傍も含む。すなわち、小径部13Sの先端外周を面取りした場合においては、フランジ13の先端自体は導電性基体11の内面11aと接触しないが、フランジ13の先端部は導電性基体11の内面11aと接触する。
【0034】
(実施例1)
近年における画像形成装置の小型化により、それに組み込まれる感光ドラムの直径は30mm以下のものが多用されている。このため、本発明者らは、外径24mmのアルミニウム製パイプ(導電性基体11)を構成部品とする感光ドラム2を対象にして、有限要素法による数値解析を用いて、その騒音原因の調査と対策効果の検証を実施した。アルミニウム製パイプ(導電性基体11)の長さLおよび板厚は、それぞれ、246mm、0.75mmとした。また、図2(a)のL1は10mmとした。すなわち、筒長方向Zにおいて、導電性基体11の両端からそれぞれ10mmの位置よりも中央側の長さ226mmの領域を帯電領域Leとした。
【0035】
(固有振動数)
まず、フランジ13の小径部13Sの長さLf(挿入部長さLf)を変化させたときの、感光ドラム2の固有振動数の解析結果を図3に示す。図3は、フランジ13の挿入部長さLfと感光ドラム2の固有振動数との関係を示すグラフである。なお、有限要素解析に用いた数値モデルでは、導電性基体11のみをモデル化して、フランジ13はモデル化せず、導電性基体11の内面11aとフランジ13との接触位置に相当する導電性基体11の領域の変位を拘束することで、フランジ13の小径部13Sの長さLfの変化を模擬した。
【0036】
フランジ13の挿入部長さLfを、4mm・6mm・8mm・10mm・12mm・14mm・16mm・20mmと変化させて、それぞれの場合の感光ドラム2の固有振動数を解析した。なお、感光ドラム2の帯電周波数は、1200Hz程度である。図3からわかるように、フランジ13の挿入部長さLfがいずれの場合においても、感光ドラム2の固有振動数は帯電周波数(例えば1200Hz)よりも十分高かった。すなわち、感光ドラム2の共振(固有振動数と帯電周波数の一致)はその騒音原因として特に問題ではなく、固有振動数の向上を目的とした対策は騒音の低減に寄与しない。本発明者らは、このようにして感光ドラム2からの騒音は、帯電にともなう帯電器(例えば帯電ローラ3)からの加振力によるドラムの強制振動が主原因であることを究明した。
【0037】
なお、フランジ13の挿入部長さLfを長くするにつれて、感光ドラム2の固有振動数は若干の上昇傾向を示すものの大きな変化はなかった。
【0038】
(感光ドラムの振動低減方法)
前記したように、本発明者らは、感光ドラム2からの騒音は、帯電にともなう帯電器(例えば帯電ローラ3)からの加振力によるドラムの強制振動が主原因であることを究明した。そして、本発明者らは、筒状の導電性基体11への挿入部長さLfを長くしたフランジ13を用い、導電性基体11の両端からフランジ13を挿入し、帯電領域Leの内側で(さらには、導電性基体11と帯電ローラ3との接触領域の内側で)フランジ13の先端部13aを導電性基体11の内面11aと接触させることにより、帯電にともなう加振力による導電性基体11の強制振動を低減させた。
【0039】
(強制振動振幅)
帯電にともなう加振力による導電性基体11(感光ドラム2)の強制振動について解析を行った。その結果を図4に示す。図4は、フランジ13の挿入部長さLfと感光ドラム2の加振線(後述)上の強制振動振幅の総和との関係を示すグラフである。
【0040】
帯電にともなう加振力は、長さ226mmの帯電領域Leに計1Nの加振力(周期的に変動する加振力の最大値)が線状に均一に作用する、という条件とした。フランジ13の挿入部長さLfを、4mm・6mm・8mm・10mm・12mm・14mm・16mm・20mmと変化させて、それぞれの場合の感光ドラム2の強制振動による変形を解析した。解析結果の変形量は帯電領域Le内で均一ではなく、帯電領域Leの中央部が最大で、端部が最小となる分布を持つが、それらの総和を示したのが図4である。なお、数値モデルは、前記の固有振動数の解析と同様に作成した。
【0041】
図4からわかるように、フランジ13の挿入部長さLfを大きくするにつれて、感光ドラム2の振幅は小さくなる。ここで、グラフの傾きは、フランジ13の挿入部長さLfが約10mmのところで変化している。Lf=10mmの位置は、帯電領域Leの端の位置である。Lfが10mm以上となると、グラフの傾きはLf<10mmの場合に比して相対的に小さくなっている。挿入部長さLfが10mm未満の場合、挿入部長さLfの減少に対して、強制振動振幅は急激に増加している。すなわち、帯電領域Leの内側で導電性基体11の内面11aとフランジ13の先端部13aとを接触させる(Lf≧10mmとする)ことにより、導電性基体11(感光ドラム2)の強制振動を安定して抑えることができる。これにより、騒音原因となる導電性基体11(感光ドラム2)の振動を安定して低減することができる。換言すれば、フランジ13の挿入部長さLfに製造上の誤差が生じたとしても、挿入部長さLfを10mm以上とすることで、Lf<10mmの場合に比して、感光ドラム2の強制振動振幅を安定的に小さく抑えることができる。
【0042】
なお、フランジ13の挿入部長さLfは、10mm以上20mm以下とすることが望ましい(換言すれば、帯電領域Leの端と、帯電領域Le端+10(20−10)mm(導電性基体11の中心側への距離)の位置との間で、フランジ13の先端部13aを導電性基体11の内面11aと接触させることが望ましい)。この上限値(20mm)は、従来の挿入部長さLfを4mmとした場合に、6dBの騒音低減量(強制振動振幅が半減して騒音のエネルギが1/4に低減することに相当し、多くの人が違いを認知できる低減量)を得るのに必要となる挿入部長さLfである。
【0043】
(実施例2)
前述の実施例1と同じ感光ドラム2および帯電領域Leを有するプリンタ実機を対象に、実計測により、本発明の有効性を検証した。およそ幅37cm×高さ21cm×奥行き23cmの大きさのプリンタ本体の後面表面から20cm離れ、プリンタを設置した床面から高さ20cmの位置で、印刷時の帯電による騒音(騒音のうち、帯電周波数と同一の周波数の成分)を計測した(それぞれ2回の計測を実施)。計測結果を図5に示す。従来品は、挿入部長さLfが4mmのものである。図2(a)のL1に相当する長さは10mmであるので、従来品は、帯電領域の内側で導電性基体の内面を支持していない。対策品(1)、(2)はともに挿入部長さLfが15mmであり、供試体のばらつきを考慮して2供試体について計測した。従来品、対策品とも、フランジはプラスチック製で、小径部の厚さは1.5mmである。2回計測の平均値を比較すると、従来品に対して供試体(1)で1.9dB、供試体(2)で2.3dBの騒音低減効果を確認できた。以上のように、本発明によると、新たな部品を追加せず、低コストで、帯電にともなう騒音を低減できることを、実機を対象とした評価で実証できた。
【0044】
(フランジの変形例)
図6は、図2に示した感光ドラム2のフランジ13の変形例を示すための感光ドラム22の断面図である。なお、図6において感光層の記載は省略している。
【0045】
図6に示した変形例に係るフランジ23は、大径部23Bおよび小径部23Sを有する。大径部23Bと小径部23Sとは同心に形成され、小径部23Sは大径部23Bの端から延在する。フランジ23の径方向中心部には、貫通孔23bが形成されている。これらの点に関しては、図2に示したフランジ13と、変形例に係るフランジ23とは同じである。
【0046】
変形例に係るフランジ23と図2に示したフランジ13との相違点は、フランジ23の小径部23Sの外周面に回転方向に延在する溝23cが形成されていることである。溝23cは、小径部23Sの回転方向の全周にわたって環状に形成されている。溝23cの断面形状は台形である。なお、必ずしも断面形状が台形の溝とする必要はない。
【0047】
溝23cの先端側は、大径部23B側から小径部23S側に向けて径方向外側に広がっていく斜面23caとされている。これにより、フランジ23の先端部23aの径方向中心側が厚くなる。また、溝23cで区画されたフランジ23の先端部23aの外周面23a1は、全て帯電領域Leの内側に位置するする。そして外周面23a1の全面が、帯電領域Leの内側で導電性基体11の内面11aと接触させられている。これらの結果、導電性基体11を両端支持するフランジ23の帯電領域Le内側での支持力を十分確保できる。また、溝23cにより、導電性基体11へのフランジ23の挿入が行いやすくなる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【符号の説明】
【0049】
1:感光ドラムユニット
2:感光ドラム
3:帯電ローラ
11:導電性基体
11a:導電性基体の内面
12:感光層
13:フランジ
13a:フランジの先端部
Le:帯電領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成された筒状の導電性基体と、
前記導電性基体の端部から挿入されることで当該端部に取り付けられたフランジと、
を備え、
前記導電性基体の筒長方向において、前記フランジが、帯電領域の内側で当該導電性基体の内面と接触していることを特徴とする、感光ドラム。
【請求項2】
請求項1に記載の感光ドラムと、
前記感光層を帯電させる帯電器と、
を備え、
前記導電性基体の筒長方向において、前記フランジが、前記導電性基体と前記帯電器との接触領域の内側で、当該導電性基体の内面と接触していることを特徴とする、感光ドラムユニット。
【請求項3】
表面に感光層が形成された筒状の導電性基体と、当該導電性基体の端部に取り付けられるフランジと、を具備してなる感光ドラムの振動低減方法であって、
前記導電性基体の端部から前記フランジを挿入し、帯電領域の内側で当該フランジを当該導電性基体の内面と接触させることにより、帯電にともなう加振力による当該導電性基体の強制振動を低減することを特徴とする、感光ドラムの振動低減方法。
【請求項4】
前記導電性基体の端部から前記フランジを挿入し、前記導電性基体と帯電器との接触領域の内側で当該フランジを当該導電性基体の内面と接触させることにより、帯電にともなう加振力による当該導電性基体の強制振動を低減することを特徴とする、請求項3に記載の感光ドラムの振動低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−59507(P2011−59507A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210635(P2009−210635)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】