説明

感光性ペースト、パターンの形成方法および平面ディスプレイパネル用部材の製造方法。

【課題】高強度かつ高精細なパターンを形成可能な感光性ペーストを提供する。
【解決手段】感光性有機成分を含む有機成分および全無機成分中50体積%以上を占める低軟化点ガラス粉末を含む無機成分からなる感光性ガラスペーストであって、さらに無機成分中に金属水酸化物粉末を含むことを特徴とする感光性ガラスペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、および蛍光表示管等などの平面ディスプレイに用いる絶縁性パターンの形成に好適な感光性ペースト、それを用いたパターンの形成方法、および平面ディスプレイパネル用部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、蛍光表示管、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、発光ダイオードなどの平面ディスプレイの開発が急速に進められている。このうちプラズマディスプレイは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で対向するアノード電極とカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、上記放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を、放電空間内に設けた蛍光体に照射することにより表示を行うものである。プラズマディスプレイや蛍光表示管などのガス放電タイプのディスプレイは、放電空間を仕切るための絶縁性の隔壁を必要とする。また、フィールドエミッションディスプレイなどの電界放射型ディスプレイは、ゲート電極とカソードを隔絶するための絶縁性隔壁を必要とする。これらプラズマディスプレイパネルやフィールドエミッションディスプレイなどの絶縁性隔壁の形成においては、ガラス粉末などの無機材料を高精度でパターン加工ができる材料や加工方法が必要である。
【0003】
特にプラズマディスプレイに関して、より微細な隔壁を形成してより広い放電空間を確保することは、プラズマディスプレイを高精細化、高輝度化するための必須の技術である。従来、無機材料の微細パターン加工を行う方法として、感光性ペースト法によりパターンを形成する方法が提案されている(例えば特許文献1〜3)。プラズマディスプレイ用隔壁の断面形状は、より広い放電空間を確保するために、底部線幅、頂部線幅が共に細いことが望まれる。しかしながら、細幅化に伴い隔壁の強度が低下するため、封着時やパネルの落下試験時に隔壁に欠けが生じ、この欠けに起因する不灯欠陥が発生することから、隔壁の高精細化と高強度化の両立は重要な課題であった。この課題に対し、従来、酸化アルミニウムなどの高硬度な金属酸化物の添加による隔壁の高強度化が検討されてきた。しかしながら、高硬度な金属酸化物の多くは屈折率が大きく、感光性ペーストに添加した場合に有機成分との屈折率の差が大きいため、露光光の散乱が避けがたく、高精細な隔壁の形成には不適であった。
【特許文献1】特許第3249576号公報(請求項1)
【特許文献2】特許第3239759号公報(請求項1)
【特許文献3】特許第3402070号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に着目し、高強度かつ高精細なパターンの形成が可能な感光性ペーストを提供することを目的とする。また、高強度かつ高精細な隔壁を形成したプラズマディスプレイパネル用部材を安定に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。すなわち本発明は、感光性有機成分を含む有機成分および全無機成分中50体積%以上を占める低軟化点ガラス粉末を含む無機成分からなる感光性ガラスペーストであって、さらに無機成分中に金属水酸化物粉末を含むことを特徴とする感光性ガラスペーストによって達成される。また、該感光性ペーストを少なくとも塗布、露光、現像、焼成することを特徴とするパターンの形成方法により達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高強度かつ高精細なパターンの形成が可能な感光性ペーストを提供できる。また、高強度かつ高精細な隔壁を形成したプラズマディスプレイパネル用部材を安定に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明でいう感光性ペーストとは、塗布、乾燥を行った後の塗膜に対し活性光線を照射することにより照射部分が現像液に不溶となり、しかる後現像液によって非照射部分のみを除去することによってパターン形成を行うことが可能なペーストをいう。ここで言う活性光線とは250〜1100nmの波長領域の電磁波を指し、具体的には超高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外光線、ハロゲンランプなどの可視光線、ヘリウム−カドミウムレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザーなどの特定波長のレーザー光線などが挙げられる。
【0008】
発明者らは、高強度かつ高精細なパターンを形成できる感光性ガラスペーストについて鋭意検討を行った結果、低軟化点ガラス粉末および金属水酸化物粉末を含む無機成分ならびに感光性有機成分を含む有機成分からなる感光性ガラスペーストによって達成できることを明らかにした。
【0009】
本発明の感光性ペーストは、無機成分として低軟化点ガラス粉末を必須成分とする。低軟化点ガラス粉末を含有することにより、低軟化点ガラス粉末の軟化温度以上の温度で焼成し、後述の感光性有機成分等の有機成分を除去し、無機成分からなるパターンを得ることができる。本発明において低軟化点ガラス粉末とは、荷重軟化温度が400〜600℃の範囲であるガラス粉末を指す。荷重軟化温度がこの範囲にあることで焼結時にパターンの変形がなく、溶融性も適切となるためである。より好ましい荷重軟化温度の範囲は450〜550℃である。荷重軟化温度は、径50mm、高さ50mmの円柱状の試験片をもって、JIS−R2209(2007)の方法によって求めることができる。また、低軟化点ガラス粉末の無機成分に占める割合は50体積%以上であることが必要である。低軟化点ガラス粉末の無機成分に占める割合が50体積%未満であると、焼成時の焼結が困難になり、焼成後のパターンの空隙率が大きくなり強度が低下する。また、導電性粉末など低軟化点ガラス以外の不透明な無機成分を含むと、ペースト塗布膜の光透過性が低下し、良好なパターン形成ができなくなる。低軟化点ガラス粉末の無機成分に占める割合は60〜95体積%が好ましい。含有割合が60体積%より小さくなると、焼成時の焼結が困難になり、焼成後のパターンの空隙率が大きくなる傾向があるため好ましくない。95体積%より大きくなると、焼成時の無機成分全体の流動性が大きくなってしまうため焼成後のパターン形状の制御が困難になる問題が発生する場合があるため好ましくない。
【0010】
低軟化点ガラス粉末の屈折率は1.50〜1.65であることが好ましい。このような低軟化点ガラス粉末を用いて無機成分と有機成分の屈折率の差を小さくし、光散乱を抑制することにより高精度のパターン加工が容易になる。また、低軟化点ガラス粉末の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれるが、粒度分布測定装置(例えば、日機装製「MT3300」)により測定した重量分布曲線における50%粒子径d50(平均粒子径)が0.1〜3.0μm、最大粒子径dmax(トップサイズ)が10μm以下であることが好ましい。
【0011】
好ましく使用できる低軟化点ガラス粉末は例えば酸化物表記で下記の組成を有するものである。
酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムのうち少なくとも1種:3〜15質量%
酸化ケイ素:5〜30質量%
酸化ホウ素:20〜45質量%
酸化亜鉛:1〜5質量%
酸化アルミニウム:10〜25質量%
酸化マグネシウムおよび/または酸化カルシウム:2〜15質量%
酸化バリウムおよび/または酸化ストロンチウム:2〜15質量%
上記のように、酸化リチウム、酸化ナトリウムまたは酸化カリウムのアルカリ金属酸化物のうち少なくとも1種を用い、その合計量が3〜15質量%、さらには3〜10質量%であることが好ましい。具体的には、酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素22質量%、酸化ホウ素33質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化アルミニウム19質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化カルシウム5質量%、酸化バリウム5質量%の組成を有するものであるが、これに限定されない。
【0012】
本発明の感光性ペーストは、無機成分として上記の低軟化点ガラス粉末以外に金属水酸化物粉末を必須成分とする。一般に金属水酸化物は焼成工程において水を放出し、対応する金属酸化物となることにより高硬度化する。また、金属水酸化物の屈折率は対応する金属酸化物に比べて小さいことから、感光性ペースト中の有機成分との屈折率の差がそれほど大きくならないため、露光光の散乱が抑制される。したがって、金属酸化物の前駆体として金属水酸化物粉末をペーストに添加し、パターン加工後に焼成することにより、有機成分との屈折率の差が大きい金属酸化物を感光性ペーストに直接添加することなく、金属酸化物を含有するパターンを形成できる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウムなどを好ましく用いることができる。
【0013】
金属水酸化物粉末の無機成分に占める割合は5〜40体積%が好ましい。含有割合が5体積%より小さくなると、パターンの強度が不十分となるため好ましくない。また、含有割合が40体積%より大きくなると、形成するパターンの緻密性が低下しやすくなるので好ましくない。また、金属水酸化物粉末の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれるが、平均粒子径(d50)が0.5〜3.0μmであることが好ましい。
【0014】
本発明においては無機成分として上記の低軟化点ガラス粉末、金属水酸化物粉末以外にフィラー成分を添加することができる。本発明におけるフィラー成分とは、パターンの強度や焼成収縮率を改善するために添加されるものであり、焼成温度でも溶融流動しにくい無機微粒子を指す。フィラー成分を添加することで、パターンの焼成による収縮を抑制したり、パターンの強度を向上させることができる。フィラー成分としては感光性ペースト中への分散性や充填性、露光時の光散乱の抑制を考慮し、平均粒子径(d50)1〜4μm、平均屈折率1.4〜1.7であるものを好ましく使用することができる。本発明では、このようなフィラー成分として、ガラス転移温度が500℃以上である高軟化点ガラス粉末や、コーディエライト、シリカなどのセラミックス粉末から選ばれた少なくとも1種を用いることができるが、平均粒子径や平均屈折率の調節のしやすさの点から高軟化点ガラス粉末の使用が好ましい。
【0015】
フィラー成分として高軟化点ガラス粉末を用いる場合は、ガラス転移温度が500〜1200℃を有するものを、全無機微粒子に対して3〜40体積%の組成範囲で添加することが好ましい。3体積%より少ない場合は焼成時にパターンのエッジが崩れやすくなり、良好な形状のパターンが得られない場合がある。また40体積%より多い場合は形成するパターンの緻密性が低下しやすくなるので好ましくない。好ましく使用できる高軟化点ガラス粉末は例えば酸化ナトリウム1質量%、酸化ケイ素40質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化アルミニウム33質量%、酸化亜鉛4質量%、酸化カルシウム9質量%、酸化チタン3質量%の組成を有するものであるが、これに限定されない。
【0016】
本発明において、上記無機成分は感光性ペーストの固形分中に40〜65体積%の含有率で含まれていることが望ましい。ここで、固形分とはペースト中に含まれる無機成分、および溶媒を除く有機成分を意味する。無機成分の含有率が40体積%より小さくなると焼成によるパターンの収縮が大きくなり、形状が不良となりやすいので好ましくない。また、65体積%より大きくなると露光による架橋反応が不十分となり、パターン形成が難しくなるので好ましくない。
【0017】
固形分中の無機成分の含有割合(体積%)は、ペースト調製時に無機成分および有機成分の比重を考慮して、添加量(質量%)で制御できる。また、無機成分の含有割合を分析する方法としては、熱重量測定(TGA)と無機成分の焼成膜の比重測定により求める方法や、感光性ペーストを塗布、乾燥して得られるペースト乾燥膜の透過型電子顕微鏡観察像の画像解析により求める方法が挙げられる。熱重量測定と無機成分の焼成膜の比重測定により求める場合、例えば、感光性ペースト10mg程度をサンプルとして、室温〜600℃の重量変化をTGA(例えば、株式会社島津製作所製「TGA−50」)により評価する。通常、100〜150℃でペースト中の溶媒が蒸発するので、溶媒蒸発後の重量に対する600℃昇温後の重量の割合から、無機成分と有機成分の質量比を求める。一方、焼成膜の膜厚、面積と質量を基に無機成分の比重を評価すれば含有割合を評価できる。また、透過型電子顕微鏡観察により含有割合を求める場合は、ペースト乾燥膜の膜面に垂直な断面を、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製「JEM−4000EX」)により観察し、像の濃淡により無機成分と有機成分を区別し、画像解析を行えばよい。透過型電子顕微鏡の評価エリアとしては、例えば、20μm×100μm程度の面積を対象とし、1000〜3000倍程度で観察すればよい。
【0018】
本発明の有機成分は、感光性モノマ、感光性オリゴマ、感光性ポリマのうち少なくとも1種類から選ばれた感光性有機成分を必須成分とし、さらに非感光性ポリマ成分、酸化防止剤、光重合開始剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、有機溶媒、沈殿防止剤などの添加剤成分を必要に応じて加えることで構成される。
【0019】
感光性ポリマとしてはアルカリ可溶性のポリマを好ましく用いることができる。ポリマがアルカリ可溶性を有することで現像液として環境に問題のある有機溶媒ではなくアルカリ水溶液を用いることができるためである。アルカリ可溶性のポリマとしては、アクリル系共重合体を好ましく用いることができる。アクリル系共重合体とは、共重合成分に少なくともアクリル系モノマを含む共重合体であり、アクリル系モノマの具体的な例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロへキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートなどのアクリル系モノマ、及びこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたものなどが挙げられる。アクリル系モノマ以外の共重合成分としては、炭素−炭素二重結合を有する化合物が使用可能であるが、好ましくはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン類や、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0020】
アクリル系共重合体にアルカリ可溶性を付与するためには、モノマとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることにより達成される。不飽和酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニル、またはこれらの酸無水物が挙げられる。これらを付加した後のポリマの酸価は50〜150の範囲であることが好ましい。
【0021】
アクリル系共重合体の露光による硬化反応の反応速度を大きくするためには、側鎖または分子末端に炭素−炭素二重結合を有するアクリル系共重合体とすることが好ましい。炭素−炭素二重結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。このような官能基を側鎖または分子末端に有するアクリル系共重合体は、アクリル系共重合体中のメルカプト基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基と炭素−炭素二重結合有する化合物や、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドの反応により合成できる。
【0022】
グリシジル基と炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネートなどが挙げられる。イソシアネート基と炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アクリロイルエチルイソシアネート、メタクリロイルエチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0023】
さらに、本発明の感光性ペーストは、有機成分として非感光性のポリマ成分、例えばメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース化合物、高分子量ポリエーテルなどを含有しても良い。
【0024】
また、感光性モノマは、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物であり、その具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素または臭素原子に置換したモノマ、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボシキメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。また、多官能モノマにおいて、不飽和結合を有する基はアクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基が混在していてもよい。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0025】
本発明で用いられる感光性ペーストは、さらにウレタン化合物を含有することが好ましい。ウレタン化合物を含有することにより、ペースト乾燥膜の柔軟性が向上し、焼成時の応力を小さくでき、亀裂や断線などの欠陥を効果的に抑制できるためである。また、ウレタン化合物を含有することにより、熱分解性が向上し、焼成工程において焼成残渣が発生しにくくなる。本発明で好ましく使用するウレタン化合物として、例えば、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0026】
【化1】

【0027】
ここで、RおよびRはエチレン性不飽和基を含む置換基、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基およびヒドロキシアラルキル基からなる群から選ばれたものであり、それぞれ同じであっても異なっていても良い。Rはアルキレンオキサイド基またはアルキレンオキサイドオリゴマ、Rはウレタン結合を含む有機基である。nは1〜10の整数である。
このようなウレタン化合物としては、エチレンオキサイド単位を含む化合物が好ましい。より好ましくは、一般式(1)中、Rがエチレンオキサイド単位(以下、EOと示す)とプロピレンオキサイド単位を含むオリゴマであり、かつ、該オリゴマ中のEO含有量が8〜70質量%の範囲内である化合物である。EO含有量が70質量%以下であることにより、柔軟性がさらに向上し、焼成応力を小さくできるため、欠陥を効果的に抑制できる。さらに、熱分解性が向上し、後の焼成工程において、焼成残渣が発生しにくくなる。また、EO含有量が8%以上であることにより、他の有機成分との相溶性が向上する。
【0028】
また、ウレタン化合物が炭素−炭素二重結合を有することも好ましい。ウレタン化合物の炭素−炭素二重結合が他の架橋剤の炭素−炭素二重結合と反応して架橋体の中に含有されることにより、さらに重合収縮を抑制することができる。
【0029】
本発明で好ましく用いられるウレタン化合物の具体例としては、UA−2235PE(分子量18000、EO含有率20%)、UA−3238PE(分子量19000、EO含有率10%)、UA−3348PE(分子量22000,EO含有率15%)、UA−5348PE(分子量39000、EO含有率23%)(以上、新中村化学(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は混合して用いてもよい。
【0030】
ウレタン化合物の含有量は、溶媒を除く有機成分の0.1〜10質量%であることが好ましい。含有量を0.1質量%以上とすることで、ペースト乾燥膜の柔軟性を向上することができ、ペースト乾燥膜を焼成する際の焼成収縮応力を緩和することができる。含有量が10質量%を超えると、有機成分と無機成分の分散性が低下し、また相対的にモノマおよび光重合開始剤の濃度が低下するので、欠陥が生じやすくなる。
【0031】
光重合開始剤は活性光源の照射によってラジカルを発生する光ラジカル開始剤を好ましく用いることができ、その具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性モノマと感光性ポリマの合計量に対し、0.05〜20質量%、より好ましくは、0.1〜15質量%の範囲で添加される。重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となるおそれがあり、光重合開始剤の量が多すぎれば、露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0032】
本発明では酸化防止剤が好ましく添加される。酸化防止剤とは、ラジカル連鎖禁止作用、三重項の消去作用およびハイドロパーオキサイドの分解作用のうち1つ以上を持つものである。感光性ペーストに酸化防止剤を添加すると、酸化防止剤がラジカルを捕獲したり、励起された光重合開始剤のエネルギー状態を基底状態に戻したりすることにより散乱光による余分な光反応が抑制され、酸化防止剤で抑制できなくなる露光量で急激に光反応が起こることにより、現像液への溶解、不溶のコントラストを高くすることができる。具体的にはp−ベンゾキノン、ナフトキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、ヒドラジン塩酸塩、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、ピクリン酸、キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピロガロール、タンニン酸、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、クペロン、2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)−2−エチルへキシルアミノニッケル−(II)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,2,3−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられるがこれらに限定されない。本発明ではこれらを1種以上使用することができる。酸化防止剤の添加量は、感光性ペースト中に好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%の範囲である。酸化防止剤の添加量をこの範囲内とすることにより、感光性ペーストの光感度を維持し、また重合度を保ちパターン形状を維持しつつ、露光部と非露光部のコントラストを大きくとることができる。
【0033】
感光性ペーストを基板に塗布する時の粘度を塗布方法に応じて調整するために有機溶媒が使用される。このとき使用される有機溶媒としてはメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などや、これらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混物が用いられる。
【0034】
本発明の感光性ペーストは、低軟化点ガラス粉末、金属水酸化物粉末、感光性有機成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、分散剤、および溶媒などの各成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラーなどの混練機器を用いて本混練を行って均質分散し、感光性ペーストを作製する。また、本混練を終えた感光性ペーストを適宜、濾過、脱泡しておくことも好ましい。
【0035】
本発明はかくして得られた本発明の感光性ペーストを少なくとも塗布、露光、現像、焼成することを特徴とするパターンの形成方法に関する。本発明のパターン形成方法を用いることによって、高強度かつ高精細なパターンを形成することができる。
【0036】
さらに、本発明は上述のパターン形成方法を用いて隔壁パターンを形成する工程を含む平面ディスプレイパネル用部材の製造方法に関する。本発明の平面ディスプレイパネル用部材の製造方法により、高強度かつ高精細な隔壁パターンを有する平面ディスプレイパネル用部材を精度良く安定に製造することができる。
【0037】
以下にプラズマディスプレイパネル用部材の作製手順を述べる。ここでは、プラズマディスプレイとして最も一般的な交流(AC)型プラズマディスプレイを例に取りその基本的構造などについて説明するが、必ずしもこれに限定されない。
【0038】
プラズマディスプレイは、前面板もしくは背面板またはその両方に形成された蛍光体層が内部空間内に面するように該前面板と該背面板を封着してなる部材において、前記内部空間内に放電ガスが封入されてなるものである。前面板には、表示面側の基板上に表示用放電のための透明電極(サステイン電極、スキャン電極)が形成されている。放電のため、前記サステイン電極と前記スキャン電極の間隙は比較的狭い方がよい。より低抵抗な電極を形成する目的で透明電極の背面側にバス電極を形成してもよい。但し、バス電極は材質がAg、Cr/Cu/Cr等で構成されていて、不透明であることが多い。従って、前記透明電極とは異なり、セルの表示の邪魔となるので、表示面の外縁部に設けることが好ましい。AC型プラズマディスプレイの場合、電極の上層に透明誘電体層およびその保護膜としてMgO薄膜が形成される場合が多い。背面板には、表示させるセルをアドレス選択するための電極(アドレス電極)が形成されている。セルを仕切るための隔壁や蛍光体層は前面板、背面板のどちらかまたは両方に形成してもよいが、背面板のみに形成される場合が多い。プラズマディスプレイは、前記前面板と前記背面板は封着され、両者の間の内部空間には、Xe−Ne、Xe−Ne−He等の放電ガスが封入されている。
【0039】
まず、部材作製工程に関し、前面板の作製方法について述べる。基板としては、ソーダガラスやプラズマディスプレイ用の耐熱ガラスである“PP8”(日本電気硝子社製)、“PD200”(旭硝子社製)を用いることができる。ガラス基板のサイズは特に限定はなく、厚みは1〜5mmのものを用いることができる。
【0040】
まず、ガラス基板上に、インジウム−スズ酸化物(ITO)をスパッタし、フォトエッチング法によりパターン形成する。次いで、黒色電極用の黒色電極ペーストを印刷する。黒色電極ペーストは、有機バインダー、黒色顔料、導電性粉末と、フォトリソグラフィ法で用いる場合は感光性成分が主成分となる。黒色顔料としては、金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物としては、チタンブラックや、銅、鉄、マンガンの酸化物やそれらの複合酸化物、コバルト酸化物などがあるが、ガラスと混合して焼成したときに退色が少ない点でコバルト酸化物が優れている。導電性粉末としては、金属粉末または金属酸化物粉末が挙げられる。金属粉末としては電極材料として通常用いられる金、銀、銅、ニッケルなどを特に制限無く用いることが出来る。この黒色電極は抵抗率が大きいので、抵抗率の小さい電極を作製してバス電極を形成するため、導電性の高い電極用ペースト(例えば銀を主成分とするもの)を、黒電極ペーストの印刷面上に印刷する。この導電性ペーストとしては、アドレス電極用の電極ペーストも好適に用いることができる。そして、一括露光/現像してバス電極パターンを作製する。導電性を確実に確保するため、現像前に導電性の高い電極ペーストを再び印刷し、再露光後一括現像してもよい。バス電極パターンを形成後、焼成する。その後、コントラスト向上のため、ブラックストライプやブラックマトリクスを形成するのが好ましい。焼成後の黒色電極ペーストおよび焼成後の導電性ペーストの膜厚はそれぞれ、1〜5μmの範囲であることが好ましい。また、焼成後の線幅は20〜100μmであることが好ましい。
【0041】
次に、透明誘電体ペーストを用いて透明誘電体層を形成する。透明誘電体ペーストは、有機バインダー、有機溶剤、ガラスが主成分であるが、適宜可塑剤などの添加物を加えても良い。透明誘電体層の形成方法は特に限定されないが、例えば,スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター、スピンコーターなどにより、電極形成基板上に透明誘電体ペーストを全面塗布または、部分的に塗布した後に、通風オーブン、ホットプレート、赤外線乾燥炉、真空乾燥など任意なものを用いて乾燥し、厚膜を形成することができる。また、透明誘電体ペーストをグリーンシート化し、これを電極形成基板上にラミネートすることも可能である。厚みは、10μm〜30μmが好ましい。
【0042】
次に焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類により異なるが、空気中や窒素、水素等の雰囲気下で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やローラー搬送式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成温度は、使用する樹脂が十分に脱バインダーする温度で行うのがよい。通常、アクリル系樹脂を用いる場合は430〜650℃での焼成を行う。焼成温度が低すぎると樹脂成分が残存しやすく、高すぎるとガラス基板に歪みが生じ割れてしまうことがある。
【0043】
さらに、保護膜を形成する。保護膜としてはMgO、MgGd、BaGd、Sr0.6Ca0.4Gd、Ba0.6Sr0.4Gd、SiO、TiO、Al、前述の低軟化点ガラスの群から少なくとも1種類用いるのがよいが、特にMgOが好ましい。保護膜の作製方法は、電子ビーム蒸着やイオンプレーティング法など公知の技術を用いることができる。
【0044】
続いて背面板の作製方法を説明する。ガラス基板は、前面板の場合と同様に、ソーダガラス、“PD200”、“PP8”を用いることができる。ガラス基板上に銀やアルミニウム、クロム、ニッケルなどの金属により、アドレス電極用のストライプ状の導電パターンを形成する。形成方法としては、これらの金属の粉末と有機バインダーを主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷でパターン印刷する方法や、有機バインダーとして感光性有機成分を用いた感光性金属ペーストを塗布した後に、フォトマスクを用いてパターン露光し、不要な部分を現像工程で溶解除去し、さらに通常350〜600℃に加熱・焼成して電極パターンを形成する感光性ペースト法を用いることができる。また、ガラス基板上にクロムやアルミニウムを蒸着した後に、レジストを塗布し、レジストをパターン露光・現像した後にエッチングにより不要な部分を取り除く、エッチング法を用いることができる。さらに、アドレス電極上に誘電体層を設けることが好ましい。誘電体層を設けることによって、放電の安定性向上や、誘電体層の上層に形成する隔壁の倒れや剥がれを抑止することができる。また、誘電体層を形成する方法としては、ガラス粉末や高軟化点ガラス粉末などの無機成分と有機バインダーを主成分とする誘電体ペーストをスクリーン印刷、スリットダイコーター等で全面印刷または塗布する方法などがある。
【0045】
次に、フォトリソグラフィ法による隔壁の形成方法について説明する。隔壁パターンは特に限定されないが、格子状、ワッフル状などが好ましい。まず、誘電体を形成した基板上に本発明の感光性ペーストからなる隔壁ペーストを塗布する。塗布方法は、バーコーター、ロールコーター、スリットダイコーター、ブレードコーター、スクリーン印刷等の方法を用いることができる。塗布厚みは、所望の隔壁の高さとペーストの焼成による収縮率を考慮して決めることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度等によって調整できる。
【0046】
塗布した隔壁ペーストは乾燥後、露光を行う。露光は通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを介して露光する方法が一般的である。また、フォトマスクを用いずに、レーザー光などで直接描画する方法を用いてもよい。露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などを用いることができる。この際使用される活性光線は、例えば、近赤外線、可視光線、紫外線などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも、超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みにより異なるが、通常、1〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて0.01〜30分間露光を行う。
【0047】
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度の差を利用して現像を行うが、通常、浸漬法やスプレー法、ブラシ法等で行う。現像液としては感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を用いることができるが、感光性ペースト中にカルボキシル基などの酸性基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム水溶液等を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。
【0048】
有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的にはテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0049】
アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が除去されにくく、アルカリ濃度が高すぎればパターンを剥離させたり腐食させるおそれがあり好ましくない。また、現像時の現像温度は20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0050】
また、隔壁は2層以上で構成されていても良い。2層以上の構造体とすることで、隔壁形状の構成範囲を3次元的に拡大することができる。例えば、2層構造の場合、1層目を塗布し、ストライプ状に露光した後、2層目を塗布し、1層目とは垂直方向のストライプ状に露光し、現像を行うことで段違い状の井桁構造を有する隔壁の形成が可能である。
【0051】
次に、焼成炉にて520〜620℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行い、隔壁を形成する。
【0052】
本発明の感光性ペーストは上述の隔壁の形成に好適であり、本発明の感光性ガラスペーストを用いることにより高強度で高精細な隔壁を精度良く形成することができる。
【0053】
次に、蛍光体ペーストを用いて蛍光体層を形成する。蛍光体層は、感光性蛍光体ペーストを用いたフォトリソグラフィ法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法等によって形成できる。蛍光体層の厚みは特に限定されるものではないが、10〜30μm、より好ましくは15〜25μmである。蛍光体粉末は特に限定されないが、発光強度、色度、色バランス、寿命などの観点から、以下の蛍光体が好適である。青色は2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体(例えば、BaMgAl1017:Eu)やCaMgSiである。緑色では、パネル輝度の点からZnSiO:Mn、YBO:Tb、BaMgAl1424:Eu,Mn、BaAl1219:Mn、BaMgAl1423:Mnが好適である。さらに好ましくはZnSiO:Mnである。赤色では、同様に(Y、Gd)BO:Eu、Y:Eu、YPVO:Eu、YVO:Euが好ましい。さらに好ましくは(Y、Gd)BO:Euである。焼成する工程を経て蛍光体を形成する場合、上述の誘電体層や隔壁の焼成と同時に行っても良い。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
なお、以下の無機粉末の平均粒子径(d50)および最大粒子径(dmax)は日機装株式会社製「MT3300」を用いて測定した値である。
【0056】
A.感光性ペースト原料
隔壁用感光性ペーストには以下の原料を用いた。
感光性モノマM−1:トリメチロールプロパントリアクリレート
感光性モノマM−2:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性ポリマ:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)
光重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(チバスペシャリティーケミカルズ社製IC369)
酸化防止剤:1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
紫外線吸収剤:スダンIV(東京応化工業株式会社製)
溶媒:γ−ブチロラクトン
低軟化点ガラス粉末:酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素22質量%、酸化ホウ素33質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化アルミニウム19質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化バリウム5質量%、酸化カルシウム5質量%(ガラス転移温度491℃、d50:2μm、dmax:10μm)
高軟化点ガラス粉末:酸化ナトリウム1質量%、酸化ケイ素40質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化アルミニウム33質量%、酸化亜鉛4質量%、酸化カルシウム9質量%、酸化チタン3質量%(ガラス転移温度;652℃、d50:2μm、dmax:10μm)
金属水酸化物粉末H−1:平均粒子径(d50)2μmの水酸化アルミニウム粉末
金属水酸化物粉末H−2:平均粒子径(d50)1μmの水酸化アルミニウム粉末
金属水酸化物粉末H−3:平均粒子径(d50)1.5μmの水酸化マグネシウム粉末
金属水酸化物粉末H−4:平均粒子径(d50)1μmの水酸化ジルコニウム粉末
金属酸化物粉末O−1:平均粒子径(d50)2μmの酸化アルミニウム粉末
金属酸化物粉末O−2:平均粒子径(d50)1μmの酸化アルミニウム粉末
金属酸化物粉末O−3:平均粒子径(d50)1.5μmの酸化マグネシウム粉末
金属酸化物粉末O−4:平均粒子径(d50)1μmの酸化ジルコニウム粉末
B.感光性ペーストの作製
感光性モノマM−1を10重量部、感光性モノマM−2を10重量部、感光性ポリマを20重量部、光重合開始剤を3重量部、酸化防止剤を1重量部、紫外線吸収剤を0.02重量部秤量した後、溶媒としてγ−BLを適宜添加して粘度を調整した。次に、低軟化点ガラス粉末、高軟化点ガラス粉末、金属水酸化物粉末、金属酸化物粉末を表1記載の体積比で、固形分中の無機成分の含有割合(体積%)が49%となるように添加した。この有機無機混合物を3本ローラー混練機にて混練し、感光性ペーストとした。
【0057】
【表1】

【0058】
B.ディスプレイ用部材の製造
プラズマディスプレイ背面板は以下の手順にて作製した。旭硝子株式会社製“PD−200”ガラス基板(42インチ)上に、感光性銀ペーストを用いたフォトリソグラフィ法によりアドレス電極パターンを形成した。次いで、アドレス電極が形成されたガラス基板上に誘電体層をスクリーン印刷法により20μmの厚みで形成した。しかる後、感光性ペーストをスクリーン印刷法によりアドレス電極パターンおよび誘電体層が形成された背面板ガラス基板上に所望の厚みになるまで均一に塗布した。途中の乾燥は100℃で10分行った。引き続き、露光マスクを介して露光を行った。露光マスクは、ピッチ160μm、線幅20μm、プラズマディスプレイにおけるストライプ状の隔壁パターン形成が可能になるように設計したクロムマスクである。露光は、実施例および比較例の各感光性ペーストにつき50mW/cmの出力の超高圧水銀灯で100mJ/cmから500mJ/cmまで、5mJ/cmおきに紫外線露光を行った。
【0059】
次に、35℃に保持したモノエタノールアミンの0.3質量%水溶液をシャワーで150秒間かけることにより現像し、シャワースプレーを用いて水洗浄して光硬化していないスペース部分を除去した。隔壁パターン加工性の評価は、露光量の異なる試料の中から隔壁の底部幅が80μmの試料を選択し、光学顕微鏡により未露光部における残膜発生の有無を確認し、残膜の発生が無ければ○、あれば×とした。
【0060】
選択した試料を560℃で30分保持して焼成することにより隔壁を形成し、次に蛍光体層をディスペンサー法にて厚さ20μmに形成し、焼成して背面板を得た。
【0061】
C.隔壁欠け評価
隔壁パターン加工性が○であった試料につき背面板を5cm×13cmに切り、基板中央の1cm角の4点とその中心1点に印を付け、同等の大きさの前面板と張り合わせ、背面板側を下にして、その上から重さ114gの金属球を30cmの高さから印を付けた5点に2回ずつ落下させた。その後基板中央の1cm角部分を切り出し、走査型電子顕微鏡にて隔壁欠け部分の写真を撮影した。撮影した写真より、隔壁欠けの個数を測定した。この評価は前面板を張り合わせる際や、運搬時等に衝撃をうけた際の不良発生のモデルテストであり、隔壁欠けの個数が50個/cm以下であることが好ましい。
【0062】
評価結果 実施例1〜16、および比較例1〜14で得られた感光性ペーストを用いて作製した背面板の評価結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
実施例1〜16の感光性ペーストはいずれもパターン加工性に優れ、隔壁欠けの個数も少なかった。これに対し、金属水酸化物粉末を含まない比較例1、2については、パターン加工性には優れるものの、隔壁欠けの個数が多く、強度が劣ることがわかった。金属水酸化物に代わり対応する金属酸化物を用いた比較例3〜6では、有機成分と金属酸化物の屈折率の差が大きいため、露光光の散乱により残渣が発生し、パターン加工性に問題があった。金属酸化物の添加量を減らした比較例7〜10については、パターン加工性は優れるものの、隔壁欠けが多く強度に問題があった。低軟化点ガラス粉末の添加量が全無機成分中50体積%未満である比較例11〜14では、焼成時の焼結が困難であり、焼成後のパターンの空隙率が大きくなったため、隔壁欠けが多く強度に問題があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性有機成分を含む有機成分および全無機成分中50体積%以上を占める低軟化点ガラス粉末を含む無機成分からなる感光性ガラスペーストであって、さらに無機成分中に金属水酸化物粉末を含むことを特徴とする感光性ガラスペースト。
【請求項2】
前記金属水酸化物が水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の感光性ガラスペースト。
【請求項3】
請求項1、2のいずれかに記載の感光性ペーストを少なくとも塗布、露光、現像、焼成することを特徴とするパターンの形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載のパターンの形成方法を用いて隔壁を形成する工程を含む平面ディスプレイパネル用部材の製造方法。

【公開番号】特開2010−86719(P2010−86719A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252824(P2008−252824)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】