説明

感光性ポリマーアレイ合成法

【課題】ポリマー配列のアレイの大規模調製のための新規なプロセスを提供する。ここで各アレイは、複数の異なる、位置的に区別される、公知のモノマー配列を有するポリマー配列を含む。高度なスループットのプロセス工程をポリマーアレイの製造において高解像度のフォトリソグラフィー技術に結びつける。
【解決手段】基板の表面上にポリマーアレイを形成させる。感光性保護基で保護された官能基でコーティングした第1の基板、及びその上に配置された層を有する第2の表面を有し、該層が1以上の屈折率適合化合物、光吸収化合物及び反射防止化合物よりなる。基盤の異なる領域にモノマーを連続的に活性化させ、カップリングして異なるポリマー配列をそれぞれ基板の異なる既知の位置に形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
感光性ポリマーアレイ合成法 発明の背景 種々の異なるタイプのポリマーの合成方法は当該分野で周知である。例えば、Athertonら,「Solid Phase Peptide Synthesis」,IRL Press,1989(これは全ての目的のために本明細書中に参考として援用される)に記載される「Merrifield」法が、固体サポート上でペプチドを合成するために使用されている。このMerrlfield法では、アミノ酸は、不溶性ポリマーまたは他の材料から作製されるサポートに共有結合する。α-保護基を有する別のアミノ酸は、この共有結合したアミノ酸と反応してジペプチドを形成する。洗浄後、保護基が除去されて、α-保護基を有する第3のアミノ酸がジペプチドに付加される。この方法は、所望の長さおよび配列のペプチドが得られるまで続けられる。
【0002】
方法はまた、固体基板上のポリマー配列の大きなアレイを製造するために開発されている。これらの、ポリマー配列の大きな「アレイ」は、広範囲の用途を有し、医薬品産業、バイオテクノロジー産業、および医療産業に実質的に重要である。例えば、このアレイは、多数の分子を生物学的活性(すなわち、レセプター結合能力)についてスクリーニングするのに使用され得る。あるいは、オリゴヌクレオチドプローブのアレイは、既知の配列における変異を同定するために、および標的核酸を初めから配列決定する方法において使用され得る。
【0003】
特に、米国特許第5,143,854号(Pirrungら)には、先駆的研究が記載され、そしてPCT出願第92/10092号は、光指向性技術(light directed technique)を用いる分子合成の改良方法を開示する。これらの方法によれば、光は、基板の選択された領域に向けられ、この基板の選択された領域から保護基を除去する。その後、選択された分子がこの基板にカップリングされ、続いてさらなる照射およびカップリング工程がなされる。正確な順で、この基板の選択された領域を活性化し、そして選択されたモノマーをカップリングすることにより、任意の数の異なる配列を有する分子のアレイを合成し得る。ここで、各異なる配列は、この基板表面上の別々の既知の位置に存在する。
【0004】
これらのアレイは、一般的には、ポリマー分子(具体的には、ポリペプチドおよびオリゴヌクレオチド)の固相合成における次の工程を明らかに具体化する。従って、高スループット、製品の高品質、より小型化、およびより低コストを伴う、これらのアレイの調製方法を提供することが所望される。本発明はこれらのおよび他の必要性を満たす。
【0005】
(発明の要旨)
一般的に、本発明は、ポリマー配列のアレイ(各アレイは、既知のモノマー配列を有する複数の異なる位置的に明確なポリマー配列を含む)の効率的な大規模調製のための新規の方法を提供する。1つの実施態様において、本発明の方法は、基板ウエハの表面から油分および汚れを除くための基板ウエハのクリーニングおよびストリッピング、続いて、基板ウエハの表面に光保護官能基を提供するためのウエハの誘導体化を提供する。次いで、基板ウエハ上表面上の複数の選択された領域を活性化放射線に選択的に曝露して、感光性(photolabile)保護基を官能基から除去し、そしてその表面をモノマー含有溶液と接触させ、モノマーを選択された領域における表面にカップリングさせることにより、ポリマー配列は基板ウエハ表面上で合成される。曝露工程および接触工程は、複数のポリマーアレイが基板ウエハ上に形成されるまで繰り返される。各ポリマーアレイは、基板ウエハ表面の異なる既知の位置でカップリングされる複数の異なるポリマー配列を含む。次いで、これらのウエハは、複数の個別の基板セグメントに分割され(各セグメントは、その上に形成された少なくとも1のポリマーアレイを有する)、そしてカートリッジにパッケージされ、それにより、その上に形成されたポリマーアレイを有するこの基板セグメント表面は、流体中で、キャビティーと接触される。
【0006】
別の実施態様において、本発明は、感光性保護基で保護された官能基でコートされた第1の表面、ならびに1以上の屈折率適合化合物(index matching compound)、光吸収化合物、および反射防止化合物を含む層を有する第2の表面を有する基板を提供することによる、ポリマーアレイの形成方法を提供する。本方法は、次いで、その基板の第1の表面上にて活性化放射線を向けることによって、連続的な活性化、およびその基板上の第1の表面の異なる選択された領域にてモノマーをカップリングして、複数の異なるポリマー配列をその基板表面の異なる既知の位置に形成することを提供する。
【0007】
さらに別の実施態様において、本発明は、バッチ法を用いて複数のポリマーアレイを形成する方法を提供する。詳細には、この方法は、各々の複数の基板ウエハの選択された領域を曝露し、次いで、バッチでモノマー含有溶液とそれらを接触させることにより、複数の基板ウエハを活性化する工程を包含する。
【0008】
さらなる実施態様では、本発明は、基板をアミノアルキルトリアルコキシシランでまず誘導体化することによる基板上でのポリマー合成方法を提供する。
【0009】
さらなる実施態様では、本発明は、光指向性合成を用いて基板上でポリマーアレイを形成する方法を提供し、ここで、曝露工程は、透過領域および不透過領域を有するフォトリソグラフマスク(ここで、透過領域は、選択された領域より小さい)を通る活性化放射線を照射する(shine)ことによって、この基板表面上の選択された領域で活性化放射線を向ける工程を包含する。結果として、マスクの透過領域を通って向けられた活性化放射線は、選択された領域を曝露するように回折される。
【0010】
本発明はまた、ポリマー配列のアレイを形成する方法を提供し、この方法は、親油性化学基がカップリングされているモノマーの組み込みにより合成効率を向上させている。
【0011】
本発明はまた、上記方法を用いるポリマーアレイを形成する方法を提供するが、基板表面の隣接する選択された領域における脱保護およびカップリング工程は、隣接する領域間での合成工程における相違を最小化するよう調整(align)される。
【0012】
さらに別の実施態様において、本発明は、ポリマーアレイ、およびそれらをチューブ状基材上に形成する方法を提供し、この方法は、連続的なモノマーの活性化、およびチューブ状基材の選択されたセグメントへのモノマーカップリングによる。
【0013】
さらなる実施態様では、本発明は、固体サポートにカップリングされた官能基を光保護する方法を提供し、この方法は、官能基を、以下の式を有する光保護基移動剤に曝すことによる:
【化1】

【0014】
ここで、R1は感光性保護基であり、Xは脱離基である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(好適な実施態様の説明)
I.定義
プローブ:本明細書中で定義されるプローブは、特定の標的により認識される表面に固定化された分子である。これらはまた、リガンドともいわれ得る。本発明の範囲に包含されるプローブの例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:天然のまたは改変された(例えば、新形態化(reshape)された、キメラなど)、細胞表面レセプターのアゴニストおよびアンタゴニスト、毒素および毒液(venom)、ウィルスエピトープ、ホルモンレセプター、ペプチド、ペプチド模倣物、酵素、酵素基質、補因子、薬物、レクチン、糖、オリゴヌクレオチド、核酸、オリゴサッカライド、タンパク質、またはモノクローナル抗体。
【0016】
アレイ:アレイは、基板表面と会合する異なるポリマー配列またはプローブの予め選択されたコレクション(collection)である。アレイは、モノマーの特定の基本セットから作られるすべての可能なモノマー配列を有する所定の長さのポリマー、またはこのようなアレイの特定のサブセットを含み得る。例えば、長さ8のすべての可能なオリゴヌクレオチドのアレイは、65,536の異なる配列を含む。しかし、上記のように、オリゴヌクレオチドアレイはまた、完全なセットのプローブのサブセットのみを含み得る。同様に、所定のアレイは、例えば配列の数が、所望のポリマー配列の全てを含むためにより大きな表面積を必要とする場合に、1を越える別々の基板上に存在し得る。
【0017】
官能基:官能基は、所定のモノマー、ポリマーおよび基板表面上に存在する反応性の化学部分である。官能基の例として、例えば、ヌクレオチドまたはヌクレオシドの3'および5'ヒドロキシル基、ならびに核酸モノマーの核酸塩基上の反応性基(例えば、グアノシンの環外アミン基)、ならびにアミノ酸モノマー上のアミノ基およびカルボキシル基が挙げられる。
【0018】
モノマー/構築ブロック(Building block):モノマーまたは構築ブロックは、より小さな分子(これは、一緒に結合して、より大きな分子またはポリマーを形成し得る)のセットのメンバーである。モノマーのセットは、例えば、通常のL-アミノ酸のセット、D-アミノ酸のセット、天然または合成アミノ酸のセット、ヌクレオチドのセット(リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチド、天然および非天然の両方)、ならびにペントースおよびヘキソースのセットを含むが、これらは制限されない。本明細書中で使用されるモノマーとは、より大きな分子の合成のための基本セットの任意のメンバーをいう。モノマーの選択されたセットは、モノマーの基本セットを形成する。例えば、ヌクレオチドの基本セットは、A、T(またはU)、G、およびCを含む。別の例では、20の天然に存在するL-アミノ酸のダイマーは、ポリペプチドの合成のための400モノマーの基本セットを形成する。モノマーの異なる基本セットは、ポリマー合成における連続工程のいずれにも使用され得る。さらに、これらのセットの各々は、合成後に改変される保護メンバーを含み得る。
【0019】
形質(feature):形質は、所定のポリマー配列が含まれる基板表面上の選択された領域として定義される。従って、アレイが、例えば1つの基板上で100,000の位置的に異なる個別のポリマー配列を含む場合、100,000の形質が存在する。
【0020】
エッジ:エッジとは、基板表面上の2つの形質間の境界として規定される。このエッジの鋭さは、1つの形質から他方にわたる滲出(bleed)を低減する観点で、2つの形質間の「コントラスト」をいう。
【0021】
保護基:保護基は、モノマーユニットまたはポリマー上の反応性官能基に化学的に結合する物質、および保護基が化学活性化剤のような活性化剤または別の活性化剤(例えば、電磁波または光(特に、紫外光および可視光))への選択的な曝露時に除去され得る物質である。電磁波(および、特に光)への曝露時に除去され得る保護基は、「感光性保護基」といわれる。
【0022】
II.略語
ACN アセトニトリル
Bz ベンゾイル
CE β−シアノエチル
CEP シアノエチルホスホルアミダイト
DCM ジクロロメタン
DIEA ジイミノエチルアミン
dG デオキシグアノシン
DMAP ジメチルアミノピリジン
DMC N,N−ジメチルカルバモイル
DMF ジメチルホルムアミド
DMT 4,4’−ジメトキシトリチル
DPC ジフェニルカルバモイル
HOAT 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HOBT 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
Ibu イソブチリル
MeNP α−メチル−o−ニトロピペロニル
MeNPOC α−メチル−o−ニトロピペロニルオキシカルボニル
MeNV α−メチル−o−ニトロベラトリル
MeNVOC α−メチル−o−ニトロベラトリルオキシカルボニル
MMT 4−メトキシトリチル
NMI n−メチルイミダゾール
NMP n−メチルピロリジノン
NP o−ニトロピペロニル
NPE 2−(p−ニトロフェニル)エチル
NPSE 2−(p−ニトロフェニルスルホニル)エチル
NV o−ニトロベラトリル
NPOC o−ニトロピペロニルオキシカルボニル
NVOC o−ニトロベラトリルオキシカルボニル
PAC フェノキシアセチル
PYMOC 1−ピレニルメチルオキシカルボニル
SSPE 生理食塩水、リン酸ナトリウム、EDTA緩衝液
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
III.プロセス概観
本発明は、一般的に、固体基板上のポリマー配列のアレイを多産的にかつ効率的に調製するためのプロセスおよびデバイスを提供する。全プロセスは、図2Aに例示される。一般的に、プロセス1は、一連の基板調製工程10(これは、ストリッピングクリーニングおよび合成のための単一の反応性表面を提供するための基板表面の誘導体化のような個々のプロセシング工程を含み得る)から始まる。次いで、ポリマー配列は、合成工程20において基板表面上で合成される。ポリマー合成の後、次いで基板は、個々のアレイ40に分離され、そして最終的用途60に適したカートリッジに集められる(assemble)。別の実施態様において、本発明はまた、個別プロセス様式またはバッチ式プロセス様式のいずれかを用いて基板表面上でポリマー配列を合成するために提供される。これらの2つの合成様式の比較は図2Bに示される。個別プロセシング様式では、活性化工程およびモノマー付加工程は、単一ユニット操作22において組み合わされる。例えば、1つの基板ウエハがリアクターシステムに配置され、リアクターシステムにおいて、基板の選択された領域を活性化するためにまず活性化工程に供される。次いで基板は、活性化領域にカップリングされる第1のモノマーと接触される。活性化およびカップリング工程は、所望のポリマー配列のアレイが生じるまで繰り返される。ポリマー配列のアレイは、次いで、最後の脱保護工程30に供される。
【0023】
バッチ式プロセシング様式では、多くの基板ウエハが活性化工程24に供される。活性化された基板ウエハは、次いで、プールされ(26)、そしてモノマー付加工程28に供される。各基板ウエハは、次いで、さらなる活性化工程に個別に供され、続いてプールおよびモノマー付加に供される。これは、所望のポリマー配列のアレイが、一連の個々のアレイにおいて基板ウエハ上に形成されるまで繰り返される。基板ウエハ上のポリマー配列のこれらのアレイは、次いで、最後の脱保護工程30に供される。
【0024】
IV.基板調製
用語「基板」は、剛直または半剛直な表面を有する材料をいう。多くの実施態様では、少なくとも1つの基板表面が、実質的に平坦(flat)または平面(planar)であるが、いくつかの実施態様では、異なるポリマーのための別々の合成領域と、例えば、ウェル、起伏領域、エッチングされた溝などとを物理的に分離することが望ましくあり得る。他の実施態様によれば、小ビーズは、合成の完結時に放出され得る表面上に提供され得る。好ましい基板は、一般的に、平面結晶性基板(例えば、シリカベースの基板(例えば、ガラス、石英など))、あるいは、例えば、半導体およびマイクロプロセッサ産業で使用される結晶性基板(たとえば、ケイ素、ヒ化ガリウムなど)を含む。これらの基板は、一般的に、それらが供される種々の合成および分析条件に対して耐性である。各方向から基板のフォトリソグラフ曝露を可能にするために、特に好ましい基板は透明である。
【0025】
シリカエアロゲルもまた、基板として使用され得る。エアロゲル基板は、フリースタンディング基板として、または別の剛直な基板サポートのための表面コーティングとして使用され得る。エアロゲル基板は、ポリマー合成のための大きな表面積(例えば、400〜1000m2/gm)またはエアロゲル基板1cm2片に対して100〜1000cm2の総有効表面積(total useful surface area)という利点を提供する。このようなエアロゲル基板は、一般的に、当該分野で公知の方法(例えば、(MeO)4Siまたは(EtO)4Siの、室温、エタノール/水溶液中での塩基性触媒化された重合)により調製され得る。多孔度は、当該分野で公知の方法による別の反応条件により調整され得る。
【0026】
個々の平面基板は、一般的に、寸法の変化し得るウエハとして存在する。用語「ウエハ」は、一般的に、基板の実質的に平坦なサンプルをいい、そこから複数の個々のアレイまたはチップが製造され得る。用語「アレイ」または「チップ」は、ポリマー配列の個々のアレイの最終生成物をいうのに使用され、これは、基板表面にカップリングされる複数の異なる位置的に区別されるポリマー配列を有する。基板ウエハのサイズは、一般的に、ウエハから生成されるアレイの数および性質により規定される。例えば、より複雑なアレイ(例えば、モノマーの基本セットから生成された全ての可能なポリマー配列を有し、かつ所定の長さを有するアレイ)は、一般的に、より大きな面積を使用するので、従って、より大きな基板を必要とするが、一方、より単純なアレイは、より小さな表面積を使用し得るので、従って、より小さな基板を使用する。
【0027】
代表的に、基板ウエハは、約1''×1''から約12''×12''のサイズの範囲であり、そして約0.5mm〜約5mmの厚みを有する。個々の基板セグメント(個々のアレイ、またはある場合には所望のアレイのコレクションを含む)は、代表的にウエハより非常に小さく、その測定値は、約0.2cm×0.2cm〜約5cm×5cmである。特に好ましい局面において、基板ウエハは、約5''×5''であるが、基板セグメントは、約1.28cm×1.28cmである。ウエハは、単一の大きな基板セグメントを製造するために使用され得るが、代表的に、多数の基板セグメントは、単一のセグメントから調製される。例えば、5''×5''であるウエハは、49個より多くに分けられた1.28cm×1.28cmの単一セグメントを製造するために使用され得る。一般に、単一のウエハから調製されたセグメントの数は、アレイの複雑性および所望の特徴的サイズに依存して変化する。
【0028】
主に、平らな基板または平面基板について記載されるが、本発明はまた、実質的に異なるコンホメーションを有する基板を用いて行われ得る。例えば、基板は、粒子、ストランド、沈殿物、ゲル、シート、管、球、容器、キャピラリー、パッド、スライス、フィルム、プレート、スライドなどとして存在し得る。好ましい他の実施態様において、基板は、ガラス管またはマイクロキャピラリーである。キャピラリー基板は、より高い表面積対容積比の利点を提供し、このことは合成に必要な試薬の量を減少させる。同様に、これらのキャピラリー基板の表面対容積比が高いほど、基板はより効果的な熱移動特性を提供する。さらに、ポリマーアレイの調製は、これらのキャピラリーベースの基板の使用によって単純化され得る。例えば、アレイの領域(すなわち、「セル」)とそれらの「隣接セル」との間の差異を最小化することによって、任意の所定のセルに対して2つの隣接セルのみが存在するように、単純化される(チップの設計でのエッジ最小化についての以下の議論を参照のこと)。アレイ上の2つの隣接セルの空間的分離は、平面基板のコンホメーションに一般に使用される完全なブランクレーンとは異なり、単一のブランクセルの組み込みを含むにすぎない。実質的に、このことは、ポリマー合成に有用な表面領域を維持する。製造設計はまた、基板の直線性によって単純化され得る。特に、直線状基板は、キャピラリーの長さに垂直方向で単一のマスクの下方に移動され得る。それが移動されると、キャピラリーは、1回につき1つの直線状網線(マスクの半透明領域)に遭遇し、これにより、キャピラリー内の選択された領域またはキャピラリーを曝露する。このことは、合成時に、平行なキャピラリーを束ねることを可能にする。ここで、キャピラリーはより厚い直線状網線に曝露され、同時にバッチ式プロセシング様式において、すなわち個々のキャピラリーは、キャピラリーが1方向でマスクの下に下がり得るように並べられた直線状網線のすべてを有するマスク上に配置され得る。次のキャピラリーは、前のキャピラリーの少なくとも1ステップ後ろのマスクの下に下がり得る。これは、基板調製プロセスにアッセンブリライン構造を用いる。
【0029】
例えば、平らなジオメトリチップおよび最適化タイリング(tiling)方式のストラテジーを用いて36個の同時変異を検出するための標準最適化チップは、各40プローブの36ブロック(1440プローブ)および1ブロック当たり15ブランク(540ブランクプローブ)を有する44×45の特性(1980プローブおよびブランク)を有する。しかし、キャピラリー形式は、同数の試験プローブをより小さなスペースに組み込み得る。特に、キャピラリー基板において、40プローブの36列は、合計1475特性について、各プローブ群(35ブランクプローブ)に分離している、1つのみのブランクスペースを有する。
【0030】
最後に、直線状キャピラリーベースの基板は、平らなジオメトリ上に減少した容積の利点を提供し得る。特に、代表的なキャピラリー基板は、1〜10μlの範囲の容積を有するが、平らなジオメトリチップを合成またはスクリーニングするための代表的なフローセルは100μlの範囲の容積を有する。
【0031】
A.ストリッピングおよびリンス
ポリマーアレイの合成において最大の有効性および精度を保証するために、種々の反応が行われるクリーンな基板表面を提供することが、一般に望まれる。従って、本発明のあるプロセシングの実施態様において、基板はストリッピングされ、合成反応またはその後のアレイの分析的使用を阻害し得る、任意の残留汚物、油分、または他の蛍光物質を除去する。
【0032】
代表的に、基板をストリッピングするプロセスは、塗布、浸漬またはその他の、基板をストリッピング溶液に接触させる工程を含む。ストリッピング溶液は、多数の市販の、または汚物および油分の除去のために使用される容易に調製される化学的溶液(この溶液は当該分野で周知である)から選択され得る。特に好ましいストリッピング溶液は、濃H2SO4およびH22の混合物から構成される。このような溶液は、一般に、市販の原料(例えば、Cyantek CorpからのNanostripTM)から入手可能である。ストリッピング後に、基板は水ですすがれ、好ましい局面では、次いでNaOHの溶液と接触させられる。この結果、基板の表面上にヒドロキシル官能基の平らな層を再生する。この場合、基板は、再度水ですすがれ、続いて、HClですすがれ、任意の残存している塩基を中和し、続いて再度水ですすがれる。種々のストリッピングおよびリンス工程は、一般に、半導体製造産業において一般に使用されるタイプの回転(spin)−リンス−乾燥装置を用いて行われ得る。
【0033】
気相を洗浄および調製する方法はまた、例えば、当該分野で周知のH2OまたはO2プラズマまたは反応性イオンエッチング(RIE)技術を用いる基板ウエハに塗布され得る。
【0034】
B.誘導体化
基板表面の洗浄およびストリッピングの後に、表面は誘導体化され、その表面上に種々のポリマー配列を合成するための、基板表面上の部位または官能基を提供する。特に、誘導体化は反応性官能基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ基などを提供し、これらに、ポリマー配列の第1のモノマーが結合され得る。好ましい局面において、基板表面は、水またはエタノールのいずれかの中でシランを用いて誘導体化される。好ましいシランは、基板の表面上にヒドロキシ官能基を提供する、モノ-およびジヒドロキシアルキルシランを含む。また好ましいシランは、アミノアルキルトリアルコキシシランであり、これは、反応性アミン官能基により初期の表面修飾を提供するために使用され得る。特に好ましいシランは、3-アミノプロピルトリエトキシシランおよび3-アミノプロピルトリメトキシシラン(「APS」)である。これらの後者のアミノシランを用いる基板の誘導体化は、合成条件および最終脱保護条件下で安定である結合を提供する(オリゴヌクレオチド合成において、この結合は代表的に、ヒドロキシアルキルシランが用いられる場合のホスホジエステル結合と比較して、ホスホルアミデート結合である)。さらに、このアミノシラン誘導体化は、ヒドロキシアルキルシランによる誘導体化を超える、いくつかの利点を提供する。例えば、アミノアルキルトリアルコキシシランは、安価であり、そして種々の原料から高純度で商業的に得られ得る。得られる第1級および第2級アミン官能基は、ヒドロキシル基よりも反応性の求核試薬であり、アミノアルキルトリアルコキシシランは、貯蔵時に重合しにくく、そしてそれらは十分に揮発性であるので制御された蒸着プロセスにおける気相での塗布が可能になる(以下を参照のこと)。
【0035】
さらに、シランは、保護または「マスクされた」ヒドロキシル基を用いて調製され得、そして有意な揮発度を有する。このように、これらのシランは、例えば、蒸留によって容易に精製され得、そしてシラン化処理の基板表面の気相堆積方法で容易に用いられ得る。これらのシランを基板表面上にコーティングした後、ヒドロキシ基は、簡単な化学処理(例えば、希釈酸または塩基)によって脱保護され得る。このことによって、基板-シラン結合を襲撃しないので、次いで基板はポリマー合成のために使用され得る。これらのシランの例として、アセトキシアルキルシラン(例えば、アセトキシエチルトリクロロシラン、アセトキシプロピルトリメトキシシラン)が挙げられ、これらは、例えば、蒸気相アンモニアおよびメチルアミンまたは水性液相もしくはエタノール性アンモニアおよびアルキルアミンを用いての塗布後に脱保護され得る。エポキシアルキルシラン(例えば、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)もまた用いられ得、これらは、例えば、蒸気相HCl、トリフルオロ酢酸など、または液相希釈HClを用いて脱保護され得る。
【0036】
一般に、基板のシラン化の物理的操作は、基板をシラン溶液にディッピングまたはその他の方法で液浸することを含む。液浸後に、基板は、一般に、基板ストリッピングプロセスに関して記載のように(すなわち、側方に)回転されて、基板の表面にわたってシラン溶液の均一な分配を提供する。このことは、基板表面上の反応性官能基のより均等な分配を保証する。シラン層の塗布に続いて、シラン化基板は、戻され、基板表面上のシランを重合し、そしてシラン試薬と基板表面との間の反応を改良することができる。焼成(baking)は、代表的に、90℃〜120℃の範囲(最も好ましくは、110℃)の温度で、約1分〜約10分(好ましくは、5分)の時間で、行われる。
【0037】
他の局面において、上記のように、シラン溶液は、制御された蒸着方法またはスプレー方法を用いて基板表面と接触され得る。これらの方法は、通常、基板表面の気相またはスプレーへの外界曝露による、シラン溶液の気相またはスプレーへの揮発または微粒化、次いで、気相またはスプレーの基板表面上への付着を含む。代表的に、蒸着は、基板の溶液への単純な液浸よりも、より均等な誘導体化溶液の塗布をもたらす。
【0038】
誘導体化プロセスの有用性(例えば、基板表面上の官能基の密度および均一性)は、一般に、反応性基(例えば、Pharmacia,Corp.からのFluoreprimeTM、Millipore,Corp.からのFluorediteTM、またはABIからのFAMTMのような蛍光性のホスホルアミダイト)を結合する発螢光団を添加することおよび基板表面にわたる相対的な蛍光を観察することによって評価され得る。
【0039】
V.合成
種々のポリマータイプの固相合成の一般的方法は、以前に記載されている。単一の基板上の、オリゴヌクレオチドおよびペプチドを含む多数のポリマー配列のアレイの合成方法がまた、記載されている。米国特許第5,143,854号および同第5,384,261号、ならびに公開されたPCT出願第WO 92/10092号を参照のこと(それぞれ、本明細書中ですべての目的においてその全体で参考として援用されている)。
【0040】
以前に記載のように、基板表面上のオリゴヌクレオチドの合成は、例えば、米国特許第5,143,854号および同第5,384,261号および公開されたPCT出願第WO 92/10092号に記載の光指向(light directed)方法、または米国特許第5,384,261号および公開されたPCT出願第93/09668号に記載の機械的合成方法(それぞれ、本明細書中で参考として援用される)を用いて、行われ得る。好ましくは、合成は、光指向合成方法を用いて行われる。好ましくは、これらの光指向またはフォトリソグラフ合成方法は、光分解工程および化学工程を含む。本明細書中で記載されるように調製された基板表面は、その表面上に官能基を含む。これらの官能基は、また本明細書中で記載されるように、感光性保護基(「光保護された」)によって保護される。光分解工程の間に、基板表面部分は、光または他の活性化剤に曝露され、それらの部分内の官能基を活性化する(すなわち、光保護基を除去する)。次いで、基板は、化学工程に供され、次いで、少なくとも1つの官能基で光保護される化学的モノマーは、基板表面と接触する。これらのモノマーは、保護されていない官能基を介して基板の活性化部分に結合する。
【0041】
次の活性化およびカップリング工程は、モノマーを他のあらかじめ選択された領域(第1の領域のすべてまたは一部で重複し得る)にカップリングさせる。基板上の各領域での活性化およびカップリング配列は、その上に合成されたポリマーの配列を決定する。特に、光はフォトリソグラフマスクによって示される。フォトリソグラフマスクは、曝露されるように設計されそして選択され、それによって第1の特別にあらかじめ選択された基板の部分を活性化する。次いで、モノマーは、基板のこの部分のすべてまたは一部にカップリングされる。使用されるマスクおよび各工程でカップリングされるモノマーは、所望の配列の範囲を有するモノマーのアレイを産生するように選択され得る。各配列は、配置がまたポリマー配列を指図する基板上の別の空間的位置にカップリングされる。光分解工程および化学的工程は、所望の配列が基板表面上に合成されるまで繰り返される。
【0042】
VLSIPSTMアレイ上のオリゴヌクレオチドの光指向合成の基本ストラテジーは、図1に示される。感光性保護基(X)によって修飾された基板または固体サポートの表面は、フォトリソグラフマスクを介して照射され、照射領域において反応性ヒドロキシル基を生成する。次いで、代表的に、3'-O-ホスホルアミダイト-活性化デオキシヌクレオシド(5'ヒドロキシで感光性保護基によって保護された)の形状である選択されたヌクレオチドは、表面に提供され、そしてカップリングが、光に曝露される部位で起こる。キャッピング(capping)および酸化に続いて、基板はすすがれ、そして基板は第2のマスクを介して照射され、カップリングのためのさらなるヒドロキシ基を露出する。第2の選択されたヌクレオチド(例えば、5'-保護、3'-O-ホスホルアミダイト-活性化デオキシヌクレオシド)が、表面に提供される。選択性脱保護およびカップリングサイクルは、所望のセットの生成物が得られるまで繰り返される。Peaseら、Proc.Natl.Acad.Sci.(1994)91:5022-5026。フォトリソグラフィーが使用されるため、プロセスは容易に微細化され得、オリゴヌクレオチドプローブの高密度アレイを生成することが可能になる。さらに、各部位でのオリゴヌクレオチドの配列は、公知である。このようなフォトリソグラフ方法はまた、米国特許第5,143,854号、米国特許第5,489,678号および公開されたPCT出願第WO 94/10128号で記載されている(それぞれ、本明細書中ですべての目的でその全体で参考として援用される)。本発明の大きなスケールのプロセスは、代表的に、フォトリソグラフ合成方法を利用することが好ましい。
【0043】
上記の方法を用いて、モノマーの基本セットで構成される所定の長さのすべてのポリマー配列を有するアレイが調製される。4つのヌクレオチドの基本セットでつくられるこのようなオリゴヌクレオチドのアレイは、例えば、その表面上に4nまでのオリゴヌクレオチドを含む。ここで、nは、オリゴヌクレオチドプローブの所望の長さである。8マーまたは10マーのオリゴヌクレオチドのアレイについて、このようなアレイは、それぞれ約65,536以上および1,048,576以上の異なるオリゴヌクレオチドを有し得る。一般に、長さnのすべての可能なポリマーを有するアレイを生成することが望ましく、単純2成分マスキングストラテジーが、米国特許第5,143,854号に記載のように使用され得る。
【0044】
他のマスキングストラテジーは、ポリマー配列のサブセット(すなわち、所定のモノマー配列を有するポリマー)を含むプローブのアレイを生成し得るが、それぞれの位置でモノマーの基本セットの各メンバーによって系統的に置換される。オリゴヌクレオチドプローブの関係において、これらの他の合成ストラテジーは、所定の公知の核酸セグメントに相補的であり、その長さにわたるプローブ領域を下に置くか、または「タイルする(tile)」ために使用され得る。タイリングストラテジーはまた、ヌクレオチドの基本セットの各メンバーでのプローブ基の各配列内で1以上の個々の位置の置換を含む。これらの位置は、「インターロゲーション(interogation)位置」と呼ばれる。標的核酸のハイブリダイゼーションパターンを読むことによって、変異が配列内にあるのか、またはどこにあるのかを決定し得、そしてどの塩基がインターロゲーション位置内に含まれたかを同定することによって特定の変異が何であるかもまた決定し得る。タイル方法およびストラテジーは、1993年10月26日に出願された米国特許出願第08/143,312号に実質的に詳細に議論され、そして本明細書中ですべての目的でその全体で参考として援用される。
【0045】
タイリングされたアレイは、種々の用途(例えば、公知のオリゴヌクレオチド配列または「標的」内の変異の同定)に使用され得る。特に、アレイ上のプローブは、公知の核酸配列に相補的である配列を有するが、ここで、その配列の少なくとも1つの位置が系統的に他の3つのヌクレオチドによって置換される。
【0046】
ポリマー合成時の感光性の保護基の使用は、上記のように以前に報告されている。好ましい感光性保護基は、一般に、以下の特性を有する:感光性保護基は、選択された試薬がそれらが結合している基を修飾するのを防止する;それらは、合成反応条件に安定である(すなわち、それらは、分子に結合したままである);それらは、それらが結合している構造への潜在的な悪影響を最小化する条件下で除去可能である;そして、一旦除去されれば、それらはその表面またはオリゴマーが結合した表面とほとんど反応しない。いくつかの実施態様において、光分解反応の遊離した副生成物は、特異的に副生成物と反応する試薬を添加することによって、生長するオリゴマーに対して未反応性にされ得る。
【0047】
感光性保護基の除去速度は、一般に、放射線の入射波長および強度、ならびに保護基自体の物理的および化学的特性に依存する。好ましい保護基は、より速い速度およびより低い放射線強度で除去される。一般に、300nmから約450nmの範囲の波長で光分解を起こす光保護基が好ましい。
【0048】
一般に、感光性または感光性保護基は、オルト-ニトロベンジルおよびオルト-ニトロベンジルオキシカルボニル保護基を含む。これらの保護基の使用は、電子機器の製造のフォトリソグラフでの使用が提案されている(例えば、Reichmanisら、J.Polymer Sci.Polymer Chem.編(1985)23:1-8を参照のこと(本明細書中ですべての目的で参考として援用される))。
【0049】
本明細書中で記載の光指向合成方法で使用され得る、さらなる感光性保護基の例として、以下が挙げられる:例えば、1-ピレニルメチルオキシカルボニル、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4-メトキシフェナシルオキシカルボニル、3'-メトキシベンゾイニルオキシカルボニル、3',5'-ジメトキシベンゾイニル-オキシカルボニル、2',3'-ジメトキシベンゾイニル-オキシカルボニル、2',3'-(メチレンジオキシ)ベンゾイニルオキシカルボニル、N-(5-ブロモ-7-ニトロインドリニル)カルボニル3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、およびα-(2-メチレンアントラキノン)オキシカルボニル。
【0050】
ヌクレオチドまたは核酸ポリマーの3'または5'-ヒドロキシ基のいずれかの保護のために特に好ましい感光性保護基は、公開されたPCT出願第WO 92/10092号に記載のO-ニトロベンジル保護基を含む。これらの感光性保護基は、以下を含む:例えば、ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)、ニトロピペロニルオキシカルボニル(NPOC)、α-メチル-ニトロベラトリニルオキシカルボニル(MeNVOC)、α-メチル-ニトロピペロニルオキシカルボニル(MeNPOC)、1-ピレニルメチルオキシカルボニル(PYMOC)、およびこれらの各ベンジル形態(すなわち、それぞれ、NV、NP、MeNV、MeNP、およびPYM)であるが、最も好ましいのはMeNPOCである。
【0051】
保護ストラテジーは、異なるホスホルアミダイトヌクレオシドについて最適化され得、合成効率を増大させる。これらの最適化合成方法の例としては、例えば、1995年5月19日に提出された米国特許出願第08/445,332号で報告される。一般に、これらの最適化方法は、グアノシンのO6基の保護における特定の保護基の選択を含む。このことは、グアノシンを含むオリゴヌクレオチドの合成において、カップリング効率を顕著に改良し得る。同様に、グアノシンのN2基の保護のための適切な保護基の選択はまた、O6基の保護の非存在下で、このような改良を引き起こし得る。例えば、N2基の保護のための適切な保護基(ここで、O6基もまた保護される)として以下が挙げられる:例えば、モノ-またはジアシル保護基、トリアリールメチル保護基、例えば、DMTおよびMMT、およびアミジンタイプの保護基、例えば、N,N-ジアルキルホルムアミジン。N2基のための特に好ましい保護基としては、例えば、DMT、DMF、PAC、BzおよびIbuが挙げられる。
【0052】
6基の保護は、一般に、カルバメート保護基(例えば、-C(O)NX2(ここで、Xはアルキル、またはアリールである)、または保護基-CH2CH2Y(ここで、Yは電子求引性基(例えば、シアノ、p-ニトロフェニル、またはアルキル-もしくはアリール-スルホニル)である)、およびアリール保護基を用いて行われる。特に好ましい実施態様において、O6基は、ジフェニルカルバモイル保護基(DPC)を用いて保護される。
【0053】
あるいは、カップリング効率の改善は、N2基のみについて適切な保護基を選択することにより達成され得る。例えば、N2-PAC保護基がIbu保護基で置き換えられる場合、カップリング効率の実質的な改善は、O6基の保護が存在しない場合でさえも観察される。
【0054】
上記の合成方法に対して、種々の改変がなされ得る。例えば、いくつかの実施態様では、固体サポート上で直接転移させること、あるいはNH2、OH、SHなどの官能基に感光性の保護基を付加することが望ましくあり得る。これらの方法について、従来のペプチドまたはオリゴヌクレオチドモノマーあるいは化学的に除去可能な保護基を有する構築ブロック(building block)が、光保護された官能基を有するモノマーの代わりに用いられる。合成手順の各サイクルにおいて、モノマーは、基板上の反応性部位(例えば、先行する光分解工程において脱保護された部位)にカップリングされる。次いで、保護基を、従来の化学的技術を用いて除去し、そして、次の光分解の前に、感光性保護基で置換する。
【0055】
多くの試薬が、この置換反応に有用である。一般に、これらの試薬は、以下の一般式を有する:
【化2】

【0056】
ここで、R1は光切断可能な保護基であり、そしてXは脱離基(すなわち、親酸(parent acid)HXからの脱離基)である。より強い酸は、代表的には、より良好な脱離基に対応するので、これはより反応性であるアシル化剤である。
【0057】
適切な脱離基の例には、ある範囲の特性(例えば、相対的反応性、溶解性など)を有する多くの誘導体が挙げられる。これらの基には、一般に、単純な無機イオン(すなわち、ハライド、N3-など)、および以下の構造を有する化合物が挙げられる:
【化3】

【0058】
ここで、R2は、アルキル、置換アルキル、またはアリールであり、R3は、水素、アルキル、チオアルキル、アリールであり;R4は、NO2、SO2-R2、またはCNのような電子求引基であり;R5は、アダマンチル、t-ブチルなどの立体障害(sterically hindered)アルキル基またはアリール基であり;そしてR6は、電気陰性の置換基で置換されたアルキルまたはアリールである。これらの後者の脱離基の例には、以下が挙げられる:
【化4】

【0059】
この転移を行うための条件は、固相ペプチド合成におけるカップリング反応に用いられる条件または固相オリゴヌクレオチド合成におけるキャッピング反応に用いられる条件と同様である。固相アミン、ヒドロキシル基またはチオール基を、塩基性触媒(例えば、ピリジン、2,6-ルチジン、TEA、DIEAなど)の存在下で、非求核性有機溶媒(例えば、DMF、NMP、DCM、THF、ACNなど)中、脱離基にカップリングした保護基(例えば、MeNPOC-X)の溶液に曝露する。表面の基のアシル化が、これらの条件下で効率が低い場合、求核性触媒(例えば、DMAP、NMI、HOBT、HOATなど)もまた含有されて、より反応性であるアシル化剤のインサイチュ生成を介した反応を促進し得る。これは、代表的には、誘導体の溶液中におけるより長い安定性が好ましい場合であるが、上記の1種以上の触媒の添加がなければ十分に反応性ではない。自動化合成機では、安定な溶液として長期間貯蔵することができ、次いで必要な場合(すなわち、リアクターシステムのフローセル(flow cell)中、またはフローセルへの試薬の添加の直前)のみ活性化される試薬を選択することが一般に好ましい。
【0060】
ペプチド合成およびオリゴヌクレオチド合成におけるアミン基およびヒドロキシル基の保護に加えて、本明細書中に記載される試薬および方法は、感光性保護基を任意の求核基(固体サポートにつながれている(tethered)か、または溶液中に存在するかのいずれか)に直接転移させるのに使用され得る。
【0061】
A.個々のプロセシング
1.フローセル/リアクターシステム
1つの実施態様では、本発明の基板調製プロセスは、光分解工程および化学工程を合わせて単一ユニット操作にする。本実施態様では、光分解工程および化学工程またはモノマー添加工程の両方の間に、基板ウエハ(substrate wafer)をフローセル中に設置する。特に、基板は、リアクターシステム中に設置され、このことは、リアクターシステムは、基板の合成表面を光分解に曝露してその上にある官能基を活性化させることを可能にする。次いで、化学的モノマーを含む溶液は、リアクターシステム内に導入されて、合成表面と接触させられ、ここで、モノマーは、基板表面の活性官能基と結合し得る。次いで、モノマー含有溶液はリアクターシステムから除去され、そして、基板表面の異なる選択された領域が曝露されかつ活性化される、別の光分解工程が行われる。この方法は、所望のポリマーアレイが製造されるまで繰り返される。
【0062】
複合光分解/化学プロセスに特に適したリアクターシステムおよびフローセルには、例えば米国特許第5,424,186号(その全ては、全ての目的のために、本明細書中で参考として援用される)に記載されるようなものが挙げられる。
【0063】
個々のプロセスの複合光分解/化学プロセスを行うための装置の概略図は、図3Aおよび3B中に示される。これらの図は、リアクターシステム100の別の実施態様の断面図を示す。まず、図3Bを参照すると、この装置は、1平面中に配置されたキャビティ104を有する本体102からなるフローセルを含む。キャビティは、一般に、流体をキャビティ内に流動させそしてキャビティを通すための流体入口108および出口110を含む。キャビティは、必要に応じて、キャビティの背面上にリッジ106を含み、流体がキャビティ内に吸い上げられそしてキャビティを通るにつれて流体が混合されるのを補助し得る。基板112は、キャビティ上に設置され、それによって基板ウエハ114の前面(アレイが合成される表面)は、キャビティと流体連絡(fluid communication)する。この装置はまた、選択した流体をキャビティ内に輸送し、基板の第1の表面に接触させるための流体入口108と流体連通(fluid connection)している、流体輸送システムを含む。この流体輸送システムは、代表的には、選択された流体(例えば、モノマー含有溶液、屈折率適合流体、洗浄溶液など)を、1つ以上の試薬レザバ118から、流体入口108を介してキャビティへと輸送する。この輸送システムは、代表的には、ポンプ116、および種々の試薬レザバから選択するための1つ以上のバルブを含む。
【0064】
光分解反応を行うために、装置100はまた、代表的に、上記のような光源124を含む。光源は、フォトリソグラフマスク128を介して示され、そして、基板112に向けられている。光源を基板に向ける工程は、一般的に、例えばミラー122ならびに/あるいはレンズ120および126を用いて行われ得る。あるいは、図3Bに示すように、マスク128は、直接に(すなわち、基板に近接して)基板112上に配置され得、それによって干渉レンズ(intervening lense)の必要性を不要にする。
【0065】
図4Aおよび4Bは、この装置のフローセル部(例えば、本体と基板との組み合わせ(body substrate combination))の1つの実施態様を概略的に図示した、異なる図面である。図4Aおよび4Bに示すように、パネル320は、本体102に設置されて、キャビティ104の底部表面を形成する。シリコーンセメントまたは他の接着剤は、パネルを設置しそしてキャビティの底部を密封するのに用いられ得る。特に好ましい局面では、パネル320は、衝突光の反射を除去するかまたは最小化するための、光吸収性材料(例えば、黄色ガラス、RG1000nmロングパスフィルター(long pass filter)、または作動波長において光を吸収する他の材料)である。結果として、合成の間の入射波長における離れた光(stray light)を除く負担が顕著に低減される。このガラスパネルはまた、キャビティを形成するための耐久性表面を提供する。なぜなら、このガラスパネルは、高度な塩環境、あるいはDNA合成反応または他の化学反応において一般的な他の条件における腐食に対し比較的に耐性(immune)であるからである。
【0066】
基板ウエハ112は、表面300に係合している。ウエハの第1の表面114は、上記のように、基板表面にカップリングした官能基にカップリングしている、感光性保護基を含む。いくつかの実施態様では、ウエハを表面300に係合させるのに、真空圧が用いられ得る。このような実施態様では、溝304(深さが約2mmでかつ幅が2mmであり得る)が表面300上に形成されている。この溝は、真空源(例えば、ポンプ)に連結された開口部303と連絡している。真空源は、溝内において真空を発生させ、そして基板ウエハを表面300に接着させる。
【0067】
溝310は、ガスケット311をその中に固定するために、表面300上に形成され得る。ガスケットは、ウエハがフローセルに係合する場合に、キャビティが密閉されることを確実にする。整列ピン315は、必要に応じて表面300上に設けられ、基板ウエハをフローセル上で正確に整列させ得る。
【0068】
入口ポート307および出口ポート306は、流体をキャビティ内に導入し、そして流体をキャビティの外に流動させるために設けられる。フローセルは、開口部301を設けており、ここには、入口ポート307を結合させるためにフロー管340が通っている。同様に、フロー管341は、出口ポート306と結合するために、開口部302を通っている。フィッティング(fitting)345は、フロー管を所定の位置に保持するのに用いられる。開口部301および302は、フローセルが容易かつ簡便に合成システム上に設置され得るように、フロー管を有利に位置させる。
【0069】
フロー管の一方に接続したポンプは、選択された流体を、循環または廃棄のために、キャビティ内にそして出口を通って外へと循環させる。選択された流体は、例えば、モノマー含有溶液、屈折率適合流体、洗浄溶液などを含み得る。ポンプという用語で記載しているが、流体をキャビティに輸送するために、種々の圧力輸送システムが用いられ得る。これらの代替システムの例は、選択された流体をキャビティ内におよびキャビティを通って循環させるのに、アルゴンガスを用いる。同時に、アルゴンガスの流動は調整されて、流体がシステムを通って循環するにつれて、流体を撹拌するための泡を生じ得る。撹拌は、反応物の均一性および/または収量を改善するために、流体成分を混合するのに用いられる。
【0070】
示されるように、入口ポート306および出口ポート307は、それぞれ、パネルの対向する端部に位置している。この形状は、キャビティ内における流体の循環および泡形成の調整を改善する。1つの実施態様では、フローセルが合成器に対して垂直に設置されている場合、入口および出口は、それぞれキャビティの先端および底部端に位置している。入口および出口を、それぞれキャビティの最高位置および最低位置に位置させることは、泡をキャビティから除去することを容易にする。
【0071】
いくつかの実施態様では、フローセルには温度制御システムが取り付けられ(configure)得、合成反応が最適な温度条件下で行われることを可能にする。温度制御システムの例には、冷却または加熱浴、冷却空気循環装置、抵抗加熱器、熱電型ペルチェ素子(thermoelectric peltier device)などが挙げられる。
【0072】
いくつかの例では、フローセルキャビティの容積をできるだけ小さく保持して、反応パラメータ(例えば、化学物質の温度または濃度)をより正確に制御することが望ましくあり得る。改善された制御の利益に加えて、より小さいキャビティは廃棄物を減少させ得る。なぜなら、容積が小さくなると、反応を行うために必要とされる材料は少なくなるからである。
【0073】
特に少量のキャビティ容積については、反応流体中の泡がキャビティ中にトラップされ得、このことにより反応表面の反応流体への不完全な曝露が引き起こされ得るという困難が生じ得る。特に、流体が、非常に浅いチャネルまたはスリット内を満たす場合、流体はまず、最も浅い領域における比較的強い毛細管力(capillary force)のために、最も浅い領域を満たす傾向がある。チャネルが浅すぎる場合、不均一な毛細管力をもたらす基板の不整合および非平面性は、充填の間に、不均一な流体前面(fluid front)を生じる。流体前面がその均一な形状を失うにつれて、液体は空気または気体のポケットを取り囲み、トラップされた泡を生じ得る。従って、特に小さいキャビティ容積が望まれる場合は、フローセルの上部および底部の表面が非平行であり、フローセルの入口は狭く、出口に向かってより幅が広くなるようなフローセルが使用され得る。フローセルを均一に満たすことは、流体前面が直線形状を維持し、それにより泡が表面間にトラップされるポテンシャルを最小化することを確実にする。
【0074】
一体化リアクターシステムの概略図を、図4Cに示す。この装置は、自動化ペプチド合成機401を含む。自動化ペプチド合成機は、選択された試薬を、コンピュータ404の指示下でフローセル402を通して流動させる装置である。好ましい実施態様では、合成機は、ABI Peptide Synthesizer、model no.431Aである。コンピュータは、広範な種々のコンピュータまたは個別の論理(例えば、IBM PC-ATが挙げられる)、あるいはペプチド合成機中の適切な内部制御システムに接続した同様のコンピュータから選択され得る。PCには、例えば光分解サイクルの開始を示すABIコンピュータからのシグナルが供給される。合成機を、ボードを用いて改変することができる。このボードは、合成機のコントロールパネルのキーボードのスイッチと平行なコンピュータ中のリレーの接点に接続して、さもなくば合成機を作動させるのに必要とされるキーストロークをいくらか除外する。
【0075】
某板406は、フローセル上に設置され、基板とフローセルとの間にキャビティを形成している。選択された試薬は、選択された時間において、ペプチド合成機からこのキャビティを通って流動し、キャビティ中の基板表面上に、ペプチドのアレイを形成する。マスク408は、基板上に設置され、そして好適には基板と接触している。マスク408は、選択された領域中で、選択された光の波長まで透明であり、そして選択された光の波長以外の領域では不透明である。マスクは、UV光源のような光源410で照射される。1つの特定の実施態様では、光源410は、Orielにより製造されたmodel no.82420である。マスクは保持され、そしてx-yトランスレーションステージ(translation stage)412によりトランスレーションされる。トランスレーションステージは、例えばNewport Corp.から市販で入手可能である。コンピュータは、ペプチド合成機、トランスレーションステージ、および光源の動作を調整する。当然ながら、本発明は、マスクの代わりに基板のトランスレーションを用いるいくつかの実施態様において用いられ得る。
【0076】
2.光分解工程
上記のように、フォトリソグラフ法は、基板表面上の選択された領域を活性化するために用いられる。特に、基板表面上の官能基または基板表面上の成長ポリマー上に存在する官能基は、感光性保護基で保護される。基板の選択された領域の活性化は、上記のように、基板表面の選択された領域を活性化放射(例えば、有効波長範囲内の光)に曝露することにより行われる。選択的曝露は、代表的には、フォトリソグラフマスクを通して光源を照射することにより行われる。選択領域を曝露するための別の方法(例えば、光ファイバフェースプレート(fiberoptic faceplate))もまた用いられ得る。個々のプロセス方法(例えば、一体化光分解/化学プロセス)について、基板はリアクターシステムまたはフローセル内に設置される。その結果、基板の合成表面はキャビティに面しかつ光源から離れる。光源は、光保護基が設けられた対向表面上に示されるので、この曝露方法は、「背面(back-side)」光分解と呼ばれる。
【0077】
本明細書中に記載の方法に従って調製された基板の表面上の個々の機構(feature)のサイズは、代表的には、側面上で1〜10μmの範囲であり得るので、基板表面における反射光または回折光の影響は、このサイズの曝露および活性化機構に対する能力に重大な影響を与え得る。反射光の発生を低減させる1つの方法は、上記のように、フローセルの背面として光吸収性材料を配合することである。光の反射はまた、それが基板の背面を通ってフローセルに入る(すなわち、基板/フローセル界面を横切る)につれて、基質の合成表面にて機構の分解能の損失(これは回折および反射から生じる)をもたらし得る。この問題を軽減するために、光分解の間、フローセルを屈折率適合流体(「IMF」)で満たして基板の屈折率を整合させ、それによって入射光の回折および機構の分解能の損失を低減させることが一般的に望ましい。屈折率適合流体は、代表的には、基板の屈折率に近い屈折率を有する。代表的には、IMFの屈折率は、基板の屈折率の約10%以内であり、好ましくは、基板の屈折率の約5%以内である。フローセルに入る回折光は、基板とIMFとの間の界面に接触するので、それにより低減される。合成が、例えばシリカ基板上で行われる場合、特に好ましいIMFはジオキサンであり、これは、シリカ基板とほぼ同等の屈折率を有する。
【0078】
光分解に用いられる光源は、用いられる特定の保護基に対しては光分解性であるが、得られたポリマー配列を損傷しない波長を提供するように選択される。代表的には、スペクトルのUV範囲で光を生じる光源が用いられる。例えば、オリゴヌクレオチド合成において、光源は、代表的には340nmを超える波長を有する光を提供し、形成されたオリゴヌクレオチドを損傷することなく、感光性の保護基の光分解に影響を与える。この光源は、一般的には、340nmカットオフフィルターを用いるHg-Arcランプ(すなわち、340〜350nmを超える波長を有する透過光)により提供される。代表的な光分解への曝露は、用いられる保護基の曝露半減期(exposed half-life)の約6倍〜約10倍にて行われ、8〜10倍の半減期が好ましい。例えば、好ましい感光性基であるMeNPOCは、約6秒の曝露半減期を有し、ほぼ36〜60秒の曝露時間にトランスレーションする。
【0079】
光分解工程の間に用いられるフォトリソグラフマスクは、代表的には、所定の光分解工程の間に基板の選択された部分のみを曝露するための透明領域および不透明領域を含む。代表的には、マスクは、光反射性または光吸収性の材料(例えば、クロム層)でコーティングされたガラスから製造される。光反射性または光吸収性の材料は、エッチングされて、マスクの透明領域を提供する。これらの透明領域は、光がマスクを通って示される場合に基板表面上に曝露されるべき領域に対応する。
【0080】
一般に、より小さな基板領域においてより多量の情報を組み込むことを可能にし、より大きいサンプルのインターロゲーション(interogation)を可能にし、インターロゲーションからより信頼のおける結果を得、そして小型化の可能性が大きい、より小さい機構のサイズを有するアレイを製造することが望ましい。あるいは、機構のサイズを低減することにより、単一の基板ウエハから、各々が所定の数の機構を有する多数のアレイを得ることができる。結果として、所定のプロセスについて、実質的に高い生成物収量が得られる。一般に「成型収縮」と呼ばれるこの技術は、半導体工業において一般的に用いられ、製造プロセスのオーバーサイズ試験の作動の後に、製品高を向上させるかまたはチップのサイズを低減するのに用いられる。
【0081】
機構のサイズを低減することを探求するにあたり、所定の光分解の間に光に曝露される基板の領域と、暗いままであるかまたは曝露されていない領域とのコントラストを最大化することは重要である。「コントラスト」とは、曝露された領域と曝露されていない領域とを分ける線の鮮明さを意味する。例えば、活性化または曝露された領域から曝露されていない領域へと延びる、活性化基から非活性化基への勾配は、コントラストの尺度である。この勾配が急な場合、コントラストは高いが、緩やかな勾配は、コントラストが低いかまたは乏しいことを示す。
【0082】
減少したコントラストの1つの原因は、特定の光分解工程中の曝露領域から非曝露領域の「ブリードオーバー(bleed-over)」である。特定の実施態様では、形質間のコントラストが、基板の前面側を通じて増強される。前面の曝露は、マスクを合成表面により近接して設置することによる回折または発散の効果を減少する。さらに、そしてより重要なことに、合成表面の曝露に先立つ基板表面を透過する光からの反射効果もまた、前面側曝露によって減少されるかまたは排除される。これはより詳細に以下に記載される。
【0083】
形質間のコントラストはまた、いくつかの他の方法を用いて増強され得る。例えば、2つの領域間のコントラスト分散のレベルは、2つの領域間の差次的曝露または光分解工程数(すなわち、1つの領域が曝露され、もう一方が曝露されない頻度)の関数として一般に増加する。これらの頻度が高ければ高いほど、各工程間で1つの領域から他の領域までのブリードオーバーの機会が大きく、かつ2つの領域間のコントラストのレベルが低い。配列情報に変換された場合、次いで基板上の隣接領域で合成されたポリマーの間の差が大きくなると、領域間の減少したコントラストを生じ得る。すなわち、2つのポリマーシークエンスの差の数が大きければ大きいほど、第1のポリマーが曝露され、他方が曝露されないことを生じる領域の頻度数が大きくなる。これらの効果は「エッジ」効果と呼ばれ、これらは一般にこの形質の外部エッジに生じる。
【0084】
従って、これらのエッジ効果を最小化し、合成時にコントラストを増強することが望ましい。よって、一つの局面では、本発明は、アレイ全体の領域を含む隣接ポリマーシークエンス間の差次的合成/光分解工程の数を減少することによってコントラストを増強する方法を提供する。
【0085】
エッジ最小化の1つの方法は、近縁ポリマーのブロックに配列されたポリマーを分割することであり、他のブロックのブリードオーバーを防止するためにブロック間にブランクレーンを置く。この方法はエッジ効果を減少するのに効果的であるが、それぞれ新たなタイリングストラテジーに関する特定のアルゴリズムの作成が求められる。すなわち、プローブの位置に関して各ブロックのレイアウトがタイル配列に依存する。1つの局面では、本発明はアレイ上でポリマー合成工程を整列化する方法を提供し、それによって差次的合成工程の回数を減少する、および/またはアレイの隣接領域での合成が類似性に関して最適化される。
【0086】
以下の実施例は、代表的な合成ストラテジーを例示する。単一の可能な変異が配列TGTATCAの第3の位置に探索されている単純なアレイを想定する。相補プローブのアレイは以下のようである:
#1 ACATAGT
#2 ACTTAGT
#3 ACGTAGT
#4 ACCTAGT
ここで、位置3は4つのヌクレオチドのそれぞれに置換されている。このアレイの合成において、モノマー付加は、代表的には所定の事前に設定された順(例えば、1-A、2-C、3-G、4-T)に4つのヌクレオシドを通して繰り返される。従って、上記のアレイに関してそれぞれの配列の最初の「A」が第1のサイクルでカップリングされる。第2の「C」は、第2のモノマー付加サイクルでカップリングされる。次いで、それぞれの置換位置はそれぞれの対応するサイクルでカップリングされる(例えば、プローブ#1の「A」は第5サイクルでカップリングされ、一方、「T」、「G」、および「C」第6、第7および第8サイクルでそれぞれカップリングされる。
【0087】
この時までに、上記のように各プローブは最小数の差次的曝露に曝露されている。しかし、置換モノマーに次ぐモノマー付加工程は、この点でいくつかの困難が生じる。例えば、プローブ#1の第4位の「T」は、第6サイクルでカップリングされ得、残りのプローブの「T」は第10サイクルで付加されなければならないが、それらが配列中の前記モノマーの前に付加され得ないからである。次いでプローブ1の残りの合成工程は、残りのプローブのそれらとともに配列外にあり、プローブ1と残りのプローブとの間の増加した数の差次配列工程を生じる。プローブ#1の「T」モノマーの付加を、残りのプローブのそれと整列することによって、差次合成工程の数が最小化される。特に、プローブ#1の「T」を付加する第10サイクルまで待つことによって、プローブ間の差次曝露の数が最小化され、種々の変異または置換を導入するために必要な数のみになる。
【0088】
本明細書中に記載の方法は、上記の目的を達成するために合成工程を整列するための一般化した合成方法を利用する。これらの一般化した方法は、用いられる特定のタイリングストラテジーまたは標的とされる配列に関係なく行われ得る。
【0089】
特に、本明細書中に記載の方法は、実際の標的配列に事実上無関係である一般構造によつて各プローブを同定する。このプローブ配列の一般的記載は「イメージ」と呼ばれ、ポリマー配列のコレクションは「ピクチャー」と呼ばれ、そして局所トランスレーション(例えば、より大きな標的配列で)は「フレーム(frame)」と呼ばれる。全体のピクチャーおよびフレーム構造は「コラージュ(collage)」と呼ばれる。
【0090】
プローブ中の各位置は、フレーム中の位置番号で、または標的配列セグメント、次いで野生型モノマー由来の回転を示す数(野生型モノマーは「0」である)で設計される。回転によって、付加サイクルにおいて野生型モノマーから置換モノマーへ移動するために要求されるサイクルの数が示される(「0」および「4」はヌクレオチドの用語で同じモノマーであることに留意せよ)。例えば、所定の野生型配列が所定の位置で「A」を有する場合、「G」への置換は「3」の回転によって同定され、A、C、T、Gのモノマー付加または合成サイクルを仮定する。
【0091】
上記実施例の用語において、プローブ#1は、上記されたものとも同じ野生型標的であり、以下のように同定される:
#1 <1,0><2,0><3,0><4,0><5,0><6,0><7,0>
ここで、各位置は野生型から回転されない、または「修飾されない」。残りの配列は以下のように同定される:
#2 <1,0><2,0><3,1><4,0><5,0><6,0><7,0>
#3 <1,0><2,0><3,2><4,0><5,0><6,0><7,0>
#4 <1,0><2,0><3,3><4,0><5,0><6,0><7,0>
ヌクレオシドモノマーのそれぞれに関して第3位での回転を示す。
【0092】
同じ層の配列位置は同じ合成サイクルで付加されるように整列される。配列の「深度」または所定のモノマーが見られる「層」は、非修飾塩基に次いで修飾塩基がそれぞれ生じる回数を計数することによって決定される。各配列は少なくとも1の深度を有する。例えば、<1,1><2,0><3,0>によって示される配列「X」は、2の深度を有し、ここで<2,0>および<3,0>は第2層にある。同様に、<1,0><2,1><3,0>によって示される配列「Y」は2の深度を有し、ここで<1,0>は第1層にあり、そして<3,0>は第2層にある。これら2つの配列を整列することによって、この配列XおよびYのモノマー<3,0>は、同じ層に存在するものとして整列され得ることが見られ得る。
【0093】
対照的に、配列「Z」<1,0><2,0><3,1>は、第1層に<1,0><2,0>を有する1の深度を有する。従って、配列X中の位置<2,0>は、それらが異なる層に存在するような配列Zの同じ位置で整列されない。
【0094】
コラージュ法の特定の実施例は、以下の配列/タイリングストラテジーを用いて例示される。標的配列はCTTA配列に相補的である。従って、上記の一般的なスタイルで記載される場合、野生型配列は<1,0><2,0><3,0><4,0>に設計される。各位置が野生型由来のモノマー回転位置で置換された単純化タイリングストラテジーを想定すると、アレイは以下の一般的記述を有する:
#1 <1,1> <2,0> <3,0> <4,0>
#2 <1,0> <2,1> <3,0> <4,0>
#3 <1,0> <2,0> <3,1> <4,0>
#4 <1,0> <2,0> <3,0> <4,1>
これは以下の配列に対応する:
#1 G T T A
#2 C A T A
#3 C T A A
#4 C T T C
特定のサイクルに対する各層の塩基の帰属は、「フレーム」と呼ばれる。例えば、上記合成に関するフレームは以下の通りである:
層1 層2
<1,0>=2 <----
<2,0>=4 <2,0>=8
<3,0>=8 <3,0>=12
<4,0>=13
同じ層のモノマーが一旦整列されると、合成は以下の整列されたサイクル帰属で実行される:
【表1】

【0095】
第1層の塩基は、合成の開始に最も近いサイクルに帰属される。(層間の)修飾塩基は、次に利用可能なサイクルに帰属される。第2層は、既に帰属された塩基と整合した合成の開始に可能な限り近いサイクルのセットに帰属される(すなわち、任意のプローブの塩基の順を変更しない)。次の層は、同じ方法で帰属される。この方法は、合成されているフレームを通じて合成サイクルの最大整列を許容し、一方合成の全体の長さを最小化する(例えば、工程の数)。
【0096】
光分解工程のブリードオーバーを最小化する別の方法は、マスクの透過性または半透明部のサイズを減少することであり、これによりマスクを通過して見られる光の回折により生じる隣接する領域の故意でない曝露を防ぐ。特に、代表的な光分解工程は、光脱保護反応の半減期の8〜10倍までの持続時間を有し得る。従って、光保護は、光強度が最適なレベルの12%だけである50%完結まで(すなわち、光脱保護の完結またはほぼ完結が要求されるレベル)であり得る。代表的には、このような強度レベルは、マスクの透過性部分によって定義される特徴の境界の外側に良く到達され得る。
【0097】
マスクの透過性部分のサイズを減少すると、隣接する特徴を妨害する回折なしに、各特徴のエッジにおいて回折、散乱および分岐する(divergence)ことが可能になる。従って、不完全な光分解の特徴は、特徴間の所望の境界の中心になり得る。この結果、各領域からのブリードオーバー効果が、隣接する特徴内のウエルよりもむしろ境界の中心になるので、多段階合成において妥協されるチップの総面積は最小化される。従って、本発明の1つの局面では、マスクの透過性部分のサイズを減少することによって隣接するセルのブリードオーバーを最小化する方法を提供し、それによってマスクを透過して示される分岐光の帯域は所望の特徴境界の中心になる。例として、長方形特徴を曝露するマスクは、例えば各寸法において20μmまで減少され得、従って、100μm特徴のエッジでより高い均質性を許容する。好ましい局面において、マスクの半透明の領域は、曝露される領域のサイズの各寸法において約2%〜約25%小さい。より好ましい局面では、マスクの半透明部分は、各寸法において約10%〜約25%小さい。
【0098】
3.化学工程
各光分解工程に従って、モノマー構築ブロックは基板の合成表面に導入されるか、または接触される。代表的には、付加したモノマーは単一の活性官能基を含む(例えば、オリゴヌクレオチド合成の場合、3'-ヒドロキシル基)。ポリマー配列中のモノマーを結合する際に含まれる残りの官能基(例えば、ヌクレオチドの5'-ヒドロキシル基)は、一般に光保護されている。次いで、このモノマーは、前記光分解工程の間に活性化されるか、または基板に合成されるリンカー分子あるいはポリマーの終端にある基板の表面の反応性部分に結合する。
【0099】
代表的には、化学工程は、当該分野で周知の固相ポリマー合成法を含む。例えば、ホスホルアミダイト、ホスファイト-トリエステル、ホスホトリエステル、およびH-ホスホネート化学種によるオリゴヌクレオチドの固相合成手順の詳細な記述が広く利用されている。例えば、Itakura、米国特許第4,401,796号;Caruthersら、米国特許第4,458,066号および4,500,707号;Beaucageら、Tetrahedron Lett.22:1859-1862(1981);Matteucciら、J.Amer.Chem.Soc.、103:3185-3191(1981);Caruthersら、Genetic Engineering、4:1-17(1982);Jones、第2章、Atkinsonら、第3章、およびSproatら、第4章、in Gait、編、Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach、IRL Press、Washington D.C.(1984);Froehlerら、Tetrahedron Lett.、27:469-472(1986);Froehlerら、Nucleic Acids Res.、14:5399-5407(1986);Sinhaら、Tetrahedron Lett.、24:5843-5846(1983);およびSinhaら、Nucl.Acids Res.、12:4539-4557(1984)を参照のこと。
【0100】
操作において、化学/モノマー付加工程中に、IMFは出口ポートを通じてフローセルから除去される。次いで、このフローセルをリンスする(例えば、水および/またはアセトニトリルで)。リンスに次いで、特定の合成工程で結合した適切に保護されたモノマーを含む溶液が添加される。例えば、合成がオリゴヌクレオチドプローブアレイの場合、3'から5'方向に合成され、5'ヒドロキシルで光保護された3'-O-活性化ホスホルアミダイトヌクレオシドを含む溶液が、基板の光活性化領域に結合するためにフローセルに導入される。代表的には、ホスホルアミダイトヌクレオシドが、1mM〜約100mMの濃度のモノマー溶液中に存在し、10mMヌクレオシド濃度が好ましい。代表的には、カップリング反応は30秒〜5分で行われ、そして好ましくは約1.5分である。
【0101】
カップリングに次いで、モノマー溶液をフローセルから除去し、基板を再度リンスし、そしてIMFを別の光分解工程のためのフローセルに再度導入する。光分解および化学工程は、基板が、表面上に合成されたポリマーの所望のアレイを有するまで繰り返される。
【0102】
各光分解/化学サイクルのために、アレイ上のプローブ密度を最大化するようにカップリング効率を最大化することが一般に望ましい。カップリング効率は、一定の数の方法を経て改善され得る。例えば、カップリング効率は合成において使用される構築ブロックの親油性を増加することによって増加され得る。操作のいかなる理論にも束縛されることなく、このような親油性構築ブロックが好ましい結晶基板の表面における相互作用を増強したと考えられる。構築ブロックの親油性は、一般に一定の数のストラテジーを用いて増強され得る。オリゴヌクレオチド合成において、例えば、核酸モノマーの親油性は一定の数の様式で増加され得る。例えば、1つは、合成に使用される核酸それ自身、ホスホルアミダイト基、または保護基の親油性を増加し得る。
【0103】
親油性を増加するためのヌクレオシドの修飾は一般に、核酸塩基の特定の修飾を含む。例えば、トリメチルシリルエーテルとして両方のヒドロキシル基のインサイチュ保護の後に、デオキシグアノシン(dG)は、DMT-Clを有する環外アミノ基(N2)でアルキル化され得る(図5を参照のこと)。遊離DMT保護ヌクレオシドの遊離は、ジ-TMSエーテルの塩基触媒化メタノリシス(methanolosis)によって達成される。標準的な手順に次いで、2つのさらなる工程が使用され、5'-MeNPOC-dG-ホスホルアミダイトの形成を生じる。通常使用される5'-DMT-ホスホルアミダイトはシリカ基板表面上で高カップリング効率を示し、そして全体の化合物に関する合成を容易にするので、DMT基は使用される。dGの環外アミノ基上の酸不安定保護基の使用は、光直接合成を通じて基の継続的な保護を可能にする。同様の保護は他のヌクレオシド(例えば、デオキシシトシン(dC))に関して使用され得る。核酸塩基官能基に関する保護ストラテジーは、環外基を含み、1995年5月19日に提出された米国特許出願番号08/445,332号(以前に本明細書中で参考として援用されている)中で議論されている。
【0104】
より親油性のホスホルアミダイト基はまた、合成効率を増強するために使用され得る。代表的なホスホルアミダイト合成は、シアノエチルホスホルアミダイトを使用する。しかし、親油性は、例えば、Fmoc-ホスホルアミダイト基の使用によって増加され得る。Fmoc-ホスホルアミダイトの合成は図5Bに示される。代表的には、三塩化リンは4当量のジイソプロピルアミンと反応し、これが対応モノクロロ-ビスアミノ誘導体の形成へと導く。この化合物は、Fmoc-アルコールと反応し、適切なホスファチジル化薬剤を生じる。
【0105】
ホスホルアミダイト基を有するので、光不安定生保護基もまた、より親油性にされ得る。例えば、親油性置換基(例えば、ベンジル、ナフチル、など)は、図5Cに示すように、ニトロケトンのα-アルキル化によってハロゲン化アルキルとして導入され得る。周知の合成技術に次いで、デオキシリボヌクレオシドの5'位に光活性親油性基を導入するために必要なクロロホルメートを生じる。
【0106】
B.バッチプロセシング
基板調製プロセスの第2の実施態様において、合成操作に含まれる光分解および化学工程のそれぞれは、別々のユニット操作として提供される。この方法は単一のユニット操作プロセスにわたって効率およびより高い特徴解像度の利点を提供する。特に、光分解および化学工程の分離は、光分解がフローセルの限界の外で実行されることを可能にする。これは、合成表面に直接的に光を付与することを許容する(すなわち、基板を最初に通過しない)。この「前側」曝露は、基板の反射の影響を排除し、そして合成表面により近いマスクの設置を可能にすることによって曝露された領域のエッジ(「特徴」とも言う)でより高い規定を可能にする。前側合成の改良された解像度を例示する比較は、図8A〜8Dに示される。
【0107】
前側曝露の利点に加えて、バッチ法は、アレイを合成するのに用いられ得る基板ウエハの表面領域に利点を提供する。特に、個別プロセス法における光分解/化学局面を合わせることによって、フローセル上に基板ウエハを搭載する操作は、合成のために使用されている基板ウエハの表面全体よりも小さくなり得る。特に、基板ウエハがフローセルの1つの壁を形成するために使用される場合、代表的にはこれらの組み合わせ方法の場合のように、フローセルの搭載に含まれる工学的制限が、利用可能な基板表面領域において減少を生じ得る。これは特に、バキュームチャックシステム(vacuum chuck system)がフローセルに基板を搭載するために使用される場合であり、ここでバキュームチャックシステムは、十分な力でフローセル上に基板を固定するための一定量の表面領域を必要とする。
【0108】
バッチモード操作では、化学工程はモノマー溶液中に基板ウエハの全体を含漬することによって一般に実施され、このようにほとんど(全てではない)の基板ウエハの合成表面の合成を終了し得る。これは、個別プロセシング法よりも基板ウエハ当たり高いチップ収量を生じる。さらに、化学工程は合成プロセスにおいては一般に時間制限工程であるので、含漬によるモノマー付加は、所定の時間で複数の基板にモノマーを付加することを可能にする一方、より多くの基板は光分解工程を受ける。
【0109】
例えば、上記のように合成が個別プロセシング操作で実行された場合、フローセルに基板をバキューム搭載する際の工学的制限は、基板ウエハ上の合成領域のサイズをかなり減少し得る。例えば、1つのプロセスにおいて、5インチ×5インチの寸法を有する基板ウエハは、合成表面として2.5インチ×2.5インチだけが利用可能であり、ここで代表的な寸法のチップに分けた場合(例えば、1.28cm×1.28cm)、代表的にはウエハ当たり16の潜在的なチップが生じる。同じサイズのウエハは、バッチモード合成に供した場合、約4.3インチ×4.3インチの合成エリアを有し得、これはウエハ当たり約49チップを製造し得る。
【0110】
一般に、一定数の基板ウエハは光分解工程に供される。光分解工程に次いで、多くのウエハはラックに設置されるか、または化学工程を行うステーションに移すための「ボート」に設置され、ここで1つ以上の化学工程がウエハ上で同時に行われる。次いで、このウエハはボートに戻され、そしてさらなる光分解のためにステーションに戻される。代表的には、ボートは一度に数枚のウエハを運ぶことができるラックであり、そして自動化システム(例えば、ロボット工学)に適合性でもある。それによって、ウエハはボートに装填され得、化学ステーションに移され、そして設置される。そして全てを通じて自動化システムの使用により、モノマー付加に次いで、ボートおよび光分解ステーションに戻される。
【0111】
最初の基板調製は、上記の個々のプロセシング方法に記載のバッチプロセシングと同一である。しかし、この最初の基板調製のほかに、2つのプロセスは分岐する経路をとる。バッチ様式プロセシングにおいて、光分解工程および化学工程は、別々に行われる。以下により詳細に記載するように、光分解工程は、一般に、フローセルの外側で行われる。これは、光分解の光源の屈折および反射の潜在的に有害な効果を防止するために、基板の背後にIMFが提供されないので、いくつかの困難を生じ得る。しかし、ある実施態様において、基板の背面、すなわち、基板の非合成表面にコーティング層を付与することにより、同一の目的が達成される。コーティング層は、代表的には、基板調製プロセス後であるが、誘導体化前に付与される。このコーティングは、代表的には、以下の機能の1つ以上を行うように選択される:(1)光分解に干渉し得る、基板を通過する光の屈折を防止するように基板の屈折率を適合させる;および(2)光分解中に使用される光の波長で光を吸収し、光分解に干渉し得る背面反射を防止する。
【0112】
代表的には、適切なコーティング材料は、基板の屈折率とほぼ同じ屈折率を有する、および/または適切な波長で光を吸収する多数の適切な材料から選択され得る。特に、屈折率適合コーティングは、代表的には、基板の屈折率の約10%以内、好ましくは約5%以内にある屈折率を有するように選択される。同様に、光吸収コーティングは、代表的には、光分解波長の光(好ましい局面において、紫外線領域、例えば、280nmと400nmとの間の光である)が吸収されるように選択される。光吸収コーティングおよび屈折率適合コーティングは、屈折および反射に対して組み合わせ保護を提供するように組み合わされ得るか、または所望の特性の両方を有する単一のコーティング材料が選択され得る。
【0113】
好ましいポリマーは、代表的には、合成プロセスを通して、合成プロセス中に遭遇する種々の反応条件(例えば、合成試薬に不溶であり、非反応性であり、そして基板の取扱いおよび操作に関係する機械的力に耐性である)と適合し得るように選択される。さらに、好ましいコーティング材料は、合成プロセスの完了時(例えば、最終脱保護工程または最終コーティング除去工程)に容易に除去可能である。
【0114】
適切なコーティング材料の例としては、当該分野で周知であり、一般に市販入手可能な抗反射コーティング(例えば、フッ化マグネシウム化合物(これは、所望の波長範囲で光を吸収する)、ポリメチルメタクリレートコーティング(PMMA)(これは、ガラス基板に匹敵する屈折率を有する)、およびポリイミドコーティング(これは、所望の波長範囲で光を吸収し、かつガラス基板の屈折率に近い屈折率を有する)が挙げられる。ポリイミドコーティングが最も好ましい。
【0115】
コーティング材料の付与は、種々の方法(例えば、蒸着、スプレー塗布などを含む)により実施され得る。好ましい局面において、コーティング溶液は、スピンコーティング方法を用いて基板に付与される。代表的には、これは、コーティングされる基板表面上にコーティング溶液を堆積する間に基板を回転させることを含む。基板を回転させることにより、コーティング溶液が基板表面上に放射状に外側に広がる。
【0116】
スピンコーティングプロセスを用いるコーティング材料の付与は、通常、基板の2段階速度(two-speed)回転を使用する。基板表面へのコーティング材料の付与およびコーティング溶液の最初の展開は、通常、低回転速度および比較的短時間で行われる。例えば、1mlの12%固形物w/vポリマーコーティング溶液を4.3インチ×4.3インチ基板に付与するために、最初の展開を500r.p.m.で10秒間行う。過剰のポリマー溶液の除去およびポリマー層の平坦化は、より高回転速度で実質的により長い時間行われる。例えば、上記付与において、第2の回転工程は、約3000r.p.m.で30秒間行われる。スピンコーティングの上記パラメーターは、本発明の範囲内で変化させ得ることは、当業者に理解される。例えば、より高濃度(w/v)のポリマー溶液が使用される場合、1方または両方の回転速度、ならびに所定の速度での時間を増加させることが望ましくあり得る。同様に、ポリマー溶液中のポリマー濃度が減少される場合、より低速度およびより短い回転時間が使用され得る。
【0117】
付与後、ポリマーコーティングは、次いで、基板表面上で硬化される。硬化は、代表的には、コーティングされた基板を加熱することにより行われる。好ましいプロセスにおいて、硬化プロセスは、2工程加熱プロセスを含む。第1の工程は、コーティングされた基板を「軟焼成(soft-bake)」加熱し、ポリマーコーティングに最初の硬化をさせることを含む。この軟焼成工程は、代表的には、比較的低温で比較的短時間(すなわち、85℃で5分間)行う。硬化プロセスの第2の工程は、ポリマーコーティングの最終硬化であり、これは、代表的には、より高温でより長時間(すなわち、220〜360℃、約60分間)行われる。好ましい局面において、基板の背面に付与されるポリマーコーティングは、厚さ約1〜約50μm、より好ましくは、約5〜約20μmであり、厚さ約10μmのポリマーコーティングが最も好ましい。
【0118】
次いで、背面をコーティングされた基板は、上記方法に従って、誘導体化(derivitization)、リンスおよび焼成に供される。
【0119】
前述のように、本発明のバッチ様式局面における光分解工程およびモノマー付加工程は、別々の単位操作で実施される。光分解工程と化学工程とを分離することにより、光分解装置の設計をより簡略化することが可能となる。特に、この装置はフローセルを使用する必要がない。さらに、この装置は、フローセルのより良好な充填を可能にする特定の配向を使用する必要がない。従って、この装置は、代表的には、光分解中に基板およびマスクを固定するための1つ以上の載置フレーム、ならびに光源を組み込む。デバイスはまた、マスクを通して、および基板の合成表面に光源を指向するための集光光学系、ミラーなどを含む。上記のように、基板はまた、光源からの光が、基板を通過する前に基板の合成表面に衝突するように、デバイスに配置される。上記のように、これを「前面」露光と呼ぶ。
【0120】
代表的には、光分解工程は、代表的な化学工程よりはるかに短い時間(例えば、10分間と比較して60秒間)を必要とする。従って、光分解工程および化学工程が組み合わされる個々のプロセシング様式において、光分解機械装置は、化学工程の間、長時間アイドリングしている。一方、バッチ様式操作は、その他の基板が特定の化学工程を受ける間に、多数の基板が光分解されることを可能にする。例えば、多数の基板ウエハは、所定の光分解工程のために露光され得る。光分解後、いくつかの基板ウエハは、モノマー付加工程のために多数の反応チャンバに移動され得る。モノマー付加が行われながら、さらなる基板ウエハは光分解を受け得る。
【0121】
図6Aは、多数の別の基板において、平行して同時にモノマー付加工程を実施するための、反応チャンバのバンクを模式的に示す。示すように、反応チャンバのバンクは、いくつかの反応チャンバのそれぞれにおいて同一の合成工程を同時に行うように構成される。各反応チャンバ602は、種々の流体を反応チャンバ中、および反応チャンバを通して流動させるための、流体入口604および出口606を備えている。各チャンバの流体入口は、一般に、全ての反応チャンバに連結するマニホールド608、平行して、単一のバルブアセンブリ610に流体連通している。代表的には、装置のこの局面のために、回転バルブが好ましい。バルブアセンブリにより、マニホールドが複数の試薬容器612〜622の1つに流体連通することが可能となる。種々の試薬を反応チャンバに送達するためのポンプ624もまた含まれる。同一の合成工程を平行して行うように最初に記載したが、反応チャンバのバンクはまた、複数の独立した化学工程を実施するために容易に改変し得た。反応チャンバ602からの出口ポート606は、代表的には、廃棄容器(図示せず)に流体連通している。
【0122】
図6Bは、バッチプロセスの化学工程(例えば、モノマー付加)を実施するための、単一の反応チャンバの模式図を示す。示すように、反応チャンバは、「クラムシェル(clam-shell)」設計を使用し、ここで基板は、ドア652が装置の本体654に対して閉じられている場合、反応チャンバ602に囲まれている。より詳細には、基板ウエハ660は、チャンバドア上に載置され、例えば、真空溝670として示される真空チャックにより、その位置に保持される。ドア652が閉じている場合、基板ウエハ668は、デバイスの本体上のリアクターキャビティ656に配置される。リアクターキャビティは、ガスケット658により囲まれており、これにより、ドアが閉じている場合の反応チャンバのシールが提供される。一旦ドアを閉じると、基板ウエハは、ガスケットに押し付けられ、この接触圧力により、反応チャンバがシールされる。反応チャンバは、モノマー溶液を反応チャンバ中、および反応チャンバ外に流動させるための、流体入口604および流体出口606を含む。
【0123】
装置はまた、シール状態の反応チャンバを固定するためのラッチ666を含む。一旦シールされると、試薬は、流体入口662を通って反応チャンバ中に、そして流体出口664を通って反応チャンバの外へ送達される。反応チャンバはまた、代表的には、反応チャンバを最適合成温度に維持するための温度制御要素を含む。示すように、反応チャンバは、基板ウエハを真空溝670上に整列させるための自動整列ピン672(例えば、ソレノイドまたはサーボで操作される)を含む。
【0124】
モノマー付加工程後、基板ウエハは、それぞれさらなる光分解工程に供される。プロセスは、一般に、特定の化学工程の間、ウエハの新しいシリーズが光分解工程に供されることにより、時間が定められる。これにより、プロセスのスループットが劇的に増加する。
【0125】
基板ウエハ上での所望のポリマーの全合成後、不変の保護基(例えば、各合成工程の間に除去されなかった保護基)は、代表的には、合成オリゴヌクレオチドの核酸塩基およびホスフェート骨格上に残存する。これらの保護基の除去は、通常、水性水酸化アンモニウムの濃縮溶液を用いて達成される。この方法は、保護基の除去に有効であるが、これらの条件はまた、オリゴシラン誘導体とサポートに結合した官能化シラン誘導体との間のエステル結合を加水分解することにより、サポート(通常、多孔性シリカ粒子)から合成オリゴマーを切断し得る。VLSIPSオリゴヌクレオチドアレイにおいて、最終脱保護工程後にオリゴヌクレオチドをガラスに連結する結合を保存することが望ましい。この理由のため、合成は、ヒドロキシアルキル-トリアルコキシシラン(例えば、ビス(ヒドロキシエチル)アミノプロピルシラン)を用いて誘導体化されたガラス上で直接行われる。しかし、これらのサポートは、脱保護に使用されるアルカリ加水分解条件に対して完全に安定ではない。時間に依存して、長期間水性アンモニア中に残る基板は、シラン結合相に対する水酸化物イオンの攻撃により、プローブの損失を被り得る。
【0126】
従って、好ましい実施態様において、ポリマー配列の最終脱保護は、無水有機アミンを用いて実施される。特に、1級および2級アルキルアミンを用いて最終脱保護が行われる。アルキルアミンは、無希釈または有機溶媒(例えば、エタノール、アセトニトリルなど)の溶液で使用され得る。代表的には、アルキルアミン溶液は、少なくとも約50%アルキルアミン(v/v)である。種々の1級および2級アミンが、脱保護における使用に適し、アンモニア、単純な低分子量(C1-4)アルキルアミン、および置換アルキルアミン(例えば、エタノールアミンおよびエチレンジアミン)を含む。脱保護剤の除去がエバポレートにより行われる場合、より揮発性のアミンが好ましく、一方、脱保護剤の含有を維持することが望ましい場合、および溶液が繰り返し脱保護に使用される場合は、より揮発性の低いアミンが好ましい。エタノールアミンまたはエチレンジアミンのエタノール溶液は、溶液中で合成オリゴヌクレオチドを脱保護する際に使用されている。Barnettら、Tet.Lett.(1981)22:991-994、Polushinら、(1991)N.A.R.Symp.Ser.No.24:49-50およびHogrefeら、N.A.R.(1993)21:2031-2038を参照のこと。
【0127】
除去される保護基に依存して、これらの溶液中での完全な脱保護に必要な時間は、「速い」塩基−保護基(例えば、PACまたはDMF保護A、CまたはGおよびIbu保護C)について数分から標準的な保護基(例えば、ベンゾイル保護A、CまたはGおよびIbu保護G)について数時間の範囲である。比較して、速い保護基でさえ、水性アンモニア中での完全な除去に4〜8時間必要である。この時間中、顕著な割合(例えば、20〜80%)のプローブが、シラン層の加水分解切断によりガラス基板から切断され、一方、50%エタノール性エチレンジアミン溶液に対する48時間の曝露後、95%のプローブが基板上に残存する。
【0128】
VI.プローブアレイカートリッジのアセンブリ
合成、最終脱保護および他の仕上げ工程(例えば、必要であれば、ポリマーコート除去)後、基板ウエハは、個々の基板セグメントとして使用するためにアセンブルされる。アセンブリは、代表的には、基板ウエハを個々の基板セグメントに分離する工程、およびこれらの個々のセグメントをハウジングに挿入または取り付ける工程を使用する。このハウジングは、基板セグメントの前面(例えば、その上で合成されたポリマーを有する表面)と流体連通している反応チャンバを含む。
【0129】
基板ウエハを分離しパッケージする方法は、発行されたPCT出願第95/33846号(これは、全ての目的のためにその全体が本明細書中に参考として援用される)に実質的に詳細に記載されている。
【0130】
代表的には、アレイは、格子パターンで基板ウエハ上に合成され、各アレイは、化合物が合成されていないブランク領域により、互いのアレイから分離されている。これらの分離領域は、「ストリート」と呼ばれる。ウエハは、代表的には、これらのストリートに位置する多数の整列マークを含む。これらのマークは、多数の目的(上記のようにアレイの合成中にマスクを整列させること、ウエハを個々のチップに分離し、そして各チップを次の使用のためにそれぞれのハウジングに配置すること、これらは、両方とも、以下に詳細に記載される)に役立つ。これらの整列マークを含むウエハの説明を、図7に示す。示すように、基板ウエハ700は、ストリート720により分離された個々のアレイ710を含みおよび整列マーク730を含む。
【0131】
一般に、基板ウエハは、半導体製造産業で周知のスクライブおよびブレイク方法を用いて、多数の個々の基板に分離され得る。例えば、周知のスクライブおよびブレイクデバイス(例えば、完全にプログラム可能なコンピューター制御スクライブおよびブレイクデバイス(例えば、Dynatex InternationalTMにより製造されるDX-III Scriber-Breaker、またはLoomis Industriesにより製造されるLCD-1スクライバー/ダイサー))は、分離工程を実施するために使用され得る。工程は、代表的には、所望の分離点(例えば、基板ウエハ表面上の個々の合成アレイ間)に沿ってスクライブすること、続いてスクライブ線に沿ってブレイク力を付与することを含む。例えば、代表的なスクライブおよびブレイクデバイスは、衝撃棒を用いてスクライブ線に沿ってウエハの底面をたたくか、または3点ビーム基板屈曲操作を用いることにより、ウエハをブレイクする。衝撃棒からの衝撃は、スクライブ線に沿ってウエハを割る。インパルスバーにより付与された大部分の力は、スクライブ線に沿って拡散するので、デバイスは、基板自体に顕著な力を作用させることなく高いブレイク力を提供し得、個々のチップを損傷することなくウエハの分離が可能となる。
【0132】
別の方法において、ウエハは、例えば、米国特許第4,016,855号に記載のようなソーイング方法により、個々のセグメントに分離され得る。
【0133】
一旦ウエハが個々のセグメントに分離されると、これらのセグメントは、アレイが使用される特定の分析に適したハウジングにアセンブルされ得る。基板セグメントまたはアレイをカートリッジにアセンブルする方法およびデバイスの例は、例えば、米国特許出願第08/485,452号(先に参考として援用した)に記載されている。代表的には、ハウジングは、その中に配置されたキャビティを有する本体を含む。基板セグメントは、本体上のキャビティを覆って載置され、その結果、セグメントの前面(例えば、ポリマーが合成される側)は、キャビティと流体連通している。キャビティの底部は、必要に応じて、検出システムによる画像形成中に衝突する光が散乱または反射されるのを防止するために、光吸収材料(例えば、ガラスフィルターまたは炭素染料)を含み得る。この特徴は、所望でない反射光の潜像を顕著に減少させることにより、このようなシステムのシグナル−ノイズ比を改善する。
【0134】
カートリッジはまた、代表的には、流体をキャビティ中およびキャビティを通して流動させるために、流体入口および流体出口を含む。セプタム、プラグ、または他のシールは、キャビティ中の流体をシールするために入口および/または出口を通じて使用され得る。カートリッジはまた、代表的には、アセンブリデバイス、ハイブリダイゼーションステーション、およびリーダーデバイスにおけるカートリッジの正確な挿入および/または整列を確実にするために、整列構造体(例えば、整列ピン、整列孔、および/または非対称形状)を含む。
【0135】
アレイカートリッジの1つの実施態様の説明を、図8に示す。図8は、アレイカートリッジ800の上面図802、端面図804、側面図806および底面図808を示す。アレイカートリッジの本体は、一般に、多数の製造技術を用いて作製される1つ以上の部品またはキャスティング810〜814から組み立てられ得る。好ましい局面において、カートリッジは、2つ以上の射出成型プラスチック部品から組み立てられる。射出成型により、部品を安価に製造することが可能となる。また、2つの部品からカートリッジをアセンブルすることにより、種々の特徴を有する構成(例えば、流体をキャビティに導入するための内部チャネル)が簡略化される。結果として、カートリッジは、比較的低コストで製造し得る。
【0136】
カートリッジの上面図および底面図は、整列構造(例えば、整列孔816および818)を含む。示すように、これらの整列孔は、カートリッジの本体中に配置されるが、当業者は、他の整列構造(例えば、整列ピンなど)が等しく有用であることを理解する。底面図808に示すように、整列孔816および818はまた、ハイブリダイゼーションステーションに補助整列ピンを挿入するのを補助するために、環状の傾斜した領域を含む。
【0137】
カートリッジ800の上面図802を参照して、キャビティ820は、平坦底部周囲部分822、平坦底部周囲部分から伸びる傾斜部分824、および傾斜部分を取り囲む平坦上部部分826を含む。アレイは、平坦底部周囲部分822に横たわる外側周囲を含む。傾斜部分は、平坦底部周囲部分822上にチップを整列させる。示すように、上部ケース814は、中部ケース812および底部ケース810それぞれの外側に伸び、非同一平面(nonflush)エッジ828を提供する。整列構造816および818、ならびに非同一平面エッジ828は、ハイブリダイゼーションステーションにおけるカートリッジ、ならびにポリマーアレイの製造および読み出しに使用される他のデバイスの適切な配向を確実にする。環状くぼみ817および819が、それぞれ載置される構造816および818を取り囲み、これらは、カートリッジを種々のデバイス上の補助載置構造に案内するのを補助する。
【0138】
底面図808に示すように、カートリッジは、入口ポート830および出口ポート834を含み、これらは、そこを通って流体が流動するのを補助するために、それぞれ、これらのポートを取り囲む傾斜した環状領域832および836を含む。代表的には、入口ポートおよび出口ポートは、ポートを交差して配置されるセプタム(図示せず)を含む。底部ケース810はまた、アレイに隣接して位置するキャビティ838を含み、このキャビティは、温度モニターおよび/または制御デバイスを収容するように適合され得る。示すように、キャビティ838は、それを取り囲む環状くぼみ領域839を有し、温度コントローラーが最も容易に挿入され得ることを確実にする。
【0139】
アレイキャビティ820は、好ましくは、底部ケースの中心に位置するが、他の位置でもあり得る。キャビティは、円形、正方形、長方形、または任意の他の形、および向きであり得る。キャビティは、好ましくは、その上に配置されるチップの表面積よりも小さく、ハイブリダイゼーションなどを行うのに十分な体積を有する。一実施態様では、キャビティは、長さ約0.6インチ、幅約0.6インチそして深さ約0.07インチのような寸法を有する。
【0140】
好ましい実施態様では、選択されたキャビティ寸法を有する底部ケースは、中間部および上部ケースから外し得、そして異なるキャビティ寸法を有する他の底部ケースに取り替え得る。これは、使用者が、底部ケースを変えることによって、異なる大きさまたは形を有するチップを取り付けることを可能にし、それによって、異なるチップの大きさ、形などを使用する容易さを供給する。当然、キャビティの大きさ、形および向きは、特定の応用に依存する。カートリッジの本体は、一般に、多くの製造技術を用いて作られる一つ以上の部材から組立てられ得る。好ましい局面では、カートリッジは、二つ以上の射出成形プラスチック部材から組立てられ得る。射出成形は、形成されるケースを安価にし得る。また、カートリッジを二つの部材から組立てることは、種々の特徴の構造(例えば、流体をキャビティに入れるための内部チャネル)を単純にする。その結果、カートリッジは、比較的、低コストで製造され得る。
【0141】
基板セグメントは、種々の方法を用いて、カートリッジの本体に取り付け得る。好ましい局面では、基板は、接着剤を用いて取り付けられる。好ましい接着剤は、カートリッジが供される条件下での劣化に耐性がある。特に好ましい局面では、紫外線硬化接着剤が、基板セグメントをカートリッジに付着する。基板セグメントを付着する装置および方法が、PCT出願公報第95/33846号に記載されており、好ましく参考として援用される。特に好ましい接着剤は、種々の販売元(Loctite Corp.およびDymax Corp.を含む)から市販されている。
【0142】
一般に本明細書で記載される組み立て方法および装置において、種々の改変が援用され得、そして、これらはまた、PCT出願公報第95/33846号により詳細に概要が載っている。
【0143】
完成後、カートリッジ化された基板は、種々の用途を有する。例えば、カートリッジは、ハイブリダイゼーション("SBW")方法による種々の配列決定、配列検査方法、診断方法などに使用され得る。特に、配列検査およびSBH方法に適切なアレイは、例えば、米国特許出願第08/505,919号(1995年6月24日出願)、同第08/441,887(1995年5月16日出願)、同07/972,007号(1992年11月5日出願)に記載されており、これらは何れも、本明細書中で全ての目的のためにその全体が参考として援用される。
【0144】
典型的には、これらの方法の実行において、カートリッジ化された基板は、それが流体送達システムに連結されるハイブリダイゼーションステーション上に据えつけられる。流体送達システムは、針をそこに配置された隔壁を経て入口ポートおよび出口ポートに挿入することによってカートリッジに連結される。このようにして、ハイブリダイゼーションプロセスの間に、基板セグメントの前部面で合成されるプローブに接触するために、種々の流体が、キャビティ内に導入される。
【0145】
通常、ハイブリダイゼーションは、まず、試料をプレハイブリダイゼーション溶液に曝すことによって、行われる。次に、試料は、結合条件下、適切な結合時間の間、分析されるべき試料溶液とインキュベートされる。試料溶液は、通常、標的分子(例えば、研究者がそれの存在または配列に興味を持つ標的核酸)を含む。結合条件は、適用に依存して変わり、そして以下で言及されている方法を含む公知の通常の結合方法に従って選択される:Maniatisら,Molecular Clonlng:A Laboratory Manual(1989),第2版,Cold Spring Harbor,N.Y.およびBergerおよびKimmel,Methods in Enzymology,第152巻,Guide to Molecular Cloning techniques(1987),Academic Press,Inc.,San Diego,CA.;YoungおよびDavis(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)80:1194、これらは、本明細書中で参考として援用される。ある実施態様では、溶液は、約1モル濃度の塩および約1〜50ナノモル濃度の標的を含み得る。任意には、流体送達システムは、キャビティ内の混合を改良する撹拌器を含み、これは、インキュベーション時間を短縮する。最後に、試料は、非結合の標的を除去するために、緩衝液(これは、6XSSPE緩衝液であり得る)で洗浄される。ある実施態様では、試料洗浄の後、キャビティは、緩衝液で満たされる。
【0146】
ハイブリダイゼーションおよび適切なリンス/洗浄後、カートリッジ化された基板は、検出または画像形成システム(例えば、米国特許第5,143,854号(Pirungら)または米国特許出願第08/195,889号(1994年2月10日出願)、同第08/465,782号(1995年6月6日出願)、同第号08/456,598(1995年6月1日)に開示されているシステム:これらは、本明細書中で全ての目的のために参考として援用される)上に配列され得る。そのような検出システムは、特にカートリッジの形に合うホルダーを使用することによるカートリッジの非対称性(すなわち、非フラッシュ端(non-flush edge))を利用し得る。従って、カートリッジは、走査のために適切な向きおよび並びを保障される。画像形成システムは、プローブと標的との間の反応を定性分析し得る。この分析に基づいて、標的の配列情報が抽出される。
【0147】
VII.実施例
実施例1 前面および背面光分解の比較
2つの基板ウェハをストリッピングし、シラン化し(silanate)、そして光保護した。基板を短面で50および100μmの長方形の形を有するマスクを通し、使用した光保護基の13半減期について光分解した。第1の基板は、ウェハの背面(すなわち、合成表面が光分解光源から離れている)から光分解した。第2の基板は、前面(すなわち、合成面が光源およびマスクに面している)から光分解した。次いで、両方の基板を、蛍光性5'保護ホスホルアミダイトを基板の表面にカップリングする同一のカップリング反応に供した。
【0148】
図8Aおよび8Bは、それぞれ、背面曝露合成および前面曝露合成の間のコントラストの違いを示す。図9Aは、活性化光が基板の背面を通して示される、50μmおよび100μmの大きさの形質(feature)を有するマスクを用いたフォトリソグラフィー技術を用いて、基板の表面に直接カップリングされた蛍光性基を有する基板の蛍光走査を示す。図9Bは、活性化光が基板の前面にあてられる同じ合成を示す。個々の形質の鮮明度は、この前面光分解を用いて、大きく高められる。
【0149】
図9Cおよび9Dは、背面法と前面法とを用いて合成された形質の間のコントラストの違いの図示を示す。特に、前面曝露は、かなりより鮮明なコントラストおよびより大きい形質の鮮明度を与える。このより大きな鮮明度は、曝露の間、ブリードオーバー(bleed over)効果を減ずることによるかなりより小さな形質の大きさを許容する。前面の曝露の結果、光分解の間、合成表面が外界条件に供されるが、これは、合成において任意の有害な効果を有することは見出されていない。
【0150】
実施例2 エタノールアミンおよびエチレンジアミンによる最終的な脱保護
標準プロトコルに従って、1-8量体(mer)オリゴヌクレオチドプローブをビス(2-ヒドロキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシランで誘導体化されたガラス基板上で合成した。各々の場合、オリゴヌクレオチド配列化の前にヘキサエチレングリコールベースのスペーサーのホスホルアミダイト(phosphoramidite)を表面にカップリングし、そして、通常、チェッカー盤模様で、フルオレセインベースの「タグ(tag)」ホスホルアミダイトをオリゴヌクレオチドの5'末端にカップリングした。これは、表面蛍光の減少を確認することによって、基板からのプローブの損失の監視を可能にする。基板は、密封容器中で、濃アンモニア水または50%エタノール性エタノールアミン、または50%エタノール性エチレンジアミンの何れかに浸される。特定の時間で、基板を取り出し、水で洗浄し、そしてリン酸緩衝液pH7.2に対して表面蛍光イメージを得た。各走査後、基板を再び洗浄し、不活性雰囲気(N2)で乾燥し、そして脱保護溶液に戻した。アンモニア水脱保護溶液中に浸された基板の表面蛍光は、半減期8〜10時間で崩壊した。エタノール性アミン溶液中2日後、わずか5%の表面蛍光の崩壊が観察された。
【0151】
実施例3 シラン化の方法および試薬の比較
比較のために、溶液相堆積方法を用いて多くのシランでガラス基板を誘導体化した。平均官能基表面密度を蛍光染色により比較した。オリゴヌクレオチド合成に関する性能を、基板上に10量体のプローブ配列を合成し、脱保護し、そしてそれらを標準フルオレセインラベル化オリゴヌクレオチド標的にハイブリダイズすることによって比較した。全ての場合において、標準オリゴヌクリオチド合成サイクル(カップリング−キャップ−酸化)を使用したが、平面基板についてフローセルへの試薬の送達を可能にするために若干の改変をした。
【0152】
Huls Americaから入手の以下のシランを試験した:
3-アセトキシプロピルトリメトキシシラン(「OAc」);
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(「エポキシ」);
4-(ヒドロキシブチルアミド)プロピルトリエトキシシラン(「モノ」);
3-アミノプロピルトリエトキシシラン(「APS」);および
3-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン(「ビ ス」)
予備洗浄基材を、5%水、95%エタノール中のシランの1%溶液に、5分間、軽く撹拌しながら浸した。次いで、基板をアルコールで完全にリンスし、N2下で乾燥し、そして、100℃で15分間処理した。使用前に、アセトキシプロピルシラン化基板を50%エタノール性エタノールアミン中に2時間浸し、次いで、リンスし、そして乾燥した。同様に、グリシドキシプロピルシラン化基板を0.1M水性Hcl中に2時間浸し、リンスし、乾燥した。すべての他の基板は、さらに処理することなしに使用した。
【0153】
次いで、官能基密度を、蛍光染色により測定した。特に、MeNPOC-ヘキサエチレングリコール−シアノエチルホスホルアミダイトを基板にカップリングし、次いで未反応面を(MeO)2PNiPr2でキャップした。表面の一部に、フォトリソグラフィーマスクを通して300秒間、365nm(15mW/cm2)にて照射し、MeNPOC保護基を除去した。次いで、遊離のヒドロキシルをフルオレセインホスホルアミダイト(FluoreprimeTM,Pharmacia Biotech)でラベル化した。次いで、基板を50%エタノール性エチレンジアミンで脱保護し、そして表面蛍光を走査レーザー共焦点顕微鏡で測定した。
【0154】
10量体オリゴヌクレオチドプローブ配列(5'-TACCGTTCAG-3')を、各基板の選択された領域上に光指向合成を用いて合成した。50%エタノール性エチレンジアミン中での脱保護の後、基板を相補的フルオレセインラベル化オリゴヌクレオチド標的の溶液(5XSSPE緩衝液中の10nMオリゴヌクレオチド)中で6時間インキュベートした。基板を一度5XSSPEで簡単に洗浄した後、全表面ハイブリダイズした標的オリゴヌクレオチドを走査レーザー共焦点顕微鏡で定量化した。染色およびハイブリダイゼーションデータを図10に要約する。これは、上記の各シラン試薬を用いたガラス基板の効果的シラン化を示す。
【0155】
実施例4 保護基のヒドロシル化基板への直接移動
MeNPOC-テトラゾライドの合成を以下のように行った:テトラゾール((7.0g);100mmol)をTHF100ml中のDIEA(13g、100mmol)17.5mlと合わせ、そしてTHF100ml中のMeNPOC-クロライド(Peaseら前出参照)30g(110mmol)の溶液を、アルゴン下、40℃で撹拌しながら、20分かけて滴下した。撹拌を室温でさらに1時間続けた。次いで、ヘキサン200mlを添加した。沈澱物を濾過により収集し、DCM 200ml中に再溶解し、そして0.05Mの水性HCLで3回洗浄し、DIEA・HClを除去した。有機層をNaSO4で乾燥し、エバポレートし、純粋な生成物24.5g(80%)を得た。これを1H-NMR、IRおよびマススペクトルで同定した。
【0156】
MeNPOC-テトラゾライドを用いたヒドロキシル化基板へのMeNPOC移動を以下のように行った:当該分野に記載されている方法(例えばPeaseら、前出)を用いて、ヒドロキシル化ガラス基板を、ビス-(ヒドロキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシランでガラスをシラン化することによって調製し、次いでリンカーのホスホルアミダイト(MeNPOC-ヘキサエチレングリコールシアノエチルホスホルアミダイト)を標準カップリング−キャップ−酸化サイクルを用いて基板に付加した。次いで、基板を光(365nm、25mW/cm2、240秒間)に曝露し、MeNPOC保護基をリンカーから除去した。遊離のヒドロキシル化リンカー基板を、10%v/v 2,6-ルチジン上5%w/v NMIまたはDMAP活性化剤を含むACN中のMeNPOC-テトラゾライド(0.2M)の新鮮な混合溶液に曝した。種々の時間後、MeNPOC-テトラゾライド溶液を除去し、そしてN,N-ジイソプロピル-ジメチルホスホルアミダイトを、標準カップリング−キャップ−酸化サイクルを用いて、任意の未反応のヒドロキシル基をキャップするために添加した。MeNPOC移動の程度を評価するために、基板を再度光分解し、そして再曝露ヒドロキシルを蛍光ホスホルアミダイト(FluoreprimeTM、Pharmaica Biotech)と反応させ、同じカップリング−キャップ−酸化プロトコルで添加した。最後に、基板を50%エタノール化エタノールアミンで脱保護し、そして平均表面蛍光を走査レーザー共焦点顕微鏡で測定した。図11は、MeNPOCテトラゾライドを用いた再保護の程度を時間と触媒との関数として示す。
【0157】
上記の発明は、明瞭化および理解の目的のために任意に詳細に記述したが、本開示を読むことにより、形式および詳細における種々の改変が本発明の真の範囲から逸脱することなく行い得ることは、当業者には明白である。本出願で引用された全ての出版物および特許文献は、それらの全体が全ての目的に同じ程度で各個々の出版物または特許文献が個々に引用されるように参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】図1は、フォトリソグラフ法を用いる光指向性オリゴヌクレオチド合成を模式的に示す。
【図2A】図2A〜Cは、基板調製の全プロセスを例示する流れ図である。図2Aは、全プロセスを例示する流れ図である。
【図2B−2C】図2Bおよび2Cは、それぞれ、個別プロセス(individual process)およびバッチ式プロセスに対する合成工程の流れ図である。
【図3A】図3Aは、本発明の方法に使用される複合(combine)光分解/化学工程を行うための別のリアクターシステムの模式図を示す。
【図3B】図3Bは、本発明の方法に使用される複合(combine)光分解/化学工程を行うための別のリアクターシステムの模式図を示す。
【図4A】図4Aは、図3Aおよび3Bのリアクターシステムに組み込まれるフローセルの異なる部分図(isolated view)を模式的に示す。
【図4B】図4Bは、図3Aおよび3Bのリアクターシステムに組み込まれるフローセルの異なる部分図(isolated view)を模式的に示す。
【図4C】図4Cは、コンピューターコントロールエレメントおよび基板移動エレメントを含むリアクターシステム全体の模式図を示す。
【図5A】図5Aは、ジメトキシトリチルクロライド(DMT-Cl)によるデオキシグアノシンの環外アミン官能基のアルキル化、およびその後の、ヌクレオシドホスホルアミダイトの3’ヒドロキシル基へのMenPOC保護基のカップリングを示す。
【図5B】図5Bは、Fmoc-ホスホルアミダイトの製造のための合成経路を示す。
【図5C】図5Cは、親油性置換基を光保護基MeNPOCに導入するための合成経路を示す。
【図6A】図6Aは、オリゴヌクレオチドアレイの光指向性合成における光分解工程とは別の複数の平行モノマー付加工程を行うための6つの容器反応チャンババンクを備えるデバイスの模式図を示す。
【図6B】図6Bは、単一の反応チャンバの詳細な図を示す。
【図7】図7は、複数のプローブアレイを用いて製造された基板ウエハを例示する。このウエハはまた、整列マーク(alignment mark)を含む。
【図8】図8は、その中にアレイ基板が使用のために配置されるアレイカートリッジの1つの実施態様を示す。
【図9A】図9Aは、背面および前面曝露をそれぞれ用いて50μmおよび100μmの形質(feature)でフォトリソグラフ法を使用する、基板表面への蛍光ヌクレオチドのカップリングを示す。
【図9B】図9Bは、背面および前面曝露をそれぞれ用いて50μmおよび100μmの形質(feature)でフォトリソグラフ法を使用する、基板表面への蛍光ヌクレオチドのカップリングを示す。
【図9C】図9Cおよび9Dは、示されたような背面および前面曝露用の2つの形質の間の境界での基板位置の関数としての、蛍光強度のプロットを示す。図9Cは、そのプロットの上面図からのコントラストの相違を例示し、一方、図9Dは側面図を示す。
【図9D】図9Cおよび9Dは、示されたような背面および前面曝露用の2つの形質の間の境界での基板位置の関数としての、蛍光強度のプロットを示す。図9Cは、そのプロットの上面図からのコントラストの相違を例示し、一方、図9Dは側面図を示す。
【図10】図10は、5つの異なるシランを用いて、ガラス基板の表面を誘導体化するシラン化法の比較を示す棒グラフである(3-アセトキシプロピルトリメトキシシラン(「OAc」);3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(「Epoxy」);4-(ヒドロキシブチルアミド)プロピルトリエトキシシラン(「Mono」);3-アミノプロピルトリエトキシシラン(「APS」);および3-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノプロピル;トリエトキシシラン(「bis」)。これらのシランを用いて誘導体化された基板表面上でのオリゴヌクレオチド合成後の標準的ハイブリダイゼーション実験の蛍光染色(黒色)および蛍光強度(灰色)により示されるような、反応性基の表面密度が示される。
【図11】図11は、MnNPOC-テトラゾリドを用いるガラス基板上の脱保護されたヒドロキシル基の再保護を、MeNPOC-テトラゾリドへの曝露時間および触媒の添加の関数として示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上にポリマーのアレイを形成する方法であって: 感光性保護基で保護された官能基でコーティングされた第1の表面を有する基板、およびその上に配置された層を有する第2の表面を提供する工程であって、該層が1以上の屈折率適合化合物、光吸収化合物および反射防止化合物を含む、工程;および 該基板の、異なる選択された領域中でモノマーを連続的に活性化し、そしてカップリングして複数の異なるポリマー配列を、該基板の該表面上の異なる既知の位置に形成し、ここで該活性化工程が、活性化放射線を該基板の該第1の表面に向けることを含む、工程 を包含する、方法。
【請求項2】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、屈折率適合化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、反射防止化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、屈折率適合化合物および光吸収化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、ポリイミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の異なるポリマー配列が、複数の異なるオリゴヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の個別のポリマーアレイを形成する方法であって: 複数の基板ウエハを提供する工程であって、該基板ウエハのそれぞれが第1の表面を有し、該第1の表面が、その上に配置された官能基を有し、該官能基が除去可能な保護基で保護されている、工程;
該基板ウエハのそれぞれの該第1の表面上の複数の第1の選択された領域を、活性化ステーションにおける活性化剤に曝露して、該第1の選択された領域中の該官能基から該除去可能な保護基を除去する工程;
該基板ウエハをバッチ式に、カップリングステーションに、第1に移動する工程;
該複数のウエハを、該カップリングステーションにおいて、モノマー含有溶液に接触させて、第1の選択されたモノマーを、該複数の基板ウエハの該表面上の該選択された領域の該官能基にカップリングする工程;
該基板ウエハを、バッチ式に該活性化ステーションに第1に返す工程;
該基板ウエハのそれぞれの該第1の表面上の複数の第2の選択された領域を、該活性化ステーションにおける活性化剤に曝露して、該第2の選択された領域中の該官能基から該除去可能な保護基を除去する工程;
該基板ウエハをバッチ式に、該カップリングステーションに、第2に移動する工程;
該複数のウエハを、該カップリングステーションにおいて、モノマー含有溶液に接触させて、第2の選択されたモノマーを、該複数の基板ウエハの該表面上の該選択された領域の該官能基にカップリングする工程;
該曝露工程および接触工程を繰り返して、複数の個別のポリマーアレイを、該基板ウエハのそれぞれの該第1の表面上に形成する工程;
を包含する、方法。
【請求項8】
前記接触工程が、同時に、前記複数の基板ウエハを、前記モノマー含有溶液に接触させることを包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記除去可能な保護基が、感光性保護基であり、そして前記活性化剤が光である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記曝露工程が、同時に、前記複数の基板ウエハの少なくとも第1を、第1のモノマーを含有する溶液に接触させること、および該複数の基板ウエハの第2を第2のモノマーを含有する溶液に接触させることを包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記活性化剤が、活性化放射線を含み、そして前記曝露工程が、該活性化放射線を前記複数の基板ウエハの前記第1の表面に向けることを含み、そしてここで、該複数の基板ウエハの第2の表面が、その上に配置された、1以上の屈折率適合化合物、光吸収化合物および反射防止化合物の層を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、屈折率適合化合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、反射防止化合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、屈折率適合化合物および光吸収化合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、ポリイミドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の異なるポリマー配列が、複数の異なるオリゴヌクレオチド配列を含む請求項7に記載の方法。
【請求項17】
基板の表面にポリマーのアレイを形成する方法であって: 該基板の該表面をアミノアルキルトリアルコキシシランの溶液に接触させることにより、該基板の該表面を誘導体化して、アミン官能基を該基板の該第1の表面の上に提供する工程;
該官能基を保護基で保護する工程;
該第1の選択された領域中の該官能基から該保護基を除去することにより、該基板の該第1の表面上の第1の選択された領域を活性化する工程;
該第1の選択された領域中の該官能基に、第1のモノマーをカップリングする工程;
該第2の選択された領域中の該官能基から該保護基を除去することにより、該基板の該第1の表面上の第2の選択された領域を活性化する工程;
該第2の選択された領域中の該官能基に、第2のモノマーをカップリングする工程;
該活性化工程およびカップリング工程を繰り返して複数の異なるポリマー配列を形成する工程であって、該異なるポリマー配列のそれぞれが、該基板の該表面に、異なる既知の位置で、カップリングされる、工程;
を包含する、方法。
【請求項18】
前記カップリング工程でカップリングした第1および第2のモノマーが、活性なホスホルアミダイト基を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1および第2のモノマーが、ヌクレオシドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記アミノアルキルトリアルコキシシランが、3-アミノプロピルトリエトキシシランおよび3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記誘導体化工程、前記基板の前記表面とアミノアルキルトリアルコキシシランの溶液との前記接触工程が、該表面上への該アミノアルキルトリアルコキシシランのコントロールされた蒸着により行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の異なるポリマー配列が、複数の異なるオリゴヌクレオチド配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
基板の表面にポリマーのアレイを形成する方法であって: 該基板の該表面をストリッピング溶液でストリッピングする工程;
該基板の該表面上に官能基を提供する工程;
該官能基を感光性保護基で保護する工程;
該基板の該第1の表面の選択された領域を、活性化放射線に曝露して、該第1の選択された領域の該官能基から該感光性保護基を除去する工程;
該第1の選択された領域中の該官能基に、第1のモノマーをカップリングする工程;
該基板ウエハの該第1の表面上の第2の選択された領域を、活性化放射線に曝露して、該第2の選択された領域中で該官能基から該感光性保護基を除去する工程;
該第2の選択された領域中の該官能基に、第2のモノマーをカップリングする工程;
該曝露工程およびカップリング工程を繰り返して複数の異なるポリマー配列を形成する工程であって、該異なるポリマー配列のそれぞれが、該基板の該表面に、異なる既知の位置で、カップリングされる、工程;
を包含する、方法。
【請求項24】
前記ストリッピング工程が、前記基板の前記表面を、濃縮されたNaOH/H2O2のストリッピング溶液に接触させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ストリッピング工程が、さらに: 前記基板の前記表面を塩基に接触させる工程;および 該基板を酸でリンスする工程 を包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
基板の表面上の選択された領域にモノマーをカップリングする方法であって: 該基板の該表面上に官能基を提供する工程であって、該官能基が光保護基で保護されている、工程;
該選択された領域を活性化放射線に曝露して、該選択された領域の該感光性保護基を除去する工程であって、該曝露工程が、フォトリソグラフィーマスクを介して、該活性化放射線を照射する(shine)ことにより、活性化放射線を該基板の該表面上の該選択された領域に向けることを包含し、該フォトリソグラフィーマスクは、透明な領域および不透明な領域を含み、該透明な領域は、該選択された領域よりも小さく、そのことにより、該活性化放射線が該マスクの該透明な領域を介して照射され、該活性化放射線が回折されて、実質的にすべての該選択された領域を曝露する、工程;および
モノマーを該選択された領域中の該官能基にカップリングさせる工程を包含する、方法。
【請求項27】
前記マスク中の前記透明領域が、前記選択された領域よりも、それぞれの寸法(dimension)において、約2%から約25%小さい、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記マスク中の前記透明領域が、前記選択された領域よりも、それぞれの寸法において、約10%から約20%小さい、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
固体基板上にポリマー配列を形成する方法であって: 該基板の該表面上に官能基を提供する工程;
該基板の該表面上の該官能基に、モノマーをカップリングする工程であって、該モノマーが、そこに反対にカップリングする化学的基を有し、それにより該化学的基が、該モノマーの親油性を増強する、工程 を包含する、方法。
【請求項30】
前記モノマーが、親油性保護基で保護されたヌクレオチドを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ヌクレオチド中の核酸塩基中の環外官能基に、前記親油性保護基がカップリングしている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記環外官能基が、DMT保護基で保護されている、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記親油性保護基が感光性保護基である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記モノマーが、ヌクレオシドFmoc-ホスホルアミダイトを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
固体サポート上で合成されたポリマー配列のアレイを脱保護する方法であって、該アレイを、置換アルキルアミンを含有する溶液と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項36】
前記置換アルキルアミンが、エタノールアミンおよびエチレンジアミンからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記置換アルキルアミンの溶液が、エタノール中のエチレンジアミンの溶液である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記アルキルアミン含有溶液が、エタノール中のエチレンジアミンの1:1溶液である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
連続的に、基板の表面の選択された領域中で、脱保護することおよびモノマーをカップリングすることにより該基板の該表面上にポリマー配列のアレイを形成して、複数の異なるポリマー配列を、該基板の該表面の異なる既知の位置に生成させる方法であって、該方法は、脱保護およびカップリング工程を、隣接した選択された領域に整列させて、該隣接する領域の間での異なる合成工程の数を最小化する工程を含む方法。
【請求項40】
ポリマー配列のアレイを形成する方法であって、ここで各ポリマー配列が、標的配列に相補的な配列に共通するモノマーのサブ配列を有し、しかしここで、該サブ配列の中の少なくとも1つのポジションが、モノマーの基本セット(basis set)の各メンバーにより置換され、該方法は、該ポリマー配列の第2のものの中の対応するモノマーと同じ合成サイクルにおける該ポリマー配列の第1のものの同じ層中のすべてのモノマーをカップリングする工程を包含する、方法。
【請求項41】
固体サポートにカップリングした官能基を光保護する方法であって、該方法は、該官能基を、以下の式を有する光保護基移動剤に曝露する工程を含み:
【化1】

ここでR1は、感光性保護基であり、そしてXは、脱離基である。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、ここでXは、以下からなる群から選択される:
【化2】

ここでR2は、アルキル、置換アルキルまたはアリール、R3は水素、アルキル、チオアルキル、アリール;R4は電子吸引性基;R5は、立体障害アルキルまたはアリール基;そしてR6は、アルキルまたはアリール基であり、該アルキルまたはアリール基は、電気陰性置換基を含む。
【請求項43】
4が、NO2、SO2-R2、およびCNからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
5が、アダマンチルおよびt-ブチルからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記電気陰性置換基が以下の群から選択される、請求項42に記載の方法:
【化3】

【請求項46】
前記R1が、NVOC、NPOC、MeNVOC、MeNPOC、PYMOC、NV、NP、MeNV、およびMeNPからなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記曝露工程が、非求核性有機溶媒および塩基触媒の存在下で行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記非求核性有機溶媒が、DMF、NMP、DCM、THF、およびACNからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記塩基触媒が、ピリジン、2,6-ルチジン、TEAおよびDIEAからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上にポリマーのアレイを形成する方法であって:
対向する側に第1の面及び第2の面を有する基板を提供する工程であって、前記第1の面は、感光性保護基で保護された官能基でコーティングされ、前記第1面に対向する第2の面は、その上に配置された被覆を有し、該被覆は、1以上の屈折率適合化合物、光吸収化合物および反射防止化合物を含む工程;および
該基板の、異なる選択された領域中でモノマーを連続的に活性化し、そしてカップリングして複数の異なるポリマー配列を、該基板の該表面上の異なる既知の位置に形成し、ここで該活性化工程が、活性化放射線を該基板の該第1の表面に向けることを含む工程
を包含する方法。
【請求項2】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、屈折率適合化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、反射防止化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、屈折率適合化合物および光吸収化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の前記第2の表面上に配置された前記層が、ポリイミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の異なるポリマー配列が、複数の異なるオリゴヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B−2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−258806(P2006−258806A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−44640(P2006−44640)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【分割の表示】特願平9−537413の分割
【原出願日】平成9年4月16日(1997.4.16)
【出願人】(399125757)アフィメトリックス インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】