説明

感圧式接着剤組成物、及びそれを用いてなる積層体

【課題】ガラス、PC(ポリカーボネート)、アクリル等の各種透明基材およびITOをはじめとする透明導電膜や金属回路などの導電部材において高い接着性を有し、高温又は高温高湿条件下においても発泡や剥がれが発生しにくい感圧式接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)とアミノ化合物(B)とを反応させてなるウレタンウレア樹脂(C)100重量部と、硬化剤(E)0.5〜10重量部とを含むことを特徴とする感圧式接着剤組成物であって、ウレタンプレポリマー(A)は、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなり、アミノ化合物(B)は、ポリアミン(c)と特定構造の不飽和化合物(d1)とをマイケル付加反応させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種被着体との接着性、耐熱性、耐湿熱性及び透明性に優れたポリウレタンを含む感圧式接着剤組成物に関し、更に詳しくは、特に導電部材または透明光学部材の積層に好適な前記ポリウレタンを含む感圧式接着剤組成物及びそれを用いてなる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクスの飛躍的な進歩により、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、リアプロジェクションディスプレイ(RPJ)、ELディスプレイ、発光ダイオ−ドディスプレイ、タッチパネルなどの様々なフラットパネルディスプレイ(FPD)が、様々な分野で表示装置として使用されるようになってきた。例えば、これらFPDは、パーソナルコンピューターのディスプレイや液晶テレビをはじめ屋内で使用されるばかりでなく、カーナビゲーション用ディスプレイ等のように車両に搭載して使用されたりする 。
【0003】
LCDを構成する液晶セル用部材には、偏光フィルムや位相差フィルムが積層されている。又、これらの表示装置には、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、表示装置の表面の傷付き防止のための保護フィルム(プロテクトフィルム)などが使用されている。更にFPDを表示装置として利用するだけではなく、それらの表面にタッチパネルの機能を設けて、入力装置としても利用されることがある。このタッチパネルにも、保護フィルム、反射防止フィルムやITO蒸着樹脂フィルムなどが使用されている。
【0004】
タッチパネルの構成において、ガラス基板又は透明樹脂基板と、ITOなどの透明導電膜や金属回路を始めとする導電部材とは、感圧式接着剤層により貼合される。このガラス基板又は透明樹脂基板/感圧式接着剤層/透明電極(導電部材)からなる積層体が、高温下、又は高温高湿条件下に置かれると、感圧式接着剤層と被着体との貼着界面に気泡が生じたり(発泡)、フィルムが被着体から浮き上がり、剥がれたりすることがある。従って、用いられる感圧式接着剤に対し、過酷な環境下でも発泡、浮き・剥がれが生じないように改良する試みが従来なされてきた。
さらに、上記感圧式接着層には、剥離方向に強い力が加わった際に剥離しない、高い接着力が要求される。
【0005】
前記表示装置に使用される種々のフィルムは、感圧式接着剤により被着体に貼着され、使用されている。表示装置に用いられるものであるから、感圧式接着剤は、まず透明性に優れることが要求されるので、アクリル系樹脂を主剤とする感圧式接着剤が一般に使用されている(特許文献1、2)。
アクリル樹脂をベースとした感圧式接着剤を使用した場合、前記導電部材との接着性を向上する為にベース樹脂に酸基を導入する必要があった。しかし、導入された酸基は被着体である導電部材を腐食し、動作不良などを引き起こし、汎用性に乏しいものであった。
【0006】
又、ウレタン樹脂をベースとする感圧式接着剤の各種用途への応用が検討されてきた。しかし、上記のような高い接着性の発現や導電部材への応用に関する検討は、これまでなされていない(特許文献3〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−45315号公報
【特許文献2】特開2008−120864号公報
【特許文献3】特開2002−38119号公報
【特許文献4】WO2007/091643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ガラス、PC(ポリカーボネート)、アクリル等の各種透明基材およびITOをはじめとする透明導電膜や金属回路などの導電部材において高い接着性を有し、高温又は高温高湿条件下においても発泡や剥がれが発生しにくい感圧式接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、第1の発明は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)とアミノ化合物(B)とを反応させてなるウレタンウレア樹脂(C)100重量部と、硬化剤(E)0.5〜10重量部とを含むことを特徴とする感圧式接着剤組成物であって、
ウレタンプレポリマー(A)が、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなり、
アミノ化合物(B)が、ポリアミン(c)と下記一般式(1)で示される化合物(d1)とをマイケル付加反応させてなることを特徴とする感圧式接着剤組成物に関する。
【0010】
一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
[式中 Rは水素原子またはメチル基であり、Rは直接結合または、−COO−もしくは−OCO−、−NRCO−、−CONR−、(Rは水素原子もしくはメチル基である)、−O−のいずれかであり、Rは式量100〜1500である、水酸基を含まない1価の基]
【0013】
また、第2の発明は、化合物(d1)が、Rが式量100〜1000の分岐アルキル基である化合物(d1−1)を含む、第1の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0014】
また、第3の発明は、化合物(d1)が、Rが式量100〜1000のポリアルキレンオキサイド構造を有し、かつ末端にアルキル基を有する1価の基である化合物(d1−2)を含む、第1または第2の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0015】
また、第4の発明は、ポリオール(a)が、ポリエーテルポリオール(a1)を含む第1〜第3いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0016】
また、第5の発明は、ポリオール(a)が、式量60〜1000のポリオール(a2)を含み、ポリエーテルポリオール(a1)と式量60〜1000のポリオール(a2)との重量比が(a1)/(a2)=0.1/0.9〜0.8/0.2(モル比)であることを特徴とする、第4の発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0017】
また、第6の発明は、前記ウレタンウレア樹脂(C)100重量部に対して、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、およびイミダゾール基を有するシランカップリング剤(F)からなる群から選ばれるいずれか1種以上を0.1〜1.0重量部含む、第1〜第5いずれかの発明の感圧式接着剤組成物に関する。
【0018】
さらに、第7の発明は、導電部材または透明光学部材上に、第1〜第6いずれかの発明の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層が積層されてなる積層体に関する。
【0019】
さらにまた、第8の発明は、前記導電部材が、透明導電膜又は金属回路である、第7の発明の積層体に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、ガラス、PC、アクリル等の各種透明基材およびITOをはじめとする透明導電膜や金属回路などの導電部材において高い接着性を有し、高温又は高温高湿条件下においても発泡や剥がれが発生しにくい感圧式接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明のウレタンウレア樹脂(C)について説明する。
ウレタンウレア樹脂(C)は、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)に、ポリアミン(c)と下記一般式(1)で表される化合物(d1)とをマイケル付加反応させて得られるアミノ化合物(B)を反応させてなる樹脂である。
【0022】
一般式(1)
【0023】
【化2】

【0024】
[式中 Rは水素原子またはメチル基であり、Rは直接結合または、−COO−もしくは−OCO−、−NRCO−、−CONR−、(Rは水素原子もしくはメチル基である)、−O−のいずれかであり、Rは式量100〜1500である、水酸基を含まない1価の基)]
【0025】
使用するポリオール(a)としてはポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、これらの共重合体、及びその他のグリコール類などが挙げられる。
【0026】
ポリエーテルポリオール(a1)としては、例えば、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン、オキサシクロブタン、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、オキサシクロヘプタン等のアルキレンオキサイドの重合体、共重合体、及びグラフト共重合体;
ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール若しくはこれらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール類などの、水酸基を2個以上有するものを用いることができる。
更に、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたグリコール類も使用することができる。
【0027】
ポリエステルポリオール類としては、例えば、多官能アルコール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールが挙げられる。
多官能アルコール成分としては、例えば、上記した2個または3個の水酸基を有するポリオール類が挙げられ、中でも、後述の、式量60〜1000のポリオール(a2)が主に用いられる。
【0028】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸が挙げられる。
【0029】
又、β−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタノラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン等のラクトン類等の、環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールも使用できる。
【0030】
ポリカーボネートポリオール類は、下記一般式(2)で示される構造を、その分子中に有するものである。
【0031】
一般式(2)
−[−O−R−O−CO−]
(式中、Rは2価の有機残基、mは1以上の整数を表す。)
【0032】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、(1)グリコール又はビスフェノールと炭酸エステルとの反応、(2)グリコール又はビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られる。
【0033】
(1)の製法で用いられる炭酸エステルとして具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0034】
(1)及び(2)の製法で用いられるグリコール又はビスフェノールとしては、上記した2個または3個の水酸基を有するポリオール類が挙げられ、中でも、後述の、式量60〜1000のポリオール(a2)が主に用いられる。
【0035】
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、クラレ株式会社のクラレポリオールCシリーズを用いることができる。そのなかでもPMHC−1050、PMHC−2050、C−1090、C−2090、C−1065N、C−2065N、C−1015N、C−2015Nは柔軟性があり、ウレタンウレア樹脂(A)の原料として、ポリエーテルポリオール骨格を有するポリオール(a1)と好ましく併用することができる。
【0036】
更に、その他のポリオール類としては、少なくとも1個のイオン性官能基を含有するポリオールを使用することもできる。イオン性官能基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、第1〜3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基、ホスホニウム基、及び第3級スルホニウム塩基などが挙げられる。
【0037】
少なくとも1個のイオン性官能基を含有するポリオールは、本発明に含まれるウレタンウレア樹脂(C)を水性化したり、ウレタンプレポリマー合成時の反応速度を速めたりする点、更には、成膜性を向上させる等の点でも好適に使用されるが、一方、ウレタンウレア樹脂(C)にイオン性基が導入されることになり、特にイオン性基が酸基の場合、透明導電膜や金属回路を腐食するおそれがある。したがって、少なくとも1個のイオン性官能基を含有するポリオールは、必要に応じて使用され、その場合でも必要量以上は使用しない方が好ましく、本発明においては全く使用しない方が特に好ましい。
【0038】
本発明のポリオール(a)は、感圧式接着剤層の耐湿熱性及び接着力などの面で、ポリエーテルポリオール(a1)を含むことが好ましい。
ポリエーテルポリオール(a1)の使用量は、接着性を十分に確保する観点から、
使用するポリオール(a)の合計100モル%中、20〜100モル%であることが好ましく、40〜100モル%がより好ましく、50〜80モル%がさらに好ましい。
【0039】
ポリオール(a)の数平均分子量は、感圧式接着剤の接着力と耐熱性の観点から、500〜4,000であることが好ましく、1,000〜3,000であることがさらに好ましい。ポリオール(a)の数平均分子量が500より小さいと、樹脂中のウレタン及びウレア結合濃度の増加を招き、接着力を低下させる場合があり、一方、4,000を超えると、感圧式接着剤に凝集力を付与するウレタン結合及びウレア結合の減少を招き、感圧式接着剤の耐熱性を損なう場合がある。
なお、ポリオール(a)の数平均分子量は、2種類以上のポリオールを併用する場合は、下記式で表される全ポリオールの分子量のモル比より算出したものとする。
【0040】
具体的には、例えば、2種類のポリオール(「ポリオール1」および「ポリオール2」)を併用する場合には、以下のように定義される。
ポリオール(a)の数平均分子量=(ポリオール1の数平均分子量×添加モル+ポリオール2の数平均分子量×添加モル)/(全ポリオールの添加モル)
【0041】
本発明のポリオール(a)は、ポリエーテルポリオール(a1)と、式量60〜1000のポリオール(a2)とを併用することが好ましい。
式量60〜1000のポリオール(a2)を併用することで、樹脂中のウレタン及びウレア結合濃度の調整や、結晶性を有する原料の結晶性抑制が可能となり透明性の高い感圧式接着剤を得ることが可能となる。
【0042】
式量60〜1000のポリオール(a2)としては、
例えば、エチレングリコール(式量62)、プロピレングリコール(式量76)、ジプロピレングリコール(式量134)、ジエチレングリコール(式量106)、トリエチレングリコール(式量150)、ブチレングリコール(式量90)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(式量118)、2−メチル−1,8−オクタンジオール(式量160)、3,3’−ジメチロールヘプタン(式量160)、ポリオキシエチレングリコール(式量150〜990)、ポリオキシプロピレングリコール(式量192〜950)、プロパンジオール(式量76)、1,3−ブタンジオール(式量90)、1,4−ブタンジオール(式量90)、1,5−ペンタンジオール(式量104)、1,6−ヘキサンジオール(式量118)、1,9−ノナンジオール(式量160)、ネオペンチルグリコール(式量104)、オクタンジオール(式量146)、ブチルエチルペンタンジオール(式量160)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(式量146)、シクロヘキサンジオール(式量116)、ダイマー酸ジオール(式量500〜900)、水添ダイマージオール(式量500〜900);
あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類;
などが挙げられる。
【0043】
更に、グリセリン、トリメチロールプロパン(式量135)、トリメチロールエタン(式量120)、ペンタエリスリトール(式量136)、ソルビトール(式量182)、メチルグルコシド(式量194)等の、3個以上の水酸基を有する化合物も、式量60〜1000のポリオール(a2)として使用することができる。
【0044】
ここに、トリエチレングリコール(式量150)等のポリオキシエチレングリコール(式量150〜990)やポリオキシプロピレングリコール(式量192〜950)、ビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類(式量300〜900)等の式量が60〜1000であるポリエーテルポリオールは、ポリエーテルポリオール(a1)に含めるものとする。
【0045】
式量60〜1000のポリオール(a2)の使用量としては、接着力の観点から、(a1)と(a2)のモル比で(a1)/(a2)=0.1/0.9〜0.8/0.2が好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3がより好ましい。
ポリオール(a1)が0.1/0.9より少ないと、ウレタン結合濃度が高くなり、接着力が無くなる場合があり、
ポリオール(a1)が0.8/0.2より多くなると、式量60〜1000のポリオール(a2)の添加効果がなくなる場合がある。
【0046】
ポリイソシアネート(b)としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。以下に述べる具体的化合物は、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0048】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0049】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0050】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(別名:IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0051】
その他にもポリフェニルメタンポリイソシアネート(別名:PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等も、使用することができる。
【0052】
また、上記ポリイソシアネート(b)変性物も一部に併用することができる。変性物とは、トリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート環を有する3量体やカルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基のいずれかの基、又はこれらの基の2種以上を有する変性物のことを指す。
【0053】
本発明においてポリイソシアネート(b)としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(別名:IPDI)、キシリレンジイソシネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:水添MDI)等の無黄変型、又は難黄変型のポリイシソアネート化合物を用いると、耐候性の点から好ましい。
【0054】
ポリイソシアネート(b)の使用量、すなわち仕込み量は、感圧式接着剤の凝集力を維持し耐久性を付与する観点、及び樹脂の柔軟性の低下を防止して十分な接着力を確保する観点から、ウレタンウレア樹脂(C)100重量%中、5〜23重量%であることが好ましく、10〜21重量%であることがさらに好ましい。
ここで、「ウレタンウレア樹脂(C)100重量%中」とは、言い換えると「ウレタンウレア樹脂(C)の合成原料100重量%中」であり、ウレタンウレア樹脂(C)の合成に使用するポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、 ポリアミン(c)、化合物(d1)及び必要に応じて使用するその他化合物および反応停止剤の合計100重量%中、という意味である(以下の記載においても同じとする。)。
【0055】
次に、本発明に使用するポリアミン(c)について説明する。
ポリアミン(c)は、2個以上のアミノ基を有する化合物である。2個以上のアミノ基を有する化合物を使用することにより、感圧式接着剤に接着力を付与することができ、更に耐久性との両立が可能になる。以下に述べる具体的化合物は、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
具体的には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、(2−ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシエチルエチレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(2−ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、ピペラジン等の脂肪族ポリアミン;
イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ポリアミン;
フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン,3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ビス−(sec−ブチル)ジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;
及びダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン、末端に一級又は二級アミノ基を有するデンドリマーなどを例示できる。
【0057】
さらに、ポリアミン(c)として、両末端にプロポキシアミンを有し下記一般式(3)で示されるポリオキシアルキレングリコールジアミン等も使用することができる。
【0058】
一般式(3):
2N−CH2−CH2−CH2−O−(C2m−O)−CH2−CH2−CH2−NH2
(式中、mは2〜4の任意の整数、nは2〜50の任意の整数を示す。)
これらのポリアミンの中で、マイケル付加反応の反応性の高さや、マイケル付加反応後に生成するアミノ化合物(B)の鎖延長反応の制御の面から特に、一級アミノ基を2個以上有するポリアミンが好ましい。
特に、一級アミノ基を2個以上有するポリアミンであるイソホロンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンは、マイケル付加反応の制御が容易であり、マイケル付加反応させて得られるアミノ化合物(B)を使用して得られたウレタンウレア樹脂(C)の透明性が優れていることからさらに好ましい。
【0059】
本発明のアミノ化合物(B)は、上記ポリアミン(c)と下記一般式(1)で示される化合物(d1)とをマイケル付加反応させて得ることができる。化合物(d1)を使用することにより、基材に対するヌレ性を向上することができる。
【0060】
一般式(1)
【0061】
【化3】

【0062】
[式中 Rは水素原子またはメチル基であり、Rは直接結合または、−COO−もしくは−OCO−、−NRCO−、−CONR−、(Rは水素原子もしくはメチル基である)、−O−のいずれかであり、Rは式量100〜1500である、水酸基を含まない1価の基]
【0063】
本発明の化合物(d1)としては、
例えば、(メタ)アクリロイル基含有化合物や、(メタ)アクリルアミド基含有化合物、ビニルエステル基含有化合物、ビニルエーテル基含有化合物などが挙げられる。
【0064】
具体的には、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリロイル基含有化合物;
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリロイル基含有化合物;
N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド基含有化合物;
オクチルビニルエーテル、イソオクチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、イソノニルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、イソデシルビニルエーテル、ウンデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリデシルビニルエーテル、テトラデシルビニルエーテル、ペンタデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル基含有化合物、
などが挙げられる。
【0065】
化合物(d1)中でも、Rが式量100〜1000の分岐アルキル基である化合物(d1−1)や、式量100〜1000のポリアルキレンオキサイド構造を有する1価の基である化合物(d1−2)がヌレ性向上の効果からより好ましく用いられる。Rの式量が100より小さいとヌレ性の向上効果が得られない場合があり、Rの式量が1000を超えるとマイケル付加反応性が低くなる場合があり、また、原料由来の結晶性が顕著となり透明性の低い感圧式接着剤となってしまう場合がある。
【0066】
化合物(d1−1)について説明する。
化合物(d1−1)はRに式量100〜1000の分岐アルキル基を有することを特徴とする。具体的にはイソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソオクチルビニルエーテル、イソノニルビニルエーテル、イソデシルビニルエーテル等が挙げられる。Rに直鎖のアルキル基を有する化合物[(d1−1)の範囲外]を用いてしまうと結晶性が高く、基材に対するヌレ性向上の効果が得られない場合があるが、分岐のアルキル構造を有する(d1−1)では結晶性を抑えることが可能であり、さらにアルキル基由来の表面張力低下能が高く基材に対するヌレ向上の効果が大きい。
【0067】
化合物(d1−2)について説明する。
化合物(d1−2)はRが式量100〜1000のポリアルキレンオキサイド構造を有し、かつ末端にアルキル基を有する1価の基であることを特徴とする。具体的には上記アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類が挙げられる。アルコキシポリアルキレングリコール部の柔軟性から基材に対するヌレ性向上効果が得られる。さらにアルコキシ基がノニルフェノールなどの長鎖アルキルである場合は柔軟性とアルキル基由来の表面張力低下の相乗効果からに基材に対するヌレ性向上が期待できる。
【0068】
また、化合物(d1)には水酸基を有さないものが好適に利用される。水酸基を有してしまうと硬化剤と反応してしまい、側鎖によるヌレ向上効果が得られない場合がある。架橋点を導入する際は、後述するマイケル付加反応基を有する化合物(d’)を組み合わせて使用することが好ましい。
【0069】
ポリアミン(c)とマイケル付加反応させる化合物としては、上記化合物(d1)を単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、化合物(d1)と、化合物(d1)以外の1つのマイケル付加反応基を有する化合物(d’)とを併用することもできる。
化合物(d1)以外の1つのマイケル付加反応基を有する化合物(d’)としては、ウレタンウレア樹脂(C)への架橋点を導入できることや、マイケル付加反応の触媒作用の面から、水酸基を有するエチレン性不飽和化合物(d’−1)を使用するのが好ましい。
【0070】
水酸基を有するエチレン性不飽和化合物(d’−1)としては、
例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコール;
ダイセル化学工業製プラクセルFA、プラクセルFA2D、プラクセルFA3、プラクセルFA5、プラクセルFA10L、プラクセルFM1D、プラクセルFM2D、プラクセルFM3、プラクセルFM3X、プラクセルFM5、プラクセルFM5Lなどの、水酸基を末端に有するポリエステル鎖を有する不飽和化合物;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、水酸基を末端に有するポリエーテル鎖を有する不飽和化合物;が挙げられる。
【0071】
また、化合物(d1)以外の1つのマイケル付加反応基を有する化合物(d’)としては、マイケル付加反応時および鎖延長反応の反応速度調整の観点から、水酸基を有するエチレン性不飽和化合物(d’−1)以外の化合物(d’−2)を使用しても良い。
【0072】
化合物(d1)および化合物(d‘)の使用量としては、化合物(d1)と化合物(d’)の合計モル数を100モルとした場合、化合物(d1)の使用量が30〜100モルであることが好ましい。30モルより少ないと、化合物(d1)の添加効果がなくなる場合がある。
【0073】
ポリアミン(c)と、化合物(d1)とのマイケル付加反応では、 ポリアミン(c)中のアミノ基の活性水素2モルと、化合物(d1)中のエチレン性不飽和基1モルとが反応し、活性水素1モルが残存する。残存した活性水素基はウレタンプレポリマー(A)との反応点となる。
ポリアミン(c)中のアミノ基は、化合物(d1)中のR部の−COO−結合基等の電子吸引性により、化合物(d1)中のエチレン性不飽和基との反応性が向上する。そのため、化合物(d1)としては(メタ)アクリロイル基含有化合物が好ましく、特にアクリロイル基含有化合物が、マイケル付加反応の効率の点から最も好ましい。
【0074】
ポリアミン(c)に化合物(d1)をマイケル付加反応させたアミノ化合物(B)の合成方法としては、マイケル付加反応に関する公知方法をそのまま利用できる。化合物(d1)が(メタ)アクリロイル基含有化合物、特にアクリロイル基含有化合物等である場合、10〜100℃で反応が進行するが、アルコール溶剤や水酸基を有するエチレン性不飽和化合物(d’−1)等のアルコール存在下では反応が促進される。使用する化合物(d1)の種類にもよるが、40〜80℃の反応温度が好ましい。反応温度が高すぎると(d1)中のR部のエステル結合とエステルアミド交換反応が生じるため好ましくない。
【0075】
化合物(d1)がR部に−COO−結合基等の電子吸引性基を持たない場合には、
アルコール溶剤や水酸基を有するエチレン性不飽和化合物(d’−1)等のアルコール存在下で反応させたり、さらに、金属触媒、アミン触媒を併用することによって、反応を進行させることができる。このときの反応温度としては、反応速度の観点から、60〜100℃が好ましい。
合成のための溶剤は使用してもしなくても良く、その種類は特に限定しないが、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、ベンゼン等の公知の溶剤を使用できる。溶剤を使用する場合の溶液濃度は好ましくは20重量%以上、更に好ましくは50重量%以上である。これより希薄な場合には反応が進行しにくいため好ましくない。
反応時間は、使用する化合物(d1)の種類により異なるが、30分〜8時間で終了する。
【0076】
ポリアミン(c)に付加させる化合物(d1)の比率については、
マイケル付加反応させたアミノ化合物(B)中に少なくとも2個の一級又は二級のアミノ基が残存するように、アミノ基を2個以上有するポリアミン(c)が有するアミノ基1モルに対して、好ましくは0.1〜1.0モル、更に好ましくは0.2〜1.0モルの割合で化合物(d1)中のエチレン性不飽和基を反応させることが好ましい。
化合物(d1)の比率が0.1より少ないと、化合物(d1)を導入した効果が得られない場合があり、更に保存安定性が低いことから好ましくない。
【0077】
ポリアミン(c)の使用量は、ウレタンウレア樹脂(C)100重量%中、感圧式接着剤の凝集力を維持し耐久性を付与する観点、および樹脂の柔軟性の低下を防止して十分な接着力を確保する観点から0.5〜15重量%であることが好ましく、更に好ましくは2〜10重量%である。
【0078】
ウレタンウレア樹脂(C)は、末端がイソシアネート基であるウレタンプレポリマー(A)と、アミノ化合物(B)とを反応させて得られるが、更に必要に応じて反応停止剤として一級ないしは二級アミノ基を有するモノアミノ化合物を反応させることができる。すなわち、ウレタンウレア樹脂(C)を合成する際、分子量を制御したり、ウレタンウレア樹脂(C)末端の未反応で残るイソシアネート基と反応して樹脂の反応活性を抑制したりする目的で、反応停止剤を使用することができる。この場合のウレタンウレア樹脂(C)は、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタンプレポリマー(A)に、アミノ化合物(B)と反応停止剤とを反応させてなるものである。
【0079】
反応停止剤としては、例えば、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソノニルアミン等のジアルキルアミン類の他、
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の水酸基を有するモノアミン;
モノメチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、ベンジルヒドラジン等のアルキルヒドラジン類、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、ラウリン酸ヒドラジド等のヒドラジド類;
N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン等の三級アミノ基と一級アミノ基を有する化合物;
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有するモノアミノ化合物類;を用いることができる。更に、一級又は二級アミノ基を1個だけ有するアミノ化合物も、反応停止剤として用いることができる。
【0080】
上記の反応停止剤のなかでも、2−アミノ−2−メチル−プロパノールなどのように水酸基を有するモノアミン化合物を用いると、末端が水酸基である保存安定性に優れたウレタンウレア樹脂(C)を得ることができる。更に、末端が水酸基であるウレタンウレア樹脂(C)は、この水酸基を後述する硬化剤(E)との反応点として使用することができることから好ましい。尚、水酸基を有するモノアミンの場合、アミノ基と水酸基との両方が、ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基と反応可能であるが、アミノ基の反応性の方が高く、優先的にイソシアネート基と反応する。
【0081】
上記の反応停止剤を使用する場合の使用量は、ウレタンウレア樹脂(C)100重量%中、樹脂の反応安定性を確保する観点、および樹脂の重量平均分子量(Mw)を適切に制御して感圧式接着剤の耐久性を確保する観点から0.05〜2重量%であることが好ましい。
【0082】
更に、この様にして得られたウレタンウレア樹脂(C)の水酸基に環状エステル化合物及び/又は環状エーテル化合物を開環付加させて、変性することもできる。
【0083】
本発明に用いるウレタンウレア樹脂(C)の製造方法については、まず、ポリオール(a)と、ポリイソシアネート(b)とを反応させて、末端に少なくとも1つのイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)を作製する。次に、得られたウレタンプレポリマー(A)とアミノ化合物(B)と必要に応じて反応停止剤とを反応させて、ウレタンウレア樹脂(C)を作製することができる。
【0084】
ウレタンプレポリマー(A)の合成時には、公知の触媒を使用することができる。例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0085】
三級アミン系化合物としてはトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン(別名:DBU)等が挙げられ、単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0086】
有機金属系化合物としては、錫系化合物、及び非錫系化合物を挙げることができる。
【0087】
錫系化合物としてはジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、ジオクチル錫ジラウリレート(別名:DOTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0088】
非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0089】
上記触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、ジオクチル錫ジラウレート(別名:DOTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が、反応性および衛生性の点で好ましい。
【0090】
上記三級アミン系化合物、有機金属系化合物等の触媒は、単独でも使用できるが、併用することもでき、特にポリオール成分としてポリエステルジオール類とポリエーテルジオール類を併用する場合においては、ジブチル錫ジラウレートと2−エチルヘキサン酸錫を併用することにより、安定に均一なウレタンプレポリマーが得られるので好ましい。
【0091】
ウレタンプレポリマー(A)の合成に用いられる有機金属化合物触媒は、ウレタンプレポリマー(A)がアミノ化合物(B)と反応するとき、反応を著しく促進する。イソシアネート基とアミノ基との反応は、元来、非常に早いが、有機金属化合物触媒の存在下では、更に反応が促進され、制御が困難になる場合がある。このとき、キレート化合物が存在していると、キレート化合物が有機金属化合物触媒とキレートを形成することにより有機金属化合物触媒の触媒能が調整され、アミノ化合物(B)との反応を制御しやすくする。
【0092】
このキレート化合物としては、アセチルアセトン、ジメチルグリオキシム、オキシン、ジチゾン、エチレンジアミン四酢酸(別名:EDTA)のようなポリアミノオキシ酸、クエン酸のようなオキシカルボン酸、縮合リン酸等が挙げられる。キレート化合物の中では、アセチルアセトンが有機溶媒に可溶であり、揮発性を有し必要であれば除去することが容易であるため、好ましい。
【0093】
上記キレート化合物は、特に除去しなければ反応後もウレタンウレア樹脂(C)中に残留する。上記ウレタンウレア樹脂(C)を含む本発明の感圧式接着剤組成物は、硬化剤(E)を含有するが、このとき、キレート化合物は、ウレタンウレア樹脂(C)と硬化剤(E)との反応速度をも調整し、結果的に保存安定性の優れた感圧式接着剤組成物を与えることができる。
【0094】
上記ウレタンプレポリマー(A)の合成時には、公知の溶剤が好適に使用される。溶剤の使用は反応制御を容易にする役割を果たす。こうした目的で使用される溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジメトルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルミアミド等が挙げられる。ウレタンウレア樹脂(C)の溶解性、溶剤の沸点、アミノ化合物(B)の溶解性等の点から特に、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン又はこれらの混合溶剤が好ましい。溶剤を使用した場合のウレタンプレポリマー(A)反応系内の濃度は、樹脂固形分が好ましくは50〜95重量%、更に好ましくは60〜90重量%であり、この濃度が低すぎると反応性が低下しすぎることから好ましくない。
【0095】
ウレタンプレポリマー(A)を合成するウレタン化反応としては、種々の方法が可能であるが以下の2つの方法に大別される。
[i]ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)、更に溶剤、及び触媒とを全量仕込んで反応させる方法。
[ii]ポリオール(a)と溶剤とをフラスコに仕込み、ポリイソシアネート(b)を滴下した後、必要に応じて触媒を添加して反応させる方法。
反応を精密に制御する場合は、[ii]が好ましい。
ウレタンプレポリマーを得るウレタン化反応の温度は、120℃以下であることが好ましく、更に好ましくは50〜110℃である。120℃より高くなると反応速度の制御が困難になり、所定の重量平均分子量と構造を有するウレタンプレポリマーが得られにくくなる。したがってウレタン化反応は、触媒の存在下、50〜110℃で1〜20時間行なうのが好ましい。
【0096】
ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)との配合比は、化合物の反応性、3価以上の化合物の存在比、得られた樹脂の用途などで大きく左右される。ウレタンプレポリマーが少なくとも1個のイソシアネート基を有するためには、ポリオール(a)中の水酸基の1モルに対して、ポリイソシアネート(b)中のイソシアネート基が1モルより多くなることが必要であり、好ましくは1.01〜4.00モル、更に好ましくは1.10〜2.00モルの範囲内が適当である。
【0097】
上記のようにして得られたイソシアネート基含有化合物であるウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基と、アミノ化合物(B)が有する一級又は二級のアミノ基とのウレア化反応は、以下の2つの方法に大別される。
[iii]ウレタンプレポリマー(A)をフラスコに仕込み、アミノ化合物(B)を滴下して反応させる方法。
[iv]アミノ化合物(B)をフラスコに仕込み、ウレタンプレポリマー(A)を滴下して反応させる方法。
反応に問題がなければ、操作が容易な[iii]の方法が好ましい。
ウレア化反応の温度は、100℃以下が好ましい。更に好ましくは70℃以下である。70℃でも反応速度が大きく反応を適切に制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。100℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の重量平均分子量と構造を有するウレタンウレア樹脂(C)を得ることは難しい。又、アミノ化合物(B)の合成溶剤としてアルコール系溶剤を用いた場合には、アミノ化合物(B)を滴下する際に反応系内の温度を50℃以下、更には40℃以下にしておくことが好ましい。
【0098】
反応停止剤の使用量は、アミノ化合物(B)と混合添加する場合と、単独で最後に添加する場合とで異なるが、混合添加する場合にはウレタンプレポリマー中のイソシアネート基1モルに対して、反応停止剤中のアミノ基が、好ましくは0.5モル以下、更に好ましくは、0.3モル以下になる量を使用するのが望ましい。
一方、反応停止剤を単独で最後に添加する場合には、最終的に存在するイソシアネート基1モルに対して反応停止剤中のアミノ基が0.5〜3.0モルであることが好ましく、特にウレタンウレア樹脂(C)の安定化を目的とした場合には、1〜3.0モルが好ましい。反応停止剤の使用量が上記範囲外であると、成膜性が低下したり、変着色したりする等の悪影響が見られる場合がある。
反応の終点は、滴定によるイソシアネート残留量測定、またはIR測定によるイソシアネートピークの消失により判断する。
【0099】
カルボキシル基や三級アミノ基を有するウレタンウレア樹脂(C)は、水に分散もしくは溶解させるため、公知の方法によりイオン化することもできる。
【0100】
ウレタンウレア樹脂(C)の分子量は、接着力と耐久性の観点から、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量で、30,000〜200,000が好ましく、40,000〜180,000がより好ましい。重量平均分子量が30,000より小さいと、感圧式接着剤としての耐久性が悪化し、感圧式接着剤の透明性の悪化や黄変が起きてしまう場合がある。一方、重量平均分子量が200,000を超えると、接着力が低下したり粘度が高すぎて扱いにくくなったりする場合がある。
【0101】
ウレタンウレア樹脂(C)の溶液粘度は、特に制限はなく、樹脂の用途により選択されるが、好ましくは、固形分50重量%で3000〜25000mPa・s(25℃)である。25000mPa・s(25℃)より高いと、感圧式接着剤組成物の塗工加工が困難になる可能性があり、3000mPa・s(25℃)より低いと、十分な分子量の樹脂ができていない場合がある。
【0102】
次に、硬化剤(E)について説明する。本発明の感圧式接着剤組成物は、上記ウレタンウレア樹脂(C)100重量部に対し、硬化剤(E)を0.5〜10重量部含有することを特徴とする。
なお、感圧式接着剤組成物は、複数種のウレタンウレア樹脂(C)を含んでもよいし、複数種の硬化剤(E)を含んでもよい。
上記ウレタンウレア樹脂(C)中に存在する反応性官能基としては、水酸基等が挙げられる。従って、本発明に用いられる硬化剤(E)の有する官能基としては、イソシアネート基、アルコキシシリル基、メチロール基、等が好ましい。
【0103】
硬化剤(E)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、N−メチロール基含有化合物、金属キレートなどが挙げられるが、これらの中でも、硬化剤として有効に作用するために、ウレタンウレア樹脂(A)の水酸基と反応し得る官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。
【0104】
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を分子内に複数有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、及びこれらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体、更にはこれらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0105】
金属キレートとしては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルとの配位化合物などが挙げられる。
【0106】
上記硬化剤(E)としては、反応性やポットライフの点からポリイソシアネート化合物が好ましく、更に感圧式接着剤層の光学特性、さらには耐発泡剥れ性等から、特に、ヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートビュレット体、又はキシリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体が好ましい。
【0107】
本発明に係る感圧式接着剤組成物は、ウレタンウレア樹脂(C)100重量部に対して、上記硬化剤(E)を0.5〜10重量部含有することを特徴とする。
さらに、接着性と耐久性の観点から、硬化剤(E)を0.5〜3重量部含有することがより好ましい。
硬化剤(E)の量が10重量部を越えると感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層の架橋構造が密になり、感圧式接着剤層のタックが低下傾向となり、被着体に対する接着性が低下する。一方、硬化剤(E)量が0.5重量部未満では、十分な架橋構造が得られないため、凝集力が低下し、耐熱性、耐湿熱性が低下する。
ウレタンウレア樹脂(C)中の末端および側鎖に有する活性水素基と上記硬化剤(E)中の官能基との反応により、ウレタンウレア樹脂(C)が三次元架橋し、各種基材や被着体との密着性を確保するだけでなく、従来よりも過酷な条件下における耐熱性及び耐湿熱性をも向上させることができる。
【0108】
本発明の感圧式接着剤組成物は、耐湿熱性の向上を目的として、シランカップリング剤(F)を含んでいても良い。シランカップリング剤(F)は、感圧式接着剤層中で特に傾斜構造を形成しやすく、接着剤層表面に偏在化し、耐湿熱特性の向上や接着力の向上に特に効果を発揮すると考えられる。本発明のウレタンウレア樹脂(C)は側鎖に長いアルキル基や、アルキレンオキサイド構造を有するため、感圧式接着剤層表面への偏在化が促進され、添加効果が大きくなる。
【0109】
シランカップリング剤(F)としては公知のものを使用できる。例えば、γ−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基とアルコキシ基とを有するシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン;
5−ヘキセニルトリメトキシシラン、9−デセニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン;
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノアルキル基とアルコキシ基とを有するシラン;
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β−メルカプトメチルフェニルエチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、6−メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、10−メルカプトデシルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有する化合物;
IS−1000、IA−100A、IM−1000、SP−10(日鉱金属株式会社製)などのイミダゾール基を有する化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザン、ジフェニルジメトキシシラン、1, 3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビニルトリス( 2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
これらのいずれか1種以上を単独で、もしくは複数種を混合して用いることができる。
【0110】
上記シランカップリング剤(F)の中でも耐熱・耐湿熱特性の向上の面から、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、又は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、又はイミダゾール基を有するシランカップリング剤を使用するのが好ましい。特に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランまたはIM−1000(イミダゾール基含有シラン;3−(イミダゾール−1−イル)−2−メチルプロパン酸3−(トリメトキシシリル)プロピルとその部分加水分解反応生成物の混合物)を使用した場合、加工性・耐可塑剤性・耐熱・耐湿熱性が格段に向上することができ、更に導電部材に対して特に高い接着力を有する感圧式接着剤組成物を得ることができる。
【0111】
上記シランカップリング剤(F)を用いる場合は、ウレタンウレア樹脂(C)100重量部に対して、十分な耐湿熱特性および接着力向上効果を得るために0.1重量部以上使用することが好ましく、一方、あまり多量に使用してもそれ以上の効果を得られないばかりか、かえって接着力が低下する場合があるので1.0重量部以下の範囲で使用するのが好ましい。
【0112】
本発明に係る感圧式接着剤組成物には、必要に応じて、他の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂を併用することもできる。更に、用途に応じて、有機・無機の顔料、フィラー、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤等の添加剤を配合しても良い。
【0113】
中でも酸化防止剤を添加すると、感圧式接着剤組成物の劣化を抑制し、ITOやATOなどの透明導電膜、金属蒸着フィルム、金属粒子により形成された導電金属回路などの腐蝕を防止し、長期信頼性等を良好にすることが出来る。
具体的な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、有機イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられ、中でもフェノール系酸化防止剤が有効である。酸化防止剤の市販品としては、Sumilizer GA−80、NW、BBM−S、Antigen P、3C、FR(以上、住友化学社製)、Irganox1010、1035、1076、1222(以上、BASF社製)等が挙げられる 。
酸化防止剤の配合量は、本発明の感圧式接着剤組成物100重量%中0.01〜3重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。
【0114】
本発明に係る感圧式接着剤組成物を使用して、感圧式接着剤層とシート状基材とを含む積層製品(以下、「感圧式接着性シート」という。)を得ることができる。
例えば、種々のシート状基材の片面、又は両面に本発明の感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥・硬化することによって、この感圧式接着性シートを得ることができる。感圧式接着性シートを構成する感圧式接着剤層は、「感圧式」であるから室温程度でタックを有する。
【0115】
感圧式接着剤組成物を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、その他の炭化水素系溶媒等の有機溶媒、または水を更に添加して、粘度を調整することもできるし、感圧式接着剤組成物を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等は多量に添加するとウレタンウレア樹脂(C)と硬化剤(E)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。
【0116】
シート状基材としては、特に限定はされず、セロハン、各種プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、金属板、木材、後述する導電部材、透明光学部材等の、表面が平坦な形状のものが挙げられる。
又、各種基材は単独で用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に、表面を剥離処理したもの、または帯電防止処理したものを用いることもできる。
【0117】
各種プラスチックシートは、各種プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂のフィルム;
ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム;
ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂、シクロオレフィン系樹脂のフィルム等が挙げられる。
【0118】
導電部材(導電性部材)は、導電性を有する部材であれば特に限定されず、ITOやATOなどの透明導電膜、金属蒸着フィルム、金属粒子により形成された金属回路などが挙げられる。特に、耐腐食性や接着力の観点から、透明導電膜、および金属回路に対して、本発明の感圧式接着剤組成物を使用する効果が大きい。
【0119】
透明光学部材は、偏光板等透明光学フィルムの他、上記各種プラスチックシートのうち透明性に優れる、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム等、およびガラス板等が挙げられる。
【0120】
また、本発明の感圧式接着剤組成物を使用した積層体を得る方法としては、
常法に従って適切な方法で上記シート状基材に感圧式接着剤組成物を塗工した後、感圧式接着剤組成物が有機溶媒や水等の液状媒体を含有する場合には、液状媒体を除去したり、または、感圧式接着剤組成物が揮発すべき液状媒体を含有しない場合は、溶融状態にある感圧式接着剤層を冷却して固化したりして、シート状基材の上に感圧式接着剤層を形成する方法が挙げられる。
感圧式接着剤層の厚さは、乾燥時で0.1μm〜250μmであることが好ましく、20μm〜200μmであることがより好ましい。0.1μm未満では十分な接着力が得られないことがあり、250μmを超えても接着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0121】
感圧式接着剤組成物をシート状基材に塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。感圧式接着剤層の乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線または減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては感圧式接着剤組成物の硬化形態、膜厚、および選択した溶剤にもよるが、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。
【0122】
この積層体は、例えば、(ア)剥離処理されたシート状基材の剥離処理面に感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、透明光学部材または導電部材を感圧式接着剤層の表面に積層したり(転写塗工)、(イ)透明光学部材または導電部材に感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、得られた感圧式接着剤層の表面に剥離処理されたシート状基材の剥離処理面を積層したり(ダイレクト塗工)することによって得ることができる。
【0123】
例えば、「剥離処理されたシート状基材/感圧式接着層/透明光学部材」という構成の積層物から、感圧式接着剤層の表面を覆っていた剥離処理されたシート状基材を剥がし、感圧式接着剤層を導電部材(ITOなどの透明導電膜または金属回路等の導電部材)に貼着することによって、「透明光学部材/感圧式接着剤層/導電部材」という構成のタッチパネル用シートを得ることができる。又、「剥離処理されたシート状基材/感圧式接着層/導電部材(ITOなどの透明導電膜や金属回路等の導電部材)」という構成の積層物から感圧式接着剤層の表面を覆っていた剥離処理されたシート状基材を剥がし、感圧式接着剤層を透明光学部材に貼着することによって、「透明光学部材/感圧式接着剤層/導電部材」という構成のタッチパネル用シートを得ることができる。
【0124】
又、本発明の導電部材用感圧式接着性シート又は積層体の用途は特に限定されないが、上記タッチパネルの他に、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電極周辺部材等各種エレクトロニクス関連の部材やプロテクトフィルム用途にも適応できる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例における「部」及び「%」は、特にことわらない限り「重量部」及び「重量%」を表す。
【0126】
合成例14〜32で得られた各樹脂の重量平均分子量(Mw)を以下の方法に従って求めた。
【0127】
<重量平均分子量(Mw)測定>
Mwの測定は、東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0128】
<アミノ化合物の合成>
合成例1
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにイソホロンジアミン(IPDA)25.0部、トルエン25.0部を仕込み、4−ヒドロキシブチルアクリレート 19.1部、ステアリルアクリレート 47.7部を室温で滴下した。滴下終了後、80℃で6時間反応させた後、トルエン66.8部を加えた。更に酢酸エチルを加え固形分を25%に調整したものをアミノ化合物(B―1)溶液とした。
【0129】
合成例2〜13
表1の組成で合成例1と同様の合成方法にてアミノ化合物(B−2)〜(B−12)、および(比較B−1)を合成した。
【0130】
【表1】

【0131】
表1中の略号は以下のものとする。
IPDA:イソホロンジアミン
TMHDA:2、2、5−トリメチルヘキサメチレンジアミン
D2000:JEFFAMINE D−2000 ポリプロピレングリコール末端ジアミン化合物(アミン価56.1 HUNTSMAN社製)
STA:ステアリルアクリレート(大阪有機化学社製:一般式(1)のR3部の式量253)
ISTA:イソステアリルアクリレート(大阪有機化学(株)製:一般式(1)のR3部の式量253)
IOA:イソオクチルアクリレート(大阪有機化学(株)製:一般式(1)のR3部の式量114)
DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成工業(株)製:一般式(1)のR3部の式量134)
PME200:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製:一般式(1)のR3部の式量170)
AME400:メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(日本油脂(株)製:一般式(1)のR3部の式量380)
ALE200:ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート(日本油脂(株)製:一般式(1)のR3部の式量345)
M114:ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート(東亞合成(株)製:一般式(1)のR3部の式量381)
M117:ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノアクリレート(東亞合成(株)製:一般式(1)のR3部の式量378)
M120:2−エチルヘキシロキシポリエチレングリコールモノアクリレート(東亞合成(株)製:一般式(1)のR3部の式量202)
4HBA:4―ヒドロキシブチルアクリレート
AP150:ポリプロピレングリコールモノアクリレート(日本油脂(株)製)
AE400:ポリエチレングリコールモノアクリレート(日本油脂(株)製)
BA:ブチルアクリレート
【0132】
<ウレタンウレア樹脂の合成>
合成例14
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにC2015N(2官能ポリカーボネートポリオール、株式会社クラレ製)40.9部、PTMG2000(2官能ポリテトラメチレングリコール、保土ヶ谷化学(株)製)40.9部、イソホロンジイソシアネート18.2部、トルエン25部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.008部を仕込み、100℃まで徐々に昇温して、2時間反応を行った。40℃まで冷却し、酢酸エチル75部、アセチルアセトン0.28部を加えた後、アミノ化合物(B−1)溶液30.6部を1時間で滴下し、更に1時間熟成した。滴定でイソシアネート基残量を確認した後、ジブチルアミン0.5部及び酢酸エチル0.5部を加えて、IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認し反応を終了した。このウレタンウレア樹脂(C−1)の重量平均分子量Mwは45,000であった。
【0133】
合成例15〜29
表2の組成で合成例14と同様の合成方法にてウレタンウレア樹脂(C−2)〜(C−14)および(比較C−1)、ウレタン樹脂(比較C−2)を合成した。
なお、ウレタン樹脂(比較C−2)についてはアミン化合物を添加しない以外は合成例14と同様の合成方法にて合成を行った。
【0134】
【表2】

【0135】
表2中の略号は以下のものとする。
C2015N:クラレポリオールC−2015N(2官能ポリカーボネートポリオール、株式会社クラレ製、数平均分子量:2000)
P−2010:クラレポリオールP−2010(2官能ポリエステルポリオール、株式会社クラレ製、数平均分子量:1962)
PTMG3000SN(2官能ポリテトラメチレングリコール、保土ヶ谷化学工業製、数平均分子量:2921)
PTMG2000SN(2官能ポリテトラメチレングリコール、保土ヶ谷化学工業製、数平均分子量:2015)
PTMG1000SN(2官能ポリテトラメチレングリコール、保土ヶ谷化学工業製、数平均分子量:1030)
PP2000:サンニックスPP−2000(2官能ポリプロピレングリコール、三洋化成工業株式会社製、数平均分子量:1996)
PP4000:サンニックスPP−4000(2官能ポリプロピレングリコール、三洋化成工業株式会社製、数平均分子量:4007)
MPD:3−メチルペンタンジオール(株式会社クラレ製、式量118)
Pripol2033:PRIPOLTM2033(ダイマー酸ジオール、クローダジャパン株式会社製、式量540)
BEPG:2−ブチル−2−エチルプロパンジオール(協和発酵株式会社製、式量161)
IPDI:イソホロンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
XDI:キシリレンジイソシアネート
DOTDL:ジオクチル錫ジラウレート
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート
AMP:2−アミノ−2−メチル−プロパノール
DBA:ジブチルアミン
【0136】
合成例30
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにサンニックスPP−2000を177部、2,4−TDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートT−100)を23部、ウレタン化触媒としてDBTDLを、ポリオール、2,4−トリレンジイソシアネートおよびグリセリン3成分の合計量に対して25ppmに相当する量を仕込んだ。ついで、100℃まで徐々に昇温し、プレポリマー生成反応を4時間行ってイソシアネート基末端プレポリマーを得た。その後、60℃まで冷却し、酢酸エチルを115.3部、MEKの115.3部添加した後、鎖延長剤としてグリセリンを3.8部添加して反応させた。60℃で反応を続け、NCO%が0.02%以下になった時点で末端停止剤であるモノイソプロパノールアミン(MIPA)を0.7部添加して反応を終了した。得られたポリウレタン樹脂(比較C−3)は無色透明で固形分が47質量%で、重量平均分子量は、193000であった。尚この合成例は、WO2007/091643号公報の例である。
【0137】
<アクリル樹脂の合成>
合成例31
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにブチルアクリレート98.5部、アクリル酸1.5部、酢酸エチル150部を仕込み、窒素置換下で70℃まで加熱し、アゾビスイソブチロニトリル0.15部を添加し重合を開始した。重合開始後3時間後から1時間おきに5時間後までそれぞれアゾビスイソブチロニトリル0.15部を添加し、更に2時間重合を行った。その後、酢酸エチル150部を追加して重合を終了させ、アクリル樹脂(比較C−4)を得た。このアクリル樹脂(比較C−4)の重量平均分子量は790,000であった。尚この合成例は、特開2006−045315号の例である。
【0138】
<アクリル樹脂の合成>
合成例32
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにブチルアクリレート89.9部、アクリル酸10.0部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1部、酢酸エチル63部、アセトン100部を仕込み、窒素置換下で65℃まで加熱し、アゾビスイソブチロニトリル0.03部を添加し重合を開始した。重合開始後6時間後アゾビスイソブチロニトリル0.2部を添加し、更に6時間重合を行った。その後、酢酸エチル45部を追加して重合を終了させ、アクリル樹脂(比較C−5)を得た。このアクリル樹脂(比較C−5)の重量平均分子量は910,000であった。尚この合成例は、特開2008−120864号の例である。
【0139】
<実施例>
実施例1〜27
合成例14〜27で得られた樹脂(C−1)〜(C−14)の固形分100部に対し、硬化剤、シランカップリング剤を表3、4に従って配合して感圧式接着剤組成物を得た。
【0140】
【表3】

【0141】
E−1:ヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体
E−2:ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート体
E−3:ヘキサメチレンジイソシアネートビュレット体
E−4:キシリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体
E−5:トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体
E−6:エポキシ硬化剤(テトラッドX、三菱化学社製)
F−1:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
F−2:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン
F−3:IM−1000(イミダゾール基含有シランカップリング剤、日鉱金属株式会社製)
IRGANOX1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASF社製)
ITO/PET:ITO透明導電膜を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム
【0142】
比較例1〜8
合成例23、28〜32で得られた樹脂(C−10)、(比較C−1)〜(比較C−5)の固形分100重量部に対し、硬化剤、シランカップリング剤、添加剤を表5に従って配合して感圧式接着剤組成物を得た。
【0143】
【表4】

【0144】
上記感圧式接着剤組成物を剥離処理されたシート状基材であるポリエステルフィルム(以下、「剥離フィルム」という。)上に乾燥後の厚みが50μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させ、感圧式接着剤層を形成した。乾燥後、感圧式接着剤層に、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を貼り合せた。次いで、得られた積層物を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成(暗反応)させて、感圧式接着剤層の反応を進行させ、感圧式接着性シートを得た。
【0145】
<接着力の評価方法>
上記感圧式接着性シートを幅25mmに裁断し、剥離フィルムを剥がし、露出した感圧式接着剤層を厚さ100μmのPETフィルム、アクリル板、ポリカーボネート(PC)板、ガラス板、ITO透明導電膜を有するPETフィルムにそれぞれ、23℃−50%RH雰囲気下で貼着し、JIS Z 0237に準じてロール圧着した後、50℃雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけ15分保持して試験片を得た。圧着24時間後、23℃−50%RH雰囲気下で、剥離試験器を用い、180度ピール、引っ張り速度300mm/分で、感圧式接着性シートを各被着体から剥離し、接着力を測定した。
【0146】
評価基準は以下のとおりである。
6:接着力が35N/25mm以上である。
5:接着力が35N/25mm未満、25N/25mm以上である。
4:接着力が25N/25mm未満、15N/25mm以上である。
3:接着力が15N/25mm未満、5N/25mm以上である。
2:接着力が5N/25mm未満、1N/25mm以上である。
1:接着力が1N/25mm未満である。
【0147】
<耐熱・耐湿熱性の評価方法>
耐熱・耐湿熱性の評価として、上記感圧式接着性シートを幅100mm×長さ100mmに裁断し、剥離フィルムを剥離して、ガラス板に貼り合わせて固定し、50℃雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけ20分間保持してPETフィルム/感圧式接着剤層/ガラス板の層構造を有する試験片を作製した。80℃−相対湿度0%(耐熱性)、又は、60℃−相対湿度95%(耐湿熱性)で500時間放置した後の浮きハガレ、発泡を目視で観察した。
【0148】
耐熱・耐湿熱性について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価をおこなった。
○:浮きハガレ・発泡が全く認められず、実用上全く問題なし。
△:若干浮きハガレ・発泡が認められるが、実用上問題がない。
×:全面的に浮きハガレ・発泡があり、実用不可である。
【0149】
<耐発泡剥がれ性の評価方法>
耐発泡剥がれ性の評価として、上記感圧式接着性シートを、幅100mm×長さ100mmに裁断し、剥離フィルムを剥離して、ポリカーボネート(PC)板に貼り合わせて固定し、50℃雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて20分間保持して、PETフィルム/感圧式接着剤層/PC板の層構造を有する試験片を作製した。上記試験片を80℃のオーブン中で24時間熱処理(耐熱性試験)を行った。
この耐熱性試験後、サンプル片の接着界面(感圧式接着剤層とPC板との界面)を目視にて観察し、「気泡」や「浮き」が全く見られなかったものを「○」、「気泡」や「浮き」が僅かに認められるものを「△」、「気泡」や「浮き」が著しく認められるものを「×」と判断した。評価が△以上であれば、実用上問題がない。
【0150】
<耐腐食性の評価方法>
耐腐食性の評価として、膜厚5μmのITO透明導電膜を有するPETフィルム(幅40mm、長さ160mm)のITO透明導電膜上に、幅40mm、長さ100mmに裁断した上記感圧式接着性シートを、剥離フィルムを剥離して貼り合わせて固定し、50℃雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて20分間保持して、PETフィルム/感圧式接着剤層/ITOフィルムの層構造を有する試験片(タッチパネル用シート)を作製した。この試験片の両端に電極をつなぎ、初期の電気抵抗値を測定[三菱化学(株)製、Laresta−GP MCP−T600]した。更に試験片を85℃ 相対湿度90%で500時間放置した後、前記同様に経時後の電気抵抗値を測定した。
電気抵抗変化率(経時後の電気抵抗値/初期の電気抵抗値)が、1.2未満のものを「○」、1.2以上1.5未満のものを「△」、1.5以上のものを「×」とした。評価が△以上であれば、実用上問題がなく、導電部材における動作不良を引き起こさないと判断した。
【0151】
表3、4の実施例1〜27に示すように、本発明の感圧式接着剤組成物は、高い接着力、耐熱性、耐湿熱性、耐腐食性を有していることがわかった。一方、表5の比較例1〜8は、それぞれの物性のバランスがとれておらず、特に腐食性と粘着力の両立に問題を生じるものが多く見られた。本発明により、導電部材をはじめとする各種被着体に対して高い接着力を有し、かつ、耐熱性、耐湿熱性と腐食性に優れることが、本願発明により実現できる特性として重要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)とアミノ化合物(B)とを反応させてなるウレタンウレア樹脂(C)100重量部と、硬化剤(E)0.5〜10重量部とを含むことを特徴とする感圧式接着剤組成物であって、
ウレタンプレポリマー(A)が、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなり、
アミノ化合物(B)が、ポリアミン(c)と下記一般式(1)で示される化合物(d1)とをマイケル付加反応させてなることを特徴とする感圧式接着剤組成物。
一般式(1)
【化1】


[式中 Rは水素原子またはメチル基であり、Rは直接結合または、−COO−もしくは−OCO−、−NRCO−、−CONR−、(Rは水素原子もしくはメチル基である)、−O−のいずれかであり、Rは式量100〜1500である、水酸基を含まない1価の基]
【請求項2】
化合物(d1)が、Rが式量100〜1000の分岐アルキル基である化合物(d1−1)を含む、請求項1記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項3】
化合物(d1)が、Rが式量100〜1000のポリアルキレンオキサイド構造を有し、かつ末端にアルキル基を有する1価の基である化合物(d1−2)を含む、請求項1または2記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項4】
ポリオール(a)が、ポリエーテルポリオール(a1)を含む請求項1〜3いずれか記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項5】
ポリオール(a)が、式量60〜1000のポリオール(a2)を含み、ポリエーテルポリオール(a1)と式量60〜1000のポリオール(a2)との重量比が(a1)/(a2)=0.1/0.9〜0.8/0.2(モル比)であることを特徴とする、請求項4記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項6】
前記ウレタンウレア樹脂(C)100重量部に対して、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、およびイミダゾール基を有するシランカップリング剤(F)からなる群から選ばれるいずれか1種以上を0.1〜1.0重量部含む、請求項1〜5いずれか記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項7】
導電部材または透明光学部材上に、請求項1〜6いずれか記載の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層が積層されてなる積層体。
【請求項8】
前記導電部材が、透明導電膜又は金属回路である、請求項7記載の積層体。

【公開番号】特開2012−197390(P2012−197390A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63708(P2011−63708)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】