説明

感圧接着剤組成物

本発明は、ホットメルト感圧接着剤に関する。即時接着ならびに担持基材からのホットメルト感圧接着剤の残留物のない取り去りに関する特性が、水素化スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーの使用によって改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの基材の再分離可能な結合のためのホットメルト感圧接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤は、編織布および不織布工業において、1つの基材を他の基材に一時的に固定するために使用されている。この種の接着剤は、これら基材を、後に互いに分離することを可能にする。典型的な使用例は、女性ケア部門における生理用ナプキンである。
【0003】
感圧接着剤組成物の配合の際に、2つの相反する側面を考慮に入れなければならない。既知の感圧接着剤は、時間依存性の接着力を有する。即ち、接着力が時間とともに増大する。初期接着(即ち即時接着)により、基材の移動のない配置が可能になるように、組成物を配合すると、そのときには、ある時間の後に現れる接着力は、他の基材を再び分離したときに一方の基材上に、接着剤の望ましくない堆積が生じるような接着力になる。この作用は、接着結合箇所における凝集破壊によるものである。
【0004】
しかし、接着剤組成物を、使用中の接着が満足しうるものであるように配合すると、移動に関する問題が、伴われる低い即時接着(即ち初期接着)の結果として生じる。
【0005】
米国特許第5,459,193号は、編織布および不織布の分野における典型的な感圧接着剤配合物のための、特に女性ケア部門において適用するためのホットメルト組成物を記載している。この組成物は、スチレンブロックコポリマー(SBC)に基づいている。しかし、このような組成物は、冒頭に言及した満足しえない初期接着を有している。SEBSポリマーの一部または全部を、SISおよび/またはSBSポリマーによって置換したときであっても、初期接着は増大しないが、それと同時に、凝集は、最終接着において凝集破壊が起こる(即ち、残留物が生じる)程度にまで減少する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、既知のホットメルト接着剤組成物の欠点を回避すること、特に、高い即時接着を有するが、それでもなお、残留物を残すことなく担持基材から、張り付いた基材と共に取り去ることができるホットメルト感圧接着剤組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のホットメルト感圧接着剤組成物は、少なくとも1つの樹脂成分、少なくとも1つのスチレンブロックコポリマー、可塑剤成分、および適切であれば、添加剤を含んでなり、水素化スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーを、該少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーに加えて含有することを特徴とする。溶媒をベースにした接着剤組成物とは対照的に、本発明のホットメルト感圧接着剤組成物は、好ましくは溶媒を含まない(Roempp Chemie Lexikon、vol.3、Georg Thieme Verlag 1990、「Klebstoffe」を参照)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
樹脂成分として、溶融接着剤のために、特にホットメルト接着剤のために使用しうる種々の化合物を使用することができる。このような樹脂成分の例は、ロジン誘導体(桐油樹脂を含む)、トール油およびその誘導体、ロジンエステル樹脂、天然および合成のテルペン樹脂、ならびに、脂肪族、芳香族または混合脂肪族-芳香族炭化水素樹脂である。芳香族成分を有するさらなる樹脂成分は、芳香族基および重合可能な不飽和基をそれぞれ有するモノマーから製造することができる。適するモノマーは、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、インデンモノマー(メチルインデンを含む)などである。脂肪族モノマーは、通常は天然および合成のテルペンであり、これは、CまたはCシクロペンチルまたはシクロヘキシル基を含み、一連の芳香族の環式置換基を有する。これら粘着性樹脂のためのさらなるモノマーは、1,3-ブタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、トランス-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-2-ブテン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、テルペン、テルペン-フェノール樹脂などである。使用しうるさらなる樹脂成分は、クマリン-インデン樹脂、フェノール樹脂、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、モノオレフィンまたはジオレフィンのオリゴマー、芳香族または環式脂肪族炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、炭化水素樹脂、水素化桐油樹脂、水素化油樹脂およびその単官能または多官能アルコールとのエステルである。好ましいのは、炭化水素樹脂、ポリテルペン樹脂、ロジン樹脂エステルである。
【0009】
樹脂成分は、ホットメルト感圧接着剤組成物に、全重量を基準に20〜70重量%、好ましくは40〜60重量%の割合で加える。特定の場合に使用される樹脂成分または樹脂混合物の様々な性質が、制限の範囲内で、組成物中の樹脂の正確な割合に影響を与える。
【0010】
スチレンブロックコポリマーは、A-B-A構造に基づく。即ち、スチレン部分は先頭と末端に供され、例えば、1,3-ブタジエンモノマー単位から構成されるBブロックは、中間に位置する(SBSコポリマー)。同様に、イソプレンモノマーから構成されるBブロックも考えられる。これらコポリマーの性質に対する多かれ少なかれ標的化した影響を、これらブロックコポリマーの重合の際に、ブロックの大きさを変動させることによって及ぼすことができる。このような異なるスチレンブロックコポリマーが、当業者には既知であり、意図する使用分野の仕様のものの中から選択することができる。
【0011】
可塑剤成分の使用は、組成物の物性の改善(加工性、被覆性の改善などを含む)が達成されるのを可能にする。本発明の組成物においては、油様の可塑剤成分を使用する。この可塑剤成分は、好ましくは室温で液体であり、例えば炭化水素油またはポリブテンである。特に好ましいのは、鉱油、特に芳香族化合物の割合が低い鉱油(DIN51378またはASTM D2140に従ってC/A <2%、C/N <40%、C/P >60%の炭素分布によって特徴付けられる)である。さらに適する化合物は、オレフィンオリゴマー、低分子量ポリブテンポリマー、植物油およびその誘導体、ならびに、他の適する可塑剤液体である。感圧接着剤組成物中のこの可塑剤成分の割合は、全重量を基準に、20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%である。
【0012】
本発明の組成物への添加剤の添加によって、特に感圧接着剤の安定性に対して、有利な影響を及ぼすことができる。安定剤として適する添加剤は、例えば、立体障害フェノール、ホスファイトまたはチオエステルである。これらは、大気酸素または他の外部影響(例えば光照射)の結果として起こる分解反応を、ある程度まで抑制することができる。
【0013】
水素化スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーは、2つの末端スチレンブロックに加えて、ここでもブタジエンおよびブチレンモノマーブロックから構成される中心ブロックを有する。このブタジエン-ブチレンブロックは、好ましくは選択的に水素化されている。この修飾は、コポリマーを必要条件にある程度合致させることを可能にする。スチレンブロック部分の、オレフィンブロックとアルキレンブロックの合計量に対する比は、変化することができ、約20:80〜約80:20の範囲内である。25:75〜35:65の範囲内の比および60:40〜75:25の範囲内の比が有利である。特に好ましいのは、約30:70の比である。
【実施例】
【0014】
本発明を、以下の実施例により説明する。示した量は、他に明示しなければ、全組成物を基準にした重量%である。
【0015】
実施例1
52.3重量%の炭化水素樹脂[Escorez 5400 (40.3重量%);Escorez 5415 (12重量%)、Exxon Mobil]および30重量%の油[Shell Catenex PH941、Shell]を、10重量%のSBSポリマー[Europrene SOL TE 6414、Polimeri Europa]と混合した。この混合物に、安定剤[Irganox 1010およびIrganox PS 800 (それぞれ0.1重量%);Ciba]をさらに添加した。さらに、この混合物に、7.5重量%のSBBSポリマー[Tuftec P1000;Asahi Kasei]を添加した。
この溶媒を含まない組成物は、わずかに黄色味がかった透明な外観を有しており、DIN52011に従って93℃の軟化点を有していた。
驚くべきことに、SBBSポリマーの使用は、使用必要条件を完全に満足させる初期および最終の接着値ならびに凝集を与えた。
【0016】
実施例2〜4
実施例1の方法により、実施例2〜4の組成物を調製した。それぞれの組成を、以下の表1に示す。
【表1】

【0017】
比較例C1およびC2の組成物を同様に調製した。それぞれの組成を、以下の表2に示す。
【表2】

【0018】
実施例1〜4および比較例のホットメルト感圧接着剤組成物を、PEフィルム上に薄層として溶融させた(適用重量:25g/m)。このフィルム片を、綿基材上に張り付け、その直後および36g/mの負荷のもと40℃で4時間の保存時間の後に、引張試験機により500mm/分の速度および90°の角度で剥離した。接着をN/25mmで測定し、綿基材上の接着剤残留物を視覚的に評価した。
【0019】
得られた結果を、以下の表3に示す。
【表3】

【0020】
実施例1〜4の組成物での剥離試験の結果は、明らかに、適用直後および遅延期間後の取り去り時の両方において、改善された接着値を示す。比較例C1およびC2は、明らかに、これら一対の値の間に比較的大きな差を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの樹脂成分、好ましくは炭化水素樹脂、少なくとも1つのスチレンブロックコポリマー、可塑剤成分、および適切であれば、添加剤を含んでなるホットメルト感圧接着剤組成物であって、水素化スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーを、該少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーに加えて含有することを特徴とする感圧接着剤組成物。
【請求項2】
樹脂成分が、炭化水素樹脂、ポリテルペン樹脂、ロジン樹脂エステルからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の感圧接着剤組成物。
【請求項3】
可塑剤成分が、炭化水素油、ポリブテン、鉱油、特に芳香族化合物の割合が低い鉱油、オレフィンオリゴマー、低分子量ポリブテンポリマー、植物油および植物油誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の感圧接着剤組成物。
【請求項4】
水素化スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーが、スチレンブロック部分の、オレフィンブロックとアルキレンブロックの合計量に対する比 20:80〜80:20、好ましくは25:75〜35:65、特に好ましくは約30:70を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感圧接着剤組成物。
【請求項5】
水素化ブロックコポリマーの割合が、3〜20重量%、好ましくは4〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感圧接着剤組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの樹脂成分が、感圧接着剤組成物中に20〜70重量%、好ましくは40〜60重量%の割合で存在することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感圧接着剤組成物。
【請求項7】
感圧接着剤組成物が、少なくとも1つの安定剤、特に立体障害フェノール、ホスファイトまたはチオエステルを、添加剤として含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感圧接着剤組成物。
【請求項8】
添加剤の割合が、0〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の感圧接着剤組成物。
【請求項9】
可塑剤成分の割合が、20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の感圧接着剤組成物。
【請求項10】
ホットメルト感圧接着剤組成物の即時接着および長期接着を修飾するための、水素化スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーの使用。
【請求項11】
ホットメルト感圧接着剤組成物が、炭化水素樹脂、少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーおよび可塑剤成分を含んでなる請求項10に記載の使用。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載のホットメルト感圧接着剤組成物の少なくとも部分的な被覆を含んでなる基材。

【公表番号】特表2007−513204(P2007−513204A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517982(P2006−517982)
【出願日】平成16年5月8日(2004.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004931
【国際公開番号】WO2005/003248
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(391008825)ヘンケル・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチエン (309)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL KOMMANDITGESELLSCHAFT AUF AKTIEN
【住所又は居所原語表記】40191 Dusseldorf,Henkelstrasse 67,Germany
【Fターム(参考)】