感染性疾患を処置及び予防するのに有用な免疫原性特性を有し脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子
本発明は、感染性疾患、特に、脂質含有感染性ウイルス生物が血液等の生体流体中で見出される感染性疾患の発生及び重篤性を減少させる方法に関する。本発明は、脂質含有感染性ウイルス生物から脂質を抽出するのに有用な溶媒を利用し、それにより低い感染力及び増強された抗原性を有する改変されたウイルス粒子を作成する。本発明は、患者における1つ又は複数のウイルス疾患の予防及び/又は処置のための薬剤の調製における、これらの改変されたウイルス粒子の使用を提供する。本発明は、低い感染力及び増強された抗原性を有するこれらの改変されたウイルス粒子を含むワクチン組成物を、任意に薬学的に許容可能な担体又は免疫刺激剤と組み合わせて、提供する。ワクチン組成物は、患者に投与され、脂質含有感染性ウイルス生物に対する防御を付与する。本発明のワクチン組成物は、1つ又は複数のウイルス菌株及び/又は1つ又は複数のタイプのウイルスから得られる改変されたウイルス粒子の組み合わせワクチンを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスから脂質を抽出し、それにより改変されたウイルス粒子を作成するのに有用な溶媒系を利用する脱脂法に関する。本発明の溶媒系は、ウイルスの脱脂の際に、ウイルス粒子が実質的に無傷で残るように最適に設計される。本発明の方法を用いてウイルス粒子を取り囲んでいる脂質エンベロープを溶解することにより、得られた改変されたウイルス粒子は、ヒト又は動物内に導入されたときに細胞応答及び抗体生産を助長且つ促進する露出抗原(又はエピトープ)を有する。本発明の得られた改変されたウイルス粒子は、再導入された種において、陽性(positive)免疫原性応答を開始する。本発明は、特異的患者からのウイルスを該患者への将来的な再導入のために脱脂すること、ストックウイルス又は特異的ウイルスをワクチンをして使用するために脱脂すること、又は非患者特異的ウイルス及び患者特異的ウイルスの両方を療法用カクテル(cocktail)を作成するために脱脂及び組み合わせることに、適用することができる。
【背景技術】
【0002】
序文
多様な病原のウイルスは、毎年数十億の動物及びヒトに影響を与え、社会に莫大な経済的負担を負わせている。多くのウイルスは、それらを取り囲む膜の主要成分として脂質を含有する。ウイルスは動物及びヒトに影響を与え、極度の苦痛、病的状態及び死亡を引き起こす。これらのウイルスは、血液、腹水、リンパ液、胸膜液、心嚢液、脳脊髄液及び生殖器系の様々な流体等の生体流体中で体内を循環する。任意の部位での流体の接触は、疾患の伝染を促進する。他のウイルスは主に種々の器官系及び特異的組織に常在し、増殖し、次いで循環系内に進入して遠隔部位にある他の組織及び器官に接近する。これらの病原体に対して体が陽性免疫応答を示さないと、体内の多くの細胞型に感染し、これらの細胞がその正常な機能を行うことを阻害する。
【0003】
ヒトの免疫系は、種々のウイルスから共同して体を防御する様々な細胞型から構成される。免疫系は、主に抗原の認識及び排除に関与している、体液性免疫応答及び細胞性免疫応答を含む、外的要素を標的化及び排除するための複数の手段を提供する。外的要素に対する免疫応答は、Bリンパ球(B細胞)又はTリンパ球(T細胞)の存在が、通常はマクロファージ又は樹状細胞である抗原提示細胞(APC)と組み合わせて必要である。APCは、抗原を捕捉する特殊化した免疫細胞である。一旦APC内部に入ると、抗原はエピトープ(抗原表面により運搬される独特のマーカ)と呼ばれるより小さいフラグメントに分解される。これらのエピトープは、続いてAPCの表面上に表示(display)され、感染の防御における抗体応答を誘因する(triggering)ことに関与する。
【0004】
体液性免疫応答において、体に対して外的であるAPC表示抗原(独特のエピトープマーカの型)が認識されると、B細胞は活性化され、増殖し、抗体を生産する。これらの抗体はウイルス上に存在する抗原と特異的に結合する。抗体が付着した後、APCは抗原全体を飲み込み、これを殺す。このタイプの抗体免疫応答は、主にウイルス感染の予防に関与する。
【0005】
細胞性免疫応答において、T細胞はAPC上に表示された抗原を認識する際に活性化される。細胞性免疫応答には2つのステップが存在する。第一の工程は、増殖して抗原を特異的に提示する標的細胞を殺す、細胞傷害性T細胞(CTL)又はCD8+キラーT細胞の活性を伴なう。第二の工程は、抗体の生産及びCD8+細胞の活性を制御する、ヘルパーT細胞(HTL)又はCD4+T細胞を伴なう。CD4+T細胞は、CD8+細胞を増殖
させ、且つ効率的に機能させる成長因子をCD8+細胞に与える。
【0006】
ある感染性病原体は、その構造に応じて「慢性的」であると見なされる。例えばいくつかのウイルスは、それらの抗原のいくつかを免疫系から隠す能力のため、免疫応答を回避することが可能である。ウイルスは、出芽過程中、宿主の細胞膜に由来する脂質及び脂肪から成る外側エンベロープを含有する。ウイルスは、タンパク質コート(coat)に取り囲まれたビリオン(ただ1つの型の核酸(RNA又はDNAのどちらか)から成る非細胞性感染性物質)を含む。ウイルスを被覆している外側タンパク質はカプシドと呼ばれ、カプソマーと呼ばれる繰り返しサブユニットから成る。
【0007】
ウイルスは非代謝性であるため、生きている宿主細胞内でしか繁殖しない。ウイルスはウイルスエンベロープのタンパク質をコードする一方、宿主細胞は脂質及び炭水化物をコードする。したがって、所定のウイルスエンベロープ中の脂質及び炭水化物含量は、特定の宿主に依存する。したがって、エンベロープされたウイルス粒子は、脂質及び炭水化物含有物を介して、宿主細胞の同一性を部分的に取り入れ、通常は免疫応答を開始しているであろう、それらと関連する抗原を隠匿することができる。代わりに、ウイルス粒子は、宿主組織の成分を含有する抗原複合体を宿主に提示することにより、宿主の免疫系を混乱させ、宿主の免疫系により部分的に「自己」及び部分的に「外性」であると感知させる。免疫系は、ウイルス粒子を破壊しない「日和見的」非効率的な抗体を生産させられ、宿主細胞を破壊しながら、ウイルスを繁殖させ、徐々に体に重篤な損傷を引き起こしてしまう。
【0008】
免疫系に影響を与える最近の伝染病は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により引き起こされると考えられている後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む。近縁のウイルスが、例えばサル及びネコ等の動物種に影響を与えている(それぞれSIV及びFIV)。他の主なウイルス性感染症は、髄膜炎、サイトメガロウイスル及び様々な型の肝炎ウイルスを含むが、これらに限定されない。
【0009】
現在の処置方法
多様な病因のウイルスを処置する従来技術の方法の一つは、薬物療法を介する。ほとんどの抗ウイルス薬物療法は、ウイルスの複製を予防又は阻害することを目的としており、T4リンパ球又はマクロファージへのウイルスの最初の付着、ウイルスRNAのウイルスDNAへの転写、及び複製中の新規のウイルスの組み立てに焦点が当てられているように見える。様々な菌株が抗ウイルス薬物療法に対して耐性となるため、ウイルスの高い突然変異率(特にHIVの場合)は、現存する処置における主な問題である。さらに、抗ウイルス薬物療法処置は、ウイルスの耐性菌株の進化を引き起こし得る。薬物療法に対する他の難点は、望ましくない副作用及び患者の順守要件(patient compliance requirements)である。加えて、多くの個体は複数のウイルス感染(HIVと肝炎の組み合わせ等)により悩まされている。このような個体は、疾患の進行を相殺するために、より積極的且つ高価な投薬計画が必要である(これはより重大な副作用及びより高い複数の薬物耐性の可能性を引き起こす)。HIVを処置する現在最も有効的なアプローチは、高価で、患者に対して毒性であり、且つウイルスを根絶しない、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の使用である。HAART処方計画の厳守はいまだに大きな障害であり、順守の欠落は爆発的なウイルス複製及び薬物耐性菌株の選択を導く。加えて、HAARTの長期間の使用は、リポジストロフィー、糖代謝異常並びに血漿中のコレステロール及びトリグリセリドの増大等の副作用と関連する。したがって、予防及び療法用のワクチンのいずれかの型でのさらなる療法、又はHAARTを増補する免疫調節剤への差し迫った必要性が存在する。HIVワクチン開発への現在のアプローチは、Mwau他(2003年、A review of vaccines for HIV prevention. J Gene Med 5: 3)により論評されている。簡便には、戦略として、様々な発現ベクター、DNAベースの組み換えワクチン、DNAベースワクチ
ンの組み合わせ、及びアジュバント有り又は無しのウイルスタンパク質追加免疫(boosts)を含む。例えば、タイ国における組み換えgp120ワクチンを使用する最近の第三フェーズ臨床試験は、成功しなかった(Cohen, J. 2003.Public health. AIDS vaccine still alive as booster after second failure in Thailand.Science 302: 1309)。おそらくこれは、適切な免疫応答が生じるためには、組み換えウイルスタンパク質が正確な構成(correct configuration)である必要があるためである。明らかに、ウイルス抗原に対する免疫応答を増強する他の新規のアプローチが評価される必要がある。
【0010】
ワクチン接種の使用を介する疾患の予防も従来技術において知られている。ワクチンは単独で、いくつものヒト病原体に対する免疫応答を授与することに関与してきた。ワクチンは免疫系を刺激して、様々なウイルス感染に対して防御するように設計されている。包括的に、ワクチンは、病原(disease-causing)微生物から単離又は生産される抗原から生産され、免疫応答を誘発することができる。有効的な免疫応答を創出する予防的対策としてワクチンが血流中に注射されると、血流中のB細胞が、ワクチンに含有される抗原を外的又は「非自己」であると感知し、抗原と結合してそれらを不活化する抗体を生産することで対応する。それによりメモリ細胞が生産され、同じ病原物質によるその後の感染に対する、迅速な防御免疫応答をすぐに備えることができる状態に留まる。したがって、ワクチンと類似した抗原を含有する感染性病原体が体内に侵入すると、免疫系がタンパク質を認識し、感染に対して有効的な防衛を推進する。
【0011】
現在のワクチン接種法は欠点を有し、特定の病原体(特にHIV)に対して個体に免疫性を与えることは、最適に望ましいものであるとは決して言えない。現存するワクチン戦略は、感染性病原体と関連する抗原に対して体を露出させ、体がこれらの病原体に対して免疫応答を構築するできるようにすることを目的とする。例えば、B型肝炎及びHIVの病原体は、免疫応答があるにもかかわらず、ヒトの体内で生存且つ増殖することができる。従来技術において提示される1つの説明では、これら微生物の抗原は絶えず変化し、そのため抗原が突然変異すると、特定抗原に応じて生産される抗体はもはや有効的ではないとされる。AIDSウイルスはこの抗原変異を受けると考えられている。抗原変異は薬物又は抗原の組み合わせの使用により試みられてきたが、従来技術のワクチンはHIV等の慢性的感染症への取り組みに成功していない。
【0012】
多様な病因のウイルスを処置する別のアプローチは、ウイルスを不活化することである。化学薬品を使用してウイルスを不活化する従来技術の方法は、クロロホルム又はグルタルアルデヒド等の有機溶媒に頼ってきた。ウイルスの不活化はウイルス感染に対する防御免疫応答を付与しないため、ウイルス不活化は現在も問題である。加えて、これの大部分はウイルスタンパク質を変性させることに合わせられているため、ウイルス粒子の構造を破壊する。つまり、従来技術法の大部分は、免疫応答を生産するため、ウイルス粒子を好適に改変するのではなく破壊することに焦点が当てられている。
【0013】
ウイルス処置剤及び医薬品の現在の製造方法
ウイルス不活化(又は化学的殺傷)
従来技術には、ウイルス粒子を有機溶媒及び高温で処置し、それにより脂質エンベロープを溶解し、続いてウイルスを不活化する方法が記載されている。これらの方法において、血液は患者から抜き取られ、2つの相に分離される。赤血球及び血小板を含む第1相並びに血漿、白血球及び無細胞ウイルス(ビリオン)を含む第2相である。第2相は、有機溶媒で処置され、感染細胞及びビリオンを殺傷し、続いて患者内に再導入される。ウイルスの脂質エンベロープを溶解することに加えて、高い有機溶媒濃度は、細胞死を引き起こし抗原を傷つける。原則的に、この方法は細胞の「化学的殺傷」をもたらす。
【0014】
グルタルアルデヒドは、約1:250のグルタルアルデヒド希釈溶液による固定により
当業者に既知であるように、細胞不活化が達成されるような溶媒の1つである。グルタルアルデヒドでのウイルスの処置は有効的にウイルスを脱脂するが、コア(core)も破壊する。核の破壊は、レシピエント内で免疫応答を誘導するのに有用な改変されたウイルス粒子を生産するのに望ましくない。
【0015】
クロロホルムは別のこのような溶媒である。しかし、クロロホルムは多くの血漿タンパク質を変性させるため、動物又はヒトに再導入されるであろう生体流体との使用に好適でない。クロロホルムにより有害な影響を与えられるこれらの血漿タンパク質は、凝集、ホルモン応答及び免疫応答を含む重要な生物学的機能を果たす。これらの機能は生命に不可欠であり、したがってこれらのタンパク質の損傷は患者の健康に悪影響を与え、死にいたらしめるかもしれない。
【0016】
B−プロピオラクトン、TWEEN−80、及びジアルキル又はトリアルキルリン酸などの他の溶媒又は洗剤(detergent)が、単独で又は組み合わせて使用されてきた。これらの方法の多く、特に界面活性剤を包含するものは、動物又はヒトに処置血漿試料が再導入される前に、界面活性剤の除去を確実にする面倒な手順を必要とする。さらに、従来技術に記載される多くの方法は、遊離したウイルス及び感染細胞を殺傷するために、高められた温度に広範囲にわたってさらすことを包含する。高められた温度は、血漿などの生体流体中に含有されるタンパク質に対して有害な影響を有する。
【0017】
現在のワクチン製造方法
現在まで、いくつかの製造方法が、感染性病原物質に対して個体に免疫性を与える安全且つ有効的なワクチンの探索に利用されてきた。特異的病原性感染から個体を保護するために、感染性病原体と関連する標的タンパク質又は抗原が個体に投与される。これは、タンパク質を、非感染性(不活化)又は感染性の小さい(弱毒化)物質として、又は別個のタンパク質組成物として提示することを含む。当業者には、以下の種々のタイプのワクチンが知られている:生弱毒化ワクチン(live attenuated vaccines)、完全不活化ワクチン(whole inactivated vaccines)、DNAワクチン、組み合わせワクチン、組み換えワクチン、生組み換えベクターワクチン(live recombinant vector vaccines)、ウイルス様粒子及び合成ペプチドワクチン。
【0018】
生弱毒化ワクチンにおいて、ウイルスゲノムの特異的遺伝子操作又はある種の組織培養系における継代のいずれかにより、ウイルスは宿主に対する病原性が弱くなる。遺伝子操作を達成するためには、非必須遺伝子を欠失するか、ウイルス中の1つ又は複数の必須遺伝子を部分的に損傷させる。遺伝子操作の際、ウイルス粒子は有毒性が弱くなるが、抗原特性は保有している。生弱毒化ワクチンは、他の遺伝子への「ワクチンベクター」としても使用することができ、ここでワクチンは防御を必要とする第二のウイルス(又は他の病原体)からの遺伝子のキャリアーとして作用する。しかし、弱毒化ワクチン(感染性は弱いが不活化されてない)は、いくつかの問題を提起する。第一に、いつ弱毒化ワクチンが最早病原性でなくなるかを突き止めることが難しい。有効的な弱毒化を適切に試験するためには、ワクチンからのウイルス感染の危険性が大きすぎる。加えて、弱毒化ワクチンは、病原体の有毒型へ逆戻りする危険性を抱えている。
【0019】
完全不活化ワクチンは、殺傷又は不活化したウイルスを導入して個体の免疫系へ病原体タンパク質を導入することにより、感染に対する免疫性を与えることが当該技術分野において知られている。熱的又は化学的手段により殺傷又は不活化した病原体を個体へ投与することは、個体の免疫系へ病原体を非感染的型で導入し、それにより免疫応答防御を開始する。完全不活化ワクチンは、病原体免疫原に対する細胞性及び体液性免疫応答を直接生じさせることにより防御を付与する。ウイルス病原体は殺傷されるか不活化されているため、感染のおそれはほとんどない。
【0020】
サブユニットワクチンは、当業者によく知られているさらなる別のワクチン接種の型である。サブユニットワクチンは、病原体に由来する、1つ又は複数の単離タンパク質から成る。これらのタンパク質は、免疫応答が示される標的抗原として作用する。サブユニットワクチンに選択されたタンパク質は、病原体により提示され、病原体による個体の感染の際、個体の免疫系はその病原体を認識し、免疫応答を推進する。サブユニットワクチンは、完全感染性物質ではなく、したがって感染性になることが不可能である。サブユニットワクチンはAIDSVAX(ヒトにおける有効性を試験された初めてのHIVワクチンであり、gp120と呼ばれる、HIV外表面(エンベロープ)タンパク質の一部を含有する)の土台である。
【0021】
DNAワクチンは、当該分野において既知であり、病原体の実際の遺伝物質を使用する、別のタイプである。加えて、合成ペプチドワクチンは、ペプチドと呼ばれる、合成及び化学的操作されたHIVタンパク質の部分から作られる。これらは、抗HIV免疫応答を達成する、特異的に選択されたHIVタンパク質の断片から成る。また、互いに併せて使用されると、幅広い範囲(spectrum)の免疫応答を生じる、組み合わせワクチンも従来技術において言及されている。組み合わせウイルスの一例は、HIVエンベロープ及びSIVコアから作られる合成ウイルスであるSHIVが挙げられる。
【0022】
防御免疫応答を開始することができる患者特異的ウイルス抗原を、患者に付与する、療法の方法及びシステムが必要とされている。したがって、処置される生体試料からのタンパク質を大量に(appreciably)変性又は抽出しない、簡便且つ有効的な方法が求められている。また、ウイルス粒子を破壊するのではなく改変することによる、有効的な脱脂過程が必要とされており、それによってそのウイルス粒子の感染力を減少及び/又は消失させ、且つ患者特異的自己免疫応答を引き起こし、さらにウイルス感染を現象させかつ更なる感染を予防する。
【0023】
また、ウイルスの突然変異により個体特有のウイルス病原体感染に対して、個体を免疫化する有効的な手段も必要とされている。好ましくは、上記手段は、個体が感染する危険性を最小限にして、幅広い防御免疫応答を誘発するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
発明の概要
本発明は、簡便、有効的且つ効率的なウイルス感染を処置及び予防する方法を提供することにより、上述した問題を解決する。本発明の方法は、効率的な溶媒系を使用してウイルスの脂質エンベロープに影響を与えるが、ウイルスを変性又は破壊しない。本発明は、脱脂を介して、患者に投与されると陽性免疫応答を生じる、脂質エンベロープが少なくとも部分的に除去された、非合成の、宿主由来又は非宿主由来の改変されたウイルス粒子を作成するのに最適な溶媒及びエネルギー系を利用し、それによりその患者にウイルスに対するある程度の防御を付与する。これらの改変されたウイルス粒子は、脱脂過程の前には露出されていなかった、少なくとも1つの露出抗原を有すると考えられる。また本発明は、患者への医薬品の投与に続いて、感染性ウイルス生物に対する患者の防御を付与するのに有用な医薬品の調製における、これらの改変されたウイルス粒子の使用も提供する。また本発明は、患者への医薬品の投与に続いて、1つ又は複数の感染性ウイルス生物菌株に対する患者の防御、又は1つ又は複数タイプのウイルスに対する防御を付与するのに有用な、組み合わせワクチンとして知られる医薬品の調製において、種々のウイルス菌株又は種々のウイルスからの、1つ又は複数のこれらの改変されたウイルス粒子の使用を提供する。また本発明は、患者への医薬品の投与に続いて、感染性ウイルス生物により引き起こされるウイルス感染を有する患者を処置するのに有用な医薬品の調製における、これらの
改変されたウイルス粒子の使用を提供する。この処置は、ウイルス感染の重篤性を減少させる。また本発明は、患者への医薬品の投与に続いて、1つ又は複数のウイルス性生物菌株により引き起こされるウイルス感染を有する患者を処置するのに、及び1つより多いウイルス感染を有する患者を処置するのに有用な組み合わせワクチンとして知られる医薬品の調製において、種々のウイルス菌株又は種々のウイルスからの1つ又は複数のこれらの改変されたウイルス粒子の使用も提供する。
【0025】
また本発明は、ウイルスが改変型(減少した感染力)で存在するように、且つ低脂質含量の流体を患者に再導入する際に免疫応答が開始されるように、ウイルスを含有する生体流体を処置することによって、ウイルスに対する自己の、患者特異的療法用ワクチンの生産においても有効的である。この自己方法は、患者特異的抗原(例えば患者特異的ウイルス抗原)が、それが得られたのと同じ患者に導入され、免疫応答を誘導することを確実にする。このことは、患者の生理機能が、ウイルス等の感染性生物中に存在する抗原を改変し得るため、重要な特色である。ワクチンを作成するためには、生体流体(例えば血液)を患者から抜き取り、血漿を血液から分離し、最適溶媒系を用いて血漿中のウイルスの脂質含量を減少させる。感染力を減少させ、且つ脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を作成するためにこのように処置した脂質含有ウイルスを、任意に薬学的に許容可能な担体と共に、動物又はヒト等の患者に投与し、その動物又はヒトにおける免疫応答を開始させ、改変されたウイルス粒子の露出エピトープと結合する抗体を作らせる。アジュバントを、改変されたウイルス粒子と共に、薬学的に許容可能な担体中とともに又は別々に投与することもできる。
【0026】
また本発明は、非自己ワクチンを生産するのにも利用され、ここで少なくとも1つの動物又はヒトからの脂質含有ウイルスを有する生体流体は、種々(非自己)の動物又はヒトへ投与するための改変されたウイルス粒子を生産するのに処置される。また本発明は、本方法を用いて動物又はヒトから得られる血漿等の生体流体を処置し、この流体中及び流体中のウイルスの脂質レベルを減少させることによって、ウイルスに対する非自己ワクチンを生産するのに有効的である。低脂質レベルを有し、低脂質レベルを有する改変されたウイルスを含有する、このように処置された流体を、処置された生体流体源ではない別の動物又はヒトへ導入してもよい。この非自己方法は、レシピエント動物又はヒトをウイルス等の1つ又は複数の感染性生物に対してワクチン接種することに利用される。生体流体は、ウイルス等の1つ又は複数の感染性生物に感染した動物又はヒトからのものを使用してよく、生体流体を本方法で処置して、レシピエント動物又はヒトへの投与用のワクチンを生産してもよい。代替として、又は加えて、生体流体を本発明の方法で処置してワクチンを作成する前に、様々なウイルス保存供給源を流体に添加してもよい。
【0027】
本発明は、同じ感染性生物の1つより多い菌株、例えば、HIVウイルスの1つより多いクレード(例えば、HIV−1とHIV−2)を含む、本発明の脱脂法で作られたワクチンを包含する。このようなワクチンは、同じ感染性生物の1つより多い菌株に対する免疫応答を付与する。同じウイルスのいかなる数の異なる感染性菌株又はクレードを選択してもよく、本発明の脱脂法で処置して多数のワクチンを形成してもよい。代替として、又は加えて、ウイルスの種々の菌株又はクレードの様々なストック供給源を、流体を本発明の方法で処置して免疫応答を生じることが可能なワクチンを作成する前に、生体流体に加えてもよい。1つ又は複数のウイルス製剤のストックは、1つ又は複数のウイルスを対象とする非自己ワクチンを作るのに利用され得る。このようにして、ウイルスの複数の菌株若しくはクレード、又は複数のウイルスに対する防御を付与する組み合わせワクチンは生産される。
【0028】
本発明は、1つより多いウイルス等の1つより多い感染性生物を含む、本発明の脱脂方法を用いて作られるワクチンを包含する。このような組み合わせワクチンは、例えばHI
Vや肝炎ウイルスのような1つより多い感染性生物に対する免疫応答を付与する。いかなる数の異なる感染性生物を選択し、且つ本発明の脱脂法を用いて処置して、多数の組み合わせワクチンを形成してもよい。
【0029】
このように、脂質エンベロープから脂質を除去すること、及び脂質エンベロープ内又は脂質エンベロープ表面の下に隠されている抗原を露出させることにより、患者に再導入されると免疫応答を生じる新規なワクチンを、脂質含有ウイルスから開発することができる有効的な方法が提示される。
【0030】
本発明は、部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含む改変されたウイルス粒子であって、該部分的に脱脂されたウイルス粒子は、患者内において陽性免疫応答を開始し、且つ上記患者内において感染性生物に対する防御を誘発する、部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含む改変されたウイルス粒子を提供する。
【0031】
本発明は、改変されたウイルス粒子を作成する方法であって、流体中で、脂質含有ウイルスエンベロープをそれぞれ有する、複数のウイルス粒子を入手し、上記ウイルス粒子を脱脂過程に供し、そして上記ウイルス粒子を部分的に脱脂することを含み、上記脱脂過程は、少なくとも部分的に上記ウイルスエンベロープの脂質含量を低減して上記改変されたウイルス粒子を作成し、且つ上記改変されたウイルス粒子は、患者に投与されると陽性免疫応答を誘発することができる、改変されたウイルス粒子を作成する方法を提供する。
【0032】
また本発明は、抗原送達ビヒクル、及び抗原送達ビヒクルを作成する方法であって、流体中において、ウイルスエンベロープをそれぞれ有する、複数のウイルス粒子を受け取ること、上記ウイルス粒子を脱脂過程に供し、そして上記ウイルス粒子を部分的に脱脂して、抗原送達ビヒクルとして作用する改変されたウイルス粒子を作成する、部分的に脱脂することを含み、上記脱脂過程は、上記ウイルスエンベロープを少なくとも部分的に除去して少なくとも1つのウイルス抗原を露出させ、且つ上記少なくとも1つの抗原は、患者内において陽性免疫応答を誘発することができる、抗原送達ビヒクルを作成する方法を提供する。
【0033】
本発明の改変されたウイルス粒子は、部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含み、上記部分的に脱脂されたウイルス粒子は、脱脂されていないウイルス粒子を脱脂過程に供することにより生産され、上記部分的に脱脂されたウイルス粒子は、上記脱脂されていないウイルス粒子においては露出されていなかった少なくとも1つの露出された患者特異的抗原を含む。
【0034】
また本発明は、患者特異的ウイルス抗原を有する部分的に脱脂されたウイルス粒子、及び任意に薬学的に許容可能な担体を少なくとも含む、ワクチン組成物であって、上記部分的に脱脂されたウイルス粒子は、上記組成物が患者に投与されると陽性免疫応答を誘発することができる、ワクチン組成物を提供する。
【0035】
また本発明は、ワクチンを作成する方法であって、流体中の脂質含有ウイルス粒子と、該脂質含有ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させること、上記脂質含有ウイルス粒子から脂質を抽出するのに十分な時間、上記流体と上記第1の有機溶媒とを混合すること、有機相と水相とを分離させること、及び脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を回収することを含み、上記改変されたウイルス粒子は、患者に投与されると陽性免疫応答を誘発することができる、ワクチンを作成する方法を提供する。
【0036】
また本発明は、感染性ウイルス粒子から患者を防御する方法であって、改変されたウイ
ルス粒子を含有する有効的な量の組成物及び任意に薬学的に許容可能な担体を上記患者に投与することを含み、上記改変は、上記感染性ウイルス粒子の脂質エンベロープの部分的除去を少なくとも含み、上記量は、動物又はヒトにおける感染性ウイルス粒子による感染に対する防御効果を付与するのに有効的である、防御する方法を提供する。
【0037】
また本発明は、複数の脂質含有ウイルス粒子を有する患者において陽性免疫応答を誘発する方法であって、上記患者から上記脂質含有ウイルス粒子を含有する流体を得ること、上記脂質含有ウイルス粒子を含有する上記流体と、上記脂質含有ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させること、上記流体と上記第1の有機溶媒とを混合すること、有機相と水相とを分離させること、脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を回収すること、及び上記脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を動物又はヒト内に導入することを含み、上記脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子は動物又はヒト内において陽性免疫応答を誘発する、免疫応答を誘発する方法を提供する。
【0038】
また本発明は、患者内のウイルス感染を処置する方法であって、上記患者から、複数の脂質含有感染性ウイルス粒子を含有する血液を抜き取ること、上記脂質含有感染性ウイルス粒子を含有する血漿を、上記血液から得ること、上記脂質含有感染性ウイルス粒子を含有する上記血漿と、上記脂質含有感染性ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させ、脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を生産する、接触させること、上記血漿と上記第1の有機溶媒とを混合すること、有機相と水相とを分離させること、上記改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を回収すること、上記水相から残余溶媒を除去すること、及び上記改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を上記患者内に導入することを含み、上記改変されたウイルス粒子は上記複数の脂質含有感染性ウイルス粒子においては露出されていなかった少なくとも1つの露出患者特異的抗原ウイルス抗原を有する、ウイルス感染を処置する方法を提供する。これらの改変されたウイルス粒子の患者への投与は、ウイルス感染の重篤性を処置又は減少する免疫応答を産出する。
【0039】
また本発明は、患者内におけるウイルス感染を処置する方法であって、複数の患者から、複数の脂質含有感染性ウイルス粒子を含有する血液を得ること、上記脂質含有感染性ウイルスと、好適な生物学的に許容可能な担体とを任意に組み合わせること、上記脂質含有感染性ウイルス粒子を含有する流体と、上記脂質含有感染性ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させ、脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を生産する、接触させること、上記担体と上記第1の有機溶媒とを混合すること、有機相と水相とを分離させること、上記改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を回収すること、及び上記改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を種々の患者内に導入することを含み、上記改変されたウイルス粒子は上記複数の脂質含有感染性ウイルス粒子においては露出されていなかった少なくとも1つの露出ウイルス抗原を有する、ウイルス感染を処置する方法を提供する。この実施の形態において、上記脂質含有感染性ウイルス粒子は、1つ又は複数のウイルス菌株、又は1つ又は複数タイプのウイルスを提示し、且つ患者特異的ではない。これらの改変されたウイルス粒子の患者への投与は、ウイルス感染の重篤性を処置又は減少する免疫応答を産出する。
【0040】
以下に記載されるように、改変されたウイルス粒子の特徴は、ワクチン接種されると陽性免疫応答を有するマウスと、完全不活化ワクチン接種したマウスとを比較した実験データにより示される。加えて、タンパク質回収を示すデータは、ウイルス粒子の構造的完全性の保持を示し、これはこのウイルス粒子の脂質含有エンベロープのみが除去されていることを示す。
【0041】
本発明の方法を用いて処置され得る流体は、血漿;血清;リンパ液;脳脊髄液;腹水;胸膜液;心嚢液;精液、射精液、卵胞液及び羊水を含むが、これらに限定されない生殖系の様々な流体;正常血清、ウシ胎仔血清又は任意の他の動物若しくはヒトに由来する血清等の細胞培養試薬;及び抗体及びサイトカインの様々な製剤等の免疫学的試薬を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の方法は、ウイルスエンベロープ中に脂質を含有するウイルスを処置するのに使用され得る。本発明の方法を用いて処置される好ましいウイルスは、ヒト(HIV)並びにHIV−1及びHIV−2等のサブタイプ及びクレード、サル(SIV)、ネコ(FIV)を含む様々な免疫不全ウイルス(これらに限定されない)、並びに任意の他の型の免疫不全ウイルスを含む。本発明の方法を用いて処置される他の好ましいウイルスは、肝炎ウイルス及びその様々な型を含むがこれらに限定されない。本発明の方法を用いて処置される別の好ましいウイルスは、ウシペスチウイルスである。本発明の方法を用いて処置される別の好ましいウイルスは、コロナウイルスSARSである。本発明は、上記のリストに提供されたウイルスに限定されないことが理解されるべきである。さらなる具体的なウイルスは、本出願の詳細な説明において記載される。特にウイルスエンベロープ中に、脂質を含有する全てのウイルスが、本発明の範囲内に包含される。
【0043】
したがって、本発明の目的は、改変されたウイルス粒子を作成するために、脂質含有ウイルスを処置する方法を提供することである。
【0044】
本発明の目的は、改変されていないウイルス粒子と比較したとき、タンパク質レベルを実質的に影響せずに、脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を作成するために、脂質含有ウイルスを処置する方法を提供することである。
【0045】
本発明のさらなる別の目的は、改変されていないウイルス粒子と比較したとき、実質的に影響されないタンパク質レベルを有し、脂質含量の低減した、且つ改変されていないウイルス粒子においては実質的に露出されていなかったウイルス粒子と関連する少なくとも1つの露出抗原を有する、改変されたウイルス粒子を作成するために、脂質含有ウイルスを処置する方法を提供することである。
【0046】
本発明のさらなる別の目的は、低脂質含量、及び改変されていないウイルス粒子においては実質的に露出されていなかったウイルス粒子と関連する少なくとも1つの露出抗原を有する改変されたウイルス粒子を、患者に投与することにより、ウイルス疾患を処置又は予防する方法を提供することである。
【0047】
本発明の別の目的は、生体流体中に含有される感染性ウイルス生物の感染力を減少又は消失させるために、生体流体を処置する方法を提供することである。
【0048】
本発明のさらなる別の目的は、生体流体中に、改変されていないウイルス粒子と比較したとき、実質的に影響されないタンパク質レベルを有するかなりの割合のウイルス粒子を有する、低脂質含量の分布を有する複数の改変脂質含有ウイルス粒子を作成する方法を提供することである。
【0049】
本発明のさらなる目的は、流体中に含有されるタンパク質に対する有害な影響を最小限にする、流体中の脂質含有ウイルスを処置する方法であって、それにより患者内において陽性免疫応答を開始することができる特性を有する改変されたウイルス粒子を作成する、処置する方法を提供することである。
【0050】
本発明のさらなる目的は、流体中に含有されるタンパク質に対する有害な影響を最小限
にする、流体中の脂質含有ウイルスを処置する方法であって、それにより患者特異的ウイルス抗原を有する改変されたウイルス粒子を作成する、処置する方法を提供することである。
【0051】
本発明の別の目的は、ウイルスの感染力を減少させる方法であって、本方法は、改変されたウイルス粒子上に抗原決定基を露出させる、減少させる方法を提供することである。
【0052】
本発明の別の目的は、ウイルス粒子を完全に又は部分的に脱脂することであって、ウイルス粒子は免疫不全ウイルス、様々な型の肝炎ウイルス、コロナウイルス、又は任意の他の脂質含有ウイルスを含み、それにより改変されたウイルス粒子を作成する、脱脂することである。
【0053】
本発明のさらなる目的は、ウイルス粒子を完全に又は部分的に脱脂することであって、ウイルス粒子は免疫不全ウイルス、様々な型の肝炎ウイルス、コロナウイルス、又は任意の他の脂質含有ウイルスを含むが、ウイルスの構造タンパク質核は保持する、脱脂することである。
【0054】
本発明の別の目的は、ウイルスの感染力を減少させる方法であって、新たに形成されたウイルス粒子は抗原送達ビヒクルとして使用することができる、減少させる方法を提供することである。
【0055】
本発明のさらなる別の目的は、本発明の方法を用いて感染性生物を処置することであって、それらの感染力を減少させ、且つ任意に薬学的に許容可能な担体及び任意に免疫刺激化合物と共に、動物又はヒトに投与され得る脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含むワクチンを提供し、それによりウイルスに露出された後に患者内における疾患の臨床兆候を予防又は最小限にする、処置することである。
【0056】
本発明のさらなる別の目的は、本発明の方法を用いて感染性生物を処置することであって、それらの感染力を減少させ、且つ任意に薬学的に許容可能な担体及び任意に免疫刺激化合物と共に、動物又はヒトに投与され得る脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含むワクチンを提供し、それにより動物又はヒトにおいて陽性免疫応答を開始することである。
【0057】
本発明の別の具体的な目的は、抗ウイルスワクチンを提供することである。
【0058】
本発明の別の具体的な目的は、免疫系の細胞において細胞性応答を誘導する抗ウイルスワクチンを提供することであって、上記細胞性応答は、細胞の増殖及びインターフェロンγ等の免疫系分子の生産を含むが、これらに限定されない。
【0059】
本発明のさらなる具体的な目的は、任意に薬学的に許容可能な担体と組み合わされる、本発明の方法を用いて処置されたウイルスを含む組成物を含むワクチンを受け取る動物又はヒトにおける、脂質含有ウイルスにより引き起こされた疾患の重篤性を減少させることである。
【0060】
本発明の別の目的は、患者特異的抗原を有する脂質含量の低減したウイルス粒子と、脂質含量の低減した脱脂株ウイルス粒子とを組み合わせ、それにより1つより多いウイルス疾患を処置又は予防する療法用組み合わせワクチンを作成することである。
【0061】
本発明のこれら及び他の特色及び利点は、以下の開示された実施の形態の図面及び詳細な説明を検討することにより明らかとなるであろう。記述された実施の形態への様々な変
形は、当業者には容易に明らかであろう。本明細書中に述べられた開示は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、他の実施の形態及び用途に利用可能であり得る。
【0062】
添付の図面(援用され、本明細書の一部を形成する)は、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0063】
定義
「流体(fluid)」という用語により、感染性生物を含有する任意の流体を意味し、動物又はヒト等の生物から得られる生体流体を含むが、これらに限定されない。本発明の方法を用いて処置される好ましい感染性生物はウイルスである。生物から得られるこのような生体流体は、血液、血漿、血清、脳脊髄液、リンパ液、腹水、卵胞液、羊水、胸膜液、心嚢液、生殖器液、及び生物中に含有される任意の他の流体を含むが、これらに限定されない。他の流体は、任意の選択された液体に懸濁された感染性生物を含有する実験室試料を含んでよい。他の流体は、細胞培養試薬を含み、これの多くは生きた生物から得られる流体等の生物学的化合物を含み、様々な動物から得られ、且つ細胞及び組織培養用途において成長培地として使用される「正常血清」を含むがこれらに限定されない。
【0064】
「第1の溶媒」又は「第1の有機溶媒」又は「第1の抽出溶媒」という用語により、1つ又は複数の溶媒を含む、流体又はその流体中の脂質含有生物学的生物から脂質の抽出を容易にするのに使用される溶媒を意味する。この溶媒は流体中に進入し、それが除去されるまで流体中に残る。好適な第1の抽出溶媒は、アルコール類、炭化水素類、アミン類、エーテル類、及びこれらの組み合わせを含む(これらに限定されない)、脂質を抽出又は溶解する溶媒を含む。第1の抽出溶媒は、アルコール類とエーテル類との組合せであってよい。第1の抽出溶媒は、n−ブタノール、ジイソプロピルエーテル(DIPE)、ジエチルエーテル、及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0065】
「第2の抽出溶媒」という用語は、第1の抽出溶媒の一部の除去を容易にするのに利用され得る1つ又は複数の溶媒により定義される。好適な第2の抽出溶媒は、流体からの第1の抽出溶媒の除去を容易にする任意の溶媒を含む。第2の抽出溶媒は、第1の抽出溶媒の除去を容易にする任意の溶媒を含み、エーテル類、アルコール類、炭化水素類、アミン類及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。好ましい第2の抽出溶媒は、流体からn−ブタノールなどのアルコール類の除去を容易にする、ジエチルエーテル及びジイソプロピルエーテルを含む。「解乳化剤」という用語は、水相中のエマルジョン中に存在し得る第1の溶媒の除去を支援する第2の抽出溶媒である。
【0066】
「脱脂」という用語は、流体中又は脂質含有生物中の脂質の総濃度の少なくとも一部を除去する過程を示す。脂質含有生物は、さらなる脂質を含有しなくても、含有していてもよい流体中に見出され得る。
【0067】
「薬学的に許容可能な担体」又は「薬学的に許容可能なビヒクル」という用語は、本明細書中で使用される場合、水又は生理食塩水、ゲル、軟膏、溶媒、希釈剤、液体軟膏剤ベース、リポソーム、ミセル、巨大ミセル等を含む(これらに限定されない)任意の液体を意味し、不都合な生理学的応答を引き起こすことなく生きている動物又はヒト組織と接触させて使用するのに好適であり、且つ組成物の他の成分と有害な様式で相互作用しない。
【0068】
「患者」という用語は、動物及びヒトを示す。
【0069】
「患者特異的抗原」という用語は、患者内に導入されると、患者特異的免疫応答を誘導することができる抗原を示す。このような患者特異的抗原はウイルス抗原であってよい。患者特異的抗原は、例えば、患者内で改変又は影響されたウイルス抗原のような任意の抗
原を含む。
【0070】
改変されたウイルス粒子
ウイルスの脂質含量を減少させる本発明の方法の実践により、改変されたウイルス粒子が作成される。これらの改変されたウイルス粒子は、低レベルのコレステロールを有し、且つ免疫原性である。本発明は、非処置ウイルスにより通常は免疫系に対して提示されないエピトープを露出させる。改変されたウイルス粒子内では構造変化が起こり、ウイルス表面の上、中、又は近くにあるタンパク質が改変されて立体構造変化が起こる。これらのタンパク質のいくつかは、改変されたウイルス粒子から分離もし得る。HIVウイルス粒子の概略的描写(schematic representation)は、宿主細胞に由来する脂質含有エンベロープ又は二重膜、表面糖タンパク質、膜貫通タンパク質、カプシド、カプシドタンパク質及び核物質を含有し、Robbins Pathologic Basis of Disease(Cotran他、eds 6th edition, W. B. Saunders Co., 1999)の238ページに提示されている。本発明の脱脂過程は、ウイルス粒子を改変する。改変されたウイルス粒子は、エンベロープ中に低脂質含量を有し、改変タンパク質を表示し、感染力が低下し、且つ免疫原性である。
【0071】
脂質含有生物からの脂質の除去により得られる改変されたウイルス粒子
本発明の方法は、従来技術法が遭遇した多数の問題を解決する。ウイルスの脂質エンベロープを実質的に除去すること、及びウイルス粒子を無傷に保つことにより、本発明の方法は付加的な抗原を露出させる。宿主の免疫系はウイルス粒子を外的として認識する。本発明の方法を使用すると、抗原コアが無傷で残った改変されたウイルス粒子が作成され、それにより実際のウイルス粒子のエピトープを使用して、再導入された患者内における陽性免疫応答を開始する。加えて、本発明の方法は、タンパク質回収により計測される、他の血漿タンパク質への有害な影響を減少させ、血漿を患者に再導入することができる。
【0072】
この改変されたウイルス粒子を作成においては、導入された種においてウイルス粒子に対する防御を誘導する患者特異的抗原も作成される。本発明の方法は、個体にウイルス病原体感染に対する免疫性を与え、且つ個体を感染させる危険性無しに幅広い生物学的に活性な防御免疫応答を誘発する有効的な手段を創出する。新規なワクチンは、ある脂質含有ウイルスから、脂質エンベロープを除去すること、及びエンベロープの下に隠されている抗原を露出させること、それにより陽性免疫応答を生じることにより開発することができる。これらの「自己ワクチン」は、抗原を露出させる及び/又はウイルスタンパク質構造中の構造改変を強いる好適な溶媒系(粒子内に含有される抗原に損傷を与えないもの)を用いて、脂質エンベロープの部分的除去により作成することができ、体内に導入されると有効的な免疫応答を誘発する。また非自己ワクチンも本発明において作成され、脱脂されるウイルス源とは異なる患者に投与される。また複数のウイルスを対象とする組み合わせワクチンも、本発明の範囲内である。このような組み合わせワクチンは、様々な生体流体から、複数のウイルス(例えばHIV、肝炎ウイルス及びSARS)のストック供給源から、及び/又はウイルスの複数の菌株若しくはクレード(例えばHIV−1及びHIV−2)から作られてもよい。
【0073】
本発明を用いて処置される感染性生物
本発明の方法を用いて処置される好ましい感染性生物はウイルスである。本発明により脱脂されて改変されたウイルス粒子を形成し得るウイルス性感染性生物は、以下の属の脂質含有ウイルスを含むが、これらに限定されない:アルファウイルス属(アルファウイルス)、ルビウイルス属(風疹ウイルス)、フラビウイルス属(フラビウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス)、(無名のC型肝炎ウイルス)、コロナウイルス属(コロナウイルス)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、トロウイルス属(トロウイルス)、アルテリウイルス属(アルテリウイルス)、パラミクソウイルス属(パラミクソウイルス)、ルブラウイルス属(ルブラウイルス)、麻疹ウイルス属(Morbillivirus)(麻疹ウ
イルス)、ニューモウイルス亜科(ニューモウイルス)、ニューモウイルス属(ニューモウイルス)、ベシクロウイルス属(ベシクロウイルス)、リッサウイルス属(リッサウイルス)、エファメロウイルス属(Ephemerovirus)(エファメロウイルス)、サイトラブドウイルス属(植物ラブドウイルスA群)、ヌクレオラブドウイルス属(植物ラブドウイルスB群)、フィロウイルス属(フィロウイルス)、インフルエンザ属ウイルスA、B(A型及びB型インフルエンザウイルス)、インフルエンザ属ウイルスC(C型インフルエンザウイルス)、(無名のトゴト様ウイルス)、ブンヤウイルス属(Bunyavirus)(ブンヤウイルス)、フレボウイルス属(フレボウイルス)、ナイロウイルス属(ナイロウイルス)、ハンタウイルス属(ハンタウイルス)、トスポウイルス属(トスポウイルス)、アレナウイルス属(アレナウイルス)、無名の哺乳類B型レトロウイルス、無名の哺乳類及び爬虫類C型レトロウイルス、無名のD型レトロウイルス、レンチウイルス属(レンチウイルス)、スプマウイルス属(スプマウイルス)、オルソヘパドナウイルス属(哺乳類のヘパドナウイルス)、トリヘパドナウイルス属(鳥類のヘパドナウイルス)、シンプレックスウイルス属(シンプレックスウイルス)、ワリセロウイルス属(ワリセロウイルス)、ベータヘルペスウイルス亜科(サイトメガロウイルス)、サイトメガロウイルス属(サイトメガロウイルス)、ムロメガロウイルス属(Muromegalovirus)(マウスのサイトメガロウイルス)、ロゼオロウイルス属(ヒトヘルペスウイルス6、7、8)、ガンマヘルペスウイルス亜科(リンパ球関連ヘルペスウイルス)、リンホクリプトウイルス属(エプスタインバールエプスタインバール様ウイルス)、ラジノウイルス属(Rhadinovirus)(サイミリ−アテレス様ヘルペスウイルス(saimiri-ateles-like herpes viruses))、オルソポックスウイルス属(オルソポックスウイルス)、パラポックスウイルス属(パラポックスウイルス)、アヴィポックスウイルス属(鶏痘ウイルス)、カプリポックスウイルス属(羊痘様ウイルス)、レポリポックスウイルス属(粘液腫ウイルス)、スイポックスウイルス属(豚痘ウイルス)、モラシポックスウイルス属(伝染性軟属腫ウイルス)、ヤタポックスウイルス属(ヤタポックス及びタナポックスウイルス)、無名のアフリカ豚コレラ様ウイルス、イリドウイルス属(小イリデセント昆虫ウイルス)、ラナウイルス属(前の(front)イリドウイルス)、リンホシスティウイルス属(魚のリンパ膿腫ウイルス)、トガウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、エナブドウイルス(Enabdoviridae)科、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科、オルソミクソウイルス科、ブンヤウイルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、及び任意の他の脂質含有ウイルス。
【0074】
これらのウイルスは、以下のヒト及び動物の病原体を含む:ロスリバーウイルス、熱ウイルス、デング熱ウイルス、マレーリバー脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス(ヨーロッパ及び極東ダニ媒介性脳炎ウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、サシチョウバエ熱ウイルス、ヒトコロナウイルス229−E及びOC43、並びに風邪、上気道感染症(おそらく肺炎及び場合により胃腸炎)を引き起こすその他を含む)、ヒトパラインフルエンザウイルス1及び3、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス2、4a及び4b、はしかウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス、アレナウイルス属:リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)ウイルス;ラッサ熱ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1及び2、若しくは任意の他の免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、亜科:ヒトヘルペスウイルス1及び2、ヘルペスウイルスB、エプスタインバールイルス)、(天然痘)ウイルス、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、黄熱病ウイルス、ポリオウイルス、ノーウォークウイルス、オルフウイルス、並びに他の脂質含有ウイルス。
【0075】
改変されたウイルス粒子の製造方法
本発明の範囲の元に利用される複数の脱脂過程が存在することを当業者は理解するであ
ろう。好ましい実施形態において、溶媒系は、例えば機械的混合システムのような適用エネルギーと共に、ウイルス粒子を実質的に脱脂するのに使用される。脱脂過程は、溶媒の総量及びシステム内に投入されるエネルギーに応じる。様々な溶媒レベル及び混合方法は、以下に記載されるように、過程の全体的な枠組みに応じて使用されてよい。単一の溶媒又は複数の溶媒がウイルスの脱脂に使用され得るが、ウイルス粒子を破壊及び変性する可能性が低いことから、単一の溶媒が好ましい。
【0076】
ウイルスからの脂質の除去に使用され、ウイルス粒子の完全性を維持するのに有効的である例示的溶媒系
脂質含有生物を部分的又は完全に脱脂する過程において利用される溶媒又は溶媒の組み合わせは、改変されたウイルス粒子が構造的完全性(一実施形態においてはタンパク質回収を介して計測される)を保持していながら、ウイルスエンベロープ中の脂質を溶解するのに有効的な任意の溶媒又はその組み合わせであり得る。本発明の範囲に含まれる脱脂過程は、エネルギー投入及び溶媒の最適な組み合わせを使用して、ウイルス粒子が無傷であることを維持しながら脱脂する。好適な溶媒は、炭化水素類、エーテル類、アルコール類、フェノール類、エステル類、ハロ炭化水素類、ハロカーボン類、アミン類、及びこれらの混合物を含む。芳香族、脂肪族又は脂環式の炭化水素類も使用してよい。本発明で使用され得る他の好適な溶媒は、アミン類及びアミン類の混合物を含む。一つの溶媒系は、濃縮又は水若しくは生理学的に許容可能な緩衝液等の緩衝液で希釈された、DIPEである。一つの溶媒組み合わせは、アルコールとエーテルとを含む。別の溶媒は、エーテル又はエーテルの組み合わせを、対称エーテル、非対称エーテル又はハロゲン化エーテルの型のいずれかで含む。
【0077】
最適な溶媒系は、2つの目的を達成するものである:第一に、感染性生物又はウイルス粒子を少なくとも部分的に脱脂すること;及び第二に、他の血漿タンパク質への有害な影響が少ないか、又はないような条件セットを利用すること。加えて、溶媒系は、ウイルス粒子が患者内の免疫応答を開始するのに使用することができるように、ウイルス粒子の完全性を維持すべきである。したがって、特定の溶媒、溶媒組み合わせ及び溶媒濃度は、化学的殺傷をもたらすため、本発明において使用するには激しすぎる(too harsh)ことが留意されるべきである。
【0078】
溶媒又は溶媒の組み合わせは、真空による除去を容易にするため、及びウイルス粒子の抗原コアを破壊することなく加熱されるよう、比較的低い沸点を有することが好ましい。また、溶媒又は溶媒の組み合わせは、熱は血漿等の生体流体中に含有されるタンパク質へ有害な影響を与えるため、低温で使用されることが好ましい。溶媒又は溶媒の組み合わせは、ウイルス粒子を少なくとも部分的に脱脂することが好ましい。
【0079】
液体炭化水素は、感染性生物のウイルスエンベロープ中に見られる脂質等の、極性の低い化合物を溶解する。ウイルス粒子の脂質膜を分解するのに特に有効的なものは、ほぼ水非混和性であり、37℃で液体である炭化水素類である。好適な炭化水素類は、以下の、石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のC5〜C20の脂肪族炭化水素類;クロロホルム、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン及び四塩化炭素などのハロ脂肪族炭化水素類;それぞれ直鎖状、分枝状又は環状の、飽和又は不飽和のチオ脂肪族炭化水素類;ベンゼン等の芳香族炭化水素類;ケトン類;トルエン等のアルキルアレーン類;ハロアレーン類;ハロアルキルアレーン類;及びチオアレーン類を含むが、これらに限定されない。また他の好適な溶媒は、ピリジン等の飽和又は不飽和の複素環式化合物及び脂肪族のそのチオ−又はハロ−誘導体も含む。
【0080】
本発明に使用される好適なエステルは、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプ
ロピオン酸エチルを含むが、これらに限定されない。使用され得る好適な洗剤/界面活性剤は、以下の、スルフェート類、スルフォネート類、フォスフェート類(リン脂質を含む)、カルボキシレート類及びスルホスクシネートを含むが、これらに限定されない。本発明で有用ないくつかのアニオン性両親媒性材料は、以下の、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デシル硫酸ナトリウム、ビス−(2−エチルヘキシル)ナトリウムスルホスクシネート(AOT)、コレステロール硫酸及びラウリン酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。
【0081】
溶媒は、脱脂したウイルス混合物が、さらなる溶媒を使用して除去されてよい。例えば、エーテル等の解乳化剤は、アルコール等の第1の溶媒をエマルジョンから除去するのに使用されてよい。溶媒の除去は、さらなる溶媒を利用しない他の方法を介しても達成され得、炭の使用を含むがこれに限定されない。炭は、混合物が加えられるスラリー内、又は代替としてはカラム内で使用され得る。炭は、溶媒を除去する好ましい方法である。また浸透気化法も、1つ又は複数の溶媒を脱脂したウイルス混合物から除去するのに利用することができる。
【0082】
本発明において脂質含有生物から脂質を除去するのに使用される好適なアミン類の例は、水中で実質的に非混和性であるものである。典型的なアミン類は、少なくとも6個の炭素原子の炭素鎖を有する、脂肪族アミン類である。このようなアミンの非限定的な例は、C6H13NH2である。
【0083】
エーテルは、本発明の方法において使用される好ましい溶媒である。特に好ましいのは、C4〜C8含有エーテル類であり、エチルエーテル、ジエチルエーテル及びプロピルエーテル(ジイソプロピルエーテルを含むがこれに限定されない)を含むが、これらに限定されない。非対称エーテル類も利用することができる。ハロゲン化対称及び非対称エーテル類も利用することができる。
【0084】
低濃度のエーテルは、単独で使用され、且つ他の溶媒と組み合わせて使用されない場合、脂質を除去するのに利用され得る。例えば、低濃度のエーテルの範囲は、0.5%〜30%である。利用されるようなエーテルの濃度は、以下の、0.625%、1.0%、1.25%、2.5%、5.0%、10%又はそれ以上であるが、これらに限定されない。エーテルの希釈溶液が有効的であると観察された。このような溶液は水性溶液又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの水性緩衝液の溶液であり得る。重炭酸、クエン酸、Tris、Tris/EDTA及びTrizma等の他の生理学的緩衝液を使用してもよいが、これらに限定されない。好ましいエーテルは、ジイソプロピルエーテル(DIPE)及びジエチルエーテル(DEE)である。低濃度のエーテルは、アルコール類(例えば、n−ブタノール)と組み合わせて使用してもよい。
【0085】
本発明において使用される場合、適切なアルコール類とは、血漿又は他の生体流体と大量に混和性でないものである。このようなアルコール類は、ペンタノール類、ヘキサノール類、ヘプタノール類、オクタノール類及びこれより多い数の炭素を含有するアルコール類を含む、直鎖及び分枝鎖アルコール類を含むが、これらに限定されない。
【0086】
アルコール類が別の溶媒(例えば、エーテル、炭化水素、アミン又はこれらの組み合わせ)と組み合わせて使用される場合、C1〜C8含有アルコール類を使用してよい。別の溶媒と組み合わせて使用するアルコール類は、C4〜C8含有アルコール類を含む。したがって、本発明の範囲内に含まれるアルコール類は、ブタノール類、ペンタノール類、ヘキサノール類、ヘプタノール類及びオクタノール類並びにこれらのアイソフォームであり、特にはC4アルコール類又はブタノール類(1−ブタノール及び2−ブタノール)である。具体的なアルコール選択は、利用される第2の溶媒に応じる。
【0087】
エーテル類及びアルコール類は、脂質含有ウイルスを含有する流体又はウイルス粒子を処置するための第1の溶媒として、組み合わせて使用することができる。血漿タンパク質に有害な影響を与えることなく、感染性生物から脂質を少なくとも部分的に除去するのに有効的である場合に、アルコールとエーテルとの任意の組合せが使用され得る。一実施形態において、脂質は感染性生物のウイルスエンベロープから除去される。アルコール及びエーテルが、流体中に含有される感染性生物を処置する第1の溶媒として組み合わされる場合、この溶媒中のアルコールのエーテルに対する比は、約0.01アルコール部:99.99エーテル部から60アルコール部:40エーテル部の範囲であり、具体的な比は、約10アルコール部:90エーテル部から5アルコール部:95エーテル部の範囲、具体的な比は、約10アルコール部:90エーテル部から50アルコール部:50エーテル部の範囲、具体的な比は、約20アルコール部:80エーテル部から45アルコール部:55エーテル部の範囲、具体的な比は、約25アルコール部:75エーテル部の範囲である。
【0088】
アルコールとエーテルとの1つの組み合わせは、ブタノールとジイソプロピルエーテル(DIPE)との組み合わせである。ブタノールとDIPEが、流体中に含有される感染性生物を処置する第1の溶媒として組み合わされる場合、この溶媒中のブタノールのDIPEに対する比は、約0.01ブタノール部:99.99DIPE部から60ブタノール部:40DIPE部であり、具体的な比は、約10ブタノール部:90DIPE部から5ブタノール部:95DIPE部の範囲、具体的な比は、約10ブタノール部:90DIPE部から50ブタノール部:50DIPE部の範囲、具体的な比は、約20ブタノール部:80DIPE部から45ブタノール部:55DIPE部の範囲、具体的な比は、約25ブタノール部:75DIPE部の範囲である。
【0089】
アルコールとエーテルとの別の組み合わせは、ブタノールとジエチルエーテル(DEE)との組み合わせである。ブタノールとDEEが第1の溶媒として組み合わされる場合、ブタノールのDEEに対する比は、約0.01ブタノール部:99.99DEE部から60ブタノール部:40DEE部であり、具体的な比は、約10ブタノール部:90DEE部から5ブタノール部:95DEE部の範囲、具体的な比は、約10ブタノール部:90DEE部から50ブタノール部:50DEE部の範囲、具体的な比は、約20ブタノール部:80DEE部から45ブタノール部:55DEE部の範囲、具体的な比は、約40ブタノール部:60DIPE部の範囲である。約40%のブタノールと約60%のDEE(vol:vol)のこの組み合わせは、例えば米国特許第4,895,558号に示されるように、様々な生化学的及び血液学的な血液パラメータに著しい効果を示さなかった。
【0090】
生体流体、及び感染性脂質含有生物の感染力を減少させるためのその処置
上述したように、生体流体中の脂質含有生物の感染力レベルを減少させるため、及び改変されたウイルス粒子を作成するために、様々な生体流体を本発明の方法を用いて処置してもよい。好ましい実施形態において、血漿中の脂質含有感染性生物の濃度及び/又は感染力を減少させるため、及び改変されたウイルス粒子を作成するために、動物又は人から得られた血漿は本発明の方法を用いて処置される。本実施形態において、血漿は動物又は人の患者から、よく知られている方法を用いて患者から血液を抜き取ること、及びこの血液を、血漿から血液の細胞成分(赤血球及び白血球)を分離するために処置することにより、得られ得る。血液を処置するこのような方法は、当業者に既知であり、遠心分離及びろ過を含むが、これらに限定されない。当業者は、赤血球及び白血球からこのような脂質含有生物を分離するための適切な遠心分離条件を理解している。本発明の使用は、他の血漿タンパク質への有害な影響を与えることなく、ウイルスコアの完全性を維持しながら、脂質含有生物(例えば、血漿中に見られるもの)の処置を可能にする。
【0091】
血漿中のウイルスは、本発明の方法での血漿の処置に影響される。脂質含有ウイルス性生物は、当業者に既知である技術を用いて赤血球及び白血球から分離され得る。
【0092】
生体流体は、様々なウイルス株並びに種々のタイプのウイルスを含むウイルス製剤のストックを含む。本発明の方法でのこのような生体流体の処置は、非自己ワクチンとして患者に投与され得る改変されたウイルス粒子を生産する。このような非自己ワクチンは、1つより多いウイルス株に対する、及び/又は1つより多いタイプのウイルスに対する防御を付与する。脂質含有生物の処置は、血液及び血漿以外の生体流体中で起きてもよい。例えば、腹水を、タンパク質成分への有害な影響無しに、脂質含有生物の完全性のレベルに影響を与えるため、本発明で処置してもよい。処置した流体は、続いて、それが得られた動物又はヒトへ再導入され得る。非血液型の流体の処置は、流体中の脂質含有生物(ウイルス等)に影響を与える。
【0093】
血漿等の生体流体がこのようなやり方で、又は例えば血漿バッグを収容している保管設備から得られたら、血漿を上述したように、脂質含有感染性生物中の脂質を溶解することができる第1の有機溶媒と接触させる。第1の有機溶媒を、第1の溶媒が感染性生物中の脂質を実質的に溶解する(例えば、ウイルスを取り囲む脂質エンベロープを溶解する)のに有効的な量で存在するような比で、血漿と混ぜ合わせる。例示的な第1の溶媒の血漿に対する比(第1の有機溶媒対血漿の比で示される)は、以下の範囲で記載される:0.5〜4.0:0.5〜4.0;0.8〜3.0:0.8〜3.0;及び1〜2:0.8〜1.5。様々な他の比を、生体流体の性質に応じて適用してよい。例えば、細胞培養液の場合、以下の範囲が、第1の有機溶媒対細胞培養液の比として利用され得る:0.5〜4.0:0.5〜4.0;0.8〜3.0:0.8〜3.0;及び1〜2:0.8〜1.5。
【0094】
上述したように感染性生物を含有する流体と第1の溶媒とを接触させた後、第1の溶媒及び流体を、以下の好適な混合方法の1つを用いて混合するが、これらに限定されない:穏やかな攪拌;激しい攪拌;ボルテックス;回旋(swirling);ホモジェナイゼーション;及び転倒型回転。
【0095】
第1の溶媒と流体とを十分に混合するのに必要な時間量は、利用した混合方法に関係する。有機相と水相との間の密接な接触を容認するのに十分な期間、および第1の溶媒が、少なくとも部分的に又は完全に感染性生物中に含有される脂質を溶解するまで、流体を混合する。典型的には、混合は、利用した混合方法に応じて、約10秒〜約24時間の期間起こり、約10秒〜約2時間であり得、およそ10秒〜およそ10分間であり得、又は約30秒〜約1時間であり得る。種々の方法に伴なう混合期間の非限定例は、1)約10秒〜約24時間の期間の穏やかな攪拌及び転倒型回転、2)約10秒〜約30分間の期間の激しい攪拌及びボルテックス、3)約10秒〜約2時間の期間の回旋、又は4)約10秒〜約10分間の期間のホモジェナイゼーションを含む。
【0096】
溶媒の分離
第1の溶媒と流体とを混合した後、溶媒を、処置された流体から分離する。有機相及び水相は、当業者に既知の任意の好適な様式により分離してよい。第1の溶媒は典型的には水相中で非混和性であることから、2つの層を分離することができ、非所望の層を除去する。非所望の層は、溶解脂質を含有する有機相であって、その同定は、当業者に既知である通り、溶媒が水相よりも多かれ少なかれ濃いかどうかに応じる。この様式における分離の利点は、溶媒層中の溶解脂質が除去され得るということである。
【0097】
加えて、分離は以下を含む手段(これらに限定されない)により達成され得る:ピペッティングによって非所望の層を除去すること;遠心分離に続いて分離される層を除去すること;層を有する試験管の底に経路又は穴を作り、下層を通り抜けさせること;槽の長軸
に沿って特異的長さに位置するバルブ又は開口を備える槽を使用して、特異的層の接近及び除去を容易にすること;及び当業者に既知である任意の他の手段。層を分離する別の方法は、特に溶媒層が揮発性である場合は、任意に穏やかな加熱を組み合わせた、減圧下での蒸留又は室温での蒸発である。遠心分離を利用する一実施形態においては、比較的低いg力、例えば900×gを約5〜15分間利用して、相を分離する。
【0098】
溶媒を除去する好ましい方法は、炭、好ましくは活性炭の使用である。炭は任意にカラム中に含有される。代替としては、炭はスラリー状で使用されてよい。様々な生分解性型の炭を、これらのカラム中で使用してよい。浸透気化法及び溶媒を除去する炭の使用は、溶媒を除去する好ましい方法である。
【0099】
処置した流体からの第1の溶媒の分離に続いて、第1の溶媒のいくらかは、エマルジョンとして水性層中に捕獲されたまま残り得る。第1の溶媒又は解乳化剤を除去する好ましい方法は、炭等の吸着剤の使用である。炭は、活性炭であることが好ましい。この炭は、上述したように、任意にカラム中に含有される。溶媒を除去するさらなる別の方法は、中空糸接触器(hollow fiber contactors)の使用である。溶媒を除去するための浸透気化法及び炭吸着剤法が好ましい。さらなる別の実施形態においては、捕獲された第1の溶媒の除去を容易にするのに解乳化剤を利用する。解乳化剤は、第1の溶媒の除去を容易にするのに有効的ないかなる剤であってよい。好ましい解乳化剤はエーテルであり、より好ましい解乳化剤はジエチルエーテルである。解乳化剤は、流体又は流体の代替物に添加され得、流体が解乳化剤中に分散され得るようする。ワクチン製剤において、約0.5〜4.0部のアルカン類対約1部のエマルジョン(vol:vol)が、解乳化剤として利用され得、続いてワクチンを調製するのに使用された残っている脱脂生物から、残余アルカンを除去するために洗浄する。好ましいアルカン類は、ペンタン、ヘキサン及び高級の直鎖又は分枝鎖アルカン類を含むが、これらに限定されない。
【0100】
エーテル等の解乳化剤は、前段落で記載したような手段を含む、当業者に既知の手段により除去され得る。エーテル等の解乳化剤を系から除去する1つの便利な方法は、稼動する排気フード(running fume hood)で、又は環境から解乳化剤を回収及び除去するのに好適な他の装置で、エーテルを系から蒸発させることである。加えて、解乳化剤は、約10〜20mbarの圧力有り又は無しで、高温、例えば約24〜37℃の適用を介して除去され得る。解乳化剤を除去する別の方法は、遠心分離による分離を包含し、続いて吸引による有機溶媒の除去、さらに減圧下(例えば、50mbar)での蒸発又は蒸発を助けるために液化点を越える、窒素等の不活性ガスのさらなる供給が続く。
【0101】
生体流体を処置する方法(脱脂)
本発明の方法は、連続的な又は断続的な様式のいずれかにおいて利用され得るということが理解される。すなわち、連続的様式において、流体は、次に流体と混合される第1の溶媒を使用する系へ供給され得、分離され、任意にさらに、解乳化剤の適用を介して除去される。また連続的方法は、脱脂感染性生物を含有する流体を、所望の位置へ続いて返還することを容易にする。このような位置は、このような処置流体の受け取り及び/又は保管のための槽であり得、ヒト若しくは動物の血管系、又は胸膜腔、心膜腔及び腹骨盤腔等の、ヒト又は動物の他の体区画も含み得る。
【0102】
本発明の連続的方法の一実施形態において、生体流体(例えば血液)は、カテーテル等の当業者に既知の手段を用いて動物又はヒトから抜き取られる。ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又は酢酸等の、当業者に既知である適切な抗凝固因子が利用される。次にこの血液を、遠心分離を用いて細胞成分及び血漿成分に分離する。次に血漿を、第1の溶媒と接触させ、第1の溶媒と混合し、血漿中に含有される感染性生物からの脂質除去を達成する。処置血漿からの第1の溶媒の分離に続いて、炭、浸透気化剤又は解乳化
剤を任意に利用し、捕獲された第1の溶媒を除去する。許容可能なレベル(非毒性)の第1の溶媒又は解乳化剤(利用したなら)を確認した後、任意に、血漿と血液から予め分離された細胞とを組み合わせ、少なくとも部分的に脱脂されたウイルス粒子(本明細書中においては改変されたウイルス粒子とも呼ばれる)を含有する新たな血液試料を形成する。
【0103】
本発明の実施を介して、感染性生物の感染力は大きく減少するか、又は消失する。もともとは血液から分離された細胞との組み換えに続いて、低脂質レベルを有し、且つ脂質含量の低減したウイルスを含有する流体が、血管系又はヒト若しくは動物の他の系のいずれかへ再導入され得る。ヒト又は動物から抜き取られた血漿のこのような処置の効果、並びに部分的に若しくは完全に脱脂された感染性生物を含有する試料又は改変されたウイルス粒子のヒト若しくは動物への返還は、ヒト又は動物の血管系に含有される感染性生物の完全性の正味の減少を引き起こす。また改変されたウイルス粒子は、患者に投与されたとき、患者内において自己免疫応答を開始する役割を果たす。この動作形態(mode of operation)において、本発明の方法は、ヒト又は動物がこのような処置のための体外装置に接続される間、連続的な様式で流体を処置するのに利用される。
【0104】
さらなる別の実施形態において、断続的な又はバッチ形態において、ヒト又は動物は、本発明の方法で流体を処置するための体外装置へ接続されない。断続的動作形態において、本発明は、ヒト又は動物から予め得た流体を利用し、これは血漿、リンパ液又は卵胞液を含み得るが、これらに限定されない。流体は、血液バンクに含有されていても、又は代替として、方法の適用前にヒト若しくは動物から取り出してもよい。流体は生殖器液又は人工授精若しくは体外受精の過程において使用される任意の流体であってよい。また流体は、ヒト又は動物から直接的に得られるものでなくてもよいが、細胞培養液等の潜在的に感染性生物を含有する任意の流体でよい。ウイルスの様々な菌株及びクレードのストック、及び複数ウイルスストックが、ワクチンを生産する本方法において使用することができる。この動作形態において、この流体を本発明の方法を用いて処置し、少なくとも部分的に又は完全に脱脂された感染性生物若しくは改変されたウイルス粒子を含有する低脂質レベルの新たな流体を生産する。本発明のこの形態の一実施形態は、他の動物又はヒトから事前に得られた血漿試料を処置し、続く輸液(transfusion)のために血液バンク内に貯蔵することにある。これは、ワクチン防御を付与する非自己方法である。これらの試料は、生体試料からの、HIV、肝炎ウイルス、及び/又はサイトメガロウイルス等の1つ又は複数の感染性疾患を処置又は予防する、本発明の方法で処置され得る。
【0105】
感染性生物の脱脂は、様々な手段により達成される。バッチ法は、新鮮な又は貯蔵された生体流体(例えば、新鮮な冷凍血漿)に対して使用することができる。この場合、様々な記載した有機溶媒又はその混合物が、ウイルス不活化に使用することができる。抽出時間は、溶媒又はその混合物、及び利用された混合手順に応じる。
【0106】
本発明の方法の使用を介して、流体中の脂質含有ウイルス中の脂質レベルは減少し、流体(例えば、改変されたウイルス粒子を含有する脱脂血漿)が患者へ投与され得る。このような流体は低い感染力を有する改変されたウイルス粒子を含有し、ワクチンとして作用し、免疫応答を生じること、及び疾患の重篤性を減少させることにより、患者にウイルスに対する防御を付与、又は感染患者における処置を提供する。これらの改変されたウイルス粒子はレシピエント中において免疫応答を誘導し、改変されたウイルス粒子上のエピトープを露出させる。代替として、改変されたウイルス粒子は薬学的に許容可能な担体、任意にアジュバントと組み合わせてもよく、ヒト又は動物へワクチン組成物として投与され、レシピエント内において免疫応答を誘導してもよい。
【0107】
ワクチン生産
1つの実施形態において、少なくとも部分的に若しくは実質的に脱脂され、且つ免疫原
性特性を有する改変されたウイルス粒子は、任意に、薬学的に許容可能な担体と組み合わされ、ワクチンを含む組成物を作る。好ましい実施形態において、改変されたウイルス粒子は、血漿等の生体流体中に、低脂質レベルで保持され、ワクチンとして患者へ投与される。このワクチン組成物は、任意に、アジュバント又は免疫刺激剤と組み合わされ、動物又はヒトへ投与される。組み合わせワクチンを含む自己ワクチン及び非自己ワクチンの両方が、本発明の範囲内である。1つより多いウイルス菌株又はワクチン接種後の1つより多いウイルス性疾患に対する防御を付与するために、ワクチン組成物は、1つより多いタイプの改変されたウイルス粒子又はその成分を含有し得ることが理解される。このような組み合わせは、所望の免疫性に従って選択され得る。例えば、好ましい組み合わせは、HIV及び肝炎、又はインフルエンザ及び肝炎を含むが、これらに限定されない。より具体的には、ワクチンは、患者特異的抗原を有する複数の改変されたウイルス粒子、及び非患者特異的抗原を有する改変されたウイルス粒子、又は本発明の脱脂過程を受けたストックウイルス粒子を含むことができる。生物の、残りの改変されたウイルス粒子は、脱脂生体流体中に保持され、動物又はヒトへ再導入されるとき、おそらく貧食細胞により摂取され、免疫応答を生じる。
【0108】
本発明の方法を用いて生産されたワクチンの投与
脱脂感染性生物(例えば、抗原決定基が露出した改変されたウイルス粒子の型のもの)が動物又はヒトに投与される場合、任意に薬学的に許容可能な担体と組み合わせてワクチンを生産し、任意に当業者に既知であるアジュバント又は免疫刺激剤と組み合わせる。ワクチン配合物は、都合よく、単位投与形態で提示され得、当業者に既知である従来の薬学的技術により調製され得る。このような技術は、有効成分及び液体担体(薬学的担体(複数可)又は賦形剤(複数可))と均一且つ親密に関連付けられる。非経口投与に好適な配合物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び配合物を対象とするレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有してよい水性及び非水性滅菌注射液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含んでよい水性及び非水性滅菌懸濁液を含む。
【0109】
配合物は、例えば密封アンプル及びバイアルのような、単位用量又は複数回投与槽において提示され得、使用直前に例えば注射用の水のような滅菌液体担体の添加のみを必要とするように、冷凍乾燥(凍結乾燥)条件で貯蔵され得る。ワクチンは、約4℃〜−100℃の温度で貯蔵され得る。またワクチンは、室温を含む種々の温度で凍結乾燥状態で貯蔵され得る。即時調製注射液及び懸濁液は、当業者により一般に使用される滅菌粉末、顆粒及び錠剤から、調製され得る。ワクチンは、当業者に既知の従来手段を介して滅菌され得る。このような手段は、ろ過、放射線及び熱を含むがこれらに限定されない。本発明のワクチンは、細菌の成長を阻害するために、チメロサールなどの静菌剤と組み合わせてもよい。
【0110】
好ましい単位用量配合物は、投与された成分(ingredient)の用量若しくは単位を含有するもの、又はその適切な画分である。特に上記で述べた成分に加えて、本発明の配合物は、当業者により一般に使用される他の剤も含み得ることが理解されるべきである。
【0111】
ワクチンは、経口等の種々の経路(頬側若しくは舌下、直腸、非経口、エアロゾル、経鼻、筋肉内、皮下、内皮、静脈内、腹腔内及び局所的)を介して投与され得る。またワクチンは、リンパ組織の付近、例えば腋窩、鼠経、又は頚部リンパ節などのリンパ節への投与を介して、投与される。
【0112】
本発明のワクチンは、溶液、エマルジョン及び懸濁液、ミクロスフィア、粒子、微小粒子、ナノ粒子並びにリポソームを含む、種々の型で投与され得るが、これらに限定されない。一免疫化投与計画当たり約1〜5用量が必要であり得ることが推定される。ワクチンを投与する医学又は獣医学の当業者は、必要な場合、例えば患者の年齢及び大きさを考慮
して、初回注射及び追加免疫注射において投与されるワクチンの量はなじみがあるであろう。初回注射は、全ウイルスタンパク質に基づいて、約1ng未満〜1グラムの範囲であり得る。非限定的な範囲は、1ml〜10mlであり得る。投与の容積は、投与経路に応じて異なってよい。
【0113】
ワクチン接種スケジュール
本発明のワクチンは、感染の前、最中、又は後に投与され得る。本発明のワクチンは、ヒト又は動物のいずれかに投与され得る。一実施形態において、ヒト又は動物のウイルス量(1つ又は複数のウイルス)は、血漿の脱脂処置により減少され得る。同一個体は、1つ又は複数のウイルスを対象としたワクチンを受け取ってよく、これにより免疫系を刺激して個体中に残るウイルスに対して闘う。初回感染前のワクチン投与の時間は、当業者に既知である。しかし、疾患進行を改善するため、又は疾患を処置するために、初回感染の後にワクチンを投与してもよい。
【0114】
アジュバント
当業者に既知である様々なアジュバントを、ワクチン組成物中の改変されたウイルス粒子と併せて投与してもよい。このようなアジュバントは以下を含むが、これらに限定されない:重合体、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体等の共重合体、ブロック共重合体を含む;ポリマーP1005;モノチドISA72;フロイント完全アジュバント(動物用);フロイント不完全アジュバント;モノオレイン酸ソルビタン;スクワレン;CRL−8300アジュバント;ミョウバン(alum);QS21、ムラミルジペプチド;トレハロース;マイコバクテリア抽出物を含む細菌抽出物;解毒エンドトキシン;膜脂質;油中水混合物、水中油中水混合物又はこれらの組み合わせ。
【0115】
懸濁化液体(suspending fluid)及び担体
当業者に既知である様々な懸濁化液体又は担体を、ワクチン組成物を懸濁するのに利用してよい。このような液体は限定されずに以下を含む:滅菌水、生理食塩水、緩衝剤、又は成長培地に由来する複合液体若しくは他の生体流体。当業者に既知である保存剤、安定剤及び抗生物質を、ワクチン組成物中に利用してよい。
【0116】
以下の実験例は、ウイルス粒子の脱脂過程が起こったこと、及び特にウイルス粒子が改変され、それが由来する種において陽性免疫原性応答を示すことを説明している。他の実施形態及び使用が当業者に明らかであり、本発明はこれらの具体的説明的な実施例又は好ましい実施形態に限定されないことが理解されるであろう。
【実施例1】
【0117】
A.血清の脱脂は、感染力が低減されたアヒルB型肝炎ウイルス(DHBV)を生産する
106のID50用量のDHBVを含有する標準的なアヒル血清プールを(Camden)使用した。ID50は、上記用量で処置した動物の50%を感染するのに有効な感染投与量(ID)として当業者に既知である。21羽のアヒルの子が、孵化の日にDHBV陰性群として得られた。これらのアヒルの子は、ドットブロットハイブリダイゼーションにより、購入時に試験して、DHBV DNA陰性であると示された。
【0118】
有機溶媒系は、ジイソプロピルエーテル60部に対してブタノール40部の比で混合した。混合した有機溶媒系(4ml)を標準的な血清プール(2ml)と混合して、室温で1時間、穏やかに回転させた。混合物を400×gで10分間遠心分離して、下部水相(血漿を含有する)を室温で取り出した。続いて、水相を等容量のジエチルエーテルと混合して、上述のように遠心分離して、任意の残存脂質/溶媒混合物を除去した。水相を再び取り出して、等容量のジエチルエーテルと混合して、再度遠心分離した。水相を取り出して、ヒュームキャビネット中で室温で約1時間、空気に当てることにより、任意の残留ジ
エチルエーテルを除去した。脱脂された血漿(ウイルス粒子有り又は無し)を−20℃で保管した。
【0119】
陽性及び陰性の対照アヒル血漿をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で希釈した。陽性対照:106のID50用量のDHBVを含有するプールされた血清2mlを、PBS4mlと混合した。陰性対照:プールされたDHBV陰性血清2mlを、PBS4mlと混合した。残留感染力を、試験試料(n=7)、陰性(n=7)又は陽性(n=7)対照のいずれか100μlを、産後1日目のアヒルの腹膜腔へ接種することにより試験した。対照は、有機溶媒で処置したDHBV陰性血清を用いて実施し、続いてPBSと混合して、レシピエントアヒルへ注射した。
【0120】
陽性対照アヒルのうちの1羽は、4日齢〜6日齢で死亡したため、さらなる分析から排除した。さらなる3羽の陽性対照アヒルは、9日齢〜10日齢で死亡し、処置2羽及び陰性対照1羽は、11日目に死亡した。実験を終結させることに決めた。残りのアヒルの子は、12日目にペントバルビトンナトリウム(静脈内)を用いて安楽死させ、それらの肝臓を、Deva他(J. Hospital Infection 33:119-130, 1996)に記載されるように、DHBV
DNA分析用に取り出した。7羽の陰性対照アヒルはすべて、DHBV陰性のままであった。6羽の陽性対照アヒルすべての肝臓は、DHBV陽性であった。7羽の試験アヒルは、それらの肝臓においてDHBV DNAに関して陰性のままであった。
【0121】
上記溶媒系を用いた血清の脱脂は、感染力が低減されたDHBVをもたらした。処置血清を投与したアヒルの子はいずれも、感染しなかった。実験は、14日でなく12日で終結されなくてはならなかったが、残りの陽性対照アヒルは、DHBVに関して陽性であった(3/3は、10日目にはDHBV陽性であった)。これは、肝臓においてDHBV陽性となるのに十分な時間が、処置したアヒルに関して経過していたこと、及び実験の早期終了は、結果に関係しなかったことを示唆する。
【0122】
B.DHBV感染を防止するワクチンとしての脱脂されたDHBV陽性血清
アヒルB型肝炎ウイルス(DHBV)に対する患者特異的「自己」ワクチンを提供するための脱脂手順の有効性を検査した。およそ16羽の北京交雑アヒル(Pekin cross ducklings)が、孵化の日にDHBV陰性群として得られた。アヒルの子は、ドットブロットハイブリダイゼーションを用いたDHBV DNAの分析により、試験して、DHBV DNA陰性であると決定された。アヒルは、以下の3つの群に分けられた:
【0123】
【表1】
【0124】
1.グルタルアルデヒド不活化
グルタルアルデヒド不活化は、約1:250でのグルタルアルデヒドの希釈溶液による
固定により、当業者に既知であるように達成された。グルタルアルデヒドは、よく知られた架橋剤である。
【0125】
2.脱脂手順
有機溶媒系を用いて、血清の脱脂を実施した。溶媒系は、40%のブタノール(分析用試薬等級)及び60%のジイソプロピルエーテルから構成され、2:1の比で血清と混合した。したがって、有機溶媒4mlを血清2mlと混合して、1時間回転させた。この混合物をおよそ400×gで10分間、遠心分離した後、水相を取り出した。続いて、水相を等容量のジエチルエーテルと混合して、400×gで10分間、遠心分離した。次に、水相を取り出して、等容量のジエチルエーテルと混合して、30rpmで約1時間、転倒させて回転させ、400×gで10分間遠心分離した。水相を取り出して、残留ジエチルエーテルを、ヒュームキャビネット中でおよそ10〜30分間、蒸発により除去した。処置した血清は、ジエチルエーテルの除去後に残り、ワクチンを生産するのに使用した。脱脂手順の対照は、DHBV陽性血清と同じ脱脂手順に、DHBV陰性血清をさらすことを包含した。
【0126】
【表2】
【0127】
4.実験手順
孵化後29日目に、アヒルをDHBV陽性血清(血清プール20.1.97)1,0000μlで曝露した。血清プール20.1.97は、ドットブロットハイブリダイゼーションにより、1.8×1010のゲノム当量(gev)/mlを有することが示された。1ゲノム当量(gev)は、およそウイルス粒子1個である。1日目及び10日目に完全なワクチン接種前に、17日目及び23日目に曝露前に、並びに37日目、43日目及び52日目に曝露後に、アヒルを出血させた。それらの血清を、Deva他(1995年)により
記載されるように、ドットブロットハイブリダイゼーションにより、DHBV DNAに関して試験した。アヒルを58日目に安楽死させて、それらの肝臓を取り出し、DNAを抽出して、Deva他(1995年)により記載されるように、ドットブロットハイブリダイゼーションにより、DHBVの存在に関して試験した。
【0128】
5.結果の分析
a.試験アヒル。試験ワクチンをワクチン接種した6羽の試験アヒルは、曝露後に血清及び肝臓において、DHBV DNAに関して陰性のままであった。試験アヒル1羽は、曝露後にDHBVに関して陽性となった。
【0129】
b。擬(シャム)(sham)ワクチン接種アヒル。グルタルアルデヒド不活化血清をワクチン接種したアヒル4羽はすべて、DHBVでの曝露後にDHBV陽性となった。
【0130】
c.偽(モック)(Mock)ワクチン接種アヒル。6羽の偽ワクチン接種陰性対照アヒルのうち6羽すべてが、曝露後にDHBV陽性となった。
【0131】
カイ二乗分析を用いて、処置間の差を比較した。かなり多くの対照アヒル(偽ワクチン接種)が、脱脂された血清をワクチン接種したアヒルよりも曝露後にDHBV陽性となった(p<0.05)。
【0132】
上記プロトコルを用いた脱脂されたDHBV陽性血清によるアヒルの子のワクチン接種は、6羽のアヒルの子のうち5羽において、DHBV陽性血清による曝露後に、DHBV感染の防止をもたらした。これは、脱脂された血清ワクチンが、ワクチン接種したアヒルにおいて陽性免疫原性応答を誘導することが可能であることを示唆する。さらに、脱脂過程は、これまでに露出されていなかった患者特異的抗原を露出させ、及び/又はウイルス粒子構造における構造変化を引き起こし、陽性免疫原性応答を可能にさせたと考えられる。相対的に、6羽の偽(モック)ワクチン接種アヒルのうちの6羽及び4羽の擬(シャム)ワクチン接種アヒルのうちの4羽は、ワクチン接種後にDHBV陽性となり、免疫応答の欠如に起因して、これらのアヒルにおける免疫性の誘導が無かったことを示唆した。
【実施例2】
【0133】
A.C型肝炎に関するモデルとしてのウシペスチウイルス(Cattle Pestivirus)(ウシウイルス性下痢ウイルス、BVDV)の脱脂
標準的なウシペスチウイルス単離物(BVDV)をこれらの実験で使用した。この単離物「ヌメレラ(Numerella)」BVDウイルスは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州(NSW)のビーガ地域の農場での「粘膜病」の典型的な事例から提出された診断用検体から1987年に単離された。このウイルスは、非細胞変性であり、タイピング試薬としてのオーストラリアNSW州のthe Elizabeth Macarthur Agricultural Institute(EMAI)で産生したモノクローナル抗体のパネルの12個すべてと反応する。したがって、このウイルスは、オーストラリアBVDウイルスの「標準的な株」を表す。
【0134】
ヌメレラウイルスを、外来性ウイルス剤(BVDVを含む)を含まないで試験されるウシMDBK細胞中で成長させた。ウイルス成長に使用した培地は、EMAIのウシから得られる10%成体ウシ血清を含有しており、そのすべてが、BVDVウイルス及びBVDV抗体を含まないで試験された。この血清補充物は、確実に試験ウイルスが培養系において唯一のウイルスであるように予防措置を講じない世界中の研究室での一般的な欠点である、試験系の外来性BVDV混入の可能性を排除するのに長年使用されている。これらの試験培養系を使用することにより、ウイルスの高レベルの複製及び感染性ウイルスの高収率が保証された。MDBK細胞における5日間の成長後の最終的なウイルス収率の滴定は、清澄化(遠心分離)した培地1ml当たり106.8個の感染性ウイルス粒子の力価を示
した。
【0135】
1.感染BVDVの処置
106.8個のウイルス粒子/mlを含有する組織培養上清100mlを、150cm2の組織培養フラスコから回収した。遠心分離により上清を清澄化し(3,000rpm、10分、4℃で細胞片をペレット化)、10mlを、動物接種用の陽性対照(未処置ウイルス)として取っておいた。107.75個の感染性ウイルスを含有する残りの90mlを、以下のプロトコルを使用して処置した:溶媒混合物ブタノール:ジイソプロピルエーテル(DIPE)(2:1)180mlを、500mlの三角フラスコへ添加して、回旋させることにより混合した。続いて、混合物を、オービタルシェーカーで室温で30rpmにて60分間振とうした。次に、それを4℃で400×gにて10分間、遠心分離し、その後、有機溶媒相を除去して廃棄した。続く工程では、底部層(水相)を有機相の下から取り出して、かなり収率を改善させた。
【0136】
ブタノール:DIPE処置後、水相を等容量の新鮮なジエチルエーテル(DEE)で4回洗浄して、混入する微量のブタノールすべてを除去した。各洗浄後、フラスコの内容物を回旋させて、水相及び溶媒相の両方の均等な混合を確実にした後、上述のように遠心分離した(400×g、10分、4℃)。4回の洗浄後、混入を防止するためにゴムバンドでビーカーの最上部に固定された滅菌組織で覆われた滅菌ビーカー中に水相を入れて、連続的に稼動するヒュームフード中に一晩(16時間)入れ、残存する揮発性エーテル残留物すべてを不活化ウイルス調製物から除去した。処置した材料の続く培養は、混入を示さなかった。次に、任意の残存感染性ウイルスに関して試験するために組織培養又は動物へ接種するまで、処置したウイルス調製物を滅菌条件下にて4℃で保管した。
【0137】
2.処置したBVDV調製物の試験
a.組織培養接種
約107.1のウイルス当量を含有すると予測される、溶媒で処置したウイルス調製物2ミリリットルを、10%の試験されていない(tested-free)成体ウシ血清を含有する組織培養培地最小イーグル培地(MEM)8mlと混合し、25cm2の組織培養フラスコ中でMDBK細胞の単層上へ60分間吸着させた。陽性対照として、未処置、すなわち実質的に脂質を含有する感染性ウイルス(同様に約107.1のウイルス当量を含有する)2mlを、同様に25cm2の組織培養フラスコ中でMDBK細胞上へ吸着させた。60分後、上清を両方のフラスコから除去して、正常成長培地(+10%ABS)と入れ換えた。続いて、細胞を標準的な条件下で5日間成長させた後、MDBK細胞を固定させて、標準的なイムノペルオキシダーゼプロトコルを用いて、6個のBVDV特異的モノクローナル抗体の混合物(EMAIパネル、2つの異なるBVDウイルスタンパク質と反応性を有する)で染色した。
【0138】
有機溶媒で処置したウイルスを接種したMDBK細胞の単層中に感染細胞は存在しなかた。対比して、対照フラスコ(非不活化BVDVを接種した)中の細胞のおよそ90%は、規模の大きな特異的なイムノペルオキシダーゼ染色により示されるように、ウイルスに関して陽性であった。これらの結果は、in vitroの試験条件下では、処置した少なくとも部分的に脱脂されたBVDV調製物には感染性ウイルスは残存しなかったことを示した。
【0139】
b.動物接種
未処置(抗体陰性)ウシに少なくとも部分的に脱脂されたウイルス調製物を接種することは、in vivoでより一層感受性が高い試験である。ウイルスの細胞への侵入及び複製がBVDVに関して極めて効率的であることを考慮すると、かかる動物において皮下注射したわずか1個の感染性ウイルス粒子は、感染性ウシ用量であるとみなされる。10
頭の抗体陰性去勢ウシ(10〜12月齢)の群を無作為に3つの群に配分した。
【0140】
6頭の去勢ウシの第1の群を用いて、BVDVが低減された感染力を有するかどうかを試験した。上述したのと同じ少なくとも部分的に脱脂されたBVDVの調製物をこの実施例で使用した。ワクチン群用の陽性対照として作用するように、2頭の去勢ウシに、少なくとも部分的に脱脂されたウイルス粒子を有するワクチンを接種した。これらの2頭の陽性対照動物を別個の隔離条件下で実施して、それらが感染後に(通常、生BVDVウイルスを施した4〜7日後)一過性のウイルス血症を発症した場合に、それらが他の動物に感染するのを防止した。2頭の残りの去勢ウシは、動物のワクチン接種群内で天然に存在しないペスチウイルス伝染が確実に存在しないように、陰性「歩哨」動物として作用した。EMAIで開発された確証された競合ELISAを用いて、10頭すべての動物において抗体レベルを測定した。この試験は、別個にCSL Ltdにより確証されており、ヨーロッパではIDEXX Scandinaviaにより売買される。
【0141】
第1の群における6頭の動物それぞれに、市販のアジュバントに組み込まれた少なくとも部分的に脱脂されたBVDV調製物4.5mlの皮下注射を施した。少なくとも部分的に脱脂された調製物の各mlは、106.8のウイルス当量を含有していたため、脱脂過程前の総ウイルス量は、107.4の組織培養感染用量(TCID)50であった。陽性対照動物に、第1の群と同様の方法で皮下注射された脱脂されていない調製物それぞれ5ml、すなわち107.5のTCID50を施した。残りの2つの「歩哨」動物にはいかなるウイルス抗原を付与せず、試行が行われる間、群に存在する天然のペスチウイルス活性が確実に見られないように、試行の間中、第1の群の動物とともに放牧させた。
【0142】
第2の用量のワクチンを付与するまで、少なくとも部分的に脱脂されたBVDウイルスを施したワクチン接種去勢ウシのいずれにおいても抗体発現は見られなかった。したがって、単回用量の2週及び4週後に、6頭の去勢ウシは抗体陽転(seroconvert)せず、少なくとも部分的に脱脂されたウイルス調製物総容量27ml中に感染性ウイルスは残っていなかったことを示す。これは、108.2のTCID50の総不活化に相当する。対比して、脱脂前にウイルス調製物それぞれ5mlを施した2頭の去勢ウシにおいては、接種の2週及び4週後の両方で、高レベルの抗E2抗体(中和抗体)及び抗NS3抗体両方が存在した。これにより、脱脂前のウイルスの感染性質が確認された。これらのin vivoの結果により、in vitro組織培養試験の見解が確認される。2頭の「歩哨」動物は、終始血清陰性のままであり、群れは天然のペスチウイルス感染のないままであることを示した。
【0143】
使用したモノクローナル抗体のパネルは、無傷ウイルスの脂質エンベロープ中に組み込まれる糖タンパク質である主要エンベロープ糖タンパク質(E2)に対して向けられる宿主抗体を検出した。試験系はまた、ウイルスにより感染された細胞内で作製される非構造タンパク質NS3に対して向けられる抗体を検出した。このタンパク質は、ウイルス複製において主要な調節の役割を有し、感染性ウイルス内には存在しない。ワクチン接種去勢ウシにおいて感染性ウイルスが存在するという徴候は見られず、感染性ウイルス粒子すべてが破壊されたことを示した。ペスチウイルスはすべて、RNAウイルスである。したがって、脱脂された調製物中にウイルスDNAは存在しなかった。これらの結果は、脱脂されたウイルスを施した動物中で実質的に感染性ウイルスが見られないように、少なくとも部分的にウイルスを脱脂する本発明の方法の有効性を実証する。
【0144】
B.去勢ウシにおけるワクチンとしての脱脂されたBVDV調製物
セクションAで上述した少なくとも部分的に脱脂されたBVDV調製物4.5mlの初回用量を施した6頭の去勢ウシすべてに、第1の初回刺激用量の4週後に、同様の用量を再び皮下注射した。このとき、初回用量後に抗体応答は見られなかった。動物が第2の用
量後に反応することは正常である。抗E2抗体レベル(血清中和抗体SNTに相当する)に対する強力な二次抗体応答が、6頭のうち3頭において、少なくとも部分的に脱脂されたウイルスの第2の用量の2週後に観察された。この応答は、競合ELISAにおいて70%を上回る阻害であった。残りの3頭の動物は、弱い抗体応答を示した(23〜31%阻害)。
【0145】
抗E2抗体応答と対比して、少なくとも部分的に脱脂されたBVDVの第2の用量の2週後に、たった1頭の動物が、強力な抗NS3抗体応答(93%阻害)を発現した。第2の動物は、弱い抗NS3応答(29%阻害)を有し、4頭の動物は、2回用量の投与後に抗体を示さなかった。少なくとも部分的に脱脂されたBVDVワクチンの投与後の類似の応答がこれまでに観察されていたため、これは意外ではなかった。抗E2抗体レベルが第2の用量の2週後に6頭のワクチン接種去勢ウシすべてにおいて測定可能であったため、少なくとも部分的に脱脂されたBVDV調製物の2回用量後の去勢ウシにおける抗体レベルは、ワクチンとしてのその潜在性を明示する。
【実施例3】
【0146】
マウスにおいてSIV特異的体液性応答及びCD4+T細胞記憶応答を誘導又は増強するための脱脂されたSIVの使用−レンチウイルス感染に対する新たな自己ワクチン接種戦略のモデル
以下の研究は、SIVと称されるヒトHIVのサル等価体に焦点を当てた。目的は、脱脂されたSIVmac251(SIVのクローニングされていない高度に病原性の単離体)を利用して、マウスにおける脱脂されたウイルスの相対免疫原性を決定するための研究を行うことであった。マカクのサル免疫不全ウイルスの感染クローン(SIVmac239)の完全ヌクレオチド配列は決定されている。この分子クローンから生産されるウイルスは、研究室の研究に適した時間枠で、アカゲザルにおいてAIDSを引き起こす。両方の末端反復配列を含むプロウイルスゲノムは、10,279塩基対であり、gag、pol、vif、vpr、vpx、tat、rev及びenvに対するオープンリーディングフレームを含有する。nef遺伝子は、92番目のコドンの後に、インフレームの中途終止を含有する。ヌクレオチドレベルで、SIVmac239は、SIVmac251(98%)及びSIVmac142(96%)に密接に関連する(Regier DA, Desrosiers Annual Review Immunology. 1990; 8:557-78)。
【0147】
実験を実施して、予め初回刺激されたBalb/cマウスにおいてウイルス特異的体液性及び/又は細胞性免疫応答の容易に認識可能な追加免疫を生じる、脱脂されたサル免疫不全ウイルス(SIV)の最小用量を決定した。実験はすべて、BSL3施設で行った。
【0148】
脱脂されたウイルス調製物の免疫原性を、その自然形態の同じウイルスの分取量と比較した。同等のタンパク質量の脱脂されていないウイルス調製物及び脱脂されたウイルス調製物によるマウスの免疫化により誘導される、抗体の質(抗体の力価、抗体の立体構造的及び線状エピトープ特異性、抗体のアイソタイプ含有量並びに抗体の機能)及び抗体の量は、以下に記載するように確認された。野生型ウイルスの分取量からの総タンパク質及び同じ分取量のウイルスの脱脂後に回収されるタンパク質は、標準的な定量的タンパク質アッセイを用いて決定された(Biorad、BCAキットアッセイ、Rockford, Illinois)。総タンパク質プロファイルは、野生型ウイルス及び脱脂されたウイルス調製物のSDS−PAGE分析を用いて決定され、相対的エピトープ保存は、野生型と脱脂されたウイルスのウェスタンブロット比較により確認された。
【0149】
同等なタンパク質量の化学的に処置した野生型及び脱脂されたウイルスは、マウスの群においてウイルス特異的免疫応答を追加免疫するそれらの能力に関して分析された。これらの免疫化マウスからの血清は、未処置野生型に対する反応性に関して、及び脱脂された
ウイルス調製物との比較用に、ELISA及びウェスタンブロット分析によりアッセイされた。脾臓細胞は、以下に概要するように、それらのCD4及びCD8 SIVウイルスenv及びgag特異的免疫応答増強能力に関してアッセイされた。標準的な統計学的解析をデータ解析のために実施した。
【0150】
4〜6週齢の健常な雌Balb/cマウスをからthe Jackson labs, Bar Harbor, Me購入して、Emory UniversityにあるBSL2/3マウス収容施設に収容した。20匹のBal/cマウスをそれぞれ、等容量のフロイント不完全アジュバントに組み込まれた2−2ジチオピリジン不活化SIVmac251のタンパク質25μgで皮下的に免疫化した。
【0151】
十分量のSIVmac251を脱脂して、1回のスケジュールにつきこれらのマウスを追加免疫するのに必要とされる量を提供した。脱脂は、SIVmac251をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の10%DIPEとともにインキュベートすることから構成された。PBS中の10%DIPE溶液1.0mlを調製して、それが濁って見えてくるまでボルテキサーで混合した。
【0152】
ウイルス調製物:Advanced BiotechnologiesのSIVmac251の1mlチューブを種ストックとして使用した(ショ糖勾配精製したウイルス1mg/ml)。供給業者は、総タンパク質1.074mg/ml(PierceのBCAタンパク質法)及びウイルス粒子カウント6.9510/ml(EM)を有する力価106.7を報告した。ウイルスは、最初は迅速アッセイとしてCEMx174を用いて、二度目は四重培養/希釈で、力価107.0を有していることが確認された。この調製物におけるp27の測定は、106μg/mlの値を示した。次に、無希釈ウイルスストック25μlを、0.6mlの透明なスナップキャップポリエチレンエッペンドルフチューブ1へ導入した。続いて、10%DIPE溶液2.5μlを、ウイルスを含有するエッペンドルフチューブへ添加して、15秒間ボルテックスした。チューブを室温で1,000×gにて2分間回転させた(エッペンドルフ5810R遠心機を用いて)。大半の溶媒は除去されなかった。溶媒を2,000rpmで加熱無しで30分間真空遠心分離(Speedvacの濃縮装置モデルSVC200H)により除去した。チューブ内の容量をPBSで25μlに調節した。総タンパク質の回収を、PierceのBCAプロトコルを用いて測定した。ゲル(12%SDS−PAGE)を特異的タンパク質の回収(envタンパク質、polタンパク質、gp41、p27及びgagタンパク質)に使用して、クマシーブルーで染色して、ODを用いて半定量的な結果を提供した。ウェスタンブロットは、SIV感染サルからの血清を用いて実施され、エンベロープタンパク質、gp66、gp41、p27、gag及びp6 gagを測定した。調製物のウイルス感染力は、ルシフェラーゼアッセイ及びCEM−174細胞を用いて決定した。ウイルス力価は104.5であり、脱脂されていないストックで測定したものから2.5log減少した。この脱脂されたSIV調製物は、90%を上回るSIVmac251の主要タンパク質構成成分(例えば、gag及びenvタンパク質)を保持するようである。
【0153】
次に、改変されたウイルス調製物の免疫原性は、2−2ジチオピリジン不活化SIVmac251のタンパク質25μgで皮下的にそれぞれ免疫化した、上述の20匹の成体雌Balb/cマウスで決定された。14日目に、群3〜6を、生理食塩水0.5ml中の脱脂されたウイルス10μg〜0.01μg(ストックの総タンパク質に基づいて)で追加免疫した。推定される実際のウイルスタンパク質含有量は、ストック中の総タンパク質/p27タンパク質の比に基づいて、総タンパク質の1/10のウイルスタンパク質含有量に等しかった。マウスに以下のような脱脂されたワクチン組成物を注射した:
【0154】
【表3】
【0155】
追加免疫注射の4日後、マウスに麻酔をかけて、眼窩後穿刺及び心臓内穿刺により血液を回収した。主に心臓内穿刺から、血液約0.5mlを各マウスから回収した。血液を室温で凝固させた。各マウスの脾臓を無菌的に取り出して、二重袋収納下で研究室に輸送した。各マウスからの凝固血液を、室温で約450×gで遠心分離して、血清をチューブから回収して、滅菌チューブに移して、使用するまで−70℃で保管した。ELISAを実施して、各血清試料に関して、SIVに対する抗体力価を決定した。
【0156】
SIV ELISAプロトコル
陽性及び陰性血清並びに試験されるべき流体のストックを分取量で凍結して、あらゆるプレート上で使用して、各実行を標準化した。
【0157】
コーティングされたCorningのEasyプレートをPBS(pH7.2〜7.4)1ml当たり10μgの濃度で、ウェル1つにつきポリ−l−リシン100μlで洗浄した。プレートをカバーして、4℃で一晩インキュベートした。幾つかのプレートを一度にコーティングして、続く使用のために保管した。次に、過剰量のポリリシンを除去して、プレートを数分間乾燥させた。2%トリトン−X約100μlを、ストックABI SIVmac251 100μlに添加して、試料を5分間置いた。次に、pH9.6のコーティング緩衝液50μlを添加した。次に、ウイルス抗原100μlを5つのプレートの各ウェルに添加して、それらのプレートをカバーして、4℃で一晩インキュベートした。
【0158】
一晩のインキュベーション後、ウェルをPBS−Tで3回洗浄した。続いて、ウェルに、ウェル1つにつきPBS中の2%脱脂粉乳200μlを室温で1時間入れて、非特異的結合をブロックした。過剰量の液体を除去した。10%子ウシ血清を伴う10%RPMI1640又はPBS中で1/100に希釈された試験又は対照血清100μlを二重ウェルに添加して、37℃で2時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで4回洗浄した。次に、Southern Biotech(Fisherから)のアルカリホスファターゼ抗マウスIgG(10%子ウシ血清を伴う培地又はPBS中で1/800に希釈)100μlを添加して、37℃で1時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで4回洗浄した。
【0159】
BIORADのアルカリホスファターゼ基質キットを使用して、反応生成物を展開させた。基質錠剤を1×緩衝液5mlそれぞれに関して添加して、混合した。次に、ウェル1つにつき、100μlを添加して、約5、10、15、30分で、続いて1時間間隔で発色を評価した。
【0160】
血清に関して、陽性対照が1.500以上であり、陰性対照が0.100〜0.200である場合に、ブランク読取りが培地対照から得られた。続いて、結果を記録して、陰性対照、陽性対照及び実験試料の平均値並びに標準偏差を算出した。陰性カットオフ値は、陰性対照の平均値+0.150であった。
【0161】
免疫原性の結果
マウスにおける脱脂されたSIVウイルス調製物の免疫原性は、ELISAアッセイで検査した。平均光学密度(O.D.)は、様々な希釈の血清で405nmで検査した。表4は、血清試料に関するELISA試験の結果を提供する。
【0162】
【表4】
【0163】
免疫化マウスから得られる解離脾臓細胞の応答の分析
脾臓細胞の単一細胞懸濁液は、脾臓被膜をやさしく掻き裂くこと、及び細胞に25ゲージの針を通すことにより、個々のマウスそれぞれから調製した。脾臓細胞を、培地(100μg/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミンを補充したRPMI 1640)中で単一細胞懸濁液へ解離させ、培地中で2回洗浄し、続いて1,000万個の細胞/mlに調節した。各マウスからのこの細胞懸濁液0.1mlを、培地を含有する96穴丸底マイクロタイタープレートの各ウェルへ分配した。残りの細胞は凍結保存した。続いて、標準的な細胞内サイトカイン染色(ICC)及びフローサイトメトリーにより、これらの脾臓細胞培養物を、CD4+及びCD8+T細胞の、IFN−γを合成する能力に関して評価した。
【0164】
個々のマウスからの二重細胞培養物を含有する2つの別個のウェルには、a)プールに応じて、1つのプールにつき8〜9個のペプチドの範囲のSIVエンベロープ(SE)ペプチドのプールのそれぞれ2μg/mlを含有する培地0.1ml(n=17プール)、又はb)プールに応じて、1つのプールにつき7〜8個のペプチドの範囲のSIVgag(SG)ペプチドのプールのそれぞれ2μg/mlを含有する培地0.1ml(n=16プール)のいずれかを入れた。対照は、培地単独(バックグラウンド対照)又は最大IFN−γ染色に関して予め決定された最適濃度のホルボールミリスチン酸酢酸(PMA 1μg/ml)+イオノマイシン(0.25μg/ml)(陽性対照)を入れた脾臓細胞培養物から構成された。SIV envペプチド(n=72の別個のペプチド)は、8×9行列の格子様式で混合し、SIV gagペプチド(n=62のペプチド、ペプチドをそれぞれ欠落している2つのプール及び2つのペプチドを欠落している1つのプールを有す
る)は、8×8行列の格子様式で混合し、個々のペプチド特異的免疫応答の同定を可能にした。SIV gagペプチドは概して、12個のアミノ酸が互いに重複し、完全SIVgag配列を包含する合成20量体ペプチドであった。SIV envペプチドは概して、13個のアミノ酸が互いに重複し、完全SIV env配列を包含する合成25量体ペプチドであった。ペプチドプールは、各ペプチド2.0μg/mlを含有するように作製された。各脾臓細胞調製物に関して、36ウェルの培養が存在した。env及びgag重複ペプチドのプールの構成成分を以下に記載する。SIVmac239gag(SG)及びenv(SE)内の各々の位置において、プールを構成するペプチドを示す。
【0165】
【表5】
【0166】
【表6】
【0167】
【表7−1】
【0168】
【表7−2】
【0169】
【表7−3】
【0170】
【表8−1】
【0171】
【表8−2】
【0172】
培養物を7%CO2加湿雰囲気中で37℃にて一晩インキュベートした。各ウェルからの細胞を優しく取り出して、5.0mlのFACS試験管へ移して、洗浄した。1組の細胞を抗CD3+抗CD4+で染色した。他の二重組は、抗CD3+抗CD8+で染色した(以下を参照)。続いて、これらの細胞表面染色細胞を透過処置して、標準的な細胞内染色プロトコルを用いて、抗IFN−γ染色抗体を使用して、IFN−γの細胞内含有量に関して染色した。次に、染色した細胞集団それぞれ(各管から約10,000個の細胞)を、FACSフローサイトメーターを用いて分析し、IFN−γを合成するCD3+CD4+及びCD3+CD8+T細胞の頻度を決定した。陰性対照及び陽性対照は、バックグラウンド対照参照用及び陽性対照参照用に利用した。この実験の間にこの様式で、約1,000回の分析を実施した。
【0173】
SIV envペプチド(17プール)及びSIV gagペプチド(16プール)のプールに応答して、マウスの6つの群からの脾臓細胞によりIFN−γを発現するCD4+T細胞の頻度(y軸)を決定した。同様に、SIV envペプチド及びSIV gagペプチドのプールに応答して、マウスの同じ6つの群からの脾臓細胞によりIFN−γを発現するCD8+T細胞の頻度(y軸)も決定した。データは、4匹のマウス/群から
の平均値であった。これらの初期研究の結果により、10μg又は1.0μgの用量の脱脂されたSIVmac251は、予め初回刺激されたBALB/cマウスにおいてSIV特異的体液性応答の顕著な増強を招くことを示した。0.1μg(5×106個のウイルス粒子)の用量でさえも、これらのマウスにおいて、SIV特異的体液性応答の検出可能な増強を招いた。1.0μgの用量は、予め初回刺激されたBALB/cマウスにおけるIFN−g合成により測定されるように、際立って広範囲の幅のSIV env及びSIV gagペプチド特異的CD4+T細胞応答を招いたが、10μgの用量はそれらを招かなかった。
【実施例4】
【0174】
HIV−1の直接的な脱脂、及び炭カラムによる溶媒の除去及びHIVタンパク質の保持
1,000×HIV−1 IIIB約25μlを、1)無し、2)ブタノール/DIPE(25:75)12.5μl、3)100%DIPE 2.5μl又は4)PBS中1%DIPE 12.5μlと混合して、試料を15秒間ボルテックスした。炭カラム(0.5ml)は、Whatmanのフィルターフリットを含有する3mlのBD LuerLockのシリンジに、PBSで洗浄したHemasorbaの炭2mlを装填することにより生成した。カラムを5%グルコース/PBS(5〜10倍カラム容量)で洗浄した。カラムを5%グルコース/PBS中で30分間インキュベートした。このカラムを使用して、処置した血漿から溶媒を除去した。ウイルス溶媒混合物を個別のカラム上へ装填した。カラムを1mlのPBSで押し流した。溶出容量を測定して、試料をELISAによりp24タンパク質に関してアッセイし、ウェスタンブロット法に付した。
【0175】
1%DIPEで処置した試料は、対照と比較して、優れたp24回収を示した。10%DIPE又はブタノール/DIPEで処置した試料は、わずかに劣るp24回収を示した。総タンパク質回収は、対照に対する割合に関して、1%DIPE、10%DIPE又はブタノール/DIPEで得られるp24の結果に類似していた。
【0176】
この実施例で以下に提供するプロトコルに類似した様式で実施されるウェスタンブロット分析は、ブタノール/DIPE、10%DIPE又は1%DIPE溶媒処置を用いた場合に、抗HIV IgGでプローブした際に無数の免疫反応性バンドを明らかにした。ウェスタンブロット分析はまた、ブタノール/DIPE、10%DIPE又は1%DIPEを用いた場合に、p24に相当する陽性免疫反応性バンドも明らかにした。陽性免疫反応性バンドは、10%DIPE又は1%DIPEを用いて、gp41に関して観察された。さらなる陽性免疫反応性バンドは、ブタノール/DIPE、10%DIPE又は1%DIPEを用いた場合にgp120に関して観察されたが、染色の強度は、10%DIPE又は1%DIPEを用いた場合のほうが高かった。
【0177】
SIV及びHIVウェスタンブロット分析
比較用の試薬は、脱脂されたSIVmac251、熱失活SIVmac251及び全SIVに対するウサギポリクローナル抗体(the AIDS reagent repository, Rockville, MDから入手可能)を含んでいた。ウェスタンブロットにおいてSIVバンドの大部分を可視化させるには、タンパク質約1μgが必要とされた。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)をウイルス溶解物に関して実施した(溶解物緩衝液:50mMトリス−HCl(pH7.4)、1%NP−40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EGTA、1mM PMSF、アプロチニン、ロイペプチン及びペプスタチンそれぞれ1μg/ml、1mM バナジン酸ナトリウム、1mM NaF)。
【0178】
銀染色を用いて、分子量標準物質に対して脱脂後に存在する様々なウイルスタンパク質を明らかにするバンドを可視化させた。熱失活SIVmac251タンパク質を、ゲル上
で脱脂されたSIVmac251タンパク質と比較した。同様のSDS−PAGEを実施して、タンパク質をニトロセルロースに転写する。ブロットされたニトロセルロースを水で二度洗浄した。脱脂されたSIVmac251及び熱失活SIVmac251に関する最低それぞれ3つのブロットを行った。
【0179】
ブロットされたニトロセルロースを、3%脱脂粉乳(MLK)を含む調製したばかりのPBS中で20〜25℃で20分間、一定攪拌しながらブロックした。ニトロセルロースストリップを、調製したばかりの既定最適濃度のウサギポリクローナル抗SIV抗血清(PBS−MLK中で1:1,000希釈の抗血清約5ml)とともに、攪拌しながら一晩インキュベートした。ニトロセルロースストリップを水で二度洗浄した。ストリップを、PBS−MLK中のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HPR)結合ヤギ抗ウサギIgG1:300希釈とともに、室温で90分間、攪拌しながらインキュベートした。ニトロセルロースを水で二度、続いてPBS−0.05%ツイーン20で3〜5分間洗浄した。ニトロセルロースストリップを、水を4〜5回変えながら洗浄した。展開したバンドの検出は、展開したバンドの検出により達成した。熱失活SIVを用いた場合の展開したバンドを、脱脂されたSIVを用いた場合のバンドと比較した。
【0180】
炭カラムに通し、且つp24、gp41、gp120に関してプローブした溶媒処置HIV−1のウェスタンブロット分析に対して、及びさらにはヒト抗HIV IgGを用いたHIV抗原に関して同様のアプローチが使用された。ウェスタンブロット法は、ニトロセルロース膜上へ転写されたSDS−PAGE分離ウイルス試料に関して実施した。膜は、ウイルスタンパク質に対するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を用いてプローブし、ペルオキシダーゼと結合させた二次抗体で展開して、化学発光試薬を増強した。
【実施例5】
【0181】
ワクチンとして使用するための改変SARSウイルス粒子の開発
A.SARSウイルスに関する溶媒処置方法の最適化
ウイルスの種ウイルス生産。SARSウイルスストック(検体番号809940株200300592)は、疾病対策センター(CDC)から得られた。ウイルスは、Vero
E6細胞(ATCC CRL 1586)において成長させる。ウイルス試料を解凍して、0.1mlをピペットで、増殖培地(10%ウシ胎児血清を有するアール平衡塩類溶液中の90%イーグル最小必須培地)約2mlを含有するVero E6細胞の5つの試験管それぞれに接種する。ウイルス試料の残りは、−80℃で保管する。各管中の細胞シートの75〜100%が細胞変性効果(CPE)を示したら、細胞を、凍結すること及び掻爬することにより回収して、1ml分取量でプールして、−80℃で凍結させた。ウイルスは、TCID50法によりVero E6細胞の試験管中で滴定する(ウイルスの連続1:10希釈を四重で)。
【0182】
ウイルスの溶媒処置。SARSウイルスは、本明細書中に記載するようにSIV、DHBV及びBVDVに関して使用される様々な方法により溶媒処置して、最大エンベロープタンパク質回収及び最小残存感染力のための過程を最適化する。SARSウイルス溶媒処置に関して探索されるパラメータは、溶媒のタイプ又は組合せ、溶媒比、溶媒対ウイルス比、処置時間、処置温度、混合方法及び溶媒除去過程である。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中のSARSウイルスストック調製物を、約2,000〜10,000ppmをもたらすDIPEと組み合わせて、転倒型回転により20〜60分間混合した後、1,000×gで2分間遠心分離した。残留溶媒は、真空蒸発又は活性炭への吸着のいずれかにより除去される。さらに、DIPE及びn−ブタノールの組合せを、総溶媒濃度約200〜40,000ppmをもたらす60:40〜95:5(vol/vol)の比で試験して、転倒させて20〜60分間混合した後、1,000×gで2分間遠心分離した。残留溶媒は、活性炭への吸着により除去される。
【0183】
上述の様々な処置方法からの試料すべては、ウェスタンブロットを含むPAGEにより特性化されて、ウイルスタンパク質及び総タンパク質の存在を決定する。特異的ウイルス抗原及びタンパク質の定量化は、ELISAのような免疫特異的アッセイにより評価される。感染力は、Vero E6細胞変性アッセイを用いて評価される(Reed and Muench; Am. J. Hygiene 1938; 27: 493-497)。回収された最大標的ウイルスタンパク質、マウスにおける感染力及び免疫原性の最大の低減に基づいて、溶媒処置の最も有効的な方法に関して選択が行われる。
【0184】
B.既知のウイルス失活剤に基づくSARSに関する化学的処置方法の最適化
本発明の方法が、ワクチンとしては不十分なレベルに感染力を低減する状況では、溶媒処置したウイルスの化学的失活が必要とされ得る。化学的失活は、感染力が6log減少する場合に、成功したとみなされる。
【0185】
方法。光活性化架橋試薬ソラレンが使用される。ソラレン三環式平面環構造は、一重鎖RNAへインターカレートし、光活性化される。NHS−ソラレン(Pierce Biochemicals, Rockford IL)をDMSOに溶解した後、水性反応混合物へ添加する。NHSエステルは、pH7〜9で第一アミンに架橋する。溶媒処置したウイルス溶液と、0.1Mリン酸ナトリウム、0.15M NaCl(pH7.2)中のNHS−ソラレン(150mM)を混合する。光反応性カップリングは、350nmを上回る光に30分間、又は3ジュール/cm2に露光させることにより達成される。
【0186】
Vero E6細胞における細胞変性終点(CPE)は通常、接種後5日目に確認される。それは、細胞剥離が続く罹患細胞における細胞の丸み及び屈折性を伴う外観に焦点を当てる。CPEは、迅速に拡がって、24〜48時間以内に全細胞単層を包含する。したがって、細胞完全性が破壊されると、それはウイルスが感染していることを示す。
【0187】
C.未処置のウイルスタンパク質構造及び処置後のウイルスエンベロープ変化の評価
ウイルスタンパク質に対する溶媒処置の影響を評価するために、ウイルス試料を、ウェスタンブロットを含む未変性PAGEにより特性化して、未処置のウイルスタンパク質の存在を決定する。総可溶性タンパク質をSDS PAGEを用いて測定する。溶媒処置の最も有効的な方法は、回収された最大標的ウイルスタンパク質及び感染力の最大の低減に基づいて選択される。二重抗体サンドイッチELISAを用いて、SARS抗体を検出する(Current Protocols in Immunology, Vol1, supp. 8, 1991, John E Coligan, et al. eds.; Richard Coico, series ed., publisher: Current Protocols, John Wiley and Sons)。ポリクローナル抗SARS抗体をビオチン化して、SARSウイルス抗原を、SARSウイルスストックから生産する。
【0188】
ネイティブゲル電気泳動。ネイティブゲル電気泳動は、ポリアクリルアミドゲル中で室温にて実施され、タンパク質は、銀染色で可視化されるか、あるいは標識ヤギ抗マウス抗体による検出のためにニトロセルロースへ転写される(ウェスタンブロット)。溶媒処置前及び後のSARSウイルスの試料は、標準物質としてSARSウイルスタンパク質のプールを用いて分析される。
【0189】
ウェスタンブロット。ゲル上のタンパク質をニトロセルロース膜へ転写する。高分子量タンパク質に関しては、転写時間は、少なくとも90分である。BSA及び乳でブロックした後、ニトロセルロースを、SARSウイルススパイク及び膜タンパク質に対するポリクローナル抗体とともにインキュベートする。マウス抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体で可視化される。市販のSARSウイルスポリクローナル抗体を購入する。代替としては、抗体は、以下に簡単に記載する方法により離乳したB
ALB/cマウスにおいて生産される。
【0190】
マウス抗SARS抗体の生産。SARSポリクローナル抗体が市販されていない場合、マウスに、ショ糖密度勾配遠心分離により精製した濃縮ソラレン処置ウイルスストック調製物を注射する。失活は、Vero E6細胞で確認される。22匹の離乳BALB/マウスを、それぞれ8匹のマウスを有する2つの群に分けて、残りの6匹のマウスを対照とする。それぞれ8匹のマウスを有する2つの群に、MPL(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノマイコレート、RiBiアジュバント系、Corixa Corp. Hamilton, MT)と混合した10μg(低)又は50μg(高)用量のウイルスプレップを皮下(sc)接種する。6匹の対照マウスには、アジュバントと混合した等量の細胞培地を接種する。接種を、2週目及び4週目に繰り返す。6週目に、マウスに麻酔をかけて、眼窩後出血+心臓内穿刺により血液を抜く。各群からの血清をプールして、中和抗体に関して滴定する。
【0191】
SARSウイルススパイク及び膜タンパク質がそれらの自然立体構造で存在する場合、マウスにおいてこれらの無傷タンパク質に対して産生される抗体は、ウェスタンブロットで認識される。銀染色したゲルは、タンパク質がこの方法によりもはや検出され得ないように溶媒処置がタンパク質を変性させる点に至るまで、ウイルスタンパク質の保持を示すと予測される。
【0192】
さらなる方法及び代替的方法。さらなる方法を用いて、ウェスタンブロットからの結果を確認する。電子顕微鏡法を用いて、ウイルス構造の完全性を評価し、溶媒処置前及び前の変化を比較する(Graham DR, et al., (2003) J Virol. 77(15): 8237-8248)。ウイルスは、BSL−3設備から取り出される前に、グルタルアルデヒドで不活化される。
【実施例6】
【0193】
溶媒及び化学的に処置したSARS粒子の、マウスにおいて免疫応答を生じる能力
低度〜高度の脂質除去を生じる様々な濃度の溶媒、混合時間及びエネルギー並びに溶媒の組合せを用いた溶媒処置方法からのウイルス調製物を動物にワクチン接種する。ワクチン接種した動物における各方法からの結果の比較を使用して、どのウイルスプレップが最良の免疫学的応答を付与するかを決定する。ワクチンとして有用であるためには、溶媒処置したSARSウイルスは、抗体生産により分かるように、ともに抗原性でなくてはならず、サイトカイン生産の増加を引き起こさなければならない。
【0194】
A.抗体生産のための、及び中和抗体の誘発に関して試験するための、溶媒及び化学的に処置したSARSウイルス粒子のマウスへの注射
予め初回刺激したBalb/cマウスを使用して、Ansari A.他により記載される方法(J. Virology 76(4): 1731-1743, 2002)を用いて、これらのマウスにおいて容易に認識可能なウイルス特異的体液性又は細胞性免疫応答を招く溶媒処置SARSウイルスの最小用量を決定する。20匹の成体雌Balb/cマウスそれぞれに、等容量のアジュバントに組み込まれた化学的に失活させたSARSウイルスタンパク質25μgを皮下注射する。4匹のマウスは、対照非免疫化マウスとして利用する(群1)。
【0195】
十分なSARSウイルスを実施例5に記載する方法に従って処置し、その結果、スケジュール1回につきこれらのマウスを追加免疫するのに必要とされる量が得られる。初めの初回刺激の14日後、1群当たり4匹のマウスを有する5つの群を以下のように処置する:群2−−生理食塩水0.5ml、群3−−溶媒処置ウイルス10μgを含有する生理食塩水0.5ml、群4−−溶媒処置したウイルス1μgを含有する生理食塩水0.5ml、群5−−溶媒処置したウイルス0.1μgを含有する生理食塩水0.5ml、群6:溶媒処置したウイルス0.01μgを含有する生理食塩水0.5ml。追加免疫の4日後、
すべてのマウスに麻酔をかけて、眼窩後穿刺により血液を回収する。回収した血液から血清が得られる。脾臓細胞調製用に、各試験マウスから脾臓を回収する(以下を参照)。これらのマウスから回収した血清及び脾臓細胞は、この実施例で以下に記載するような分析に関する基礎として使用する。
【0196】
B.Vero E6細胞の細胞変性アッセイを用いた血清におけるマウス中和抗体の生産に関する試験
処置したウイルス調製物が、SARSウイルス中和抗体を産生することが可能であるかどうかを決定するために、マウス免疫化から回収された血清試料を試験して、それらが、細胞溶解からVero E6細胞を保護することが可能であるかどうかを評価する。
【0197】
ビリオンの精製。簡潔に述べると、ウイルスは、25〜50%ショ糖密度勾配での2回連続した超遠心分離により、清澄化した細胞培養上清から単離される。ウイルス含有画分は、254及び280nmでのUV吸収により同定される。ピークのUV吸収画分をプールして、TNE緩衝液(0.01Mトリス−HCl[pH7.2]、0.1M NaCl及び1mM EDTA)によりショ糖20%以下にまで希釈し、ペレットへと超遠心分離して、TNE緩衝液中に再懸濁させる。試料は、−80℃で保管する。処置されたウイルスは、適切なインキュベーション条件下で、適切な作用物質の存在下で、指示された濃度のキャプシドタンパク質でウイルスをインキュベートすることにより調製される。続いて、ウイルスは、4℃で100,000×gにて1時間、遠心分離することにより、20%ショ糖パッドを介して再精製される。
【0198】
ウイルス中和アッセイ。CDCから得られるSARSウイルスストックを、37℃で7日間、集密したばかりのVero E6細胞の試験管中で四重で滴定して、CPEの外観に基づいてTCID50/0.1mlを得る。失活マウス抗SARS抗血清を、血清無しの細胞培地を用いて1:10に連続希釈する。等容量の希釈した特異的抗血清を100TCID50のSARSウイルスストックと混合して、1時間インキュベートする。Vero E6細胞の二重管に各ウイルス抗血清希釈混合物0.2mlを接種して、7日間インキュベートする。この滴定を、各中和アッセイで繰り返す。CPEの外観に基づいて少なくとも100TCID50のウイルスを中和する抗血清の希釈は、1抗体単位を表す。さらなる中和アッセイでは、SARSとして確認されるべきウイルスの連続1:10希釈及び20個の抗体単位の特異的免疫血清を等容量で使用する。
【0199】
感染力アッセイ。SARSウイルスの溶媒処置した試料それぞれを、Vero E6細胞の2個又は4個の管に接種して、少なくとも7日間インキュベートして、CPENの存在を検出する。非溶媒処置SARSウイルスストックを対照として上述のように接種する。ウイルス力価は、TCID50により算出される。SARSウイルスは、24〜48時間のうちに、細胞に丸みを帯びさせ、屈折性となるようにさせ、且つ細胞を剥離させると予測される。中和抗体が存在する場合、細胞は無傷のままである。試験血清における中和抗体は、細胞を100TCID50のウイルスから保護すべきである。Vero細胞タンパク質に対するマウス抗体が生産される場合、Vero E6細胞を始めとする偽ウイルス調製物を注射したマウスからの血清を対照として使用する。必要である場合、抗Vero細胞抗体は、アフィニティ精製によりマウス血清から除去される。
【0200】
C.溶媒処置したSARSウイルス粒子によるワクチン接種に関するマウス細胞性応答の評価
サイトカインは、免疫応答を編成するのに重要である。細胞性応答は、他のコロナウイルスワクチンを用いた場合に見られる一過性の免疫性の問題に対処するのに大いに関連する。マウス細胞性免疫応答の指標として、この実施例で上述する方法からのワクチン接種したマウスにおいてレトロウイルスに使用したように、サイトカインγインターフェロン
及びインターロイキン(例えば、IL−2)が測定される。
【0201】
脾臓細胞の回収及び細胞内サイトカイン染色分析。脾臓細胞は、無菌的に回収して、細いゲージ針に押し込めることにより、単一細胞懸濁液を作製する。細胞計数が実施される。細胞をRPMI 1640完全培地(RPMI 1640+100U/mlのペニシリン+100μg/mlのストレプトマイシン+2mM L−グルタミン+10%のウシ胎児血清の選択ロット)中に100万個の細胞/mlで再懸濁させる。細胞懸濁液(100,000個の細胞)を96ウェルプレートのウェルに分配する。培地を三連のウェルに添加して(陰性対照)、ホルボールミリスチン酸酢酸(PMA 50ng/ml)+イオノマイシン(1μg/ml)を3つのさらなるウェルに添加する(陽性対照)。続いて、ウイルス構造遺伝子に関するある特定のSARSコード配列(E、M及びSタンパク質配列)を網羅するための重複ペプチドのSARSプール(格子として調整)を適切なウェルに添加する。培地カクテルを添加して、一晩インキュベートする。ブレフェルジンA溶液の添加に適切である場合、FACS洗浄液中のPerCP標識したCD4及びFITC標識したCD8の抗体カクテルを添加し、インキュベートし、除去して、洗浄する。各ウェルの内容物をFACSチューブに移した後、perm/fixを添加する。Perm Washで洗浄した後、フィコエリトリン(PE)抗ヒトIFN−γを添加する。インキュベーションを繰り返し、洗浄して、洗浄溶液を除去する。新鮮な1%パラホルムアルデヒドを添加して、分析する準備が整うまで、試料を暗所で冷蔵する。試料すべてに関するデータを収集して、培地対照及びPMA+イノマイシンを用いた場合に得られるシグナルに基づいて、閾値が引き出される。約100,000回の事象からのデータが収集される。重複ペプチドに対して陽性インターフェロンγ応答又はインターロイキン応答を誘導するペプチドが同定される。サイトカイン陽性細胞の存在により、溶媒処置したSARSウイルスは、細胞性免疫応答を誘発するのに有効であることが示される。
【実施例7】
【0202】
マウスに投与されると、低減された感染力を示し、且つCD4+及びCD8+T細胞免疫応答を誘発する脱脂されたSIVウイルス
本発明に従って脱脂されたSIVを用いたプライム・ブースト免疫化戦略は、アルドリチオール−2(AT−2)処置又は生ウイルスよりも、マウスにおいてより広範囲のCD4+及びCD8+T細胞応答(インターフェロンγ生産)を誘発する。より具体的には、本発明は、脱脂されていないウイルス粒子と比較した場合に、より広範囲の一連の抗原に対する改善された免疫応答を引きこす。本発明は具体的には、脱脂されていないウイルス粒子と比較した場合に、より広範囲の抗原(例えば、最低5%以上の抗原の範囲)に対して増加された免疫応答を有する改変されたウイルス粒子を包含する。
【0203】
この実施例では、SIVmac251の脱脂は、主要SIVタンパク質(env、gag、pol、tat)を保持しながら、ウイルス感染力を低減した。研究は、皮下的に(sc)AT−2処置したウイルス+アジュバントで免疫化し、AT−2処置ウイルス、生ウイルス又は脱脂ウイルスのいずれかで追加免疫したBalb/cマウスで行った。投与経路及び初回刺激と追加免疫との間の間隔及び用量レベルを評価した。脾臓細胞を回収して、env及びgagに関する完全SIVアミノ酸配列を網羅する重複SIV env及びgagペプチドの個々のプールとともに培養した。脾臓細胞の、(インターフェロン)IFN−γを合成する能力を、標準的な細胞内サイトカイン染色(ICC)及びフローサイトメトリーにより測定した。脱脂は、1%DIPEを用いて行った。
【0204】
材料及び方法:SIVmac251抗原処置
AT−2不活化:第一次免疫化並びに追加免疫対照の目的で、ショ糖によりバンド採取された(banded)SIVmac251の分取を、これまでに記載されるようにAT−2での処置により失活させた(Rossio et al., J. Viorl. 72:7992, 1998)。簡潔に述べると、A
T−2(Aldrich, Milwaukee, WI)の100mM ストック溶液を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で新たに調製した。続いて、AT−2を最終濃度300μMでウイルスに直接添加して、37℃で1時間インキュベートした後、ウイルスを分取して、免疫化用に使用するまで、それを−70℃で保管した。
【0205】
DIPE溶媒処置:200μg分取量のショ糖精製されたSIVmac251総タンパク質をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で希釈して、エッペンドルフ微量遠心チューブ中で総用量が1mLになるように、様々な量のジイソプロピルエーテル(DIPE)(VWR, West Chester, PA)を添加して、様々なDIPE濃度を達成した。ウイルス抗原調製物の溶媒処置は、室温で20分間行った。試料をチューブの底部へ回収するための短時間の遠心分離後、溶媒をSeedvacエバポレータ(Savant)において室温で90分間、蒸発させた。この手順の最後に、注射等級の水を用いて、容量を1mlへ再構成させた。溶媒処置した試料25μLを、蒸留水75μLで希釈して、ガスクロマトグラフィ分析に付して、溶媒の除去を確認した。免疫化に使用される任意の試料中の残留DIPE溶媒の許容限界は、25ppm以下であった。続いて、各試料をブースター免疫化用に適切な量で分取して、−70℃で保管した。
【0206】
ウイルスタンパク質回収及び感染力アッセイ
SIVmac251の溶媒処置の影響を、BCA(Pierce, Rockford, IL)及びLowryアッセイ(Biorad, Hercules, CA)、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、続く銀染色を用いた総タンパク質分析により、及びSIV反応性サル血清のプールを用いたウェスタンブロット分析により確認した。さらに、SIVgag p27回収は、EIA(Coulter Immunotech, Hialeh, FL)により試験し、ウイルスRNAは、実時間増幅(Amara et al., Science 92: 69, 2001)により試験した。残存ウイルス感染力は、CEMx174細胞における標準的な滴定及び個々のウェルの上清液体におけるp27生産のモニタリングにより、処置された分取量それぞれで評価した。感染力価は、Spearman−Karber法に従って算出した。
【0207】
等密度勾配遠心分離
ウイルス密度プロファイルは、ウイルスを等密度勾配遠心分離に付すことにより評価した。簡潔に述べると、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中20%〜60%のショ糖それぞれ1.3mlを、ショ糖濃度を8%ずつ増加させながら重ねた。底部での60%ショ糖から最上部での20%ショ糖まで、6つのショ糖濃度を層にした。PBS 750μl中のウイルス試料(20%ショ糖クッションを介してペレット化した後に調製)を、20%ショ糖の上に慎重に重ねた。チューブすべてを、Beckman L8超遠心機用の80Tiローター中で、40,000rpmで、4℃にて16時間回転させた。最上部からはじまって、チューブ1つ当たり525μlの17個の画分が回収された。ウイルス濃度は、市販のSIV Gag p27 ELISAキット(Coulter, CA)を用いて分析した。
【0208】
高速液体クロマトグラフィ(FPLC)ウイルス分析
脱脂されたウイルスは、Pharmacia FPLCシステムにおいてFPLCによりさらに分析した。ウイルス試料(200μl)をSuperose6 HR 10/30(Pharmacia, Sweden)カラムに注入した。それぞれ500μlを有する60個の画分を、Ca及びMg無しのPBS中で、流速0.4ml/分で回収した。画分中のSIVの存在は、p27 ELISA(Coulter, CA)により検出された。ウイルス画分中のコレステロールの量は、Amplex Red総コレステロールアッセイにより、製造業者の指示書(Molecular Probes, OR)に従って分析した。
【0209】
マウスの免疫化
4〜6匹の10週齢の雌Balb/Cマウスに、フロイント不完全アジュバント(IF
A)中で乳化され、且つ皮下(sc)投与される、ショ糖によりバンド採取したAT−2失活SIVmac251(ABI, Columbia, MD)10μgによる第一次免疫化を施した。対照の目的で、数匹のマウスは、IFAのみで初回刺激した。続いて、6匹の動物を有する群に、2週間後に、非処置SIVmac251に対する処置SIVmac251の可変用量を用いて、静脈内でブースター免疫化を施した。次に、追加免疫の4日後に、動物を屠殺して、血液及び脾細胞を回収して、以下に記載する免疫分析を実施した。
【0210】
細胞媒介性応答の細胞内IFN−γ応答評価
これらの分析は、5μg/mlのブレフェルジンA並びにそれぞれ1μg/mlの抗マウスCD28及びCD49dモノクローナル抗体の存在下での短期間の抗原特異的再刺激後の細胞内サイトカイン(ICC)分析、続くIFN−γ生産CD4+及びCD8+T細胞の頻度の評価を用いて実施した。標準的なプロトコルは、完全SIVgag(16個のペプチドプール、12個の残基が重複している20量体)及びSIV env(17個のペプチドプール、13個の残基が重複している25量体)を包含するペプチドのプール(それぞれ2μg/mlの個々のペプチドを含有する)(プールはそれぞれ、7〜9個のペプチドを含有する)による1×106個の脾細胞の12時間の再刺激から構成された。陽性対照試料は、分裂促進因子PMA/イノマイシン及びPHAで刺激した脾細胞から構成され、陰性対照は、ペプチド刺激無しであり、オボアルブミン特異的ペプチドSYNFEKL(配列番号136)による刺激である。培養を2時間行った後、サイトカインの排出を防止して、その細胞内蓄積を促進するように設計されたブレフェルジンAを添加した。続いて、再刺激した脾細胞をCD4+、CD8+及び細胞内IFN−γに関して染色した。INF−γ陽性CD4+及びCD8+T細胞の頻度の評価は、FACS Calibur(Beckton Dickinson, Mountain View, CA)を用いて、約200,000事象/試料を計数することにより分析した。
【0211】
血清学
SIV EIA:血清試料は、日常的なEIA及びウェスタンブロット分析を用いて、ウイルスエピトープに対する抗体に関して滴定した。簡潔に述べると、ポリ−L−リシン(PBS 1ml当たり10μg)でコーティングしたELISAマイクロプレートに、精製SIVmac251 2μg/ウェルを、標準的な重炭酸塩コーティング緩衝液(pH9.6)中で4℃にて一晩吸着させた。PBS/ツイーン20で3回洗浄した後、プレートを、2%脱脂粉乳を含有するPBSを用いて室温で1時間ブロックした。続いて、順次2倍血清希釈液をプレート並びに二連の陽性及び陰性対照試料へ添加して、37℃で2時間インキュベートした。未結合の抗体を洗浄した後、プレートをアルカリホスファターゼ−抗マウスIgG結合体(Southern Biotech, Birmingham, AL)とともに37℃で1時間インキュベートした後、p−ニトロフェニルホスフェート(BioRad)を用いて室温で展開した。ELISAリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて、450nm波長で、プレートを読取った。
【0212】
SIVウェスタンブロット:ウェスタンブロット分析に関しては、市販のSIVウェスタンブロットキット(Zeptometrix, Buffalo, NY)を、製造業者の指示書に従って、1:100希釈したマウス血清に対して利用して、展開させた。
【0213】
結果
ウイルスの脱脂は、ウイルスタンパク質の損失無しでコレステロールの除去をもたらす
本発明者等の以前の最適化手順は、DIPE処置がウイルスタンパク質の著しい損失無しでHIVを効果的に脱脂するという見解につながった(データは示さず)。本発明者等は、これらの見解を拡張させて、この方法がSIV−mac251を脱脂することができるかどうかを評価した。SIV−mac251は、総タンパク質又はウイルスタンパク質(p27)に著しく影響を及ぼすことなく、DIPEを用いて脱脂された。総ウイルスタ
ンパク質及びウイルスgag p27の回収は、生SIVと比較した場合とは、有意に異ならなかった。これらの見解は、SIVの銀染色及びウェスタンブロット分析により確認された。脱脂されたウイルスは、感染力において再現性のある2logの減少を示した(図7)。本発明者等の方法を用いてウイルスからコレステロールを除去することにより、ウイルスRNA又はウイルスタンパク質を損失することなく、HIV−1におけるコレステロールのβ−CD除去(Nguyan et al., J. Immunol. 168:4121, 2000; Graham et al.,
J. Virol. 77:8237, 2003)に類似した様式で感染力を減少させる。処置したウイルスの物理特性に対して脂質の損失をさらに特性化するために、本発明者等は、高速液体クロマトグラフィ(FPLC)によりウイルス粒子プロファイルを評価した(図5)。対照及びアルドリチオール−2(AT−2)処置したウイルスのFPLCプロファイルは類似していた(データは示さず)。しかしながら、DIPE処置したビリオンは、生対照ビリオンと比較して、それらの構造プロファイルを変化させた。本発明者等の脱脂手順がコレステロールの除去を導くかどうかを評価するために、本発明者等は、FPLC分離後にAmplex Redアッセイを用いて、コレステロールに関して処置したウイルスを分析した。DIPE処置したウイルスは、コレステロール/gag p27タンパク質比として表す場合に、対照ウイルスよりもおよそ80%少ないコレステロールを有した。ウイルスはさらに、等密度勾配遠心分離により分析して、粒子密度を評価した。脱脂は、ビリオンの浮力を変化させて、ウイルス粒子の密度範囲のシフトをもたらした(図4)。
【0214】
脱脂されたウイルスは、追加免疫中に、より幅広い細胞媒介性免疫応答を誘発することが可能である
脱脂されたウイルスが、細胞媒介性免疫応答を追加免疫する際に免疫原性を高めたかどうかを評価するために、本発明者等は、対照及び脱脂されたウイルスにより、AT−2失活させたSIVで初回刺激したマウスを追加免疫した(Rossio et al., J. Virol. 72: 7992, 1998; Arthur et al., AIDS Res. Human Retroviruses 14: Suppl. 3. S311, 1998)。2週間後に、免疫化したマウス群(1群当たり6匹のマウス)を生SIV、AT−2失活させたSIV又はDIPEで脱脂されたSIVのいずれかの総ウイルスタンパク質1μgで追加免疫した。T細胞応答をSIV Gag及びSIV gp120エンベロープ重複ペプチドプールを用いて評価して、応答細胞は、細胞内インターフェロン−γ(IFN−γ)フローサイトメトリー(ICC)により検出した。DIPE脱脂されたウイルスブースターは、対照又はAT−2群と比較して、より幅広いCD4+及びCD8+応答を誘発した(図8A及び図8B)。特異的IFN−γペプチドはまた、ペプチドプール格子から決定され、ペプチドプールを分析する場合に見られるパターンと類似のパターンを生じた。DIPE処置したSIVはまた、他の群と比較して、新たなペプチドプール認識パターンを誘発した(表9)。データは、envペプチドプールに対するCD4+応答に関して特に顕著であった。DIPE群は、生SIVで追加免疫した群と(p=0.006)、及びAT−2処置したSIVで追加免疫した群と(p=0.0001)と比較して、統計学的に有意な応答の増加を有した。同様の動向が、CD8+ envペプチドプール応答に関してDIPE処置したSIVで観察された(生群に対してp=0.001、及びAT−2群に対してp=0.02)。CD4+ gag応答も同様に、有意に増加された(AT−2群に対してp=0.03)。DIPE処置したSIVで追加免疫した群はまた、他の2つの群よりも多くのIFN−γ陽性細胞を有した。抗原投与量試験により、驚くべきほど低用量であるDIPEで脱脂されたウイルス1μg(これは、SIV p27およそ200ngに相当する)が、gag及びenvの両方に対して幅広いCD4+及びCD8+免疫応答を誘発するのに十分であることが示された。env及びgagペプチドプールに対する幅広いCD4+及びCD8+応答が、AT−2処置したウイルス又は生ウイルス追加免疫と比較した場合に、脱脂されたウイルスで追加免疫したマウスで観察された(p>0.001)。
【0215】
主にCD4+T細胞応答は、アジュバント無しでIV投与された脱脂されたウイルスの
0.05μg程度と低い抗原用量で観察されたのに対して、AT−2又は生SIVタンパク質にはより高い用量が必要であった。予備抗体応答は、脱脂されたウイルスが、同様に抗体応答を刺激していることを示す。これらの見解は、非常に低い追加免疫濃度の本発明の方法で脱脂されたウイルスにより誘発される幅広い一連のSIV抗原に対するCD4+及びCD8+細胞性応答を示す。
【0216】
以下の数段落では、応答は操作上、インターフェロンガンマに対して陽性であるCD4+細胞の割合に関して、SIV envペプチドに対するCD4細胞性応答として定義される。応答を誘発するペプチドプール、及び幾つかの範囲の応答(インターフェロンガンマに対して陽性であるCD4+細胞の割合)が示される。
【0217】
SIV envペプチドに対するCD4細胞性応答は、生ウイルス5μgで処置したマウスにおいて顕著ではなかった。様々な量の1%DIPEで脱脂されたウイルスの投与後に、SIV envペプチドに対するCD4細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、応答は、3個のenvペプチドプール5(0.13〜0.22%)、6(−0.3〜0.13%)及び13(0.13〜0.22%)から誘発された。用量1.0μgでは、幅広い応答が、数個を上回るenvペプチドプール(3、4、5(0.06〜0.23%)、8、11、12(0.19〜0.45%)、13(0.13〜0.39%)、14(0.13〜0.34%)、15(−0.03〜0.24%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、envペプチドプール5(0.17〜0.23%)で観察された。
【0218】
様々な量のAT−2処置したウイルスで追加免疫するためのSIV envペプチドに対するCD4細胞性応答は、制限された応答を示した。用量0.05μgでは、応答は、1個のenvペプチドプール(10(0.17〜0.25%))から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、約1個のenvペプチドプール(10(0.08〜0.22%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、CD4細胞性応答は、顕著でなかった。
【0219】
様々な量の生SIVウイルスで追加免疫するためのSIV envペプチドに対するCD4細胞性応答は、用量0.05μgで、プール1(−0.05〜0.23%)、8(0.13〜0.21%)、12(0.11〜0.21%)及び14(−0.03〜0.25%)から応答を示した。用量1.0μgでは、応答は、3個のenvペプチドプール(8(0.22〜0.36%)、12(0.12〜0.58%)及び13(−0.09〜0.33%)))から誘発された。より高い用量の5μgでは、CD4細胞性応答は、顕著でなかった。
【0220】
以下の数段落では、応答は操作上、インターフェロンガンマに対して陽性であるCD8+細胞の割合に関して、SIV envペプチドに対するCD8+細胞性応答として定義される。応答を誘発するペプチドプール、及び幾つかの範囲の応答(インターフェロンガンマに対して陽性であるCD8+細胞の割合)が示される。
【0221】
様々な量の1%DIPEで脱脂されたウイルスの投与後に、SIV envペプチドに対するCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、応答は、2個のenvペプチドプール5(0.22〜1.22%)及び13(0.43〜0.92%)から誘発された。用量1.0μgでは、幅広い応答が、数個のenvペプチドプール(2(0.18〜0.34%)、3(−0.06〜0.35%)、4(−0.03〜0.15%)、5(0.06〜0.25%)、9(0.24〜0.41%)、10(0.34〜0.87%)、11(0.22〜0.71%)、12(0.19%〜0.53%)、13(0.11〜0.35%)、14(0.19〜0.32%)、15(0.98〜1.35%)及び16(0.11〜0.31%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、en
vペプチドプール13(0.27〜0.41%)、14(0.28〜0.48%)及び15(0.31〜0.35%)で観察された。
【0222】
様々な量のAT−2処置したウイルスの投与後に、SIV envペプチドに対する制限されたCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD8細胞性応答は、envペプチドプール16(0.08〜0.45%)から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、envペプチドプール7(0.18〜0.33%)及び16(0.29〜0.88%)から誘発された。より高い用量の5μgでは、CD8細胞性応答は、顕著でなかった。
【0223】
様々な量の生SIVの投与後に、SIV envペプチドに対する制限されたCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD8細胞性応答は、ペプチドプール1(−0.05〜0.23%)、8(0.13〜0.2%)、12(0.11〜0.21%)及び14(−0.03〜0.25%)から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、ペプチドプール8(0.22〜0.36%)、12(0.12〜0.58%)及び13(−0.02〜0.33%)から誘発された。より高い用量の5μgでは、CD8細胞性応答は、顕著でなかった。
【0224】
以下の数段落では、応答は操作上、インターフェロンガンマに対して陽性であるCD4+細胞の割合に関して、SIV gagペプチドに対するCD4細胞性応答として定義される。応答を誘発するペプチドプール、及び幾つかの範囲の応答(インターフェロンガンマに対して陽性であるCD4+細胞の割合)が示される。
【0225】
様々な量の1%DIPEで脱脂されたウイルスの投与後に、SIV gagペプチドに対するCD4細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、応答は、gagペプチドプール5(0.22〜1.22%)及び13(0.43〜0.92%)から誘発された。用量1.0μgでは、幅広い応答が、約5個のgagペプチドプール(3(0.19〜0.72%)、5(0.15〜0.71%)、7(0.12〜0.77%)、10(0.19〜0.92%)及び15(0.42〜1.35%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、約4個のgagペプチドプール3(0.12〜0.49%)、5(−0.04%〜0.48%)、10(0.11〜0.52%)、14(−0.03〜0.52%)及び15(0.18〜0.56%)に対して減少した。
【0226】
様々な量のAT−2処置したウイルスの投与後に、SIV gagペプチドに対する制限されたCD4細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD4細胞性応答は、3個のgagペプチドプール(10(0.19〜0.59%)、11(0.11〜0.39%)及び13(−0.03〜0.31%))から誘発された。用量1.0μgでは、制限された応答が、gagペプチドプール7(−0.05〜0.27%)から誘発された。より高い用量の5μgでは、CD4細胞性応答は、顕著でなかった。
【0227】
様々な量の生SIVの投与後に、SIV gagペプチドに対するCD4細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD4細胞性応答は、約2個のgagペプチドプール(2(0.59〜1.23%)及び9(0.34〜1.1%))から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、約4個のgagペプチドプール(2(0.39〜1.12%)、3(0.11〜0.51%)、6(0.21〜0.72%)及び9(0.15〜0.51%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、約2個のgagペプチドプール(2(0.16〜0.51%)及び6(−0.05〜0.23%))から誘発された。
【0228】
以下の数段落では、応答は操作上、インターフェロンガンマに対して陽性であるCD8
+細胞の割合に関して、SIV gagペプチドに対するCD8細胞性応答として定義される。応答を誘発するペプチドプール、及び応答の幾つかの範囲(インターフェロンガンマに対して陽性であるCD8+細胞の割合)が示される。
【0229】
様々な量の1%DIPEで脱脂されたウイルスの投与後に、SIV gagペプチドに対するCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、応答は、約5個のgagペプチドプール(2(0.19〜0.92%)、3(0.19〜0.94%)、4(0.18〜0.95%)、6(0.28〜0.49%)及び13(0.29〜0.88%))から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、約6個のgagペプチドプール(2(0.01〜1.01%)、3(0.03〜0.49%)、6(0.01〜0.99%)、7(0.02〜0.37%)、10(0.01〜0.92%)及び15(0.05〜0.65%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、約7個のgagペプチドプール(2(0.11〜0.37%)、3(0.16〜0.54%)、4(0.18〜0.91%)、5(0.18〜0.71%)、10(0.13〜0.23)、14(0.13〜0.81%)及び15(0.2〜0.56%)から誘発された。
【0230】
様々な量のAT−2処置したウイルスの投与後に、SIV gagペプチドに対するCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD8細胞性応答は、5個のgagペプチドプール(10(0.28〜0.71%)、11(0.3〜0.91%)、12(0.23〜0.76%)、13(0.15〜0.61%)及び14(0.19〜0.72%))から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、約3個のgagペプチドプール(10(0.01〜0.73%)、11(−0.02〜1.1%)及び12(−0.05〜0.72%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、約1個のgagペプチドプール(10(0.07〜0.27%)から誘発された。
【0231】
様々な量の生SIVの投与後に、SIV gagペプチドに対するCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD8細胞性応答は、約3個のgagペプチドプール(2(0.28〜0.92%)、9(0.32〜0.82%)及び15(0.21〜0.43%))から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、約5個のgagペプチドプール(2(0.01〜0.91%)、3(0.03〜0.67%)、6(0.01〜0.71%)、9(−0.25〜0.8%)及び12(−0.05〜0.39%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、約3個のgagペプチドプール(2(0.19〜0.71%)、9(0.19〜0.53%)及び12(0.04〜0.87%))から誘発された。
【0232】
総括すると、これらのデータにより、AT−2処置したSIVウイルスで免疫化したマウスは、AT−2処置したウイルス又は生SIVウイルスによる追加免疫と比較した場合に、脱脂されたSIVウイルスによる追加免疫に対して、増強された免疫応答を示すことが実証される。脱脂されたSIVウイルスは、増強されたIFN−γ染色とともに、CD4+及びCD8+の割合に関して、AT−2処置したウイルスよりも高い免疫原性であった。
【0233】
本発明者等のデータにより、脱脂されたウイルスが、アジュバントを使用せずに、強力なT−細胞媒介性免疫応答を誘発したことが示される。全体的な細胞媒介性免疫応答の幅及び強度の増加が、生及びAT−2処置群と比較して、DIPEで追加免疫したマウス群において観察された。表9及び表10は、これらの結果の概要を示す。
【0234】
【表9】
【0235】
【表10】
【0236】
抗体力価は、DIPE処置したSIVで追加免疫した群において増強される
全ビリオンに対する抗体(Ab)力価を各群に関して決定した。SIV gp120に対する抗体力価は、DIPEで追加免疫した群と比較して、AT−2で追加免疫した群では有意に低かった(p=0.02)(図9)。概して、DIPEで追加免疫したマウスは、生又はAT−2のいずれかで追加免疫した群と比較した場合、SIV gp120及び
SIV Gagの両方に関して、より高いAb読取りを与えた(図10)。Ab力価が4週目に、その後の実験で測定された場合、追加免疫が群すべてに関して観察された(データは示さず)。ELISA(吸光度450nmで)により測定されるgag(p55)抗体力価は、生又はAT−2処置したSIVのいずれかで追加免疫した群よりも、脱脂されたSIVmac251で追加免疫したマウスからの血清でより高かった。ウェスタンブロット分析は、より広範囲のp27バンドが、生又はAT−2処置したマウス血清と比較して、脱脂されたSIVで追加免疫した血清により観察されたことから、抗体ELISAデータを支持した。これは、脱脂されたSIVで追加免疫されたマウスからのgag抗体によるより幅広いp27エピトープ認識を示す。gag及びenvの両方に対する抗体応答の成熟は、初回刺激後2週間目の追加免疫と比較して、初回刺激の4週間後にマウスを追加免疫した場合に観察された。投与経路(皮下(sc)又は静脈内(iv))は、抗体(ELISA)力価に影響を及ぼさなかった。生又はAT−2処置したウイルスの追加免疫と比較して、脱脂されたウイルスで追加免疫したマウスにおいて、CD4+T−細胞とSIVmac251gag及びenvタンパク質の両方に対する抗体応答との間で、より強力な相関が見られる。
【0237】
CD4応答と抗体応答との間の強力な相関
本発明者等は、gag及びenvプールに対するCD4+応答を、組換えgag及びenvに対する抗体応答と比較することにより、免疫化の影響を決定した。細胞性応答(CD4)と体液性応答(抗体応答)との間に強力な相関が観察され(図11)、増強された細胞媒介性免疫応答のさらなる有益性を示した。
【0238】
DIPE処置は、アジュバントの非存在下で、強烈な細胞媒介性免疫応答及び良好な体液性応答を創出した。意味深いことに、有効な追加免疫は、SIV p27約200ngに相当する、1mg程度と少ないDIPE処置したSIVの総ウイルスタンパク質により達成された。
【0239】
1μg程度と少ない総ウイルスタンパク質によりウイルスペプチド特異的免疫応答を誘発する本発明の能力は、驚くべきことであり、且つ予期せぬことであった。アジュバントの同時投与無しで単回IV追加免疫により達成されるこのレベルの免疫応答は、脱脂されたウイルスの生化学的性質が、生又はAT−2処置したSIVにより誘発されるものと異なるより多数のウイルスペプチドの効率的なプロセッシング及び提示、又は認識を誘導するのに十分変更されていることを示唆する。
【0240】
最後に、本発明者等は、Balb/cマウスにおいて、生SIV、AT−2処置したSIV及び脱脂されたSIV(DIPE)の免疫原性を比較して、DIPEで処置したウイルスで追加免疫した群からの細胞媒介性免疫応答の有意な増強を観察した。驚くべきことに、有効的な追加免疫は、非常に低用量である総ウイルスタンパク質1μg(これは、SIV p27約200ngに相当する)で達成された。これらの結果は、アジュバントを使用せずに、追加免疫用量で得られ、免疫原性において実質的な増加を示した。本発明者等の結果は、ウイルスを脱脂することにより、その感染力を有意に減少させながら、ウイルスの抗原性を増強したことを示す。本発明者等の結果は、HIVのコレステロール欠乏は、β−CD処置したウイルスがウイルスRNA及びウイルスタンパク質の劇的な損失をもたらし、したがって感染力の損失に寄与したため、ウイルスの感染力を劇的に減少させるという従来の見解(Nguyan et al., J. Immunol. 168: 4121, 2002; Graham et al., J.
Virol. 77: 8237; Liao et al., AIDS Res. Human Retroviruses 19:675, 2003)と異なる。脱脂されたウイルスは、ウイルスRNA及びウイルスタンパク質の無視し得る損失を有する。
【0241】
以下の記述により拘束されることを望まないが、脱脂過程は、抗原提示細胞により、よ
り良好にプロセッシング又は提示されるウイルス粒子を創出する可能性があり、観察される幅広いペプチドプール応答につながると考えられる。さらに、ウイルスの脱脂は、MHC II分子のようなより多くの細胞抗原(感染CEMx174細胞から発芽されると、ウイルスにより採取される)を露出することができ、これは、細胞応答を増強する際にアジュバントとして作用することができる。血清Ab力価及びAb血清プロファイルのウェスタンブロット分析は、DIPE処置したSIVで追加免疫した群において、増強された抗Env抗体、及びSIV gag特異的抗体応答の一貫した広がりを示し、おそらく抗p27Ab力価の増加、又はウイルスタンパク質に対するAbアビディティの増加を示した。これらの結果は、SIVのDIPE脱脂が、マウスにおいてウイルスの免疫原性に影響を及ぼすことを実証する。この新規脱脂方法は、HIV療法用ワクチン設計及び開発に寄与すると考えられる。
【実施例8】
【0242】
様々な脱脂手順で処置したHIVウイルスにおける総タンパク質及びp−24タンパク質回収
本出願人等は、総タンパク質回収及びp24タンパク質回収の度合いにより測定されるように、上述の脱脂過程が無傷のウイルス粒子を生産することが可能であることを見出した。
【0243】
HIVウイルスを含有する試料を、転倒型回転を用いて、室温で20分間、速度70%で、溶媒と混合した。次に、試料を1,000×gで2分間遠心分離した後、炭カラムに通した。総タンパク質をBioRadアッセイにより測定した。ウイルスp24は、p24サンドイッチELISA(Coulter)により測定した。
【0244】
1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールを用いた脱脂過程に関する総タンパク質回収は、対照の10%以内であり、具体的には総インプットの63〜75%の範囲である。1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールを用いた脱脂過程に関するp24タンパク質回収は、対照の40%以内であり、2%ブタノールは、およそ83%の対照回収割合に対しておよそ78%のp24タンパク質回収割合をもたらす。
【実施例9】
【0245】
様々な脱脂手順で処置したHIV及びSIV粒子の浮遊密度及び免疫反応性(gp120及びp24)
上述の脱脂過程は、ウイルス粒子の浮遊密度を変更させた。密度の変化は、ウイルス粒子からの脂質の除去がタンパク質対脂質の比、結果として粒子密度を変化させるため、首尾よい脱脂の有用な指標である。この実施例では、対照並びに溶媒処置したHIV及びSIV粒子の等密度を決定して、密度の変化を、対照及び処置したウイルスの測定脂質含有量と相関させた。
【0246】
溶媒処置は、HIV及びSIV粒子の密度範囲を広げ、高溶媒濃度は、ウェスタンブロット分析及びタンパク質プロファイルに基づいて、ウイルスをより高い全体密度へとシフトさせ、これは、脂質の損失と一致する。具体的には、図1は、対照群と一緒に、1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールを用いた脱脂に付したウイルス粒子の画分番号に対する密度のグラフ表示により示されるようなショ糖勾配画分の密度を表す。HIVを脱脂して、ショ糖精製した。ウイルスをショ糖勾配上へ充填して、平衡密度に達するまで遠心分離した。図2は、画分番号それぞれに関するp24タンパク質の濃度を表す。予想通り、対照群に関するタンパク質濃度は、比較的高い濃度のp24を示すが、対照よりも高い密度で記録される1%ブタノール/DIPEとともに最も高かった。他の密度変更されたp24濃度は、5%ブタノール、2
%ブタノール、1%ブタノール及び1%DIPEに関して示された。密度変更は、ウイルス粒子を脱脂する際の成功度を示す。
【0247】
HIV−1ウイルスをショ糖勾配上に流して、様々な画分を回収した後、SDS−PAGEゲル上へ流して、膜へ転写して、HIV−1感染個体からの陽性対照血清を用いてブロットした。
【0248】
ウェスタンブロット分析は、各脱脂過程から得られる様々な密度画分に対するエンベロープタンパク質gp120及びカプシドタンパク質p24に対する抗体、及びHIV−1ウイルス粒子に対する対照を用いて行った。対照試料のウェスタンブロット分析は、予想した密度画分で、p24タンパク質及びgp120タンパク質の強力なバンドを現した。大部分の無傷ビリオンは、画分5〜7で溶出した。様々な脱脂過程は、p24及びgp120免疫反応性画分の位置の変化をもたらし、処置されたウイルス粒子の密度の変更を示した。1%DIPEによるHIV−1の処置は、より高密度画分への免疫反応性バンドのシフトをもたらした。1%DIPE/ブタノールによる、及び独立して1%ブタノールによるHIV−1の処置もまた、より高密度画分への免疫反応性バンドのシフトをもたらした。2%ブタノールによるHIV−1の処置は、p24タンパク質及びgp120タンパク質の減少を含む多くのタンパク質の損失、並びにウイルス粒子の密度の増加を生じた。5%ブタノールによるHIV−1の処置は、p24タンパク質及びgp120タンパク質免疫反応性のほぼ完全な損失、並びにウイルス粒子の密度の顕著な増加を生じた。
【0249】
図3では、画分番号に対する総回収p24タンパク質の割合のグラフ表示により示される、脱脂されたHIVの等密度勾配分析が示される。脱脂過程に付した試料に関する総回収p24タンパク質の相当量は、より高密度で見出される。1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールで脱脂した試料それぞれに関して、より多くの量のp24タンパク質が、対照群と比較した場合、より高い画分番号(より高い密度)で回収された。この密度シフトは、図4でさらに示しており、ここでは、画分番号に対するgag p27濃度のグラフにより示される、SIV−mac251の等密度が表される。対照に対して、1%DIPE及び1%ブタノールの両方に関する脱脂試料が、密度のシフトを示した。
【実施例10】
【0250】
脱脂手順を受けたHIV及びSIVウイルス粒子のコレステロール含有量の減少
本出願人等は、上述の脱脂過程が、ウイルス粒子においてコレステロールの度合いを変更させることを見出した。コレステロールの変化は、ウイルス粒子からの脂質の除去が、コレステロールの量及びコレステロール対タンパク質の比を変化させるため、首尾よい脱脂の有用な指標である。HIV及びSIV粒子を有機溶媒に曝露させることにより、タンパク質を保存しながら脂質が除去され、それにより、粒子の免疫原性を維持又は増強しながら、ウイルスの感染力の損失をもたらす。
【0251】
表11では、対照と一緒に、1%DIPE、1%ブタノール、1%ブタノール/DIPE、2%ブタノール及び5%ブタノールにより脱脂されたウイルス粒子のコレステロール対総タンパク質の比が示される。HIVを脱脂して、20%ショ糖で精製した。コレステロールは、Molecular Probes, Inc.のような製造供給元からの市販のバイオアッセイであるAmplex Redアッセイで測定し、総タンパク質を測定した。データは、脱脂された試料それぞれに関して、総タンパク質対して減少されたコレステロール含有量を示す。
【0252】
【表11】
【0253】
SIVを脱脂して、20%ショ糖で精製した。コレステロールは、Amplex Redアッセイで測定し、Gag p27タンパク質を測定した。データは、コレステロール対Gag p27タンパク質の比として表す。DIPE処置したウイルスは、対照よりも80%少ないコレステロールを有し、有効な脱脂を示した。同様に、対照に対して、1%DIPE試料は、減少したコレステロール対タンパク質の比を有した。1%DIPE処置は、p27回収により測定されるウイルスの構造的完全性を維持しながら、80%コレステロールを効果的に除去した。5%DIPE:n−ブタノール処置は、ウイルスタンパク質、総タンパク質及びコレステロールの劇的な損失を招いた。この方法は、厳しすぎた。1%ブタノール処置は、測定されるコレステロールの量が依然として変わっていなかったため、ウイルスを脱脂するのには効果的ではなかった。総コレステロールの回収は、1%ブタノール及び1%DIPEに関しては、それぞれ約37%及び78%であり、p27タンパク質の相当する回収は、それぞれ約90%及び15%であり、かかるウイルス粒子の相当部分が依然として無傷のままでのウイルス粒子の首尾よい脱脂をさらに示す。図5及び図6を参照して、画分したSIV−mac251のFPLCプロファイルを、Gag p27及びコレステロールに関して示す。1%DIPE脱脂に関して、gag p27の濃度は、より高濃度の画分番号で対照と実質的に異なるのに対して、コレステロールの濃度は、ほぼすべての画分に関して、対照より実質的に低いことが、グラフにより実証される。
【実施例11】
【0254】
脱脂されたHIVで追加免疫したサルは、生HIVで追加免疫した群と比較して、より高いAb力価を有する
4匹のサルを不完全フロイントアジュバント中のp24 HIV−IIIB 5μgの等価物で初回刺激した。続いて、サルを2匹のサルを有する2つの群に分けた。群1(RIl&RFo)には、DIPEで脱脂されたHIV−IIIB 1μgを毎月施し、群2(RFt&Rom)には、生HIV−IIIB 1μgを毎月施した。細胞パラメータを、免疫細胞化学により測定した。追加免疫の7日後に、染色を行った一方で、Ab力価及び中和Abは、追加免疫の4週間後に測った。全HIV−IIIB溶解物に対するAb力価を測定した。群1の動物(これらには、脱脂されたウイルスを施した)は、群2の2匹の対照サルよりも高いAb力価を有した。脱脂されたウイルスの追加免疫は、完全ビリオンに対するAb力価を増強した(データは示さず)。
【0255】
ペプチドプールすべてに対するプールされたCD4 T細胞応答を表12に表示する。概して、動物は、GAGペプチドプールに対してよりもENVペプチドプールに対してよ
り良好な応答を示した。群1の動物(RIl及びRFo)はともに、Gag(1.5%より大きい)及びEnv(1.5%より大きい)に対して累積応答を有した。対照群2中のたった1匹の動物(RFt)が、Gag(0.5%より大きい)及びEnv(1.5%より大きい)に対して、感知可能な応答を有した。他方の対照動物であるRomは、ペプチドプールに対して非常に低い応答を有した。
【0256】
概して、脱脂されたウイルスを施したサルは、より良好な細胞媒介性免疫応答(ICCにより測定)を示した。Abデータは、CD4+ICCデータと十分相関する。ICC応答を示す動物はまた、良好なAb力価を有する。ウェスタンブロットデータもまた、Abデータ及びICCの結果の両方と十分相関する。
【実施例12】
【0257】
脱脂されたSIVに曝露させた樹状細胞は、生ウイルスに曝露させた樹状細胞と比較して、増強されたCD4+増殖を刺激する
長期非進行型(non-progressor)サルからのPBMCを使用した。PBMCは、フィコール分離を用いて単離し、単球は、RPMI−10%FCS中で3×107個のPBMCのプラスチック接着性を利用して、37℃で2時間培養した。非接着細胞を除去して、フラスコを温1×PBSで穏やかに洗浄した。単球を1,000U/mlのIL−4及び1,000U/mlのGM−CSFとともに、RPMI−15%FCS中で4日間インキュベートした。この手順により、未熟樹状細胞(DC)が作成された。
【0258】
未熟DC(2×103個)を、AT−2処置したSIV、脱脂されたSIV(転倒型混合を用いて20分間の1%DIPE)又は生SIV 50ngで、37℃にて3時間、パルス処置した。細胞を広範囲にわたって洗浄して、過剰のウイルスを排除して、残留ウイルスの量に関して、SIV p27により検査した。DC(2×103個)を、100U/mlのTNF−a、IL−4、GM−CSFを有するR−15中で3日間、再懸濁させて、DC成熟を誘導した。次に、2×106個の末梢血リンパ球(PBL)をDC培養物に24〜36時間添加した後、cyQUANT細胞増殖アッセイキット(Molecular Probes)を用いて増殖アッセイを行った[注記:CD8+細胞は、使用前にPBLから枯渇させた]。増殖アッセイは、製造業者のプロトコル(cyQUANT−Molecular Probes)に従って実施した。簡潔に述べると、細胞をペレット化して、上清を除去した。続いて、ペレットを約1時間凍結させて、4×CyQUANT色素濃縮物をペレットに添加した。溶解させた細胞の上清を約10分間静置させた後、励起に関しては波長480、及び放出に関して波長520で、蛍光プレートを読取った。
【0259】
増殖割合は以下のように算出した:[(試験増殖−対照増殖)/(対照増殖)]×100。対照増殖は、バックグラウンドノイズを提供するために、抗原無しのPBMC+DCの増殖である。
【0260】
樹状細胞(DC)は、CD4、CD8及びCD20 B−細胞に対する強烈な抗原提示細胞である。脱脂されたSIVでパルス処置した樹状細胞(DC)は、生ウイルスでパルス処置したDCと比較して、CD4+細胞において、16%より良好な増殖性応答を誘発した(脱脂されたウイルスによる208672対生ウイルスによる165616)ことが、結果により実証される。このことは、DCによる脱脂されたウイルスのより良好なプロセッシング/提示を強く支持する。
【0261】
CD4増殖は、所定のエピトープに対するCD4応答の機能的指標である。HIV感染した人々において、彼等のCD4細胞は、抗原に応答してIFN−γを生産するが増殖しないため、CD4増殖は、IFN−γ分泌よりも特異的な読取りである。
【0262】
本発明の方法で脱脂されたウイルスは、抗原特異的CD4+細胞の増殖を増加させることができ、CD8+細胞のより効率的な成熟及び血漿細胞(抗原特異的Abを生産するB細胞)の成熟につながる。ウイルス感染の制御は、CD4+細胞増殖に依存するため、本発明の方法は、有効的な機能的ワクチンを提供する。
【0263】
上記引用した特許、刊行物及びアブストラクトはすべて、それらの全体が参照により本明細書に援用される。当然のことながら、上述の事項は、本発明の好ましい実施形態のみに関するものであり、添付の特許請求の範囲に記載するような本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、無数の修正又は変更が本発明においてなされ得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】対照群と一緒に、1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールを用いた脱脂に付したHIVウイルス粒子の画分番号に対する密度のグラフ表示により示されるようなショ糖勾配画分の密度を表す図である。
【図2】図1に示されるそれぞれの画分番号に関するp24タンパク質濃度(ng/ml)を表す図である。
【図3】図2と同様であり、対照群と一緒に、画分番号に対する総回収p24タンパク質の割合としてのp24レベルとしてグラフ表示により示される、1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールを用いた脱脂に付した脱脂されたHIVの等密度勾配分析の概略図である。
【図4】1%DIPE、5%DIPE:n−ブタノール(75:25)及び1%n−ブタノールの脱脂条件の後の画分番号に対するgag p27濃度(ng/ml)のグラフ図により示される、脱脂されたSIV−mac251の等密度勾配分析の概略図である。
【図5】各画分番号のp27 gagレベル(μg/ml)を示す、対照及び1%DIPE処理したSIV mac521の高速液体クロマトグラフィ(FPLC)の概略図である。
【図6】図5に示される画分のコレステロールレベル(ng/ml)を示す図である。
【図7】生ウイルスでの1%DIPE処理後、及びAT−2処理後のSIV mac521感染力(TCID50/ml)対ウイルスRNAコピー数(コピー/mg)の概略図である。
【図8】AとBは、生ウイルス、AT−2不活化ウイルス又は脱脂したウイルス(1%DIPE)で追加免疫したAT−2不活化SIV初回刺激マウスからの100万個のPMBC中の、SIV env(8A)ペプチドプールおよびSIV gagペプチドプール(8B)に対するCD4+及びCD8+T細胞応答(%インターフェロンガンマ陽性細胞)を示す図である。6匹のマウスの平均(+SEM又は−SEM)が示される。**=p値<0.01、*=p値<0.05。
【図9】AT−2処置ウイルス(SIV mac 251)で免疫化し、生ウイルス(SEV mac 251)、AT−2不活化ウイルス又は脱脂したウイルス(1%DIPE)の総ウイルスタンパク質1μgで追加免疫したマウスの、SIV env gp120抗体力価(450nmでのO.D.)の概略図である。マウス血漿の連続希釈液は、組み換えSIV mac251 gp120 envタンパク質でコーティングしたELISAプレート中で測定した。
【図10】AT−2処置ウイルスで免疫化し、生ウイルス(SEV mac 251)、AT−2不活化ウイルス又は脱脂したウイルス(1%DIPE)の総ウイルスタンパク質1μgで追加免疫したマウスの、SIV gag p55抗体力価(450nmでのO.D.)の概略図である。マウス血漿の連続希釈液は、組み換えSIV mac251 p55 gagタンパク質でコーティングしたELISAプレート中で測定した。
【図11】SIV mac251 Gag及びEnvペプチドプールに対するCD4+応答(%IFNガンマ細胞)と、組換えGag及びEnvに対する抗体応答(O.D.450nm)との相関曲線の概略図である。SIV mac251 gagに対する細胞性応答(CD4)と抗gag抗体応答との間に強力な相関(R2=0.9993)が観察された。SIV mac251 envに対する細胞性応答(CD4+)と抗env抗体応答との間に良好な相関(R2=0.953)が観察された。
【図12】不完全フロイントアジュバント中のp24 HIV−IIIB 5μgの等価物でそれぞれ初回刺激し、その後DIPEで脱脂されたHIV−IIIB 1μgを毎月(RIl&RFo)、又は生HIV−IIIB 1μgを毎月(RFt&Rom)追加免疫した、4匹のサルのgag又はenvペプチドプールに応じる、IFNガンマに対する細胞免疫反応性CD4+の割合を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスから脂質を抽出し、それにより改変されたウイルス粒子を作成するのに有用な溶媒系を利用する脱脂法に関する。本発明の溶媒系は、ウイルスの脱脂の際に、ウイルス粒子が実質的に無傷で残るように最適に設計される。本発明の方法を用いてウイルス粒子を取り囲んでいる脂質エンベロープを溶解することにより、得られた改変されたウイルス粒子は、ヒト又は動物内に導入されたときに細胞応答及び抗体生産を助長且つ促進する露出抗原(又はエピトープ)を有する。本発明の得られた改変されたウイルス粒子は、再導入された種において、陽性(positive)免疫原性応答を開始する。本発明は、特異的患者からのウイルスを該患者への将来的な再導入のために脱脂すること、ストックウイルス又は特異的ウイルスをワクチンをして使用するために脱脂すること、又は非患者特異的ウイルス及び患者特異的ウイルスの両方を療法用カクテル(cocktail)を作成するために脱脂及び組み合わせることに、適用することができる。
【背景技術】
【0002】
序文
多様な病原のウイルスは、毎年数十億の動物及びヒトに影響を与え、社会に莫大な経済的負担を負わせている。多くのウイルスは、それらを取り囲む膜の主要成分として脂質を含有する。ウイルスは動物及びヒトに影響を与え、極度の苦痛、病的状態及び死亡を引き起こす。これらのウイルスは、血液、腹水、リンパ液、胸膜液、心嚢液、脳脊髄液及び生殖器系の様々な流体等の生体流体中で体内を循環する。任意の部位での流体の接触は、疾患の伝染を促進する。他のウイルスは主に種々の器官系及び特異的組織に常在し、増殖し、次いで循環系内に進入して遠隔部位にある他の組織及び器官に接近する。これらの病原体に対して体が陽性免疫応答を示さないと、体内の多くの細胞型に感染し、これらの細胞がその正常な機能を行うことを阻害する。
【0003】
ヒトの免疫系は、種々のウイルスから共同して体を防御する様々な細胞型から構成される。免疫系は、主に抗原の認識及び排除に関与している、体液性免疫応答及び細胞性免疫応答を含む、外的要素を標的化及び排除するための複数の手段を提供する。外的要素に対する免疫応答は、Bリンパ球(B細胞)又はTリンパ球(T細胞)の存在が、通常はマクロファージ又は樹状細胞である抗原提示細胞(APC)と組み合わせて必要である。APCは、抗原を捕捉する特殊化した免疫細胞である。一旦APC内部に入ると、抗原はエピトープ(抗原表面により運搬される独特のマーカ)と呼ばれるより小さいフラグメントに分解される。これらのエピトープは、続いてAPCの表面上に表示(display)され、感染の防御における抗体応答を誘因する(triggering)ことに関与する。
【0004】
体液性免疫応答において、体に対して外的であるAPC表示抗原(独特のエピトープマーカの型)が認識されると、B細胞は活性化され、増殖し、抗体を生産する。これらの抗体はウイルス上に存在する抗原と特異的に結合する。抗体が付着した後、APCは抗原全体を飲み込み、これを殺す。このタイプの抗体免疫応答は、主にウイルス感染の予防に関与する。
【0005】
細胞性免疫応答において、T細胞はAPC上に表示された抗原を認識する際に活性化される。細胞性免疫応答には2つのステップが存在する。第一の工程は、増殖して抗原を特異的に提示する標的細胞を殺す、細胞傷害性T細胞(CTL)又はCD8+キラーT細胞の活性を伴なう。第二の工程は、抗体の生産及びCD8+細胞の活性を制御する、ヘルパーT細胞(HTL)又はCD4+T細胞を伴なう。CD4+T細胞は、CD8+細胞を増殖
させ、且つ効率的に機能させる成長因子をCD8+細胞に与える。
【0006】
ある感染性病原体は、その構造に応じて「慢性的」であると見なされる。例えばいくつかのウイルスは、それらの抗原のいくつかを免疫系から隠す能力のため、免疫応答を回避することが可能である。ウイルスは、出芽過程中、宿主の細胞膜に由来する脂質及び脂肪から成る外側エンベロープを含有する。ウイルスは、タンパク質コート(coat)に取り囲まれたビリオン(ただ1つの型の核酸(RNA又はDNAのどちらか)から成る非細胞性感染性物質)を含む。ウイルスを被覆している外側タンパク質はカプシドと呼ばれ、カプソマーと呼ばれる繰り返しサブユニットから成る。
【0007】
ウイルスは非代謝性であるため、生きている宿主細胞内でしか繁殖しない。ウイルスはウイルスエンベロープのタンパク質をコードする一方、宿主細胞は脂質及び炭水化物をコードする。したがって、所定のウイルスエンベロープ中の脂質及び炭水化物含量は、特定の宿主に依存する。したがって、エンベロープされたウイルス粒子は、脂質及び炭水化物含有物を介して、宿主細胞の同一性を部分的に取り入れ、通常は免疫応答を開始しているであろう、それらと関連する抗原を隠匿することができる。代わりに、ウイルス粒子は、宿主組織の成分を含有する抗原複合体を宿主に提示することにより、宿主の免疫系を混乱させ、宿主の免疫系により部分的に「自己」及び部分的に「外性」であると感知させる。免疫系は、ウイルス粒子を破壊しない「日和見的」非効率的な抗体を生産させられ、宿主細胞を破壊しながら、ウイルスを繁殖させ、徐々に体に重篤な損傷を引き起こしてしまう。
【0008】
免疫系に影響を与える最近の伝染病は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により引き起こされると考えられている後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む。近縁のウイルスが、例えばサル及びネコ等の動物種に影響を与えている(それぞれSIV及びFIV)。他の主なウイルス性感染症は、髄膜炎、サイトメガロウイスル及び様々な型の肝炎ウイルスを含むが、これらに限定されない。
【0009】
現在の処置方法
多様な病因のウイルスを処置する従来技術の方法の一つは、薬物療法を介する。ほとんどの抗ウイルス薬物療法は、ウイルスの複製を予防又は阻害することを目的としており、T4リンパ球又はマクロファージへのウイルスの最初の付着、ウイルスRNAのウイルスDNAへの転写、及び複製中の新規のウイルスの組み立てに焦点が当てられているように見える。様々な菌株が抗ウイルス薬物療法に対して耐性となるため、ウイルスの高い突然変異率(特にHIVの場合)は、現存する処置における主な問題である。さらに、抗ウイルス薬物療法処置は、ウイルスの耐性菌株の進化を引き起こし得る。薬物療法に対する他の難点は、望ましくない副作用及び患者の順守要件(patient compliance requirements)である。加えて、多くの個体は複数のウイルス感染(HIVと肝炎の組み合わせ等)により悩まされている。このような個体は、疾患の進行を相殺するために、より積極的且つ高価な投薬計画が必要である(これはより重大な副作用及びより高い複数の薬物耐性の可能性を引き起こす)。HIVを処置する現在最も有効的なアプローチは、高価で、患者に対して毒性であり、且つウイルスを根絶しない、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の使用である。HAART処方計画の厳守はいまだに大きな障害であり、順守の欠落は爆発的なウイルス複製及び薬物耐性菌株の選択を導く。加えて、HAARTの長期間の使用は、リポジストロフィー、糖代謝異常並びに血漿中のコレステロール及びトリグリセリドの増大等の副作用と関連する。したがって、予防及び療法用のワクチンのいずれかの型でのさらなる療法、又はHAARTを増補する免疫調節剤への差し迫った必要性が存在する。HIVワクチン開発への現在のアプローチは、Mwau他(2003年、A review of vaccines for HIV prevention. J Gene Med 5: 3)により論評されている。簡便には、戦略として、様々な発現ベクター、DNAベースの組み換えワクチン、DNAベースワクチ
ンの組み合わせ、及びアジュバント有り又は無しのウイルスタンパク質追加免疫(boosts)を含む。例えば、タイ国における組み換えgp120ワクチンを使用する最近の第三フェーズ臨床試験は、成功しなかった(Cohen, J. 2003.Public health. AIDS vaccine still alive as booster after second failure in Thailand.Science 302: 1309)。おそらくこれは、適切な免疫応答が生じるためには、組み換えウイルスタンパク質が正確な構成(correct configuration)である必要があるためである。明らかに、ウイルス抗原に対する免疫応答を増強する他の新規のアプローチが評価される必要がある。
【0010】
ワクチン接種の使用を介する疾患の予防も従来技術において知られている。ワクチンは単独で、いくつものヒト病原体に対する免疫応答を授与することに関与してきた。ワクチンは免疫系を刺激して、様々なウイルス感染に対して防御するように設計されている。包括的に、ワクチンは、病原(disease-causing)微生物から単離又は生産される抗原から生産され、免疫応答を誘発することができる。有効的な免疫応答を創出する予防的対策としてワクチンが血流中に注射されると、血流中のB細胞が、ワクチンに含有される抗原を外的又は「非自己」であると感知し、抗原と結合してそれらを不活化する抗体を生産することで対応する。それによりメモリ細胞が生産され、同じ病原物質によるその後の感染に対する、迅速な防御免疫応答をすぐに備えることができる状態に留まる。したがって、ワクチンと類似した抗原を含有する感染性病原体が体内に侵入すると、免疫系がタンパク質を認識し、感染に対して有効的な防衛を推進する。
【0011】
現在のワクチン接種法は欠点を有し、特定の病原体(特にHIV)に対して個体に免疫性を与えることは、最適に望ましいものであるとは決して言えない。現存するワクチン戦略は、感染性病原体と関連する抗原に対して体を露出させ、体がこれらの病原体に対して免疫応答を構築するできるようにすることを目的とする。例えば、B型肝炎及びHIVの病原体は、免疫応答があるにもかかわらず、ヒトの体内で生存且つ増殖することができる。従来技術において提示される1つの説明では、これら微生物の抗原は絶えず変化し、そのため抗原が突然変異すると、特定抗原に応じて生産される抗体はもはや有効的ではないとされる。AIDSウイルスはこの抗原変異を受けると考えられている。抗原変異は薬物又は抗原の組み合わせの使用により試みられてきたが、従来技術のワクチンはHIV等の慢性的感染症への取り組みに成功していない。
【0012】
多様な病因のウイルスを処置する別のアプローチは、ウイルスを不活化することである。化学薬品を使用してウイルスを不活化する従来技術の方法は、クロロホルム又はグルタルアルデヒド等の有機溶媒に頼ってきた。ウイルスの不活化はウイルス感染に対する防御免疫応答を付与しないため、ウイルス不活化は現在も問題である。加えて、これの大部分はウイルスタンパク質を変性させることに合わせられているため、ウイルス粒子の構造を破壊する。つまり、従来技術法の大部分は、免疫応答を生産するため、ウイルス粒子を好適に改変するのではなく破壊することに焦点が当てられている。
【0013】
ウイルス処置剤及び医薬品の現在の製造方法
ウイルス不活化(又は化学的殺傷)
従来技術には、ウイルス粒子を有機溶媒及び高温で処置し、それにより脂質エンベロープを溶解し、続いてウイルスを不活化する方法が記載されている。これらの方法において、血液は患者から抜き取られ、2つの相に分離される。赤血球及び血小板を含む第1相並びに血漿、白血球及び無細胞ウイルス(ビリオン)を含む第2相である。第2相は、有機溶媒で処置され、感染細胞及びビリオンを殺傷し、続いて患者内に再導入される。ウイルスの脂質エンベロープを溶解することに加えて、高い有機溶媒濃度は、細胞死を引き起こし抗原を傷つける。原則的に、この方法は細胞の「化学的殺傷」をもたらす。
【0014】
グルタルアルデヒドは、約1:250のグルタルアルデヒド希釈溶液による固定により
当業者に既知であるように、細胞不活化が達成されるような溶媒の1つである。グルタルアルデヒドでのウイルスの処置は有効的にウイルスを脱脂するが、コア(core)も破壊する。核の破壊は、レシピエント内で免疫応答を誘導するのに有用な改変されたウイルス粒子を生産するのに望ましくない。
【0015】
クロロホルムは別のこのような溶媒である。しかし、クロロホルムは多くの血漿タンパク質を変性させるため、動物又はヒトに再導入されるであろう生体流体との使用に好適でない。クロロホルムにより有害な影響を与えられるこれらの血漿タンパク質は、凝集、ホルモン応答及び免疫応答を含む重要な生物学的機能を果たす。これらの機能は生命に不可欠であり、したがってこれらのタンパク質の損傷は患者の健康に悪影響を与え、死にいたらしめるかもしれない。
【0016】
B−プロピオラクトン、TWEEN−80、及びジアルキル又はトリアルキルリン酸などの他の溶媒又は洗剤(detergent)が、単独で又は組み合わせて使用されてきた。これらの方法の多く、特に界面活性剤を包含するものは、動物又はヒトに処置血漿試料が再導入される前に、界面活性剤の除去を確実にする面倒な手順を必要とする。さらに、従来技術に記載される多くの方法は、遊離したウイルス及び感染細胞を殺傷するために、高められた温度に広範囲にわたってさらすことを包含する。高められた温度は、血漿などの生体流体中に含有されるタンパク質に対して有害な影響を有する。
【0017】
現在のワクチン製造方法
現在まで、いくつかの製造方法が、感染性病原物質に対して個体に免疫性を与える安全且つ有効的なワクチンの探索に利用されてきた。特異的病原性感染から個体を保護するために、感染性病原体と関連する標的タンパク質又は抗原が個体に投与される。これは、タンパク質を、非感染性(不活化)又は感染性の小さい(弱毒化)物質として、又は別個のタンパク質組成物として提示することを含む。当業者には、以下の種々のタイプのワクチンが知られている:生弱毒化ワクチン(live attenuated vaccines)、完全不活化ワクチン(whole inactivated vaccines)、DNAワクチン、組み合わせワクチン、組み換えワクチン、生組み換えベクターワクチン(live recombinant vector vaccines)、ウイルス様粒子及び合成ペプチドワクチン。
【0018】
生弱毒化ワクチンにおいて、ウイルスゲノムの特異的遺伝子操作又はある種の組織培養系における継代のいずれかにより、ウイルスは宿主に対する病原性が弱くなる。遺伝子操作を達成するためには、非必須遺伝子を欠失するか、ウイルス中の1つ又は複数の必須遺伝子を部分的に損傷させる。遺伝子操作の際、ウイルス粒子は有毒性が弱くなるが、抗原特性は保有している。生弱毒化ワクチンは、他の遺伝子への「ワクチンベクター」としても使用することができ、ここでワクチンは防御を必要とする第二のウイルス(又は他の病原体)からの遺伝子のキャリアーとして作用する。しかし、弱毒化ワクチン(感染性は弱いが不活化されてない)は、いくつかの問題を提起する。第一に、いつ弱毒化ワクチンが最早病原性でなくなるかを突き止めることが難しい。有効的な弱毒化を適切に試験するためには、ワクチンからのウイルス感染の危険性が大きすぎる。加えて、弱毒化ワクチンは、病原体の有毒型へ逆戻りする危険性を抱えている。
【0019】
完全不活化ワクチンは、殺傷又は不活化したウイルスを導入して個体の免疫系へ病原体タンパク質を導入することにより、感染に対する免疫性を与えることが当該技術分野において知られている。熱的又は化学的手段により殺傷又は不活化した病原体を個体へ投与することは、個体の免疫系へ病原体を非感染的型で導入し、それにより免疫応答防御を開始する。完全不活化ワクチンは、病原体免疫原に対する細胞性及び体液性免疫応答を直接生じさせることにより防御を付与する。ウイルス病原体は殺傷されるか不活化されているため、感染のおそれはほとんどない。
【0020】
サブユニットワクチンは、当業者によく知られているさらなる別のワクチン接種の型である。サブユニットワクチンは、病原体に由来する、1つ又は複数の単離タンパク質から成る。これらのタンパク質は、免疫応答が示される標的抗原として作用する。サブユニットワクチンに選択されたタンパク質は、病原体により提示され、病原体による個体の感染の際、個体の免疫系はその病原体を認識し、免疫応答を推進する。サブユニットワクチンは、完全感染性物質ではなく、したがって感染性になることが不可能である。サブユニットワクチンはAIDSVAX(ヒトにおける有効性を試験された初めてのHIVワクチンであり、gp120と呼ばれる、HIV外表面(エンベロープ)タンパク質の一部を含有する)の土台である。
【0021】
DNAワクチンは、当該分野において既知であり、病原体の実際の遺伝物質を使用する、別のタイプである。加えて、合成ペプチドワクチンは、ペプチドと呼ばれる、合成及び化学的操作されたHIVタンパク質の部分から作られる。これらは、抗HIV免疫応答を達成する、特異的に選択されたHIVタンパク質の断片から成る。また、互いに併せて使用されると、幅広い範囲(spectrum)の免疫応答を生じる、組み合わせワクチンも従来技術において言及されている。組み合わせウイルスの一例は、HIVエンベロープ及びSIVコアから作られる合成ウイルスであるSHIVが挙げられる。
【0022】
防御免疫応答を開始することができる患者特異的ウイルス抗原を、患者に付与する、療法の方法及びシステムが必要とされている。したがって、処置される生体試料からのタンパク質を大量に(appreciably)変性又は抽出しない、簡便且つ有効的な方法が求められている。また、ウイルス粒子を破壊するのではなく改変することによる、有効的な脱脂過程が必要とされており、それによってそのウイルス粒子の感染力を減少及び/又は消失させ、且つ患者特異的自己免疫応答を引き起こし、さらにウイルス感染を現象させかつ更なる感染を予防する。
【0023】
また、ウイルスの突然変異により個体特有のウイルス病原体感染に対して、個体を免疫化する有効的な手段も必要とされている。好ましくは、上記手段は、個体が感染する危険性を最小限にして、幅広い防御免疫応答を誘発するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
発明の概要
本発明は、簡便、有効的且つ効率的なウイルス感染を処置及び予防する方法を提供することにより、上述した問題を解決する。本発明の方法は、効率的な溶媒系を使用してウイルスの脂質エンベロープに影響を与えるが、ウイルスを変性又は破壊しない。本発明は、脱脂を介して、患者に投与されると陽性免疫応答を生じる、脂質エンベロープが少なくとも部分的に除去された、非合成の、宿主由来又は非宿主由来の改変されたウイルス粒子を作成するのに最適な溶媒及びエネルギー系を利用し、それによりその患者にウイルスに対するある程度の防御を付与する。これらの改変されたウイルス粒子は、脱脂過程の前には露出されていなかった、少なくとも1つの露出抗原を有すると考えられる。また本発明は、患者への医薬品の投与に続いて、感染性ウイルス生物に対する患者の防御を付与するのに有用な医薬品の調製における、これらの改変されたウイルス粒子の使用も提供する。また本発明は、患者への医薬品の投与に続いて、1つ又は複数の感染性ウイルス生物菌株に対する患者の防御、又は1つ又は複数タイプのウイルスに対する防御を付与するのに有用な、組み合わせワクチンとして知られる医薬品の調製において、種々のウイルス菌株又は種々のウイルスからの、1つ又は複数のこれらの改変されたウイルス粒子の使用を提供する。また本発明は、患者への医薬品の投与に続いて、感染性ウイルス生物により引き起こされるウイルス感染を有する患者を処置するのに有用な医薬品の調製における、これらの
改変されたウイルス粒子の使用を提供する。この処置は、ウイルス感染の重篤性を減少させる。また本発明は、患者への医薬品の投与に続いて、1つ又は複数のウイルス性生物菌株により引き起こされるウイルス感染を有する患者を処置するのに、及び1つより多いウイルス感染を有する患者を処置するのに有用な組み合わせワクチンとして知られる医薬品の調製において、種々のウイルス菌株又は種々のウイルスからの1つ又は複数のこれらの改変されたウイルス粒子の使用も提供する。
【0025】
また本発明は、ウイルスが改変型(減少した感染力)で存在するように、且つ低脂質含量の流体を患者に再導入する際に免疫応答が開始されるように、ウイルスを含有する生体流体を処置することによって、ウイルスに対する自己の、患者特異的療法用ワクチンの生産においても有効的である。この自己方法は、患者特異的抗原(例えば患者特異的ウイルス抗原)が、それが得られたのと同じ患者に導入され、免疫応答を誘導することを確実にする。このことは、患者の生理機能が、ウイルス等の感染性生物中に存在する抗原を改変し得るため、重要な特色である。ワクチンを作成するためには、生体流体(例えば血液)を患者から抜き取り、血漿を血液から分離し、最適溶媒系を用いて血漿中のウイルスの脂質含量を減少させる。感染力を減少させ、且つ脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を作成するためにこのように処置した脂質含有ウイルスを、任意に薬学的に許容可能な担体と共に、動物又はヒト等の患者に投与し、その動物又はヒトにおける免疫応答を開始させ、改変されたウイルス粒子の露出エピトープと結合する抗体を作らせる。アジュバントを、改変されたウイルス粒子と共に、薬学的に許容可能な担体中とともに又は別々に投与することもできる。
【0026】
また本発明は、非自己ワクチンを生産するのにも利用され、ここで少なくとも1つの動物又はヒトからの脂質含有ウイルスを有する生体流体は、種々(非自己)の動物又はヒトへ投与するための改変されたウイルス粒子を生産するのに処置される。また本発明は、本方法を用いて動物又はヒトから得られる血漿等の生体流体を処置し、この流体中及び流体中のウイルスの脂質レベルを減少させることによって、ウイルスに対する非自己ワクチンを生産するのに有効的である。低脂質レベルを有し、低脂質レベルを有する改変されたウイルスを含有する、このように処置された流体を、処置された生体流体源ではない別の動物又はヒトへ導入してもよい。この非自己方法は、レシピエント動物又はヒトをウイルス等の1つ又は複数の感染性生物に対してワクチン接種することに利用される。生体流体は、ウイルス等の1つ又は複数の感染性生物に感染した動物又はヒトからのものを使用してよく、生体流体を本方法で処置して、レシピエント動物又はヒトへの投与用のワクチンを生産してもよい。代替として、又は加えて、生体流体を本発明の方法で処置してワクチンを作成する前に、様々なウイルス保存供給源を流体に添加してもよい。
【0027】
本発明は、同じ感染性生物の1つより多い菌株、例えば、HIVウイルスの1つより多いクレード(例えば、HIV−1とHIV−2)を含む、本発明の脱脂法で作られたワクチンを包含する。このようなワクチンは、同じ感染性生物の1つより多い菌株に対する免疫応答を付与する。同じウイルスのいかなる数の異なる感染性菌株又はクレードを選択してもよく、本発明の脱脂法で処置して多数のワクチンを形成してもよい。代替として、又は加えて、ウイルスの種々の菌株又はクレードの様々なストック供給源を、流体を本発明の方法で処置して免疫応答を生じることが可能なワクチンを作成する前に、生体流体に加えてもよい。1つ又は複数のウイルス製剤のストックは、1つ又は複数のウイルスを対象とする非自己ワクチンを作るのに利用され得る。このようにして、ウイルスの複数の菌株若しくはクレード、又は複数のウイルスに対する防御を付与する組み合わせワクチンは生産される。
【0028】
本発明は、1つより多いウイルス等の1つより多い感染性生物を含む、本発明の脱脂方法を用いて作られるワクチンを包含する。このような組み合わせワクチンは、例えばHI
Vや肝炎ウイルスのような1つより多い感染性生物に対する免疫応答を付与する。いかなる数の異なる感染性生物を選択し、且つ本発明の脱脂法を用いて処置して、多数の組み合わせワクチンを形成してもよい。
【0029】
このように、脂質エンベロープから脂質を除去すること、及び脂質エンベロープ内又は脂質エンベロープ表面の下に隠されている抗原を露出させることにより、患者に再導入されると免疫応答を生じる新規なワクチンを、脂質含有ウイルスから開発することができる有効的な方法が提示される。
【0030】
本発明は、部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含む改変されたウイルス粒子であって、該部分的に脱脂されたウイルス粒子は、患者内において陽性免疫応答を開始し、且つ上記患者内において感染性生物に対する防御を誘発する、部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含む改変されたウイルス粒子を提供する。
【0031】
本発明は、改変されたウイルス粒子を作成する方法であって、流体中で、脂質含有ウイルスエンベロープをそれぞれ有する、複数のウイルス粒子を入手し、上記ウイルス粒子を脱脂過程に供し、そして上記ウイルス粒子を部分的に脱脂することを含み、上記脱脂過程は、少なくとも部分的に上記ウイルスエンベロープの脂質含量を低減して上記改変されたウイルス粒子を作成し、且つ上記改変されたウイルス粒子は、患者に投与されると陽性免疫応答を誘発することができる、改変されたウイルス粒子を作成する方法を提供する。
【0032】
また本発明は、抗原送達ビヒクル、及び抗原送達ビヒクルを作成する方法であって、流体中において、ウイルスエンベロープをそれぞれ有する、複数のウイルス粒子を受け取ること、上記ウイルス粒子を脱脂過程に供し、そして上記ウイルス粒子を部分的に脱脂して、抗原送達ビヒクルとして作用する改変されたウイルス粒子を作成する、部分的に脱脂することを含み、上記脱脂過程は、上記ウイルスエンベロープを少なくとも部分的に除去して少なくとも1つのウイルス抗原を露出させ、且つ上記少なくとも1つの抗原は、患者内において陽性免疫応答を誘発することができる、抗原送達ビヒクルを作成する方法を提供する。
【0033】
本発明の改変されたウイルス粒子は、部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含み、上記部分的に脱脂されたウイルス粒子は、脱脂されていないウイルス粒子を脱脂過程に供することにより生産され、上記部分的に脱脂されたウイルス粒子は、上記脱脂されていないウイルス粒子においては露出されていなかった少なくとも1つの露出された患者特異的抗原を含む。
【0034】
また本発明は、患者特異的ウイルス抗原を有する部分的に脱脂されたウイルス粒子、及び任意に薬学的に許容可能な担体を少なくとも含む、ワクチン組成物であって、上記部分的に脱脂されたウイルス粒子は、上記組成物が患者に投与されると陽性免疫応答を誘発することができる、ワクチン組成物を提供する。
【0035】
また本発明は、ワクチンを作成する方法であって、流体中の脂質含有ウイルス粒子と、該脂質含有ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させること、上記脂質含有ウイルス粒子から脂質を抽出するのに十分な時間、上記流体と上記第1の有機溶媒とを混合すること、有機相と水相とを分離させること、及び脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を回収することを含み、上記改変されたウイルス粒子は、患者に投与されると陽性免疫応答を誘発することができる、ワクチンを作成する方法を提供する。
【0036】
また本発明は、感染性ウイルス粒子から患者を防御する方法であって、改変されたウイ
ルス粒子を含有する有効的な量の組成物及び任意に薬学的に許容可能な担体を上記患者に投与することを含み、上記改変は、上記感染性ウイルス粒子の脂質エンベロープの部分的除去を少なくとも含み、上記量は、動物又はヒトにおける感染性ウイルス粒子による感染に対する防御効果を付与するのに有効的である、防御する方法を提供する。
【0037】
また本発明は、複数の脂質含有ウイルス粒子を有する患者において陽性免疫応答を誘発する方法であって、上記患者から上記脂質含有ウイルス粒子を含有する流体を得ること、上記脂質含有ウイルス粒子を含有する上記流体と、上記脂質含有ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させること、上記流体と上記第1の有機溶媒とを混合すること、有機相と水相とを分離させること、脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を回収すること、及び上記脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を動物又はヒト内に導入することを含み、上記脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子は動物又はヒト内において陽性免疫応答を誘発する、免疫応答を誘発する方法を提供する。
【0038】
また本発明は、患者内のウイルス感染を処置する方法であって、上記患者から、複数の脂質含有感染性ウイルス粒子を含有する血液を抜き取ること、上記脂質含有感染性ウイルス粒子を含有する血漿を、上記血液から得ること、上記脂質含有感染性ウイルス粒子を含有する上記血漿と、上記脂質含有感染性ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させ、脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を生産する、接触させること、上記血漿と上記第1の有機溶媒とを混合すること、有機相と水相とを分離させること、上記改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を回収すること、上記水相から残余溶媒を除去すること、及び上記改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を上記患者内に導入することを含み、上記改変されたウイルス粒子は上記複数の脂質含有感染性ウイルス粒子においては露出されていなかった少なくとも1つの露出患者特異的抗原ウイルス抗原を有する、ウイルス感染を処置する方法を提供する。これらの改変されたウイルス粒子の患者への投与は、ウイルス感染の重篤性を処置又は減少する免疫応答を産出する。
【0039】
また本発明は、患者内におけるウイルス感染を処置する方法であって、複数の患者から、複数の脂質含有感染性ウイルス粒子を含有する血液を得ること、上記脂質含有感染性ウイルスと、好適な生物学的に許容可能な担体とを任意に組み合わせること、上記脂質含有感染性ウイルス粒子を含有する流体と、上記脂質含有感染性ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させ、脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を生産する、接触させること、上記担体と上記第1の有機溶媒とを混合すること、有機相と水相とを分離させること、上記改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を回収すること、及び上記改変されたウイルス粒子を含有する上記水相を種々の患者内に導入することを含み、上記改変されたウイルス粒子は上記複数の脂質含有感染性ウイルス粒子においては露出されていなかった少なくとも1つの露出ウイルス抗原を有する、ウイルス感染を処置する方法を提供する。この実施の形態において、上記脂質含有感染性ウイルス粒子は、1つ又は複数のウイルス菌株、又は1つ又は複数タイプのウイルスを提示し、且つ患者特異的ではない。これらの改変されたウイルス粒子の患者への投与は、ウイルス感染の重篤性を処置又は減少する免疫応答を産出する。
【0040】
以下に記載されるように、改変されたウイルス粒子の特徴は、ワクチン接種されると陽性免疫応答を有するマウスと、完全不活化ワクチン接種したマウスとを比較した実験データにより示される。加えて、タンパク質回収を示すデータは、ウイルス粒子の構造的完全性の保持を示し、これはこのウイルス粒子の脂質含有エンベロープのみが除去されていることを示す。
【0041】
本発明の方法を用いて処置され得る流体は、血漿;血清;リンパ液;脳脊髄液;腹水;胸膜液;心嚢液;精液、射精液、卵胞液及び羊水を含むが、これらに限定されない生殖系の様々な流体;正常血清、ウシ胎仔血清又は任意の他の動物若しくはヒトに由来する血清等の細胞培養試薬;及び抗体及びサイトカインの様々な製剤等の免疫学的試薬を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の方法は、ウイルスエンベロープ中に脂質を含有するウイルスを処置するのに使用され得る。本発明の方法を用いて処置される好ましいウイルスは、ヒト(HIV)並びにHIV−1及びHIV−2等のサブタイプ及びクレード、サル(SIV)、ネコ(FIV)を含む様々な免疫不全ウイルス(これらに限定されない)、並びに任意の他の型の免疫不全ウイルスを含む。本発明の方法を用いて処置される他の好ましいウイルスは、肝炎ウイルス及びその様々な型を含むがこれらに限定されない。本発明の方法を用いて処置される別の好ましいウイルスは、ウシペスチウイルスである。本発明の方法を用いて処置される別の好ましいウイルスは、コロナウイルスSARSである。本発明は、上記のリストに提供されたウイルスに限定されないことが理解されるべきである。さらなる具体的なウイルスは、本出願の詳細な説明において記載される。特にウイルスエンベロープ中に、脂質を含有する全てのウイルスが、本発明の範囲内に包含される。
【0043】
したがって、本発明の目的は、改変されたウイルス粒子を作成するために、脂質含有ウイルスを処置する方法を提供することである。
【0044】
本発明の目的は、改変されていないウイルス粒子と比較したとき、タンパク質レベルを実質的に影響せずに、脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を作成するために、脂質含有ウイルスを処置する方法を提供することである。
【0045】
本発明のさらなる別の目的は、改変されていないウイルス粒子と比較したとき、実質的に影響されないタンパク質レベルを有し、脂質含量の低減した、且つ改変されていないウイルス粒子においては実質的に露出されていなかったウイルス粒子と関連する少なくとも1つの露出抗原を有する、改変されたウイルス粒子を作成するために、脂質含有ウイルスを処置する方法を提供することである。
【0046】
本発明のさらなる別の目的は、低脂質含量、及び改変されていないウイルス粒子においては実質的に露出されていなかったウイルス粒子と関連する少なくとも1つの露出抗原を有する改変されたウイルス粒子を、患者に投与することにより、ウイルス疾患を処置又は予防する方法を提供することである。
【0047】
本発明の別の目的は、生体流体中に含有される感染性ウイルス生物の感染力を減少又は消失させるために、生体流体を処置する方法を提供することである。
【0048】
本発明のさらなる別の目的は、生体流体中に、改変されていないウイルス粒子と比較したとき、実質的に影響されないタンパク質レベルを有するかなりの割合のウイルス粒子を有する、低脂質含量の分布を有する複数の改変脂質含有ウイルス粒子を作成する方法を提供することである。
【0049】
本発明のさらなる目的は、流体中に含有されるタンパク質に対する有害な影響を最小限にする、流体中の脂質含有ウイルスを処置する方法であって、それにより患者内において陽性免疫応答を開始することができる特性を有する改変されたウイルス粒子を作成する、処置する方法を提供することである。
【0050】
本発明のさらなる目的は、流体中に含有されるタンパク質に対する有害な影響を最小限
にする、流体中の脂質含有ウイルスを処置する方法であって、それにより患者特異的ウイルス抗原を有する改変されたウイルス粒子を作成する、処置する方法を提供することである。
【0051】
本発明の別の目的は、ウイルスの感染力を減少させる方法であって、本方法は、改変されたウイルス粒子上に抗原決定基を露出させる、減少させる方法を提供することである。
【0052】
本発明の別の目的は、ウイルス粒子を完全に又は部分的に脱脂することであって、ウイルス粒子は免疫不全ウイルス、様々な型の肝炎ウイルス、コロナウイルス、又は任意の他の脂質含有ウイルスを含み、それにより改変されたウイルス粒子を作成する、脱脂することである。
【0053】
本発明のさらなる目的は、ウイルス粒子を完全に又は部分的に脱脂することであって、ウイルス粒子は免疫不全ウイルス、様々な型の肝炎ウイルス、コロナウイルス、又は任意の他の脂質含有ウイルスを含むが、ウイルスの構造タンパク質核は保持する、脱脂することである。
【0054】
本発明の別の目的は、ウイルスの感染力を減少させる方法であって、新たに形成されたウイルス粒子は抗原送達ビヒクルとして使用することができる、減少させる方法を提供することである。
【0055】
本発明のさらなる別の目的は、本発明の方法を用いて感染性生物を処置することであって、それらの感染力を減少させ、且つ任意に薬学的に許容可能な担体及び任意に免疫刺激化合物と共に、動物又はヒトに投与され得る脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含むワクチンを提供し、それによりウイルスに露出された後に患者内における疾患の臨床兆候を予防又は最小限にする、処置することである。
【0056】
本発明のさらなる別の目的は、本発明の方法を用いて感染性生物を処置することであって、それらの感染力を減少させ、且つ任意に薬学的に許容可能な担体及び任意に免疫刺激化合物と共に、動物又はヒトに投与され得る脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含むワクチンを提供し、それにより動物又はヒトにおいて陽性免疫応答を開始することである。
【0057】
本発明の別の具体的な目的は、抗ウイルスワクチンを提供することである。
【0058】
本発明の別の具体的な目的は、免疫系の細胞において細胞性応答を誘導する抗ウイルスワクチンを提供することであって、上記細胞性応答は、細胞の増殖及びインターフェロンγ等の免疫系分子の生産を含むが、これらに限定されない。
【0059】
本発明のさらなる具体的な目的は、任意に薬学的に許容可能な担体と組み合わされる、本発明の方法を用いて処置されたウイルスを含む組成物を含むワクチンを受け取る動物又はヒトにおける、脂質含有ウイルスにより引き起こされた疾患の重篤性を減少させることである。
【0060】
本発明の別の目的は、患者特異的抗原を有する脂質含量の低減したウイルス粒子と、脂質含量の低減した脱脂株ウイルス粒子とを組み合わせ、それにより1つより多いウイルス疾患を処置又は予防する療法用組み合わせワクチンを作成することである。
【0061】
本発明のこれら及び他の特色及び利点は、以下の開示された実施の形態の図面及び詳細な説明を検討することにより明らかとなるであろう。記述された実施の形態への様々な変
形は、当業者には容易に明らかであろう。本明細書中に述べられた開示は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、他の実施の形態及び用途に利用可能であり得る。
【0062】
添付の図面(援用され、本明細書の一部を形成する)は、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0063】
定義
「流体(fluid)」という用語により、感染性生物を含有する任意の流体を意味し、動物又はヒト等の生物から得られる生体流体を含むが、これらに限定されない。本発明の方法を用いて処置される好ましい感染性生物はウイルスである。生物から得られるこのような生体流体は、血液、血漿、血清、脳脊髄液、リンパ液、腹水、卵胞液、羊水、胸膜液、心嚢液、生殖器液、及び生物中に含有される任意の他の流体を含むが、これらに限定されない。他の流体は、任意の選択された液体に懸濁された感染性生物を含有する実験室試料を含んでよい。他の流体は、細胞培養試薬を含み、これの多くは生きた生物から得られる流体等の生物学的化合物を含み、様々な動物から得られ、且つ細胞及び組織培養用途において成長培地として使用される「正常血清」を含むがこれらに限定されない。
【0064】
「第1の溶媒」又は「第1の有機溶媒」又は「第1の抽出溶媒」という用語により、1つ又は複数の溶媒を含む、流体又はその流体中の脂質含有生物学的生物から脂質の抽出を容易にするのに使用される溶媒を意味する。この溶媒は流体中に進入し、それが除去されるまで流体中に残る。好適な第1の抽出溶媒は、アルコール類、炭化水素類、アミン類、エーテル類、及びこれらの組み合わせを含む(これらに限定されない)、脂質を抽出又は溶解する溶媒を含む。第1の抽出溶媒は、アルコール類とエーテル類との組合せであってよい。第1の抽出溶媒は、n−ブタノール、ジイソプロピルエーテル(DIPE)、ジエチルエーテル、及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0065】
「第2の抽出溶媒」という用語は、第1の抽出溶媒の一部の除去を容易にするのに利用され得る1つ又は複数の溶媒により定義される。好適な第2の抽出溶媒は、流体からの第1の抽出溶媒の除去を容易にする任意の溶媒を含む。第2の抽出溶媒は、第1の抽出溶媒の除去を容易にする任意の溶媒を含み、エーテル類、アルコール類、炭化水素類、アミン類及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。好ましい第2の抽出溶媒は、流体からn−ブタノールなどのアルコール類の除去を容易にする、ジエチルエーテル及びジイソプロピルエーテルを含む。「解乳化剤」という用語は、水相中のエマルジョン中に存在し得る第1の溶媒の除去を支援する第2の抽出溶媒である。
【0066】
「脱脂」という用語は、流体中又は脂質含有生物中の脂質の総濃度の少なくとも一部を除去する過程を示す。脂質含有生物は、さらなる脂質を含有しなくても、含有していてもよい流体中に見出され得る。
【0067】
「薬学的に許容可能な担体」又は「薬学的に許容可能なビヒクル」という用語は、本明細書中で使用される場合、水又は生理食塩水、ゲル、軟膏、溶媒、希釈剤、液体軟膏剤ベース、リポソーム、ミセル、巨大ミセル等を含む(これらに限定されない)任意の液体を意味し、不都合な生理学的応答を引き起こすことなく生きている動物又はヒト組織と接触させて使用するのに好適であり、且つ組成物の他の成分と有害な様式で相互作用しない。
【0068】
「患者」という用語は、動物及びヒトを示す。
【0069】
「患者特異的抗原」という用語は、患者内に導入されると、患者特異的免疫応答を誘導することができる抗原を示す。このような患者特異的抗原はウイルス抗原であってよい。患者特異的抗原は、例えば、患者内で改変又は影響されたウイルス抗原のような任意の抗
原を含む。
【0070】
改変されたウイルス粒子
ウイルスの脂質含量を減少させる本発明の方法の実践により、改変されたウイルス粒子が作成される。これらの改変されたウイルス粒子は、低レベルのコレステロールを有し、且つ免疫原性である。本発明は、非処置ウイルスにより通常は免疫系に対して提示されないエピトープを露出させる。改変されたウイルス粒子内では構造変化が起こり、ウイルス表面の上、中、又は近くにあるタンパク質が改変されて立体構造変化が起こる。これらのタンパク質のいくつかは、改変されたウイルス粒子から分離もし得る。HIVウイルス粒子の概略的描写(schematic representation)は、宿主細胞に由来する脂質含有エンベロープ又は二重膜、表面糖タンパク質、膜貫通タンパク質、カプシド、カプシドタンパク質及び核物質を含有し、Robbins Pathologic Basis of Disease(Cotran他、eds 6th edition, W. B. Saunders Co., 1999)の238ページに提示されている。本発明の脱脂過程は、ウイルス粒子を改変する。改変されたウイルス粒子は、エンベロープ中に低脂質含量を有し、改変タンパク質を表示し、感染力が低下し、且つ免疫原性である。
【0071】
脂質含有生物からの脂質の除去により得られる改変されたウイルス粒子
本発明の方法は、従来技術法が遭遇した多数の問題を解決する。ウイルスの脂質エンベロープを実質的に除去すること、及びウイルス粒子を無傷に保つことにより、本発明の方法は付加的な抗原を露出させる。宿主の免疫系はウイルス粒子を外的として認識する。本発明の方法を使用すると、抗原コアが無傷で残った改変されたウイルス粒子が作成され、それにより実際のウイルス粒子のエピトープを使用して、再導入された患者内における陽性免疫応答を開始する。加えて、本発明の方法は、タンパク質回収により計測される、他の血漿タンパク質への有害な影響を減少させ、血漿を患者に再導入することができる。
【0072】
この改変されたウイルス粒子を作成においては、導入された種においてウイルス粒子に対する防御を誘導する患者特異的抗原も作成される。本発明の方法は、個体にウイルス病原体感染に対する免疫性を与え、且つ個体を感染させる危険性無しに幅広い生物学的に活性な防御免疫応答を誘発する有効的な手段を創出する。新規なワクチンは、ある脂質含有ウイルスから、脂質エンベロープを除去すること、及びエンベロープの下に隠されている抗原を露出させること、それにより陽性免疫応答を生じることにより開発することができる。これらの「自己ワクチン」は、抗原を露出させる及び/又はウイルスタンパク質構造中の構造改変を強いる好適な溶媒系(粒子内に含有される抗原に損傷を与えないもの)を用いて、脂質エンベロープの部分的除去により作成することができ、体内に導入されると有効的な免疫応答を誘発する。また非自己ワクチンも本発明において作成され、脱脂されるウイルス源とは異なる患者に投与される。また複数のウイルスを対象とする組み合わせワクチンも、本発明の範囲内である。このような組み合わせワクチンは、様々な生体流体から、複数のウイルス(例えばHIV、肝炎ウイルス及びSARS)のストック供給源から、及び/又はウイルスの複数の菌株若しくはクレード(例えばHIV−1及びHIV−2)から作られてもよい。
【0073】
本発明を用いて処置される感染性生物
本発明の方法を用いて処置される好ましい感染性生物はウイルスである。本発明により脱脂されて改変されたウイルス粒子を形成し得るウイルス性感染性生物は、以下の属の脂質含有ウイルスを含むが、これらに限定されない:アルファウイルス属(アルファウイルス)、ルビウイルス属(風疹ウイルス)、フラビウイルス属(フラビウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス)、(無名のC型肝炎ウイルス)、コロナウイルス属(コロナウイルス)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、トロウイルス属(トロウイルス)、アルテリウイルス属(アルテリウイルス)、パラミクソウイルス属(パラミクソウイルス)、ルブラウイルス属(ルブラウイルス)、麻疹ウイルス属(Morbillivirus)(麻疹ウ
イルス)、ニューモウイルス亜科(ニューモウイルス)、ニューモウイルス属(ニューモウイルス)、ベシクロウイルス属(ベシクロウイルス)、リッサウイルス属(リッサウイルス)、エファメロウイルス属(Ephemerovirus)(エファメロウイルス)、サイトラブドウイルス属(植物ラブドウイルスA群)、ヌクレオラブドウイルス属(植物ラブドウイルスB群)、フィロウイルス属(フィロウイルス)、インフルエンザ属ウイルスA、B(A型及びB型インフルエンザウイルス)、インフルエンザ属ウイルスC(C型インフルエンザウイルス)、(無名のトゴト様ウイルス)、ブンヤウイルス属(Bunyavirus)(ブンヤウイルス)、フレボウイルス属(フレボウイルス)、ナイロウイルス属(ナイロウイルス)、ハンタウイルス属(ハンタウイルス)、トスポウイルス属(トスポウイルス)、アレナウイルス属(アレナウイルス)、無名の哺乳類B型レトロウイルス、無名の哺乳類及び爬虫類C型レトロウイルス、無名のD型レトロウイルス、レンチウイルス属(レンチウイルス)、スプマウイルス属(スプマウイルス)、オルソヘパドナウイルス属(哺乳類のヘパドナウイルス)、トリヘパドナウイルス属(鳥類のヘパドナウイルス)、シンプレックスウイルス属(シンプレックスウイルス)、ワリセロウイルス属(ワリセロウイルス)、ベータヘルペスウイルス亜科(サイトメガロウイルス)、サイトメガロウイルス属(サイトメガロウイルス)、ムロメガロウイルス属(Muromegalovirus)(マウスのサイトメガロウイルス)、ロゼオロウイルス属(ヒトヘルペスウイルス6、7、8)、ガンマヘルペスウイルス亜科(リンパ球関連ヘルペスウイルス)、リンホクリプトウイルス属(エプスタインバールエプスタインバール様ウイルス)、ラジノウイルス属(Rhadinovirus)(サイミリ−アテレス様ヘルペスウイルス(saimiri-ateles-like herpes viruses))、オルソポックスウイルス属(オルソポックスウイルス)、パラポックスウイルス属(パラポックスウイルス)、アヴィポックスウイルス属(鶏痘ウイルス)、カプリポックスウイルス属(羊痘様ウイルス)、レポリポックスウイルス属(粘液腫ウイルス)、スイポックスウイルス属(豚痘ウイルス)、モラシポックスウイルス属(伝染性軟属腫ウイルス)、ヤタポックスウイルス属(ヤタポックス及びタナポックスウイルス)、無名のアフリカ豚コレラ様ウイルス、イリドウイルス属(小イリデセント昆虫ウイルス)、ラナウイルス属(前の(front)イリドウイルス)、リンホシスティウイルス属(魚のリンパ膿腫ウイルス)、トガウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、エナブドウイルス(Enabdoviridae)科、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科、オルソミクソウイルス科、ブンヤウイルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、及び任意の他の脂質含有ウイルス。
【0074】
これらのウイルスは、以下のヒト及び動物の病原体を含む:ロスリバーウイルス、熱ウイルス、デング熱ウイルス、マレーリバー脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス(ヨーロッパ及び極東ダニ媒介性脳炎ウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、サシチョウバエ熱ウイルス、ヒトコロナウイルス229−E及びOC43、並びに風邪、上気道感染症(おそらく肺炎及び場合により胃腸炎)を引き起こすその他を含む)、ヒトパラインフルエンザウイルス1及び3、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス2、4a及び4b、はしかウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス、アレナウイルス属:リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)ウイルス;ラッサ熱ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1及び2、若しくは任意の他の免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、亜科:ヒトヘルペスウイルス1及び2、ヘルペスウイルスB、エプスタインバールイルス)、(天然痘)ウイルス、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、黄熱病ウイルス、ポリオウイルス、ノーウォークウイルス、オルフウイルス、並びに他の脂質含有ウイルス。
【0075】
改変されたウイルス粒子の製造方法
本発明の範囲の元に利用される複数の脱脂過程が存在することを当業者は理解するであ
ろう。好ましい実施形態において、溶媒系は、例えば機械的混合システムのような適用エネルギーと共に、ウイルス粒子を実質的に脱脂するのに使用される。脱脂過程は、溶媒の総量及びシステム内に投入されるエネルギーに応じる。様々な溶媒レベル及び混合方法は、以下に記載されるように、過程の全体的な枠組みに応じて使用されてよい。単一の溶媒又は複数の溶媒がウイルスの脱脂に使用され得るが、ウイルス粒子を破壊及び変性する可能性が低いことから、単一の溶媒が好ましい。
【0076】
ウイルスからの脂質の除去に使用され、ウイルス粒子の完全性を維持するのに有効的である例示的溶媒系
脂質含有生物を部分的又は完全に脱脂する過程において利用される溶媒又は溶媒の組み合わせは、改変されたウイルス粒子が構造的完全性(一実施形態においてはタンパク質回収を介して計測される)を保持していながら、ウイルスエンベロープ中の脂質を溶解するのに有効的な任意の溶媒又はその組み合わせであり得る。本発明の範囲に含まれる脱脂過程は、エネルギー投入及び溶媒の最適な組み合わせを使用して、ウイルス粒子が無傷であることを維持しながら脱脂する。好適な溶媒は、炭化水素類、エーテル類、アルコール類、フェノール類、エステル類、ハロ炭化水素類、ハロカーボン類、アミン類、及びこれらの混合物を含む。芳香族、脂肪族又は脂環式の炭化水素類も使用してよい。本発明で使用され得る他の好適な溶媒は、アミン類及びアミン類の混合物を含む。一つの溶媒系は、濃縮又は水若しくは生理学的に許容可能な緩衝液等の緩衝液で希釈された、DIPEである。一つの溶媒組み合わせは、アルコールとエーテルとを含む。別の溶媒は、エーテル又はエーテルの組み合わせを、対称エーテル、非対称エーテル又はハロゲン化エーテルの型のいずれかで含む。
【0077】
最適な溶媒系は、2つの目的を達成するものである:第一に、感染性生物又はウイルス粒子を少なくとも部分的に脱脂すること;及び第二に、他の血漿タンパク質への有害な影響が少ないか、又はないような条件セットを利用すること。加えて、溶媒系は、ウイルス粒子が患者内の免疫応答を開始するのに使用することができるように、ウイルス粒子の完全性を維持すべきである。したがって、特定の溶媒、溶媒組み合わせ及び溶媒濃度は、化学的殺傷をもたらすため、本発明において使用するには激しすぎる(too harsh)ことが留意されるべきである。
【0078】
溶媒又は溶媒の組み合わせは、真空による除去を容易にするため、及びウイルス粒子の抗原コアを破壊することなく加熱されるよう、比較的低い沸点を有することが好ましい。また、溶媒又は溶媒の組み合わせは、熱は血漿等の生体流体中に含有されるタンパク質へ有害な影響を与えるため、低温で使用されることが好ましい。溶媒又は溶媒の組み合わせは、ウイルス粒子を少なくとも部分的に脱脂することが好ましい。
【0079】
液体炭化水素は、感染性生物のウイルスエンベロープ中に見られる脂質等の、極性の低い化合物を溶解する。ウイルス粒子の脂質膜を分解するのに特に有効的なものは、ほぼ水非混和性であり、37℃で液体である炭化水素類である。好適な炭化水素類は、以下の、石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のC5〜C20の脂肪族炭化水素類;クロロホルム、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン及び四塩化炭素などのハロ脂肪族炭化水素類;それぞれ直鎖状、分枝状又は環状の、飽和又は不飽和のチオ脂肪族炭化水素類;ベンゼン等の芳香族炭化水素類;ケトン類;トルエン等のアルキルアレーン類;ハロアレーン類;ハロアルキルアレーン類;及びチオアレーン類を含むが、これらに限定されない。また他の好適な溶媒は、ピリジン等の飽和又は不飽和の複素環式化合物及び脂肪族のそのチオ−又はハロ−誘導体も含む。
【0080】
本発明に使用される好適なエステルは、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプ
ロピオン酸エチルを含むが、これらに限定されない。使用され得る好適な洗剤/界面活性剤は、以下の、スルフェート類、スルフォネート類、フォスフェート類(リン脂質を含む)、カルボキシレート類及びスルホスクシネートを含むが、これらに限定されない。本発明で有用ないくつかのアニオン性両親媒性材料は、以下の、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デシル硫酸ナトリウム、ビス−(2−エチルヘキシル)ナトリウムスルホスクシネート(AOT)、コレステロール硫酸及びラウリン酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。
【0081】
溶媒は、脱脂したウイルス混合物が、さらなる溶媒を使用して除去されてよい。例えば、エーテル等の解乳化剤は、アルコール等の第1の溶媒をエマルジョンから除去するのに使用されてよい。溶媒の除去は、さらなる溶媒を利用しない他の方法を介しても達成され得、炭の使用を含むがこれに限定されない。炭は、混合物が加えられるスラリー内、又は代替としてはカラム内で使用され得る。炭は、溶媒を除去する好ましい方法である。また浸透気化法も、1つ又は複数の溶媒を脱脂したウイルス混合物から除去するのに利用することができる。
【0082】
本発明において脂質含有生物から脂質を除去するのに使用される好適なアミン類の例は、水中で実質的に非混和性であるものである。典型的なアミン類は、少なくとも6個の炭素原子の炭素鎖を有する、脂肪族アミン類である。このようなアミンの非限定的な例は、C6H13NH2である。
【0083】
エーテルは、本発明の方法において使用される好ましい溶媒である。特に好ましいのは、C4〜C8含有エーテル類であり、エチルエーテル、ジエチルエーテル及びプロピルエーテル(ジイソプロピルエーテルを含むがこれに限定されない)を含むが、これらに限定されない。非対称エーテル類も利用することができる。ハロゲン化対称及び非対称エーテル類も利用することができる。
【0084】
低濃度のエーテルは、単独で使用され、且つ他の溶媒と組み合わせて使用されない場合、脂質を除去するのに利用され得る。例えば、低濃度のエーテルの範囲は、0.5%〜30%である。利用されるようなエーテルの濃度は、以下の、0.625%、1.0%、1.25%、2.5%、5.0%、10%又はそれ以上であるが、これらに限定されない。エーテルの希釈溶液が有効的であると観察された。このような溶液は水性溶液又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの水性緩衝液の溶液であり得る。重炭酸、クエン酸、Tris、Tris/EDTA及びTrizma等の他の生理学的緩衝液を使用してもよいが、これらに限定されない。好ましいエーテルは、ジイソプロピルエーテル(DIPE)及びジエチルエーテル(DEE)である。低濃度のエーテルは、アルコール類(例えば、n−ブタノール)と組み合わせて使用してもよい。
【0085】
本発明において使用される場合、適切なアルコール類とは、血漿又は他の生体流体と大量に混和性でないものである。このようなアルコール類は、ペンタノール類、ヘキサノール類、ヘプタノール類、オクタノール類及びこれより多い数の炭素を含有するアルコール類を含む、直鎖及び分枝鎖アルコール類を含むが、これらに限定されない。
【0086】
アルコール類が別の溶媒(例えば、エーテル、炭化水素、アミン又はこれらの組み合わせ)と組み合わせて使用される場合、C1〜C8含有アルコール類を使用してよい。別の溶媒と組み合わせて使用するアルコール類は、C4〜C8含有アルコール類を含む。したがって、本発明の範囲内に含まれるアルコール類は、ブタノール類、ペンタノール類、ヘキサノール類、ヘプタノール類及びオクタノール類並びにこれらのアイソフォームであり、特にはC4アルコール類又はブタノール類(1−ブタノール及び2−ブタノール)である。具体的なアルコール選択は、利用される第2の溶媒に応じる。
【0087】
エーテル類及びアルコール類は、脂質含有ウイルスを含有する流体又はウイルス粒子を処置するための第1の溶媒として、組み合わせて使用することができる。血漿タンパク質に有害な影響を与えることなく、感染性生物から脂質を少なくとも部分的に除去するのに有効的である場合に、アルコールとエーテルとの任意の組合せが使用され得る。一実施形態において、脂質は感染性生物のウイルスエンベロープから除去される。アルコール及びエーテルが、流体中に含有される感染性生物を処置する第1の溶媒として組み合わされる場合、この溶媒中のアルコールのエーテルに対する比は、約0.01アルコール部:99.99エーテル部から60アルコール部:40エーテル部の範囲であり、具体的な比は、約10アルコール部:90エーテル部から5アルコール部:95エーテル部の範囲、具体的な比は、約10アルコール部:90エーテル部から50アルコール部:50エーテル部の範囲、具体的な比は、約20アルコール部:80エーテル部から45アルコール部:55エーテル部の範囲、具体的な比は、約25アルコール部:75エーテル部の範囲である。
【0088】
アルコールとエーテルとの1つの組み合わせは、ブタノールとジイソプロピルエーテル(DIPE)との組み合わせである。ブタノールとDIPEが、流体中に含有される感染性生物を処置する第1の溶媒として組み合わされる場合、この溶媒中のブタノールのDIPEに対する比は、約0.01ブタノール部:99.99DIPE部から60ブタノール部:40DIPE部であり、具体的な比は、約10ブタノール部:90DIPE部から5ブタノール部:95DIPE部の範囲、具体的な比は、約10ブタノール部:90DIPE部から50ブタノール部:50DIPE部の範囲、具体的な比は、約20ブタノール部:80DIPE部から45ブタノール部:55DIPE部の範囲、具体的な比は、約25ブタノール部:75DIPE部の範囲である。
【0089】
アルコールとエーテルとの別の組み合わせは、ブタノールとジエチルエーテル(DEE)との組み合わせである。ブタノールとDEEが第1の溶媒として組み合わされる場合、ブタノールのDEEに対する比は、約0.01ブタノール部:99.99DEE部から60ブタノール部:40DEE部であり、具体的な比は、約10ブタノール部:90DEE部から5ブタノール部:95DEE部の範囲、具体的な比は、約10ブタノール部:90DEE部から50ブタノール部:50DEE部の範囲、具体的な比は、約20ブタノール部:80DEE部から45ブタノール部:55DEE部の範囲、具体的な比は、約40ブタノール部:60DIPE部の範囲である。約40%のブタノールと約60%のDEE(vol:vol)のこの組み合わせは、例えば米国特許第4,895,558号に示されるように、様々な生化学的及び血液学的な血液パラメータに著しい効果を示さなかった。
【0090】
生体流体、及び感染性脂質含有生物の感染力を減少させるためのその処置
上述したように、生体流体中の脂質含有生物の感染力レベルを減少させるため、及び改変されたウイルス粒子を作成するために、様々な生体流体を本発明の方法を用いて処置してもよい。好ましい実施形態において、血漿中の脂質含有感染性生物の濃度及び/又は感染力を減少させるため、及び改変されたウイルス粒子を作成するために、動物又は人から得られた血漿は本発明の方法を用いて処置される。本実施形態において、血漿は動物又は人の患者から、よく知られている方法を用いて患者から血液を抜き取ること、及びこの血液を、血漿から血液の細胞成分(赤血球及び白血球)を分離するために処置することにより、得られ得る。血液を処置するこのような方法は、当業者に既知であり、遠心分離及びろ過を含むが、これらに限定されない。当業者は、赤血球及び白血球からこのような脂質含有生物を分離するための適切な遠心分離条件を理解している。本発明の使用は、他の血漿タンパク質への有害な影響を与えることなく、ウイルスコアの完全性を維持しながら、脂質含有生物(例えば、血漿中に見られるもの)の処置を可能にする。
【0091】
血漿中のウイルスは、本発明の方法での血漿の処置に影響される。脂質含有ウイルス性生物は、当業者に既知である技術を用いて赤血球及び白血球から分離され得る。
【0092】
生体流体は、様々なウイルス株並びに種々のタイプのウイルスを含むウイルス製剤のストックを含む。本発明の方法でのこのような生体流体の処置は、非自己ワクチンとして患者に投与され得る改変されたウイルス粒子を生産する。このような非自己ワクチンは、1つより多いウイルス株に対する、及び/又は1つより多いタイプのウイルスに対する防御を付与する。脂質含有生物の処置は、血液及び血漿以外の生体流体中で起きてもよい。例えば、腹水を、タンパク質成分への有害な影響無しに、脂質含有生物の完全性のレベルに影響を与えるため、本発明で処置してもよい。処置した流体は、続いて、それが得られた動物又はヒトへ再導入され得る。非血液型の流体の処置は、流体中の脂質含有生物(ウイルス等)に影響を与える。
【0093】
血漿等の生体流体がこのようなやり方で、又は例えば血漿バッグを収容している保管設備から得られたら、血漿を上述したように、脂質含有感染性生物中の脂質を溶解することができる第1の有機溶媒と接触させる。第1の有機溶媒を、第1の溶媒が感染性生物中の脂質を実質的に溶解する(例えば、ウイルスを取り囲む脂質エンベロープを溶解する)のに有効的な量で存在するような比で、血漿と混ぜ合わせる。例示的な第1の溶媒の血漿に対する比(第1の有機溶媒対血漿の比で示される)は、以下の範囲で記載される:0.5〜4.0:0.5〜4.0;0.8〜3.0:0.8〜3.0;及び1〜2:0.8〜1.5。様々な他の比を、生体流体の性質に応じて適用してよい。例えば、細胞培養液の場合、以下の範囲が、第1の有機溶媒対細胞培養液の比として利用され得る:0.5〜4.0:0.5〜4.0;0.8〜3.0:0.8〜3.0;及び1〜2:0.8〜1.5。
【0094】
上述したように感染性生物を含有する流体と第1の溶媒とを接触させた後、第1の溶媒及び流体を、以下の好適な混合方法の1つを用いて混合するが、これらに限定されない:穏やかな攪拌;激しい攪拌;ボルテックス;回旋(swirling);ホモジェナイゼーション;及び転倒型回転。
【0095】
第1の溶媒と流体とを十分に混合するのに必要な時間量は、利用した混合方法に関係する。有機相と水相との間の密接な接触を容認するのに十分な期間、および第1の溶媒が、少なくとも部分的に又は完全に感染性生物中に含有される脂質を溶解するまで、流体を混合する。典型的には、混合は、利用した混合方法に応じて、約10秒〜約24時間の期間起こり、約10秒〜約2時間であり得、およそ10秒〜およそ10分間であり得、又は約30秒〜約1時間であり得る。種々の方法に伴なう混合期間の非限定例は、1)約10秒〜約24時間の期間の穏やかな攪拌及び転倒型回転、2)約10秒〜約30分間の期間の激しい攪拌及びボルテックス、3)約10秒〜約2時間の期間の回旋、又は4)約10秒〜約10分間の期間のホモジェナイゼーションを含む。
【0096】
溶媒の分離
第1の溶媒と流体とを混合した後、溶媒を、処置された流体から分離する。有機相及び水相は、当業者に既知の任意の好適な様式により分離してよい。第1の溶媒は典型的には水相中で非混和性であることから、2つの層を分離することができ、非所望の層を除去する。非所望の層は、溶解脂質を含有する有機相であって、その同定は、当業者に既知である通り、溶媒が水相よりも多かれ少なかれ濃いかどうかに応じる。この様式における分離の利点は、溶媒層中の溶解脂質が除去され得るということである。
【0097】
加えて、分離は以下を含む手段(これらに限定されない)により達成され得る:ピペッティングによって非所望の層を除去すること;遠心分離に続いて分離される層を除去すること;層を有する試験管の底に経路又は穴を作り、下層を通り抜けさせること;槽の長軸
に沿って特異的長さに位置するバルブ又は開口を備える槽を使用して、特異的層の接近及び除去を容易にすること;及び当業者に既知である任意の他の手段。層を分離する別の方法は、特に溶媒層が揮発性である場合は、任意に穏やかな加熱を組み合わせた、減圧下での蒸留又は室温での蒸発である。遠心分離を利用する一実施形態においては、比較的低いg力、例えば900×gを約5〜15分間利用して、相を分離する。
【0098】
溶媒を除去する好ましい方法は、炭、好ましくは活性炭の使用である。炭は任意にカラム中に含有される。代替としては、炭はスラリー状で使用されてよい。様々な生分解性型の炭を、これらのカラム中で使用してよい。浸透気化法及び溶媒を除去する炭の使用は、溶媒を除去する好ましい方法である。
【0099】
処置した流体からの第1の溶媒の分離に続いて、第1の溶媒のいくらかは、エマルジョンとして水性層中に捕獲されたまま残り得る。第1の溶媒又は解乳化剤を除去する好ましい方法は、炭等の吸着剤の使用である。炭は、活性炭であることが好ましい。この炭は、上述したように、任意にカラム中に含有される。溶媒を除去するさらなる別の方法は、中空糸接触器(hollow fiber contactors)の使用である。溶媒を除去するための浸透気化法及び炭吸着剤法が好ましい。さらなる別の実施形態においては、捕獲された第1の溶媒の除去を容易にするのに解乳化剤を利用する。解乳化剤は、第1の溶媒の除去を容易にするのに有効的ないかなる剤であってよい。好ましい解乳化剤はエーテルであり、より好ましい解乳化剤はジエチルエーテルである。解乳化剤は、流体又は流体の代替物に添加され得、流体が解乳化剤中に分散され得るようする。ワクチン製剤において、約0.5〜4.0部のアルカン類対約1部のエマルジョン(vol:vol)が、解乳化剤として利用され得、続いてワクチンを調製するのに使用された残っている脱脂生物から、残余アルカンを除去するために洗浄する。好ましいアルカン類は、ペンタン、ヘキサン及び高級の直鎖又は分枝鎖アルカン類を含むが、これらに限定されない。
【0100】
エーテル等の解乳化剤は、前段落で記載したような手段を含む、当業者に既知の手段により除去され得る。エーテル等の解乳化剤を系から除去する1つの便利な方法は、稼動する排気フード(running fume hood)で、又は環境から解乳化剤を回収及び除去するのに好適な他の装置で、エーテルを系から蒸発させることである。加えて、解乳化剤は、約10〜20mbarの圧力有り又は無しで、高温、例えば約24〜37℃の適用を介して除去され得る。解乳化剤を除去する別の方法は、遠心分離による分離を包含し、続いて吸引による有機溶媒の除去、さらに減圧下(例えば、50mbar)での蒸発又は蒸発を助けるために液化点を越える、窒素等の不活性ガスのさらなる供給が続く。
【0101】
生体流体を処置する方法(脱脂)
本発明の方法は、連続的な又は断続的な様式のいずれかにおいて利用され得るということが理解される。すなわち、連続的様式において、流体は、次に流体と混合される第1の溶媒を使用する系へ供給され得、分離され、任意にさらに、解乳化剤の適用を介して除去される。また連続的方法は、脱脂感染性生物を含有する流体を、所望の位置へ続いて返還することを容易にする。このような位置は、このような処置流体の受け取り及び/又は保管のための槽であり得、ヒト若しくは動物の血管系、又は胸膜腔、心膜腔及び腹骨盤腔等の、ヒト又は動物の他の体区画も含み得る。
【0102】
本発明の連続的方法の一実施形態において、生体流体(例えば血液)は、カテーテル等の当業者に既知の手段を用いて動物又はヒトから抜き取られる。ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又は酢酸等の、当業者に既知である適切な抗凝固因子が利用される。次にこの血液を、遠心分離を用いて細胞成分及び血漿成分に分離する。次に血漿を、第1の溶媒と接触させ、第1の溶媒と混合し、血漿中に含有される感染性生物からの脂質除去を達成する。処置血漿からの第1の溶媒の分離に続いて、炭、浸透気化剤又は解乳化
剤を任意に利用し、捕獲された第1の溶媒を除去する。許容可能なレベル(非毒性)の第1の溶媒又は解乳化剤(利用したなら)を確認した後、任意に、血漿と血液から予め分離された細胞とを組み合わせ、少なくとも部分的に脱脂されたウイルス粒子(本明細書中においては改変されたウイルス粒子とも呼ばれる)を含有する新たな血液試料を形成する。
【0103】
本発明の実施を介して、感染性生物の感染力は大きく減少するか、又は消失する。もともとは血液から分離された細胞との組み換えに続いて、低脂質レベルを有し、且つ脂質含量の低減したウイルスを含有する流体が、血管系又はヒト若しくは動物の他の系のいずれかへ再導入され得る。ヒト又は動物から抜き取られた血漿のこのような処置の効果、並びに部分的に若しくは完全に脱脂された感染性生物を含有する試料又は改変されたウイルス粒子のヒト若しくは動物への返還は、ヒト又は動物の血管系に含有される感染性生物の完全性の正味の減少を引き起こす。また改変されたウイルス粒子は、患者に投与されたとき、患者内において自己免疫応答を開始する役割を果たす。この動作形態(mode of operation)において、本発明の方法は、ヒト又は動物がこのような処置のための体外装置に接続される間、連続的な様式で流体を処置するのに利用される。
【0104】
さらなる別の実施形態において、断続的な又はバッチ形態において、ヒト又は動物は、本発明の方法で流体を処置するための体外装置へ接続されない。断続的動作形態において、本発明は、ヒト又は動物から予め得た流体を利用し、これは血漿、リンパ液又は卵胞液を含み得るが、これらに限定されない。流体は、血液バンクに含有されていても、又は代替として、方法の適用前にヒト若しくは動物から取り出してもよい。流体は生殖器液又は人工授精若しくは体外受精の過程において使用される任意の流体であってよい。また流体は、ヒト又は動物から直接的に得られるものでなくてもよいが、細胞培養液等の潜在的に感染性生物を含有する任意の流体でよい。ウイルスの様々な菌株及びクレードのストック、及び複数ウイルスストックが、ワクチンを生産する本方法において使用することができる。この動作形態において、この流体を本発明の方法を用いて処置し、少なくとも部分的に又は完全に脱脂された感染性生物若しくは改変されたウイルス粒子を含有する低脂質レベルの新たな流体を生産する。本発明のこの形態の一実施形態は、他の動物又はヒトから事前に得られた血漿試料を処置し、続く輸液(transfusion)のために血液バンク内に貯蔵することにある。これは、ワクチン防御を付与する非自己方法である。これらの試料は、生体試料からの、HIV、肝炎ウイルス、及び/又はサイトメガロウイルス等の1つ又は複数の感染性疾患を処置又は予防する、本発明の方法で処置され得る。
【0105】
感染性生物の脱脂は、様々な手段により達成される。バッチ法は、新鮮な又は貯蔵された生体流体(例えば、新鮮な冷凍血漿)に対して使用することができる。この場合、様々な記載した有機溶媒又はその混合物が、ウイルス不活化に使用することができる。抽出時間は、溶媒又はその混合物、及び利用された混合手順に応じる。
【0106】
本発明の方法の使用を介して、流体中の脂質含有ウイルス中の脂質レベルは減少し、流体(例えば、改変されたウイルス粒子を含有する脱脂血漿)が患者へ投与され得る。このような流体は低い感染力を有する改変されたウイルス粒子を含有し、ワクチンとして作用し、免疫応答を生じること、及び疾患の重篤性を減少させることにより、患者にウイルスに対する防御を付与、又は感染患者における処置を提供する。これらの改変されたウイルス粒子はレシピエント中において免疫応答を誘導し、改変されたウイルス粒子上のエピトープを露出させる。代替として、改変されたウイルス粒子は薬学的に許容可能な担体、任意にアジュバントと組み合わせてもよく、ヒト又は動物へワクチン組成物として投与され、レシピエント内において免疫応答を誘導してもよい。
【0107】
ワクチン生産
1つの実施形態において、少なくとも部分的に若しくは実質的に脱脂され、且つ免疫原
性特性を有する改変されたウイルス粒子は、任意に、薬学的に許容可能な担体と組み合わされ、ワクチンを含む組成物を作る。好ましい実施形態において、改変されたウイルス粒子は、血漿等の生体流体中に、低脂質レベルで保持され、ワクチンとして患者へ投与される。このワクチン組成物は、任意に、アジュバント又は免疫刺激剤と組み合わされ、動物又はヒトへ投与される。組み合わせワクチンを含む自己ワクチン及び非自己ワクチンの両方が、本発明の範囲内である。1つより多いウイルス菌株又はワクチン接種後の1つより多いウイルス性疾患に対する防御を付与するために、ワクチン組成物は、1つより多いタイプの改変されたウイルス粒子又はその成分を含有し得ることが理解される。このような組み合わせは、所望の免疫性に従って選択され得る。例えば、好ましい組み合わせは、HIV及び肝炎、又はインフルエンザ及び肝炎を含むが、これらに限定されない。より具体的には、ワクチンは、患者特異的抗原を有する複数の改変されたウイルス粒子、及び非患者特異的抗原を有する改変されたウイルス粒子、又は本発明の脱脂過程を受けたストックウイルス粒子を含むことができる。生物の、残りの改変されたウイルス粒子は、脱脂生体流体中に保持され、動物又はヒトへ再導入されるとき、おそらく貧食細胞により摂取され、免疫応答を生じる。
【0108】
本発明の方法を用いて生産されたワクチンの投与
脱脂感染性生物(例えば、抗原決定基が露出した改変されたウイルス粒子の型のもの)が動物又はヒトに投与される場合、任意に薬学的に許容可能な担体と組み合わせてワクチンを生産し、任意に当業者に既知であるアジュバント又は免疫刺激剤と組み合わせる。ワクチン配合物は、都合よく、単位投与形態で提示され得、当業者に既知である従来の薬学的技術により調製され得る。このような技術は、有効成分及び液体担体(薬学的担体(複数可)又は賦形剤(複数可))と均一且つ親密に関連付けられる。非経口投与に好適な配合物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び配合物を対象とするレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有してよい水性及び非水性滅菌注射液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含んでよい水性及び非水性滅菌懸濁液を含む。
【0109】
配合物は、例えば密封アンプル及びバイアルのような、単位用量又は複数回投与槽において提示され得、使用直前に例えば注射用の水のような滅菌液体担体の添加のみを必要とするように、冷凍乾燥(凍結乾燥)条件で貯蔵され得る。ワクチンは、約4℃〜−100℃の温度で貯蔵され得る。またワクチンは、室温を含む種々の温度で凍結乾燥状態で貯蔵され得る。即時調製注射液及び懸濁液は、当業者により一般に使用される滅菌粉末、顆粒及び錠剤から、調製され得る。ワクチンは、当業者に既知の従来手段を介して滅菌され得る。このような手段は、ろ過、放射線及び熱を含むがこれらに限定されない。本発明のワクチンは、細菌の成長を阻害するために、チメロサールなどの静菌剤と組み合わせてもよい。
【0110】
好ましい単位用量配合物は、投与された成分(ingredient)の用量若しくは単位を含有するもの、又はその適切な画分である。特に上記で述べた成分に加えて、本発明の配合物は、当業者により一般に使用される他の剤も含み得ることが理解されるべきである。
【0111】
ワクチンは、経口等の種々の経路(頬側若しくは舌下、直腸、非経口、エアロゾル、経鼻、筋肉内、皮下、内皮、静脈内、腹腔内及び局所的)を介して投与され得る。またワクチンは、リンパ組織の付近、例えば腋窩、鼠経、又は頚部リンパ節などのリンパ節への投与を介して、投与される。
【0112】
本発明のワクチンは、溶液、エマルジョン及び懸濁液、ミクロスフィア、粒子、微小粒子、ナノ粒子並びにリポソームを含む、種々の型で投与され得るが、これらに限定されない。一免疫化投与計画当たり約1〜5用量が必要であり得ることが推定される。ワクチンを投与する医学又は獣医学の当業者は、必要な場合、例えば患者の年齢及び大きさを考慮
して、初回注射及び追加免疫注射において投与されるワクチンの量はなじみがあるであろう。初回注射は、全ウイルスタンパク質に基づいて、約1ng未満〜1グラムの範囲であり得る。非限定的な範囲は、1ml〜10mlであり得る。投与の容積は、投与経路に応じて異なってよい。
【0113】
ワクチン接種スケジュール
本発明のワクチンは、感染の前、最中、又は後に投与され得る。本発明のワクチンは、ヒト又は動物のいずれかに投与され得る。一実施形態において、ヒト又は動物のウイルス量(1つ又は複数のウイルス)は、血漿の脱脂処置により減少され得る。同一個体は、1つ又は複数のウイルスを対象としたワクチンを受け取ってよく、これにより免疫系を刺激して個体中に残るウイルスに対して闘う。初回感染前のワクチン投与の時間は、当業者に既知である。しかし、疾患進行を改善するため、又は疾患を処置するために、初回感染の後にワクチンを投与してもよい。
【0114】
アジュバント
当業者に既知である様々なアジュバントを、ワクチン組成物中の改変されたウイルス粒子と併せて投与してもよい。このようなアジュバントは以下を含むが、これらに限定されない:重合体、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体等の共重合体、ブロック共重合体を含む;ポリマーP1005;モノチドISA72;フロイント完全アジュバント(動物用);フロイント不完全アジュバント;モノオレイン酸ソルビタン;スクワレン;CRL−8300アジュバント;ミョウバン(alum);QS21、ムラミルジペプチド;トレハロース;マイコバクテリア抽出物を含む細菌抽出物;解毒エンドトキシン;膜脂質;油中水混合物、水中油中水混合物又はこれらの組み合わせ。
【0115】
懸濁化液体(suspending fluid)及び担体
当業者に既知である様々な懸濁化液体又は担体を、ワクチン組成物を懸濁するのに利用してよい。このような液体は限定されずに以下を含む:滅菌水、生理食塩水、緩衝剤、又は成長培地に由来する複合液体若しくは他の生体流体。当業者に既知である保存剤、安定剤及び抗生物質を、ワクチン組成物中に利用してよい。
【0116】
以下の実験例は、ウイルス粒子の脱脂過程が起こったこと、及び特にウイルス粒子が改変され、それが由来する種において陽性免疫原性応答を示すことを説明している。他の実施形態及び使用が当業者に明らかであり、本発明はこれらの具体的説明的な実施例又は好ましい実施形態に限定されないことが理解されるであろう。
【実施例1】
【0117】
A.血清の脱脂は、感染力が低減されたアヒルB型肝炎ウイルス(DHBV)を生産する
106のID50用量のDHBVを含有する標準的なアヒル血清プールを(Camden)使用した。ID50は、上記用量で処置した動物の50%を感染するのに有効な感染投与量(ID)として当業者に既知である。21羽のアヒルの子が、孵化の日にDHBV陰性群として得られた。これらのアヒルの子は、ドットブロットハイブリダイゼーションにより、購入時に試験して、DHBV DNA陰性であると示された。
【0118】
有機溶媒系は、ジイソプロピルエーテル60部に対してブタノール40部の比で混合した。混合した有機溶媒系(4ml)を標準的な血清プール(2ml)と混合して、室温で1時間、穏やかに回転させた。混合物を400×gで10分間遠心分離して、下部水相(血漿を含有する)を室温で取り出した。続いて、水相を等容量のジエチルエーテルと混合して、上述のように遠心分離して、任意の残存脂質/溶媒混合物を除去した。水相を再び取り出して、等容量のジエチルエーテルと混合して、再度遠心分離した。水相を取り出して、ヒュームキャビネット中で室温で約1時間、空気に当てることにより、任意の残留ジ
エチルエーテルを除去した。脱脂された血漿(ウイルス粒子有り又は無し)を−20℃で保管した。
【0119】
陽性及び陰性の対照アヒル血漿をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で希釈した。陽性対照:106のID50用量のDHBVを含有するプールされた血清2mlを、PBS4mlと混合した。陰性対照:プールされたDHBV陰性血清2mlを、PBS4mlと混合した。残留感染力を、試験試料(n=7)、陰性(n=7)又は陽性(n=7)対照のいずれか100μlを、産後1日目のアヒルの腹膜腔へ接種することにより試験した。対照は、有機溶媒で処置したDHBV陰性血清を用いて実施し、続いてPBSと混合して、レシピエントアヒルへ注射した。
【0120】
陽性対照アヒルのうちの1羽は、4日齢〜6日齢で死亡したため、さらなる分析から排除した。さらなる3羽の陽性対照アヒルは、9日齢〜10日齢で死亡し、処置2羽及び陰性対照1羽は、11日目に死亡した。実験を終結させることに決めた。残りのアヒルの子は、12日目にペントバルビトンナトリウム(静脈内)を用いて安楽死させ、それらの肝臓を、Deva他(J. Hospital Infection 33:119-130, 1996)に記載されるように、DHBV
DNA分析用に取り出した。7羽の陰性対照アヒルはすべて、DHBV陰性のままであった。6羽の陽性対照アヒルすべての肝臓は、DHBV陽性であった。7羽の試験アヒルは、それらの肝臓においてDHBV DNAに関して陰性のままであった。
【0121】
上記溶媒系を用いた血清の脱脂は、感染力が低減されたDHBVをもたらした。処置血清を投与したアヒルの子はいずれも、感染しなかった。実験は、14日でなく12日で終結されなくてはならなかったが、残りの陽性対照アヒルは、DHBVに関して陽性であった(3/3は、10日目にはDHBV陽性であった)。これは、肝臓においてDHBV陽性となるのに十分な時間が、処置したアヒルに関して経過していたこと、及び実験の早期終了は、結果に関係しなかったことを示唆する。
【0122】
B.DHBV感染を防止するワクチンとしての脱脂されたDHBV陽性血清
アヒルB型肝炎ウイルス(DHBV)に対する患者特異的「自己」ワクチンを提供するための脱脂手順の有効性を検査した。およそ16羽の北京交雑アヒル(Pekin cross ducklings)が、孵化の日にDHBV陰性群として得られた。アヒルの子は、ドットブロットハイブリダイゼーションを用いたDHBV DNAの分析により、試験して、DHBV DNA陰性であると決定された。アヒルは、以下の3つの群に分けられた:
【0123】
【表1】
【0124】
1.グルタルアルデヒド不活化
グルタルアルデヒド不活化は、約1:250でのグルタルアルデヒドの希釈溶液による
固定により、当業者に既知であるように達成された。グルタルアルデヒドは、よく知られた架橋剤である。
【0125】
2.脱脂手順
有機溶媒系を用いて、血清の脱脂を実施した。溶媒系は、40%のブタノール(分析用試薬等級)及び60%のジイソプロピルエーテルから構成され、2:1の比で血清と混合した。したがって、有機溶媒4mlを血清2mlと混合して、1時間回転させた。この混合物をおよそ400×gで10分間、遠心分離した後、水相を取り出した。続いて、水相を等容量のジエチルエーテルと混合して、400×gで10分間、遠心分離した。次に、水相を取り出して、等容量のジエチルエーテルと混合して、30rpmで約1時間、転倒させて回転させ、400×gで10分間遠心分離した。水相を取り出して、残留ジエチルエーテルを、ヒュームキャビネット中でおよそ10〜30分間、蒸発により除去した。処置した血清は、ジエチルエーテルの除去後に残り、ワクチンを生産するのに使用した。脱脂手順の対照は、DHBV陽性血清と同じ脱脂手順に、DHBV陰性血清をさらすことを包含した。
【0126】
【表2】
【0127】
4.実験手順
孵化後29日目に、アヒルをDHBV陽性血清(血清プール20.1.97)1,0000μlで曝露した。血清プール20.1.97は、ドットブロットハイブリダイゼーションにより、1.8×1010のゲノム当量(gev)/mlを有することが示された。1ゲノム当量(gev)は、およそウイルス粒子1個である。1日目及び10日目に完全なワクチン接種前に、17日目及び23日目に曝露前に、並びに37日目、43日目及び52日目に曝露後に、アヒルを出血させた。それらの血清を、Deva他(1995年)により
記載されるように、ドットブロットハイブリダイゼーションにより、DHBV DNAに関して試験した。アヒルを58日目に安楽死させて、それらの肝臓を取り出し、DNAを抽出して、Deva他(1995年)により記載されるように、ドットブロットハイブリダイゼーションにより、DHBVの存在に関して試験した。
【0128】
5.結果の分析
a.試験アヒル。試験ワクチンをワクチン接種した6羽の試験アヒルは、曝露後に血清及び肝臓において、DHBV DNAに関して陰性のままであった。試験アヒル1羽は、曝露後にDHBVに関して陽性となった。
【0129】
b。擬(シャム)(sham)ワクチン接種アヒル。グルタルアルデヒド不活化血清をワクチン接種したアヒル4羽はすべて、DHBVでの曝露後にDHBV陽性となった。
【0130】
c.偽(モック)(Mock)ワクチン接種アヒル。6羽の偽ワクチン接種陰性対照アヒルのうち6羽すべてが、曝露後にDHBV陽性となった。
【0131】
カイ二乗分析を用いて、処置間の差を比較した。かなり多くの対照アヒル(偽ワクチン接種)が、脱脂された血清をワクチン接種したアヒルよりも曝露後にDHBV陽性となった(p<0.05)。
【0132】
上記プロトコルを用いた脱脂されたDHBV陽性血清によるアヒルの子のワクチン接種は、6羽のアヒルの子のうち5羽において、DHBV陽性血清による曝露後に、DHBV感染の防止をもたらした。これは、脱脂された血清ワクチンが、ワクチン接種したアヒルにおいて陽性免疫原性応答を誘導することが可能であることを示唆する。さらに、脱脂過程は、これまでに露出されていなかった患者特異的抗原を露出させ、及び/又はウイルス粒子構造における構造変化を引き起こし、陽性免疫原性応答を可能にさせたと考えられる。相対的に、6羽の偽(モック)ワクチン接種アヒルのうちの6羽及び4羽の擬(シャム)ワクチン接種アヒルのうちの4羽は、ワクチン接種後にDHBV陽性となり、免疫応答の欠如に起因して、これらのアヒルにおける免疫性の誘導が無かったことを示唆した。
【実施例2】
【0133】
A.C型肝炎に関するモデルとしてのウシペスチウイルス(Cattle Pestivirus)(ウシウイルス性下痢ウイルス、BVDV)の脱脂
標準的なウシペスチウイルス単離物(BVDV)をこれらの実験で使用した。この単離物「ヌメレラ(Numerella)」BVDウイルスは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州(NSW)のビーガ地域の農場での「粘膜病」の典型的な事例から提出された診断用検体から1987年に単離された。このウイルスは、非細胞変性であり、タイピング試薬としてのオーストラリアNSW州のthe Elizabeth Macarthur Agricultural Institute(EMAI)で産生したモノクローナル抗体のパネルの12個すべてと反応する。したがって、このウイルスは、オーストラリアBVDウイルスの「標準的な株」を表す。
【0134】
ヌメレラウイルスを、外来性ウイルス剤(BVDVを含む)を含まないで試験されるウシMDBK細胞中で成長させた。ウイルス成長に使用した培地は、EMAIのウシから得られる10%成体ウシ血清を含有しており、そのすべてが、BVDVウイルス及びBVDV抗体を含まないで試験された。この血清補充物は、確実に試験ウイルスが培養系において唯一のウイルスであるように予防措置を講じない世界中の研究室での一般的な欠点である、試験系の外来性BVDV混入の可能性を排除するのに長年使用されている。これらの試験培養系を使用することにより、ウイルスの高レベルの複製及び感染性ウイルスの高収率が保証された。MDBK細胞における5日間の成長後の最終的なウイルス収率の滴定は、清澄化(遠心分離)した培地1ml当たり106.8個の感染性ウイルス粒子の力価を示
した。
【0135】
1.感染BVDVの処置
106.8個のウイルス粒子/mlを含有する組織培養上清100mlを、150cm2の組織培養フラスコから回収した。遠心分離により上清を清澄化し(3,000rpm、10分、4℃で細胞片をペレット化)、10mlを、動物接種用の陽性対照(未処置ウイルス)として取っておいた。107.75個の感染性ウイルスを含有する残りの90mlを、以下のプロトコルを使用して処置した:溶媒混合物ブタノール:ジイソプロピルエーテル(DIPE)(2:1)180mlを、500mlの三角フラスコへ添加して、回旋させることにより混合した。続いて、混合物を、オービタルシェーカーで室温で30rpmにて60分間振とうした。次に、それを4℃で400×gにて10分間、遠心分離し、その後、有機溶媒相を除去して廃棄した。続く工程では、底部層(水相)を有機相の下から取り出して、かなり収率を改善させた。
【0136】
ブタノール:DIPE処置後、水相を等容量の新鮮なジエチルエーテル(DEE)で4回洗浄して、混入する微量のブタノールすべてを除去した。各洗浄後、フラスコの内容物を回旋させて、水相及び溶媒相の両方の均等な混合を確実にした後、上述のように遠心分離した(400×g、10分、4℃)。4回の洗浄後、混入を防止するためにゴムバンドでビーカーの最上部に固定された滅菌組織で覆われた滅菌ビーカー中に水相を入れて、連続的に稼動するヒュームフード中に一晩(16時間)入れ、残存する揮発性エーテル残留物すべてを不活化ウイルス調製物から除去した。処置した材料の続く培養は、混入を示さなかった。次に、任意の残存感染性ウイルスに関して試験するために組織培養又は動物へ接種するまで、処置したウイルス調製物を滅菌条件下にて4℃で保管した。
【0137】
2.処置したBVDV調製物の試験
a.組織培養接種
約107.1のウイルス当量を含有すると予測される、溶媒で処置したウイルス調製物2ミリリットルを、10%の試験されていない(tested-free)成体ウシ血清を含有する組織培養培地最小イーグル培地(MEM)8mlと混合し、25cm2の組織培養フラスコ中でMDBK細胞の単層上へ60分間吸着させた。陽性対照として、未処置、すなわち実質的に脂質を含有する感染性ウイルス(同様に約107.1のウイルス当量を含有する)2mlを、同様に25cm2の組織培養フラスコ中でMDBK細胞上へ吸着させた。60分後、上清を両方のフラスコから除去して、正常成長培地(+10%ABS)と入れ換えた。続いて、細胞を標準的な条件下で5日間成長させた後、MDBK細胞を固定させて、標準的なイムノペルオキシダーゼプロトコルを用いて、6個のBVDV特異的モノクローナル抗体の混合物(EMAIパネル、2つの異なるBVDウイルスタンパク質と反応性を有する)で染色した。
【0138】
有機溶媒で処置したウイルスを接種したMDBK細胞の単層中に感染細胞は存在しなかた。対比して、対照フラスコ(非不活化BVDVを接種した)中の細胞のおよそ90%は、規模の大きな特異的なイムノペルオキシダーゼ染色により示されるように、ウイルスに関して陽性であった。これらの結果は、in vitroの試験条件下では、処置した少なくとも部分的に脱脂されたBVDV調製物には感染性ウイルスは残存しなかったことを示した。
【0139】
b.動物接種
未処置(抗体陰性)ウシに少なくとも部分的に脱脂されたウイルス調製物を接種することは、in vivoでより一層感受性が高い試験である。ウイルスの細胞への侵入及び複製がBVDVに関して極めて効率的であることを考慮すると、かかる動物において皮下注射したわずか1個の感染性ウイルス粒子は、感染性ウシ用量であるとみなされる。10
頭の抗体陰性去勢ウシ(10〜12月齢)の群を無作為に3つの群に配分した。
【0140】
6頭の去勢ウシの第1の群を用いて、BVDVが低減された感染力を有するかどうかを試験した。上述したのと同じ少なくとも部分的に脱脂されたBVDVの調製物をこの実施例で使用した。ワクチン群用の陽性対照として作用するように、2頭の去勢ウシに、少なくとも部分的に脱脂されたウイルス粒子を有するワクチンを接種した。これらの2頭の陽性対照動物を別個の隔離条件下で実施して、それらが感染後に(通常、生BVDVウイルスを施した4〜7日後)一過性のウイルス血症を発症した場合に、それらが他の動物に感染するのを防止した。2頭の残りの去勢ウシは、動物のワクチン接種群内で天然に存在しないペスチウイルス伝染が確実に存在しないように、陰性「歩哨」動物として作用した。EMAIで開発された確証された競合ELISAを用いて、10頭すべての動物において抗体レベルを測定した。この試験は、別個にCSL Ltdにより確証されており、ヨーロッパではIDEXX Scandinaviaにより売買される。
【0141】
第1の群における6頭の動物それぞれに、市販のアジュバントに組み込まれた少なくとも部分的に脱脂されたBVDV調製物4.5mlの皮下注射を施した。少なくとも部分的に脱脂された調製物の各mlは、106.8のウイルス当量を含有していたため、脱脂過程前の総ウイルス量は、107.4の組織培養感染用量(TCID)50であった。陽性対照動物に、第1の群と同様の方法で皮下注射された脱脂されていない調製物それぞれ5ml、すなわち107.5のTCID50を施した。残りの2つの「歩哨」動物にはいかなるウイルス抗原を付与せず、試行が行われる間、群に存在する天然のペスチウイルス活性が確実に見られないように、試行の間中、第1の群の動物とともに放牧させた。
【0142】
第2の用量のワクチンを付与するまで、少なくとも部分的に脱脂されたBVDウイルスを施したワクチン接種去勢ウシのいずれにおいても抗体発現は見られなかった。したがって、単回用量の2週及び4週後に、6頭の去勢ウシは抗体陽転(seroconvert)せず、少なくとも部分的に脱脂されたウイルス調製物総容量27ml中に感染性ウイルスは残っていなかったことを示す。これは、108.2のTCID50の総不活化に相当する。対比して、脱脂前にウイルス調製物それぞれ5mlを施した2頭の去勢ウシにおいては、接種の2週及び4週後の両方で、高レベルの抗E2抗体(中和抗体)及び抗NS3抗体両方が存在した。これにより、脱脂前のウイルスの感染性質が確認された。これらのin vivoの結果により、in vitro組織培養試験の見解が確認される。2頭の「歩哨」動物は、終始血清陰性のままであり、群れは天然のペスチウイルス感染のないままであることを示した。
【0143】
使用したモノクローナル抗体のパネルは、無傷ウイルスの脂質エンベロープ中に組み込まれる糖タンパク質である主要エンベロープ糖タンパク質(E2)に対して向けられる宿主抗体を検出した。試験系はまた、ウイルスにより感染された細胞内で作製される非構造タンパク質NS3に対して向けられる抗体を検出した。このタンパク質は、ウイルス複製において主要な調節の役割を有し、感染性ウイルス内には存在しない。ワクチン接種去勢ウシにおいて感染性ウイルスが存在するという徴候は見られず、感染性ウイルス粒子すべてが破壊されたことを示した。ペスチウイルスはすべて、RNAウイルスである。したがって、脱脂された調製物中にウイルスDNAは存在しなかった。これらの結果は、脱脂されたウイルスを施した動物中で実質的に感染性ウイルスが見られないように、少なくとも部分的にウイルスを脱脂する本発明の方法の有効性を実証する。
【0144】
B.去勢ウシにおけるワクチンとしての脱脂されたBVDV調製物
セクションAで上述した少なくとも部分的に脱脂されたBVDV調製物4.5mlの初回用量を施した6頭の去勢ウシすべてに、第1の初回刺激用量の4週後に、同様の用量を再び皮下注射した。このとき、初回用量後に抗体応答は見られなかった。動物が第2の用
量後に反応することは正常である。抗E2抗体レベル(血清中和抗体SNTに相当する)に対する強力な二次抗体応答が、6頭のうち3頭において、少なくとも部分的に脱脂されたウイルスの第2の用量の2週後に観察された。この応答は、競合ELISAにおいて70%を上回る阻害であった。残りの3頭の動物は、弱い抗体応答を示した(23〜31%阻害)。
【0145】
抗E2抗体応答と対比して、少なくとも部分的に脱脂されたBVDVの第2の用量の2週後に、たった1頭の動物が、強力な抗NS3抗体応答(93%阻害)を発現した。第2の動物は、弱い抗NS3応答(29%阻害)を有し、4頭の動物は、2回用量の投与後に抗体を示さなかった。少なくとも部分的に脱脂されたBVDVワクチンの投与後の類似の応答がこれまでに観察されていたため、これは意外ではなかった。抗E2抗体レベルが第2の用量の2週後に6頭のワクチン接種去勢ウシすべてにおいて測定可能であったため、少なくとも部分的に脱脂されたBVDV調製物の2回用量後の去勢ウシにおける抗体レベルは、ワクチンとしてのその潜在性を明示する。
【実施例3】
【0146】
マウスにおいてSIV特異的体液性応答及びCD4+T細胞記憶応答を誘導又は増強するための脱脂されたSIVの使用−レンチウイルス感染に対する新たな自己ワクチン接種戦略のモデル
以下の研究は、SIVと称されるヒトHIVのサル等価体に焦点を当てた。目的は、脱脂されたSIVmac251(SIVのクローニングされていない高度に病原性の単離体)を利用して、マウスにおける脱脂されたウイルスの相対免疫原性を決定するための研究を行うことであった。マカクのサル免疫不全ウイルスの感染クローン(SIVmac239)の完全ヌクレオチド配列は決定されている。この分子クローンから生産されるウイルスは、研究室の研究に適した時間枠で、アカゲザルにおいてAIDSを引き起こす。両方の末端反復配列を含むプロウイルスゲノムは、10,279塩基対であり、gag、pol、vif、vpr、vpx、tat、rev及びenvに対するオープンリーディングフレームを含有する。nef遺伝子は、92番目のコドンの後に、インフレームの中途終止を含有する。ヌクレオチドレベルで、SIVmac239は、SIVmac251(98%)及びSIVmac142(96%)に密接に関連する(Regier DA, Desrosiers Annual Review Immunology. 1990; 8:557-78)。
【0147】
実験を実施して、予め初回刺激されたBalb/cマウスにおいてウイルス特異的体液性及び/又は細胞性免疫応答の容易に認識可能な追加免疫を生じる、脱脂されたサル免疫不全ウイルス(SIV)の最小用量を決定した。実験はすべて、BSL3施設で行った。
【0148】
脱脂されたウイルス調製物の免疫原性を、その自然形態の同じウイルスの分取量と比較した。同等のタンパク質量の脱脂されていないウイルス調製物及び脱脂されたウイルス調製物によるマウスの免疫化により誘導される、抗体の質(抗体の力価、抗体の立体構造的及び線状エピトープ特異性、抗体のアイソタイプ含有量並びに抗体の機能)及び抗体の量は、以下に記載するように確認された。野生型ウイルスの分取量からの総タンパク質及び同じ分取量のウイルスの脱脂後に回収されるタンパク質は、標準的な定量的タンパク質アッセイを用いて決定された(Biorad、BCAキットアッセイ、Rockford, Illinois)。総タンパク質プロファイルは、野生型ウイルス及び脱脂されたウイルス調製物のSDS−PAGE分析を用いて決定され、相対的エピトープ保存は、野生型と脱脂されたウイルスのウェスタンブロット比較により確認された。
【0149】
同等なタンパク質量の化学的に処置した野生型及び脱脂されたウイルスは、マウスの群においてウイルス特異的免疫応答を追加免疫するそれらの能力に関して分析された。これらの免疫化マウスからの血清は、未処置野生型に対する反応性に関して、及び脱脂された
ウイルス調製物との比較用に、ELISA及びウェスタンブロット分析によりアッセイされた。脾臓細胞は、以下に概要するように、それらのCD4及びCD8 SIVウイルスenv及びgag特異的免疫応答増強能力に関してアッセイされた。標準的な統計学的解析をデータ解析のために実施した。
【0150】
4〜6週齢の健常な雌Balb/cマウスをからthe Jackson labs, Bar Harbor, Me購入して、Emory UniversityにあるBSL2/3マウス収容施設に収容した。20匹のBal/cマウスをそれぞれ、等容量のフロイント不完全アジュバントに組み込まれた2−2ジチオピリジン不活化SIVmac251のタンパク質25μgで皮下的に免疫化した。
【0151】
十分量のSIVmac251を脱脂して、1回のスケジュールにつきこれらのマウスを追加免疫するのに必要とされる量を提供した。脱脂は、SIVmac251をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の10%DIPEとともにインキュベートすることから構成された。PBS中の10%DIPE溶液1.0mlを調製して、それが濁って見えてくるまでボルテキサーで混合した。
【0152】
ウイルス調製物:Advanced BiotechnologiesのSIVmac251の1mlチューブを種ストックとして使用した(ショ糖勾配精製したウイルス1mg/ml)。供給業者は、総タンパク質1.074mg/ml(PierceのBCAタンパク質法)及びウイルス粒子カウント6.9510/ml(EM)を有する力価106.7を報告した。ウイルスは、最初は迅速アッセイとしてCEMx174を用いて、二度目は四重培養/希釈で、力価107.0を有していることが確認された。この調製物におけるp27の測定は、106μg/mlの値を示した。次に、無希釈ウイルスストック25μlを、0.6mlの透明なスナップキャップポリエチレンエッペンドルフチューブ1へ導入した。続いて、10%DIPE溶液2.5μlを、ウイルスを含有するエッペンドルフチューブへ添加して、15秒間ボルテックスした。チューブを室温で1,000×gにて2分間回転させた(エッペンドルフ5810R遠心機を用いて)。大半の溶媒は除去されなかった。溶媒を2,000rpmで加熱無しで30分間真空遠心分離(Speedvacの濃縮装置モデルSVC200H)により除去した。チューブ内の容量をPBSで25μlに調節した。総タンパク質の回収を、PierceのBCAプロトコルを用いて測定した。ゲル(12%SDS−PAGE)を特異的タンパク質の回収(envタンパク質、polタンパク質、gp41、p27及びgagタンパク質)に使用して、クマシーブルーで染色して、ODを用いて半定量的な結果を提供した。ウェスタンブロットは、SIV感染サルからの血清を用いて実施され、エンベロープタンパク質、gp66、gp41、p27、gag及びp6 gagを測定した。調製物のウイルス感染力は、ルシフェラーゼアッセイ及びCEM−174細胞を用いて決定した。ウイルス力価は104.5であり、脱脂されていないストックで測定したものから2.5log減少した。この脱脂されたSIV調製物は、90%を上回るSIVmac251の主要タンパク質構成成分(例えば、gag及びenvタンパク質)を保持するようである。
【0153】
次に、改変されたウイルス調製物の免疫原性は、2−2ジチオピリジン不活化SIVmac251のタンパク質25μgで皮下的にそれぞれ免疫化した、上述の20匹の成体雌Balb/cマウスで決定された。14日目に、群3〜6を、生理食塩水0.5ml中の脱脂されたウイルス10μg〜0.01μg(ストックの総タンパク質に基づいて)で追加免疫した。推定される実際のウイルスタンパク質含有量は、ストック中の総タンパク質/p27タンパク質の比に基づいて、総タンパク質の1/10のウイルスタンパク質含有量に等しかった。マウスに以下のような脱脂されたワクチン組成物を注射した:
【0154】
【表3】
【0155】
追加免疫注射の4日後、マウスに麻酔をかけて、眼窩後穿刺及び心臓内穿刺により血液を回収した。主に心臓内穿刺から、血液約0.5mlを各マウスから回収した。血液を室温で凝固させた。各マウスの脾臓を無菌的に取り出して、二重袋収納下で研究室に輸送した。各マウスからの凝固血液を、室温で約450×gで遠心分離して、血清をチューブから回収して、滅菌チューブに移して、使用するまで−70℃で保管した。ELISAを実施して、各血清試料に関して、SIVに対する抗体力価を決定した。
【0156】
SIV ELISAプロトコル
陽性及び陰性血清並びに試験されるべき流体のストックを分取量で凍結して、あらゆるプレート上で使用して、各実行を標準化した。
【0157】
コーティングされたCorningのEasyプレートをPBS(pH7.2〜7.4)1ml当たり10μgの濃度で、ウェル1つにつきポリ−l−リシン100μlで洗浄した。プレートをカバーして、4℃で一晩インキュベートした。幾つかのプレートを一度にコーティングして、続く使用のために保管した。次に、過剰量のポリリシンを除去して、プレートを数分間乾燥させた。2%トリトン−X約100μlを、ストックABI SIVmac251 100μlに添加して、試料を5分間置いた。次に、pH9.6のコーティング緩衝液50μlを添加した。次に、ウイルス抗原100μlを5つのプレートの各ウェルに添加して、それらのプレートをカバーして、4℃で一晩インキュベートした。
【0158】
一晩のインキュベーション後、ウェルをPBS−Tで3回洗浄した。続いて、ウェルに、ウェル1つにつきPBS中の2%脱脂粉乳200μlを室温で1時間入れて、非特異的結合をブロックした。過剰量の液体を除去した。10%子ウシ血清を伴う10%RPMI1640又はPBS中で1/100に希釈された試験又は対照血清100μlを二重ウェルに添加して、37℃で2時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで4回洗浄した。次に、Southern Biotech(Fisherから)のアルカリホスファターゼ抗マウスIgG(10%子ウシ血清を伴う培地又はPBS中で1/800に希釈)100μlを添加して、37℃で1時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで4回洗浄した。
【0159】
BIORADのアルカリホスファターゼ基質キットを使用して、反応生成物を展開させた。基質錠剤を1×緩衝液5mlそれぞれに関して添加して、混合した。次に、ウェル1つにつき、100μlを添加して、約5、10、15、30分で、続いて1時間間隔で発色を評価した。
【0160】
血清に関して、陽性対照が1.500以上であり、陰性対照が0.100〜0.200である場合に、ブランク読取りが培地対照から得られた。続いて、結果を記録して、陰性対照、陽性対照及び実験試料の平均値並びに標準偏差を算出した。陰性カットオフ値は、陰性対照の平均値+0.150であった。
【0161】
免疫原性の結果
マウスにおける脱脂されたSIVウイルス調製物の免疫原性は、ELISAアッセイで検査した。平均光学密度(O.D.)は、様々な希釈の血清で405nmで検査した。表4は、血清試料に関するELISA試験の結果を提供する。
【0162】
【表4】
【0163】
免疫化マウスから得られる解離脾臓細胞の応答の分析
脾臓細胞の単一細胞懸濁液は、脾臓被膜をやさしく掻き裂くこと、及び細胞に25ゲージの針を通すことにより、個々のマウスそれぞれから調製した。脾臓細胞を、培地(100μg/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミンを補充したRPMI 1640)中で単一細胞懸濁液へ解離させ、培地中で2回洗浄し、続いて1,000万個の細胞/mlに調節した。各マウスからのこの細胞懸濁液0.1mlを、培地を含有する96穴丸底マイクロタイタープレートの各ウェルへ分配した。残りの細胞は凍結保存した。続いて、標準的な細胞内サイトカイン染色(ICC)及びフローサイトメトリーにより、これらの脾臓細胞培養物を、CD4+及びCD8+T細胞の、IFN−γを合成する能力に関して評価した。
【0164】
個々のマウスからの二重細胞培養物を含有する2つの別個のウェルには、a)プールに応じて、1つのプールにつき8〜9個のペプチドの範囲のSIVエンベロープ(SE)ペプチドのプールのそれぞれ2μg/mlを含有する培地0.1ml(n=17プール)、又はb)プールに応じて、1つのプールにつき7〜8個のペプチドの範囲のSIVgag(SG)ペプチドのプールのそれぞれ2μg/mlを含有する培地0.1ml(n=16プール)のいずれかを入れた。対照は、培地単独(バックグラウンド対照)又は最大IFN−γ染色に関して予め決定された最適濃度のホルボールミリスチン酸酢酸(PMA 1μg/ml)+イオノマイシン(0.25μg/ml)(陽性対照)を入れた脾臓細胞培養物から構成された。SIV envペプチド(n=72の別個のペプチド)は、8×9行列の格子様式で混合し、SIV gagペプチド(n=62のペプチド、ペプチドをそれぞれ欠落している2つのプール及び2つのペプチドを欠落している1つのプールを有す
る)は、8×8行列の格子様式で混合し、個々のペプチド特異的免疫応答の同定を可能にした。SIV gagペプチドは概して、12個のアミノ酸が互いに重複し、完全SIVgag配列を包含する合成20量体ペプチドであった。SIV envペプチドは概して、13個のアミノ酸が互いに重複し、完全SIV env配列を包含する合成25量体ペプチドであった。ペプチドプールは、各ペプチド2.0μg/mlを含有するように作製された。各脾臓細胞調製物に関して、36ウェルの培養が存在した。env及びgag重複ペプチドのプールの構成成分を以下に記載する。SIVmac239gag(SG)及びenv(SE)内の各々の位置において、プールを構成するペプチドを示す。
【0165】
【表5】
【0166】
【表6】
【0167】
【表7−1】
【0168】
【表7−2】
【0169】
【表7−3】
【0170】
【表8−1】
【0171】
【表8−2】
【0172】
培養物を7%CO2加湿雰囲気中で37℃にて一晩インキュベートした。各ウェルからの細胞を優しく取り出して、5.0mlのFACS試験管へ移して、洗浄した。1組の細胞を抗CD3+抗CD4+で染色した。他の二重組は、抗CD3+抗CD8+で染色した(以下を参照)。続いて、これらの細胞表面染色細胞を透過処置して、標準的な細胞内染色プロトコルを用いて、抗IFN−γ染色抗体を使用して、IFN−γの細胞内含有量に関して染色した。次に、染色した細胞集団それぞれ(各管から約10,000個の細胞)を、FACSフローサイトメーターを用いて分析し、IFN−γを合成するCD3+CD4+及びCD3+CD8+T細胞の頻度を決定した。陰性対照及び陽性対照は、バックグラウンド対照参照用及び陽性対照参照用に利用した。この実験の間にこの様式で、約1,000回の分析を実施した。
【0173】
SIV envペプチド(17プール)及びSIV gagペプチド(16プール)のプールに応答して、マウスの6つの群からの脾臓細胞によりIFN−γを発現するCD4+T細胞の頻度(y軸)を決定した。同様に、SIV envペプチド及びSIV gagペプチドのプールに応答して、マウスの同じ6つの群からの脾臓細胞によりIFN−γを発現するCD8+T細胞の頻度(y軸)も決定した。データは、4匹のマウス/群から
の平均値であった。これらの初期研究の結果により、10μg又は1.0μgの用量の脱脂されたSIVmac251は、予め初回刺激されたBALB/cマウスにおいてSIV特異的体液性応答の顕著な増強を招くことを示した。0.1μg(5×106個のウイルス粒子)の用量でさえも、これらのマウスにおいて、SIV特異的体液性応答の検出可能な増強を招いた。1.0μgの用量は、予め初回刺激されたBALB/cマウスにおけるIFN−g合成により測定されるように、際立って広範囲の幅のSIV env及びSIV gagペプチド特異的CD4+T細胞応答を招いたが、10μgの用量はそれらを招かなかった。
【実施例4】
【0174】
HIV−1の直接的な脱脂、及び炭カラムによる溶媒の除去及びHIVタンパク質の保持
1,000×HIV−1 IIIB約25μlを、1)無し、2)ブタノール/DIPE(25:75)12.5μl、3)100%DIPE 2.5μl又は4)PBS中1%DIPE 12.5μlと混合して、試料を15秒間ボルテックスした。炭カラム(0.5ml)は、Whatmanのフィルターフリットを含有する3mlのBD LuerLockのシリンジに、PBSで洗浄したHemasorbaの炭2mlを装填することにより生成した。カラムを5%グルコース/PBS(5〜10倍カラム容量)で洗浄した。カラムを5%グルコース/PBS中で30分間インキュベートした。このカラムを使用して、処置した血漿から溶媒を除去した。ウイルス溶媒混合物を個別のカラム上へ装填した。カラムを1mlのPBSで押し流した。溶出容量を測定して、試料をELISAによりp24タンパク質に関してアッセイし、ウェスタンブロット法に付した。
【0175】
1%DIPEで処置した試料は、対照と比較して、優れたp24回収を示した。10%DIPE又はブタノール/DIPEで処置した試料は、わずかに劣るp24回収を示した。総タンパク質回収は、対照に対する割合に関して、1%DIPE、10%DIPE又はブタノール/DIPEで得られるp24の結果に類似していた。
【0176】
この実施例で以下に提供するプロトコルに類似した様式で実施されるウェスタンブロット分析は、ブタノール/DIPE、10%DIPE又は1%DIPE溶媒処置を用いた場合に、抗HIV IgGでプローブした際に無数の免疫反応性バンドを明らかにした。ウェスタンブロット分析はまた、ブタノール/DIPE、10%DIPE又は1%DIPEを用いた場合に、p24に相当する陽性免疫反応性バンドも明らかにした。陽性免疫反応性バンドは、10%DIPE又は1%DIPEを用いて、gp41に関して観察された。さらなる陽性免疫反応性バンドは、ブタノール/DIPE、10%DIPE又は1%DIPEを用いた場合にgp120に関して観察されたが、染色の強度は、10%DIPE又は1%DIPEを用いた場合のほうが高かった。
【0177】
SIV及びHIVウェスタンブロット分析
比較用の試薬は、脱脂されたSIVmac251、熱失活SIVmac251及び全SIVに対するウサギポリクローナル抗体(the AIDS reagent repository, Rockville, MDから入手可能)を含んでいた。ウェスタンブロットにおいてSIVバンドの大部分を可視化させるには、タンパク質約1μgが必要とされた。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)をウイルス溶解物に関して実施した(溶解物緩衝液:50mMトリス−HCl(pH7.4)、1%NP−40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EGTA、1mM PMSF、アプロチニン、ロイペプチン及びペプスタチンそれぞれ1μg/ml、1mM バナジン酸ナトリウム、1mM NaF)。
【0178】
銀染色を用いて、分子量標準物質に対して脱脂後に存在する様々なウイルスタンパク質を明らかにするバンドを可視化させた。熱失活SIVmac251タンパク質を、ゲル上
で脱脂されたSIVmac251タンパク質と比較した。同様のSDS−PAGEを実施して、タンパク質をニトロセルロースに転写する。ブロットされたニトロセルロースを水で二度洗浄した。脱脂されたSIVmac251及び熱失活SIVmac251に関する最低それぞれ3つのブロットを行った。
【0179】
ブロットされたニトロセルロースを、3%脱脂粉乳(MLK)を含む調製したばかりのPBS中で20〜25℃で20分間、一定攪拌しながらブロックした。ニトロセルロースストリップを、調製したばかりの既定最適濃度のウサギポリクローナル抗SIV抗血清(PBS−MLK中で1:1,000希釈の抗血清約5ml)とともに、攪拌しながら一晩インキュベートした。ニトロセルロースストリップを水で二度洗浄した。ストリップを、PBS−MLK中のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HPR)結合ヤギ抗ウサギIgG1:300希釈とともに、室温で90分間、攪拌しながらインキュベートした。ニトロセルロースを水で二度、続いてPBS−0.05%ツイーン20で3〜5分間洗浄した。ニトロセルロースストリップを、水を4〜5回変えながら洗浄した。展開したバンドの検出は、展開したバンドの検出により達成した。熱失活SIVを用いた場合の展開したバンドを、脱脂されたSIVを用いた場合のバンドと比較した。
【0180】
炭カラムに通し、且つp24、gp41、gp120に関してプローブした溶媒処置HIV−1のウェスタンブロット分析に対して、及びさらにはヒト抗HIV IgGを用いたHIV抗原に関して同様のアプローチが使用された。ウェスタンブロット法は、ニトロセルロース膜上へ転写されたSDS−PAGE分離ウイルス試料に関して実施した。膜は、ウイルスタンパク質に対するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を用いてプローブし、ペルオキシダーゼと結合させた二次抗体で展開して、化学発光試薬を増強した。
【実施例5】
【0181】
ワクチンとして使用するための改変SARSウイルス粒子の開発
A.SARSウイルスに関する溶媒処置方法の最適化
ウイルスの種ウイルス生産。SARSウイルスストック(検体番号809940株200300592)は、疾病対策センター(CDC)から得られた。ウイルスは、Vero
E6細胞(ATCC CRL 1586)において成長させる。ウイルス試料を解凍して、0.1mlをピペットで、増殖培地(10%ウシ胎児血清を有するアール平衡塩類溶液中の90%イーグル最小必須培地)約2mlを含有するVero E6細胞の5つの試験管それぞれに接種する。ウイルス試料の残りは、−80℃で保管する。各管中の細胞シートの75〜100%が細胞変性効果(CPE)を示したら、細胞を、凍結すること及び掻爬することにより回収して、1ml分取量でプールして、−80℃で凍結させた。ウイルスは、TCID50法によりVero E6細胞の試験管中で滴定する(ウイルスの連続1:10希釈を四重で)。
【0182】
ウイルスの溶媒処置。SARSウイルスは、本明細書中に記載するようにSIV、DHBV及びBVDVに関して使用される様々な方法により溶媒処置して、最大エンベロープタンパク質回収及び最小残存感染力のための過程を最適化する。SARSウイルス溶媒処置に関して探索されるパラメータは、溶媒のタイプ又は組合せ、溶媒比、溶媒対ウイルス比、処置時間、処置温度、混合方法及び溶媒除去過程である。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中のSARSウイルスストック調製物を、約2,000〜10,000ppmをもたらすDIPEと組み合わせて、転倒型回転により20〜60分間混合した後、1,000×gで2分間遠心分離した。残留溶媒は、真空蒸発又は活性炭への吸着のいずれかにより除去される。さらに、DIPE及びn−ブタノールの組合せを、総溶媒濃度約200〜40,000ppmをもたらす60:40〜95:5(vol/vol)の比で試験して、転倒させて20〜60分間混合した後、1,000×gで2分間遠心分離した。残留溶媒は、活性炭への吸着により除去される。
【0183】
上述の様々な処置方法からの試料すべては、ウェスタンブロットを含むPAGEにより特性化されて、ウイルスタンパク質及び総タンパク質の存在を決定する。特異的ウイルス抗原及びタンパク質の定量化は、ELISAのような免疫特異的アッセイにより評価される。感染力は、Vero E6細胞変性アッセイを用いて評価される(Reed and Muench; Am. J. Hygiene 1938; 27: 493-497)。回収された最大標的ウイルスタンパク質、マウスにおける感染力及び免疫原性の最大の低減に基づいて、溶媒処置の最も有効的な方法に関して選択が行われる。
【0184】
B.既知のウイルス失活剤に基づくSARSに関する化学的処置方法の最適化
本発明の方法が、ワクチンとしては不十分なレベルに感染力を低減する状況では、溶媒処置したウイルスの化学的失活が必要とされ得る。化学的失活は、感染力が6log減少する場合に、成功したとみなされる。
【0185】
方法。光活性化架橋試薬ソラレンが使用される。ソラレン三環式平面環構造は、一重鎖RNAへインターカレートし、光活性化される。NHS−ソラレン(Pierce Biochemicals, Rockford IL)をDMSOに溶解した後、水性反応混合物へ添加する。NHSエステルは、pH7〜9で第一アミンに架橋する。溶媒処置したウイルス溶液と、0.1Mリン酸ナトリウム、0.15M NaCl(pH7.2)中のNHS−ソラレン(150mM)を混合する。光反応性カップリングは、350nmを上回る光に30分間、又は3ジュール/cm2に露光させることにより達成される。
【0186】
Vero E6細胞における細胞変性終点(CPE)は通常、接種後5日目に確認される。それは、細胞剥離が続く罹患細胞における細胞の丸み及び屈折性を伴う外観に焦点を当てる。CPEは、迅速に拡がって、24〜48時間以内に全細胞単層を包含する。したがって、細胞完全性が破壊されると、それはウイルスが感染していることを示す。
【0187】
C.未処置のウイルスタンパク質構造及び処置後のウイルスエンベロープ変化の評価
ウイルスタンパク質に対する溶媒処置の影響を評価するために、ウイルス試料を、ウェスタンブロットを含む未変性PAGEにより特性化して、未処置のウイルスタンパク質の存在を決定する。総可溶性タンパク質をSDS PAGEを用いて測定する。溶媒処置の最も有効的な方法は、回収された最大標的ウイルスタンパク質及び感染力の最大の低減に基づいて選択される。二重抗体サンドイッチELISAを用いて、SARS抗体を検出する(Current Protocols in Immunology, Vol1, supp. 8, 1991, John E Coligan, et al. eds.; Richard Coico, series ed., publisher: Current Protocols, John Wiley and Sons)。ポリクローナル抗SARS抗体をビオチン化して、SARSウイルス抗原を、SARSウイルスストックから生産する。
【0188】
ネイティブゲル電気泳動。ネイティブゲル電気泳動は、ポリアクリルアミドゲル中で室温にて実施され、タンパク質は、銀染色で可視化されるか、あるいは標識ヤギ抗マウス抗体による検出のためにニトロセルロースへ転写される(ウェスタンブロット)。溶媒処置前及び後のSARSウイルスの試料は、標準物質としてSARSウイルスタンパク質のプールを用いて分析される。
【0189】
ウェスタンブロット。ゲル上のタンパク質をニトロセルロース膜へ転写する。高分子量タンパク質に関しては、転写時間は、少なくとも90分である。BSA及び乳でブロックした後、ニトロセルロースを、SARSウイルススパイク及び膜タンパク質に対するポリクローナル抗体とともにインキュベートする。マウス抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体で可視化される。市販のSARSウイルスポリクローナル抗体を購入する。代替としては、抗体は、以下に簡単に記載する方法により離乳したB
ALB/cマウスにおいて生産される。
【0190】
マウス抗SARS抗体の生産。SARSポリクローナル抗体が市販されていない場合、マウスに、ショ糖密度勾配遠心分離により精製した濃縮ソラレン処置ウイルスストック調製物を注射する。失活は、Vero E6細胞で確認される。22匹の離乳BALB/マウスを、それぞれ8匹のマウスを有する2つの群に分けて、残りの6匹のマウスを対照とする。それぞれ8匹のマウスを有する2つの群に、MPL(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノマイコレート、RiBiアジュバント系、Corixa Corp. Hamilton, MT)と混合した10μg(低)又は50μg(高)用量のウイルスプレップを皮下(sc)接種する。6匹の対照マウスには、アジュバントと混合した等量の細胞培地を接種する。接種を、2週目及び4週目に繰り返す。6週目に、マウスに麻酔をかけて、眼窩後出血+心臓内穿刺により血液を抜く。各群からの血清をプールして、中和抗体に関して滴定する。
【0191】
SARSウイルススパイク及び膜タンパク質がそれらの自然立体構造で存在する場合、マウスにおいてこれらの無傷タンパク質に対して産生される抗体は、ウェスタンブロットで認識される。銀染色したゲルは、タンパク質がこの方法によりもはや検出され得ないように溶媒処置がタンパク質を変性させる点に至るまで、ウイルスタンパク質の保持を示すと予測される。
【0192】
さらなる方法及び代替的方法。さらなる方法を用いて、ウェスタンブロットからの結果を確認する。電子顕微鏡法を用いて、ウイルス構造の完全性を評価し、溶媒処置前及び前の変化を比較する(Graham DR, et al., (2003) J Virol. 77(15): 8237-8248)。ウイルスは、BSL−3設備から取り出される前に、グルタルアルデヒドで不活化される。
【実施例6】
【0193】
溶媒及び化学的に処置したSARS粒子の、マウスにおいて免疫応答を生じる能力
低度〜高度の脂質除去を生じる様々な濃度の溶媒、混合時間及びエネルギー並びに溶媒の組合せを用いた溶媒処置方法からのウイルス調製物を動物にワクチン接種する。ワクチン接種した動物における各方法からの結果の比較を使用して、どのウイルスプレップが最良の免疫学的応答を付与するかを決定する。ワクチンとして有用であるためには、溶媒処置したSARSウイルスは、抗体生産により分かるように、ともに抗原性でなくてはならず、サイトカイン生産の増加を引き起こさなければならない。
【0194】
A.抗体生産のための、及び中和抗体の誘発に関して試験するための、溶媒及び化学的に処置したSARSウイルス粒子のマウスへの注射
予め初回刺激したBalb/cマウスを使用して、Ansari A.他により記載される方法(J. Virology 76(4): 1731-1743, 2002)を用いて、これらのマウスにおいて容易に認識可能なウイルス特異的体液性又は細胞性免疫応答を招く溶媒処置SARSウイルスの最小用量を決定する。20匹の成体雌Balb/cマウスそれぞれに、等容量のアジュバントに組み込まれた化学的に失活させたSARSウイルスタンパク質25μgを皮下注射する。4匹のマウスは、対照非免疫化マウスとして利用する(群1)。
【0195】
十分なSARSウイルスを実施例5に記載する方法に従って処置し、その結果、スケジュール1回につきこれらのマウスを追加免疫するのに必要とされる量が得られる。初めの初回刺激の14日後、1群当たり4匹のマウスを有する5つの群を以下のように処置する:群2−−生理食塩水0.5ml、群3−−溶媒処置ウイルス10μgを含有する生理食塩水0.5ml、群4−−溶媒処置したウイルス1μgを含有する生理食塩水0.5ml、群5−−溶媒処置したウイルス0.1μgを含有する生理食塩水0.5ml、群6:溶媒処置したウイルス0.01μgを含有する生理食塩水0.5ml。追加免疫の4日後、
すべてのマウスに麻酔をかけて、眼窩後穿刺により血液を回収する。回収した血液から血清が得られる。脾臓細胞調製用に、各試験マウスから脾臓を回収する(以下を参照)。これらのマウスから回収した血清及び脾臓細胞は、この実施例で以下に記載するような分析に関する基礎として使用する。
【0196】
B.Vero E6細胞の細胞変性アッセイを用いた血清におけるマウス中和抗体の生産に関する試験
処置したウイルス調製物が、SARSウイルス中和抗体を産生することが可能であるかどうかを決定するために、マウス免疫化から回収された血清試料を試験して、それらが、細胞溶解からVero E6細胞を保護することが可能であるかどうかを評価する。
【0197】
ビリオンの精製。簡潔に述べると、ウイルスは、25〜50%ショ糖密度勾配での2回連続した超遠心分離により、清澄化した細胞培養上清から単離される。ウイルス含有画分は、254及び280nmでのUV吸収により同定される。ピークのUV吸収画分をプールして、TNE緩衝液(0.01Mトリス−HCl[pH7.2]、0.1M NaCl及び1mM EDTA)によりショ糖20%以下にまで希釈し、ペレットへと超遠心分離して、TNE緩衝液中に再懸濁させる。試料は、−80℃で保管する。処置されたウイルスは、適切なインキュベーション条件下で、適切な作用物質の存在下で、指示された濃度のキャプシドタンパク質でウイルスをインキュベートすることにより調製される。続いて、ウイルスは、4℃で100,000×gにて1時間、遠心分離することにより、20%ショ糖パッドを介して再精製される。
【0198】
ウイルス中和アッセイ。CDCから得られるSARSウイルスストックを、37℃で7日間、集密したばかりのVero E6細胞の試験管中で四重で滴定して、CPEの外観に基づいてTCID50/0.1mlを得る。失活マウス抗SARS抗血清を、血清無しの細胞培地を用いて1:10に連続希釈する。等容量の希釈した特異的抗血清を100TCID50のSARSウイルスストックと混合して、1時間インキュベートする。Vero E6細胞の二重管に各ウイルス抗血清希釈混合物0.2mlを接種して、7日間インキュベートする。この滴定を、各中和アッセイで繰り返す。CPEの外観に基づいて少なくとも100TCID50のウイルスを中和する抗血清の希釈は、1抗体単位を表す。さらなる中和アッセイでは、SARSとして確認されるべきウイルスの連続1:10希釈及び20個の抗体単位の特異的免疫血清を等容量で使用する。
【0199】
感染力アッセイ。SARSウイルスの溶媒処置した試料それぞれを、Vero E6細胞の2個又は4個の管に接種して、少なくとも7日間インキュベートして、CPENの存在を検出する。非溶媒処置SARSウイルスストックを対照として上述のように接種する。ウイルス力価は、TCID50により算出される。SARSウイルスは、24〜48時間のうちに、細胞に丸みを帯びさせ、屈折性となるようにさせ、且つ細胞を剥離させると予測される。中和抗体が存在する場合、細胞は無傷のままである。試験血清における中和抗体は、細胞を100TCID50のウイルスから保護すべきである。Vero細胞タンパク質に対するマウス抗体が生産される場合、Vero E6細胞を始めとする偽ウイルス調製物を注射したマウスからの血清を対照として使用する。必要である場合、抗Vero細胞抗体は、アフィニティ精製によりマウス血清から除去される。
【0200】
C.溶媒処置したSARSウイルス粒子によるワクチン接種に関するマウス細胞性応答の評価
サイトカインは、免疫応答を編成するのに重要である。細胞性応答は、他のコロナウイルスワクチンを用いた場合に見られる一過性の免疫性の問題に対処するのに大いに関連する。マウス細胞性免疫応答の指標として、この実施例で上述する方法からのワクチン接種したマウスにおいてレトロウイルスに使用したように、サイトカインγインターフェロン
及びインターロイキン(例えば、IL−2)が測定される。
【0201】
脾臓細胞の回収及び細胞内サイトカイン染色分析。脾臓細胞は、無菌的に回収して、細いゲージ針に押し込めることにより、単一細胞懸濁液を作製する。細胞計数が実施される。細胞をRPMI 1640完全培地(RPMI 1640+100U/mlのペニシリン+100μg/mlのストレプトマイシン+2mM L−グルタミン+10%のウシ胎児血清の選択ロット)中に100万個の細胞/mlで再懸濁させる。細胞懸濁液(100,000個の細胞)を96ウェルプレートのウェルに分配する。培地を三連のウェルに添加して(陰性対照)、ホルボールミリスチン酸酢酸(PMA 50ng/ml)+イオノマイシン(1μg/ml)を3つのさらなるウェルに添加する(陽性対照)。続いて、ウイルス構造遺伝子に関するある特定のSARSコード配列(E、M及びSタンパク質配列)を網羅するための重複ペプチドのSARSプール(格子として調整)を適切なウェルに添加する。培地カクテルを添加して、一晩インキュベートする。ブレフェルジンA溶液の添加に適切である場合、FACS洗浄液中のPerCP標識したCD4及びFITC標識したCD8の抗体カクテルを添加し、インキュベートし、除去して、洗浄する。各ウェルの内容物をFACSチューブに移した後、perm/fixを添加する。Perm Washで洗浄した後、フィコエリトリン(PE)抗ヒトIFN−γを添加する。インキュベーションを繰り返し、洗浄して、洗浄溶液を除去する。新鮮な1%パラホルムアルデヒドを添加して、分析する準備が整うまで、試料を暗所で冷蔵する。試料すべてに関するデータを収集して、培地対照及びPMA+イノマイシンを用いた場合に得られるシグナルに基づいて、閾値が引き出される。約100,000回の事象からのデータが収集される。重複ペプチドに対して陽性インターフェロンγ応答又はインターロイキン応答を誘導するペプチドが同定される。サイトカイン陽性細胞の存在により、溶媒処置したSARSウイルスは、細胞性免疫応答を誘発するのに有効であることが示される。
【実施例7】
【0202】
マウスに投与されると、低減された感染力を示し、且つCD4+及びCD8+T細胞免疫応答を誘発する脱脂されたSIVウイルス
本発明に従って脱脂されたSIVを用いたプライム・ブースト免疫化戦略は、アルドリチオール−2(AT−2)処置又は生ウイルスよりも、マウスにおいてより広範囲のCD4+及びCD8+T細胞応答(インターフェロンγ生産)を誘発する。より具体的には、本発明は、脱脂されていないウイルス粒子と比較した場合に、より広範囲の一連の抗原に対する改善された免疫応答を引きこす。本発明は具体的には、脱脂されていないウイルス粒子と比較した場合に、より広範囲の抗原(例えば、最低5%以上の抗原の範囲)に対して増加された免疫応答を有する改変されたウイルス粒子を包含する。
【0203】
この実施例では、SIVmac251の脱脂は、主要SIVタンパク質(env、gag、pol、tat)を保持しながら、ウイルス感染力を低減した。研究は、皮下的に(sc)AT−2処置したウイルス+アジュバントで免疫化し、AT−2処置ウイルス、生ウイルス又は脱脂ウイルスのいずれかで追加免疫したBalb/cマウスで行った。投与経路及び初回刺激と追加免疫との間の間隔及び用量レベルを評価した。脾臓細胞を回収して、env及びgagに関する完全SIVアミノ酸配列を網羅する重複SIV env及びgagペプチドの個々のプールとともに培養した。脾臓細胞の、(インターフェロン)IFN−γを合成する能力を、標準的な細胞内サイトカイン染色(ICC)及びフローサイトメトリーにより測定した。脱脂は、1%DIPEを用いて行った。
【0204】
材料及び方法:SIVmac251抗原処置
AT−2不活化:第一次免疫化並びに追加免疫対照の目的で、ショ糖によりバンド採取された(banded)SIVmac251の分取を、これまでに記載されるようにAT−2での処置により失活させた(Rossio et al., J. Viorl. 72:7992, 1998)。簡潔に述べると、A
T−2(Aldrich, Milwaukee, WI)の100mM ストック溶液を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で新たに調製した。続いて、AT−2を最終濃度300μMでウイルスに直接添加して、37℃で1時間インキュベートした後、ウイルスを分取して、免疫化用に使用するまで、それを−70℃で保管した。
【0205】
DIPE溶媒処置:200μg分取量のショ糖精製されたSIVmac251総タンパク質をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で希釈して、エッペンドルフ微量遠心チューブ中で総用量が1mLになるように、様々な量のジイソプロピルエーテル(DIPE)(VWR, West Chester, PA)を添加して、様々なDIPE濃度を達成した。ウイルス抗原調製物の溶媒処置は、室温で20分間行った。試料をチューブの底部へ回収するための短時間の遠心分離後、溶媒をSeedvacエバポレータ(Savant)において室温で90分間、蒸発させた。この手順の最後に、注射等級の水を用いて、容量を1mlへ再構成させた。溶媒処置した試料25μLを、蒸留水75μLで希釈して、ガスクロマトグラフィ分析に付して、溶媒の除去を確認した。免疫化に使用される任意の試料中の残留DIPE溶媒の許容限界は、25ppm以下であった。続いて、各試料をブースター免疫化用に適切な量で分取して、−70℃で保管した。
【0206】
ウイルスタンパク質回収及び感染力アッセイ
SIVmac251の溶媒処置の影響を、BCA(Pierce, Rockford, IL)及びLowryアッセイ(Biorad, Hercules, CA)、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、続く銀染色を用いた総タンパク質分析により、及びSIV反応性サル血清のプールを用いたウェスタンブロット分析により確認した。さらに、SIVgag p27回収は、EIA(Coulter Immunotech, Hialeh, FL)により試験し、ウイルスRNAは、実時間増幅(Amara et al., Science 92: 69, 2001)により試験した。残存ウイルス感染力は、CEMx174細胞における標準的な滴定及び個々のウェルの上清液体におけるp27生産のモニタリングにより、処置された分取量それぞれで評価した。感染力価は、Spearman−Karber法に従って算出した。
【0207】
等密度勾配遠心分離
ウイルス密度プロファイルは、ウイルスを等密度勾配遠心分離に付すことにより評価した。簡潔に述べると、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中20%〜60%のショ糖それぞれ1.3mlを、ショ糖濃度を8%ずつ増加させながら重ねた。底部での60%ショ糖から最上部での20%ショ糖まで、6つのショ糖濃度を層にした。PBS 750μl中のウイルス試料(20%ショ糖クッションを介してペレット化した後に調製)を、20%ショ糖の上に慎重に重ねた。チューブすべてを、Beckman L8超遠心機用の80Tiローター中で、40,000rpmで、4℃にて16時間回転させた。最上部からはじまって、チューブ1つ当たり525μlの17個の画分が回収された。ウイルス濃度は、市販のSIV Gag p27 ELISAキット(Coulter, CA)を用いて分析した。
【0208】
高速液体クロマトグラフィ(FPLC)ウイルス分析
脱脂されたウイルスは、Pharmacia FPLCシステムにおいてFPLCによりさらに分析した。ウイルス試料(200μl)をSuperose6 HR 10/30(Pharmacia, Sweden)カラムに注入した。それぞれ500μlを有する60個の画分を、Ca及びMg無しのPBS中で、流速0.4ml/分で回収した。画分中のSIVの存在は、p27 ELISA(Coulter, CA)により検出された。ウイルス画分中のコレステロールの量は、Amplex Red総コレステロールアッセイにより、製造業者の指示書(Molecular Probes, OR)に従って分析した。
【0209】
マウスの免疫化
4〜6匹の10週齢の雌Balb/Cマウスに、フロイント不完全アジュバント(IF
A)中で乳化され、且つ皮下(sc)投与される、ショ糖によりバンド採取したAT−2失活SIVmac251(ABI, Columbia, MD)10μgによる第一次免疫化を施した。対照の目的で、数匹のマウスは、IFAのみで初回刺激した。続いて、6匹の動物を有する群に、2週間後に、非処置SIVmac251に対する処置SIVmac251の可変用量を用いて、静脈内でブースター免疫化を施した。次に、追加免疫の4日後に、動物を屠殺して、血液及び脾細胞を回収して、以下に記載する免疫分析を実施した。
【0210】
細胞媒介性応答の細胞内IFN−γ応答評価
これらの分析は、5μg/mlのブレフェルジンA並びにそれぞれ1μg/mlの抗マウスCD28及びCD49dモノクローナル抗体の存在下での短期間の抗原特異的再刺激後の細胞内サイトカイン(ICC)分析、続くIFN−γ生産CD4+及びCD8+T細胞の頻度の評価を用いて実施した。標準的なプロトコルは、完全SIVgag(16個のペプチドプール、12個の残基が重複している20量体)及びSIV env(17個のペプチドプール、13個の残基が重複している25量体)を包含するペプチドのプール(それぞれ2μg/mlの個々のペプチドを含有する)(プールはそれぞれ、7〜9個のペプチドを含有する)による1×106個の脾細胞の12時間の再刺激から構成された。陽性対照試料は、分裂促進因子PMA/イノマイシン及びPHAで刺激した脾細胞から構成され、陰性対照は、ペプチド刺激無しであり、オボアルブミン特異的ペプチドSYNFEKL(配列番号136)による刺激である。培養を2時間行った後、サイトカインの排出を防止して、その細胞内蓄積を促進するように設計されたブレフェルジンAを添加した。続いて、再刺激した脾細胞をCD4+、CD8+及び細胞内IFN−γに関して染色した。INF−γ陽性CD4+及びCD8+T細胞の頻度の評価は、FACS Calibur(Beckton Dickinson, Mountain View, CA)を用いて、約200,000事象/試料を計数することにより分析した。
【0211】
血清学
SIV EIA:血清試料は、日常的なEIA及びウェスタンブロット分析を用いて、ウイルスエピトープに対する抗体に関して滴定した。簡潔に述べると、ポリ−L−リシン(PBS 1ml当たり10μg)でコーティングしたELISAマイクロプレートに、精製SIVmac251 2μg/ウェルを、標準的な重炭酸塩コーティング緩衝液(pH9.6)中で4℃にて一晩吸着させた。PBS/ツイーン20で3回洗浄した後、プレートを、2%脱脂粉乳を含有するPBSを用いて室温で1時間ブロックした。続いて、順次2倍血清希釈液をプレート並びに二連の陽性及び陰性対照試料へ添加して、37℃で2時間インキュベートした。未結合の抗体を洗浄した後、プレートをアルカリホスファターゼ−抗マウスIgG結合体(Southern Biotech, Birmingham, AL)とともに37℃で1時間インキュベートした後、p−ニトロフェニルホスフェート(BioRad)を用いて室温で展開した。ELISAリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて、450nm波長で、プレートを読取った。
【0212】
SIVウェスタンブロット:ウェスタンブロット分析に関しては、市販のSIVウェスタンブロットキット(Zeptometrix, Buffalo, NY)を、製造業者の指示書に従って、1:100希釈したマウス血清に対して利用して、展開させた。
【0213】
結果
ウイルスの脱脂は、ウイルスタンパク質の損失無しでコレステロールの除去をもたらす
本発明者等の以前の最適化手順は、DIPE処置がウイルスタンパク質の著しい損失無しでHIVを効果的に脱脂するという見解につながった(データは示さず)。本発明者等は、これらの見解を拡張させて、この方法がSIV−mac251を脱脂することができるかどうかを評価した。SIV−mac251は、総タンパク質又はウイルスタンパク質(p27)に著しく影響を及ぼすことなく、DIPEを用いて脱脂された。総ウイルスタ
ンパク質及びウイルスgag p27の回収は、生SIVと比較した場合とは、有意に異ならなかった。これらの見解は、SIVの銀染色及びウェスタンブロット分析により確認された。脱脂されたウイルスは、感染力において再現性のある2logの減少を示した(図7)。本発明者等の方法を用いてウイルスからコレステロールを除去することにより、ウイルスRNA又はウイルスタンパク質を損失することなく、HIV−1におけるコレステロールのβ−CD除去(Nguyan et al., J. Immunol. 168:4121, 2000; Graham et al.,
J. Virol. 77:8237, 2003)に類似した様式で感染力を減少させる。処置したウイルスの物理特性に対して脂質の損失をさらに特性化するために、本発明者等は、高速液体クロマトグラフィ(FPLC)によりウイルス粒子プロファイルを評価した(図5)。対照及びアルドリチオール−2(AT−2)処置したウイルスのFPLCプロファイルは類似していた(データは示さず)。しかしながら、DIPE処置したビリオンは、生対照ビリオンと比較して、それらの構造プロファイルを変化させた。本発明者等の脱脂手順がコレステロールの除去を導くかどうかを評価するために、本発明者等は、FPLC分離後にAmplex Redアッセイを用いて、コレステロールに関して処置したウイルスを分析した。DIPE処置したウイルスは、コレステロール/gag p27タンパク質比として表す場合に、対照ウイルスよりもおよそ80%少ないコレステロールを有した。ウイルスはさらに、等密度勾配遠心分離により分析して、粒子密度を評価した。脱脂は、ビリオンの浮力を変化させて、ウイルス粒子の密度範囲のシフトをもたらした(図4)。
【0214】
脱脂されたウイルスは、追加免疫中に、より幅広い細胞媒介性免疫応答を誘発することが可能である
脱脂されたウイルスが、細胞媒介性免疫応答を追加免疫する際に免疫原性を高めたかどうかを評価するために、本発明者等は、対照及び脱脂されたウイルスにより、AT−2失活させたSIVで初回刺激したマウスを追加免疫した(Rossio et al., J. Virol. 72: 7992, 1998; Arthur et al., AIDS Res. Human Retroviruses 14: Suppl. 3. S311, 1998)。2週間後に、免疫化したマウス群(1群当たり6匹のマウス)を生SIV、AT−2失活させたSIV又はDIPEで脱脂されたSIVのいずれかの総ウイルスタンパク質1μgで追加免疫した。T細胞応答をSIV Gag及びSIV gp120エンベロープ重複ペプチドプールを用いて評価して、応答細胞は、細胞内インターフェロン−γ(IFN−γ)フローサイトメトリー(ICC)により検出した。DIPE脱脂されたウイルスブースターは、対照又はAT−2群と比較して、より幅広いCD4+及びCD8+応答を誘発した(図8A及び図8B)。特異的IFN−γペプチドはまた、ペプチドプール格子から決定され、ペプチドプールを分析する場合に見られるパターンと類似のパターンを生じた。DIPE処置したSIVはまた、他の群と比較して、新たなペプチドプール認識パターンを誘発した(表9)。データは、envペプチドプールに対するCD4+応答に関して特に顕著であった。DIPE群は、生SIVで追加免疫した群と(p=0.006)、及びAT−2処置したSIVで追加免疫した群と(p=0.0001)と比較して、統計学的に有意な応答の増加を有した。同様の動向が、CD8+ envペプチドプール応答に関してDIPE処置したSIVで観察された(生群に対してp=0.001、及びAT−2群に対してp=0.02)。CD4+ gag応答も同様に、有意に増加された(AT−2群に対してp=0.03)。DIPE処置したSIVで追加免疫した群はまた、他の2つの群よりも多くのIFN−γ陽性細胞を有した。抗原投与量試験により、驚くべきほど低用量であるDIPEで脱脂されたウイルス1μg(これは、SIV p27およそ200ngに相当する)が、gag及びenvの両方に対して幅広いCD4+及びCD8+免疫応答を誘発するのに十分であることが示された。env及びgagペプチドプールに対する幅広いCD4+及びCD8+応答が、AT−2処置したウイルス又は生ウイルス追加免疫と比較した場合に、脱脂されたウイルスで追加免疫したマウスで観察された(p>0.001)。
【0215】
主にCD4+T細胞応答は、アジュバント無しでIV投与された脱脂されたウイルスの
0.05μg程度と低い抗原用量で観察されたのに対して、AT−2又は生SIVタンパク質にはより高い用量が必要であった。予備抗体応答は、脱脂されたウイルスが、同様に抗体応答を刺激していることを示す。これらの見解は、非常に低い追加免疫濃度の本発明の方法で脱脂されたウイルスにより誘発される幅広い一連のSIV抗原に対するCD4+及びCD8+細胞性応答を示す。
【0216】
以下の数段落では、応答は操作上、インターフェロンガンマに対して陽性であるCD4+細胞の割合に関して、SIV envペプチドに対するCD4細胞性応答として定義される。応答を誘発するペプチドプール、及び幾つかの範囲の応答(インターフェロンガンマに対して陽性であるCD4+細胞の割合)が示される。
【0217】
SIV envペプチドに対するCD4細胞性応答は、生ウイルス5μgで処置したマウスにおいて顕著ではなかった。様々な量の1%DIPEで脱脂されたウイルスの投与後に、SIV envペプチドに対するCD4細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、応答は、3個のenvペプチドプール5(0.13〜0.22%)、6(−0.3〜0.13%)及び13(0.13〜0.22%)から誘発された。用量1.0μgでは、幅広い応答が、数個を上回るenvペプチドプール(3、4、5(0.06〜0.23%)、8、11、12(0.19〜0.45%)、13(0.13〜0.39%)、14(0.13〜0.34%)、15(−0.03〜0.24%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、envペプチドプール5(0.17〜0.23%)で観察された。
【0218】
様々な量のAT−2処置したウイルスで追加免疫するためのSIV envペプチドに対するCD4細胞性応答は、制限された応答を示した。用量0.05μgでは、応答は、1個のenvペプチドプール(10(0.17〜0.25%))から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、約1個のenvペプチドプール(10(0.08〜0.22%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、CD4細胞性応答は、顕著でなかった。
【0219】
様々な量の生SIVウイルスで追加免疫するためのSIV envペプチドに対するCD4細胞性応答は、用量0.05μgで、プール1(−0.05〜0.23%)、8(0.13〜0.21%)、12(0.11〜0.21%)及び14(−0.03〜0.25%)から応答を示した。用量1.0μgでは、応答は、3個のenvペプチドプール(8(0.22〜0.36%)、12(0.12〜0.58%)及び13(−0.09〜0.33%)))から誘発された。より高い用量の5μgでは、CD4細胞性応答は、顕著でなかった。
【0220】
以下の数段落では、応答は操作上、インターフェロンガンマに対して陽性であるCD8+細胞の割合に関して、SIV envペプチドに対するCD8+細胞性応答として定義される。応答を誘発するペプチドプール、及び幾つかの範囲の応答(インターフェロンガンマに対して陽性であるCD8+細胞の割合)が示される。
【0221】
様々な量の1%DIPEで脱脂されたウイルスの投与後に、SIV envペプチドに対するCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、応答は、2個のenvペプチドプール5(0.22〜1.22%)及び13(0.43〜0.92%)から誘発された。用量1.0μgでは、幅広い応答が、数個のenvペプチドプール(2(0.18〜0.34%)、3(−0.06〜0.35%)、4(−0.03〜0.15%)、5(0.06〜0.25%)、9(0.24〜0.41%)、10(0.34〜0.87%)、11(0.22〜0.71%)、12(0.19%〜0.53%)、13(0.11〜0.35%)、14(0.19〜0.32%)、15(0.98〜1.35%)及び16(0.11〜0.31%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、en
vペプチドプール13(0.27〜0.41%)、14(0.28〜0.48%)及び15(0.31〜0.35%)で観察された。
【0222】
様々な量のAT−2処置したウイルスの投与後に、SIV envペプチドに対する制限されたCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD8細胞性応答は、envペプチドプール16(0.08〜0.45%)から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、envペプチドプール7(0.18〜0.33%)及び16(0.29〜0.88%)から誘発された。より高い用量の5μgでは、CD8細胞性応答は、顕著でなかった。
【0223】
様々な量の生SIVの投与後に、SIV envペプチドに対する制限されたCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD8細胞性応答は、ペプチドプール1(−0.05〜0.23%)、8(0.13〜0.2%)、12(0.11〜0.21%)及び14(−0.03〜0.25%)から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、ペプチドプール8(0.22〜0.36%)、12(0.12〜0.58%)及び13(−0.02〜0.33%)から誘発された。より高い用量の5μgでは、CD8細胞性応答は、顕著でなかった。
【0224】
以下の数段落では、応答は操作上、インターフェロンガンマに対して陽性であるCD4+細胞の割合に関して、SIV gagペプチドに対するCD4細胞性応答として定義される。応答を誘発するペプチドプール、及び幾つかの範囲の応答(インターフェロンガンマに対して陽性であるCD4+細胞の割合)が示される。
【0225】
様々な量の1%DIPEで脱脂されたウイルスの投与後に、SIV gagペプチドに対するCD4細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、応答は、gagペプチドプール5(0.22〜1.22%)及び13(0.43〜0.92%)から誘発された。用量1.0μgでは、幅広い応答が、約5個のgagペプチドプール(3(0.19〜0.72%)、5(0.15〜0.71%)、7(0.12〜0.77%)、10(0.19〜0.92%)及び15(0.42〜1.35%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、約4個のgagペプチドプール3(0.12〜0.49%)、5(−0.04%〜0.48%)、10(0.11〜0.52%)、14(−0.03〜0.52%)及び15(0.18〜0.56%)に対して減少した。
【0226】
様々な量のAT−2処置したウイルスの投与後に、SIV gagペプチドに対する制限されたCD4細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD4細胞性応答は、3個のgagペプチドプール(10(0.19〜0.59%)、11(0.11〜0.39%)及び13(−0.03〜0.31%))から誘発された。用量1.0μgでは、制限された応答が、gagペプチドプール7(−0.05〜0.27%)から誘発された。より高い用量の5μgでは、CD4細胞性応答は、顕著でなかった。
【0227】
様々な量の生SIVの投与後に、SIV gagペプチドに対するCD4細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD4細胞性応答は、約2個のgagペプチドプール(2(0.59〜1.23%)及び9(0.34〜1.1%))から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、約4個のgagペプチドプール(2(0.39〜1.12%)、3(0.11〜0.51%)、6(0.21〜0.72%)及び9(0.15〜0.51%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、約2個のgagペプチドプール(2(0.16〜0.51%)及び6(−0.05〜0.23%))から誘発された。
【0228】
以下の数段落では、応答は操作上、インターフェロンガンマに対して陽性であるCD8
+細胞の割合に関して、SIV gagペプチドに対するCD8細胞性応答として定義される。応答を誘発するペプチドプール、及び応答の幾つかの範囲(インターフェロンガンマに対して陽性であるCD8+細胞の割合)が示される。
【0229】
様々な量の1%DIPEで脱脂されたウイルスの投与後に、SIV gagペプチドに対するCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、応答は、約5個のgagペプチドプール(2(0.19〜0.92%)、3(0.19〜0.94%)、4(0.18〜0.95%)、6(0.28〜0.49%)及び13(0.29〜0.88%))から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、約6個のgagペプチドプール(2(0.01〜1.01%)、3(0.03〜0.49%)、6(0.01〜0.99%)、7(0.02〜0.37%)、10(0.01〜0.92%)及び15(0.05〜0.65%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、約7個のgagペプチドプール(2(0.11〜0.37%)、3(0.16〜0.54%)、4(0.18〜0.91%)、5(0.18〜0.71%)、10(0.13〜0.23)、14(0.13〜0.81%)及び15(0.2〜0.56%)から誘発された。
【0230】
様々な量のAT−2処置したウイルスの投与後に、SIV gagペプチドに対するCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD8細胞性応答は、5個のgagペプチドプール(10(0.28〜0.71%)、11(0.3〜0.91%)、12(0.23〜0.76%)、13(0.15〜0.61%)及び14(0.19〜0.72%))から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、約3個のgagペプチドプール(10(0.01〜0.73%)、11(−0.02〜1.1%)及び12(−0.05〜0.72%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、約1個のgagペプチドプール(10(0.07〜0.27%)から誘発された。
【0231】
様々な量の生SIVの投与後に、SIV gagペプチドに対するCD8細胞性応答が観察された。用量0.05μgでは、CD8細胞性応答は、約3個のgagペプチドプール(2(0.28〜0.92%)、9(0.32〜0.82%)及び15(0.21〜0.43%))から誘発された。用量1.0μgでは、応答は、約5個のgagペプチドプール(2(0.01〜0.91%)、3(0.03〜0.67%)、6(0.01〜0.71%)、9(−0.25〜0.8%)及び12(−0.05〜0.39%))から誘発された。より高い用量の5μgでは、応答は、約3個のgagペプチドプール(2(0.19〜0.71%)、9(0.19〜0.53%)及び12(0.04〜0.87%))から誘発された。
【0232】
総括すると、これらのデータにより、AT−2処置したSIVウイルスで免疫化したマウスは、AT−2処置したウイルス又は生SIVウイルスによる追加免疫と比較した場合に、脱脂されたSIVウイルスによる追加免疫に対して、増強された免疫応答を示すことが実証される。脱脂されたSIVウイルスは、増強されたIFN−γ染色とともに、CD4+及びCD8+の割合に関して、AT−2処置したウイルスよりも高い免疫原性であった。
【0233】
本発明者等のデータにより、脱脂されたウイルスが、アジュバントを使用せずに、強力なT−細胞媒介性免疫応答を誘発したことが示される。全体的な細胞媒介性免疫応答の幅及び強度の増加が、生及びAT−2処置群と比較して、DIPEで追加免疫したマウス群において観察された。表9及び表10は、これらの結果の概要を示す。
【0234】
【表9】
【0235】
【表10】
【0236】
抗体力価は、DIPE処置したSIVで追加免疫した群において増強される
全ビリオンに対する抗体(Ab)力価を各群に関して決定した。SIV gp120に対する抗体力価は、DIPEで追加免疫した群と比較して、AT−2で追加免疫した群では有意に低かった(p=0.02)(図9)。概して、DIPEで追加免疫したマウスは、生又はAT−2のいずれかで追加免疫した群と比較した場合、SIV gp120及び
SIV Gagの両方に関して、より高いAb読取りを与えた(図10)。Ab力価が4週目に、その後の実験で測定された場合、追加免疫が群すべてに関して観察された(データは示さず)。ELISA(吸光度450nmで)により測定されるgag(p55)抗体力価は、生又はAT−2処置したSIVのいずれかで追加免疫した群よりも、脱脂されたSIVmac251で追加免疫したマウスからの血清でより高かった。ウェスタンブロット分析は、より広範囲のp27バンドが、生又はAT−2処置したマウス血清と比較して、脱脂されたSIVで追加免疫した血清により観察されたことから、抗体ELISAデータを支持した。これは、脱脂されたSIVで追加免疫されたマウスからのgag抗体によるより幅広いp27エピトープ認識を示す。gag及びenvの両方に対する抗体応答の成熟は、初回刺激後2週間目の追加免疫と比較して、初回刺激の4週間後にマウスを追加免疫した場合に観察された。投与経路(皮下(sc)又は静脈内(iv))は、抗体(ELISA)力価に影響を及ぼさなかった。生又はAT−2処置したウイルスの追加免疫と比較して、脱脂されたウイルスで追加免疫したマウスにおいて、CD4+T−細胞とSIVmac251gag及びenvタンパク質の両方に対する抗体応答との間で、より強力な相関が見られる。
【0237】
CD4応答と抗体応答との間の強力な相関
本発明者等は、gag及びenvプールに対するCD4+応答を、組換えgag及びenvに対する抗体応答と比較することにより、免疫化の影響を決定した。細胞性応答(CD4)と体液性応答(抗体応答)との間に強力な相関が観察され(図11)、増強された細胞媒介性免疫応答のさらなる有益性を示した。
【0238】
DIPE処置は、アジュバントの非存在下で、強烈な細胞媒介性免疫応答及び良好な体液性応答を創出した。意味深いことに、有効な追加免疫は、SIV p27約200ngに相当する、1mg程度と少ないDIPE処置したSIVの総ウイルスタンパク質により達成された。
【0239】
1μg程度と少ない総ウイルスタンパク質によりウイルスペプチド特異的免疫応答を誘発する本発明の能力は、驚くべきことであり、且つ予期せぬことであった。アジュバントの同時投与無しで単回IV追加免疫により達成されるこのレベルの免疫応答は、脱脂されたウイルスの生化学的性質が、生又はAT−2処置したSIVにより誘発されるものと異なるより多数のウイルスペプチドの効率的なプロセッシング及び提示、又は認識を誘導するのに十分変更されていることを示唆する。
【0240】
最後に、本発明者等は、Balb/cマウスにおいて、生SIV、AT−2処置したSIV及び脱脂されたSIV(DIPE)の免疫原性を比較して、DIPEで処置したウイルスで追加免疫した群からの細胞媒介性免疫応答の有意な増強を観察した。驚くべきことに、有効的な追加免疫は、非常に低用量である総ウイルスタンパク質1μg(これは、SIV p27約200ngに相当する)で達成された。これらの結果は、アジュバントを使用せずに、追加免疫用量で得られ、免疫原性において実質的な増加を示した。本発明者等の結果は、ウイルスを脱脂することにより、その感染力を有意に減少させながら、ウイルスの抗原性を増強したことを示す。本発明者等の結果は、HIVのコレステロール欠乏は、β−CD処置したウイルスがウイルスRNA及びウイルスタンパク質の劇的な損失をもたらし、したがって感染力の損失に寄与したため、ウイルスの感染力を劇的に減少させるという従来の見解(Nguyan et al., J. Immunol. 168: 4121, 2002; Graham et al., J.
Virol. 77: 8237; Liao et al., AIDS Res. Human Retroviruses 19:675, 2003)と異なる。脱脂されたウイルスは、ウイルスRNA及びウイルスタンパク質の無視し得る損失を有する。
【0241】
以下の記述により拘束されることを望まないが、脱脂過程は、抗原提示細胞により、よ
り良好にプロセッシング又は提示されるウイルス粒子を創出する可能性があり、観察される幅広いペプチドプール応答につながると考えられる。さらに、ウイルスの脱脂は、MHC II分子のようなより多くの細胞抗原(感染CEMx174細胞から発芽されると、ウイルスにより採取される)を露出することができ、これは、細胞応答を増強する際にアジュバントとして作用することができる。血清Ab力価及びAb血清プロファイルのウェスタンブロット分析は、DIPE処置したSIVで追加免疫した群において、増強された抗Env抗体、及びSIV gag特異的抗体応答の一貫した広がりを示し、おそらく抗p27Ab力価の増加、又はウイルスタンパク質に対するAbアビディティの増加を示した。これらの結果は、SIVのDIPE脱脂が、マウスにおいてウイルスの免疫原性に影響を及ぼすことを実証する。この新規脱脂方法は、HIV療法用ワクチン設計及び開発に寄与すると考えられる。
【実施例8】
【0242】
様々な脱脂手順で処置したHIVウイルスにおける総タンパク質及びp−24タンパク質回収
本出願人等は、総タンパク質回収及びp24タンパク質回収の度合いにより測定されるように、上述の脱脂過程が無傷のウイルス粒子を生産することが可能であることを見出した。
【0243】
HIVウイルスを含有する試料を、転倒型回転を用いて、室温で20分間、速度70%で、溶媒と混合した。次に、試料を1,000×gで2分間遠心分離した後、炭カラムに通した。総タンパク質をBioRadアッセイにより測定した。ウイルスp24は、p24サンドイッチELISA(Coulter)により測定した。
【0244】
1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールを用いた脱脂過程に関する総タンパク質回収は、対照の10%以内であり、具体的には総インプットの63〜75%の範囲である。1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールを用いた脱脂過程に関するp24タンパク質回収は、対照の40%以内であり、2%ブタノールは、およそ83%の対照回収割合に対しておよそ78%のp24タンパク質回収割合をもたらす。
【実施例9】
【0245】
様々な脱脂手順で処置したHIV及びSIV粒子の浮遊密度及び免疫反応性(gp120及びp24)
上述の脱脂過程は、ウイルス粒子の浮遊密度を変更させた。密度の変化は、ウイルス粒子からの脂質の除去がタンパク質対脂質の比、結果として粒子密度を変化させるため、首尾よい脱脂の有用な指標である。この実施例では、対照並びに溶媒処置したHIV及びSIV粒子の等密度を決定して、密度の変化を、対照及び処置したウイルスの測定脂質含有量と相関させた。
【0246】
溶媒処置は、HIV及びSIV粒子の密度範囲を広げ、高溶媒濃度は、ウェスタンブロット分析及びタンパク質プロファイルに基づいて、ウイルスをより高い全体密度へとシフトさせ、これは、脂質の損失と一致する。具体的には、図1は、対照群と一緒に、1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールを用いた脱脂に付したウイルス粒子の画分番号に対する密度のグラフ表示により示されるようなショ糖勾配画分の密度を表す。HIVを脱脂して、ショ糖精製した。ウイルスをショ糖勾配上へ充填して、平衡密度に達するまで遠心分離した。図2は、画分番号それぞれに関するp24タンパク質の濃度を表す。予想通り、対照群に関するタンパク質濃度は、比較的高い濃度のp24を示すが、対照よりも高い密度で記録される1%ブタノール/DIPEとともに最も高かった。他の密度変更されたp24濃度は、5%ブタノール、2
%ブタノール、1%ブタノール及び1%DIPEに関して示された。密度変更は、ウイルス粒子を脱脂する際の成功度を示す。
【0247】
HIV−1ウイルスをショ糖勾配上に流して、様々な画分を回収した後、SDS−PAGEゲル上へ流して、膜へ転写して、HIV−1感染個体からの陽性対照血清を用いてブロットした。
【0248】
ウェスタンブロット分析は、各脱脂過程から得られる様々な密度画分に対するエンベロープタンパク質gp120及びカプシドタンパク質p24に対する抗体、及びHIV−1ウイルス粒子に対する対照を用いて行った。対照試料のウェスタンブロット分析は、予想した密度画分で、p24タンパク質及びgp120タンパク質の強力なバンドを現した。大部分の無傷ビリオンは、画分5〜7で溶出した。様々な脱脂過程は、p24及びgp120免疫反応性画分の位置の変化をもたらし、処置されたウイルス粒子の密度の変更を示した。1%DIPEによるHIV−1の処置は、より高密度画分への免疫反応性バンドのシフトをもたらした。1%DIPE/ブタノールによる、及び独立して1%ブタノールによるHIV−1の処置もまた、より高密度画分への免疫反応性バンドのシフトをもたらした。2%ブタノールによるHIV−1の処置は、p24タンパク質及びgp120タンパク質の減少を含む多くのタンパク質の損失、並びにウイルス粒子の密度の増加を生じた。5%ブタノールによるHIV−1の処置は、p24タンパク質及びgp120タンパク質免疫反応性のほぼ完全な損失、並びにウイルス粒子の密度の顕著な増加を生じた。
【0249】
図3では、画分番号に対する総回収p24タンパク質の割合のグラフ表示により示される、脱脂されたHIVの等密度勾配分析が示される。脱脂過程に付した試料に関する総回収p24タンパク質の相当量は、より高密度で見出される。1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールで脱脂した試料それぞれに関して、より多くの量のp24タンパク質が、対照群と比較した場合、より高い画分番号(より高い密度)で回収された。この密度シフトは、図4でさらに示しており、ここでは、画分番号に対するgag p27濃度のグラフにより示される、SIV−mac251の等密度が表される。対照に対して、1%DIPE及び1%ブタノールの両方に関する脱脂試料が、密度のシフトを示した。
【実施例10】
【0250】
脱脂手順を受けたHIV及びSIVウイルス粒子のコレステロール含有量の減少
本出願人等は、上述の脱脂過程が、ウイルス粒子においてコレステロールの度合いを変更させることを見出した。コレステロールの変化は、ウイルス粒子からの脂質の除去が、コレステロールの量及びコレステロール対タンパク質の比を変化させるため、首尾よい脱脂の有用な指標である。HIV及びSIV粒子を有機溶媒に曝露させることにより、タンパク質を保存しながら脂質が除去され、それにより、粒子の免疫原性を維持又は増強しながら、ウイルスの感染力の損失をもたらす。
【0251】
表11では、対照と一緒に、1%DIPE、1%ブタノール、1%ブタノール/DIPE、2%ブタノール及び5%ブタノールにより脱脂されたウイルス粒子のコレステロール対総タンパク質の比が示される。HIVを脱脂して、20%ショ糖で精製した。コレステロールは、Molecular Probes, Inc.のような製造供給元からの市販のバイオアッセイであるAmplex Redアッセイで測定し、総タンパク質を測定した。データは、脱脂された試料それぞれに関して、総タンパク質対して減少されたコレステロール含有量を示す。
【0252】
【表11】
【0253】
SIVを脱脂して、20%ショ糖で精製した。コレステロールは、Amplex Redアッセイで測定し、Gag p27タンパク質を測定した。データは、コレステロール対Gag p27タンパク質の比として表す。DIPE処置したウイルスは、対照よりも80%少ないコレステロールを有し、有効な脱脂を示した。同様に、対照に対して、1%DIPE試料は、減少したコレステロール対タンパク質の比を有した。1%DIPE処置は、p27回収により測定されるウイルスの構造的完全性を維持しながら、80%コレステロールを効果的に除去した。5%DIPE:n−ブタノール処置は、ウイルスタンパク質、総タンパク質及びコレステロールの劇的な損失を招いた。この方法は、厳しすぎた。1%ブタノール処置は、測定されるコレステロールの量が依然として変わっていなかったため、ウイルスを脱脂するのには効果的ではなかった。総コレステロールの回収は、1%ブタノール及び1%DIPEに関しては、それぞれ約37%及び78%であり、p27タンパク質の相当する回収は、それぞれ約90%及び15%であり、かかるウイルス粒子の相当部分が依然として無傷のままでのウイルス粒子の首尾よい脱脂をさらに示す。図5及び図6を参照して、画分したSIV−mac251のFPLCプロファイルを、Gag p27及びコレステロールに関して示す。1%DIPE脱脂に関して、gag p27の濃度は、より高濃度の画分番号で対照と実質的に異なるのに対して、コレステロールの濃度は、ほぼすべての画分に関して、対照より実質的に低いことが、グラフにより実証される。
【実施例11】
【0254】
脱脂されたHIVで追加免疫したサルは、生HIVで追加免疫した群と比較して、より高いAb力価を有する
4匹のサルを不完全フロイントアジュバント中のp24 HIV−IIIB 5μgの等価物で初回刺激した。続いて、サルを2匹のサルを有する2つの群に分けた。群1(RIl&RFo)には、DIPEで脱脂されたHIV−IIIB 1μgを毎月施し、群2(RFt&Rom)には、生HIV−IIIB 1μgを毎月施した。細胞パラメータを、免疫細胞化学により測定した。追加免疫の7日後に、染色を行った一方で、Ab力価及び中和Abは、追加免疫の4週間後に測った。全HIV−IIIB溶解物に対するAb力価を測定した。群1の動物(これらには、脱脂されたウイルスを施した)は、群2の2匹の対照サルよりも高いAb力価を有した。脱脂されたウイルスの追加免疫は、完全ビリオンに対するAb力価を増強した(データは示さず)。
【0255】
ペプチドプールすべてに対するプールされたCD4 T細胞応答を表12に表示する。概して、動物は、GAGペプチドプールに対してよりもENVペプチドプールに対してよ
り良好な応答を示した。群1の動物(RIl及びRFo)はともに、Gag(1.5%より大きい)及びEnv(1.5%より大きい)に対して累積応答を有した。対照群2中のたった1匹の動物(RFt)が、Gag(0.5%より大きい)及びEnv(1.5%より大きい)に対して、感知可能な応答を有した。他方の対照動物であるRomは、ペプチドプールに対して非常に低い応答を有した。
【0256】
概して、脱脂されたウイルスを施したサルは、より良好な細胞媒介性免疫応答(ICCにより測定)を示した。Abデータは、CD4+ICCデータと十分相関する。ICC応答を示す動物はまた、良好なAb力価を有する。ウェスタンブロットデータもまた、Abデータ及びICCの結果の両方と十分相関する。
【実施例12】
【0257】
脱脂されたSIVに曝露させた樹状細胞は、生ウイルスに曝露させた樹状細胞と比較して、増強されたCD4+増殖を刺激する
長期非進行型(non-progressor)サルからのPBMCを使用した。PBMCは、フィコール分離を用いて単離し、単球は、RPMI−10%FCS中で3×107個のPBMCのプラスチック接着性を利用して、37℃で2時間培養した。非接着細胞を除去して、フラスコを温1×PBSで穏やかに洗浄した。単球を1,000U/mlのIL−4及び1,000U/mlのGM−CSFとともに、RPMI−15%FCS中で4日間インキュベートした。この手順により、未熟樹状細胞(DC)が作成された。
【0258】
未熟DC(2×103個)を、AT−2処置したSIV、脱脂されたSIV(転倒型混合を用いて20分間の1%DIPE)又は生SIV 50ngで、37℃にて3時間、パルス処置した。細胞を広範囲にわたって洗浄して、過剰のウイルスを排除して、残留ウイルスの量に関して、SIV p27により検査した。DC(2×103個)を、100U/mlのTNF−a、IL−4、GM−CSFを有するR−15中で3日間、再懸濁させて、DC成熟を誘導した。次に、2×106個の末梢血リンパ球(PBL)をDC培養物に24〜36時間添加した後、cyQUANT細胞増殖アッセイキット(Molecular Probes)を用いて増殖アッセイを行った[注記:CD8+細胞は、使用前にPBLから枯渇させた]。増殖アッセイは、製造業者のプロトコル(cyQUANT−Molecular Probes)に従って実施した。簡潔に述べると、細胞をペレット化して、上清を除去した。続いて、ペレットを約1時間凍結させて、4×CyQUANT色素濃縮物をペレットに添加した。溶解させた細胞の上清を約10分間静置させた後、励起に関しては波長480、及び放出に関して波長520で、蛍光プレートを読取った。
【0259】
増殖割合は以下のように算出した:[(試験増殖−対照増殖)/(対照増殖)]×100。対照増殖は、バックグラウンドノイズを提供するために、抗原無しのPBMC+DCの増殖である。
【0260】
樹状細胞(DC)は、CD4、CD8及びCD20 B−細胞に対する強烈な抗原提示細胞である。脱脂されたSIVでパルス処置した樹状細胞(DC)は、生ウイルスでパルス処置したDCと比較して、CD4+細胞において、16%より良好な増殖性応答を誘発した(脱脂されたウイルスによる208672対生ウイルスによる165616)ことが、結果により実証される。このことは、DCによる脱脂されたウイルスのより良好なプロセッシング/提示を強く支持する。
【0261】
CD4増殖は、所定のエピトープに対するCD4応答の機能的指標である。HIV感染した人々において、彼等のCD4細胞は、抗原に応答してIFN−γを生産するが増殖しないため、CD4増殖は、IFN−γ分泌よりも特異的な読取りである。
【0262】
本発明の方法で脱脂されたウイルスは、抗原特異的CD4+細胞の増殖を増加させることができ、CD8+細胞のより効率的な成熟及び血漿細胞(抗原特異的Abを生産するB細胞)の成熟につながる。ウイルス感染の制御は、CD4+細胞増殖に依存するため、本発明の方法は、有効的な機能的ワクチンを提供する。
【0263】
上記引用した特許、刊行物及びアブストラクトはすべて、それらの全体が参照により本明細書に援用される。当然のことながら、上述の事項は、本発明の好ましい実施形態のみに関するものであり、添付の特許請求の範囲に記載するような本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、無数の修正又は変更が本発明においてなされ得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】対照群と一緒に、1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールを用いた脱脂に付したHIVウイルス粒子の画分番号に対する密度のグラフ表示により示されるようなショ糖勾配画分の密度を表す図である。
【図2】図1に示されるそれぞれの画分番号に関するp24タンパク質濃度(ng/ml)を表す図である。
【図3】図2と同様であり、対照群と一緒に、画分番号に対する総回収p24タンパク質の割合としてのp24レベルとしてグラフ表示により示される、1%DIPE、1%ブタノール/DIPE、1%ブタノール、2%ブタノール及び5%ブタノールを用いた脱脂に付した脱脂されたHIVの等密度勾配分析の概略図である。
【図4】1%DIPE、5%DIPE:n−ブタノール(75:25)及び1%n−ブタノールの脱脂条件の後の画分番号に対するgag p27濃度(ng/ml)のグラフ図により示される、脱脂されたSIV−mac251の等密度勾配分析の概略図である。
【図5】各画分番号のp27 gagレベル(μg/ml)を示す、対照及び1%DIPE処理したSIV mac521の高速液体クロマトグラフィ(FPLC)の概略図である。
【図6】図5に示される画分のコレステロールレベル(ng/ml)を示す図である。
【図7】生ウイルスでの1%DIPE処理後、及びAT−2処理後のSIV mac521感染力(TCID50/ml)対ウイルスRNAコピー数(コピー/mg)の概略図である。
【図8】AとBは、生ウイルス、AT−2不活化ウイルス又は脱脂したウイルス(1%DIPE)で追加免疫したAT−2不活化SIV初回刺激マウスからの100万個のPMBC中の、SIV env(8A)ペプチドプールおよびSIV gagペプチドプール(8B)に対するCD4+及びCD8+T細胞応答(%インターフェロンガンマ陽性細胞)を示す図である。6匹のマウスの平均(+SEM又は−SEM)が示される。**=p値<0.01、*=p値<0.05。
【図9】AT−2処置ウイルス(SIV mac 251)で免疫化し、生ウイルス(SEV mac 251)、AT−2不活化ウイルス又は脱脂したウイルス(1%DIPE)の総ウイルスタンパク質1μgで追加免疫したマウスの、SIV env gp120抗体力価(450nmでのO.D.)の概略図である。マウス血漿の連続希釈液は、組み換えSIV mac251 gp120 envタンパク質でコーティングしたELISAプレート中で測定した。
【図10】AT−2処置ウイルスで免疫化し、生ウイルス(SEV mac 251)、AT−2不活化ウイルス又は脱脂したウイルス(1%DIPE)の総ウイルスタンパク質1μgで追加免疫したマウスの、SIV gag p55抗体力価(450nmでのO.D.)の概略図である。マウス血漿の連続希釈液は、組み換えSIV mac251 p55 gagタンパク質でコーティングしたELISAプレート中で測定した。
【図11】SIV mac251 Gag及びEnvペプチドプールに対するCD4+応答(%IFNガンマ細胞)と、組換えGag及びEnvに対する抗体応答(O.D.450nm)との相関曲線の概略図である。SIV mac251 gagに対する細胞性応答(CD4)と抗gag抗体応答との間に強力な相関(R2=0.9993)が観察された。SIV mac251 envに対する細胞性応答(CD4+)と抗env抗体応答との間に良好な相関(R2=0.953)が観察された。
【図12】不完全フロイントアジュバント中のp24 HIV−IIIB 5μgの等価物でそれぞれ初回刺激し、その後DIPEで脱脂されたHIV−IIIB 1μgを毎月(RIl&RFo)、又は生HIV−IIIB 1μgを毎月(RFt&Rom)追加免疫した、4匹のサルのgag又はenvペプチドプールに応じる、IFNガンマに対する細胞免疫反応性CD4+の割合を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含む改変されたウイルス粒子であって、該部分的に脱脂されたウイルス粒子が、
患者内において陽性免疫応答を開始し、且つ
該患者内において感染性生物に対する防御を誘発する、
改変されたウイルス粒子。
【請求項2】
前記改変されたウイルス粒子が、改変されていないウイルス粒子よりも低いコレステロール含量を有する、請求項1に記載の改変されたウイルス粒子。
【請求項3】
前記改変されたウイルス粒子が、改変されていないウイルス粒子とは異なる浮遊密度を有する、請求項1に記載の改変されたウイルス粒子。
【請求項4】
部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含む改変されたウイルス粒子であって、
改変されていないウイルス粒子よりも低いコレステロール含量、及び
改変されていないウイルス粒子とは異なる浮遊密度
を有する、改変されたウイルス粒子。
【請求項5】
改変されたウイルス粒子を作成する方法であって、
流体中で、脂質含有ウイルスエンベロープをそれぞれ有する、複数のウイルス粒子を入手し、
前記ウイルス粒子を脱脂過程に供し、そして
前記ウイルス粒子を部分的に脱脂すること
を含み、前記脱脂過程は、少なくとも部分的に前記ウイルスエンベロープの脂質含量を低減して、それにより前記改変されたウイルス粒子を作成し、前記改変されたウイルス粒子が、患者に投与されると免疫応答を誘発することができる、方法。
【請求項6】
抗原送達ビヒクルを作成する方法であって、
流体中で、脂質含有ウイルスエンベロープをそれぞれ有する、複数のウイルス粒子を入手し、
前記ウイルス粒子を脱脂過程に供し、そして
前記ウイルス粒子を部分的に脱脂して、それにより抗原送達ビヒクルとして作用する改変されたウイルス粒子を作成すること
を含み、前記脱脂過程は、前記ウイルスエンベロープの脂質含量を少なくとも部分的に低減して、それにより少なくとも1つのウイルス抗原を露出させ、露出された前記少なくとも1つのウイルス抗原が、患者内において免疫応答を誘発することができる、方法。
【請求項7】
脱脂されていないウイルス粒子においては露出されていなかった少なくとも1つの露出ウイルス抗原を有する部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含む、改変されたウイルス粒子を含み、任意に薬学的に許容可能な担体を含む、ワクチン組成物であって、
前記部分的に脱脂されたウイルス粒子が、患者に投与されると免疫応答を誘発することができる、ワクチン組成物。
【請求項8】
前記免疫応答が、T細胞によるインターフェロンγ生産の増強、又は免疫系の細胞の増殖である、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
患者に感染性ウイルス粒子に対する防御を付与する方法であって、
有効量の請求項7に記載の前記ワクチン組成物を該患者に投与することを含み、
前記量が、前記患者における感染性ウイルス粒子による感染に対する防御効果を付与す
るのに有効な量である、方法。
【請求項10】
複数の脂質含有ウイルス粒子を有する患者において免疫応答を誘発する方法であって、
該患者から前記脂質含有ウイルス粒子を含有する流体を得、
前記脂質含有ウイルス粒子を含有する前記流体と、前記脂質含有ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させ、
前記流体と前記第1の有機溶媒とを混合し、
有機相と水相とを分離させ、
脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含有する前記水相を回収し、そして
前記脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含有する前記水相を前記患者内に導入すること
を含み、前記脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子が前記患者内において免疫応答を誘発する、方法。
【請求項11】
前記改変されたウイルス粒子を含有する前記水相と、前記第1の有機溶媒を除去することができる炭とを接触させ、そして
この水相を回収し、前記改変されたウイルス粒子を含有するこの水相を前記患者に導入する前に、低レベルの前記第1の有機溶媒を含有する前記水相を、前記炭から溶出すること
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
患者内のウイルス感染を処置する方法であって、
該患者から、複数の、脂質を含有する感染性ウイルス粒子を含有する血液を抜き取り、
前記脂質を含有する感染性ウイルス粒子を含有する血漿を、前記血液から得、
前記脂質を含有する感染性ウイルス粒子を含有する前記血漿と、前記脂質を含有する感染性ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させ、それにより脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を生産し、
前記血漿と前記第1の有機溶媒とを混合し、
有機相と水相とを分離させ、
前記改変されたウイルス粒子を含有する前記水相を回収し、そして
前記改変されたウイルス粒子を含有する前記水相を前記患者内に導入すること
を含み、前記改変されたウイルス粒子が前記複数の脂質を含有する感染性ウイルス粒子においては露出されていなかった少なくとも1つの露出されたウイルス抗原を有し、前記改変されたウイルス粒子が患者において免疫応答を誘発する、方法。
【請求項13】
前記改変されたウイルス粒子が免疫不全ウイルスであり、前記改変されたウイルス粒子がタンパク質をさらに含み、該タンパク質がgp41、gp120、p24又はp27タンパク質のうちの少なくとも1つである、請求項1、4、5、6、7、10又は12のいずれか1項に記載の改変されたウイルス粒子。
【請求項14】
前記改変されたウイルス粒子が、免疫不全ウイルス、肝炎ウイルス、ペスチウイルス又はコロナウイルスである、請求項1、4、5、6、7、10又は12のいずれか1項に記載の改変されたウイルス粒子。
【請求項15】
前記改変されたウイルス粒子がHIV、SIV、SARS、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス又はBVDVである、請求項1、4、5、6、7、10又は12のいずれか1項に記載の改変されたウイルス粒子。
【請求項16】
前記第1の有機溶媒がアルコール、エーテル、アミン、炭化水素、エステル、界面活性剤又はこれらの組み合わせである、請求項10又は12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の有機溶媒がアルコールと組み合わせたエーテルであり、該エーテルがC4〜C8のエーテルであり、該アルコールがC1〜C8のアルコールである、請求項10又は12に記載の方法。
【請求項18】
1つより多いウイルス菌株又は1つより多いタイプのウイルスから得られる部分的に脱脂されたウイルス粒子を含む、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
患者への投与の後、感染性ウイルス生物に対する防御を患者に付与するのに有用な薬剤の調製における、請求項1、4、7又は18のいずれか1項に記載の改変されたウイルス粒子の使用。
【請求項1】
部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含む改変されたウイルス粒子であって、該部分的に脱脂されたウイルス粒子が、
患者内において陽性免疫応答を開始し、且つ
該患者内において感染性生物に対する防御を誘発する、
改変されたウイルス粒子。
【請求項2】
前記改変されたウイルス粒子が、改変されていないウイルス粒子よりも低いコレステロール含量を有する、請求項1に記載の改変されたウイルス粒子。
【請求項3】
前記改変されたウイルス粒子が、改変されていないウイルス粒子とは異なる浮遊密度を有する、請求項1に記載の改変されたウイルス粒子。
【請求項4】
部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含む改変されたウイルス粒子であって、
改変されていないウイルス粒子よりも低いコレステロール含量、及び
改変されていないウイルス粒子とは異なる浮遊密度
を有する、改変されたウイルス粒子。
【請求項5】
改変されたウイルス粒子を作成する方法であって、
流体中で、脂質含有ウイルスエンベロープをそれぞれ有する、複数のウイルス粒子を入手し、
前記ウイルス粒子を脱脂過程に供し、そして
前記ウイルス粒子を部分的に脱脂すること
を含み、前記脱脂過程は、少なくとも部分的に前記ウイルスエンベロープの脂質含量を低減して、それにより前記改変されたウイルス粒子を作成し、前記改変されたウイルス粒子が、患者に投与されると免疫応答を誘発することができる、方法。
【請求項6】
抗原送達ビヒクルを作成する方法であって、
流体中で、脂質含有ウイルスエンベロープをそれぞれ有する、複数のウイルス粒子を入手し、
前記ウイルス粒子を脱脂過程に供し、そして
前記ウイルス粒子を部分的に脱脂して、それにより抗原送達ビヒクルとして作用する改変されたウイルス粒子を作成すること
を含み、前記脱脂過程は、前記ウイルスエンベロープの脂質含量を少なくとも部分的に低減して、それにより少なくとも1つのウイルス抗原を露出させ、露出された前記少なくとも1つのウイルス抗原が、患者内において免疫応答を誘発することができる、方法。
【請求項7】
脱脂されていないウイルス粒子においては露出されていなかった少なくとも1つの露出ウイルス抗原を有する部分的に脱脂されたウイルス粒子を少なくとも含む、改変されたウイルス粒子を含み、任意に薬学的に許容可能な担体を含む、ワクチン組成物であって、
前記部分的に脱脂されたウイルス粒子が、患者に投与されると免疫応答を誘発することができる、ワクチン組成物。
【請求項8】
前記免疫応答が、T細胞によるインターフェロンγ生産の増強、又は免疫系の細胞の増殖である、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
患者に感染性ウイルス粒子に対する防御を付与する方法であって、
有効量の請求項7に記載の前記ワクチン組成物を該患者に投与することを含み、
前記量が、前記患者における感染性ウイルス粒子による感染に対する防御効果を付与す
るのに有効な量である、方法。
【請求項10】
複数の脂質含有ウイルス粒子を有する患者において免疫応答を誘発する方法であって、
該患者から前記脂質含有ウイルス粒子を含有する流体を得、
前記脂質含有ウイルス粒子を含有する前記流体と、前記脂質含有ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させ、
前記流体と前記第1の有機溶媒とを混合し、
有機相と水相とを分離させ、
脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含有する前記水相を回収し、そして
前記脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を含有する前記水相を前記患者内に導入すること
を含み、前記脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子が前記患者内において免疫応答を誘発する、方法。
【請求項11】
前記改変されたウイルス粒子を含有する前記水相と、前記第1の有機溶媒を除去することができる炭とを接触させ、そして
この水相を回収し、前記改変されたウイルス粒子を含有するこの水相を前記患者に導入する前に、低レベルの前記第1の有機溶媒を含有する前記水相を、前記炭から溶出すること
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
患者内のウイルス感染を処置する方法であって、
該患者から、複数の、脂質を含有する感染性ウイルス粒子を含有する血液を抜き取り、
前記脂質を含有する感染性ウイルス粒子を含有する血漿を、前記血液から得、
前記脂質を含有する感染性ウイルス粒子を含有する前記血漿と、前記脂質を含有する感染性ウイルス粒子から脂質を抽出することができる第1の有機溶媒とを接触させ、それにより脂質含量の低減した改変されたウイルス粒子を生産し、
前記血漿と前記第1の有機溶媒とを混合し、
有機相と水相とを分離させ、
前記改変されたウイルス粒子を含有する前記水相を回収し、そして
前記改変されたウイルス粒子を含有する前記水相を前記患者内に導入すること
を含み、前記改変されたウイルス粒子が前記複数の脂質を含有する感染性ウイルス粒子においては露出されていなかった少なくとも1つの露出されたウイルス抗原を有し、前記改変されたウイルス粒子が患者において免疫応答を誘発する、方法。
【請求項13】
前記改変されたウイルス粒子が免疫不全ウイルスであり、前記改変されたウイルス粒子がタンパク質をさらに含み、該タンパク質がgp41、gp120、p24又はp27タンパク質のうちの少なくとも1つである、請求項1、4、5、6、7、10又は12のいずれか1項に記載の改変されたウイルス粒子。
【請求項14】
前記改変されたウイルス粒子が、免疫不全ウイルス、肝炎ウイルス、ペスチウイルス又はコロナウイルスである、請求項1、4、5、6、7、10又は12のいずれか1項に記載の改変されたウイルス粒子。
【請求項15】
前記改変されたウイルス粒子がHIV、SIV、SARS、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス又はBVDVである、請求項1、4、5、6、7、10又は12のいずれか1項に記載の改変されたウイルス粒子。
【請求項16】
前記第1の有機溶媒がアルコール、エーテル、アミン、炭化水素、エステル、界面活性剤又はこれらの組み合わせである、請求項10又は12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の有機溶媒がアルコールと組み合わせたエーテルであり、該エーテルがC4〜C8のエーテルであり、該アルコールがC1〜C8のアルコールである、請求項10又は12に記載の方法。
【請求項18】
1つより多いウイルス菌株又は1つより多いタイプのウイルスから得られる部分的に脱脂されたウイルス粒子を含む、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
患者への投与の後、感染性ウイルス生物に対する防御を患者に付与するのに有用な薬剤の調製における、請求項1、4、7又は18のいずれか1項に記載の改変されたウイルス粒子の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−524383(P2007−524383A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517474(P2006−517474)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/019739
【国際公開番号】WO2005/016246
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(505469539)リピッド サイエンシーズ,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/019739
【国際公開番号】WO2005/016246
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(505469539)リピッド サイエンシーズ,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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