説明

感染症の自動検出

本発明は感染症の検出に関する。感染症の自動検出用のシステムが開示される。このシステムは血液サンプルを受ける投入ユニット、溶解ユニット、PCRユニット、サンプルユニットおよび検出ユニットを含んでなる。このシステムは投入された血液サンプルが、血液サンプル中の病原体DNAの存在を示す出力シグナルを生成することに基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感染症の検出、そして特に感染症の検出用システム、システムの操作法およびコンピュータープログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
集中治療室(ICU)の患者は、一般に敗血症の発症を大変受け易い。敗血症は世界中の集中治療室で最も多い死亡原因であり、出来る限り早く検出することが最も重要である。敗血症の原因は種々のバクテリア、ウイルス、真菌または他の生物に関連している可能性がある。敗血症の原因を、専用の抗生物質を用いた処置により、より正確に撃退することができれば、患者は敗血症から回復するか、またはさらにその発症を回避する機会が増す。敗血症の原因が知られていない場合、有効な抗生物質がカクテルに存在しなければ、耐性の発生またはそれどころか患者の死を引き起こす可能性もあるので、広いスペクトルの抗生物質での処置が処方されなければならない。感染原の特異的型の検出が早いほど、感染のより良い処置は、病原体の増殖を抑制するか、または病原体を破壊し、そして患者の免疫系の過剰反応を回避するために調整することが可能である。
【0003】
バクテリアまたは真菌もしくはウイルスのような他の微生物の存在を検出するには、標準的な研究室で長時間、典型的には2、3日を要する。この期間中、採血と感染源の診断との間に、患者は高価な広いスペクトルの抗生物質処置を受ける可能性がある。さらにサンプルを異なる実験室および装置に輸送することにより、異なる患者のサンプルの交換が起こる恐れもあり、偽陰性を招き、あるいはまたサンプルが違う方法で感染して、偽陽性を導く可能性がある。
【0004】
例えば公開された特許文献1に開示されているように、正確な診断を迅速に提供するという従来技術の解決法は、生物学的センサから集めたデータのリアルタイム相関を行うことを提案する。相関法が開示された。しかし個々の患者の敗血症との関連では、少なくとも2種類の時間の遅れ(time delay)が重要となり、すなわち生物学的サンプルの分析に関する時間の遅れと、診断に関する時間の遅れである。
【0005】
本発明者は、感染症と関連する血液サンプルの改善した取り扱いが有利となると考え、その結果、本発明が考案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第2007/0005256号明細書
【発明の概要】
【0007】
発明の要約
本発明は、好ましくは上に挙げた1もしくは複数の欠点を単独で、または組み合わせて軽減し、緩和し、または排除することを追求するものである。特に本発明の目的として、上に挙げた問題点または感染症に関連する従来技術の他の問題点を解決する、感染症の検出と関連した血液サンプルの改善された取り扱い方を提供することが分かるだろう。
【0008】
この目的および幾つかの他の目的は、本発明の第一の観点で感染症の自動検出用のシステムを提供することにより得られ、このシステムは:
−血液サンプルを受けるための投入ユニット;
−受けた血液サンプルからのDNA内容物を分離サンプルに分離する溶解ユニット;
−分離サンプルを受け、そして分離サンプル中の遺伝子配列の数を増幅して標的分子を含む標的サンプルを提供するPCRユニット;
−標的サンプルを受け、そして遺伝子配列と、標的分子に特異的に結合するプローブ分子を上に固定化した支持体とを接触させるためのサンプルユニット;
−支持体上に生じた結合複合体の存在を検出して血液サンプル中の標的分子の存在を測定する検出ユニット;ここで予め定めた標的分子の存在を示す出力シグナルが生成される、を含んでなる。
【0009】
本発明者は、血液サンプル中の感染の検出と関連し、そして特に敗血症の危険性またはその発症の検出に関連する時間の遅れを減らすことができるシステムを提供するために、血液サンプルの分析に関連する時間の遅れを取り扱うシステムが必要であるという洞察を持っていた。
【0010】
第一の観点の態様は、検出工程の流線化を容易にするシステムを提供し、これにより血液サンプルのリアルタイム分析ができるシステムの提供が可能になる点で有利である。これに関して、血液サンプルを得、そして分析を開始する間の遅れを回避し、または最少にするシステムを提供することが重要である。本発明のシステムは、例えばカテーテルへの直接的連結手段により、投入ユニットへの連結を介して血流に対する直接的接触、すなわちインライン検出、ならびに投入ユニットへ既に得た血液サンプルの直接的投入、すなわちラインでの検出の両方を可能にするものである。いずれの場合でも、患者から血液を得、そして分析を開始する間の時間の遅れが大変短いか、さらには実質的に存在しない。さらに採血と分析システムとの間を通路を短く維持することにより、血液サンプル交換の可能性を回避でき、あるいは少なくとも大変低くすることができる。
【0011】
さらに第一の観点の態様は、血液サンプル中の特異的な病原体DNAの存在を検出できる完全なユニットを提供する点で有利である。このユニットは全システムを病棟に配置できるサイズで、あるいはさらに患者が運べるサイズで提供することができる。試験のためにサンプルを研究室に送ることは、これにより回避できる。
【0012】
このシステムは敗血症に罹り易い重篤な病気の患者の連続的なリアルタイムモニタリングを可能とする点で有利である。連続的モニタリングにより、疾患の経過に関する直接的情報、および処方された薬物療法の効果および効力を直接追跡することができる。
【0013】
本発明の文脈で、リアルタイムとはヒトの身体の感染およびそれに対する処置の反応時間に関連して定義されなければならない。免疫系の時間定数は時間の桁であるので、5〜30分の範囲、またはさらに長くても最高1時間内での測定をリアルタイムと考えることができる。
【0014】
有利な態様では、システムはさらに決定支援システムを含んでなるか、またはそれに連結することができる。決定支援システムは、既存の知識ならびに疾患の経過の予想の提供に基づいて、医師または臨床医にアドバイスすることができる。これにより診断を得ることに関する時間の遅れを減らす。
【0015】
有利な態様では、決定支援システムはさらに:温度を示すシグナル、血圧を示すシグナル、心拍数を示すシグナル、または他の関連するシグナルのようなシグナル群といった生理学的情報を示すシグナルを受ける。また生理学的データを決定支援システムに提供することにより、疾患の経過の広い病像を得ることができる。
【0016】
有利な態様では、決定支援システムは受けた入力に基づくシグナルを薬剤投与ユニットに出力する。少なくとも幾つかの状況では、決定支援システムがそのような正確な決定を
行うことができるので、これを薬剤投与に使用することができる。例えば感染の明確な表示が検出された場合、正しい薬剤を即座に投与することができる。これにより薬剤の迅速かつ自動的調整を行うことが可能である。
【0017】
第二の観点では、本発明は感染症の自動検出用のシステムの操作法に関し、この方法は−血液サンプルを受け;
−受けた血液サンプルから溶解によりDNA内容物を分離して、分離サンプルを提供し:−分離サンプル中の遺伝子配列の数をPCRにより増幅して、標的分子を含む標的サンプルを提供し:
−標的サンプルを、標的分子に特異的に結合するプローブ分子を固定化した支持体と接触させ:
−支持体上に生じた結合複合体の存在を検出して、血液サンプル中の標的分子の存在を測定し;
そして標的分子の存在を示すシグナルを生成する、
ことを含んでなる。
【0018】
第三の観点の方法は、本発明の第一の観点に従いシステムを操作することができる。
【0019】
第三の観点では、本発明はコンピューターで使用する場合に、感染症の自動検出用システムが第二の観点の方法を行うようするために、あるいは一般的もしくは特殊な目的のコンピューターで第一の観点に従いシステムの操作を実行するために、一組の使用説明書を有するコンピュータープログラム製品に関する。
【0020】
一般に本発明の様々な観点を、本発明の範囲内で任意に可能となるように組み合わせ、そして結合させることができる。本発明のこれらのおよび他の観点、特徴および/または利点は、これから記載する態様を参照として明白となり、そして説明される。
【0021】
本発明の態様を、単なる例として図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】感染症の自動検出用システムの例示態様を該略図で具体的に説明する。
【図2】多孔性支持体上に印刷されたスポットパターンの一例を具体的に説明する。
【図3】感染症の自動検出用システムの操作法の例示態様の流れ図を具体的に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
態様の詳細な説明
図1は、感染症の自動検出用のシステム1の例示態様を該略図で具体的に説明する。検出は、患者の敗血症の発症に関与するバクテリア、ウイルス、真菌または他の生物の病原体DNAのリアルタイム検出により行われる。
【0024】
このシステムでは、血液サンプルが投入ユニット2に提供される。血液サンプルはカテーテル14から提供されてもよい。例示態様では、カテーテルは検査中の患者に配置されている。しかしシステムの操作は、言うまでもなく患者にカテーテルを配置することに左右されない。血液サンプルは、限定するわけではないが採血後のサンプルの供給を含め、任意の方法でシステムに提供することができる。
【0025】
例示的態様では、約250μL(マイクロリットル)の血液/時間が分析のためにシス
テムに投入される。血液は連続流で、可能ならば125μL/30分、75μL/15分または他の適切な容量速度のような予め定めた時間間隔で提供される容量単位に関連して提供することができる。一態様では、血液の連続流は、水中150mMのリン酸溶液または水とエチレングリコールとの混合物または乳酸リンゲル溶液のようなバッファー流体により分離された血液の容量ブロックを提供することにより提供され得る。血液の処理量は、これにより増強され得る。血液流は全装置を通る流れを維持するポンプユニットに通すことができる。
【0026】
血液サンプルは溶解ユニット3に提供される。血液サンプルは赤血球、白血球、血小板および可能性のあるバクテリア、真菌および/またはウイルスのような様々な細胞を含む。例示する態様では、最初に赤血球が分解(disintegrate)され、続いてDNAを含む細胞が分解される。異なる態様では、異なる種類の溶解を単独で、または任意の組み合わせで適用することができる。容易に破壊できる細胞には、穏やかな浸透に基づく方法を使用でき、この場合、媒質のイオン強度は下げられ、細胞の膨張および破裂が生じる。他の方法では、ガラスもしくはセラミックビーズが高レベルの撹拌と共に使用されるが、異なる種類の機械的撹拌を適用してもよい。そのような場合、嵩のある水性媒質が、細胞を文字通り引き離す剪断力下に配置される。さらに別の方法では、界面活性剤に基づく細胞溶解を適用できる。細胞溶解に使用される具体的な界面活性剤は、細胞型に依存して選択される。非イオン性界面活性剤の例には、限定するわけではないが:CHAPS溶解バッファー、両イオン性界面活性剤およびTritonXシリーズおよびSDS溶解バッファーがある。界面活性剤の選択に加えて、適切なバッファー、pH、イオン強度および温度が細胞型に従い適切に選択され、または設定され得る。特異的試薬が溶解素流体リザーバー15から供給され、そして微量投与(microdosing)により血液サンプルに暴露される。
【0027】
溶解後、分離したDNAを溶解溶液から例えば遠心もしくは濾過により取り出すことができる。さらにDNA内容物を連続溶解で洗浄することができる。溶解工程から生じる任意の廃棄物は、流体システム4により廃棄容器5に集めることができる。分離したDNA内容物を含有する得られた溶液を分離サンプルと呼ぶ。流速を維持するためにサンプル容量を上げる目的で、バッファー流体を分離サンプルに加えてもよい。
【0028】
分離サンプルは、遺伝子配列の数を増幅するためのPCRユニット6に提供され、標的分子を有する標的サンプルを提供する。
【0029】
PCRユニットでは、分離サンプルがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に暴露される。PCRは、少量の特異的ヌクレオチド配列を(ここでは病原体DNAの分離した遺伝子配列に関する)、インビトロで指数的に増幅させるための技術である。PCRで、オリゴヌクレオチドプライマーは標的の病原体DNA中の目的鎖にハイブリダイズする。プライマーは、それらの配列が影響を受ける温度、濃度、長さおよびイオン環境でハイブリダイズする。正しいプライマー、およびサイクル数の間、予め定めた温度プロファイル、および他のパラメーターを選択することにより、選択したDNA分子の特異的鎖が増幅され、すなわち検査中の病原体DNAの遺伝子配列が増幅される。PCRに必要な流体は、リザーバー7に含まれる。PCR工程により標的サンプルが得られる。増幅した遺伝子配列を標的分子と呼ぶ。
【0030】
例示的態様では、標的分子にはフルオロホア、すなわちAlexa蛍光色素およびCy色素が提供される。フルオロホアは、フルオロホアを含むプライマーの適用により提供することができる。ここでも廃棄流はリザーバー4、5に供給され得る。
【0031】
PCRユニットは、態様では不飽和(unsaturated)PCR法または飽和(
saturated)PCR法に従い操作することができる。飽和PCR法は標準的な終点(end−point)PCRに従い行うことができる。しかしこの技法は、飽和するまで反応するので完全に定量的ではない。代替法として、不飽和PCR法を行うことができ、この場合、少ない数のPCRサイクルが実施される。不飽和PCR法の一例として、定量的なリアルタイムPCRを適用することができる。
【0032】
標的サンプルはサンプルユニット8に提供される。サンプルユニットでは、標的サンプルが支持体と接触させられる。プローブ分子は支持体上に固定化される。プローブ分子は、標的分子に特異的に結合またはハイブリダイズする分子として選択される。一つの例示的態様では、接触は標的サンプル流を、多孔性膜の形態の支持体に通して流すことにより提供される。標的分子を捕捉する効率を上げ、それにより検出効率を上げるために、標的サンプルを再循環させて標的分子を何回も支持体に通すことができる。
【0033】
例示的態様では、支持体または膜はマイクロアレイの形態であることができる。各スポットまたはスポット群が特異的な標的分子に特異的に結合するマイクロアレイを提供することができる。それはDNAの特異的鎖に特異的に結合するものである。マイクロアレイを小片10に乗せることができ、この小片は必要な時に新しいアレイを自動的に装置に輸送する。これは固定時間の後、またはマイクロアレイ上に1もしくは複数の強いスポットの検出後、あるいは1もしくは複数のスポットの飽和が検出された後でよい。
【0034】
接触または可能な連続接触と関連して、非結合標的分子を除去または希釈するために洗浄段階を行うことができる。
【0035】
特異的な標的分子との結合複合体は、支持体の特異的な場所に時間の経過と共に形成するだろう。そのような結合複合体は、血液サンプル中の特異的病原体DNAの表示である。その場所から、病原体DNAの種類を推定することができる。
【0036】
結合複合体の存在は、検出ユニット9で検出できる。検出ユニットはサンプルユニット8の支持体上で操作できるか、あるいは支持体を検出場所に移すことができる。
【0037】
例示態様では、標的分子の存在が標的から発出するルミネセンスを検出することにより検出される。支持体は、使用するフルオロホアに従い選択される特徴を有する放射に照らされる。DNA鎖にフルオロホアが提供されると、捕捉したDNA鎖を含むスポットが照らされる。CCDカメラまたは他の光学的検出器を、ドットパターンの記録に使用することができる。図2ではCCDカメラにより得られたドットパターンの例を提供する。図2をさらに以下で詳細に検討する。
【0038】
例示的態様では、標的分子の存在が標的のルミネセンスの変化を検出することにより検出される。絶対的な強度レベルの代わりに変化を検出することにより、より大きなバックグラウンドルミネセンスを許容できる。さらに絶対レベルのバックグラウンドルミネセンスのいかなる測定も回避することができるか、あるいは少なくとも厳密性を下げて測定できる。標的のルミネセンスの変化の検出を、患者の血液中の病原体DNAの量と相関させることができる。増加(または減少)、および増加率(または減少率)の検出は、特異的疾患と相関し、さらに疾患の経過と相関する可能性がある。
【0039】
例示的態様では、予め定めた標的分子の存在を示す出力シグナルが生成される。出力シグナルは、得られたドットパターンを表すシグナルでよい。出力シグナルは、評価のためにコンピューティングユニット11に送ることができる。一態様では、評価は使用者、すなわちバクテリアDNAが検出された患者を担当する医師に出力を提供する。
【0040】
例示的態様では、システムは恐らくはコンピューティングユニット11で実行される決定支援システムを含んでなるか、またはそれに連結される。コンピューティングユニット11および検出システム1は2つの別個のユニットとして説明されるが、それらは単一のシステムの部分となり得ると考えられる。
【0041】
また決定支援システムには、生理学的測定12からの入力シグナルも提供され得る。このように決定支援システムには、病原体DNA、すなわちDNAスペクトルの検出からの入力が提供され得る。このDNAスペクトルは時間で分割されてもよい。さらに決定支援システムには、生理学的測定からの入力シグナルが提供され得る。そのような入力に基づき、決定支援システムは、診断を得ることを職務とする医師を支援する出力を提供することができる。さらに決定支援システムは、疾患の経過を予想し、または評価し、そしてどのように処置を進めるかに関するフィードバックまたはガイドラインを提供できる。
【0042】
さらにシステムは薬剤投与ユニット13、例えば電気的滴下システム、経皮的ドラッグデリバリーシステム、移植可能なドラッグデリバリーデバイスまたは制御された薬剤放出のための電子ピル(electronic pill)に連結することができる。例示的態様では、決定支援システムが、受けた入力に基づくシグナルを薬剤投与ユニットに出力する。移植可能または嚥下可能デバイスが薬剤の投与に使用される場合でも、それを適合できるようにするために、検出システムと体内のデバイスとの間の連絡にワイヤレスリンクを使用することができる。決定支援システムから薬剤投与ユニットへの出力シグナルは、決定支援システムの決定、医師によりなされる決定、または組み合わせに基づくことができる。
【0043】
本発明の態様では、血液の抽出と病原体DNAの検出との間の様々な観点と関連して、時間の遅れが含まれる。含まれる時間の遅れを減らすために、デバイスの全体的寸法を小さくすることができる。例えば投入ユニットと検出ユニットとの間の流体路の全体的寸法は、50cm未満であり、または25cmのようにさらに小さい。さらに流体流を上げるために、ミクロ流体システムを、デバイスを通る流体を輸送するために使用することができる。例えば流路の断面積を0.5mm未満または0.1mmのようにさらに小さくすることができる。さらに流体流を上げるために、適切なバッファー流体を適用できる。バッファー流体を適用することにより、流速は5×10−4m/sもの高さ、またはさらに高い流速を得ることができる。デバイスはたとえ具体的に例示していなくても、システムを通る流体の流れを確実にするために多数のバルブを含め1もしくは複数のポンピングユニット、またはポンピングシステムを含んでなることができる。
【0044】
小さいデバイスのさらなる利点は、患者の近くに置くことができる点である。さらに患者はデバイスを装着することができる。
【0045】
図2は、多孔性支持体20に印刷されたスポットパターンの一例を具体的に説明する。ここでは支持する構造に乗せられた膜の状態である。この膜は直径約2.4mmであり、そして392種類の捕捉スポットのパターンで覆われている。各スポットは約0.1nL(ナノリットル)の容量を必要とする。スポットの直径は約50μm(マイクロメートル)であり、スポットは100μmのピッチの六角形のパターンに配置される。図2はプリントの設定に依存して単なる例の支持体を提供していると理解され、任意の適切な支持体を使用することができる。
【0046】
図3は、感染症の自動検出用システムの操作法の例示態様の流れ図を具体的に説明する。この方法は:
30:血液サンプルを受け;
31:受けた血液サンプルから溶解によりDNA内容物を分離して分離サンプルを提供す
る。分離サンプルはPCRユニットに進められ、一方、残る部分は32とされ廃棄容器へ向けられる:
33:分離サンプル中の遺伝子配列の数をPCRにより増幅して、標的分子を含む標的サンプルを提供し、いかなる余分な、または廃棄流体も廃棄容器32へ向けられる:
34:標的サンプルを、標的分子に特異的に結合するプローブ分子を固定化した支持体と接触させ:接触に由来する任意の余分または廃棄流体は廃棄容器32に向けられる;
35:支持体上に生じた結合複合体の存在を検出して、血液サンプル中に標的分子の存在を測定し;
36:標的分子の存在を示すシグナルを生成する、
ことを含んでなる。
【0047】
この方法は例えば、自動化システムが提供できるように、図1に関連して開示したようなシステムを制御する制御コンピューター中で実施できる。
【0048】
本発明を具体的態様と関連して記載してきたが、本明細書に説明する具体的形態に限定することを意図していない。むしろ本発明の範囲は添付する特許請求の範囲にのみ限定されるものである。特許請求の範囲では、用語「含んでなる」は他の要素または段階の存在を排除しない。さらに個々の特徴は異なる請求項に含まれ得るが、これらは有利に組み合わせることができ、そして異なる請求項への包含は、特徴の組み合わせが実行できなく、かつ/または有利ではないことを意味していない。さらに単数は複数を排除しない。すなわち「a」、「an」、「第一」、「第二」等の表示は、複数形を排除しない。さらに請求項中の符号は範囲を限定すると解釈されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症の自動検出用のシステムであって:
−血液サンプルを受けるための投入ユニット(2);
−受けた血液サンプルからのDNA内容物を分離サンプルに分離する溶解ユニット(3);
−分離サンプルを受け、そして分離サンプル中の遺伝子配列の数を増幅して、標的分子を含む標的サンプルを提供するPCRユニット(6);
−標的サンプルを受け、そして遺伝子配列と、標的分子に特異的に結合するプローブ分子を上に固定化した支持体(20)とを接触させるためのサンプルユニット(8);
−支持体上に生じた結合複合体の存在を検出して血液サンプル中の標的分子の存在を測定する検出ユニット(9);ここで標的分子の存在を示す出力シグナルが生成される、
を含んでなる上記システム。
【請求項2】
投入ユニットが血液サンプルを受けるためにカテーテル(14)に連結されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
出力シグナルが決定支援システムに入力される決定支援システムをさらに含んでなるか、またはそれに連結されている、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
出力シグナルに加えて、生理学的情報を示すシグナルも決定支援システムに入力される請求項3記載のシステム。
【請求項5】
決定支援システムが、受けた入力に基づき薬剤投与ユニット(13)にシグナルを出力する、請求項3記載のシステム。
【請求項6】
投入ユニットが血液サンプルの連続流を溶解ユニットに提供するか、または予め定めた容量の血液を予め定めた時間間隔で提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
PCRユニットが不飽和PCR法または飽和PCR法に従い操作される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
標的分子にフルオロホアが提供される請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
標的分子の存在が、標的のルミネセンスを検出することにより検出される請求項9に記載のシステム。
【請求項10】
標的分子の存在が、標的のルミネセンスの変化を検出することにより検出される請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
遺伝子配列の数が予め定めたバクテリアDNA、真菌DNAまたはウイルスDNAの遺伝子配列の数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
感染症の自動検出のためのシステムの操作法であって:
−血液サンプルを受け(30);
−受けた血液サンプルから溶解によりDNA内容物を分離して(31)分離サンプルを提供し:
−分離サンプル中の遺伝子配列の数をPCRにより増幅して(33)、標的分子を含む標的サンプルを提供し:
−標的サンプルを、標的分子に特異的に結合するプローブ分子を上に固定化した支持体と
接触させ(34):
−支持体上に生じた結合複合体の存在を検出して(35)、血液サンプル中の標的分子の存在を決定し;
そして標的分子の存在を示すシグナルを生成する(36)、
ことを含んでなる上記方法。
【請求項13】
コンピューターで使用する場合に、感染症の自動検出用のシステムに請求項12に記載の工程を実行させるための一組の使用説明書を有するコンピュータープログラム製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−500079(P2011−500079A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530608(P2010−530608)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054341
【国際公開番号】WO2009/057014
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(508332047)バイオカルテイス・エス・エイ (2)
【Fターム(参考)】