説明

感熱ラベル

【課題】紙基材と感熱接着剤層との良好な密着性を維持しながら、優れたカット適性を有する感熱ラベルを提供することである。
【解決手段】感熱ラベル10は、紙基材11と、紙基材11の表面側に形成される印刷層12と、紙基材11の裏面側に設けられる感熱接着剤層13と、紙基材11と感熱接着剤層13との間に設けられる接着樹脂層14と、紙基材11と接着樹脂層14との間に設けられるアンカーコート層15と、を備える。そして、接着樹脂層14は、硬度が55〜70であり、且つ比重が0.910〜0.940であるポリエチレンから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱ラベルに関し、特に、紙基材と感熱接着剤層との間に接着樹脂層が設けられた感熱ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
食料品や医薬品、化粧品、トイレタリー製品等の各種容器には、商品名やデザイン、内容物の説明等の印刷が施されたラベルが貼り付けられることが多い。このようなラベルとしては、室温で接着力を発現する感圧ラベルの他に、加熱することで接着力を発現する感熱接着剤層を備えた感熱ラベルも用いられる。例えば、大型のペットボトルやビン(アルコール類等の容器)には、リサイクル性に優れている感熱ラベルが広く使用されている。
【0003】
感熱ラベルとしては、紙基材を備えたラベルも用いられる。紙基材を備えた感熱ラベルでは、紙基材と感熱接着剤層との密着性不良が問題となる場合があり、該密着性を向上させるために、紙基材と感熱接着剤層との間に熱可塑性の樹脂からなる接着樹脂層を設けたラベルも知られている。
【0004】
本発明に関連する技術として、特許文献1には、紙基材と感熱性糊層との間にめどめ層を備えた再剥離可能な紙ラベルが開示されている。また、特許文献1では、めどめ層は熱可塑性樹脂からなり、該めどめ層を設けることで、糊が基材にしみ込むことを抑えられ接着性が安定し、紙粉や糊が残らずに再剥離が可能である、と記載されている。なお、特許文献1に開示されためどめ層は、熱可塑性樹脂からなり接着性の安定や糊残り防止に寄与することから、上記接着性樹脂層に類似したものであると解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006‐267990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、紙基材を備えた感熱ラベルにおいて、接着樹脂層が設けられた構成によれば、紙基材と感熱接着剤層との良好な密着性を有することが期待される。しかし、接着樹脂層を備えた感熱ラベルは、ラベラー(ラベリング装置)上でのカット適正が劣り、ラベルが完全に切断されない等のカット不良が発生し易いという課題を有する。
【0007】
図3は、接着樹脂層を備えた従来の感熱ラベル(後述の比較例1の感熱ラベル)について、そのカット部を示す電子顕微鏡(以下、SEMと称する)写真である。図3に示されるように、ラベルのカット部において、紙基材は完全にカットされているが、接着樹脂層がカットできずラベルの裏面側に押されて湾曲している。以上のように、接着樹脂層を備えた従来の感熱ラベルでは、図3に示すようなカット不良が発生し易く、カット適正について改良の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、紙基材と感熱接着剤層との良好な密着性を維持しながら、優れたカット適性を有する感熱ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、接着樹脂層及び感熱接着剤層が柔らかいこと、即ち、接着樹脂層及び感熱接着剤層を構成する樹脂(接着樹脂、感熱樹脂)の硬度が小さいことに起因してカット不良が発生するとの知見を得た。そして、感熱樹脂の物性については被着体への接着性の観点から大幅に制限されるところ、感熱樹脂の硬度等を変化させることなく、接着樹脂の硬度を高めることにより、ラベルのカット適性が向上することを見出した。さらに、接着樹脂の硬度を高くし過ぎると紙基材と感熱接着剤層との密着性が低下すること、及び当該密着性には、感熱樹脂の硬度だけでなく比重も大きな影響を与えることを見出し、本発明の構成に至った。
【0010】
即ち、本発明に係る感熱ラベルは、紙基材と、紙基材の裏面側に設けられる感熱接着剤層と、紙基材と感熱接着剤層との間に設けられる接着樹脂層と、を備える感熱ラベルにおいて、接着樹脂層は、硬度が55〜70であり、且つ比重が0.910〜0.940であるポリエチレンから構成されることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、感熱接着剤層の物性を変更することなく被着体への良好な接着力を維持しながら、優れたカット適正を得ることができる。また、本構成によれば、紙基材と感熱接着剤層との密着性、即ち、接着樹脂層と紙基材及び接着樹脂層と感熱接着剤層の密着性も良好であり、例えば、被着体から剥離する際の糊残りの発生を防止できる。
【0012】
また、本発明に係る感熱ラベルにおいて、感熱接着剤層は、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、エチレンメタクリル酸メチル共重合体、及びエチレンメタアクリル酸エチル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂から構成されることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、被着体への接着性が良好であると共に、接着樹脂層との相性が良く、感熱接着剤層と接着樹脂層との密着性が特に良好なものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る感熱ラベルによれば、硬度が55〜70であり且つ比重が0.910〜0.940であるポリエチレンから構成される接着樹脂層を備えるので、紙基材と感熱接着剤層との良好な密着性を維持しながら、優れたカット適性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である感熱ラベルを模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態である感熱ラベルにおいて、そのカット部を示すSEM写真である(実施例1の感熱ラベル)。
【図3】従来の感熱ラベルにおいて、そのカット部を示すSEM写真である(比較例1の感熱ラベル)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る感熱ラベルの実施形態について、図面を参酌しながら以下詳細に説明する。なお、以下では、個々のラベルサイズにカットされたものを感熱ラベル10とし、製造過程における長尺状(連続体)のラベルを長尺状感熱ラベル(10)として説明する。
【0017】
図1に示すように、感熱ラベル10は、紙基材11と、紙基材11の表面側に形成される印刷層12と、紙基材11の裏面側に設けられる感熱接着剤層13と、紙基材11と感熱接着剤層13との間に設けられる接着樹脂層14と、を備える。
【0018】
感熱ラベル10は、被着体の形態やラベルのデザイン等に応じて、種々の形状・サイズとすることができる。一般的に、感熱ラベル10の形状やサイズの調整は、ラベラーのカットユニットで行なわれる。即ち、長尺状感熱ラベル10をラベラーに供給し、カットユニットにおいて、任意の形状・サイズを有する個々の感熱ラベル10にカットされる。詳しくは後述するように、感熱ラベル10は、当該カット工程におけるカット適正が良好であることを特徴とする。
【0019】
なお、カットされた感熱ラベル10は、例えば、吸引ドラムで吸引保持され、吸引ドラムの近傍に配置されたヒーターを用いて、又は吸引ドラム自体を加熱することにより、感熱接着剤層13を活性化(接着力を発現)して、連続的に搬送される容器に貼付される。
【0020】
紙基材11は、印刷層12及び感熱接着剤層13の支持部材である。紙基材11としては、上質紙、アート紙、和紙、クラフト紙、及びホイル紙等であって、片面に印刷コート層が形成された片面コート紙を用いることができる。なお、紙基材11のコート面側がラベルの表面側となり、コート面上に印刷層12を形成することで印刷層12のにじみを防止することができる。一方、接着樹脂層14が形成される紙基材11の裏面側は、非コート面であり、アンカーコート層15を備えることが好ましい。
【0021】
ここで、アンカーコート層15とは、紙基材11と接着樹脂層14との密着性をさらに向上させる機能を有する薄膜層であり、その厚みは1〜2μm程度である。アンカーコート層15は、紙基材11及び接着樹脂層14と親和性が良好な樹脂から構成され、例えば、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミン系樹脂、イミン系樹脂等を用いることができる。
【0022】
紙基材11の厚みとしては、30〜100μm、好ましくは50〜80μmであるが、本発明の構成上、特に限定されるものではない。また、紙基材11の坪量としては、ラベラー適正(搬送適正等)や経済性の観点から、好ましくは50〜100g/m2であり、より好ましくは60〜90g/m2である。
【0023】
印刷層12は、商品名やデザイン、内容物の説明等を表示する機能を有する層であって、紙基材11のコート面上に形成される。印刷層12としては、文字や模様のパターン印刷層とすることもできるし、ベタ印刷層とすることもできる。また、印刷層12上には、印刷層12の損傷を防止するために図示しないトップコート層を設けることが好ましい。トップコート層は、例えば、後述する印刷層12の原料インキから顔料や染料を除いた樹脂を塗工して形成することができる。
【0024】
印刷層12の形成には、所望の顔料や染料をアクリル樹脂やウレタン樹脂等のビヒクル、各種添加剤(例えば、可塑剤、滑剤、ワックスなど)を有機溶剤に分散、溶解させた溶剤型インキ、或いは所望の顔料や染料をアクリル系樹脂などの固体樹脂及びアクリル系オリゴマー及びモノマー、光重合開始剤、重合禁止剤及び上記各種添加剤等を混合した紫外線硬化型インキなどが用いられる。そして、このインキを用いて、紙基材11のコート面に、グラビア印刷、フレキソ印刷、及び凸版輪転印刷等を行なうことで印刷層12を形成することができる。
【0025】
感熱接着剤層13は、上記のように、加熱することで接着力を発現する層であって、紙基材11の裏面側に形成される。具体的には、接着樹脂層14及びアンカーコート層15を介して紙基材11の裏面側に形成される。感熱接着剤層13としては、被着体への接着強度や剥離時の糊残り防止の観点から、接着樹脂層14の全面に形成されることが好ましいが、任意のパターンで形成することもできる。
【0026】
感熱接着剤層13を構成する感熱接着剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、エチレン‐アクリル酸エステル共重合体、エチレン‐メタクリル酸エステル共重合体等のベース樹脂(感熱樹脂)に、必要に応じて、エラストマー(合成ゴム系、オレフィン系、ウレタン系など)、粘着付与剤(石油系、テルペン系、ロジン系など)、及び各種添加剤(例えば、ポリエチレン系ワックス、アミド系滑剤)等を配合したものが好適である。なお、感熱接着剤としては、加熱溶融して押出し成形可能な所謂ホットメルト型接着剤を用いることが好ましい。
【0027】
感熱樹脂としては、被着体への接着性や接着樹脂層14との相性等の観点から、特に、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、エチレンメタクリル酸メチル共重合体、エチレンメタアクリル酸エチル共重合体、又はこれらの混合物であることが好ましい。また、感熱接着剤層13の構成成分の配合比は、感熱樹脂が60〜89重量%、エラストマーが1〜10重量%、粘着性付与剤が10〜30重量%であることが好ましい。
【0028】
感熱接着剤層13の厚みとしては、被着体との接着性、被着体からの易剥離性及びラベルのカット適正の観点から、10〜30μmであることが好ましい。例えば、感熱接着剤層13の厚みが薄すぎると、被着体に対する接着力が弱く流通過程等においてラベルが剥がれるおそれがあり、感熱接着剤層13の厚みが厚すぎると、カット適正が悪くなったり、被着体に対する接着力が強くなりすぎて易剥離性を損なうおそれがある。
【0029】
接着樹脂層14は、上記のように、紙基材11と感熱接着剤層13との密着性を向上させるための層であって、紙基材11と感熱接着剤層13との間に形成される。正確には、紙基材11の裏面にはアンカーコート層15が設けられているので、接着樹脂層14は、アンカーコート層15と感熱接着剤層13との間に設けられていることになる。
【0030】
また、接着樹脂層14は、硬度が55〜70であり、且つ比重が0.910〜0.940であるポリエチレンから構成される。感熱ラベル10は、紙基材11と感熱接着剤層13との良好な密着性と、優れたカット適性と、両立するものであって、この機能は、接着樹脂層14を構成するポリエチレンの硬度及び比重の両方を上記範囲内で調整することにより発現することができる。
【0031】
接着樹脂層14を構成するポリエチレンの硬度は、JIS K7215(旧JIS K6760)に従って測定されるデュロメータ硬さ(HDD)である。上記のように、ポリエチレンの硬度は、55〜70であることが要求され、特に好ましくは59〜69である。硬度が55未満であると、紙基材11(アンカーコート層15)への密着性は良好であるが、層が柔らかすぎてカット不良が発生し易い。一方、硬度が70を超えると、紙基材11との密着性が低下するため、剥離時の糊残りや自然剥離が発生し易くなり、また、カット適正も悪くなる傾向が見られる。
【0032】
接着樹脂層14を構成するポリエチレンの比重は、JIS K7112に従って測定される比重(g/cm3)である。上記のように、ポリエチレンの比重は、0.910〜0.940であることが要求され、特に好ましくは0.925〜0.939である。詳しくは実施例に示すように、比重が0.910未満であると、紙基材11(アンカーコート層15)への密着性は良好であるが、層が柔らかすぎてカット不良が発生し易い。一方、比重が0.940を超えると、紙基材11との密着性が低下するため、剥離時の糊残りや自然剥離が発生し易くなり、また、カット適正も悪くなる傾向が見られる。
【0033】
接着樹脂層14の厚みとしては、任意に設定できるが、紙基材11及び感熱接着剤層13との密着性やカット適正を考慮すると、10〜35μmであることが好ましい。
【0034】
次に、上記構成を備える感熱ラベル10の製造方法について例示する。
【0035】
感熱ラベル10は、例えば、エクストルージョンラミネート法により製造することができる。まず初めに、片面に印刷コート層が形成された長尺状紙基材(11)を準備する。これを、エクストルージョンラミネート機のグラビアコーターユニットに連続的に供給して、長尺状紙基材(11)の非コート面にアンカーコート剤を塗工し乾燥させて、アンカーコート層(15)を形成する。次に、同機の押出しユニットにおいて、アンカーコート層(15)上に、硬度が55〜70、比重が0.910〜0.940であるポリエチレンを塗工して接着樹脂層(14)を形成すると共に、感熱接着剤を塗工して感熱接着剤層(13)を形成する。
【0036】
そして、裏面側に、アンカーコート層(15)、接着樹脂層(14)、及び感熱接着剤層(13)が積層形成された長尺状紙基材(11)を所定幅にスリットし、フレキソ印刷機にて表面側(コート面)に印刷層(12)を形成することで、長尺状感熱ラベル(10)が製造される。得られた長尺状感熱ラベル10は、上記のように、ラベラーのカットユニットにおいて、任意の形状・サイズを有する個々の感熱ラベル10にカットされる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
下記の材料を使用して、エクストルージョンラミネート法により感熱ラベルを得た。
・紙基材;坪量84.9g/m2の片面コート紙
・アンダーコート剤;EVA系樹脂(セイカダイン1900W、大日精化工業製)
・ポリエチレン;ペトロセン205、東ソー製(HDD55、比重0.925)
・感熱接着剤;EVA系樹脂(7524、ヤスハラケミカル製)
具体的には、エクストルージョンラミネート機のグラビアコーターユニットにおいて、まず、上記紙基材の非コート面に上記アンカーコート剤を塗工し乾燥させて、厚さ1〜2μmのアンカーコート層を形成した。次に、同機の第1押出しユニットにおいて、アンカーコート層上に、上記ポリエチレンを塗工して(押出し温度320℃)、厚さ20μmの接着樹脂層を形成した。その後、同機の第2押出しユニットにおいて、上記感熱接着剤を塗工して(押出し温度190℃)、厚さ15μmの感熱接着剤層を形成した。そして、感熱接着剤層等が形成された紙基材を400mm幅にスリットし、そのコート面にフレキソ印刷機でUV印刷を行い、所定の長さを有する感熱ラベルを得た。
得られた感熱ラベルについて、以下の方法により、カット適性及び密着性の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0039】
<カット適正の外観評価>
得られた感熱ラベルを、カットユニット(回転刃方式、シェア角60°)を用いて幅方向にカットし、カット部の性状を目視で確認した。破断面が綺麗で完全にカットできた場合は○、カット長さ(ラベルの幅:400mm)の10%未満の未カット部がある場合は△、カット不能又はカット長さの10%以上の未カット部がある場合は×とした。
図2に、実施例1の感熱ラベルのカット部のSEM写真を示す。図2のように、実施例1の感熱ラベルでは、紙基材だけでなく、接着樹脂層及び感熱接着剤層も完全にカットされていた(評価○)。
【0040】
<密着性の評価>
接着樹脂層と紙基材との密着強度、及び接着樹脂層と感熱接着剤層との密着強度を、それぞれ測定して密着性の評価を行った。密着強度の測定は、JIS Z2037に準拠して、15mm幅のラベルを使用し、300mm/minの条件で測定した。当該測定において、密着強度が高くて、剥離できないもの又は界面剥離する前にどちらの層が材料破壊(凝集破壊)するものを○、界面剥離が発生するものは密着強度が低く、×とした。
実施例1の感熱ラベルは、接着樹脂層と紙基材との密着強度測定、及び接着樹脂層と感熱接着剤層との密着強度測定のいずれにおいても、界面剥離は確認されず材料破壊が発生したことから、密着性に優れることが分かった(評価○)。
【0041】
<実施例2〜4>
接着樹脂層を構成するポリエチレンを表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、感熱ラベルを得た。そして、実施例1と同様の方法により、得られた感熱ラベルのカット適性及び密着性の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0042】
<比較例1〜3>
接着樹脂層を構成するポリエチレンを表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、感熱ラベルを得た。そして、実施例1と同様の方法により、得られた感熱ラベルのカット適性及び密着性の評価を行い、評価結果を表2に示した。
なお、ハイゼックス5305Eは、プライムポリマー製のポリエステルであり、ニポロンハード6300は、ペトロセンと同じく、東ソー製のポリエステルである。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
表1に示すように、硬度(HDD)が55〜70、比重(g/cm3)が0.910〜0.940の範囲内であるポリエチレンから構成される接着樹脂層を備えた実施例の感熱ラベルは、優れたカット適正を有している。また、実施例の感熱ラベルは、接着樹脂層と紙基材との密着性、及び接着樹脂層と感熱接着剤層との密着性が高く、したがって、紙基材と感熱接着剤層との密着性が高いことを意味する。
【0046】
特に、硬度(HDD)が59〜69、比重(g/cm3)が0.925〜0.939の範囲内であるポリエチレンから構成される接着樹脂層を備えた感熱ラベル(実施例1、3、4)は、良好な密着性を維持しながら、さらに優れたカット適正を有する。図2に示すように、実施例1の感熱ラベルは、接着樹脂層及び感熱接着剤層が完全にカットされており、優れたカット適正を有するものであることが良く理解できる。
【0047】
一方、表2に示すように、硬度(HDD)が55〜70であり、且つ比重(g/cm3)が0.910〜0.940であるという条件を満たさないポリエチレンから構成される接着樹脂層を備えた比較例の感熱ラベルは、紙基材と感熱接着剤層との良好な密着性と、優れたカット適性と、両立することができない。
【0048】
例えば、硬度(HDD)が55未満の53であるポリエチレンから構成される接着樹脂層を備えた比較例1の感熱ラベルは、接着樹脂層が柔らかすぎるため、先の図3に示すように、接着樹脂層がカットでずラベルの裏面側に押されて湾曲している。
【0049】
一方、比重(g/cm3)が0.940を超える0.951であるポリエチレンから構成される接着樹脂層を備えた比較例2の感熱ラベルは、接着樹脂層と紙基材との密着性が低く、紙基材と感熱接着剤層との良好な密着性を得ることができない。さらに、低い密着性が原因でカット時に界面剥離が発生してラベルがカットできない等、カット適正も不良であった。なお、比重(g/cm3)が0.940を超える0.962であり、硬度(HDD)が70を超える71である比較例3の感熱ラベルは、比較例2のラベルよりもさらに密着性が悪く、カット適正も不良であった。
【符号の説明】
【0050】
10 感熱ラベル、11 紙基材、12 印刷層、13 感熱接着剤層、14 接着樹脂層、15 アンカーコート層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
紙基材の裏面側に設けられる感熱接着剤層と、
紙基材と感熱接着剤層との間に設けられる接着樹脂層と、
を備える感熱ラベルにおいて、
接着樹脂層は、硬度が55〜70であり、且つ比重が0.910〜0.940であるポリエチレンから構成されることを特徴とする感熱ラベル。
【請求項2】
請求項1に記載の感熱ラベルにおいて、
感熱接着剤層は、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、エチレンメタクリル酸メチル共重合体、及びエチレンメタアクリル酸エチル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂から構成されることを特徴とする感熱ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−191652(P2011−191652A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59371(P2010−59371)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】