説明

感熱記録シート

【課題】 基材シート上に感熱記録層が形成された感熱記録シートにおいて、高い発色感度が得られると共に、長期間放置した場合にも地肌部において、高い白色度が維持されるようにする。
【解決手段】 基材シート11上に感熱記録層13が形成された感熱記録シート10において、上記の感熱記録層に、少なくとも発色剤と、顕色剤と、メチレンビスフェノール系化合物と、ジフェノキシエタン系化合物からなる増感剤とを含有させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材シート上に感熱記録層が形成された感熱記録シートに係り、特に、高い発色感度が得られると共に、長期間放置した場合にも地肌部において、高い白色度が維持されるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、計測用レコーダ、コンピューター等の端末プリンタ、ファクシミリ、自動券売機、バーコードラベルなどの様々な分野において、サーマルヘッドを用いた感熱記録装置により、感熱記録シートに対して画像や文字などの情報を記録させることが行われている。
【0003】
そして、上記のような感熱記録シートとしては、一般に、紙やプラスチックフィルムなどの基材シート上に、加熱によって発色する発色剤や顕色剤を含有する感熱記録層を設けたものが利用されている。
【0004】
また、近年においては、上記のような感熱記録シートの高性能化が進められ、高い発色感度が得られ、印字部と非印字部との濃淡の差が明確な良好な記録が行えると共に、経時安定性に優れた感熱記録シートが要望されている。
【0005】
そして、従来においては、このような要望に対応させるため、感熱記録層に、発色剤として特定のロイコ染料を用い、呈色剤(顕色剤)としてヒドロキシジフェニルスルホン系化合物を用い、さらに2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などを含有させるようにしたもの(例えば、特許文献1参照。)や、発色化合物と顕色生化合物を主成分とする感熱記録層に、3’−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルスルホン酸塩や2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などを含有させるようにしたもの(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0006】
しかし、上記のような感熱記録層を設けた感熱記録シートにおいても、依然として、十分な発色感度が得られると共に、長期間放置した場合に地肌部の白色度が低下するのを十分に抑制することは困難であった。
【特許文献1】特開2001−260541号公報
【特許文献2】特開2003−19861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、基材シート上に感熱記録層が形成された感熱記録シートにおける上記のような問題を解決することを課題とするものであり、高い発色感度が得られると共に、長期間放置した場合にも地肌部において、高い白色度が維持される感熱記録シートを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明においては、上記のような課題を解決するため、基材シート上に感熱記録層が形成された感熱記録シートにおいて、上記の感熱記録層に、少なくとも発色剤と、顕色剤と、メチレンビスフェノール系化合物と、ジフェノキシエタン系化合物からなる増感剤とを含有させるようにした。
【0009】
ここで、上記のメチレンビスフェノール系化合物としては、例えば、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4,6−ジ(tert−ブチル)フェノール]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−メチルシクロヘキシルフェノール))、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]から選択される少なくとも1種を用いることができ、特に、地肌部において高い白色度が維持されるようにするためには、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)を用いることが好ましい。
【0010】
また、上記のメチレンビスフェノール系化合物を含有させる量については、高い白色度が維持されるようにすると共に、高い発色感度が得られるようにするため、発色剤に対して3〜70重量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0011】
また、増感剤として用いる上記のジフェノキシエタン系化合物としては、例えば、1,2−ビス−(3−メチルフェノキシ)エタンと1,2−ビスフェノキシエタンとから選択される少なくとも1種を用いることができ、特に、1,2−ビス−(3−メチルフェノキシ)エタンを用いると、印字エネルギーが比較的小さい時においても、高い発色感度が得られるようになる。なお、このような増感剤を含有させる量については、発色感度を向上させるのに必要な範囲の量にし、好ましくは、発色剤に対して20〜400重量%の範囲、より好ましくは、発色剤に対して30〜250重量%の範囲になるようにする。
【0012】
また、この発明における感熱記録シートにおいては、一般にボイドと呼ばれる印字部における白抜けを抑制するため、上記の感熱記録層にパラフィンワックスからなる滑剤を含有させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明における感熱記録シートにおいては、上記のように感熱記録層に、少なくとも発色剤と、顕色剤と、メチレンビスフェノール系化合物と、ジフェノキシエタン系化合物からなる増感剤とを含有させるようにしたため、高い発色感度が得られると共に、長期間放置した場合にも地肌部において、高い白色度が維持されるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態に係る感熱記録シートを添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る感熱記録シートは、特に下記の実施形態に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0015】
この実施形態における感熱記録シート10は、図1に示すように、基材シート11の上に、アンダーコート層12と感熱記録層13とオーバーコート層14とが積層された構造になっている。
【0016】
そして、この実施形態における感熱記録シート10においては、上記のように感熱記録層13に、少なくとも発色剤と、顕色剤と、上記のメチレンビスフェノール系化合物と、上記のジフェノキシエタン系化合物からなる増感剤とを含有させるようにし、一般的にはこれらをバインダによって結着させ、必要に応じて、パラフィンワックスからなる滑剤を含有させるようにする。
【0017】
ここで、この感熱記録層13における発色剤としては、一般に使用されている公知のロイコ系染料が用いられ、例えば、3−(N−イソペンチル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−o−クロロアニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジェチルアミノ−6−メチル−7−p−トルイジノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン、3−(N−エチル−N−イソペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジェチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジェチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジェチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジメチルアミノ−5−メチル−7−メチルフルオラン、3−(N−メチル−N−n−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソブチル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エトキシプロピル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3−ジェチルアミノ−6−メチル−8−メチルフルオラン、3−ジェチルアミノ−7−クロロフルオラン等のフルオラン系化合物や、トリフェニルメタン系,フェノチアジン系,オーラミン系,スピロピラン系,インドリノフタリド系等の化合物を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
また、この感熱記録層13における顕色剤としては、上記のようなロイコ系染料に対して加熱時に反応して、これを発色させる種々の電子受容性物質を用いることができ、例えば、一般に使用されているベントナイト、ゼオライト、酸性白土、活性白土、シリカゲル、酸化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化アルミニウム、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、ジ−m−クロロフェニルチオ尿素、ジ−m−トリフロロメチルフェニルチオ尿素、ジ−フェニルチオ尿素、サリチルアニリド、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)、4,4’−sec−ブチリデンジフェシール、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−メチルフェノール)、4−tert−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシジフエノキシド、α−ナフトール、β−ナフトール、5−ヒドロキシフタル酸ジメチル、メチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−ヒドロキシアセトフエノン、ノボラツク型フェノール樹脂、2,2’−チオビス(4,6−ジクロロフェノール)、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシン、フロログリシンカルボン酸、4−tert−オクチルカテコール、2,2’−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ジヒドロキシジフェニル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−クロルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−o−クロルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−n−オクチル、安息香酸、サリチル酸亜鉛、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸亜鉛、4−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,2’−ジフェノールスルホン、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソブチルオキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフイド、2−ヒドロキシ−p−トルイル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸錫、酒石酸、シユウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、ステアリン酸、4−ヒドロキシフタル酸、ホウ酸、ビイミダゾール、ヘキサフェニルビイミダゾール、4臭化炭素、メチレンビス−(オキシエチレンチオ)ジフェノール、エチレンビス−(オキシエチレンチオ)ジフェノール、ビス−(4−ヒドロキシフェニルチオエチル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニルチオエチル)エーテル、m−キシリレンビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)エーテル等を用いることができる。
【0019】
また、この感熱記録層13におけるバインダとしては、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カゼイン、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、メチルビニル−無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリルニトリル、メチルビニルエーテルなどの水系樹脂を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、この感熱記録層13に含有させる上記のパラフィンワックスからなる滑剤としては、レーザ回折・散乱式粒度分析測定機で測定した50%平均粒子径が0.6μm以下のエマルジョンを用いることが好ましく、特に、このようなパラフィンワックスを固形分配合比で感熱記録層中に5〜25重量%含有させるようにすると、高い発色感度を維持しながら、印字部におけるボイドの発生が十分に抑制されるようになる。
【0021】
また、上記の感熱記録シート10において、上記の基材シート11としては、紙、不織布、プラスチックフィルム、金属箔及びこれらを組み合わせた複合シートなどを用いることができる。
【0022】
また、上記のアンダーコート層12は、感熱記録層13を発色させるためにサーマルヘッドから与えられた熱の放散を防ぐ断熱性やクッション性等の機能を有するものであり、このようなアンダーコート層12を形成するにあたっては、バインダに充填剤を添加させるようにし、必要に応じて、架橋剤、分散剤、消泡剤、耐水化剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加させるようにする。
【0023】
ここで、上記のアンダーコート層12におけるバインダとしては、上記の感熱記録層13のバインダと同様のものを用いることができる。
【0024】
また、上記のアンダーコート層12に用いる充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリナイト、ケイソウ土、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ポリスチレン樹脂粒子、尿素−ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
また、上記のオーバーコート層14として、この実施形態においては、上記の感熱記録層13の上に形成する第1オーバーコート層14aと、この第1オーバーコート層14aの上に形成する第2オーバーコート層14bとを設けるようにした。但し、オーバーコート層14は、このように第1オーバーコート層14aと第2オーバーコート層14bとを積層させた構造のものに限られず、単層のものであってもよい。
【0026】
ここで、上記の第1オーバーコート層14aは、主として、感熱記録層13の耐水性、耐薬品性、耐可塑剤性等を向上させるためのものであり、バインダとしては、上記の感熱記録層13やアンダーコート層12と同様のバインダを用いることができる。
【0027】
また、上記の第2オーバーコート層14bは、主として、サーマルヘッドに対する感熱記録層13のマッチング性を向上させて、感熱記録層13における発色が適切に行われるようにするためのものであり、バインダに充填剤を添加させるようにし、必要に応じて、滑剤、架橋剤、分散剤、消泡剤、耐水化剤などの添加剤を添加させるようにする。
【0028】
ここで、この第2オーバーコート層14bのバインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン;ポリビニルカルバゾール;デンプン類;セルロース誘導体;アルギン酸塩;アクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル樹脂;アルキッド樹脂;マレイン酸樹脂;アクリロニトリル樹脂;エポキシ樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;スチレン樹脂;ウレタン樹脂;ビニリデン樹脂などを単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、第2オーバーコート層14bの充填剤としては、上記のアンダーコート層12に用いる充填剤と同様のものを用いることができる。
【0030】
また、上記の感熱記録シート10をラベルとして使用する場合には、例えば、図2に示すように、上記の基材シート11の裏面に、通常は障壁層15を介して粘着剤層16を設け、この粘着剤層16に剥離紙17を剥離可能に貼着させるようにする。なお、上記の障壁層15を設けないようにすることも可能である。
【0031】
ここで、障壁層15は、粘着剤層16の成分が基材シート11及びアンダーコート層12を通して感熱記録層13に拡散するのを防止すると共に、この感熱記録シート10がカールするのを防止するためのものである。
【0032】
そして、この障壁層20の材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カゼイン、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、メチルビニル−無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、マレイン酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メチルビニルエーテルなどの水系樹脂を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0033】
次に、この発明の具体的な実施例における感熱記録シートについて説明すると共に、この実施例の感熱記録シートにおいては、高い発色感度が得られると共に、長期間放置した場合にも地肌部において高い白色度が維持されることを、比較例を挙げて明らかにする。
【0034】
(実施例1)
実施例1においては、基材シート11に坪量50g/m2の上質紙を用いるようにした。
【0035】
そして、この基材シート11の上にアンダーコート層12を形成するにあたっては、アンダーコート層用塗液として、焼成カオリンが20重量部、ポリアクリル酸エステルエマルジョン(固形分濃度10重量%)が15重量部、スチレン/ブタジエンラテックス(固形分濃度45重量%)が20重量部、水が45重量部の割合になった組成物を混合攪拌させたものを用い、このアンダーコート層用塗液を上記の基材シート11の表面に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が5g/m2になったアンダーコート層12を形成した。
【0036】
次に、このアンダーコート層12の上に感熱記録層13を形成するにあたっては、下記のように調製した感熱記録層用塗液を用いるようにした。
【0037】
先ず、発色剤としてロイコ系染料である3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランが30重量部、メチルセルロースの10重量%水溶液が35重量部、水が35重量部の割合になった組成物を、サンドミルで平均粒径が0.8μm以下になるまで分散させて第1分散液を得た。
【0038】
また、顕色剤である3,3´−ジアリル−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホンが15重量部、増感剤としてジフェノキシエタン系化合物である1,2−ビス−(3−メチルフェノキシ)エタンが15重量部、メチレンビスフェノール系化合物である2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)が0.3重量部、メチルセルロース10重量%水溶液が35重量部、水が35重量部の割合になった組成物を、サンドミルで平均粒径が0.8μm以下になるまで分散させて第2分散液を得た。
【0039】
そして、上記の第1分散液を8重量部、上記の第2分散液を24.1重量部、軟質炭酸カルシウムを9重量部、ポリアクリル酸エステルエマルジョン(固形分濃度45重量%)を7重量部、水を37重量部の割合にし、これを混合攪拌させて感熱記録層用塗液を得た。なお、この感熱記録層用塗液においては、第1分散液に含まれる発色剤としてのロイコ系染料に対して、第2分散液に含まれるメチレンビスフェノール系化合物の割合Xが3重量%になるようにした。
【0040】
そして、この感熱記録層用塗液を上記のアンダーコート層12の上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が4g/m2になった感熱記録層13を形成した。
【0041】
次いで、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分濃度30重量%)からなる第1オーバーコート層用塗液を上記の感熱記録層13の上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.5g/m2になった第1オーバーコート層14aを形成した。
【0042】
さらに、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分濃度30重量%)が75重量部、軟質炭酸カルシウムが5重量部、ポリエチレンワックス(固形分濃度40重量%)が10重量部、水が10重量部の割合になったものを混合攪拌させて得た第2オーバーコート層用塗液を、上記の第1オーバーコート層14aの上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1g/m2になった第2オーバーコート層14bを形成した。
【0043】
また、上記の基材シート11の裏面に、酢酸ビニルエマルジョン(固形分濃度40重量%)からなる障壁層用塗液を塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が2g/m2になった障壁層15を形成した。
【0044】
そして、剥離紙17の上にアクリル系エマルジョン粘着剤を塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が20g/m2になった粘着剤層16を剥離紙17の上に形成し、図2に示すように、この粘着剤層16を上記の基材シート11に設けられた障壁層15に接着させて、ラベルとして使用する実施例1の感熱記録シートを得た。
【0045】
(実施例2〜6)
実施例2〜6においては、上記の実施例1における感熱記録層用塗液の調製において、上記の第2分散液に含有させるメチレンビスフェノール系化合物である2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)の量(Y)を変更させると共に、感熱記録層用塗液におけるこの第2分散液の量を、発色剤と顕色剤との重量比が2:3になるように調整し、発色剤としてのロイコ系染料に対するメチレンビスフェノール系化合物の割合X(X=10Y)が、実施例2では7重量%、実施例3では10重量%、実施例4では15重量%、実施例5では35重量%、実施例6では70重量%になった各感熱記録層用塗液を用い、それ以外は上記の実施例1の場合と同様にして、実施例2〜6の各感熱記録シートを得た。
【0046】
(実施例7)
実施例7においては、上記の実施例1における感熱記録層用塗液の調製において、上記の実施例2の場合と同様に発色剤としてのロイコ系染料に対するメチレンビスフェノール系化合物である2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)の割合Xが7重量%になるように調整すると共に、50%の平均粒子径が0.5μmのパラフィンワックスエマルジョンからなる第3液を、感熱記録層用塗液の全固形分に対するパラフィンワックスの固形分配合比が3重量%になるように加えた感熱記録層用塗液を用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例7の感熱記録シートを得た。
【0047】
(比較例1)
比較例1においては、上記の実施例1における感熱記録層用塗液の調製において、上記の第2分散液に、メチレンビスフェノール系化合物である2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)を含有させないようにして、感熱記録層用塗液におけるこの第2分散液の量を、発色剤と顕色剤との重量比が2:3になるように調整し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例1の感熱記録シートを得た。
【0048】
(比較例2)
比較例2においては、上記の実施例1における感熱記録層用塗液の調製において、上記の第2分散液に、メチレンビスフェノール系化合物である2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)と増感剤である1,2−ビス−(3−メチルフェノキシ)エタンとを含有させないようにして、感熱記録層用塗液におけるこの第2分散液の量を、発色剤と顕色剤との重量比が2:3になるように調整し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例2の感熱記録シートを得た。
【0049】
(比較例3)
比較例3においては、上記の実施例1における感熱記録層用塗液の調製において、上記の第2分散液に、増感剤である1,2−ビス−(3−メチルフェノキシ)エタンを含有させないようにする一方、上記の実施例2の場合と同様に、発色剤としてのロイコ系染料に対するメチレンビスフェノール系化合物である2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)の割合Xが7重量%になるように調整すると共に、感熱記録層用塗液における第2分散液の量を、発色剤と顕色剤との重量比が2:3になるように調整し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例3の感熱記録シートを得た。
【0050】
そして、上記の実施例1〜7及び比較例1〜3の各感熱記録シートに対して、市販の感熱プリンタ((株)寺岡精工製;TERAOKA MP−1)を用い、印字速度50mm/sec,印加電圧24.0V,ヘッド抵抗値1533Ω,パルス幅0.157〜0.354msに設定し、印字エネルギー0.07mJ/dotと0.09mJ/dotとの条件でそれぞれ印字を行い、各印字エネルギー条件での印字濃度をマクベス濃度計RD−914を用いて測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0051】
また、上記の実施例1〜7及び比較例1〜3の各感熱記録シートにおいて、上記の第1オーバーコート層14aと第2オーバーコート層14bとを設けずに、各感熱記録層13が表面に露出するようにし、この状態で、実施例1〜7及び比較例1〜3の各感熱記録シートを40℃の温度条件下で7日間放置させるようにした。そして、各感熱記録シートにおける感熱記録層の放置前の白色度(%)と放置後の白色度(%)とを測定すると共に、放置前に対する放置後の白色度の減少量を求め、これらの結果を下記の表1に示した。
【0052】
ここで、白色度の測定においては、フォトボルト方式の反射濃度計(東京電色有限会社製:TC−60DS/A)を用い、標準白板における光の反射量を100とし、この反射量に対する各感熱記録層における反射量の比率を求めた。
【0053】
【表1】

【0054】
この結果、感熱記録層にメチレンビスフェノール系化合物と増感剤となるジフェノキシエタン系化合物とを含有させた実施例1〜7の各感熱記録シートは、メチレンビスフェノール系化合物を含有させていない比較例1,2の感熱記録シートに比べて、放置後における白色度の減少量が少なくなっており、長期間放置しても、地肌部が高い白色度が維持されるようになると共に、印字濃度も特に低エネルギーの条件で向上した。また、増感剤となるジフェノキシエタン系化合物を含有させていない比較例2,3の感熱記録シートに比べると、各印字エネルギー条件での印字濃度が大きく向上しており、高い発色感度が得られた。また、表には示していないが、パラフィンワックスエマルジョンを添加した実施例7の感熱記録シートは、他の実施例や比較例の感熱記録シートに比べて、印字部におけるボイドが減少していた。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の一実施形態に係る感熱記録シートの層構成を示した断面説明図である。
【図2】同実施形態の感熱記録シートをラベルに使用する場合の層構成を示した断面説明図である。
【符号の説明】
【0056】
10 感熱記録シート
11 基材シート
12 アンダーコート層
13 感熱記録層
14 オーバーコート層
14a 第1オーバーコート層
14b 第2オーバーコート層
15 障壁層
16 粘着剤層
17 剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に感熱記録層が形成された感熱記録シートにおいて、上記の感熱記録層に、少なくとも発色剤と、顕色剤と、メチレンビスフェノール系化合物と、ジフェノキシエタン系化合物からなる増感剤とが含有されていることを特徴とする感熱記録シート。
【請求項2】
請求項1に記載の感熱記録シートにおいて、上記のメチレンビスフェノール系化合物が、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4,6−ジ(tert−ブチル)フェノール]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−メチルシクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]から選択される少なくとも1種であることを特徴とする感熱記録シート。
【請求項3】
請求項2に記載の感熱記録シートにおいて、上記のメチレンビスフェノール系化合物が、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)であることを特徴とする感熱記録シート。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の感熱記録シートにおいて、上記のメチレンビスフェノール系化合物が、発色剤に対して3〜70重量%の範囲で含有されていることを特徴とする感熱記録シート。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の感熱記録シートにおいて、上記の増感剤となるジフェノキシエタン系化合物が、1,2−ビス−(3−メチルフェノキシ)エタンと1,2−ビスフェノキシエタンとから選択される少なくとも1種であることを特徴とする感熱記録シート。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の感熱記録シートにおいて、上記の感熱記録層に、パラフィンワックスからなる滑剤が含有されてなることを特徴とする感熱記録シート。

【図1】
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【図2】
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