説明

感熱記録ラベル

【課題】ディレードタック型粘着剤層の活性化の際に生じる感熱記録層の発色を防止できる感熱記録ラベルを提供することを目的とする。
【課題の解決手段】用紙2の一面に感熱記録層3を設け、他面にはディレードタック型粘着剤層4を設けてなる感熱記録ラベル1であって、ラベル全体の厚みが90〜140μm、より好ましくは95〜130μmであり、かつ、感熱記録層3と用紙2の厚みの合計、すなわち感熱用紙の厚みは80〜110μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録ラベルに関し、特にディレードタック型粘着剤層を備えた感熱記録ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用紙の一面に感熱記録層を設け、他面にはディレードタック型粘着剤層を設けてなる感熱記録ラベルは知られている。この構成の感熱記録ラベルは、剥離紙が不要になる利点を有する一方、感熱記録層と、ディレードタック型粘着剤層とは、ともに所定以上の熱が付与されて機能するので、通常、サーマルプリンタによる記録後に行われるディレードタック型粘着剤層の活性化の際に、感熱記録層が発色して記録内容が判読不能になる事態が生じることがある。従来、このような事態を避けるために、感熱記録層と用紙との間及び/又は用紙とディレードタック型粘着剤層との間に、微小中空球粒子及び/又はポーラスな顔料を主成分とする層を設けることが行われている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】実公平5−11573号公報
【0004】
ところが、感熱記録層と用紙との間及び/又は用紙とディレードタック型粘着剤層との間に、微小中空球粒子及び/又はポーラスな顔料を主成分とする層を設ける、という新たな層を設ける加工が必要になるため、ラベルの作成工程が増えて煩雑であるとともに、コストアップにも繋がるという不都合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、新たな加工を施すことなく、ディレードタック型粘着剤層の活性化の際に生じる感熱記録層の発色を防止できる感熱記録ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明者らは鋭意実験を重ねた結果、次のような知見を得ることができた。まず、感熱記録層と用紙の厚みの合計、即ち感熱用紙の厚みが80μmよりも薄いと、ディレードタック型粘着剤層を活性化するときの熱で、前記感熱記録層が発色する可能性があるとともに、熱によるカールが大きくなってサーマルプリンタでの紙詰まりが発生しやすくなる。また、ディレードタック型粘着剤層の乾燥厚みが10μm未満であると、必要な粘着性が得られない一方、30μmを超えて塗工すると、熱活性時の熱が深部まで到達しにくくなるため、深部の粘着性は活性化されない場合があるため、30μmを超えた塗工は意味がないものとなる。さらに、感熱記録ラベル全体の厚みが140μmよりも厚いと、粘着剤を被覆する剥離紙を有する感熱記録ラベルと同程度の厚みとなってしまい、連続状態の感熱記録ラベルをロール状に巻回した製品にしたときに、紙巻き数が少なくなり、剥離紙を有しないことによる紙重量の低減化という利点がなくなってしまう。以上のことから、ディレードタック型粘着剤層の厚さは、10〜30μmがよく、より好ましくは15〜30μmであることが判明した。また、感熱記録ラベル全体の厚さは、90〜140μmがよく、より好ましくは95〜130μmであり、感熱記録層を含めた感熱用紙の厚さは、80〜110μmが好ましいことが判明した。
【0007】
またさらに、ディレードタック型粘着剤の活性化温度が80度C以下である場合には、70度C以下の温度で活性化が開始されるので、輸送車両内の温度が70度Cに達する夏期においては、ディレードタック型粘着剤層の粘着性が発現し、ブロッキングが発生して、紙破れや感熱記録層の破壊が生じることにより、使用不能となる虞がある。一方、130度Cよりも高い活性化温度であると、活性化に要するエネルギーが大きくなり、加熱する装置に負担がかかって、部品が消耗しやすく、壊れやすくなる。さらにこの場合は、粘着剤の活性化に要する時間が長くなり、感熱記録ラベルの発行スピードが遅くなってしまう。したがって、夏期にブロッキングせず、装置に負担をかけないことを考慮すると、80〜130度Cの活性化温度を有するディレードタック型粘着剤が好適であり、より好ましくは、90〜110度Cの範囲である。この活性化温度の調整は、おおよそワックスや固体可塑剤の融点がディレードタック型粘着剤の活性化温度となるので、粘着剤成分中のワックスや固体可塑剤に融点が80〜130度Cのものを使用すればよい。
【0008】
本発明の請求項1に係る感熱記録ラベルは、上述の知見に基づいてなされたもので、用紙の一面に感熱記録層を設け、他面にはディレードタック型粘着剤層を設けてなる感熱記録ラベルであって、全体の厚みが90〜140μm、より好ましくは95〜130μmであり、かつ、感熱記録層と用紙の厚みの合計が80〜110μmであることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に係る感熱記録ラベルは、同じく上述の知見に基づいてなされたもので、用紙の一面に感熱記録層を設け、他面にはディレードタック型粘着剤層を設けてなる感熱記録ラベルであって、全体の厚みが90〜140μmであり、かつ、ディレードタック型粘着剤層の乾燥厚みが10〜30μmであることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る感熱記録ラベルは、同じく上述の知見に基づいてなされたもので、上記各構成において、ディレードタック型粘着剤層の活性化温度が80〜130度Cであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る感熱記録ラベルによれば、新たな層などを設けることなく、ディレードタック型粘着剤層の活性化の際に生じる感熱記録層の発色を防止できるという効果を奏する。加えて、請求項3に係る本発明によれば、環境温度に拘わらず、ブロッキングの発生を確実に阻止できるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を配送伝票に適用した場合の好適な実施形態を添付図面に基づき説明する。ここにおいて、図1は配送伝票の平面図、図2は図1の概略的なA−A線断面図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、ラベル状の配送伝票1は、伝票用紙2の一面に感熱記録層3を設け、他面にはディレードタック型粘着剤層4を設けてなり、切り用ミシン目5,6で表題部7と配達票兼受領票8と貼付票9とに区画形成されている。また、前記配達票兼受領票8の裏面には、ディレードタック型粘着剤層4を被覆するように、剥離ニス層10を設けている。なお、この剥離ニス層10を設ける際に、塗工精度が悪いと、切り用ミシン目5,6を越えて表題部7と貼付票9にはみ出す場合があるが、これによって不都合が生じることはない。ここで、配送伝票1の伝票用紙2と感熱記録層3を合わせた感熱用紙としての厚さは80〜100μm、ディレードタック型粘着剤層4の厚さは15〜30μm、剥離ニス層10の厚さは0.5〜2.5μmである。したがって、配送伝票1全体の厚さは、95.5〜132.5μmとなる。
【0014】
図1に示すように、表題部7の感熱記録層面には、「配送伝票」なる表題11が印刷されている。配達票兼受領票8の感熱記録層3面には、届け先と依頼主を印字する配送情報記入欄12及び伝票番号などの問い合せ番号を印字する問い合せ番号記入欄13が印刷されるとともに、受領印捺印欄14が印刷されている。また、配達票兼受領票8の感熱記録層3面には、切り用ミシン目6側の左隅部に三角形の剥離開始端表示15と、この剥離開始端表示15に向けた矢印と「ここからはがして下さい」の文からなる剥離開始端指示表示16とが印刷されている。さらに、貼付票9の感熱記録層3面には、届け先と依頼主と品名と取扱店を印字する配送情報記入欄17及び伝票番号などの問い合せ番号を印字する問い合せ番号記入欄18が印刷されている。
【0015】
上述の感熱記録層3で使用されるロイコ染料は、単独で又は複数混合して適用されるが、従来この種感熱材料に適用されているものから選択すればよい。例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フエノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系などの染料のロイコ化合物が好適である。具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、6−クロロ−8−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピランなどが挙げられる。また、感熱記録層3で使用される顕色剤は、前記ロイコ染料を接触時に発色させる電子受容性の種々の化合物又は酸化剤などが適用されるが、この種の顕色剤も従来公知である。具体的には、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、p−ニトロ安息香酸亜鉛などが挙げられる。
【0016】
また、上述のディレードタック型粘着剤は、通常状態では粘着性を有さず、熱を与えることで、過熱後には一定の間粘着性を有するものであって、従来公知である。すなわち、熱接着性樹脂剤、粘着付与剤、可塑剤からなり、必要に応じてワックス、酸化防止剤、乾燥剤、潤滑剤などの添加剤が添加されてなる。具体的には、熱接着性樹脂剤としては、エチレン−エチルアクリル酸共重合体、エチレン−メチルメタクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−エチレン共重合体、ポリメタクリル酸ブチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、酢酸ビニル−アリル酸2−エチルヘキシル共重合体、ビニルピロリドン−スチレン共重合体、ビニルピロリドン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレア樹脂などを挙げることができる。また、粘着付与剤としては、ロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトール変性ロジン、石油樹脂、インデン樹脂、エチルセルロース、αメチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、テンペル油重合体、テンペルフェノール重合体などを挙げることができる。さらに、可塑剤としては、フタル酸ジヒドロアビエチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジメチル、トリ安息香酸エチレングリコール、テトラ安息香酸トリメチロールエタン、クエン酸トリジクロルヘキシル、ステアリン酸メトキシエチル−尿素錯体などを挙げることができる。
【0017】
さらに、剥離ニス層10は、例えば、紫外線に反応して重合できるアクリロイル基やメタクロイル基を1個以上持った反応性シリコーンオイルを1〜15重量%、より好ましくは3〜15重量%含んだ紫外線硬化メジウムニスを採用することができる。この剥離性紫外線硬化型ニスによれば、剥離ニス層10を通常のオフセット印刷やフレキソ印刷により容易に形成できるとともに、活性化されたディレードタック型粘着剤層4に対する剥離性も非常に高いものとなる。剥離ニス層10が0.5μm未満では、印刷ムラなどでスがある表面状態となって、ディレードタック型粘着剤層4が露出してしまう虞がある一方、2.5μmを超えると、剥離ニス層10設置部分との境界での段差が大きくなって、ディレードタック型粘着剤層4表出面の平滑性が損なわれる。
【0018】
本実施形態は上述のごとく構成したので、配送伝票1を連続状に構成し、ロール上に巻回した状態で保管しても、ブロッキングが起きることがなく、サーマルプリンタ(図示せず)で、円滑、かつ確実に、各情報記入欄12,13,17,18に所定情報を印字することができる。その後、ディレードタック型粘着剤を活性化するが、この際に、感熱記録層3がディレードタック型粘着剤層4に与えられる熱の影響で発色することがない。そして、所定情報が印字され、ディレードタック型粘着剤が活性化された配送伝票1は、ディレードタック型粘着剤層4によって配送品の包装容器(図示せず)に貼付される。
【0019】
この時、配達票兼受領票8のディレードタック型粘着剤層4は剥離ニス層10で被覆されているので、配達票兼受領票8は包装容器と非接触状態にある。この状態で配送されるのであるが、この配送作業における適宜な時に、包装容器に貼付されている配送票兼受領票8が剥離され、配送先で受領印捺印欄14に受領印の捺印を受ける。前記配達票兼受領票8は、剥離開始端表示15が印刷された隅部から、切り用ミシン目6を破断しながら捲り上げて剥離され、切り用ミシン目5を破断することによって、表題部7及び貼付票9から分離される。
【0020】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、配送伝票1以外のラベル状製品にも適用可能であり、一旦接着後に剥離する必要がない場合には、剥離ニス層10を設ける必要はない。また、感熱記録層3を被覆保護するための剥離ニス層を設けることもでき、この場合の剥離ニス層の厚さも0.5〜2.5μmが好適である。この際、受領印捺印欄14の捺印適性を確保するために、受領印捺印欄14部分には剥離ニス層を設けないことが望ましいが、この受領印捺印欄14部分のブロッキングを阻止するために、受領印捺印欄14に対応するディレードタック型粘着剤層4面に各切り用ミシン目5,6と垂直方向に延びる帯状に、剥離ニス層を設けると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】配送伝票の平面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 配送伝票
2 伝票用紙
3 感熱記録層
4 ディレードタック型粘着剤層
5,6 切り用ミシン目
7 表題部
8 配達票兼受領票
9 貼付票
10 剥離ニス層
12,17 配送情報記入欄
13,18 問い合せ番号記入欄
14 受領印捺印欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の一面に感熱記録層を設け、他面にはディレードタック型粘着剤層を設けてなる感熱記録ラベルであって、全体の厚みが90〜140μmであり、かつ、感熱記録層と用紙の厚みの合計が80〜110μmであることを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項2】
用紙の一面に感熱記録層を設け、他面にはディレードタック型粘着剤層を設けてなる感熱記録ラベルであって、全体の厚みが90〜140μmであり、かつ、ディレードタック型粘着剤層の乾燥厚みが10〜30μmであることを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項3】
ディレードタック型粘着剤層を構成するディレードタック型粘着剤の活性化温度が80〜130度Cであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の感熱記録ラベル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−145844(P2010−145844A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324452(P2008−324452)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】