説明

感熱記録材料及び感熱記録材料積層体

【課題】本発明の課題は、高耐熱性感熱記録材料のような高い印字エネルギーを必要とする感熱記録材料、あるいは、別の基材に加熱により貼り合わせて積層体の形で使用する感熱記録材料において、きれいな画像を形成でき、貼り合わせる際の作業性に優れた感熱記録材料を提供することである。
【解決手段】支持体上に、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体、加熱溶融により該染料前駆体に色調変化を生じせしめる電子受容性化合物を含む感熱記録層と保護層を設けた感熱記録材料において、該保護層に少なくともビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を含有させる。支持体が熱可塑性樹脂基材であると好ましい。保護層はシリカを含有すると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーを与えることによって画像を形成する感熱記録材料、具体的には、高耐熱性感熱記録材料のような高い印字エネルギーを必要とする感熱記録材料、あるいは、別の基材に加熱により貼り合わせて積層体の形で使用する感熱記録材料に関するも
のである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子供与性染料前駆体(以下、ロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られており、ファクシミリ、ワードプロセッサー、科学計測機等のプリンターなど多岐にわたりに使用されている。
【0003】
近年では、高温での記録の保存性を改良し、100℃以上の熱によっても地肌かぶりの起こらない感熱記録材料が開発されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。これらの感熱紙は自身が保持する耐熱性のため、発色に必要なエネルギーも高い。この高い印字エネルギーに耐えることが可能な高耐熱性の保護層が必要である。保護層が十分な耐熱性ポリカーボネート/PET−Gを有していない場合、ヘッド走行性が悪くなり、印字の際に雑音を発したり、さらにひどい場合には、印字部分に傷が入ってしまう場合もある。
【0004】
このようなヘッド走行性の改良の手段として、シリコーン成分がブロック状又はグラフト状に結合した樹脂(以下、シリコーン樹脂ともいう)がイソシアネートによって架橋された保護層、あるいはシリコーン樹脂と該樹脂を架橋する架橋剤及び紫外線硬化樹脂を組み合わせた保護層が報告されている(例えば、特許文献4、5参照)。特許文献4では、シリコーン樹脂として、シリコーン変性ポリ(メタ)アクリル酸エステル、シリコーン変性ポリウレタンが例示されている。シリコーン樹脂とイソシアネートからなる保護層が十分な耐熱性を保持するためには、シリコーン樹脂を十分に硬膜する必要があり、そのためには高い乾燥温度と十分な乾燥時間を要する。その結果、乾燥の熱によって地肌白色度が悪化するという欠点がある。一方、シリコーン樹脂と架橋剤、紫外線硬化樹脂の組み合わせによる保護層は、高耐熱性の紫外線硬化樹脂を含んでいるため、シリコーン樹脂の硬膜性に関わらず、耐熱性の高い保護層を形成できるものの、紫外線照射を行うため、紫外線硬化樹脂を使用しない場合と比べて地肌が悪くなってしまうという欠点がある。
【0005】
感熱記録材料は、通常、紙、フィルム等のロール状支持体に、コーター等の塗布装置を用いて、感熱記録層塗液、保護層塗液等の各種塗液を順次塗布・積層して製造される。こうして得られたロール状の感熱記録材料は、幅方向に連続的にスリット処理して小さいロール形態にしたり、ギロチンあるいは打ち抜き加工機等の裁断処理装置で裁断して、シートあるいはカード形態にしたりして使用される。また、支持体の反対面に接着層を設け、該感熱記録材料と別の基材との間に、光メモリ、接触式IC、非接触式IC等の情報記録媒体を内在させ、加熱等によりラミネートした後、カードサイズに打ち抜いて使用する方法も数多く提案されている。上記のごとく、シリコーン樹脂と架橋剤からなる保護層、及びこれらと紫外線硬化樹脂を含んだ保護層は、架橋により塗層が硬くなりすぎ、かえって脆くなるせいか、スリット、裁断作業時に、切断面から塗層が基材から剥がれて粉落ちするといった問題が発生する。こうした粉落ちは、清掃作業が増える等の作業効率の低下を招くだけでなく、感熱記録材料に固定情報を印刷する用途の場合には意匠性が劣る問題が生じていた。特に、ベタ印刷した場合に、粉落ち部に印刷が乗らず、白く抜けたようになり、見栄えが低下し、それを避けるためデザインが制限されるという問題が生じる。
【特許文献1】特開平6−92019号公報
【特許文献2】特開2000−135864号公報
【特許文献3】特開2002−96561号公報
【特許文献4】特開平9−175028号公報
【特許文献5】特開平9−175021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高耐熱性感熱記録材料のような高い印字エネルギーを必要とする感熱記録材料、あるいは、別の基材に加熱により貼り合わせてカード等の積層体の形で使用する感熱記録材料において、印字濃度が高く、印字部の傷みがなく、印字動作がスムーズであるとともに、貼り合わせたり断裁したりする際の作業性に優れた感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、以下の発明に至った。
【0008】
本発明は、支持体上に、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体、加熱溶融により該染料前駆体に色調変化を生じせしめる電子受容性化合物を含む感熱記録層と保護層を設けた感熱記録材料において、該保護層が少なくともビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を含んでなる感熱記録材料の発明である。
【0009】
また、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体におけるウレタン系重合体鎖部が、加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)の残基であり、ビニル系重合体鎖部が、モノマー成分としてエチレン性不飽和単量体(B)、及び加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基とエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基とを有する化合物(C)を用いて得られる重合体の残基であることを特徴とする感熱記録材料の発明である。
【0010】
シリコーン系重合体鎖部が、前記ウレタン系ポリマー(A)における加水分解性珪素含有基と、前記化合物(C)における加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基と、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D)とにより形成されている感熱記録材料の発明である。
【0011】
エチレン性不飽和単量体(B)が少なくともアクリル系単量体を含むと好ましい。
【0012】
保護層が、さらにシリカを含有すると好ましい。
【0013】
前記支持体が、熱可塑性樹脂からなる支持体であると好ましい。
【0014】
本発明の感熱記録材料をさらに別の基材に加熱により貼り合わせて形成されることを特徴とする感熱記録材料積層体の発明である。
【0015】
加熱による貼り合わせが90℃以上の温度で行われると好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体、加熱溶融により該染料前駆体に色調変化を生じせしめる電子受容性化合物を含む感熱記録層と保護層を設けた感熱記録材料において、該保護層が少なくともビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を含んでいる。保護層にビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を含有させることにより、シリコーン系重合体鎖部が有する耐熱性、耐候性、良好な滑り性、離型性、ウレタン系重合体鎖部が有する適度な柔軟性、耐摩耗性、ビニル系重合体鎖部が有する透明性、耐候性を兼ね備えた保護層とすることが可能となり、それによって、スムーズな印字が可能で、印字部の傷みが少なく、地肌白色度、発色濃度、耐候性が良好で、断裁時の粉落ちのない感熱記録材料とすることが可能となる。
【0017】
本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体では、ビニル系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部とは相互溶解性が低いにもかかわらず、優れた透明性を有する硬化物(皮膜など)を形成することができる。これは、ビニル系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部とが結合しており、しかもシリコーン系重合体鎖部の他方の端部がビニル系重合体鎖部と結合している形態を有しているためであると思われる。このように、それぞれの鎖部の特性が効果的に発揮されているだけでなく、これらの鎖部が結合されていることによる特性も有効に発揮されている。従って、それぞれの鎖部の不満足な特性が相互に補完され、それぞれの鎖部の重合体が単に混合されている混合物とは異なって、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体として優れた特性が発揮されている。
【0018】
ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の各成分のうち、いずれか1種が抜けると、これらの品質の一部が失われる。また、ビニル系重合体鎖部、シリコーン重合体鎖部、ウレタン重合体鎖部のうちのいずれか2成分の共重合体、及び残り1成分の重合体を混合した場合は、本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を使用した場合に比べ、上記品質のうちのいずれかが低下する。ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体のように、3成分の共重合体とすることで、上記品質のバランスを取ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の感熱記録材料について詳しく説明する。本発明の感熱記録材料は、支持体上に、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体、加熱溶融により該染料前駆体に色調変化を生じせしめる電子受容性化合物を含む感熱記録層と保護層を設けた感熱記録材料において、該保護層が少なくともビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を含んでいる。
【0020】
本発明に係わる保護層を構成するビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体は、下記一般式1で表すことができる。
【0021】
【化1】

【0022】
一般式1において、X1はウレタン系重合体鎖部、X2はビニル系重合体鎖部、X3はシリコーン系重合体鎖部、W1、W2は2価の有機基、u1、u2は0又は1である。一般式1において、u1が1である場合、ウレタン系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部とは2価の有機基W1を介して結合していることを意味している。u1が0である場合、ウレタン系重合体鎖部X1とシリコーン系重合体鎖部とは直接結合していることを意味している。また、u2が1である場合、ビニル系重合体鎖部X2とシリコーン系重合体鎖部とは2価の有機基W2を介して結合していることを意味している。u2が0である場合、ビニル系重合体鎖部X2とシリコーン系重合体鎖部とは2価の有機基W2を介さずに直接結合していることを意味している。このように、ウレタン系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部との間及び/又はビニル系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部との間に、2価の有機基が介在していてもよい。
【0023】
2価の有機基W1、W2は特に制限されず、有機系原子(炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等)により形成された各種の2価の有機基から適宜選択することができる。具体的には、例えば、2価の炭化水素基(2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基や、これらの炭化水素基が2種以上組み合わせられた基等)、カルボニル基、オキシ基、イミノ基、チオカルボニル基、チオオキシ基や、これらの基が2種以上組み合わせられた基などが挙げられる。これらの基が2種以上組み合わされた基の例としては、W1では、「−NH−C(=O)−NH−2価の炭化水素基−」基、「−NH−C(=O)−S−2価の炭化水素基−」基、「−NH−C(=O)−NH−2価の炭化水素基−NH−2価の炭化水素基−」基などが挙げられ、W2では、「−O−C(=O)−」基、「−NH−C(=O)−」基、「−2価の炭化水素基−O−C(=O)−」基、「−2価の炭化水素基−NH−C(=O)−」基などが挙げられる。これらの基は、各種の置換基(特に、炭化水素基等の不活性な置換基)を1種又は2種以上有していてもよい。なお、置換基は、例えば、2価の炭化水素基における炭素原子や、イミノ基又は「−NH−」部における窒素原子などに結合させることができる。
【0024】
シリコーン系重合体鎖部は、Si−O結合から構成される。具体的には、シリコーン系重合体鎖部としては、例えば、骨格又は主鎖が「−(Si−O)g1−Si−」(g1は1以上の整数である)で表されるSi−O結合含有重合体、骨格又は主鎖が「−(Si−O)g2−V−(O−Si)g3−」(Vは2価の有機基を表す。ただし、「−(Si−O)g4−Si−」で表される基を除く。g2、g3、g4は1以上の整数。)で表されるSi−O結合含有重合体などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。骨格又は主鎖が「−(Si−O)g1−Si−」で表される場合、本発明に係わる保護層を構成するビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体は、下記一般式2で表すことができる。
【0025】
【化2】

【0026】
一般式2において、X1aは加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)の残基、X2aはモノマー成分としてエチレン性不飽和単量体(B)及び加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基とエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基とを有する化合物(C)を用いて得られる重合体の残基、u3は0以上の整数である。また、W1、W2、u1、u2は、一般式1と同じである。
【0027】
一般式2では、シリコーン系重合体鎖部は、骨格又は主鎖のみが示されている。具体的には、一般式2における「Si−O−(Si−O)u3−Si」の部位がシリコーン系重合体鎖部の骨格又は主鎖を指している。このようなシリコーン系重合体鎖部における骨格又は主鎖中の各珪素原子には、炭化水素基(アルキル基など)、水素原子、ヒドロキシル基、炭化水素−オキシ基(アルコキシ基など)、シリコーン系重合体鎖部などが結合していてもよく、また、ウレタン系重合体鎖部やビニル系重合体鎖部が2価の有機基を介して又は介さずに結合していてもよい。なお、一般式2におけるシリコーン系重合体鎖部に、他のシリコーン系重合体鎖部が結合している場合、他のシリコーン系重合体鎖部の末端には、ウレタン系重合体鎖部やビニル系重合体鎖部が2価の有機基を介して又は介さずに結合していてもよく、また、他のシリコーン系重合体鎖部における骨格又は主鎖中の各珪素原子には、前述のシリコーン系重合体鎖部と同様に、炭化水素基(アルキル基など)、水素原子、ヒドロキシル基、炭化水素−オキシ基(アルコキシ基など)、シリコーン系重合体鎖部などが結合していてもよく、また、ウレタン系重合体鎖部やビニル系重合体鎖部が2価の有機基を介して又は介さずに結合していてもよい。このような珪素原子に結合する基は、すべてが同一の基、部分的に同一の基、すべてが異なる基のいずれの形態でもよい。
【0028】
本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体におけるシリコーン系重合体鎖部は、ウレタン系ポリマー(A)における加水分解性珪素含有基と、化合物(C)における加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基と、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D)とにより形成されていると好ましい。これらの加水分解性珪素含有基は加水分解によりシラノール基を生成し、シラノール基同士が脱水縮合反応を起こすことでシロキサン結合を形成し、本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体におけるシリコーン系重合体鎖部を構成する。これらのシロキサン結合は、鎖状に2次元的に連結していてもよいし、3次元的に網目状の構造を有していてもよい。また、1つのシリコーン系重合体鎖部に、複数のウレタン系重合体鎖部、及び/又は複数のビニル系重合体鎖部が結合していてもよい。逆に、複数のシリコーン系重合体鎖部が、1つのウレタン系重合体鎖部や、1つのビニル系重合体鎖部に結合していてもよい。なお、すべてのシリコーン系重合体鎖部に、ウレタン系重合体鎖部及びビニル系重合体鎖部がそれぞれ1つ以上必ず結合している必要はない。なお、化合物(C)における加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基が、加水分解性珪素原子含有基である場合、この化合物(C)はシラン系化合物であるため、シリコーン系重合体鎖部を形成することが可能である。すなわち、化合物(C)は、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D)としても利用することもできる。
【0029】
上記シラン系化合物(D)において、加水分解性珪素原子含有基としては、加水分解性シリル基が好ましく、特にアルコキシシリル基(−OR1基)が好適である。具体的には、シラン系化合物(D)としては、下記一般式3a、3b、3cで表される加水分解性珪素原子含有基を含有するシラン系化合物を用いることができる。
【0030】
【化3】

【0031】
一般式3aにおいて、q1は1又は2であり、好ましくは2である。一般式3bにおいて、q2は1、2又は3であり、好ましくは2又は3である。一般式3cにおいて、q3は1、2、3又は4であり、好ましくは2、3又は4である。R1は炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など)を指し、特に脂肪族炭化水素基(アルキル基)が好適である。R2は水素原子又は炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など)を示し、特に脂肪族炭化水素基(アルキル基)が好適である。
【0032】
具体的には、R1、R2における脂肪族炭化水素としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基などが挙げられる。また、前記アルキル基に対応するアルケニル基、アルカジエニル基、アルキニル基なども用いることができ、不飽和結合の位置は特に制限されない。また、R1、R2の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基などの環を構成する炭素数が5〜10程度のシクロアルキル基の他、多環式炭化水素環(例えば、ノルボルナンにおける炭化水素環等の橋かけ環など)を有する基などが挙げられる。R1、R2の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基やナフチル基などのアリール基などが挙げられる。なお、芳香族炭化水素基における芳香族環としては、ベンゼン環や縮合炭素環(例えば、ナフタレン環等の2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環など)が挙げられる。R1、R2の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。R1、R2としては、脂肪族炭化水素基等の炭化水素基(特に、アルキル基)が好適であり、好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4のアルキル基である。シラン系化合物(D)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
上記のアルコキシシリル基(−OR1基)におけるアルコキシ基の特に好ましい例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基などの炭素数が1〜4のアルコキシ基を挙げることができる。さらに好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられ、なかでもメトキシ基、エトキシ基が好ましい。このようなアルコキシ基は、1つの珪素原子に通常1〜4個結合している。なお、アルコキシ基は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。すなわち、1つの珪素原子には、同一のアルコキシ基が結合していてもよく、異なるアルコキシ基が2種以上組み合わせられて結合していてもよい。
【0034】
また、R1、R2の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。該置換基等を介して、R1、R2の炭化水素基は、他の炭化水素基と結合して環(芳香族性環や非芳香族性環)を形成していてもよい。R1は、同一の又は異なる珪素原子に結合しているR1又はR2と結合していてもよく、R2は、同一の又は異なる珪素原子に結合しているR1又はR2と結合していてもよい。R1やR2が、異なる珪素原子に結合しているR1又はR2と結合している場合、前記珪素原子は、同一の分子中の珪素原子であってもよく、異なる分子中の珪素原子であってもよい。互いに結合しているR1やR2の珪素原子が、同一の分子中にある場合は環を構成することになり、異なる分子中にある場合は、架橋構造を構成することになる。なお、シラン系化合物(D)としては、その加水分解性珪素原子含有基が、一般式3aで表される加水分解性珪素原子含有基である場合、一般式3aで表される加水分解性珪素原子含有基を繰り返し単位又は繰り返し単位の一部として含有していてもよく、あるいは、繰り返し単位(又は繰り返し単位の一部)ではなく、単一の2価の基として含有していてもよい。なお、同一のシラン系化合物が、一般式3a、3b、3cで表されるシラン系化合物(D)に包含される場合があるが、その場合は、一般式3a、3b、3cのうちのいずれか一方の式に適宜分類することができる。
【0035】
上記のように、シラン系化合物(D)は分子中に、加水分解性珪素原子含有基を少なくとも1つ有していればよい。シラン系化合物(D)としては、例えば、下記一般式4a、4bで表される化合物を好適に用いることができる。
【0036】
【化4】

【0037】
一般式4aにおいて、R3、R4は同一又は異なる、水素原子又は炭化水素基を示す。rは1又は2であり、好ましくは2である。sは1以上の整数である。R1、R2は前記に同じである。
【0038】
一般式4bにおいて、R5は、OR1又はR2を示し、R6は有機基を示す。tは1以上の整数である。R1、R2、rは前記に同じである。
【0039】
一般式4aにおけるR3、R4の炭化水素基としては、R1の炭化水素基と同様の炭化水素基が挙げられ、アルキル基が好適に使用される。また、R3、R4は、R1と同一の炭化水素基であっても、異なる炭化水素基であってもよい。一般式4aで表されるシラン系化合物(D)は、sが1の場合は単量体であることを意味しており、sが2以上の整数の場合は、オリゴマー又はポリマー等の多量体であることを意味している。
【0040】
単量体の形態のシラン系化合物(D)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシランや、メトキシトリエトキシシラン等のアルコキシトリアルコキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のジアルコキシジアルコキシシランなどが挙げられる。また、多量体の形態のシラン系化合物(D)としては、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエトキシシラン、ポリテトラプロポキシシラン、ポリテトライソプロポキシシラン、ポリテトラブトキシシラン等のポリテトラアルコキシシラン;ポリ(メトキシエトキシシラン)等のポリ(アルコキシアルコキシシラン);ポリ(メトキシシラン)、ポリ(エトキシシラン)、ポリ(プロポキシシラン)、ポリ(イソプロポキシシラン)、ポリ(ブトキシシラン)等のポリ(アルコキシシラン);ポリ(メトキシメチルシラン)、ポリ(メトキシエチルシラン)、ポリ(エトキシメチルシラン)等のポリ(アルコキシアルキルシラン)などが挙げられる。
【0041】
一般式4bにおいて、R5は、OR1又はR2を示し、同一の珪素原子に結合している複数のOR1やR2は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R6は有機基を示す。R6の有機基としては、例えば、炭化水素基や、該炭化水素基の主鎖中に炭素原子以外の原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子など)を有するヘテロ原子含有基などが挙げられる。R6に係る炭化水素基やヘテロ原子含有基は、1価又は多価のいずれの形態を有していてもよい。R6の有機基としては、1価の炭化水素基を好適に用いることができる。該炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基などの脂肪族炭化水素基;シクロアルキル基などの脂環式炭化水素基;アリール基などの芳香族炭化水素基などが挙げられ、脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0042】
具体的には、R6に係る脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6、特に1〜4)程度のアルキル基や、該アルキル基に対応するアルケニル基(例えば、ビニル基、イソプロペニル基、1−エチルビニル基等の1−アルキルビニル基の他、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜20程度のアルケニル基など)、アルカジエニル基、アルキニル基などが挙げられる。
【0043】
また、R6に係る脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基などの環を構成する炭素数が5〜10程度のシクロアルキル基の他、多環式炭化水素環(例えば、ノルボルナンにおける炭化水素環等の橋かけ環など)を有する基などが挙げられる。R6に係る芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基やナフチル基などのアリール基などが挙げられ、該芳香族炭化水素基における芳香族性環としては、ベンゼン環や縮合炭素環(例えば、ナフタレン環等の2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環など)が挙げられる。
【0044】
6に係る炭化水素基やヘテロ原子含有基は、単数又は複数の置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、他の炭化水素基[例えば、脂肪族炭化水素基(ビニル基、イソプロペニル基、1−エチルビニル基等の1−アルキルビニル基;アルキル基など)、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など]、メルカプト基、置換オキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、エポキシ基、エポキシ−オキシ基(グリシドキシ基)、エポキシ−アルコキシ基、エポキシ−アリールオキシ基、エポキシ−シクロアルキルオキシ基、イソシアネート基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、オキソ基、アシル基、アシルオキシ基、置換オキシ基、複素環含有基などが挙げられる。置換基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。なお、2種以上の置換基が組み合わされている場合は、該2種以上の置換基は、それぞれ、同一又は異なる原子(炭素原子など)に結合していてもよく、また、いずれか1つの置換基が必要に応じて他の基を介して他の置換基に結合していてもよい。
【0045】
従って、R6としては、ビニル基やメルカプト基等のエチレン性不飽和反応性基の他、ビニル基−有機基、メルカプト−有機基等のエチレン性不飽和反応性基−有機基などであってもよい。すなわち、R6としては、ビニル基やメルカプト基等のエチレン性不飽和反応性基が、2価の有機基を介して又は介さずに、加水分解性珪素原子含有基における珪素原子に結合している形態の基であってもよい。具体的には、R6としては、例えば、ビニル基、メルカプト基の他、ビニル−アルキル基、ビニル−(アルキル)−アリール基、ビニル−(アルキル)−シクロアルキル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(ビニル−カルボニルオキシアルキル基)、(メタ)アクリロイルオキシアリール基、メルカプト−アルキル基、メルカプト−(アルキル)−アリール基、メルカプト−(アルキル)−シクロアルキル基などが挙げられる。
【0046】
一般式4bにおいて、tは1以上の整数であれば特に制限されないが、好ましくは1〜4の整数、さらに好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。なお、tが2以上の整数である場合、R6の有機基に、2つ以上の加水分解性珪素原子含有基が結合していることを意味している。なお、R6が多価の有機基である場合、通常、tは2以上の整数であり、例えば、R6が多価の有機基で且つtが2の場合は、R6の多価の有機基の両末端に、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物が挙げられる。
【0047】
一般式4bで表されるシラン系化合物(D)としては、具体的には、R6がアルキル基である場合は、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリブトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシランや、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン等のジアルキルジアルコキシシランの他、これらに対応するトリアルキルアルコキシシランなどが挙げられる。
【0048】
6がビニル基やメルカプト基等のエチレン性不飽和反応性基や、ビニル−有機基やメルカプト−有機基等のエチレン性不飽和反応性基−有機基である場合、一般式4bで表されるシラン系化合物(D)としては、以下の化合物が挙げられる。例えば、R6がビニル基である場合は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(ビニル)アルキルジアルコキシシラン、(ビニル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。また、R6がビニル−アルキル基である場合は、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリプロポキシシラン、β−ビニルエチルトリイソプロポキシシラン、β−ビニルエチルトリブトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシラン等のビニルアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシラン、(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0049】
6がビニル−カルボニルオキシ−アルキル基である場合は、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリイソプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシランの他、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0050】
さらに、R6がメルカプト−アルキル基である場合は、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、β−メルカプトエチルトリイソプロポキシシラン、β−メルカプトエチルトリブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリブトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(メルカプトアルキル)アルキルジアルコキシシラン、(メルカプトアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。これらの化合物は、本発明におけるビニル系重合体鎖部を構成する、加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基とエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基とを有する化合物(C)としても使用可能である。つまり、一般式4bで表されるシラン系化合物(D)には、化合物(C)が含まれる。
【0051】
また、R6が置換基を有するアルキル基である場合、具体的には、置換基がグリシドキシ基である場合は、例えば、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン等のグリシドキシアルキルトリアルコキシシランや、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等のグリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシランの他、これらに対応するグリシドキシアルキルジアルキルアルコキシシランが挙げられる。
【0052】
また、イソシアネート基を有するアルキル基である場合は、例えば、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネ-トプロピルトリプロポキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−イソシアネ-トプロピルトリブトキシシラン等のイソシアネートアルキルトリアルコキシシランや、これらに対応するイソシアネートアルキルアルキルジアルコキシシランやイソシアネートアルキルジアルキルアルコキシシランが挙げられる。
【0053】
さらにまた、アミノ基を有するアルキル基を有するアルキル基である場合は、例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシランや、β−アミノエチルメチルジメトキシシラン、β−アミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン等の(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシランの他、これらに対応するアミノアルキルジアルキルアルコキシシランなどが挙げられる。また、他の置換基(置換オキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、エポキシ基、エポキシ−アルコキシ基、エポキシ−アリールオキシ基、エポキシ−シクロアルキルオキシ基、イソシアネート基、シアノ基、他の炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アシル基、アシルオキシ基、置換オキシ基、複素環含有基など)を有するシラン系化合物(D)としては、前記例示のシラン系化合物(D)に対応するものが挙げられる。
【0054】
なお、一般式4aや4bで表されるシラン系化合物(D)には、前記例示のアルコキシ基含有シラン系化合物のアルコキシ基が、ヒドロキシル基に変換されたものに相当するヒドロキシル基含有シラン系化合物も含まれる。
【0055】
また、同一のシラン系化合物(D)が、一般式4aと一般式4bの両方に包含される場合があるが、その場合は、いずれか一方の式で表されるシラン系化合物(D)に適宜分類することができる。
【0056】
また、一般式4bで表されるシラン系化合物(D)が、ビニル基含有シランカップリング剤やメルカプト基含有シランカップリング剤である場合、該シランカップリング剤は、化合物(C)としても利用することができる。すなわち、本発明では、ビニル基含有シランカップリング剤やメルカプト基含有シランカップリング剤は、シラン系化合物(D)、化合物(C)の何れかの成分として用いられていてもよく、シラン系化合物(D)及び化合物(C)の両者の成分として用いられていてもよい。なお、シランカップリング剤やメルカプト基含有シランカップリング剤をシラン系化合物(D)、又はシラン系化合物(D)及び化合物(C)として利用する場合、該シランカップリング剤やメルカプト基含有シランカップリング剤としては、ビニル−(アルキル)−トリアルコキシシラン、ビニル−(アルキル)−アルキルジアルコキシシラン、メルカプトアルキル−トリアルコキシシラン、メルカプトアルキル−アルキルジアルコキシシラン等のように、1つの珪素原子に、アルコキシ基等の加水分解性を有する基が複数(2又は3)個結合している形態を有していることが重要である。
【0057】
本発明では、シラン系化合物(D)としては、エチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基(エチレン性不飽和反応性基)を有するシラン系化合物と、エチレン性不飽和反応性基を有していないシラン系化合物との組み合わせであってもよい。シラン系化合物(D)として、この両者を組み合わせて用いる場合の混合比率としては、例えば、前者/後者(質量部)=1/99〜99/1の範囲から選択することができる。
【0058】
本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体におけるウレタン系重合体鎖部は、加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)の残基である。ウレタン系ポリマー(A)としては、分子内に(特に、主鎖の骨格として)ウレタン結合を含有するウレタン系重合体鎖部を有しており、また分子内に少なくとも1つの加水分解性珪素原子含有基を含有しているポリマーであれば特に制限されない。
【0059】
ウレタン系ポリマー(A)において、ウレタン系ポリマーに加水分解性珪素原子含有基が導入される方法としては、特に制限されず、加水分解性珪素原子を有していないウレタン系ポリマーに、加水分解性珪素原子含有基を導入する従来公知の方法や、この従来公知の方法から類推される方法などを適宜利用することができる。例えば、ウレタン系ポリマーを構成するモノマー成分として、加水分解性珪素原子含有基を有するモノマーを用いる方法、各種官能基を有するウレタン系ポリマーに、前記ウレタン系ポリマー中の官能基に対する反応性官能基及び加水分解性珪素原子含有基を有している化合物を反応させる方法などが挙げられる。
【0060】
具体的には、ウレタン系ポリマーを構成するモノマー成分として、加水分解性珪素原子含有基を有するモノマーを用いる方法としては、モノマー成分として、加水分解性珪素原子含有基を少なくとも1つ有し、且つ、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等のイソシアネート反応性基を複数有する化合物、加水分解性珪素原子含有基を有するポリイソシアネート化合物を用いる方法などが挙げられる。
【0061】
また、各種官能基を有するウレタン系ポリマーに、前記ウレタン系ポリマー中の官能基に対する反応性官能基及び加水分解性珪素原子含有基を有している化合物を反応させる方法としては、官能基としてヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等を有するウレタン系ポリマーに、前記ウレタン系ポリマー中の官能基に対する反応性官能基として、加水分解性珪素原子含有基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等を有する加水分解性珪素原子含有化合物(アルコキシシラン系化合物など)を反応させる方法などが挙げられる。なお、このような、前記ウレタン系ポリマー中の官能基に対する反応性官能基、及び加水分解性珪素原子含有基を有している化合物としては、例えば、後述するイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1−d)などを用いることができる。
【0062】
ウレタン系ポリマー(A)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
ウレタン系ポリマ−(A)において、加水分解性珪素原子含有基としては、加水分解性シリル基を好適に用いることができる。したがって、ウレタン系ポリマー(A)としては、加水分解性シリル基を有するウレタン系ポリマー(加水分解性シリル化ウレタン系ポリマー)を好適に用いることができる。
【0064】
本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の製造方法は特に限定されないが、工程1:ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液を調製する工程、工程2:ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、エチレン性不飽和単量体(B)を重合させ、かつ、前記重合の反応前、反応時、及び反応後のうちの少なくとも一つの過程で、化合物(C)を用いて反応させる工程、の少なくとも2つの工程を経て製造されるのが好ましい。本発明によれば、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を水系塗液で調製ですることができ、有機溶剤を使用した塗液における火災の危険、揮発性有機化合物の環境中への放出等の問題を回避することができる。
【0065】
工程1を経て本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の製造を行う場合、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液を調製しているため、ウレタン系ポリマー(A)としては、水に対して分散性又は溶解性を有していることが重要である。そのため、ウレタン系ポリマー(A)は、分散性又は溶解性を発揮することが可能な基を有していることが重要であり、このような基としては、親水性基が好適である。本発明において、親水性基としてはアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基などが挙げられ、特に、アニオン性基が好適である。アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホ基を好適に用いることができ、なかでもカルボキシル基が最適である。なお、カチオン性基としては、例えば、第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)などが挙げられる。また、ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、オキシエチレン−オキシプロピレンコポリマー鎖など)を含有する基などが挙げられる。従って、ウレタン系ポリマー(A)としては、分子内に少なくとも1つの親水性基を有する加水分解性シリル化ウレタン系ポリマー(親水性基含有加水分解性シリル化ウレタン系ポリマー)を好適に用いることができる。加水分解性シリル化ウレタン系ポリマーにおける加水分解性シリル基としては、特にアルコキシシリル基が好適である。このようなアルコキシシリル基としては、一般式3a、3b、3cにおけるアルコキシシリル基(−OR1基)で例示した化合物が使用可能である。
【0066】
従って、加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)としては、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)を好適に用いることができる。親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)としては、親水性基含有ウレタン系ポリマーの末端のイソシアネート基が少なくとも部分的にアルコキシシリル化されて得られる末端アルコキシシリル化親水性基含有ウレタン系ポリマーが好適であり、なかでも、親水性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1−a)、親水性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1−b)、ポリイソシアネート化合物(A1−c)、及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1−d)を反応して得られる親水性基含有アルコキシシリル基末端ウレタン系ポリマーが好適である。
【0067】
親水性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1−a)(以下、「イソシアネート反応性化合物(A1−a)」と称する)は、分子内に親水性基を有しておらず、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基などが挙げられる。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。
【0068】
本発明では、該イソシアネート反応性基としては、ヒドロキシル基、第1級アミノ基、第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好適である。従って、イソシアネート反応性化合物(A1−a)としては、例えば、親水性基非含有ポリオール化合物、親水性基非含有ポリアミン化合物、親水性基非含有ポリチオール化合物(好ましくは、親水性基非含有ポリオール化合物や親水性基非含有ポリアミン化合物)などを用いることができ、特に親水性基非含有ポリオール化合物(親水性基非含有で且つ複数のヒドロキシル基を含有する化合物)が好適である。イソシアネート反応性化合物(A1−a)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0069】
イソシアネート反応性化合物(A1−a)としての親水性基非含有ポリオール化合物としては(以下、「ポリオール(A1−a)」と称する)、分子内に親水性基を有しておらず、かつ分子内に少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリオール(A1−a)としては、例えば、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール、ヒマシ油などが挙げられる。ポリオール(A1−a)において、多価アルコールには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが含まれる。
【0070】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのモノマー成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体などが挙げられる。
【0071】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などを用いることができる。
【0072】
多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物において、多価アルコールとしては、前記例示の多価アルコールを用いることができる。一方、多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、環状エステルの開環重合物において、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。3種類の成分による反応物において、多価アルコール、多価カルボン酸、環状エステルとしては、前記例示のものなどを用いることができる。
【0073】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。環状炭酸エステルの開環重合物において、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート。テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。なお、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0074】
ポリオレフィンポリオールは、オレフィン重合体又は共重合体を骨格(又は主鎖)の成分(モノマー成分)とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。前記オレフィンとしては、末端に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンなど)であってもよく、また末端以外の部位に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、イソブテンなど)であってもよく、さらにはジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)であってもよい。
【0075】
ポリアクリルポリオールは、(メタ)アクリレートを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分(モノマー成分)とし且つ分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸の炭素数が1〜20のアルキルエステルなど]が好適に用いられる。
【0076】
なお、ポリオレフィンポリオールやポリアクリルポリオールにおいて、分子内にヒドロキシル基を導入するために、オレフィンや(メタ)アクリレートの共重合成分(共重合性を有するモノマー成分)として、ヒドロキシル基を有するα,β−不飽和化合物[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなど]を用いることができる。ポリオール(A1−a)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを好適に用いることができる。
【0077】
イソシアネート反応性化合物(A1−a)としての、親水性基非含有ポリアミン化合物や親水性基非含有ポリチオール化合物としては、例えば、前記例示のポリオール(A1−a)に対応する親水性基非含有ポリアミン化合物や親水性基非含有ポリチオール化合物などが挙げられる。例えば、イソシアネート反応性化合物(A1−a)としての親水性基非含有ポリアミン化合物には、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミンなどが含まれる。また、親水性基非含有ポリアミン化合物としては、ヒドラジン及びその誘導体などの親水性基非含有ポリアミン誘導体も用いることができる。
【0078】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,2−ブチレンジアミン、2,3−ブチレンジアミン、1,3−ブチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、3−メチル−1,5ペンタメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンの他、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどが挙げられる。
【0079】
脂環式ポリアミンとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−4−アミノメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−3−アミノメチルシクロヘキサン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(3−メチル−シクロヘキシルアミン)、メチル−2,3−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,4−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,6−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ジアミンなどが挙げられる。
【0080】
芳香族ポリアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ナフチレン−1,4−ジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、4,4′−ジフェニルジアミン、4,4′−ジフェニルメタンジアミン、2,4′−ジフェニルメタンジアミン、4,4′−ジフェニルエーテルジアミン、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジアミン、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジアミン、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジアミン、4,4′−ジフェニルプロパンジアミン、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジアミン等の芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0081】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン、α,α,α′,α′−テトラメチル−1,3−キシリレンジアミン、α,α,α′,α′−テトラメチル−1,4−キシリレンジアミン、ω,ω′−ジアミノ−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルアミノメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0082】
親水性基非含有ポリアミン誘導体としてのヒドラジン及びその誘導体としては、例えば、ヒドラジンや、ジヒドラジド系化合物などが挙げられる。ジヒドラジド系化合物には、例えば、カルボジヒドラジド(カルボヒドラジド)、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどの脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジド類;イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジドなどの芳香族ジカルボン酸ジヒドラジド類;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジヒドラジドなどの脂環式ジカルボン酸ジヒドラジド類などが含まれる。イソシアネート反応性化合物(A1−a)の分子量は、特に制限されず、低分子量化合物、高分子量化合物のいずれであってもよい。なお、イソシアネート反応性化合物(A1−a)が低分子量化合物(例えば、低分子量の親水性基非含有ポリオール化合物や、低分子量の親水性基非含有ポリアミン化合物など)である場合、鎖延長剤として利用することも可能である。
【0083】
親水性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1−b)(以下、「イソシアネート反応性化合物(A1−b)」と称する)は、分子内に少なくとも1つの親水性基を有しており、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性化合物(A1−b)において、親水性基としてはアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基などが挙げられ、特に、アニオン性基が好適である。また、イソシアネート反応性化合物(A1−b)において、イソシアネート反応性基としては、イソシアネート反応性化合物(A1−a)で例示した化合物を使用することができる。
【0084】
イソシアネート反応性化合物(A1−b)としては、アニオン性基含有ポリオール化合物(アニオン性基及び複数のヒドロキシル基を含有する化合物)が好適である。イソシアネート反応性化合物(A1−b)としてのアニオン性基含有ポリオール化合物(A1−b)(以下、「ポリオール(A1−b)」と称する)としては、例えば、前記ポリオール(A1−a)の項で例示のポリオールにカルボキシル基が導入されたカルボキシル基含有ポリオールなどが挙げられる。本発明では、ポリオール(A1−b)としては、アニオン性基を有する低分子量のポリオールが好ましく、特に、一般式5で表されるポリヒドロキシカルボン酸を好適に用いることができる。
【0085】
(HO)aL(COOH)b 一般式5
【0086】
一般式5において、Lは炭素数1〜12の炭化水素部位を示す。aは2以上の整数であり、bは1以上の整数である。
【0087】
Lの炭化水素部位としては脂肪族炭化水素部位であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の形態のいずれであってもよい。また、a、bは同一であってもよく、異なっていてもよい。2つ以上のヒドロキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。さらに、bが2以上である場合、2つ以上のカルボキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。このようなポリヒドロキシカルボン酸としては、特に、ジメチロールアルカン酸(なかでも、2,2−ジメチロールアルカン酸)が好適である。ジメチロールアルカン酸としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸、2,2−ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロールデカン酸などが挙げられる。
【0088】
イソシアネート反応性化合物(A1−b)としてのカチオン性基含有ポリオール化合物(A1−b)としては、例えば、前記ポリオール(A1−a)の項で例示のポリオールに、第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)が導入されたものに相当する第3級アミノ基含有ポリオールなどが挙げられる。カチオン性基含有ポリオール化合物(A1−b)としては、カチオン性基を有する低分子量のポリオールを好適に用いることができる。
【0089】
具体的には、低分子量の第3級アミノ基含有ポリオールとしては、例えば、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−イソプロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン等のN−アルキルジエタノールアミン;N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−プロピルジプロパノールアミン、N−イソプロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン等のN−アルキルジプロパノールアミン;N−メチルジブタノールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−イソプロピルジブタノールアミン、N−ブチルジブタノールアミン等のN−アルキルジブタノールアミンなどのN−アルキルジアルコールアミン(N−アルキルジアルカノールアミン、又はN,N−ジヒドロキシアルキル−アルキルアミン)などが挙げられる。また、N−トリエタノールアミン等のN−トリアルコールアミンなども用いることができる。もちろん、ポリマータイプの(高分子量の)第3級アミノ基含有ポリオールであってもよい。
【0090】
イソシアネート反応性化合物(A1−b)としてのノニオン性基含有ポリオール化合物(A1−b)としては、例えば、前記ポリオール(A1−a)の項で例示のポリオールに、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、オキシエチレン−オキシプロピレンコポリマー鎖など)等のノニオン性の親水性基が導入されたものに相当するポリオキシアルキレン鎖含有ポリオールなどが挙げられる。
【0091】
ポリイソシアネート化合物(A1−c)(以下、「ポリイソシアネート(A1−c)」と称する)は、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリイソシアネート(A1−c)には、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが含まれる。ポリイソシアネート(A1−c)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0092】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0093】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0094】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート,、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0095】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ω,ω′−ジイソシアネ−ト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0096】
ポリイソシアネート(A1−c)としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼンを好適に用いることができる。なお、ポリイソシアネート(A1−c)として、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートや芳香脂肪族ポリイソシアネートを用いると、変色の少ない樹脂を得ることができる。
【0097】
なお、本発明では、ポリイソシアネート(A1−c)としては、前記例示の脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートによる二量体や三量体、反応生成物又は重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなど)なども用いることができる。また、本発明では、ポリイソシアネート(A1−c)とともに、ジイソチオシアネート系化合物(例えば、フェニルジイソチオシアネートなど)を併用することができる。
【0098】
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1−d)としては、分子内に少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1−d)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0099】
イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基、イソシアネート基などが挙げられ、第1級アミノ基、第2級アミノ基、メルカプト基が好適である。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。
【0100】
本発明では、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1−d)としては、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A1−d1)、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物(A1−d2)を好適に用いることができる。
【0101】
第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A1−d1)としては、分子内に少なくとも1つの第1級又は第2級アミノ基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。従って、 該化合物(A1−d1)は、アミノ基として第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)を1つ以上含有していてもよい。また、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物(A1−d2)としては、分子内に少なくとも1つのメルカプト基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
【0102】
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1−d)において、アルコキシ基としては、前記シラン系化合物(D)で例示したアルコキシ基を使用することができる。このようなアルコキシ基は、通常、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1−d)の珪素原子に結合しており、その数は通常1〜3個(好ましくは2又は3個)である。なお、アルコキシ基は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。すなわち、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1−d)の珪素原子には、同一のアルコキシ基が結合されていてもよく、異なるアルコキシ基が2種以上組み合わせられて結合されていてもよい。
【0103】
イソシアネート反応性基がアミノ基である場合、第2級アミノ基や第3級アミノ基は、炭化水素基(例えば、フェニル基などのアリール基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基など)や複素環式基(複素環合有基;例えば、イミド骨格を有する複素環式基など)等の置換基を有することにより、第2級アミノ基や第3級アミノ基を形成していてもよい。なお、該炭化水素基や複素環式基などの置換基は、さらに他の置換基(例えば、各種炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、シアノ基、オキソ基、アミド結合含有基、アミノ基、複素環式基や、これらの基が組み合わされた基を含んでいる基など)を有していてもよい。
【0104】
さらに、イソシアネート反応性基は、珪素原子に直接結合していてもよいが、2価の基を介して結合していることが好ましい。このような2価の基としては、各種の2価の有機基を用いることができる。2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、、アルキレン−-ポリ(オキシアルキレン)基、アルキレン−イミノ基、アルキレン−イミノ−アルキレン基等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基、カルボニル基、イミノ基、アミド結合含有基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などが挙げられる。2価の有機基としては、炭素数が1〜20程度の2価の有機基(2価の炭化水素基など)を好適に用いることができる。
【0105】
従って、例えば、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A1−d1)を用いる場合、アミノアルキル基の形態としてアミノ基を含有していてもよい。このようなアミノアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、1−アミノプロピル基、2−アミノプロピル基、3−アミノプロピル基等のアミノ−アルキル基(特に、アミノ−C1-3アルキル基)や、これに対応する第2級アミノ基(置換基として炭化水素基を1つ有しているアミノ−アルキル基等)又は第3級アミノ基(置換基として炭化水素基を2つ有しているアミノ−アルキル基等)などが挙げられる。なお、第2級アミノ基や第3級アミノ基における窒素原子に置換している炭化水素基などの置換基が、さらにアミノ基を有していてもよい。すなわち、例えば、N−アミノアルキル−アミノアルキル基、N−[N−(アミノアルキル)アミノアルキル]アミノアルキル基などの形態であってもよい。なお、第1級アミノ基とともに、第2級アミノ基を有していてもよい。第1級アミノ基や第2級アミノ基の数は、特に制限されないが、通常1又は2個である。
【0106】
イソシアネート反応性基として第1級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシラン化合物としては、前記シラン系化合物(D)において、一般式4bにおけるR6がアミノ基を有するアルキル基である場合に例示した化合物を挙げることができる。イソシアネート反応性基として第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルトリアルコキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルアルキルジアルコキシシランなどが挙げられる。
【0107】
また、イソシアネート反応性基として第2級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−フェニル−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニル−β−アミノエチルトリエトキシシラン等のN−フェニル−β−アミノエチルトリアルコキシシラン;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のN−フェニル−γ−アミノプロピルトリアルコキシシランや、これらに対応するN−フェニルアミノアルキル(モノ又はジ)アルキル(ジ又はモノ)アルコキシシランの他、さらに、上記の1置換基がフェニル基である第2級アミノ基を有するアミノ基含有アルコキシシランに対応するN−アルキルアミノアルキルトリアルコキシシラン(例えば、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−アミノメチルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシランなど)や、N−アルキルアミノアルキル(モノ又はジ)アルキル(ジ又はモノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0108】
本発明では、アミノ基含有アルコキシシラン(A1−d1)としては、商品名「KBM6063」、同「X−12−896」、同「KBM576」、同「X−12−565」、同「X−12−580」、同「X−12−5263」、同「X−12−666」、同「KBM6123」、同「X−12−575」、同「X−12−577」、同「X−12−563B」、同「X−12−730」、同「X−12−562」、同「X−12−5202」、同「X−12−5204」、同「KBE9703」(以上、信越化学工業社製)なども用いることができる。従って、アミノ基含有アルコキシシラン(A1−d1)としては、N−(5−アミノペンチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−[N−β−(アミノエチル)アミノエチル]−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−ビス(γ−トリメトキシシリル−プロピルアミノ)エタン、ビス(γ−トリメトキシシリル−プロピル)アミン、N−β−(アミノエチル)−β(4−アミノメチルフェニル)エチルトリメトキシシラン及びこれらに対応する炭化水素基(アルキル基やアルキレン基など)の炭素数が異なるアルコキシシラン系化合物などや、第1級又は第2級アミノ基とともに他の基(スチレン性不飽和基、オレフィン性不飽和基、カルボキシル基など)を有するアルコキシシラン系化合物、第1級又は第2級アミノ基を有するとともに塩の形態(塩酸塩など)を有しているアルコキシシラン系化合物、第1級又は第2級アミノ基を有するとともにアルコキシシリル基を複数有しているアルコキシシラン系化合物も用いることができる。
【0109】
イソシアネート反応性基としてメルカプト基を有しているメルカプト基含有アルコキシシラン化合物としては、前記シラン系化合物(D)において、一般式4bにおけるR6がメルカプト基を有するアルキル基である場合に例示した化合物を挙げることができる。
【0110】
本発明では、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1−d)としては、反応のし易さ、広く市販され入手のし易さなどの点から、アミノ基含有アルコキシシラン(A1−d1)を好適に用いることができる。イソシアネート反応性基として少なくとも第1級アミノ基を有するアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。また、イソシアネート反応性基として第2級アミノ基のみを有するアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えばN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。
【0111】
さらにまた、アミノ基含有アルコキシシラン(A1−d1)としては、前記に例示のような少なくとも第1級アミノ基(特に、第1級アミノ基及び第2級アミノ基)をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物と、不飽和カルボン酸エステル(A1−d3)とが反応して得られた少なくとも第2級アミノ基をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物(以下、「エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A1−d4)」と称する)であってもよい。
【0112】
不飽和カルボン酸エステル(A1−d3)としては、炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子に直接カルボキシル基又はそのエステル結合含有基(例えば、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基など)が結合している化合物が好適である。このような化合物としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、2−ブテン酸エステル、3−メチル−2−ブテン酸エステル、2−ペンテン酸エステル、2−オクテン酸エステル等の他、桂皮酸エステル等の不飽和1価カルボン酸エステル;マレイン酸エステル(モノ又はジエステル)、フマル酸エステル(モノ又はジエステル)、イタコン酸エステル(モノ又はジエステル)等の不飽和2価カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0113】
不飽和カルボン酸エステル(A1−d3)において、エステル部位としては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル等の脂肪族炭化水素によるエステル(アルキルエステルなど);シクロへキシルエステル、イソボルニルエステル、ボルニルエスチル、ジシクロペンタジエニルエステル、ジシクロペンタニルエステル、ジシクロペンテニルエステル、トリシクロデカニルエステル等の脂環式炭化水素によるエステル(シクロアルキルエステルなど);フェニルエステル、ベンジルエステル等の芳香族炭化水素によるエステル(アリールエステルなど)などが挙げられる。なお、エステル部位を複数有する場合、それぞれのエステル部位は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0114】
不飽和カルボン酸エステル(A1−d3)としては、前記例示の中でもアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(これらを「(メタ)アクリル酸エステル」と総称する)、マレイン酸ジエステルを好適に用いることができる。より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。またマレイン酸ジエスチルには、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジ(2−エチル-キシル)、マレイン酸ジドデシル、マレイン酸ジオクタデシル等のマレイン酸ジアルキルエステルなどが含まれる。なお、不飽和カルボン酸エステル(A1−d3)の使用量は、エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A1−d4)が、少なくとも第2級アミノ基を1つ残す量であることが望ましい。
【0115】
親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)としては、例えば、イソシアネート反応性化合物(A1−a)、イソシアネート反応性化合物(A1−b)、及びポリイソシアネート(A1−c)の反応により得られる親水性基含有ウレタンプレポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1−d)との反応により、前記親水性基含有ウレタンプレポリマーの末端のイソシアネート基が少なくとも部分的にアルコキシシリル化されて得られる末端アルコキシシリル化親水性基含有ウレタンプレポリマーであってもよい。
【0116】
より具体的には、親水性基含有ウレタンプレポリマーは、イソシアネート反応性化合物(A1−a)、イソシアネート反応性化合物(A1−b)、及びポリイソシアネ-ト(A1−c)の反応生成物であり、該反応は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを調製する公知乃至慣用の方法に準じて行うことができる。該親水性基含有ウレタンプレポリマーとしては、末端がイソシアネート基となっているものが好ましい。
【0117】
なお、イソシアネート反応性化合物(A1−a)、イソシアネート反応性化合物(A1−b)、及びポリイソシアネート(A1−c)を混合又は反応する際には、反応促進のために重合触媒を用いることができる。また、反応又は混合は溶媒中で行うことができる。
【0118】
また、親水性基含有ウレタンプレポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1−d)との反応は、両者を混合し、必要に応じて加熱することにより行うことができる。このような親水性基含有ウレタンプレポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1−d)との反応により、前記親水性基含有ウレタンプレポリマーの末端のイソシアネート基が少なくとも部分的にアルコキシシリル化されて、末端アルコキシシリル化親水性基含有ウレタンプレポリマーを調製することができる。なお、この混合又は反応に際しては、前述のように重合触媒を用いることができる。また、前記混合又は反応に際しては、溶媒を用いることができる。
【0119】
重合触媒としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる際に用いられる公知乃至慣用の重合触媒(硬化触媒)を用いることができる。より具体的には、重合触媒としては、有機錫化合物、金属錯体、アミン化合物などの塩基性化合物、有機燐酸化合物などが挙げられる。
【0120】
有機錫化合物には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫フタレート、オクチル酸第一錫、ジブチル錫メトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテートなどが含まれる。また、金属錯体としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物類;オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等のカルボン酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナート錯体、バナジウムアセチルアセトナート錯体等の金属アセチルアセトナート錯体などが挙げられる。
【0121】
さらに、アミン化合物等の塩基性化合物には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;三共エアプロダクツ社製の商品名「DABCO」シリーズや「DABCO BL」シリーズ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン等の複数の窒素原子を含む直鎖或いは環状の第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などが含まれる。さらにまた、有機燐酸化合物としては、モノメチル燐酸、ジ−n−ブチル燐酸、燐酸トリフェニル等が挙げられる。
【0122】
なお、これらの混合に際しては、各成分の混合順序は問わない。しかし、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)を効率よく得るためには、まず、イソシアネート反応性化合物(A1−a)及びイソシアネート反応性化合物(A1−b)の混合物に、ポリイソシアネート(A1−c)を加え、さらに必要に応じて重合触媒を加えて反応させて、親水性基含有ウレタンプレポリマーを調製した後に、該反応混合液にイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1−d)を加えて反応させることにより、末端アルコキシシリル化親水性基含有ウレタンプレポリマーを調製することが好ましい。
【0123】
親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)において、各成分の割合は特に制限されない。例えば、ポリイソシアネート(A1−c)と、イソシアネート反応性化合物(A1−a)及びイソシアネート反応性化合物(A1−b)との割合としては、ポリイソシアネ-ト(A1−c)におけるイソシアネート基/イソシアネート反応性化合物(A1−a)及びイソシアネート反応性化合物(A1−b)におけるイソシアネート反応性基(NCO/NCO反応性基)(当量比)が、1.0以上2.0以下(好ましくは1.02〜1.5、さらに好ましくは1.05〜1.4)となるような範囲から選択することができる。NCO/NCO反応性基の比が2.0を超えると、分散性が低下しやすい。一方、NCO/NCO反応性基の比が1.0以下であると、シリル基導入が充分にできなくなり、各種物性が低下しやすい。
【0124】
また、ポリイソシアネート(A1−c)は、親水性基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基の含有量が、0.3〜7.0質量%(好ましくは0.4〜4.0質量%、さらに好ましくは0.5〜3.0質量%)となるような割合で含まれていることが好ましい。イソシアネート基の含有量が7.0質量%を超えると、分散性が低下しやすい。0.3質量%より少ないと、反応時間が非常に長くなり、さらに、シリル基導入が充分にできなくなりやすく、耐水性が低下しやすい。
【0125】
イソシアネート反応性化合物(A1−b)は、親水性基がアニオン性基である場合、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)中のアニオン性基の含有量が、0.4meq/g以上の割合で含まれていることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.7meq/g、さらに好ましくは0.4〜0.6meq/gである。該アニオン性基の含有量が多すぎると耐水性が低下しやすく、少なすぎると分散安定性が低下しやすい。
【0126】
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1−d)は、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)中の珪素原子の含有量が、0.02〜10質量%になるように含まれていると好ましく、より好ましくは0.03〜3質量%、さらに好ましくは0.05〜2質量%である。該珪素原子の含有量が10質量%を超えると、得られた組成物の安定性が低下しやすく、0.02質量%より少ないと、効率的に2元もしくは3元共重合体が形成されず、期待される効果が得られない。
【0127】
ウレタン系ポリマー(A)[特に、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)]を調製する際の溶媒[例えば、親水性基含有ウレタンプレポリマーの調製の際に用いられる溶媒や、親水性基含有ウレタンプレポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1−d)との反応の際に用いられる溶媒など]としては、特に制限されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;N−メチルピロリドン等のピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。このように、溶媒として有機溶媒を用いた場合、加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマーを調製した後に、公知の除去方法(例えば、減圧蒸留方法等の蒸留方法など)により、有機溶媒を反応混合物から除去することができる。
【0128】
本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の製造方法は特に限定されないが、工程1:ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液を調製する工程、工程2:ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、エチレン性不飽和単量体(B)を重合させ、かつ、前記重合の反応前、反応時、及び反応後のうちの少なくとも一つの過程で、前記化合物(C)を用いて反応させる工程、の少なくとも2つの工程を経て製造されるのが好ましい。
【0129】
上記工程を経て本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を調製する際には、ウレタン系ポリマー(A)[特に、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)]を調製する際の溶媒として、工程2で重合を行うエチレン性不飽和単量体(B)(ビニル系モノマー成分)を好適に用いることができる。このように、溶媒としてエチレン性不飽和単量体(B)を用いると、溶媒の除去を行わずに、ウレタン系ポリマー(A)を調製した反応混合物をそのままの状態で、工程1で利用することができる。すなわち、工程1では、エチレン性不飽和単量体(B)を溶媒としてウレタン系ポリマー(A)を調製した反応混合物を、そのままの状態で、水に分散又は溶解させることにより、エチレン性不飽和単量体(B)を含んでいる、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液を調製することができる。
【0130】
しかも、この工程1で得られた水分散液又は水溶液中のエチレン性不飽和単量体(B)は、工程2では、エチレン性不飽和単量体(B)を重合する際のモノマー成分として用いることができる。従って、有機溶媒を使用した場合のように、溶媒の除去を必要とせず、前記エチレン性不飽和単量体(B)は、そのまま系に含まれた状態で、工程1〜工程2で利用することができ、極めて効率よく、しかも人体のみならず環境的にも極めて優れた条件下で、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を製造することが可能となる。
【0131】
エチレン性不飽和単量体(B)を溶媒として用いる場合、エチレン性不飽和単量体(B)は、すべてを溶媒として予め用いられていてもよく、一部のみが溶媒として用いられていてもよい。ウレタン系ポリマー(A)の調製に際して、エチレン性不飽和単量体(B)の一部のみが溶媒として用いられている場合、残部のエチレン性不飽和単量体(B)は、工程2で、一括的な導入方法や、滴下による導入方法などにより系内に導入させて、エチレン性不飽和単量体(B)の重合を行うことができる。
【0132】
本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体におけるビニル系重合体鎖部は、モノマー成分としてエチレン性不飽和単量体(B)及び加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基とエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基とを有する化合物(C)を用いて得られる重合体の残基である。エチレン性不飽和単量体(B)は、分子中にエチレン性不飽和結合含有基を少なくとも1つ含有している単量体(ビニル系モノマー成分)であれば特に制限されない。エチレン性不飽和単量体(B)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。エチレン性不飽和結合含有基としては、例えば、ビニル基、1−メチルビニル基(イソプロペニル基)、1−エチルビニル基などの1−アルキルビニル基などが挙げられる。このうち、ビニル基やイソプロペニル基が好適であり、特にビニル基が好ましい。
【0133】
具体的には、エチレン性不飽和単量体(B)としては、例えば、アクリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体、アミノ基含有単量体、シアノ基含有単量体、スチレン系単量体、オレフィン系単量体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体、(N−置換)アクリルアミド系単量体、N−ビニルラクタム類、複素環含有ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸アルキレングリコール系単量体、スルホン酸基含有ビニル系単量体、リン酸基含有ビニル系単量体、ハロゲン原子含有ビニル系単量体や、多官能系単量体など各種のエチレン性不飽和単量体(重合性不飽和単量体)から適宜選択して用いることができる。
【0134】
エチレン性不飽和単量体(B)としては、エチレン性の炭素−炭素二重結合を有する基(ビニル基など)とともに、置換オキシカルポニル基(例えば、アルコキシカルポニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基など)、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミノアルキルカルボニル基、シアノ基、炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基など)、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボニルオキシ基(例えば、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基など)、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基など)、置換アミノカルボニル基(例えば、ジアルキルアミノ−カルボニル基など)、複素環含有基、イソシアネート基、オキソ基、スルホン酸基、リン酸基、ハロゲン原子などの反応性・非反応性(特に、非反応性)の各種の基を有していてもよい。もちろん、これらの基は、1種のみを有していてもよく、2種以上を有していてもよい。また、これらの基は、さらに、2価の基を介して又は介することなく、他の基を有していてもよい。なお、反応性基を有する場合、加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基以外の基であることが重要である。
【0135】
本発明では、エチレン性不飽和単量体(B)としては、透明性、耐候性、極性樹脂との接着性の点から、アクリル系単量体を好適に用いることができる。すなわち、エチレン性不飽和単量体(B)には、少なくともアクリル系単量体が含まれていることが好ましい。
【0136】
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。該(メタ)アクリル酸エステルには、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が含まれる。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、好ましくは(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C1-4アルキルエステルである。また、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルには、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が含まれる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルエステル等が挙げられる。
【0137】
本発明では、エチレン性不飽和単量体(B)としては、アクリル系単量体とともに、アクリル系単量体と共重合が可能なエチレン性不飽和単量体(共重合性不飽和単量体)を用いることができる。このような共重合性不飽和単量体としては、公知乃至慣用の共重合性不飽和単量体を用いることができる。
【0138】
具体的には、共重合性不飽和単量体には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル駿、クロトン酸の他、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート(カルボキシエチルアクリレート等)などのカルボキシル基含有単量体;無水マレイン酸、無水イコタン酸などの酸無水物基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチルなどのヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体等が挙げられる。
【0139】
また、共重合性不飽和単量体には、例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アクリルアミド系単量体;N−ビニルカルボン酸アミド類;N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニルラクタム類;N−ビニルピリジン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリンなどの複素環含有ビニル系単量体等が挙げられる。
【0140】
また、共重合性不飽和単量体には、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどの(メタ)アクリル酸アルキレングリコール系単量体;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有ビニル系単量体;塩化ビニルなどのハロゲン原子含有ビニル系単量体などが含まれる。
【0141】
また、共重合性不飽和単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アタリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアタリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの各種の多官能系単量体も適宜選択して用いることができる。もちろん、共重合性不飽和単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0142】
本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体におけるビニル系重合体鎖部を構成する、加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基とエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基とを有する化合物(C)(以下、化合物(C)と称する)としては、エチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基(以下、「不飽和結合反応性基」と称する)を分子中に少なくとも1つ有し、且つ加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基(以下、「加水分解反応性基」と称する)を分子中に少なくとも1つ有する化合物(例えば、モノマー成分)であれば特に制限されない。化合物(C)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0143】
化合物(C)において、不飽和結合反応性基としては、エチレン性不飽和結合(エチレン性の炭素−炭素二重結合)を含有する基に対して反応性(特に、付加反応性又は重合反応性など)を有する官能基であれば特に制限されないが、エチレン性不飽和結合含有基、メルカプト基などが挙げられる。エチレン性不飽和結合としては、例えば、ビニル基や、1−メチルビニル基(イソプロペニル基)、1−エチルビニル基などの1−アルキルビニル基などが挙げられ、ビニル基やイソプロペニル基(特にビニル基)が好適である。また、化合物(C)において、加水分解反応性基としては、加水分解性珪素原子含有基に対して反応性(特に、加水分解による反応性)を有する官能基であれば特に制限されないが、加水分解性珪素原子含有基が好適である。従って、化合物(C)としては、加水分解性珪素原子含有基及びエチレン性不飽和結合含有基を有する化合物(エチレン性不飽和結合含有基を有するシラン系化合物)や、加水分解性珪素原子含有基及びメルカプト基を有する化合物(メルカプト基を有するシラン系化合物)などを用いることができる。
【0144】
化合物(C)において、加水分解反応性基としての加水分解性珪素原子含有基としては、前記と同様に、加水分解性シリル基が好ましく、なかでもアルコキシシリル基が好適である。このようなアルコキシシリル基としては、一般式3a、3b、3cにおけるアルコキシシリル基(−OR1基)で例示した化合物が使用可能である。このようなアルコキシ基は、1つの珪素原子に、通常1〜3個(好ましくは2又は3個)結合している。アルコキシ基は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。すなわち、1つの珪素原子には、同一のアルコキシ基が結合されていてもよく、異なるアルコキシ基が2種以上組み合わせられて結合されていてもよい。
【0145】
化合物(C)において、加水分解反応性基と不飽和結合反応性基とは、2価の有機基を介して又は介さずに結合している。化合物(C)としては、前記シラン系化合物(D)において、一般式4bにおけるR6がビニル基、メルカプト基、ビニル−有機基、メルカプト−有機基等である場合に例示した化合物を挙げることができる。
【0146】
エチレン性不飽和単量体(B)の重合反応と、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基に関する反応と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基に関する反応とは、それぞれの間で並行して行われていてもよく、順々に行われていてもよい。エチレン性不飽和単量体(B)、及び化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基の重合方法としては、特に制限されず、公知乃至慣用のエチレン性不飽和単量体の重合方法を利用することができ、例えば、重合開始剤、連鎖移動剤などを用いて重合を行う方法などが挙げられる。
【0147】
重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチル−4−トリメトキシシリルペントニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチル−4−メチルジメトキシシリルペントニトリル)、2,2′−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノ)プロパン塩酸塩等のアゾ化合物系重合開始剤;t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、過酸化水素等の過酸化物系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系重合開始剤;酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤を併用したレドックス系重合開始剤などを用いることができる。
【0148】
また、連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン類(例えば、ラウリルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン等のアルキルメルカプタンや、アリールメルカプタンなど)、チオカルボン酸(例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸など)、スルフィド類(例えば、ジブチルジスルフィド、ジアセチルジスルフィドなど)、チオアルコール類(例えば、2−メルカプトエタノール、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、チオ−β−ナフトール、チオフェノールなど)、グリシジルメルカプタン、メルカプトシラン類(例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなど)、γ−トリメトキシシリルプロピルジスルフィドなどを用いることができる。重合の際の温度としては、エチレン性不飽和単量体(B)、及び化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、20〜100℃(特に、40〜90℃)程度であってもよい。また、重合の際の反応時間は、特に制限されず、例えば、数時間〜数十時間であってもよい。
【0149】
シラン系化合物(D)、化合物(C)、ウレタン系ポリマー(A)に由来する加水分解反応性基に関する加水分解反応又は縮合反応(縮合重合)の方法としては、特に制限されず、公知乃至慣用のシリコーン系化合物の加水分解反応方法又は縮合反応方法を利用することができる。例えば、30℃以上に加温する方法などが挙げられる。加温時の温度としては、30℃以上であれば特に制限されないが、好ましくは35℃以上(特に38℃以上)である。なお、この加温時の温度の上限としては、特に制限されないが、例えば、70℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下、特に好ましくは45℃以下である。この反応温度は、一定又はほぼ一定で保持されていることが好ましい。従って、一定又はほぼ一定の温度が保持されるように、加温又は冷却を行ってもよい。これらの加水分解反応又は縮合反応は、窒素気流下で行うことが好ましい。なお、これらの加水分解反応又は縮合反応に際しては、該反応を促進するための触媒が用いられていてもよく、このような触媒としては公知の触媒を適宜選択して用いることができる。また、前記反応の反応時間としては、特に制限されず、例えば、10分〜1日の範囲から選択することができ、好ましくは30分〜5時間程度である。
【0150】
エチレン性不飽和単量体(B)が、溶媒として、ウレタン系ポリマー(A)の調製に際して予め用いられていない場合又は一部しか用いられていない場合、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中に、エチレン性不飽和単量体(B)又は残部のエチレン性不飽和単量体(B)を、一括的に加えて重合を行う方法、一部を加えた後、残部を滴下しなから重合を行う方法、すベてを滴下しながら重合を行う方法等を利用して、エチレン性不飽和単量体(B)の重合を行うことができる。また、エチレン性不飽和単量体(B)を滴下する際の滴下方法としては、特に制限されず、例えば、連続的な滴下方法や、間欠的な滴下方法などいずれの滴下方法であってもよい。
【0151】
エチレン性不飽和単量体(B)を滴下しながら重合する際には、界面活性剤や乳化剤などの分散剤が用いられていてもよい。すなわち、エチレン性不飽和単量体(B)を界面活性剤等により乳化又は分散させてエマルションを調製し、該エマルションを滴下することにより、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中に、エチレン性不飽和単量体(B)を滴下させることも可能である。また、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中に化合物(C)あるいはシラン系化合物(D)を導入する方法としては、前記のウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中にエチレン性不飽和単量体(B)を導入する方法として例示した方法を採用することができる。また、エチレン性不飽和単量体(B)、化合物(C)、シラン系化合物(D)をエマルションの形態で反応系内に導入する際には、例えば、各成分のうち2成分以上を含むエマルションを調製、反応系内に導入(特に、滴下により導入)してもよく、各成分を含むエマルションとを別々に調製し、各々を別々に又は同時に反応系内に導入(特に、滴下により導入)してもよい。もちろん、各成分の一部を、残りの成分の一部又は全部とともにエマルションを調製、反応系内に導入し、該成分の残部を、前記一部の導入前又は導入後に、反応系内に導入してもよい。
【0152】
化合物(C)に関する反応には、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基に関する反応と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基に関する反応とが含まれる。化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基に関する反応としては、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基と、エチレン性不飽和単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合との反応や、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基同士の反応があり、この反応方法としては、特に制限されず、前記エチレン性不飽和単量体(B)の重合方法と同様にして行うことができる。なお、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基には、化合物(C)中の不飽和結合反応性基や、化合物(C)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られた、不飽和結合反応性基を有するウレタン系ポリマー中の不飽和結合反応性基が含まれる。また、エチレン性不飽和単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合には、エチレン性不飽和単量体(B)中のエチレン性不飽和結合や、エチレン性不飽和単量体(B)の重合体中のエチレン性不飽和結合などが含まれる。
【0153】
一方、化合物(C)に由来する加水分解反応性基に関する反応としては、化合物(C)に由来する加水分解反応性基とシラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基との反応、化合物(C)に由来する加水分解反応性基とウレタン系ポリマー(A)の加水分解性珪素原子含有基との反応や、化合物(C)に由来する加水分解反応性基同士の反応がある。なお、化合物(C)に由来する加水分解反応性基には、化合物(C)中の加水分解反応性基や、化合物(C)とエチレン性不飽和単量体(B)又はその重合体との反応により得られた、加水分解反応性基を有する化合物(加水分解反応性基を有するビニル系重合体など)中の加水分解反応性基、化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応により得られた化合物中の加水分解反応性基、化合物(C)とシラン系化合物(D)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られたポリマー中の加水分解反応性基などが含まれる。また、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基には、シラン系化合物(D)中の加水分解性珪素原子含有基や、シラン系化合物(D)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られた、加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマー中の加水分解性珪素原子含有基、シラン系化合物(D)と化合物(C)との反応により得られた化合物中の加水分解性珪素原子含有基、シラン系化合物(D)とウレタン系ポリマー(A)と化合物(C)との反応により得られたポリマー中の加水分解性珪素原子含有基などが含まれる。
【0154】
本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体において、ウレタン系ポリマー(A)、エチレン性不飽和単量体(B)、化合物(C)及びシラン系化合物(D)の各成分の割合としては特に制限されない。例えば、ウレタン系ポリマー(A)と、シラン系化合物(D)との割合としては、ウレタン系ポリマー(A)における加水分解性珪素原子含有基/シラン系化合物(D)における加水分解性珪素原子含有基(SiO基/SiO基)(当量比)は、0.001以上であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10、さらに好ましくは0.008〜5である。SiO基/SiO基が0.001未満であると、効率的に3元共重合体が形成されず、期待される効果が得られない。また、SiO基/SiO基が増加するに伴い、化合物(D)が減少することにより2元共重合体となる傾向がある。
【0155】
また、化合物(C)と、シラン系化合物(D)との割合としては、化合物(C)における加水分解反応性基/シラン系化合物(D)における加水分解性珪素原子含有基(SiO基/SiO基)(当量比)が、0.0001以上であることが好ましく、より好ましくは0.002〜100、さらに好ましくは0.01〜10である。SiO基/SiO基が0.0001未満であると、効率的に3元共重合体が形成されず、期待される効果が得られない。SiO基/SiO基が増加するに伴い、3元共重合体は減少し2元共車合体が増加する傾向がある。
【0156】
さらにまた、エチレン性不飽和単量体(B)と、化合物(C)との割合としては、エチレン性不飽和単量体(B)におけるエチレン性不飽和結合/化合物(C)における不飽和結合反応性基(C=C不飽和基/C=C不飽和反応性基)(当量比)が、0.2〜2500であることが好ましく、より好ましくは0.6〜500、さらに好ましくは1〜100である。C=C不飽和基/C=C不飽和反応性基が0.2未満であると、化合物(C)由来の加水分解性珪素原子同士の縮合により系の安定性が低下する。一方、C=C不飽和基/C=C不飽和反応性基が2500を超えると、効率的に3元共重合体が形成されず、期待される効果が得られない。
【0157】
ウレタン系ポリマー(A)と、化合物(C)との割合としては、ウレタン系ポリマー(A)における加水分解性珪素原子含有基/化合物(C)における加水分解反応性基(SiO基/SiO反応性基)(当量比)が、0.01以上20以下であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10である。SiO基/SiO反応性基が0.01以下であると、化合物(C)由来の加水分解性珪素原子同士の縮合により系の安定性が低下する。一方、SiO基/SiO反応性基が20を超えると、効率的に3元共重合体が形成されず、期待される効果が得られない。
【0158】
本発明に係わる保護層は、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体以外の成分として、ヘッド汚れ防止や耐熱性の付与の目的として、顔料を加えることもできる。例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、カオリン、タルク、ケイソウ土、表面処理された炭酸カルシウムやシリカなどの無機顔料の他、尿素ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンなどの有機顔料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独、あるいは2種以上併用して使用することができる。これらの顔料のうち、シリカを含有していると、より強固な硬化物を形成することができ、印字した際や後に述べる加熱によるカード作製時、通常の取扱い時に、傷が付きにくくなり好ましい。
【0159】
前記シリカ粒子としては、公知のシリカ粒子(二酸化珪素による粒子)から適宜選択することができ、親水性基含有シリカ粒子が好適である。シリカ粒子として親水性基含有シリカを用いると、本発明に係わるビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体中に残存している加水分解性珪素原子含有基(シリル基)が、親水性基含有シリカ中の親水性基(特に、親水性基含有シリカ粒子の表面上の親水性基)と反応することにより、より強固な硬化皮膜を形成することができる。親水性基含有シリカにおける親水性基としては、特にヒドロキシル基が好適である。親水性基含有シリカは、シリカ粒子単独の形態(例えば、粉末状の形態など)で用いられていてもよく、水に分散された形態(例えば、水中にコロイド状に分散されたコロイド状の形態)で用いられていてもよい。このような親水性基含有シリカとしては、公知の親水性基を含有するシリカ粒子を使用することができ、例えば、気相法シリカや湿式法シリカ等として公知の親水性基含有シリカ、またコロイド状の形態の親水性基含有シリカとしては、コロイダルシリカや珪酸コロイド等を挙げることができる。
【0160】
気相法シリカは乾式法シリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。また、湿式法シリカは、製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップジェルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販されている。
【0161】
こうした気相法シリカ、湿式法シリカは、水性媒体中に分散あるいは粉砕して用いられる。分散あるいは粉砕方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等でシリカと水性媒体、および適宜分散剤を添加混合したり、さらに、これらの混合液にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散あるいは粉砕を行うことができる。
【0162】
コロイダルシリカは、珪酸化合物から各種方法で不純物を除去して無水珪酸のゾルとし、安定性を保持するためにpHおよび濃度を調製して製造されるものである。コロイダルシリカの表面をカチオン変性剤である金属酸化水和物を使用して被覆し、カチオン化したものも使用できる。コロイダルシリカとしては、例えば、(株)ADEKAからアデライトATとして、日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0163】
保護層中のシリカ粒子の含有量は特に制限されないが、固形分質量換算でビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体中100部に対して1部以上30部以下であることが好ましく、さらに好ましくは5部以上25部以下、特に好ましくは10部以上20部以下である。シリカ粒子の含有量が1部より少ないと添加の効果が得られにくく、30部より多いとかえって強度の低下を招きやすい。
【0164】
この他、保護層中には、光安定剤として、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素の消光剤、スーパーオキシドアニオンの消光剤を加えてもよい。
【0165】
紫外線吸収剤としては、べンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サルチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤などを挙げることができる。べンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2′−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキシベンジルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−クロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4′−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ヘプトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3,6−ジクロロ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3,6−ジクロロ−4−エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチルアクリルオキシ)プロポキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0166】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2,2′−メチレンビス[6−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]、2,2′−メチレンビス[6−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−n−オクチルフェノール]、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシ)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3′−tert−ブチル−2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5−エトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0167】
また、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、カルボキシルフェニルサリシレート、メチルフェニルサリシレート、ドデシルフェニルサリシレートなどのサルチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤、あるいはp−メトキシベンジリデンマロン酸ジメチルエステル、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、3,5−ジ−tert−ブチル−p−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等がある。
【0168】
酸化防止剤、老化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、スチレン化フェノール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビスフェノール、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン、パラヒドロキシフェニル−3−ナフチルアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、チオビス(β−ナフトール)、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンズイミダゾール、アルドール−2−ナフチルアミン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ジラウリル−3,3′チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、トリス(4−ノニルフェノール)ホスファイト等がある。
【0169】
一重項酸素の消光剤としては、カロテン類、色素類、アミン類、フェノール類、ニッケル錯体類、スルフィド類等があるが、例えば、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、β−カロテン、1,3−シクロヘキサジエン、2−ジエチルアミノメチルフラン、2−フェニルアミノメチルフラン、9−ジエチルアミノメチルアントセン、5−ジエチルアミノメチル−6−フェニル−3,4−ジヒドロキシピラン、ニッケルジメチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−o−エチルホスホナート、ニッケル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−o−ブチルホスホナート、ニッケル[2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェノラート)](n−ブチルアミン)、ニッケル[2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェノラート)](2−エチルヘキシルアミン)、ニッケルビス[2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェノラート)]、ニッケルビス[2,2′−スルホンビス(4−オクチルフェノラート)]、ニッケルビス(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル−N−n−ブチルアルドイミン)、ニッケルビス(ジチオベンジル)、ニッケルビス(ジチオビアセチル)等があるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独、あるいは2種以上併用して使用する事ができる。
【0170】
本発明に係る保護層の膜厚は、0.1〜10μmの範囲が好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。膜厚が10μmを超えると効果が飽和するばかりか、感熱記録層の感度が低下しやすい。膜厚が0.1μmより小さいと予期した塗層強度が得られにくく、塗層に傷が入りやすくなる。
【0171】
次に本発明の感熱記録材料における感熱記録層について以下に述べる。本発明における電子受容性化合物としては、感熱記録材料に用いられる酸性物質に代表される。例えば、フェノール性化合物、芳香族カルボン酸誘導体、N,N′−ジアリールチオ尿素誘導体、アリールスルホニル尿素誘導体、有機化合物の亜鉛塩などの多価金属塩を挙げることができる。
【0172】
具体的な例を挙げれば次の通りである。4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4−ジヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン等。
【0173】
2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ジ−〔2−(p−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,3−ジ−〔2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,4−ジ−〔2−(p−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、4,4′−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4′−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル等。
【0174】
没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、N,N′−ジフェニルチオ尿素、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−フェニル尿素、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4−[2′−(4−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸あるいはこれらサリチル酸誘導体の金属塩等。
【0175】
4,4′−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4′−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニル尿素等の特開平7−47772号公報、特開平7−149050号公報、特開平10−44618号公報記載の尿素誘導体、N−(3−スルホニルアミノフェニル)−N′−フェニルウレア、N−(4−スルホニルアミノフェニル)−N′−フェニルウレア等の特開平7−304727号公報、特開平10−315634号公報、特開平11−170706号公報記載の尿素誘導体、N−ベンゼンスルホニル−p−(フェニルウレイン)ベンズアミド、N−ベンゼンスルホニル−p−(フェニルチオウレイレン)ベンズアミド、N−フェニル−N′−(p−ベンゾイルアミノスルホニル)フェニルウレア、N−フェニル−N′−(p−ベンゾイルアミノスルホニル)フェニルチオウレア等、特開平10−315634号公報、特開平11−208123号公報記載の尿素誘導体等。
【0176】
3−(フェニルカルバモイルスルファモイル)カルバニリド、3−(フェニルカルバモイルスルファモイル)チオカルバニリド、2−(フェニルカルバモイルスルファモイル)カルバニリド、2−(フェニルカルバモイルスルファモイル)チオカルバニリド、4−(フェニルカルバモイルスルファモイル)カルバニリド、4−(フェニルカルバモイルスルファモイル)チオカルバニリド、N−(3−(N′−メチルチオウレイド)フェニルスルホニル)−N′−フェニルウレア等の特開平11−245524号公報、特開平11−254836号公報、特開平11−263067号公報記載の尿素誘導体、4,4′−ビス(2−(フェニルカルバモイルアミノ)フェニル)スルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4′−ビス(4−(フェニルカルバモイルアミノ)フェニル)スルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等、特開平11−263071号公報記載の尿素誘導体、特開平11−198528号公報、特開平11−198533号公報、特開平11−227327号公報記載のイソシアナートアダクト体化合物等を挙げることができる。また、これらの電子受容性化合物は必要に応じて単独、或いは二種以上併用して使用することができる。
【0177】
無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体に対する電子受容性化合物の使用量は、5〜5000質量%、好ましくは10〜3000質量%である。
【0178】
本発明に用いられる通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体としては一般に感圧記録紙や感熱記録紙等に用いられる公知な化合物に代表されるが、特に制限されるものではない。具体的な例としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0179】
(1)トリアリールメタン系化合物
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,7−ジアザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−7−アザフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−4−アザフタリド等。
【0180】
(2)ジフェニルメタン系化合物
4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等。
【0181】
(3)キサンテン系化合物
ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、
【0182】
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等、
【0183】
(4)チアジン系化合物
ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等。
【0184】
(5)スピロ系化合物
3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等が挙げられるが、前記無色ないし淡色の染料前駆体は単独でも、或いは2種以上を併用して使用する事ができる。
【0185】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱記録層は、その熱応答性を向上させるために、熱可融性物質を含有させることができる。この場合、60〜180℃の融点を持つものが好ましく、特に80〜140℃の融点を持つものがより好ましく用いられる。
【0186】
具体的な例としては、ステアリン酸アミド、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−ステアリル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α、α′−ジフェノキシキシレン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、アジピン酸ジフェニル、蓚酸ジベンジル、蓚酸ジ(4−クロルベンジル)エステル、蓚酸ジ(4−メチルベンジル)エステル、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド類、脂肪酸アニリド類、等公知の熱可融性物質が挙げられる。これらの化合物は単独、或いは二種以上併用して使用することもできる。また、十分な熱応答性を得るためには、感熱記録層の総固形分中、熱可融性物質が5〜50重量%を占めることが好ましい。
【0187】
本発明の感熱記録材料は、さらに別の基材に加熱により貼り合わせて、カード等の感熱記録材料積層体の形態で使用されてもよい。こうした用途の場合、別の基材に貼り合わせる際に加熱を行うため、感熱記録層は意図しない発色を起こしやすく、地肌かぶりといった問題を生じやすい。このため、感熱記録層は高耐熱性であることが好ましく、感熱記録層の最低発色温度は100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは130℃以上である。本発明において、最低発色温度とは、ある一定の温度で感熱記録層側から1秒間スタンプし、スタンプ前後における地肌部のマクベス濃度の上昇幅が0.1を超える最低温度を指す。感熱記録層の耐熱性を向上させる方法としては、感熱記録層中の化合物(電子受容性化合物、電子供与性染料前駆体等)のうち1種類以上に高融点の化合物を使用する方法、感熱記録層中の化合物のうち1種以上の表面をポリマー等で被覆、あるいはポリマー等と複合粒子化し、これら物質の加熱融解性を低下させる方法等が挙げられる。これらのうち、感熱記録層中の化合物のうち1種以上の表面をポリマー等で被覆する方法は、使用する化合物が制約されないため好ましく使用される。
【0188】
感熱記録層中の化合物のうち1種以上の表面をポリマー等で被覆、あるいはポリマー等と複合粒子化する方法としては、電子受容性化合物および/または電子供与性染料前駆体、および重合によりポリウレアおよびポリウレタンの少なくとも1種を形成する高分子形成性原料を、100℃以下の沸点を有する水不溶性有機溶剤に溶解混合し、この有機溶剤溶液を水性媒体中に乳化分散後、加熱して前記有機溶剤を揮発除去し、その後前記高分子形成性原料を高分子化する方法、電子受容性化合物および/または電子供与性染料前駆体を溶質とし、重合によりポリウレアおよびポリウレタンの少なくとも1種を形成する高分子形成性原料を溶剤とする溶液を調製し、水性媒体中に乳化分散後、前記高分子形成性原料を高分子化する方法、電子受容性化合物および/または電子供与性染料前駆体等を水性溶媒中に分散せしめ、これら分散した粒子にポリマー層として、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合の少なくともいずれかの結合を有し、不飽和炭素結合が開いて付加重合可能な化合物であり、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物、環状オレフィン及びアセチレン化合物などを付着させる方法等が挙げられる。
【0189】
感熱記録層中の化合物のうち1種以上の表面をポリマー等で被覆、あるいはポリマー等と複合粒子化する方法において、重合によりポリウレアおよびポリウレタンの少なくとも1種を形成する高分子形成性原料としては、多価イソシアネート化合物、多価イソシアネート化合物とポリオールとの付加物、多価イソシアネート化合物とビウレットとの付加物、多価イソシアネートとイソシアヌル酸との付加物、多価イソシアネート化合物とポリオールとの混合物等が挙げられる。
【0190】
電子受容性化合物および/または電子供与性染料前駆体等を水性溶媒中に分散せしめ、これら分散した粒子にポリマー層として、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合等の不飽和炭素結合を有する化合物を重合・付着させる方法において、不飽和炭素結合を1つのみ有する化合物の具体的な例としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれらに限定されるものではない。スチレン、α−メチルスチレン、α−メトキシスチレン、m−ブロモスチレン、m−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、o−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、p−クロロスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、2−ビニルピリジン、イソブテン、3−メチル−1−ブテン、ブチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、ニトロエチレン、ビニリデンシアニド、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクロレイン、メチルアクロレイン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド、α−アセトキシアクリル酸エチル、α−クロロアクリル酸エチル、α−クロロアクリル酸メチル、α−シアノアクリル酸メチル、α−フェニルアクリル酸メチル等。
【0191】
アクリル酸ベンジル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−ブトキシエチル、アクリル酸エトキシエトキシエチル、アクリル酸メチルトリグリコール、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸シアノエチル、アクリル酸フェロセニルメチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヘプタフルオロブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸オクチル、トリフルオロアクリル酸メチル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸−2−ニトロブチル、アクリル酸、α−ブロモアクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、アクリロニトリル等。
【0192】
アリルグリシジルエーテル、アリル酢酸、アリルアルコール、アリルベンゼン、N−アリルステアリルアミド、1−ブテン、2−ブテン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバミン酸エチル、N−ビニルカルバゾール、クロトンアルデヒド、クロトン酸、1,1−ジフェニルエチレン、テトラフルオロエチレン、フマル酸ジエチル、1−ヘキセン、1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、インデン、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸、マレイミド等。
【0193】
メタクリルアミド、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェロセニルメチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−sec−ブチル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−エトキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸等。
【0194】
メタアクリロキシエチルホスフェート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリロニトリル、メタクリロイルアセトン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニルキノリン、安息香酸ビニル、ビニルドデシルエーテル、ビニルエチルスルホキシド、ギ酸ビニル、ビニルイソブチルエーテル、ラウリン酸ビニル、ビニルフェニルエーテル、アセチレン、フェニルアセチレンなどが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0195】
不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれらに限定されるものではない。エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、オクタエチレングリコールジアクリレートなどのポリエチレングリコールジアクリレート類、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートなどのポリエチレングリコールジメタクリレート類。
【0196】
2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパンなどの2,2−ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン類、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシトリエトキシフェニル)プロパンなどの2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン類。
【0197】
アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、アリルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルクロレンデート、ブタジエン、ブタジエン−1−カルボン酸エチル、ブタジエン−1,4−ジカルボン酸ジエチル、ジアリルメラミン、フタル酸ジアリル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、イソプレン、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレートなどが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの該ポリマー層を構成する化合物は単独でも、或いは2種以上を併用して使用する事ができる。
【0198】
本発明における感熱記録材料の製造方法の具体例としては、各成分を支持体上に塗布して感熱記録層を形成する方法が挙げられる。各成分を感熱記録層に含有させるための塗工液作製方法としては、各々の化合物を単独で溶媒に溶解もしくは分散媒に分散してから混合する方法、各々の化合物を混ぜ合わせてから溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法、各々の化合物を加熱溶解し均一化した後冷却し、溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。分散時には必要なら分散剤を用いてもよい。水を分散媒として使う場合の分散剤としてはポリビニルアルコール等の水溶性高分子や各種の界面活性剤が利用できる。水系の分散の際は、エタノール等の水溶性有機溶媒を混合してもよい。この他に炭化水素類に代表される有機溶媒が分散媒の場合は、レシチンや燐酸エステル類等を分散剤に用いてもよい。
【0199】
また、感熱記録層の強度を向上する等の目的でバインダー樹脂を感熱記録層中に添加する事も可能である。バインダー樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体、塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン/塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、各種ポリエステル、各種ポリアミド、各種ポリアクリル酸エステル、各種ポリメタクリル酸エステル、アクリレート/メタクリレート共重合体、シリコーン樹脂、ニトロセルロース、ポリプロピレン、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、尿素−ホルマリン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、ポリオール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0200】
これらのバインダーには適宜架橋剤を添加することができる。熱架橋の架橋剤としては、例えばイソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物等が挙げられる。
【0201】
本発明に係る感熱記録層におけるバインダーの使用量としては、該感熱記録層全質量に対する該バインダー成分の質量百分率が10%以上50%以下の範囲内である事が好ましい。この範囲より大きくなると著しく発色濃度が低下し、逆にこの範囲より小さくなると、感熱記録層の耐熱性や機械的強度が低下し、層の変形や発色濃度の低下が起きる。感熱記録層における該バインダー成分の質量百分率は、15%以上45%以下がより好ましく、20%以上40%以下が特に好ましい。
【0202】
最近になって、プリペイドカード、ストアードカードといった付加価値の高い感熱記録材料が用いられる事が多くなり、それに伴い、耐熱性、耐水性、更に接着性といった高耐久品が要求されるようになってきている。このような要求に対しては、硬化性樹脂は特に好ましく、硬化性樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0203】
熱硬化性樹脂を適用する場合は架橋剤を含む液を塗工、成膜した後に熱により架橋させて用いる。熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリオール樹脂等が挙げられる。またこれらの熱硬化性樹脂に使用される硬化剤は、有機酸類、アミン類、イソシアネート類、エポキシ類、フェノール類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0204】
電子線及び硬化線樹脂に用いられるモノマーとしては、アクリル系に代表される単官能性モノマー、二官能モノマー、多官能モノマー等が挙げられるが、特に紫外線架橋の際には光重合開始剤、光重合促進剤を用いる。
【0205】
感熱記録層には、ヘッド汚れ防止や耐熱性の付与の目的として、顔料を加えることもできる。顔料としては、保護層で例示した顔料を使用することができる。また、感熱記録層及び/又は保護層には、ヘッド摩耗防止、スティッキング防止、離型性等の目的から、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサンなどのシリコンオイル、低分子量四フッ化エチレン樹脂などのフッ素系化合物、パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン、カスターワックスなどの滑剤、分散・湿潤剤として、アニオン性、ノニオン性の高分子量のものを含む界面活性剤、更には蛍光染料、消泡剤、レベリング剤等が必要に応じて添加される。
【0206】
本発明の感熱記録材料においては、レーザー光による印字を行うために、感熱記録材料中の任意の層及び/又は支持体に光熱変換材料を含有させることもできる。
【0207】
本発明に係る感熱記録層の膜厚は該感熱記録層の組成と所望発色濃度により決定されるものであり、具体的には、0.5〜20μmの範囲が好ましく、3〜15μmがより好ましい。
【0208】
本発明における感熱記録材料に用いられる支持体としては、紙、各種不織布、織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ乳酸系樹脂等の合成樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂をラミネートした紙、合成紙、金属箔、ガラス等、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることが出来るが、これらに限定されるものではなく、これらは不透明、半透明あるいは透明のいずれであってもよい。地肌を白色その他の特定の色に見せるために、白色顔料や有色染顔料や気泡を支持体中又は表面に含有させてもよい。特にフィルム類等水性塗布を行う場合で支持体の親水性が小さく感熱記録層の塗布困難な場合は、コロナ放電等による表面の親水化処理やバインダーに用いるのと同様の水溶性高分子類を、支持体表面に塗布するなどの易接着処理してもよい。
【0209】
本発明の感熱記録材料は、さらに別の基材に加熱により貼り合わせることにより、厚みを調整したり、感熱記録材料と別の基材との間に、光メモリ、接触式IC、非接触式IC等の情報記録媒体を内在させたりして、カード等の感熱記録材料積層体の形態で使用されてもよい。加熱により貼り合わせてカード形成を行う場合には、支持体の感熱記録層とは反対面に熱接着性粘着層を設けてもよいが、支持体として熱可塑性樹脂からなる支持体を用いるのが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートを構成するテレフタル酸とエチレングリコールに加え、1,4−シクロヘキサンジメタノールを構成成分とするような芳香族ポリエステル(以下、PET−G)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート/PET−Gアロイ、ポリカーボネート/PBTアロイ、ポリカーボネート/ABSアロイなどが挙げられる。また、上記樹脂から適宜選択した樹脂を積層した樹脂も使用することができる。これらのうち、加熱による貼り合わせ性の点で、PET−G、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート/PET−Gアロイ、ポリカーボネート/PBTアロイ又は、これらの樹脂を使用した積層樹脂を好ましく使用できる。本発明における感熱記録材料を別の基材に加熱により貼り合わせて作製する感熱記録材料積層体において、別の基材としては感熱記録材料の支持体で示したものと同様なものを使用することができる。
【0210】
本発明において、感熱記録材料をさらに別の基材に加熱により貼り合わせる際の温度としては、90℃以上であることが好ましく、より好ましくは90℃以上150℃以下、さらに好ましくは110℃以上140℃以下である。貼り合わせる際の温度が90℃より低いと均一かつ安定な接着性が得にくくなり、150℃よりも高いと感熱記録層の発色が起こりやすく、地肌がかぶりやすい。感熱記録材料をさらに別の基材に加熱により貼り合わせる方法としては、感熱記録材料の感熱記録層側から、及び/又は、感熱記録材料の支持体とは反対側(以後、熱接着面と称す)から、ヒーター等の熱源による熱雰囲気、熱風、赤外線等による加熱を行い、熱接着面の接着性を発現させた後、すぐに別の基材に貼り付ける方法、感熱記録材料の感熱記録層側及び/又は熱接着面側に、熱スタンプ、熱ロール等の接触手段を接触させて加熱・熱接着面の接着性を発現させた後、すぐに別の基材に貼り付ける方法、予め感熱記録材料の熱接着面と別の基材とを重ね合わせ、仮固定した後、熱プレス機等により加熱・加圧を同時に行い貼り付ける方法等から適宜選択することができるが、加熱・加圧を同時に行う方法は、貼り合わせ時の位置ずれ、接着界面への空気の混入がこりにくく、安定した接着性が得られるため好ましく使用される。加熱・加圧を同時に行う場合の加圧の条件は、0.5MPa以上3MPaであることが好ましく、さらに好ましくは1MPa以上2MPaである。加圧が0.5MPaより小さいと均一かつ安定な接着性が得にくくなり、3MPaより大きいと接着性は飽和に達する一方、機械的負荷が大きくなりやすい。
【0211】
本発明において、耐候性改良等を目的に感熱記録層と保護層の間に紫外線吸収剤や酸化防止剤等から構成される中間層を設けたり、発色感度向上等を目的に中空粒子からなるアンダーコート層を設けたり、感熱記録層が設けられている面と反対側の面にカール防止や帯電防止などを目的としてバックコート層を設けても良く、さらに粘着加工などを行ってもよい。また、感熱記録層又は保護層の表面にUVインキなどによる印刷などを行ってもよい。
【0212】
なお、本発明における各層を支持体上に積層し感熱記録材料を形成する方法は特に制限
されるものではなく、従来公知の技術により形成する事が出来る。例えば、エアーナイフ
コーター、ブレードコーター、バーコーター、カーテンコーター等の塗抹装置、平版、凸
版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン、ホットメルト等の方式による各種印刷機等
を用いる事が出来る。更に通常の乾燥工程の他、紫外線照射又は電子線照射により各層
を保持させる事が出来る。これらの方法により、1層ずつあるいは多層同時に塗布、印刷
することができる。
【0213】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるも
のではない。なお、実施例中の部数や百分率は質量基準である。また、実施例で使用した保護層の組成を表1および2に、比較例で使用した保護層の組成を表3にそれぞれ示す。
【0214】
【表1】

【0215】
【表2】

【0216】
【表3】

【実施例1】
【0217】
(アミノ基含有アルコキシシランの調製例1)
N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン:1モルに対して、アクリル酸2−エチルヘキシル:2モルの割合で混合し、50℃で7日間反応させて反応生成物[アミノ基含有アルコキシシラン]を得た。
【0218】
(ウレタン系ポリマー分散液の製造例1)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及びコンデンサーを付けた4つ口セパラブルフラスコに、商品名「NS2471」(旭電化工業社製、ポリエステルジオール、数平均分子量:2000、水酸基価:56.1mg−KOH/g):150部、2,2−ジメチロールブタン酸(水酸基価:754.0mg−KOH/g):15部、1,4−ブタンジオール:8部、イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%、IPDI]:66.8部、メタクリル酸メチル:190部、及びアクリル酸ブチル:100部を配合し、75〜80℃の温度で窒素気流下3時間反応を行い、残存イソシアネート基が1.2%のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを含む反応混合物を得た。
【0219】
次に、このカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを含む反応混合物全量に、前記「アミノ基含有アルコキシシランの調製例1」で得られたアミノ基含有アルコキシシラン:39.4部を配合して混合させた後、75〜80℃の温度で窒素気流下1時間反応を行い、カルボキシル基含有アルコキシシリル化ウレタンポリマーを含む反応混合物を得た。さらに、このカルボキシル基含有アルコキシシリル化ウレタンポリマーを含む反応混合物中のカルボキシル基を、トリエチルアミン:10.2部で中和した後、40℃まで冷却し、脱イオン水:1350部を高速攪拌下で配合して、加水分解性シリル化ウレタン系ポリマーとアクリル系モノマーとを、各15%ずつ含む水分散液(モノマー含有シリル化ウレタン系ポリマー水分散液)を得た。
【0220】
(モノマー乳化液の調製例1)
アクリル酸ブチル(BA):75部、メタクリル酸ブチル(BMA):65部、メタクリル酸メチル(MMA):100部、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製):5部をそれぞれ秤量し、これら単量体を、乳化剤として商品名「アデカリアソープSR−1025」(旭電化工業社製):5部を用いて、脱イオン水:200部中で乳化させて、モノマー乳化液を調製した。
【0221】
(ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例1)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を付けた4つ口セパラブルフラスコに、前記「ウレタン系ポリマー分散液の製造例1」で得られたモノマー含有シリル化ウレタン系ポリマー水分散液:400部、脱イオン水:150部、及びメチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製):50部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら40℃まで昇温させ、同温度(40℃)を保持させながら1時間反応させたところ、シリコーン−ウレタン系共重合体が得られた。さらに、セパラブルフラスコ内の液温を、80℃に昇温した後、前記「モノマー乳化液の調製例1」で得られたモノマー乳化液と、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS):2部とを、別々の投入口より、それぞれ2時間かけて連続的に均一に滴下したところ、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体が得られた。
【0222】
(保護層塗液の調製例1)
前記「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例1」で得られたビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液250部、酸化型ポリエチレンワックス(固形分30質量%)10部を混合し、塗液濃度が20%になるように水を添加後攪拌して保護層塗液を得た。
【0223】
(感熱記録層塗液の調製例1)
<A液作製>
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン5部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液80部と共にボールミルで粉砕し、染料前駆体分散液を得た。この分散液の分散物の粒径をMICROTRAC粒度分析計(Series9200 FRA;Leeds&Northrup Instruments製)により測定したところ、体積平均粒径1μmであった。次いで、不飽和炭素結合を有する化合物であるメタクリル酸メチル4部及びエチレングリコールジメタクリレート1部を1.5%スルホン基変性ポリビニルアルコール水溶液10部に添加し、ホモミキサーで攪拌し、不飽和炭素結合を有する化合物の乳化液を得た。前記染料前駆体分散液を重合容器に移し、攪拌しながら、不飽和炭素結合を有する化合物の乳化液を徐々に添加し、70℃に昇温させた。これに、重合開始剤である過硫酸カリウム0.05部を加え、攪拌を続けながら6時間重合させた。次いで、これを室温まで冷却し、表面に発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。
【0224】
<B液作製>
4,4′−ビスフェノールスルホン30部を10%スルホン基変性ポリビニルアルコール水溶液20部、水50部の混合物中に分散し、ビーズミルにて体積平均粒径が0.7μmになるまで粉砕した。
【0225】
<感熱層塗液>
染料としてA液10部、顕色剤としてB液10部、バインダー樹脂として20%コアシェル型アクリル樹脂エマルション(バリアスターBM1000、三井化学社製)15部、架橋剤として25%ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂水溶液(WS547T、星光PMC社製)1部を混合し、塗液濃度が20%となるように水を添加後攪拌し、感熱層塗液とした。
【0226】
(感熱記録材料の作製)
作製した感熱層塗液を100μm厚のポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートアロイフィルム(ディアフィックスPA−C、三菱樹脂社製)上に乾燥膜厚が8μmとなるよう塗布し、70℃で3分間乾燥し、その後50℃にて48時間加温し、感熱記録層を形成した。その後、保護層塗液を乾燥膜厚3μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥し、本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例2】
【0227】
「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例1」において、メチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製):50部の代わりに、メチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製):30部、及びジメチルジメトキシシラン(商品名「KBM22」信越化学工業社製):20部を使用して、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液を作製した。こうして得たビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液を保護層塗液に使用した以外は実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例3】
【0228】
「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例1」において、メチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製):50部の代わりに、シリコーンアルコキシオリゴマー(商品名「KR−500」信越化学工業社製):50部を使用して、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液を作製した。こうして得たビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液を保護層塗液に使用した以外は実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例4】
【0229】
「モノマー乳化液の調製例1」において、メタクリル酸メチル(MMA):100部
の代わりに、メタクリル酸メチル(MMA):40部、及びスチレン(St):60部を使用して、モノマー乳化液を調製した。こうして得たモノマー乳化液を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例5】
【0230】
「モノマー乳化液の調製例1」において、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製):5部の代わりに、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM803」信越化学工業社製):5部を使用して、モノマー乳化液を調製した。こうして得たモノマー乳化液を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例6】
【0231】
「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例1」において、メチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製):50部の代わりに、メチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製):40部、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製):10部を使用してビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液を作製した。こうして得たビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液を保護層塗液に使用した以外は実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。なお、実施例1において途中段階で得られるシリコーン−ウレタン系共重合体は、実施例6ではエチレン性不飽和結合を含有するシリコーン−ウレタン系共重合体となっている。
【実施例7】
【0232】
「モノマー乳化液の調製例1」において、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用せずにモノマー乳化液を調製した。「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例1」において、こうして得たモノマー乳化液を使用し、かつ脱イオン水の使用量を150部から110部に変更し、メチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製):50部の代わりに、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製):25部を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。なお、実施例1において途中段階で得られるシリコーン−ウレタン系共重合体は、実施例7ではエチレン性不飽和結合を含有するシリコーン−ウレタン系共重合体となっている。
【実施例8】
【0233】
「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例1」において、脱イオン水の使用量を150部から110部に変更し、メチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製):50部の代わりに、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製):20部を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。なお、実施例1において途中段階で得られるシリコーン−ウレタン系共重合体は、実施例8ではエチレン性不飽和結合を含有するシリコーン−ウレタン系共重合体となっている。また、本実施例では、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは、モノマー乳化液の調製の際(5部)とビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の調製の際(20部)とで用いられている。
【実施例9】
【0234】
(ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例2)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を付けた4つ口セパラブルフラスコに、前記「ウレタン系ポリマー分散液の製造例1」で得られたモノマー含有シリル化ウレタン系ポリマー水分散液:400部、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製):20部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら40℃まで昇温させ、同温度(40℃)を保持させながら1時間反応させたところ、エチレン性不飽和結合を有するシリコーン−ウレタン系共重合体が得られた。別に、「モノマー乳化液の調製例1」において、脱イオン水の使用量を200部から160部に変更し、モノマー乳化液を調製した。さらに、セパラブルフラスコ内の液温を80℃に昇温した後、こうして得たモノマー乳化液と、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS):2部とを、別々の投入口より、それぞれ2時間かけて連続的に均一に滴下した後、系内の温度を80℃に保ちながら、濃度20%のコロイダルシリカ(商品名「アデライトAT−20」旭電化工業社製)300部を添加し、同温度にて1時間反応させることにより、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体が得られた。
【0235】
こうして得たビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液を保護層塗液に使用した以外は実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例10】
【0236】
脱イオン水:240部中に、気相法シリカ(商品名「AEROSIL 200」日本アエロジル社製):60部を高速攪拌下で分散させ、シリカの水分散液を得た。「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例2」において、コロイダルシリカ(商品名「アデライトAT−20」旭電化工業社製)の代わりに、前記シリカの水分散液を使用した以外は実施例9と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例11】
【0237】
脱イオン水:240部中に、湿式法シリカ(商品名「ミズカシルP527」水澤化学工業社製):60部を高速攪拌下で分散させ、シリカの水分散液を得た。「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例2」において、コロイダルシリカ(商品名「アデライトAT−20」旭電化工業社製)の代わりに、前記シリカの水分散液を使用した以外は実施例9と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例12】
【0238】
脱イオン水:240部中に、湿式法シリカ(商品名「ミズカシルP527」水澤化学工業社製):60部を高速攪拌下で分散させ、シリカの水分散液を得た。「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例2」において、コロイダルシリカ(商品名「アデライトAT−20」旭電化工業社製):300部の代わりに、前記シリカの水分散液:150部、及びコロイダルシリカ(商品名「アデライトAT−20」旭電化工業社製):150部を使用した以外は実施例9と同様にして、本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例13】
【0239】
実施例8において、支持体として100μm厚のポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートアロイフィルム(ディアフィックスPA−C、三菱樹脂社製)の代わりに、110μ厚のポリプロピレンフィルム(商品名「ニューユポFGS」、ユポ・コーポレーション社製)を使用して本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例14】
【0240】
実施例8において、支持体として100μm厚のポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートアロイフィルム(ディアフィックスPA−C、三菱樹脂社製)の代わりに、100μ厚のポリエステルとPET−Gを貼り合わせた積層フィルムを使用し、該積層フィルムのポリエステル側に感熱記録層、保護層を順次積層して本発明の感熱記録材料を作製した。
【実施例15】
【0241】
実施例8において、支持体として100μm厚のポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートアロイフィルム(ディアフィックスPA−C、三菱樹脂社製)の代わりに、100μ厚のポリエステルフィルム(商品名「ルミラー100E」、東レ社製)を使用して本発明の感熱記録材料を作製した。こうして得た感熱記録材料の支持体上の非塗工面に、下記構成の接着剤層塗液を乾燥膜厚が10μとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥し、接着剤層を設けた。接着剤層塗液は、飽和ポリエステル樹脂(商品名「PES−355S30」東亞合成社製)30部、トルエン56部、メチルエチルケトン14部、及び多価アルコール脂肪酸エステル(商品名「SL−02」理研ビタミン社製)0.6部を混合し、調製した。
【実施例16】
【0242】
保護層塗液の調製例1において用いたビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の代わりに、40%ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液(試作品名「アクアリンカーSU700」、コニシ社製、コロイダルシリカ含有)を用いて保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の感熱記録材料を作製した。
【0243】
(比較例1)
「モノマー乳化液の調製例1」において、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製)を使用せずに、モノマー乳化液を調製した。「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例1」において、こうして得たモノマー乳化液を使用し、かつ脱イオン水の使用量を150部から70部に変更し、メチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製)を使用せずに合成を行い、ウレタン系重合体とビニル系重合体との混合物が得られた。「保護層塗液の調製例1」において、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の代わりに、こうして得られた重合体の混合物を使用し、さらにポリエーテル変性シリコーンオイルを全固形分に対し3質量%となるように添加した以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0244】
(比較例2)
「ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液の製造例1」において、脱イオン水の使用量を150部から140部に変更し、比較例1と同様にして調製されたモノマー乳化液を使用し合成を行い、シリコーン−ウレタン系共重合体と、アクリル系共重合体との混合物が得られた。「保護層塗液の調製例1」において、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の代わりに、こうして得られた共重合体の混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0245】
(比較例3)
(ウレタン系ポリマー分散液の製造例2)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及びコンデンサーを付けた4つ口セパラブルフラスコに、商品名「NS2471」(旭電化工業社製、ポリエステルジオール、数平均分子量:2000、水酸基価:56.1mg−KOH/g):150部、2,2−ジメチロールブタン酸(水酸基価:754.0mg−KOH/g):15部、1,4−ブタンジオール:8部、イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%、IPDI]:66.8部、メタクリル酸メチル:150部、及びアクリル酸ブチル:100部を配合し、75〜80℃の温度で窒素気流下3時間反応を行い、残存イソシアネート基が1.2%のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを含む反応混合物を得た。
【0246】
次に、このカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを含む反応混合物全量に、メタノール:2.2部を配合して混合させた後、75〜80℃の温度で窒素気流下2時間反応を行い、残存するイソシアネート基をすべて反応させて、カルボキシル基含有ウレタンポリマーを含む反応混合物を得た。さらに、このカルボキシル基含有ウレタンポリマーを含む反応混合物中のカルボキシル基を、トリエチルアミン:10.2部で中和した後、40℃まで冷却し、脱イオン水:700部を高速攪拌下で配合して、ウレタン系ポリマーとアクリル系モノマーとを、各15%ずつ含む水分散液(モノマー含有ウレタン系ポリマー水分散液)を得た。
【0247】
(ビニル−シリコーン系共重合体と、ウレタン系重合体との混合物の製造例)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を付けた4つ口セパラブルフラスコに、前記「ウレタン系ポリマー分散液の製造例2」で得られたモノマー含有ウレタン系ポリマー水分散液:400部、脱イオン水:150部、メチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製):50部、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製):5部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら40℃まで昇温させ、同温度(40℃)を保持させながら1時間反応させたところ、シリコーン系重合体とウレタン系重合体との混合物が得られた。次に、セパラブルフラスコ内の液温を80℃に昇温した後、比較例1と同様にして調製されたモノマー乳化液と、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS):2部とを、別々の投入口より、それぞれ2時間かけて連続的に均一に滴下したところ、ビニル−シリコーン系共重合体と、ウレタン系重合体の混合物が得られた。
【0248】
「保護層塗液の調製例1」において、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の代わりに、「ビニル−シリコーン系共重合体と、ウレタン系重合体との混合物の製造例」で得られた共重合体の混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0249】
(比較例4)
(ウレタン系ポリマー分散液の製造例3)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及びコンデンサーを付けた4つ口セパラブルフラスコに、商品名「NS2471」(旭電化工業社製、ポリエステルジオール、数平均分子量:2000、水酸基価:56.1mg−KOH/g):150部、2,2−ジメチロールブタン酸(水酸基価:754.0mg−KOH/g):15部、1,4−ブタンジオール:8部、イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%、IPDI]:66.8部、及びアセトン:250部を配合し、75〜80℃の温度で窒素気流下3時間反応を行い、残存イソシアネート基が1.2%のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを含む反応混合物を得た。
【0250】
次に、このカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを含む反応混合物全量に、前記「アミノ基含有アルコキシシランの調製例1」で得られたアミノ基含有アルコキシシラン:39.4部を配合して混合させた後、75〜80℃の温度で窒素気流下1時間反応を行い、カルボキシル基含有アルコキシシリル化ウレタンポリマーを含む反応混合物を得た。さらに、このカルボキシル基含有アルコキシシリル化ウレタンポリマーを含む反応混合物中のカルボキシル基を、トリエチルアミン:10.2部で中和した後、40℃まで冷却し、脱イオン水:1350部を高速攪拌下で配合して、加水分解性シリル化ウレタン系ポリマーの分散液を得た。さらにまた、この分散液を、減圧下、45〜50℃でアセトンを留去させた後、脱イオン水により固形分を15%となるように調製して、加水分解性シリル化ウレタン系ポリマーの分散液(モノマー非含有シリル化ウレタン系ポリマー水分散液)を得た。
【0251】
(シリコーン−ウレタン系共重合体と、アクリル系重合体との混合物の製造例)
「モノマー乳化液の調製例1」において、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製)を使用せず、脱イオン水の使用量を200部から100部に変更し、モノマー乳化液を調製した。次に、攪拌装置、窒素導入管、温度計及び環流冷却管を付けた4つ口セパラブルフラスコに、脱イオン水:100部を入れて、窒素雰囲気下で攪拌しながら、セパラブルフラスコ内の液温を80℃まで昇温させた後、前記モノマー乳化液と、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS):2部とを、別々の投入口より、それぞれ2時間かけて連続的に均一に滴下して、アクリル系重合
体を得た。また、別に、攪拌装置、窒素導入管、温度計及び環流冷却管を付けた4つ口セパラブルフラスコに、前記「ウレタン系ポリマー分散液の製造例3」で得られたモノマー非含有シリル化ウレタン系ポリマー水分散液:400部、及びメチルトリメトキシシラン(商品名「KBM13」信越化学工業社製):50部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら40℃まで昇温させ、同温度(40℃)を保持させながら1時間反応させたところ、シリコーン−ウレタン系共重合体が得られた。さらに、このシリコーン−ウレタン系共重合体を含むセパラブルフラスコ内に、前記アクリル系重合体を入れて混合し、シリコーン−ウレタン系共重合体と、アクリル系重合体との混合物が得られた。
【0252】
「保護層塗液の調製例1」において、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の代わりに、「シリコーン−ウレタン系共重合体と、アクリル系重合体との混合物の製造例」で得られた共重合体の混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0253】
(比較例5)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及び環流冷却管を付けた4つ口セパラブルフラスコに、前記「ウレタン系ポリマー分散液の製造例3」で得られたモノマー非含有シリル化ウレタン系ポリマー水分散液:400部、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製):25部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら40℃まで昇温させ、同温度(40℃)を保持させながら1時間反応させたところ、シリコーン−ウレタン系共重合体が得られた。「保護層塗液の調製例1」において、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の代わりに、こうして得たシリコーン−ウレタン系共重合体を使用した以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0254】
(比較例6)
(モノマー乳化液の調製例2)
アクリル酸ブチル(BA):95部、メタクリル酸ブチル(BMA):65部、メタクリル酸メチル(MMA):140部、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製):25部をそれぞれ秤量し、これら単量体を、乳化剤として商品名「アデカリアソープSR−1025」(旭電化工業社製):40部を用いて、脱イオン水:200部中で乳化させて、モノマー乳化液を調製した。
【0255】
攪拌装置、窒素導入管、温度計及び環流冷却管を付けた4つ口セパラブルフラスコに、脱イオン水:270部を入れて、窒素雰囲気下で攪拌しながら、セパラブルフラスコ内の液温を80℃まで昇温させた後、「モノマー乳化液の調製例2」で調製したモノマー乳化液と、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS):2部を、別々の投入口より、それぞれ2時間かけて連続的に均一に滴下して、ビニル−シリコーン系共重合体が得られた。「保護層塗液の調製例1」において、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の代わりに、こうして得たビニル−シリコーン系共重合体を使用した以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0256】
(比較例7)
「保護層塗液の調製例1」において、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液250部の代わりに、50%ウレタン−アクリル系共重合体分散液(商品名「VONCOAT CG−5030」、大日本インキ化学工業社製)200部を使用した以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0257】
(比較例8)
「保護層塗液の調製例1」において、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体分散液250部の代わりに、50%ウレタン−アクリル系共重合体分散液(商品名「VONCOAT CG−5030」、大日本インキ化学工業社製)200部を使用し、さらにポリエーテル変性シリコーンオイルを全固形分に対し3質量%となるように添加した以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0258】
(比較例9)
(モノマー乳化液の調製例2)において、脱イオン水の使用量を200部から150部に変更し、モノマー乳化液を調製した。攪拌装置、窒素導入管、温度計及び環流冷却管を付けた4つ口セパラブルフラスコに、脱イオン水:170部を入れて、窒素雰囲気下で攪拌しながら、セパラブルフラスコ内の液温を80℃まで昇温させた後、こうして得たモノマー乳化液と、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS):2部を、別々の投入口より、それぞれ2時間かけて連続的に均一に滴下した後、系内の温度を80℃に保ちながら、濃度20%のコロイダルシリカ(商品名「アデライトAT−20」旭電化工業社製)300部を添加し、同温度にて1時間反応させることにより、ビニル−シリコーン系共重合体が得られた。「保護層塗液の調製例1」において、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体の代わりに、こうして得たビニル−シリコーン系共重合体を使用した以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0259】
試験1(金属離型性)
実施例1〜16、比較例1〜9で得られた感熱記録材料について、支持体上の感熱記録層を設けた側とは反対面に、厚み100μmのポリ塩化ビニルフィルムを重ね合わせ、2枚のステンレス製鏡面板の間に挟み、130℃、1.5MPaの圧力で20分間熱圧着し、厚み200〜210μmの感熱記録材料積層体に仕上げた。各感熱記録材料はいずれも、ポリ塩化ビニルフィルムと簡単に剥離することなく十分な接着性を有していた。このとき、感熱記録材料が接していた側のステンレス製鏡面板について、剥離したときの状況、鏡面板の汚れを観察し、以下の基準で判定した。結果を表4に示す。
◎:鏡面板には全く付着物がついてなく、剥離もスムーズに行われる。
○:鏡面板にはほとんど付着物がついていない。あるいは剥離時に軽微な抵抗が感じられる。
△:鏡面板がうっすら白く汚れている。あるいは剥離時にやや抵抗が見られる。
×:感熱記録層あるいは保護層の一部又は全体が感熱記録材料から剥がれ、鏡面板に
付着している。あるいは剥離時の抵抗が大きい。
【0260】
試験2(粉落ち)
試験1で作製した各感熱記録材料積層体を、カード打ち抜き機でカードサイズに打ち抜き、カードを作製した。このカードの端面を顕微鏡で観察し、塗層の割れ、取られ方を以下の基準で判定した。結果を表4に示す。
◎:塗層の割れ、取られが全くない。
○:端面のごく一部で、塗層の小さな割れ、取られが見られるが、指で擦っても粉落ちしない。
△:端面の所々で、比較的大きな塗層の割れ、取られが見られる。あるいは端面を指で擦ると、うっすらと粉が付着する。
×:目視で塗層の欠けが観察される。また、端面を指で擦ると大量に粉落ちが発生する。
【0261】
試験3(スティッキング)
試験1で作製した各感熱記録材料積層体を、京セラ製印字ヘッドKJT−256−8MGF1付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機TH−PMDを用いて0.7mJ/dotのエネルギーにて印字し、スティッキングの様子を観察し、以下の基準で判定した。結果を表4に示す。
【0262】
○:スムーズにヘッドが移動する。
△:ヘッドの移動がスムーズではなくなる。
×:ヘッドの移動がスムーズではないのと同時に雑音が発生する。
【0263】
試験4(印字部の傷)
試験2で印字したサンプルの印字部の状態を観察し、以下の基準で判定した。結果を表4に示す。
◎:印字部は全く傷んでおらず、きれいな画像が形成されている。
○:きれいな画像が形成されているものの、若干サーマルヘッドのあたりが見える。
△:印字ができているものの、傷が入っている。
×:印字部に傷が入り、傷の部分が印字されていない。
【0264】
試験5(地肌濃度)
試験1で作製した各感熱記録材料積層体の感熱記録層表面の濃度を濃度計マクベスRD918を用いて測定した。結果を表4に示す。
【0265】
試験6(発色濃度=熱応答性)
試験2で印字したサンプルの印字部の濃度を濃度計マクベスRD918を用いて測定した。結果を表4に示す。
【0266】
【表4】

【0267】
実施例1〜16に示すように、ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を含む保護層を用いると、発色濃度が高く、スティッキングや印字部の傷が発生しないばかりでなく、別の基材に貼り合わせたり、貼り合わせた後に打ち抜き加工をしたりした際の作業性に優れた感熱記録材料とすることが可能となる。実施例8、13〜15の比較より、基材にポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートアロイフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETとPET−Gを積層した2層構成のフィルムのような熱接着性のある熱可塑性樹脂基材を用いると、支持体の感熱記録層とは反対面に接着剤層を設けることなく、別の基材に加熱により貼り合わせることが可能となり、好ましい。実施例9〜12、16に示すように、保護層にシリカを含有させると、塗層の耐熱性が上がるせいか、印字部の傷が入りにくくなり好ましい。
【0268】
比較例に示すように、ウレタン系重合体、ビニル系重合体、シリコーン系重合体を単に混合した場合、これらのうち2成分のみの共重合体を用いた場合、あるいはこれらのうち2成分の共重合体と、残り1成分の重合体を混合した場合には、上記特性のうちのいずれかあるいは複数が悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0269】
高耐熱性感熱記録材料のような高い印字エネルギーを必要とする感熱記録材料、あるいは、別の基材に加熱により貼り合わせてカード等の積層体の形で使用する感熱記録材料ににおいて、印字濃度が高く、印字部の傷みがなく、印字動作がスムーズであるとともに、貼り合わせたり断裁したりする際の作業性に優れた感熱記録材料を提供できるようになることが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体、加熱溶融により該染料前駆体に色調変化を生じせしめる電子受容性化合物を含む感熱記録層と保護層を設けた感熱記録材料において、該保護層が少なくともビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体を含んでなることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
ビニル系−シリコーン系−ウレタン系共重合体におけるウレタン系重合体鎖部が、加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)の残基であり、ビニル系重合体鎖部が、モノマー成分としてエチレン性不飽和単量体(B)、及び加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基とエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基とを有する化合物(C)を用いて得られる重合体の残基であることを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料。
【請求項3】
シリコーン系重合体鎖部が、前記ウレタン系ポリマー(A)における加水分解性珪素含有基と、前記化合物(C)における加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基と、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D)とにより形成されている請求項1又は2記載の感熱記録材料。
【請求項4】
エチレン性不飽和単量体(B)が少なくともアクリル系単量体を含む請求項2又は3のいずれか1項記載の感熱記録材料。
【請求項5】
保護層がさらにシリカを含有する請求項1〜4いずれか1項記載の感熱記録材料。
【請求項6】
記支持体が熱可塑性樹脂からなる支持体である請求項1〜5いずれか1項記載の感熱記録材料。
【請求項7】
請求項1〜6記載の感熱記録材料を、さらに別の基材に加熱により貼り合わせて形成されることを特徴とする感熱記録材料積層体。
【請求項8】
加熱による貼り合わせが90℃以上の温度で行われる請求項7記載の感熱記録材料積層体。

【公開番号】特開2008−73930(P2008−73930A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255091(P2006−255091)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】