説明

感熱記録材料

【課題】ハンディターミナルプリンタのような低トルクプリンタでもスティッキングすることなく、更に、耐水性、捺印性に優れた感熱記録材料を提供する
【解決手段】支持体上にロイコ染料と加熱時に該ロイコ染料を発色させる顕色剤とを主成分とする感熱発色層を設け、更に該感熱発色層上に水溶性樹脂と架橋剤と有機及び/又は無機フィラーとを主成分とする保護層を設けた感熱記録材料において、該保護層の水溶性樹脂としてジアセトン変成ポリビニルアルコール、架橋剤としてアジピン酸ヒドラジドとN−アミノポリアクリルアミドを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピューターのアウトプット、電卓などのプリンタ分野、医療計測用のレコーダー分野、低速並びに高速ファクシミリ分野、自動券売機分野、感熱複写分野、ハンディターミナル分野、POSシステムのラベル分野等において広く用いられている感熱記録材料に関し、特にハンディープリンタに対する耐スティング性に優れ、さらに、耐酸性、耐水性及び捺印性を改良した感熱記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、加熱により発色する感熱発色層(感熱記録層)を紙、合成紙、樹脂フィルムなどの支持体上に形成した構造の記録材料であって、その発色のための加熱には、サーマルヘッドを内蔵したサーマルプリンタなどが用いられている。
【0003】
この記録方法は他の方法に比べ、現像、定着などの処理を施す必要がなく、比較的簡単な装置を用いて短時間で記録することができる上に、コストが安いなどという利点があり、生鮮食料品・弁当・惣菜用のPOS分野、図書・文書などの複写分野、ファクシミリなどの通信分野、券売機・レシート・領収書などの発券分野など多方面に用いられている。
【0004】
近年、コンピューターを用いた情報処理技術と物流技術の向上に伴い、感熱記録紙を有する帳票用感熱記録体は特許文献1等に記載されている。
特に、昨今では検針員が各家庭を訪問して電気やガス、水道等の検針を行いその帳票を発行するハンディターミナルプリンタにも感熱記録材料が使用されるようになっている。
これらのハンディターミナルタイプのプリンタは電源としてポータブルタイプのバッテリーを使用しており、なるべく使用電力を抑えるために低トルクでスティッキングすることなく印字可能であることが重要である。特に最近では印字情報の高精細化、あるいはEAN128バーコードや二次元バーコードにも対応するために印字ドットの精細化が求められており、それに伴いサーマルプリンタヘッドのドット密度が高くなるにつれて、スティッキングを起こさないことに対する要求はますます高まってきた。
また、これらの検針帳票に振込み用紙が付帯していることも多く、このような用途では使用する感熱記録材料に受領印用の捺印性が優れている特性も必要である。
また、同様にハンディターミナルプリンタで印字されるものとして、列車内で乗務員が発行する切符などがあるが、このような磁気記録券紙用途においても表面の捺印性が必要となるのは言うまでもない。
【0005】
スティッキングを抑えるための技術として、例えば、特許文献2では保護層中にシリコーンオイルを主成分とする離型剤を含有させることが報告されているが、このようなシリコーンオイルを用いた場合、印字時にヘッドに付着するカスが多くなることが問題であった。
また、例えば特許文献3では保護層の樹脂として塩化ビニルの共重合ポリマーを使用することでスティッキングが改良されることが報告されているが、このような塩化ビニル共重合ポリマーを使用するだけでは、通常の据え置き型プリンタでのスティッキングは改良されても、ハンディターミナルタイププリンタに代表される低トルクプリンター用途においては、不充分なものであった。
さらに、近年では焼却時にハロゲンガスやダイオキシンの発生が起こらないようにするため、塩素や臭素を含有する原材料を使用しないことが望まれており、こういった観点からも塩化ビニル共重合ポリマーの使用は好ましくない。
また、捺印性を向上させる技術として例えば特許文献4や特許文献5、特許文献6等では、保護層中にシリカ等の吸油量が大きい無機フィラーを含有させることが報告されているが、このような保護層を用いると保護層の硬度が高くなり、ヘッドが磨耗するという問題が生じる。
【0006】
これに対して、特許文献7では保護層に平均粒子径が2.0μm以上の多孔質炭酸カルシウムの二次凝集粒子を用いた、捺印性に優れヘッドカス付着やヘッド磨耗が少ない感熱記録材料が報告されている。
しかし、このような多孔質炭酸カルシウムだけでは捺印性は良くても、スティッキングを起こさないことを両立させることは困難であった。さらに、特許文献8や特許文献9、特許文献10等では保護層中に含有させるフィラーとして無機フィラーと尿素−ホルマリン樹脂を併用したり、あるいは多孔質澱粉粒子などの有機フィラーを使用することが報告されているが、これらの技術を用いた場合でもヘッドカスが多かったり、あるいは保護層中に含まれるこれらの有機フィラーが光を散乱させることによる隠蔽効果により、画像濃度が低下してしまう問題があった。
【0007】
保護層の付着量を減らすことによりこの隠蔽効果は小さくすることが可能であるが、その場合にはスティッキングを抑えることが不充分となるため、結局低トルク印字適性と捺印性を両立させることができないのが現状であった。
一方、保護層にポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子を含有させる技術に関しては、例えば特許文献11にて報告されており、保存性に優れた感熱記録材料を提供するとされている。
しかし、該公報で報告されているような樹脂とPMMA粒子のみの組み合わせでは、捺印性が全く不充分であった。
また、特許文献12ではポリビニルアルコール100重量部に対して水酸化アルミニウム粒子を100重量部組み合わせた保護層中にシリコーンゴム粒子10重量部を含有させることによって、特に高湿条件下での搬送性が向上することが報告されており、その比較例としてシリコーンゴム粒子の代わりにPMMA粒子を使用することが挙げられている。
しかし、該特許文献12に報告されているような樹脂とフィラーの割合においても捺印性が全く不足しており、更にはシリコーンゴムでは発生するヘッドカスの量が多いという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開昭55−17529号公報
【特許文献2】特開2003−276334号公報
【特許文献3】特開平11−254831号公報
【特許文献4】特開平01−301368号公報
【特許文献5】特開平10−6647号公報
【特許文献6】特開2004−268471号公報
【特許文献7】特開2005−41013号公報
【特許文献8】特開2000−177243号公報
【特許文献9】特開平04−341886号公報
【特許文献10】特開平06−166265号公報
【特許文献11】特開平05−185726号公報
【特許文献12】特開2005−88457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点を解消し、特にハンディターミナルプリンタのような低トルクプリンタでもスティッキングすることなく、更に、耐水性、捺印性に優れた感熱記録材料提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、次の(1)〜(15)の発明によって解決される。
(1)支持体上にロイコ染料及び加熱時に該ロイコ染料を発色させる顕色剤を主成分とする感熱発色層を設け、更に該感熱発色層上に水溶性樹脂、架橋剤、及び無機フィラーを含有するフィラーを主成分とする保護層を設けた感熱記録材料において、該保護層の水溶性樹脂としてジアセトン変成ポリビニルアルコール、架橋剤としてアジピン酸ヒドラジドとN−アミノポリアクリルアミドを含有することを特徴とする感熱記録材料。
(2)前記N−アミノポリアクリルアミドの重量平均分子量が10000〜100000で、ヒドラジド化率が50%以上であることを特徴とする前記(1)に記載の感熱記録材料。
(3)前記N−アミノポリアクリルアミドの割合が、前記水溶性樹脂に対して重量比で10〜30%であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の感熱記録材料。
(4)前記アジピン酸ヒドラジドの割合が、前記水溶性樹脂に対して重量比で5〜40%であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の感熱記録材料。
(5)前記フィラーの割合が、前記水溶性樹脂に対して重量比で150〜400%であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の感熱記録材料。
(6)前記フィラーは、無機フィラーに対して重量比で5〜15%の割合で有機フィラーを含有してなることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の感熱記録材料。
(7)前記有機フィラーの平均粒子径が1.0〜8.0μmであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の感熱記録材料。
(8)前記有機フィラーの形状が、多孔質であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の感熱記録材料。
(9)前記無機フィラーが凝集体形状をしていることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の感熱記録材料。
(10)前記感熱発色層中に結着剤を含有し、該結着剤がジアセトン変成ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の感熱記録材料。
(11)前記(1)〜(10)のいずれかに記載の感熱記録材料の表面にOPニス加工が施されていることを特徴とする感熱記録材料。
(12)前記(1)〜(11)のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面すなわち支持体に対して感熱発色層とは逆の面に、アイマーク加工が施されていることを特徴とする感熱記録材料。
(13)前記(1)〜(11)のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面すなわち支持体に対して感熱発色層とは逆の面に、粘着剤層及び剥離台紙を順次積層したことを特徴とする感熱記録材料。
(14)前記(1)〜(11)のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面すなわち支持体に対して感熱発色層とは逆の面に、擬似接着加工が施されていることを特徴とする感熱記録材料。
(15)前記(1)〜(11)のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面すなわち支持体に対して感熱発色層とは逆の面に、磁気記録層が設けられていることを特徴とする感熱記録材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感熱記録材料は、捺印性およびスティッキング抑制性に優れており、保護層により画像が隠蔽することもなく、更に耐酸性、耐水性に優れている。また、本発明の感熱記録材料は、特に食酢のような酸性物質や水に対して画像部及び地肌部の保存安定性に優れ、かつ発色特性、低温恒湿環境での低トルクプリンタでの印字搬送性に優れており、しかも取扱い易く安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、上記本発明について更に詳細に説明する。
本発明の感熱記録材料は、感熱発色層上に設けられる保護層が、水溶性樹脂としてジアセトン変成ポリビニルアルコール、架橋剤としてアジピン酸ヒドラジドとN−アミノポリアクリルアミドを含有するものである。
【0013】
本発明の保護層の水溶性樹脂に用いられるジアセトン変性ポリビニルアルコールは、ジアセトン基を持つ単量体とビニルエステルとを共重合して得た樹脂をケン化することにより得られるものであり、架橋剤としては反応性の観点からヒドラジン化合物が使用されることが多い。これらの架橋反応機構は、ジアセトン変成ポリビニルアルコールのカルボニル基への(1)付加反応、(2)脱水反応の2段階で進み、架橋して成膜することで耐水化する。しかしながら、この反応は、酸性条件下で、耐水性を有する脱水反応生成物から、耐水性を有しない付加反応生成物への逆反応が促進されるために、保護層が酸に曝されると、成膜状態から溶解することとなる。このとき、架橋剤がモノ又はジヒドラジド化合物の場合には、反応架橋点が酸により解離すると直ぐに付加反応生成物に戻るために溶解する。また、本発明で使用される架橋剤のN−アミノポリアクリルアミドは高分子構造を有しているため、分子内に架橋点となり得るヒドラジド基を多数有することから、架橋点が多次元化することにより、一部の架橋点が解離しても、脱水反応生成物からなる膜構造を保持することができるので、溶解しにくいものとなるが、高分子構造であるために、架橋反応が進行しにくいという欠点がある。そこで、ジヒドラジド化合物とN−アミノポリアクリルアミドを混在させることで、架橋の進行に関しては、ジヒドラジド化合物が機能し、N−アミノポリアクリルアミドが高分子構造の為、多次元構造化により、膜構造の保持に関して機能を果たす。これにより得られた成膜状態の耐水性も向上し、膜構造が立体化することで、捺印性に対しても有用に機能する。
【0014】
N−アミノポリアクリルアミドは重量平均分子量(以下、分子量という)10000〜100000でヒドラジド化率が50%以上であることが好ましい。分子量10000未満では架橋点の高分子構造が弱いため、容易に解離し、溶解するという不具合を有し、一方、100000を超えると水に対する溶解性が低下し、塗布液に含有させた場合に不安定となる。更に、ヒドラジド化率が50%未満では、架橋点となり得るヒドラジドが分子内に少ないために、ジアセトン変成ポリビニルアルコールとの架橋反応性に劣り、効果が不十分であるが、50%以上で効果が十分なものとなる。更に好ましくは、ヒドラジド化率は80%以上である。
【0015】
N−アミノポリアクリルアミドの添加量は、保護層に含有させた水溶性樹脂1重量部に対して0.10〜0.30重量部が好ましい。0.10重量部未満では架橋反応性が不十分となり、0.30重量部を超えると架橋反応性は充分であるが、保護層塗布液の安定性が低下する。
【0016】
本発明においては、N−アミノポリアクリルアミドを混在させる架橋剤として、アジピン酸ヒドラジドが適切である。
アジピン酸ヒドラジドは、N−アミノポリアクリルアミドの高分子構造による膜構造の保持の機能を損なわない為と考えられる。また、アジピン酸ヒドラジド以外では、N−アミノポリアクリルアミドの機能を損なわない範囲で併用することも可能である。その例としてはカルボヒドラジド、シュウ酸ヒドラジド、ギ酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アゼライン酸ヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
アジピン酸ヒドラジドの添加量は、保護層に含有させた水溶性樹脂1重量部に対して0.05〜0.40重量部が好ましい。0.05重量部未満では架橋反応性が劣り耐水化反応が不十分となり、0.40重量部を超えると架橋反応性が高まり、液のポットライフに問題を生じると共に、かえってアジピン酸ヒドラジド自身の水溶性のため耐水性に劣るものとなる。
【0018】
本発明の保護層には、無機フィラーを含有させるのが好ましい。この無機フィラーとしては、従来からフィラーとして用いられている公知の無機顔料を用いることができる。例えば、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸亜鉛、無定形シリカ等のケイ酸塩や、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機顔料が挙げられる。特に、凝集体構造の炭酸カルシウムは、吸油量が大きい為、捺印性向上のために望ましく、更にはヘッド磨耗を低減するために一次粒子の凝集体であることが好ましい。
【0019】
これら無機フィラーの添加量としては前記保護層に含有させたジアセトン変成ポリビニルアルコール1重量部に対して1.5〜4.0重量部であることが望ましい。1.5重量部よりも少ないと捺印性が不充分となり、逆に4.0重量部よりも多くなると保護層の結着力が低下して層ハガレや顔料の剥離が発生したり、ヘッド磨耗が大きくなる。
【0020】
前記保護層に含有させる無機フィラーの一部に代えて、架橋性ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子(有機フィラー)を用いることができる。架橋性ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子を含有させるのが好ましい。架橋性ポリ(メタ)アクリル酸メチルとは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルの線状高分子同士が三次元網目構造的に結合しているものである。このような架橋構造をとることにより、ポリ(メタ)アクリル酸メチルの軟化点が高くなり、従来より優れた添加材料になる。
【0021】
ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子添加の目的は、ヘッド磨耗低減、ヘッドカス低減、スティッキング防止、捺印性向上のためである。この架橋性ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子の平均粒子径としては、1.0〜5.0μmが好ましい。1.0μmよりも小さくなると、隠蔽による画像濃度の低下が小さいという効果が小さくなり易く、5.0μmよりも大きくなると、サーマルヘッドと感熱記録材料との密着性が低下して発色感度が低下してしまう恐れがある。
この架橋性ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子の形状が多孔質もしくは凝集体形状をしていることは、捺印性を向上させるために好ましい。
【0022】
架橋性ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子の添加量は無機フィラー1重量部に対して0.05〜15重量部であることが望ましい。添加量が結着樹脂に対して0.05重量部よりも少ないと、ポリメタクリル酸メチル粒子のスティッキング防止効果が小さくなり、また、0.15重量部よりも多い場合には、隠蔽による画像濃度低下が小さいという効果が小さくなる恐れがある。
【0023】
また、本発明の保護層には、アクリル樹脂粒子、シリコン樹脂粒子などの有機フィラーを添加することもできる。これらの有機フィラー平均粒子径としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子の場合と同様の理由から、1.0〜5.0μmが好ましく、添加量も同様の理由から無機フィラー1重量部に対して0.05〜15重量部であることが望ましい。
【0024】
また、保護層中には、滑剤を含有せしめることができる。滑剤としては感熱記録層用として記載したものと重なるが、モンタン酸ワックスやステアリン酸亜鉛、パラフィンワックス等の高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、シリコーンオイル、動物性、植物性、鉱物性又は石油系の各種ワックス類などを用いることができる。
【0025】
なお、保護層を形成する場合に使用される結着樹脂として、必要に応じて、ジアセトン変成ポリビニルアルコールと共に従来公知の水溶性高分子を用いることができるが、その水溶性高分子の使用量はジアセトン変成ポリビニルアルコールの使用目的を阻害しない程度のものであり、保護層を形成する結着樹脂全体の50重量%以下である。
そのような水溶性高分子としては、感熱記録層用及びアンダー層用のバインダーと重複するところがあるが、ポリビニルアルコール、イタコン酸変成ポリビニルアルコール、カルボキシ変成ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼインなどの水溶性高分子などが挙げられる。
【0026】
本発明の感熱記録材料は、感熱発色層がロイコ染料と顕色剤を含有するものである。
ロイコ染料は電子供与性を示す化合物であり、単独で又は2種以上混合して適用される。例えば、それ自体無色又は淡色の染料前駆体であって従来公知の、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物を用いることができる。
【0027】
中でも、発色特性及び耐湿熱光による画像部の褪色及び地肌部の地肌かぶりの品質から、以下に示すようなものが挙げられる。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ペンチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−メチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(o−クロルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−ブロモアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロルアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(o−フロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(m−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(p−アセチルアニリノ)−6−(N−n−アミル−N−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ジベンジルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(ジ−p−メチルベンジルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、ベンゾロイコメチレンブルー、2−[3,6−ビス(ジエチルアミノ)]−6−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム、2−[3,6−ビス(ジエチルアミノ)]−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−4,5−ジクロルフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−クロルフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジメトキシアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−クロルフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−ニトロフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)フタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3′)−6′−ジメチルアミノフタリド、6′−クロロ−8′−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6′−ブロモ−2′−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン等である。
これらのうちでも、特に、高感度発色特性、耐湿熱光等による画像部の褪色及び地肌部の地肌かぶりの品質から、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ペンチルアミノ)フルオランが好ましい。
【0028】
ロイコ染料の感熱発色層における含有量は5〜20重量%が好ましく、10〜15重量%がより好ましい。
【0029】
また、本発明における顕色剤としては、加熱時にロイコ染料と反応して発色させる種々の電子受容性物質が用いられ、その具体例としては次に示すようなフェノール性化合物、有機又は無機酸性化合物、あるいはそれらのエステルや塩などが挙げられる。
ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、没食子酸、サリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−シクロヘキシルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4,4′−イソプロピリデンジフェノール、1,1′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリンビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)、4,4′−sec−ブチリデンジフェノール、4,4′−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−メチルフェノール)、4−tert−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシジフェノキシド、α−ナフトール、β−ナフトール、3,5−キシレノール、チモール、メチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−ヒドロキシアセトフェノン、ノボラック型フェノール樹脂、2,2′−チオビス(4,6−ジクロロフェノール)、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシン、フロログリシンカルボン酸、4−tert−オクチルカテコール、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−o−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−n−オクチル、安息香酸、サリチル酸亜鉛、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸亜鉛、4−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2−ヒドロキシ−p−トルイル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸スズ、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、ステアリン酸、4−ヒドロキシフタル酸、ホウ酸、チオ尿素誘導体、4−ヒドロキシチオフェノール誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸エチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−プロピル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ブチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェネチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−プロピル、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ−4′−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−エトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−sec−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−tert−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−フェノキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−(m−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−(p−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−(o−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−(p−クロロベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−オキシアリルジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどである。
【0030】
中でも、高感度発色特性、耐湿熱光等による画像部の褪色及び地肌部の地肌かぶりの品質から、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−オキシアリルジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン化合物が好ましく,このときロイコ染料1重量部に対し,2〜4重量部が特に好ましい。
【0031】
感熱発色層は、更に感度向上剤として熱可融性物質を含有することが好ましい。その例としては、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類;ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類;N−ラウリルラウリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド等のN−置換アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド等のビス脂肪酸アミド類;ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸アミド類;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類;p−ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β−ベンジルオキシナフタレン、β−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチル、ジフェニルカーボネート、テレフタル酸ベンジル、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジベンジルオキシナフタレン、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシエタン)、1,4−ジフェノキシ−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4−ジフェニルチオブタン、1,4−ジフェニルチオ−2−ブテン、1,3−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p−(2−ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p−アリールオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニルプロパノール、p−ベンジルオキシベンジルアルコール、1,3−フェノキシ−2−プロパノール、N−オクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、N−オクタデシルカルバモイルベンゼン、1,2−ビス(4−メトキシフェノキシ)プロパン、1,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3−オキサペンタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4−メチルベンジル)、シュウ酸ビス(4−クロロベンジル)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明の感熱記録材料を製造するために、ロイコ染料、顕色剤、熱可融性物質等を支持体上に結合支持させるために、慣用の種々の結着剤を適宜用いることができる。その具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
ポリビニルアルコール、各種変性ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼインなどの水溶性高分子の他、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのエマルジョンや、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体などのラテックスなど。
【0033】
なお、感熱発色層には、上記顕色剤、ロイコ染料、熱可融性物質、結着剤以外にも、感熱記録材料を構成するのに慣用的に用いられる各種材料(架橋剤、顔料、界面活性剤、滑剤等)を適宜用いることができる。なお、感熱発色層にジアセトン変成ポリビニルアルコールを含有させると、保護層のみ又は感熱発色層と保護層に含有させるN−アミノポリアクリルアミドと架橋反応が起きやすくなり、発色阻害となる他の架橋剤を添加することなく耐水性を向上できるため好ましい。
【0034】
感熱発色層の形成方法は特に制限はなく、一般に知られている方法により形成することができる。例えば、ロイコ染料と顕色剤を別々に、結着剤その他の成分と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル等の分散機により、分散粒径が1〜3μmになるまで粉砕分散した後、必要に応じて填料、熱可融性物質(増感剤)分散液等と共に、一定処方で混合して感熱発色層塗布液を調製し、支持体上に塗布することによって形成することができる。
【0035】
感熱発色層の厚みは、感熱発色層の組成や感熱記録材の用途等により異なり一概には規定できないが、1〜50μmが好ましく、3〜20μmがより好ましい。
【0036】
本発明における支持体としては、その形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、構造としては、単層構造であっても積層構造であってもよく、大きさとしては、感熱記録材の大きさ等に応じて適宜選択することができる。また、支持体の厚みについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜2,000μmが好ましく、100〜1,000μmがより好ましい。
【0037】
支持体の材料には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、種々の無機材料や有機材料を用いることができる。無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属等が挙げられる。有機材料としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、合成紙等の紙;三酢酸セルロース等のセルロース誘導体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、上質紙、アート紙、コート紙、高分子フィルムが特に好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
支持体は、塗布層の接着性を向上させる目的で、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、等により表面改質することが好ましい。また、支持体には、酸化チタン等の白色顔料などを添加して白色にすることが好ましい。
【0039】
本発明の感熱記録材料においては、支持体と感熱発色層との間にアンダーコート層を設けることができる。アンダーコート層を設けることにより、ロイコ染料の光酸化反応に関与する酸素を遮断することができるため、光による地肌部(非印字部)の変色を更に大幅に抑えることができる。
【0040】
アンダーコート層は、バインダー樹脂と中空粒子とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
中空粒子としては、熱可塑性樹脂を殼とする中空率30〜95%程度の微小中空粒子又はポーラスな顔料などが挙げられる。ここで、中空粒子とは、熱可塑性樹脂を殻とし、内部に空気、その他の気体を含有し、すでに発泡状態となっている中空粒子を意味する。また、中空率とは、中空微粒子の外径基準の体積と内径基準の体積の比を意味する。
【0041】
熱可塑性樹脂を殼としてなる中空率30〜95%程度の微小中空粒子は、内部に空気その他の気体を含有するもので、既に発泡状態となっている微小中空粒子である。この微小中空粒子の平均粒径は、0.4〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。この平均粒子径(粒子外径)が0.2μmより小さいものは、技術的に中空にするのが難しいし、アンダー層の役割が不十分となる。一方、20μmより大きいものは、塗布乾燥後の表面の平滑性が低下するため、感熱発色層の塗布が不均一になり、更に均一にするために必要量以上の感熱発色層塗布液を塗布しなければならない。従って、このような微小中空粒子の分布は粒子径が上記の範囲にあると同時に、バラツキが少なく分布スペクトラムの均一なものが好ましい。更に、本発明において、プラスチック球状中空粒子は、中空率が30%以上のものが使用できるが、70%以上のものがより好ましい。中空率が30%未満のものは断熱性が不十分なため、熱エネルギーが支持体を通じて外へ放出され、熱の効率が悪くなるので好ましくない。
微小中空粒子は、上述したように、熱可塑性樹脂を殼とするものであるが、この熱可塑性樹脂としては、特に塩化ビニリデンとアクリロニトリルを主体とする共重合体樹脂が好ましい。
また、アンダー層に用いられるポーラスな顔料としては、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の有機顔料やシラス土等の無機顔料があるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
アンダーコート層の形成方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、感熱発色層上にアンダー層塗布液を塗布する方法が好適である。
塗布方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ブレードコート法などが挙げられる。
塗布の後、必要に応じて乾燥させてもよく、この場合の乾燥の温度には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜250℃程度が好ましい。
アンダーコート層の乾燥後の付着量は、1.0〜5.0g/mが好ましく、2.0〜4.0g/mがより好ましい。
【0043】
本発明の感熱記録材料は、支持体の感熱発色層を設ける側の面と反対側の面にバック層を有することが好ましい。バック層は、バインダー樹脂、フィラー、滑剤、顔料等のその他の成分を含有する。
【0044】
バック層を形成するバインダー樹脂としては、水分散性樹脂及び水溶性樹脂の何れかが用いられ、具体的には、従来公知の水溶性高分子、水性高分子エマルジョンなどが挙げられる。
【0045】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
水性高分子エマルジョンとしては、例えば、アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックスや酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂等のエマルジョンが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
バック層に添加するフィラーとしては、無機フィラー又は有機フィラーを用いることができる。
無機フィラーとしては、例えば、炭酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸化合物、等が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等が挙げられる。
【0048】
バック層の形成方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、支持体上にバック層塗布液を塗布する方法が好適である。
塗布方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ブレードコート法などが挙げられる。
バックコート層の厚みは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。
【0049】
本発明の感熱記録材料の保護層上にOPニス加工を施すことは、感熱記録材料表面の光沢度を向上して見た目を良くし、スティッキング防止特性を向上させ、印字画像保存性を高める上で好ましく、捺印性を考慮すると、捺印をされる部分以外にOPニスを施すことが、更に好ましい。このOPニス加工を施すための手段としては、紫外線硬化型樹脂や酸化重合型の無色透明インキをスクリーン印刷やオフセット印刷等の各種印刷方式によってベタ印刷、あるいは網点印刷することが行われる。
【0050】
本発明の感熱記録材料をハンディターミナル用の検針帳票や粘着ラベルとして使用する場合には、本発明の感熱記録材料の裏面(即ち、支持体に対して感熱発色層とは逆の面)に紫外線硬化型インクや水系フレキソインク、アルコール系フレキソインク、顔料インキ等を用いてアイマークを施すことが効果的である。このアイマークが感熱記録印字用プリンタに付帯されたセンサーにより検出されることにより、帳票やラベルに対して正確な位置に印字を行うことができる。
これらアイマークは、感熱記録材料裏面に黒色の前記インクを用いて幅0.5〜10mm、長さ0.5〜300mm程度の印刷を施すことにより得られることが多いが、もちろんこれらのインクの色は黒色以外にも青色、茶色、緑色、赤色等任意の色を使用しても良く、また、アイマークの大きさが上記の大きさよりも、もっと大きくても小さくても構わない。
【0051】
加えて、必要に応じて感熱記録材料の裏面(即ち、支持体に対して感熱発色層とは逆の面)に粘着剤層および剥離台紙を順次積層することもできる。
このような粘着剤層および剥離台紙を順次積層させた感熱記録材料の使用用途としては、例えばPOSラベルやチケットタグ、物流配送用ラベルなどが挙げられる。
【0052】
感熱記録材料が感熱記録ラベルである場合の第1形態では、支持体の感熱発色層を設ける側と反対側の面(裏面、バック層を有する場合はそのバック層面)上に、粘着剤層と剥離紙を有し、更に必要に応じてその他の層を有する。
粘着剤層の材料には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0053】
また、第2形態では、支持体の感熱発色層を設ける側と反対側の面(裏面、バック層を有する場合はバック層面)上に、加熱によって粘着性を発現する感熱粘着層を有し、更に必要に応じてその他の層を有する。
感熱粘着層は、熱可塑性樹脂及び熱溶融性物質を含有し、更に必要に応じて粘着付与剤を含有する。熱可塑性樹脂は、粘着力及び接着力を付与するものである。熱溶融性物質は、常温では固体であるため、樹脂に可塑性は与えないが、加熱により溶融して樹脂を膨潤乃至軟化させて粘着性を発現させるものである。また、粘着付与剤は粘着性を向上させる働きを有するものである。
【0054】
また、必要に応じて本発明の感熱記録材料の裏面(即ち、支持体に対して感熱発色層とは逆の面)に擬似接着加工を施すことにより、主に宅配便帳票などに使用されている物流配送用の帳票、あるいはラベル用途として使用することも有用である。
この擬似接着性は、感熱記録材料の裏面、すなわち支持体上の感熱記発色層とは逆の面に感圧性接着剤を付与することによって得られ、上記感圧性接着剤としては、例えばアクリル系重合体、天然ゴム、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体、スチレン−ブタジエン系重合体、ポリイソブチレン、ポリビニルエーテル等の樹脂が挙げられる。これらの感圧性接着剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を混合しても良い。
【0055】
更に、本発明の感熱記録材料の裏面(即ち、支持体に対して感熱発色層とは逆の面)に強磁性体を含有する磁気記録層を設けることにより、例えば列車に乗車する際の切符として、検札の際などの捺印性に優れた感熱記録型磁気材料としての用途に使用することも、効果的である。
この際に使用する強磁性体としてはγ−フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等が用いられるが、磁気記録情報が通常の磁石で消去されない為には保磁力が1500から5000エルステッドのバリウムフェライト、ストロンチウムフェライトが好ましい。
上記強磁性体を分散剤および結着性樹脂と混合し、支持体上に磁気記録層を塗布することによって上記感熱記録性磁気材料を得ることができる。
【0056】
分散剤としては、例えばスチレン‐マレイン酸アンモニウム塩やポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、2、4、7、9−テトラメチル−5−デシン4、7、ジオール、アセチレングリコール、アクリル酸マレイン酸共重合体のアルカリ塩、ポリスチレンスルホン酸アルカリ塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、アセチレングリコール等の公知分散剤が適用される。
【0057】
また、結着性樹脂としては酸化デンプン、エーテル化デンプンなどのデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、アラビゴム、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレンオキサイドなどの水溶性結合剤、ポリウレタン系、塩化ビニル系、ポリアクリル系、スチレンブタジエン系などの各種ラテックスが挙げられ、これらの中から1種または2種以上が適宜選択して使用される。
【0058】
上記磁気記録層の塗工に用いる装置は、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、ダイコーター、リップコーター、ブレードコーター、等が用いられる。また、オフセット、シルクスクリ−ン等の印刷法も用いることができる。
【0059】
以上、本発明の感熱記録材料裏面に各種加工を施すことによる使用例を挙げてみたが、本発明の使用用途としてはもちろんこれらに限定されるものではなく、感熱記録材料を使用するあらゆる用途に使用してよい。
特に本発明の感熱記録材料は、キャレンダー処理によるサーマルヘッドとの密着性の向上が著しいので、アンダーコート層、感熱記録層あるいは保護層へカレンダー処理を施すことは、非常に好ましい。 即ち、アンダーコート層、感熱記録層又は保護層へのキャレンダーの圧力の大きさで表面の平滑度をコントロールすることにより、地肌かぶりが無くしかも従来よりも高精細な感熱記録材料を得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下に示す「部」および「%」は何れも重量基準である。
【0061】
(実施例1)
次の手順で感熱記録材料を作製した。
<保護層塗布液の調製>
下記組成物をサンドミルを用い24時間分散して、[A液]を調合した。
[A液]
水酸化アルミニウム(平均粒径0.6μm、昭和電工
株式会社製ハイジライトH−43M) 20部
イタコン酸変性ポリビニルアルコールのNa塩10%水溶液 20部
水 60部
続いて、下記組成物を混合し、攪拌して保護層塗布液[B液]を調製した。
[B液]
A液 50部
ジアセトン変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
N−アミノポリアクリルアミド(分子量10000、ヒド
ラジド化率50%)10%水溶液 5部
アジピン酸ヒドラジド10%水溶液 10部
水 50部
<感熱記録層塗布液の調製>
下記組成からなる[C液]及び[D液]を、それぞれ平均粒径が1.0μm以下になるようにサンドミルを用いて分散し、染料分散液[C液]、顕色剤分散液[D液]を調製した。
[C液]
2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン 10部
イタコン酸変性ポリビニルアルコールの10%水溶液 10部
水 30部
[D液]
ビスフェノールS 30部
イタコン酸変性ポリビニルアルコールの10%水溶液 50部
シリカ 15部
水 197部
続いて、上記染料分散液[C液]と顕色剤分散液[D液]を、次の割合で混合し、攪拌して、感熱記録層塗布液[E液]を調製した。
[E液]
染料分散液[C液] 50部
顕色剤分散液[D液] 292部
イタコン酸変性ポリビニルアルコールの10%水溶液 50部
次に、原紙支持体の表面に、感熱記録層及び保護層の乾燥後の付着量が各々5.0g/m、3.0g/mになるように、[E液]、[B液]の順で、塗布し乾燥させ、キャレンダー掛けにより、表面の王研式平滑度が約2,000秒になるように処理して、実施例1の感熱記録材料を作製した。
【0062】
(実施例2)
実施例1における[B液]中のN−アミノポリアクリルアミドを、分子量20000、ヒドラジド化率50%のものに変えた点以外は実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録材料を作製した。
【0063】
(実施例3)
実施例1における[B液]中のN−アミノポリアクリルアミドを、分子量90000、ヒドラジド化率50%のものに変えた点以外は実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録材料を作製した。
【0064】
(実施例4)
実施例1における[B液]中のN−アミノポリアクリルアミドを、分子量100000、ヒドラジド化率50%のものに変えた点以外は実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録材料を作製した。
【0065】
(実施例5)
実施例2で使用したN−アミノポリアクリルアミド10%水溶液の添加量を、20部に変えた点以外は実施例2と同様にして、実施例4の感熱記録材料を作製した。
【0066】
(実施例6)
実施例2で使用したN−アミノポリアクリルアミド10%水溶液の添加量を、30部に変えた点以外は実施例2と同様にして、実施例5の感熱記録材料を作製した。
【0067】
(実施例7)
実施例5で使用したアジピン酸ヒドラジド10%水溶液の添加量を、20部に変えた点以外は実施例5と同様にして、実施例6の感熱記録材料を作製した。
【0068】
(実施例8)
実施例5で使用したアジピン酸ヒドラジド10%水溶液の添加量を、40部に変えた点以外は実施例5と同様にして、実施例7の感熱記録材料を作製した。
【0069】
(実施例9)
実施例7で使用した[A液]の添加量を、150部に変えた点以外は、実施例7と同様にして、実施例8の感熱記録材料を作製した。
【0070】
(実施例10)
実施例7で使用した[A液]の添加量を、250部に変えた点以外は実施例7と同様にして、実施例10の感熱記録材料を作製した。
【0071】
(実施例11)
実施例9で使用した[A液]の水酸化アルミアルミニウムを、凝集体形状である炭酸カルシウム(株式会社白石中央研究所製カルライト-KT)に変えた点以外は実施例8と同様にして、実施例11の感熱記録材料を作製した。
【0072】
(実施例12)
<保護層塗布液の調製>
下記組成物をサンドミルを用いて、24時間分散して、[F液]を調合した。
[F液]
炭酸カルシウム(株式会社白石中央研究所製カルライト-KT) 20部
イタコン酸変性ポリビニルアルコールのNa塩10%水溶液 20部
水 60部
下記組成物を攪拌機を用いて3時間攪拌して、[G液]を調合した。
[G液]
アクリル樹脂粒子(平均粒子径1.0μm) 20部
水 80部
続いて、下記組成物を混合し、攪拌して保護層塗布液[H液]を調製した。
[H液]
F液 147.5部
G液 2.55部
ジアセトン変性ポリビニルアルコール10%水溶液:100部
N−アミノポリアクリルアミド(分子量10000、ヒドラジド化率50%)10%水溶液 30部
アジピン酸ヒドラジド10%水溶液 20部
水 150部
次に、原紙支持体の表面に、感熱記録層及び保護層の乾燥後の付着量が各々5.0g/m、3.0g/mになるように、[E液]、[H液]の順で、塗布し乾燥させ、キャレンダー掛けにより、表面の王研式平滑度が約2,000秒になるように処理して、実施例12の感熱記録材料を作製した。
【0073】
(実施例13)
実施例12における[G液]の添加量を10部に変えた点以外は実施例12と同様にして、実施例13の感熱記録材料を作製した。
【0074】
(実施例14)
実施例12における[G液]の添加量を20部に変えた点以外は実施例12と同様にして、実施例14の感熱記録材料を作製した。
【0075】
(実施例15)
実施例13に使用した[G液]のアクリル樹脂粒子を、シリコン樹脂粒子(平均粒子径2.0μm)に変えた点以外は実施例13と同様にして、実施例15の感熱記録材料を作製した。
【0076】
(実施例16)
実施例15に使用した[G液]のアクリル樹脂粒子を、シリコン樹脂粒子(平均粒子径5.0μm)に変えた点以外は、実施例15と同様にして、実施例16の感熱記録材料を作製した。
【0077】
(実施例17)
実施例15に使用した[G液]のアクリル樹脂粒子を、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(平均粒子径2.0μm)に変えた点以外は実施例15と同様にして、実施例17の感熱記録材料を作製した。
【0078】
(実施例18)
実施例17に使用した[E液]のイタコン酸変性ポリビニルアルコールのNa塩10%水溶液を、ジアセトン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液に変えた点以外は実施例17と同様にして、実施例18の感熱記録材料を作製した。
【0079】
(比較例1)
実施例1における[B液]中のアジピン酸ヒドラジド10%水溶液の添加量を0部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1の感熱記録材料を作成した。
【0080】
(比較例2)
実施例1における[B液]中のN-アミノポリアクリルアミド10%水溶液の添加量を0部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2の感熱記録材料を作成した。
【0081】
(比較例3)
実施例1における[B液]中の[A液]の添加量を0部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例3の感熱記録材料を作成した。
【0082】
以上、実施例1〜18及び比較例1〜3の作製条件をまとめると表1、表2及び表3のようになる。
【0083】
【表1】


【0084】
【表2】


【0085】
【表3】


【0086】
得られた各感熱記録材について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表4及び表5に示す。
【0087】
<耐食酢性評価>
各感熱記録材料を、150℃のホットスタンプに1秒間接触させて発色させた後、穀物酢(ミツカン製)に30分間浸漬して、浸漬後の画像濃度をマクベス濃度計(RD−914型、マクベス社製)で測定し、保護層表面状態を観察した。
【0088】
<耐水性評価>
各感熱記録材料を、150℃のホットスタンプに1秒間接触させて発色させた後、水中に15時間浸漬し、浸漬後の画像濃度をマクベス濃度計(RD−914型、マクベス社製)で測定し、保護層表面状態を観察した。
【0089】
<保護層塗布液安定性評価>
各感熱記録材料に用いる保護層塗布液を調製後、30℃環境下において、1時間後、液の状態を下記基準に従い、評価する。
○:粘度上昇もなく、調整直後と比較して変化なし。
△:調整直後と比較して、粘度上昇がみられる。
×:凝集している。
【0090】
<捺印性評価>
シャチハタXスタンパーで捺印し、10秒後にティッシュでふき取り、文字(名前)が判別できるか目視観察した。
◎◎:文字のズレはなく、解読は可能で、更に、水に濡れても濃度低下がない。
◎:文字のズレはなく、解読は可能。ただし、水に濡れると濃度低下が生じる。
○:文字のズレはあるが、問題なく、解読は可能。
△:文字のズレはあり、一部、文字つぶれが発生しているが、解読は可能。
×:文字のズレがひどく、解読が不可能。
【0091】
<磨耗性評価>
各々の感熱記録材料および高速プリンター(I−4308、DATAMAX社製)を22℃、60%RHの環境下において印字スピード8ipsで20Kmの印字を行った後のサーマルヘッドの磨耗量をレーザー顕微鏡(VK−8500、8510、キーエンス社製)を用いて測定を行った。
【0092】
<低温環境条件下でのスティッキング評価>
各々の感熱記録材料およびプリンター(L’espritR−12、SATO社製)を−5℃、20%RHの高温恒湿環境下に1時間放置して調湿した後、印字した。印字長は、プリンターによって特定の印字パターンを印字した際の印字スタート部から印字ラスト部までの印字の長さであり、スティッキング性が優れている場合は印字パターンが正確に印字されるのに対し、スティッキング性が劣っている場合は感熱記録材料の同一部分に重複して印字され、また感熱記録材料の蛇行などが発生するため、スティッキング性が劣っている場合の印字長は、搬送性が優れている場合の印字長に比べ短くなる。また、スティッキングは、サーマルヘッドと感熱記録材料が加熱により、貼り付く現象であり、サーマルヘッドと感熱記録紙が搬送によって、離れる際に音が発生する。よって、低温スティッキング性に対しては、下記の基準により評価を行った。
◎:スティッキング音の発生なく、適正印字長で印字される。
○:弱いスティッキング音の発生が確認されるが、適正印字長で印字される。
△:比較的強いスティッキング音の発生が確認されるが、適正印字長で印字される。
×:スティッキング音の発生し、適正印字長よりも短く印字される。
××:感熱記録材料がサーマルヘッドに貼り付き、印字されない。
【0093】
<Dmax(最大発色濃度)評価>
各感熱記録材を松下電器部品(株)製薄膜ヘッドを有する感熱印字実験装置を用いて、ヘッド電力0.45W/ドット1ライン記録時間20msec/L、走査密度8×385ドット/mmの条件下で、1msec毎にパルス巾0.2〜1.2msecに印字し、印字濃度をマクベス濃度計RD−914で測定し、最も高い値をDmax(最大発色濃度)として評価した。
【0094】
【表4】


【0095】
【表5】


【0096】
表4及び表5に示された試験結果について説明する。
(1)実施例1〜4を比較例1〜3と対比すると、実施例1〜4でN−アミノアクリルアミドの分子量を大きくすることで、耐酸性(耐食酢性)が向上する。ただし、実施例2と3と4を比べると、分子量が大きいと保護層塗布液の液安定性が低下してしまう。
(2)実施例5,6を実施例2と対比すると、N-アミノアクリルアミドの添加量が多くなることで、耐酸性(耐食酢性)と耐水性が向上する。ただし、実施例5と6を比べると、添加量が多くなることで、保護層塗布液の液安定性が低下してしまう。
(3)実施例7.8を実施例5と対比すると、アジピン酸ヒドラジドの添加量が多くなることで、耐水性が向上する。ただし、実施例5と6を比べると、添加量が多くなることで、保護層塗布液の液安定性が低下してしまう。
(4)実施例9,10を実施例7と対比すると、水酸化アルミニウムの添加量が多くなることで、捺印性と低温スティッキング性が向上する。ただし、水酸化アルミニウムの添加量が多くなることで、ヘッド磨耗量が大きくなってしまう。
(5)実施例11を実施例9と対比すると、水酸化アルミニウムを炭酸カルシウムに代えることで、捺印性とDmaxが向上する。
(6)実施例12〜14を実施例11と対比すると、有機フィラーを添加することで、ヘッド磨耗量が低下する。ただし、有機フィラーが添加されることで、隠蔽が生じ、Dmaxの低下を招いてしまう。
(7)実施例15、16を実施例14と対比すると、有機フィラーの粒子径を大ききすることで、ヘッド磨耗量が小さくなり、更に、低温スティッキング性が向上する。ただし、隠蔽が生じ、Dmaxの低下を招いてしまう。
(8)実施例17を実施例16と対比すると、有機フィラーを多孔質形状にすることで、捺印性が向上し、更に、Dmaxの低下もない。
(9)実施例18を実施例17と対比すると、感熱記録層中の結着性樹脂をジアセトン変性ポリビニルアルコールに代えることで、耐酸性(耐食酢性)、耐水性、低温スティッキング性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の感熱記録材料は、発色特性、画像安定性等に優れ、かつ低トルクプリンターでの印字搬送性に優れているので、感熱記録装置のメカニズムが簡単でコンパクト化が容易であり、記録材料が取扱い易く安価であるので、情報処理分野(卓上計算機、コンピューター等のアウトプット)、医療計測用のレコーダー分野、低〜高速ファッシミリ分野、自動券売機分野(乗車券、入場券)、感熱複写分野、POSシステムのラベル分野、タグ分野等の多岐に渡って用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にロイコ染料及び加熱時に該ロイコ染料を発色させる顕色剤を主成分とする感熱発色層を設け、更に該感熱発色層上に水溶性樹脂、架橋剤、及び無機フィラーを含有するフィラーを主成分とする保護層を設けた感熱記録材料において、該保護層の水溶性樹脂としてジアセトン変成ポリビニルアルコール、架橋剤としてアジピン酸ヒドラジドとN−アミノポリアクリルアミドを含有することを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
前記N−アミノポリアクリルアミドの重量平均分子量が10000〜100000で、ヒドラジド化率が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記N−アミノポリアクリルアミドの割合が、前記水溶性樹脂に対して重量比で10〜30%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
前記アジピン酸ヒドラジドの割合が、前記水溶性樹脂に対して重量比で5〜40%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項5】
前記フィラーの割合が、前記水溶性樹脂に対して重量比で150〜400%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項6】
前記フィラーは、無機フィラーに対して重量比で5〜15%の割合で有機フィラーを含有してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項7】
前記有機フィラーの平均粒子径が1.0〜8.0μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感熱記録材料
【請求項8】
前記有機フィラーの形状が多孔質であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項9】
前記無機フィラーが凝集体形状をしていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項10】
前記感熱発色層は結着剤を含有し、該結着剤がジアセトン変成ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の感熱記録材料の表面にOPニス加工が施されていることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面すなわち支持体に対して感熱発色層とは逆の面に、アイマーク加工が施されていることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面すなわち支持体に対して感熱発色層とは逆の面に、粘着剤層及び剥離台紙を順次積層したことを特徴とする感熱記録材料。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面すなわち支持体に対して感熱発色層とは逆の面に、擬似接着加工が施されていることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面すなわち支持体に対して感熱発色層とは逆の面に、磁気記録層が設けられていることを特徴とする感熱記録材料。

【公開番号】特開2008−213259(P2008−213259A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52566(P2007−52566)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】